説明

無線機能付センサ

【課題】通信対象に対する無線信号の送受信を間欠的に行うこと。
【解決手段】発電回路151の発電による電力をコンデンサ152に蓄積し、蓄積した電力が設定レベルに達したときにセンサ本体120、演算回路130、無線送信回路111、無線受信回路112を順次一定時間のみ起動し、センサ本体120の検出によるセンシング情報を演算装置130で処理し、この処理結果に無線受信回路112で受信可能なバイト数に関する情報を付加し、付加された情報をセンサ情報として無線送信回路111から無線ホスト20に対して送信し、無線送信回路111が起動した後に起動された無線受信回路112において、無線ホスト20からの制御情報信号32を受信し、この受信情報を演算装置130で処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機能付センサに係り、特に、検出対象の物理量を検出し、この検出結果を処理したあと通信対象に無線で送信するに好適な無線機能付センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型のセンサに無線機能を加え、センサの検出によるセンサ情報を無線で送信する無線機能付センサを数多くネットワークに接続したセンサネットが注目されている。この種の無線機能付センサは、センサ本体に無線機能と電源(電池)を内蔵することで、配線や電源端子などをなくし、設置を簡単化することができ、今まで設置できなかった場所への設置が可能となる。
【0003】
また無線機能付センサにおいては、電源として、電池以外にも、その設置場所に応じて振動や光、熱などで発電する発電装置を内蔵することで、半永久的な動作が可能になっている。
【0004】
無線機能付センサの検出によるセンサ情報は一定間隔ごとに間欠的に送信されるようになっており、無線機能付センサを間欠的に動作させることで電源の消費電力を抑えることができる。すなわち、無線機能付センサを小型化するために、無線機能付センサには通常、発電装置として発電量が小さいものが用いられており、発電装置の発電した電力が無線機能付センサを駆動できる電力レベルに達したときに、センサ情報を一定時間送信する方式が採用されており、この方式を採用することで、発電量が小さい発電装置においてもセンサ情報を送信することが可能となる。
【0005】
センサ情報を間欠的に送信するものとしては、例えば、水路中に羽根車を配置し、この羽根車を発電機に連結し、羽根車の回転による回転力を発電機によって電力に変換し、発電機の出力による電力により、水道水の使用の有無の情報を検出してその情報を無線で発信する電子回路部を備えたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−287818号公報(第2頁〜第3頁、図1、図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術においては、無線機能付センサの検出によるセンサ情報を通信対象に無線で送信することについては配慮されているが、通信対象からの情報を受信する機能を設けることについては、何ら配慮されていない。すなわち、無線機能付センサとしては、動作モードの変更、設置時の設定、プログラムの変更を行う上で、無線ホストからの情報を受信するための受信機能を無線機能付センサに付加することが要求されている。
【0008】
無線機能付センサに受信機能を付加するに際しては、無線ホストからの情報を常に受信可能とするためには、無線受信回路を常に受信待機状態にする必要がある。
【0009】
しかし、無線受信回路を常に受信待機状態としたのでは、電池内蔵型の無線機能付センサの場合、電池の寿命の短縮を招き、電池を交換するための手間が増加することになる。また発電装置を内蔵する無線機能付センサの場合には、発電装置の発電量が少ないため、無線受信回路を常に受信待機状態とすることは困難である。
【0010】
本発明の課題は、通信対象に対する無線信号の送受信を間欠的に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明無線機能付センサは、検出対象の物理量を検出する物理量検出手段と、自家発電により電力を生み出す発電手段と、発電手段により発電された電力を蓄える電力貯蔵手段と、物理量検出手段の検出結果を処理する処理手段と、処理手段の処理結果を通信対象に無線で送信する無線送信手段と、通信対象から送信された無線信号を受信する無線受信手段とを備え、各手段のうち電力貯蔵手段の負荷となる手段は、電力貯蔵手段に蓄えられた電力を電源として、電源の供給を間欠的に受けて起動してなる無線機能付センサにおいて、処理手段は、電力貯蔵手段に蓄えられた電力が負荷の起動が可能な電力レベルになったときに、電力レベルを基に無線受信手段が受信可能なデータ量又は無線信号を受信可能な時間を算出し、この算出結果を処理結果に付加してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無線受信手段を常に受信待機状態にすることなく通信対象からの無線信号を受信することができ、消費電力を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る無線機能付センサと無線ホストからなるセンサシステムの一実施例を示すブロック構成図である。
