説明

液体供給装置

【課題】構造の簡素化と流通させる液体の清浄度向上との両立を図り、液体の供給停止後に生じる使用部における液垂れを抑制することができる新たな構造を備えた液体供給装置を提供する。
【解決手段】液体の供給部10と、液体の使用部20と、供給部から使用部へ液体を流通させる供給配管部30とを有する液体供給装置1Aであって、供給配管部は、供給部側から供給される液体を流通させる主配管部31と、主配管部に接続されるアスピレータ50と、アスピレータにより分岐され使用部側に液体を供給する使用側配管部32及び副配管部33と、副配管部に接続され開閉機能を有する弁16とを備えており、アスピレータの主流路側に主配管部及び副配管部が接続され、アスピレータの吸引流路側に使用側配管部が接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体供給装置に関し、特に液体の使用部における液垂れを防ぐことができる液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造等において、シリコンウエハの洗浄やエッチング処理に用いる純水、薬液等の液体を供給する場合、液体に非常に高い清浄度が求められる。国際半導体技術ロードマップ(ITRS)において2010年から32nmの配線ピッチによる製造が本格的に始まり、今後さらに配線幅を狭めた生産が予定されている。そのため、液体の流通経路から混入する発塵(パーティクル)を極力抑制することが大きな意味を有する。
【0003】
現在、半導体製造装置においてシリコンウエハは枚葉方式による洗浄が主流である。そのため、頻繁に液体の吐出と停止の切り換えが行われる。従って、液体供給の切り換えの正確さとともに供給される液体の質の安定性も重要である。このような液体の精密供給を可能とする装置の例として、図10に概略を示す液体供給装置201がある。
【0004】
液体供給装置201には、液体タンク211及びポンプ212等を有する液体の供給部210と、シリコンウエハ等を洗浄する液体の使用部220が備えられる。供給側配管231と循環側配管232により各部は接続される。液体の供給と停止に用いる開閉弁241と循環時に用いる開閉弁242が備えられる。そして、液体の移送中に発生するパーティクルは開閉弁241の下流側にフィルター213により捕集される。開閉弁241のみの閉鎖では液体の慣性により使用部220のノズル221からの液垂れを防ぐことができない。そこで、使用部249の直前の供給側配管231にサックバック弁249が配置される。サックバック弁249は液体の吐出を停止した際、使用部220からの液垂れを防ぐ機構である。
【0005】
しかし、サックバック弁自体の設置や制御の必要から開閉弁以降の配管に液体が残留してしまう。そのため、液体の吐出停止から時間経過により再び液体の漏れが生じる可能性がある。特に、発泡性の液体の場合、液体の吐出停止後に配管や弁内の液体の体積膨張により、液体が押し出され、使用部のノズルから垂れ出てしまうことがある。このように、液体が垂れ出てしまうことを確実に防ぎきれなかった。
【0006】
また、配管中に残留した液体は経時的に性質が変化してしまう。そのことから、次の液体吐出により液体をシリコンウエハに散布する前に、ノズルの位置をウエハからずらして配管内に残留している液体をいったん廃棄し、その後、新しい液体をウエハ上に散布していた。この手順からわかるように、作業時間の無駄や薬品、液体等の使用量増加が問題である。特に、フィルターを設置した配管の場合、フィルター内への残留が多くなり、その分消耗が多くなっていた。
【0007】
ここで、アスピレータを液体の配管中に設置して液体の残留を抑制する構成が提案されている(特許文献1等参照)。
【0008】
そこで、前述の図10の液体供給装置にアスピレータを組み込んだ液体供給装置301が提案されている(図11,12参照)。液体供給装置301には、液体タンク311及びポンプ312等を有する液体の供給部310と、シリコンウエハ等を洗浄する液体の使用部320が備えられる。供給側配管331と循環側配管332,333により各部は接続される。液体の供給と停止に用いる第1開閉弁341と循環時に用いる第2開閉弁342及び第3開閉弁343が備えられる。液体の移送中に発生するパーティクルは開閉弁341の下流側にフィルター313により捕集される。そして、第2開閉弁342と第3開閉弁343の下流側にアスピレータ350が備えられる。
【0009】
