説明

熱エンジンの制御方法

本発明は、燃焼室(31)と、燃料の噴射手段(51)と、支燃性物質(41)の給気手段(34、35)と、燃焼ガス(50)の排気手段(43、44)と、燃焼ガス(42)を再循環させるための第1流量制御手段(59)を有する再循環手段(58)であって、該制御手段は制御信号Comによって操作され、再循環される燃焼ガスの流量は制御信号の値の増加関数である、再循環手段を有する、熱エンジンの制御方法に関する。この制御方法は、経過した1つの時間間隔中に制御信号の変化の結果生じたエンジンの効率の変化を評価する段階と、次の新しい時間間隔中にエンジンの効率を最大化するように制御信号を変化させることからなる、制御信号の更新段階を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、圧縮点火熱エンジンに適用されるEGR(外部燃焼ガス再循環)の量の最適化に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、燃焼室と、上記燃焼室の中への燃料の噴射手段と、上記燃焼室の中へ、空気を含むガス状支燃性物質を選択的に給気するための給気手段と、上記燃焼室の外への燃焼ガスの排出を選択的に可能にする排気手段と、燃焼ガスを再循環させるための第1流量制御手段を含む再循環手段であって、上記第1流量制御手段は変化する制御信号[Com]によって操作され、再循環される上記燃焼ガスの流量は上記制御信号の値の増加関数によって表される再循環手段と、上記エンジンの燃料消費量の測定手段を特に有する、燃料直接噴射のディーゼルエンジンのような、サイクリックな動作をする熱エンジンの制御方法に関する。
【背景技術】
【0003】
再循環ガスの利用、すなわち、レシプロエンジン、より詳細には圧縮点火エンジンの燃焼室の中へ排気ガスが再循環されるEGRは、当業者に周知である。再循環ガスは、先行するサイクルの燃焼によって発生されるガスであり、従って酸素は乏しい。再循環ガスは、汚染物質の排出を減少させるため、または燃焼の進行を調整するために、空気と混合して使用される。より詳細には、再循環ガスを含む空気/燃料混合気の燃焼時間は、再循環ガスを含まない同等の空気/燃料混合気の燃焼時間よりも長い。従って、汚染粒子の生成のリスクがある、燃料の燃焼が困難で不完全になる最大濃度まで、再循環ガスを混合気に加えることによって、空気/燃料混合気の燃焼を遅らせることが可能である。
【0004】
再循環ガスの供給が、燃焼室外に局部化された回路から実行されるときに、外部EGRと呼び、燃焼の残留ガスが燃焼室内に捕捉されてとどまるときに、内部EGRと呼ぶ。提案される本発明は、主に外部EGRの管理と、所望の効果を得るために燃焼室の中へ吸入される再循環ガスの流量の制御方法に関する。
【0005】
多くのエンジン製作者は、所望の効果を得るように燃焼室の中へ吸入される再循環ガスの流量を制御するための様々な解決方法を開発してきている。
【0006】
このような、燃焼室の中へ導入される再循環ガスの流量の制御を可能にする、先に「技術分野」で定義したタイプのエンジンは、例えばジェネラル モーター コーポレーションの特許文献US 5,150,694に記載されている。
【0007】
この文献には、燃焼室と、給気手段と、給気へのガスの再循環手段とを有するエンジンが開示されており、再循環される燃焼ガスは、排気から集められる。
燃焼室の中へ再循環されるガスの流量は、コンピュータによって操作される弁によって制御される。
また燃焼室の中へ噴射される燃料量も、同じコンピュータによって操作される噴射ポンプによって制御される。
給気装置に設けられた空気流量のセンサが、燃焼室の中へ吸入される空気量を計測することを可能にする。
排気ガスの空気/燃料比の測定センサが、燃料の燃焼が完全か部分的かを測定するために、排気口に配置されている。
【0008】
例えば、排気口において検出された空気の量が、噴射された燃料の量に対して極めて大きいときには、車載コンピュータは、支燃性物質混合物の酸素濃度を減少させて、エンジンの効率を改善し、燃焼室内の過剰な活性酸素に起因する1酸化窒素の汚染物質の排出を減少させるように、再循環ガスの量を増加させる。