【図2】本発明に係る無線機能付センサと無線ホスト間の通信処理方法を説明するための通信処理チャートである。
【図3】無線機能付センサに内蔵された発電装置内のコンデンサに蓄積される電力の推移を説明するための図である。
【図4】本発明に係る無線機能付センサの具体的構成を示すブロック構成図である。
【図5】本発明に係る無線機能付センサ内の電力制御装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明に係る無線ホストの通信処理方法を説明するためのフローチャートである。
【図7】無線機能付センサに内蔵されたメモリの内容保持に必要な電力とコンデンサに蓄積される電力との関係を説明するための図である。
【図8】本発明に係る無線機能付センサに複数のセンサ本体を設けたときのブロック構成図である。
【図9】本発明に係る無線機能付センサをコンクリート老化検出システムに適用したときのシステム構成図である。
【図10】無線機能付センサに内蔵された発電装置を超音波発生装置によって発電させるときの作用を説明するための図である。
【図11】送信強度に応じてセンサ情報の送信間隔を調整する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明に係る無線機能付センサと無線ホストを用いてネットワークを形成したときのセンサシステムの一実施例を示すブロック構成図である。図1において、センサシステムは、複数の無線機能付センサ10a、10b、…10nと、無線ホスト20を備えて構成されており、各無線機能付センサ10a〜10nと無線ホスト20は無線通信信号30a、30b、…30nを用いて情報の授受を行うように構成されている。なお、各無線機能付センサ10a〜10nは同一のもので構成され、同一の機能を有するため、以下、無線機能付センサ10aを、無線機能付センサ10として、無線機能付センサ10の具体的構成について説明する。
【0016】
無線機能付センサ10は、無線通信装置110、センサ本体120、演算装置130、電力制御装置140、発電装置150を備えて構成されている。無線通信装置110は、無線ホスト20を通信対象として、無線ホスト20に対して無線通信信号30aを送信する無線送信手段としての無線送信回路111と、無線ホスト20からの無線通信信号30aを受信する無線受信手段としての無線受信回路112を備えて構成されており、発電装置150は、自家発電による電力を生み出す発電手段としての発電回路151と、発電回路151により発電された電力を蓄える電力貯蔵手段としてのコンデンサ152を備えて構成されている。
【0017】
一方、無線ホスト20は、無線機能付センサ10と無線通信信号30aの送受信を行う無線信号送受信手段として、無線機能付センサ10に対して無線通信信号30aを送信する無線送信回路201と、無線機能付センサ10からの無線通信信号30aを受信する無線受信回路202を備えて構成されており、無線受信回路202は常時待機状態にある。無線通信信号30a(以下、無線通信信号30と称する。)は、センサ本体120で検出したセンシング情報(センサ情報)を含むセンサ情報信号31と、無線機能付センサ10に対する設定情報や、演算装置130で実行されるプログラムの更新情報などの制御情報を含む制御情報信号32から構成されている。
【0018】
無線機能付センサ10と無線ホスト20との間で無線通信信号30を用いて情報の授受を行うに際して、無線ホスト20では複数の無線機能付センサと情報の授受が行われるため、複数の無線機能付センサと無線ホスト20との間で同時に通信しても混信しない通信方式が採用されている。
【0019】
具体的には、無線機能付センサ10から無線ホスト20に対してセンサ情報信号31を送信するに際しては、UWB(Ultra Wide Band)通信方式が無線機能付センサ10と無線ホスト20において採用されている。また無線ホスト20から無線機能付センサ10に対して制御情報信号32を送信するに際しては、AM(Amplifier Modulation)、FM(Frequency Modulation)、又は赤外線(IrDA)通信方式のうちいずれかの通信方式が無線ホスト20と無線機能付センサ10において採用されている。
