説明

物理量センサ及びその製造方法

【課題】本発明に係る静電容量型の物理量センサは、センサ特性の低下を招くことなく、小型化あるいはセンサの感度を向上させる物理量センサ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】物理量センサは、フレーム部と、フレーム部の内側に配置された錘部と、錘部とフレーム部とを接続する可撓部と、を備えた半導体基板と、フレーム部の一方の側に接合された第1支持基板と、フレーム部の他方の側に接合された第2支持基板と、第1支持基板と第2支持基板の少なくとも一方に設けられ、第1支持基板又は第2支持基板の一方の側と他方の側を導通する配線用端子と、第1支持基板の面上に設けられ、錘部と対向する第1電極と、第2支持基板の面上に設けられ、錘部と対向する第2電極と、を備え、フレーム部には前記フレーム部の一方の側と他方の側を導通する貫通配線部が配設され、貫通配線部と前記配線用端子とは電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量素子を用いて物理量を検出する物理量センサ及びその製造方法に関し、特に、複数の方向の加速度、又は/及び、角速度を検出するタイプのセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて小型で単純な構造を有する加速度センサあるいは角速度センサとして、静電容量素子を利用したタイプのセンサ(いわゆる静電容量型センサ)が実用化されている。静電容量型センサは、一般に一対のガラス基板に挟まれて接合された半導体基板内に、所定の自由度をもって変位可能な錘部を用意し、当該錘部を加速度や角速度などに伴う変位を検出する錘部として利用する。変位の検出は、容量素子の静電容量の値に基づいて行われる。静電容量型センサにおいて、多軸成分の物理量を検出するために、従来、1軸のセンサを複数組み合わせて使われていたが、サイズやコストの点で問題であった。
【0003】
そこで、1つのセンサ素子によって多軸成分の検出を行うことが可能な静電容量型センサの研究が進んでいる。このような1つのセンサ素子によって多軸成分の物理量を検出するセンサにあっては、容量素子を用いて多軸成分の物理量の検出、あるいは錘部の駆動を行うため、容量素子を構成する電極に対して外部への配線接続が必要になる。この配線接続を単純かつ効率的に行うために、例えば、半導体基板内に上下一対のガラス基板を連結し、錘部の周囲に導電性材料からなる配線用の柱状体を配設し、当該柱状体により電極及び金属配線との電気的接続を取るセンサが開示されている(特許文献1及び非特許文献1)。
【0004】
しかしながら、配線用の柱状体の形成領域をセンサ内に確保することで、センサの小型化を妨げたり、あるいは錘部のサイズが制限されるといった問題があった。そこで錘部や該錘部とフレームを繋ぐ梁に柱状体(ポスト構造体)を配置したセンサが開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−3192号公報
【特許文献2】特開2007−192621号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Transaction on Sensors and Micromachines,Vol.126,No.6,2006(電気学会論文誌E,126巻,6号,2006年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2のセンサによれば、センサが配置されるウエハ面内における加工の不均一性から錘部や梁に柱状体を形成することは困難であり、このような加工不良がセンサの特性を低下させる。また、梁(脆弱な可撓部)に対して柱状体を設けることは梁の強度低下を招く。また、錘部に柱状体を設けることで錘部の質量を低下させ、センサの特性を低下させる。
【0008】
本発明は上記に鑑み、静電容量型の物理量センサにおいて、センサ特性の低下を招くことなく、小型化あるいはセンサの感度を向上させることができる物理量センサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る物理量センサは、フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置された錘部と、前記錘部と前記フレーム部とを接続する可撓部と、を備えた半導体基板と、前記フレーム部の一方の側に接合された第1支持基板と、前記フレーム部の他方の側に接合された第2支持基板と、前記第1支持基板と前記第2支持基板の少なくとも一方に設けられ、前記第1支持基板又は前記第2支持基板の一方の側と他方の側を導通する配線用端子と、前記第1支持基板上に設けられ、前記錘部と対向する第1電極と、前記第2支持基板上に設けられ、前記錘部と対向する第2電極と、を備え、前記フレーム部には前記フレーム部と一方の側と他方の側を導通する貫通配線部が配設され、前記貫通配線部と前記配線用端子とは電気的に接続されたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る物理量センサの製造方法は、半導体基板に、フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置される錘部と、前記錘部と前記フレーム部とを接続する可撓部と、を形成し、前記フレーム部の一部領域に前記フレーム部と一方の側と他方の側を貫通する貫通孔を形成し、前記貫通孔の内部及び前記貫通孔の開口周辺領域に絶縁層と、前記絶縁層上に配置される導電層とを形成し、前記フレーム部と一方の側と他方の側を導通する貫通配線部を形成し、前記フレーム部の一方の側と接合される第1支持基板上に、第1電極と、前記第1電極と電気的に接続される配線を形成し、前記フレーム部の他方の側と接合される第2支持基板上に、第2電極と、前記第2電極と電気的に接続される配線を形成し、前記錘部と前記第1電極とを対向させて前記第1支持基板と前記フレーム部の一方の側とを接合し、前記錘部と前記第2電極とを対向させて前記第2支持基板と前記フレーム部の他方の側とを接合し、前記第1支持基板と前記第2支持基板の少なくとも一方に設けられ、前記第1支持基板又は前記第2支持基板の一方の側と他方の側を導通する配線用端子を形成し、前記第1支持基板と前記第2支持基板に形成された前記配線を介して前記貫通配線部と前記配線用端子部とを電気的に接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、静電容量型の物理量センサにおいて、フレーム部に貫通配線部を設けることにより、従来のセンサに比して小型化、あるいは錘部を大きくすることによってセンサの感度を向上させることができる物理量センサ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る物理量センサを分解した状態を示す分解斜視図である。
【図2】半導体基板の構成を示す図であり、(A)はシリコン膜の上面を示す平面図、(B)はBOX層の上面を示す平面図、(C)はシリコン基板の上面を示す平面図である。
