説明

畦成形機

【課題】水田等の圃場の作業残隅部の畦成形作業を走行機を後進させて行うような熟練を要する作業機ではなく、制御装置や制御プログラムが簡易で操作が簡単であるとともに、全体の製造コストを低くできる畦成形機の提供。
【解決手段】走行機が畦から離れる方向に旋回走行しながら直線状の連続した畦を成形する非平行走行畦成形作業が行える制御部を有し、非平行走行畦成形作業時は、畦成形作業部4に畦成形作業部4の進行方向の変位量を検知する検知手段6が設けられていて、変位量に基づき第2水平回動手段を作動させて畦成形作業部4の進行方向を一定方向とする制御を行うとともに、第1水平回動手段はフリー状態と固定状態を交互に予め設定した実行時間で繰り返し行う制御のみにより制御されて畦成形作業を行う畦成形機による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の走行機に連結されて牽引され水田等の畦成形作業を行う畦成形機に関する。詳細には、水田の畦成形を圃場の直線部から圃場の隅部までの畦成形を安定して行うことのできる畦成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
水田等の圃場の畦成形作業において、トラクタ等の走行機に連結されて、走行機の進行方向に沿って進行し畦成形作業を行う畦成形機は、様々な形態が知られている。従来技術としては、畦成形機が走行機の進行方向に対して側方にオフセットした位置で作業する畦成形機や、走行機の進行方向に対して水平方向に180度回転する畦成形機などが公知である。
【0003】
水田等の畦成形においてトラクタに連結して作業部を後側方に位置させた畦成形作業では、作業部はトラクタの側方後部にあるためトラクタが直線的に行き止まりになる圃場隅部になるとトラクタ前方部から作業部までの間が連続的に畦成形作業はできなかった。そのため残りの隅部の畦成形作業としては、畦成形作業部をトラクタ進行方向に対して180度角水平方向に回動させ、更にトラクタも前後180度回転させて方向転換した後、トラクタを後進させて残りの隅部の畦成形作業を行っていた(従来技術1)。
【0004】
また、作業機が走行機の進行方向に対して側方にオフセットした位置で作業する作業機としては、以下のような公知例がある。特開2004−254522号公報(従来技術2)には、「オフセット作業方法」として、「走行機体にオフセット作業が行えるように装着された作業機による作業方法であって、作業機は水平面内での回動及び移動の自由度を有し、作業機自体の直進性を維持しながら、走行機体が圃場を走行しつつ作業を行う作業部分から走行機体が旋回する圃場隅部分までの仕上げ作業を行う。作業機は、走行機体から見て少なくとも2以上の水平回動、あるいは水平移動と水平回動の自由度を有し、直進性を制御し、前作業跡を基準に行う作業装置、作業機自身の回動変位量を基準に行う作業装置などを備えている。」が開示されている。
【0005】
更に、特開2004−267012号公報(従来技術3)には、「オフセット作業機」として「作業部のオフセット位置を調整自在にしたオフセット位置調整機構と、作業部の作業方向を回動調整自在にした作業方向調整機構と、作業部と作業部によって作業がなされる基準作業線との位置関係を検出する検出部と、検出部からの検出信号に基いてオフセット位置調整機構を動作させて作業部のオフセット位置を調整すると共に作業方向調整機構を動作させて作業部の作業方向を調整する制御手段とを備え、作業部の作業位置と作業方向を基準作業線に沿うように制御する」作業機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−254522号公報(従来技術2)
【特許文献2】特開2004−267012号公報(従来技術3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術1のように水田等の圃場の作業残隅部の作業処理を行うために、トラクタ進行方向に対して作業部を180度角水平方向に回動させ、更にトラクタも前後180度回転させて方向転換した後、トラクタを後進させるという複数の面倒な作業を行わなければならないという問題があった。特に、トラクタを後進させて残隅部の作業処理を行う場合は、作業者は後方を見ながらトラクタの後進操作を行うため運転技術や作業などに熟練を要するという課題があり、誰でもが容易に作業を行い難いという課題があった。