【0020】
無線機能付センサ10と無線ホスト20との間で無線通信信号30を用いて情報の授受を行うに際して、無線機能付センサ10の消費電力を極力抑える必要があるところから、本実施例においては、図2に示すように、コンデンサ152に蓄えられた電力が、コンデンサ152の負荷となる装置が全て動作可能又は起動可能な電力レベルになったか否かを電力制御装置140で監視し、コンデンサ152に蓄えられた電力がコンデンサ162の負荷となる装置が全て動作可能又は起動可能な電力レベルになったときに、コンデンサ152に蓄えられた電力を電源として、この電源を、センサ本体120、演算装置130、無線送信回路111、無線受信回路112および演算装置130に対して順番に間欠的に供給して起動することとしている。この場合、無線ホスト20は、無線受信回路202が無線通信信号30を受信したことを条件に、無線送信回路201から無線機能付センサ10に対して直ちに無線通信信号30が送信され、この無線通信信号30を無線受信回路112が即座に受信するようになっている。
【0021】
また、無線受信回路112を起動するに際しては、無線送信回路111とオーバーラップした状態で起動させることもできる。すなわち、無線送信回路111を起動したあと、無線通信信号30の送受信に要する時間を経過したあと無線受信回路112を起動させることもできる。無線送信回路111と無線受信回路112とを起動するときに、一部に互いにオーバーラップする時間帯を設けることで、無線送信回路111と無線受信回路112の起動に要する時間を短縮することができる。
【0022】
以下、無線機能付センサ10の各部の具体的構成について説明する。発電装置150のうち発電回路151は、振動、光、熱などを発電のエネルギーとして自家発電するように構成されており、この発電回路151では常に発電されているが、この発電量(電力量)は小さく、無線機能付センサ10に搭載された装置を全て常時動作させることができない。このため、発電回路151で発電された電力をコンデンサ152に蓄えるための充電が行われるようになっている。すなわち、コンデンサ152は、発電回路151の発電による電力によって充電されるようになっており、図3に示すように、発電回路151の発電量の増加に従ってコンデンサ152には電力が順次蓄積されていき、この蓄積された電力が、コンデンサ152の負荷となる装置が全て動作又は起動できる電力レベルになったときには、電力制御装置140から各負荷に順次電力が供給され、コンデンサ152に蓄積された電力が徐々に放電するようになっている。コンデンサ152に蓄積された電力が放電されたあと、コンデンサ152の負荷となる装置の起動が停止されると、発電回路151の発電に伴って、コンデンサ152が再び充電されるサイクルを繰り返すようになっている。
【0023】
センサ本体120は、検出対象の物理量を検出する物理量検出手段として、例えば、加速度センサ、熱センサ、ガスセンサなどを用いて構成されており、センサ本体120によって検出された物理量、例えば、加速度、熱、ガスに関する物理量はセンシング情報を示す電気信号に変換されて演算装置130に入力されるようになっている。
【0024】
演算装置130は、センサ本体120の検出によるセンシング情報などを処理し、この処理結果をセンサ情報パケット化して無線通信装置110に出力する処理手段として、演算回路131、メモリ132、不揮発性メモリ133を備えて構成されており、不揮発性メモリ133にはプログラム1331、設定情報1332が保持されている。すなわち、演算装置130では、不揮発性メモリ133内のプログラム1331を演算回路131で実行し、設定情報1332やメモリ132の情報を用いて、センサ本体120から出力された検出信号であるセンシング情報と、電力制御装置140から入力された電力情報とを基に受信可能なバイト数(受信可能な時間数)を計算し、この計算結果にしたがったセンサ情報パケットを生成し、生成したセンサ情報パケットを無線通信装置110に出力するようになっている。また演算装置130は、無線通信装置110から入力された制御情報パケットの中から設定情報やプログラム情報を取り出し、取り出した情報を基に不揮発性メモリ133内のプログラム1331や設定情報1332を更新するようになっている。
【0025】
無線通信装置110は、無線ホスト20を通信対象として無線通信信号30としてのセンシング情報信号31を送信する無線送信手段としての無線送信回路111と、無線ホスト20からの無線通信信号30である制御情報信号32を受信する無線受信手段としての無線受信回路112を備えて構成されている。無線送信回路111から無線ホスト20に送信されるセンサ情報パケットには、電力上の都合を考慮し、無線機能付センサ10で受信可能なバイト数(受信可能な時間数)に関する情報が付加される。これにより、無線ホスト20に対して、無線機能付センサ10に送信すべき情報のバイト数である送信可能なバイト数(送信可能な時間数)を伝えることができる。