【0009】
従って、この再循環ガスの流量の制御方法は、エンジンの効率を改善し、不燃焼燃料または窒素酸化物を含む排気ガスによる汚染を減少させることを可能にする。このため、この制御方法は、排気ガスの空気/燃料比の測定に基礎を置く。
しかしながら、空気/燃料比は、エンジンの動作の部分的な指標であって、エンジンの制御のための最も重要な測定値である、エンジンの効率の直接的な測定値を構成するものではないという問題がある。
【0010】
【特許文献1】US 5,150,694
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記問題を解消し、エンジンの効率を改良するために、再循環ガスの量を制御することを可能にする、熱エンジンの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、他の見地では上記の「技術分野」に記したような定義に合致する本発明の熱エンジンの制御方法は、さらに、経過した1つの時間間隔中に制御信号の変化の結果生じたエンジンの効率の変化を評価する段階と、次の新しい時間間隔中にエンジンの効率を最大化するのに適した方向に上記制御信号を変化させることからなる、上記制御信号の更新段階とを有することを本質的に特徴とする。
【0013】
従って、本発明による制御方法は、1つの時間間隔中のエンジンの効率の変化を測定または評価することと、この情報を、同じ時間間隔中の再循環ガスの流量の制御手段の制御信号の変化と相関させることからなる。
【0014】
このようにして、経過した1つの時間間隔中にエンジンの効率が増加するときには、次の時間間隔中の制御信号の変化の方向は、経過した時間間隔中の制御信号の変化の方向に比して、増加の方向にされるか少なくとも一定の方向に維持される。
【0015】
反対に、経過した1つの時間間隔中にエンジンの効率が減少するときには、次の時間間隔中の制御信号の変化の方向は、経過した時間間隔中の制御信号の変化の方向に比して、逆向きにされるか、少なくとも減少される。
この結果、新しい時間間隔中のエンジンの効率は、経過した時間間隔中のエンジンの効率に比して、増加されるか一定に維持される。
【0016】
後者の場合を例示するために、例えば、制御手段の制御信号が増加されたときに、経過した時間間隔中のエンジンの効率が低下した場合を考えることができる。この場合、新しい時間間隔中に再循環されるガスの流量を、経過した時間間隔中に再循環されるガスの流量に比して減少させるように、次の新しい時間間隔についての制御信号を減少させることができる。このようにして、燃焼室の中へ再循環されるガスの比率が減少され、活性な酸素の比率が増加される。空気/燃料比の増加は、相関的に燃料の良好な燃焼、従ってエンジンの効率の増加をもたらす。
【0017】
本発明に特有の実施の形態によれば、エンジンの効率の変化を評価する段階は、第1時間と、第2時間と、第3時間とからなり、
上記第1時間においては、それぞれ第1と第2時間間隔についてエンジンの効率を計算し、上記第2時間間隔は上記第1時間間隔よりも後に終わり、計算される各上記効率は、各上記時間間隔の間の仕事量と噴射燃料量との間の比に相当し、
次いで上記第2時間においては、比:
(第2時間間隔の間のエンジンの効率−第1時間間隔の間のエンジンの効率)/(第2時間間隔の間の再循環ガスの流量の制御信号の値−第1時間間隔の間の再循環ガスの流量の制御信号の値)
の代数的符号を計算し、
次いで上記第3時間において、上記制御信号Comの更新段階は、再循環される燃焼ガスの流量が上記エンジンの効率を最大化するように制御されるように、上記比の代数的符号が正なら制御信号を増加させ、上記比の代数的符号が負なら制御信号を減少させることからなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の特徴及び利点は、参考のためであって非限定的な、添付図面を参照する、以下の説明によって明確になるであろう。これらの図において:
