焼結含油軸受の製造方法および焼結含油軸受
【課題】 この種の焼結含油軸受を成形する金型の長寿命化を低コストに達成しつつも、使用時におけるコンタミネーションの発生を抑制する焼結含油軸受の製造方法を提供する。
【解決手段】 金属粉末Mに、グラファイトを0.1wt%以上1.5wt%以下添加した原料粉をスリーブ状に圧縮成形した上で焼結し、これにより得られた焼結体15を上下パンチ18、19で軸方向に拘束した状態でダイ16により径方向に圧迫して、その内周面15aに、流体の動圧作用を生じるための動圧溝8a1、8a2に対応した形状の成形型17aを押し当てることにより、内周面15aを塑性変形させて動圧溝8a1、8a2を含む動圧発生部を形成した焼結含油軸受(軸受スリーブ8)を製造する。
【解決手段】 金属粉末Mに、グラファイトを0.1wt%以上1.5wt%以下添加した原料粉をスリーブ状に圧縮成形した上で焼結し、これにより得られた焼結体15を上下パンチ18、19で軸方向に拘束した状態でダイ16により径方向に圧迫して、その内周面15aに、流体の動圧作用を生じるための動圧溝8a1、8a2に対応した形状の成形型17aを押し当てることにより、内周面15aを塑性変形させて動圧溝8a1、8a2を含む動圧発生部を形成した焼結含油軸受(軸受スリーブ8)を製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受隙間に生じる流体の動圧作用で軸部材を非接触支持する動圧軸受を構成する焼結含油軸受の製造方法および焼結含油軸受に関するものである。この種の焼結含油軸受を備えた軸受装置は、情報機器、例えばHDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置等のスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、プロジェクタのカラーホイール、あるいは電気機器、例えば軸流ファンなどの小型モータ用として好適である。
【背景技術】
【0002】
上記各種モータには、高回転精度の他、高速化、低コスト化、低騒音化等が求められている。これらの要求性能を決定づける構成要素の1つに当該モータのスピンドルを支持する軸受があり、近年では、上記要求性能に優れた特性を有する動圧軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。
【0003】
例えば、HDD等のディスク駆動装置のスピンドルモータに組み込まれる動圧軸受装置では、軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部およびスラスト方向に支持するスラスト軸受部の双方を動圧軸受で構成する場合がある。この種の動圧軸受装置におけるラジアル軸受部としては、例えば焼結金属製の軸受スリーブ(焼結含油軸受)の内周面に、動圧発生部として、複数の動圧溝(傾斜溝)を配列した領域を形成すると共に、この動圧発生部を形成した面と、これに対向する軸部材の外周面との間にラジアル軸受隙間を形成するものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
通常、この種の焼結含油軸受は、Cu粉末又はFe粉末、あるいはその両者を主成分とする金属粉末を対応する成形金型で所定形状に圧縮成形し、この成形体を焼結することで得られる。また、内周面の動圧溝形状は、スリーブ素材(焼結体)の内周面に、動圧溝形状に対応した形状の成形型を外周に設けた成形ロッドを挿入すると共に、一対のパンチでスリーブ素材を軸方向に拘束した状態で、ダイ等の圧入部材をスリーブ素材の外周に圧入して、成形ロッドの成形型をスリーブ素材の内周面に押し付けることにより得られる(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
ところで、近年では、この種の焼結含油軸受に対する低コスト化の要求が高まっており、この要求に応えるため、例えば成形金型あるいは動圧溝成形金型の長寿命化を図るための手段が提案されている。
【0006】
長寿命化を達成するための手段として、例えば金型を耐摩擦、耐摩耗に優れた材料で形成する方法があるが、この方法では、高価な材料を使用する必要が生じ、またこの種の材料が加工性に乏しいため該金型の加工コストが高騰するなど、経済的な面で問題となる。
【0007】
この他の長寿命化達成手段として、例えば金型の表面に化学的あるいは物理的な改質処理を施す方法(例えば、特許文献3を参照)や、金型表面に超硬質被膜を形成する方法(例えば、特許文献4を参照)が知られている。これらは何れも金型の長寿命化には効果的な方法であるが、上記処理には多大なコストが必要となり、また処理後の二次加工が必要となるため、コストアップが避けられない。あるいは、金型形状や処理方法によっては、上記のような処理を施すことができない場合がある。
【0008】
一方で、上記焼結含油軸受を動圧軸受装置に組込んで使用する場合、動圧軸受装置がHDD等の精密かつ高清浄度が要求される環境下で使用されることを考慮すると、例えばスピンドルとなる軸との摺動摩耗によるコンタミネーションの発生は極力抑制すべき事象である。
【特許文献1】特開2003−239951号公報
【特許文献2】特開平11−182551号公報
【特許文献3】特開2003−253422号公報
【特許文献4】特開平7−243046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、この種の焼結含油軸受を成形する金型の長寿命化を低コストに達成しつつも、使用時におけるコンタミネーションの発生を抑制する焼結含油軸受の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、金属粉末をスリーブ状に圧縮成形した上で焼結し、これにより得られた焼結体を圧迫して、その内周面に、流体の動圧作用を生じるための動圧発生部に対応した形状の成形型を押し当てることにより、内周面を塑性変形させて動圧発生部を形成した焼結含油軸受を製造するに際し、グラファイトを0.1wt%以上1.5wt%以下添加した金属粉末を圧粉成形することを特徴とする焼結含油軸受の製造方法を提供する。
【0011】
上述のように、原料粉となる金属粉末に添加されたグラファイトは、成形金型への充填時に、その一部が金型表面に付着(転着)する。金型表面に付着したグラファイトは、金属粉末を圧縮成形する際、具体的には、圧縮時や離型時において圧縮成形体と金型との間の潤滑材として作用し、これにより両者間に生じる摺動摩擦が低減される。
【0012】
この種の摩擦低減効果は、焼結後に行う寸法サイジングや回転サイジング、あるいは動圧発生部に対応した形状の成形型(成形ロッドなど)を用いた動圧発生部の成形など、金型を用いた成形工程であれば、同様に享受し得るものである。すなわち、何れの場合も、焼結体表面のグラファイトの一部が金型表面に付着することで、あるいは焼結体表面に露出したグラファイトがそのまま金型表面との間で潤滑材として作用することで上述の摩擦低減効果を得ることができる。
【0013】
グラファイトが付着した金型表面は、グラファイトを添加した金属粉末から該金型表面にグラファイトが継続的に供給されることで維持され、これにより成形体と金型との間に生じる摺動摩擦の低減状態を持続させることができる。従って、原料粉(金属粉末)にグラファイトを添加するだけで、高価な金型材料を使用したり、加工コストの増加を招く表面処理を施すことなく、安価に金型の長寿命化を達成することができる。
【0014】
金型表面にグラファイトが付着した状態を維持するためには、ある程度のグラファイトを添加する必要があるが、過剰に添加されたグラファイトが摩擦低減効果に寄与しないことを考慮すると、それほど添加量を増加する必要はない。むしろ、グラファイト添加量の増加により、焼結に関与しないグラファイト自体が成形体から遊離して例えば潤滑油中にコンタミネーションとして混入する恐れが生じる。あるいはグラファイトの過剰な添加により金属粉間の焼結作用が不十分となり、焼結体の結合強度が低下することで、例えばかかる焼結含油軸受を備えた動圧軸受装置の使用時、軸との摺動摩耗により、表層部のグラファイトあるいは金属成分が脱落する恐れが生じる。
【0015】
そこで、本発明者らは、グラファイト添加量に対する、金型寿命、耐摩耗性との関係を詳細に調査した結果、以下の如く、金型の損傷抑制とコンタミネーションの発生抑制とを両立し得るグラファイト添加量の最適範囲を見出した。
【0016】
すなわち、金属粉末に対するグラファイトの添加量は、0.1wt%以上1.5wt%以下が好ましい。添加量を0.1wt%以上とすることで、金型表面にグラファイトが付着した状態を維持し、成形時(特に圧縮時、離型時)における摩擦低減効果を確実に得ることができる。また、添加量を1.5wt%以内に抑えることで、焼結に関与しないグラファイトが焼結体から遊離したり、また、焼結含油軸受の結合強度低下から、使用中の摩耗によりグラファイトや金属成分が脱落する事態を生じ難くすることができる。上記グラファイトの添加量は、0.2wt%以上0.8wt%以下がより好ましく、これにより、顕著な摩擦低減効果を得ることができると共に、焼結含油軸受の使用時、グラファイトや金属成分の摩耗、あるいは脱落を極力防止することができる。
【0017】
また、前記課題を解決するため、本発明は、金属粉末をスリーブ状に圧縮成形した上で焼結することで形成され、かつその内周面に、流体の動圧作用を生じるための動圧発生部が、焼結体の内周面に動圧発生部に対応した形状の成形型を押し当てることによる塑性変形で形成された焼結含油軸受であって、グラファイトが0.1wt%以上1.5wt%以下含まれることを特徴とする焼結含油軸受を提供する。
