説明

画像形成装置

【課題】像担持体ユニットの位置決めをより安定させることが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】複数の回転体(ベルト駆動ギア33、感光体25、クリーニングローラ34)を停止状態から定常回転状態に移行させるまでの期間T1に、複数の回転体33,25,34を停止状態から定常回転状態に移行させるまでの期間T3、若しくは、複数の回転体33,25,34を定常回転状態としベルト13に画像を担持させている期間T2に、複数の回転体33,25,34からベルトユニット10に作用する力の合力が、常にフレーム30を位置決め部44に当接させる順方向に向くように制御する。これにより、ベルトユニット10の位置決め状態が安定し、ひいては形成される画像の品質を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に像担持体ユニットが装置本体に対して位置決めされる構成を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置として、用紙を搬送するベルトユニット(像担持体ユニット)を備えたものが知られている(特許文献1参照)。ベルトユニットは、複数のローラ間で張架されるベルトと、各ローラを回転可能に支持するフレームとを備えている。ベルトユニットのフレームは、例えばばね部材の付勢によって装置本体側に設けられた位置決め部に押し付けられ、それによりベルトユニットが装置本体に対して位置決めされる。
【0003】
また、ベルトユニットが有するローラの一つは、装置本体側に設けられたベルト駆動ギアの駆動力を受けて回転し、その回転によってベルトが回転駆動される。さらに、装置本体には、用紙に転写されるトナー像を担持する感光体や、ベルトを清掃するためのクリーニングローラなどがそれぞれベルトに対して圧接した状態で設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−267620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした画像形成装置において、画像形成を行う際には、上述のベルト駆動ギア、感光体、クリーニングローラなどの複数の回転体がそれぞれ回転駆動される。このとき、ベルトユニットは、上記複数の回転体のそれぞれから力を受ける。各回転体から受ける力の向きや大きさは、回転体の回転方向やベルトに対する相対速度などによってそれぞれ異なる。
【0006】
ここで、ベルトユニットが各回転体から受ける力の合力が、フレームを位置決め部に対して当接させる方向(位置決め方向)と逆方向に作用すると、ベルトユニットの位置決めが不安定になる可能性がある。即ち、ベルトユニットが上述のようにばね部材により位置決め方向に付勢されていたとしても、上記合力が逆方向に作用している状態では、ちょっとした衝撃などによりベルトユニットが動いてしまい、画像形成に悪影響を与えるおそれがある。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、像担持体ユニットの位置決めをより安定させることが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための手段として、第1の発明に係る画像形成装置は、装置本体と、支持体、及び前記支持体によって回転可能に支持され画像を直接的若しくは間接的に担持する像担持体を有する像担持体ユニットと、前記装置本体に設けられ、前記支持体に当接することにより前記像担持体ユニットを位置決めする位置決め部と、前記装置本体に設けられ、互いに独立して回転駆動され、かつその回転に基づく力を前記像担持体ユニットに対して作用させることが可能な複数の回転体と、前記複数の回転体の駆動状態を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記複数の回転体をそれぞれ停止状態から定常回転状態に移行させるまでの期間に、前記複数の回転体から前記像担持体ユニットに作用する力の合力が、常に前記支持体を前記位置決め部に当接させる順方向に向くように制御する。
【0009】
第1の発明によれば、複数の回転体を停止状態から定常回転状態に移行させるまでの期間に、複数の回転体から像担持体ユニットに作用する力の合力が、常に支持体を位置決め部に当接させる順方向に向くように制御する。これにより、像担持体ユニットの位置決め状態が安定し、ひいては形成される画像の品質を確保することができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記制御手段は、前記複数の回転体をそれぞれ停止状態から定常回転状態に移行させる際に、前記複数の回転体のうち少なくとも一つの回転体の駆動開始タイミングを他の回転体に対して異ならせる。
【0011】
第2の発明によれば、複数の回転体をそれぞれ停止状態から定常回転状態に移行させる際に、少なくとも一つの回転体の駆動開始タイミングを他の回転体に対して異ならせる。複数の回転体の駆動を一度に開始すると、各回転体の立ち上がり時間の差などのために、合力の向きを一定に制御することが困難な場合があるが、回転体の駆動開始タイミングをずらすことにより、そのような制御を容易に実現することができる。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、前記複数の回転体は、前記像担持体ユニットに対して前記位置決め部に当接する順方向に力を作用させる順方向回転体と、順方向とは逆方向に力を作用させる逆方向回転体とを含んでおり、前記制御手段は、前記複数の回転体をそれぞれ停止状態から定常回転状態に移行させる際に、少なくとも一つの前記順方向回転体の駆動開始タイミングを前記逆方向回転体の駆動開始タイミングよりも前とする。
【0013】
第3の発明によれば、複数の回転体は、像担持体ユニットに対し順方向の力を作用させる順方向回転体と、逆方向の力を作用させる逆方向回転体とを含んでおり、各回転体を停止状態から定常回転状態に移行させる際に、少なくとも一つの順方向回転体の駆動を逆方向回転体よりも前に開始する。これにより、各回転体の駆動開始時に、像担持体ユニットに対し順方向への力が作用し始めた後に、遅れて逆方向への力が作用し始めるため、像担持体ユニットの位置決めを安定させることができる。
【0014】
