説明

発光デバイスおよび発光デバイスの製造方法

【課題】発光素子に供給される電流を制限する。
【解決手段】シリコンを含むベース基板と、ベース基板に接して形成された複数のシード体と、各々対応するシード体に格子整合または擬格子整合する複数の3−5族化合物半導体とを備え、複数の3−5族化合物半導体のうちの少なくとも1つには、供給される電流に応じて発光する発光素子が形成されており、複数の3−5族化合物半導体のうち、発光素子が形成された3−5族化合物半導体以外の少なくとも1つの3−5族化合物半導体には、前記発光素子に供給される電流を制限する電流制限素子が形成されている発光デバイスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光デバイスおよび発光デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のLED(発光ダイオード)を配列したLEDアレイチップ、およびLEDアレイチップを駆動するLED駆動回路が知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献1 特開平5−16423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
LEDアレイは、例えばプリンタヘッドにおいて使用されている。一般に、LEDアレイを駆動するLED駆動回路は、LEDとは異なる半導体基板上に設けられたICチップにより提供される。高画質、高解像度なプリンタの小型化が求められる中、LEDアレイチップおよびLED駆動回路の小型化が期待されている。
【0004】
LEDの材料としては、例えばGaAsのような発光効率のよい3−5族化合物半導体が使用される。そこで、同一のGaAs基板にLEDアレイおよびLED駆動回路を形成することによって、LEDアレイチップおよびLED駆動回路の小型化を図ることができる。しかし、GaAsの熱伝導率は、LED駆動回路で発生した熱を十分に排出することができるほどに高くない。従って、GaAs基板にLED駆動回路を形成する場合には、LED駆動回路等の温度上昇を抑制することが難しい。LED駆動回路の温度が上昇すると、プリンタヘッドが熱膨張するので、プリンタヘッドで印刷する画像の画質が劣化する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、シリコンを含むベース基板と、ベース基板に接して形成された複数のシード体と、各々対応するシード体に格子整合または擬格子整合する複数の3−5族化合物半導体とを備え、複数の3−5族化合物半導体のうちの少なくとも1つには、供給される電流に応じて発光する発光素子が形成されており、複数の3−5族化合物半導体のうち、発光素子が形成された3−5族化合物半導体以外の少なくとも1つの3−5族化合物半導体には、前記発光素子に供給される電流を制限する電流制限素子が形成されている発光デバイスが提供される。
【0006】
当該発光デバイスは、ベース基板の上方に形成され、ベース基板の少なくとも一部の領域を露出する複数の開口を有し、結晶成長を阻害する阻害体をさらに備え、複数のシード体が、複数の開口の内部に形成されてよい。複数のシード体の組成は、Cx1Siy1Gez1Sn1−x1−y1−z1(0≦x1<1、0≦y1≦1、0≦z1≦1、かつ0<x1+y1+z1≦1)である。
【0007】
当該発光デバイスは、ベース基板とシード体との界面に接して、ベース基板内に、組成がCx2Siy2Gez2Sn1−x2−y2−z2(0≦x2<1、0<y2≦1、0≦z2≦1、かつ0<x2+y2+z2≦1)である界面領域をさらに含んでもよい。シード体におけるx1と当該領域におけるx2とが、x1>x2の関係であり、シード体におけるy1と当該領域におけるy2とが、y1<y2の関係であり、シード体におけるz1と当該領域におけるz2とが、z1>z2の関係であり、シード体における(1−x1−y1−z1)と当該領域における(1−x2−y2−z2)とが、(1−x1−y1−z1)>(1−x2−y2−z2)の関係である。
【0008】
ベース基板が、複数のシード体と接するウェル領域を有し、発光素子は、複数のシード体およびウェル領域を介して電流制限素子と電気的に結合される。電流制限素子は、発光素子に供給される電流を制限する抵抗素子であってよい。抵抗素子は、キャリアをトラップするキャリアトラップを含む。
【0009】
電流制限素子は、発光素子に供給される電流をスイッチングするサイリスタであってよい。サイリスタは、P型半導体、N型半導体、P型半導体、およびN型半導体がこの順に積層された積層体を含む。シリコンは、複数のシード体に接する複数の3−5族化合物半導体の伝導型と同じ伝導型を有する。当該発光デバイスは、ベース基板のシリコンを含む領域に形成されたシリコン素子をさらに備え、シリコン素子が、発光素子に電流を供給する。阻害体に、複数の開口が等間隔で配列されてよい。
