説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】本発明の目的は、現像容器内に二成分現像剤を補給し、現像容器内から余剰現像剤を排出させる現像装置において、搬送スクリューの回転速度を上げることなく、現像容器内の現像剤の量に安定的に維持することである。
【解決手段】キャリアとトナーを含む現像剤を収容し前記現像剤の循環経路を構成する現像室2eと攪拌室2fとに仕切られた現像容器2と、前記現像室2e内の現像剤を担持して搬送する現像スリーブ3と、前記現像容器2への現像剤の補給に伴う余剰現像剤を前記現像容器2から排出するための排出口2dと、前記現像容器2内の現像剤を攪拌しながら循環搬送するための搬送スクリュー2a,2bと、を有する現像装置1であって、前記排出口2dに隣接する搬送スクリュー2bは、螺旋状の羽根22を複数条(羽根22A,22B,22C)有する多条スクリューであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアとトナーのニ成分からなる現像剤を用いる現像装置に関し、特に現像剤の補給に伴う余剰現像剤を排出する現像装置及びこの現像装置を有する複写機、プリンタ、FAX等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乾式現像方式において、非磁性トナーと磁性キャリアとを混合して現像剤として使用する二成分現像方式が広く利用されている。
【0003】
二成分現像方式は現在提案されている他の現像方式と比較して、画質の安定性や装置の耐久性などの長所を備えている一方、長期使用による現像剤の劣化、特にキャリアの劣化が不可避であった。
【0004】
そこでキャリアとトナーの二成分からなる現像剤を現像容器内に補給して帯電性能の低下した劣化現像剤を現像容器より排出し、帯電性能の低下を抑制できるようにした現像装置が提案されている。
【0005】
たとえば特許文献1によると、消費されるトナーの補給とは別に新しいキャリアを現像容器内に補給している。更に補給に伴う現像容器内の余剰現像剤を、現像容器に設けた排出口から排出し、現像容器内の現像剤の量を一定に保つようにしている。このようにキャリアを含む現像剤の補給と余剰現像剤の排出が繰り返し行われることによって現像容器内の新旧現像剤の置換が行われていく。これにより現像剤の帯電性能を維持し、画質の低下を抑えるようにしている。
【0006】
【特許文献1】特公平2−21591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の現像装置では、図3に示すように、現像容器内の現像剤が、回転軸21に螺旋状の羽根22が設けられた搬送スクリューによって攪拌しながら搬送されている。このため、現像容器内の現像剤の剤面(上面)は、搬送スクリューの螺旋状の羽根22の形状に起因し、波状の凹凸を形成する。この剤面の凹凸間の高さの差(以下、凹凸差という)は、温湿度や現像剤の劣化状態が変動して現像剤の流動性が変動すると、これに伴って変化する。例えば、現像剤の流動性が高くなると剤面の凹凸差は小さくなり、流動性が低くなると剤面の凹凸差は大きくなる。この剤面の凹凸の高さを平均した平均剤面高さが、現像容器内の現像剤の総量を決定する要因となるが、現像容器内の現像剤の剤面の上限は排出口2dの位置で規定されている。このため、剤面の凹凸差が小さい場合に比べて、凹凸差が大きい場合の方が、現像容器内の現像剤が排出口2dから排出された際の剤面の凹凸差の変動が大きくなる。よって現像剤の剤面の凹凸差が大きい場合の方が、現像容器内の現像剤の総量の変動も大きくなる。現像容器内の現像剤の総量の変動が大きいと、その変動に倣って現像容器内におけるトナーへの帯電性能が大きく変化するため、現像装置における現像性能が不安定になってしまうという問題がある。従って、剤面の凹凸差が大きい程、現像装置の現像性能が不安定になり易くなる。
【0008】
