説明

異方導電性接着シート及び接続構造体

【課題】 微細回路の隣接する回路間の絶縁性を損なうことなく、良好な電気的接続性を実現する異方導電性接着シート及びそれを用いた接続構造体を提供すること。
【解決手段】少なくとも硬化剤及び硬化性の絶縁性樹脂並びに導電性粒子を含んでなる異方導電性接着シートであって、異方導電性接着シートの片側表面から厚み方向に沿って該導電性粒子の平均粒径の1.5倍以内の領域中に導電性粒子個数の90%以上が存在し、かつ、導電性粒子の90%以上が他の導電性粒子と接触せずに存在しており、該導電性粒子の平均粒径が1〜8μmであり、近接する導電性粒子との平均粒子間隔が平均粒径の1倍以上5倍以下かつ20μm以下であり、面方向の粒子配列パターンが略三角格子であり、異方導電性接着シートの厚みが該平均粒子間隔の2倍以上40μm以下である上記異方導電性接着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細回路接続性に優れた異方導電性接着シート及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、微細回路を接続するための異方導電性接着シートに関して、接続性改良、短絡防止のために、種々の導電性粒子の検討及び異方導電性接着剤構成の検討がなされている。例えば、導電性粒子と同等の熱膨張係数をもつ絶縁粒子を配合する方法(特許文献1参照)、短絡防止のため、導電性粒子の表面に絶縁性粒子を付着させる方法(特許文献2参照)、導電性粒子の表面を電気絶縁性樹脂で被覆する方法(特許文献3参照)、導電性粒子を含む層と含まない層を積層し、隣接する回路間の短絡を防止する方法(特許文献4参照)、端子回路を感光性樹脂で覆い、接続部以外の部分を選択硬化して粘着性を消失させ、粘着性を有する部分に導電性粒子を付着させ、次いで粘着性樹脂で覆って隣接する端子回路間の短絡を防止する方法(特許文献5参照)、あらかじめ凹部を有する剥離ライナを作成し、該凹部に導電性粒子を単数ないし複数個配置し、これを接着剤層に付着させ異方導電性接着シートを作成する方法(特許文献6)、二軸延伸可能なシートを導電性粒子で被覆し、被覆されたシートを導電性粒子の粒子径を超えない範囲で延伸し、分離された導電性粒子を接着剤層に移動し、異方導電性接着シートを作成する方法(特許文献7)等が公知である。
【0003】
しかしながら、導電性粒子に絶縁性を持たせる等の従来技術においては、絶縁性被覆、又は絶縁性粒子付着のために、導電性粒子の粒径を微小化することに限界があり、微細回路接続の場合、絶縁性確保と接続粒子数確保の両立を満足できるものではなかった。また、接着剤構成による短絡防止等の従来技術においても、微細回路接続の場合は、絶縁性確保と電気接続性を同時に満足できるものではなかった。
【0004】
また、特許文献6には、凹部を有する剥離ライナを作成し、該凹部に導電性粒子を単数ないし複数個配置する実施例は開示されているものの、これを接着剤層に付着させ異方導電性接着シートとした実施例は何ら開示されていない。実際、導電粒子の粒径より浅い凹部に単数ずつ導電性粒子を配置することは難しく、逆に、導電性粒子の粒径より深い凹部に単数の導電性粒子を配置することは可能であるけれどもこれを接着剤層に付着させることは難しく、結果として得られた異方導電性接着剤は、絶縁性確保と接着粒子数確保の両立を十分に満足できるものではなかった。
【0005】
また、特許文献7に開示された異方導電性接着シートは、端子同士で導電性粒子を挟み込んで導電性を確保し、同時に導電粒子を固定することにより絶縁性を確保する技術思想に基づくため、導電性粒子の粒子径、導電性粒子同士の間隔、異方導電性接着シートの膜厚をほぼ同じ値に揃える必要が生じる。このため接続する一方の端子の横方向のギャップ間には絶縁樹脂が充填されず、絶縁性が満足のいくものではなかった。また樹脂量が少ないため端子同士の接着性も満足のいくものではなかった。導電性確保の観点から導電性粒子同士の間隔は導電粒子の粒子径を超える事ができず、微細回路接続の場合は特に、絶縁性確保と電気接続性確保とを同時に満足することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−349339号公報
【特許文献2】特許第2895872号公報
【特許文献3】特許第2062735号公報
【特許文献4】特開平6−45024号公報
【特許文献5】特許第3165477号公報
【特許文献6】特表2002−519473号公報
【特許文献7】特許平2−117980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、微細回路の隣接する回路間の絶縁性を損なうことなく、良好な電気的接続性を実現する異方導電性接着シート及びそれを用いた接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ある特定の平均粒子径を有する導電性粒子が、ある特定の範囲内に、ある特定割合以上の導電性粒子とは接触せずに存在していることを特徴とする異方導電性接着シートを用いることによって、上記課題を達成できることを見出した。すなわち、本発明は、以下に記載する通りのものである。
【0009】
(1)少なくとも硬化剤及び硬化性の絶縁性樹脂並びに導電性粒子を含んでなる異方導電性接着シートであって、異方導電性接着シートの片側表面から厚み方向に沿って該導電性粒子の平均粒径の1.5倍以内の領域中に導電性粒子個数の90%以上が存在し、かつ、導電性粒子の90%以上が他の導電性粒子と接触せずに存在しており、該導電性粒子の平均粒径が1〜8μmであり、近接する導電性粒子との平均粒子間隔が平均粒径の1倍以上5倍以下かつ20μm以下であり、面方向の粒子配列パターンが略三角格子であり、異方導電性接着シートの厚みが該平均粒子間隔の2倍以上40μm以下である上記異方導電性接着シート。
