説明

液晶表示装置及びその製造方法

【課題】半導体素子側基板とカラーフィルタ側基板の熱膨張差に伴う製造途中や使用環境における当該液晶表示装置の不良を防止することが可能な技術を提供することである。
【解決手段】
液晶層を介して対向配置される第1基板及び第2基板を有し、前記第1基板及び第2基板が樹脂基材で形成される液晶表示装置であって、前記第1基板の液晶層側に形成され、マトリクス状に画素が形成される液晶駆動層を当当該第1基板に固定する粘着層と、前記画素に対応する遮光膜及び色フィルタ層と前記第2基板との間に形成され、該第2基板よりも熱膨張係数が小さい薄膜材料からなる下地層とを備えた液晶表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置及びその製造方法に係わり、液晶層を介して対向配置される一対の樹脂基板上に画素が形成される液晶表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液晶表示装置は、画素電極等が形成される第1基板と、この第1基板に対向して配置される第2基板と、第1基板と第2基板とで挟持される液晶層とで構成されている。第1基板には、例えばx方向に延在しy方向に並設された複数のゲート線とy方向に延在しx方向に並設された複数のドレイン線とで囲まれた領域に、少なくとも、ゲート線からの走査信号によってオンされる薄膜トランジスタと、このオンされた薄膜トランジスタを介してドレイン線からの映像信号が供給される画素電極を備えて画素を構成している。これにより、各画素を独立に制御でき、これら画素によって画像を表示する構成となっている。
【0003】
一方、第2基板にはブラックマトリクスと各画素に対応したR(赤)、G(緑)、B(青)のカラーフィルタが形成されており、カラーフィルタを透過した透過光量に応じたカラー表示を行う構成となっている。
【0004】
このような構成からなる液晶表示装置では、第1及び第2基板には耐熱性に優れるガラス基板が一般的に使用されていた。しかしながら、近年、薄膜トランジスタの形成工程やカラーフィルタの形成工程における低温化が可能となり、ガラス基板に比較すると軽量であり柔軟性を有する樹脂製基板(プラスチック基板、樹脂基板)が用いられるようになっている。
【0005】
樹脂基板を用いた液晶表示装置として、例えば特許文献1に開示がなされている。特許文献1に記載の液晶表示装置は、ガラス基板に代えてプラスチック基板を用いる構成となっており、ガス放出遮断と吸湿抑制を目的に,プラスチック基板の少なくとも電極側片面にバリア層として無機薄膜層を形成する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平8-248401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
薄膜トランジスタやカラーフィルタの形成工程における低温化技術と並んで、従来と同様の工程で、画素駆動素子である薄膜トランジスタ(半導体素子)や画素電極が形成される半導体素子層及びカラーフィルタ層をガラス基板上に形成した後に、該ガラス基板を除去し樹脂基板上に半導体素子層及びカラーフィルタ層をそれぞれ粘着剤を用いて接着することにより、樹脂基板上に薄膜トランジスタ等が形成される半導体素子側基板(以下、TFT側基板と記す)と、樹脂基板上にカラーフィルタ層が形成されるカラーフィルタ側基板(以下、CF側基板と記す)を形成する技術がある。
【0007】
また、ガラス基板上に画素駆動素子である半導体素子を形成する際に下地層として窒化珪素層や酸化珪素層もしくはこれらの混合層が下地層として形成される。この下地層はガラス基板から樹脂基板上に半導体素子層を転写(接着)する際にも下地層は除去することができないため、TFT側基板とCF側基板とを封止材にて封着する際には、有機材的なCF側基板と無機材的なTFT側基板とを封止材で固定することとなる。このために液晶表示装置がその使用条件により加熱されると、有機材的なCF側基板と無機材的なTFT側基板との熱膨張の差からTFT側基板とCF側基板の両方もしくは一方に破損が発生してしまうという問題がある。
【0008】
特許文献1に記載の技術は、無機薄膜層によるバリア性を目的としているために、無機薄膜の熱膨張性や強度に関しては言及されていない。さらには、特許文献1に記載の技術は、液晶層の厚みである両基板間の間隔を設定しているスペーサが無い領域では、プラスチック基板の柔軟性のために間隔が狭くなってしまい表示ムラを生じてしまうという問題がある。
【0009】
本願発明は、このような問題を解決すべくなされたものであり、本願発明の目的は、TFT側基板とCF側基板との熱膨張差に伴う製造途中や使用環境における当該液晶表示装置の不良を防止することが可能な技術を提供することである。
【0010】
本願発明の他の目的は、当該液晶表示装置のフレキシブル性を向上させることが可能な技術を提供することである。
【0011】
本願発明のその他の目的は、耐衝撃性や表示画面のデザイン選択性を向上させた液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決すべく、液晶層を介して対向配置される第1基板及び第2基板を有し、前記第1基板及び第2基板が樹脂基材で形成される液晶表示装置であって、前記第1基板の液晶層側に形成され、マトリクス状に画素が形成される液晶駆動層を当当該第1基板に固定する粘着層と、前記画素に対応する遮光膜及び色フィルタ層と前記第2基板との間に形成され、該第2基板よりも熱膨張係数が小さい薄膜材料からなる下地層とを備えた液晶表示装置である。
【0013】
前記課題を解決すべく、液晶層を介して対向配置される第1基板及び第2基板を有し、前記第1基板及び第2基板が樹脂基材で形成される液晶表示装置であって、前記第1基板の液晶層側に形成され、マトリクス状に画素が形成される液晶駆動層を当該第1基板に固定する第1の粘着層と、前記第2基板の液晶層側に形成され、前記画素に対応する遮光膜及び色フィルタ層が形成されるカラーフィルタ層を当該第2基板に固定する第2の粘着層と、前記カラーフィルタ層の液晶層側に形成され、前記第2基板よりも熱膨張係数が小さい薄膜層からなる下地層とを備えた液晶表示装置である。
