説明

液滴吐出装置

【課題】従来の液滴吐出装置では、描画にかかる時間を短縮することが困難である。
【解決手段】ワークWに対向した状態で、液状体をワークWに向けて液滴として吐出する吐出ヘッド33と、吐出ヘッド33の駆動を制御するヘッド制御部と、ワークWと吐出ヘッド33との間の隙間量Gを検出する変位測定装置15と、を含み、ヘッド制御部は、変位測定装置15からの前記隙間量Gの検出結果に基づいて、吐出ヘッド33における前記液滴の吐出タイミングを補正する、ことを特徴とする液滴吐出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェット装置などの液滴吐出装置において、液状体を液滴として吐出する吐出ヘッドから基板などのワークに液滴を吐出することによって、ワークに液状体で描画を行うことができるものがある。
このような液滴吐出装置では、従来、ワークギャップを測定した結果に応じて、ワークに対する吐出ヘッドの高さ位置を補正することができるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、ワークギャップは、吐出ヘッドとワークとの間の隙間である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−93369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワークギャップが大きい場合と小さい場合とでは、それぞれに液滴を同じタイミングで吐出したときに、液滴がワークに着弾するまでの時間は、ワークギャップが小さい場合の方が短い。これは、ワークギャップが小さい場合の方が、吐出ヘッドからワークまでの距離が短いからである。このため、ワークギャップのばらつきが大きいと、液滴がワークに着弾するときの位置(着弾位置)の精度がばらつきやすくなる。
これに対し、上記特許文献1に記載された液滴吐出装置では、ワークギャップを一定に保った状態で、ワークに液滴を吐出することができる。これにより、着弾位置の精度を保ちやすくすることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された液滴吐出装置では、ワークギャップを測定した結果に応じて、吐出ヘッドを移動させなければならない。このため、ワークへの描画にかかる時間が長くなりやすい。
つまり、従来の液滴吐出装置では、描画にかかる時間を短縮することが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0007】
[適用例1]ワークに対向した状態で、液状体を前記ワークに向けて液滴として吐出する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドの駆動を制御するヘッド制御部と、前記ワークと前記吐出ヘッドとの間の隙間量を検出する検出部と、を含み、前記ヘッド制御部は、前記検出部からの前記隙間量の検出結果に基づいて、前記吐出ヘッドにおける前記液滴の吐出タイミングを補正する、ことを特徴とする液滴吐出装置。
【0008】
この適用例の液滴吐出装置は、吐出ヘッドと、ヘッド制御部と、検出部と、を含む。
吐出ヘッドは、ワークに対向した状態で、液状体をワークに向けて液滴として吐出する。
ヘッド制御部は、吐出ヘッドの駆動を制御する。
検出部は、ワークと吐出ヘッドとの間の隙間量を検出する。
この液滴吐出装置では、ヘッド制御部は、検出部からの隙間量の検出結果に基づいて、吐出ヘッドにおける液滴の吐出タイミングを補正する。
上記の構成により、ワークと吐出ヘッドとの間の隙間量がばらついていても、液滴の着弾位置の精度を保ちやすくすることができる。この液滴吐出装置では、ワークと吐出ヘッドとの間の隙間量を変化させなくても、液滴の着弾位置の精度を保ちやすくすることができる。このため、ワークへの描画にかかる時間が長くなることを避けやすくすることができるので、描画にかかる時間を短縮しやすくすることができる。
【0009】
[適用例2]上記の液滴吐出装置であって、前記吐出ヘッドを支持するキャリッジと、前記ワークに対する前記キャリッジの位置を変化させる変位装置と、を有し、前記検出部は、前記キャリッジに設けられている、ことを特徴とする液滴吐出装置。
【0010】
この適用例の液滴吐出装置は、キャリッジと、変位装置と、を有している。キャリッジは、吐出ヘッドを支持する。変位装置は、ワークに対するキャリッジの位置を変化させる。
そして、この液滴吐出装置では、検出部は、キャリッジに設けられている。このため、ワークに対する吐出ヘッドの位置が変化しても、検出部をワークに対する吐出ヘッドの変位に追従させながら、隙間量を検出させることができる。この結果、吐出ヘッドから吐出させた液滴が着弾するワークの部位における隙間量を検出しやすくすることができる。
【0011】
[適用例3]上記の液滴吐出装置であって、前記ワークに対する前記キャリッジの位置を変化させながら、前記隙間量を検出する、ことを特徴とする液滴吐出装置。
【0012】
この適用例の液滴吐出装置は、ワークに対するキャリッジの位置を変化させながら、隙間量を検出する。これにより、検出部をワークに対する吐出ヘッドの変位に追従させながら、隙間量を検出することができる。
【0013】
[適用例4]上記の液滴吐出装置であって、前記ワークに対する前記キャリッジの変位量を所定量ごとに検出し、検出した結果を前記所定量ごとに検出信号として出力する変位量検出部を有し、前記ヘッド制御部は、前記変位量検出部からの前記検出信号をカウントするカウンターと、前記液滴の吐出を許可する許可信号を、前記カウンターのカウント値が所定値ずつ増加するたびに前記吐出ヘッドに出力する許可信号生成部と、を有し、前記許可信号生成部は、前記隙間量の検出結果に基づいて、前記カウント値における前記所定値を増減させることによって、前記許可信号の出力タイミングをずらす、ことを特徴とする液滴吐出装置。
【0014】
この適用例の液滴吐出装置は、変位量検出部を有している。変位量検出部は、ワークに対するキャリッジの変位量を所定量ごとに検出し、検出した結果を所定量ごとに検出信号として出力する。
ヘッド制御部は、カウンターと、許可信号生成部と、を有している。