【図3】支持基板の構成を示す図であり、(A)は第1支持基板の下面を示す平面図、(B)は第2支持基板の上面を示す平面図、(C)は第2支持基板の下面を示す平面図である。
【図4】半導体基板に形成される貫通配線部を模式的に示す図であり、(A)は貫通配線部の構成を示す断面図、(B)は貫通配線部の構成を示す上面図である。
【図5】物理量センサ内に形成される容量素子の構成を示す断面図である。
【図6】物理量センサの製造方法を示す図であり、(A)は加工前の半導体基板を示す断面図、(B)は半導体基板にフレーム部、錘接合部、可撓部、開口を形成する工程を示す断面図、(C)は半導体基板にフレーム部、錘部を形成する工程を示す断面図、(D)は半導体基板に貫通孔を形成する工程を示す断面図である。
【図7】物理量センサの製造方法を示す図であり、(A)は半導体基板に導通部を形成する工程を示す断面図、(B)は半導体基板に貫通配線部を形成する工程を示す断面図、(C)は半導体基板に第1支持基板と第2支持基板を接合し、第2支持基板に配線用端子を形成する工程を示す断面図である。
【図8】物理量センサにより検出される角速度の変位信号を処理する角速度処理回路の一例を示す図である。
【図9】物理量センサと処理回路を実装したセンサモジュールの一例を示す図である。
【図10】センサモジュールを実装したモバイル端末機の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。
<物理量センサの構造>
図1は物理量センサ100を分解した状態を示す分解斜視図である。図1では物理量センサ100の面内に直交する2軸(X軸とY軸)を設定し、この2軸に垂直な方向をZ軸と定めている。物理量センサ100は、半導体基板Wを、その上下に位置する第1支持基板140と第2支持基板150とで挟んで構成されている。半導体基板Wは、シリコン膜110、BOX層120、シリコン基板130が順に積層して構成される。半導体基板Wは後述するような製造工程により、半導体基板Wの内側を刳り貫いたような開口を有する枠状のフレーム(フレーム部111とフレーム部131とを含む)と、このフレーム内に可撓性を有する可撓部113(113a〜113d)により変位可能に支持される錘部(錘接合部112と錘部132とを含む)とが、一体的に構成され、物理量を検出するセンサ部を形成している。さらにフレームに半導体基板Wの上下を貫通して導通が確保された貫通配線部P(P1〜P10)を有する(図面の見易さのため、ここでは図示せず)。
【0014】
シリコン膜110、BOX層120、シリコン基板130、第1支持基板140、第2支持基板150は、その外周が例えば3mm×3mmの略正方形状であり、これらの高さはそれぞれ20μm、2μm、600μm、500μm、500μmである。これらの外形、高さは一例であり、上記に限定されるものではない。なお、従来の物理量センサの外形サイズは3mm×3mm程度であり、本実施の形態の物理量センサ100の外形サイズも3mm×3mmとした場合を例示する。また、本実施の形態の物理量センサ100では、後述する半導体基板Wの上面と下面を導通する貫通配線部Pが設けられる。この構成により、本実施の形態の物理量センサ100は、従来の物理量センサに用いられる錘部のサイズを変えることなく、外形サイズを1.5mm×1.5mmに縮小可能であり、従来の物理量センサ全体の外形サイズに比べて約1/4に小型化することが可能である。また、本実施の形態の物理量センサ100全体の外形サイズを3mm×3mmの略正方形状とすれば、後述する錘部132のサイズは、従来の物理量センサに用いられる錘部のサイズに比べて約4倍にすることが可能であり、物理量センサとしての感度を向上させることが可能である。
【0015】
シリコン膜110、BOX層120、シリコン基板130から構成される半導体基板Wは、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いて製造可能である。また、第1支持基板140および第2支持基板150は、ガラス材料、半導体材料、金属材料、絶縁性樹脂材料のいずれかにより構成される。
【0016】
図2の(A)〜(C)は、それぞれ(A)シリコン膜110、(B)BOX層120、(C)シリコン基板130の上面を示す平面図である。図3の(A)〜(C)は、それぞれ(A)第1支持基板140の下面、(B)第2支持基板150の上面(配線用端子を図示せず)、(C)第2支持基板150の下面を示す平面図である。
【0017】
図2(A)に示すシリコン膜110には、フレーム部111、錘接合部112(112a〜112e)、可撓部113が形成されている。フレーム部111は、外周、内周が共に略正方形の枠状の基板である。錘接合部112(112a〜112e)は、図2(A)を鉛直方向から見た場合、略クローバー状の形状を有している。錘接合部112は、該錘接合部112と略同一形状の錘部132(図2(C)に示す錘部132a〜132e)とBOX層120bを介して接合され、フレーム部111に対して一体的に変位する。なお、図2(A)と(C)において、錘接合部112a〜112eと錘部132a〜132eにそれぞれ付した符号のアルファベット部分(a〜e)は、相互の位置関係に対応させて同様の順序で付している。可撓部113a〜113dは、それぞれ略長方形の基板であり、フレーム部111と錘接合部112a〜112eとを4方向で接続する。可撓部113a〜113dは、厚みが薄いため可撓性を有しており、撓みが可能な梁として機能する。可撓部113a〜113dが撓むことで、錘接合部112a〜112eがフレーム部111に対して変位可能である。
【0018】
錘接合部112aの上面は、後述する駆動用電極E(図5参照)として機能する。この錘接合部112aの上面の駆動用電極Eは、第1支持基板140の下面に設置された後述する駆動用電極144a(図5参照)と容量性結合し、これらの駆動用電極E−144a間に印加された電圧によって錘接合部112a〜112eをZ軸方向に振動させる。この駆動の詳細については後述する。
【0019】
錘接合部112b〜112eの上面は、錘接合部112のX軸およびY軸方向の変位を検出する後述する検出用電極E(図5参照)としてそれぞれ機能する。この錘接合部112b〜112eの上面の検出用電極Eは、第1支持基板140の下面に設置された後述する検出用電極144b〜144eとそれぞれ容量性結合する。なお、錘接合部112b〜112eと検出用電極144b〜144eにそれぞれ付した符号のアルファベット部分(b〜e)は、それぞれ相互の位置関係に対応させて同様の順序で付している。この検出の詳細については後述する。
【0020】
シリコン基板130には、フレーム部131と錘部132(132a〜132e)が形成されている。シリコン基板130は、半導体基板Wをエッチングして開口を形成することで、フレーム部131と錘部132(132a〜132e)が作成可能である。なお、錘部132の高さ(図2のZ軸方向)は、フレーム部131の高さより低く作成する。これは、錘部132と第2支持基板150との間に測定レンジに相当するギャップを確保し、錘部132の変位を可能にするためである。
【0021】
