深溝玉軸受
【課題】玉と保持器の間の油膜保持性能を向上させ、且つ、潤滑油の適度な流入・排出を促進させることにより、軸受の温度上昇を避けて、軸受の許容回転数を上げることのできる転がり軸受を提供する。
【解決手段】深溝玉軸受は、内輪1と、外輪2と、内外輪間に転動自在に配置された複数の玉3と、樹脂製の冠型保持器4とを有し、軸方向一方側から潤滑油が供給される環境下で使用される。冠型保持器4の円環部4aは、潤滑油の供給側に向けて配置される。円環部4aと反対側のポケットの開口側には、外輪側に固定された状態で内輪の肩部1bに向けて延びる油溜板5が配置されている。油溜板5の内径部と内輪の外径部との間には、潤滑油が排出される環状の開口部10が形成されている。
【解決手段】深溝玉軸受は、内輪1と、外輪2と、内外輪間に転動自在に配置された複数の玉3と、樹脂製の冠型保持器4とを有し、軸方向一方側から潤滑油が供給される環境下で使用される。冠型保持器4の円環部4aは、潤滑油の供給側に向けて配置される。円環部4aと反対側のポケットの開口側には、外輪側に固定された状態で内輪の肩部1bに向けて延びる油溜板5が配置されている。油溜板5の内径部と内輪の外径部との間には、潤滑油が排出される環状の開口部10が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のトランスミッション等の高速回転で使用される深溝玉軸受に係り、特に、ポンプ等で潤滑油を軸受外部から軸受内部へ供給する強制潤滑方式等において、給油方向が一定の油潤滑の環境で使用される深溝玉軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の深溝玉軸受は、図15に示すように、外周面に内輪軌道溝101aを有する内輪101と、内周面に外輪軌道溝102aを有する外輪102と、内輪軌道溝101aと外輪軌道溝102aとの間に転動自在に配置された複数の玉103と、円環部104a及び該円環部104aの片方の軸方向端面に突設された複数の柱部104bを有し、該柱部104b間に形成された球面ポケット104cに玉103を収容する冠型保持器104と、を有する。玉103は、保持器104によって円周方向に所定の間隔で保持され、保持器104と共に公転する。
【0003】
このような深溝玉軸受は、例えば、自動車の変速機等の回転部に使用される場合、ポンプ等で潤滑油を供給する強制潤滑方式によって潤滑されることが多く、潤滑油100は軸受の内部を軸方向に貫通して流れ、変速機ユニット内を循環している。
【0004】
ところで、この深溝玉軸受を高速回転させると、遠心力により、冠型保持器104の円環部104aを捩れ軸として、柱部104bが外径側に開くため、冠型保持器104の球面ポケット104cの内径側と玉103との接触面圧が増大し、ポケット104cの内径側が摩耗し発熱が大きくなるという問題が発生する。
【0005】
また、ポケット104cの内径側の摩耗が進行すると、冠型保持器104の振れ回りが大きくなり、冠型保持器104の外径側と外輪102の内周面とが接触し、柱部104bが摩耗して最悪の場合は破断するという問題も発生する。
【0006】
そのような問題を解決するには、ポケットの内径側と玉との潤滑状態を良くする必要があるが、軸受回転時には、潤滑油も遠心力を受け、外径側を流れようとするため、何らかの対策が必要となる。
【0007】
例えば、特許文献1では、図16に示すように、冠型保持器104のポケット開口側(円環部と反対側)を潤滑油100の供給側に向けると共に、反対側にシール部材105を設けることで、潤滑油100を玉103に直接付着させるようにしている。
【特許文献1】特開2007−177858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図16に示すような深溝玉軸受において、一方側から潤滑油100を強制的に供給する場合、その反対側(潤滑油の排出側)にシール部材105があると、潤滑油100の貫通性が悪くなり、潤滑油ポンプの負荷増大に繋がる。また、冠型保持器104の円環部104aがシール部材105側にあると、シール部材105と玉103との間に溜まった潤滑油100の中を保持器104の円環部104aが回転することになるため、撹拌抵抗が大きくなって、トルク増大に繋がるおそれがある。
【0009】
また、供給された潤滑油100が、遠心力により軸受外径側に飛ばされるので、冠型保持器104の柱部104bの先端104p側(特に内径側)に十分に行き渡らず、冠型保持器104と玉103の摺動部で摩耗や焼き付きを起こすおそれがある。この問題は、軸受が高速化するほど遠心力が大きくなり顕著になるため、実際に高速化を実現することは難しいと言わざるを得ない。
【0010】
特に、図17、図18に示すように、冠型保持器104の柱部104bの先端104pは、冠型保持器104が軸方向にガタついた際に保持器104が抜けまいとするパチン力により玉103に押し付けられる部分であり、非常に摩耗しやすく、その部分に対する潤滑不足は、高速化する上での障害となる。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、玉と保持器の間の油膜保持性能を向上させ、且つ、潤滑油の適度な流入・排出を促進させることにより、軸受の温度上昇を避けて、軸受の許容回転数を上げることのできる転がり軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、本発明に係る深溝玉軸受は、下記(1)〜(9)を特徴としている。
(1) 外周面に内輪軌道溝を有する内輪と、内周面に外輪軌道溝を有する外輪と、前記外輪軌道溝と前記内輪軌道溝との間に転動自在に配置された複数の玉と、円環部及び該円環部の片方の軸方向端面に突設された複数の柱部を有し、該柱部間に形成されたポケットに前記玉を収容することで該玉を円周方向に所定の間隔で保持する樹脂製の冠型保持器と、を備え、潤滑油が前記玉に対して軸方向一方側から供給され、前記玉に対して軸方向他方側から排出される環境下で使用される深溝玉軸受において、
前記冠型保持器の前記円環部は、前記軸方向一方側に向けて配置されると共に、
前記軸方向他方側には、前記外輪側に固定された状態で前記内輪の肩部に向けて延びる油溜板が配置されており、且つ、
該油溜板の内径部と前記内輪の外径部との間には、潤滑油が排出される環状の開口部が形成されていることを特徴とする深溝玉軸受。
(2) 前記環状の開口部を形成する前記内輪の外径部と前記油溜板の内径部との最短距離が前記玉の直径の9%以上であることを特徴とする(1)に記載の深溝玉軸受。
(3) 前記環状の開口部を形成する前記内輪の外径部と前記油溜板の内径部との最短距離が前記玉の直径の11%以上であることを特徴とする(1)に記載の深溝玉軸受。
(4) 前記油溜板の内径が前記玉の公転直径以下とされていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の深溝玉軸受。
(5) 前記油溜板の内径が前記冠型保持器の内径以下とされていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の深溝玉軸受。
(6) 前記油溜板と前記玉との軸方向最短距離が、前記玉と前記外輪の端面との最短距離の半分以下とされていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の深溝玉軸受。