第4の発明に係る画像形成装置は、装置本体と、支持体、及び前記支持体によって回転可能に支持され画像を直接的若しくは間接的に担持する像担持体を有する像担持体ユニットと、前記装置本体に設けられ、前記支持体に当接することにより前記像担持体ユニットを位置決めする位置決め部と、前記装置本体に設けられ、互いに独立して回転駆動され、かつその回転に基づく力を前記像担持体ユニットに対して作用させることが可能な複数の回転体と、前記複数の回転体の駆動状態を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記複数の回転体をそれぞれ定常回転状態から停止状態に移行させるまでの期間に、前記複数の回転体から前記像担持体ユニットに作用する力の合力が、常に前記支持体を前記位置決め部に当接させる順方向に向くように制御する。
【0015】
第4の発明によれば、複数の回転体を停止状態から定常回転状態に移行させるまでの期間に、複数の回転体から像担持体ユニットに作用する力の合力が、常に支持体を位置決め部に当接させる順方向に向くように制御する。これにより、像担持体ユニットの位置決め状態が安定し、ひいては画像の品質を確保することができる。
【0016】
第5の発明は、第4の発明において、前記制御手段は、前記複数の回転体をそれぞれ定常回転状態から停止状態に移行させる際に、前記複数の回転体のうち少なくとも一つの回転体の減速開始タイミングを他の回転体に対して異ならせる。
【0017】
第5の発明によれば、複数の回転体をそれぞれ定常回転状態から停止状態に移行させる際に、少なくとも一つの回転体の減速開始タイミングを他の回転体に対して異ならせる。複数の回転体の駆動を一度に減速させると、各回転体の減速に要する時間の差などのために、合力の向きを一定に制御することが困難な場合があるが、回転体の減速開始タイミングをずらすことにより、そのような制御を容易に実現することができる。
【0018】
第6の発明は、第5の発明において、前記複数の回転体は、前記像担持体ユニットに対して前記位置決め部に当接する順方向に力を作用させる順方向回転体と、順方向とは逆方向に力を作用させる逆方向回転体とを含んでおり、前記制御手段は、前記複数の回転体をそれぞれ定常回転状態から停止状態に移行させる際に、少なくとも一つの前記逆方向回転体の減速開始タイミングを前記順方向回転体の減速開始タイミングよりも前とする。
【0019】
第6の発明によれば、複数の回転体は、像担持体ユニットに対し順方向の力を作用させる順方向回転体と、逆方向の力を作用させる逆方向回転体とを含んでおり、各回転体を定常回転状態から停止状態に移行させる際に、少なくとも一つの逆方向回転体の減速を順方向回転体よりも前に開始する。これにより、各回転体を減速させる際に、像担持体ユニットに作用する逆方向への力が減衰し始めた後に、遅れて順方向への力が減衰し始めるため、像担持体ユニットの位置決めを安定させることができる。
【0020】
第7の発明は、第2,3,5,6のいずれか一つの発明において、前記複数の回転体のうち少なくとも一つの回転体に対する回転負荷の変動状態を判断する判断手段を備え、前記制御手段は、前記判断手段により判断される回転負荷の変動状態に応じて前記タイミングを制御する。
【0021】
第7の発明によれば、回転体に対する回転負荷の変動状態に応じて駆動開始タイミング若しくは減速開始タイミングを制御する。即ち、回転体に対する回転負荷の変動によって、駆動開始時や減速開始時の反応時間が変化するため、その変化に応じてタイミングを制御することで、回転負荷の変動状態にかかわらず位置決めを安定させることができる。
【0022】
第8の発明は、第7の発明において、前記判断手段の判断対象である回転体に対して接離可能な可動部材を有し、前記判断手段は、前記可動部材の接離状態に基づいて回転負荷の変動状態を判断する。
【0023】
第8の発明によれば、回転体に対して接離可能な可動部材の接離状態に基づいて回転負荷の変動状態を判断する。即ち、可動部材の接離による回転体に対する回転負荷の変動状態によって、駆動開始時若しくは減速開始時時の回転体の動作が変化するため、その変化に応じてタイミングの制御を行うことで、位置決めを安定させることができる。
【0024】
第9の発明は、第7または第8の発明において、温度及び湿度のうちの少なくとも一方を検知するセンサを備え、前記判断手段は、前記センサにより検知された結果に基づいて回転負荷の変動状態を判断する。
【0025】
第9の発明によれば、温度若しくは湿度を検出するセンサの検知結果に基づいて回転負荷の変動状態を判断する。即ち、温度や湿度の変化により回転体の回転負荷が変動し、駆動開始時若しくは減速開始時時の回転体の動作が変化するため、その変化に応じてタイミングの制御を行うことで、位置決めを安定させることができる。
【0026】
第10の発明は、第1から第9のいずれか一つの発明において、前記複数の回転体は、前記像担持体を回転駆動する駆動ギアと、定常回転状態において前記像担持体の回転方向に沿った方向に回転しかつ前記像担持体に対し順方向の力を作用させる並行回転体とを含んでおり、前記制御手段は、前記期間において、前記像担持体と前記並行回転体との相対速度の大小が常に逆転しないように制御する。
【0027】
第10の発明によれば、像担持体と並行回転体との相対速度の大小が常に逆転しないように制御する。仮に回転体の駆動開始時や減速開始時に、像担持体と並行回転体との相対速度の大小が逆転すると、並行回転体から像担持体に作用する力の向きが反転し、像担持体ユニットの位置決めが不安定になる可能性がある。これに対し、像担持体と並行回転体との相対速度の大小が常に逆転しないように制御することで、像担持体ユニットの位置決めを安定させることができる。
【0028】
第11の発明に係る画像形成装置は、装置本体と、支持体、及び前記支持体によって回転可能に支持され画像を直接的若しくは間接的に担持する像担持体を有する像担持体ユニットと、前記装置本体に設けられ、前記支持体に当接することにより前記像担持体ユニットを位置決めする位置決め部と、前記装置本体に設けられ、互いに独立して回転駆動され、かつその回転に基づく力を前記像担持体ユニットに対して作用させることが可能な複数の回転体と、前記複数の回転体の駆動状態を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記複数の回転体をそれぞれ定常回転状態とし、かつ前記像担持体に画像を担持させている期間に、前記複数の回転体から前記像担持体ユニットに作用する力の合力が、常に前記支持体を前記位置決め部に当接させる順方向に向くように制御する。
【0029】