【0010】
本発明の第2の態様においては、表面がシリコンであるベース基板に接して複数のシード体を形成する段階と、各々対応するシード体に格子整合または擬格子整合する複数の3−5族化合物半導体を結晶成長させる段階と、複数の3−5族化合物半導体のうちの少なくとも1つに、供給される電流に応じて発光する発光素子を形成する段階と、複数の3−5族化合物半導体のうち、発光素子が形成された3−5族化合物半導体以外の少なくとも1つの3−5族化合物半導体に、発光素子に供給される電流を制御する電流制限素子を形成する段階とを備える発光デバイスの製造方法が提供される。
【0011】
当該発光デバイスの製造方法は、複数のシード体を形成する段階と、複数の3−5族化合物半導体を結晶成長させる段階との間に、複数のシード体を加熱する段階をさらに備えてよい。当該発光デバイスの製造方法は、複数のシード体を形成する段階の前に、ベース基板の上方に、ベース基板の少なくとも一部の領域を露出する複数の開口を有し、結晶成長を阻害する阻害体を形成する段階をさらに備え、複数のシード体を形成する段階において、複数のシード体を、複数の開口の内部に形成してよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】発光デバイス100の断面の一例を示す。
【図2】発光デバイス100の製造過程の断面例を示す。
【図3】発光デバイス100の製造過程の断面例を示す。
【図4】発光デバイス100の製造過程の断面例を示す。
【図5】発光デバイス200の断面の一例を示す。
【図6】発光デバイス200の製造過程の断面例を示す。
【図7】発光デバイス200の製造過程の断面例を示す。
【図8A】発光デバイス300の断面の一例を示す。
【図8B】発光デバイス300の断面の一例を示す。
【図9】発光デバイス300の製造過程の断面例を示す。
【図10】発光デバイス300の製造過程の断面例を示す。
【図11】発光デバイス300の製造過程の断面例を示す。
【図12】発光デバイス400の断面の一例を示す。
【図13】発光デバイス500の断面の一例を示す。
【図14】発光デバイス600の断面の一例を示す。
【図15】発光デバイス600の製造過程の断面例を示す。
【図16】発光デバイス600の製造過程の断面例を示す。
【図17】発光デバイス600の製造過程の断面例を示す。
【図18】発光デバイス600の製造過程の断面例を示す。
【図19】発光デバイス600の製造過程の断面例を示す。
【図20】発光デバイス600の製造過程の断面例を示す。
【図21】発光デバイス600の製造過程の断面例を示す。
【図22】発光デバイス700の断面の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、一実施形態にかかる発光デバイス100の断面を示す。発光デバイス100は、ベース基板102、阻害体106、シード体112、発光ダイオード120、電極132、および電極134を備える。
【0014】
ベース基板102は、表面がシリコンである。ここで、「表面がシリコン」とは、少なくとも基板の表面がシリコン元素で構成される領域を有することを意味する。たとえばベース基板102は、Siウェハのように基板全体がシリコン元素で構成されてよく、SOI(silicon−on−insulator)ウェハのように絶縁層の上にシリコン層を有する構造であってもよい。なお、ベース基板102は、サファイア基板、ガラス基板等、シリコンと異なる元素からなる基板上にシリコン層が形成されたものでもよい。ベース基板102のシリコンは不純物を含んでよい。また、ベース基板102の表面のシリコン層に、自然酸化層等の極薄い酸化シリコン層あるいは窒化シリコン層が形成されていてもよい。
【0015】
ベース基板102は、単一の基板である。ベース基板102は、高抵抗のシリコン部を含んでよい。例えば、図1に示すベース基板102は、高抵抗Si基板である。ベース基板102の上に、複数のシード体112が形成されている。シード体112のそれぞれに、発光ダイオード120が形成されていてもよい。ここで、「高抵抗」とは、100Ω・cm以上の抵抗範囲の抵抗をいう。
【0016】
阻害体106は、結晶成長を阻害する。例えば、エピタキシャル成長法により半導体の結晶が成長する場合において、阻害体106の表面では、半導体の結晶がエピタキシャル成長することが阻害される。その結果、半導体の結晶は開口108において選択的にエピタキシャル成長する。
【0017】
阻害体106は、ベース基板102の上に形成されている。阻害体106には、ベース基板102の少なくとも一部の領域を露出する複数の開口108が形成されている。複数の開口108は、例えば規則的に配列している。シード体112は、複数の開口108のうち少なくとも1つの開口の内部に形成されていてよい。