【0008】
従来技術2乃至3に係る作業機は、水田等の圃場の作業残隅部の畦成形作業を走行機を走行、旋回させて行うことのできる作業機であるが、2以上の水平回動、あるいは水平移動と水平回動の自由度部からの信号を受けてそれぞれ比較しながらそれぞれの姿勢制御を行う必要がある等の、制御装置や制御プログラムが複雑で操作が難しいとともに、全体の製造コストが嵩む問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、トラクタ等の走行機に装着される装着フレームと、盛土部及び成畦部とを有する畦成形作業部を具備し、トラクタ等の走行機に装着され作業する畦成形機において、装着フレームから後方へ延設され、装着フレームに対し第1水平回動軸を回動中心に第1水平回動手段によって水平回動自在に設けられた支持フレームと、該支持フレームの後端部には、第2水平回動軸を中心に第2水平回動手段による回動によって水平方向に回動可能である前記畦成形作業部が設けられていて、畦成形作業部を走行機の側方にオフセットさせて畦と平行に走行機を走行させ畦成形作業を行うことが可能であるとともに、走行機が畦から離れる方向に旋回走行しながら直線状の連続した畦を成形する非平行走行畦成形作業が行える制御部を有し、非平行走行畦成形作業時は、畦成形作業部に畦成形作業部の進行方向の変位量を検知する検知手段が設けられていて、該変位量に基づき制御部が第2水平回動手段を作動させて畦成形作業部の進行方向を一定方向とする制御を行うとともに、第1回動手段はフリー状態と固定状態を交互に予め設定した実行時間で繰り返し行う制御のみにより制御されて畦成形作業を行うことを特徴とした畦成形機を提案する。
【0010】
また、畦成形作業部の進行方向の変位量を検知する検知手段は、畦成形作業部に設けた左右方向に回動するセンサーアームと、該センサーアームの回動量を検出するセンサーと、センサーアームの後端に設けられ畦成形作業時に圃場面に接地して進行方向と直交する水平方向に回転軸を有した接地輪で構成されている0009欄に記載の畦成形機を提案する。
【0011】
更に、走行機を停止して第1水平回動軸を回動中心として支持フレームを回動させるとともに、畦成形作業部の進行方向を一定方向とする制御を行い、畦成形作業部を第2水平回動軸を回動中心として回動させ畦成形作業を行うことが可能である0009乃至0010欄に記載の畦成形機を提案する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、支持フレームが装着フレームに対して水平方向に回動する第1水平回動軸と、畦成形作業部が支持フレームに対して水平方向に回動する第2水平回動軸との2つの水平回動軸があり、それぞれ制御部により独立して制御される。そのため、畦成形作業部を走行機の側方にオフセットさせ、畦と平行に走行機を走行させ畦成形作業を行うことが可能であるとともに、走行機が畦から離れる方向に旋回走行しながら直線状の連続した畦を成形する非平行走行畦成形作業を行うことが可能であるため、圃場隅部の畦成形作業が、走行機の直線走行から旋回走行の連続走行作業によって従来より更に隅部に近い位置まで堅固な畦を成形することが可能となった。
【0013】
また、非平行走行畦成形作業時は、畦成形作業部に畦成形作業部の進行方向の変位量を検知する検知手段が設けられていて、この検知変位量に基づき制御部が第2水平回動手段を作動させて畦成形作業部の進行方向を一定方向とする制御を行うとともに、第1回動手段はフリー状態と固定状態を交互に予め設定した実行時間で繰り返し行う制御のみにより制御されて畦成形作業を行うため、作業時常に2つ以上の回動部の変位量を検知し、それを比較しながら2つ以上の回動手段を常に正確に作動させる制御に比べ、それぞれ独立した制御を行えばよいため制御部を簡素化可能であり、製造コストの低減が可能であり、メンテナンスも容易になる。
【0014】