カウンターは、変位量検出部からの検出信号をカウントする。
許可信号生成部は、液滴の吐出を許可する許可信号を吐出ヘッドに出力する。許可信号生成部は、カウンターのカウント値が所定値ずつ増加するたびに許可信号を出力する。
この液滴吐出装置では、許可信号生成部は、隙間量の検出結果に基づいて、カウント値における所定値を増減させることによって、許可信号の出力タイミングをずらす。これにより、隙間量の検出結果に基づいて、吐出ヘッドにおける液滴の吐出タイミングを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態における液滴吐出装置の概略の構成を示す斜視図。
【図2】本実施形態におけるキャリッジを図1中のA視方向に見たときの正面図。
【図3】本実施形態におけるヘッドユニットの底面図。
【図4】図2中のB−B線における断面図。
【図5】本実施形態における液滴吐出装置の概略の構成を示すブロック図。
【図6】本実施形態における吐出制御部及び吐出ヘッドの概略の構成を示すブロック図。
【図7】本実施形態における描画処理の流れを示す図。
【図8】本実施例における検出信号及びラッチ指令を示すタイミングチャート。
【図9】本実施例における検出信号及びラッチ指令を示すタイミングチャート。
【図10】本実施形態における吐出処理の流れを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照しながら、実施形態について説明する。なお、各図面において、それぞれの構成を認識可能な程度の大きさにするために、構成や部材の縮尺が異なっていることがある。
【0017】
実施形態における液滴吐出装置1は、概略の構成を示す斜視図である図1に示すように、ワーク搬送装置3と、キャリッジ7と、キャリッジ搬送装置9と、メンテナンス装置11と、を有している。
キャリッジ7には、ヘッドユニット13と、変位測定装置15と、が設けられている。
液滴吐出装置1では、ヘッドユニット13と基板などのワークWとの平面視での相対位置を変化させつつ、ヘッドユニット13から液状体を液滴として吐出させることによって、ワークWに液状体で所望のパターンを描画することができる。なお、図中のY方向はワークWの移動方向を示し、X方向は平面視でY方向とは直交する方向を示している。また、X方向及びY方向によって規定されるXY平面と直交する方向は、Z方向として規定される。
【0018】
このような液滴吐出装置1は、例えば、液晶表示パネル等に用いられるカラーフィルターの製造や、有機EL装置の製造などに適用され得る。
赤、緑及び青の3色のフィルターエレメントを有するカラーフィルターの場合、液滴吐出装置1は、例えば、基板に赤、緑及び青の各着色層を形成する工程で好適に使用され得る。この場合、ヘッドユニット13から各着色層に対応する各液状体を、ワークWに液滴として吐出させることによって、ワークWに赤、緑及び青のそれぞれのフィルターエレメントのパターンが描画される。
また、有機EL装置の製造では、例えば、赤、緑及び青の画素ごとに、各色に対応する機能層(有機層)を形成する工程で好適に使用され得る。この場合、ヘッドユニット13から各色の機能層に対応する各液状体を、ワークWに液滴として吐出させることによって、ワークWに赤、緑及び青のそれぞれの機能層のパターンが描画される。
【0019】
ここで、液滴吐出装置1の各構成について、詳細を説明する。
ワーク搬送装置3は、図1に示すように、定盤21と、ガイドレール23aと、ガイドレール23bと、ワークテーブル25と、テーブル位置検出装置27と、を有している。
定盤21は、例えば石などの熱膨張係数が小さい材料で構成されており、Y方向に沿って延びるように据えられている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、定盤21の上面21a上に配設されている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、それぞれ、Y方向に沿って延在している。ガイドレール23aとガイドレール23bとは、互いにX方向に隙間をあけた状態で並んでいる。
【0020】
ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bを挟んで定盤21の上面21aに対向した状態で設けられている。ワークテーブル25は、定盤21から浮いた状態でガイドレール23a及びガイドレール23b上に載置されている。ワークテーブル25は、ワークWが載置される面である載置面25aを有している。載置面25aは、定盤21側とは反対側(上側)に向けられている。ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bによってY方向に沿って案内され、定盤21上をY方向に沿って往復移動可能に構成されている。
テーブル位置検出装置27は、定盤21の上面21aに設けられており、Y方向に延在している。テーブル位置検出装置27は、ガイドレール23aとガイドレール23bとの間に設けられている。テーブル位置検出装置27は、ワークテーブル25のY方向における位置を検出する。
【0021】
ワークテーブル25は、図示しない移動機構及び動力源によって、Y方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、ワークテーブル25をY方向に沿って移動させるための動力源として、後述するワーク搬送モーターが採用されている。ワーク搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
ワーク搬送モーターからの動力は、移動機構を介してワークテーブル25に伝達される。これにより、ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bに沿って、すなわちY方向に沿って往復移動することができる。つまり、ワーク搬送装置3は、ワークテーブル25の載置面25aに載置されたワークWを、Y方向に沿って往復移動させることができる。
【0022】
ヘッドユニット13は、キャリッジ7を図1中のA視方向に見たときの正面図である図2に示すように、ヘッドプレート31と、吐出ヘッド33と、を有している。
