説明

液晶の物性測定方法および装置

【課題】液晶の物性値を高精度に測定することが出来る方法と装置を提供する。
【解決手段】液晶の配向分布に捻れがない液晶セルを用いて、入射角の少なくとも1水準が波長の2水準以上に分かれ、かつ波長の少なくとも1水準が入射角の3水準以上に分かれるように、入射角と波長とを相違させた少なくとも計4つの条件で、前記液晶セルの光学特性を測定し、測定値とシミュレーション計算値とのフィッティングから液晶の常光屈折率nの波長依存性および異常光屈折率nの波長依存性を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶の物性測定方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)は液晶の光学異方性を利用して表示を行う表示素子であることから、その表示特性は液晶の配向状態、液晶の常光屈折率、異常光屈折率および液晶セル厚などの光学パラメータに依存する。近年、LCDの高画質化、高速応答化に伴い、これら光学パラメータの高精度測定が要求されてきている。
ここで、セル厚dはLCDのリタデーションから求めることが可能であり、このことからdの測定精度は屈折率の測定精度に依存する。一般に常光屈折率n(λ)および異常光屈折率n(λ)はアッベの屈折計を用いて測定することができる(従来技術1とする)。λは光の波長である。しかし、従来技術1では、測定中の液晶配向を一様に制御することが困難であることから、屈折率測定値に誤差が生じる可能性がある。この結果、アッベの屈折計で測定したnおよびnを用いて算出したdに誤差が生じる可能性があると考えられる。
【0003】
ここで、図1に示す液晶セル10を偏光子1と検光子9でクロスニコルに挟んだ系において、液晶5のパラメータ(物性値)が表1、表2に示す値になる液晶試料LC1,LC2の角度特性および正面入射時の静特性を計算した結果を図2に示す。同図(a)は電圧無印加時の入射角-透過率曲線図、(b)は正面入射時における電圧-透過率曲線図である。同図より、両試料はdが10%相異なっているにもかかわらず、特性がほぼ一致している。したがって、静特性の評価のみが必要であれば液晶材料の物性値の精度はそれほど重要ではなかった。
【0004】
しかし、一方、試料LC1,LC2について正面入射時における動特性を計算した結果を図3に示す。両試料に明確な違いがあり、動特性の解析および評価のためには液晶の屈折率の高精度測定が要求される。
【0005】
【表1】

【0006】
【表2】

【0007】
従来、屈折率測定法として液晶セルの振幅比Ψおよび位相差Δの波長依存性を測定し、セル間の多重反射、多重干渉を考慮した解析からn(λ),n(λ)を測定する方法(従来技術2とする)が提案されている(非特許文献1,2)。Ψ,Δは次式(1),(2)で与えられる。
Ψ=arctan|tp/ts| …(1)
Δ=arg(tp/ts)=arctan{Im(tp/ts)/Re(tp/ts)} …(2)
ここで、tp, tsは各入射角に対する液晶セルの透過行列であり、次式(3)で定義される。
【0008】
【数1】

【0009】
従来技術2の方法では、配向膜として屈折率がガラスと等しいPVA膜をガラス基板に薄く塗布した液晶セルを作成し、正面入射(垂直入射)のΨおよびΔの波長依存性を測定すると、Ψにおいて液晶セル間で生じる多重反射、多重干渉により波長依存性に強弱(干渉の波)が発生する。この測定結果と理論計算結果との数値フィッティングからn(λ),n(λ)を決定することができる。
【0010】
理論計算法にはジョーンズ行列計算法(非特許文献3,4)、4×4行列法(非特許文献5)などがある。4×4行列法は厳密なものではあるが複雑であるため計算機の負荷が大きい、計算能率が悪いという欠点がある。
【非特許文献1】N.Tanaka,M.Kimura,T.Akahane:Jpn.Appl.Phys.,41(2002)L1502
【非特許文献2】N.Tanaka,M.Kimura,T.Akahane:Jpn.Appl.Phys.,42(2003)486
【非特許文献3】R.C.Jones:J.Opt.Soc.Am.,31,488(1941)
【非特許文献4】P.Yeh:J.Opt.Soc.Am.,72,507(1982)
【非特許文献5】D.W.Berreman:J.Opt.Soc.Am.,62,502(1972)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来技術2では、測定可能な液晶材料がガラスの屈折率と大きく離れているものに限られるという問題を有している。例えば図4(a)に示すような、ガラスとの屈折率差が小さい種々の屈折率波長分散特性を有する液晶試料LC3〜5では、同図(b)に示すようにΨ測定結果に干渉による波がほとんど現れないため、高い精度での屈折率測定は困難である。