図1は、燃焼室の中へ吸入される再循環ガスの量の最適化方法を示し;
図2は、燃焼室の中へ吸入される再循環ガスにおける層状化を最適化するための補足的な方法を示し;
図3は、各燃焼室に対する再循環ガスの流量制御手段を有する燃焼エンジンを示し;
図4は、複数の燃焼室に共通の再循環ガスの流量制御手段を有する燃焼エンジンを示す。
【0019】
先に述べたように、本発明は、燃料直接噴射のディーゼルエンジンのような、サイクリックな動作をする熱エンジンの制御方法に関する。
【0020】
図1は、本発明による制御方法の1実施例を示す。
この制御方法は、エンジンの効率を最大にするために燃焼室へ再循環される燃焼ガスの流量と、従ってその比率を調整することを可能にする制御ループである。
【0021】
エンジンの2つの動作パラメータが測定される。一方では、ある時間間隔中にエンジンによって実行される仕事の変化が、他方では、同じ時間間隔中に消費される燃料の量が問題である。
【0022】
測定の時間間隔は、エンジンのサイクル数に対応することが望ましく、測定値は、測定結果を平滑化するために、複数のエンジンサイクルについて平均されることが望ましい。
【0023】
時間間隔中の、エンジンによって実行される仕事の変化と、消費される燃料の量の測定値は、効率の変化または変化の平均値を決定するコンピュータへ伝達される。
【0024】
図1に示す例に従って、サイクルnについてのエンジンの効率R(n)は、エンジンから発生されたトルクCpl(n)と、サイクルnの間に噴射された燃料の量Ti(n)との間の比から得られる。計算された効率R(n)は、マッピングされた修正関数Fを用いて修正することもできる。この修正関数Fは、エンジンの制御の状態または動作の状態と、R(n)に加えられる修正との間の全単射関係である。この修正関数Fは、既知で、あらかじめ測定された環境効果に従って変化する。望ましくは、この修正関数Fは、効率Rの、再循環ガスの流量の制御値Comに対する感度を考慮に入れる。
【0025】
与えられたサイクルnについて、単数または複数の燃焼室から供給される関連する仕事またはトルクCpl(n)は、燃焼室の圧力センサと、クランク軸に設けられたエンジンのトルクセンサとの、少なくとも一方を用いて測定される。このトルクCpl(n)は、クランク軸の応力の測定値、または燃焼室内のガスの圧力と相関付けられたクランク軸の加速度の測定値から、計算することができる。
【0026】
サイクルnの間に消費される燃料の量は、Ti(n)と表記され、流量計による直接的な方法と、燃料噴射器の制御時間と噴射される燃料の圧力とによる間接的な方法との、少なくとも一方によって測定される。間接的な方法によって計算される燃料の量は、燃料の温度と燃焼室内の圧力との少なくとも一方に従って修正することができる。
【0027】
次いで、コンピュータは、次のサイクル(n+1)に対する再循環ガスの流量の制御手段へ送出するべき新しい制御信号Com(n+1)を決定する。
【0028】
新しい制御信号Com(n+1)の値は、それぞれサイクルp、サイクルqと呼ぶ、相次ぐエンジンの2つのサイクルの間に測定された効率の変化の比の関数である。
【0029】
サイクルpとサイクルqの間の効率の変化は、測定された効率R(n−q)から、測定された効率R(n−p)を差し引くことによって計算される。
【0030】
サイクルpとサイクルqの間の制御信号の値の変化は、制御信号の値Com(n−q)から、制御信号の値Com(n−p)を差し引くことによって計算される。
【0031】
最後に、新しい制御信号Com(n+1)の新しい値は、エンジンの効率の変化と、先に計算された制御の値の変化との間の比から計算される。
【0032】
Com(n+1)のこの結果は、先に言及したエンジンの環境の要因を考慮に入れる修正関数Kを用いて修正することもできる。
【0033】
次いで、新しい制御信号Com(n+1)の値は、次のサイクル(n+1)における再循環ガスの流量を調整するために、再循環ガスの流量の制御手段へ伝達される。
【0034】
