説明

熱硬化性組成物及びそれを用いた光半導体装置

【課題】耐熱性及び耐光性に優れた硬化物を与える熱硬化性組成物、並びに該組成物を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置を提供すること。
【解決手段】アルミノシロキサン、又はエチレン性二重結合を有する光重合性官能基を有するアルミノシロキサン、及びエポキシ当量が500〜5000g/molであるエポキシシリコーンを含有してなる熱硬化性組成物、及び該熱硬化性組成物を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子用封止剤、光学接着剤、光学コーティング剤等の光学材料として用いることができる熱硬化性組成物、及びそれを用いて得られる光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン樹脂組成物は、高温使用でも変色が生じにくいので、光半導体素子用封止剤、光学接着剤、光学コーティング剤等として一般に使用されている。しかし、シリコーン樹脂は、二液混合タイプで硬化剤を用いて熱硬化させる場合、一般に液状シリコーン樹脂と硬化剤との混合後の取り扱い性や保存安定性が十分でなく、使用毎に混合する必要もあり、また、コストも高いという問題がある。そこで、一液タイプに用いられる光学用材料として、比較的安価であり、また、予備硬化することでシート化が可能であるエポキシシリコーンが期待される。例えば、エポキシシリコーン等を用いてアルミニウム化合物触媒で硬化させる熱硬化性樹脂組成物が開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2007−332314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、単に、エポキシシリコーンを用いただけでは、十分な耐熱性が得られない場合がある。また、高出力の発光ダイオードの封止材として使用する場合は発光ダイオードの生じる熱により封止材が変色して輝度が低下する、すなわち十分な耐光性が得られない場合もある。
【0004】
本発明の課題は、耐熱性及び耐光性に優れた硬化物を与える熱硬化性組成物、並びに該組成物を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、アルミノシロキサン及びエポキシシリコーンを含有してなる熱硬化性組成物、及び該組成物を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐熱性及び耐光性に優れた硬化物を与える熱硬化性組成物、並びに該組成物を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の熱硬化性組成物は、アルミノシロキサン及びエポキシシリコーンを含有してなり、反応性の高いエポキシ基を介したエポキシシリコーンとアルミノシロキサンとの反応が生じて硬化することにより優れた耐熱性を有することが可能となる。また、封止された光半導体装置は優れた耐光性を有することが可能となる。
【0008】
本発明の一態様として、アルミノシロキサンは、エポキシシリコーンとの相溶性の観点から、アルミニウム原子に結合した3個の酸素原子を骨格としてポリジメチルシロキサンを有する化合物であればよく、下記一般式(I):
【化1】

(式中、n〜nの平均は1〜160を示す)
で表される化合物であることが好ましい。
【0009】
一般式(I)中のn〜nの平均は、好ましくは1〜160、より好ましくは40〜160である。
【0010】
一般式(I)で表される化合物は、例えば、以下に示されるケイ素化合物とアルミニウム化合物を反応させて得られるものを用いることが望ましい。
【0011】
ケイ素化合物としては、反応性の観点から、両末端シラノール型ポリジメチルシロキサン等の両末端シラノール型シリコーンオイル、片末端シラノール型シリコーンオイル、シラノール、ジシラノールが挙げられる。これらのなかでも、両末端シラノール型シリコーンオイルを用いることが好ましい。
【0012】
アルミニウム化合物としては、アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、アルミニウムイソプロポキシドを用いることが好ましい。
【0013】
一般式(I)で表される化合物の合成反応に供されるケイ素化合物とアルミニウム化合物の重量比(ケイ素化合物/アルミニウム化合物)は、5/1〜1000/1であることが好ましい。
【0014】
ケイ素化合物とアルミニウム化合物との反応は、例えば、20〜100℃の温度、1〜24時間で、かつ、溶媒非存在下で攪拌しながら行うことができる。その後、遠心分離で不溶物を除去し、好ましくは40〜100℃、好ましくは1〜6時間減圧下で濃縮して、一般式(I)で表される化合物を得ることができるが、これに限定されない。
【0015】
本発明の他の態様として、アルミノシロキサンは、硬化物の強度の観点から、光重合性官能基を有することが好ましい。具体的に、光重合性官能基は、エチレン性二重結合を有する基、アクリル基、メタクリル基等であることが好ましい。かかる光重合性官能基を有することにより、光硬化による予備反応で熱硬化性組成物を半硬化状態のシート状に成形することができる。
【0016】
光重合性官能基を有するアルミノシロキサンは、例えば、下記一般式(II):
【化2】