(2)前記導電性粒子が、粒径分布の幾何標準偏差が1.2〜2.5の球状粒子である(1)に記載の異方導電性接着シート。
(3)前記導電性粒子が、貴金属被覆された樹脂粒子、貴金属被覆された金属粒子、金属粒子、貴金属被覆された合金粒子、及び合金粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である(1)又は(2)記載の異方導電性接着シート。
(4)長尺である(1)〜(3)のいずれかに記載の異方導電性接着シート。
(5)微細接続端子を有する電子回路部品と、それに対応する回路を有する回路基板とを異方導電性接着シートで電気的に接続する方法において、該電子回路部品が、該微細接続端子の高さが導電性粒子の平均粒子間隔の3〜15倍かつ40μm以下であり、該微細接続端子の間隔が該平均粒子間隔の1〜10倍かつ40μm以下であり、該微細接続端子のピッチが該平均粒子間隔の3〜30倍かつ80μm以下である電子回路部品であり、該電子回路部品とそれに対応する回路を有する回路基板とを、(1)〜(4)のいずれかに記載の異方導電性接着シートを用いて電気的に接続することを含む上記方法。
(6)(5)に記載の方法により接続された微細接続構造体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の異方導電性接着剤及び接続構造体は、隣接回路間の良好な絶縁特性を有し、かつ接続回路間の良好な電気的接続性を有する。本発明は特に微細回路の接続においても上記効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。
まず、本発明における導電性粒子について説明する。本発明において、導電性粒子は、公知のものを用いることができるが、貴金属被覆された樹脂粒子、貴金属被覆された金属粒子、金属粒子、貴金属被覆された合金粒子、及び合金粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。それらは、融点が500℃以下であることがより好ましい。
【0012】
貴金属被覆された樹脂粒子としては、ポリスチレン、ベンゾグアナミン、ポリメチルメタアクリレート等の球状粒子に、ニッケル及び金をこの順に被覆したものを用いることが好ましい。貴金属被覆された金属粒子としては、ニッケル、銅等の金属粒子に、金、パラジウム、ロジウム等の貴金属を最外層に被覆したもの、また、貴金属被覆された合金粒子としては、後述の合金粒子に金、パラジウム、ロジウム等の貴金属を最外層に被覆したもの、を用いることが好ましい。被覆する方法としては、蒸着法、スパッタリング法等の薄膜形成法、乾式ブレンド法によるコーティング法、無電解めっき法、電解めっき法等の湿式法を用いることができる。量産性の点から、無電解めっき法が好ましい。
【0013】
金属粒子、合金粒子としては、銀、銅、ニッケル等の金属からなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。合金粒子としては、融点が500℃以下、さらには350℃以下の低融点合金粒子を用いると、接続端子間に金属結合を形成することも可能であり、接続信頼性の点からより好ましい。低融点合金粒子を用いる場合は、予め粒子表面にフラックス等を被覆しておくことが好ましい。いわゆるフラックスを被覆することにより、表面の酸化物等を取り除くことができ、好ましい。フラックスとしては、アビエチン酸等の脂肪酸等を用いることができる。
【0014】
導電性粒子の平均粒径と最大粒径の比は2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。該導電性粒子の粒度分布はより狭いほうが好ましく、該導電性粒子の粒径分布の幾何標準偏差は、1.2〜2.5であることが好ましく、1.2〜1.4であることが特に好ましい。幾何標準偏差が上記値であると粒径のバラツキが小さくなる。通常、接続する2端子間に一定のギャップが存在する場合には、粒径が揃っているほど、導電性粒子が有効に機能すると考えられる。
【0015】
粒度分布の幾何標準偏差とは、粒度分布のσ値(累積84.13%の粒径値)を累積50%の粒径値で除した値である。粒度分布のグラフの横軸に粒径(対数)を設定し、縦軸に累積値(%、累積個数比、対数)を設定すると粒径分布はほぼ直線になり、粒径分布は対数正規分布に従う。累積値とは全粒子数に対して、ある粒径以下の粒子の個数比を示したもので、%で表される。粒径分布のシャープさはσ(累積84.13%の粒径値)と平均粒径(累積50%の粒径値)の比で表現される。σ値は実測値又は、前述グラフのプロット値からの読み取り値である。平均粒径及び粒度分布は、公知の方法、装置を用いて測定することができ、その測定には湿式粒度分布計、レーザー式粒度分布計等を用いることができる。あるいは、電子顕微鏡等で粒子を観察し、平均粒径、粒度分布を算出しても構わない。本発明の平均粒径及び粒度分布はレーザー式粒度分布計により求めることができる。
【0016】
導電性粒子の平均粒径は1〜8μmであり、2〜6μmであることが好ましい。
絶縁性の観点から8μm以下が好ましく、接続端子等の高さバラツキ等の影響を受けにくく、また、電気的接続の観点から1μm以上が好ましい。
近接する導電粒子との平均粒子間隔は、20μm以下で、かつ平均粒径の1倍以上5倍以下であり、1.5倍以上3倍以下であることが好ましい。接続時の粒子流動による粒子凝集の防止、及び絶縁性確保の観点から、平均粒径の1倍以上であることが好ましく、微細接続の観点から5倍以下が好ましい。
【0017】
本発明において、近接する導電粒子とは、任意の導電粒子を選定し、その導電粒子に最も近い6個の粒子を言う。近接する導電粒子との平均粒子間隔の測定方法は以下の通りである。
光学顕微鏡で拡大した写真を撮影し、任意の20個の粒子を選定し、そのそれぞれの粒子に最も近い6個の粒子との距離を測定し、全体の平均値を求めて、平均粒子間隔とする。