吐出ヘッド33は、底面図である図3に示すように、ノズル面35を有している。ノズル面35には、複数のノズル37が形成されている。なお、図3では、ノズル37をわかりやすく示すため、ノズル37が誇張され、且つノズル37の個数が減じられている。
吐出ヘッド33において、複数のノズル37は、Y方向に沿って配列する8本のノズル列39を構成している。8本のノズル列39は、X方向に互いに隙間をあけた状態で並んでいる。各ノズル列39において、複数のノズル37は、Y方向に沿って所定のノズル間隔Pで形成されている。
【0023】
以下において、8本のノズル列39のそれぞれが識別される場合に、ノズル列39a、ノズル列39b、ノズル列39c、ノズル列39d、ノズル列39e、ノズル列39f、ノズル列39g及びノズル列39hという表記が用いられる。
吐出ヘッド33において、ノズル列39aとノズル列39bとは、互いにY方向にP/2の距離だけずれている。ノズル列39c及びノズル列39dも、互いにY方向にP/2の距離だけずれている。同様に、ノズル列39e及びノズル列39fも、互いにY方向にP/2の距離だけずれており、ノズル列39g及びノズル列39hも、互いにY方向にP/2の距離だけずれている。
【0024】
変位測定装置15は、図2に示すように、それぞれ、X方向にヘッドユニット13と隣り合う位置に設けられている。
変位測定装置15は、ワークWのZ方向における変位量を検出する。この検出結果から、吐出ヘッド33とワークWとの間の隙間量Gの変化が把握され得る。
本実施形態では、変位測定装置15として、レーザー変位計が採用されている。レーザー変位計では、レーザー光16をワークWに向けて照射し、ワークWで反射した反射光16aの位置の変化を検出することによって、ワークWのZ方向における変位量が検出される。
【0025】
吐出ヘッド33は、図2中のB−B線における断面図である図4に示すように、ノズルプレート46と、キャビティープレート47と、振動板48と、複数の圧電素子49と、を有している。
ノズルプレート46は、ノズル面35を有している。複数のノズル37は、ノズルプレート46に設けられている。
キャビティープレート47は、ノズルプレート46のノズル面35とは反対側の面に設けられている。キャビティープレート47には、複数のキャビティー51が形成されている。各キャビティー51は、各ノズル37に対応して設けられており、対応する各ノズル37に連通している。各キャビティー51には、図示しないタンクから機能液53が供給される。
【0026】
振動板48は、キャビティープレート47のノズルプレート46側とは反対側の面に設けられている。振動板48は、Z方向に振動(縦振動)することによって、キャビティー51内の容積を拡大したり、縮小したりする。
複数の圧電素子49は、それぞれ、圧電体49aを一対の電極49b及び電極49cで挟持した構成を有している。複数の圧電素子49は、それぞれ、振動板48のキャビティープレート47側とは反対側の面に設けられている。各圧電素子49は、各キャビティー51に対応して設けられており、振動板48を挟んで各キャビティー51に対向している。各圧電素子49は、駆動信号に基づいて、伸張する。これにより、振動板48がキャビティー51内の容積を縮小する。このとき、キャビティー51内の機能液53に圧力が付与される。その結果、ノズル37から、機能液53が液滴55として吐出される。吐出ヘッド33による液滴55の吐出法は、インクジェット法の1つである。インクジェット法は、塗布法の1つである。
【0027】
上記の構成を有する吐出ヘッド33は、図2に示すように、ノズル面35がヘッドプレート31から突出した状態で、ヘッドプレート31に支持されている。
キャリッジ7は、図2に示すように、ヘッドユニット13を支持している。ここで、ヘッドユニット13は、ノズル面35がZ方向の下方に向けられた状態でキャリッジ7に支持されている。
なお、本実施形態では、縦振動型の圧電素子49が採用されているが、機能液53に圧力を付与するための加圧手段は、これに限定されず、例えば、下電極と圧電体層と上電極とを積層形成した撓み変形型の圧電素子も採用され得る。また、加圧手段としては、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなども採用され得る。さらに、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって機能液に圧力を付与する構成も採用され得る。
【0028】
本実施形態では、機能液53として、相互に色が異なる4種類の機能液53が採用されている。4種類の機能液53において、相互に異なる色は、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)である。
なお、以下において、4種類の機能液53を色ごとに識別する場合に、機能液53Y、機能液53M、機能液53C、及び機能液53Kという表記が用いられる。
本実施形態では、異なる4色の機能液53が採用されているので、画像におけるカラー表示が実現され得る。
吐出ヘッド33において、前述した8本のノズル列39(図3)は、機能液53の色ごとに区分されている。本実施形態では、ノズル列39a及びノズル列39bに属するノズル37は、機能液53Kを液滴55として吐出する。ノズル列39c及びノズル列39dに属するノズル37は、機能液53Cを液滴55として吐出する。ノズル列39e及びノズル列39fに属するノズル37は、機能液53Mを液滴55として吐出する。ノズル列39g及びノズル列39hに属するノズル37は、機能液53Yを液滴55として吐出する。
【0029】
キャリッジ搬送装置9は、図1に示すように、架台61と、ガイドレール63と、キャリッジ位置検出装置65と、を有している。
架台61は、X方向に延在しており、ワーク搬送装置3及びメンテナンス装置11をX方向にまたいでいる。架台61は、ワークテーブル25の定盤21側とは反対側で、ワーク搬送装置3及びメンテナンス装置11のそれぞれに対向している。架台61は、支柱67aと支柱67bとによって支持されている。支柱67a及び支柱67bは、定盤21を挟んでX方向に互いに対峙する位置に設けられている。支柱67a及び支柱67bは、それぞれ、ワークテーブル25よりもZ方向の上方に突出している。これにより、架台61とワークテーブル25との間、及び架台61とメンテナンス装置11との間には、それぞれ隙間が保たれている。
