説明

燃費表示装置

【課題】燃費が改善する運転操作ができたか否かを運転者が適切に判断することができる燃費表示装置を提供する。
【解決手段】燃費算出区間を設定し(S300)、燃費算出区間の走行終了後、その区間の走行距離をその区間での燃料消費量で割ることで燃費Fyを算出する(S308)。その燃費Fyとその区間での充放電収支Whと燃費補正関数と用いて、燃費Fyを充放電収支Whがゼロのときの値に補正した補正燃費Fzを算出して表示する(S312、S314)。この補正燃費Fzはバッテリ6の充放電電力を考慮した燃費であるので、運転者は燃費が改善する運転操作ができたか否かを適切に判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の燃費を表示する燃費表示装置に関し、特に、内燃機関の動力を用いて充電可能な蓄電装置を備えた車両の燃費を表示する燃費表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の燃費を表示する燃費表示装置が種々知られている。燃費表示装置において表示する燃費は、種々の算出方法によって算出される。たとえば、特許文献1の燃費表示装置では、1分毎の平均燃費、瞬間の燃費、通算燃費、過去最高燃費の4つの燃費を算出して表示している。これら4つの燃費は、いずれも、走行距離(km)/燃料消費量(L)によって算出している。
【特許文献1】特開2007−78699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のように、走行距離(km)/燃料消費量(L)によって算出した値を燃費として表示する燃料表示装置を、内燃機関の動力を用いて蓄電装置を充電できる車両に適用する場合、次の問題が生じる。
【0004】
すなわち、上記車両においては、車両走行中に内燃機関の動力を用いて蓄電装置を充電する場合、充電をしない場合よりも多くの燃料を消費することになる。そのため、上記式にて算出される燃費は充電しない場合よりも悪くなる。その結果、同じように運転しているにもかかわらず、表示される燃費が変動してしまうこととなり、運転者は現在の運転が良かったのかどうかを判断することができず、運転操作の改善が難しいという問題があった。
【0005】
また、内燃機関の動力を用いて蓄電装置を充電できる車両において、さらに、蓄電装置の電力によって動作して車両を駆動させる回転電機を備えている車両も広く知られている。一般に、ハイブリッド車両と呼ばれている車両がそれであり、このハイブリッド車両においては、回転電機のみを駆動力源として車両が走行する場合はもちろん、必要な駆動力の一部を回転電機が発生させるアシスト走行の場合にも、内燃機関の動力のみで走行する場合よりも燃料消費量が少なくなる。そのため、上記式にて算出される燃費は、回転電機が車両の駆動力を発生させない場合よりも向上してしまう。この場合にも、同じように運転しているにもかかわらず、表示される燃費が変動してしまうこととなるので、上述の問題が生じる。
【0006】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、燃費が改善する運転操作ができたか否かを運転者が適切に判断することができる燃費表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、内燃機関の動力を用いて充電可能な蓄電装置を備えた車両に用いられ、その車両の燃費を表示部に表示する燃費表示装置であって、前記車両が走行した所定の走行区間の走行距離を算出する走行距離算出手段と、
前記車両が前記走行区間を走行したときに消費した燃料消費量を算出する燃料消費量算出手段と、前記走行距離を前記燃料消費量で割ることによって得られる単純燃費を、前記走行区間の走行中に前記内燃機関の動力によって前記蓄電装置が充電された充電量に基づいて補正した補正燃費を算出する補正燃費算出手段とを備え、前記表示部に、前記補正燃費が表示されることを特徴とする。
【0008】
このように、走行距離を燃料消費量で割ることで算出される単純燃費を、走行区間を走行中の充電量に基づいて補正した補正燃費を算出して、その補正燃費を表示するようにすれば、蓄電装置を充電するために内燃機関が消費した燃料消費量を考慮した適切な燃費が表示されることになる。そのため、運転者は燃費が改善する運転操作ができたか否かを適切に判断することができるようになる。
