説明

画像形成装置、ジャム発生時の用紙搬送制御方法及び同制御プログラム

【課題】ジャム処理する使用者の手等が用紙上の未定着トナ−で汚れたりするのを防止でき、面倒な操作も不要で使いやすい画像形成装置等を提供する。
【解決手段】トナー画像を作成する作像手段2、作像手段により作成されたトナー画像を用紙供給手段7から搬送・供給された用紙Mに転写する転写手段3と、用紙上に転写されたトナー画像を該用紙に定着させる定着手段4、搬送中の用紙の紙詰まりを検出するジャム検出手段46を備える。ジャム検出時に、転写手段3に未定着トナー像Tの転写用紙Mが存在する場合、制御手段6は、用紙M上のトナー像後端位置Teが定着手段4に進入するタイミングまで待って前記定着手段4での用紙搬送を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば複写機、プリンタあるいは複写機能、プリンタ機能、ファクシミリ機能等の複数の機能を有する多機能デジタル複合機であるMFP(Multi Function Peripherals) 等に適用される画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のような画像形成装置では、ジャムが発生すると、搬送中の全ての用紙を直ちに停止するようにした技術が知られている。また、ジャム発生時に、ジャム用紙とジャム用紙よりも上流にある用紙の搬送を直ちに停止し、ジャム用紙よりも下流の用紙については、画像形成動作を継続してから停止させるようにした技術も知られている。
【0003】
また、従来、プレ定着ローラを備え、ジャムが発生した際に、未定着トナーが存在する状態で停止した用紙については、ハンドルを回転操作してプレ定着ローラの下流へ用紙を移送させて定着させるようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−110722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ジャム発生時に、搬送中の全ての用紙を直ちに停止させる装置では、転写部から定着部まで搬送中の用紙も直ちに停止されので、この位置で停止した用紙には未定着トナー像が付着しており、作業者がジャム処理を行う際、未定着トナー像により手や衣服を汚すおそれがあり、また、機内に未定着トナー像を付着させて印刷物を汚してしまうおそれもある。
【0005】
また、ジャム発生時に、ジャム用紙とジャム用紙よりも上流にある用紙の搬送を直ちに停止し、ジャム用紙よりも下流の用紙については、画像形成動作を継続してから停止させるようにした装置では、転写部から定着部にかけての位置、あるいは定着部の下流側でジャムが発生してしまうと、ジャム用紙と上流の用紙を直ちに停止させるため、やはり、未定着トナー像により手や衣服を汚すおそれがあるというような問題がある。
【0006】
一方、ジャム停止した際に、ハンドル操作で未定着用紙をプレ定着ローラに移送して定着させる技術においては、わざわざハンドル操作をしなければならず面倒である。
【0007】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ジャム処理する使用者の手等が用紙上の未定着トナ−で汚れたりするのを防止でき、使い勝手も向上できる画像形成装置及びジャム発生時の用紙搬送制御方法を提供し、さらには前記制御方法を画像形成装置のコンピュータに実行させるためのジャム発生時の用紙搬送制御プログラムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。
(1)トナー画像を作成する作像手段と、前記作像手段により作成されたトナー画像を用紙供給手段から搬送・供給された用紙に転写する転写手段と、前記用紙上に転写されたトナー画像を該用紙に定着させる定着手段と、搬送中の用紙の紙詰まりを検出するジャム検出手段と、ジャム検出時に、前記転写手段に未定着トナー像の転写用紙が存在する場合、用紙上のトナー像後端位置が前記定着手段に進入するタイミングまで待って前記定着手段での用紙搬送を停止させる制御手段と、を備えていることを特徴とする画像形成装置。