【0018】
このように、グラファイトを含む焼結結含油軸受によれば、例えばこの焼結含油軸受の圧縮成形時、あるいは各種サイジングや動圧発生部成形時、使用する金型表面に付着したグラファイトにより、成形体と金型との間での摺動摩擦を低減することができる。これにより、金型寿命を低コストに延ばすことができる。また、グラファイトの含有量が0.1wt%以上1.5wt%以下となるように、予めグラファイトを添加しておくことで、上述の如く、金型の長寿命化とコンタミネーションの発生抑制とを両立した焼結含油軸受を得ることができる。
【0019】
動圧発生部としては、例えば複数の円弧面を周方向に配列した領域や、軸方向の溝を周方向に複数配列した領域が考えられるが、この他に、複数の傾斜溝を配列した構成が考えられる。この種の動圧発生部の成形工程においては、金型の損傷抑制と同時に、被成形体側の摩擦損傷、具体的には動圧発生部形成領域の摩擦損傷を可能な限り小さく抑えることが必要となる。グラファイトの添加量を増加すれば、金型との摺動摩擦が低減されるので、これにより動圧発生部領域の摩擦低減効果を高めることができるが、その一方で、グラファイト添加量の増加は、焼結体の結合強度(金属粉末間の焼結強度)低下を招く。そのため、かかる焼結含油軸受の使用時、軸との摺動接触に伴って動圧発生部形成領域が容易に摩耗し、これにより動圧発生部による流体の動圧作用が低下する恐れがある。このように、グラファイトの添加は、成形時における金型との摺動摩擦、および使用時における軸との摺動摩耗という、二律背反の問題を生じる。
【0020】
これに対して、本発明の如く、グラファイトの含有量(添加量)を0.1wt%以上1.5wt%以下に規定することで、成形時の摩擦損傷、および使用時の摩耗損傷の何れをも可及的に抑えて、高精度に成形した動圧発生部形状を維持することができる。これにより、使用時におけるグラファイト等の脱落を極力抑えて、軸受の清浄度を確保すると共に、動圧発生部の損傷を小さく抑えることで、高い動圧軸受性能を発揮することが可能となる。特に、動圧発生部として、動圧作用を生じるための傾斜溝(動圧溝)を成形する場合には、当該動圧溝を形成するための成形型が他所に比べて大径となるため、動圧溝成形後、成形型を備えたロッドを成形体から引抜く際、径方向へのスプリングバック量によっては、成形した動圧溝領域(特に動圧溝間の領域)を傷付けやすいが、上述のように、グラファイトの最適な添加範囲を規定することで、微細かつ高精度に成形された成形型(成形ロッド)およびこれにより形成される動圧溝の離型時の摩耗を抑制し、この動圧溝を高精度に成形することが可能となる。
【0021】
上記構成の焼結含油軸受は、この焼結含油軸受を有する動圧軸受装置として好適に提供可能である。
【0022】
また、上記構成の動圧軸受装置は、この動圧軸受装置を備えたモータ、例えばHDD等の磁気ディスク駆動装置や、CD−ROM、DVD−ROM等の光ディスク駆動装置、あるいはファンモータ等として好適に提供可能である。
【発明の効果】
【0023】
以上より、本発明によれば、この種の焼結含油軸受を成形する金型の長寿命化を低コストに達成しつつも、焼結含油軸受の使用中におけるコンタミネーションの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る動圧軸受装置1を組込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に非接触支持する動圧軸受装置1と、軸部材2に装着されたディスクハブ3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5とを備えている。ステータコイル4はモータブラケット6の外周に取付けられ、ロータマグネット5は、ディスクハブ3の内周に取付けられている。ディスクハブ3は、その外周に磁気ディスク等のディスク状情報記憶媒体(以下、単にディスクという。)Dを一枚または複数枚(図1では2枚)保持している。このように構成されたスピンドルモータにおいて、ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間に発生する励磁力でロータマグネット5が回転し、これに伴って、ディスクハブ3およびディスクハブ3に保持されたディスクDが軸部材2と一体に回転する。
【0026】
図2は、動圧軸受装置1を示している。この動圧軸受装置1は、軸部材2と、ハウジング7と、ハウジング7に固定された軸受スリーブ8、およびシール部材9とを主な構成要素として構成されている。なお、説明の便宜上、ハウジング7の底部7bの側を下側、底部7bと反対の側を上側として以下説明する。
【0027】
軸部材2は、例えばステンレス鋼等の金属材料で形成され、軸部2aと、軸部2aの下端に一体又は別体に設けられたフランジ部2bとを備えている。なお、軸部材2は、金属材料と樹脂材料とのハイブリッド構造とすることもでき、その場合、軸部2aの少なくともディスクハブ3との締結部を含む箇所(上端部)が上記金属で形成され、残りの箇所(例えば軸部2aの芯部やフランジ部2b)が樹脂で形成される。なお、フランジ部2bの強度を確保するため、フランジ部2bを樹脂・金属のハイブリッド構造とし、軸部2aの鞘部と共に、フランジ部2bの芯部を金属製とすることもできる。
【0028】
ハウジング7は、LCPやPPS、PEEK等の結晶性樹脂、あるいはこれら結晶性樹脂にPSU、PES、PEI等の非晶性樹脂を配合したものをベース樹脂とする樹脂組成物で射出成形され、例えば図2に示すように、側部7aと、側部7aの下端に一体に形成された底部7bとで構成される。ハウジング7を構成する上記樹脂組成物には、例えば、ガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカ状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、カーボン繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、各種金属粉等の繊維状または粉末状の導電性充填材を、目的に応じて適量配合することができる。
【0029】
底部7bの上端面7b1の全面又は一部環状領域には、スラスト動圧発生部として、例えば図示は省略するが、複数の動圧溝をスパイラル形状に配列した領域が形成される。この動圧溝形成領域は、フランジ部2bの下端面2b2と対向し、軸部材2の回転時には、下端面2b2との間に第二スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間を形成する(図2を参照)。この動圧溝は、ハウジング7を成形する成形型の所要部位(上端面7b1を成形する部位)に、動圧溝を成形する溝型を加工しておくことで、ハウジング7と同時成形することができる。また、上端面7b1から軸方向上方に所定寸法だけ離れた位置には、軸受スリーブ8の下端面8cと係合して軸方向の位置決めを行う段部7dが一体に形成される。
【0030】
軸受スリーブ8は、CuあるいはCu合金を主成分とする焼結金属の多孔質体で円筒状に形成され、ハウジング7の内周面7cに固定される。この軸受スリーブ8は、後述のように内部空孔に潤滑油を充填することで焼結含油軸受を構成する。
【0031】
軸受スリーブ8の内周面8aの全面又は一部円筒領域には、ラジアル動圧発生部が形成される。この実施形態では、例えば図3(a)に示すように、複数の動圧溝8a1、8a2をへリングボーン形状に配列した領域が軸方向に離隔して2箇所形成される。
【0032】
軸受スリーブ8の下端面8cの全面または一部の環状領域には、スラスト動圧発生部として、例えば図3(b)に示すように、複数の動圧溝8c1をスパイラル形状に配列した領域が形成される。
【0033】
シール部材9は、例えば樹脂材料又は金属材料で環状に形成され、ハウジング7の側部7aの上端部内周に配設される。シール部材9の内周面9aは、軸部2aの外周に設けられたテーパ面2a2と所定のシール空間Sを介して対向する。なお、軸部2aのテーパ面2a2は上側(ハウジング7に対して外部側)に向かって漸次縮径し、軸部材2の回転時には毛細管力シールおよび遠心力シールとしても機能する。
【0034】
ハウジング7の内周に、軸部材2および軸受スリーブ8を挿入し、段部7dにより軸受スリーブ8の軸方向の位置決めを行った上で、軸受スリーブ8をハウジング7の内周面7cに、例えば接着(ルーズ接着、圧入を伴う接着を含む)、圧入、溶着(超音波溶着を含む)等の手段により固定する。そして、シール部材9を、その下端面9bを軸受スリーブ8の上端面8bに当接させた上で、ハウジング7の内周面7cに固定する。その後、軸受スリーブ8の内部空孔を含むハウジング7の内部空間に潤滑油を充満させることで、動圧軸受装置1の組立が完了する。このとき、シール部材9で密封されたハウジング7の内部空間に充満した潤滑油の油面は、シール空間Sの範囲内に維持される。
【0035】
軸部材2の回転時、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域(上下2箇所の動圧溝8a1、8a2形成領域)は、軸部2aの外周面2a1とラジアル軸受隙間を介して対向する。そして、軸部材2の回転に伴い、上記ラジアル軸受隙間の潤滑油が各動圧溝8a1、8a2の軸方向中心側に押し込まれ、その圧力が上昇する。このような動圧溝の動圧作用によって、軸部2aを非接触支持する第一ラジアル軸受部R1と第二ラジアル軸受部R2とがそれぞれ構成される。
【0036】