【0026】
一方、電力制御装置140は、コンデンサ152の負荷となる装置に対して、コンデンサ152に蓄えられた電力を電源として、この電源の供給を間欠的に行って負荷の起動を間欠的に制御する電力制御手段として、無線機能付センサ10全体の動作を統括するようになっている。以下、電力制御装置140の具体的な処理方法を図5のフローチャートに従って説明する。電力制御装置140は、発電装置150のコンデンサ152に蓄えられた電力を監視し、コンデンサ152に蓄えられた電力のレベルが、無線機能付センサ10で行われる処理に必要な電力、すなわち、コンデンサ152の負荷を全て動作させるに必要な電力レベルに達成するまで、センサ本体120や演算装置130などの動作を止めた状態にして、無駄な電力消費を抑えるようになっている(ステップS1)。
【0027】
次に、コンデンサ152に蓄えられた電力のレベルが設定された電力レベルに達したとき、すなわち、コンデンサ152に蓄えられた電力のレベルが、無線機能付センサ10が動作可能な電力レベルに達したときには、まずセンサ本体120を起動させる(ステップS2)。このあとセンサ本体120の起動に伴ってセンサ本体120からセンシング情報が出力されると、演算装置130を起動する(ステップS3、S4)。このあと、演算装置130から無線通信装置110に対してセンサ情報パケットが出力されたか否かを判定し(ステップS5)、演算装置130からセンサ情報パケットが出力されたときには無線送信回路111を起動し(ステップS6)、センサ情報パケットを無線ホスト20に送信させ、センサ情報の送信が終了したか否かの判定を行う(ステップS7)。このとき、演算装置130では、コンデンサ152に蓄えられている電力のうちの残りの電力情報を取り込み、取り込んだ情報を基に受信可能なバイト数(受信可能な時間数)を算出し、算出結果をセンサ情報に付加する処理を行う。センサ情報の送信が全て終了したときには無線受信回路112を起動し、無線ホスト20からの無線通信信号30を受信するための待機状態に移行し、一定時間内に無線ホスト20からの制御情報信号32を受信したか否かの判定を行う(ステップS9)。このとき、無線受信回路112を起動したあと、一定時間内に無線ホスト20からの制御情報信号32が受信されず、無線ホスト20から無線情報信号32を送信したことが確認されないときには、受信処理を終了し、ステップS1の処理に戻る。一方、無線受信回路112において、制御情報信号32を受信したことが確認されたときには、制御情報信号32を全て受信したか否かの判定を行い(ステップS10)、制御情報信号32を全て受信したときには、演算装置130を再度一定時間起動し、受信した制御情報信号32の内容(制御データ)を無線受信回路112から演算装置130に出力する(ステップS11)。このあと演算装置130は、受信した制御データの解析を行い、演算装置130における処理が終了したときにはステップS1の処理に戻る(ステップS12)。
【0028】
演算装置130は、処理手段として、コンデンサ152に蓄えられた電力がコンデンサ152の負荷の起動が可能な電力レベルになったときに、コンデンサ152に蓄えられた電力を基に無線受信回路112が受信可能なデータ量(バイト数)又は無線信号を受信可能な時間を算出し、算出結果を処理結果に付加してセンサ情報として出力するようになっている。
【0029】
無線ホスト20の無線受信回路202は常時受信待機状態にあり、複数の無線機能付センサ10からセンサ情報信号31が送信されてくるのを待っている。また無線機能付10に送信すべき制御情報がある場合には、当該無線機能付センサ10から送信されたセンサ情報を含むパケットの受信後、制御情報を無線機能付センサ10に送信するようになっている。このとき、無線ホスト20は、無線機能付センサ10からのセンサ情報(センサ情報信号31)を受信したときには、受信情報の中のパケット内にある情報である無線機能付センサ10が受信可能なバイト数をチェックする。ここで、無線機能付センサ10が受信可能なバイト数よりも送信すべき制御情報が多い場合は、制御情報を分割し、分割された情報がそのバイト数以内に納まるようにパケットに変換し、変換された制御情報を何回かに分けて無線機能付センサ10に送信する。
【0030】