この効率の制御過程は、その後のエンジンのサイクルについて繰り返される。
【0035】
再循環ガスの流量の制御手段は、オール オア ナッシングタイプのものでも、ゼロ流量から、エンジンによって吸入可能な最大流量に達する流量の範囲にわたって連続する変数でもよい。
【0036】
図2は、エンジンの騒音を許容最大エンジン騒音以下に維持するために、本発明の実施の形態を補足する制御方法を示す。燃焼の騒音は、燃焼速度と関係があり、すなわち支燃性物質による燃料の酸化から生じるエネルギが開放される速度と関係がある。
【0037】
この特有の実施の形態においては、それぞれが流量の制御手段と、上述の制御方法とによって調節された再循環ガスの比率を有する、少なくとも2つの流体の層が燃焼室に供給される。これらの2つの流体の層は、燃焼室に供給され、空気と可変の再循環ガスの量を含む流体の層を形成する。望ましくは、層の再循環ガスの比率は、燃料注入量の比率の関数である。
【0038】
このようにして生成された各流体の層は、適切な比率の再循環ガスを有し、従って、適切な点火遅れと適切な燃焼速度を有し、このことが燃焼室全体の中における燃焼時間を延伸することを可能にする。各層の再循環ガスの比率と、層の間の再循環ガスの比率の差の調節は、燃焼速度の制御と燃焼騒音の減少を相関的に可能にする。例えば、2つの流体の層の各再循環ガスの比率の値の差を変更することによって、燃焼速度を制御することができる。
【0039】
要約すると、図1に示す制御方法は、エンジンの効率を最大化するように再循環ガスの流量を制御することを可能にし、図2に示す制御方法は、この再循環ガスの燃焼室の中への供給の仕方の制御及びエンジンの騒音の減少を可能にする。
【0040】
従って、これらの2つの方法の組み合わせは、エンジンの騒音のレベルを制御しながら、エンジンの効率を最大化することを可能にする。
【0041】
図2に示す方法は、層状化と呼ばれる機能、すなわち、一方の層と他方の層との再循環ガスの比率が異なる複数の流体の層の生成によって、エンジンの騒音を制御することからなる。
【0042】
より詳細には、図2に示す閉ループの制御方法は、エンジンから発生される騒音Brm(n)の測定の、サイクルnにおける第1段階からなる。
エンジンの騒音の測定は、燃焼室内における燃焼速度を検出することを可能にするあらゆる技術によって実行することができる。これを実行するために、燃焼室内の圧力が急激に上昇する時間の間隔を検出することができる。この測定は、特にクランク軸によって伝達されるトルクのセンサを用いて、または燃焼室内の圧力の測定信号を発生するセンサを用いて、実行することができる。この測定は、シリンダヘッドまたはクランク軸に設けられた加速度計を用いて、加速度の最大値を求めることによって実行することもできる。
【0043】
エンジンの動作点に関する情報を収集する第2段階は、騒音Brm(n)の測定段階と同じ時間間隔の間に実行される。動作点は、与えられたエンジン回転数に対して噴射される燃料の量に主として対応する。サイクルnにおけるエンジンの動作点に関するその他の情報も、エンジンの状態を決定するために収集することができる。
【0044】
マッピング データ ベースは、サイクルnにおいて計測されたエンジンの状態に対応する、マッピングされた許容最大エンジン騒音Brc(n)を指示するための参照値の役に立つ。
【0045】
そこで、コンピュータは、サイクルnにおけるエンジンの動作点についての許容最大騒音Brc(n)を、同じサイクルnについて測定されたエンジンの騒音Brm(n)と比較する。
【0046】
もし測定されたエンジンの騒音Brm(n)が、マッピングされた許容最大エンジン騒音Brc(n)よりも大であれば、次のサイクルn+1のための新しい層状化制御の値Str(n+1)を、サイクルnの層状化制御の値Str(n)に比して増加する。層状化制御の値の増加は、異なる再循環ガス濃度を有するガスの層を生成することを可能にし、相関的に異なる燃焼速度をもたらすことを可能にする。従って、燃焼時間が延伸され、このことがエンジンの騒音を減少させることを可能にする。
【0047】
