説明

熱硬化性光反射用樹脂組成物、これを用いた光半導体素子搭載用基板とその製造方法および光半導体装置

【課題】成型性に優れ、硬化物の光反射率特性が劣化し難い熱硬化性光反射用樹脂組成物、これを用いた光半導体素子搭載用基板とその製造方法および光半導体装置を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材、(D)白色顔料及び(E)カップリング剤を含む樹脂組成物において、上記(B)硬化剤としてシクロヘキサントリカルボン酸無水物を含み、かつ硬化後の、波長800nm〜350nmにおける光反射率が90%以上であり、硬化前には室温(0〜35℃)において加圧成型が可能であることを特徴とする熱硬化性光反射用樹脂組成物、これを用いた光半導体素子搭載用基板とその製造方法およびこれを用いた光半導体装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子と蛍光体などの波長変換手段とを組み合わせた光半導体装置に用いる熱硬化性光反射用樹脂組成物、および該熱硬化性光反射用樹脂組成物を用いた光半導体素子搭載用基板とその製造方法、ならびに該光半導体素子搭載用基板を用いた光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光半導体素子を利用した光半導体装置として、図4に示すような構成のSMD(Surfacemounted device)タイプのLED(Light Emitting Diode)が知られている。このLEDは、通常、マウント基板リフレクター(光半導体素子搭載用基板)403に形成されたカップ状部(凹部)の、リード404が露出している底面にLED素子(発光素子)400が配置され、さらに当該素子が配置されたカップ状部に蛍光体405を含有する透明封止樹脂402が充填されている。リフレクターは、発光素子から側方に放射された光をその表面で拡散反射して軸方向に分配し、これによって軸上強度を高めることを目的として使用されている。特許文献1〜4にはリフレクターが熱可塑性樹脂組成物からなるSMDタイプのLED用形成材料が開示されている。
【0003】
このような構造を有するLEDは、高エネルギー効率、長寿命などの利点から、屋外用ディスプレイ、携帯液晶バックライト、車載用途などその需要を拡大しつつあるが、これに伴い、LEDデバイスの高輝度化が進み、素子の発熱量増大によるジャンクション温度の上昇、あるいは直接的な光エネルギーの増大による材料の耐熱劣化・耐光劣化が課題となっている。
【0004】
また、例えば、特許文献5には、65重量%以上の熱可塑性樹脂と35重量%以下の充填材からなるリフレクター材料が開示されているが、近紫外光の反射率などの特性が十分であるとはいえない。
【0005】
近紫外光の反射率などの特性に関する課題に対しては、例えば、特許文献6に耐熱試験後の光反射特性に優れる光半導体素子搭載用基板が開示されている。しかしながら、特許文献6においては、室温におけるタブレット成型性、加熱成形時のバリ発生や硬化性などの成型性に課題があった。
【特許文献1】特開2005−194513号公報
【特許文献2】特開2004−277539号公報
【特許文献3】特開2004−75994号公報
【特許文献4】特開2004−128393号公報
【特許文献5】特開2002−314142号公報
【特許文献6】特開2006−140207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、成型性に優れ、硬化物の光反射率特性が劣化し難い熱硬化性光反射用樹脂組成物、これを用いた光半導体素子搭載用基板とその製造方法および光半導体装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は下記(1)〜(9)に記載の事項をその特徴とするものである。
【0008】
(1)(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材、(D)白色顔料及び(E)カップリング剤を含む樹脂組成物において、上記(B)硬化剤としてシクロヘキサントリカルボン酸無水物を含み、かつ硬化後の、波長800nm〜350nmにおける光反射率が90%以上であり、硬化前には室温(0〜35℃)において加圧成型が可能であることを特徴とする熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0009】
(2)上記シクロヘキサントリカルボン酸無水物が下記構造式(I)
【化1】

で表されることを特徴とする上記(1)記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0010】
(3)上記(C)無機充填材が、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群の中から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0011】
(4)上記(D)白色顔料が、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、無機中空粒子からなる群の中から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0012】