異方導電性接着シートの厚みは平均粒子間隔の1.5倍以上40μm以下であり、2倍以上、40μm以下であることが好ましい。機械的接続強度の観点から1.5倍以上が好ましく、接続時の粒子流動による接続粒子数減少を防止する観点から40μm以下であることが好ましい。導電性粒子の配合量としては、硬化剤及び硬化性の絶縁性樹脂を合わせた成分100質量部に対して、0.5質量部から20質量部であることが好ましく、1質量部から10質量部であることが特に好ましい。絶縁性の観点から20質量部以下が好ましく、電気的接続性の観点から0.5質量部以上が好ましい。
【0018】
次いで本発明の異方導電性接着シートについて説明する。本発明の異方導電性接着シートは、該異方導電性接着シートの片側表面から厚み方向に沿って、該導電性粒子の平均粒径の2.0倍以内の領域中に導電性粒子個数の90%以上が存在しているが、1.5倍領域中に90%以上存在していることが好ましく、2.0倍の領域中に95%以上存在していることがより好ましく、1.5倍の領域中に95%以上存在していることがさらに好ましい。具体的には、平均粒径が3.0μmである場合、「2.0倍の領域中とは、異方導電性組成物中の6.0μmの厚みの領域中を意味し、「領域中に90%以上存在する」とは、該6.0μm厚みの層中に導電性粒子総数の90%以上が存在していることを意味する。
【0019】
本発明の異方導電性接着シートにおいて、該異方導電性接着シートの厚み方向に対して、該導電性粒子の存在している位置は、焦点方向の変位を測定できるレーザー顕微鏡等により、無作為に100個の導電性粒子の位置を測定した値を用いる。また、このとき同時に、導電性粒子が他の導電性粒子と接触せずに存在している個数を測定することもできる。前記レーザー顕微鏡を用いて、焦点方向の変位を測定する場合、その変位測定分解能は、0.1μm以下であることが好ましく、0.01μm以下であることが特に好ましい。該導電性粒子の平均粒径は、予め別途レーザー式粒度分布計等を用いて測定した値を用いる。
【0020】
本発明の異方導電性接着シートの厚みは、導電性粒子の平均粒径の3倍から20倍であることが好ましく、5倍から10倍であることが更に好ましい。接続構造体の接着強度の点から3倍以上であることが好ましく、接続性の点から20倍未満であることが好ましい。また、接続性の点から、本発明における、導電性粒子が90%以上存在する導電性粒子の平均粒径の2.0倍以内の領域は、該導電性接着シートの厚み方向において中央部より外部にあることが好ましく、導電性粒子の一部が該異方導電性接着シートの表面に露出していることがより好ましい。上記導電性粒子の平均粒径の2.0倍以内の領域は、導電性シート表面から厚み方向に対してシート厚みの1/2の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは1/3の範囲内にあることが好ましい。また、導電性粒子の一部が該異方導電性接着シートの表面に露出していることが好ましい。
【0021】
次に、本発明における導電性粒子が他の導電性粒子と接触せずに存在することを特徴とする異方導電性シートの製造方法について説明する。本発明において、「導電性粒子が他の導電性粒子と接触せずに存在する」とは、導電性粒子同士が凝集せずに各々単独に存在することを意味する。以下、この意味で「単独に存在する」、「単独粒子」なる表現を用いることがある。
【0022】
本発明の異方導電性接着シートの製造方法としては公知のものを用いることができるが、延伸可能なフィルム又はシート上に、導電性粒子を単層配列し、それらを延伸することにより、該導電性粒子を分散配列させ、延伸した状態を保ったまま、少なくとも硬化剤及び硬化性の絶縁性樹脂からなる接着シートに転写させる方法が好ましい。延伸可能なフィルムとしては、公知の樹脂フィルム等を用いることができるが、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂等の単独若しくは共重合体等、又は、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴム等のゴムシート等の柔軟で延伸可能な樹脂フィルムを用いることが好ましい。ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂が特に好ましい。延伸後の収縮率は10%以下となることが好ましく、5%以下が特に好ましい。
【0023】
延伸可能なフィルム上に導電性粒子を分散配列し、固定する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、少なくとも熱可塑性樹脂を含む粘着層を該延伸可能なフィルム上に形成し、その上に導電性粒子を接触させて付着させ、ゴムロール等で荷重をかけて単層に配置する方法を採ることができる。この場合、隙間無く充填するためには、付着−ロール操作を数回繰り返す方法が好ましい。球状の導電性粒子の場合、最密充填が最も安定した構造なので比較的容易に充填することができる。あるいは、該延伸可能なフィルム上に粘着剤を塗布して接着層を形成し、その上に導電性粒子を付着させ、必要なら数回付着を繰り返し、単層で分散配置する方法、延伸可能なフィルムを帯電させ、導電性粒子を単層で分散付着させる方法等を用いることができる。
等しい粒径の球を最密充填したときには、球同士が正三角格子配置を取ることができ、これを2軸延伸した際に粒子の配置はその相似形を維持する。球状の導電性粒子が最密充填された導電性粒子付着フィルムを二軸延伸することにより導電性粒子が面方向に三角格子配置となった異方導電性接着シートを得ることができる。
【0024】