(2)前記定着手段における定着ローラへの用紙巻き付きを検出するセンサを該定着手段の下流側に備え、ジャム検出時に、前記センサにより前記定着ローラへの用紙巻き付きが検出されると、前記制御手段は、用紙上のトナー像後端位置から用紙後端までの距離が所定長さ以上である場合に、用紙上のトナー像後端位置が前記定着手段に進入するタイミングまで待って前記定着手段での用紙搬送を停止させる前項1に記載の画像形成装置。
(3)ジャム検出時に、前記転写手段に用紙が存在し、その用紙よりも下流の用紙がジャム用紙であり、ジャム用紙より上流で、かつ前記転写手段の用紙より下流に別の用紙が存在する場合、前記制御手段は、その別の用紙を前記転写手段の用紙と衝突しない位置に搬送させる前項1に記載の画像形成装置。
(4)ジャム検出時に転写を中断するために転写電圧を切り替える転写電圧切り替え手段を備え、前記制御手段は、転写電圧切り替え手段により転写電圧を切り替えられたタイミングから用紙上のトナー像後端位置を求めるとともに、求めたトナー像後端位置に基づいて前記定着手段での用紙搬送停止タイミングを決定する前項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
(5)ジャム検出時に転写を中断するために転写手段における転写ローラを離間させる離間手段を備え、前記制御手段は、転写ローラの離間を行ったタイミングから求めた用紙上のトナー像後端位置に基づいて、前記定着手段での用紙搬送停止タイミングを決定する前項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
(6)ジャム検出時に作像を中断するために露光を停止する露光停止手段を備え、前記制御手段は、露光を停止したタイミングから求めた用紙上のトナー像後端位置に基づいて、前記定着手段での用紙搬送停止タイミングを決定する前項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
(7)前記制御手段は、ジャム検出時に作像手段が作像に使用する画像データから求められた用紙上のトナー像後端位置に基づいて、前記定着手段での用紙搬送停止タイミングを決定する前項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
(8)トナー画像を作像手段により作成する作像ステップと、前記作像ステップにおいて作成されたトナー画像を用紙供給手段から搬送・供給された用紙に転写手段により転写するステップと、前記用紙上に転写されたトナー画像を該用紙に定着手段により定着するステップと、搬送中の用紙の紙詰まりをジャム検出手段により検出するステップと、ジャム検出時に、前記転写手段に未定着トナー像の転写用紙が存在する場合、用紙上のトナー像後端位置が前記定着手段に進入するタイミングまで待って前記定着手段での用紙搬送を停止させる制御ステップと、を備えていることを特徴とする画像形成装置におけるジャム発生時の用紙搬送制御方法。
(9)トナー画像を作像手段に作成させるステップと、前記作成されたトナー画像を用紙供給手段から搬送・供給された用紙に転写手段に転写させるステップと、前記用紙上に転写されたトナー画像を該用紙に定着手段に定着させるステップと、搬送中の用紙の紙詰まりをジャム検出手段に検出させるステップと、ジャム検出時に、前記転写手段に未定着トナー像の転写用紙が存在する場合、用紙上のトナー像後端位置が前記定着手段に進入するタイミングまで待って前記定着手段での用紙搬送を停止させる制御ステップと、を、画像形成装置のコンピュータに実行させるためのジャム発生時の用紙搬送制御プログラム。
【発明の効果】
【0009】
前項(1)に記載の発明によれば、ジャム検出時に転写手段に用紙が存在する場合に、そのトナー像後端が定着手段に進入するタイミングまで待って用紙の搬送を停止させるので、用紙上の未定着トナー像が定着されてから用紙が停止することになる。このため、使用者がジャム処理を行う時に機内に手等を入れても、未定着トナーで汚れたりするおそれを解消できる。
【0010】
また、ジャム処理時にハンドル操作で用紙を移送させるようなことも不要で、使いやすい。
【0011】
前項(2)に記載の発明によれば、用紙上のトナー像後端位置から用紙後端までの距離が短いと、ジャム発生時に定着手段に巻き付いた用紙を引っ張り出すために用紙を手で摘む部分が残されなくなるが、ジャム発生時に、用紙上のトナー像後端位置から用紙後端までの距離が所定長さ以上である場合に、用紙上のトナー像後端位置が定着手段に進入するの待って用紙搬送が停止されるので、定着手段に巻き付いた用紙を引っ張り出すために手で摘む部分が十分残されることになる。