【0018】
阻害体106は、例えば、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸窒化シリコン層またはこれらを積層した層である。阻害体106の厚みは、0.05μm以上5μm以下である。阻害体106は、例えば、熱酸化法、CVD法等により形成される。
【0019】
シード体112は、ベース基板102の上に形成される。具体的には、複数のシード体112のそれぞれは、阻害体106の開口108のそれぞれの内部において、ベース基板102に接して形成される。複数のシード体112は、ベース基板102と格子整合または擬格子整合する。
【0020】
本明細書において、「擬格子整合」とは、完全な格子整合ではないが、互いに接する2つの半導体の格子定数の差が小さく、格子不整合による欠陥の発生が顕著でない範囲で、互いに接する2つの半導体を積層できる状態を指す。このとき、各半導体の結晶格子が、弾性変形できる範囲内で変形することで、上記格子定数の差が吸収される。例えば、GeとGaAsとの、またはGeとInGaPとの格子緩和限界厚さ内での積層状態は、擬格子整合と呼ばれる。
【0021】
シード体112の組成は、Cx1Siy1Gez1Sn1−x1−y1−z1(0≦x1<1、0≦y1≦1、0≦z1≦1、かつ0<x1+y1+z1≦1)である。例えば、シード体112は、Ge結晶、SiGe結晶、またはGeSn結晶である。シード体112は、組成、ドーピング濃度、半導体層厚の異なる複数の半導体層から構成される積層体であってもよい。
【0022】
ベース基板102とシード体112との界面に接して、ベース基板102内に、例えば、組成がCx2Siy2Gez2Sn1−x2−y2−z2(0≦x2<1、0<y2≦1、0≦z2≦1、かつ0<x2+y2+z2≦1)である界面領域をさらに含んでもよい。シード体112におけるx1と上記領域におけるx2とが、x1>x2の関係であり、シード体112におけるy1と上記領域におけるy2とが、y1<y2の関係であり、シード体112におけるz1と上記領域におけるz2とが、z1>z2の関係であり、シード体112における(1−x1−y1−z1)と、上記領域における(1−x2−y2−z2)とが、(1−x1−y1−z1)>(1−x2−y2−z2)の関係である。
【0023】
シード体112は、その上に形成される発光ダイオード120の結晶成長に適したシード面を提供する半導体である。シード体112は、ベース基板102の表面に存在する不純物が、発光ダイオード120の結晶性に悪影響を及ぼすことを抑制する半導体であってもよい。
【0024】
シード体112は、例えば、エピタキシャル成長法により形成される。エピタキシャル成長法は、化学気相成長法(CVD法と称する場合がある)、有機金属気相成長法(MOCVD法と称する場合がある)、分子線エピタキシ法(MBE法と称する場合がある)、および原子層成長法(ALD法と称する場合がある)を含む。島状のシード体112は、ベース基板102の上にシード体112の膜を形成して、エッチング等のフォトリソグラフィ法によって、シード体112をパターニングすることにより形成されてよい。この場合に、複数の島状のシード体112は、互いに離れて形成される。
【0025】
シード体112は、加熱されることが好ましい。シード体112の内部において、ベース基板102とシード体112との格子定数の違い等により、転位等の格子欠陥が発生する場合がある。当該格子欠陥は、例えば、シード体112を加熱することにより、シード体112の内部を移動する。当該格子欠陥は、シード体112の内部を移動して、シード体112の界面またはシード体112の内部にあるゲッタリングシンク等に捕捉される。シード体112を加熱することにより、シード体112の欠陥が低減され、シード体112の結晶性が向上する。シード体112は、非晶質または多結晶のCx1Siy1Gez1Sn1−x1−y1−z1(0≦x1<1、0≦y1≦1、0≦z1≦1、かつ0<x1+y1+z1≦1)を加熱することにより形成されてもよい。
【0026】
発光ダイオード120は、シード体112に接して形成される。複数の発光ダイオード120は、複数のシード体112の各々に接して形成される。複数の発光ダイオード120は規則的に配列される。発光デバイス100は、発光ダイオード120とシード体112との間に、他の半導体層を備えてもよい。発光ダイオード120は、シード体112と格子整合または擬格子整合する。
【0027】
発光ダイオード120は、例えば、整流作用をもつ2つの端子からなる電子素子、半導体PN接合素子、または、カソードおよびアノードの2端子からなる半導体素子である。例えば、発光ダイオード120は、N型半導体122およびP型半導体124を有する。発光ダイオード120は、供給される電流に応じて発光する。具体的には、発光ダイオード120は、例えばP型半導体124にN型半導体122よりも高い順バイアス電圧が印加されることにより、P型半導体124からN型半導体122に電流が流れると発光する。