導電性粒子を単層配列させた延伸可能なフィルムを延伸させる方法としては、公知の方法を用いることができるが、均一分散配列という点から、2軸延伸装置を用いることが好ましい。粒子間隔の点から延伸度合いは、80%以上、400%以下であることが好ましく、100%以上、300%以下であることがより好ましい。なお、100%延伸するとは、延伸方向に沿って延伸した部分の長さが延伸前のフィルムの長さの100%であることを言う。延伸方向は、任意であるが、延伸角度が90°の2軸延伸が好ましく、同時延伸が好ましい。延伸方向は、任意であるが、延伸角度が90°の2軸延伸が好ましく、同時延伸が好ましい。2軸延伸の場合、各方向の延伸度合いは、同じであっても異なっていても構わない。2軸延伸装置としては同時2軸連続延伸装置が好ましい。
【0025】
同時2軸連続延伸装置としては、公知のものを使用することができるが、長辺側をチャック金具で固定し、それらの間隔を縦横同時に延伸することにより連続延伸するテンター型延伸機が好ましい。延伸度を調整する方式としては、スクリュー方式、パンタグラフ方式を用いること可能だが、調整の精度の観点から、パンタグラフ方式がより好ましい。加熱しながら延伸する場合は、延伸部分の手前に予熱ゾーンを設けて、延伸部分の後方に熱固定ゾーンを設けることが好ましい。
【0026】
延伸可能なフィルム上に、導電性粒子を単層配列させ、それらを延伸することにより該導電性粒子を分散配列した状態から、異方導電性接着シートを製造する方法としては、予め製造した少なくとも硬化性の絶縁性樹脂からなる接着シートをラミネートして、導電性粒子又は、導電性粒子を含む粘着性フィルムを転写する方法を用いることが好ましい。また、分散配列した状態で、少なくとも絶縁性樹脂を含む溶液を塗布乾燥した後、異方導電性接着シートを延伸可能なフィルムから剥離する方法等を用いることができる。
本発明の異方導電性接着シートは、単層であっても、さらに導電性粒子を含まない少なくとも絶縁性樹脂を含む接着シートを積層しても構わない。積層する該接着シートの膜厚は、導電性粒子を含む該接着シートの膜厚より薄い方が好ましい。
【0027】
本発明に用いる硬化性の絶縁性樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、光及び熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等を用いることができる。取り扱いの容易さから、熱硬化性の絶縁性樹脂を用いることが好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を用いることができるが、エポキシ樹脂が特に好ましい。エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であり、グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、脂環式エポキシ基を有する化合物、分子内の二重結合をエポキシ化した化合物が好ましい。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、又はそれらの変性エポキシ樹脂を用いることができる。
【0028】
本発明に用いる硬化剤は、前記硬化性の絶縁性樹脂を硬化できるものであればよい。硬化性の絶縁性樹脂として、熱硬化性樹脂を用いる場合は、100℃以上で熱硬化性樹脂と反応し硬化できるものが好ましい。エポキシ樹脂の場合は、保存性の点から、潜在性硬化剤であることが好ましく、例えば、イミダゾール系硬化剤、カプセル型イミダゾール系硬化剤、カチオン系硬化剤、ラジカル系硬化剤、ルイス酸系硬化剤、アミンイミド系硬化剤、ポリアミン塩系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤等を用いることができる。保存性、低温反応性の点から、カプセル型のイミダゾール系硬化剤が好ましい。
【0029】
本発明の異方導電性接着シートには、硬化剤及び硬化性の絶縁性樹脂以外に、熱可塑性樹脂等を配合しても構わない。熱可塑性樹脂を配合することにより、容易にシート状に形成することができる。この場合の配合量は、硬化剤及び硬化性の絶縁性樹脂を合わせた成分の200質量%以下であることが好ましく、100質量%以下であることが特に好ましい。本発明に配合できる熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキル化セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等であり、それらから選ばれる1種又は2種以上の樹脂を組み合わせても差し支えない。これらの樹脂の中、水酸基、カルボキシル基等の極性基を有する樹脂は、接着強度の点から好ましい。また、熱可塑性樹脂は、ガラス転移点が80℃以上である熱可塑性樹脂を1種以上含むことが好ましい。
【0030】
本発明の異方導電性接着シートには、上記構成成分に添加剤を配合しても差し支えない。異方導電性接着シートと被着物との密着性を向上させるために、添加剤として、カップリング剤を配合することができる。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミカップリング剤等を用いることができるが、シランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン等を用いることができる。カップリング剤の配合量は硬化剤及び硬化性の絶縁性樹脂を合わせたもの100質量部に対して、0.01質量部から1質量部が好ましい。密着性向上の観点から0.01質量部以上が好ましく、信頼性の観点から1質量部以下が好ましい。
【0031】
さらに、吸湿時において、異方導電性接着シート中のイオン性成分による絶縁性低下を防止するため、添加剤としてイオン捕捉剤を配合することができる。イオン捕捉剤としては、有機イオン交換体、無機イオン交換体、無機イオン吸着剤等を用いることができるが、耐熱性に優れる無機イオン交換体が好ましい。無機イオン交換体としては、ジルコニウム系化合物、ジルコニウムビスマス系化合物、アンチモンビスマス系化合物、マグネシウムアルミニウム化合物等を用いることができる。交換するイオンのタイプとしては、陽イオンタイプ、陰イオンタイプ、両イオンタイプがあるが、イオンマイグレーションの直接の原因になる金属イオン(陽イオン)、電気伝導度を上昇し金属イオンの生成原因になる陰イオンを両方とも交換できるという点から両イオンタイプが好ましい。配合するイオン捕捉剤の平均粒径は、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.01μm以上1μm以下であることがより好ましい。