(式中、n〜nの平均は1〜160、mは1以上の整数、YはH又はCHを示す)
で表される化合物であることが好ましい。
【0017】
一般式(II)中のn〜nの平均は、好ましくは1〜160、より好ましくは40〜160である。また、一般式(II)中のYはH又はCHを示し、中でもHであることが好ましい。
【0018】
一般式(II)で表される化合物の製造は、例えば、一般式(I)で表される化合物(n〜nの平均40〜160)に3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランを加え、減圧下で20〜150℃で5分〜24時間加熱する方法が挙げられるが、これに限定されない。
【0019】
熱硬化性組成物中のアルミノシロキサンの含有量は、反応性、硬化物の強度、加工性の観点から、好ましくは5〜95重量%、より好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは30〜70重量%である。
【0020】
本発明に用いられるエポキシシリコーンは、例えば、アルミノシロキサンと相溶性及び反応性を有するものであればよく、ジメチルシリコーン骨格を有する化合物等の側鎖及び/又は末端にエポキシ基を有する化合物であればよい。また、エポキシ基は、脂環式エポキシ基であってもよく、具体的な脂環式エポキシ基としてはエポキシシクロヘキシル等が挙げられる。かかるエポキシシリコーンは、アルミノシロキサンとの間で相互に親和性を有し、かつ均一化されるような相溶性を呈し、また、反応性が高いエポキシ基を介したアルミノシロキサンとの反応により高い架橋密度で硬化することができるため、優れた耐熱性と耐光性を実現することができると考えられる。
【0021】
エポキシシリコーンのエポキシ当量は、相溶性、反応性、得られる硬化物の強度の観点から、好ましくは500〜5000g/mol、より好ましくは1000〜5000g/molである。エポキシ当量が、500g/molより小さい場合はアルミノシロキサンとの相溶性が低下する傾向があり、5000g/molを超える場合は反応性が低下して得られる硬化物の強度が低下する傾向がある。また、アルミノシロキサンとの相溶性を考慮すると、エポキシ当量が1000g/mol未満のエポキシシリコーンを使用する場合は、一般式(II)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0022】
エポキシシリコーンの市販品としては、側鎖型として信越化学工業社のKF−1001、側鎖及び末端型として信越化学工業社のX−22−9002、末端型として信越化学工業社のX−22−169AS等が挙げられる。
【0023】
熱硬化性組成物中のエポキシシリコーンの含有量は、反応性、硬化物の強度、加工性の観点から、好ましくは5〜95重量%、より好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは30〜70重量%である。
【0024】
熱硬化性組成物の調製は、特に限定されるものではなく、上記アルミノシロキサンと上記エポキシシリコーン等を混合することにより、調製することができる。また、上記アルミノシロキサンと上記エポキシシリコーン等を別々に調製しておき、使用前にこれらを混合して調製することもできる。
【0025】
熱硬化性組成物の粘度は、25℃で好ましくは10〜20000mPa・s、より好ましくは500〜15000mPa・sである。かかる粘度は、温度が25℃、1気圧の条件下でレオメーターを用いて算出されるものである。
【0026】
熱硬化性組成物は光半導体素子用封止剤、光学接着剤、光学コーティング剤等に用いることが好ましい。熱硬化性組成物を光半導体素子用封止剤として用いる場合、例えば、注型法で50〜250℃で、5分〜24時間加熱することで硬化させて封止することができる。また、光重合性官能基を有するアルミノシロキサンを含む熱硬化性組成物を用いる場合、100〜10000mJ/cmのUV−A光を照射して半硬化状態のシート状に成形した後、封止対象物上に設置してプレスして50〜250℃で、5分〜24時間加熱することで硬化させて封止することができる。熱硬化性組成物を用いて得られる硬化物の厚みは好ましくは10〜5000μm、より好ましくは100〜1000μmである。
【0027】