第11の発明によれば、複数の回転体を定常回転状態とし像担持体に画像を担持させている期間に、複数の回転体から像担持体ユニットに作用する力の合力が、常に支持体を位置決め部に当接させる順方向に向くように制御する。これにより、像担持体ユニットの位置決め状態が安定し、ひいては形成される画像の品質を確保することができる。
【0030】
第12の発明は、第1から第11のいずれか一つの発明において、前記制御手段は、前記複数の回転体をそれぞれ停止状態から定常回転状態に移行させ、前記像担持体に画像を担持させた後、前記回転体をそれぞれ停止状態に移行させるまでの期間に、前記複数の回転体から前記像担持体ユニットに作用する力の合力が常に順方向に向き、かつ前記合力の順方向成分の大きさが前記像担持体に画像を担持させるより前に最大値に到達するように制御する。
【0031】
第12の発明によれば、複数の回転体を停止状態から定常回転状態に移行し、像担持体に画像を担持させた後に、回転体を停止状態に移行させるまでの期間に、各回転体から像担持体ユニットに作用する力の合力が常に順方向に向き、かつその順方向成分の大きさが像担持体に画像を担持させるより前に最大値に到達するように制御する。これにより、像担持体ユニットが画像を担持する前に、何らかの事情で本来の位置に位置決めされていなかった場合でも、各回転体から順方向へ大きな力を受けることにより、順方向に移動して正常に位置決めされる可能性が高い。従って、形成される画像の品質を確保することができる。
【0032】
第13の発明は、第1から第12のいずれか一つの発明において、前記支持体を順方向に向けて付勢する付勢手段をさらに備える。
【0033】
第13の発明によれば、支持体を順方向に向けて付勢する付勢手段を備える。これにより、像担持体ユニットをより確実に位置決めすることができる。また、複数の回転体からの合力が順方向に向くように制御することにより、小さな付勢力でも確実に像担持体ユニットを位置決めすることができるため、部品を小型化したり簡略化したりといったことが可能である。
【0034】
第14の発明は、第1から第13のいずれか一つの発明において、前記像担持体は、用紙を搬送するベルトであって、前記複数の回転体は、前記ベルトを駆動する駆動ギアと、形成された画像を前記ベルト上の用紙に転写させる感光体とを含んでいる。
【0035】
第15の発明は、第14の発明において、前記複数の回転体は、さらに前記ベルトを清掃するクリーニングローラを含んでいる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、複数の回転体を停止状態から定常回転状態に移行させるまでの期間、複数の回転体を停止状態から定常回転状態に移行させるまでの期間、若しくは、複数の回転体を定常回転状態とし像担持体に画像を担持させている期間に、複数の回転体から像担持体ユニットに作用する力の合力が、常に支持体を位置決め部に当接させる順方向に向くように制御する。これにより、像担持体ユニットの位置決め状態が安定し、ひいては形成される画像の品質を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンタにおいて、全ての現像ローラが感光体に圧接した状態を示す側断面図
【図2】プリンタにおいて、一部の現像ローラが感光体から離間した状態を示す側断面図
【図3】ベルトユニットの側面図
【図4】プリンタの電気的構成を概略的に示すブロック図
【図5】モータ駆動開始処理を示すフローチャート
【図6】モータの駆動タイミングを示すタイムチャート
【図7】各回転体が定常回転状態で駆動されている状態において、ベルトユニットに対し前後方向に作用する主な外力を示す図
【図8】ベルトモータ及び感光体モータの駆動を同時に開始したと仮定した場合におけるベルト及び感光体の外周速度の変化を示すグラフ
【図9】ベルトモータ及び感光体モータの駆動開始タイミングをずらした場合におけるベルト及び感光体の外周速度の変化を示すグラフ
【図10】各回転体からベルトユニットに作用する力の合力の大きさを示すグラフ
【図11】モータ駆動停止処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に本発明の一実施形態について図1から図11を参照して説明する。
【0039】
(プリンタの全体構成)
図1及び図2は、本発明の画像形成装置の一例であるプリンタ1の概略構成を示す側断面図である。図1は、全ての現像ローラ22が感光体25に圧接した状態を示し、図2は、一部の現像ローラ22が感光体25から離間した状態を示している。なお、以下の説明においては、図1〜3,及び図7における右側を前方とする。また、各図において、各色間で同一の構成部品については、適宜符号を省略する。
【0040】
本実施形態のプリンタ1は、いわゆる直接転写タンデム方式のカラープリンタである。プリンタ1は、図1に示すように、装置本体2の底部に複数の用紙3を積載可能な供給トレイ4を備えている。供給トレイ4内の用紙3は、供給ローラ5により一枚ずつ送り出され、レジストローラ6によりベルトユニット10上に搬送される。
【0041】
ベルトユニット10(像担持体ユニットの一例)は、前側に配置されたベルト支持ローラ11と、後側に配置されたベルト駆動ローラ12との間に、環状のベルト13(像担持体の一例)を張架した構成となっている。ベルト13は、ポリカーボネート等によって形成され、外周面が鏡面状に加工されている。ベルト駆動ローラ12が回転駆動されることにより、ベルト13が図示反時計周り方向に回転移動し、ベルト13上面に静電吸着された用紙3が後方へ搬送される。ベルト13の内側には、後述する各プロセス部20K〜20Cの感光体25とベルト13を挟んで対向する位置に転写ローラ14が設けられている。また、ベルトユニット10の下側には、ベルト13表面に付着したトナーや紙粉等を回収するベルトクリーナ16が設けられている。なお、ベルトユニット10周りの構成については、後に詳述する。
【0042】
ベルトユニット10の上方には、4つの露光部17と、4つのプロセス部20K〜20Cとが前後方向に並んで設けられている。各露光部17は、画像データに基づいて発光制御され、対応する感光体25の表面に一ライン毎に光を走査する。
【0043】