【0032】
次に本発明の異方導電性接着シートの製造方法について説明する。
まず、2軸延伸可能なフィルム上に粘着層を設けて積層体を形成し、該積層体の上に平均粒径1〜8μmの導電性粒子を密集充填して導電性粒子付着フィルムを作成し、該導電性粒子付着フィルムを該導電性粒子の近接する粒子との平均粒子間隔が導電性粒子の平均粒径の1倍以上5倍以下かつ20μm以下となるように2軸延伸して保持し、該導電性粒子を、少なくとも硬化剤及び硬化性の絶縁性樹脂を含んでなる厚さが該導電性粒子の平均粒子間隔の1.5倍以上40μm以下の接着シートに転写することにより、本発明の異方導電性接着シートを製造することができる。好ましくは、2軸延伸可能なフィルムは長尺のフィルムであり、接着シートも長尺の接着シートである。
【0033】
粘着層に使用する粘着剤は公知のものを用いることができるが、加熱しながら2軸延伸をする場合は、非熱架橋性の粘着剤を用いることが好ましい。具体的には、天然ゴムラテックス系粘着剤、合成ゴムラテックス系粘着剤、合成樹脂エマルジョン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体粘着剤等を、単独で、又は組み合わせて用いることができる。粘着剤の粘着性は、使用する導電性粒子の表面金属面に対するピール強度が0.5gf/cm〜40gf/cmの範囲にあることが好ましく、1〜20gf/cmの範囲にあることが特に好ましい。
【0034】
測定方法としては、導電性粒子の表面金属と同じ組成の金属で被覆されたガラス板を用意し、粘着剤を塗布した幅2cmのフィルムを接着し、90°ピール強度を測定する方法を用いることができる。導電性粒子付着時及び延伸時に導電性粒子を保持する観点から0.5gf/cm以上が好ましく、延伸後の接着性シートへの粒子転写の観点から40gf/cm以下が好ましい。
【0035】
粘着層の厚みは、使用する導電性粒子の平均粒径の1/50〜2倍の範囲が好ましく、1/10〜1倍の範囲が特に好ましい。導電性粒子付着時及び延伸時に導電性粒子を保持する観点から導電性粒子の平均粒径の1/50以上が好ましく、延伸後の接着性シートへの粒子転写の観点から2倍以下が好ましい。
【0036】
粘着層形成方法としては、溶剤又は水に分散又は溶解したものを、グラビアコーター、ダイコーター、ナイフコーター、バーコーター等の公知の方法で塗布し、乾燥する方法を用いることができる。ホットメルトタイプの粘着剤を塗布する場合は、無溶剤でロールコートすることができる。
【0037】
導電性粒子を密集充填する方法としては、前述の、延伸可能なフィルム上に導電性粒子を分散配列し、固定する方法を用いることができる。
延伸後のフィルムの膜厚は、転写する粘着性シート及び粘着性シートの保持フィルムの膜厚を合計した厚みの1/10〜1倍であることが好ましく、1/5〜1/2倍であることが特に好ましい。延伸後のフィルムのハンドリング性の観点から、1/10以上であることが好ましく、延伸後の接着性シートへの粒子転写の観点から、1倍以下であることが好ましい。
【0038】
本発明はまた、微細接続端子を有する電子回路部品とそれに対応する回路を有する回路基板とを異方導電性接着シートで電気的に接続する方法にも関する。該微細接続方法において、該電子回路部品の微細接続端子の高さは導電性粒子の平均粒子間隔の3〜15倍かつ40μm以下であり、該微細接続端子の間隔は該平均粒子間隔の1〜10倍かつ40μm以下であり、該微細接続端子のピッチは該平均粒子間隔の3〜30倍かつ80μm以下である。該電子回路部品とそれに対応する回路を有する回路基板とは、本発明の異方導電性接着シートを用いて電気的に接続する。
【0039】
接続端子の高さは導電性粒子の平均粒子間隔の3〜15倍かつ40μm以下であり、4倍〜10倍が好ましい。接続構造体の機械的強度の観点から3倍以上が好ましく、接続時に接着性シートの樹脂流動により導電性粒子の移動が起こり、接続端子下部にある導電性粒子数の低下による接続性低下、及び接続部分以外にある導電性粒子の移動、凝集による絶縁性低下の観点から、15倍以下であり、かつ40μm以下が好ましい。接続端子間隔は平均粒子間隔の1〜10倍かつ40μm以下であり、1〜10倍かつ20μm以下が好ましく、2〜5倍かつ15μm以下がより好ましい。絶縁性の観点から1倍以上が好ましく、微細接続の観点から10倍以下かつ40μm以下が好ましい。ピッチは、平均粒子間隔の3〜30倍かつ80μm以下であり、5〜20倍かつ40μm以下であることが好ましい。接続性の観点から3倍以上が好ましく、微細接続の観点から30倍以下かつ80μm以下が好ましい。
本発明はまた、上記微細接続方法により接続された微細接続構造体にも関する。
【0040】
本発明の異方導電性接着シートを使用して接続する回路基板の材質は、有機基板でも無機基板でも差し支えない。有機基板としては、ポリイミドフィルム基板、ポリアミドフィルム基板、ポリエーテルスルホンフィルム基板、エポキシ樹脂をガラスクロスに含浸させたリジッド基板、ビスマレイミド−トリアジン樹脂をガラスクロスに含浸させたリジッド基板等を用いることができる。無機基板としては、シリコン基板、ガラス基板、アルミナ基板、窒化アルミ基板等を用いることができる。配線基板の配線材料は、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物等の無機配線材料、金メッキ銅、クロム−銅、アルミニウム、金バンプ等の金属配線材料、アルミニウム、クロム等の金属材料でインジウム錫酸化物等の無機配線材料を覆った複合配線材料等を用いることができる。