【0012】
また、干渉の波がはっきりと測定できる場合においても、振幅比Ψの波長依存性に生じる干渉の波形と位相差Δの波長依存性の計算結果が物性値の異なる液晶同士で重なって区別するのが困難であるという問題を有する。例えば図5(a)に示す相異なる屈折率およびセル厚を有する液晶試料LC6、LC7の正面入射時における振幅比Ψおよびリタデーション(位相差Δ)特性の計算結果を同図(b)、(c)に示す。両試料の特性はほぼ一致しており、これを測定結果にフィッティングしても、測定した液晶の屈折率がLC6,LC7のいずれの値であるのか判別不能であり、測定精度を上げることは極めて困難である。
【0013】
このように、従来の技術では、液晶の物性値を高精度に測定することが極めて困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者らは前記課題の解決に向けて鋭意検討し、その結果、次の知見を得た。
(A) 正面入射時だけでなく斜め入射時の光学特性(とくに、位相差Δおよび振幅比Ψの波長依存性)をフィッティング対象とすることで、例えば図5(d)に試料LC6,LC7の斜め入射時のリタデーション(位相差Δ)の波長依存性計算結果を示すように、物性値の相異なる液晶材料の光学特性計算曲線を相違させることができる。
(B) 測定に用いる液晶セルは、液晶の配向分布に捻れがないものでなければならない。液晶の配向分布に捻れがあると、測定値にきれいな干渉の波を得ることが困難となり、測定精度を上げることが困難となる。
(C) 光学特性のシミュレーション計算は、液晶セル内での多重反射および多重干渉を考慮した計算方法によるのが好適である。なかでも発明者らが確立した拡張ジョーンズ行列計算法(2×2拡張ジョーンズ行列計算法)が好適である。これの概要を以下に述べる。
【0015】
ジョーンズ行列計算法(非特許文献3,4)において、入射光ジョーンズベクトルを(Apin,Asin)とすると、媒体通過後の光(Apout,Asout)は、式(4)に示す媒体のジョーンズ行列Xiとの掛け算で求めることができる。
【0016】
【数2】

【0017】
ここで、一層の媒体のジョーンズ行列は式(5)で表される。
i=T1,2Φ1Γ1Φ1-10,1 …(5)
ここで、Ti,jはi層とj層間の透過行列、Φiはi層目の回転行列、Γiはi層目の位相差行列を表す。
一般にジョーンズ行列計算法では多重反射・多重干渉を考慮していない。しかし、式(6)のように干渉行列G1を定義し、層内で反射してから透過していく光を含めた透過光の重ね合わせの計算を行うことにより、一層の媒体の多重反射・多重干渉を考慮可能なジョーンズ行列を導出できる。
i=T1,2(E+G1+G12+…)A10,1, G1=M11,011,2, M1=Φ1Γ1Φ1-1 …(6)
ここで、Ri,jはi層とj層間の反射行列を表す。これをN層の媒体に拡張し、あらゆる層間での透過および反射の計算を行うことにより、N層の媒体の多重反射・多重干渉を考慮可能なジョーンズ行列(拡張ジョーンズ行列)を導出することができる。この拡張ジョーンズ行列計算法と4×4行列法(非特許文献5)と比較した結果、よく一致していることを確認している。
【0018】
本発明は、上記知見に基づきさらに検討を重ねてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1] 液晶の配向分布に捻れがない液晶セルを用いて、入射角の少なくとも1水準が波長の2水準以上に分かれ、かつ波長の少なくとも1水準が入射角の3水準以上に分かれるように、入射角と波長とを相違させた少なくとも計4つの条件で、前記液晶セルの光学特性を測定し、測定値とシミュレーション計算値とのフィッティングから液晶の常光屈折率nの波長依存性および異常光屈折率nの波長依存性を決定することを特徴とする液晶の物性測定方法。
[2] 液晶の屈折率に加えて、液晶セルのセル厚dまたはプレチルト角θまたはこれら両方を決定することを特徴とする前項1に記載の液晶の物性測定方法。
[3] 前記液晶セルが、ガラスおよび液晶、または、ガラス、配向膜および液晶、または、ガラス、配向膜、透明電極および液晶から構成されたものであることを特徴とする前項1または2に記載の液晶の物性測定方法。
[4] 前記液晶セルの液晶の配向が、平行配向、垂直配向、スプレイ配向、ベンド配向、ハイブリッド配向のいずれかである前項1〜3のいずれかに記載の液晶の物性測定方法。
[5] 前記液晶セルが、ガラス、配向膜および液晶、または、ガラス、配向膜、透明電極および液晶から構成されたものであり、前記配向膜の屈折率が1.55以上であることを特徴とする前項3または4に記載の液晶の物性測定方法。