【0030】
ガイドレール63は、架台61の定盤21側に設けられている。ガイドレール63は、X方向に沿って延在しており、架台61のX方向における幅にわたって設けられている。
前述したキャリッジ7は、ガイドレール63に支持されている。キャリッジ7がガイドレール63に支持された状態において、吐出ヘッド33のノズル面35は、Z方向においてワークテーブル25側に向いている。キャリッジ7は、ガイドレール63によってX方向に沿って案内され、X方向に往復動可能な状態でガイドレール63に支持されている。なお、平面視で、キャリッジ7がワークテーブル25に重なっている状態において、ノズル面35とワークテーブル25の載置面25aとは、互いに隙間を保った状態で対向する。
キャリッジ位置検出装置65は、架台61とキャリッジ7との間に設けられており、X方向に延在している。キャリッジ位置検出装置65は、キャリッジ7のX方向における位置を検出する。
【0031】
本実施形態では、キャリッジ位置検出装置65は、図示しないエンコーダーと、スケールと、を有している。スケールは、X方向に沿って設けられている。エンコーダーは、キャリッジ7に設けられている。
スケールには、多数の目盛りがX方向に沿って所定間隔で刻まれている。エンコーダーは、スケールに刻まれている目盛りを光学的に検出し、検出した結果をパルス状の検出信号として出力する。
本実施形態では、エンコーダーによるスケールの目盛りの検出に基づいて、キャリッジ7のX方向における位置が制御される。
なお、エンコーダーからの検出信号は、後述するヘッド制御部に入力される。
【0032】
キャリッジ7は、図示しない移動機構及び動力源によって、X方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、キャリッジ7をX方向に沿って移動させるための動力源として、後述するキャリッジ搬送モーターが採用されている。キャリッジ搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
キャリッジ搬送モーターからの動力は、移動機構を介してキャリッジ7に伝達される。これにより、キャリッジ7は、ガイドレール63に沿って、すなわちX方向に沿って往復移動することができる。つまり、キャリッジ搬送装置9は、キャリッジ7に支持されたヘッドユニット13を、X方向に沿って往復移動させることができる。
【0033】
メンテナンス装置11は、図1に示すように、定盤71と、ガイドレール73aと、ガイドレール73bと、保守テーブル75と、キャッピングユニット76と、フラッシングユニット77と、ワイピングユニット79と、を有している。
定盤71は、例えば石などの熱膨張係数が小さい材料で構成されており、X方向に支柱67aを挟んで定盤21と対峙する位置に設けられている。
ガイドレール73a及びガイドレール73bは、定盤71の上面71a上に配設されている。ガイドレール73a及びガイドレール73bは、それぞれ、Y方向に沿って延在している。ガイドレール73aとガイドレール73bとは、互いにX方向に隙間をあけた状態で並んでいる。
保守テーブル75は、ガイドレール73a及びガイドレール73bを挟んで定盤71の上面71aに対向した状態で設けられている。保守テーブル75は、定盤71から浮いた状態でガイドレール73a及びガイドレール73b上に載置されている。
【0034】
保守テーブル75には、キャッピングユニット76や、フラッシングユニット77、ワイピングユニット79などの保守ユニットが載置される。本実施形態では、保守ユニットは、キャッピングユニット76と、フラッシングユニット77と、ワイピングユニット79と、を含んでいる。
保守テーブル75は、ガイドレール73a及びガイドレール73bによってY方向に沿って案内され、定盤71上をY方向に沿って往復移動可能に構成されている。
フラッシングユニット77は、保守テーブル75の定盤71側とは反対側に設けられている。
ここで、ワークWへのパターンの描画とは無関係に、吐出ヘッド33から液状体を吐出させる動作は、フラッシング動作と呼ばれる。フラッシング動作には、例えば、ノズル37内に滞留する液状体がノズル37内で固化してしまうことを予防する効果がある。フラッシングユニット77は、フラッシング動作のときに、吐出ヘッド33から吐出される液状体を受ける装置である。
【0035】
キャッピングユニット76は、吐出ヘッド33に蓋をする装置である。吐出ヘッド33から吐出される液状体では、液体成分が蒸発することがある。一般的に、液状体における液体成分が蒸発すると、液状体の粘度が高くなる。吐出ヘッド33内の液状体の粘度が高くなると、ノズル37における液滴55を吐出する性能(以下、吐出性能と呼ぶ)が低下することがある。吐出性能の低下としては、例えば、ノズル37から吐出された液滴55の進行方向が曲がってしまったり(飛行曲がり)、ノズル37から液滴55が吐出されなかったり(不吐出)することなどが挙げられる。なお、キャッピングユニット76で吐出ヘッド33に蓋をする動作は、キャッピング動作と呼ばれる。
【0036】
キャッピングユニット76は、吐出ヘッド33に蓋をすることで、液状体における液体成分がノズルから蒸発することを低く抑える。これにより、吐出ヘッド33における吐出性能を維持しやすくすることができる。
ワイピングユニット79は、吐出ヘッド33のノズル面35を拭く装置である。液滴吐出装置1では、ノズル面35に液状体が付着することがある。ノズル面35に液状体が付着すると、吐出ヘッド33における吐出性能が低下することがある。ワイピングユニット79は、ノズル面35を拭くことによって、ノズル面35に付着している液状体を払拭する。これにより、吐出ヘッド33における吐出性能を維持しやすくすることができる。なお、ワイピングユニット79でノズル面35を拭く動作は、ワイピング動作と呼ばれる。
【0037】