さらに、畦成形作業部の進行方向の変位量を検知する検知手段は、畦成形作業部に設けた左右方向に回動するセンサーアームと、センサーアームの回動量を検出するセンサーと、センサーアームの後端に設けられ畦成形作業時に圃場面に接地して進行方向と直交する水平方向に回転軸を有した接地輪で構成されていることにより、接地輪が畦成形作業部の進行している方向に常に向いた状態となるため、直進作業から非平行走行畦成形作業へ移行する直前のセンサーアームの位置を基準に、畦成形作業部の向きの変位量を検知して変位量分第2水平回動手段を作動させ畦成形作業部を戻せばよいため、簡易な構成で容易に制御調整が可能となる。
【0015】
更にまた、走行機を停止して第1水平回動軸を回動中心として支持フレームを回動させるとともに、畦成形作業部の進行方向を一定方向とする制御を行い、畦成形作業部を第2水平回動軸を回動中心として回動させ畦成形作業を行うことが可能であるため、走行機が旋回動作しながら作業できる範囲から更に残隅部の処理作業が可能となるとともに、様々な作業条件に対応した応用作業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を実施した畦成形機の側面図
【図2】本発明を実施した畦成形機の平面図
【図3】検知手段部の要部断面側面図
【図4】圃場隅部の畦成形作業説明図
【図5】制御部のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明を実施した畦成形機の側面図、図2は本発明を実施した畦成形機の平面図、図3は検知手段部の要部断面側面図、図4は圃場隅部の畦成形作業説明図、図5は制御部のフローチャートを示したものである。
【0018】
図1は、本発明を実施した畦成形機をトラクタへ装着した状態を示したもので、トラクタ1後部の左右一対のロアーリンク12と中央上方に設けたトップリンク10とからなる3点リンクヒッチ機構に、これらを定型化する連結枠2(クイックカプラー又はオートヒッチと称される)を前記ロアーリンク12に水平方向に設けたロアーリンクピン13と前記トップリンク10に同じく水平方向に設けたトップリンクピン11をそれぞれ挿入して取り付け、畦成形機の装着フレーム3前方に設けた左右一対のロアーピン20と該中央上方に設けたトップマスト30の前端部に設けたアッパーピン22に前記連結枠2の係合部を係合させ連結される。
【0019】
連結手順は、先ず連結枠2上方のフックを前記トップマスト30のアッパーピン22に係合させ、トラクタの3点リンク機構を上昇させこれに連結された連結枠2を上昇させると、前記畦成形機側のロアーピン20が連結枠2側に引き寄せられ連結枠2の下部の係合部と係合し連結される。下部の係合部は、連結枠2に設けたフック21をロアーピン20に引掛けて外れ防止をする。
【0020】
図2は連結枠2を外した状態の平面視の本発明の畦成形機を示したもので、トップマスト30やロアーピン20は、装着フレーム3の前方に突設されて設けられていて、装着フレーム3から後方へ延設され、装着フレーム3に対し第1水平回動軸51を回動中心に第1水平回動手段50、この実施形態では旋回シリンダ501によって後方側を水平回動自在に設けられた支持フレーム5と、支持フレーム5の後端側に設けられた第2水平回動軸53を中心に、第2水平回動手段の回動シリンダ521によって水平方向に回動可能である畦成形作業部4と、第1水平回動手段50と第2水平回動手段52とをそれぞれ制御する制御部(図示せず)と、畦成形作業部4に設けられ畦成形作業部4の進行方向の変位量を検知する検知手段6を有する。
【0021】
畦成形作業部4の駆動は、トラクタ1から装着フレーム3前方に突設された入力軸31にユニバーサルジョイント(図示せず)を連結して動力が伝達され、さらに装着フレーム3側と畦成形作業部4側との間に連結されたユニバーサルジョイント7により動力が伝達され駆動される。
【0022】
この発明の1つの実施形態である畦成形機は、畦成形作業部4をトラクタ1の側方にオフセットさせ、畦Rと平行にトラクタ1を走行させ畦成形作業を行うことが可能であるとともに、トラクタ1が畦から離れる方向に旋回走行しながら直線状の連続した畦Rを成形する非平行走行畦成形作業を行うことが可能である。更に、トラクタ1を停止して支持フレーム5を旋回シリンダ501により回動させながら畦成形作業を行うことが可能である。