【0009】
また、請求項2は、前記蓄電装置の電力によって動作して車両を駆動させる回転電機をさらに備えている車両に用いられる請求項1の燃費表示装置であって、前記補正燃費算出手段は、前記走行区間の走行中に前記内燃機関の動力によって前記蓄電装置が充電された充電量と、前記走行区間の走行中に前記回転電機が動作して車両を駆動させる際に前記蓄電装置から放電される放電量とに基づいて前記単純燃費を補正した補正燃費を算出することを特徴とする。
【0010】
このように、請求項2では、走行区間を走行中の充電量に加えて、走行区間を走行中の放電量も考慮して、単純燃費を補正した補正燃費を算出している。そのため、蓄電装置の充放電電力を考慮した適切な燃費が表示されることになるので、運転者は燃費が改善する運転操作ができたか否かを適切に判断することができるようになる。
【0011】
ここで、前記補正燃費算出手段は、請求項3のように、単純燃費を補正することで補正燃費を算出してもよいし、請求項6のように、単純燃費は算出せず、燃料消費量を補正して補正した燃料消費量で走行距離を割ることで補正燃費を算出してもよい。
【0012】
上記請求項3は、請求項2において、前記走行区間の走行中に前記内燃機関の動力によって前記蓄電装置が充電された充電量と、前記走行区間の走行中に前記回転電機が動作して車両を駆動させる際に前記蓄電装置から放電される放電量との差を示す充放電収支量を算出する充放電収支算出手段をさらに備え、前記補正燃費算出手段は、前記単純燃費を前記充放電収支量がゼロのときの値に補正した補正燃費を算出することを特徴とする。
【0013】
また、請求項3のように単純燃費を補正することで補正燃費を算出する場合、請求項4のように関数を用いて補正燃費を算出してもよいし、請求項5のようにマップを用いても良い。
【0014】
上記請求項4は、請求項3において、前記単純燃費と前記充放電収支量とから、充放電収支量がゼロのときの燃費が定まる燃費補正関数が記憶されており、前記補正燃費算出手段は、前記燃費補正関数と前記充放電収支算出手段で実際に算出された充放電収支量と前記単純燃費とから、前記補正燃費を算出することを特徴とする。
【0015】
上記請求項5は、請求項3において、充放電収支量と、その充放電収支量に対して充放電収支量がゼロのときの燃費からの燃費変化量とを記憶した燃費変化量マップが記憶されており、前記補正燃費算出手段は、前記燃費変化量マップと前記充放電収支算出手段で実際に算出された充放電収支量とから燃費変化量を求め、その燃費変化量と前記単純燃費とから前記補正燃費を算出することを特徴とする。
【0016】
また、前述の請求項6は、請求項2において、
前記内燃機関の動力によって前記蓄電装置が充電される充電量とその充電のために前記内燃機関が必要とする燃料消費量との間の対応関係、および、前記回転電機が動作して車両を駆動させる際の前記蓄電装置が放電する放電量とその放電によって減少する前記内燃機関の燃料消費量との間の対応関係とが記憶されており、
前記走行区間の走行中に前記内燃機関の動力によって前記蓄電装置が充電された充電量と、前記走行区間の走行中に前記回転電機が動作して車両を駆動させる際に前記蓄電装置から放電される放電量との差を示す充放電収支量を算出する充放電収支算出手段と、
その充放電収支算出手段によって算出された充放電収支量と前記2つの対応関係とに基づいて、前記蓄電装置の充放電によって生じる燃料消費量の増加または減少量を算出する燃料増減量算出手段とをさらに備え、
前記補正燃費算出手段は、前記燃料増減量算出手段で算出された燃料消費量の増加または減少量に基づいて前記走行区間の走行中の実際の燃料消費量を補正した補正燃料消費量で前記走行距離を割ることで、前記補正燃費を算出することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、ハイブリッド車両(以下、単に車両という)1の要部構成を示す図であり、本発明の実施形態となる燃費表示装置はナビゲーション部30などによって構成される。
【0018】
図1に示すように、車両1は、エンジン4と2つのモータジェネレータ(すなわち回転電機)MG1、MG2とを動力発生源として備えたシリーズパラレル式のハイブリッド車両である。
【0019】