【0014】
前記課題を解決すべく、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の液晶表示装置において、前記下地層は熱膨張係数が3〜15ppm/℃の薄膜層からなるものである。
【0015】
前記課題を解決すべく、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内のいずれかに記載の液晶表示装置において、前記第1基板と前記第2基板とを固定するシール材と前記下地層とが重畳して形成され、少なくとも前記シール材の一部が前記下地層と環状に密接されるものである。
【0016】
前記課題を解決すべく、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の内のいずれかに記載の液晶表示装置において、前記下地層は耐フッ酸性を有するものである。
【0017】
前記課題を解決すべく、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の内のいずれかに記載の液晶表示装置において、前記下地層は無機材料からなる薄膜層である。
【0018】
前記課題を解決すべく、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の液晶表示装置において、前記下地層は窒化物からなる薄膜層である。
【0019】
前記課題を解決すべく、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の内のいずれかに記載の液晶表示装置において、前記下地層は酸素を含む材料からなる薄膜層である。
【0020】
前記課題を解決すべく、請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8の内のいずれかに記載の液晶表示装置において、前記下地層は膜厚300nm以上の薄膜層からなるものである。
【0021】
前記課題を解決すべく、液晶層を介して対向配置される第1基板及び第2基板を有し、前記第1基板及び第2基板が樹脂基材で形成される液晶表示装置の製造方法であって、前記樹脂基材よりも耐熱性を有する第1基材上に、画素に対応する遮光膜及び色フィルタ層並びに保護膜を形成する工程と、前記第1基材の上面側に、前記遮光膜及び色フィルタ層並びに保護膜を支持すると共に保護する保護基材を形成する工程と、前記第1基材を化学的及び/又は機械的に除去する工程と、前記第1基材が除去された前記遮光膜及び色フィルタ層並びに保護膜を、粘着層を介して前記第1基板に固定する工程と、前記第1基板に固定された前記遮光膜及び色フィルタ層並びに保護膜の上層から前記保護基材を除去する工程とを備える液晶表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
本願発明の液晶表示装置では、半導体素子側基板とカラーフィルタ側基板との熱膨張差に伴う製造途中や使用環境における当該液晶表示装置の不良を防止することができる。
【0023】
その結果、当該液晶表示装置のフレキシブル性を向上させることでき、耐衝撃性や表示画面のデザイン選択性を向上させた液晶表示装置を提供することができる。
【0024】
本発明のその他の効果については、明細書全体の記載から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明が適用された実施形態の例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明は省略する。
【0026】
〈実施形態1〉
〈全体の構成〉
図1は本発明の実施形態1の液晶表示装置の概略構成を説明するための平面図である。
【0027】
図1に示すように、実施形態1の液晶表示装置は画素電極等が形成される半導体素子側基板(TFT側基板、第1基板)pl1と、後述するカラーフィルタやブラックマトリクス(遮光膜)が形成され、TFT側基板pl1に対向して配置されるカラーフィルタ側基板(CF側基板、第2基板)pl2と、該TFT側基板pl1とCF側基板pl2とで挟持される図示しない液晶層とで構成される液晶表示パネルpnlを有し、この液晶表示パネルpnlと光源となる図示しないバックライトユニットとを組み合わせることにより、液晶表示装置ができる。TFT側基板pl1とCF側基板pl2との固定及び2枚の基板pl1、pl2で挟持される液晶の封止は、CF側基板pl2の周辺部に環状に塗布された液晶セルシール(シール材)slで固定され、液晶も封止される構成となっている。なお、以下の説明では、液晶表示パネルpnlの説明においても、液晶表示装置と記す。
【0028】
TFT側基板pl1及びCF側基板pl2としては、絶縁性を有する周知のプラスチック基板(樹脂基板)で形成されている。特に、実施形態1の液晶表示装置では、後述するように、ガラス基板上に形成した薄膜トランジスタtrや画素電極px等のTFT層をTFT側基板の樹脂基材上に接着する構成となっている。従って、樹脂製の基板上に直接TFT層を形成する場合に比較してプロセス温度を高くでき、後述するゲート絶縁膜を緻密化できるので、薄膜トランジスタtrの信頼性を向上することができる。また、プラスチック基板(樹脂基材)を用いているので、軽量で、耐衝撃性に優れた液晶表示装置を提供できる。
【0029】
また、実施形態1の液晶表示装置では、液晶が封入された領域の内で表示画素(以下、画素と略記する)の形成される領域が表示領域arとなる。従って、液晶が封入されている領域内であっても、画素が形成されておらず表示に係わらない領域は表示領域arとはならない。
【0030】
また、図1に示す実施形態1の液晶表示装置では、TFT側基板pl1の液晶側の面であって表示領域ar内には、図中x方向に延在しy方向に並設されるゲート線glが形成されている。また、図中y方向に延在しx方向に並設されるドレイン線dlが形成されている。
【0031】