図11は液体の供給部310から使用部320へ液体が供給されている状態である。第1開閉弁341のみが開き、第2開閉弁342と第3開閉弁343は閉じている。図12は液体の供給停止時である。このとき、第1開閉弁341は閉じられ、第2開閉弁342と第3開閉弁343が開かれる。そうすると、供給側配管331、第2開閉弁342、アスピレータ、循環側配管333の流路を液体が流れる。同時に、使用部320近くの供給側配管331、循環側配管332、第3開閉弁343内に残留している液体は、アスピレータ350を通じて吸引され、循環側配管333に合流する。
【0010】
図11,図12に開示の液体供給装置301の場合、アスピレータ350の吸引効果により液体が使用部320のノズル321から垂れ出ことは回避される。よって、液垂れの対策としては有効である。しかし、1開閉弁341や第3開閉弁343の内部において、弁体と弁座との接触部(図示せず)から発生するパーティクルの解消は難しく、これらの開閉弁の下流側にフィルター313を設けてパーティクルを捕集する必要があった。
【0011】
従前の液体供給装置では、液体の供給部から使用部へ液体を供給する配管に設置する部品数が多くなり、また配管や流路も複雑化する。従って、流通させる液体の清浄度の向上、装置当たりの経費増加の点が問題となっていた。それゆえ、半導体製造に用いる液体供給装置において、構造の簡素化と流通させる液体の清浄度向上との両立を図る新たな構造の装置が模索されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−146560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、半導体製造に用いる液体供給装置において、構造の簡素化と流通させる液体の清浄度向上との両立を図り、液体の供給停止後に生じる使用部における液垂れを抑制することができる新たな構造を備えた液体供給装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、請求項1の発明は、液体の供給部と、液体の使用部と、前記供給部から前記使用部へ液体を流通させる供給配管部とを有する液体供給装置であって、前記供給配管部は、前記供給部側から供給される液体を流通させる主配管部と、前記主配管部に接続されるアスピレータと、前記アスピレータにより分岐され前記使用部側に液体を供給する使用側配管部及び副配管部と、前記副配管部に接続され開閉機能を有する弁とを備えており、前記アスピレータの主流路側に前記主配管部及び前記副配管部が接続され、前記アスピレータの吸引流路側に前記使用側配管部が接続されていることを特徴とする液体供給装置に係る。
【0015】
請求項2の発明は、前記副配管部が、液体を前記供給部へ戻すための循環配管部である請求項1に記載の液体供給装置に係る。
【0016】
請求項3の発明は、前記副配管部が、液体を廃棄するためのドレイン配管部である請求項1に記載の液体供給装置に係る。
【0017】
請求項4の発明は、前記開閉機能を有する弁が開閉弁である請求項1に記載の液体供給装置に係る。
【0018】
請求項5の発明は、前記開閉機能を有する弁が流量制御弁である請求項1に記載の液体供給装置に係る。
【0019】
請求項6の発明は、前記主配管部もしくは前記使用側配管部のいずれか一方あるいは両方にフィルターが備えられる請求項1に記載の液体供給装置に係る。
【0020】
請求項7の発明は、前記供給配管部に温度調節器もしくはセンサーのいずれか一方あるいは両方が備えられる請求項1に記載の液体供給装置に係る。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明に係る液体供給装置によると、液体の供給部と、液体の使用部と、前記供給部から前記使用部へ液体を流通させる供給配管部とを有する液体供給装置であって、前記供給配管部は、前記供給部側から供給される液体を流通させる主配管部と、前記主配管部に接続されるアスピレータと、前記アスピレータにより分岐され前記使用部側に液体を供給する使用側配管部及び副配管部と、前記副配管部に接続され開閉機能を有する弁とを備えており、前記アスピレータの主流路側に前記主配管部及び前記副配管部が接続され、前記アスピレータの吸引流路側に前記使用側配管部が接続されているため、弁の数を減らすことによって装置構造の簡素化と流通させる液体の清浄度向上との両立を図り、液体の供給停止後に生じる使用部における液垂れを抑制することができる新たな構造を備えた液体供給装置を得ることができた。