エンジン4は、燃料としてガソリンまたは軽油を用いる内燃機関である。このエンジン4の出力軸は、遊星歯車装置12のプラネタリギアに連結されている。遊星歯車装置12のサンギアには第1モータジェネレータMG1の出力軸が連結され、遊星歯車装置12のリングギアには減速機13の入力軸が連結されている。この構成により、遊星歯車装置12は動力分割機構として機能し、エンジン4からの動力と第1モータジェネレータMG1からの動力とを統合して減速機13の入力軸に入力することができるとともに、エンジン4からの動力を減速機13の入力軸と第1モータジェネレータMG1とに分割することもできる。
【0020】
上記減速機13の入力軸には、第2モータジェネレータMG2の出力軸も連結されている。減速機13は一対の常時噛み合い歯車を有しており、減速機13の出力軸の回転がデファレンシャルギア14を介して車軸(すなわち駆動軸)15に伝達される。
【0021】
第1モータジェネレータMG1および第2モータジェネレータMG2は、それぞれ、第1インバータ8および第2インバータ10に接続されており、それら第1、第2インバータ8、10は、電力授受ライン18によってバッテリ6と電気的に接続されている。第1、第2モータジェネレータMG1、MG2は、バッテリ6からの電力が供給されるとモータとして機能して動力を発生させる。一方、車輪あるいはエンジンの回転が伝達されることによって回転させられると発電機として機能して電力を発生させる。第1、第2モータジェネレータMG1、MG2が発電機として機能して発生させた電力はバッテリ6に蓄電される。
【0022】
請求項の蓄電装置に相当するバッテリ6には、たとえば、ニッケル水素二次電池を用いる。このバッテリ6は、電力授受ライン18によってインバータ8、10と接続されていることに加えて、系内電力供給ライン19によって車両1に備えられている種々の電気負荷16とも接続されている。
【0023】
本実施形態では、バッテリ6と電気負荷16とを総称して電源系という。なお、図1には示していないが、MGECU20、バッテリECU22、ハイブリッド制御ECU24、エンジンECU26も系内電力供給ライン19によってバッテリ6からの電力供給を受けており、これらのECU20〜26も電気負荷16に含まれる。
【0024】
電力検出部28は、電源系内において消費される電力を検出するために、系内電力供給ライン19の電流および電圧を検出する。また、バッテリECU22はバッテリ6の蓄電状態(以下、SOCという)を表す信号や充放電電力量およびその積算値をハイブリッド制御ECU24へ逐次供給する。
【0025】
ハイブリッド制御ECU24には、車速を表す車速信号SSp、アクセル開度を表すアクセル開度信号Acc、ブレーキ踏力を示すブレーキ信号Sb、シフト位置を表すシフト位置信号Psが供給される。また、MGECU20、バッテリECU22、エンジンECU26、ナビゲーション部30との間で相互に信号の送受信を行う。そして、供給される種々の信号に基づいて所定の演算処理を実行する。
【0026】
上記演算処理には、たとえば、車速信号SSp、アクセル開度信号Acc、ブレーキ信号Sb、シフト位置信号Psからエンジン4の動作点およびモータジェネレータMG1、MG2の動作点を決定するものがある。動作点を決定すると、ハイブリッド制御ECU24は、その決定した動作点を指示する信号をエンジンECU26およびMGECU20へ出力する。MGECU20およびエンジンECU26は、ハイブリッド制御ECU24から供給される信号に基づいてエンジン4、モータジェネレータMG1、MG2をそれぞれ駆動させる。なお、上記ECU20、22、24、26における処理は、図2を用いて後に詳述する。
【0027】
ナビゲーション部30は、上述のようにハイブリッド制御ECU24と接続されていることに加えて、表示部40および位置検出部42とも接続されている。このナビゲーション部30は、走行測定部32、演算部34、地図記憶部36を備えている。上記地図記憶部36は、道路や交差点などの道路地図情報が含まれている地図データベースを所定の記憶媒体(たとえば、ハードディスクなど)に記憶している。
【0028】
走行測定部32は、ハイブリッド制御ECU24から車速信号SSpを逐次取得し、その車速信号SSpが示す車速に、車速信号SSpの取得間隔時間を乗じることにより、走行距離を逐次算出する。そして、その走行距離を後述する燃費算出区間毎に積算することにより、燃費算出区間毎の走行距離を算出する。また、走行測定部32は、ハイブリッド制御ECU24を介してエンジンECU26から燃料消費量を逐次取得し、その取得した燃料消費量を積算することにより、燃費算出区間毎の燃料消費量を算出する。さらに、走行測定部32は、ハイブリッド制御ECU24を介してバッテリECU22から充放電電力量を逐次取得し、その取得した充放電電力量を積算することにより、燃費算出区間毎の充放電電力積算値(単位Wh)を算出する。