これと同時に、フランジ部2bの上端面2b1とこれに対向する軸受スリーブ8の下端面8c(動圧溝8c1形成領域)との間のスラスト軸受隙間、およびフランジ部2bの下端面2b2とこれに対向する底部7bの上端面7b1(動圧溝形成領域)との間のスラスト軸受隙間に、動圧溝の動圧作用により潤滑油の油膜がそれぞれ形成される。そして、これら油膜の圧力によって、フランジ部2bを両スラスト方向に回転自在に非接触支持する第一スラスト軸受部T1と、第二スラスト軸受部T2とが構成される。
【0037】
以下、本発明の一実施形態に係る焼結含油軸受(軸受スリーブ8)の製造方法を説明する。
【0038】
図4は、焼結含油軸受(軸受スリーブ8)の原材料となる金属粉末Mを所定形状(この実施形態では、図3に示す円筒形状)に圧縮成形する工程を概念的に示すものである。この実施形態における成形装置は、完成後の焼結含油軸受の外周面に対応する箇所を成形するダイ11と、内周面に対応する箇所を成形するコアロッド12と、下端面に対応する箇所を成形する下パンチ13と、上端面に対応する箇所を成形する上パンチ14とを主要な要素として構成される。
【0039】
コアロッド12は、ダイ11の内周に挿入され、その先端は、ダイ11の上端面よりも上方に位置している。また、下パンチ13の上端部はダイ11の内周に挿入され、下パンチ13の上端面13aからダイ11の上端面までの軸方向間隔により、金属粉末Mの軸方向充填量が所定の値に設定される。
【0040】
充填される金属粉末Mは、上述の金属粉、例えばCu粉やCu合金粉、あるいはこれらにFe粉を配合したものをベース材料とし、これらベースとなる金属粉末にグラファイトを0.1wt%以上1.5wt%以下添加したものが使用される。
【0041】
金属粉末Mを充填する型領域(キャビティ)は、ダイ11の内周面11aと、コアロッド12の外周面12aと、下パンチ13の上端面13aとで画成され、画成された型領域内に所定量の金属粉末Mが充填される。この際、金属粉末M中に含まれるグラファイトの一部が、成形面となるダイ11の内周面11aやコアロッド12の外周面12a、下パンチ13の上端面13aに付着する。
【0042】
図4に示す状態から、まず上パンチ14を下降させ、その下端面14aを充填中の金属粉末Mに押し当てる。そして、図5に示すように、下端面14aを押し当てた位置(同図中破線位置)から、さらに上パンチ14を下降させ、金属粉末Mを軸方向上側から圧縮する。このように、キャビティに充填された金属粉末Mは、径方向を拘束された状態で軸方向に圧縮され、例えば図6に示すような形状の圧縮成形体Maに成形される。
【0043】
このとき、上パンチ14によって軸方向に圧縮される金属粉末Mと、ダイ11の内周面11aあるいはコアロッド12の外周面12aとが、軸方向への摺動摩擦を生じるが、金属粉末Mの充填時、ダイ11の内周面11aやコアロッド12の外周面12aに付着したグラファイトにより、両者間(金属粉末Mと内周面11a、あるいは外周面12aとの間)の摺動摩擦が低減される。
【0044】
この後、図6に示すように、コアロッド12と上下パンチ13、14とを一体に上昇させ(ダイ11に対して上方向に相対移動させ)、下パンチ13の上端面13aがダイ11の上端面と同じ高さ、あるいは上端面より若干高くなる位置まで上昇させる。この位置から、さらに上パンチ14のみを上昇させると共に、コアロッド12を下降させて、圧縮成形体Maからコアロッド12を引き抜く。このとき、ダイ11の内周面11aに付着したグラファイトにより、圧縮成形体Maの外周面との間の摺動摩擦が低減され、また、コアロッド12の外周面12aに付着したグラファイトにより、圧縮成形体Maの内周面との間の摺動摩擦が低減される。従って、ダイ11からの圧縮成形体Maの離型)、およびコアロッド12からの圧縮成形体Maの離型を、それぞれ成形金型(ダイ11、コアロッド12)の摩擦損傷を小さく抑えた状態で行うことができる。
【0045】
上記工程により形成された圧縮成形体Maを、所定の焼結温度で焼結することで焼結体が得られる。この際、焼結体中におけるグラファイト含有量を1.5wt%以下とすることで、焼結時、焼結に関与しないグラファイト以外の金属粉間の焼結作用が滞りなく行われ、これにより、十分な焼結強度を有する焼結体を得ることができる。かかる焼結体であれば、焼結含油軸受(軸受スリーブ8)としての使用時、例えば軸部材2との間の摺動接触に対しても、焼結含油軸受表層部のグラファイトあるいは金属成分が摩耗により脱落し、潤滑油中に混入するといった事態を可及的に防ぐことができる。これにより、動圧軸受装置1あるいはこれを備えたモータの清浄度を確保して、かかるモータを長期に亘って安定して使用することができる。
【0046】
上記焼結体に、図示は省略するが、さらに寸法サイジング、および回転サイジングを施すことで、焼結体の内、外周面、および軸方向幅が適正寸法に矯正される。この場合も、各サイジングに使用する金型の表面に、焼結体表面のグラファイトを付着させることで、上記圧縮成形時と同様に、サイジング用金型の摩擦低減効果を得ることができる。
【0047】
上記サイジング工程を経た焼結体の内周面に、例えば図3に示す動圧溝8a1、8a2を型成形する。以下、図7〜図10に基づいて、焼結体15に対する動圧溝の型成形加工(動圧溝サイジング)の一例を説明する。なお、特にサイジングが必要ない場合、あるいは、後述の動圧溝成形工程で、動圧溝を成形すると同時に焼結体15の寸法サイジングが行われる場合には、上記寸法サイジングや回転サイジングの何れか、あるいは双方を省略することもできる。
【0048】
動圧溝成形工程は、焼結体15の内周面15aに、完成品の動圧溝8a1、8a2の形成領域に対応した形状の成形型を加圧することによって、動圧溝8a1、8a2とそれ以外の領域(図3(a)中クロスハッチングで示す領域)とを同時成形する工程である。
【0049】
この実施形態の動圧溝成形工程で使用する加工装置は、例えば図7に示すように、円筒形状の焼結体15の外周面15bを圧入するダイ16と、焼結体15の内周面15aを成形するコアロッド17と、焼結体15の両端面を上下方向(軸方向)から拘束する上パンチ18および下パンチ19とを主要な要素として構成される。
【0050】
コアロッド17の外周には、例えば図8に示すように、完成品の動圧溝8a1、8a2の形成領域に対応した凸凹状の成形型17aが設けられる。この成形型17aの凸凹部の深さHは、成形しようとする動圧溝8a1、8a2の溝深さと同程度である。なお、通常この凸凹部の深さは数μm〜数十μm程度であり、他の構成要素の寸法に比べれば微小であるが、図8および後述の図9、図10では理解の容易化のため深さを誇張して描いている。
【0051】
コアロッド17の外周には上パンチ18が上下方向に摺動自在に外挿されており、上パンチ18はコアロッド17と一体になって昇降運動を行う。両者は、共有の駆動源、あるいはそれぞれ独立の駆動源で昇降させることが可能である。ダイ16は、図示されていない駆動手段によって、コアロッド17および上パンチ18とは独立して昇降駆動される。下パンチ19は当該装置の静止部材(例えば台座等)に固定されている。
【0052】
図7に示す初期状態において、ダイ16は焼結体15に対して軸方向下位置にあり、コアロッド17および上パンチ18は軸方向上位置にある。ダイ16の成形孔には下パンチ19が摺動自在に挿入され、下パンチ19の先端はダイ16の成形孔上端より突出している。被加工物である焼結体15は下パンチ19の上端面上に配置される。
【0053】
上記の初期状態から、図8に示すように、コアロッド17および上パンチ18を一体に下降させ、コアロッド17を焼結体15の内周に挿入すると共に、上パンチ18を焼結体15の上端面に押し当てる。これによって、焼結体15が上下パンチ18、19によって軸方向両側から支持(拘束)され、上下パンチ18、19の焼結体15との当接端面間の対向間隔が所定の値に管理される。コアロッド17の成形型17aは,焼結体15の内周面15aの、動圧溝8a1、8a2の形成予定領域と対向する軸方向位置に配される。
【0054】
このとき、焼結体15の内周面15aとコアロッド17の成形型17aの凸部との間には内径すき間Gが存在する。また、焼結体15の外周面15bとダイ16の内周面16aとの間には、内径すき間Gと同じか、あるいは内径すき間Gよりわずかに大きい圧入代Pが存在する(ともに図8を参照)。
【0055】
次に、図9に示すように、上記軸方向拘束状態を保持してダイ16を上昇させ、内周に形成される成形孔に焼結体15を圧入する。これにより、焼結体15はダイ16と上下パンチ18、19とから圧迫力を受けて変形し、径方向にサイジングされる。これに伴い、焼結体15の内周面15aがコアロッド17の成形型17aに押し当てられ、内周面15aから所定深さまでの表層部分が塑性変形を起こして成形型17aに食い付く。これにより、成形型17aの凸凹形状が焼結体15の内周面15aに転写され、両動圧溝8a1、8a2とそれ以外の領域(図3(a)中クロスハッチング領域)が同時に成形される。このとき、焼結体15の内周面15aに押し当てられたコアロッド17の成形型17a、および焼結体15の外周面15bを圧迫するダイ16の内周面16aに、焼結体15表面のグラファイトが付着する。
【0056】