ドレイン線dlとゲート線glとで囲まれる矩形状の領域は画素が形成される領域を構成し、これにより、各画素は表示領域ar内においてマトリックス状に配置される構成となる。各画素は、例えば図1中丸印Aの部分において、その拡大図A’に示すように、ゲート線glからの走査信号によってオンされる薄膜トランジスタtrと、このオンされた薄膜トランジスタtrを介してドレイン線dlからの映像信号が供給される画素電極pxと、コモン線clに接続され映像信号の電位に対して基準となる電位を有する基準信号が供給される共通電極ctとを備えている。なお、拡大図A’に示す共通電極ctの構成では、各画素毎に独立して形成される共通電極ctにコモン線clを介して基準信号を入力する構成としたが、これに限定されることはなく、後述するようにx軸方向に隣接配置される画素の共通電極ctが直接に接続されるように共通電極ctを形成し、x軸方向の左右(第1基板の端部)の一端から、又は両側からコモン線clを介して基準信号を入力する構成でもよい。
【0032】
また、実施形態1では、各ドレイン線dl及び各ゲート線glは例えばその下端において液晶セルシールslを越えて延在され、図1中の下端部の端子領域trmでフレキシブルプリント基板fpcが接続される構成となっている。ここで、実施形態1においては、図示しない駆動回路基板に液晶表示装置用のドライバIC(走査信号駆動回路や映像信号駆動回路等からなる)が搭載される構成となっており、フレキシブルプリント基板fpcを介してドライバICの出力が各ドレイン線dl及び各ゲート線glに出力される構成となっている。
【0033】
また、本実施形態1の液晶表示装置においては、液晶層lcを介して対向配置されるTFT側基板pl1とCF側基板pl2とが重畳する領域の外側の領域に端子領域trmが形成される構成となっている。
【0034】
なお、TFT側基板pl1上すなわちTFT下地層uc1の上層にドライバICを搭載し、液晶セルシールslを越えて延在されるドレイン線dl及び各ゲート線glをドライバICの出力端子に接続する構成でもよい。この場合には、端子領域trmに接続されるフレキシブルプリント基板fpcを介してドライバIC用の駆動信号を入力する。また、走査信号駆動回路及び映像信号駆動回路からなるドライバICをそれぞれ半導体チップからなる半導体装置とし、第1基板面に搭載させて構成可能である。しかし、例えばテープキャリア方式やCOF(Chip On Film)方式で形成した半導体装置の一辺をTFT側基板に接続させるようにしてもよい。また、TFT側基板上に回路を一体的に作り込んでもよい。
【0035】
〈画素の構成〉
図2は実施形態1の液晶表示装置における画素の概略構成を説明するための平面図であり、図3は図2のB−B’線での断面図である。また、以下に示す薄膜は公知のフォトリソグラフィ技術により形成可能であるので、形成方法の詳細な説明は省略する。また、説明を簡単にするために、TFT側基板pl1及びCF側基板pl2に形成される配向膜及び偏光板等は省略している。さらには、図2においてはCF側基板pl2に形成されるブラックマトリクスbm及び色フィルタ層if等は省略している。
【0036】
図2に示すように、TFT側基板pl1の液晶lc側の面(表面、上面)には、ゲート線gl及びドレイン線dlが比較的大きな距離を有して平行に形成されている。
【0037】
ゲート線glとドレイン線dlの間の領域には、たとえばITO(Indium-Tin-Oxide)等の透明導電材料からなる共通電極ctが形成されている。該透明電極ctは、そのコモン線cl側の辺部において該コモン線clに重畳されて形成され、コンタクトホールch2を介してコモン線clと電気的に接続されている。なお、透明導電膜としてITOを用いた場合について説明するが、ITOに限定されることはなく、公知のZnO系透明導電膜を用いてもよい。
【0038】
そして、図3に示すように、TFT側基板pl1の表面(液晶lc側の面)には、図示しないガラス基板上で形成した図中のTFT下地層uc1より上層のTFT層と、樹脂製のTFT側樹脂基材sub1とを接着する粘着層ad1が形成されている。粘着層ad1の上層には、後述するように、膜厚300nmのTFT下地層uc1が形成されており、該TFT下地層uc1はTFT側樹脂基材sub1や粘着層ad1から薄膜トランジスタtrへのNa(ナトリウム)やK(カリウム)などのイオンの混入をブロックする効果も有している。TFT下地層uc1としては、例えばTFT側樹脂基材sub1側から順に窒化シリコン等からなる薄膜層と酸化シリコン等からなる薄膜層を積層した構造の薄膜を用いることができるが、これに限定されるものではない。なお、TFT下地層uc1の膜厚は300nmに限定されることはなく、300nm以上でもよい。
【0039】
このTFT下地層uc1の上層には、例えばアモルファスシリコンからなる非晶質の半導体層asが形成されている。この半導体層asは薄膜トランジスタtrの半導体層となるものである。なお、この半導体層asは、たとえば、薄膜トランジスタtrの形成領域の他に、ドレイン線dlの下層、該ドレイン線dlと薄膜トランジスタtrのドレイン電極dtとを電気的に接続する接続部の下層にも形成され(半導体層asと区別するため、以下、アモルファスシリコン層と記す)、たとえばドレイン線dlにおいて段差を少なく構成できるようにしている。
【0040】
半導体層asの上層には、当該半導体層asを覆うようにして絶縁膜giが形成されている。この絶縁膜giは、薄膜トランジスタtrの形成領域において該薄膜トランジスタtrのゲート絶縁膜として機能するもので、それに応じて膜厚等が設定されるようになっている。また、絶縁膜giの上面であって、半導体層asと重畳する個所においてゲート電極gtが形成され、このゲート電極gtの上層には層間絶縁膜in1が形成される構成となっている。なお、層間絶縁膜in1としては、例えば酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)等が好適である。
【0041】
また、図2中y方向に伸張してドレイン線dlが形成され、このドレイン線dlはその一部において薄膜トランジスタtr側に延在する延在部を有し、この延在部が絶縁膜gi及び層間絶縁膜in1に形成されたコンタクトホールを介して半導体層asに形成されるドレイン領域に接続される。また、ドレイン線dlは薄膜トランジスタtrの近傍の領域において、絶縁膜gi及びアモルファスシリコン層を介してゲート線glと交差する構成となっている。
