説明

測定装置

【課題】イメージセンサに入射した光線の位置を精度良く測定することができる測定装置を提供する。
【解決手段】受光した光線の光量に応じた数の電子が蓄積される受光部が、少なくとも前記光線の位置の測定方向に沿って所定間隔毎に配置され、各受光部に蓄積された電子を読み出して各受光部毎に蓄積された電子数に相関する相関値に変換した情報を出力するイメージセンサに位置の測定対象とする光線を入射させた状態で、前記情報を複数回出力させるようにイメージセンサを制御し、イメージセンサより複数回出力された各情報により示される各受光部毎の相関値を各受光部毎に合算し、当該合算によって得られた各受光部毎の相関値に基づいて前記所定間隔よりも高い分解能で光線の位置を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に係り、特に、イメージセンサに入射した光線の位置を測定する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、受光した光線の光量に応じた数の電子が蓄積される複数の受光部が2次元状に配置されたCCD(Charge Coupled Devices)エリアイメージセンサなどのイメージセンサに光線を入射させて、イメージセンサより出力される画像情報に基づいてイメージセンサ上での光線の位置を測定する測定装置が知られている。
【0003】
ところで、イメージセンサでは、入射するフォトンの統計的な変化(揺らぎ)によって各受光部でショットノイズ(Ns:shot Noise)が発生する。このショットノイズは、受光部に蓄積された電子数をSとした場合、最大で√S程度含まれることが知られている。このため、イメージセンサより出力される画像情報には、ショットノイズによる影響が含まれている。
【0004】
このショットノイズによる影響を低減させて受光部の間隔以下の間隔でイメージセンサに入射した光線の位置を測定する技術として、特許文献1には、画像情報に対してリカーシブフィルタなどの画質改善処理を施す技術が開示されている。
【特許文献1】特開平5−18713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、イメージセンサに入射した光線の位置を、例えば、1/100画素単位などの高い分解能の測定しようとした場合、特許文献1に開示された画質改善処理では、ショットノイズの影響を十分に低減できないため、位置を精度良く測定できない場合がある、という問題点があった。
【0006】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであり、イメージセンサに入射した光線の位置を精度良く測定することができる測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、受光した光線の光量に応じた数の電子が蓄積される受光部が、少なくとも前記光線の位置の測定方向に沿って所定間隔毎に配置され、各受光部に蓄積された電子を読み出して各受光部毎に蓄積された電子数に相関する相関値に変換した情報を出力するイメージセンサと、位置の測定対象とする光線を前記イメージセンサに入射させた状態で、前記情報を複数回出力させるように前記イメージセンサを制御する制御手段と、前記イメージセンサより複数回出力された各情報により示される各受光部毎の相関値を各受光部毎に合算し、当該合算によって得られた各受光部毎の相関値に基づいて前記所定間隔よりも高い分解能で前記光線の位置を測定する測定手段と、を備えている。
【0008】
請求項1記載の発明は、イメージセンサに、受光した光線の光量に応じた数の電子が蓄積される受光部が、少なくとも前記光線の位置の測定方向に沿って所定間隔毎に配置されており、各受光部に蓄積された電子を読み出して各受光部毎に蓄積された電子数に相関する相関値に変換した情報がイメージセンサから出力されるものとされており、制御手段により、位置の測定対象とする光線をイメージセンサに入射させた状態で、前記情報を複数回出力させるように前記イメージセンサが制御される。なお、上記相関値は、蓄積された電子数に相関する値であれば何れであってよく、例えば、濃度値や階調値、光量等であってもよく、電子数自体であってもよい。
【0009】
そして、本発明は、測定手段により、イメージセンサより複数回出力された各情報により示される各受光部毎の相関値を各受光部毎に合算し、当該合算によって得られた各受光部毎の相関値に基づいて前記所定間隔よりも高い分解能で前記光線の位置が測定される。
【0010】
このように請求項1記載の発明によれば、位置の測定対象とする光線をイメージセンサに入射させた状態で、イメージセンサから当該イメージセンサの各受光部毎に蓄積された電子数に相関する相関値に変換した情報を複数回出力させ、イメージセンサより複数回出力された各情報により示される各受光部毎の相関値を各受光部毎に合算し、当該合算によって得られた各受光部毎の相関値に基づいて受光部の間隔よりも高い分解能で光線の位置を測定するので、イメージセンサに入射した光線の位置を精度良く測定することができる。
【0011】
なお、請求項1記載の発明の測定手段は、請求項2記載の発明ように、前記合算によって得られた各受光部毎の相関値を、前記測定方向に対する受光部の配置位置順に配置した相関値分布における重心の位置を求めることにより、前記光線の位置を測定してもよい。
【0012】
また、請求項1又は請求項2記載の発明は、請求項3記載の発明ように、前記イメージセンサが、各受光部毎に異なる波長の光線を受光するものとし、各受光部で受光される光線の波長を示す受光波長情報を予め記憶した記憶手段と、前記記憶手段に記憶された受光波長情報に基づいて、前記測定手段により測定された位置に対応する光線の波長を導出する波長導出手段と、をさらに備えるものとしてもよい。
【0013】
また、請求項1又は請求項2記載の発明は、請求項4記載の発明ように、前記イメージセンサが、各受光部毎に、被測定面において反射された反射角度の異なる光線を受光するものとし、各受光部で受光される光線の反射角度を示す受光反射角度情報を予め記憶した記憶手段と、前記記憶手段に記憶された受光反射角度情報に基づいて、前記測定手段により測定された位置に対応する光線の反射角度を導出する反射角度導出手段と、をさらに備えるものとしてもよい。
【0014】
また、請求項4記載の発明は、請求項5記載の発明ように、前記測定手段が、前記光線の位置に代えて、前記合算によって得られた各受光部毎の相関値に基づいて前記被測定面での全反射減衰によって生じた暗線の位置を測定するものとし、前記反射角度導出手段が、前記記憶手段に記憶された受光反射角度情報に基づいて、前記測定手段により測定された暗線の位置に対応する暗線の反射角度を導出してもよい。
【0015】
また、本発明の制御手段は、請求項6記載の発明ように、前記測定手段での位置を測定する1分解能当たりの電子数が所定個以上となる回数だけ前記情報を出力させるように前記イメージセンサを制御することが好ましい。
【0016】