フレーム部131は、外周、内周が共に略正方形の枠状の基板であり、シリコン膜110のフレーム部111と対応した形状を有する。フレーム部131は、BOX層120aを介してフレーム部111に接合されており、フレーム部111と一体化されている。
【0022】
錘部132は、加速度に起因する力、あるいは、角速度に起因するコリオリ力を受ける錘(作用体)として機能する。錘部132は、略直方体形状の錘部132a〜132eに区分される。中心に配置された錘部132aには、4方向から錘部132b〜132eが接続され、全体として一体的に変位(移動、回転)することが可能となっている。即ち、錘部132aは、錘部132b〜132eを接続する接続部として機能する。錘部132は、図2(C)を鉛直方向から見た場合に、略クローバー状の形状を有している。
【0023】
錘部132a〜132eは、それぞれ錘接合部112a〜112eと対応する略正方形の断面形状(図2(C)のX−Y座標平面から見た形状)を有する。錘部132a〜132eは、BOX層120bを介して錘接合部112a〜112eと接合される。錘部132a〜132eに加わった力に応じて錘接合部112が変位し、その結果、物理量の測定が可能となる。
【0024】
錘部132を錘部132a〜132として構成している理由は、物理量センサ100の小型化と高感度化の両立を図るためである。物理量センサ100を小型化(小容量化)すると、錘部132の容量も小さくなり、その質量が小さくなることから、物理量に対する感度も低下する。可撓部113a〜113dの撓みを阻害しないように錘部132b〜132eを分散配置することで、錘部132全体としての質量を確保している。この結果、物理量センサ100の小型化と高感度化の両立が図られる。
【0025】
錘部132aの下面(第2支持基板150の上面に対向する面)は、後述する駆動用電極E(図5参照)として機能する。この錘部132aの下面の駆動用電極Eは、第2支持基板150の上面に設置された後述する駆動用電極154a(図5参照)と容量性結合し、これらの駆動用電極E−154a間に印加された電圧によって錘接合部112a〜112eをZ軸方向に振動させる。なお、この駆動の詳細については後述する。
【0026】
錘部132b〜132eのそれぞれの下面は、錘接合部112b〜112eのX軸およびY軸方向の変位を検出する後述する検出用電極E(図5参照)としてそれぞれ機能する。これらの錘部132b〜132eの裏面の検出用電極Eは、第2支持基板150の上面に設置された後述する検出用電極154b〜154e(図5参照)とそれぞれ容量性結合する。なお、錘部132b〜132eと検出用電極154b〜154eにそれぞれ付した符号のアルファベット部分(b〜e)は、それぞれ相互の位置関係に対応させて同様の順序で付している。この検出の詳細については後述する。
【0027】
図2(B)に示すBOX層120は、フレーム部111とフレーム部131とを接続するBOX層120aと、錘接合部112a〜112eと錘部132a〜132eを接続するBOX層120bとにより構成される。BOX層120は、図2(B)に示す部分以外の部分では、シリコン膜110及びシリコン基板130とは接続されていない。これは、可撓部113a〜113dの撓み、および錘部132の変位を可能とするためである。
【0028】
本実施の形態では、シリコン膜110のフレーム部111とシリコン基板130のフレーム部131がBOX層120により接合された構造体をフレームと呼称するものとする。このフレームには、上下貫通した貫通配線部P(P1〜P10)が形成されている。なお、貫通配線部P(P1〜P10)の詳細については後述する。フレームの幅は、外形が3mmの物理量センサ100である場合、例えば、500μm〜750μm程度であり、このフレームに、例えば、30〜100μm径の貫通配線部P(P1〜P10)が配置されている。また、外形が1.5mm×1.5mmの物理量センサ100とした場合、フレームの幅は、例えば、250μm〜300μm程度である。なお、このフレーム幅は、特に限定するものではない。
【0029】
図1において、シリコン膜110とシリコン基板130とを必要な部分で導通させるため、導通部160〜161を形成している。導通部160は、フレーム部111とフレーム部131とを導通するものであり、フレーム部111およびBOX層120aを貫通している。導通部161は、錘接合部112と錘部132とを導通するものであり、錘接合部112a及びBOX層120bを貫通している。導通部160〜161は、例えば、孔の縁、壁面及び底部に、Al等の金属層が形成されたものである。なお、孔の形状は特に制限されないが、Alのスパッタ等により金属層を効果的に形成できるため、導通部160〜161の孔を順テーパの錐形状に形成することが好ましい。
【0030】
次に、図3を参照して第1、第2支持基板140、150について説明する。図3(A)は、第1支持基板140を下面(シリコン膜110の上面に対向する面)から見た平面図である。第1支持基板140は、略直方体の外形(図1参照)を有し、枠部141と底板部142とを有する。枠部141及び底板部142には、シリコン基板130に形成された錘部132が変位可能なように略直方体状(例えば、縦横1.0mm〜1.5mm、深さ5μm)の凹部143が形成されている。凹部143の大きさは、錘接合部112a〜112eの最大変位量に相当する値や、所望の検出感度に応じて適宜設定(変更)することができる。
【0031】
枠部141は、その外周と内周が共に略正方形の枠状の基板である。枠部141の内周及び外周はフレーム部111の内周及び外周とする。底板部142は、外周が枠部141と略同一の略正方形の基板形状である。第1支持基板140に形成した凹部143は、錘接合部112が変位するための空間を確保するためである。
【0032】
底板部142上(第1支持基板140の下面)には、錘接合部112と対向するように駆動用電極144a、検出用電極144b〜144eが配置されている。駆動用電極144a、検出用電極144b〜144eは、いずれも導電性材料で構成することができる。駆動用電極144aは、例えば、略十字形状で、錘接合部112aに対向するように凹部143の中央部に形成されている。検出用電極144b〜144eは、それぞれ略正方形で、駆動用電極144aを4方向から囲み、それぞれ順に錘接合部112b〜112eと対向して配置されている。駆動用電極144aと検出用電極144b〜144eは、それぞれ離間している。
【0033】
駆動用電極144aには、貫通配線部P1と電気的に接続される配線L1が接続されている。検出用電極144b〜144eには、貫通配線部P3〜P6と電気的に接続される配線L3〜L6がそれぞれ接続されている。なお、配線L1,L3〜L6と貫通配線部P1,P3〜P6にそれぞれ付した符号の数字部分(1,3〜6)は、それぞれ相互の位置関係に対応させて同様の順序で付している。
【0034】
駆動用電極144a、検出用電極144b〜144e、及び配線L1,L3〜L6の構成材料には、例えば、Al等の金属材料を用いることができる。
【0035】