【0042】
ドレイン線dlおよびドレイン電極dtの形成の際に共に形成されるソース電極stは、半導体層as上にてドレイン電極dtと対向する位置に形成されており、絶縁膜gi及び層間絶縁膜in1に形成されたコンタクトホールを介して半導体層asに形成されるソース領域に接続される構成となっている。また、ソース電極stは半導体層as上から画素領域側に若干延在された延在部を有して形成されており、この延在部は後に説明する画素電極pxと接続されるパッド部pdに至るようにして構成されている。
【0043】
ドレイン電極dt及びソース電極stの上層すなわち薄膜トランジスタtrの上層には、当該薄膜トランジスタtrを覆う無機化合物からなる無機絶縁膜pas1と、平坦化膜としての機能を有する有機絶縁膜pasoからなる保護膜が形成されている。無機絶縁膜pas1は液晶lcや有機絶縁膜pasoのアルカリ成分から薄膜トランジスタtrを保護する役割を持っており、例えば無機質材料である窒化シリコン(SiN)膜等からなり、薄膜トランジスタtrの上層の全面に当該無機絶縁膜pas1が形成されている。有機絶縁膜pasoは無機絶縁膜pas1の上層(基板の液晶lc側)に公知のスピンコート法等により形成され、例えば感光性のポリイミドやアクリル系樹脂などの有機物材料からなり、薄膜トランジスタtrをはじめとしたゲート線gl、ドレイン線dl、コモン線cl等の形成に伴うTFT側基板pl1上面の凹凸を平坦化する。なお、実施形態1の液晶表示装置のTFT側基板pl1では無機絶縁膜pas1と有機絶縁膜pasoとで保護膜を構成している。
【0044】
この有機絶縁膜pasoの上層には共通電極ctが形成され、その上層に容量絶縁膜pas2が形成される構成となっている。容量絶縁膜pas2、有機絶縁膜paso、無機絶縁膜pas1にはパッド部pdに至るコンタクトホールch1が形成されており、容量絶縁膜pas2の上層に形成される画素電極pxとソース電極stとが電気的に接続される構成となっている。
【0045】
このように、実施形態1の液晶表示装置では、共通電極ctの上層に形成した容量絶縁膜pas2を介して画素電極pxが配置される構成となっている。このように形成される液晶表示装置(横電界方式の液晶表示装置)では、保持容量cst1を構成するための一対の電極を画素電極pxと共通電極ctとで兼ねる構成とすることが一般的に行われている。すなわち、画素電極pxと共通電極ctとの間に形成する層間絶縁膜として容量絶縁膜pas2を用いることにより、画素電極pxと共通電極ctとの絶縁を実現しつつ画素電極pxと共通電極ctとで画素電荷の保持に必要な保持容量を実現する構成となっている。
【0046】
一方、樹脂製のカラーフィルタ側樹脂基材sub2の表面(液晶lc側の面)には、膜厚300nmのカラーフィルタ下地層uc2が形成されており、後述するように、カラーフィルタ下地層uc2としては、例えば窒化シリコン薄膜を用いることができるが、これに限定されるものではない。該カラーフィルタ下地層uc2の上層(図中の下側)には、例えば各画素の外周に沿ってブラックマトリクスbmが形成されている。なお、カラーフィルタ下地層uc2の膜厚は300nmに限定されることはなく、膜厚が300nm以上でもよい。
【0047】
ブラックマトリクスbmの上層(液晶lc側の面、図中の下面側)には、各画素に対応したRGBのいずれかの色フィルタ層ifが形成されている。このとき、実施形態1の液晶表示装置では、各画素毎に形成される色フィルタ層ifの外周部分がブラックマトリクスbmに重畳されるように形成される。すなわち、隣接する画素の色フィルタ層ifでブラックマトリクスbmを覆うようにして、色フィルタ層ifが形成されている。このような構成とすることにより、ブラックマトリクスbmと色フィルタ層ifとの間に隙間が生じ、光漏れが発生することを防止する構成となっている。また、実施形態1では色フィルタ層ifは画素毎に形成する構成としているが、これに限定されることはなく、赤、緑、青色のストライプ状パターン配列とし、例えば各ストライプがドレイン線dlと平行となるような構成でもよい。
【0048】
この色フィルタ層ifの上層にはオーバーコート層ocが形成されており、例えばアクリル樹脂を塗布してオーバーコート層ocを形成する。
【0049】
なお、図2及び図3に示す実施形態1の液晶表示装置では、説明を簡単にするために画素電極pxとなる透明導電膜で2本の線状電極を画素電極pxとして形成した場合について説明したが、これに限定されることはなく、透明導電膜で2本以上の線状電極を画素領域内に形成し画素電極pxとしてもよい。また、線状電極の形成方向もドレイン線dlの形成方向に限定されることはなく、ゲート線glの形成方向やドレイン線dlの形成方向から45°及び−45°傾けた方向等でもよい。さらには、面状電極を薄膜トランジスタtrのソース電極stに接続し、線状電極をコモン線clに接続した構成でもよい。
【0050】
〈全体の詳細構成〉
図4は本願発明の実施形態1の液晶表示装置の詳細構成を説明するための断面図であり、図5は本願発明の実施形態1のカラーフィルタ側基板の平面図である。特に、図5に示す平面図は液晶側の面すなわちTFT側基板pl1と対向する側の平面図である。ただし、以下の説明では、前述する画素の項で説明したTFT側樹脂基材sub1のTFT下地層uc1よりも上層に形成される半導体層as、絶縁膜gi、層間絶縁膜in1、ゲート電極gt、ドレイン電極dt、ソース電極dt、無機絶縁膜pas1、有機絶縁膜paso、共通電極ct、容量絶縁膜pas2、画素電極px、ドレイン線dl、ゲート線gl、並びに図示しない配向膜等はTFT層(液晶駆動層)tftとして略記する。また、カラーフィルタ下地層uc2よりも上層(図中の下側)に形成されるブラックマトリクスbm、色フィルタ層if、オーバーコート層oc、並びに図示しない配向膜等はカラーフィルタ層cfとして略記する。
【0051】
図4に示す本願発明の実施形態1の液晶表示装置は、カラーフィルタ側樹脂基材sub2上にカラーフィルタ層cfを形成したCF側基板pl2と、図示しないガラス基材上に形成したTFT層tftをTFT側樹脂基材sub1上に転写(接着)したTFT側基板pl1とを液晶セルシール(封止シール)slにより接合して液晶セル(液晶表示装置)が形成される。