さらに、請求項6記載の発明の前記所定個は、請求項7記載の発明ように、10000個以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明によれば、位置の測定対象とする光線をイメージセンサに入射させた状態で、イメージセンサから当該イメージセンサの各受光部毎に蓄積された電子数に相関する相関値に変換した情報を複数回出力させ、イメージセンサより複数回出力された各情報により示される各受光部毎の相関値を各受光部毎に合算し、当該合算によって得られた各受光部毎の相関値に基づいて受光部の間隔よりも高い分解能で光線の位置を測定するので、イメージセンサに入射した光線の位置を精度良く測定することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態では、本発明を表面プラズモン共鳴現象(Surface Plasmon Resonance:SPR)を利用して検体物質の特性を測定するバイオセンサーに適用した場合について説明する。
【0020】
本実施の形態に係る測定装置としてのバイオセンサー10は、金属膜の表面に発生する表面プラズモン共鳴現象を利用して、タンパクTaと試料Aとの相互作用を測定する、いわゆる表面プラズモンセンサーである。
【0021】
図1〜図4に示すように、バイオセンサー10は、下部筐体11及び上部筐体12を備えている。上部筐体12は、断熱部材で構成されており、バイオセンサー10の上半分全体を覆っている。上部筐体12内と、外部及び下部筐体11内との間は、断熱されている。上部筐体12の手前側は、上方へ開放可能とされており、把手13が取り付けられている。上部筐体12の外側には、ディスプレイ14及び入力部16が設置されている。
【0022】
図2は、上部筐体12を取り去って、図1の奥側からみたバイオセンサー10の内部を示す図であり、図3は筐体の内部を上面からみた図、図4は図2の手前側からみた内部の側面図である。
【0023】
上部筐体12の内部には、分注ヘッド20、測定部30、試料ストック部40、ピペットチップストック部42、バッファストック部44、保冷部46、測定チップストック部48、ラジエータ60、ラジエータ送風ファン62、水平方向送風ファン64が備えられている。
【0024】
試料ストック部40は、試料積層部40A及び試料セット部40Bで構成されている。試料積層部40Aには、個々のセルに検体物質の特性の測定に用いる試料として各々異なるアナライト溶液をストックする試料プレート40Pが、Z方向(鉛直方向)に積層されて収容されている。試料セット部40Bには、1枚の試料プレート40Pが、図示しない搬送機構により試料積層部40Aから搬送されてセットされる。
【0025】
ピペットチップストック部42は、ピペットチップ積層部42A及びピペットチップセット部42Bで構成されている。ピペットチップ積層部42Aには、複数のピペットチップを保持するピペットチップストッカー42Pが、Z方向に積層されて収容されている。ピペットチップセット部42Bには、1枚のピペットチップストッカー42Pが、図示しない搬送機構によりピペットチップ積層部42Aから搬送されてセットされる。
【0026】
バッファストック部44は、ボトル収容部44A及びバッファ供給部44Bで構成されている。ボトル収容部44Aには、測定の基準となる基準試料としてのバッファー液が貯留された複数本のボトル44Cが収容されている。バッファ供給部44Bには、バッファプレート44Pがセットされている。バッファプレート44Pは、複数筋に区画されており、各々の区画には濃度の異なるバッファー液が貯留されている。また、バッファプレート44Pの上部には、分注ヘッド20のアクセス時にピペットチップCPが挿入される孔Hが構成されている。バッファプレート44Pへは、ホース44Hによりボトル44Cからバッファ液が供給される。
【0027】
バッファ供給部44Bの隣には、補正用プレート45が配置され、その隣に保冷部46が配置されている。補正用プレート45は、バッファー液の濃度調整を行うためのプレートであり、マトリクス状に複数セルが構成されている。保冷部46には、冷蔵の必要な試料が配置される。保冷部は低温とされており、この上で試料は低温状態に保たれる。
【0028】
測定チップストック部48には、測定チップ収容プレート48Pがセットされている。測定チップ収容プレート48Pには、測定チップ50が複数本収納されている。
【0029】
測定チップストック部48と測定部30との間には、測定チップ搬送機構49が備えられている。測定チップ搬送機構49は、測定チップ50を両側から挟み込んで保持する保持アーム49A、回転により保持アーム49AをY方向に移動させるボールねじ49B、Y方向に配置され、測定チップ50が載せられる搬送レール49C、を含んで構成されている。測定の際には、1本の測定チップ50が測定チップ搬送機構49により測定チップ収容プレート48Pから搬送レール49C上に載せられ、保持アーム49Aにより挟持されつつ測定部30へ移動してセットされる。
【0030】
測定チップ50は、図5及び図6に示すように、誘電体ブロック52、流路部材54、及び、保持部材56、で構成されている。
【0031】
誘電体ブロック52は、光ビームに対して透明な透明樹脂等で構成されており、断面が台形の棒状とされたプリズム部52A、及び、プリズム部52Aの両端部にプリズム部52Aと一体的に形成された被保持部52Bを備えている。プリズム部52Aの互いに平行な2面の内の広い側の上面には、金属性の薄膜57が形成されている。誘電体ブロック52は、いわゆるプリズムとして機能し、バイオセンサー10での測定の際には、プリズム部52Aの対向する互いに平行でない2つの側面の内の一方から光ビームが入射され、他方から薄膜57との界面で全反射された光ビームが出射される。
【0032】
薄膜57の表面には、測定対象とする検体物質としてタンパクTaを薄膜57上に付着させるための、リンカー層57Aが形成されている。このリンカー層57A上にタンパクTaが付着される。
【0033】
プリズム部52Aの両側面には、上側の端辺に沿って保持部材56と係合される係合凸部52Cが形成されている。また、プリズム部52Aの下側には、側端辺に沿って搬送レール49Cと係合されるフランジ部52Dが形成されている。
【0034】
図6に示すように、流路部材54は、6個のベース部54Aを備え、ベース部54Aの各々に4本の円筒部材54Bが立設されている。ベース部54Aは、3個のベース部54A毎に、立設された円筒部材54Bのうちの1本の上部が連結部材54Dによって連結されている。流路部材54は、軟質で弾性変形可能な材料、例えば非晶質ポリオフィレンエラストマーで構成されている。このように、流路部材54を弾性変形可能な材料で構成することにより、誘電体ブロック52との密着性を高め、誘電体ブロック52との間に構成される液体流路55の密閉性を確保している。
【0035】