上記工程が完了した後、図10に示すように、上下パンチ18、19による軸方向拘束状態を保持した状態でダイ16を下降させて、焼結体15をダイ16から抜き、径方向の圧迫力を解除する。このとき、ダイ16の内周面16aに付着したグラファイトにより、焼結体15の外周面15bとの間の摺動摩擦が低減された状態でダイ16の引抜き(離型)が行われる。また、ダイ16からの離型に伴い、焼結体15に径方向のスプリングバックが発生し、焼結体15からコアロッド17を抜き取り可能な状態となる。次に、上パンチ18およびコアロッド17を一体に上昇させ、焼結体15の軸方向拘束状態を解除する。上パンチ18およびコアロッド17が初期位置(図7の位置)に達した段階で、上パンチ18を停止させる一方で、コアロッド17を引き続いて上昇させることで、焼結体15からコアロッド17が引き抜かれ、焼結体15が離型される。これにより、完成品としての軸受スリーブ8が形成され、これに上記潤滑油を含浸させることで焼結含油軸受が完成する。
【0057】
上記コアロッド17の引抜き時、焼結体15の径方向へのスプリングバック量によっては、コアロッド17の外周面(特に成形型17a)と焼結体15の内周面15a(特に動圧溝8a1、8a2形成領域)との間で相当量の摺動摩擦を生じる場合がある。これに対して、本実施形態のように、上記焼結体15の材料として、グラファイトを0.1wt%以上1.5wt%以下添加した金属粉末を使用することで、かかる成形型17aと動圧溝領域との間の摺動摩擦が可及的に低減される。これにより、動圧溝8a1、8a2用の成形型17aの摩擦損傷が低減されると共に、この成形型17aで成形した動圧溝8a1、8a2の形状を高精度に維持することができる。また、グラファイト添加量の上限値を1.5wt%とすることで、焼結体15の結合強度の低下を極力抑え、上記摺動摩擦時、あるいは焼結含油軸受としての使用時、焼結体15の動圧溝8a1、8a2形成領域の損傷を抑制することができる。従って、使用時におけるグラファイト等の脱落を極力抑えて、軸受の清浄度を確保すると共に、動圧溝8a1、8a2の損傷を最小限に抑えることで、高い動圧軸受性能を長期に亘って発揮することが可能となる。
【0058】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0059】
以上の実施形態では、形成すべき焼結含油軸受(軸受スリーブ8)の内周面8aに、複数の動圧溝をへリングボーン形状に配列した領域を形成した場合を説明したが、本発明は、上記構成に限らず他構成の動圧発生部に対しても同様に適用することができる。
【0060】
例えば、内周面8aに型成形される動圧発生部として、図示は省略するが、軸方向の溝を円周方向の複数箇所に形成し、対向する軸部2aの外周面2a1との間にいわゆるステップ状に変化する径方向隙間(軸受隙間)を形成した、いわゆるステップ軸受に対して本発明を適用することができる。あるいは、円周方向に複数の円弧面を配列し、対向する軸部外周面2a1との間に、くさび状の径方向隙間(軸受隙間)を形成した、いわゆる多円弧軸受に対して本発明を適用することができる。これにより、金型の摺動摩擦を低減し、かつ使用時におけるコンタミネーションの発生を抑制して、金型の長寿命化と動圧軸受およびこれを備えたモータの清浄度の確保とを共に達成することができる。
【0061】
これら動圧発生部は、例えば図2に示すように、軸方向に離隔して2箇所以上設けることもでき、その場合、軸方向に離隔した動圧発生部間の領域に、これら動圧発生部の内径より大径となる逃げ部を設けた構成とすることもできる。この逃げ部は、例えば図示は省略するが、動圧発生部を成形するコアロッドの外周に、逃げ部に対応した形状(他所に比べて大径)の型部を設けておくことで、成形すべき焼結体の内周面に、動圧発生部の成形と同時に成形することが可能である。
【0062】
また、以上の実施形態では、金属粉末Mの圧縮成形を、下パンチ13の軸方向位置を固定した状態で上パンチ14のみを下降させることで行う場合を説明したが、上パンチ14を下降させて金属粉末Mを圧縮した後、今度は上パンチ14を圧縮時の軸方向位置に保持した状態で下パンチ13を上昇させ、金属粉末Mを軸方向両端から圧縮する方法を採ることもできる。
【0063】
また、以上の実施形態では、焼結体15に対する動圧溝成形を、焼結体15を上下パンチ18、19で軸方向に拘束した状態で、ダイ16を焼結体15の外周に圧入することにより行う場合を説明したが、これに限らず他の方法を採ることもできる。例えば、図示は省略するが、焼結体15の外径より大きい内径を有するダイを焼結体15の外周に配した状態で上下パンチ18、19を相対近接させて、焼結体15を軸方向両端から圧迫することにより、内周面15aをコアロッド17の成形型17aに押し付けるようにしても構わない。
【0064】
また、以上の実施形態では、動圧軸受装置1の内部に充満し、ラジアル軸受隙間や、スラスト軸受隙間において動圧作用を生じる流体として、潤滑油を例示したが、それ以外にも各軸受隙間において動圧作用を生じ得る流体、例えば空気等の気体や、磁性流体等の流動性を有する潤滑剤、あるいは潤滑グリース等を使用することもできる。
【実施例1】
【0065】
本発明の効果を実証するため、グラファイトの添加量を変化させた場合に、成形工程における離型時の成形体と金型との間の摩擦力に与える影響を評価した。具体的には、CuおよびFeをベース粉末とする金属粉末に、グラファイトを、0wt%〜5wt%添加した原料粉を用いて、フローティングダイ法でタブレット形状(φ20mm×L20mm)の成形体を製作し、離型時の摩擦力(成形体とダイとの間の摩擦力;以下、スライド抵抗力とする。)を測定した。また、上記組成の原料粉を、実際の製品寸法(φ7.5mm×φ4.0mm×L9.2mm)に成形し、さらにこの成形体に対して寸法サイジングを行い、グラファイト添加量に対する金型寿命との相関を調べた。また、グラファイトの添加量に対する成形体の摩耗量の相関を調べた。摩耗試験は、上記寸法(φ7.5mm×φ4.0mm×L9.2mm)の成形体に対して、面圧:0.3MPa、速度:50m/min、試験時間:500hで行った。この際の摩耗量を、試験前の成形体重量に対する試験後の成形体重量の減少量[mg]で評価した。
【0066】
図11に、摩擦力測定試験の結果を示す。同図より、スライド抵抗力はグラファイトの添加量が0wt%から0.05wt%にかけて、ほとんど変化がないのに対し、同添加量が0.1wt%から1.5wt%と増加するにつれてスライド抵抗力は減少する。添加量が1.5wt%を超えると、スライド抵抗力はほとんど減少することなく一定の値を示す。
【0067】
図12および図13に、成形金型寿命およびサイジング金型寿命測定試験の結果を示す。同図より、何れについても、成形金型およびサイジング金型の寿命と、グラファイト添加量との間には一定の相関が認められ、かつスライド抵抗力との間にも高い相関が得られた。このことから、グラファイトの添加によるスライド抵抗力の低減効果は、金型の長寿命化に大きく寄与することがわかる。
【0068】
図14に、摩耗試験の結果を示す。同図より、グラファイトの添加量が増加するにつれて成形体の重量減少量が増加する。1.5wt%以下では、その減少割合は比較的緩やかであるが、1.5wt%を超えると、成形体重量の減少割合が顕著に増加する。このことから、1.5wt%を境にコンタミネーションの発生量が大幅に増加するものと推定される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態に係る動圧軸受装置を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの断面図である。
【図2】動圧軸受装置の断面図である。
【図3】それぞれ軸受スリーブの(a)縦断面図、(b)下端面である。
【図4】焼結含油軸受となる軸受スリーブの圧縮成形工程を概念的に示す図である。
【図5】軸受スリーブの圧縮成形工程を概念的に示す図である。
【図6】軸受スリーブの圧縮成形工程を概念的に示す図である。
【図7】軸受スリーブの内周面に動圧発生部を型成形する工程を概念的に示す図である。
【図8】軸受スリーブの内周面に動圧発生部を型成形する工程を概念的に示す図である。
【図9】軸受スリーブの内周面に動圧発生部を型成形する工程を概念的に示す図である。
【図10】軸受スリーブの内周面に動圧発生部を型成形する工程を概念的に示す図である。
【図11】摩擦力測定試験の結果を示す図である。
【図12】成形金型寿命測定試験の結果を示す図である。
【図13】サイジング金型寿命測定試験の結果を示す図である。
【図14】摩耗試験の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1 動圧軸受装置
2 軸部材
3 ディスクハブ
4 ステータコイル
5 ロータマグネット
6 モータブラケット
7 ハウジング
8 軸受スリーブ(焼結含油軸受)
8a 内周面
8a1、8a2 動圧溝
9 シール部材
11 ダイ
12 コアロッド
13 下パンチ
14 上パンチ
15 焼結体
15a 内周面
16 ダイ
17 コアロッド
17a 成形型
18 下パンチ
19 上パンチ
M 金属粉末
Ma 圧縮成形体
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受隙間に生じる流体の動圧作用で軸部材を非接触支持する動圧軸受を構成する焼結含油軸受の製造方法および焼結含油軸受に関するものである。この種の焼結含油軸受を備えた軸受装置は、情報機器、例えばHDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置等のスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、プロジェクタのカラーホイール、あるいは電気機器、例えば軸流ファンなどの小型モータ用として好適である。
【背景技術】
【0002】