もしエンジンの騒音測定値Brm(n)が、マッピングされた許容最大エンジン騒音Brc(n)よりも小であれば、次のサイクルn+1のための新しい層状化制御の値Str(n+1)を、サイクルnの層状化制御の値Str(n)に比して減少させる。層状化制御の値Str(n+1)の減少は、燃焼室の層の間の再循環ガス濃度の差を減少させることを可能にし、相関的に燃焼速度を増加させる。
【0048】
この騒音の制御方法は、その後のエンジンのサイクルについて繰り返すことが可能である。
【0049】
この制御方法の層状化制御は、単独のサイクルnに基礎を置くことができ、あるいは複数のサイクルの平均値に基礎を置くことができる。層状化制御は、単数または複数の測定の直後のサイクルに適用することができ、あるいは複数サイクル遅らせてもよい。また、層状化制御は、燃焼室ごとに適用してもよく、あるいは燃焼室の全体に適用してもよい。
【0050】
層状化関数は、オール オア ナッシングの関数でも、測定された騒音Brm(n)とマッピングされた許容最大エンジン騒音Brc(n)との差に比例して連続変化する関数でもよい。
【0051】
効率と騒音を制御する2つの方法によって、騒音を制限しながら効率を最大化することが可能になる。
【0052】
図3、4は、上述の制御方法の少なくとも1つを実地に適用するための燃焼ガス再循環制御回路が設けられた、2つのエンジン30、60の例をそれぞれ示す。これらのエンジン30、60の各々は、3シリンダ、すなわち3つの燃焼室31、32、33を有する。各燃焼室31、32、33は、燃料噴射器51、52、53と、2つの別々の流体の層を各燃焼室へ導入するための、互いに分離された、それぞれ2つの給気口34〜39を有する。各流体の層は、燃焼室の中にガスの層を形成するように、含有率が時間的に変化する再循環燃焼ガスを有することができる。
【0053】
第1〜第3燃焼室31、32、33は、それぞれ燃焼ガス50の第1、第2排気口43〜48を有する。
【0054】
これらの排気口の全体は、主排気管49に接続される。
【0055】
図3、4に示す各エンジンには、ターボ57と、再循環手段が設けられている。再循環手段は、燃焼ガス50の一部を回収して給気の中へ導入することを可能にする。
【0056】
図3に示すエンジン30の給気口34〜39は、空気41と再循環燃焼ガス42を給気するための主給気管40に接続されている。
【0057】
主給気管40自身は、再循環燃焼ガス42の再循環手段58を介して、主排気管49へ接続される。
【0058】
再循環手段58は、主給気管40の中へ再循環される燃焼ガスの割合を制御する制御弁59を有する。従って、この制御弁59は、唯一の流量制御手段によって、給気口34〜39及び燃焼室31〜33の全体に対する燃焼ガスの流量の制御を可能にする。
【0059】
第1〜第3層状化弁54〜56は、それぞれ燃焼ガスの再循環手段58を第2給気口35、37、39へ連結する。
【0060】
3つの層状化弁54〜56の各々は、それぞれ燃焼室31〜33の層状化を個別に制御する。
【0061】
例えば第1層状化弁54は、第2給気口35を通過する流体の層の中への再循環ガスの給気を可能にする。従って、第2給気口35を通過する流体の層は、可変で、第1層状化弁54と、再循環燃焼ガスの割合の制御弁59との、少なくとも一方によって制御される、再循環ガスの比率を有する。
【0062】
第1給気口34を通過する流体の層は、再循環燃焼ガスの割合の制御弁59のみによって制御される可変の再循環ガスの比率を有する。
【0063】
従って、第1燃焼室31の中の流体の層のあいだの再循環ガスの濃度の差は、第1層状化弁54を使用することによって調節することが出来る。
【0064】
図4に示すエンジン60は、燃焼室全体に対する再循環ガスの流量とそれらの層状化の、同時で、集中的な制御を可能にする。
【0065】
この図のエンジン60は、第1主給気管61と第2主給気管62を有する。
【0066】
第1主給気管61と第2主給気管62は、第1主給気管61に対する第1再循環手段63と、第2主給気管62に対する第2再循環手段64とを介して、主排気管49に接続される。