(5)上記(D)白色顔料の平均粒径が、1〜50μmの範囲にあることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0013】
(6)上記(C)無機充填材と上記(D)白色顔料の合計配合量が、樹脂組成物全体に対して、10体積%〜85体積%の範囲であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【0014】
(7)光半導体素子搭載領域となる凹部が1つ以上形成されている光半導体素子搭載用基板であって、少なくとも上記凹部の内周側面が上記(1)〜(6)のいずれかに記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物からなることを特徴とする光半導体素子搭載用基板。
【0015】
(8)光半導体素子搭載領域となる凹部が1つ以上形成されている光半導体素子搭載用基板の製造方法であって、少なくとも上記凹部を、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いたトランスファー成型により形成することを特徴とする光半導体素子搭載用基板の製造方法。
【0016】
(9)上記(7)に記載の光半導体素子搭載用基板または上記(8)に記載の製造方法により製造された光半導体素子搭載用基板と、
上記光半導体素子搭載用基板の凹部底面に搭載される光半導体素子と、
上記光半導体素子を覆うように上記凹部内に形成される蛍光体含有透明封止樹脂層と、
を備える光半導体装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、成型性に優れ、硬化物の光反射率特性が劣化し難い熱硬化性光反射用樹脂組成物、これを用いた光半導体素子搭載用基板とその製造方法および光半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
本発明で用いる(A)エポキシ樹脂としては、電子部品用途として使用されている公知のエポキシ樹脂を用いることができ、特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換ビスフェノール等のジグリシジルエーテル、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、及び脂環族エポキシ樹脂等があり、これらを適宜何種類でも併用することができる。また、これらのうち比較的着色のないものが好ましく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレートを挙げることができる。
【0020】
本発明で用いる(B)硬化剤は、シクロヘキサントリカルボン酸無水物を少なくとも含むものであればよく、特に制限はない。
【0021】
上記シクロヘキサントリカルボン酸としては下記構造式(I)
【化2】

で表されるものが好ましい。
【0022】
また、(B)硬化剤中に含まれうる、シクロヘキサントリカルボン酸無水物以外の硬化剤としては、エポキシ樹脂と反応するものであれば特に制限は無いが、無色または着色の少ないものが好ましく、例えば、酸無水物硬化剤、イソシアヌル酸誘導体、フェノール系硬化剤等が挙げられる。
【0023】
上記酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、上記イソシアヌル酸誘導体としては、1,3,5−トリス(1−カルボキシメチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられ、これらは単独で用いても、二種以上併用しても良い。これら併用しうる硬化剤の中では、成形時の流動性及び成形物の着色の観点から、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートを用いることが好ましい。
【0024】
また、(B)硬化剤中におけるシクロヘキサントリカルボン酸無水物の含有率は、本発明の目的が達成される範囲であれば特に制限はないが、5質量%以上100質量%以下の範囲が好ましく、コストと性能のバランスの観点からは25質量%以上75質量%以下の範囲であることがより好ましい。
【0025】
(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤の配合比は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、硬化剤におけるエポキシ基との反応可能な活性基(酸無水物基、カルボキシル基又は水酸基)が0.5〜1.5当量、さらには、0.7〜1.2当量となるような割合であることが好ましい。活性基が0.5当量未満の場合には、エポキシ樹脂組成物の硬化速度が遅くなるとともに、得られる硬化体のガラス転移温度が低くなる場合があり、一方、1.5当量を超えると、耐湿性が低下する場合がある。
【0026】
本発明で用いる(C)無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群の中から選ばれる少なくとも1種以上を用いることができるが、熱伝導性、光反射特性、成形性、難燃性の点からシリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムのうちの2種以上の混合物が好ましい。また、(C)無機充填材の平均粒径は、特に制限はないが、(D)白色顔料とのパッキングが効率よくなるように1〜100μmの範囲のものを用いることが好ましい。