【0012】
前項(3)に記載の発明によれば、ジャム発生時に転写手段に用紙があって、その下流のジャム用紙と転写手段の用紙との間に別の用紙がある場合には、その別の用紙は前記転写手段の用紙と衝突しない位置に搬送されるので、転写手段の用紙とその下流の別用紙との間に紙間が確保され、従って、転写手段の用紙上のトナー像後端位置が定着手段に進入するの待って用紙搬送を停止させても用紙同志の衝突を回避できる。
【0013】
前項(4)に記載の発明によれば、ジャム発生時に転写電圧を切り替えてトナー像が転写されないように転写を中断させるので、転写電圧を切り替えられたタイミングから用紙上のトナー像後端位置を求めることができ、求められたトナー像後端位置に基づいて定着手段での用紙搬送停止タイミングが決定される。
【0014】
前項(5)に記載の発明によれば、ジャム発生時に転写手段の転写ローラが離間されてトナー像が用紙に転写されなくなるので、転写ローラの離間を行ったタイミングから用紙上のトナー像後端位置を求めることができ、求められたトナー像後端位置に基づいて定着手段での用紙搬送停止タイミングが決定される。
【0015】
前項(6)に記載の発明によれば、ジャム発生時に感光体に対する露光が中断されるので、露光を停止したタイミングから用紙上のトナー像後端位置を求めることができ、求められたトナー像後端位置に基づいて定着手段での用紙搬送停止タイミングが決定される。
【0016】
前項(7)に記載の発明によれば、ジャム検出時に作像手段が作像に使用する画像データから求められた用紙上のトナー像後端位置に基づいて、定着手段の用紙搬送停止タイミングが決定される。
【0017】
前項(8)に記載の発明によれば、ジャム検出時に転写手段に用紙が存在する場合に、そのトナー像後端が定着手段に進入するタイミングまで待って用紙の搬送を停止させるので、用紙上の未定着トナー像が定着されてから用紙が停止することになる。このため、使用者がジャム処理を行う時に機内に手等を入れても、未定着トナーで汚れたりするおそれを解消できる。
【0018】
前項(9)に記載の発明によれば、ジャム検出時に転写手段に用紙が存在する場合に、そのトナー像後端が定着手段に進入するタイミングまで待って用紙の搬送を停止させる処理を、画像形成装置のコンピュータに実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのMFPの要部の構成図である。
【図2】(A)はジャム発生時に転写部に用紙がある場合の説明図であり、(B)はジャムが発生した際、用紙上のトナー像の後端位置が定着部に進入するタイミングまで待って搬送を停止する状況の説明図である。
【図3】ジャム発生時の用紙搬送制御処理を示すフローチャートである。
【図4】(A)は、ジャムと判断したタイミングで転写を中断する状況の説明図であり、(B)は、用紙M上の転写中断部分が定着ローラに到達したと判断したタイミングで定着モータを停止させる状況の説明図である。
【図5】図4(A)(B)に対応する用紙搬送制御処理を示すフローチャートである。
【図6】ジャム発生時の別の用紙搬送制御処理の説明図である。
【図7】図6に対応する別の用紙搬送制御処理を示すフローチャートである。
【図8】(A)は、転写部の用紙よりも下流の水平排出ローラを通過中の用紙がジャムを引き起こしている状況の説明図であり、(B)は、ジャム発生用紙よりも上流で、かつ、転写部の用紙より下流の用紙が存在する場合は、転写部の用紙よりも1枚下流の用紙の停止タイミングを必要時間遅延させた状況の説明図である。
【図9】図8(A)(B)に対応する用紙搬送制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、この発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのMFPの要部構成図である。
【0021】
このMFPは、用紙Mを供給する給紙部1と、作像部2と、転写部3と、定着部4と、排出ローラ5と、制御部6と、用紙搬送手段7とを備えている。
【0022】