【0029】
演算部34は、走行測定部32で算出された燃費算出区間毎の走行距離、燃料消費量、充放電電力積算値を用いて、燃費算出区間毎に補正燃費Fzを算出し、算出した補正燃費Fzを表示部40に表示させる。その表示部40としては、たとえば、メータディスプレイ、フロントコンソールディスプレイ、ヘッドアップディスプレイなどを用いることができる。
【0030】
位置検出部42は、GPS受信機等、車両の位置検出に一般的に利用される機器を少なくとも一つ備え、その機器を用いて車両1の現在位置を逐次検出する。そして、検出した現在位置をナビゲーション部30に送信する。
【0031】
図2は、ECU20、22、24、26の機能をブロック図にて示す図である。まず、ハイブリッド制御ECU24の機能を説明する。ハイブリッド制御ECU24は、駆動・減速パワー要求値算出手段240と、目標エンジン動力算出手段242と、エンジン指令トルク算出手段244と、MG指令トルク算出手段246とを備えている。
【0032】
駆動・減速パワー要求値算出手段240は、車両1が要求する駆動パワー要求値Dpまたは減速パワー要求値Bpを逐次算出する。いずれのパワー要求値Dp、Bpを算出するかは、アクセル開度およびブレーキ踏力によって定まり、それらアクセル開度およびブレーキ踏力からドライバが減速を要求していると判断できるときは減速パワー要求値Bpを算出し、ドライバが加速または速度維持を要求していると判断できるときは駆動パワー要求値Dpを算出する。
【0033】
駆動パワー要求値Dpを算出する場合、まず、アクセル開度信号Accが示すアクセル開度とシフト位置信号Psが示すシフト位置とから、予め記憶されている要求駆動トルク決定マップを用いて要求駆動トルクを設定する。次いで、車速信号SSpが示す車速に基づいて車軸15の回転速度を算出し、その回転速度に上記要求駆動トルクを乗じることにより駆動パワー要求値Dpを算出する。
【0034】
一方、減速パワー要求値Bpを算出する場合には、まず、ブレーキ信号Sbからブレーキ踏力を決定し、またはアクセル開度信号Accが示すアクセル開度からアクセル戻し量を決定する。そして、そのブレーキ踏力またはアクセル戻し量を加減速操作量として、加減速操作量とシフト位置信号Psが示すシフト位置とから、予め記憶されている要求減速トルク決定マップを用いて要求減速トルクを設定する。次いで、車速信号SSpが示す車速に基づいて車軸15の回転速度を算出し、その回転速度に上記要求減速トルクを乗じることにより減速パワー要求値Bpを算出する。
【0035】
目標エンジン動力算出手段242は、上記駆動・減速パワー要求値算出手段240で算出された駆動パワー要求値Dpまたは減速パワー要求値Bp、および電源系との電力授受量EPwから、エンジン4の目標動力を算出する。
【0036】
上記電力授受量EPwは、電力授受ライン18を流れる電力量であり、電源系が電力を必要とする場合には、モータジェネレータMGによって発電された電力が電源系に供給される一方、アシスト走行の場合には、電源系からモータジェネレータMG1,2へ電力が供給される。
【0037】
駆動パワー要求値Dpを算出した場合であって電源系へ電力を供給する場合には、エンジン4の動力によって、車軸15に駆動パワー要求値Dpの駆動力を発生させつつ、電源系へ供給する電力を発電するために必要なトルクをモータジェネレータMGにて発生させることができる駆動パワーが、エンジン4の目標動力となる。駆動パワー要求値Dpを算出した場合であってアシスト走行を行なう場合には、機械損失を考慮しつつバッテリ6からの電力によってモータジェネレータMGにてアシストされる動力を駆動パワー要求値Dpから差し引いた値がエンジン4の目標動力となる。減速パワー要求値Bpを算出した場合には、エンジン4の目標動力はゼロとなる。
【0038】
エンジン指令トルク算出手段244は、目標エンジン動力算出手段242で算出された目標動力をエンジン4が発生させるために必要なエンジン4のトルクを算出する。そして、その算出したトルクの出力を指示するエンジントルク指令信号をエンジンECU26へ送信する。