一方、前述した現像容器内の現像剤の剤面の凹凸差を小さくするために、搬送スクリューの羽根22のピッチLを小さくすることが考えられる。しかしながら、搬送スクリューのピッチを小さくするだけでは、搬送スクリューの1回転あたりの現像剤の搬送量が低下してしまう。このため、搬送スクリューのピッチを小さくしても、現像剤の搬送量を低下させないようにする(例えばピッチを小さくする前と同量の現像剤を搬送する)には、搬送スクリューの回転を速くしなければならない。しかし、搬送スクリューの回転を高速にすると、搬送スクリューの軸受部との摩擦のために現像装置内の昇温につながり、軸受部にトナーが融着するなどして搬送スクリューがロックしてしまう恐れがある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、現像容器内に二成分現像剤を補給し、現像容器内から余剰現像剤を排出させる現像装置において、搬送スクリューの回転速度を上げることなく、現像容器内の現像剤の量に安定的に維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、キャリアとトナーを含む現像剤を収容し前記現像剤の循環経路を構成する現像室と攪拌室とに仕切られた現像容器と、前記現像室内の現像剤を担持して搬送する現像剤担持体と、前記現像容器への現像剤の補給に伴う余剰現像剤を前記現像容器から排出するための排出口と、前記現像容器内の現像剤を攪拌しながら循環搬送するための搬送部材と、を有する現像装置であって、前記排出口に隣接する搬送部材は、螺旋状の羽根を複数条有する多条スクリューであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、現像容器内の現像剤の流動性が変化しても、搬送部材の回転速度を上げることなく、現像容器内の現像剤の量を安定的に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。従って、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係る現像装置を有する画像形成装置について説明する。
【0014】
まず、図5を用いて、画像形成装置全体の動作について説明する。画像形成装置は、像担持体として、ドラム状の電子写真感光体(以下、感光ドラムという)128を有する。感光ドラム128はその表面が帯電器121によって帯電される。帯電された感光ドラム128の表面をレーザ122によって露光することで、感光ドラム128上に静電潜像が形成される。この潜像を現像装置1によって現像することで感光ドラム128上に現像剤像(トナー像)が形成される。
【0015】
このトナー像は、転写帯電器123による転写バイアスによって、転写ベルト124によって搬送される記録紙(記録媒体)127に転写される。トナー像が転写された記録紙127は転写ベルト124から剥離され、定着器125によって加圧及び加熱され、永久画像を得る。なお、転写後に感光ドラム128上に残ったトナーはクリーナ126により除去され、次の画像形成に備える。
【0016】
次に図1を用いて、現像装置1について詳しく説明する。
【0017】
現像装置1は、非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤を収容する現像容器2を有している。ここでは、現像容器2に収容された二成分現像剤の混合比は重量比でおよそ1:9程度となっている。この比はトナーの帯電量、キャリアの粒径、画像形成装置の構成などで適正に調整されるべきものであって、必ずしもこの数値に限定されるものではない。
【0018】
現像装置1は、感光ドラム128に対向した現像領域が開口しており、この開口部に一部露出するようにして現像剤担持体である現像スリーブ3が回転可能に配置されている。現像スリーブ3は、非磁性材料で構成され、磁界発生手段である固定のマグネットローラ4を内包している。現像スリーブ3は、現像動作時には図1の矢印方向に回転し、現像容器2内の二成分現像剤を層状に保持して感光ドラム128と対向する現像領域に搬送し、感光ドラム128に形成されている静電潜像を現像する。静電潜像を現像した後の現像剤は、現像スリーブ3の回転にしたがって搬送され、現像容器2内に回収される。なお、現像スリーブ3に保持された二成分現像剤は、規制ブレード2hによって層厚が規制されて現像領域に搬送される。