プロセス部20K,20Y,20M,20Cは、それぞれブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色に対応して設けられている。各プロセス部20K〜20Cは、現像カートリッジ21、帯電器24、感光体25(回転体、並行回転体の一例)等を備えている。現像カートリッジ21は、内部にトナーを収容しており、その下端部に現像ローラ22(可動部材の一例)を備えている。各現像カートリッジ21は、現像離間機構60(図4参照)によって、図1に示すように現像ローラ22が感光体25に当接する現像位置と、図2のブラック以外の現像カートリッジ21のように現像ローラ22が感光体25から離間する離間位置とに変位可能である。なお、モノクロ印刷時には、図2に示すように、ブラック以外の現像カートリッジ21を離間位置として、現像ローラ22を駆動しないことにより、現像カートリッジ21や感光体25の寿命を延ばすことができる。
【0044】
感光体25の表面は、帯電器24により帯電され、その帯電された部分が露光部17からの光の走査により露光され、静電潜像が形成される。そして、その静電潜像に現像ローラ22からトナーが供給されることで、感光体25上にトナー像が形成される。各感光体25上に担持されたトナー像は、ベルト13上の用紙3が、感光体25と転写ローラ14との間の各転写位置を通る間に、転写ローラ14に印加される転写電圧によって用紙3に順次転写される。トナー像が転写された用紙3は、定着器26によってトナー像の熱定着が行われた後、装置本体2の上面に排出される。
【0045】
(ベルトユニット周りの詳細構造)
図3は、ベルトユニット10の側面図である。
ベルトユニット10は、図3に示すように、フレーム30(支持体の一例)を備えており、このフレーム30は、前後に細長い左右一対の側壁30Aと両側壁30Aの前端部を橋渡し状に接続する接続部30Bとを有する門型状をなしている。両側壁30Aの後端部には、既述のベルト駆動ローラ12の両端部が支持されている。ベルト駆動ローラ12は、装置本体2に設けられたベルト駆動ギア33(図7参照、回転体、順方向回転体、駆動ギアの一例)によって回転駆動される。また、両側壁30Aの前端付近には、ベルト支持ローラ11の両端部が前後に移動可能な状態で支持されており、その両端部がバネ部材31により前方に付勢されることで、ベルト13に張力が与えられている。また、ベルト13の内側に配置された各転写ローラ14は、図示しないバネ部材により上方に付勢されており、感光体25との間に所定の圧力でベルト13を挟んでいる。
【0046】
ベルトユニット10の下側に配置されたベルトクリーナ16は、図1に示すように、ベルト13下面に接触するクリーニングローラ34(回転体、逆方向回転体の一例)を備えている。ベルトユニット10は、クリーニングローラ34の上方位置に下向きに付勢されたバックアップローラ35を備えており、このバックアップローラ35とクリーニングローラ34との間にベルト13を所定の圧力で挟んでいる。そして、クリーニングローラ34がベルト13と逆方向に回転駆動されるとともに、クリーニングローラ34とバックアップローラ35との間に所定のバイアスが印加されることで、ベルト13上のトナー等がクリーニングローラ34側へ電気的に吸引され、回収される。
【0047】
ベルトユニット10は、装置本体2の上部に設けられたカバー(図示せず)を開け、全てのプロセス部20K〜20Cを取り外した状態で装置本体2に対して着脱可能である。装置本体2には、ベルトユニット10の左右両側に、上面が一定高さの水平面となった載置部36が前後一対設けられている。フレーム30の両側壁30Aを載置部36の上面に載せることで、ベルトユニット10が上下方向について位置決めされる。
【0048】
また、フレーム30の両側壁30Aには、前後一対の係止突起37が下方に向けて突出して設けられている。一方、各載置部36には、前後に細長い係止溝38が設けられており、各係止溝38に対し係止突起37が左右方向についてほぼ緊密に係止されることで、フレーム30が左右方向に位置決めされる。なお、係止突起37と係止溝38とは、前後方向については緊密に係止していない。
【0049】
さらに、フレーム30の一方の側壁30Aには、前端部にレバー40が取り付けられている。このレバー40は、レバー軸40Aを中心として回動可能であり、その一方の端部に取り付けられたレバー付勢バネ41(付勢手段の一例)の引っ張り方向の付勢力により、フレーム30に対して図示時計周り方向に付勢されている。この付勢力によってレバー40の他方の端部は、装置本体2に固定して設けられた被押圧部42を後方に向けて押圧する。従って、ベルトユニット10のフレーム30は、レバー40がレバー付勢バネ41の付勢力によって被押圧部42を押圧する力の反力をレバー軸40Aを介して受けることで、装置本体2に対し前方に向けて付勢される。
【0050】
また、フレーム30の側壁30Aには、突起部43が突出して設けられている。この突起部43は、フレーム30が被押圧部42から受ける反力によって装置本体2に設けられた位置決め部44の後面44Aに当接し、これによりベルトユニット10が前後方向について位置決めされる。
【0051】
(プリンタの電気的構造)
図4は、プリンタ1の電気的構成を概略的に示すブロック図である。プリンタ1は、同図に示すように、CPU50(制御手段、判断手段の一例)、ROM51、RAM52、NVRAM(不揮発性メモリ)53、ネットワークインターフェイス54を備え、これらに既述の露光部17、プロセス部20K〜20C等が接続されている。
【0052】
ROM51には、後述するモータ駆動開始処理やモータ駆動停止処理など、このプリンタ1の各種の動作を実行するためのプログラムが記憶されている。CPU50は、ROM51から読み出したプログラムに従って、その処理結果をRAM52またはNVRAM43に記憶させながら各部の制御を行う。ネットワークインターフェイス54は、通信回線を介して外部のコンピュータ等(図示せず)に接続され、これにより相互のデータ通信が可能となっている。
【0053】
また、プリンタ1は、ベルト駆動ギア33を駆動するベルトモータ56、感光体25を駆動する感光体モータ57、クリーニングローラ34を駆動するクリーナモータ58を備えている。これらのモータ56〜58は、例えばDCモータであり、CPU50は各モータ56〜58に対してPWM(Pulse Width Modulation)信号を供給することで、動作を制御する。プリンタ1は、さらに、既述のように現像カートリッジ21を現像位置と離間位置とに変位させる現像離間機構60、装置内の温度及び湿度を検知する温湿度センサ61(センサの一例)などを備えている。
【0054】
(モータ駆動制御)
図5は、モータ駆動開始処理を示すフローチャートであり、図6は、モータ56〜58の駆動タイミングを示すタイムチャートである。
【0055】