【0041】
本発明に用いる接続回路の間隔は、電気絶縁性の観点から導電性粒子の平均粒径の3倍から500倍であることが好ましい。また、本発明に用いる接続回路において、接続する回路部分の接続面積は、前記平均粒径の値を2乗した値の1倍から10000倍であることが好ましい。接続性の点から2倍から100倍であることが特に好ましい。
【0042】
本発明の異方導電性接着シート又は本発明の接続構造体は、液晶ディスプレイ機器、プラズマディスプレイ機器、エレクトロルミネッセンスディスプレイ機器等の表示機器の配線板接続用途、それらの機器のLSI等の電子部品実装用途、その他の機器の配線基板接続部分、LSI等の電子部品実装用途に使用することができる。上記表示機器の中でも、信頼性を必要とされるプラズマディスプレイ機器、エレクトロルミネッセンスディスプレイ機器に好適に用いることができる。
【実施例】
【0043】
次に、実施例及び比較例によって本発明をより詳細に説明する。
【0044】
[実施例1]
フェノキシ樹脂(ガラス転移点98℃、数平均分子量14000)37g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量190、25℃粘度、14000mPa・S)26g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3gを酢酸エチル−トルエンの混合溶剤(混合比1:1)に溶解し、固形分50%溶液とした。
マイクロカプセル型潜在性イミダゾール硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(マイクロカプセルの平均粒径5μm、活性温度125℃)37g、前記固形分50%溶液に配合分散させた。その後、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、60℃で15分間送風乾燥し、膜厚20μmのフィルム状の接着シートを得た。
【0045】
厚さ45μmの無延伸ポリプロピレンフィルム上にニトリルゴムラテックス−メチルメタアクリレートのグラフト共重合体接着剤を5μmの厚みで塗布したものに、平均粒径3.0μmの金めっきプラスチック粒子をほぼ隙間無く単層塗布した。すなわち該金めっきプラスチック粒子を該フィルム幅より大きい容器内に数層以上の厚みになるように敷き詰めたものを用意し、金めっき粒子に対して粘着剤の塗布面を下向きにして押し付けて、付着させ、その後過剰な粒子を不織布からなるスクレバーで掻き落とした。この操作を2回繰り返すことにより、隙間無く単層塗布したフィルムを得た。金メッキプラスチック粒子の粒度分布は、予めレーザー式粒度分布計(JEOL社製、HELOS SYSTEM)にて測定し、積算値50%になる値を平均粒径とした。このフィルムを2軸延伸装置(東洋精機製X6H−S、パンタグラフ方式のコーナーストレッチ型の2軸延伸機)を用いて、縦横にそれぞれ10個のチャックを用いて固定し、150℃、120秒間予熱し、その後、20%/秒の速度で縦横各100%延伸して固定した。この延伸フィルムに前記接着シートをラミネートした後、剥離し、異方導電性接着シートを得た。
【0046】
得られた異方導電性接着シートの導電性粒子のうち、無作為に100個を選び、焦点方向の変位を測定できるレーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK9500、形状測定分解能0.01μm)を用いて、異方導電性接着シート表面からの距離を測定した。その結果、導電性粒子の95%が異方導電性接着シートの膜厚方向において5.5μmの範囲で示される層中に存在することがわかった。また、測定した導電性粒子100個のうち92%が単独粒子であった。また、平均粒子間距離は4.17μmであり、これは平均粒径の1.39倍であった。
【0047】
[実施例2]
フェノキシ樹脂(ガラス転移点45℃、数平均分子量12000)42g、ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量136、半固形)32g、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン0.06gを酢酸エチル−トルエンの混合溶剤(混合比1:1)に溶解し、固形分50%溶液とした。マイクロカプセル型潜在性イミダゾール硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(マイクロカプセルの平均粒径5μm、活性温度125℃)26g、前記固形分50%溶液に配合分散させた。その後、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、60℃で15分間送風乾燥し、膜厚15μmのフィルム状の接着シートを得た。
【0048】
厚さ45μmの無延伸ポリプロピレンフィルム上にニトリルゴムラテックス−メチルメタアクリレートのグラフト共重合体接着剤を5μmの厚みで塗布したものに、平均粒径2.5μmの金めっきプラスチック粒子を実施例1と同様の方法によりほぼ隙間無く単層塗布した。このフィルムを実施例1と同様の方法により2軸延伸装置を用いて縦横にそれぞれ120%延伸して固定した。この延伸フィルムに前記接着シートをラミネートした後、剥離し、異方導電性接着シートを得た。得られた異方導電性接着シートの導電性粒子のうち、無作為に100個を選び、レーザー式の変位計を用いて、異方導電性接着シート表面からの距離を測定した。その結果、導電性粒子の95%が異方導電性接着シートの膜厚方向において4.8μmの範囲で示される層中に存在することがわかった。また、測定した導電性粒子100個のうち91%が単独粒子であった。また、平均粒子間距離は4.24μmであり、これは平均粒径の1.70倍であった。
【0049】
[実施例3]