(7) 前記軸方向他方側の前記内輪の肩部は、軌道溝寄り部分の外径よりも端面寄り部分の外径が小さくなるように形成されることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の深溝玉軸受。
(8) 前記軸方向他方側の前記内輪の肩部には、軌道溝寄り部分の外径よりも端面寄り部分の外径が小さくなるように段差が設けられていることを特徴とする(7)に記載の深溝玉軸受。
(9) 前記軸方向他方側の前記内輪の肩部には、軌道溝寄り部分の外径よりも端面寄り部分の外径が小さくなるようにテーパが設けられていることを特徴とする(7)に記載の深溝玉軸受。
【発明の効果】
【0013】
上記構成の深溝玉軸受によれば、潤滑油が排出される軸方向他方側に油溜板が配置されているので、油溜板と玉との間の空間に潤滑油が溜まり、軸受内部がいわゆる油浴に近い状態となる。また、樹脂製の冠型保持器の円環部が、潤滑油が供給される軸方向一方側に向けられているので、油溜板と玉との間の空間に溜まった潤滑油による撹拌抵抗が抑制されると共に、潤滑油が玉に付着しやすくなる。そのため冠型保持器のポケットと玉との潤滑状態がよくなり、高速回転時の冠型保持器の摩耗を抑制することができる。特に、冠型保持器の柱部先端の内径側の部分を油溜板による油溜め効果によって油浴状態にすることができるため、当該部分の摩耗を抑制することができる。なお、冠型保持器の円環部が、潤滑油の溜まる側と反対側になるためにポケットの底の潤滑油が不足するおそれがあるが、この部分は面接触であるため摩耗しにくく問題はない。
【0014】
また、油溜板の内径部と内輪の外径部との間には、潤滑油の排出口となる環状の開口部が確保されているので、潤滑油が軸受を貫通しやすくなり、潤滑ポンプの負荷増大を抑制することができる。また、油貫通性がよくなるので、軸受の温度上昇を抑制することができ、冠型保持器の変形や摩耗を防止し、耐久寿命の向上が図れる。
また、この深溝玉軸受では、油溜板を片側だけに設けているので、両側に設ける場合に比べてコストを抑えることができる。
【0015】
また、内輪の外径部と油溜板の内径部との最短距離を玉の直径の9%以上としているので、油貫通性がよくなるので、潤滑ポンプの負荷増大を抑制でき、且つ、軸受の温度上昇を抑制することができる。
【0016】
さらに、内輪の外径部と油溜板の内径部との最短距離を玉の直径の11%以上としているので、油貫通性がさらによくなるので、軸受の温度上昇をより一層確実に抑制することができる。
【0017】
加えて、油溜板の内径を玉の公転直径以下としているので、玉と保持器の摺動部分、特に冠型保持器の柱部先端の内径側の部分に潤滑油を行き渡せることができ、その部分の焼き付きを有効に防止することができて、軸受の許容回転数を上げることができる。従って、潤滑油を溜め込む性能と油貫通性との両立を図ることができ、潤滑状態をよくすることができる。
【0018】
また、油溜板の内径が保持器の内径以下となっているので、油溜板で塞き止められた潤滑油が、高速回転時に玉との接触面圧が高くなるポケット内径側に付着しやすくなり、潤滑性能が向上する。
【0019】
また、油溜板と玉との軸方向最短距離を、玉と外輪の端面との最短距離の半分以下にすることにより、玉と油溜板間の空間体積を小さくできるため、供給油量が少なくても、玉と油溜板間に潤滑油が溜まりやすくなり、潤滑油がより一層玉に付着しやすくなる。
【0020】
また、前記軸方向他方側の前記内輪の肩部は、軌道溝寄り部分の外径よりも端面寄り部分の外径が小さくなるように形成されるので、潤滑油の排出口となる開口部を大きめに確保しつつ、油溜板の内径を小さくすることができる。その結果、油溜板で塞き止められた潤滑油が、高速回転時に玉との接触面圧が高くなるポケット内径側に付着しやすくなる。
【0021】
また、内輪の肩部に段差又はテーパが設けられることで、容易な加工で、油溜板の内径部と内輪の外径部との間に形成される開口部の寸法を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の深溝玉軸受に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の深溝玉軸受の要部断面図、図2は冠型保持器の斜視図、図3は油溜板の斜視図である。
【0024】
図1に示すように、この深溝玉軸受は、外周面に内輪軌道溝1aを有する内輪1と、内周面に外輪軌道溝2aを有する外輪2と、内輪軌道溝1aと外輪軌道溝2aとの間に転動自在に配置された複数の玉(鋼球)3と、玉3を円周方向に所定の間隔で保持する樹脂製の冠型保持器4と、内輪1と外輪2の軸方向の一方の端面側に設けられた油溜板5と、を備えている。
【0025】
冠型保持器4は、図2に示すように、円環部4aと、該円環部4aの片方の軸方向端面に突設されて一定間隔で並ぶ複数の柱部4bと、隣接する柱部4b間に確保された球面状内側面を有するポケット4cと、を備えるものであり、玉3を各ポケット4cに収容することで、玉3を円周方向に所定の間隔で保持している。
【0026】
この深溝玉軸受は、図1に示すように、玉3に対して軸方向一方側(矢印A)から潤滑油が供給され、玉3に対して軸方向他方側から排出される環境下で使用されるものであり、冠型保持器4の円環部4aは、潤滑油が供給される軸方向一方側に向けて配置され、油溜板5は、軸方向他方側に配置されている。
【0027】
油溜板5は、図3に示すような環状の板であり、図1に示すように、外輪2の外輪軌道溝2aの側方の肩部に形成された係合溝2bに外周部5aを係合させることにより外輪2に固定され、外輪2の内周面に嵌合した段部5bを介して、環状板部5cを内輪1の内輪軌道溝1aの側方の肩部1bの近くまで延ばしている。そして、油溜板5の内径部5dと内輪1の肩部1bの外径部との間に、潤滑油の排出される環状の開口部10が確保されている。
【0028】
この場合、環状の開口部10を形成する内輪1の肩部1bの外径部と油溜板5の内径部5dとの最短距離yが玉3の直径Dwの9%以上、より望ましくは11%以上に設定されている。この場合、最短距離yは、油溜板5の内径をDs、内輪1の肩部1bの外径をD1とした場合、
y=(Ds−D1)/2
となる。また、油溜板5の内径Dsは、玉3の公転直径PCD以下に設定されており、更に冠型保持器4の内径Dh以下に設定されている。また、油溜板5の環状板部5cと玉3との軸方向最短距離Lsが、玉3と外輪2の端面との最短距離Ltの半分以下(本実施形態では、Ltの20%)に設定されている。
【0029】
以上の構成の深溝玉軸受によれば、潤滑油が排出される側である軸方向他方側に油溜板5が配置されているので、油溜板5と玉3との間の空間に潤滑油が溜まり、軸受内部がいわゆる油浴に近い状態となる。また、冠型保持器4の円環部4aが潤滑油が供給される側である軸方向一方側に向けられているので、油溜板5と玉3との間の空間に溜まった潤滑油による撹拌抵抗が抑制されると共に、潤滑油が玉3に付着しやすくなる。
【0030】
そのため、冠型保持器4のポケット4cと玉3との潤滑状態がよくなり、高速回転時の冠型保持器4の摩耗を抑制することができる。特に冠型保持器4の柱部4bの先端4pの内径側の部分を油溜板5による油溜め効果によって油浴状態にすることができるため、当該部分の摩耗を抑制することができる。なお、冠型保持器4の円環部4aが、潤滑油の溜まる側と反対側になるためにポケット4cの底の潤滑油が不足するおそれがあるが、この部分は面接触であるため摩耗しにくく問題はない。