無線ホスト20において以上の方式を採用することにより、無線機能付センサ10おいて、受信する際の待ち時間(受信待機時間)は、単に無線ホスト20から送信される制御情報信号32が届くまでの時間となり、受信待機時間を大幅に削減することができる。また、無線機能付センサ10から無線ホスト20に対して受信可能なバイト数に関する情報を送信することで、無線ホスト20では、無線機能付センサ10が受信できるデータ分のみを送信することが可能になる。これにより、制御情報信号32の情報が長く、無線機能付センサ10の電力不足により途中で受信処理を終了し、受信失敗になることを防止することができる。
【0031】
次に、無線ホスト20から無線機能付センサ10に対して制御情報を分割して送信するときの処理を図6のフローチャートに従って説明する。まず、無線ホスト20は、無線機能付センサ10に対して制御情報を送信するに際して、まず、当該無線機能付センサ10からセンサ情報パケットを受信したか否かの判定を行い(ステップS21)、センサ情報を受信したときには、センサ情報に付加された情報のうち無線機能付センサ10が受信可能なバイト数を解析し、この解析結果から、通信すべき制御情報を1回で送信可能か否かを判定する(ステップS22)。このとき送信すべき制御情報を1回で送信可能と判定したとき、すなわち、無線機能付センサ10で受信可能なサイズ>制御情報サイズのときには、当該制御情報をパケット化し、パケット化された制御情報を無線機能付センサ10に送信する(ステップS23)。この場合、余った電力を次のセンサ情報の送信に回すことができる。
【0032】
一方、送信すべき制御情報を1回で送信できないと判定したときには、すなわち、無線機能付センサ10で受信可能なサイズ<制御情報サイズのときには、まず、当該無線機能付センサ10に対して制御情報を分割して送信する旨を連絡する(ステップS24)。これは、無線機能付センサ10では、無線ホスト20からの制御情報を全て受け取るまでプログラムや設定情報の更新ができないため、分割送信中の制御情報を保持するための準備をさせるためである。このあと無線機能付センサ10からセンサ情報が送信されたか否かを判定し(ステップS25)、センサ情報を受信したときには、送信すべき制御情報を無線機能付センサ10が受信可能なサイズに分割し、分割された制御情報をパケット化して無線機能付センサ10に送信する(ステップS26)。このあと全ての制御情報を送信したか否かの判定を行い(ステップS27)、全ての制御情報を送信していないときには分割された制御情報をパケット化して送信し(ステップS28)、ステップS25からステップS28までの処理を継続する。一方、全ての制御情報を送信したと判定したときには、最後の制御情報パケットに終了情報を付加して無線機能付センサ10に送信し、このルーチンでの処理を終了する(ステップS29)。
【0033】
ここで、無線機能付センサ10から無線ホスト10に送信するセンサ情報パケットの頭の方に無線機能付センサ10で受信可能なデータのサイズを設定しておくことにより、無線ホスト20では、無線機能付センサ10からのセンサ情報パケットを受けながら、送信すべき制御情報パケットを生成することが可能となり、センサ情報パケットの受信後、直ちに制御情報パケットを無線機能付センサ10に送信することが可能になる。
【0034】
一方、無線機能付センサ10側では、受信した制御情報パケットが分割送信である場合は、全ての制御データを受信してから、その制御情報に基づいて、プログラム1331や設定情報1332を更新する。また分割された制御情報を保持する方法としては2つある。1つは、受信した分割制御情報を不揮発性メモリ133に書き込み、全ての制御情報を受信したところで更新を行う方法である。他の1つは、受信した分割制御情報をメモリ132に保持し、全ての制御情報を受信したところで更新を行う方法である。
【0035】
不揮発性メモリ133に情報を書き込む場合には、情報を書き込む際に、電力が多少必要となるが、書き込んだ内容を保持するには電力は不要である。一方、メモリ132に情報を書き込む場合には、書き込んだ内容を保持するのに電力が必要となる。そのため、電力制御装置140は、図7に示すように、無線機能付センサ10の起動に必要な電力に加えて、メモリ132の内容保持に必要な電力がコンデンサ152に蓄えられるまで、無線機能付センサ10の起動を待たせるようになっている。このような処理を行うことで、無線機能付センサ10の起動により、コンデンサ152内の電力が消費されても、メモリ132の内容保持に必要な電力は確保されることになる。
【0036】
以上のような方式を用いることにより、無線機能付センサ10の設定変更やプログラムの変更を簡単に実現することができる。
【0037】