【0028】
N型半導体122およびP型半導体124は、例えば3−5族化合物半導体である。3−5族化合物半導体は、例えば、GaP、GaAs、GaAsP、AlGaAs、InGaP、InGaAsP、AlInGaP、GaN、InGaN、AlGaN、AlInGaN、またはInPである。発光ダイオード120は、3−5族化合物半導体と他の化合物半導体との間に形成されるPN接合を含んでもよい。
【0029】
N型半導体122およびP型半導体124は、それぞれ、組成、ドーピング濃度、厚さの異なる複数の半導体層から構成される積層体であってもよい。N型半導体122とP型半導体124との間の界面におけるPN接合が形成される。当該PN接合は、発光ダイオード120に順バイアスが印加される場合に、N型半導体から電子が、P型半導体から正孔がPN接合近傍の空乏層に移動して、電子と正孔が再結合することによって光を発する発光部である。発光ダイオード120は、例えば、エピタキシャル成長法により形成される。エピタキシャル成長法は、CVD法、MOCVD法、MBE法、およびALD法を含む。
【0030】
電極132は、P型半導体124に接して形成されている。電極132は、発光ダイオード120のアノード電極として機能する。電極134は、N型半導体122に接して形成されている。電極134は発光ダイオードのカソード電極として機能する。電極132および電極134は、発光ダイオード120を外部回路に接続する。電極132および電極134は、伝導性のある材料によって形成される。電極132および電極134は、例えば、金属により形成される。
【0031】
P型半導体124がGaAs系半導体の場合の電極132の材料は、例えばP型半導体124側から順にAuZn/Auである。P型半導体124がGaN系半導体の場合の電極132の材料は、例えばP型半導体124側から順にNi/Auである。同様に、N型半導体122がGaAs系半導体の場合の電極134の材料は、例えばN型半導体122側から順にAuGe/Ni/Auである。N型半導体122がGaN系半導体の場合の電極134の材料は、例えばN型半導体122側から順にTi/Auである。電極132および電極134は、スパッタ法、真空蒸着法等により形成される。
【0032】
図1において、発光ダイオード120は、ベース基板102側から順次N型半導体122とP型半導体124とを積層して形成される。発光ダイオード120は、ベース基板102側から順次P型半導体とN型半導体とを積層して形成されてもよい。
【0033】
図2から図4は、発光デバイス100の製造過程における断面図を示す。以下、図面を用いて発光デバイス100の製造方法を説明する。発光デバイス100の製造方法は、阻害体を形成する段階、シード体を形成する段階、および発光ダイオード120を形成する段階を備える。シード体を形成する段階と、発光ダイオード120を形成する段階との間に、シード体を加熱する段階をさらに含んでもよい。
【0034】
阻害体を形成する段階において、ベース基板102の上に、結晶の成長を阻害する阻害体106を形成し、当該阻害体106に、ベース基板102の少なくとも一部の領域を露出する開口108を形成する。例えば、図2に示すように、熱酸化法によって、ベース基板102の全面に阻害体106となる酸化シリコン膜を形成して、エッチング等フォトリソグラフィ法により、当該酸化シリコン膜に、ベース基板102に達する複数の開口108を形成してよい。
【0035】
シード体を形成する段階において、開口108の底部のベース基板102に接して、開口108の内部にシード体112を形成する。例えば、図3に示すように、開口108の内部に、ベース基板102に接して、選択エピタキシャル法によりシード体112を形成する。エピタキシャル成長法は、CVD法、MOCVD法、MBE法、ALD法を含む。シード体112は、CVD法によりGe結晶、SiGe結晶、またはGeSn結晶をエピタキシャル成長させて形成される。複数の開口108を有する阻害体106を形成した場合に、複数の開口108のそれぞれの内部に、シード体112が形成される。
【0036】
シード体を加熱する段階において、シード体112を加熱することにより、シード体112の内部において、ベース基板102とシード体112との格子定数の違い等により発生した転位等の格子欠陥が低減し、シード体112の結晶性が向上する。シード体を加熱する段階において、複数段階に分けてシード体112を加熱してもよい。例えば、加熱は、シード体112の融点に達しない温度で高温加熱を実施する段階と、高温加熱の温度より低い温度で低温加熱を実施する段階とを含む。このような二段階の加熱を、複数回繰り返してもよい。
【0037】