【0031】
また、油溜板5の内径部5dと内輪1の肩部1bの外径部との間には、潤滑油の排出口となる環状の開口部10が確保されているので、潤滑油が軸受を貫通しやすくなり、潤滑ポンプの負荷増大を抑制することができる。また、油貫通性がよくなるので、軸受の温度上昇を抑制することができ、冠型保持器4の変形や摩耗を防止し、耐久寿命の向上が図れる。また、この深溝玉軸受では、油溜板5を片側だけに設けているので、両側に設ける場合に比べてコストを抑えることができる。
【0032】
また、内輪1の肩部1bの外径部と油溜板5の内径部5dとの最短距離yを玉3の直径Dwの9%以上、望ましくは11%以上としているので、
【0033】
また、この深溝玉軸受では、油溜板5の内径Dsを玉3の公転直径PCD以下としているので、玉3と保持器4の摺動部分、特に冠型保持器4の柱部4bの先端の内径側の部分に潤滑油を行き渡せることができ、その部分の焼き付きを有効に防止することができて、軸受の許容回転数を上げることができる。従って、油溜板5により潤滑油を溜め込む性能と油貫通性との両立を図ることができ、潤滑状態をよくすることができる。特に、油溜板5の内径Dsが保持器4の内径Dh以下となっているので、油溜板5で塞き止められた潤滑油が、高速回転時に玉3との接触面圧が高くなるポケット4cの内径側に付着しやすくなり、潤滑性能が向上する。
【0034】
さらに、この深溝玉軸受では、油溜板5と玉3との軸方向最短距離Lsを、玉3と外輪2の端面との最短距離Ltの半分以下にすることにより、玉3と油溜板5間の空間体積を小さくできるため、供給油量が少なくても、玉3と油溜板5間に潤滑油が溜まりやすくなり、潤滑油がより一層玉に付着しやすくなる。
【0035】
<第2実施形態>
図4は第2実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
本実施形態の深溝玉軸受では、潤滑油排出側の内輪1の肩部1bの外径面に段差1cが設けられており、その段差1cにより、内輪1の肩部1bは、軌道溝寄り部分の外径よりも端面寄り部分の外径が小さくなるように形成されている。なお、図1の第1実施形態と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
このように内輪1の肩部1bに段差1cが設けられることにより、潤滑油の排出口となる開口部10を大きめに確保しつつ、油溜板5の内径Dsを小さくすることができる。そのため、油溜板5で塞き止められた潤滑油が、高速回転時に玉3との接触面圧が高くなるポケット4cの内径側に付着しやすくなり、高速回転時に玉3との接触面圧が高くなるポケット4cの内径側の摩耗を抑制できる。この場合、内輪1の肩部1bに段差1cを設けることで、肩部1bの外径を変化させているので、容易な加工で、油溜板5の内径部5dと内輪1の肩部1bの外径部との間に形成される開口部10の寸法を与えることができる。その他の効果は第1実施形態と同様である。
【0037】
<第3実施形態>
図5は第3実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
本実施形態の深溝玉軸受では、潤滑油排出側の内輪1の肩部1bの外径面にテーパ1dが設けられており、そのテーパ1dにより、内輪1の肩部1bは、軌道溝寄り部分の外径よりも端面寄り部分の外径が小さくなるように形成されている。なお、図1の第1実施形態と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
このように内輪1の肩部1bにテーパ1dが設けられることにより、潤滑油の排出口となる開口部10を大きめに確保しつつ、油溜板5の内径Dsを小さくすることができる。そのため、油溜板5で塞き止められた潤滑油が、高速回転時に玉3との接触面圧が高くなるポケット4cの内径側に付着しやすくなり、高速回転時に玉3との接触面圧が高くなるポケット4cの内径側の摩耗を抑制できる。この場合、内輪1の肩部1bにテーパ1dを設けることで、肩部1bの外径を変化させているので、油溜板5の内径部5dの軸方向の位置を変えるだけで、油溜板5の内径部5dと内輪1の肩部との間に確保される開口部10の寸法を簡単に変えることができる。その他の効果は第1実施形態と同様である。
【0039】
<第4実施形態>
図6は第4実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
本実施形態の深溝玉軸受では、油溜板15の環状板部5cを、玉3の外形に沿った湾曲断面形状に形成している。このようにした場合、油溜板15で塞き止められた潤滑油が、より玉3や冠型保持器4のポケット4cに付着しやすくなる。その他の効果は第1実施形態と同様である。
【0040】
<第5実施形態>
図7は第5実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
本実施形態の深溝玉軸受では、油溜板25の段部を省略し、環状板部5cを斜め、つまり円錐板状に形成して、環状板部5cの内周端である内径部5dを、玉3に近づけている。このようにした場合、外輪2の肩部に油溜まりを確保することができ、潤滑油が少ない場合に、より多くの潤滑油を軸受内に溜めておける。その他の効果は第1実施形態と同様である。
【0041】
<第6実施形態>
図8は第6実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
本実施形態の深溝玉軸受では、油溜板35としてスリンガーを用いている。スリンガーは外部からの雨や埃りなどを振りきり軸受を保護するためのものであり、これを利用することにより、外輪2に係合溝2bを設けなくて済むようになる。その他の効果は第1実施形態と同様である。
【0042】
<第7実施形態>
図9は第7実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
本実施形態の深溝玉軸受では、段部5bを設けずに、油溜板45の環状板部5cを、外輪2の係合溝2bに嵌まる外周部5aより軸方向外側に曲げて形成し、軸受端面に近い側に位置させている。このように、油溜板45の環状板部5cを軸受端面に近い側に位置させた場合、玉3と油溜板45との間の空間を大きくとることができるため、多くの量の潤滑油を玉3と油溜板45との間の空間に溜めておくことができる。
【0043】
また、この軸受では、内輪1の肩部1bの外径面に環状溝1eを形成し、その環状溝1eより軸受端面側の外径を環状溝1eの内側の肩部1bの外径よりも一段小さく設定している。そして、油溜板45の内径部5dを環状溝1eよりも軸受端面側の外径面に隙間をおいて対向させ、その隙間を潤滑油の排出する開口部10としている。その他の構成は、第1実施形態と同様であり、同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
本実施形態の深溝玉軸受によれば、上述したように軸受の内部に多くの潤滑油を溜めておくことができるので、第1実施形態の効果をより顕著に奏することが期待できる。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0046】