フェノキシ樹脂(ガラス転移点45℃、数平均分子量12000)15g、フェノキシ樹脂(ガラス転移点98℃、数平均分子量14000)24g、ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量136、半固形)26g、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン0.1gを酢酸エチル−トルエンの混合溶剤(混合比1:1)に溶解し、固形分50%溶液とした。マイクロカプセル型潜在性イミダゾール硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(マイクロカプセルの平均粒径5μm、活性温度125℃)35g、前記固形分50%溶液に配合分散させた。その後、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、60℃で15分間送風乾燥し、膜厚15μmのフィルム状の接着シートAを得た。
また、易剥離処理したポリエチレンテレフタレーフィルムを用いる以外は、上記と全く同様にして、膜厚5μmのフィルム上接着シートBを得た。
【0050】
厚さ45μmの無延伸ポリプロピレンフィルム上にニトリルゴムラテックス−メチルメタアクリレートのグラフト共重合体接着剤を5μmの厚みで塗布したものに、平均粒径2.6μmの金めっきニッケル粒子を実施例1と同様の方法によりほぼ隙間無く単層塗布した。このフィルムを実施例1と同様の方法により2軸延伸装置を用いて縦横にそれぞれ200%延伸して固定した。この延伸フィルムに前記接着シートAをラミネートした後、剥離し、その剥離面に前記接着シートBをラミネートして異方導電性接着シートを得た。得られた異方導電性接着シートの導電性粒子のうち、無作為に100個を選び、レーザー式の変位計を用いて、異方導電性接着シート表面からの距離を測定した。その結果、導電性粒子の95%が異方導電性接着シートの膜厚方向において4.9μmの範囲で示される層中に存在することがわかった。また、測定した導電性粒子100個のうち91%が単独粒子であった。また、平均粒子間距離は7.22μmであり、これは平均粒径の2.77倍であった。
【0051】
[比較例1]
フェノキシ樹脂(ガラス転移点98℃、数平均分子量14000)37g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量190、25℃粘度、14000mPa・S)26g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.3gを酢酸エチル−トルエンの混合溶剤(混合比1:1)に溶解し、固形分50%溶液とした。
マイクロカプセル型潜在性イミダゾール硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(マイクロカプセルの平均粒径5μm、活性温度125℃)37g、平均粒径3.0μmの金めっきプラスチック粒子2.0gを前記固形分50%溶液に配合分散させた。その後、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、60℃で15分間送風乾燥し、膜厚20μmのフィルム状の異方導電性接着シートを得た。
得られた異方導電性接着シートの導電性粒子のうち、無作為に100個を選び、レーザー式の変位計を用いて、異方導電性接着シート表面からの距離を測定した。その結果、導電性粒子は異方導電性接着シートの膜厚方向においてランダムに存在することがわかった。また、測定した導電性粒子100個のうち75%が単独粒子であった。
【0052】
[比較例2]
フェノキシ樹脂(ガラス転移点45℃、数平均分子量12000)42g、ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量136、半固形)32g、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン0.06gを酢酸エチル−トルエンの混合溶剤(混合比1:1)に溶解し、固形分50%溶液とした。マイクロカプセル型潜在性イミダゾール硬化剤を含有する液状エポキシ樹脂(マイクロカプセルの平均粒径5μm、活性温度125℃)26g、平均粒径2.6μmの金めっきニッケル粒子6.0gを前記固形分50%溶液に配合分散させた。 その後、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、60℃で15分間送風乾燥し、膜厚20μmのフィルム状の接着シートを得た。
得られた異方導電性接着シートの導電性粒子のうち、無作為に100個を選び、レーザー式の変位計を用いて、異方導電性接着シート表面からの距離を測定した。その結果、導電性粒子は異方導電性接着シートの膜厚方向においてランダムに存在することがわかった。また、測定した導電性粒子100個のうち70%が単独粒子であった。
【0053】
[比較例3]
平均粒径10μmの金めっきプラスチック粒子を用い60%延伸する以外は、実施例1と同様の方法により異方導電性接着シートを得た。得られた異方導電性接着シートのうち、無作為に100個を選び、レーザー式の変位計を用いて、異方導電性接着シート表面からの距離を測定した。その結果、導電性粒子のうち、96%が異方導電性接着シートの膜厚方向において19.2μmの範囲で示される層中に存在することがわかった。
また測定した導電性粒子100個のうち93%が単独粒子であった。また、平均粒子間距離は、8.52μmであり、これは平均粒径の0.85倍であった。
【0054】
(接続抵抗値測定方法)
縦横が1.6mm×15.1mmのシリコン片(厚み0.5mm)全面に酸化膜を形成後、外辺部から40μm内側に横74.5μm、縦120μmのアルミ薄膜(1000Å)を、それぞれが0.1μm間隔になるように長辺側に各々175個、短辺側に各々16個形成した。それらアルミ薄膜上に、15μm間隔になるように横25μm、縦100μmの金バンプ(厚み15μm)をそれぞれ2個ずつ形成するために、それぞれの金バンプ配置個所の外周部から7.5μm内側に横10μm、縦85μmの開口部を残す以外の部分に、ポリイミドの保護膜を常法により前記開口部以外の全面に形成した。その後、前記金バンプを形成し、試験チップとした。