高温加熱の温度および時間は、シード体112がSiGe1−x(0≦x<1)の組成を有する場合には、例えば、850℃以上900℃以下で2分間以上10分間以下である。低温加熱の温度および時間は、例えば、650℃以上780℃以下で2分間以上10分間以下である。このような二段階の加熱を、例えば、10回繰り返す。
【0038】
発光ダイオード120を形成する段階において、加熱されたシード体112に接して、シード体112と格子整合または擬格子整合するN型半導体122およびP型半導体124を形成する。例えば、図4に示すように、シード体112の上に順次N型半導体122およびP型半導体124を選択エピタキシャル成長させる。複数のシード体112が形成された場合に、複数のシード体112のそれぞれに、N型半導体122およびP型半導体124を形成してよい。
【0039】
エピタキシャル成長法は、CVD法、MOCVD法、MBE法、およびALD法を含む。発光ダイオード120は、例えば、GaAs、AlGaAs、InGaP、GaN等の3−5族化合物半導体をMOCVD法によりエピタキシャル成長させて形成される。エピタキシャル成長は次のようにして行う。まずMOCVD炉内を高純度水素で十分に置換した後、シード体112を有するベース基板102の加熱を開始する。結晶成長時の基板温度は、例えば450℃から800℃である。ベース基板102が適切な温度に安定したところで炉内に砒素原料、燐原料または窒素原料を導入する。続いてガリウム原料、アルミニウム原料またはインジウム原料を導入して、順次N型半導体122およびP型半導体124をエピタキシャル成長させる。
【0040】
3族元素原料として、トリメチルガリウム(TMG)およびトリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルインジウム(TMI)等を用いることができる。5族元素原料ガスとして、アルシン(AsH)、ターシャリブチルアルシン((CHCAsH)、ホスフィン(PH)、ターシャリブチルホスフィン((CHCPH)、アンモニア(NH)等を用いることができる。原料のキャリアガスとして、高純度水素を用いることができる。N型不純物元素は、Si、S、Se、およびTeを含む。P型不純物元素は、C、Ge、Be、Mg、Zn、およびCdを含む。
【0041】
エピタキシャル成長条件は、例えば、反応炉内圧力0.1atm、成長温度650℃、成長速度0.1μm/hr以上3μm/hr以下である。他にエピタキシャル成長は次のように行うこともできる。まず反応炉内圧力0.1atm、成長温度550℃、成長速度0.1μm/hr以上1μm/hr以下で、30nm程度のGaAsをエピタキシャル成長させ、その後いったん成長を中断する。砒素原料雰囲気を維持しつつ650℃まで昇温し、再び反応炉内圧力0.1atm、成長温度650℃、成長速度0.1μm/hr以上3μm/hr以下でエピタキシャル成長を行う。
【0042】
電極132および電極134を形成して、発光デバイス100が完成する。これらの電極は次のようにして形成することができる。まず、これらの電極が形成されるべき位置に開口を有するレジストマスクパターンを形成する。次に、例えば、スパッタ法により、電極となる金属を蒸着する。発光ダイオード120がGaAs系半導体から形成される場合、電極132としてベース基板102側から順にAuZn/Auを形成し、電極134としてベース基板102側から順にAuGe/Ni/Auを形成する。発光ダイオード120がGaN系半導体から形成される場合、電極132としてベース基板102側から順にNi/Auを形成し、電極134としてベース基板102側から順にTi/Auを形成する。最後にレジストをリフトオフすることにより、電極132および電極134が完成する。
【0043】
図5は、他の実施形態にかかる発光デバイス200の断面図を示す。発光デバイス200は、ベース基板102、阻害体106、シード体112、サイリスタ220、ゲート電極232、カソード電極234、およびアノード電極236を備える。ベース基板102、阻害体106、およびシード体112は、図1において既に説明したので、その説明を省略する。
【0044】
ここで、サイリスタ220は、3つ以上のPN接合の構成でON−OFFの切り替えができるスイッチング素子、または、PNPN構造を有しスイッチング動作をする素子である。P型半導体/N型半導体/P型半導体/N型半導体で表される積層体は、P型半導体、N型半導体、P型半導体、N型半導体の順に積層された積層体、またはN型半導体、P型半導体、N型半導体、P型半導体の順に積層された積層体を指す。例えば、図5において、サイリスタ220は、ベース基板102側から順次P型半導体222、N型半導体224、P型半導体226、およびN型半導体228を積層して形成される。サイリスタ220は、ベース基板102側から順次N型半導体、P型半導体、N型半導体およびP型半導体を積層して形成されてもよい。