例えば、上述の各実施形態では、油溜板5、15、25、35、45は、外輪2の肩部に直接取り付けられているが、図10に示すように、油溜板として、ハウジング55の側板55aが用いられてもよいし、図11に示すように、ハウジング55の側板55aと外輪2の側面との間に環状板56を挟み、その環状板56を油溜板として利用してもよい。
【0047】
図10の例の場合は、シールド状の油溜板を特別に用意しなくてもよい上に、圧入等の工程も省略でき、コストが削減できる。また、図11に示す例の場合は、ハウジング55に油溜板としての加工を行う必要がなくなり、第1実施形態〜第7実施形態と違い、単純な形の環状板26を、ハウジング55の側板55aに簡単に取り付けるだけで、油溜板として機能させることができる。
【0048】
<試験1>
次に、図9の構成の深溝玉軸受(軸受名番6011:軸受内径=55mm、軸受外径=90mm、軸受幅18mm)を用いて、振れ回り試験を行った。本試験1では、油溜板45の内径Dsを65mmに固定し、内輪1の肩部1bの端部外径D1を変化させることにより、y/Dw(隙間/玉径)を変化させた深溝玉軸受を1個ずつ用意し、それぞれを次の条件下で回転させて、振れ回りが発生するまでの時間を調査した。なお、軸受構成及び試験条件は、以下の通りである。
【0049】
<軸受構成>
・ 保持器:球面ポケットを有する冠型保持器
・ 保持器材料:カーボン繊維15%強化46ナイロン
・ 冠型保持器の内径Dh=67.9mm
・ 玉の公転直径PCD=72.5mm
【0050】
<試験条件>
・回転数:30000rpm
・給油温度:120℃
・潤滑方法:VG24の鉱油を強制潤滑給油0.1(l/min)
・荷重:3400N
・試験時間:20Hr,50Hr,100Hr,以後100Hr毎にTP確認
【0051】
振れ回り試験の結果は、表1及び図12の通りであった。
【0052】
【表1】
【0053】
図12に示した振れ回り試験結果により、y/Dwが9%以上となると、深溝玉軸受の振れ回り開始時間の向上がほぼ飽和し、y/Dwが11%以上となると、振れ回り開始時間の向上が完全に飽和することが分かる。これより、y/Dwは9%以上、望ましくは11%以上であると、振れ回り低減に対して大きな効果が得られることが検証された。
【0054】
<試験2>
本試験2では、図9の深溝玉軸受(軸受名番6011)において、y=1.14mm(y/Dw=0.11)を固定し、冠型保持器4の内径Dhと油溜板45の内径Dsの差を変化させた(ただし、冠型保持器4の内径Dh(=68.3mm)は固定)場合の振れ回りの発生の有無を観察した。試験条件は試験1と同様である。
【0055】
振れ回り試験の結果は、表2及び図13の通りであった。
【0056】
【表2】
【0057】
図13のグラフより分かるように、油溜板45の内径Dsが冠型保持器4の内径Dhを超えると(DhーDsがマイナス)、高速回転時の遠心力により油溜板45の内径側の潤滑油が、図14に示すごとく、軸受外周側に飛ばされるため、冠型保持器4の柱部4bの先端4pの内径側の玉3との摺動部に油浴部分を形成できなくなり、振れ回りまでの時間が短くなる。従って、油溜板45の内径Dsが保持器4の内径Dh以下ならば、冠型保持器4と玉3の間に潤滑油が十分に行き渡り、耐振れ回り性を向上させることができると言えることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
【図2】同軸受に使用する冠型保持器の斜視図である。
【図3】同軸受に使用する油溜板の斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
【図8】本発明の第6実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
【図9】本発明の第7実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態の概略説明用の要部断面図である。
【図11】本発明の更に他の実施形態の概略説明用の要部断面図である。
【図12】本発明の第7実施形態の軸受における数値限定の意義を検証する第1の試験結果を示すグラフである。
【図13】同軸受の第2の試験結果を示すグラフである。
【図14】同軸受の数値限定の意義を説明するために示す断面図である。
【図15】従来の冠型保持器を有した深溝玉軸受の要部断面図である。
【図16】片側にシール材を有した従来の深溝玉軸受の要部断面図である。
【図17】同軸受の冠型保持器が変形する箇所を示す要部斜視図である。
【図18】(a)及び(b)は同種の保持器の問題点の説明のために示す側面図及び正面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 内輪
1a 内輪軌道溝
1b 肩部
2 外輪
2a 外輪軌道溝
3 玉
4 冠型保持器
4a 円環部
4b 柱部
4c ポケット
4p 先端部
5,15,25,35,45 油溜板
100 潤滑油
D1 内輪の外径
Ds 油溜板の内径
Dh 冠型保持器の内径
PCD 玉の公転直径
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のトランスミッション等の高速回転で使用される深溝玉軸受に係り、特に、ポンプ等で潤滑油を軸受外部から軸受内部へ供給する強制潤滑方式等において、給油方向が一定の油潤滑の環境で使用される深溝玉軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の深溝玉軸受は、図15に示すように、外周面に内輪軌道溝101aを有する内輪101と、内周面に外輪軌道溝102aを有する外輪102と、内輪軌道溝101aと外輪軌道溝102aとの間に転動自在に配置された複数の玉103と、円環部104a及び該円環部104aの片方の軸方向端面に突設された複数の柱部104bを有し、該柱部104b間に形成された球面ポケット104cに玉103を収容する冠型保持器104と、を有する。玉103は、保持器104によって円周方向に所定の間隔で保持され、保持器104と共に公転する。
【0003】
このような深溝玉軸受は、例えば、自動車の変速機等の回転部に使用される場合、ポンプ等で潤滑油を供給する強制潤滑方式によって潤滑されることが多く、潤滑油100は軸受の内部を軸方向に貫通して流れ、変速機ユニット内を循環している。
【0004】
ところで、この深溝玉軸受を高速回転させると、遠心力により、冠型保持器104の円環部104aを捩れ軸として、柱部104bが外径側に開くため、冠型保持器104の球面ポケット104cの内径側と玉103との接触面圧が増大し、ポケット104cの内径側が摩耗し発熱が大きくなるという問題が発生する。
【0005】
また、ポケット104cの内径側の摩耗が進行すると、冠型保持器104の振れ回りが大きくなり、冠型保持器104の外径側と外輪102の内周面とが接触し、柱部104bが摩耗して最悪の場合は破断するという問題も発生する。
【0006】
そのような問題を解決するには、ポケットの内径側と玉との潤滑状態を良くする必要があるが、軸受回転時には、潤滑油も遠心力を受け、外径側を流れようとするため、何らかの対策が必要となる。
【0007】
例えば、特許文献1では、図16に示すように、冠型保持器104のポケット開口側(円環部と反対側)を潤滑油100の供給側に向けると共に、反対側にシール部材105を設けることで、潤滑油100を玉103に直接付着させるようにしている。