【0022】
請求項2の発明に係る液体供給装置によると、請求項1に係る発明において、前記副配管部が、液体を前記供給部へ戻すための循環配管部であるため、液体の再利用により液体自体の無駄な消費は抑制される。
【0023】
請求項3の発明に係る液体供給装置によると、請求項1に係る発明において、前記副配管部が、液体を廃棄するためのドレイン配管部であるため、液体の清浄度や液体成分の安定性確保、液体自体の経時変化の影響を考慮して液体の廃棄が必要な場合に都合良い。
【0024】
請求項4の発明に係る液体供給装置によると、請求項1に係る発明において、前記開閉機能を有する弁が開閉弁であるため、弁座の開放、閉鎖を比較的瞬時かつ簡単に操作でき、液体供給装置自体の液体の流通とその停止の切り換えも素早く行うことができる。
【0025】
請求項5の発明に係る液体供給装置によると、請求項1に係る発明において、前記開閉機能を有する弁が流量制御弁であるため、弁座の開放、閉鎖を比較的瞬時かつ簡単に操作でき、液体供給装置自体の液体の流通とその停止の切り換えも素早く行うことができる。加えて、液体の流通流量を無段階で調節できるため、使用部における液体の使用量に応じた液体の供給流量を実現することもできる。
【0026】
請求項6の発明に係る液体供給装置によると、請求項1に係る発明において、前記主配管部もしくは前記使用側配管部のいずれか一方あるいは両方にフィルターが備えられるため、供給部から供給される液体とともに流出するパーティクルは捕集され、液体の清浄度は高められる。
【0027】
請求項7の発明に係る液体供給装置によると、請求項1に係る発明において、前記供給配管部に温度調節器もしくはセンサーのいずれか一方あるいは両方が備えられるため、使用部に供給される液体の品質安定化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施例に係る液体供給装置の概略図である。
【図2】アスピレータの断面図である。
【図3】開閉弁の縦断面図である。
【図4】制御弁の縦断面図である。
【図5】図1の液体供給状態の概略図である。
【図6】図1の液体供給停止状態の概略図である。
【図7】本発明の第2実施例に係る液体供給装置の概略図である。
【図8】本発明の第3実施例に係る液体供給装置の概略図である。
【図9】本発明の第4実施例に係る液体供給装置の概略図である。
【図10】従来例に係るサックバルブを備えた液体供給装置の概略図である。
【図11】従来例に係るアスピレータを備えた液体供給装置の第1概略図である。
【図12】従来例に係るアスピレータを備えた液体供給装置の第2概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の液体供給装置1Aは、主に半導体製造工場や半導体製造装置等に装備され、超純水、フッ酸水、過酸化水素水、アンモニア水、塩酸等の各種の液体の供給及び液体の供給停止を行うことができる装置である。特に、シリコンウエハの枚葉方式による洗浄に対応した液体供給を可能にする装置である。
【0030】
図1の概略図を用い、請求項1の発明に規定する液体供給装置1Aの構成を説明する。液体供給装置1A(第1実施例)には、上流側となる液体の供給部10と、下流側となる液体の使用部20と、供給部10から使用部20へ液体を流通させる供給配管部30が備えられる。
【0031】
図示実施例の液体の供給部10には、前出の液体を貯蔵する液体タンク11とその液体を移送するためのポンプ12が備えられる。ポンプ12はベローズポンプやダイヤフラムポンプ等の公知の液送手段である。なお、液体タンク11内を空気や窒素ガス等で加圧して液体を押し出すことも可能である。従って、供給部10からポンプ12を省略することもできる。
【0032】
液体の使用部20とは、供給配管部30を通じて供給されてきた液体が実際に使用される部分を指す範囲である。図示実施例では、使用部20に使用側配管部32とその先端のノズル21が含まれる。そして、前記の液体は、ノズル21からスピンチャック6の回転盤5に載置されるシリコンウエハWに対して吐出され、またその停止の切り換えが行われる。
【0033】