【0019】
現像容器2は、隔壁2gによって現像室と撹拌室とに仕切られ、現像剤の循環経路を構成している。現像容器2において、現像スリーブ3に近い側が現像室2eであり、遠い側が攪拌室2fである。前記現像スリーブ3は現像室内の現像剤を担持して搬送する。現像室2eには、第一の搬送部材である第一搬送スクリュー2aが配置されている。攪拌室2fには、第二の搬送部材である第二搬送スクリュー2bが配置されている。現像容器2内の現像剤は、第一搬送スクリュー2a及び第二搬送スクリュー2bにより混合撹拌されながら、現像容器2内を循環搬送される。ここでは、現像剤は、現像室2e側では第一搬送スクリュー2aによって図1の手前側から奥側に搬送され、攪拌室2f側では第二搬送スクリュー2bによって図1の奥側から手前側に搬送されて、現像容器2内を循環搬送される。
【0020】
この現像容器2には、現像剤カートリッジ5の補給容器5aからトナーとキャリアを含んだ二成分現像剤が適宜補給される。この補給現像剤のトナー及びキャリアの混合比は、重量比で9:1程度であるが、特にこの数値に限定されるものではない。即ち補給現像剤は、現像容器2内の二成分現像剤の混合比に対してトナー量が圧倒的に多く、画像形成によって消費されたトナーを補う際に、微量のキャリアを徐々に補給していくことになる。
【0021】
補給される現像剤のキャリアの比が多くなれば同じ量のトナー補給でキャリアの入れ替わり量が多くなり、現像装置1内の二成分現像剤はフレッシュな状態に近づくが、その分キャリアの消費量が多くなる。このため、それぞれの装置において適当な混合比を別途定めるのが好ましい。
【0022】
画像形成によるトナーの消費とトナー補給量制御手段(不図示)による現像剤の補給を繰り返すと、現像容器2内にはトナー補給時に共に補給されたキャリアが増加する。二成分現像剤のトナー濃度はトナー補給量制御手段によって略一定に保たれているので、現像容器2内の現像剤量が増加することになる。この現像容器2内において過剰になった二成分現像剤は、現像容器2の攪拌室2fに設けられた現像剤排出口2dから排出され、補給容器5aと一体化された回収容器5bに回収される。
【0023】
ここで、現像剤の補給と、現像剤の回収について詳しく説明する。
【0024】
図1に示すように、補給トナー及びキャリアが収容された補給容器5aと現像容器2内の過剰現像剤(余剰現像剤)を回収するための回収容器5bとは、一体化されて現像剤カートリッジ5を構成している。
【0025】
現像剤カートリッジ5は、図2に示すように、補給容器部分である略円筒形の補給現像剤収容部5aと、回収容器部分である回収現像剤収容部5bとで構成され、画像形成装置本体から容易に脱着可能である。
【0026】
現像剤カートリッジ5を画像形成装置に手前側から挿入すると、シャッター機構6dがスライドして、現像容器2側の現像剤排出口2dと対向する現像剤回収口6bが開口する。更に現像剤カートリッジ5の手前側の把手5cを右側にひねることで、回収現像剤収容部5bが画像形成装置本体に固定されたまま補給現像剤収容部5aが回転し、現像容器2側の現像剤補給口2iと連絡した現像剤補給口6aが開口する。
【0027】
尚、現像剤カートリッジ5を画像形成装置から離脱する際には把手5cを左側にひねることで両補給口6a,2iが閉じ、内包する粉体(現像剤)が外部にもれることはない。
【0028】
また、補給現像剤収容部5a内には、現像剤を攪拌するための攪拌部材7が内蔵されている。攪拌部材7は樹脂フィルムなどを螺旋状にしたものを剛体の軸で回転駆動するようにしたものである。攪拌部材7は、適宜回転することで補給現像剤収容部5a内の現像剤を攪拌し、又、現像剤の補給を補助する。
【0029】
画像形成によって現像容器2内のトナーが消費されると、その消費された分に応じて現像剤カートリッジ5から現像剤が補給される。補給現像剤収容部5a内の現像剤は、攪拌部材7の回転力によって現像剤補給口6aから、現像容器2の現像剤補給口2iに配設された補給スクリュー8へと搬送され、補給スクリュー8の回転に従い現像容器2内の攪拌室2f側に補給される。このようにして、現像剤カートリッジ5から現像装置1に補給現像剤が補給される。