【0067】
第1主給気管61は、同じ再循環ガスの濃度を有する第1の流体の層の給気を可能にする第1給気口34、36、38へ接続される。
【0068】
第2主給気管62は、同じ再循環ガスの濃度を有する第2の流体の層の給気を可能にする第2給気口35、37、39へ接続される。
【0069】
第1主給気管61と第2主給気管62のそれぞれの再循環ガスの流量は、互いに独立で、それぞれ第1弁65と第2弁66によって制御される。
【0070】
この特有の組み立ては、全ての燃焼室内における再循環ガスの比率を、2つの弁によって制御することを可能にする。
これらの2つの弁は、第1再循環手段63と第2再循環手段64をそれぞれ通過する再循環ガス42の流量の差を操作することによって、層状化の制御も可能にする。
【0071】
図3に示されたエンジン30と同様に、再循環される排気ガスの流量の制御手段は、空圧式、油圧式、または電気式制御手段の少なくとも1つによって制御される弁によって構成される。これらの弁は、連続または不連続なガスの流量を供給することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】燃焼室の中へ吸入される再循環ガスの量の最適化方法を示す図である。
【図2】燃焼室の中へ吸入される再循環ガスにおける層状化を最適化するための補足的な方法を示す図である。
【図3】各燃焼室に対する再循環ガスの流量制御手段を有する燃焼エンジンを示す模式図である。
【図4】複数の燃焼室に共通の再循環ガスの流量制御手段を有する燃焼エンジンを示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室(31)と、
上記燃焼室の中への燃料の噴射手段(51)と、
上記燃焼室の中へ、空気(41)を含むガス状支燃性物質を選択的に給気するための給気手段(34、35)と、
上記燃焼室(31)の外への燃焼ガス(50)の排出を選択的に可能にする排気手段(43、44)と、
燃焼ガス(42)を再循環させるための第1流量制御手段(59)を有する再循環手段(58)であって、上記第1流量制御手段は変化する制御信号[Com]によって操作され、再循環される上記燃焼ガスの流量は上記制御信号の値の増加関数によって表される再循環手段と、
エンジンの燃料消費量の測定手段と、
を特に有する、燃料直接噴射のディーゼルエンジンのような、サイクリックな動作をする熱エンジンの制御方法において、
さらに、経過した1つの時間間隔中に上記制御信号の変化の結果生じたエンジンの効率の変化を評価する段階と、次の新しい時間間隔中にエンジンの効率を最大化するのに適した方向に上記制御信号を変化させることからなる、上記制御信号の更新段階とを有することを特徴とする、熱エンジンの制御方法。
【請求項2】
上記エンジンの効率の変化を評価する段階は、第1時間と、第2時間と、第3時間とからなり、
上記第1時間においては、それぞれ第1と第2時間間隔についてエンジンの効率を計算し、上記第2時間間隔は上記第1時間間隔よりも後に終わり、計算される各上記効率は、各上記時間間隔の間の仕事量と噴射燃料量との間の比に相当し、
次いで上記第2時間においては、比:
(第2時間間隔の間のエンジンの効率−第1時間間隔の間のエンジンの効率)/(第2時間間隔の間の再循環ガスの流量の制御信号の値−第1時間間隔の間の再循環ガスの流量の制御信号の値)
の代数的符号を計算し、
次いで上記第3時間において、上記制御信号の更新段階は、再循環される燃焼ガスの流量が上記エンジン(30)の効率を最大化するように制御されるように、上記比の代数的符号が正なら制御信号Com(n+1)を増加させ、上記比の代数的符号が負なら制御信号Com(n+1)を減少させることからなる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の熱エンジンの制御方法。
【請求項3】