具体的には、図8に示すように、複数台のセンサ本体120として、#1のセンサ本体120から#Nのセンサ本体120を1台の無線機能付センサ10に設けた場合、演算装置130からの指令を基にセンシング情報を順次切り替えて入力することで、複数台の無線機能付センサ10を使用することなく、センサ本体120の数に応じて様々な調査を行うことが可能になる。すなわち、センサ本体120として相異なる物理量を検出するものを用いることで、各種の調査を行うことができる。またN個のセンサ本体120を同一のもので構成した場合、1台のセンサ本体120が故障した場合でも、他の正常なセンサ本体120に切り替えることで、無線機能付センサ10の寿命を延ばすことが可能になる。この場合、センサ本体120の切替や選択は、動作モードの変更として、無線ホスト20からの制御情報に従って各センサ本体120の切替や選択を行うことができる。
【0038】
次に、無線機能付センサ10と無線ホスト20を用いたシステムの構成例として、このシステムをコンクリート老化探知方式に適用したときについて説明する。コンクリートの老化は、最近地震による被害や橋脚のコンクリート剥離などで問題になっている。このコンクリートの強度は、コンクリート地震の酸性・アルカリ性を示すPH値で検出することができる。コンクリートは最初、弱アルカリ性であるが、老朽化に伴って中性や酸性となり、脆くなっていく。しかし、コンクリートの強度を計測するにも、外部からではコンクリートのPH値が分からないため、実際にコンクリートを剥がして内部の調査を行わなければならず、非常に手間がかかり、定期的に調査することは非常に困難である。
【0039】
そこで、ビルや橋脚などの工事の際には、図9に示すように、予めセメントなどのコンクリートの材料に、PHセンサを内蔵した無線機能付センサ10を混ぜて、無線機能付センサ10入りのコンクリートを作る。すなわち、コンクリートが固まった後からセンサ10をコンクリート内に埋め込むのに比べて、コストおよび強度の面で非常に優位である。この場合、無線機能付センサ10は、コンクリートの内部にあるため、直接、無線機能付センサ10に対して外部から端末などを接続してのアクセスは不可能であるとともに、無線機能付センサを取り替えることができないため、数10年の動作期間が要求される。しかし、発電機能と無線受信機能を有し、無線通信による調整が可能な無線機能付センサ10は有効である。
【0040】
すなわち、ビルの建設に用いるコンクリートの材料に、PHセンサを内蔵した無線機能付センサ10を混ぜてビルを建設した場合、ビルに直接外部から端末などを接続することなく無線機能付センサ10の発電装置150を発電させることができる。例えば、コンクリート老化検出システムでは、無線機能付センサ10で使用するセンサ本体120としてはPHセンサを用い、発電装置152の発電方式としては、空調機やエレベータなどの微振動によっても発電する振動発電方式を採用している。
【0041】
さらに、コンクリート老化検出システムでは、製造から建設、廃棄の運用面についても配慮されている。
【0042】
具体的には、ビル内の各階や部屋ごとに設置される無線ホスト20とコンクリート内の各無線機能付センサ10との間で正しく通信するためには、各無線機能付センサ10が送信するセンサ情報信号31の強さの調整やセンサ本体10の感度調整などの調整が必要である。
【0043】
さらに、各種の調整を行うにも、無線機能付センサ10による発電が出来ない場合がある。例えば、工場のセンサライン上での検査や、センサを設置したあとであっても、工事中などの関係で意図した振動が得られないとき、あるいは取り付ける対象の機械が故障する前に予兆として発生する振動を利用して発電するときなど、通常時には起きない振動を利用する場合がある。
【0044】
そこで、本実施例においては、図10に示すように、無線機能付センサ10の発電回路151の共振周波数と同じ周波数の超音波・音波を発生する超音波発生装置1000を用い、超音波発生装置1000から発生する超音波に応答して発電装置151が発電するようになっている。この超音波発生装置1000を用いれば、無線機能付センサ10がPHセンサとともにビル内に埋め込まれたときでも、超音波発生装置1000から超音波を発生させることで、ビル内の発電回路151を発電させることができ、これによりセンサの調整や動作テストを行うことが可能になる。
【0045】
この手法は、無線機能付センサ10の製造時のテストや定期診断のときにも有効である。さらに、この手法を採用すれば、テストモードなどを行うためのモード切替機能を取り付けることなく、実際の発電からセンサ情報の送信まで、無線機能付センサ10が正常に動作するかどうかの確認が可能になる。なお、発電回路151としては、超音波によって発電する発電方式のほかに紫外線に応答して発電する発電方式あるいは磁気に応答して発電する方式のものを用いることもできる。
【0046】
なお、上記のような手法は、送信機能しか持たない無線機能付センサ10においても、同様に人為的に振動などを与えれば、センサ情報が送信されることから、製造時のテストや定期点検に有効である。
【0047】