CPU50は、待機状態(各モータ56〜58を停止させた状態)において、外部のコンピュータ等から送信された印刷指令をネットワークインターフェイス54を介して受信すると、その印刷指令に従って印刷制御処理を実行する。この印刷制御処理では、印刷指令においてカラー印刷が指定されている場合には、全ての現像カートリッジ21を現像位置とし(図1参照)、モノクロ印刷が指定されている場合には、ブラック以外の現像カートリッジ21を離間位置とする(図2参照)。そして、CPU50は、図5に示すモータ駆動開始処理を実行する。
【0056】
CPU50は、モータ駆動開始処理において、まずベルトモータ56に駆動信号を出力することにより、その駆動を開始する(S101)。図6は、各モータ56〜58への駆動信号の出力タイミングを示しており、同図において、ベルトモータ56の駆動開始タイミングをt1で示している。
【0057】
続いて、CPU50は、全ての現像ローラ22が感光体25に対して圧接した状態か、即ち全ての現像カートリッジ21が現像位置にあるかを判断する(S102)。そして、全ての現像ローラ22が感光体25に対して圧接した状態である場合(S102:Yes)には、現像圧接時タイミングt2で感光体モータ57の駆動を開始する(S103)。また、一部の現像ローラ22が感光体25に対して離間した状態である場合(S102:No)には、現像圧接時より遅い現像離間時タイミングt3で感光体モータ57の駆動を開始する(S103)。その後、タイミングt4でクリーナモータ58の駆動を開始し(S105)、このモータ駆動開始処理を終了する。
【0058】
ここで、図7は、ベルト13、感光体25、クリーニングローラ34がそれぞれ定常回転状態で駆動されている状態において、ベルトユニット10に対し前後方向に作用する主な外力を示す図である。同図に示すように、ベルトユニット10に対して前後方向に作用する外力には、ベルト駆動ギア33から作用する力F1、4つの感光体25から作用する力F2、ベルトクリーナ16から作用する力F3、被押圧部42からレバー40を介して作用する力F4の4つがある。
【0059】
ベルト駆動ギア33は、ベルト駆動ローラ12の斜め下に配置されており、ベルト駆動ギア33からベルトユニット10(フレーム30)に作用する力は、斜め下前方向に向く。ベルト駆動ギア33からベルトユニット10(フレーム30)に作用する力の前後方向成分が前述の力F1であり、この力F1は、ベルト駆動ギア33がベルトモータ56によって駆動されている間は常に前方向に作用する。なお、仮にベルト駆動ギア33を、ベルト駆動ローラ12の斜め上位置に配置した場合には、力F1の向きが反対になる。以下の説明では、前方向、即ちフレーム30の突起部43を位置決め部44の後面44Aに押し付ける方向を順方向ともいい、その反対の方向を逆方向ともいう。
【0060】
各感光体25は、ベルト13の移動方向に沿った方向に回転駆動される。本実施形態では、ベルト13及び各感光体25が定常回転状態にあるときに、ベルト13の移動速度が感光体25の外周速度よりも大きくなる。このため、定常回転状態では、ベルト13と各感光体25との間の摩擦により、ベルト13に対して移動方向とは反対方向、即ち順方向への力F2が作用する。この力F2の大きさや向きは、ベルト13と感光体25の相対速度の大小により変化する。さらに、力F2の大きさは、後述するように各感光体25とベルト13との間に用紙3が挟まれているか否かによっても変化する。
【0061】
クリーニングローラ34は、ベルト13の移動方向に対して反対向きに回転駆動される。このため、クリーニングローラ34からベルトユニット10に作用する力F3は、常に逆方向に作用する。被押圧部42からベルトユニット10に作用する力F4は、常に順方向に作用する。
【0062】
さて、図8は、ベルトモータ56及び感光体モータ57の駆動を同時に開始したと仮定した場合におけるベルト13及び感光体25の外周速度の変化を示すグラフである。また、図9は、ベルトモータ56及び感光体モータ57の駆動開始タイミングをずらした場合におけるベルト13及び感光体25の外周速度の変化を示すグラフである。
【0063】
本実施形態では、感光体25に圧接した現像ローラ22は、感光体25の回転に沿った方向に回転駆動され、かつ定常回転状態において現像ローラ22の外周速度が感光体25の外周速度よりもやや小さくなるように設定されている。従って、全ての現像ローラ22が感光体25に圧接した状態(現像圧接時)には、一部の現像ローラ22が感光体25から離間した状態(現像離間時)に比べて、感光体25の回転負荷が大きくなる。このため、図8に示すように、感光体モータ57の駆動を開始してから定常回転状態に至るまでの立ち上がり時間は、現像離間時より現像圧接時の方が長くなる。
【0064】
また、ベルトモータ56の駆動を開始してから定常回転状態に至るまでの立ち上がり時間は、感光体モータ57の立ち上がり時間(現像圧接時及び現像離間時)よりも長くなる。このため、ベルトモータ56の駆動と感光体モータ57の駆動とを同時に開始すると仮定した場合には、図8に示すように、感光体25の外周速度が一時的にベルト13の移動速度よりも大きくなり、その後、大小が入れ替わることになる。
【0065】
感光体25の外周速度がベルト13の移動速度よりも大きくなると、感光体25からベルト13に作用する力F2の向きが逆方向となる。さらに、ベルトモータ56及び感光体モータ57とともにクリーナモータ58の駆動が同時に開始されたと仮定すると、ベルトユニット10に対し逆方向に作用する力F3がさらに加わることになる。このようにベルト駆動ギア33、感光体25、クリーニングローラ34の各回転体からベルトユニット10に対して作用する力F1,F2,F3の合力の順方向の大きさが小さくなるか、若しくは合力が逆方向を向くと、ベルトユニット10の位置決め状態が不安定になる可能性がある。
【0066】
そこで、本実施形態では、図9に示すように、感光体モータ57の駆動をベルトモータ56の駆動よりも後に開始することで、常に感光体25の外周速度がベルト13の移動速度よりも大きくならないようにしている。これにより、感光体25からベルトユニット10に作用する力F2は常に順方向に向くことになる。
【0067】
なお、ベルト13と感光体25との相対速度の差が大きい程、両者の擦れ合いによりベルト13若しくは感光体25表面の摩耗が進むおそれがある。そのため、相対速度の差が一定以下になるように、現像圧接時の駆動開始タイミングt2は、現像離間時の駆動開始タイミングt3よりも早いタイミングに設定されている。
【0068】