保守テーブル75は、図示しない移動機構及び動力源によって、Y方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、保守テーブル75をY方向に沿って移動させるための動力源として、後述するテーブル搬送モーターが採用されている。テーブル搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
テーブル搬送モーターからの動力は、移動機構を介して保守テーブル75に伝達される。これにより、保守テーブル75は、ガイドレール73a及びガイドレール73bに沿って、すなわちY方向に沿って往復移動することができる。
つまり、メンテナンス装置11は、キャッピングユニット76や、フラッシングユニット77、ワイピングユニット79などの保守ユニットを、Y方向に沿って往復移動させることができる。これにより、平面視で吐出ヘッド33がメンテナンス装置11に重なっている状態において、吐出ヘッド33をキャッピングユニット76、フラッシングユニット77及びワイピングユニット79のそれぞれに対向させることができる。
【0038】
液滴吐出装置1は、図5に示すように、上記の各構成の動作を制御する制御部111を有している。制御部111は、CPU(Central Processing Unit)113と、駆動制御部115と、メモリー部117と、を有している。駆動制御部115及びメモリー部117は、バス119を介してCPU113に接続されている。
また、液滴吐出装置1は、キャリッジ搬送モーター121と、ワーク搬送モーター123と、テーブル搬送モーター125と、入力装置129と、表示装置131と、を有している。また、キャリッジ位置検出装置65は、前述したエンコーダー127を有している。
キャリッジ搬送モーター121、ワーク搬送モーター123、及びテーブル搬送モーター125は、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。また、入力装置129及び表示装置131も、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0039】
キャリッジ搬送モーター121は、キャリッジ7を駆動するための動力を発生させる。ワーク搬送モーター123は、ワークテーブル25を駆動するための動力を発生させる。テーブル搬送モーター125は、保守テーブル75を駆動するための動力を発生させる。入力装置129は、各種の加工条件を入力する装置である。表示装置131は、加工条件や、作業状況を表示する装置である。液滴吐出装置1を操作するオペレーターは、表示装置131に表示される情報を確認しながら、入力装置129を介して種々の情報を入力することができる。
なお、キャリッジ位置検出装置65、テーブル位置検出装置27及び吐出ヘッド33も、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。また、変位測定装置15、及びメンテナンス装置11も、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0040】
CPU113は、プロセッサーとして各種の演算処理を行う。駆動制御部115は、各構成の駆動を制御する。メモリー部117は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read-Only Memory)などを含んでいる。メモリー部117には、液滴吐出装置1における動作の制御手順が記述されたプログラムソフト135を記憶する領域や、各種のデータを一時的に展開する領域であるデータ展開部137などが設定されている。データ展開部137に展開されるデータとしては、例えば、描画すべきパターンが示される描画データや、描画処理等のプログラムデータなどが挙げられる。
駆動制御部115は、モーター制御部141と、位置検出制御部143と、吐出制御部145と、変位測定制御部147と、保守制御部149と、表示制御部151と、を有している。
【0041】
モーター制御部141は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ搬送モーター121の駆動と、ワーク搬送モーター123の駆動と、テーブル搬送モーター125の駆動とを、個別に制御する。
位置検出制御部143は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ位置検出装置65と、テーブル位置検出装置27とを、個別に制御する。
位置検出制御部143は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ位置検出装置65にキャリッジ7のX方向における位置を検出させ、且つ検出結果をCPU113に出力する。
また、位置検出制御部143は、CPU113からの指令に基づいて、テーブル位置検出装置27にワークテーブル25のY方向における位置を検出させ、且つ検出結果をCPU113に出力する。
【0042】
吐出制御部145は、CPU113からの指令に基づいて、吐出ヘッド33の駆動を制御する。
変位測定制御部147は、CPU113からの指令に基づいて、変位測定装置15を制御する。変位測定制御部147は、CPU113からの指令に基づいて、変位測定装置15にワークWのZ方向における変位量を検出させ、且つ検出結果をCPU113に出力する。
保守制御部149は、CPU113からの指令に基づいて、メンテナンス装置11におけるキャッピングユニット76や、フラッシングユニット77、ワイピングユニット79などの保守ユニットの駆動を個別に制御する。
表示制御部151は、CPU113からの指令に基づいて、表示装置131の駆動を制御する。
【0043】
吐出制御部145は、図6に示すように、駆動信号生成部161と、クロック信号発生部163と、カウンター165と、ラッチ信号発生部167と、を有している。
また、吐出ヘッド33は、駆動選択回路171を有している。駆動選択回路171は、シフトレジスター173と、ラッチ回路175と、レベルシフター177と、スイッチング回路179と、を有している。