さらに、ビルや橋脚が完成し、実際にビルなどが運用されたときに、電波環境に応じ、無線機能付センサ10が出力するセンサ情報信号の出力を調整する方法に用いることができる。すなわち、無線機能付センサ10と無線ホスト20との間では無線通信であるため、電波環境の影響を受けやすい。また消費電力を抑えるためには、センサ情報の出力を抑えた方がよい。しかし、無線ホスト20と無線機能付センサ10との距離が長かったり、一時的に外部干渉波が大きくなったりして、通信時にエラーが発生すると正しく通信することができない。
【0048】
そこで、無線ホスト20から送信される制御情報を用いて、無線機能付センサ10が送信するセンサ情報信号の出力を調整することで、状況に応じてリアルタイムに正しく通信できるように調整することが可能になる。
【0049】
具体的には、図11に示すように、発電装置150で発電される電力は同じであるため、演算装置130による動作モードの変更として、送信強度の大小に応じてセンサ情報の送信間隔を調整することができる。例えば、センサ情報の出力が小さく、送信強度が小さいときには、送信間隔を短くすることで、無線機能付センサ10と無線ホスト20との間の通信が途切れることなく通信を行うことができる。一方、センサ情報の出力が大きく、送信強度が大きいときには、送信間隔を長くすることで、無線機能付センサ10と無線ホスト20との間の通信が途切れることなく通信を行うことができる。
【0050】
また、無線機能付センサ10の移動に伴って無線ホスト20を変更する場合やセンサ情報信号が障害物によって反射して指定の無線ホスト20と通信できず、通信する無線ホスト20を変更する場合でも、送信強度や送信間隔を調整することで、スムーズに無線ホスト20の切替を行うことができる。
【0051】
また、無線機能付センサ10を廃棄するに際して、本実施例では、定期点検時に異常が見つかった無線機能付センサ10や、ビルや橋脚の処分や回収した際に出る不要となったコンクリートに含まれる無線機能付センサ10の動作を止める方法が考慮されている。すなわち、不要な無線機能付センサ10から送信されるセンサ情報を不要であって、他の機器などに悪い影響を与えかねない。そこで、不要になった無線機能付センサ10を廃棄の対象とし、この無線機能付センサ10の動作を停止することとしている。
【0052】
この際、無線ホスト20から当該無線機能付センサ10に対して、制御情報として停止要求を送ることで、無線機能付センサ10の機能を停止させることができる。例えば、無線機能付センサ10がホスト20からの停止要求を受信すると、発電回路151の出力をショートさせ発電回路151を破壊して、無線機能付センサ10の機能を停止させる方法や、また、電力制御装置140や演算装置130や無線装置110を停止させる方法がある。これにより、当該無線機能付センサ10は無線情報を送信できなくなり、当該無線機能付センサ10は、その機能を停止した状態となる。
【0053】
また、無線機能付センサ10は、無線送信回路111の動作のみを停止させることにより、一時的に無線機能付センサ10の機能を停止させることも可能となる。無線送信回路111のみを止めることにより、無線機能付センサ10は、センサ情報を送信せず、不要な電波送信を抑えることができる。
【0054】
しかし、発電装置150や電力制御装置140、演算装置130は動いているため、発電装置150に無線機能付センサ10が起動できる電荷がたまると、無線受信回路112のみを起動させる。そのため、ホスト20の無線送信回路201から起動要求を絶えず送信すれば、当該無線機能付センサ10はホスト20からの起動要求を受信し、無線送信回路111を起動させる。
【0055】
これにより、当該無線機能付センサ10は動作を再び開始することが可能となる。
【0056】
以上のように、受信機能を持った無線機能付センサ10を用いることで、リアルタイムでの調整や対応が可能になるため、非常に使いやすくなる。
【0057】
本実施例によれば、無線機能付センサ10と無線ホスト20との間の通信において、無線ホスト20が、無線機能付センサ10から送信されるセンサ情報信号31を受信直後に制御情報を送信することにより、無線機能付センサ10は受信待機することなく、無線ホスト20からの制御情報信号32を受信することが可能になる。これにより、無線機能付センサ10の消費電力を大幅に削減することができ、無線機能付センサ10内蔵の発電装置150による駆動が可能になる。
【0058】
また、無線機能付センサ10からセンサ情報の送信時に受信可能なバイト数(受信可能な時間)を無線ホスト20に連絡することで、無線ホスト20は、制御情報データのサイズの大きい場合は分割して送信することが可能になるため、無線機能付センサ10に確実に制御情報を送信することができる。
【0059】