さらに、図6に示すように、クリーナモータ58の駆動開始タイミングt4は、ベルトモータ56の駆動開始タイミングt1及び感光体モータ57の駆動開始タイミングt2,t3よりも後であるため、クリーニングローラ34による逆方向の力F3が作用する時期が他の力F1,F2が作用する時期に比べて遅くなる。従って、各回転体33,25,34からベルトユニット10に作用する力F1,F2,F3の合力を順方向に大きく保ち、ベルトユニット10の位置決めを安定させることが可能になる。
こうして、CPU50は、各回転体33,25,34をそれぞれ停止状態から定常回転状態に移行する。
【0069】
ここで、図10は、各回転体33,25,34からベルトユニット10に作用する力F1,F2,F3の合力の大きさを示すグラフである。同図に示すように力F1,F2,F3の合力の順方向への大きさは、各回転体33,25,34をそれぞれ停止状態から定常回転状態に移行する期間T1内において最大値をとる。このように、合力の順方向への大きさが最大値となることで、駆動開始前にプリンタ1が外部から衝撃を受けてベルトユニット10が逆方向に位置ずれした場合など、何らかの事情でベルトユニット10が正規の位置になかった場合には、画像形成の開始前に合力によってベルトユニット10を正規の位置まで移動させることができる可能性が高くなる。従って、画像形成時の位置精度を維持する可能性を高めることができる。
【0070】
続いてCPU50は、供給ローラ5により供給トレイ4から用紙3を送り出す。そして、各露光部17に印刷指令に基づく印刷データを送り、既述の画像形成プロセスによって、ベルト13上を搬送される用紙3に対し各感光体25から順次画像を転写する。
【0071】
ここで、ベルト13表面は鏡面状に加工されているため用紙3に比べて摩擦係数が小さく、また用紙3はベルト13に対して静電吸着しているため、ほとんど滑りを生じない。そのため、用紙3が感光体25と転写ローラ14との間のニップ位置に至ると、感光体25からベルト13に作用する力が増大する。図10に示すように、4つの感光体25からベルトユニット10に作用する力F2は、感光体25による用紙3のニップ数が増えるにつれて大きくなり、用紙3が4つの感光体25によりニップされたときに最大となる。なお、用紙3が4つの感光体25によりニップされた時の合力の大きさは、既述の期間T1における合力の最大値よりも低くなる。
【0072】
CPU50は、各回転体33,25,34を定常回転状態とし、ベルト13上の用紙3に画像を転写している期間T2においても、各回転体33,25,34から作用する力F1,F2,F3の合力が常に順方向に向くように制御する。即ち、定常回転状態においては、常に「(F1の大きさ)+(F2の大きさ)>(F3の大きさ)」の関係を維持する。
【0073】
図11は、モータ駆動停止処理を示すフローチャートである。
CPU50は、用紙3に対する印刷が終了した後、図11に示すモータ駆動停止処理を実行する。
【0074】
モータ駆動停止処理においては、まず駆動停止タイミングt5(図6参照)にて、クリーナモータ58に対し駆動の停止を指示する信号を送信する(S201)。これを受けてベルトモータ56が減速を開始する。続いて、一部の現像ローラ22が感光体25に対して離間した状態である場合(S202:No)には、現像離間時タイミングt6で感光体モータ57の減速を開始する(S203)。また、全ての現像ローラ22が感光体25に対して圧接した状態である場合(S202:Yes)には、現像圧接時タイミングt7で感光体モータ57の減速を開始する(S204)。その後、タイミングt8でベルトモータ56の減速を開始し(S205)、このモータ駆動停止処理を終了する。
【0075】
このように各回転体33,25,34の駆動を停止する際には、駆動開始時と逆の順序、即ちクリーナモータ58、感光体モータ57、ベルトモータ56の順に減速を開始する。クリーナモータ58の減速をベルトモータ56及び感光体モータ57の減速よりも先に開始することで、クリーニングローラ34から作用する逆方向の力F3が減衰し始めた後に、遅れて順方向への力F1またはF2が減衰し始めるため、ベルトユニット10の位置決めを安定させることができる。
【0076】
また、感光体モータ57の減速をベルトモータ56の減速よりも先に開始することで、常に感光体25の外周速度がベルト13の移動速度よりも大きくならないようにしている。これにより、感光体25及びベルト13が完全停止状態に至るまでの間、感光体25からベルトユニット10に作用する力F2は常に順方向に向くことになる。
このようにCPU50は、各回転体33,25,34の減速を開始してから各回転体33,25,34が完全停止状態になるまでの期間T3(図10参照)において、各回転体33,25,34から作用する合力が常に順方向に向くように制御する。
【0077】
図10に示すように、CPU50は、各回転体33,25,34の駆動を開始し定常回転状態とした後、各回転体33,25,34を完全停止状態に移行させるまでの期間T4において、ベルトモータ56の駆動開始の瞬間及びベルトモータ56が完全停止する瞬間を除き、常に各回転体33,25,34からの合力が順方向に作用するように制御する。これにより、プリンタ1が外部から衝撃や振動などを受けた場合に、ベルトユニット10が正規の位置から逆方向に移動することが防止される。
【0078】
(本実施形態の効果)
以上のように本実施形態によれば、複数の回転体(ベルト駆動ギア33、感光体25、クリーニングローラ34)を停止状態から定常回転状態に移行させるまでの期間T1に、複数の回転体33,25,34からベルトユニット10に作用する力の合力が、常にフレーム30を位置決め部44に当接させる順方向に向くように制御する。これにより、ベルトユニット10の位置決め状態が安定し、ひいては形成される画像の品質を確保することができる。
【0079】
また、複数の回転体33,25,34をそれぞれ停止状態から定常回転状態に移行させる際に、少なくとも一つの回転体33,25,34の駆動開始タイミングを他の回転体33,25,34に対して異ならせる。複数の回転体33,25,34の駆動を一度に開始すると、各回転体33,25,34の立ち上がり時間の差などのために、合力の向きを一定に制御することが困難な場合があるが、回転体33,25,34の駆動開始タイミングをずらすことにより、そのような制御を容易に実現することができる。
【0080】