図3(B)は、第2支持基板150を上面(シリコン基板130の下面に対向する面)から見た平面図である。第2支持基板150は、外形が略正方形の基板である。シリコン基板130のフレーム部131は、第2支持基板150と接合されている。錘部132はフレーム部131よりも高さが低いため、第2支持基板150と接合されない。錘部132と第2支持基板150との間にギャップを確保し、錘部132の変位を可能にするためである。
【0036】
第2支持基板150の上面側には錘部132と対向するように駆動用電極154a、検出用電極154b〜154eが配置されている。駆動用電極154a、検出用電極154b〜154eは、いずれも導電性材料で構成することができる。駆動用電極154aは、例えば、十字形状で、錘部132aに対向するように第2支持基板150の上面の中央近傍に形成されている。検出用電極154b〜154eは、それぞれ略正方形で、駆動用電極154aを4方向(X軸正方向、X軸負方向、Y軸正方向、Y軸負方向)から囲み、それぞれ順に錘部132b〜132eに対向して配置される。駆動用電極154a、検出用電極154b〜154eは、それぞれ離間している。
【0037】
駆動用電極154aには、貫通配線部P2と電気的に接続される配線L2が接続されている。検出用電極154b〜154eには、貫通配線部P7〜P10と電気的に接続される配線L7〜10がそれぞれ接続されている。なお、配線L2,L7〜L10と貫通配線部P2,P7〜P10にそれぞれ付した符号の数字部分(2,7〜10)は、それぞれ相互の位置関係に対応させて同様の順序で付している。
【0038】
駆動用電極154a、検出用電極154b〜154e、及び配線L2,L7〜L10の構成材料には、例えば、Al等の金属材料を用いることができる。
【0039】
図3(C)は、第2支持基板150を下面(シリコン基板130の下面に対向しない面)から見た平面図である。第2支持基板150の下面には、第2支持基板150を貫通する配線用端子T(T1〜T11)が設けられており、物理量センサ100の外部(C−V変換回路など)と駆動用電極144a,154a、検出用電極144b〜144e,154b〜154eへの電気的接続を可能としている。
【0040】
配線用端子T11の上端(シリコン基板130の下面に対向する端部)は、フレーム部131の下面に接続され、錘接合部112および錘部132の電位を定義するために用いられる。配線用端子T1〜T10は、それぞれ貫通配線部P1〜P10と接続されている。なお、配線用端子T1〜T10と貫通配線部P1〜P10にそれぞれ付した符号の数字部分(1〜10)は、それぞれ相互の位置関係に対応させて同様の順序で付している。
【0041】
配線用端子T1〜T11は、例えば、Al等の金属膜がテーパ状の錐状貫通孔に形成されたものである。配線用端子T1〜T11は、外部回路(後述する図9)とワイヤボンディング等で接続するための接続端子として使用できる。
【0042】
図4を参照して、貫通配線部Pについて説明する。図4(A)は、貫通配線部Pを模式的に示す断面図である。図4(B)は、図4(A)の貫通配線部Pを下面側から見た平面図である。貫通配線部Pは、フレームを上下に貫通した貫通孔170を穿設した後、その貫通孔170の内壁側から順に絶縁層171、導電層172を積層して形成される。貫通配線部P1〜P10は、それぞれ電気的に独立させるため、絶縁層171はフレーム部111とフレーム部131の表面にも形成されている。また、絶縁層171はフレーム部111とフレーム部131の表面全体に形成してもよいし、接続される配線Lがフレーム部111とフレーム部131と接触する領域のみパターニング形成してもよい。図4(B)では絶縁層171をフレーム部111とフレーム部131の表面に形成し、その絶縁層171上に導電層172を形成している。フレームに第1支持基板140と第2支持基板150を接合する際に、フレーム部111とフレーム部131の表面に絶縁層171と導電層172を形成しておくことで配線Lとの電気的接続を容易にしている。
【0043】
なお、フレーム部111とフレーム部131の外周領域には、第1支持基板140と第2支持基板150を接合可能な材料からなる接合部材180を形成しておくことが好ましい。この接合部材180は、その高さ(フレーム部111上面又はフレーム部131下面からの高さ)を、フレーム部111とフレーム部131の表面に形成された絶縁層171と導電層172を含む高さと略等しく形成することが更に好ましい。このように接合部材180を形成することにより、フレームの上下面と、第1支持基板140の下面及び第2支持基板150の上面との間に形成されるセンサギャップの平行度が保持でき、かつフレームに対して第1支持基板140と第2支持基板150を接合した後の封止安定性を上げることができる。
【0044】
絶縁層171は、シリコン酸化物、シリコン窒化物等の無機絶縁層からなる。導電層172は、金属あるいは多結晶シリコン等の材料からなり、その材料は接合される第1支持基板140及び第2支持基板150の材料や接合方法等により適宜選択することが可能である。接合部材180は、金属あるいは多結晶シリコン等の材料からなり、その材料は接合される第1支持基板140及び第2支持基板150の材料や接合方法等により適宜選択することが可能である。接合部材180は、貫通配線部Pと略同様の層構成である場合には、貫通導通部Pと同時に形成して、エッチングによりパターニングして各々を分離することができ、製造上有利である。
【0045】
なお、導電層172は、図4(A)においては層として図示したが、導電層172を金属で形成する場合、導電層172を給電層として電解めっきにより導電材を貫通孔170に対して充填した構成であってもよい。
【0046】
<物理量センサの配線>
次に、物理量センサ100の配線及び電極について説明する。図5は、図1に示した物理量センサ100のA−A線から見た断面図であり、物理量センサ100における6組の容量素子を示す図である。図5では錘部が電極として機能する部分をハッチングで示している。なお、図5では6組の容量素子を図示しているが、上述の物理量センサ100には、図2(A)(B)に示したように10組の容量素子が形成される。
【0047】
10組の容量素子の一方の電極は、第1支持基板140に形成された駆動用電極144a及び検出用電極144b〜144eと、第2支持基板150に形成された駆動電極154a及び検出用電極154b〜154eである。これらの電極144a〜144e,154a〜154eに対向する電極は、錘接合部112aの上面に形成された駆動用電極Eと、錘接合部112b〜112eの上面にそれぞれ形成された検出用電極Eと、錘部132aの下面に形成された駆動用電極Eと、錘部132b〜132eの下面にそれぞれ形成された検出用電極Eである。
【0048】
上記容量素子の容量は、各電極間の距離に反比例する。本実施の形態では、錘接合部112の上面及び錘部132の下面に駆動用電極Eや検出用電極Eがあるものと考える。駆動用電極Eや検出用電極Eは、錘接合部112の上面や、錘部132の下面の表層に別体として形成されているわけではない。錘接合部112の上面や、錘部132の下面が駆動用電極Eや検出用電極Eとして機能すると捉えている。
【0049】