【0039】
MG指令トルク算出手段246は、アシスト走行の場合には、駆動・減速パワー要求値算出手段240で算出した駆動パワー要求値Dpと目標エンジン動力算出手段242で算出したエンジン4の目標動力との差に基づいて、モータジェネレータMGで発生させる必要がある力行トルクを算出する。また、車両1が減速を行なう場合、すなわち、減速パワー要求値Bpが算出されている場合には、その減速パワー要求値Bp、ブレーキ踏力および図7に示す関係から、回生トルクを算出する。そして、その算出したトルクの出力を指示するMGトルク指令信号をMGECU20へ送信する。
【0040】
次に、エンジンECU26の機能を説明する。エンジンECU26は、エンジン回転速度算出手段260と指令トルク実行手段262と燃料消費量算出手段264とを備えている。エンジン回転速度算出手段260は、図示しないエンジン回転速度センサからの信号に基づいて、エンジン4の回転速度を逐次算出する。
【0041】
指令トルク実行手段262は、エンジン回転速度算出手段260で逐次算出されるエンジン4の回転速度、スロットル開度を取得して、公知の手法によりエンジン4の実際のトルクを推定しつつ、その推定したトルクが、ハイブリッド制御ECU24から送信されたエンジントルク指令信号が示すトルクとなるように、エンジン4を制御する。
【0042】
燃料消費量算出手段264は、エンジンECU20で計算される1気筒当たりのインジェクタオン信号(燃料噴射パルス)を取得して単位時間当たりのインジェクタ噴射量を算出し、そこに気筒数を乗算し、それを所定時間毎に積算することでその所定時間毎の燃料消費量を算出する。なお、動作点から燃料消費量が定まる燃料消費量マップを記憶しておくとともに、エンジン4の回転速度およびトルクを決定することでエンジン4の動作点を決定し、その決定した動作点と上記燃料消費量マップから燃料消費量を算出してもよい。
【0043】
次に、MGECU20の機能を説明する。MGECU20は、回転速度・トルク算出手段200と指令トルク実行手段202とを備えている。回転速度・トルク算出手段200は、レゾルバ等の公知の回転速度検出センサからの信号に基づいて、モータジェネレータMG1,2の回転速度を算出するとともに、モータジェネレータMG1,2に流れる電流からモータジェネレータMG1,2のトルクを逐次算出する。
【0044】
指令トルク実行手段202は、回転速度・トルク算出手段200で逐次算出されるモータジェネレータMG1,2のトルクが、ハイブリッド制御ECU24から送信されたMGトルク指令信号が示すトルクとなるように、モータジェネレータMG1,2を制御する。
【0045】
次に、バッテリECU22の機能を説明する。バッテリECU22は、充放電量積算手段220と充放電可能電力算出手段222とを備えている。充放電量積算手段220は、電力授受ライン18を流れる電力量を積算することで充放電電力積算値を算出する。また、その充放電電力積算値とバッテリ6の定格容量とから、バッテリ6のSOCも逐次算出する。なお、上記電力量に代えて電流量を積算して、充放電電流積算値を算出してもよい。
【0046】
充放電可能電力算出手段222は、充放電量積算手段220にて逐次算出されるバッテリ6のSOCとバッテリ6の定格容量とから、バッテリ6が充電可能な最大の電力量および放電可能な最大の電力量を逐次算出する。バッテリECU22で算出された充放電電力積算値、SOCなどはハイブリッド制御ECU24へ送信され、エンジン4の目標動力の算出の際等に利用される。
【0047】
次に、ナビゲーション部30が実行する処理を説明する。図3は、ナビゲーション部30が実行する処理を示す図である。なお、この図3に示す処理は所定周期で繰り返し実行するようになっており、ステップS306は走行測定部32の処理、その他は演算部34の処理である。
【0048】
まず、ステップS300では燃費算出区間の設定を行う。この燃費算出区間は、目的地が設定されている場合には、出発地から目的地までを一つの燃費算出区間としてもよいし、出発地から目的地までを複数の燃費算出区間に区切ってもよい。複数に区切る場合、予め設定された数に区切ってもよいし、予め設定された距離毎に区切ってもよい。また、地形の変化や交通事情が変化するなど、燃費に影響する変化が生じる点で区切ってもよい。目的地が設定されていない場合には、たとえば、所定の走行距離を走行するまで、あるいは、所定の時間走行するまでを一つの燃費算出区間とする。