図1の供給配管部30には、主配管部31と、アスピレータ50と、使用側配管部32と、副配管部33と、開閉機能を有する弁16が備えられる。主配管部31は、供給部10側から供給される液体を流通させる管路となる。図示のように、主配管部31の上流側に液体タンク11、ポンプ12が配置される。アスピレータ50は主配管部31の下流側末端に接続され、主配管部31の下流側を2方向に分岐する。つまり、供給配管部30において、主配管部31は液体タンク11やポンプ12からアスピレータ50までの配管部分である。
【0034】
アスピレータ50により2分岐され使用部20側に液体を供給する使用側配管部32が備えられ、同使用側配管部32の最先端にノズル21が装着される。また、アスピレータ50の分岐の残り側の管路に副配管部33が接続される。そして、副配管部33の管路内に開閉機能を有する弁16が備えられる。
【0035】
図示の第1実施例の液体供給装置1Aでは、アスピレータ50を通過した液体は供給部10(液体タンク11)に戻され再利用される。そこで、請求項2の発明に規定するように、副配管部33は、主配管部31、アスピレータ50と流通した液体を供給部10(液体タンク11)に戻すための循環配管部34としている。供給配管部30を流通する液体を液体タンク11に戻すことにより、液体自体の無駄な消費を抑制することができる。
【0036】
図2の断面図を用い、アスピレータ50の構造と配管接続の態様を説明する。アスピレータ50の本体部51は耐食性、耐薬品性に優れたPTFEをはじめとする各種フッ素樹脂等から形成される。アスピレータ50の主流路52は、本体部51内に形成されるとともに同本体部51内を直線状に貫通する。そして、主流路52と直交する吸引流路53も形成される。
【0037】
アスピレータ50において、主流路52に吸引流路53が接続する部分に狭小管部57が備えられ、狭小管部57の下流側であり主流路52と吸引流路53との接続部分に接続室58も形成される。図中、符号54は主流路と主配管部の接続口、55は主流路と副配管部の接続口、56は吸引流路と使用側配管部の接続口である。
【0038】
主配管部31からアスピレータ50に流入する液体は、狭小管部57により流路径が狭められて流速が増す。このため、ベンチュリ効果によって液体の圧力は低下する。減圧になった液体に周囲の空気が巻き込まれ、結果として吸引流路53が減圧となる。
【0039】
開閉機能を有する弁16として、請求項4の発明に規定するように、副配管部33内を流通する液体の流通停止及び流通再開を調節する開閉弁60が用いられる。あるいは、請求項5の発明に規定するように、副配管部33内を流通する液体の流量を可変することができる流量調節弁80が用いられる。
【0040】
図3の縦断面図を用い開閉弁60の一例の構造を説明する。開閉弁60は、例えば特開2003−139270号等に開示されるポペット弁を備えた形態の開閉弁である。開閉弁60において、その下部ボディブロック61bに液体の流入口63と液体の流出口64が備えられる。流入口63と流出口64が接続される部位が弁室62であり、弁室62に環状の弁座65が形成される。そして、弁体70が前進、後退の進退動作をすることにより、弁座65において液体の流通と停止の開閉が行われる。
【0041】
図示の弁体70には弁部78が備えられるとともに、ダイヤフラム部71とその周囲に外周部72が設けられる。外周部72は、押さえ部材73及び固定ブロック74を介して上部ボディブロック61aにより弁室62内の所定位置に固定される。上部ボディブロック61a内に空間部69が形成される。空間部69にばね76と、同ばね76の付勢を受けるピストン部75が収容される。弁体70(弁部78)の上部の接続部77はピストン部75に接続されていることから、弁体70とピストン部75は連動して進退する。上部ボディブロック61aには作動エアの流出入のためのエアポート66,67が備えられる。符号68は呼吸路である。
【0042】
例えば、エアポート66への作動エアの流入、エアポート67からの排気の場合、空間部69の上部側の空気圧が上昇するため、ピストン部75は下方に押し下げられる。そこで、弁体70の弁部78は弁座65に着座することになり、当該開閉弁60において液体の供給は停止される。逆に、流通を再開させる場合、エアポート67への作動エアの流入、エアポート66からの排気により、ピストン部75が上方に持ち上げられる。各エアポートへの作動エアの流出入の調節は、図示しないコントローラや電空レギュレータにより制御される。
【0043】
図3に開示の開閉弁60の場合、弁座の開放、閉鎖を比較的瞬時かつ簡単に操作できるため、液体供給装置自体の液体の流通とその停止の切り換えも素早く行うことができる。