【0030】
また、トナー(及びキャリア)の補給量は補給スクリュー8の回転数によっておおよそ定められるが、この回転数はトナー補給量制御手段によって定められる。トナー補給量制御の方法としては、二成分現像剤のトナー濃度を光学的あるいは磁気的に検知する方法や、感光ドラム128上の基準潜像を現像してそのトナー像の濃度を検知する方法など様々な方法があり、いずれかの方法を適宜選択することが可能である。
【0031】
画像形成によるトナーの消費とトナー補給量制御手段による現像剤の補給によって、過剰になった現像容器2内の二成分現像剤は、攪拌室2f側に設けられた現像剤排出口2dから排出され、現像剤回収口6bから回収現像剤収容部5bへ回収される。
【0032】
図2に示すように、現像剤補給口6a及び現像容器2の現像剤補給口2iは、現像剤カートリッジ5の挿入方向で現像容器2の軸方向奥側寄りにあり、現像剤回収口6b及び現像容器2の現像剤排出口2dは現像剤補給口6aよりも更に奥側に位置する。即ち、現像容器2の攪拌室2f側に設けられた現像剤排出口2dは、現像容器2内の現像剤の循環方向において、現像剤補給口2iの上流側に位置している。現像剤補給口2iから現像容器2に補給されたフレッシュなキャリアを含む現像剤は、攪拌室2fに循環されてきた現像剤と混合攪拌されながら攪拌室2fを奥側から手前側に搬送されて現像室2eに至る。現像室2eに循環されてきた現像剤は、現像室2fを手前側から奥側に搬送されながら現像スリーブ3に供給され、再び攪拌室2fに至る。攪拌室2fに循環されてきた現像剤のうち、余剰現像剤は現像剤排出口2dから排出され、それ以外の現像剤は前述の経路を再び循環される。現像剤排出口2dから排出された余剰現像剤は、現像剤回収口6bから回収現像剤収容部5bに回収される。回収現像剤収容部5bに回収された現像剤は大半が現像装置1内で画像形成を繰り返した古いキャリアを含む現像剤である。このようにして現像容器2内の二成分現像剤の入れ替えが徐々に行われる。
【0033】
ここで、図3及び図4を用いて、排出口に隣接する第二搬送スクリュー2bによる現像剤の剤面(上面)の変化について説明する。
【0034】
図3及び図4は、現像装置1の現像剤排出口2d付近を攪拌室2f側から見た模式図である。図3に示す搬送スクリューは、比較例としての搬送スクリューであり、螺旋状の羽根が1条の単条スクリューである。図4に示す搬送スクリューは、本実施形態に係る搬送スクリューであり、螺旋状の羽根が複数条の多条スクリューとして、ここでは螺旋状の羽根が3条の多条スクリューを例示している。
【0035】
まず図3に示す単条スクリューについて説明する。図3に示す第二搬送スクリュー2bの羽根22は、回転軸21の軸方向の間隔がピッチLの螺旋形状をしている。したがって、この搬送スクリューが1回転すると、現像剤は前記羽根22のピッチL分だけ軸方向に搬送される。この現像容器2内における現像剤の剤面(上面)は、図3に示すように、羽根22の部分が凸形状になり、羽根22,22間は凹形状になる。すなわち、現像剤の剤面は、凸形状の間のピッチもLとなる波状の凹凸形状になる。
【0036】
この図3に示す搬送スクリュー2bによる現像剤の剤面の凹凸形状は、温湿度や現像剤の劣化状態が変動して現像剤の流動性が変動すると、これに伴って変化する。例えば、現像剤の流動性が高くなると剤面の凹凸差は小さくなり、流動性が低くなると剤面の凹凸差は大きくなる。この剤面の凹凸の高さを平均した平均剤面高さが、現像容器内の現像剤の総量を決定する要因となるが、現像容器内の現像剤の剤面の上限は排出口2dの位置で規定されている。このため、剤面の凹凸差が小さい場合に比べて、凹凸差が大きい場合の方が、現像容器内の現像剤が排出口2dから排出された際の剤面の凹凸差の変動が大きくなる。よって現像剤の剤面の凹凸差が大きい場合の方が、現像容器内の現像剤の総量の変動も大きくなる。現像容器内の現像剤の総量の変動が大きいと、その変動に倣って現像容器内におけるトナーへの帯電性能が大きく変化するため、現像装置における現像性能が不安定になってしまうという問題がある。従って、剤面の凹凸差が大きい程、現像装置の現像性能が不安定になり易くなる。