上記エンジンの効率の変化を評価する段階は、上記制御信号Com(n+1)の値が上記エンジンの複数のサイクルに亘って平均化されるように、上記エンジンの複数のサイクルの経過時間間隔について実行されることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱エンジンの制御方法。
【請求項4】
上記給気手段は、上記燃焼室の中への、ガス状支燃性物質の第1流体の層と第2流体の層の給気をそれぞれ可能にする、上記ガス状支燃性物質の第1給気口と第2給気口を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の熱エンジンの制御方法。
【請求項5】
上記再循環手段(58)は、流体の層の各々の中へ再循環されるガスの流量を独立に制御して、上記燃焼室(31)の中に、各々が可変の再循環ガスの濃度を有するガス状支燃性物質の複数の層を形成するように、上記第2流体の層の中への再循環ガスの第2流量制御手段(54)を有することを特徴とする、請求項4に記載の熱エンジンの制御方法。
【請求項6】
上記エンジンの各サイクルは給気過程を有し、上記給気過程の間に、各々が時間と共に変化する再循環ガスの濃度を有する、支燃性物質のガスの複数の層を形成するように、給気される上記再循環ガスの流量が可変であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の熱エンジンの制御方法。
【請求項7】
上記エンジンの燃料消費量の測定手段は、流量計または燃料噴射の持続時間の計測手段であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載の熱エンジンの制御方法。
【請求項8】
上記エンジンは、上記エンジンによって発生される仕事量の測定手段を有し、該測定手段は、上記燃焼室内の圧力のセンサと上記エンジンのトルクのセンサの少なくとも一方であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載の熱エンジンの制御方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の熱エンジンの制御方法を利用する熱エンジンにおいて、
上記エンジンは、各々が第1給気口(34、36)と第2給気口(35、37)を有する第1及び第2燃焼室(31、32)を少なくとも有し、各上記第1給気口は、第1流体の層の給気を可能にし、各上記第2給気口は、第2流体の層の給気を可能にし、上記第1給気口は、上記第1流量制御手段(59または65)によって制御される再循環ガスの流量に従って、燃焼ガス(42)を再循環するための第1主給気管(40または61)から給気され、上記流量は、それぞれ上記第1及び第2燃焼室(31、32)の中へ給気される全ての上記第1流体の層について同一であることを特徴とする熱エンジン。
【請求項10】
上記第1燃焼室(31)の中へ給気される上記第2流体の層の中の燃焼ガスの流量は第1層状化弁(54)によって制御され、上記第2燃焼室(32)の中へ給気される上記第2流体の層の中の燃焼ガスの流量は第2層状化弁(55)によって制御されることを特徴とする、請求項9に記載のエンジン。
【請求項11】
上記第2給気口(35、37)は、それぞれ上記第1及び第2燃焼室(31、32)の中へ給気される上記第2流体の層の全てに共通の第2流量制御手段(66)によって制御される燃焼ガスの流量に従って、燃焼ガス(42)を再循環するための第2主給気管(62)から給気されることを特徴とする、請求項9に記載のエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−525465(P2006−525465A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505836(P2006−505836)
【出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001120
【国際公開番号】WO2004/099591
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】