【0044】
続いて図4の縦断面図を用い流量調節弁80の一例の構造を説明する。流量調節弁80は、例えば特開2004−68935号等に開示されるニードル弁を備えた形態の流量調節弁である。流量調節弁80の下部ボディブロック81bに液体の流入口83と液体の流出口84が備えられ、流入口83と流出口84が接続される部位が弁室83であり、弁室83に細管状の末端を有する弁座85が形成される。そして、弁体90が前進、後退の進退動作をすることにより、弁座85において液体の流通と停止の開閉が行われることに加え、弁体90と弁座85との距離に応じて弁座85の開放量が変化するため、液体流量の微調整も可能である。
【0045】
図示の流量調節弁80はニードル弁と称される制御弁の一種であり、その弁体90の先端に長尺の円錐台形状(ニードル状)の弁部98が備えられる。そして、ダイヤフラム部91とその周囲に外周部92が設けられる。外周部92は、固定ブロック93を介して上部ボディブロック81aにより弁室82内の所定位置に固定される。上部ボディブロック81a内に空間部94が形成され空間部94にばね96と、同ばね96の付勢を受けるピストン部95が収容される。弁体90(弁部98)の上部の接続部97はピストン部95に接続されていることから、弁体90とピストン部95は連動して進退する。上部ボディブロック81aには作動エアの流出入のためのエアポート86,87が備えられる。符号88は呼吸路である。
【0046】
また、図示の流量調節弁80では、ピストン部95の上側接続穴98にねじ棒100が螺着している。ねじ棒100は調節ブロック81c内に収容され、調節ブロック81cに被さるように調節ねじ101が係合する。このとき、外周ねじ部102と内周ねじ部103は螺合しており、調節ねじ101の位置は規制される。そこで、ねじ棒100と調節ねじ101の位置の調整により、弁体90の進退移動量は規制される。
【0047】
流量調節弁80も前掲の開閉弁60と同様に、エアポート86への作動エアの流入、エアポート87からの排気の場合、空間部94の上部側(ばね96付近)の空気圧が上昇するため、ピストン部95は下方に押し下げられる。そこで、弁体90の弁部98は弁座85に向けて侵入し、場合により着座する。逆に、液体の流通を再開ないし増加させる場合、エアポート87への作動エアの流入、エアポート86からの排気により、ピストン部95が上方に持ち上げられる。各エアポートへの作動エアの流出入の調節は、図示しないコントローラや電空レギュレータにより制御される。すなわち、当該流量調節弁80においては、弁部98と弁座85との距離に応じた弁座部分の開度変化に伴い、液体供給停止となる完全閉鎖から微量流通とする一部開放、さらにはより多くの液体流通とする範囲の調節が可能である。
【0048】
流量調節弁80については、図4に開示のニードル弁に加え、例えば特開平6−295209号に開示の2枚のダイヤフラムを備えた制御弁等も適用可能である。図4の流量調節弁80の場合、弁座の開放、閉鎖を比較的瞬時かつ簡単に操作できるため、液体供給装置自体の液体の流通とその停止の切り換えも素早く行うことができる。加えて、液体の流通流量を無段階で調節できるため、使用部における液体の使用量に応じた液体の供給流量を実現することもできる。
【0049】
ここで、図5及び図6を用い液体の供給及びその停止の状況を説明する。図5は第1実施例の液体供給装置1Aにおける液体供給状態であり、図中の太破線のとおり、液体は供給部10側から使用部20側に移送されている。
【0050】
図5の液体供給状態では開閉機能を有する弁16は閉弁状態(CLOSE)である。すなわち、図3の開閉弁60の場合、弁座が弁体の着座により閉じられている状態である。また、図4の流量調節弁80の場合、弁体の弁部が弁座と接触しているあるいは、深く侵入して弁座を通過する流量を抑制して流通させている状態(リーク状態)である。
【0051】
供給部10の液体タンク11とポンプ12を通じて圧送される液体は、供給配管部30の主配管部31を流通し、アスピレータ50内に到達する。そして、液体はアスピレータ50内を通過し副配管部33内を流通する。しかし、開閉機能を有する弁16が閉弁状態であることから、液体の流通は当該弁16内の弁座の上流側で遮断される(なおリークの場合も含まれる。)。そのため、アスピレータ50内に到達した液体は、吸引流路53を通じて使用側配管部32を流通する。結果、液体は使用部20に到達する液体供給状態が維持され、使用部20のノズル21からシリコンウエハWに対して吐出される。