【特許文献1】特開2007−177858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図16に示すような深溝玉軸受において、一方側から潤滑油100を強制的に供給する場合、その反対側(潤滑油の排出側)にシール部材105があると、潤滑油100の貫通性が悪くなり、潤滑油ポンプの負荷増大に繋がる。また、冠型保持器104の円環部104aがシール部材105側にあると、シール部材105と玉103との間に溜まった潤滑油100の中を保持器104の円環部104aが回転することになるため、撹拌抵抗が大きくなって、トルク増大に繋がるおそれがある。
【0009】
また、供給された潤滑油100が、遠心力により軸受外径側に飛ばされるので、冠型保持器104の柱部104bの先端104p側(特に内径側)に十分に行き渡らず、冠型保持器104と玉103の摺動部で摩耗や焼き付きを起こすおそれがある。この問題は、軸受が高速化するほど遠心力が大きくなり顕著になるため、実際に高速化を実現することは難しいと言わざるを得ない。
【0010】
特に、図17、図18に示すように、冠型保持器104の柱部104bの先端104pは、冠型保持器104が軸方向にガタついた際に保持器104が抜けまいとするパチン力により玉103に押し付けられる部分であり、非常に摩耗しやすく、その部分に対する潤滑不足は、高速化する上での障害となる。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、玉と保持器の間の油膜保持性能を向上させ、且つ、潤滑油の適度な流入・排出を促進させることにより、軸受の温度上昇を避けて、軸受の許容回転数を上げることのできる転がり軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、本発明に係る深溝玉軸受は、下記(1)〜(9)を特徴としている。
(1) 外周面に内輪軌道溝を有する内輪と、内周面に外輪軌道溝を有する外輪と、前記外輪軌道溝と前記内輪軌道溝との間に転動自在に配置された複数の玉と、円環部及び該円環部の片方の軸方向端面に突設された複数の柱部を有し、該柱部間に形成されたポケットに前記玉を収容することで該玉を円周方向に所定の間隔で保持する樹脂製の冠型保持器と、を備え、潤滑油が前記玉に対して軸方向一方側から供給され、前記玉に対して軸方向他方側から排出される環境下で使用される深溝玉軸受において、
前記冠型保持器の前記円環部は、前記軸方向一方側に向けて配置されると共に、
前記軸方向他方側には、前記外輪側に固定された状態で前記内輪の肩部に向けて延びる油溜板が配置されており、且つ、
該油溜板の内径部と前記内輪の外径部との間には、潤滑油が排出される環状の開口部が形成されていることを特徴とする深溝玉軸受。
(2) 前記環状の開口部を形成する前記内輪の外径部と前記油溜板の内径部との最短距離が前記玉の直径の9%以上であることを特徴とする(1)に記載の深溝玉軸受。
(3) 前記環状の開口部を形成する前記内輪の外径部と前記油溜板の内径部との最短距離が前記玉の直径の11%以上であることを特徴とする(1)に記載の深溝玉軸受。
(4) 前記油溜板の内径が前記玉の公転直径以下とされていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の深溝玉軸受。
(5) 前記油溜板の内径が前記冠型保持器の内径以下とされていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の深溝玉軸受。
(6) 前記油溜板と前記玉との軸方向最短距離が、前記玉と前記外輪の端面との最短距離の半分以下とされていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の深溝玉軸受。
(7) 前記軸方向他方側の前記内輪の肩部は、軌道溝寄り部分の外径よりも端面寄り部分の外径が小さくなるように形成されることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の深溝玉軸受。
(8) 前記軸方向他方側の前記内輪の肩部には、軌道溝寄り部分の外径よりも端面寄り部分の外径が小さくなるように段差が設けられていることを特徴とする(7)に記載の深溝玉軸受。
(9) 前記軸方向他方側の前記内輪の肩部には、軌道溝寄り部分の外径よりも端面寄り部分の外径が小さくなるようにテーパが設けられていることを特徴とする(7)に記載の深溝玉軸受。
【発明の効果】
【0013】
上記構成の深溝玉軸受によれば、潤滑油が排出される軸方向他方側に油溜板が配置されているので、油溜板と玉との間の空間に潤滑油が溜まり、軸受内部がいわゆる油浴に近い状態となる。また、樹脂製の冠型保持器の円環部が、潤滑油が供給される軸方向一方側に向けられているので、油溜板と玉との間の空間に溜まった潤滑油による撹拌抵抗が抑制されると共に、潤滑油が玉に付着しやすくなる。そのため冠型保持器のポケットと玉との潤滑状態がよくなり、高速回転時の冠型保持器の摩耗を抑制することができる。特に、冠型保持器の柱部先端の内径側の部分を油溜板による油溜め効果によって油浴状態にすることができるため、当該部分の摩耗を抑制することができる。なお、冠型保持器の円環部が、潤滑油の溜まる側と反対側になるためにポケットの底の潤滑油が不足するおそれがあるが、この部分は面接触であるため摩耗しにくく問題はない。
【0014】
また、油溜板の内径部と内輪の外径部との間には、潤滑油の排出口となる環状の開口部が確保されているので、潤滑油が軸受を貫通しやすくなり、潤滑ポンプの負荷増大を抑制することができる。また、油貫通性がよくなるので、軸受の温度上昇を抑制することができ、冠型保持器の変形や摩耗を防止し、耐久寿命の向上が図れる。
また、この深溝玉軸受では、油溜板を片側だけに設けているので、両側に設ける場合に比べてコストを抑えることができる。
【0015】
また、内輪の外径部と油溜板の内径部との最短距離を玉の直径の9%以上としているので、油貫通性がよくなるので、潤滑ポンプの負荷増大を抑制でき、且つ、軸受の温度上昇を抑制することができる。
【0016】
さらに、内輪の外径部と油溜板の内径部との最短距離を玉の直径の11%以上としているので、油貫通性がさらによくなるので、軸受の温度上昇をより一層確実に抑制することができる。
【0017】
加えて、油溜板の内径を玉の公転直径以下としているので、玉と保持器の摺動部分、特に冠型保持器の柱部先端の内径側の部分に潤滑油を行き渡せることができ、その部分の焼き付きを有効に防止することができて、軸受の許容回転数を上げることができる。従って、潤滑油を溜め込む性能と油貫通性との両立を図ることができ、潤滑状態をよくすることができる。
【0018】
また、油溜板の内径が保持器の内径以下となっているので、油溜板で塞き止められた潤滑油が、高速回転時に玉との接触面圧が高くなるポケット内径側に付着しやすくなり、潤滑性能が向上する。
【0019】
また、油溜板と玉との軸方向最短距離を、玉と外輪の端面との最短距離の半分以下にすることにより、玉と油溜板間の空間体積を小さくできるため、供給油量が少なくても、玉と油溜板間に潤滑油が溜まりやすくなり、潤滑油がより一層玉に付着しやすくなる。
【0020】
また、前記軸方向他方側の前記内輪の肩部は、軌道溝寄り部分の外径よりも端面寄り部分の外径が小さくなるように形成されるので、潤滑油の排出口となる開口部を大きめに確保しつつ、油溜板の内径を小さくすることができる。その結果、油溜板で塞き止められた潤滑油が、高速回転時に玉との接触面圧が高くなるポケット内径側に付着しやすくなる。