【0052】
図4に示す実施形態1の液晶表示装置は、前述する画素の構成の項で説明したように、TFT側樹脂基材sub1の表面すなわち液晶lc側の面には粘着層ad1が形成され、該粘着層ad1の上層にTFT下地層uc1が形成され、該TFT下地層uc1の上層にはTFT層tftが形成される構成となっている。また、TFT下地層uc1の上層には液晶セルシールslが直接形成される、すなわち液晶セルシールslがTFT下地層uc1に直接接触する構成となっている。さらには、TFT下地層uc1の上層には端子領域が形成されており、この端子領域trmには液晶セルシールslを越えて延在されるTFT層tftのドレイン線dl及び各ゲート線gl等が接続されている。
【0053】
また、カラーフィルタ側樹脂基材sub2の表面すなわち液晶lc側の面にはカラーフィルタ下地層uc2が形成されており、このカラーフィルタ下地層uc2の上層にブラックマトリクスbm及び色フィルタ層if並びにオーバーコート層oc等からなるカラーフィルタ層cfが形成される構成となっている。また、実施形態1では、カラーフィルタ下地層uc2の上層(図中の下側)に液晶セルシールslが形成されている。該液晶セルシールslの少なくとも一部が環状にカラーフィルタ下地層uc2と直接接触される構成となっている。すなわち、第2基板の上面に形成され液晶lcと接触し配向させる図示しない配向膜はカラーフィルタ層cfと比較して薄いために配向膜の上層に液晶セルシールslを形成することも可能であるが、実施形態1では少なくとも液晶セルシールslの一部が環状にカラーフィルタ下地層uc2に直接接触する構成となっている。このような構成とすることにより、CF側基板pl2の基材であるカラーフィルタ側樹脂基材sub2の収縮や伸長に伴うカラーフィルタ層cfへの影響を最小限に抑える構成としている。
【0054】
また、実施形態1では、カラーフィルタ側樹脂基材sub2上にカラーフィルタ層cfを形成する前にTFT基板pl1と対向する面のみに、例えばプラズマアシスト反応性スパッタ法を用いて厚さ300nmの窒化シリコン膜をカラーフィルタ下地層uc2として形成している。窒化シリコン膜はやや着色した膜となるため、成膜時に適宜酸素を添加することにより透明度を改善することもできる。このカラーフィルタ下地層uc2を形成した領域は、図5に示すようにカラーフィルタ側樹脂基材sub2のほぼ全面であり、カラーフィルタ層cfよりも広い領域である。液晶セルシール(封止シール)slはカラーフィルタ下地膜uc2を形成した領域上に、カラーフィルタ層cfを介すことなく重畳して形成されている。なお、液晶セルシール(封止シール)slとしては、例えば紫外線照射と加熱の両処理により硬化するタイプを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0055】
次に、図6に本願発明の実施形態1のTFT側基板の作製方法の一実施形態を説明するための工程図を示し、以下、図6に基づいて製造方法を工程順に説明する。なお、各工程における電極の形成を含む薄膜の形成は公知のフォトリソグラフィ技術により可能であるので、詳細な説明は省略する。
【0056】
工程1.(図6(a))
現状、必要十分な特性を得ることができる半導体素子を樹脂基板上に直接形成することはできないので、本願発明の実施形態1では、まずTFT層tftを形成する際の下地層(TFT下地層)uc1としてガラス基材(TFT形成用ガラス基材)gl1上に窒化シリコンと酸化シリコンの積層膜を形成する。次に、このTFT下地層uc1の上層に、現状の高温プロセスを用いてTFT層tftを形成する。このとき、本実施形態1の液晶表示装置においては、前述するように、TFT側基板pl1とCF側基板pl2とが重畳する領域の外側の領域に端子領域trmが形成される構成となっているので、図中のガラス基材gl1の左側端部に端子領域trmが形成される。
【0057】
工程2.(図6(b))
次に、ガラス基材gl1の図中上面側にTFT層tftを覆うようにして、TFT層保護基材cv1となる薄膜層を形成する。次に、TFT層保護基材cv1を支持材として、例えばフッ酸を主体としたエッチング液を用いて化学的研磨により、ガラス基材gl1を除去する。このとき、TFT下地層uc1は耐フッ酸性を有するので、化学的研磨においてガラス機材gl1が除去されることとなる。なお、ガラス基材gl1の除去は化学的研磨に限定されることはなく、例えば機械的研磨や機械的研磨と化学的研磨とを併用した研磨方法でもよい。なお、TFT下地層uc1としては窒化シリコンと酸化シリコンの積層膜に限定されることはなく、耐フッ酸性を有する材料が望ましいが、他の膜材料でもよい。
【0058】
工程3.(図6(c))
次に、ガラス基材gl1を除去した後のTFT層tftは、TFT層保護基材cv1で支持された状態のままで粘着層ad1によりTFT側樹脂基材sub1と貼り合わされる。この工程3により、TFT側基板pl1の基材がTFT側樹脂基材sub1となる。
【0059】
工程4.(図6(d))
次に、TFT層tftの上層に形成されるTFT層保護基材cv1を剥離することにより、ガラス基材gl1上に形成したTFT層tftのTFT側樹脂基材sub1への転写が完了することとなる。このように、本実施形態1では、転写の際には積層膜ごとTFT側樹脂基材sub1上にTFT層tftを転写する構成となっている。
【0060】
以上に説明した工程で形成されたTFT側基板pl1とCF側基板pl2とは、前述するように紫外線照射と加熱の両処理で硬化するタイプの液晶セルシール(封止シール)slにより固定されることとなるが、加熱硬化時には120℃30分の加熱処理を行う必要がある。
【0061】
このとき本実施形態1の液晶表示装置(図1に示した構造の液晶セル)では、セルの破損は生じなかった。しかしながら、カラーフィルタ下地層uc2を形成せずに作製した液晶セルでは同加熱処理にともない、約100℃まで加熱した状態でCF側基板pl2に変形が生じ、その後亀裂が生じて破損してしまった。なお、紫外線照射のみで硬化させることのできるシール材料もあるが、液晶セルの使用環境としては、特に携帯型の機器の表示素子では80℃以上になることは容易に推測でき、作製工程上にて破損することがなくともユーザが使用している間に作製工程以上に厳しい環境にさらされて破損してしまう危険性が高い。