【0052】
図6の液体供給停止状態では開閉機能を有する弁16は開弁状態(OPEN)である。すなわち、図3の開閉弁60の場合、弁体が弁座から離れている開弁状態である。また、図4の流量調節弁80の場合、弁体の弁部が弁座から離れて弁座の開度が増して弁座を通過する流量が増加して流通している状態である。
【0053】
供給部10の液体タンク11とポンプ12を通じて圧送される液体は、供給配管部30の主配管部31を流通し、アスピレータ50内に到達する。開閉機能を有する弁16は開弁状態であることから、アスピレータ50内に到達した液体は、その内部の主流路52を通じて副配管部33に流出する。液体は当該弁16内を通過してそのまま循環配管部34を流通し、液体タンク11に戻る。
【0054】
この場合、アスピレータ50の狭小管部57を液体が通過するため、吸引流路53側が減圧される。そこで、吸引流路53に接続されている使用側配管部32の内部は負圧となり、ノズル21まで満たされていた液体はその順路とは逆にアスピレータ50に向けて吸引される。
【0055】
図示の第1実施例の液体供給装置1Aから理解されるとおり、当該液体供給装置はアスピレータを効果的に配置しているため、開閉機能を有する弁を1個配置するのみで、液体の供給停止時の使用部(ノズル等)からの不用意な液垂れを抑制することができる。供給配管部に設けた1個の弁の開閉操作により使用部への液体供給と供給停止を切り換えることができるため、液体供給装置自体の構造や部品数の簡素化が可能である。特に、供給部から使用部までにアスピレータのみの配置であるため、パーティクルが発生する要因が低減されている。
【0056】
図7は第2実施例の液体供給装置1Bの概略図である。同装置1Bによると、請求項3の発明に規定するように、副配管部33は流通されてくる液体を廃棄するためのドレイン配管部35となる。第2実施例の液体供給装置1Bでは、開閉機能を有する弁16(開閉弁60,流量調節弁80)の下流側に、第1実施例の循環配管部34の代わりにドレイン配管部35が接続される。供給部10から使用部20への液体の供給と液体の供給停止については、前掲の図5,6にて説明の第1実施例と同様である。図中の共通する符号は同一構成を示す。
【0057】
当該第2実施例の液体供給装置1Bは、液体の再利用を禁ずる場合の構成である。液体の清浄度や液体成分の安定性確保、液体自体の経時変化の影響を考慮すると圧送される液体を循環、再利用せずそのまま廃棄した方が都合良い場合もあるためである。第1実施例の液体供給装置1Aまたは第2実施例の液体供給装置1Bのいずれかを選択するかは、使用部へ供給する液体の種類、性質に応じて選択される。
【0058】
図8は第3実施例の液体供給装置1Cの概略図である。同装置1Cによると、請求項6の発明に規定するように、供給配管部30のうち主配管部31にフィルター13が備えられる。このフィルター13により、主配管部31の上流となる供給部10(液体タンク11、ポンプ12)等から発生し流出するパーティクルは捕集される。そこで、フィルター13の下流側の液体の清浄度は高められる。
【0059】
図示を省略するものの、アスピレータ50から分岐する使用側配管部32にフィルター13を備えることもできる。この場合、使用部(ノズル)の直前にフィルターが配置されるため、パーティクルの捕集効率は高い。また、前述の弁16(60,80)の開閉切り換えにより使用部20への液体の供給を停止しても、使用側配管部32やフィルター内に残留した液体はアスピレータ50側へ吸引される。それゆえ、使用部における液垂れは回避される。
【0060】
図9は第4実施例の液体供給装置1Dの概略図である。同装置1Dによると、請求項7の発明に規定するように、供給配管部30を構成する管路中に温度調節器14もしくはセンサー15のいずれか一方あるいは両方が備えられる。図示は供給配管部30の主配管部31と循環配管部34に備えた例である。
【0061】
液体の供給部10から圧送される液体は流通途中で温度低下あるいは温度上昇することがある。そこで、温度調節器14が供給配管部30(図示の主配管部31)に備えられることにより、温度変化が緩和される。結果、使用部に供給される液体の品質安定化が図られる。また、流通中の液体の温度、濃度等をモニタリングするため、センサー15が供給配管部30(図示の主配管部31)に備えられる。このセンサー15の検知結果は供給部10や温度調節器14にフィードバックされ、所定値に設定される。