また、複数の回転体33,25,34は、ベルトユニット10に対し順方向の力を作用させる順方向回転体(ベルト駆動ギア33)と、逆方向の力を作用させる逆方向回転体(クリーニングローラ34)とを含んでおり、各回転体33,25,34を停止状態から定常回転状態に移行させる際に、少なくとも一つの順方向回転体33の駆動を逆方向回転体34よりも前に開始する。これにより、各回転体33,25,34の駆動開始時に、ベルトユニット10に対し順方向への力が作用し始めた後に、遅れて逆方向への力が作用し始めるため、ベルトユニット10の位置決めを安定させることができる。
【0081】
また、現像ローラ22の接離状態に基づいて現像ローラ22の回転負荷の変動状態を判断し、その変動状態に応じて駆動開始タイミング若しくは減速開始タイミングを制御する。即ち、感光体25に対する回転負荷の変動によって、駆動開始時や減速開始時の反応時間が変化するため、その変化に応じてタイミングを制御することで、回転負荷の変動状態にかかわらず位置決めを安定させることができる。
【0082】
また、ベルト13とベルト13の移動方向に沿った方向に回転する感光体25との相対速度の大小が常に逆転しないように制御する。即ち、仮に駆動開始時や減速開始時に、ベルト13と感光体25との相対速度の大小が逆転すると、感光体25からベルト13に作用する力の向きが反転し、ベルトユニット10の位置決めが不安定になる可能性がある。これに対し、ベルト13と感光体25との相対速度の大小が常に逆転しないように制御することで、ベルトユニット10の位置決めを安定させることができる。
【0083】
また、複数の回転体33,25,34を定常回転状態としベルト13に(用紙3を介して間接的に)画像を担持させている期間T2に、複数の回転体33,25,34からベルトユニット10に作用する力の合力が、常にフレーム30を位置決め部44に当接させる順方向に向くように制御する。これにより、ベルトユニット10の位置決め状態が安定し、ひいては形成される画像の品質を確保することができる。
【0084】
また、複数の回転体33,25,34を停止状態から定常回転状態に移行し、ベルト13に画像を担持させた後に、回転体33,25,34を停止状態に移行させるまでの期間T4に、各回転体33,25,34からベルトユニット10に作用する力の合力が常に順方向に向き、かつその順方向成分の大きさがベルト13に画像を担持させるより前に最大値に到達するように制御する。これにより、ベルトユニット10が画像を担持する前に、何らかの事情で本来の位置に位置決めされていなかった場合でも、各回転体33,25,34から順方向へ大きな力を受けることにより、順方向に移動して正常に位置決めされる可能性が高い。従って、形成される画像の品質を確保することができる。
【0085】
また、ベルトユニット10のフレーム30を順方向に向けて付勢するレバー付勢バネ41を備える。これにより、ベルトユニット10をより確実に位置決めすることができる。また、複数の回転体33,25,34からの合力が順方向に向くように制御することにより、小さな付勢力でも確実にベルトユニット10を位置決めすることができるため、レバー付勢バネ41やレバー40等の部品を小型化したり簡略化したりといったことが可能である。
【0086】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0087】
(1)上記実施形態では、本発明を直接転写タンデム方式のカラープリンタに適用した例を示したが、これに限らず、本発明は、例えば中間転写方式や、4サイクル方式、若しくはインクジェット方式など他の方式の画像形成装置に適用することができる。また、本発明は、カラーの画像形成装置のみならず、モノクロの画像形成装置にも適用することができる。
さらに本発明は、像担持体として中間転写ベルトを有する中間転写ベルトユニットや、あるいは像担持体として感光体やその他のローラを有するユニットを備えた画像形成装置にも適用することができる。
【0088】
(2)本発明によれば、像担持体ユニットに力を作用させる複数の回転体は、2つでも良く、あるいは4つ以上であっても良い。
(3)上記実施形態では、各回転体をDCモータにより駆動するものを示したが、本発明によれば、ステッピングモータ等、他の方式の駆動手段を用いて駆動状態の制御を行っても良い。
【0089】
(4)上記実施形態では、現像ローラの接離状態に基づいて感光体の回転負荷の変動状態を判断し、駆動開始タイミング若しくは減速開始タイミングを制御するものを示したが、本発明によれば、例えば、温度や湿度などの環境変化を温湿度センサ61等により検出し、その環境変化に起因する回転体の回転負荷の変動状態(回転体表面の摩擦力の変動など)を判断し、それに基づいて駆動開始タイミング若しくは減速開始タイミングを制御しても良い。
【0090】
(5)上記実施形態では、レバー付勢バネの付勢力によってベルトユニットを付勢するものを示したが、本発明によれば、支持体を付勢する付勢手段を特に設けない構成としても良い。
(6)上記実施形態では、位置決め部によって、ベルトユニットを前方向に位置決めする構造を示したが、本発明によれば、像担持体ユニットを後方向に位置決めしても良く、また、斜め上、または斜め下方向に位置決めしても良い。
【符号の説明】
【0091】
1…プリンタ(画像形成装置)
2…装置本体
10…ベルトユニット(像担持体ユニット)
13…ベルト(像担持体)
22…現像ローラ(可動部材)
25…感光体(回転体、並行回転体)
30…フレーム(支持体)
33…ベルト駆動ギア(回転体、順方向回転体、駆動ギア)
34…クリーニングローラ(回転体、逆方向回転体)
41…レバー付勢バネ(付勢手段)
44…位置決め部
50…CPU(制御手段、判断手段)
61…温湿度センサ(センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
支持体、及び前記支持体によって回転可能に支持され画像を直接的若しくは間接的に担持する像担持体を有する像担持体ユニットと、
前記装置本体に設けられ、前記支持体に当接することにより前記像担持体ユニットを位置決めする位置決め部と、
前記装置本体に設けられ、互いに独立して回転駆動され、かつその回転に基づく力を前記像担持体ユニットに対して作用させることが可能な複数の回転体と、