【0049】
ステップS300で燃費算出区間を設定後、走行の開始を検出した時点でステップS302を実行する。走行の開始は、たとえば、シフト位置信号Psに基づいてシフト位置がDレンジとされたことを検出した場合とする。ステップS302では、燃費Fyおよび充放電収支Whの初期化を行なう。
【0050】
続くステップS304では、位置検出部42から車両1の現在位置を取得して、ステップS300で設定した燃費算出区間を走行し終えたか否かを判断する。この判断が否定判断である場合にはステップS306へ進む。
【0051】
前述のようにステップS306は走行測定部32の処理であり、ハイブリッド制御ECU24から、所定時間における燃料消費量、車速信号SSp、充放電電力量を取得して、それらから、走行中の燃費算出区間における燃料消費量、走行距離、充放電電力量の積算を行なう。なお、以下では、充放電電力量の積算値を充放電収支Whという。
【0052】
ステップS306を実行後は前述のステップS304の判断を再度行なう。そして、ステップS304が肯定判断となった場合にはステップS308へ進む。ステップS308では、ステップS306にて得られた走行距離をそのステップS306にて得られた燃料消費量で割ることで燃費Fyを算出する。この燃費Fyは請求項の単純燃費に相当するものである。
【0053】
続くステップS310では、ステップS308で算出した燃費FyおよびステップS306にて得られた充放電収支Whを燃費算出区間に対応付けて記憶する。なお、記憶する記憶媒体としては、たとえば、地図記憶部36の記憶媒体を用いるが、専用の記憶媒体を設けてもよい。
【0054】
続くステップS312では補正燃費Fzを算出する。この補正燃費Fzは、燃費Fyを充放電収支Whがゼロのときの燃費に補正したものであり、次の式1に示す燃費補正関数を用いて算出する。この式1は、たとえば、燃費Fyおよび充放電収支Whを記憶する記憶媒体に記憶される。
(式1) Fz=Fy−a×Wh
上記式1においてaは補正係数であり、同一の燃費算出区間に対して記憶されている燃費Fyとその燃費Fyを算出したときの充放電収支Whとを複数組用いて最小二乗法により得られる燃費補正線(図4参照)の傾きである。
【0055】
なお、図4において、「■」が実際の走行により得られた燃費Fyおよび充放電収支Whを示す点である。この図4に示す燃費補正線の算出は、たとえば、ステップS310にて燃費Fy、充放電収支Whを記憶する毎に行うことができる。また、図3の処理とは無関係な所定のタイミングで実行してもよい。燃費補正線の算出の際には、同一の燃費算出区間に対して記憶されている全ての燃費Fyおよび充放電収支Whの組を用いる。ただし、同一の充放電収支Whであるにも拘わらず、燃費Fyが大きく異なる場合には、それらを平均した燃費を一つの燃費Fyと充放電収支Whの組としてもよい。
【0056】
上記補正係数aが燃費算出区間別とされているのは次の理由による。すなわち、区間が異なると地形や道路状況などが異なり、これらが異なると、車両1の車速パターンや要求する駆動パワー要求値Dp、減速パワー要求値Bpが異なる。そしてこのことによって走行抵抗やエンジン4の動作点、MG1,2の動作点が区間によって異なり、エンジン効率やMG効率が異なる。このことにより区間によって充放電収支の変化による燃費の変化が異なってしまう。そこで、同じ燃費算出区間では車両1の車速パターンや要求する駆動パワーDp、減速パワー要求値Bpが略一致と仮定して、補正係数aを燃費算出区間別に算出しているのである。ただし、補正係数aが記憶されていない燃費算出区間に対しては、予め設定した補正係数を用いてもよい。
【0057】
ステップS312にて補正燃費Fzを算出した後は、ステップS314にて補正燃費Fzを表示部40に表示させる。補正燃費Fzを表示した後は所定周期経過後に図3の処理を最初から実行することになるが、ステップS300にて複数の燃費算出区間が設定されており、全ての燃費算出区間の走行が終了していない場合には、ステップS314を実行後、ステップS302へ戻ってもよい。この場合、各燃費算出区間を走行し終える毎に補正燃費Fzが表示されることになるので、目的地へ到達するまでの間、燃費の途中経過が表示されることになる。
【0058】