【0045】
サイリスタ220は、ゲート電極232に入力される制御信号に応じて導通状態および非導通状態をスイッチングすることにより、発光素子に供給される電流を制限する電流制限素子である。サイリスタ220は、シード体112に接して形成される。サイリスタ220において、例えば、サイリスタ220の最下層のP型半導体222がシード体112に接して形成され、その後順次N型半導体224、P型半導体226、およびN型半導体228が順次形成してよい。
【0046】
複数のサイリスタ220は、複数のシード体112の各々に接して形成されてよい。複数のサイリスタ220は規則的に配列されてよい。サイリスタ220は、他の半導体層を介してシード体112の上に形成されてもよい。サイリスタ220は、シード体112と格子整合または擬格子整合する。
【0047】
サイリスタ220は、3−5族化合物半導体を有してよい。3−5族化合物半導体は、例えば、GaP、GaAs、GaAsP、AlGaAs、InGaP、InGaAsP、AlInGaP、GaN、InGaN、またはInPである。
【0048】
P型半導体222、N型半導体224、P型半導体226、およびN型半導体228は、それぞれ、組成、ドーピング濃度、厚さの異なる複数の半導体層から構成される積層体であってもよい。サイリスタ220は、例えば、エピタキシャル成長法により形成される。エピタキシャル成長法は、CVD法、MOCVD法、MBE法、およびALD法を含む。
【0049】
ゲート電極232は、サイリスタ220のゲートとなるP型半導体226に接して形成される。ゲート電極232は、P型半導体226を外部回路に接続して、ゲート制御信号の入力を受ける。ゲート電極232は、伝導性のある材料によって形成される。ゲート電極232は、例えば金属で形成される。ゲート電極232の材料は、サイリスタ220がGaAs系半導体を有する場合に、例えば半導体側から順にAuZn/Auである。ゲート電極232の材料は、サイリスタ220がGaN系半導体を有する場合に、例えば半導体側から順にNi/Auである。ゲート電極232は、スパッタ法、真空蒸着法等により形成される。
【0050】
カソード電極234は、N型半導体228に接して形成される。カソード電極234は、駆動電流を供給すべき外部回路にサイリスタ220を接続する。カソード電極234は、例えば、外部回路に対して駆動電流を出力する。カソード電極234は、伝導性のある材料によって形成される。カソード電極234は、例えば金属によって形成される。カソード電極234の材料は、サイリスタ220がGaAs系半導体を有する場合に、例えば半導体側から順にAuGe/Ni/Auである。カソード電極234は、サイリスタ220がGaN系半導体を有する場合に、例えば半導体側から順にTi/Auである。カソード電極234は、スパッタ法、真空蒸着法等により形成される。
【0051】
アノード電極236は、P型半導体222に接して形成される。アノード電極236は、例えば、サイリスタ220を電源に接続する。アノード電極236は、当該電源から、カソード電極234が外部回路に供給すべき駆動電流を受ける。アノード電極236は、伝導性のある材料によって形成される。アノード電極236は、例えば金属によって形成される。アノード電極236の材料は、サイリスタ220がGaAs系半導体を有する場合に、例えば半導体側から順にAuZn/Auである。アノード電極236は、サイリスタ220がGaN系半導体を有する場合に、例えば半導体側から順にNi/Auである。アノード電極236は、スパッタ法、真空蒸着法等により形成される。
【0052】
図6および図7は、発光デバイス200の製造過程における断面図を示す。以下、図面を用いて発光デバイス200の製造方法を説明する。発光デバイス200の製造方法は、阻害体を形成する段階、シード体を形成する段階、およびサイリスタ220を形成する段階を備える。また、シード体を形成する段階と、サイリスタ220を形成する段階との間に、シード体を加熱する段階をさらに含んでよい。発光デバイス100と同様に、阻害体を形成する段階、シード体を形成する段階およびシード体を加熱する段階を通じて、図3に示す半導体基板が得られる。
【0053】
図6に示すように、サイリスタ220を形成する段階において、加熱されたシード体112に接して、シード体112と格子整合または擬格子整合するP型半導体222、N型半導体224、P型半導体226、およびN型半導体228を形成する。例えば、選択エピタキシャル成長法によって、シード体112の上に、順次P型半導体222、N型半導体224、P型半導体226およびN型半導体228を形成する。複数のシード体112が形成された場合に、複数のシード体112のそれぞれに、P型半導体222、N型半導体224、P型半導体226、およびN型半導体228を形成する。エピタキシャル成長は、発光デバイス100の製造方法と同一の方法、条件、および原料ガス等を用いて実施することができる。