第1支持基板140に形成された駆動用電極144aと検出用電極144b〜144eは、それぞれ順に、配線L1,L3〜L6(図3(A)参照)を介して貫通配線部P1,P3〜P6(図2(A)参照)と電気的に接続されている。第2支持基板150に形成された駆動用電極154aと検出用電極154b〜154eは、それぞれ順に、配線L2,L7〜L10(図3(B)参照)を介して貫通配線部P2,P7〜P10(図2(A)参照)と電気的に接続されている。図5では、検出用電極144eが配線L1を介して貫通配線部P1と電気的に接続されている部分と、検出用電極154cが配線L2を介して貫通配線部P2と電気的に接続されている部分を示している。なお、図5では、貫通配線部P1,P2は貫通孔を導電材で充填した場合を示している。
【0050】
これらの駆動用電極144a,154aと、検出用電極144b〜144e,154b〜154eに対して外部と接続する配線は、貫通配線部P1〜P10の下面に接続すればよい。図3(C)に示した配線用端子T1〜T10は、それぞれ貫通配線部P1〜10が形成されたフレーム部131の下面に対向する位置に配置されている。図3(C)に示した配線用端子T11は、導通部160が形成された位置のフレーム部131の下面に対向する位置に配置されている。
【0051】
以上のように配線用端子T1〜T10は、それぞれ順に、貫通配線部P1〜10を介して駆動用電極144a,154a、検出用電極144b〜144e,154b〜154eと電気的に接続されている。
【0052】
駆動用電極Eと検出用電極Eは、錘接合部112の上面と錘部132の下面にそれぞれ形成されている。錘接合部112と錘部132は、導通部161を介して導通されており、いずれも導電性材料で構成されている。フレーム部131とフレーム部111は、導通部160を介して導通されており、いずれも導電性材料で構成されている。錘接合部112と可撓部113とフレーム部111は、導電性材料により一体的に構成されている。したがって、駆動用電極Eと検出用電極Eに対する配線は、フレーム部131の下面に接続すればよい。配線用端子T11は、導通部160と対向するフレーム部131の下面に配置されているため、駆動用電極E、検出用電極Eと電気的に接続されている。
【0053】
<物理量センサの動作>
上述したように、この物理量センサ100では、錘接合部112と錘部132(132a〜132e)が一体形成された錘部が、フレーム部111から延びる可撓性を有する可撓部113により支持され、第1支持基板140、第2支持基板150、半導体基板Wにより囲まれた空間内で変位できるように構成されている。
【0054】
物理量センサ100を加速度センサとして用いる場合は、加速度の作用に起因して生じる錘部の変位を検出すればよい。例えば、錘部に対して、X軸正方向の加速度が作用したとすると、この加速度に応じた外力により、錘部はX軸正方向に変位することになる。このときの変位量は作用する加速度の大きさに依存する。したがって、錘部のX軸、Y軸、Z軸方向の変位をそれぞれ検出すれば、各軸方向成分の加速度の値を求めることができる。物理量センサ100においては、各軸方向成分の加速度の値を、錘部と電極とで形成される容量素子の静電容量変化を検出することで検出が可能である。
【0055】
物理量センサ100を角速度センサとして用いる場合は、錘部132を駆動用電極により上下振動させ(一般に、交流電圧を印加し、単振動させる)、角速度の作用に起因して生じる錘部の変位を検出すればよい。例えば、錘部がZ軸方向に速度vzで移動しているときに角速度ωが印加されると錘部132にコリオリ力Fが作用する。具体的には、X軸方向の角速度ωxおよびY軸方向の角速度ωyそれぞれに応じて、Y軸方向のコリオリ力Fy(=2・m・vz・ωx)およびX軸方向のコリオリ力Fx(=2・m・vz・ωy)が錘部132に作用する(mは、錘部132の質量)。X軸方向の角速度ωxによるコリオリ力Fyが印加されると、錘接合部112にY方向への傾きが生じる。このように、角速度ωx,ωyに起因するコリオリ力Fy,Fxによって錘接合部112にY方向、X方向の傾き(変位)が生じる。したがって、錘部132の各軸方向の変位をそれぞれ検出すれば、各軸方向成分の角速度の値を求めることができる。物理量センサ100においては、各軸方向成分の角速度の値を、錘部132と各電極との間で形成される容量素子の静電容量変化を検出することで検出が可能である。
【0056】
図5において、駆動用電極144a,E間に電圧を印加すると、クーロン力によって駆動用電極144a,Eが互いに引き合い、錘部(錘接合部112と錘部132)はZ軸正方向に変位する。また、図5において、駆動用電極154a,E間に電圧を印加すると、クーロン力によって駆動用電極154a,Eが互いに引き合い、錘接合部112(錘部132も)はZ軸負方向に変位する。即ち、駆動用電極144a,E間、駆動用電極154a,E間に対して電圧印加を交互に行うことで、錘接合部112(錘部132も)はZ軸方向に振動する。この電圧の印加は正又は負の直流波形(非印加時も考慮するとパルス波形)、半波波形等を用いることができる。錘接合部112の振動の周期は電圧を切り換える周期で決定される。この切換の周期は錘接合部112の固有振動数にある程度近接していることが好ましい。錘部の固有振動数は、可撓部113の弾性力や錘部132の質量等で決定される。錘部に加えられる振動の周期が固有振動数に対応しないと、錘部に加えられた振動のエネルギーが発散されてエネルギー効率が低下する。なお、駆動用電極144a,E間、又は駆動用電極154a,E間のいずれか一方のみに、錘部の固有振動数の1/2の周波数の交流電圧を印加してもよい。
【0057】
一般に、角速度信号は数kHz以上であり、加速度信号は角速度信号よりも2桁以上低い周波数であるため、外部の信号処理回路において各々を識別することができる。すなわち、加速度、角速度は外部に設けた信号処理回路により、低周波数成分(あるいはバイアス成分)、振動周波数に追随する信号をそれぞれフィルタ回路で処理し、その処理後の各信号を検出することで、3軸(X,Y,Z)方向の加速度および2軸(X,Y)方向の角速度を検出することが可能である。すなわち、1つのセンサ素子である物理量センサ100を用いることにより、3軸(X,Y,Z)方向の加速度および2軸(X,Y)方向の角速度を検出することが可能である。また、物理量センサ100を加速度/角速度のみを検出するセンサとして用いることができる。本実施の形態に記載した物理量センサ100は、3軸(X,Y,Z)方向の加速度と、2軸まわり(X,Y)の角速度を検出することができる。なお、3軸方向の加速度を検出する場合には、前述の駆動電極144a,154aはZ軸方向の加速度を検出する検出用電極として機能するものとする。
【0058】
<物理量センサ100の製造方法>
以下、物理量センサ100の製造方法について図6(A)〜図6(D)と図7(A)〜(C)を参照しながら説明する。
(1)半導体基板Wの準備(図6(A)参照)
シリコン膜110、BOX層120、シリコン基板130を積層してなる半導体基板W(SOI基板)を用意する。上述したように、シリコン膜110は、フレーム部111、錘接合部112、可撓部113を構成する層である。BOX層120は、シリコン膜110とシリコン基板130とを接合する層であり、かつエッチングストッパ層として機能する層である。シリコン基板130は、フレーム部131、錘部132を構成する層である。半導体基板Wは、SIMOXないし、貼り合せ法等により作成される。