【0062】
このため、カラーフィルタ下地層uc2として窒化シリコン膜を形成する際に種々の元素を添加して異なる熱膨張係数の下地膜uc2を形成した液晶セルを作製して、液晶セルシール(シール材、封止シール)slの加熱硬化温度の120℃の加熱処理を実施した場合のセルの破損率を調べたのが図9である。なお、試料数は各条件20枚である。
【0063】
図9から明らかなように、TFT形成時の下地膜である窒化シリコンの熱膨張係数である3ppm/℃程度の場合は低い破損率であるが15ppm/℃を越えるあたりから破損し易いことがわかった。この結果からカラーフィルタ側下地層uc2の熱膨張係数としては、15ppm/℃以下が望ましいことが明らかとなった。なお、熱膨張係数の下限については、TFT側下地層uc1と同じ材料であることがもっとも望ましい上、さらに低膨張の膜を形成することは困難であるため、概ね窒化シリコン膜の熱膨張係数である3ppm/℃以上であることが総合的にみて有効である。なお、TFT層tftは無機膜が主体の構成となるので、3〜15ppm/℃の熱膨張特性が得られやすい。
【0064】
以上の結果から本実施形態1の液晶表示においても、カラーフィルタ下地膜uc2の熱膨張係数は3〜15ppm/℃である。これにより、CF側基板pl2においてもTFT層tftの熱膨張に近い特性を与えることができるので、工程上もしくは使用環境においての液晶表示装置の破損を防止することが可能となる。
【0065】
また、前述するように、図示しない駆動回路と本願発明の液晶セルpnlとを接続するフレキシブルプリント基板(接続線)FPCを端子部trmに接続する際にも加熱圧着をする必要があり、この際に大きな熱膨張係数を有する材料は不適であり、TFT側基板pl1側のTFT下地層uc1にもこの範囲の熱膨張係数を有する材料を用いることが有効である。また、このような熱膨張係数を有する材料は、有機材料を用いるよりも、無機材料を用いた方が容易に形成することができる。
【0066】
以上説明したように、実施形態1の液晶表示装置では、TFT側樹脂基材sub1上にTFT層tftが粘着層ad1で接着され形成されるTFT側基板pl1と、カラーフィルタ側樹脂基材sub2上に直接カラーフィルタ下地層uc2を形成し該カラーフィルタ下地層uc2の上層にカラーフィルタ層cfが形成されるカラーフィルタ側基板pl2とが液晶層lcを介して対向配置される構成となっており、カラーフィルタ下地層uc2の膜厚が300nmであり、その熱膨張係数が3〜15ppm/℃に設定されているので、CF側基板pl2の熱膨張の特性とTFT層tftの熱膨張の特性とを近い特性にすることが可能となり、TFT側基板pl1とCF側基板pl2との熱膨張差に伴う製造途中や使用環境における当該液晶表示装置の不良を防止することができる。従って、当該液晶表示装置の軽量フレキシブル性を向上させることでき、耐衝撃性や表示画面のデザイン選択性を向上させた液晶表示装置を提供することができる。
【0067】
〈実施形態2〉
図7は本発明の実施形態2の液晶表示装置の詳細構成を説明するための断面図である。なお、実施形態2の液晶表示装置において、CF側基板pl2の構成を除く他の構成は実施形態1の液晶表示装置と同様となるので、以下の説明ではCF側基板pl2について詳細に説明する。
【0068】
図7に示すように、実施形態2の液晶表示装置は、図示しないガラス基材上に形成したカラーフィルタ層cfをカラーフィルタ側樹脂基材sub2上に転写(接着)したCF側基板pl2と、図示しないガラス基材上に形成したTFT層tftをTFT側樹脂基材sub1上に転写したTFT側基板pl1とを液晶セルシール(封止シール)slにより接合して液晶セル(液晶表示装置)が形成される。すなわち、実施形態2の液晶表示装置では、TFT側基板pl1とCF側基板pl2とが共に樹脂基材sub1、sub2の上面(液晶側の面)に粘着層ad1、ad2が形成され、該粘着層ad1、ad2の上面に下地層uc1、uc2が形成され、該下地層uc1、uc2の上面にTFT層tft又はカラーフィルタ層cfが形成される構成となっている。
【0069】
特に、実施形態2のCF側基板(第2基板)pl2の表面すなわち液晶lc面側(上層)には、カラーフィルタ層cfとカラーフィルタ側樹脂基材sub2とを貼り合わせるための粘着層(第2の粘着層)ad2が形成されており、該粘着層ad2の上層にはカラーフィルタ下地層uc2が形成されており、該カラーフィルタ下地層uc2の上層にブラックマトリクスbm及び色フィルタ層if並びにオーバーコート層oc等からなるカラーフィルタ層cfが形成される構成となっている。また、実施形態2においても、カラーフィルタ下地層uc2の上層に液晶セルシールslが形成されている。実施形態2においても実施形態1同様に、液晶セルシールslがカラーフィルタ下地層uc2と重畳して形成され、該液晶セルシールslの少なくとも一部が環状にカラーフィルタ下地層uc2と直接接触される構成となっている。この構成とすることにより、第2基板の基材であるカラーフィルタ側樹脂基材sub2の収縮や伸長に伴うカラーフィルタ層cfへの影響を最小限に抑える構成としている。
【0070】
実施形態2のCF側基板pl2では、図示しないガラス基材上にカラーフィルタ層cfを形成した後に、該カラーフィルタ層cfをカラーフィルタ側樹脂基材sub2に転写し形成する。このように、カラーフィルタ層cfをガラス基材上で形成することにより、変形が少なく高温処理が可能であるので、より高精度で欠陥の少ないカラーフィルタ層cfを形成することができるという格別の効果を得ることができる。
【0071】
次に、図8に本願発明の実施形態2のCF側基板の作製方法の一実施形態を説明するための工程図を示し、以下、図8に基づいて製造方法を工程順に説明する。なお、各工程における電極の形成を含む薄膜の形成は公知のフォトリソグラフィ技術により可能であるので、詳細な説明は省略する。
【0072】
工程1.(図8(a))