【0054】
図7に示すように、エッチング等フォトリソグラフィ法により、カソードメサおよびゲートメサを形成して、図5に示すように、ゲート電極232、カソード電極234およびアノード電極236を形成することにより、発光デバイス200が完成する。ゲート電極232、カソード電極234およびアノード電極236は、ゲート電極232、カソード電極234およびアノード電極236が形成されるべき位置に開口を有するレジストマスクパターンを形成して、その上に、スパッタ法により電極材料である金属を堆積してから、レジストをリフトオフすることにより完成する。
【0055】
以上説明したように、発光デバイス200が、スイッチング動作をするサイリスタ220を有することにより、発光デバイス200を流れる駆動電流の大きさを制限することができる。その結果、発光デバイス200の温度が過度に上昇することを防止することができる。
【0056】
図8Aは、他の実施形態にかかる発光デバイス300の断面を示す。発光デバイス300は、ベース基板102、阻害体106、シード体112、発光ダイオード120、電極132、抵抗素子320、および電極332を備える。ベース基板102、阻害体106、シード体112、発光ダイオード120および電極132は、図1において既に説明したので、その説明を省略する。
【0057】
抵抗素子320は、発光ダイオード120に供給される電流を制限する電流制限素子の一例である。抵抗素子320は、例えば、発光ダイオード120を駆動する回路に含まれる素子である。抵抗素子320は、シード体112に接して形成される。複数の抵抗素子320が、複数のシード体112の各々に接して形成されてもよい。複数の抵抗素子320は、例えば規則的に配列される。発光デバイス300は、抵抗素子320とシード体112との間に、他の半導体層を有してもよい。
【0058】
抵抗素子320は、例えば3−5族化合物半導体である。3−5族化合物半導体は、例えば、GaP、GaAs、GaAsP、AlGaAs、InGaP、InGaAsP、AlInGaP、GaN、InGaN、AlGaN、AlInGaN、またはInPである。抵抗素子320は、組成、ドーピング濃度、厚さの異なる複数の半導体層から構成される積層体であってもよい。抵抗素子320は、例えば、CVD法、MOCVD法、MBE法、またはALD法により形成される。
【0059】
抵抗素子320の抵抗値は、組成、ドーピング濃度、断面積、厚さ(長さ)等によって調整できる。抵抗素子320の抵抗値は、抵抗素子320の内部構造によって調整できる。例えば、半導体に深いトラップ準位を形成する元素を添加してキャリアトラップを設けることにより、抵抗素子320を形成することができる。当該元素の添加量を調整することによって、抵抗値を調整してもよい。
【0060】
電極332は、抵抗素子320に接して形成され、抵抗素子320を外部回路に接続する。電極332は、伝導性のある材料によって形成される。電極332は、例えば金属によって形成される。電極332の材料は、例えば、抵抗素子側から順にAuGe/Ni/Auである。電極332は、スパッタ法、真空蒸着法等により形成される。
【0061】
図8Bは、他の実施形態にかかる発光デバイス300の断面を示す。同図における発光デバイス300は、図8Aに示した発光デバイス300における抵抗素子320の代わりに、図5において説明したサイリスタ220を有する。サイリスタ220は、ベース基板102側から順次P型半導体222、N型半導体224、P型半導体226、およびN型半導体228を積層して形成されている。
【0062】
サイリスタ220は、ゲート電極232に入力される制御信号に応じて導通状態および非導通状態をスイッチングすることにより、発光ダイオード120に供給される電流を制限する。例えば、サイリスタ220は、サイリスタ220のカソード電極234が電源に接続され、サイリスタ220のカソード電極234が発光ダイオード120の電極132に接続された状態で、ゲート電極232に入力される制御信号の電圧に応じて、サイリスタ220を介して発光ダイオード120に供給される駆動電流を制限する。サイリスタ220は、発光ダイオード120の電極134にサイリスタ220のアノード電極236が接続され、サイリスタ220のカソード電極234が接地された状態で、ゲート電極232に入力される制御電圧の電圧に応じて、発光ダイオード120が出力する駆動電流を制限してもよい。
【0063】
発光デバイス300は、サイリスタ220および抵抗素子320の2つを備えてもよい。抵抗素子320が、発光ダイオード120に供給される電流を制限し、サイリスタ220が、発光ダイオード120に供給される電流を制御してもよい。
【0064】