上記各種モータには、高回転精度の他、高速化、低コスト化、低騒音化等が求められている。これらの要求性能を決定づける構成要素の1つに当該モータのスピンドルを支持する軸受があり、近年では、上記要求性能に優れた特性を有する動圧軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。
【0003】
例えば、HDD等のディスク駆動装置のスピンドルモータに組み込まれる動圧軸受装置では、軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部およびスラスト方向に支持するスラスト軸受部の双方を動圧軸受で構成する場合がある。この種の動圧軸受装置におけるラジアル軸受部としては、例えば焼結金属製の軸受スリーブ(焼結含油軸受)の内周面に、動圧発生部として、複数の動圧溝(傾斜溝)を配列した領域を形成すると共に、この動圧発生部を形成した面と、これに対向する軸部材の外周面との間にラジアル軸受隙間を形成するものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
通常、この種の焼結含油軸受は、Cu粉末又はFe粉末、あるいはその両者を主成分とする金属粉末を対応する成形金型で所定形状に圧縮成形し、この成形体を焼結することで得られる。また、内周面の動圧溝形状は、スリーブ素材(焼結体)の内周面に、動圧溝形状に対応した形状の成形型を外周に設けた成形ロッドを挿入すると共に、一対のパンチでスリーブ素材を軸方向に拘束した状態で、ダイ等の圧入部材をスリーブ素材の外周に圧入して、成形ロッドの成形型をスリーブ素材の内周面に押し付けることにより得られる(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
ところで、近年では、この種の焼結含油軸受に対する低コスト化の要求が高まっており、この要求に応えるため、例えば成形金型あるいは動圧溝成形金型の長寿命化を図るための手段が提案されている。
【0006】
長寿命化を達成するための手段として、例えば金型を耐摩擦、耐摩耗に優れた材料で形成する方法があるが、この方法では、高価な材料を使用する必要が生じ、またこの種の材料が加工性に乏しいため該金型の加工コストが高騰するなど、経済的な面で問題となる。
【0007】
この他の長寿命化達成手段として、例えば金型の表面に化学的あるいは物理的な改質処理を施す方法(例えば、特許文献3を参照)や、金型表面に超硬質被膜を形成する方法(例えば、特許文献4を参照)が知られている。これらは何れも金型の長寿命化には効果的な方法であるが、上記処理には多大なコストが必要となり、また処理後の二次加工が必要となるため、コストアップが避けられない。あるいは、金型形状や処理方法によっては、上記のような処理を施すことができない場合がある。
【0008】
一方で、上記焼結含油軸受を動圧軸受装置に組込んで使用する場合、動圧軸受装置がHDD等の精密かつ高清浄度が要求される環境下で使用されることを考慮すると、例えばスピンドルとなる軸との摺動摩耗によるコンタミネーションの発生は極力抑制すべき事象である。
【特許文献1】特開2003−239951号公報
【特許文献2】特開平11−182551号公報
【特許文献3】特開2003−253422号公報
【特許文献4】特開平7−243046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、この種の焼結含油軸受を成形する金型の長寿命化を低コストに達成しつつも、使用時におけるコンタミネーションの発生を抑制する焼結含油軸受の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、金属粉末をスリーブ状に圧縮成形した上で焼結し、これにより得られた焼結体を圧迫して、その内周面に、流体の動圧作用を生じるための動圧発生部に対応した形状の成形型を押し当てることにより、内周面を塑性変形させて動圧発生部を形成した焼結含油軸受を製造するに際し、グラファイトを0.1wt%以上1.5wt%以下添加した金属粉末を圧粉成形することを特徴とする焼結含油軸受の製造方法を提供する。
【0011】
上述のように、原料粉となる金属粉末に添加されたグラファイトは、成形金型への充填時に、その一部が金型表面に付着(転着)する。金型表面に付着したグラファイトは、金属粉末を圧縮成形する際、具体的には、圧縮時や離型時において圧縮成形体と金型との間の潤滑材として作用し、これにより両者間に生じる摺動摩擦が低減される。
【0012】
この種の摩擦低減効果は、焼結後に行う寸法サイジングや回転サイジング、あるいは動圧発生部に対応した形状の成形型(成形ロッドなど)を用いた動圧発生部の成形など、金型を用いた成形工程であれば、同様に享受し得るものである。すなわち、何れの場合も、焼結体表面のグラファイトの一部が金型表面に付着することで、あるいは焼結体表面に露出したグラファイトがそのまま金型表面との間で潤滑材として作用することで上述の摩擦低減効果を得ることができる。
【0013】
グラファイトが付着した金型表面は、グラファイトを添加した金属粉末から該金型表面にグラファイトが継続的に供給されることで維持され、これにより成形体と金型との間に生じる摺動摩擦の低減状態を持続させることができる。従って、原料粉(金属粉末)にグラファイトを添加するだけで、高価な金型材料を使用したり、加工コストの増加を招く表面処理を施すことなく、安価に金型の長寿命化を達成することができる。
【0014】
金型表面にグラファイトが付着した状態を維持するためには、ある程度のグラファイトを添加する必要があるが、過剰に添加されたグラファイトが摩擦低減効果に寄与しないことを考慮すると、それほど添加量を増加する必要はない。むしろ、グラファイト添加量の増加により、焼結に関与しないグラファイト自体が成形体から遊離して例えば潤滑油中にコンタミネーションとして混入する恐れが生じる。あるいはグラファイトの過剰な添加により金属粉間の焼結作用が不十分となり、焼結体の結合強度が低下することで、例えばかかる焼結含油軸受を備えた動圧軸受装置の使用時、軸との摺動摩耗により、表層部のグラファイトあるいは金属成分が脱落する恐れが生じる。
【0015】
そこで、本発明者らは、グラファイト添加量に対する、金型寿命、耐摩耗性との関係を詳細に調査した結果、以下の如く、金型の損傷抑制とコンタミネーションの発生抑制とを両立し得るグラファイト添加量の最適範囲を見出した。
【0016】
すなわち、金属粉末に対するグラファイトの添加量は、0.1wt%以上1.5wt%以下が好ましい。添加量を0.1wt%以上とすることで、金型表面にグラファイトが付着した状態を維持し、成形時(特に圧縮時、離型時)における摩擦低減効果を確実に得ることができる。また、添加量を1.5wt%以内に抑えることで、焼結に関与しないグラファイトが焼結体から遊離したり、また、焼結含油軸受の結合強度低下から、使用中の摩耗によりグラファイトや金属成分が脱落する事態を生じ難くすることができる。上記グラファイトの添加量は、0.2wt%以上0.8wt%以下がより好ましく、これにより、顕著な摩擦低減効果を得ることができると共に、焼結含油軸受の使用時、グラファイトや金属成分の摩耗、あるいは脱落を極力防止することができる。
【0017】
また、前記課題を解決するため、本発明は、金属粉末をスリーブ状に圧縮成形した上で焼結することで形成され、かつその内周面に、流体の動圧作用を生じるための動圧発生部が、焼結体の内周面に動圧発生部に対応した形状の成形型を押し当てることによる塑性変形で形成された焼結含油軸受であって、グラファイトが0.1wt%以上1.5wt%以下含まれることを特徴とする焼結含油軸受を提供する。
【0018】
このように、グラファイトを含む焼結結含油軸受によれば、例えばこの焼結含油軸受の圧縮成形時、あるいは各種サイジングや動圧発生部成形時、使用する金型表面に付着したグラファイトにより、成形体と金型との間での摺動摩擦を低減することができる。これにより、金型寿命を低コストに延ばすことができる。また、グラファイトの含有量が0.1wt%以上1.5wt%以下となるように、予めグラファイトを添加しておくことで、上述の如く、金型の長寿命化とコンタミネーションの発生抑制とを両立した焼結含油軸受を得ることができる。
【0019】
動圧発生部としては、例えば複数の円弧面を周方向に配列した領域や、軸方向の溝を周方向に複数配列した領域が考えられるが、この他に、複数の傾斜溝を配列した構成が考えられる。この種の動圧発生部の成形工程においては、金型の損傷抑制と同時に、被成形体側の摩擦損傷、具体的には動圧発生部形成領域の摩擦損傷を可能な限り小さく抑えることが必要となる。グラファイトの添加量を増加すれば、金型との摺動摩擦が低減されるので、これにより動圧発生部領域の摩擦低減効果を高めることができるが、その一方で、グラファイト添加量の増加は、焼結体の結合強度(金属粉末間の焼結強度)低下を招く。そのため、かかる焼結含油軸受の使用時、軸との摺動接触に伴って動圧発生部形成領域が容易に摩耗し、これにより動圧発生部による流体の動圧作用が低下する恐れがある。このように、グラファイトの添加は、成形時における金型との摺動摩擦、および使用時における軸との摺動摩耗という、二律背反の問題を生じる。
【0020】