保持部材56は、長尺とされ、上面部材56A及び2枚の側面板56Bが蓋状に構成された形状とされている。側面板56Bには、誘電体ブロック52の係合凸部52Cと係合される係合孔56C、及び、上記光ビームの光路に対応する部分に窓56Dが形成されている。保持部材56は、係合孔56Cと係合凸部52Cとが係合されて、誘電体ブロック52に取り付けられる。流路部材54は、保持部材56と一体成形されており、保持部材56と誘電体ブロック52の間に配置される。上面部材56Aには、流路部材54の円筒部材54Bに対応する位置に、受部59が形成されている。受部59は略円筒状とされている。
【0036】
ベース部54Aには、図7に示すように、底面側に略S字状の2本の流路溝54Cが形成されている。流路溝54Cは、端部の各々が1の円筒部材54Bの中空部と連通されている。ベース部54Aは、底面が誘電体ブロック52の上面と密着され、流路溝54Cと誘電体ブロック52の上面との間に構成される空間と前記中空部とで、液体流路55が構成される。なお、本実施の形態に係る液体流路55の容量は、7μlとされている。
【0037】
1個のベース部54Aには、2本の液体流路55が構成される。各々の液体流路55において、円筒部材54Bの上端面に液体流路55の出入口53が構成される。
【0038】
ここで、2本の液体流路55のうち、1本は測定流路55Aとして用いられ、他の1本は参照流路55Rとして用いられる。測定流路55Aの薄膜57上(リンカー層57A上)にはタンパクTaを付着させ、参照流路55Rの薄膜57上(リンカー層57A上)にはタンパクTaを付着させない状態で測定が行われる。
【0039】
測定流路55A及び参照流路55Rには、図7に示すように、各々光ビームL1、L2が入射される。光ビームL1、L2は、図8に示すように、ベース部54Aの中心線M上に配置されるS字の屈曲部分に照射される。以下、測定流路55Aにおける光ビームL1の照射領域を測定領域E1、参照流路55Rにおける光ビームL2の照射領域を参照領域E2という。参照領域E2は、タンパクTaが付着した測定領域E1から得られるデータを補正するための測定を行う領域である。
【0040】
図9には、分注ヘッド20の詳細な構成が示されている。
【0041】
分注ヘッド20は、12本の分注管20Aを備えている。各分注管20Aは、X方向と直交する矢印Y方向に沿って1列に配置されるように保持部材20Bにより保持されている。分注管20Aは、隣り合う2本で一対とされ、一方が液体供給用、他方が液体排出用とされている。分注管20Aの先端部には、ピペットチップCPが取り付けられる。ピペットチップCPは、ピペットチップストッカー42Pにストックされており、必要に応じて交換可能とされている。
【0042】
図2に示すように、分注ヘッド20は、上部筐体12内の上部に設けられ、水平駆動機構22により矢印X方向に移動可能とされている。水平駆動機構22は、ボールねじ22A、モータ22B、ガイドレール22Cにより構成されている。ボールねじ22A及びガイドレール22Cは、X方向に配置されている。ガイドレール22Cは平行に2本配置され、そのうちの1本はボールねじ22Aの下側に所定間隔離れて配置されている。分注ヘッド20は、モータ22Bの回転駆動によってボールねじ22Aが回転することにより、ガイドレール22Cに沿ってX方向に移動される。このX方向移動により、分注ヘッド20は、保冷部46、補正用プレート45、バッファ供給部44B(バッファプレート44P)、測定部30(測定チップ50)、試料セット部40B(試料プレート40P)、及びピペットチップセット部42B(ピペットチップストッカー42P)に対向する位置にそれぞれ移動可能とされている。
【0043】
また、図9に示すように、分注ヘッド20には、分注ヘッド20を矢印Z方向に移動させる鉛直駆動機構24が設けられている。鉛直駆動機構24は、モータ24A及びZ方向に配置された駆動軸24Bを含んで構成され、モータ24Aの回転駆動によって駆動軸24Bが回転することにより、分注ヘッド20をZ方向に移動させる。このZ方向移動により、分注ヘッド20は、ピペットチップセット部42Bにセットされたピペットチップストッカー42P、試料セット部40Bにセットされた試料プレート40P、バッファ供給部44Bにセットされたバッファプレート44P、補正用プレート45、保冷部46にセットされたプレート、及び測定部30にセットされた測定チップ50などにアクセス可能となっている。
【0044】
図10に示されるように、分注ヘッド20には、吸排駆動部26が接続されている。吸排駆動部26は、第1ポンプ27、第2ポンプ28を備えている。第1ポンプ27及び第2ポンプ28は、前述の一対の分注管20Aに各々対応して設けられている。第1ポンプ27は、シリンジポンプで構成されており、第1シリンダ27A、第1ピストン27B、及び、第1ピストン27Bを駆動させる第1モータ27Cを備えている。第1シリンダ27Aは、配管27Hを介して分注ヘッド20と接続されている。また、第2ポンプ28も、シリンジポンプで構成されており、第2シリンダ28A、第2ピストン28B、及び、第2ピストン28Bを駆動させる第2モータ28Cを備えている。第2シリンダ28Aは、配管28Hを介して分注ヘッド20と接続されている。
【0045】
分注ヘッド20は、第1モータ27C及び第2モータ28Cの回転駆動が各々制御されて第1ピストン27B及び第2ピストン28Bの駆動が制御されることにより、吸引、排出する溶液の液量、及び吸引、排出する際の溶液の速度が調整可能とされている。
【0046】
測定時には、分注管20Aにより、測定チップ50へ試料やバッファー液が供給される。これらの液体の供給は、分注ヘッド20を、保冷部46、試料セット部40B、バッファ供給部44B上へ移動させ、液体供給用の6本の分注管20Aに取り付けられたピペットチップCPで試料やバッファー液を吸引する。このときの吸引量は、2本分の流路に供給するための量である。そして、試料やバッファー液を吸引した6本の分注管20A側のピペットチップCPを、測定チップ50の測定流路55A側の片方の出入口53(以下「供給口53A」という)へ挿入すると共に、排出用の列の6本の分注管20Aに取り付けられたピペットチップCPを他方の出入口53(以下「排出口53B」という)へ挿入する。そして、供給口53A側の分注管20Aから半量の液体を吐出すると共に、排出口53B側の分注管20Aで液体を吸入することにより行われる。続いて、参照流路55R側へも、同様にしてピペットチップCPの残り半量の液体が供給される。
【0047】
一方、図4に示すように、測定部30は、光学定盤32、光出射部34、受光部36を含んで構成されている。光学定盤32には、側方向から見て、上部中央の水平平面で構成される上部台32A、上部台32Aから離れる方向に向かって低くなる出射傾斜部32B、上部台32Aを挟んで出射傾斜部32Bと逆側に配置される受光傾斜部32Cが形成されている。上部台32Aには、Y方向沿って測定チップ50がセットされるものとされている。光学定盤32の出射傾斜部32Bには、測定チップ50へ向かって光ビームL1、L2を出射する光出射部34が設置されている。また、受光傾斜部32Cには、受光部36が設置されている。光学定盤32の隣には、光学定盤32を冷却する水冷ジャケット32Jが設けられている。