【0027】
本発明で用いる(D)白色顔料としては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、無機中空粒子等を用いることができる。無機中空粒子としては、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス、シラス等が挙げられる。また、(D)白色顔料の平均粒径は、1〜50μmの範囲にあることが好ましい。(D)白色顔料の平均粒径が1μm未満であると粒子が凝集しやすく分散性が悪くなる傾向にあり、50μmを超えると反射特性が十分に得られなくなる傾向にある。なお、上記(D)白色顔料として、アルミナ等の上記(C)無機充填材として使用可能な成分と同一成分を同時に選択することも可能である。但し、同一成分を選択した場合であっても、それらは独立した(C)無機充填材および(D)白色顔料の各成分として区別して考えることを意図している。
【0028】
上記(C)無機充填材と上記(D)白色顔料の合計配合量は、樹脂組成物全体に対して、10体積%〜85体積%の範囲であることが好ましい。この配合量が、10体積%未満であると硬化物の光反射特性が不十分になる恐れがあり、85体積%を超えると樹脂組成物の成型性が悪くなり、光半導体素子搭載用基板の作製が困難となる。
【0029】
本発明で用いる(E)カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤等を用いることができ、シランカップリング剤としては、例えば、エポキシシラン系、アミノシラン系、カチオニックシラン系、ビニルシラン系、アクリルシラン系、メルカプトシラン系、およびこれらの複合系等を用いることができる。カップリング剤の種類や処理条件は特に限定しないが、カップリング剤の配合量は、保存安定性の観点から、樹脂組成物全体に対して、5重量%以下であることが好ましい。
【0030】
また、本発明の樹脂組成物には、硬化時間の制御及び硬化性の向上の観点から硬化促進剤を配合してもよい。硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノール等の3級アミン類、2−エチル−4メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフェニルボレート等のリン化合物、4級アンモニウム塩、有機金属塩類及びこれらの誘導体などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく又は、併用してもよい。これらの硬化促進剤の中では、硬化性、着色性及び保存安定性のバランスの観点から、3級アミン類、イミダゾール類、リン化合物を用いることが好ましい。また、硬化促進剤の含有率は、本発明が達成される範囲であれば特に制限は無いが、(A)エポキシ樹脂に対して、0.01〜8.0重量%であることが好ましく、0.1〜3.0重量%であることがより好ましい。硬化促進剤の含有率が、0.01重量%未満では、十分な硬化促進効果を得られない場合があり、また8.0重量%を超えると、得られる着色体に変色が見られる場合がある。
【0031】
本発明においては上記の他に、必要に応じて、添加剤として、酸化防止剤、離型剤、イオン捕捉剤等を添加してもよい。
【0032】
本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物は、上記した各種成分を均一に分散混合することで得ることができ、その手段や条件等は特に限定されないが、一般的な手法として、所定配合量の成分をミキサー等によって十分均一に撹拌、混合した後、ミキシングロール、押出機、ニーダー、ロール、エクストルーダー等によって混練し、さらに、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。
【0033】
また、本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物は、熱硬化前、室温(0〜35℃)において加圧成型可能であり、熱硬化後の、波長350nm〜800nmにおける光反射率が90%以上であることが望ましい。上記加圧成型は、例えば、室温において、0.5〜2MPa、1〜5秒程度の条件下で行うことができればよい。また、上記光反射率が90%未満であると、光半導体装置の輝度向上に十分寄与できない傾向がある。
【0034】
本発明の光半導体素子搭載用基板は、光半導体素子搭載領域となる凹部(開口部)が1つ以上形成されており、少なくとも上記凹部の内周側面が本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物からなることを特徴とするものである。図1には、光半導体素子搭載領域(凹部)200の側壁が本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物からなり、当該凹部底面を形成するように上記樹脂組成物を挟んで対向配置された一対の正負の金属配線105の露出表面がNi/Agめっき104により覆われてなる本発明の光半導体素子搭載用基板110の一実施形態を示す。
【0035】