以上、説明した本実施形態によれば、燃費算出区間の走行距離をその燃費算出区間の燃料消費量で割ることで燃費Fyを算出し、さらに、その燃費Fyを、燃費算出区間を走行中の充放電収支Whに基づいて補正することで、充放電収支Whがゼロのときの補正燃費Fzを算出している。そして、この補正燃費Fzを表示部40に表示している。従って、運転者は、燃費算出区間の充放電収支Whによって生じる燃費の変化に左右されることなく、自分の運転操作がどのように燃費に影響したかをより定量的に判断でき、燃費が向上するように運転操作を改善することが容易になる。
【0059】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0060】
たとえば、前述の実施形態では、まず、単純燃費である燃費Fyを算出した後、その燃費Fyから補正燃費Fzを求めるために式1の関係を用いていたが、式1の関係に代えて燃費変化量マップを用いてもよい。この燃費変化量マップは、複数の充放電収支Whに対して、充放電収支Whがゼロのときの燃費(すなわち補正燃費Fz)からの燃費変化量を記憶したマップである。このマップを用いる場合には、マップから定まる燃費変化量を燃費Fyに加算または減算することで補正燃費Fzを算出することになる。なお、燃費Fyの値がマップにない場合は、線形補間等、周知の補間方法で補間すればよい。
【0061】
また、燃費Fyを補正して補正燃費Fzを算出するのではなく、燃料消費量を補正して補正燃費Fzを算出してもよい。図5は、エンジン4の動力によって充電されるバッテリ6の充電量とその充電のためにエンジン4が必要とする燃料消費量との対応関係(図5左側)、および、モータジェネレータMGが動作して車両を駆動させる際にバッテリ6が放電する放電量とその放電によって減少するエンジン4の燃料消費量との対応関係(図5右側)を示すグラフであり、このグラフは実験に基づいて得られたものである。このグラフも燃費算出区間別に設けられることが好ましいが、複数の燃費算出区間に対して得られた図5のグラフを平均するなどして燃費算出区間によらないグラフを用いることとしてもよい。
【0062】
上記グラフと、燃費算出区間に積算した充放電収支Whとから、燃料消費量の増加量または減少量を算出する。この燃費消費量の増減量をΔFとし、燃費算出区間の燃料消費量をFとしたとき、F−ΔFで示される補正燃料消費量を用いる次の式2によって補正燃費Fzを算出する。なお、式2において、Lは燃費算出区間の走行距離であり、ΔFは充電の場合が正である。
(式2) Fz=L/(F−ΔF)
また、前述の実施形態では、車速に車速信号SSpの取得間隔時間を乗じることにより距離を逐次算出し、その距離を積算することで燃費算出区間の走行距離を算出していたが、地図データベースを用いて燃費算出区間の始点から終点までの距離を算出して、それを走行距離としてもよい。
【0063】
また、前述の実施形態の車両1は、シリーズパラレル式のハイブリッド車両であったが、その他の形式(シリーズ式、パラレル式)のハイブリッド車両にも本発明は適用できる。また、エンジン4の動力でバッテリ4を充電可能な車両であれば本発明は適用できるので、車両の駆動力源としてのモータジェネレータMGを備えていない車両にも本発明は適用できる。
【0064】
また、燃費算出区間の走行開始時のSOCと走行終了時のSOCとの差から充放電収支Whを算出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】ハイブリッド車両1の要部構成を示す図である。
【図2】ECU20、22、24、26の機能を示すブロック図である。
【図3】図2のナビゲーション部30が実行する処理のメインルーチンを示す図である。
【図4】充放電収支Whと燃費との関係を示す図である。
【図5】バッテリ6の充放電量と、充放電によって生じるエンジン4の燃料消費量の変化との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0066】
1:ハイブリッド車両、 4:エンジン(内燃機関)、 6:バッテリ(蓄電装置)、 8:第1インバータ、 10:第2インバータ、 12:遊星歯車装置、 13:減速機、 14:デファレンシャルギア、 15:車軸、 16:電気負荷、 18:電力授受ライン、 19:系内電力供給ライン、 20:MGECU、 22:バッテリECU、 24:ハイブリッド制御ECU、 26:エンジンECU、 28:電力検出部、 30:ナビゲーション部、 32:走行測定部、 34:演算部、 36:地図記憶部、 40:表示部、 42:位置検出部、 MG:モータジェネレータ(回転電機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の動力を用いて充電可能な蓄電装置を備えた車両に用いられ、その車両の燃費を表示部に表示する燃費表示装置であって、