【0037】
一方、前述した現像容器内の現像剤の剤面の凹凸差を小さくするだけならば、搬送スクリュー2bの羽根22のピッチLを小さくすれば良い。しかしながら、搬送スクリュー2bのピッチを小さくするだけでは、搬送スクリュー2bの1回転あたりの現像剤の搬送量が低下してしまう。このため、搬送スクリュー2bのピッチを小さくしても、現像剤の搬送量を低下させないようにする(例えばピッチを小さくする前と同量の現像剤を搬送する)には、搬送スクリュー2bの回転を速くしなければならない。しかし、搬送スクリューの回転を高速にすると、搬送スクリューの軸受部との摩擦のために現像装置内の昇温につながり、軸受部にトナーが融着するなどして搬送スクリューがロックしてしまう恐れがある。
【0038】
そこで、本実施形態では前述したように、排出口2dに隣接する第二搬送スクリュー2bを、螺旋状の羽根22を複数条有する多条スクリューとしている。これにより、現像容器内の現像剤の流動性が変化しても、搬送スクリューの回転速度を上げることなく、現像容器内の現像剤の量を安定的に維持することができる。なお、本実施形態の第一搬送スクリュー2aは、単条の通常のスクリューを用いているが、多条スクリューにしても良い。
【0039】
図4に示すように、本実施形態では、排出口2dに隣接する第二搬送スクリュー2bは、回転軸21に3条の螺旋状の羽根22A,22B,22Cが設けられている。各羽根22A,22B,22Cのピッチは、図3に示す搬送スクリュー21の羽根22のピッチLと同様になっているが、各羽根のピッチ間には他の2条の羽根が一定の間隔で設けられている。すなわち、羽根22A,22A間には羽根22B,22Cが、羽根22B,22B間には羽根22C,22Aが、羽根22C,22C間には羽根22A,22Bが一定の設けられている。このため、隣接する羽根22A,22B,22C間のピッチは単条スクリューの同ピッチに比べてL/3となる。よって、図4に示す多条スクリューによる現像剤の剤面(上面)の凹凸差を、図3に示す単条スクリューに比べて、1/3にすることができる。このように、螺旋状の羽根を複数条有する多条スクリューを用いることで、現像剤の剤面をほぼ平らな状態にすることができる。
【0040】
上述したように、排出口2dに隣接する第二搬送スクリューの螺旋状の羽根を多条にすることで、現像容器2内の現像剤の流動性が変化しても、搬送スクリューの回転速度を上げることなく、現像容器2内の現像剤の量を安定的に維持することができる。よって、現像容器内の現像剤の総量が大きく変動することによるトナーへの帯電性能の変化を抑止することができ、現像装置における現像性能が安定する。
【0041】
〔第2実施形態〕
次に図6及び図7を用いて第2実施形態に係る現像装置について説明する。なお、画像形成装置全体の概略構成は前述した実施形態と同様であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0042】
本実施形態に係る現像装置は、図6及び図7に示すように、現像剤の循環経路を構成する現像室2eと攪拌室2fが隔壁2gによって上下に仕切られた現像容器2を有している。そして、現像剤排出口2dが攪拌室2fの上部に設けられた現像室2eの現像剤搬送方向下流側に設けられた構成となっている。以下、詳しく説明する。なお、前述した実施形態と同等の機能を有する部材には同一の符号を付して説明する。
【0043】
図6は、第2実施形態における現像装置1の鉛直方向で切断した模式的断面図である。
【0044】
現像室2e及び攪拌室2fには、現像剤を攪拌しながら循環搬送するための搬送部材として、第一搬送スクリュー2a及び第二搬送スクリュー2bがそれぞれ配置されている。
【0045】
また現像剤排出口2dが隣接する第一搬送スクリュー2aは、螺旋状の羽根22を複数条有する多条スクリューとなっている。ここでは、2条の羽根22A,22Bを有する多条スクリューを例示している。図7に示すように、第一搬送スクリュー2aは、螺旋状の羽根の巻き方向を、第二搬送スクリュー2bとは逆向きにしたスクリュー構造となっている。第一搬送スクリュー2aは、現像室2f内の底部に設けられ、攪拌室2f内に設けられた第二搬送スクリュー2bとほぼ平行に配設されている。第一搬送スクリュー2aは、第二搬送スクリュー2bと同方向に回転して現像室2e内の現像剤を第二搬送スクリュー2bとは反対方向に搬送する。