【0021】
また、内輪の肩部に段差又はテーパが設けられることで、容易な加工で、油溜板の内径部と内輪の外径部との間に形成される開口部の寸法を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の深溝玉軸受に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の深溝玉軸受の要部断面図、図2は冠型保持器の斜視図、図3は油溜板の斜視図である。
【0024】
図1に示すように、この深溝玉軸受は、外周面に内輪軌道溝1aを有する内輪1と、内周面に外輪軌道溝2aを有する外輪2と、内輪軌道溝1aと外輪軌道溝2aとの間に転動自在に配置された複数の玉(鋼球)3と、玉3を円周方向に所定の間隔で保持する樹脂製の冠型保持器4と、内輪1と外輪2の軸方向の一方の端面側に設けられた油溜板5と、を備えている。
【0025】
冠型保持器4は、図2に示すように、円環部4aと、該円環部4aの片方の軸方向端面に突設されて一定間隔で並ぶ複数の柱部4bと、隣接する柱部4b間に確保された球面状内側面を有するポケット4cと、を備えるものであり、玉3を各ポケット4cに収容することで、玉3を円周方向に所定の間隔で保持している。
【0026】
この深溝玉軸受は、図1に示すように、玉3に対して軸方向一方側(矢印A)から潤滑油が供給され、玉3に対して軸方向他方側から排出される環境下で使用されるものであり、冠型保持器4の円環部4aは、潤滑油が供給される軸方向一方側に向けて配置され、油溜板5は、軸方向他方側に配置されている。
【0027】
油溜板5は、図3に示すような環状の板であり、図1に示すように、外輪2の外輪軌道溝2aの側方の肩部に形成された係合溝2bに外周部5aを係合させることにより外輪2に固定され、外輪2の内周面に嵌合した段部5bを介して、環状板部5cを内輪1の内輪軌道溝1aの側方の肩部1bの近くまで延ばしている。そして、油溜板5の内径部5dと内輪1の肩部1bの外径部との間に、潤滑油の排出される環状の開口部10が確保されている。
【0028】
この場合、環状の開口部10を形成する内輪1の肩部1bの外径部と油溜板5の内径部5dとの最短距離yが玉3の直径Dwの9%以上、より望ましくは11%以上に設定されている。この場合、最短距離yは、油溜板5の内径をDs、内輪1の肩部1bの外径をD1とした場合、
y=(Ds−D1)/2
となる。また、油溜板5の内径Dsは、玉3の公転直径PCD以下に設定されており、更に冠型保持器4の内径Dh以下に設定されている。また、油溜板5の環状板部5cと玉3との軸方向最短距離Lsが、玉3と外輪2の端面との最短距離Ltの半分以下(本実施形態では、Ltの20%)に設定されている。
【0029】
以上の構成の深溝玉軸受によれば、潤滑油が排出される側である軸方向他方側に油溜板5が配置されているので、油溜板5と玉3との間の空間に潤滑油が溜まり、軸受内部がいわゆる油浴に近い状態となる。また、冠型保持器4の円環部4aが潤滑油が供給される側である軸方向一方側に向けられているので、油溜板5と玉3との間の空間に溜まった潤滑油による撹拌抵抗が抑制されると共に、潤滑油が玉3に付着しやすくなる。
【0030】
そのため、冠型保持器4のポケット4cと玉3との潤滑状態がよくなり、高速回転時の冠型保持器4の摩耗を抑制することができる。特に冠型保持器4の柱部4bの先端4pの内径側の部分を油溜板5による油溜め効果によって油浴状態にすることができるため、当該部分の摩耗を抑制することができる。なお、冠型保持器4の円環部4aが、潤滑油の溜まる側と反対側になるためにポケット4cの底の潤滑油が不足するおそれがあるが、この部分は面接触であるため摩耗しにくく問題はない。
【0031】
また、油溜板5の内径部5dと内輪1の肩部1bの外径部との間には、潤滑油の排出口となる環状の開口部10が確保されているので、潤滑油が軸受を貫通しやすくなり、潤滑ポンプの負荷増大を抑制することができる。また、油貫通性がよくなるので、軸受の温度上昇を抑制することができ、冠型保持器4の変形や摩耗を防止し、耐久寿命の向上が図れる。また、この深溝玉軸受では、油溜板5を片側だけに設けているので、両側に設ける場合に比べてコストを抑えることができる。
【0032】
また、内輪1の肩部1bの外径部と油溜板5の内径部5dとの最短距離yを玉3の直径Dwの9%以上、望ましくは11%以上としているので、
【0033】
また、この深溝玉軸受では、油溜板5の内径Dsを玉3の公転直径PCD以下としているので、玉3と保持器4の摺動部分、特に冠型保持器4の柱部4bの先端の内径側の部分に潤滑油を行き渡せることができ、その部分の焼き付きを有効に防止することができて、軸受の許容回転数を上げることができる。従って、油溜板5により潤滑油を溜め込む性能と油貫通性との両立を図ることができ、潤滑状態をよくすることができる。特に、油溜板5の内径Dsが保持器4の内径Dh以下となっているので、油溜板5で塞き止められた潤滑油が、高速回転時に玉3との接触面圧が高くなるポケット4cの内径側に付着しやすくなり、潤滑性能が向上する。
【0034】
さらに、この深溝玉軸受では、油溜板5と玉3との軸方向最短距離Lsを、玉3と外輪2の端面との最短距離Ltの半分以下にすることにより、玉3と油溜板5間の空間体積を小さくできるため、供給油量が少なくても、玉3と油溜板5間に潤滑油が溜まりやすくなり、潤滑油がより一層玉に付着しやすくなる。
【0035】
<第2実施形態>
図4は第2実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
本実施形態の深溝玉軸受では、潤滑油排出側の内輪1の肩部1bの外径面に段差1cが設けられており、その段差1cにより、内輪1の肩部1bは、軌道溝寄り部分の外径よりも端面寄り部分の外径が小さくなるように形成されている。なお、図1の第1実施形態と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
このように内輪1の肩部1bに段差1cが設けられることにより、潤滑油の排出口となる開口部10を大きめに確保しつつ、油溜板5の内径Dsを小さくすることができる。そのため、油溜板5で塞き止められた潤滑油が、高速回転時に玉3との接触面圧が高くなるポケット4cの内径側に付着しやすくなり、高速回転時に玉3との接触面圧が高くなるポケット4cの内径側の摩耗を抑制できる。この場合、内輪1の肩部1bに段差1cを設けることで、肩部1bの外径を変化させているので、容易な加工で、油溜板5の内径部5dと内輪1の肩部1bの外径部との間に形成される開口部10の寸法を与えることができる。その他の効果は第1実施形態と同様である。
【0037】
<第3実施形態>
図5は第3実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
本実施形態の深溝玉軸受では、潤滑油排出側の内輪1の肩部1bの外径面にテーパ1dが設けられており、そのテーパ1dにより、内輪1の肩部1bは、軌道溝寄り部分の外径よりも端面寄り部分の外径が小さくなるように形成されている。なお、図1の第1実施形態と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