【0048】
図11に示すように、光出射部34には、光源34A、レンズユニット34Bが備えられている。また、受光部36には、レンズユニット36A、CCD36Bが備えられている。
【0049】
光源34Aからは、発散状態の光ビームLが出射される。レンズユニット34Bは、偏光ビームスプリッタを内蔵しており、光源34Aから入射する光ビームLのP偏光成分とS偏光成分に分離し、光ビームLのP偏光成分をZ方向に対して一定の幅を持った比較的太い2本の平行な光ビームL1、L2に分ける。そして、レンズユニット34Bは、この2本の平行な光ビームL1、L2を薄膜57と誘電体ブロック52との界面の測定領域E1と参照領域E2に対して全反射角以上の種々の入射角で測定領域E1と参照領域E2において収束光状態となるように入射させる。よって、測定領域E1及び参照領域E2に入射する光ビームL1、L2は、誘電体ブロック52と薄膜57との界面において種々の反射角で全反射される。この全反射された光ビームL1、L2は、レンズユニット36Aを経てCCD36Bに結像される。CCD36Bは、全反射された2本の光ビームL1、L2を共に受光可能な面積の受光面を有し、当該受光面に、受光する光の光量に応じた数の電子が蓄積される受光部が2次元状に配置されたエリアセンサとされており、各受光部に蓄積された電子を読み出して各受光部毎に蓄積された電子数に相関する相関値として濃度値に変換した、受光面に結像した像を示す画像情報を生成して出力する。
【0050】
図12には、本実施の形態に係るバイオセンサー10の電気系の構成が示されている。
【0051】
同図に示すように、バイオセンサー10は、CPU70A、ROM70B、RAM70C、HDD70D等を含んで構成され、装置全体の動作を司る制御部70と、上記モータ22Bとモータ24Aの回転駆動、及び上記第1モータ27Cと第2モータ28Cの回転駆動を制御することにより、分注ヘッド20のX方向及びZ方向への移動及び分注ヘッド20の各分注管20Aに取り付けられたピペットチップCPへの試料やバッファ液の吸引や排出を制御する分注ヘッド駆動制御部72と、保持アーム49Aを動作及びボールねじ49Bを回転させるさせる不図示のモータの回転駆動を制御することにより、測定チップ搬送機構49の動作を制御する測定チップ搬送制御部74と、CCD36Bの撮像動作の制御するCCD制御部76と、光源34Aへの電力供給を制御することにより、光源34Aの点灯を制御する点灯制御部78と、を備えている。
【0052】
制御部70には、分注ヘッド駆動制御部72、測定チップ搬送制御部74、CCD制御部76、点灯制御部78、ディスプレイ14、及び入力部16が接続されている。
【0053】
従って、制御部70は、分注ヘッド駆動制御部72を介した分注ヘッド20の移動及びピペットチップCPへの試料やバッファ液の吸引や排出の制御と、測定チップ搬送制御部74を介した測定チップ50の搬送の制御と、CCD制御部76を介したCCD36Bの撮像動作の制御と、点灯制御部78を介して光源34Aの点灯を制御と、ディスプレイ14への操作画面、各種メッセージ等の各種情報の表示の制御と、を各々行うことができる。また、制御部70は、入力部16に対する操作内容を把握することができる。
【0054】
制御部70では、CCD制御部76を介して入力された画像情報に基づいて所定の処理を行なって、測定領域E1及び参照領域E2での屈折率変化データを導出する。
【0055】
ここで、この屈折率変化データは、測定チップ50に試料及びバッファー液をそれぞれ個別に供給してそれぞれ光出射部34から光ビームLを出射させて測定領域E1及び参照領域E2に光ビームL1、L2を照射し、測定領域E1及び参照領域E2において全反射された光ビームL1、L2に暗線が発生する反射角度をそれぞれ求めた場合の、測定領域E1において試料及びバッファー液で暗線が発生する反射角度の角度差と、参照領域E2において試料及びバッファー液で暗線が発生する反射角度の角度差との差に基づいて求められるものである。薄膜57と誘電体ブロック52との界面に特定の入射角で入射した光ビームL1、L2は、界面に表面プラズモンを励起させ、これにより、特定の入射角で入射した光ビームL1、L2の反射光の強度が鋭く低下して暗線として観察される。この暗線となる光ビームL1、L2の入射角が全反射減衰角θSPであり、測定領域E1及び参照領域E2において検出される全反射減衰角θSPの変化(角度差)の差が屈折率変化データとなる。
【0056】
次に、暗線位置の検出を行なう際の本実施の形態に係るバイオセンサー10の作用について説明する。
【0057】
屈折率変化データの導出を行なう場合、制御部70は、最初に、分注ヘッド駆動制御部72を介して分注ヘッド20を制御して、測定対象とする測定チップ50に分注ヘッド20からバッファー液を供給し、測定チップ搬送制御部74を介して測定チップ搬送機構49を制御して、当該測定チップ50を上部台32Aに搬送して測定対象とする測定流路55Aの測定領域E1及び参照流路55Rの参照領域E2を各々光ビームL1、L2が入射する位置に配置する。
【0058】
そして、制御部70は、点灯制御部78を制御して光源34Aの点灯させ、光出射部34から光ビームを出射させて測定領域E1、参照領域E2の各々に、光ビームL1、L2を各々照射させる。これらの光ビームL1、L2は、測定領域E1、参照領域E2で全反射され、発散しながら誘電体ブロック52のプリズム面を通って外部に出射される。外部に出射された光ビームL1、L2は、レンズユニット36Aを経てCCD36Bの受光面に結像される。
【0059】
図13には、CCD36Bの受光面に結像した像の光強度分布を導出する際に制御部70により実行される強度分布導出処理の流れを示すフローチャートが示されている。以下、同図を参照して、当該強度分布導出処理について説明する。
【0060】
同図のステップ100では、CCD制御部76に対して撮像指示を出力する。
【0061】
CCD制御部76は、制御部70より撮像指示が入力すると、CCD36Bを制御して受光面に結像した像の撮像を行わせ、当該像を示す画像情報をCCD36Bから出力させる。出力された画像情報はCCD制御部76に入力する。CCD制御部76は入力した画像情報を制御部70へ出力する。
【0062】
なお、本実施の形態に係るCCD制御部76は、撮像指示が1回入力すると、CCD36Bを制御して複数回(ここでは、13回)撮像を行わせ、CCD36から複数回出力された各画像情報により示される各受光部毎の濃度値を各受光部毎に合算し、当該合算によって得られた各受光部毎の濃度値を撮像回数(ここでは、13)で除算して濃度値を平均化した画像情報を制御部70へ出力する。
【0063】
次のステップ102では、CCD制御部76より入力した画像情報をRAM70Cに記憶させる。
【0064】
次のステップ104では、CCD制御部76に対して撮像指示を所定回(例えば、100回)出力したか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ106へ移行する一方、否定判定となった場合はステップ100へ移行する。