[6] 測定する光学特性は液晶の配向面にほぼ平行な面内における光学特性であることを特徴とする前項1〜5のいずれかに記載の液晶の物性測定方法。
[7] 測定する光学特性が、次式で与えられる振幅比Ψまたは位相差Δまたはこれら両方であることを特徴とする前項1〜6のいずれかに記載の液晶の物性測定方法。
Ψ=arctan|tp/ts| …(1)
Δ=arg(tp/ts)=arctan{Im(tp/ts)/Re(tp/ts)} …(2)
ここで、tp, tsは各入射角に対する液晶セルの透過行列であり、次式で定義される。
【0019】
【数3】

【0020】
[8]前記シミュレーション計算値は、液晶セル内での多重反射および多重干渉を考慮した計算方法によるものであることを特徴とする前項1〜7のいずれかに記載の液晶の物性測定方法。
[9]前項1〜8のいずれかに記載の液晶の物性測定方法を実行する機能を有することを特徴とする液晶の物性測定装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、液晶の物性、特に常光屈折率、異常光屈折率の各々の波長依存性、あるいはさらにセル厚、プレチルト角を高精度に測定できるようになり、LCDの高画質化、高速応答化を促進できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
前述のように、本発明に用いる液晶セルは液晶配向分布に捻れのないものとする必要がある(本発明項1)。
ここで「捻れのない」とは、理想的には設計配向面からの実際の配向の捻れ角が0°であることであるが、製造の過程で前記捻れ角が±3°程度以内でばらついても本発明の効果は得られるので、本発明では、前記捻れ角が±3°以内である液晶セルも「捻れのない」ものに含むものとする。
【0023】
この捻れのない配向としては、平行配向、垂直配向、スプレイ配向、ベンド配向、ハイブリッド配向のうちいずれか1つが好ましい(本発明項4)。
そして、1つの液晶セルを測定するに際し、波長を最少でも2水準とり、それらのうち少なくともいずれか1水準において入射角を最少でも3水準とって測定を行う必要がある(本発明項1)。
【0024】
これにより、光学特性の測定値とシミュレーション計算値とのフィッティングから液晶の常光屈折率nの波長依存性n(λ)および異常光屈折率nの波長依存性n(λ)を高い精度で決定することができるようになる。
液晶セルの液晶配向分布に捻れがある、または、波長が1水準のみである、または入射角が2水準以下である場合は、フィッティングによってn(λ)、n(λ)を決定することが不可能となる。
【0025】
より良好なフィッティングを得るためには、入射角の複数の水準のうちの1水準は、正面入射(垂直入射)の入射角(=0°)とするのが好ましい。残りの入射角水準は斜め入射の入射角(≠0°)とされる。
また、前記フィッティングから、n(λ)、n(λ)のほか、液晶セルのセル厚d、プレチルト角θのいずれか一方または両方を決定することもできる(本発明項2)。
【0026】
測定する光学特性として好ましいのは、前述の振幅比Ψ、位相差Δのいずれか一方または両方である(本発明項7)。
また、シミュレーション計算値を求めるための計算方法として好ましいのは、液晶セル内での多重反射および多重干渉を考慮した計算方法である(本発明項8)。かかる計算方法の具体的なものには、4×4行列法(非特許文献5)および発明者らが確立した前述の拡張ジョーンズ行列計算法が挙げられる。しかしながら4×4行列法は前述のように複雑で計算機負荷が大きい、計算能率が悪いという欠点があり、これに比べ拡張ジョーンズ行列計算法は、計算精度面では同等であって計算機負荷面、計算能率面では格段に有利であるので、より好ましく用いうる。
【0027】
また、測定に用いる液晶セルは、図1に例示した形態の、ガラス2,8、配向膜4,6、透明電極3,7および液晶5から構成されたものに限られるわけではない。例えば、静特性のみ測定する場合は、図1の構成から透明電極3,7を取り去った構成になる液晶セルを用いてもよい。あるいはさらに、配向膜を使わなくても所望の液晶配向分布を実現しうる場合は、図1の構成から透明電極3,7および配向膜4,6を取り去った構成になる液晶セルを用いてもよい(本発明項3)。
【0028】