前記給紙部1は、用紙Mを給紙カセット(図示せず)に収容し、一定のタイミングで用紙搬送手段7を介して作像部2側に向けて供給するものである。
【0023】
前記作像部2は、Y(イエロ−),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)の各色にそれぞれ対応して互いに並設され、かつ図示しない露光手段により静電潜像が形成される4個の感光体2Y,2M,2C,2Kと、一対のローラ21,22間に張設された転写ベルト23とを備えており、感光体2Y,2M,2C,2Kで形成されたトナー像Tが転写ベルト23に転写されるようになっている。
【0024】
前記転写部3は、転写ローラ31と所定の転写電圧(バイアス)を印加するためのバイアス発生器32とを有しており、前記給紙部1から搬送された用紙M上に、作像部2における転写ベルト23のトナー像Tを転写させるものである。
【0025】
前記転写バイアス発生器32は、制御部6の制御に基づいて、トナー像Tを用紙Mに転写させるバイアスとトナー像Tを用紙Mに転写させないバイアスとの間で、その出力を切り替えることができるようになっている。
【0026】
前記定着部4は、用紙M上に転写された未定着のトナー像Tを該用紙Mに定着させるものであり、少なくとも一方が定着用の加熱ローラである一対のローラ41,42と、その定着後の用紙Mを排紙側へ排紙する一対の排紙ローラ43,44とを有しており、各ローラ41〜44は、定着モータ45で回転駆動される。
【0027】
前記排紙ローラ43,44の下流側には、排紙センサ46がジャム検出器として配設されている。なお、ジャム検出器は排紙センサ46に限定されるものではなく、用紙搬送経路に沿って複数個のジャム検出用のセンサが設けられても良い。
【0028】
前記制御部6は、図示しないCPUや記憶部等を備え、CPUが記憶部に格納された動作プログラムに従って動作することにより、各種の制御処理を実行する。例えば、定着モータ45や前記バイアス発生器32の出力制御の他に、排紙センサ46を通過する用紙Mの入力の監視等を行う。具体的には、用紙Mの排紙センサ46への到達が遅れたり、所定のタイミングまでに用紙Mが排紙センサ46に到達しないことを検出した場合、ジャム発生と判断する。
【0029】
制御部6は、ジャム発生と判断したタイミングで、図2(A)に示すように、転写部3を通過中の用紙Mがあれば、用紙M上のトナー像Tの後端位置Teが、図2(B)に示すように定着部4に進入するタイミングまで待って定着ローラ41,42を駆動している定着モータ45を停止させるように制御する。従って、用紙M上の未定着トナー像の全てが定着ローラ41,42で定着されたのちに用紙が停止することになるから、使用者が機内に手を入れてジャム処理を行う際に、用紙M上の未定着トナー像で手が汚れたりする不都合を解消できる。また、ジャム処理する際に、ハンドル操作等が要らず、使い易くなる。
【0030】
なお、この実施形態では、用紙M上のトナー像Tの後端位置Teは、前記作像部2で作像に使用する画像データを用いて判断するようになっている。即ち、画像データの用紙M上の配置位置は計算等により求めることが可能であるから、用紙M上のトナー像Tの後端位置Teを画像データから求めることができる。
【0031】
次に、上記ジャム発生時の用紙搬送制御処理の流れを図3に示すフローチャートを参照して説明する。なお、図3以下のフローチャートに示す処理は、制御部6の図示しないCPUが記憶部に記憶された動作プログラムに従って動作することにより実行される。
【0032】
図3において、ステップS1では、ジャム発生時に、未定着トナー像(画像)Tが転写された用紙Mが転写部3と定着部4との間に存在した場合、作像に用いられる画像データから、用紙Mにおける未定着トナー像Tの後端位置Teを取得する。
【0033】
ステップS2では、定着ローラ41,42から用紙M上の未定着トナー像Tの後端位置Teまでの距離を算出し、ステップS3では、前記算出した距離に対応する定着ローラ41,42の停止タイマ値をセットし、ステップS4では、定着ローラ41,42の停止タイマ値を減算する。
【0034】
ステップS5では、タイマ値=0になったか否かを判断し、タイマ値=0になっていなければ(ステップS5でNO)、ステップS4に戻って停止タイマ値の減算を続ける。タイマ値=0になれば(ステップS5でYES)、ステップS6では、定着ローラ41,42を停止させて終了する。