【0059】
(2)シリコン膜110の加工(図6(B)参照)
フレーム部111、錘接合部112、可撓部113、開口114、貫通孔170を加工するためのマスクを形成し、該マスクを介してシリコン膜110をエッチングすることにより、フレーム部111、錘接合部112、可撓部113、開口114を形成する。エッチング方法として、RIE(Reactive Ion Etching)法を用いることができる。
【0060】
(3)シリコン基板130の加工(図6(C)参照)
所定のマスクが形成されたシリコン基板130をエッチングすることにより、フレーム部131、錘部132、貫通孔170、ギャップ190それぞれの加工位置を決める開口を形成し、シリコン基板130を形成する。エッチング方法として、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)と呼ばれているエッチング方法を用いることができる。DRIEでは材料層を厚み方向に浸食しながら掘り進むエッチング工程と、掘った穴の側面にポリマーの壁を形成するデポジション工程とを交互に繰り返し、ほぼ厚み方向にのみ浸食を進ませることが可能になる。この場合、酸化シリコンとシリコンとでエッチング選択性を有するエッチング材料を用いればよい。例えば、エッチング段階では、SFガス、およびOガスの混合ガスを、デポジション段階では、Cガスを用いることが考えられる。
【0061】
(4)BOX層120の加工(図6(D)参照)
シリコン膜110とシリコン基板130に対して不要なBOX層120をエッチングする。これによりフレーム部111とフレーム部131の間と、錘接合部112と錘部132の間にのみ必要なBOX層120a,120b(図2(B)参照)が残される。エッチング方法として、バッファド弗酸(例えば、HF=5.5wt%、NHF=20wt%の混合水溶液)をエッチング液として用いるウェットエッチングを挙げることができる。また、CFガスとOガスとの混合ガスを用いたRIE法によるドライエッチングも適用可能である。
【0062】
(5)導通部160〜161の形成(図7(A)参照)
シリコン膜110とBOX層120bを貫通する開口114(図6(D)参照)に対して、例えば、Alを蒸着法やスパッタ法等により堆積させて、導通部160〜161を形成する。シリコン膜110の上面に堆積した不要な金属層(導通部160〜161の上端の縁(図示せず)の外側の金属層)はエッチングで除去する。
【0063】
(6)貫通配線部Pの形成(図4、図7(B)参照)
貫通配線部Pは、以下の1)〜2)によって行われる。
1)絶縁層171の形成
貫通孔170の内部および、シリコン膜110とシリコン基板130の各表面の所定領域に絶縁層171を形成する。絶縁層171としては、例えば、シリコン酸化物(SiO)、あるいはシリコン窒化物(Si)等を用いることができる。シリコン酸化物の場合には、熱酸化法、CVD(Chemiclal Vapaor Deposition)法を用いることができる。また、シリコン窒化物の場合にはCVD法を用いることができる。本実施の形態では、シリコン酸化物をCVD法により貫通孔170の内部および、シリコン膜110とシリコン基板130の各表面(上面と下面)に対して絶縁膜171を0.5μmの厚さで堆積させた(図4参照)。その後、シリコン膜110とシリコン基板130の各表面の不要な絶縁層171はドライフィルムレジストのマスクを用いたエッチングによりパターニング(除去)する。
【0064】
2)導電層172の形成(図4、図7(B)参照)
貫通孔170内部に導電性を有する導電層172を配設する場合、貫通孔170の内壁への成膜を考慮するとCVD(Chemical Vapaor Deposition)法あるいは電解めっき法を用いることが好ましい。例えば、CVD法により貫通孔170の内壁および、シリコン膜110とシリコン基板130の各表面に対して多結晶シリコン(Poly−Si)からなる導電層172を0.5μmの厚さで堆積させた(図4参照)。シリコン膜110とシリコン基板130の各表面(上面と下面)において導電層172が不要な部分(図示せず)についてはレジストなどにより保護しておき、貫通孔170に導電層172を形成した後、リフトオフして不要な導電層を除去する。導電層172としては、多結晶シリコン以外に、例えば、金属材料(Ti,Cuなど)を用いることができる。この場合、後の第1支持基板140と第2支持基板150との接点には多結晶シリコン、Al等を成膜しておく。以上の製造方法により、半導体基板Wには貫通配線部P(P1〜P10)が形成される。
【0065】
このときフレーム部111とフレーム部131の外周に沿って導電層と同様の材料により接合部材180(図4参照)を形成しておくことが好ましい。上述の製造方法では、シリコン膜110とシリコン基板130の各表面の外周領域の絶縁層、導電層をパターニングすることで接合部材180を形成できる。
【0066】
(7)第1支持基板140および第2支持基板150の接合(図7(C)参照)
第1支持基板140および第2支持基板150の接合は、以下の1)〜4)に示す工程により行われる。
【0067】
1)第1支持基板140の作成
第1支持基板140は、ガラス材料、半導体、金属材料、絶縁性樹脂材料のいずれかより構成される。第1支持基板140としてガラス材料を用いる場合について説明する。可動イオンを含むガラス基板(いわゆるパイレックス(登録商標)ガラス)を用いる。第1支持基板140をガラス材料から構成する場合、例えば、可動イオンを含むガラス基板をエッチングして凹部143を形成する。次いで、凹部143内の錘接合部112a〜112eにそれぞれ対向する位置に駆動用電極144a、検出用電極144b〜144e、及び配線L1,L3〜L6を、例えば、Alからなるパターンによって形成する(図3(A)参照)。
【0068】
2)第2支持基板150の作成
第2支持基板150としては、前述した第1支持基板140と略同様の材料を用いることができる。本実施の形態では、第2支持基板150としてガラス基板を用いた場合について説明する。可動イオンを含むガラス基板の錘部132a〜132eにそれぞれ対向する位置に、駆動用電極154a、検出用電極154b〜154e、及び配線L2、L8〜L11を、例えば、Alからなるパターンによって形成する(図3(B)参照)。また、第2支持基板150をエッチングあるいはサンドブラストして、配線用端子T1〜T11を形成するためのテーパ状の錐状貫通孔を貫通配線部P1〜P10及び導通部160にそれぞれ対応する位置に11個形成する(図7(C)、図3(C)参照)。
【0069】
3)半導体基板Wと第1支持基板140および第2支持基板150の接合
第1支持基板140および第2支持基板150と半導体基板Wとを、陽極接合により接合する。
【0070】
4)配線用端子T1〜T11の形成