このように内輪1の肩部1bにテーパ1dが設けられることにより、潤滑油の排出口となる開口部10を大きめに確保しつつ、油溜板5の内径Dsを小さくすることができる。そのため、油溜板5で塞き止められた潤滑油が、高速回転時に玉3との接触面圧が高くなるポケット4cの内径側に付着しやすくなり、高速回転時に玉3との接触面圧が高くなるポケット4cの内径側の摩耗を抑制できる。この場合、内輪1の肩部1bにテーパ1dを設けることで、肩部1bの外径を変化させているので、油溜板5の内径部5dの軸方向の位置を変えるだけで、油溜板5の内径部5dと内輪1の肩部との間に確保される開口部10の寸法を簡単に変えることができる。その他の効果は第1実施形態と同様である。
【0039】
<第4実施形態>
図6は第4実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
本実施形態の深溝玉軸受では、油溜板15の環状板部5cを、玉3の外形に沿った湾曲断面形状に形成している。このようにした場合、油溜板15で塞き止められた潤滑油が、より玉3や冠型保持器4のポケット4cに付着しやすくなる。その他の効果は第1実施形態と同様である。
【0040】
<第5実施形態>
図7は第5実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
本実施形態の深溝玉軸受では、油溜板25の段部を省略し、環状板部5cを斜め、つまり円錐板状に形成して、環状板部5cの内周端である内径部5dを、玉3に近づけている。このようにした場合、外輪2の肩部に油溜まりを確保することができ、潤滑油が少ない場合に、より多くの潤滑油を軸受内に溜めておける。その他の効果は第1実施形態と同様である。
【0041】
<第6実施形態>
図8は第6実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
本実施形態の深溝玉軸受では、油溜板35としてスリンガーを用いている。スリンガーは外部からの雨や埃りなどを振りきり軸受を保護するためのものであり、これを利用することにより、外輪2に係合溝2bを設けなくて済むようになる。その他の効果は第1実施形態と同様である。
【0042】
<第7実施形態>
図9は第7実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
本実施形態の深溝玉軸受では、段部5bを設けずに、油溜板45の環状板部5cを、外輪2の係合溝2bに嵌まる外周部5aより軸方向外側に曲げて形成し、軸受端面に近い側に位置させている。このように、油溜板45の環状板部5cを軸受端面に近い側に位置させた場合、玉3と油溜板45との間の空間を大きくとることができるため、多くの量の潤滑油を玉3と油溜板45との間の空間に溜めておくことができる。
【0043】
また、この軸受では、内輪1の肩部1bの外径面に環状溝1eを形成し、その環状溝1eより軸受端面側の外径を環状溝1eの内側の肩部1bの外径よりも一段小さく設定している。そして、油溜板45の内径部5dを環状溝1eよりも軸受端面側の外径面に隙間をおいて対向させ、その隙間を潤滑油の排出する開口部10としている。その他の構成は、第1実施形態と同様であり、同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0044】
本実施形態の深溝玉軸受によれば、上述したように軸受の内部に多くの潤滑油を溜めておくことができるので、第1実施形態の効果をより顕著に奏することが期待できる。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0046】
例えば、上述の各実施形態では、油溜板5、15、25、35、45は、外輪2の肩部に直接取り付けられているが、図10に示すように、油溜板として、ハウジング55の側板55aが用いられてもよいし、図11に示すように、ハウジング55の側板55aと外輪2の側面との間に環状板56を挟み、その環状板56を油溜板として利用してもよい。
【0047】
図10の例の場合は、シールド状の油溜板を特別に用意しなくてもよい上に、圧入等の工程も省略でき、コストが削減できる。また、図11に示す例の場合は、ハウジング55に油溜板としての加工を行う必要がなくなり、第1実施形態〜第7実施形態と違い、単純な形の環状板26を、ハウジング55の側板55aに簡単に取り付けるだけで、油溜板として機能させることができる。
【0048】
<試験1>
次に、図9の構成の深溝玉軸受(軸受名番6011:軸受内径=55mm、軸受外径=90mm、軸受幅18mm)を用いて、振れ回り試験を行った。本試験1では、油溜板45の内径Dsを65mmに固定し、内輪1の肩部1bの端部外径D1を変化させることにより、y/Dw(隙間/玉径)を変化させた深溝玉軸受を1個ずつ用意し、それぞれを次の条件下で回転させて、振れ回りが発生するまでの時間を調査した。なお、軸受構成及び試験条件は、以下の通りである。
【0049】
<軸受構成>
・ 保持器:球面ポケットを有する冠型保持器
・ 保持器材料:カーボン繊維15%強化46ナイロン
・ 冠型保持器の内径Dh=67.9mm
・ 玉の公転直径PCD=72.5mm
【0050】
<試験条件>
・回転数:30000rpm
・給油温度:120℃
・潤滑方法:VG24の鉱油を強制潤滑給油0.1(l/min)
・荷重:3400N
・試験時間:20Hr,50Hr,100Hr,以後100Hr毎にTP確認
【0051】
振れ回り試験の結果は、表1及び図12の通りであった。
【0052】
【表1】
【0053】
図12に示した振れ回り試験結果により、y/Dwが9%以上となると、深溝玉軸受の振れ回り開始時間の向上がほぼ飽和し、y/Dwが11%以上となると、振れ回り開始時間の向上が完全に飽和することが分かる。これより、y/Dwは9%以上、望ましくは11%以上であると、振れ回り低減に対して大きな効果が得られることが検証された。
【0054】
<試験2>
本試験2では、図9の深溝玉軸受(軸受名番6011)において、y=1.14mm(y/Dw=0.11)を固定し、冠型保持器4の内径Dhと油溜板45の内径Dsの差を変化させた(ただし、冠型保持器4の内径Dh(=68.3mm)は固定)場合の振れ回りの発生の有無を観察した。試験条件は試験1と同様である。
【0055】
振れ回り試験の結果は、表2及び図13の通りであった。
【0056】
【表2】
【0057】
図13のグラフより分かるように、油溜板45の内径Dsが冠型保持器4の内径Dhを超えると(DhーDsがマイナス)、高速回転時の遠心力により油溜板45の内径側の潤滑油が、図14に示すごとく、軸受外周側に飛ばされるため、冠型保持器4の柱部4bの先端4pの内径側の玉3との摺動部に油浴部分を形成できなくなり、振れ回りまでの時間が短くなる。従って、油溜板45の内径Dsが保持器4の内径Dh以下ならば、冠型保持器4と玉3の間に潤滑油が十分に行き渡り、耐振れ回り性を向上させることができると言えることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
【図2】同軸受に使用する冠型保持器の斜視図である。
【図3】同軸受に使用する油溜板の斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
【図8】本発明の第6実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