【0046】
このようにして、第一及び第二搬送スクリュー2a,2bの回転による搬送によって、現像剤が、隔壁2gの現像剤搬送方向で両端部に設けられた開口部(連通部)11,12を通じて、現像室2eと攪拌室2fとの間で循環される。
【0047】
上部の現像室2e内において、第一搬送スクリュー2aは、下部の攪拌室2fより搬送されてくる現像剤を、循環搬送しながら現像スリーブ3に供給する。そして、現像スリーブ3に供給されなかった現像剤は循環搬送されて、連通部12から再び攪拌室2eに搬送される。
【0048】
現像室2eより規制ブレード2hの規制を受けて現像スリーブ3に供給された現像剤は、感光ドラム128との対向部である現像領域に搬送される。そして、現像領域を通過後、現像に供されなかった現像剤を現像スリーブ3の回転によって攪拌室2fに戻す。
【0049】
また、下部の攪拌室2f内において、第二搬送スクリュー2bは、現像剤カートリッジ5より現像剤補給口(不図示)を通って攪拌室2f内の現像剤搬送方向上流側に供給される現像剤を攪拌しながら搬送する。更に第二搬送スクリュー2bは、連通部12を通過して現像室2eより搬送されてくる現像剤と、現像スリーブ3より搬送されてくる現像後の現像剤も攪拌しながら搬送し、現像剤のトナー濃度を均一化して現像室2eに搬送する。
【0050】
このように、本実施形態に係る現像装置1では、現像室2eにて現像スリーブ3への現像剤の供給を行い、攪拌室2eにて現像スリーブ3からの現像剤の回収を行う。そして、現像室2e、攪拌室2fにおける現像剤循環方向(現像剤搬送方向)に対して、現像スリーブ3への現像剤の供給や回収といった動作を行う領域を画像領域とする。
【0051】
つまり、現像スリーブ3に担持されて現像領域に搬送され、現像に供された後、現像領域において現像に供されないで残った現像剤は、現像スリーブ3の回転に伴って現像室2e側ではなく、攪拌室2f側に回収される。このため、現像室2e内には常に攪拌室2fで十分攪拌された現像剤のみが存在する。
【0052】
よって、現像スリーブ3には常に均一な濃度の現像剤が供給され、スラスト方向の画像ムラや濃度差のない均一な画像を得ることができる。
【0053】
上述したように、現像装置1は、現像室2eと攪拌室2fとが鉛直方向上下に配置されている。このため、現像剤は現像室2eから攪拌室2fへは上から下へ落下され、攪拌室2fから現像室2eへは端部に溜まった現像剤の圧力により下から上へと押し上げられる。現像装置1は、このようにして現像剤が現像容器2内を循環搬送されるものである。
【0054】
従って、図7に示すように現像剤が攪拌室2fから現像室2eへ受け渡された後に、現像室2eにおいては、そのまま第一搬送スクリュー2aの軸方向に搬送されるものと、途中で現像スリーブ3に供給され、現像領域を通過後攪拌室2eに回収される成分が存在する。この現像スリーブ3への現像剤の受け渡しが画像領域のほぼ全体にわたってなされる。このため、現像室2e内において第一搬送スクリュー2aにより搬送される現像剤の量は、上流端から下流端に行くに従い減少し、現像装置1内の現像剤の分布には片寄りが存在しやすくコート不良といった問題を生じやすい。
【0055】
このような片寄りを軽減させるためには、現像スリーブ3が現像室2eから攪拌室2fに現像剤を送る量より、第一搬送スクリュー2aによって搬送される現像剤の量が多いほど良い。
【0056】
第一搬送スクリュー2aによる現像剤の搬送量を多くするためには、搬送スクリューのピッチを大きくしたり、回転数を上げることが考えられる。しかし、この場合、前述したように、搬送スクリューのピッチを大きくするだけでは、現像容器内の現像剤の総量の変動が大きくなり、また搬送スクリューの回転数を上げると、摩擦による装置内が昇温してしまう。
【0057】