【0065】
ステップ106では、RAM70Cに記憶された各画像情報を読み出し、読出した各画像情報により示される各受光部毎の濃度値を各受光部毎に合算し、当該合算によって得られた各受光部毎の濃度値を、撮像指示を出力した上記所定回で除算して濃度値を平均化した画像情報を生成する。
【0066】
すなわち、本実施の形態に係るCCD制御部76では、13回の撮像により得られた画像情報を平均化しており、制御部70では、CCD制御部76で平均化された画像情報を100回取得して平均化しているため、HDDに記憶された画像情報は1300回の撮像によって得られた画像情報を平均化したものである。
【0067】
次のステップ108では、上記ステップ106において生成した画像情報により示される画像に対してそれぞれ畳み込み演算を行なって光ビームL1、L2の1次元の光強度分布を示す分布情報をそれぞれ導出する。なお、図14(A)に示されるように、画像情報により示される画像には、界面において全反射された2本の光ビームL1、L2の像が含まれている。このため、画像情報により示される画像の光ビームL1の像が含まれる領域Aの画像及び光ビームL2の像が含まれる領域Bの画像に対してそれぞれ畳み込み演算を行なって光ビームL1、L2の1次元の光強度分布を示す分布情報をそれぞれ導出する。
【0068】
図14(B)には、領域Bの画像に対して畳み込み演算を行なって導出された分布情報により示される光ビームL2の1次元の光強度分布が示されている。なお、図14(B)では、横軸が反射角度方向を示しており、横軸の各位置が反射角度に対応している。
【0069】
次のステップ110では、導出した光ビームL1、L2の分布情報をHDD70Dに記憶させ、処理終了となる。
【0070】
これにより、HDD70Dには、測定対象とする測定チップ50にバッファー液を供給して測定領域E1及び参照領域E2において全反射された光ビームL1、L2の分布情報が記憶される。
【0071】
制御部70は、次に、分注ヘッド駆動制御部72を介して分注ヘッド20を制御して、上記測定対象とする測定チップ50に分注ヘッド20から試料を供給し、測定チップ搬送制御部74を介して測定チップ搬送機構49を制御して、上述したバッファー液の場合と同様に、当該測定チップ50の測定対象とする測定流路55Aの測定領域E1及び参照流路55Rの参照領域E2を各々光ビームL1、L2が入射する位置に配置する。
【0072】
そして、制御部70は、点灯制御部78を制御して光源34Aの点灯させ、光出射部34から光ビームを出射して測定領域E1、参照領域E2の各々に、光ビームL1、L2を各々照射する。これらの光ビームL1、L2は、測定領域E1、参照領域E2で全反射され、レンズユニット36Aを経てCCD36Bの受光面に結像される。
【0073】
制御部70は、上述した強度分布導出処理(図13参照)を実行して、CCD36Bの受光面に結像した像の光強度分布を導出する。
【0074】
これにより、HDD70Dには、測定対象とする測定チップ50に試料を供給して測定領域E1及び参照領域E2において全反射された光ビームL1、L2の分布情報が記憶される。
【0075】
制御部70は、測定対象とする測定チップ50にバッファ液及び資料を供給した際の分布情報がそれぞれHDD70Dに記憶されると、以下の屈折率変化データ導出処理を行なって屈折率変化データを導出する。
【0076】
図15には、制御部70により実行される屈折率変化データ導出処理の流れを示すフローチャートが示されている。以下、同図を参照して、当該屈折率変化データ導出処理について説明する。
【0077】
同図のステップ150では、HDD70Dから測定対象とする測定チップ50に試料及びバッファー液をそれぞれ供給した際の測定領域E1及び参照領域E2での分布情報をそれぞれ読み出す。
【0078】
次のステップ152では、読み出した各分布情報により示される光強度分布からそれぞれ暗線位置の検出を行なう。
【0079】
なお、本ステップ152では、図16(A)〜(E)に示される処理を行なうことにより暗線位置の検出を行なう。
【0080】
すなわち、まず、読み出した分布情報により示される光強度分布(図16(A))に対して平滑化処理を行なって平滑化した光強度分布を求める(図16(B))。次に、分布情報により示される光強度分布から平滑化した光強度分布を減算して差分強度分布を導出する(図16(C))。そして、導出した差分強度分布により示される各強度に所定の閾値を加算する(図16(D))。最後に、閾値を加算した差分強度分布において強度がゼロ以下となる領域を特定し(図16(F))、強度がゼロ以下となる領域の面積の重心位置を求めることにより、暗線位置を検出する。
【0081】
次のステップ154では、測定領域E1及び参照領域E2毎に、上記ステップ152の処理により検出されたバッファー液を供給した際の分布情報により示される光強度分布の暗線位置と試料を供給した際の分布情報により示される光強度分布の暗線位置の差分を求める。
【0082】
次のステップ156では、測定領域E1での暗線位置の差分と参照領域E2での暗線位置の差分との差を屈折率変化データとして導出し、当該導出した屈折率変化データをHDD70Dに記憶させて、本屈折率変化データ導出処理を終了する。
【0083】
制御部70は、HDD70Dに記憶した屈折率変化データにより示される測定領域E1での暗線位置の差分と参照領域E2での暗線位置の差分との差に基づいて、タンパクTaと試料Aとの反応状態を測定し、測定結果をディスプレイ14に表示させる。
【0084】
ここで、本実施の形態に係るバイオセンサー10において、以下のような条件で、強度分布導出処理のステップ104でのCCD制御部76に対して撮像を指示する回数を、1回、3回、10回、30回、100回、300回と変えて、暗線の位置を一定状態である光強度分布を50回計測して暗線位置を導出した結果が図17に示されており、50回導出された暗線位置の標準偏差が図18に示されている。
【0085】
(1)CCD36Bの各受光部の飽和電子数=30万エレクトロン
(2)受光部での電子の蓄積レベル 飽和電子数の75%
(3)1回の撮像指示でのCCD制御部76による撮像回数 13回 ((1)〜(3)よりCCD36Bでの合算後の1画素当たりの蓄積電子数は約300万電子となる)
(4)暗線位置の分解能、CCD1受光部(画素)当たり 150RU(1RU=屈折率10-6≒反射面上の暗線角度で1/10000゜)
図18に示されるように、暗線位置測定の誤差を0.1RU以下に抑えるためには、100回程度の加算と、0.01RU程度の計算分解能が必要となることが分かる。
【0086】
また、図19には、CCD制御部76に対して撮像を指示する回数毎の、計算分解能(0.01RU)当たりの蓄積電子数が示されている。
【0087】
このように、撮像指示する回数が100回となると、1分解能あたり1万電子を越えるため、ショットノイズの影響が抑えられて、十分な精度を得ることができる。