また、本発明では、測定精度をより高めるために、測定対象の光学特性は、液晶の配向面にほぼ平行な(液晶の配向面との交差角が±10°以内の)面内におけるものであることが好ましい(本発明項6)。そのようにした測定系の模式図を図10に示す。図10において11は光源、12は検出器、13は液晶5の配向面、14は平行配向セルである。なお、平行配向セル14に代えて、垂直配向セル、スプレイ配向セル、ベンド配向セル、ハイブリッド配向セルのいずれかとしてもよい。測定対象の光学特性を液晶5の配向面13にほぼ平行なものとするために、測定系は、配向面13と測定用光線(光源11から検出器12へ向かう光線)とがほぼ平行になるようにセッティングされる。これにより、光学特性(とくにΨ、Δ)の測定結果において、より判然とした干渉の波形を得ることができるため、より高精度の測定が可能となる。
【0029】
また、一般に、液晶セルは配向膜を用いて構成されるが、この配向膜の屈折率が干渉の波をはっきりと生じさせるために重要な役割を演じる。すなわち、本発明を、配向膜付き液晶セル(ガラス、配向膜および液晶、または、ガラス、配向膜、透明電極および液晶から構成された液晶セル)に適用するときには、配向膜の屈折率が1.55以上であることが好ましい(本発明項5)。
【0030】
例えば図8(a)に示すように屈折率がガラスに近い(1.55未満である)配向膜Aを用いた場合、同図(b)に示すように光学特性例えばΨの測定結果に干渉の波形が不明瞭に現れてしまいやすく、フィッティングによる液晶屈折率測定精度向上が難しい。これに対し、例えば図9(b)に示すように屈折率が大きい(1.55以上である)配向膜Bを用いた場合、同図(b)に示すように光学特性例えばΨの測定結果に干渉の波形が明瞭に現れ、フィッティングによる液晶屈折率の高精度測定が可能である。
【0031】
また、本発明の測定方法の実施にあたっては、前項1〜8のいずれかに記載の液晶の測定方法を実行する機能を有する液晶の物性測定装置(本発明項9)を用いると、高能率に測定することができて好ましい。かかる測定装置は、後述の分光エリプソメータ等の光学特性測定器と、前記フィッティング演算機能を組込んだパソコン等の計算機とを、データ交信可能に組み合わせて構成することができる。
【実施例】
【0032】
図1に示した構造の液晶セルに本発明を適用した実施例について述べる。光学特性の測定(実測)は分光エリプソメータM-2000(J.A.Woollam Co.,Inc)を用いて行った。屈折率測定系は、図10に示した形態にセッティングした。
配向膜としてSE7992(日産化学工業製)を用いた。まず、前述の拡張ジョーンズ行列計算法を用いてガラス(ガラス基板)、配向膜の光学特性を解析し、光学定数として厚さ、屈折率および吸収係数を決定した。決定した配向膜、ガラスの屈折率は、図9(a)に示したものであり、図示のとおり配向膜の屈折率は1.55以上である。
【0033】
次に、液晶材料としてTD1016XX(チッソ製)を用いてホモジニアス配向(捻れのない配向)のうち平行配向の液晶セルを作製し、正面入射および斜め入射時の液晶セルの振幅比Ψおよび位相差Δの波長依存性を測定した。入射角は3水準(0°、40°、−40°)とし、波長の水準数は、入射角の1水準あたり100水準超と大きくとった。セル厚d、異常光屈折率、常光屈折率の波長依存性n(λ)、n(λ)およびプレチルト角θをフィッティング変数として、Ψ、Δの測定値と計算値とのフィッティングを行った。Ψ、Δの測定値と計算値の比較図を図6(a),(b)に示す。同図に示されるとおり、採用した入射角(図中にδと記す)の全水準において、Ψ、Δの測定値と計算値とはよく一致した。このフィッティングから決定したn(λ)、n(λ)を図6(c)に示す。同図には同時に決定したd、θの値も付記した。
【0034】
また、本発明に係る測定方法の妥当性(信頼性)を確認するために、同上の液晶材料を用い同上のセル構造においてセル厚dを様々に変更してなる液晶セルを作製し、同上の仕方でフィッティングを行った。その結果決定したdとn、n(450nm,550nm,550nmの波長における値を代表として例示)との関係を図7に示す。図示のように、n、noはセル厚によらず一定であるという結果(本来あるべき実態と整合する結果)が得られ、本発明に係る測定方法の信頼性が確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に用いられる液晶セルの構成の1例を示す模式図である。
【図2】試料LC1,LC2の静特性計算結果を示す図であり、(a)は電圧無印加時の入射角-透過率曲線図、(b)は正面入射時における電圧-透過率曲線図である。
【図3】試料LC1,LC2の動特性計算結果を示す透過率応答曲線図である。
【図4】(a)は試料LC3〜5の屈折率波長分散特性、(b)は同試料の従来技術2による振幅比Ψ測定結果を示す図である。
【図5】(a)は試料LC6,LC7の屈折率波長分散特性、(b)、(c)は同試料の正面入射時の振幅比Ψ、リタデーション(位相差Δ)の計算結果、(d)は同試料の斜め入射時のリタデーション(位相差Δ)の計算結果を示す図である。