【0035】
上記実施形態では、ジャム発生時におけるトナー像Tの後端位置Teを、作像部2で使用する画像データを用いて判断するものとしたが、トナー像Tの後端位置Teを別の方法で判断する搬送制御処理を図4(A)(B)に基づいて説明する。
【0036】
この方法は、転写中断位置に基づいて用紙M上のトナー像Tの後端位置Teを求めるものである。即ち、転写バイアス発生器32は、制御部6の制御に基づいて、トナー像Tを用紙Mに転写させるバイアスとトナー像Tを用紙Mに転写させないバイアスとの間で、その出力を切り替えることができるようになっているが、制御部6は、ジャムを検出すると、転写バイアス発生器32の転写電圧をトナー像Tの用紙Mへの転写が行われない電圧に切り替え、転写を中断する。図4(A)のPで示す位置が転写を中断した位置であり、用紙Mにおけるトナー像後端位置Teである。そして、転写中断時の用紙Mにおけるトナー像後端位置Teを求め、さらに定着ローラ41、42から転写中断位置(トナー像後端位置Te)までの距離を求める。
【0037】
その後、用紙M上のバイアス切り替えが行われた位置P、即ち用紙Mにおけるトナー像後端位置Teが図4(B)に示すように、定着ローラ41,42に到着したと判断したタイミングで定着モータ45を停止させる。
【0038】
なお、転写の中断は転写電圧の切り替えによることなく、他の方法によっても良い。例えば、転写ローラ31を転写ベルトから離間する方向へ離間させる離間機構(図示せず)を設け、ジャムが検出されたタイミングで転写ローラ31の離間を行うことにより(転写中断)、それ以降トナー像Tが用紙Mに付かないようにしてもよい。
【0039】
図5は、図4(A)(B)に対応する搬送制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0040】
図5において、ステップS11では、転写を中断し、ステップS12では、定着ローラ41,42から転写中断位置Pまでの距離(用紙Mにおけるトナー像後端位置Teまでの距離)を算出する。ステップS13では、定着ローラ停止タイマ値をセットし、ステップS14では、タイマ値を減算する。
【0041】
ステップS15では、タイマ値=0か否かを判断し、タイマ値=0でなければ(ステップS15でNO)、ステップS14に戻り、タイマ値=0であれば(ステップS15でYES)、ステップS16で定着ローラ41,42を停止する。
【0042】
また、用紙Mにおけるトナー像後端位置Teは、さらに他の方法により求めても良い。例えば、ジャムと判断したタイミングで露光部(図示せず)による感光体2Y、2C、2M、2Kへの露光を中断し、中断した位置に基づいて用紙M上のトナー像Tの後端位置Teを求めても良い。
【0043】
次に、ジャム発生時の別の用紙搬送制御処理を図6に基づいて説明する。
【0044】
この例では、ジャムの発生時に、定着ローラ41,42の一方のローラに用紙Mが巻き付いている場合の処理を示すものである。なお、定着ローラへの用紙巻き付きが発生しているかどうかは、排紙センサ46により検出することができる。例えば、用紙Mの排紙センサ46への到達が遅れたり、所定のタイミングまでに用紙Mが排紙センサ46に到達しないことを検出した場合、定着ローラへの用紙巻き付きが発生していると考えられる。
【0045】
このようなジャムの発生時に、用紙M上のトナー像Tの後端位置Teから用紙Mの後端Meまでの距離dが短い場合、ジャム処理のために使用者が定着ローラ41,42に巻きついた用紙Mを引っ張り出す際、用紙Mにおける手掴み部分が残されなくなる。このため、排紙センサ46の状態により、定着ローラ41,42への用紙Mの巻き付きを検出するようにする。
【0046】
そして、ジャム発生時、定着部4に到達した用紙Mが定着ローラ41,42に巻き付く可能性がある場合、用紙M上のトナー像Tの後端位置Teから用紙Mの後端Meまでの距離dが所定の長さ以上の場合は、用紙M上のトナー像Tの後端位置Teが定着部4に進入するタイミングまで待って定着部4の用紙搬送を停止させる。
【0047】
用紙M上のトナー像Tの後端位置Teから用紙Mの後端Meまでの距離dが、所定の長さ未満の場合は、ジャム発生の判断と同時に、前記定着モータ45を停止させて用紙搬送を停止させる。用紙Mの上のトナー像Tの後端位置Teは、前記実施形態の場合と同様に、その用紙Mに対する画像データから判断しても良いが、この例では、前述した転写の中断位置に基づいて算出している。