【図9】本発明の第7実施形態の深溝玉軸受の要部断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態の概略説明用の要部断面図である。
【図11】本発明の更に他の実施形態の概略説明用の要部断面図である。
【図12】本発明の第7実施形態の軸受における数値限定の意義を検証する第1の試験結果を示すグラフである。
【図13】同軸受の第2の試験結果を示すグラフである。
【図14】同軸受の数値限定の意義を説明するために示す断面図である。
【図15】従来の冠型保持器を有した深溝玉軸受の要部断面図である。
【図16】片側にシール材を有した従来の深溝玉軸受の要部断面図である。
【図17】同軸受の冠型保持器が変形する箇所を示す要部斜視図である。
【図18】(a)及び(b)は同種の保持器の問題点の説明のために示す側面図及び正面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 内輪
1a 内輪軌道溝
1b 肩部
2 外輪
2a 外輪軌道溝
3 玉
4 冠型保持器
4a 円環部
4b 柱部
4c ポケット
4p 先端部
5,15,25,35,45 油溜板
100 潤滑油
D1 内輪の外径
Ds 油溜板の内径
Dh 冠型保持器の内径
PCD 玉の公転直径
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に内輪軌道溝を有する内輪と、内周面に外輪軌道溝を有する外輪と、前記外輪軌道溝と前記内輪軌道溝との間に転動自在に配置された複数の玉と、円環部及び該円環部の片方の軸方向端面に突設された複数の柱部を有し、該柱部間に形成されたポケットに前記玉を収容することで該玉を円周方向に所定の間隔で保持する樹脂製の冠型保持器と、を備え、潤滑油が前記玉に対して軸方向一方側から供給され、前記玉に対して軸方向他方側から排出される環境下で使用される深溝玉軸受において、
前記冠型保持器の前記円環部は、前記軸方向一方側に向けて配置されると共に、
前記軸方向他方側には、前記外輪側に固定された状態で前記内輪の肩部に向けて延びる油溜板が配置されており、且つ、
該油溜板の内径部と前記内輪の外径部との間には、潤滑油が排出される環状の開口部が形成されていることを特徴とする深溝玉軸受。
【請求項2】
前記環状の開口部を形成する前記内輪の外径部と前記油溜板の内径部との最短距離が前記玉の直径の9%以上であることを特徴とする請求項1に記載の深溝玉軸受。
【請求項3】
前記環状の開口部を形成する前記内輪の外径部と前記油溜板の内径部との最短距離が前記玉の直径の11%以上であることを特徴とする請求項1に記載の深溝玉軸受。
【請求項4】
前記油溜板の内径が前記玉の公転直径以下とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の深溝玉軸受。
【請求項5】
前記油溜板の内径が前記冠型保持器の内径以下とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の深溝玉軸受。
【請求項6】
前記油溜板と前記玉との軸方向最短距離が、前記玉と前記外輪の端面との最短距離の半分以下とされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の深溝玉軸受。
【請求項7】
前記軸方向他方側の前記内輪の肩部は、軌道溝寄り部分の外径よりも端面寄り部分の外径が小さくなるように形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の深溝玉軸受。
【請求項8】
前記軸方向他方側の前記内輪の肩部には、軌道溝寄り部分の外径よりも端面寄り部分の外径が小さくなるように段差が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の深溝玉軸受。
【請求項9】
前記軸方向他方側の前記内輪の肩部には、軌道溝寄り部分の外径よりも端面寄り部分の外径が小さくなるようにテーパが設けられていることを特徴とする請求項7に記載の深溝玉軸受。
【請求項1】
外周面に内輪軌道溝を有する内輪と、内周面に外輪軌道溝を有する外輪と、前記外輪軌道溝と前記内輪軌道溝との間に転動自在に配置された複数の玉と、円環部及び該円環部の片方の軸方向端面に突設された複数の柱部を有し、該柱部間に形成されたポケットに前記玉を収容することで該玉を円周方向に所定の間隔で保持する樹脂製の冠型保持器と、を備え、潤滑油が前記玉に対して軸方向一方側から供給され、前記玉に対して軸方向他方側から排出される環境下で使用される深溝玉軸受において、
前記冠型保持器の前記円環部は、前記軸方向一方側に向けて配置されると共に、
前記軸方向他方側には、前記外輪側に固定された状態で前記内輪の肩部に向けて延びる油溜板が配置されており、且つ、
該油溜板の内径部と前記内輪の外径部との間には、潤滑油が排出される環状の開口部が形成されていることを特徴とする深溝玉軸受。
【請求項2】
前記環状の開口部を形成する前記内輪の外径部と前記油溜板の内径部との最短距離が前記玉の直径の9%以上であることを特徴とする請求項1に記載の深溝玉軸受。
【請求項3】
前記環状の開口部を形成する前記内輪の外径部と前記油溜板の内径部との最短距離が前記玉の直径の11%以上であることを特徴とする請求項1に記載の深溝玉軸受。
【請求項4】
前記油溜板の内径が前記玉の公転直径以下とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の深溝玉軸受。
【請求項5】
前記油溜板の内径が前記冠型保持器の内径以下とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の深溝玉軸受。
【請求項6】
前記油溜板と前記玉との軸方向最短距離が、前記玉と前記外輪の端面との最短距離の半分以下とされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の深溝玉軸受。
【請求項7】
前記軸方向他方側の前記内輪の肩部は、軌道溝寄り部分の外径よりも端面寄り部分の外径が小さくなるように形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の深溝玉軸受。
【請求項8】
前記軸方向他方側の前記内輪の肩部には、軌道溝寄り部分の外径よりも端面寄り部分の外径が小さくなるように段差が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の深溝玉軸受。
【請求項9】
前記軸方向他方側の前記内輪の肩部には、軌道溝寄り部分の外径よりも端面寄り部分の外径が小さくなるようにテーパが設けられていることを特徴とする請求項7に記載の深溝玉軸受。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−162262(P2009−162262A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340120(P2007−340120)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
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