熱硬化性組成物は、例えば、青色または白色LED素子を搭載した光半導体装置(液晶画面のバックライト、信号機、屋外の大型ディスプレイ、広告看板等)に好適に用いられる。従って、本発明は、前記熱硬化性組成物を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置を提供する。光半導体装置は、熱硬化性組成物をシート状に成形してLED素子上に設置・プレスして又はLED素子が搭載された基板の上に注型法を用いた熱硬化性組成物を、上記条件で加熱して硬化させることにより製造することができる。
【実施例】
【0028】
(実施例1〜6及び比較例1)
表1に示した各成分を混合することにより実施例1〜6及び比較例1の熱硬化性組成物を得た。
【0029】
なお、一般式(I)で表される化合物を次のようにして得た。両末端シラノール型ポリジメチルシロキサンとアルミニウムイソプロポキシドを重量比(ケイ素化合物/アルミニウム化合物)72/1で混合し、30℃、24時間で溶媒非存在下で攪拌しながら反応した。その後、遠心分離で不溶物を除去し、50℃2時間減圧下で濃縮して一般式(I)で表される化合物を得た。
【0030】
また、実施例6で使用した一般式(II)で表される化合物は、一般式(I)で表される化合物(n〜nの平均は40)30.0gに3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業社製 KBM502)1.5g(6.46mmol)を加えて、減圧下80℃で2時間攪拌して得られた。
【0031】
得られた実施例1〜6及び比較例1の熱硬化性組成物を用いて、以下のようにして青色LEDを封止して、光半導体装置を得た。実施例1〜5及び比較例1は注型法で青色LEDを封止し、150℃で2時間加熱して硬化した(硬化前の熱硬化性組成物の25℃における粘度1000〜6000mPa・s、硬化物の厚み400μm)。実施例6は熱硬化性組成物に5000mJ/cmのUV−A光を照射して半硬化状態のシート状に成形した後、シートを青色LED上に設置してプレスして、150℃で2時間加熱して硬化することにより封止した(硬化前の熱硬化性組成物の25℃における粘度500mPa・s、硬化物の厚み400μm)。
【0032】
(評価)
(耐熱性)
実施例1〜6及び比較例1の熱硬化性組成物をPETフィルムに塗工して、150℃で2時間加熱して厚み400μmの硬化物を得た。その硬化物について初期の光透過率及び200℃で16時間加熱後の光透過率を測定し、光透過率の低下が初期値に比べて10%未満のものを○、10%以上のものを×とした。その結果を表1に示す。なお、光透過率は分光光度計(U−4100、日立ハイテク社製)を用いて、波長400nmで測定した。
【0033】
(耐光性)
実施例1〜6及び比較例1で得られた光半導体装置を600mAの電流を流して初期の輝度及び100時間点灯後の輝度を測定し、輝度の低下が初期値に比べて10%未満のものを○、10%以上のものを×とした。その結果を表1に示す。なお、輝度はMCPD(瞬間マルチ測光システムMCPD-3000、大塚電子社製)により測定した。
【0034】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の熱硬化性組成物は、例えば、青色または白色LED素子を搭載した光半導体装置(液晶画面のバックライト、信号機、屋外の大型ディスプレイ、広告看板等)に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミノシロキサン及びエポキシシリコーンを含有してなる熱硬化性組成物。
【請求項2】
前記エポキシシリコーンのエポキシ当量が500〜5000g/molである、請求項1記載の熱硬化性組成物。
【請求項3】
前記アルミノシロキサンが光重合性官能基を有する、請求項1又は2記載の熱硬化性組成物。
【請求項4】
前記光重合性官能基がエチレン性二重結合を有する基である、請求項3記載の熱硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の熱硬化性組成物を用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置。


【公開番号】特開2009−275141(P2009−275141A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128679(P2008−128679)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】