【0048】
つぎに、図6に対応するジャム発生時の用紙搬送制御処理の流れを図7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0049】
図7において、ステップS21では、ジャム発生時に転写動作を中断し、ステップS22では、前記排紙センサ46がONしたか否かを判断し、排紙センサ46がONしていれば(ステップS22でYES)、定着ローラへの巻き付きは生じていないから、ステップS23に進む。
【0050】
排紙センサ46がONしていなければ(ステップS22でNO)、ステップS28では、転写中断位置(ジャム発生時の未定着トナー像後端位置)Teから用紙後端位置Meまでの距離d(図6)を算出し、ステップS29では、転写中断位置(ジャム発生時の未定着トナー像後端位置)Teから用紙後端位置Meまでの距離dが所定長以上であるかどうかを判断する。
【0051】
前記距離dが所定長以上であれば(ステップS29でYES)、ステップS23に進む。距離dが所定長未満であれば(ステップS29でNO)、ステップS27に進み、定着ローラ41,42を停止する。
【0052】
ステップS23では、定着ローラ41,42から転写中断位置(ジャム発生時の未定着トナー像後端位置)Teから用紙後端位置Meまでの距離dを算出し、ステップS24では、定着ローラ41,42の停止タイマ値をセットし、ステップS25では、タイマ値が減算される。
【0053】
ステップS26では、タイマ値=0になったか否かを判断し、タイマ値=0になっていなければ(ステップS26でNO)、ステップS25に戻ってタイマ値減算を続行し、タイマ値=0になれば(ステップS26でYES)、ステップS27では、定着ローラ41,42を停止して終了する。
【0054】
このように、この実施形態では、用紙上のトナー像後端位置Teから用紙後端Meまでの距離が短い場合(ステップS29でNO)、定着ローラ41、42を直ちに停止する(ステップS27)。このため、用紙M上のトナー像後端位置Teが定着ローラ41,42に進入する前に定着ローラ41,42を停止することができるから、定着ローラ41,42に巻き付いた用紙Mを引っ張り出すために用紙を手で摘む部分を大きく確保することができる。用紙上のトナー像後端位置Teから用紙後端Meまでの距離が長い場合、換言すれば定着ローラ41,42に巻き付いた用紙Mを引っ張り出すために手で摘む部分が十分残されている場合は(ステップS29でYES)、用紙上のトナー像後端位置Teが定着ローラ41,42に進入するのをまって定着ローラ41,42を停止するので、使用者がジャム処理を行う時に機内に手等を入れても、未定着トナーで汚れたりするおそれがない。
【0055】
次に、定着ローラ41,42の下流側でジャムを検出した場合、定着ローラ41,42より下流の水平搬送ローラ8を停止する処理について、図8(A)(B)に基づいて説明する。
【0056】
定着ローラ41,42に用紙Mが巻き付く場合以外にも、未定着トナー像Tの処理が問題になることがある。
【0057】
ジャム検出時に、転写部3に用紙Mが存在し、転写部3の用紙Mよりも1枚下流の用紙M2の搬送を停止しなければならない場合がある。その場合、転写部3の用紙Mよりも1枚下流の用紙M2をそこで停止させると、用紙Mが用紙M2に衝突するおそれがあり、その衝突を避けるためには、転写部3を通過中の用紙Mの未定着トナー像Tを定着させるのに必要な距離だけ用紙Mを搬送することができなくなってしまう。
【0058】
例えば、図8(A)に示すように、転写部3の用紙Mよりも下流の水平排紙ローラ8を通過中の用紙M3がジャムを引き起こしているとすると、このジャム発生用紙M3よりも上流で、かつ、転写部3の用紙Mより下流の用紙M2が存在する場合は、転写部3の用紙Mよりも1枚下流の用紙M2の停止タイミングを必要時間遅延させるようにする。
【0059】
遅延させる必要時間は、図8(B)のように、転写部3の用紙Mの未定着トナーTを定着させるように用紙Mの搬送制御を行った時に、転写部3の用紙Mと1枚下流の用紙M2との衝突が発生しない位置に用紙M2を移動させる時間である。
【0060】