【0023】
畦成形作業部4は、作業進行方向前方側に設けられる盛土部40と、盛土部40の後方側に設けられる成畦部41とからなる。盛土部40は、掘削爪401を多数放射状に設けたローター軸を回転させ、旧畦の一部と圃場面の一部を掘削しながら旧畦上に土を盛上げ、盛上げられた土は後方に位置する成畦部41により新畦に成形される。成畦部41は畦斜面成形用の円錐面を有するディスク411と畦上面成形用の円筒面を有する上面ローラ413を有し、これをトラクタ1の進行速度より速い速度で進行方向に回転させ畦を成形する。
【0024】
装着フレーム3の後方には、垂直方向に設けた第1水平回動軸51が設けてあり、これを中心に水平回動可能に後方側に延設された支持フレーム5が設けられている。さらに支持フレーム5の回動外端側には垂直方向に設けた第2水平回動軸53が設けてあり、これを中心に畦成形作業部4が水平回動可能に設けられている。
【0025】
支持フレーム5の回動は、装着フレーム3と支持フレーム5とにそれぞれ端部を水平回動自在に連結された第1水平回動手段である旋回シリンダ501の伸縮により行われる。また、畦成形作業部4を水平回動させる第2水平回動手段は、一端を支持フレーム5に水平回動自在に設けられたプレート状の回動アーム522と、回動アーム522の回動外端側と支持フレーム5とにそれぞれ端部を水平回動自在に連結された回動シリンダ521と、プレート状の回動アーム522に設けた水平方向のガイド穴523に嵌合する畦成形作業部4側に保持された係合ピン524で構成されている。
【0026】
係合ピン524は、平面視において畦成形作業部4の回動中心である第2水平回動軸53と離間して設けられていて、回動シリンダ521を伸縮させると、これに連結された回動アーム522が第2水平回動軸近傍の第1水平回動軸寄りに設けられた回動軸を中心に水平回動を行い、回動アーム522に設けたガイド穴523に嵌合した係合ピン524が回動され、係合ピン524を保持している畦成形作業部4が第2水平回動軸53を中心に回動される。
【0027】
畦成形作業部4には、畦成形作業部4の進行方向の変位量を検知する検知手段6が設けられていて、検知手段6は畦成形作業部4下方に位置して設けられている。検知手段6は、畦成形作業部4下方の垂直方向に設けた左右回動軸67と、これに嵌合して水平回動する左右回動ボス68と、左右回動ボス68に設けた水平方向の上下回動軸66を中心に上下に回動自在に回動外端側を後方斜め下方にして設けられたセンサーアーム60と、センサーアーム60の回動外端に水平方向の回転軸62を中心に回転自在に設けられた接地輪63と、接地輪63を上下回動軸66を中心に下方に付勢するスプリング64と、スプリング64を保持しているガイド棒65と、左右回動軸67と同軸上に設けられて左右回動ボス68の回動角を検知するセンサー61で構成されている。
【0028】
ガイド棒65は、ガイド棒65の一端を左右回動ボス68のセンサーアーム60下方に位置する回動軸を中心に上下回動自在に設けられているとともに、センサーアーム60の上下回動軸66と回転軸62の間に設けたガイド穴に挿入されセンサーアーム60と略直交して設けられていて、センサーアーム60の上方側の突設部にはスプリング64が挿入されガイド棒65端部側に設けた調整穴に挿入された固定ピンで抜け止めがされている。これにより、センサーアーム60が下方に付勢され接地輪63が下方に常に付勢された状態となる。接地輪63は円板状を呈していて作業時に外周部は圃場面に刺さり込み、畦成形作業部4が進行すると左右回動軸67に牽引された状態のキャスター状となり、常に進行方向に向いて回転する。このため、畦成形作業部4が基準とする向きの位置からのずれ角を左右回動ボス68の回動量から左右回動軸67に固定されたセンサー61が検知することができる。
【0029】
畦成形作業部4の成畦部41の内側には、略進行方向に回転自在の円板状の抵抗輪412が設けてあり、抵抗輪412の外周は作業時圃場面に刺さり込み、成畦部41の畦成形時の押し付け反力を受け止める役目を行う。
【0030】