前記車両が走行した所定の走行区間の走行距離を算出する走行距離算出手段と、
前記車両が前記走行区間を走行したときに消費した燃料消費量を算出する燃料消費量算出手段と、
前記走行距離を前記燃料消費量で割ることによって得られる単純燃費を、前記走行区間の走行中に前記内燃機関の動力によって前記蓄電装置が充電された充電量に基づいて補正した補正燃費を算出する補正燃費算出手段とを備え、
前記表示部に、前記補正燃費が表示されることを特徴とする燃費表示装置。
【請求項2】
前記蓄電装置の電力によって動作して車両を駆動させる回転電機をさらに備えている車両に用いられる請求項1の燃費表示装置であって、
前記補正燃費算出手段は、前記走行区間の走行中に前記内燃機関の動力によって前記蓄電装置が充電された充電量と、前記走行区間の走行中に前記回転電機が動作して車両を駆動させる際に前記蓄電装置から放電される放電量とに基づいて前記単純燃費を補正した補正燃費を算出することを特徴とする燃費表示装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記走行区間の走行中に前記内燃機関の動力によって前記蓄電装置が充電された充電量と、前記走行区間の走行中に前記回転電機が動作して車両を駆動させる際に前記蓄電装置から放電される放電量との差を示す充放電収支量を算出する充放電収支算出手段をさらに備え、
前記補正燃費算出手段は、前記単純燃費を前記充放電収支量がゼロのときの値に補正した補正燃費を算出することを特徴とする燃費表示装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記単純燃費と前記充放電収支量とから、充放電収支量がゼロのときの燃費が定まる燃費補正関数が記憶されており、
前記補正燃費算出手段は、前記燃費補正関数と前記充放電収支算出手段で実際に算出された充放電収支量と前記単純燃費とから、前記補正燃費を算出することを特徴とする燃費補正装置。
【請求項5】
請求項3において、
充放電収支量と、その充放電収支量に対して充放電収支量がゼロのときの燃費からの燃費変化量とを記憶した燃費変化量マップが記憶されており、
前記補正燃費算出手段は、前記燃費変化量マップと前記充放電収支算出手段で実際に算出された充放電収支量とから燃費変化量を求め、その燃費変化量と前記単純燃費とから前記補正燃費を算出することを特徴とする燃費補正装置。
【請求項6】
請求項2において、
前記内燃機関の動力によって前記蓄電装置が充電される充電量とその充電のために前記内燃機関が必要とする燃料消費量との間の対応関係、および、前記回転電機が動作して車両を駆動させる際の前記蓄電装置が放電する放電量とその放電によって減少する前記内燃機関の燃料消費量との間の対応関係とが記憶されており、
前記走行区間の走行中に前記内燃機関の動力によって前記蓄電装置が充電された充電量と、前記走行区間の走行中に前記回転電機が動作して車両を駆動させる際に前記蓄電装置から放電される放電量との差を示す充放電収支量を算出する充放電収支算出手段と、
その充放電収支算出手段によって算出された充放電収支量と前記2つの対応関係とに基づいて、前記蓄電装置の充放電によって生じる燃料消費量の増加または減少量を算出する燃料増減量算出手段とをさらに備え、
前記補正燃費算出手段は、前記燃料増減量算出手段で算出された燃料消費量の増加または減少量に基づいて前記走行区間の走行中の実際の燃料消費量を補正した補正燃料消費量で前記走行距離を割ることで、前記補正燃費を算出することを特徴とする燃費表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−184477(P2009−184477A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25669(P2008−25669)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】