【図6】本発明によるフィッティング結果の1例を示す図であり、(a)はΨ、(b)はΔのそれぞれ波長依存性の計算値および実測値を示す計算-実測比較図、(c)はこれらのフィッティングから決定された液晶の屈折率n,nの波長分散特性図である(なお、ここで同時にd、θも図中に示す値が決定された)。
【図7】本発明により同じ液晶材料の様々なセル厚における屈折率を測定した結果の1例を示す図である。
【図8】屈折率の低い(1.55未満)配向膜付き液晶セルを本発明により測定した結果の1例を示す図であり、(a)は液晶およびガラス、配向膜の波長依存性(既知)を示す物性-波長関係特性図、(b)はΨの波長依存性測定結果を示すΨ-波長関係図である。
【図9】屈折率の高い(1.55以上)配向膜付き液晶セルを本発明により測定した結果の1例を示す図であり、(a)は液晶およびガラス、配向膜の波長依存性(既知)を示す物性-波長関係特性図、(b)はΨの波長依存性測定結果を示すΨ-波長関係図である。
【図10】平行配向セルを用いた屈折率測定系の1例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0036】
1 偏光子
2 基板(ガラス)
3 透明電極(ITO)
4 配向膜
5 液晶
6 配向膜
7 透明電極(ITO)
8 基板(ガラス)
9 検光子
10 液晶セル(例:ECBセル)
11 光源
12 検出器
13 配向面
14 平行配向セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶の配向分布に捻れがない液晶セルを用いて、入射角の少なくとも1水準が波長の2水準以上に分かれ、かつ波長の少なくとも1水準が入射角の3水準以上に分かれるように、入射角と波長とを相違させた少なくとも計4つの条件で、前記液晶セルの光学特性を測定し、測定値とシミュレーション計算値とのフィッティングから液晶の常光屈折率nの波長依存性および異常光屈折率nの波長依存性を決定することを特徴とする液晶の物性測定方法。
【請求項2】
液晶の屈折率に加えて、液晶セルのセル厚dまたはプレチルト角θまたはこれら両方を決定することを特徴とする請求項1に記載の液晶の物性測定方法。
【請求項3】
前記液晶セルが、ガラスおよび液晶、または、ガラス、配向膜および液晶、または、ガラス、配向膜、透明電極および液晶から構成されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶の物性測定方法。
【請求項4】
前記液晶セルの液晶の配向が、平行配向、垂直配向、スプレイ配向、ベンド配向、ハイブリッド配向のいずれかである請求項1〜3のいずれかに記載の液晶の物性測定方法。
【請求項5】
前記液晶セルが、ガラス、配向膜および液晶、または、ガラス、配向膜、透明電極および液晶から構成されたものであり、前記配向膜の屈折率が1.55以上であることを特徴とする請求項3または4に記載の液晶の物性測定方法。
【請求項6】
測定する光学特性は液晶の配向面にほぼ平行な面内における光学特性であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液晶の物性測定方法。
【請求項7】
測定する光学特性が、次式で与えられる振幅比Ψまたは位相差Δまたはこれら両方であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液晶の物性測定方法。
Ψ=arctan|tp/ts| …(1)
Δ=arg(tp/ts)=arctan{Im(tp/ts)/Re(tp/ts)} …(2)
ここで、tp, tsは各入射角に対する液晶セルの透過行列であり、次式で定義される。
【数1】

【請求項8】
前記シミュレーション計算値は、液晶セル内での多重反射および多重干渉を考慮した計算方法によるものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液晶の物性測定方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の液晶の物性測定方法を実行する機能を有することを特徴とする液晶の物性測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−63465(P2009−63465A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232188(P2007−232188)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】