制御部は、畦成形作業部4をトラクタ1の側方にオフセットさせ、畦Rと平行にトラクタ1を走行させ直線状の畦成形作業を行う場合の標準作業モードと、トラクタ1が畦Rから離れる方向に旋回走行しながら直線状の連続した畦Rを成形する非平行走行畦成形作業を行う旋回作業モードと、トラクタ1を停止して畦成形作業部4をトラクタ1後方において略機幅方向に移動させて畦成形作業を行う後方作業モードとを有している。
【0031】
制御部は、標準作業モードの場合、畦成形作業部4を第1水平回動手段50である旋回シリンダ501と、第2水平回動手段の回動シリンダ521とを予め設定された標準作業位置に固定して作業を行うようにプログラミングされている。第1水平回動軸51部と第2水平回動軸53部には、その回動角を検知するポテンショメータ(図示せず)が設けてあり、標準作業位置の支持フレーム5の位置と畦成形作業部4の位置を制御部は検知して記憶可能である。
【0032】
制御部は、旋回作業モードの場合、支持フレーム5を回動させる旋回シリンダ501をフリー状態と固定状態とを交互に予め設定した実行時間で繰り返し行うとともに、畦成形作業部4を回動させる回動シリンダ521を、畦成形作業部4の検知手段6により検知した畦成形作業部4の進行方向の変位量と基準位置とを比較して基準位置に戻す方向に常に作動させるようにプログラミングされている。
【0033】
制御部は、後方作業モードの場合、トラクタ1を停止して支持フレーム5を第1水平回動手段50を伸長させて回動させ、検知手段6の情報に基づき畦成形作業部4の進行方向の変位量を基準位置に戻す方向に第2水平回動手段52を常に作動させるようにプログラミングされている。
【0034】
この発明の実施形態である第1水平回動手段50及び第2水平回動手段52は、油圧ポンプや油圧バルブ等を介して行なわれるが、この作動の制御はトラクタ1の運転席から操作できる制御部(図示せず)によって自動操作又は遠隔操作する。
【0035】
次にこの発明の実施形態である畦成形機の作動について図4と図5のフローチャートに基いて説明する。制御部が標準作業モードの場合、畦成形作業部4は第2水平動回動手段52と第1水平回動手段50を予め設定された標準作業位置に固定してトラクタ1に牽引されトラクタ1の走行方向と平行に畦を成形する。図4の(a)は標準作業モードから旋回作業モードに移行する直前の状態を示したものである。
【0036】
旋回作業モードで作業を行うことにより、圃場隅部のトラクタ1が直線的に行き止まりになる圃場隅部のトラクタ前方部から作業部までの間が連続的に畦成形作業を行うことが可能となる。標準作業モードから残りの隅部の畦成形作業は、図4の(a)の状態から運転者は旋回スイッチを押してON状態にするとともにトラクタ1を左にハンドルをきり畦Rから離れる方向に曲がり始める。図4の(b)は旋回途中の状態を示したものである。
【0037】
図5に示すフローチャートに従って制御部の旋回作業モードの状態を以下に説明する。旋回スイッチが押されてON状態となると、旋回スイッチがOFF状態か支持フレーム3が回動できる終端位置とならない限り、旋回シリンダ501がフリー状態と固定状態を交互に繰り返す動作を行う。本実施例においては旋回シリンダ501がフリー状態を1秒、固定状態を0.7秒交互に繰り返し動作する。また、畦成形作業部4に設けた検知手段6は、旋回スイッチが押された時の接地輪63の向きを基準位置として検出するとともに、基準位置から畦成形作業部4が左右に回動した回動角を常に検出して基準位置に戻す方向に第2水平回動手段52を作動させ、トラクタ1が旋回し始めたときの畦成形作業部4の方向を常に維持するように制御する。本実施例においては、戻す方向に回動シリンダ521を0.6秒動作させた後にセンサー基準位置からの回動角を再び検出して基準位置に戻す方向に常に第2水平回動手段52を作動させる制御を繰り返すことで方向を維持させる。旋回シリンダ501がフリー状態と固定状態を交互に繰り返す動作を行うことにより、トラクタ1の旋回による牽引力を畦成形作業部4の直進方向の分力又は畦側に成畦部45を押し付ける方向の分力に多く分散させることができるため、畦成形作業部4の前進が滞りなくスムーズにおこなわれるとともに、堅固な畦を成形できる。
【0038】