駆動信号生成部161は、圧電素子49を駆動するための駆動信号COMを生成して、この駆動信号COMを吐出ヘッド33の駆動選択回路171に出力する。なお、この駆動信号生成部161は、メモリー部117(図5)に格納されている波形データWDに基づいて、駆動信号COMを所定の波形に形成する。
【0044】
クロック信号発生部163は、クロック信号SCKを生成して、このクロック信号SCKを、吐出ヘッド33の駆動選択回路171に出力する。
カウンター165は、例えばフリップフロップなどを備えるカウンター回路で構成され、エンコーダー127からの検出信号PLSをカウントする。カウントしたカウント値は、CPU113によって、カウントデータCIとして読み出される。
ラッチ信号発生部167は、CPU113からのラッチ指令PMTに基づいて、ラッチ信号LTを発生させる。ラッチ信号発生部167からのラッチ信号LTは、吐出ヘッド33の駆動選択回路171及び吐出制御部145の駆動信号生成部161に入力される。なお、駆動信号生成部161は、ラッチ信号LTに基づいて、駆動信号COMを駆動選択回路171に出力する。
【0045】
シフトレジスター173は、吐出データSIを、クロック信号SCKに基づいて順次シフトさせながら格納する。
吐出データSIは、各圧電素子49に対して、各ノズル37から液滴55(図4)を吐出させるか否かを指示するデータである。この吐出データSIは、データ展開部137(図5)に展開される描画データに基づいて、吐出制御部145に入力される。吐出制御部145に入力された吐出データSIは、吐出制御部145を介してシフトレジスター173に入力される。
ラッチ回路175は、シフトレジスター173に格納されている吐出データSIを、吐出制御部145からのラッチ信号LTに基づいて、パラレルデータとしてラッチする。
レベルシフター177は、ラッチ回路175からのラッチ出力を後述するスイッチング回路179で必要とする電圧に変換する。
【0046】
スイッチング回路179は、図示しない複数のスイッチング素子を有している。複数のスイッチング素子は、それぞれ、圧電素子49に対応して設けられている。つまり、1つのスイッチング素子は、1つの圧電素子49に対応している。各スイッチング素子は、PチャネルFET(Field Effect Transistor)とNチャネルFETとを組み合わせたトランスミッションゲートで構成されている。
各スイッチング素子は、オン状態のときに、各圧電素子49の一方の電極49bと駆動信号生成部161とを電気的につなげる。なお、各圧電素子49の他方の電極49cは、グランド電位に保たれている。
スイッチング回路179は、レベルシフター177によって変換された電圧が各スイッチング素子にゲート電圧として入力されると、駆動信号生成部161から出力される駆動信号COMを各圧電素子49に供給する。
圧電素子49に駆動信号COMが供給されると、この圧電素子49に対応するノズル37から液滴55が吐出される。そして、吐出された液滴55がワークWに着弾することによって、ワークWにドットが形成される。これにより、ワークWには、ドットの集合によって文字や画像が表現される。
【0047】
ここで、液滴吐出装置1における描画処理について説明する。
液滴吐出装置1では、制御部111が入力装置129から入出力インターフェース133及びバス119を介して描画データを受け取ると、CPU113によって図7に示す描画処理が開始される。
ここで、描画データは、機能液53(液状体)でワークWに描画すべきパターンを指示するものであり、描画すべきパターンがビットマップ状に表現されている。ワークWへのパターンの描画は、吐出ヘッド33をワークWに対向させた状態で、吐出ヘッド33とワークWとを相対的に往復移動させながら、吐出ヘッド33から液滴55を吐出させることによって行われる。
【0048】
描画処理では、CPU113は、まず、ステップS1において、キャリッジ搬送指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7を描画エリアの往路開始位置に移動させる。ここで、描画エリアは、図1に示すワークテーブル25によってY方向に沿って描かれる軌跡と、吐出ヘッド33によってX方向に沿って描かれる軌跡とが重なり合う領域である。往路開始位置は、キャリッジ7を往復移動させるときの往路が開始する位置である。本実施形態では、往路開始位置は、X方向において、メンテナンス装置11とワークテーブル25との間に位置している。往路開始位置は、平面視で、ワークテーブル25の外側に位置している。
次いで、ステップS2において、CPU113は、ワーク搬送指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWを描画エリアに移動させる。
【0049】
次いで、ステップS3において、CPU113は、キャリッジ走査指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7の移動を開始させる。
ここで、キャリッジ7は、上述した往路開始位置と復路開始位置との間を往復移動する。つまり、往路開始位置から復路開始位置で折り返して往路開始位置に戻る経路がキャリッジ7の1往復である。このため、本実施形態では、往路開始位置から復路開始位置に向かう経路がキャリッジ7の往路である。他方で、復路開始位置から往路開始位置に向かう経路がキャリッジ7の復路である。
なお、復路開始位置は、X方向にワークテーブル25(図1)を挟んで往路開始位置に対峙する位置である。復路開始位置は、平面視で、ワークテーブル25の外側に位置している。このため、往路開始位置と復路開始位置とは、平面視で、ワークテーブル25をX方向に挟んで互いに対峙している。
【0050】
次いで、ステップS4において、CPU113は、吐出処理を実施する。吐出処理については、詳細を後述する。吐出処理では、吐出制御部145(図5)は、吐出ヘッド33の駆動を制御して、描画データに基づいて、各ノズル37から液滴55を吐出させる。これにより、往路での描画が行われる。ステップS4における吐出処理が終了すると、往路での描画が終了する。