そこで、本実施形態では、前述したように、現像室2e内において第一搬送スクリュー2aは、2条の螺旋状の羽根22A,22Bを有する多条スクリューとしている。これにより、各羽根のピッチを大きくして、搬送スクリューによる現像剤の搬送量を多くすることができる。更に、各羽根のピッチ間に他の羽根が配置されて隣接する羽根の間の間隔を小さくして、搬送スクリューの回転速度を上げることなく、現像容器内の現像剤の量を安定的に維持することもできる。なお、本実施形態の第二搬送スクリュー2bは、単条の通常のスクリューを用いているが、多条スクリューにしても良い。
【0058】
〔他の実施形態〕
前述した実施形態では、1つの像担持体に対して1つの現像装置で現像を行う画像形成装置を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、1つの像担持体に対して複数の現像装置で現像を行う画像形成装置や、1つの像担持体に対して1つの現像装置で現像を行う画像形成部を複数有する画像形成装置など、その他の画像形成装置であっても良い。これらの画像形成装置における現像装置に本発明を適用しても同様の効果を得ることができる。
【0059】
また前述した実施形態では、螺旋状の羽根を複数条有する多条スクリューとして、3条の多条スクリューと、2条の多条スクリューを例示したが、螺旋状の羽根の数は適宜設定すれば良く、これらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1実施形態に係る現像装置、補給容器及び回収容器を示す断面図である。
【図2】第1実施形態に係る補給容器及び回収容器を示す斜視図である。
【図3】比較例に係る現像容器の現像剤面を示す模式断面図である。
【図4】第1実施形態に係る現像容器(攪拌室)の現像剤面を示す模式断面図である。
【図5】第1実施形態に係る現像装置を有する画像形成装置を示す模式断面図である。
【図6】第2実施形態に係る現像装置、補給カートリッジを示す模式断面図である。
【図7】第2実施形態に係る現像容器の現像剤面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 …現像装置
2 …現像容器
2a …第一搬送スクリュー
2b …第二搬送スクリュー
2d …現像剤排出口
2e …現像室
2f …攪拌室
2g …隔壁
2h …規制ブレード
2i …現像剤補給口
3 …現像スリーブ
4 …マグネットローラ
5 …現像剤カートリッジ
5a …補給容器
5b …回収容器
6a …現像剤補給口
6b …現像剤回収口
21 …回転軸
22 …羽根
128 …感光ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアとトナーを含む現像剤を収容し前記現像剤の循環経路を構成する現像室と攪拌室とに仕切られた現像容器と、前記現像室内の現像剤を担持して搬送する現像剤担持体と、前記現像容器への現像剤の補給に伴う余剰現像剤を前記現像容器から排出するための排出口と、前記現像容器内の現像剤を攪拌しながら循環搬送するための搬送部材と、を有する現像装置であって、
前記排出口に隣接する搬送部材は、螺旋状の羽根を複数条有する多条スクリューであることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記排出口が前記攪拌室に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記排出口が前記攪拌室の上部に設けられた前記現像室の現像剤搬送方向下流側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項4】
像担持体と、前記像担持体に現像剤を用いて像を形成する現像装置と、を有する画像形成装置であって、
前記現像装置として、請求項1から3のいずれか1項に記載の現像装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−86180(P2009−86180A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254430(P2007−254430)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】