また、後方作業モードの場合、畦成形作業部4をトラクタ1後方に位置させるとともに畦の方向に向かせ、第1水平回動手段50を一定回動させ、第2水平回動手段52を前記旋回作業モードと同じく検知手段6の情報に基づき畦成形作業部4を制御して作業が行われる。図4の(c)は、旋回作業モードで作業が行えなかった隅部の残部をさらに後方作業モードで行う状態を示したものである。後方作業モードは、旋回作業モードから連続させて行えるようにプログラミングされても良い。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明は、水田等の矩形の圃場において、その周囲に設ける畦の成形作業を行う場合に利用できる。特に、水田等の矩形の圃場の隅部を角部まで直線状に未作業部分がなく形成可能で、非常に容易かつ短時間に畦成形作業を行うことができるため作業効率が高く利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0040】
1 トラクタ
10 トップリンク
11 トップリンクピン
12 ロアーリンク
13 ロアーリンクピン
2 連結枠
20 ロアーピン
21 フック
22 アッパーピン
3 装着フレーム
30 トップマスト
31 入力軸
4 畦成形作業部
40 盛土部
401 掘削爪
41 成畦部
411 ディスク
412 抵抗輪
413 上面ローラ
5 支持フレーム
50 第1水平回動手段
501 旋回シリンダ
51 第1水平回動軸
52 第2水平回動手段
521 回動シリンダ
522 回動アーム
523 ガイド穴
524 係合ピン
53 第2水平回動軸
6 検知手段
60 センサーアーム
61 センサー
62 回転軸
63 接地輪
64 スプリング
65 ガイド棒
66 上下回動軸
67 左右回動軸
68 左右回動ボス
7 ユニバーサルジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタ等の走行機に装着される装着フレームと、盛土部及び成畦部とを有する畦成形作業部を具備し、トラクタ等の走行機に装着され作業する畦成形機において、
装着フレームから後方へ延設され、装着フレームに対し第1水平回動軸を回動中心に第1水平回動手段によって水平回動自在に設けられた支持フレームと、該支持フレームの後端部には、第2水平回動軸を中心に第2水平回動手段による回動によって水平方向に回動可能である前記畦成形作業部が設けられていて、畦成形作業部を走行機の側方にオフセットさせて畦と平行に走行機を走行させ畦成形作業を行うことが可能であるとともに、走行機が畦から離れる方向に旋回走行しながら直線状の連続した畦を成形する非平行走行畦成形作業が行える制御部を有し、
非平行走行畦成形作業時は、畦成形作業部に畦成形作業部の進行方向の変位量を検知する検知手段が設けられていて、該変位量に基づき制御部が第2水平回動手段を作動させて畦成形作業部の進行方向を一定方向とする制御を行うとともに、第1回動手段はフリー状態と固定状態を交互に予め設定した実行時間で繰り返し行う制御のみにより制御されて畦成形作業を行うことを特徴とした畦成形機。
【請求項2】
畦成形作業部の進行方向の変位量を検知する検知手段は、畦成形作業部に設けた左右方向に回動するセンサーアームと、該センサーアームの回動量を検出するセンサーと、センサーアームの後端に設けられ畦成形作業時に圃場面に接地して進行方向と直交する水平方向に回転軸を有した接地輪で構成されていることを特徴とした請求項1に記載の畦成形機。
【請求項3】
走行機を停止して第1水平回動軸を回動中心として支持フレームを回動させるとともに、
畦成形作業部の進行方向を一定方向とする制御を行い、畦成形作業部を第2水平回動軸を回動中心として回動させ畦成形作業を行うことが可能であることを特徴とした請求項1または請求項2記載の畦成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−172201(P2010−172201A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15217(P2009−15217)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】