これにより、無線機能付センサ10に直接端末を接続することなく、外部からの無線により調整可能となり、無線機能付センサ10の設置後の現場での調整やプログラムの変更などが簡単に可能になるとともに、リアルタイムに無線機能付センサ10のセンサ情報信号の強度変更や廃棄する際の送信停止など、運用面においても非常に使いやすいものになる。
【符号の説明】
【0060】
10 無線機能付センサ
20 無線ホスト
30 無線通信信号
31 センサ情報信号
32 制御情報信号
110 無線通信装置
111 無線送信回路
112 無線受信回路
120 センサ本体
130 演算装置
140 電力制御装置
150 発電装置
151 発電回路
152 コンデンサ
131 演算回路
132 メモリ
133 不揮発性メモリ
1331 プログラム
1332 設定情報
1000 超音波発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の物理量を検出する物理量検出手段と、自家発電により電力を生み出す発電手段と、前記発電手段により発電された電力を蓄える電力貯蔵手段と、前記物理量検出手段の検出結果を処理する処理手段と、前記処理手段の処理結果を通信対象に無線で送信する無線送信手段と、前記通信対象から送信された無線信号を受信する無線受信手段とを備え、前記各手段のうち前記電力貯蔵手段の負荷となる手段は、前記電力貯蔵手段に蓄えられた電力を電源として、前記電源の供給を間欠的に受けて起動してなる無線機能付センサにおいて、
前記処理手段は、前記電力貯蔵手段に蓄えられた電力が前記負荷の起動が可能な電力レベルになったときに、前記電力レベルを基に前記無線受信手段が受信可能なデータ量又は無線信号を受信可能な時間を算出し、この算出結果を前記処理結果に付加してなることを特徴とする無線機能付センサ。
【請求項2】
検出対象の物理量を検出する物理量検出手段と、自家発電により電力を生み出す発電手段と、前記発電手段により発電された電力を蓄える電力貯蔵手段と、前記物理量検出手段の検出結果を処理する処理手段と、前記処理手段の処理結果を通信対象に無線で送信する無線送信手段と、前記通信対象から送信された無線信号を受信する無線受信手段とを備え、前記各手段のうち前記電力貯蔵手段の負荷となる手段は、前記電力貯蔵手段に蓄えられた電力を電源として、前記電源の供給を間欠的に受けて起動してなる無線機能付センサの通信対象のとして、前記無線機能付センサと無線信号の送受信を行う無線信号送受信手段を備え、前記無線信号送受信手段は、前記無線機能付きセンサから無線信号を受信したことを条件に、前記無線信号受信後、直ちに、前記無線機能付センサに対して送信信号を送信してなる無線ホストにおいて、
前記無線信号送受信手段は、前記無線機能付センサに対して送信すべき送信信号のデータ量が前記無線機能付センサから受信した無線信号のデータ量よりも多いときには、前記送信すべき送信信号のデータを複数に分割して送信してなることを特徴とする無線ホスト。
【請求項3】
検出対象の物理量を検出する物理量検出手段と、自家発電により電力を生み出す発電手段と、前記発電手段により発電された電力を蓄える電力貯蔵手段と、前記物理量検出手段の検出結果を処理する処理手段と、前記処理手段の処理結果を通信対象に無線で送信する無線送信手段と、前記通信対象から送信された無線信号を受信する無線受信手段とを備え、前記各手段のうち前記電力貯蔵手段の負荷となる手段は、前記電力貯蔵手段に蓄えられた電力を電源として、前記電源の供給を間欠的に受けて起動してなる無線機能付センサの通信対象のとして、前記無線機能付センサと無線信号の送受信を行う無線信号送受信手段を備え、前記無線信号送受信手段は、前記無線機能付きセンサから無線信号を受信したことを条件に、前記無線信号受信後、直ちに、前記無線機能付センサに対して送信信号を送信してなる無線ホストにおいて、
前記無線信号送受信手段は、前記無線機能付センサから受信した無線信号を解析し、この解析結果に従って、前記無線機能付センサに対して一度に送信すべき送信信号のデータ量を決定してなることを特徴とする無線ホスト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−159619(P2009−159619A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24299(P2009−24299)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【分割の表示】特願2003−381296(P2003−381296)の分割
【原出願日】平成15年11月11日(2003.11.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】