ジャム発生時のタイミング以降、転写部3の用紙Mの搬送を継続する距離をA(Aは定着ローラ41、42から用紙M上のトナー像Tの後端位置Teまでの距離と等しい)、ジャム発生時点での転写部3の用紙Mの先端から1枚下流の用紙M2の後端までの距離をBとすると、A>Bの場合には、転写部3の用紙Mよりも1枚下流の用紙M2の停止タイミングをジャム発生時からA−B後とし、A≦Bの場合には、転写部3の用紙Mよりも1枚下流の用紙M2の停止タイミングはジャム発生と同時とする。用紙M上のトナー像Tの後端位置Teは、その用紙Mに対する画像データから判断しても良いし、転写の中断位置から判断しても良いし、露光中断位置から判断しても良い。
【0061】
次に、図8(A)(B)に対応するジャム発生時の用紙搬送制御処理の流れを図9に示すフローチャートを参照して説明する。
【0062】
図9において、ステップS31では、ジャムが発生している水平搬送ローラ8を停止し、ステップS32では、ジャム発生時点での転写部3の用紙Mの先端から1枚下流の用紙M2の後端までの距離Bが転写部3の用紙Mの搬送を継続する距離Aよりも大きいか否かを判断する。
【0063】
ジャム発生時点での転写部3の用紙Mの先端から1枚下流の用紙M2の後端までの距離Bが転写部3の用紙Mの搬送を継続する距離Aよりも大きければ(B>A)(ステップS32でYES)、ステップS33では、排出ローラ5を停止し、ステップS34では、定着ローラ41,42の停止までのタイマを距離A分に設定する(タイマ←距離A分)。
【0064】
ステップS35では、設定時間が経過したか否かを判断し、設定時間が経過していなければ(ステップS35でNO)、経過するまで待ち、設定時間が経過すれば(ステップS35でYES)、ステップS36で定着ローラ41,42を停止して終了する。
【0065】
ステップS32で、ジャム発生時点での転写部3の用紙Mの先端から1枚下流の用紙M2の後端までの距離Bが転写部3の用紙Mの搬送を継続する距離A以下であれば(B≦A)(ステップS32でNO)、ステップS37に進む。
【0066】
ステップS37では、排出ローラ5の停止までのタイマを、距離(A−B)に設定する(タイマ←距離A−B)。
【0067】
次いでステップS38では、設定時間が経過したか否かを判断し、設定時間が経過していなければ(ステップS38でNO)、経過するのを待ち、設定時間が経過すれば(ステップS38でYES)、ステップS39では、定着ローラ41,42の停止までのタイマを距離A分に設定し(タイマ←距離A分)する。
【0068】
ステップS40では、設定時間経過したか否かを判断し、設定時間が経過していなければ(ステップS40でNO)、経過するまで待ち、設定時間が経過すれば(ステップS40でYES)、ステップS41で定着ローラ41,42を停止する。
【0069】
このようにこの実施形態では、ジャム発生時に転写部3に用紙Mがあって、その下流のジャム用紙M3と転写部の用紙Mのとの間に別の用紙M2がある場合には、転写部3の用紙Mの停止よりもその下流側の別の用紙M2の停止タイミングが遅延されるので、転写部の用紙Mとその下流の別用紙M2との間に紙間Rが確保され、従って、転写部の用紙M上のトナー像後端位置Teが定着ローラ41、42に進入するの待って用紙Mの搬送を停止させても用紙同志の衝突を回避できる。
【符号の説明】
【0070】
1 給紙部
2 作像部
3 転写部
4 定着部
6 制御部
7 搬送部
31 転写ローラ
32 バイアス発生器
41,42 定着ローラ
46 排紙センサ
d トナー像後端と用紙後端との距離
M(M2)(M3) 用紙
Me 用紙後端
P 転写中断タイミング位置
T 未定着トナー像
Te トナー像後端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー画像を作成する作像手段と、
前記作像手段により作成されたトナー画像を用紙供給手段から搬送・供給された用紙に転写する転写手段と、
前記用紙上に転写されたトナー画像を該用紙に定着させる定着手段と、
搬送中の用紙の紙詰まりを検出するジャム検出手段と、
ジャム検出時に、前記転写手段に未定着トナー像の転写用紙が存在する場合、用紙上のトナー像後端位置が前記定着手段に進入するタイミングまで待って前記定着手段での用紙搬送を停止させる制御手段と、