まず、カラーフィルタ層cfを形成する際の下地層(カラーフィルタ下地層)uc2として、ガラス基材(カラーフィルタ形成用ガラス基材)gl2の図中上面に酸素を添加した窒化シリコンの薄膜層を形成する。なお、このときのカラーフィルタ下地層uc2の膜厚は300nmであり、熱膨張係数は3〜15ppm/℃となるように添加する元素が調整されている。これにより、CF側基板pl2においてもTFT層tftの熱膨張に近い特性を与えることができるので、工程上もしくは使用環境においての破損を防止することが可能となる。
【0073】
次に、該カラーフィルタ下地層uc2の上層に、現状の高温プロセスを用いてブラックマトリクスbm及びR(赤)G(緑)B(青)の色フィルタ層ifを形成した後に、該ブラックマトリクスbm及び色フィルタ層ifを覆うようにオーバーコート層ocを形成し、カラーフィルタ層cfが形成される。
【0074】
工程2.(図8(b))
次に、ガラス基材gl2の図中上面側にオーバーコート層ocを覆うようにして、カラーフィルタ層保護基材cv2となる薄膜層を形成する。次に、カラーフィルタ層保護基材cv2を支持材として、例えばフッ酸を主体としたエッチング液を用いて化学的研磨(化学エッチング)により、ガラス基材gl2を除去する。このとき、カラーフィルタ下地層uc2は耐フッ酸性を有するので、化学的研磨においてガラス基材gl2が除去されることとなる。なお、カラーフィルタ下地層uc2としては窒化シリコンに限定されることはなく、耐フッ酸性を有する材料が望ましいが、他の膜材料でもよい。また、ガラス基材gl2の除去は化学的研磨に限定されることはなく、例えば機械的研磨や機械的研磨と化学的研磨を併用した研磨方法でもよい。
【0075】
工程3.(図8(c))
次に、ガラス基材gl2を除去した後のカラーフィルタ層保護基材cv2に支持されるカラーフィルタ層cfは、粘着層ad2によりカラーフィルタ側樹脂基材sub2と貼り合わされる。この工程3により、CF側基板pl2の基材がカラーフィルタ側樹脂基材sub2となる。
【0076】
工程4.(図8(d))
次に、カラーフィルタ層cfの上層に形成されるカラーフィルタ層保護基材2を剥離することにより、ガラス基材gl2に形成したカラーフィルタ層cfのカラーフィルタ側樹脂基材sub2への転写が完了することとなる。このように、実施形態2では、転写の際にはカラーフィルタ下地層uc2ごとカラーフィルタ側樹脂基材sub2上にカラーフィルタ層cfを転写する構成となっている。
【0077】
以上説明したように、実施形態2の液晶表示装置では、TFT側樹脂基材sub1上にTFT層tftが粘着層(第1の粘着層)ad1で接着され形成されるTFT側基板pl1と、カラーフィルタ側樹脂基材sub2上にカラーフィルタ層cfが粘着層ad2で接着され形成されるCF側基板pl2とが液晶層lcを介して対向配置される構成となっており、カラーフィルタ下地層uc2の膜厚が300nmであり、その熱膨張係数が3〜15ppm/℃に設定されているので、CF側基板pl2の熱膨張の特性とTFT層tftの熱膨張の特性と近い特性にすることが可能となり、TFT側基板pl1とCF側基板pl2との熱膨張差に伴う製造途中や使用環境における当該液晶表示装置の不良を防止することができる。従って、当該液晶表示装置の軽量フレキシブル性を向上させることでき、耐衝撃性や表示画面のデザイン選択性を向上させた液晶表示装置を提供することができる。
【0078】
〈実施形態3〉
図10は本発明の実施形態3の液晶表示装置の概略構成を説明するための断面図であり、図11は本発明の実施形態3の液晶表示装置のカラムスペーサの配置位置を説明するための平面図である。なお、実施形態3の液晶表示装置において、カラムスペーサ(柱状スペーサ)csの構成を除く他の構成は実施形態1の液晶表示装置と同様となるので、以下の説明ではカラムスペーサcsについて詳細に説明する。また、カラムスペーサの形成は公知のフォトリソグラフィ技術により可能であるので、その詳細な説明は省略する。
【0079】
図10に示すように、実施形態3の液晶表示装置は、カラーフィルタ側樹脂基材sub2上にカラーフィルタ層cfを形成したCF側基板pl2と、図示しないガラス基材上に形成したTFT層tftをTFT側樹脂基材sub1上に転写したTFT側基板pl1とを液晶セルシール(封止シール)slにより接合して液晶セル(液晶表示装置)が形成される構成は実施形態1の液晶表示装置と同じ構成である。
【0080】
この構成に加えて、本実施形態3の液晶表示装置では、TFT側基板pl1とCF側基板pl2との間の表示領域内に、カラムスペーサcsがマトリクス状に配置される構成となっている。すなわち、実施形態3の液晶表示装置では、TFT側基板pl1とCF側基板pl2との間隔(セルギャップ)と同じ高さを有するカラムスペーサcsが液晶lcの封入される領域内に形成される構成となっている。このように、液晶lcの封止領域内にマトリクス状に配置されるカラムスペーサcsを備える構成となっている。
【0081】
図11から明らかなように、実施形態3の液晶表示装置におけるカラムスペーサcsは画素の配列方向と同様に図中の縦横方向すなわち液晶表示装置の縦横方向と平行となるようにマトリクス状に配置される構成となっている。
【0082】
従って、実施形態3の液晶表示装置では、ガラス基板に比較すると変形等が容易に生じる樹脂基板上にTFT層tft及びカラーフィルタ層cfを形成した場合であっても、カラムスペーサcsによってそのセルギャップを一定に保持(制御)することが可能となる。従って、実施形態1の液晶表示装置の効果に加えて、当該液晶表示装置に外部から力が加わった場合であっても、表示むら等の表示不良を発生させることなく、表示領域内で均一な表示を行うことができるという格別の効果を得ることができる。なお、カラムスペーサcsの配列方向は画素の配列方向に限定されることはなく、他の方向にマトリクス状に配列してもよい。
【0083】
なお、本願発明の実施形態3の液晶表示装置のCF側基板pl2を実施形態2のCF側基板pl2とする構成でもよく、この場合でも前述の効果を得ることができる。また、カラムスペーサcsはカラーフィルタ側基板pl2とTFT側基板pl1のどちら側に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態1の液晶表示装置の概略構成を説明するための平面図である。