次いで、ステップS5において、CPU113は、改行指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、改行指令を受けたモーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWをY方向に移動(改行)させ、ワークWにおいてパターンを描画すべき新たな領域を描画エリアに移動させる。
【0051】
次いで、ステップS6において、CPU113は、キャリッジ走査指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7の移動を開始させる。
次いで、ステップS7において、CPU113は、後述する吐出処理を実施する。これにより、復路での描画が行われる。ステップS7における吐出処理が終了すると、復路での描画が終了する。
【0052】
次いで、ステップS8において、CPU113は、改行指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、改行指令を受けたモーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWをY方向に移動(改行)させ、ワークWにおいてパターンを描画すべき新たな領域を描画エリアに移動させる。
次いで、ステップS9において、CPU113は、描画データが終了したか否かを判定する。このとき、描画データが終了した(Yes)と判定されると、処理が終了する。他方で、描画データが終了していない(No)と判定されると、処理がステップS3に移行する。
【0053】
ここで、吐出処理について説明する。
吐出処理において、吐出ヘッド33とワークWとの間の隙間量Gが所定の範囲内に収まっている状態では、CPU113(図5)は、カウンター165のカウント値が所定値ずつ増加するたびにラッチ指令PMTを出力する。つまり、隙間量Gが所定の範囲内に収まっている状態では、図8に示すように、エンコーダー127から検出信号PLSが所定回数(本例では、5回)ずつ出力されるたびに、ラッチ指令PMTが出力される。図8に示す例では、区間L1、区間L2、及び区間L3のいずれにおいても、検出信号PLSが5回ずつ出力される。
前述したように、ラッチ指令PMTが出力されると、吐出ヘッド33から液滴55が吐出される。このことは、吐出ヘッド33とワークWとの間の隙間量Gが所定の範囲内に収まっている状態において、キャリッジ7がX方向に所定量ずつ移動するたびに、液滴55がワークWに向けて吐出されることを意味する。
【0054】
他方で、吐出ヘッド33とワークWとの間の隙間量Gが許容範囲を超えた状態では、この状態を補償する方向に液滴55の吐出タイミングが補正される。
例えば、隙間量Gが許容範囲を超えて大きい場合、図9に示すように、区間L5において、検出信号PLSが所定回数(本例では、5回)よりも少ない回数(本例では、4回)でラッチ指令PMTが出力される。
また、例えば、隙間量Gが許容範囲を超えて小さい場合、区間L6において、検出信号PLSが所定回数(本例では、5回)よりも多い回数(本例では、6回)でラッチ指令PMTが出力される。
【0055】
上記により、吐出ヘッド33とワークWとの間の隙間量Gが許容範囲を超えた状態において、この状態を補償する方向に液滴55の吐出タイミングを補正することができる。これにより、吐出ヘッド33とワークWとの間の隙間量Gがばらついていても、液滴55のワークWに対する着弾位置の精度を保ちやすくすることができる。
また、本実施形態では、吐出ヘッド33とワークWの間の隙間量Gを機械的に変化させなくても、液滴55の着弾位置の精度を保ちやすくすることができる。このため、ワークWへの描画にかかる時間が長くなることを避けやすくすることができるので、描画にかかる時間を短縮しやすくすることができる。
【0056】
吐出処理では、図10に示すように、CPU113は、まず、ステップS31において、変数Nに0を代入して、変数Nを初期化する。変数Nは、ラッチ信号LTを出力する間隔を規定する変数である。
次いで、ステップS32において、CPU113は、変数Nに定数Aを加算して新たな変数Nとする。定数Aは、エンコーダー127から出力される検出信号PLSの回数を指定する定数である。上述した図8及び図9に示す例では、定数Aの値は、5である。
次いで、ステップS33において、CPU113は、変位検出指令を変位測定制御部147(図5)に出力する。このとき、変位測定制御部147は、変位測定装置15を制御して、変位測定装置15にワークWのZ方向における変位量を検出させる。
次いで、ステップS34において、CPU113は、変位測定装置15が検出したワークWのZ方向における変位量から、吐出ヘッド33とワークWとの間の隙間量Gを演算する。
【0057】
次いで、ステップS35において、CPU113は、吐出ヘッド33とワークWとの間の隙間量Gが許容範囲外であるか否かを判定する。このとき、隙間量Gが許容範囲外である(Yes)と判定されると、処理がステップS36に移行する。他方で、隙間量Gが許容範囲外でない(No)と判定されると、処理がステップS38に移行する。
ステップS36において、CPU113は、補正数nを演算する。補正数nは、検出信号PLSの回数を加減するものである。
吐出ヘッド33とワークWとの間の隙間量Gが許容範囲を超えて大きい場合、補正数nは、負の値となる。例えば、図9に示す区間L5の例では、−1である。
他方で、吐出ヘッド33とワークWとの間の隙間量Gが許容範囲を超えて小さい場合、補正数nは、正の値となる。図9に示す区間L6の例では、+1である。
【0058】
次いで、ステップS37において、CPU113は、変数Nに補正数nを加算して新たな変数Nとする。
ステップS38において、CPU113は、カウンター165(図6)からカウントデータCIを読み取る。
次いで、ステップS39において、CPU113は、カウントデータCIに示されるカウント値が変数Nの値に等しくなったか否かを判定する。このとき、カウント値が変数Nの値に等しい(Yes)と判定されると、処理がステップS40に移行する。他方で、カウント値が変数Nの値に等しくない(No)と判定されると、処理がステップS38に移行する。
ステップS40において、CPU113は、ラッチ指令PMTをラッチ信号発生部167(図6)に出力する。
【0059】