第2支持基板150の上面及び錐状貫通孔内に、例えば、Cr層、Au層の順に金属層を蒸着法やスパッタ法等により形成する。不要な金属層(配線用端子T(T1〜T11)の上端の縁の外側の金属層)をエッチングにより除去し、配線用端子T1〜T11を形成する(図7(C)、図3(C)参照)。配線用端子T1〜T11は、半導体基板Wとの接合前に形成しておいてもよい。
【0071】
上述の製造方法によれば、半導体基板Wの加工後に、第1支持基板140および第2支持基板150との接合を行うため、製造工程においてSOI基板のままハンドリング可能である。このため、センサの内部に異物(レジスト、DRIE時のデポジション堆積物など)が残存しづらい。したがって、信頼性の高い物理量センサ100を提供することができる。
【0072】
(8)半導体基板W、第1支持基板140、第2支持基板150のダイシング
互いに接合された半導体基板W、第1支持基板140、及び第2支持基板150をダイシングソー等で切断し、個々の物理量センサ100に分離する。以上のように物理量センサ100が製造できる。
【0073】
以下、本実施の形態の変形例1〜3として、支持基板(第1支持基板140および第2支持基板150を含む)の材料を変更した場合について説明する。
【0074】
<変形例1>
支持基板として半導体材料を用いる場合について説明する。半導体材料としては半導体基板Wと略同様の材料であるシリコン基板を用いることが好ましい。シリコン基板(図示せず)の錘接合部112あるいは錘部132と対向する面に絶縁層(例えば、シリコン酸化物)を備えた基板を用いる。このシリコン基板と半導体基板Wとの接合は、プラズマ接合法等の直接接合法を用いることができる。あるいは、支持基板側には絶縁層上にCr,Au(もしくはAu−Sn,Ag−Sn)の順に、接合部材の一部を所定領域に形成する。センサ側(フレーム部111およびフレーム部131の表面に露出する導電層172上)には、Ti,Auの順に接合部材の一部を形成しておき、Au−Auなどのメタル接合を用いることにより、支持基板としてのシリコン基板と半導体基板Wとを接合することができる。
【0075】
支持基板としてシリコン基板を用いた場合には、ダイシングの際にブレードの交換を必要としない。すなわち、従来はダイシング対象となる層の材料によって適合するブレードを選択していたのに対して、本変形例1では同一ブレードにより一括でダイシングが可能である。したがって、生産効率が向上する。さらに、従来、層毎にブレードを選択する場合にはダイシングを行う順にブレード幅を広いものから狭いものとしなくてはならず、ウエハ多面付けで物理量センサ100を製造する場合にはダイシング領域の面積が不必要に多いものとなり、およそ30%程度を占め、面付け効率が良くない。本変形例1によれば、同一ブレードにより一括でダイシング可能であるため、ダイシング領域の面積を低減することができ、面付け能率を上げることができる。
【0076】
<変形例2>
支持基板として金属材料を用いる場合について説明する。金属材料としてはステンレス、インバーなどを用いることができる。金属板(図示せず)の錘接合部112あるいは錘部132と対向する面に絶縁層(例えば、絶縁性樹脂、シリコン酸化物)を備えた基板を用いる。この金属板と半導体基板Wとの接合はメタル接合を用いることができる。これはセンサ側(フレーム部111およびフレーム部131の表面に露出する導電層172上)に、例えば、Ti,Auの順に接合部材の一部を形成する。金属板側には絶縁層上にCr,Au(もしくはAu−Sn,Ag−Sn)の順に、接合部材の一部を所定の領域に形成する。次いで、センサ側のAuと、金属板側のAuとを接点にメタル接合を行う。支持基板として金属板を用いた場合には、材料強度の関係から50μm以下の厚みのものを用いることができ、センサの薄型化を図ることができる。なお、支持基板として金属材料を用いる場合は、配線用端子Tに相当する錐状貫通孔をエッチングなどにより穿設した後、錐状貫通孔内壁に絶縁層を形成する必要がある。
【0077】
<変形例3>
支持基板として絶縁性樹脂材料を用いる場合について説明する。絶縁性樹脂材料としてはポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などを用いることが好ましい。この支持基板と半導体基板Wとの接合はメタル接合を用いることができる。これはフレーム部111およびフレーム部131の表面に露出する導電層172上に、例えば、Ti,Auの順に接合部材の一部を形成する。絶縁樹脂基板側には絶縁層上にCr,Au(もしくはAu−Sn,Ag−Sn)の順に、接合部材の一部を所定の領域に形成する。次いで、センサ側のAuと、絶縁樹脂基板側のAuとを接点にメタル接合を行う。
【0078】
以上のように、物理量センサ100において、半導体基板Wのフレーム部111,131に貫通配線部P1〜P10を設けることにより、錘部132及び各電極144a〜144e,154a〜154e,Eの形成領域を干渉しないように配線L1〜L10を接続することも可能になる。このため、錘部132の体積を確保し、かつ錘部132のX,Y,Z軸方向の変位量も確保することができる。このため、センサ性能を低下させることなく、物理量センサ100の外形サイズの小型化を図ることができる。したがって、物理量センサ100全体の外形サイズは、従来の物理量センサ全体の外形サイズに比べて約1/4に小型化することができる。また、物理量センサ100を従来の物理量センサと外形サイズを等しくして錘部の容積を大きくした場合は、物理量センサとしての感度を向上させることができる。
【0079】
近年、物理量センサを電子機器へ搭載する場合に実装高さが課題となっている。しかし、本発明に係る物理量センサでは半導体基板Wを薄くした(錘部が薄くなった)としても、従来に比べて錘部の体積を大きくしており、薄型化したことによる感度低下を補うことができる。
【0080】
本発明の実施の形態に係る物理量センサ100は、例えば、IC等の能動素子を搭載する回路基板上に実装され、ワイヤボンディング接続等の周知の方法および材料によって配線用端子T(T1〜T11)と、電子回路基板もしくはIC等の能動素子とを接続することにより、物理量センサと電子回路とを1つの電子部品として提供することができる。この電子部品は、例えば、ゲーム機、携帯電話等のモバイル端末機に搭載されて市場に流通することが可能である。
【0081】
以下に、物理量センサ100により検出される加速度と角速度の各変位信号を処理する処理回路について説明する。
【0082】
<処理回路>
上記物理量センサ100により検出される加速度と角速度の変位信号を処理する各処理回路の構成例について図8を参照して説明する。
【0083】
図8は、物理量センサ100により検出される加速度及び角速度の変位信号を処理する処理回路300の回路構成を示す図である。図8において、処理回路300は、C−Vコンバータ301と、アンプ回路(Amp)302と、フィルタ回路303と、から構成される。
【0084】