【図2】本発明の実施形態1の液晶表示装置における画素の概略構成を説明するための平面図である。
【図3】図2のB−B’線での断面図である。
【図4】本発明の実施形態1の液晶表示装置の詳細構成を説明するための断面図である。
【図5】本発明の実施形態1のカラーフィルタ側基板の平面図である。
【図6】本発明の実施形態1のTFT側基板の作製方法の一実施形態を説明するための工程図である。
【図7】本発明の実施形態2の液晶表示装置の詳細構成を説明するための断面図である。
【図8】本発明の実施形態2のカラーフィルタ側基板の作製方法の一実施形態を説明するための工程図である。
【図9】液晶セルシールの加熱硬化温度で加熱した場合の液晶表示装置の破損率の実験結果を示す図である。
【図10】本発明の実施形態3の液晶表示装置の概略構成を説明するための断面図である。
【図11】本発明の実施形態3の液晶表示装置のカラムスペーサの配置位置を説明するための平面図である。
【符号の説明】
【0085】
pnl・・・液晶表示パネル、ar・・・表示領域、sub1・・・TFT側樹脂基材
sub2・・・カラーフィルタ側樹脂基材、fpc・・・フレキシブルプリント基板
dl・・・ドレイン線、gl・・・ゲート線、cl・・・コモン線、gi・・・絶縁膜
gt・・・ゲート電極、dt・・・ドレイン電極、st・・・ソース電極
tft・・・TFT層、px・・・画素電極、ct・・・共通電極
ch1、2・・・コンタクトホール、as・・・半導体層、in1・・・層間絶縁膜
ad1、ad2・・・粘着層、sl・・・液晶セルシール、trm・・・端子領域
uc1・・・TFT下地層、uc2・・・カラーフィルタ下地層、pd・・・パッド部
if・・・色フィルタ層、cf・・・カラーフィルタ層、oc・・・オーバーコート層
pl1・・・TFT側基板、pl2・・・カラーフィルタ側基板
pas1・・・無機絶縁膜、paso・・・有機絶縁膜、pas2・・・容量絶縁膜
cst1・・・保持容量、bm・・・ブラックマトリクス、cs・・・カラムスペーサ
cv1・・・TFT層保護基材、cv2・・・カラーフィルタ層保護基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層を介して対向配置される第1基板及び第2基板を有し、前記第1基板及び第2基板が樹脂基材で形成される液晶表示装置であって、
前記第1基板の液晶層側に形成され、マトリクス状に画素が形成される液晶駆動層を当当該第1基板に固定する粘着層と、
前記画素に対応する遮光膜及び色フィルタ層と前記第2基板との間に形成され、該第2基板よりも熱膨張係数が小さい薄膜材料からなる下地層と
を備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
液晶層を介して対向配置される第1基板及び第2基板を有し、前記第1基板及び第2基板が樹脂基材で形成される液晶表示装置であって、
前記第1基板の液晶層側に形成され、マトリクス状に画素が形成される液晶駆動層を当該第1基板に固定する第1の粘着層と、
前記第2基板の液晶層側に形成され、前記画素に対応する遮光膜及び色フィルタ層が形成されるカラーフィルタ層を当該第2基板に固定する第2の粘着層と、
前記カラーフィルタ層の液晶層側に形成され、前記第2基板よりも熱膨張係数が小さい薄膜層からなる下地層と
を備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液晶表示装置において、
前記下地層は熱膨張係数が3〜15ppm/℃の薄膜層からなることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の内のいずれかに記載の液晶表示装置において、
前記第1基板と前記第2基板とを固定するシール材と前記下地層とが重畳して形成され、少なくとも前記シール材の一部が前記下地層と環状に密接されることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の内のいずれかに記載の液晶表示装置において、
前記下地層は耐フッ酸性を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の内のいずれかに記載の液晶表示装置において、
前記下地層は無機材料からなる薄膜層であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液晶表示装置において、
前記下地層は窒化物からなる薄膜層であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の内のいずれかに記載の液晶表示装置において、
前記下地層は酸素を含む材料からなる薄膜層であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の内のいずれかに記載の液晶表示装置において、
前記下地層は膜厚300nm以上の薄膜層からなることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
液晶層を介して対向配置される第1基板及び第2基板を有し、前記第1基板及び第2基板が樹脂基材で形成される液晶表示装置の製造方法であって、
前記樹脂基材よりも耐熱性を有する第1基材上に、画素に対応する遮光膜及び色フィルタ層並びに保護膜を形成する工程と、
前記第1基材の上面側に、前記遮光膜及び色フィルタ層並びに保護膜を支持すると共に保護する保護基材を形成する工程と、
前記第1基材を化学的及び/又は機械的に除去する工程と、
前記第1基材が除去された前記遮光膜及び色フィルタ層並びに保護膜を、粘着層を介して前記第1基板に固定する工程と、
前記第1基板に固定された前記遮光膜及び色フィルタ層並びに保護膜の上層から前記保護基材を除去する工程と
を備えることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−72529(P2010−72529A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242366(P2008−242366)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】