本発明の光半導体素子搭載用基板の製造方法は、特に限定されないが、例えば、本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物をトランスファー成型により成型し、製造することが好ましい。より具体的には、例えば、図2(a)に示すように、金属箔から打ち抜きやエッチング等の公知の方法により金属配線105を形成し、ついで、該金属配線105を所定形状の金型301に配置し(図2(b))、金型301の樹脂注入口300から本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物を注入し、これを好ましくは金型温度170〜190℃で60〜120秒、アフターキュア温度120℃〜180℃で1〜3時間の条件にて熱硬化させた後、金型301を外し、硬化した熱硬化性光反射用樹脂組成物からなるリフレクター103に周囲を囲まれてなる光半導体素子搭載領域(凹部)200の所定位置に、電気めっきによりNi/銀めっき104を施すことで製造することができる(図2(c))。
【0036】
また、本発明の光半導体素子搭載用基板を用いた光半導体装置は、例えば、本発明の光半導体素子搭載用基板と、光半導体素子搭載用基板の凹部底面に搭載される光半導体素子と、光半導体素子を覆うように凹部内に形成される蛍光体含有透明封止樹脂層と、を少なくとも備える。図3には、本発明の光半導体素子搭載用基板110の光半導体素子搭載領域(凹部)200の底部所定位置に光半導体素子100が搭載され、該光半導体素子100と金属配線105とがボンディングワイヤ102やはんだバンプ107などの公知の方法により電気的に接続され、該光半導体素子100が公知の蛍光体106を含む透明封止樹脂101により覆われている、本発明の光半導体装置の一実施形態を示す。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例により詳述するが、本発明はこれらの実施例に制限するものではない。
【0038】
(実施例1〜5及び比較例1〜3)
<熱硬化性光反射用樹脂組成物の作製>
下記表1に示す組成の材料を質量部で配合し、ミキサーによって十分混合した後、ミキシングロールにより溶融混練した後、室温まで冷却し、粉砕して、実施例1〜5および比較例1〜2の熱硬化性光反射用樹脂組成物を作製した。
【0039】
なお、表1中の空欄は配合なしを示す。また、表1において、(A)エポキシ樹脂はトリグリシジルイソシアヌレート(日産化学工業株式会社製、商品名TEPIC−S、エポキシ当量100)であり、(B)硬化剤1はシクロヘキサントリカルボン酸無水物(三菱ガス化学株式会社製、商品名H−TMAn、エポキシ基と反応可能な活性基当量66)であり、(B)硬化剤2はヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化株式会社製、リカシッドHH、エポキシ基と反応可能な活性基当量154)であり、(C)無機充填材は平均粒径20μmの溶融シリカ(電気化学工業株式会社製、商品名FB−950)であり、(D)白色顔料1は平均粒径27μmのほう珪酸ガラス(住友スリーエム株式会社製、商品名S60HS、)、白色顔料2は、平均粒径1μmのアルミナ(株式会社アドマッテクス製、商品名AO−802)であり、(E)カップリング剤はγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名KBM−403)であり、硬化促進剤はテトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート(日本化学工業株式会社製、商品名ヒシリコーンPX−4ET)であり、ユニトックス420(東洋ペトロライト株式会社製商品名、アルキルポリエーテル)は離型剤である。
【0040】
<タブレット作製>
実施例1〜5及び比較例1〜2の光反射樹脂組成物について、室温(25℃)でタブレット成型できるものを○、タブレット成型できないものを×として評価した。なお、タブレットの成型は、MTV−I−37((株)丸七鉄工所製、商品名)を用い、0.7MPa、2秒の条件で行った。
【0041】
<光反射性試験>
実施例1〜5及び比較例1〜2の光反射樹脂組成物を、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件でトランスファー成型した後、150℃で2時間熱処理して後硬化することにより、厚み1.0mmのテストピースを作製した。ついで、各テストピースの、波長350〜800nmにおける光反射率を積分球型分光光度計V−750型(日本分光株式会社製)にて測定した。また、150℃、72時間熱処理後の各テストピースの光反射率も測定した。測定値の評価基準は下記のとおりである。結果を下記表1に示す。
【0042】
(光反射率の評価基準)
○:光反射率90%以上
△:光反射率70%以上、90%未満
×:光反射率70%未満
<バリ評価方法>
実施例1〜5及び比較例1、2の光反射樹脂組成物を、ポットより、幅がそれぞれ75,50,30,20,10,2μmのスリットを設けた金型に流し込み、上記光反射性試験のテストピースと同様にして成形した後、各スリット内に流れ込んで硬化した樹脂組成物の長さ(バリ長さ)をノギスで測定した。各スリットにおけるバリ長さが全て2mm未満の場合を良好(○)とし、2mm以上のバリがある場合をNG(×)として評価した。結果を下記表1に示す。
【0043】
<熱時硬度>