【0088】
以上のように本実施の形態によれば、ショットノイズは、ランダムに発生するため、複数回撮像を行って得られた画像情報を合算することにより、ショットノイズの影響を軽減されるため、複数回撮像を行ってCCD36Bより画像情報を複数回出力させ、複数回出力された各画像情報により示される各受光部毎の濃度値を各受光部毎に合算し、当該合算によって濃度値を撮像回数で除算した画像情報に基づいて暗線位置を測定することにより、暗線の位置を精度良く測定することができる。
【0089】
なお、上記第1の実施の形態では、合算によって得られた各受光部毎の濃度値を撮像回数で除算して平均化した画像情報に基づいて暗線位置を測定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、合算によって得られた各受光部毎の濃度値を除算せずに、合算によって得られた各受光部毎の濃度値に基づいて暗線の位置を検出するものとしてもよい。
【0090】
また、上記第1の実施の形態では、暗線位置を測定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、イメージセンサに入射した光線の位置を測定する測定装置に適用してもよい。この場合は、光強度分布の重心、あるいは、光強度分布において光強度が所定の閾値以上となる部分の重心となる位置を光線の位置と測定するものとしてもよく、また、光強度分布のピークとなる位置の光強度とその周辺の位置の光強度を用いて放物線近似などに回帰させ、その頂点の位置を推定することにより、画素間隔以下の分解能で光線の位置と測定するものとしてもよい。
【0091】
また、上記第1の実施の形態では、測定チップ50に試料及びバッファー液をそれぞれ供給した際の測定領域E1での暗線位置の差分と参照領域E2での暗線位置の差分を測定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、暗線が発生した反射角度を求めるものとしてもよい。この場合は、ROM70BやHDD70Dなどにイメージセンサの各受光部で受光される光線の反射角度を示す受光反射角度情報を予め記憶させておき、当該受光反射角度情報に基づいて、測定された暗線の位置に対応する反射角度を導出するものとしてもよい。また、イメージセンサに入射した光線の反射角度を導出するものとしてもよい。
【0092】
その他、上記第1の実施の形態の全反射減衰を利用する他のバイオセンサーとしては、漏洩モード検出器をあげることができる。漏洩モードセンサは、誘電体と、この上に順に層設されたクラッド層と光導波層とによって構成された薄膜とからなり、この薄膜の一方の面がセンサ面となり、他方の面が光入射面となる。光入射面に全反射条件を満たすように光を入射させると、その一部が前記クラッド層を透過して前記光導波層に取り込まれる。そして、この光導波層において、導波モードが励起されると、前記光入射面における反射光が大きく減衰する。導波モードが励起される入射角は、表面プラズモン共鳴角と同様に、センサ面上の媒質の屈折率に応じて変化する。この反射光の減衰を検出することにより、前記センサ面上の反応を測定することができる。
【0093】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、回折格子が形成されたセンサ面に対して白色光を照射した場合に、センサ面近傍の屈折率に対応した特定の波長の光のみがセンサ面で反射する原理を利用して検体物質の状態を測定する測定装置に適用した場合について説明する。
【0094】
図20には、本実施の形態に係る測定装置200の概略構成が示されている。
【0095】
同図に示されるように、測定装置200は、複数の波長の光を含んだ光ビームを出射する光源212と、光源212から出射された光ビームから設定された波長範囲の光を抽出する光抽出部220と、光抽出部220により抽出された光が入射されるプレート230と、プレート230に入射されて反射された反射光の波長を検出する波長検出部240と、を備えている。
【0096】
なお、光源212は、複数の波長の光を含んだ白色光を出射するものとされており、光源212から出射された光ビームは、レンズ214を介して光抽出部220に入射する。
【0097】
光抽出部220は、プリズム222と、レンズ224と、波長選択スリット226A、226Bと、レンズ228と、を含んで構成されている。
【0098】
光抽出部220に入射した光ビームは、プリズム222に入射する。プリズム222は、入射した光ビームのスペクトル分解を行って、入射した光ビームに含まれる光の波長毎に、異なる角度で光を反射する。プリズム222によって反射された光は、レンズ224により平行光とされ、レンズ228により集光される。
【0099】
レンズ224とレンズ228の間には、波長選択スリット226A、226Bが配置されている。波長選択スリット226A、226Bは、図示しないスリット搬送機構によりレンズ224とレンズ228の間の光路内に各々個別に挿入可能されている。光抽出部220では、波長選択スリット226A、226Bの光路内への挿入量を変えて波長選択スリット226A、226Bにより光路内の光の一部を遮ることにより、設定された波長範囲の光を抽出する。光抽出部220より抽出された光は、光ファイバプローブ232の一端に入射し、光ファイバプローブ232によってプレート230へ導かれる。
【0100】
プレート230は、光透過性を有し、回折格子234が形成されると共に、当該回折格子234上の近傍に検体物質236が配置されている。
【0101】
光ファイバプローブ232の他端は、プレート230の回折格子234が形成された部分の面に対向配置されている。光ファイバプローブ232の一端に入射した光は、コリメータレンズ238を介して検体物質236に照射されるようにプレート230に入射する。
【0102】
プレート230では、入射した光のうち、検体物質236の変化による屈折率の変化に対応して特定の波長の光のみが反射される。反射された反射光は、光ファイバプローブ232の他端に入射し、光ファイバプローブ232の一端から波長検出部240へ出射される。
【0103】
波長検出部240は、プリズム242と、レンズ244と、CCD246と、を含んで構成されている。
【0104】
プリズム242は、光ファイバプローブ232から入射した反射光のスペクトル分解を行って、反射光に含まれる光の波長毎に、異なる角度で光を反射する。
【0105】
CCD246は、エリアセンサとされており、プリズム242によって反射された光は、レンズ244を介して、反射光に含まれる光の波長に応じてCCD246の受光面の異なる位置に結像される。すなわち、受光面での光が結像した位置から反射光の波長を求めることができる。
【0106】
CCD246は、受光面に結像した像を示す画像情報を生成して出力する。
【0107】
また、本実施の形態に係る波長検出部240では、レンズ244は、図示しないレンズ搬送機構により光軸方向に移動可能とされており、レンズ244の位置を変えることにより、CCD246の受光面に結像される像の倍率を変更可能とされている。