C−Vコンバータ301は、印加される加速度及び角速度に応じて物理量センサ100から出力される各軸方向の各変位信号(静電容量変化)を電圧信号に変換してアンプ回路302に出力する。アンプ回路302は、C−Vコンバータ301から入力される電圧信号を所定の増幅率で増幅してフィルタ回路303に出力する。フィルタ回路303は、数kHz以上の信号成分を通過させるフィルタ機能を有する。フィルタ回路303は、アンプ回路302で増幅された電圧信号から数kHz以上の信号成分を通過させて、X軸方向とY軸方向の角速度検出信号として出力する。フィルタ回路303は、低周波数の信号成分をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の加速度検出信号として出力する。
【0085】
次に、上記物理量センサ100と処理回路300を実装した半導体装置とした例について説明する。なお、本明細書において半導体装置とは、半導体技術を利用して機能しうる装置全般を指し、電子部品および電子機器も半導体装置の範囲に含まれるものとする。
【0086】
図9は、上記物理量センサ100と処理回路300を実装した半導体装置として、例えば、センサモジュール400の一例を示す図である。図9において、センサモジュール400は、上記処理回路300を含む信号処理チップ401と、メモリチップ402と、上記物理量センサ100を含むセンサチップ403と、が基板404上に実装されている。各チップ401,402,403は、ボンディングワイヤ405により接続されている。メモリチップ402は、信号処理チップ401の制御用のプログラムやパラメータ等を記憶するメモリである。
【0087】
上記のようなセンサモジュール400を提供することにより、ゲーム機、携帯電話等のモバイル端末機への実装が容易になる。
【0088】
次に、図9に示したセンサモジュール400を電子機器として、例えば、モバイル端末機に実装した例について説明する。
【0089】
図10は、センサモジュール400を実装した携帯型情報端末500の一例を示す図である。図10において、携帯型情報端末500は、ディスプレイ部501と、キーボード部502と、から構成される。センサモジュール400は、キーボード部502の内部に実装されている。携帯型情報端末500は、その内部に各種プログラムを記憶し、各種プログラムにより通信処理や情報処理等を実行する機能を有する。この携帯型情報端末500では、センサモジュール400により検出される加速度や角速度をアプリケーションプログラムで利用することにより、例えば、落下時の加速度を検出して電源をオフさせる等の機能を付加することが可能になる。
【0090】
上記のようにセンサモジュール400をモバイル端末機に実装することにより、新たな機能を実現することができ、モバイル端末機の利便性や信頼性を向上させることが可能になる。
【符号の説明】
【0091】
100…物理量センサ、110…シリコン膜、111,131…フレーム部、112(112a〜112e)…錘接合部、113…可撓部、120…BOX層、130…シリコン基板、132(132a〜132e)…錘部、140…第1支持基板、144a,154a…駆動用電極、144b〜144e,154b〜154e…検出用電極、150…第2支持基板、160,161…導通部、170…貫通孔、171…絶縁層、172…導電層、180…接合部材、190…ギャップ、300…処理回路、400…センサモジュール、500…携帯型情報端末、L1,L2…(駆動用電極と接続する)配線、E…(錘部の)駆動用電極,検出用電極、L3〜L10…(検出用電極と接続する)配線、T1〜T11E…線用端子、P1〜P10…貫通配線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置された錘部と、前記錘部と前記フレーム部とを接続する可撓部と、を備えた半導体基板と、
前記フレーム部の一方の側に接合された第1支持基板と、
前記フレーム部の他方の側に接合された第2支持基板と、
前記第1支持基板と前記第2支持基板の少なくとも一方に設けられ、前記第1支持基板又は前記第2支持基板の一方の側と他方の側を導通する配線用端子と、
前記第1支持基板上に設けられ、前記錘部と対向する第1電極と、
前記第2支持基板上に設けられ、前記錘部と対向する第2電極と、を備え、
前記フレーム部には前記フレーム部の一方の側と他方の側を導通する貫通配線部が配設され、前記貫通配線部と前記配線用端子とは電気的に接続され、
前記フレーム部の両側のそれぞれの外周領域には、前記それぞれの外周に沿って、前記フレーム部と前記第1支持基板及び前記第2支持基板を接合可能な材料からなる接合部材が、形成されていることを特徴とする物理量センサ。
【請求項2】
前記貫通配線部は、前記フレーム部の一方の側と他方の側を貫通する貫通孔と、前記貫通孔の内壁面及び前記貫通孔の両側の開口周辺領域に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された導電層と、を備え、
前記導電層により前記貫通配線部と前記配線用端子とは電気的に接続されたことを特徴とする請求項1に記載の物理量センサ。
【請求項3】
半導体基板に、フレーム部と、前記フレーム部の内側に配置される錘部と、前記錘部と前記フレーム部とを接続する可撓部と、を形成し、
前記フレーム部の一部領域に、前記フレーム部の一方の側と他方の側を貫通する貫通孔を形成し、
前記貫通孔の内部及び前記貫通孔の開口周辺領域に絶縁層と、前記絶縁層上に配置される導電層とを形成し、前記フレーム部の一方の側と他方の側を導通する貫通配線部を形成し、
前記フレーム部の一方の側と接合される第1支持基板上に、第1電極と、前記第1電極と電気的に接続される配線を形成し、
前記フレーム部の他方の側と接合される第2支持基板上に、第2電極と、前記第2電極と電気的に接続される配線を形成し、
前記錘部と前記第1電極とを対向させて前記第1支持基板と前記フレーム部の一方の側とを接合し、
前記錘部と前記第2電極とを対向させて前記第2支持基板と前記フレーム部の他方の側とを接合し、
前記第1支持基板と前記第2支持基板の少なくとも一方に設けられ、前記第1支持基板又は前記第2支持基板の一方の側と他方の側を導通する配線用端子を形成し、
前記第1支持基板と前記第2支持基板に形成された前記配線を介して前記貫通配線部と前記配線用端子部とを電気的に接続し、
前記フレーム部の両側の外周領域には、前記外周に沿って、前記フレーム部と前記第1支持基板及び前記フレーム部をそれぞれ接合可能な材料からなる接合部材が、形成されていることを特徴とする物理量センサの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の物理量センサと、
前記物理量センサにより検出される物理量検出信号を処理する処理回路と、
を備えることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−15529(P2013−15529A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−189964(P2012−189964)
【出願日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【分割の表示】特願2008−243385(P2008−243385)の分割
【原出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】