これに対して、本発明の如く、グラファイトの含有量(添加量)を0.1wt%以上1.5wt%以下に規定することで、成形時の摩擦損傷、および使用時の摩耗損傷の何れをも可及的に抑えて、高精度に成形した動圧発生部形状を維持することができる。これにより、使用時におけるグラファイト等の脱落を極力抑えて、軸受の清浄度を確保すると共に、動圧発生部の損傷を小さく抑えることで、高い動圧軸受性能を発揮することが可能となる。特に、動圧発生部として、動圧作用を生じるための傾斜溝(動圧溝)を成形する場合には、当該動圧溝を形成するための成形型が他所に比べて大径となるため、動圧溝成形後、成形型を備えたロッドを成形体から引抜く際、径方向へのスプリングバック量によっては、成形した動圧溝領域(特に動圧溝間の領域)を傷付けやすいが、上述のように、グラファイトの最適な添加範囲を規定することで、微細かつ高精度に成形された成形型(成形ロッド)およびこれにより形成される動圧溝の離型時の摩耗を抑制し、この動圧溝を高精度に成形することが可能となる。
【0021】
上記構成の焼結含油軸受は、この焼結含油軸受を有する動圧軸受装置として好適に提供可能である。
【0022】
また、上記構成の動圧軸受装置は、この動圧軸受装置を備えたモータ、例えばHDD等の磁気ディスク駆動装置や、CD−ROM、DVD−ROM等の光ディスク駆動装置、あるいはファンモータ等として好適に提供可能である。
【発明の効果】
【0023】
以上より、本発明によれば、この種の焼結含油軸受を成形する金型の長寿命化を低コストに達成しつつも、焼結含油軸受の使用中におけるコンタミネーションの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る動圧軸受装置1を組込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に非接触支持する動圧軸受装置1と、軸部材2に装着されたディスクハブ3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5とを備えている。ステータコイル4はモータブラケット6の外周に取付けられ、ロータマグネット5は、ディスクハブ3の内周に取付けられている。ディスクハブ3は、その外周に磁気ディスク等のディスク状情報記憶媒体(以下、単にディスクという。)Dを一枚または複数枚(図1では2枚)保持している。このように構成されたスピンドルモータにおいて、ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間に発生する励磁力でロータマグネット5が回転し、これに伴って、ディスクハブ3およびディスクハブ3に保持されたディスクDが軸部材2と一体に回転する。
【0026】
図2は、動圧軸受装置1を示している。この動圧軸受装置1は、軸部材2と、ハウジング7と、ハウジング7に固定された軸受スリーブ8、およびシール部材9とを主な構成要素として構成されている。なお、説明の便宜上、ハウジング7の底部7bの側を下側、底部7bと反対の側を上側として以下説明する。
【0027】
軸部材2は、例えばステンレス鋼等の金属材料で形成され、軸部2aと、軸部2aの下端に一体又は別体に設けられたフランジ部2bとを備えている。なお、軸部材2は、金属材料と樹脂材料とのハイブリッド構造とすることもでき、その場合、軸部2aの少なくともディスクハブ3との締結部を含む箇所(上端部)が上記金属で形成され、残りの箇所(例えば軸部2aの芯部やフランジ部2b)が樹脂で形成される。なお、フランジ部2bの強度を確保するため、フランジ部2bを樹脂・金属のハイブリッド構造とし、軸部2aの鞘部と共に、フランジ部2bの芯部を金属製とすることもできる。
【0028】
ハウジング7は、LCPやPPS、PEEK等の結晶性樹脂、あるいはこれら結晶性樹脂にPSU、PES、PEI等の非晶性樹脂を配合したものをベース樹脂とする樹脂組成物で射出成形され、例えば図2に示すように、側部7aと、側部7aの下端に一体に形成された底部7bとで構成される。ハウジング7を構成する上記樹脂組成物には、例えば、ガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカ状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、カーボン繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、各種金属粉等の繊維状または粉末状の導電性充填材を、目的に応じて適量配合することができる。
【0029】
底部7bの上端面7b1の全面又は一部環状領域には、スラスト動圧発生部として、例えば図示は省略するが、複数の動圧溝をスパイラル形状に配列した領域が形成される。この動圧溝形成領域は、フランジ部2bの下端面2b2と対向し、軸部材2の回転時には、下端面2b2との間に第二スラスト軸受部T2のスラスト軸受隙間を形成する(図2を参照)。この動圧溝は、ハウジング7を成形する成形型の所要部位(上端面7b1を成形する部位)に、動圧溝を成形する溝型を加工しておくことで、ハウジング7と同時成形することができる。また、上端面7b1から軸方向上方に所定寸法だけ離れた位置には、軸受スリーブ8の下端面8cと係合して軸方向の位置決めを行う段部7dが一体に形成される。
【0030】
軸受スリーブ8は、CuあるいはCu合金を主成分とする焼結金属の多孔質体で円筒状に形成され、ハウジング7の内周面7cに固定される。この軸受スリーブ8は、後述のように内部空孔に潤滑油を充填することで焼結含油軸受を構成する。
【0031】
軸受スリーブ8の内周面8aの全面又は一部円筒領域には、ラジアル動圧発生部が形成される。この実施形態では、例えば図3(a)に示すように、複数の動圧溝8a1、8a2をへリングボーン形状に配列した領域が軸方向に離隔して2箇所形成される。
【0032】
軸受スリーブ8の下端面8cの全面または一部の環状領域には、スラスト動圧発生部として、例えば図3(b)に示すように、複数の動圧溝8c1をスパイラル形状に配列した領域が形成される。
【0033】
シール部材9は、例えば樹脂材料又は金属材料で環状に形成され、ハウジング7の側部7aの上端部内周に配設される。シール部材9の内周面9aは、軸部2aの外周に設けられたテーパ面2a2と所定のシール空間Sを介して対向する。なお、軸部2aのテーパ面2a2は上側(ハウジング7に対して外部側)に向かって漸次縮径し、軸部材2の回転時には毛細管力シールおよび遠心力シールとしても機能する。
【0034】
ハウジング7の内周に、軸部材2および軸受スリーブ8を挿入し、段部7dにより軸受スリーブ8の軸方向の位置決めを行った上で、軸受スリーブ8をハウジング7の内周面7cに、例えば接着(ルーズ接着、圧入を伴う接着を含む)、圧入、溶着(超音波溶着を含む)等の手段により固定する。そして、シール部材9を、その下端面9bを軸受スリーブ8の上端面8bに当接させた上で、ハウジング7の内周面7cに固定する。その後、軸受スリーブ8の内部空孔を含むハウジング7の内部空間に潤滑油を充満させることで、動圧軸受装置1の組立が完了する。このとき、シール部材9で密封されたハウジング7の内部空間に充満した潤滑油の油面は、シール空間Sの範囲内に維持される。
【0035】
軸部材2の回転時、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域(上下2箇所の動圧溝8a1、8a2形成領域)は、軸部2aの外周面2a1とラジアル軸受隙間を介して対向する。そして、軸部材2の回転に伴い、上記ラジアル軸受隙間の潤滑油が各動圧溝8a1、8a2の軸方向中心側に押し込まれ、その圧力が上昇する。このような動圧溝の動圧作用によって、軸部2aを非接触支持する第一ラジアル軸受部R1と第二ラジアル軸受部R2とがそれぞれ構成される。
【0036】
これと同時に、フランジ部2bの上端面2b1とこれに対向する軸受スリーブ8の下端面8c(動圧溝8c1形成領域)との間のスラスト軸受隙間、およびフランジ部2bの下端面2b2とこれに対向する底部7bの上端面7b1(動圧溝形成領域)との間のスラスト軸受隙間に、動圧溝の動圧作用により潤滑油の油膜がそれぞれ形成される。そして、これら油膜の圧力によって、フランジ部2bを両スラスト方向に回転自在に非接触支持する第一スラスト軸受部T1と、第二スラスト軸受部T2とが構成される。
【0037】
以下、本発明の一実施形態に係る焼結含油軸受(軸受スリーブ8)の製造方法を説明する。
【0038】
図4は、焼結含油軸受(軸受スリーブ8)の原材料となる金属粉末Mを所定形状(この実施形態では、図3に示す円筒形状)に圧縮成形する工程を概念的に示すものである。この実施形態における成形装置は、完成後の焼結含油軸受の外周面に対応する箇所を成形するダイ11と、内周面に対応する箇所を成形するコアロッド12と、下端面に対応する箇所を成形する下パンチ13と、上端面に対応する箇所を成形する上パンチ14とを主要な要素として構成される。
【0039】
コアロッド12は、ダイ11の内周に挿入され、その先端は、ダイ11の上端面よりも上方に位置している。また、下パンチ13の上端部はダイ11の内周に挿入され、下パンチ13の上端面13aからダイ11の上端面までの軸方向間隔により、金属粉末Mの軸方向充填量が所定の値に設定される。
【0040】
充填される金属粉末Mは、上述の金属粉、例えばCu粉やCu合金粉、あるいはこれらにFe粉を配合したものをベース材料とし、これらベースとなる金属粉末にグラファイトを0.1wt%以上1.5wt%以下添加したものが使用される。
【0041】
金属粉末Mを充填する型領域(キャビティ)は、ダイ11の内周面11aと、コアロッド12の外周面12aと、下パンチ13の上端面13aとで画成され、画成された型領域内に所定量の金属粉末Mが充填される。この際、金属粉末M中に含まれるグラファイトの一部が、成形面となるダイ11の内周面11aやコアロッド12の外周面12a、下パンチ13の上端面13aに付着する。