【0108】
図21には、本実施の形態に係る測定装置200の電気系の構成が示されている。
【0109】
同図に示されるように、測定装置200は、光抽出制御部252と、波長検出制御部254と、制御部250と、を備えている。
【0110】
光抽出制御部252は、図示しないスリット搬送機構を制御して波長選択スリット226A、226Bの光路内への挿入量を調整することにより、光抽出部220により抽出される波長範囲を制御する。
【0111】
波長検出制御部254には、CCD246と接続されてCCD246の撮像動作の制御しており、CCD246より出力された画像情報が入力される。また、波長検出制御部254は、図示しないレンズ搬送機構を制御してレンズ244の光軸方向の位置を調整してCCD246の受光面に結像される像の倍率を調整することにより、波長検出部240の波長分解能を制御する。なお、本実施の形態に係る波長検出部240は、レンズ244の光軸方向の位置を調整することにより、波長分解能が低分解能(例えば、20nm)と高分解能(例えば、10nm)に変更可能とされているものとする。
【0112】
波長検出制御部254には、図示しないROM等の記憶部を備えており、当該記憶部に波長検出部240において変更可能な波長分解能毎に、受光部で受光される光の波長を示す受光波長情報が予め記憶されている。波長検出制御部254は、波長検出部240で検出を行う波長分解能に対応した受光波長情報に基づき、入力した画像情報により示される受光面での光の結像位置及び光の強度から反射光のピークとなる波長を検出し、当該波長を示す波長情報を制御部250へ出力する。
【0113】
制御部250は、図示しないCPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ等を含んで構成され、装置全体の動作を制御している。また、制御部250は、光源212と接続されており、光源212の点灯状態を制御している。
【0114】
制御部250は、反射光の波長の検出を行う際に、光源212の点灯状態を制御すると共に、光抽出制御部252に対して抽出する波長範囲を設定する指示情報を出力し、また、波長検出制御部254に対して波長分解能を設定する指示情報を出力する。
【0115】
次に、本実施の形態に係る測定装置200の作用について説明する。
【0116】
図22には、反射光の波長の検出を行う際に制御部250により実行される反射光波長検出制御処理の流れを示すフローチャートが示されている。以下、同図を参照して、当該反射光波長検出制御処理について説明する。
【0117】
同図のステップ300では、光抽出制御部252に対して抽出する波長範囲を本測定装置200において測定可能な最大の波長範囲と設定する指示情報を出力すると共に、波長検出制御部254に対して波長分解能を低分解能と設定する指示情報を出力する。
【0118】
これにより、光抽出制御部252は、図示しないスリット搬送機構を制御して波長選択スリット226A、226Bを光路内に挿入しない状態とすることにより、抽出する波長範囲を最も大きくする。
【0119】
波長検出制御部254は、図示しないレンズ搬送機構を制御してレンズ244の光軸方向の位置を調整して波長検出部240の波長分解能を低分解能とする。
【0120】
次のステップ302では、光源212の点灯を指示すると共に、波長検出制御部254に対して撮像指示を出力する。
【0121】
これにより、光源212が点灯して、光抽出部220に白色光の光ビームが入射し、光抽出部220により白色光に含まれる測定可能な全ての波長範囲の光が抽出されて光ファイバプローブ232を介してプレート230に入射される。
【0122】
そして、プレート230に入射した光のうち、反射された反射光が光ファイバプローブ232を介して波長検出部240へ出射され、CCD246の受光面に結像される。
【0123】
波長検出制御部254は、低分解能とされている場合に、制御部150より撮像指示が入力すると、CCD246を制御して受光面に結像した像の1回の撮像を行わせ、当該像を示す画像情報をCCD246から出力させる。出力された画像情報は波長検出制御部254に入力する。
【0124】
波長検出制御部254は、低分解能に対応した受光波長情報に基づき、画像情報により示される受光面での光の結像位置及び光の強度から反射光のピークとなる波長を検出する。検出された波長を示す波長情報は制御部250へ出力される。
【0125】
次のステップ304では、光抽出制御部252に対して抽出する波長範囲を、上記ステップ302において波長検出制御部254により検出された波長を中心した所定波長範囲(例えば、反射光のピークとなる波長を中心した±50nm)と設定する指示情報を出力すると共に、波長検出制御部254に対して波長分解能を高分解能と設定する指示情報を出力する。
【0126】
これにより、光抽出制御部252は、図示しないスリット搬送機構を制御して波長選択スリット226A、226Bを光路内に挿入することにより、抽出対象とする波長範囲を指示情報により示される波長範囲とする。
【0127】
波長検出制御部254は、図示しないレンズ搬送機構を制御してレンズ244の光軸方向の位置を調整して波長検出部240の波長分解能を高分解能とする。
【0128】
次のステップ306では、光源212の点灯を指示すると共に、波長検出制御部254に対して撮像指示を出力する。
【0129】
これにより、光源212が点灯して、光抽出部220に白色光の光ビームが入射し、光抽出部220により上記所定波長範囲の光が抽出されて光ファイバプローブ232を介してプレート230に入射される。
【0130】
そして、プレート230に入射した光のうち、反射された反射光が光ファイバプローブ232を介して波長検出部240へ出射され、CCD246の受光面に結像される。
【0131】
波長検出制御部254は、高分解能とされている場合に、制御部150より撮像指示が入力すると、CCD246を制御して複数回(例えば、13回)撮像を行わせる。当該像を示す画像情報をCCD246から出力させる。出力された画像情報は波長検出制御部254に入力する。
【0132】
波長検出制御部254は、CCD246から複数回出力された各画像情報により示される各受光部毎の濃度値を各受光部毎に合算し、当該合算によって得られた各受光部毎の濃度値を撮像回数(ここでは、13)で除算して濃度値を平均化した画像情報を求める。
【0133】
そして、波長検出制御部254は、高分解能に対応した受光波長情報に基づき、平均化した画像情報により示される受光面での光の結像位置及び光の強度から反射光がピークとなる波長を検出する。検出された波長を示す波長情報は制御部250へ出力される。
【0134】
制御部250は、波長検出制御部254より入力する波長情報に基づいて、検体物質236の状態を測定し、測定結果を図示しないディスプレイに表示させる。
【0135】
以上のように本実施の形態によれば、複数回撮像を行ってCCD246より画像情報を複数回出力させ、複数回出力された各画像情報を平均化した画像情報に基づいて反射光がピークとなる波長を検出しているので、波長を精度良く測定することができる。