次いで、ステップS41において、CPU113は、キャリッジ7の位置が折り返し位置に到達したか否かを判定する。
ここで、キャリッジ7が往路を移動しているときには、復路開始位置が折り返し位置となる。他方で、キャリッジ7が復路を移動しているときには、往路開始位置が折り返し位置となる。
ステップS41でキャリッジ7の位置が折り返し位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS42に移行する。他方で、キャリッジ7の位置が折り返し位置に到達していない(No)と判定されると、処理がステップS32に移行する。
【0060】
ステップS42において、CPU113は、吐出停止指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を停止して、各ノズル37からの液滴55の吐出を停止させる。
次いで、ステップS43において、CPU113は、キャリッジ停止指令をモーター制御部141(図5)に出力してから、処理を描画処理(図7)に戻す。このとき、ステップS43では、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7の移動を停止させる。
【0061】
本実施形態において、機能液53が液状体に対応し、吐出制御部145がヘッド制御部に対応し、変位測定装置15が検出部に対応し、キャリッジ搬送装置9が変位装置に対応し、エンコーダー127が変位量検出部に対応している。また、ラッチ信号LTが許可信号に対応し、ステップS36、S37、S38、S39及びS40の処理がヘッド制御部及び許可信号生成部に対応している。
本実施形態によれば、吐出ヘッド33とワークWとの間の隙間量Gが許容範囲を超えた状態において、この状態を補償する方向に液滴55の吐出タイミングを補正することができる。これにより、吐出ヘッド33とワークWとの間の隙間量Gがばらついていても、液滴55のワークWに対する着弾位置の精度を保ちやすくすることができる。
また、本実施形態では、吐出ヘッド33とワークWの間の隙間量Gを機械的に変化させなくても、液滴55の着弾位置の精度を保ちやすくすることができる。このため、ワークWへの描画にかかる時間が長くなることを避けやすくすることができるので、描画にかかる時間を短縮しやすくすることができる。
【0062】
また、本実施形態では、変位測定装置15がキャリッジ7に設けられている。このため、ワークWに対する吐出ヘッド33の位置が変化しても、変位測定装置15をワークWに対する吐出ヘッド33の変位に追従させながら、隙間量Gを検出させることができる。この結果、吐出ヘッド33から吐出させた液滴55が着弾するワークWの部位における隙間量Gを検出しやすくすることができる。
また、本実施形態では、ワークWに対するキャリッジ7の位置を変化させながら、隙間量Gを検出させる。これにより、変位測定装置15をワークWに対する吐出ヘッド33の変位に追従させながら、隙間量Gを検出させることができる。
なお、本実施形態では、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4種類の機能液53が採用されている。しかしながら、機能液53の色は、これらの4種類に限定されない。機能液53の色としては、例えば、これらの4種類にライトシアンやライトマゼンタなどを加えた6種類等、1種類以上の任意の種類の機能液53が採用され得る。
【符号の説明】
【0063】
1…液滴吐出装置、3…ワーク搬送装置、7…キャリッジ、9…キャリッジ搬送装置、13…ヘッドユニット、15…変位測定装置、33…吐出ヘッド、37…ノズル、53…機能液、55…液滴、65…キャリッジ位置検出装置、111…制御部、113…CPU、115…駆動制御部、127…エンコーダー、145…吐出制御部、147…変位測定制御部、161…駆動信号生成部、163…クロック信号発生部、165…カウンター、167…ラッチ信号発生部、W…ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対向した状態で、液状体を前記ワークに向けて液滴として吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドの駆動を制御するヘッド制御部と、
前記ワークと前記吐出ヘッドとの間の隙間量を検出する検出部と、を含み、
前記ヘッド制御部は、前記検出部からの前記隙間量の検出結果に基づいて、前記吐出ヘッドにおける前記液滴の吐出タイミングを補正する、
ことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記吐出ヘッドを支持するキャリッジと、
前記ワークに対する前記キャリッジの位置を変化させる変位装置と、を有し、
前記検出部は、前記キャリッジに設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記ワークに対する前記キャリッジの位置を変化させながら、前記隙間量を検出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記ワークに対する前記キャリッジの変位量を所定量ごとに検出し、検出した結果を前記所定量ごとに検出信号として出力する変位量検出部を有し、
前記ヘッド制御部は、
前記変位量検出部からの前記検出信号をカウントするカウンターと、
前記液滴の吐出を許可する許可信号を、前記カウンターのカウント値が所定値ずつ増加するたびに前記吐出ヘッドに出力する許可信号生成部と、を有し、
前記許可信号生成部は、前記隙間量の検出結果に基づいて、前記カウント値における前記所定値を増減させることによって、前記許可信号の出力タイミングをずらす、
ことを特徴とする請求項3に記載の液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−161343(P2011−161343A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25176(P2010−25176)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】