【0062】
温度調節器14やセンサー15は、主配管部31と循環配管部34のいずれか一方としても両方としてもよい。さらには、図示しないものの、温度調節器14やセンサー15を供給配管部30のうち使用側配管部32内に備えることもできる。温度調節器14やセンサー15の種類、設置個数、設置場所等は、流通させる液体の種類、装置構成、処理能力等を考慮して選択される。
【0063】
図8,9に開示の液体供給装置1C,1Dにおいても、図1等と共通する箇所を同一符号とし説明を省略した。図8,9に開示の液体供給装置1C,1Dは液体を循環配管部34により供給部10のタンク11に戻す構成である。これに代えて、前出図7のように、開閉機能を有する弁16(開閉弁60,流量調節弁80)の下流側にドレイン配管部35を接続してそのまま液体を廃棄する構成とすることもできる。また、フィルター、温度調節器、センサーの全てを供給配管部に設けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の液体供給装置は、半導体製造に不可欠な液体を供給するための装置であり、従来の装置よりも構造の簡素化と流通させる液体の清浄度向上との両立を図ることができ、液体の供給停止後に生じる使用部における液垂れを抑制することができる。従って、シリコンウエハの生産効率向上に寄与し、また、設備投資負担を軽減できる。
【符号の説明】
【0065】
1A,1B,1C,1D 液体供給装置
5 回転盤
10 供給部
11 液体タンク
12 ポンプ
13 フィルター
14 温度調節器
15 センサー
16 開閉機能を有する弁
20 使用部
21 ノズル
30 供給配管部
31 主配管部
32 使用側配管部
33 副配管部
34 循環配管部
35 ドレイン配管部
50 アスピレータ
52 主流路
53 吸引流路
60 開閉弁
80 流量調節弁
W シリコンウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の供給部と、液体の使用部と、前記供給部から前記使用部へ液体を流通させる供給配管部とを有する液体供給装置であって、
前記供給配管部は、前記供給部側から供給される液体を流通させる主配管部と、前記主配管部に接続されるアスピレータと、前記アスピレータにより分岐され前記使用部側に液体を供給する使用側配管部及び副配管部と、前記副配管部に接続され開閉機能を有する弁とを備えており、
前記アスピレータの主流路側に前記主配管部及び前記副配管部が接続され、前記アスピレータの吸引流路側に前記使用側配管部が接続されている
ことを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
前記副配管部が、液体を前記供給部へ戻すための循環配管部である請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記副配管部が、液体を廃棄するためのドレイン配管部である請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項4】
前記開閉機能を有する弁が開閉弁である請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項5】
前記開閉機能を有する弁が流量制御弁である請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項6】
前記主配管部もしくは前記使用側配管部のいずれか一方あるいは両方にフィルターが備えられる請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項7】
前記供給配管部に温度調節器もしくはセンサーのいずれか一方あるいは両方が備えられる請求項1に記載の液体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−59735(P2013−59735A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200447(P2011−200447)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000101514)アドバンス電気工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】