を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記定着手段における定着ローラへの用紙巻き付きを検出するセンサを該定着手段の下流側に備え、
ジャム検出時に、前記センサにより前記定着ローラへの用紙巻き付きが検出されると、前記制御手段は、用紙上のトナー像後端位置から用紙後端までの距離が所定長さ以上である場合に、用紙上のトナー像後端位置が前記定着手段に進入するタイミングまで待って前記定着手段での用紙搬送を停止させる請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
ジャム検出時に、前記転写手段に用紙が存在し、その用紙よりも下流の用紙がジャム用紙であり、ジャム用紙より上流で、かつ前記転写手段の用紙より下流に別の用紙が存在する場合、前記制御手段は、その別の用紙を前記転写手段の用紙と衝突しない位置に搬送させる請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
ジャム検出時に転写を中断するために転写電圧を切り替える転写電圧切り替え手段を備え、
前記制御手段は、転写電圧切り替え手段により転写電圧を切り替えられたタイミングから用紙上のトナー像後端位置を求めるとともに、求めたトナー像後端位置に基づいて前記定着手段での用紙搬送停止タイミングを決定する請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
ジャム検出時に転写を中断するために転写手段における転写ローラを離間させる離間手段を備え、
前記制御手段は、転写ローラの離間を行ったタイミングから求めた用紙上のトナー像後端位置に基づいて、前記定着手段での用紙搬送停止タイミングを決定する請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
ジャム検出時に作像を中断するために露光を停止する露光停止手段を備え、
前記制御手段は、露光を停止したタイミングから求めた用紙上のトナー像後端位置に基づいて、前記定着手段での用紙搬送停止タイミングを決定する請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、ジャム検出時に作像手段が作像に使用する画像データから求められた用紙上のトナー像後端位置に基づいて、前記定着手段での用紙搬送停止タイミングを決定する請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
トナー画像を作像手段により作成する作像ステップと、
前記作像ステップにおいて作成されたトナー画像を用紙供給手段から搬送・供給された用紙に転写手段により転写するステップと、
前記用紙上に転写されたトナー画像を該用紙に定着手段により定着するステップと、
搬送中の用紙の紙詰まりをジャム検出手段により検出するステップと、
ジャム検出時に、前記転写手段に未定着トナー像の転写用紙が存在する場合、用紙上のトナー像後端位置が前記定着手段に進入するタイミングまで待って前記定着手段での用紙搬送を停止させる制御ステップと、
を備えていることを特徴とする画像形成装置におけるジャム発生時の用紙搬送制御方法。
【請求項9】
トナー画像を作像手段に作成させるステップと、
前記作成されたトナー画像を用紙供給手段から搬送・供給された用紙に転写手段に転写させるステップと、
前記用紙上に転写されたトナー画像を該用紙に定着手段に定着させるステップと、
搬送中の用紙の紙詰まりをジャム検出手段に検出させるステップと、
ジャム検出時に、前記転写手段に未定着トナー像の転写用紙が存在する場合、用紙上のトナー像後端位置が前記定着手段に進入するタイミングまで待って前記定着手段での用紙搬送を停止させる制御ステップと、
を、画像形成装置のコンピュータに実行させるためのジャム発生時の用紙搬送制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−33905(P2011−33905A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181098(P2009−181098)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】