【0042】
図4に示す状態から、まず上パンチ14を下降させ、その下端面14aを充填中の金属粉末Mに押し当てる。そして、図5に示すように、下端面14aを押し当てた位置(同図中破線位置)から、さらに上パンチ14を下降させ、金属粉末Mを軸方向上側から圧縮する。このように、キャビティに充填された金属粉末Mは、径方向を拘束された状態で軸方向に圧縮され、例えば図6に示すような形状の圧縮成形体Maに成形される。
【0043】
このとき、上パンチ14によって軸方向に圧縮される金属粉末Mと、ダイ11の内周面11aあるいはコアロッド12の外周面12aとが、軸方向への摺動摩擦を生じるが、金属粉末Mの充填時、ダイ11の内周面11aやコアロッド12の外周面12aに付着したグラファイトにより、両者間(金属粉末Mと内周面11a、あるいは外周面12aとの間)の摺動摩擦が低減される。
【0044】
この後、図6に示すように、コアロッド12と上下パンチ13、14とを一体に上昇させ(ダイ11に対して上方向に相対移動させ)、下パンチ13の上端面13aがダイ11の上端面と同じ高さ、あるいは上端面より若干高くなる位置まで上昇させる。この位置から、さらに上パンチ14のみを上昇させると共に、コアロッド12を下降させて、圧縮成形体Maからコアロッド12を引き抜く。このとき、ダイ11の内周面11aに付着したグラファイトにより、圧縮成形体Maの外周面との間の摺動摩擦が低減され、また、コアロッド12の外周面12aに付着したグラファイトにより、圧縮成形体Maの内周面との間の摺動摩擦が低減される。従って、ダイ11からの圧縮成形体Maの離型)、およびコアロッド12からの圧縮成形体Maの離型を、それぞれ成形金型(ダイ11、コアロッド12)の摩擦損傷を小さく抑えた状態で行うことができる。
【0045】
上記工程により形成された圧縮成形体Maを、所定の焼結温度で焼結することで焼結体が得られる。この際、焼結体中におけるグラファイト含有量を1.5wt%以下とすることで、焼結時、焼結に関与しないグラファイト以外の金属粉間の焼結作用が滞りなく行われ、これにより、十分な焼結強度を有する焼結体を得ることができる。かかる焼結体であれば、焼結含油軸受(軸受スリーブ8)としての使用時、例えば軸部材2との間の摺動接触に対しても、焼結含油軸受表層部のグラファイトあるいは金属成分が摩耗により脱落し、潤滑油中に混入するといった事態を可及的に防ぐことができる。これにより、動圧軸受装置1あるいはこれを備えたモータの清浄度を確保して、かかるモータを長期に亘って安定して使用することができる。
【0046】
上記焼結体に、図示は省略するが、さらに寸法サイジング、および回転サイジングを施すことで、焼結体の内、外周面、および軸方向幅が適正寸法に矯正される。この場合も、各サイジングに使用する金型の表面に、焼結体表面のグラファイトを付着させることで、上記圧縮成形時と同様に、サイジング用金型の摩擦低減効果を得ることができる。
【0047】
上記サイジング工程を経た焼結体の内周面に、例えば図3に示す動圧溝8a1、8a2を型成形する。以下、図7〜図10に基づいて、焼結体15に対する動圧溝の型成形加工(動圧溝サイジング)の一例を説明する。なお、特にサイジングが必要ない場合、あるいは、後述の動圧溝成形工程で、動圧溝を成形すると同時に焼結体15の寸法サイジングが行われる場合には、上記寸法サイジングや回転サイジングの何れか、あるいは双方を省略することもできる。
【0048】
動圧溝成形工程は、焼結体15の内周面15aに、完成品の動圧溝8a1、8a2の形成領域に対応した形状の成形型を加圧することによって、動圧溝8a1、8a2とそれ以外の領域(図3(a)中クロスハッチングで示す領域)とを同時成形する工程である。
【0049】
この実施形態の動圧溝成形工程で使用する加工装置は、例えば図7に示すように、円筒形状の焼結体15の外周面15bを圧入するダイ16と、焼結体15の内周面15aを成形するコアロッド17と、焼結体15の両端面を上下方向(軸方向)から拘束する上パンチ18および下パンチ19とを主要な要素として構成される。
【0050】
コアロッド17の外周には、例えば図8に示すように、完成品の動圧溝8a1、8a2の形成領域に対応した凸凹状の成形型17aが設けられる。この成形型17aの凸凹部の深さHは、成形しようとする動圧溝8a1、8a2の溝深さと同程度である。なお、通常この凸凹部の深さは数μm〜数十μm程度であり、他の構成要素の寸法に比べれば微小であるが、図8および後述の図9、図10では理解の容易化のため深さを誇張して描いている。
【0051】
コアロッド17の外周には上パンチ18が上下方向に摺動自在に外挿されており、上パンチ18はコアロッド17と一体になって昇降運動を行う。両者は、共有の駆動源、あるいはそれぞれ独立の駆動源で昇降させることが可能である。ダイ16は、図示されていない駆動手段によって、コアロッド17および上パンチ18とは独立して昇降駆動される。下パンチ19は当該装置の静止部材(例えば台座等)に固定されている。
【0052】
図7に示す初期状態において、ダイ16は焼結体15に対して軸方向下位置にあり、コアロッド17および上パンチ18は軸方向上位置にある。ダイ16の成形孔には下パンチ19が摺動自在に挿入され、下パンチ19の先端はダイ16の成形孔上端より突出している。被加工物である焼結体15は下パンチ19の上端面上に配置される。
【0053】
上記の初期状態から、図8に示すように、コアロッド17および上パンチ18を一体に下降させ、コアロッド17を焼結体15の内周に挿入すると共に、上パンチ18を焼結体15の上端面に押し当てる。これによって、焼結体15が上下パンチ18、19によって軸方向両側から支持(拘束)され、上下パンチ18、19の焼結体15との当接端面間の対向間隔が所定の値に管理される。コアロッド17の成形型17aは,焼結体15の内周面15aの、動圧溝8a1、8a2の形成予定領域と対向する軸方向位置に配される。
【0054】
このとき、焼結体15の内周面15aとコアロッド17の成形型17aの凸部との間には内径すき間Gが存在する。また、焼結体15の外周面15bとダイ16の内周面16aとの間には、内径すき間Gと同じか、あるいは内径すき間Gよりわずかに大きい圧入代Pが存在する(ともに図8を参照)。
【0055】
次に、図9に示すように、上記軸方向拘束状態を保持してダイ16を上昇させ、内周に形成される成形孔に焼結体15を圧入する。これにより、焼結体15はダイ16と上下パンチ18、19とから圧迫力を受けて変形し、径方向にサイジングされる。これに伴い、焼結体15の内周面15aがコアロッド17の成形型17aに押し当てられ、内周面15aから所定深さまでの表層部分が塑性変形を起こして成形型17aに食い付く。これにより、成形型17aの凸凹形状が焼結体15の内周面15aに転写され、両動圧溝8a1、8a2とそれ以外の領域(図3(a)中クロスハッチング領域)が同時に成形される。このとき、焼結体15の内周面15aに押し当てられたコアロッド17の成形型17a、および焼結体15の外周面15bを圧迫するダイ16の内周面16aに、焼結体15表面のグラファイトが付着する。
【0056】
上記工程が完了した後、図10に示すように、上下パンチ18、19による軸方向拘束状態を保持した状態でダイ16を下降させて、焼結体15をダイ16から抜き、径方向の圧迫力を解除する。このとき、ダイ16の内周面16aに付着したグラファイトにより、焼結体15の外周面15bとの間の摺動摩擦が低減された状態でダイ16の引抜き(離型)が行われる。また、ダイ16からの離型に伴い、焼結体15に径方向のスプリングバックが発生し、焼結体15からコアロッド17を抜き取り可能な状態となる。次に、上パンチ18およびコアロッド17を一体に上昇させ、焼結体15の軸方向拘束状態を解除する。上パンチ18およびコアロッド17が初期位置(図7の位置)に達した段階で、上パンチ18を停止させる一方で、コアロッド17を引き続いて上昇させることで、焼結体15からコアロッド17が引き抜かれ、焼結体15が離型される。これにより、完成品としての軸受スリーブ8が形成され、これに上記潤滑油を含浸させることで焼結含油軸受が完成する。
【0057】
上記コアロッド17の引抜き時、焼結体15の径方向へのスプリングバック量によっては、コアロッド17の外周面(特に成形型17a)と焼結体15の内周面15a(特に動圧溝8a1、8a2形成領域)との間で相当量の摺動摩擦を生じる場合がある。これに対して、本実施形態のように、上記焼結体15の材料として、グラファイトを0.1wt%以上1.5wt%以下添加した金属粉末を使用することで、かかる成形型17aと動圧溝領域との間の摺動摩擦が可及的に低減される。これにより、動圧溝8a1、8a2用の成形型17aの摩擦損傷が低減されると共に、この成形型17aで成形した動圧溝8a1、8a2の形状を高精度に維持することができる。また、グラファイト添加量の上限値を1.5wt%とすることで、焼結体15の結合強度の低下を極力抑え、上記摺動摩擦時、あるいは焼結含油軸受としての使用時、焼結体15の動圧溝8a1、8a2形成領域の損傷を抑制することができる。従って、使用時におけるグラファイト等の脱落を極力抑えて、軸受の清浄度を確保すると共に、動圧溝8a1、8a2の損傷を最小限に抑えることで、高い動圧軸受性能を長期に亘って発揮することが可能となる。
【0058】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0059】
以上の実施形態では、形成すべき焼結含油軸受(軸受スリーブ8)の内周面8aに、複数の動圧溝をへリングボーン形状に配列した領域を形成した場合を説明したが、本発明は、上記構成に限らず他構成の動圧発生部に対しても同様に適用することができる。