前記複数の回転体の駆動状態を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記複数の回転体をそれぞれ停止状態から定常回転状態に移行させるまでの期間に、前記複数の回転体から前記像担持体ユニットに作用する力の合力が、常に前記支持体を前記位置決め部に当接させる順方向に向くように制御する画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、前記複数の回転体をそれぞれ停止状態から定常回転状態に移行させる際に、前記複数の回転体のうち少なくとも一つの回転体の駆動開始タイミングを他の回転体に対して異ならせる。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置において、
前記複数の回転体は、前記像担持体ユニットに対して前記位置決め部に当接する順方向に力を作用させる順方向回転体と、順方向とは逆方向に力を作用させる逆方向回転体とを含んでおり、
前記制御手段は、前記複数の回転体をそれぞれ停止状態から定常回転状態に移行させる際に、少なくとも一つの前記順方向回転体の駆動開始タイミングを前記逆方向回転体の駆動開始タイミングよりも前とする。
【請求項4】
装置本体と、
支持体、及び前記支持体によって回転可能に支持され画像を直接的若しくは間接的に担持する像担持体を有する像担持体ユニットと、
前記装置本体に設けられ、前記支持体に当接することにより前記像担持体ユニットを位置決めする位置決め部と、
前記装置本体に設けられ、互いに独立して回転駆動され、かつその回転に基づく力を前記像担持体ユニットに対して作用させることが可能な複数の回転体と、
前記複数の回転体の駆動状態を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記複数の回転体をそれぞれ定常回転状態から停止状態に移行させるまでの期間に、前記複数の回転体から前記像担持体ユニットに作用する力の合力が、常に前記支持体を前記位置決め部に当接させる順方向に向くように制御する画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、前記複数の回転体をそれぞれ定常回転状態から停止状態に移行させる際に、前記複数の回転体のうち少なくとも一つの回転体の減速開始タイミングを他の回転体に対して異ならせる。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において、
前記複数の回転体は、前記像担持体ユニットに対して前記位置決め部に当接する順方向に力を作用させる順方向回転体と、順方向とは逆方向に力を作用させる逆方向回転体とを含んでおり、
前記制御手段は、前記複数の回転体をそれぞれ定常回転状態から停止状態に移行させる際に、少なくとも一つの前記逆方向回転体の減速開始タイミングを前記順方向回転体の減速開始タイミングよりも前とする。
【請求項7】
請求項2,3,5,6のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記複数の回転体のうち少なくとも一つの回転体に対する回転負荷の変動状態を判断する判断手段を備え、
前記制御手段は、前記判断手段により判断される回転負荷の変動状態に応じて前記タイミングを制御する。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成装置において、
前記判断手段の判断対象である回転体に対して接離可能な可動部材を有し、
前記判断手段は、前記可動部材の接離状態に基づいて回転負荷の変動状態を判断する。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の画像形成装置において、
温度及び湿度のうちの少なくとも一方を検知するセンサを備え、
前記判断手段は、前記センサにより検知された結果に基づいて回転負荷の変動状態を判断する。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記複数の回転体は、前記像担持体を回転駆動する駆動ギアと、定常回転状態において前記像担持体の回転方向に沿った方向に回転しかつ前記像担持体に対し順方向の力を作用させる並行回転体とを含んでおり、
前記制御手段は、前記期間において、前記像担持体と前記並行回転体との相対速度の大小が常に逆転しないように制御する。
【請求項11】
装置本体と、
支持体、及び前記支持体によって回転可能に支持され画像を直接的若しくは間接的に担持する像担持体を有する像担持体ユニットと、
前記装置本体に設けられ、前記支持体に当接することにより前記像担持体ユニットを位置決めする位置決め部と、
前記装置本体に設けられ、互いに独立して回転駆動され、かつその回転に基づく力を前記像担持体ユニットに対して作用させることが可能な複数の回転体と、
前記複数の回転体の駆動状態を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記複数の回転体をそれぞれ定常回転状態とし、かつ前記像担持体に画像を担持させている期間に、前記複数の回転体から前記像担持体ユニットに作用する力の合力が、常に前記支持体を前記位置決め部に当接させる順方向に向くように制御する画像形成装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、前記複数の回転体をそれぞれ停止状態から定常回転状態に移行させ、前記像担持体に画像を担持させた後、前記回転体をそれぞれ停止状態に移行させるまでの期間に、前記複数の回転体から前記像担持体ユニットに作用する力の合力が常に順方向に向き、かつ前記合力の順方向成分の大きさが前記像担持体に画像を担持させるより前に最大値に到達するように制御する。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記支持体を順方向に向けて付勢する付勢手段をさらに備える。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記像担持体は、用紙を搬送するベルトであって、
前記複数の回転体は、前記ベルトを駆動する駆動ギアと、形成された画像を前記ベルト上の用紙に転写させる感光体とを含んでいる。
【請求項15】
請求項14に記載の画像形成装置において、
前記複数の回転体は、さらに前記ベルトを清掃するクリーニングローラを含んでいる。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−231048(P2010−231048A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79472(P2009−79472)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】