【0055】
厚み0.7mmの無アルカリガラス上に、前記アルミ薄膜上の金バンプが隣接するアルミ薄膜上の金バンプと対になる位置関係で接続されるように、インジウム錫酸化物膜(1400Å)の接続パッド(横66μm、縦120μm)を形成した。20個の金バンプが接続される毎に前記接続パッドにインジウム錫酸化物薄膜の引き出し配線を形成し、引出し配線上にはアルミニウム−チタン薄膜(チタン1%、3000Å)を形成し、接続評価基板とした。前記接続評価基板上に、前記接続パッドがすべて覆われるように、幅2mm、長さ17mmの異方導電性接着シートを仮張りし、2.5mm幅の圧着ヘッドを用いて、80℃、0.3MPa、3秒間加圧した後、ポリエチレンテレフタレートのベースフィルムを剥離した。そこへ、前記接続パッドと金バンプの位置が合うように試験チップを載せ、220℃、5秒間5.2MPa加圧圧着した。圧着後、前記引出し配線間(金バンプ20個のデイジーチェイン)の抵抗値を四端子法の抵抗計で抵抗測定し、接続抵抗値とした。
【0056】
(絶縁抵抗試験方法)
厚み0.7mmの無アルカリガラス上に、前記アルミ薄膜上の2個の金バンプがそれぞれ接続されるような位置関係に、インジウム錫酸化物膜(1400Å)の接続パッド(横65μm、縦120μm)を形成した。前記接続パッドを1個おきに5個接続できるようにインジウム錫酸化物薄膜の接続配線を形成し、さらにそれらと対になり、櫛型パターンを形成するように、1個おきに5個接続できるようにインジウム錫酸化物薄膜の接続配線を形成した。それぞれの接続配線にインジウム錫酸化物薄膜の引出し配線を形成し、引き出し配線上にアルミニウム−チタン薄膜(チタン1%、3000Å)を形成して、絶縁性評価基板とした。前記絶縁性評価基板上に、前記接続パッドがすべて覆われるように、幅2mm、長さ17mmの異方導電性接着シートを仮張りし、2.5mm幅の圧着ヘッドを用いて、80℃、0.3MPa、3秒間加圧した後、ポリエチレンテレフタレートのベースフィルムを剥離した。そこへ、前記接続パッドと金バンプの位置が合うように試験チップを載せ、220℃、5秒間2.6MPa加圧圧着し、絶縁抵抗試験基板とした。
この絶縁抵抗試験基板を60℃、90%相対湿度中に保持しながら、定電圧定電流電源を用いて、対になる引き出し配線間に100Vの直流電圧を印加する。この配線間の絶縁抵抗を5分間毎に測定し、絶縁抵抗値が10MΩ以下になるまでの時間を測定し、その値を絶縁低下時間とした。この絶縁低下時間が240時間未満の場合を×、240時間以上の場合を○と評価した。
【0057】
以上の結果を表1に示す。
【表1】

表1から明らかなように、本発明の異方導電性接着剤は、非常に優れた絶縁信頼性を示す。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の異方導電性接着シートは、低接続抵抗、高絶縁信頼性を示し、微細回路接続が求められるベアチップ接続用材料、高精細なディスプレイ装置等の接続材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも硬化剤及び硬化性の絶縁性樹脂並びに導電性粒子を含んでなる異方導電性接着シートであって、異方導電性接着シートの片側表面から厚み方向に沿って該導電性粒子の平均粒径の1.5倍以内の領域中に導電性粒子個数の90%以上が存在し、かつ、導電性粒子の90%以上が他の導電性粒子と接触せずに存在しており、該導電性粒子の平均粒径が1〜8μmであり、近接する導電性粒子との平均粒子間隔が平均粒径の1倍以上5倍以下かつ20μm以下であり、面方向の粒子配列パターンが略三角格子であり、異方導電性接着シートの厚みが該平均粒子間隔の2倍以上40μm以下である上記異方導電性接着シート。
【請求項2】
前記導電性粒子が、粒径分布の幾何標準偏差が1.2〜2.5の球状粒子である請求項1に記載の異方導電性接着シート。
【請求項3】
前記導電性粒子が、貴金属被覆された樹脂粒子、貴金属被覆された金属粒子、金属粒子、貴金属被覆された合金粒子、及び合金粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載の異方導電性接着シート。
【請求項4】
長尺である請求項1〜3のいずれかに記載の異方導電性接着シート。
【請求項5】
微細接続端子を有する電子回路部品と、それに対応する回路を有する回路基板とを異方導電性接着シートで電気的に接続する方法において、該電子回路部品が、該微細接続端子の高さが導電性粒子の平均粒子間隔の3〜15倍かつ40μm以下であり、該微細接続端子の間隔が該平均粒子間隔の1〜10倍かつ40μm以下であり、該微細接続端子のピッチが該平均粒子間隔の3〜30倍かつ80μm以下である電子回路部品であり、該電子回路部品とそれに対応する回路を有する回路基板とを、請求項1〜4のいずれかに記載の異方導電性接着シートを用いて電気的に接続することを含む上記方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法により接続された微細接続構造体。

【公開番号】特開2011−236427(P2011−236427A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117532(P2011−117532)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【分割の表示】特願2005−515962(P2005−515962)の分割
【原出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】