【0136】
なお、上記各実施の形態では、イメージセンサとして、2次元状の受光面を有するエリアセンサを用いた場合にいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、受光部が、位置の測定方向に沿って配置されてばよく、ラインセンサを用いてもよい。
【0137】
その他、第1及び第2の実施の形態で説明した測定装置の構成(図1〜図12及び図20〜図21参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0138】
また、第1の実施の形態で説明した強度分布導出処理(図13参照。)と屈折率変化データ導出処理(図15参照)、及び第2の実施の形態で説明した反射光波長検出制御処理(図22参照)の処理の流れも一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】第1の実施の形態に係るバイオセンサー全体の斜視図である。
【図2】第1の実施の形態に係るバイオセンサーの内部の斜視図である。
【図3】第1の実施の形態に係るバイオセンサーの内部の上面図である。
【図4】第1の実施の形態に係るバイオセンサーの内部の側面図である。
【図5】第1の実施の形態に係る測定チップの斜視図である。
【図6】第1の実施の形態に係る測定チップの分解斜視図である。
【図7】第1の実施の形態に係る測定チップの測定領域及び参照領域へ光ビームが入射している状態を示す図である。
【図8】第1の実施の形態に係る測定チップの流路部材を下側からみた図である。
【図9】第1の実施の形態に係るバイオセンサーの分注ヘッドの鉛直駆動機構を示す斜視図である。
【図10】第1の実施形態に係るバイオセンサーの液体吸排部の概略構成図である。
【図11】第1の実施の形態に係るバイオセンサーの光学測定部付近の概略図である。
【図12】第1の実施の形態に係るバイオセンサーの電気系の構成を示すブロック図である。
【図13】第1の実施の形態に係る強度分布導出処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】(A)は画像情報により示される2本の光ビームの像を含んだ画像の一例を示す図であり、(B)は光ビームの光強度分布の一例を示すグラフである。
【図15】第1の実施の形態に係る屈折率変化データ導出処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】(A)〜(E)は暗線を検出する際の流れを示す図である。
【図17】撮像を指示する回数毎に暗線の位置を50回計測した結果を示すグラフである。
【図18】撮像を指示する回数毎の暗線位置の標準偏差を示す図である。
【図19】撮像を指示する回数毎の計算分解能当たりの蓄積電子数を示す図である。
【図20】第2の実施の形態に係る測定装置の構成を示す概略図である。
【図21】第2の実施の形態に係る測定装置の電気系の構成を示すブロック図である。
【図22】第2の実施の形態に係る反射光波長検出制御処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0140】
10 バイオセンサー(測定装置)
36 CCD(イメージセンサ)
70 制御部(制御手段、測定手段、反射角度導出手段)
70B ROM(記憶手段)
70D HDD(記憶手段)
76 CCD制御部(制御手段)
200 測定装置
246 CCD(イメージセンサ)
254 波長検出制御部(制御手段、測定手段、記憶手段、波長導出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光した光線の光量に応じた数の電子が蓄積される受光部が、少なくとも前記光線の位置の測定方向に沿って所定間隔毎に配置され、各受光部に蓄積された電子を読み出して各受光部毎に蓄積された電子数に相関する相関値に変換した情報を出力するイメージセンサと、
位置の測定対象とする光線を前記イメージセンサに入射させた状態で、前記情報を複数回出力させるように前記イメージセンサを制御する制御手段と、
前記イメージセンサより複数回出力された各情報により示される各受光部毎の相関値を各受光部毎に合算し、当該合算によって得られた各受光部毎の相関値に基づいて前記所定間隔よりも高い分解能で前記光線の位置を測定する測定手段と、
を備えた測定装置。
【請求項2】
前記測定手段は、前記合算によって得られた各受光部毎の相関値を、前記測定方向に対する受光部の配置位置順に配置した相関値分布における重心の位置を求めることにより、前記光線の位置を測定する
請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記イメージセンサは、各受光部毎に異なる波長の光線を受光するものとし、
各受光部で受光される光線の波長を示す受光波長情報を予め記憶した記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された受光波長情報に基づいて、前記測定手段により測定された位置に対応する光線の波長を導出する波長導出手段と、
をさらに備えた請求項1又は請求項2記載の測定装置。
【請求項4】
前記イメージセンサは、各受光部毎に、被測定面において反射された反射角度の異なる光線を受光するものとし、
各受光部で受光される光線の反射角度を示す受光反射角度情報を予め記憶した記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された受光反射角度情報に基づいて、前記測定手段により測定された位置に対応する光線の反射角度を導出する反射角度導出手段と、
をさらに備えた請求項1又は請求項2記載の測定装置。
【請求項5】
前記測定手段は、前記光線の位置に代えて、前記合算によって得られた各受光部毎の相関値に基づいて前記被測定面での全反射減衰によって生じた暗線の位置を測定するものとし、
前記反射角度導出手段は、前記記憶手段に記憶された受光反射角度情報に基づいて、前記測定手段により測定された暗線の位置に対応する暗線の反射角度を導出する
請求項4記載の測定装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記測定手段での位置を測定する1分解能当たりの電子数が所定個以上となる回数だけ前記情報を出力させるように前記イメージセンサを制御する
請求項1から請求項5の何れか1項記載の測定装置。
【請求項7】
前記所定個は、10000個以上である
請求項6記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−232744(P2008−232744A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71025(P2007−71025)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】