【0060】
例えば、内周面8aに型成形される動圧発生部として、図示は省略するが、軸方向の溝を円周方向の複数箇所に形成し、対向する軸部2aの外周面2a1との間にいわゆるステップ状に変化する径方向隙間(軸受隙間)を形成した、いわゆるステップ軸受に対して本発明を適用することができる。あるいは、円周方向に複数の円弧面を配列し、対向する軸部外周面2a1との間に、くさび状の径方向隙間(軸受隙間)を形成した、いわゆる多円弧軸受に対して本発明を適用することができる。これにより、金型の摺動摩擦を低減し、かつ使用時におけるコンタミネーションの発生を抑制して、金型の長寿命化と動圧軸受およびこれを備えたモータの清浄度の確保とを共に達成することができる。
【0061】
これら動圧発生部は、例えば図2に示すように、軸方向に離隔して2箇所以上設けることもでき、その場合、軸方向に離隔した動圧発生部間の領域に、これら動圧発生部の内径より大径となる逃げ部を設けた構成とすることもできる。この逃げ部は、例えば図示は省略するが、動圧発生部を成形するコアロッドの外周に、逃げ部に対応した形状(他所に比べて大径)の型部を設けておくことで、成形すべき焼結体の内周面に、動圧発生部の成形と同時に成形することが可能である。
【0062】
また、以上の実施形態では、金属粉末Mの圧縮成形を、下パンチ13の軸方向位置を固定した状態で上パンチ14のみを下降させることで行う場合を説明したが、上パンチ14を下降させて金属粉末Mを圧縮した後、今度は上パンチ14を圧縮時の軸方向位置に保持した状態で下パンチ13を上昇させ、金属粉末Mを軸方向両端から圧縮する方法を採ることもできる。
【0063】
また、以上の実施形態では、焼結体15に対する動圧溝成形を、焼結体15を上下パンチ18、19で軸方向に拘束した状態で、ダイ16を焼結体15の外周に圧入することにより行う場合を説明したが、これに限らず他の方法を採ることもできる。例えば、図示は省略するが、焼結体15の外径より大きい内径を有するダイを焼結体15の外周に配した状態で上下パンチ18、19を相対近接させて、焼結体15を軸方向両端から圧迫することにより、内周面15aをコアロッド17の成形型17aに押し付けるようにしても構わない。
【0064】
また、以上の実施形態では、動圧軸受装置1の内部に充満し、ラジアル軸受隙間や、スラスト軸受隙間において動圧作用を生じる流体として、潤滑油を例示したが、それ以外にも各軸受隙間において動圧作用を生じ得る流体、例えば空気等の気体や、磁性流体等の流動性を有する潤滑剤、あるいは潤滑グリース等を使用することもできる。
【実施例1】
【0065】
本発明の効果を実証するため、グラファイトの添加量を変化させた場合に、成形工程における離型時の成形体と金型との間の摩擦力に与える影響を評価した。具体的には、CuおよびFeをベース粉末とする金属粉末に、グラファイトを、0wt%〜5wt%添加した原料粉を用いて、フローティングダイ法でタブレット形状(φ20mm×L20mm)の成形体を製作し、離型時の摩擦力(成形体とダイとの間の摩擦力;以下、スライド抵抗力とする。)を測定した。また、上記組成の原料粉を、実際の製品寸法(φ7.5mm×φ4.0mm×L9.2mm)に成形し、さらにこの成形体に対して寸法サイジングを行い、グラファイト添加量に対する金型寿命との相関を調べた。また、グラファイトの添加量に対する成形体の摩耗量の相関を調べた。摩耗試験は、上記寸法(φ7.5mm×φ4.0mm×L9.2mm)の成形体に対して、面圧:0.3MPa、速度:50m/min、試験時間:500hで行った。この際の摩耗量を、試験前の成形体重量に対する試験後の成形体重量の減少量[mg]で評価した。
【0066】
図11に、摩擦力測定試験の結果を示す。同図より、スライド抵抗力はグラファイトの添加量が0wt%から0.05wt%にかけて、ほとんど変化がないのに対し、同添加量が0.1wt%から1.5wt%と増加するにつれてスライド抵抗力は減少する。添加量が1.5wt%を超えると、スライド抵抗力はほとんど減少することなく一定の値を示す。
【0067】
図12および図13に、成形金型寿命およびサイジング金型寿命測定試験の結果を示す。同図より、何れについても、成形金型およびサイジング金型の寿命と、グラファイト添加量との間には一定の相関が認められ、かつスライド抵抗力との間にも高い相関が得られた。このことから、グラファイトの添加によるスライド抵抗力の低減効果は、金型の長寿命化に大きく寄与することがわかる。
【0068】
図14に、摩耗試験の結果を示す。同図より、グラファイトの添加量が増加するにつれて成形体の重量減少量が増加する。1.5wt%以下では、その減少割合は比較的緩やかであるが、1.5wt%を超えると、成形体重量の減少割合が顕著に増加する。このことから、1.5wt%を境にコンタミネーションの発生量が大幅に増加するものと推定される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態に係る動圧軸受装置を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの断面図である。
【図2】動圧軸受装置の断面図である。
【図3】それぞれ軸受スリーブの(a)縦断面図、(b)下端面である。
【図4】焼結含油軸受となる軸受スリーブの圧縮成形工程を概念的に示す図である。
【図5】軸受スリーブの圧縮成形工程を概念的に示す図である。
【図6】軸受スリーブの圧縮成形工程を概念的に示す図である。
【図7】軸受スリーブの内周面に動圧発生部を型成形する工程を概念的に示す図である。
【図8】軸受スリーブの内周面に動圧発生部を型成形する工程を概念的に示す図である。
【図9】軸受スリーブの内周面に動圧発生部を型成形する工程を概念的に示す図である。
【図10】軸受スリーブの内周面に動圧発生部を型成形する工程を概念的に示す図である。
【図11】摩擦力測定試験の結果を示す図である。
【図12】成形金型寿命測定試験の結果を示す図である。
【図13】サイジング金型寿命測定試験の結果を示す図である。
【図14】摩耗試験の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1 動圧軸受装置
2 軸部材
3 ディスクハブ
4 ステータコイル
5 ロータマグネット
6 モータブラケット
7 ハウジング
8 軸受スリーブ(焼結含油軸受)
8a 内周面
8a1、8a2 動圧溝
9 シール部材
11 ダイ
12 コアロッド
13 下パンチ
14 上パンチ
15 焼結体
15a 内周面
16 ダイ
17 コアロッド
17a 成形型
18 下パンチ
19 上パンチ
M 金属粉末
Ma 圧縮成形体
R1、R2 ラジアル軸受部
T1、T2 スラスト軸受部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末をスリーブ状に圧縮成形した上で焼結し、これにより得られた焼結体を圧迫して、その内周面に、流体の動圧作用を生じるための動圧発生部に対応した形状の成形型を押し当てることにより、内周面を塑性変形させて動圧発生部を形成した焼結含油軸受を製造するに際し、
グラファイトを0.1wt%以上1.5wt%以下添加した金属粉末を圧粉成形することを特徴とする焼結含油軸受の製造方法。
【請求項2】
金属粉末をスリーブ状に圧縮成形した上で焼結することで形成され、かつその内周面に、流体の動圧作用を生じるための動圧発生部が、焼結体の内周面に動圧発生部に対応した形状の成形型を押し当てることによる塑性変形で形成された焼結含油軸受であって、
グラファイトが0.1wt%以上1.5wt%以下含まれることを特徴とする焼結含油軸受。
【請求項3】
動圧発生部として、複数の傾斜溝を配列した請求項2記載の焼結含油軸受。
【請求項4】
請求項2又は3記載の焼結含油軸受を有する動圧軸受装置。
【請求項5】
請求項4記載の動圧軸受装置を備えたモータ。
【請求項1】
金属粉末をスリーブ状に圧縮成形した上で焼結し、これにより得られた焼結体を圧迫して、その内周面に、流体の動圧作用を生じるための動圧発生部に対応した形状の成形型を押し当てることにより、内周面を塑性変形させて動圧発生部を形成した焼結含油軸受を製造するに際し、
グラファイトを0.1wt%以上1.5wt%以下添加した金属粉末を圧粉成形することを特徴とする焼結含油軸受の製造方法。
【請求項2】
金属粉末をスリーブ状に圧縮成形した上で焼結することで形成され、かつその内周面に、流体の動圧作用を生じるための動圧発生部が、焼結体の内周面に動圧発生部に対応した形状の成形型を押し当てることによる塑性変形で形成された焼結含油軸受であって、
グラファイトが0.1wt%以上1.5wt%以下含まれることを特徴とする焼結含油軸受。
【請求項3】
動圧発生部として、複数の傾斜溝を配列した請求項2記載の焼結含油軸受。
【請求項4】
請求項2又は3記載の焼結含油軸受を有する動圧軸受装置。
【請求項5】
請求項4記載の動圧軸受装置を備えたモータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−316896(P2006−316896A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140149(P2005−140149)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
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