実施例1〜5及び比較例1、2の光反射樹脂組成物を、上記光反射性試験のテストピースと同様にして直径50mm×厚さ3mmの円板状に成形し、その後直ちにショアD型硬度計((株)上島製作所製HD−1120(タイプD))を用いてその硬度を測定した。結果を下記表1に示す。
【表1】

【0044】
表1に示されるように、各実施例の樹脂組成物は、成型性に優れ、なおかつその硬化物の光反射率特性が劣化し難いことが明らかである。したがって、本発明の熱硬化性光反射用樹脂組成物を用いると、可視光から近紫外光領域において高い反射率を保持することが可能な光半導体素子搭載用基板を効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の光半導体素子搭載用基板の一実施形態を示す断面図と斜視図である。
【図2】本発明の光半導体素子搭載用基板を製造する工程の一実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明の光半導体装置の一実施形態を示す断面図である。
【図4】一般的なSMDタイプのLED(光半導体装置)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0046】
100・・・・・光半導体素子(LED素子)
101・・・・・透明封止樹脂
102・・・・・ボンディングワイヤ
103・・・・・リフレクター(熱硬化性光反射用樹脂組成物)
104・・・・・Ni/Agめっき
105・・・・・金属配線
106・・・・・蛍光体
107・・・・・はんだバンプ
110・・・・・光半導体素子搭載用基板
200・・・・・光半導体素子搭載領域(凹部)
300・・・・・樹脂注入口
301・・・・・金型
400・・・・・LED素子
401・・・・・ボンディングワイヤ
402・・・・・透明封止樹脂
403・・・・・リフレクター
404・・・・・リード
405・・・・・蛍光体
406・・・・・ダイボンド材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材、(D)白色顔料及び(E)カップリング剤を含む樹脂組成物において、前記(B)硬化剤としてシクロヘキサントリカルボン酸無水物を含み、かつ硬化後の、波長800nm〜350nmにおける光反射率が90%以上であり、硬化前には室温(0〜35℃)において加圧成型が可能であることを特徴とする熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項2】
前記シクロヘキサントリカルボン酸無水物が下記構造式(I)
【化1】

で表されることを特徴とする請求項1記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)無機充填材が、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群の中から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1または2記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)白色顔料が、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、無機中空粒子からなる群の中から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項5】
前記(D)白色顔料の平均粒径が、1〜50μmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)無機充填材と前記(D)白色顔料の合計配合量が、樹脂組成物全体に対して、10体積%〜85体積%の範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の熱硬化性光反射用樹脂組成物。
【請求項7】
光半導体素子搭載領域となる凹部が1つ以上形成されている光半導体素子搭載用基板であって、少なくとも前記凹部の内周側面が請求項1〜6のいずれかに記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物からなることを特徴とする光半導体素子搭載用基板。
【請求項8】
光半導体素子搭載領域となる凹部が1つ以上形成されている光半導体素子搭載用基板の製造方法であって、少なくとも前記凹部を、請求項1〜6のいずれか1項記載の光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いたトランスファー成型により形成することを特徴とする光半導体素子搭載用基板の製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載の光半導体素子搭載用基板または請求項8に記載の製造方法により製造された光半導体素子搭載用基板と、
前記光半導体素子搭載用基板の凹部底面に搭載される光半導体素子と、
前記光半導体素子を覆うように前記凹部内に形成される蛍光体含有透明封止樹脂層と、
を備える光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−106226(P2008−106226A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176206(P2007−176206)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】