図9から図11は、発光デバイス300の製造過程における断面図を示す。以下、図面を用いて発光デバイス300の製造方法を説明する。発光デバイス300の製造方法は、阻害体106を形成する段階、シード体112を形成する段階、および抵抗素子320を形成する段階を含む。また、シード体を形成する段階と抵抗素子320を形成する段階との間に、シード体を加熱する段階をさらに含んでよい。発光デバイス100と同様に、阻害体を形成する段階、シード体を形成する段階、およびシード体を加熱する段階を通じて、図3に示す半導体基板が得られる。
【0065】
図9に示すように、抵抗素子320を形成する段階において、加熱されたシード体112に接して、抵抗素子320を形成する。抵抗素子320は、例えば、CVD法、MOCVD法、MBE法、またはALD法により形成される。複数のシード体112が形成された場合に、複数のシード体112のそれぞれに、抵抗素子320を形成してよい。
【0066】
例えば、MOCVD法により3−5族化合物半導体の抵抗素子320を形成する場合に、上記の方法、条件および原料ガス等が用いられる。抵抗素子320の抵抗値は、不純物元素の添加量を制御することによって調整できる。また、3族原料に対する5族原料のモル供給比を調整することにより、抵抗素子320に導入されるキャリア濃度を調整できるので、抵抗値を調整できる。
【0067】
図10に示すように、エッチング等フォトリソグラフィ法により、発光ダイオードが形成されるべき部位にある抵抗素子320を除去する。例えば、当該部位以外の部分を覆うレジストマスクを形成して、エッチングにより当該部位の抵抗素子320を除去できる。図11に示すように、抵抗素子320が除去され、露出されたシード体112に接して発光ダイオード120を形成する。発光ダイオード120の形成方法は、発光デバイス100の製造方法における方法と同一であってよい。
【0068】
図8Aおよび図8Bに示すように、電極132および電極332を形成することにより、発光デバイス300が完成する。電極は、マスクパターンの上に、スパッタ法により電極材料である金属を堆積してから、マスクをリフトオフすることにより形成される。
【0069】
以上説明したように、発光デバイス300が、電流を制限する抵抗素子320またはサイリスタ220を有することにより、発光ダイオード120に供給される電流の大きさを制限することができる。その結果、発光デバイス300の温度が過度に上昇することを防止することができる。
【0070】
図12は、他の実施形態にかかる発光デバイス400の断面を示す。発光デバイス400は、ベース基板402、ウェル領域404、阻害体106、シード体112、発光ダイオード120、および電極132を備える。発光デバイス400は、図1に示す発光デバイス100に比して、ベース基板402にウェル領域404が存在する点において相違する。阻害体106、シード体112、発光ダイオード120、および電極132については、図1において既に説明したので、説明を省略する。
【0071】
ベース基板402は、表面がシリコンである。ベース基板402は、ウェル領域404を有する。ベース基板102は、高抵抗のシリコン部を含む、例えば高抵抗Si基板である。一方ベース基板402は、中抵抗または低抵抗のシリコン部を含む、例えば中抵抗または低抵抗のSi基板である。ベース基板402は、単一の基板である。ここで、「中抵抗」とは、1から数十Ω・cmの抵抗範囲の抵抗をいい、「低抵抗」とは、0.001から0.2Ω・cmの抵抗範囲の抵抗をいう。
【0072】
ウェル領域404は、シード体112と接し、かつ上記シリコンから電気的に分離されている。例えば、ウェル領域404が、ベース基板402と異なる伝導型を有して、ウェル領域404とベース基板402との界面においてPN接合が形成される。当該PN接合によってウェル領域404とベース基板402とが電気的に分離される。シード体112が、ウェル領域404に接して形成される。発光ダイオード120が、シード体112を介して、ウェル領域404と電気的に結合される。図12において、発光ダイオード120の代わりにサイリスタまたは抵抗素子が設けられていてもよい。
【0073】
図13は、他の実施形態にかかる発光デバイス500の断面図を示す。発光デバイス500は、ベース基板502、阻害体106、シード体112、発光ダイオード120、および電極132を備える。発光デバイス500は、図1に示す発光デバイス100と比べて、ベース基板502のみが異なる。阻害体106、シード体112、発光ダイオード120、および電極132ついては、図1において既に説明したので、説明を省略する。
【0074】
ベース基板502は、表面がシリコンである。ベース基板502は、中抵抗または低抵抗のシリコン部を含む。例えば、図13に示すベース基板502は、中抵抗または低抵抗のSi基板であってよい。ベース基板502の伝導型は、シード体112に接するN型半導体122の伝導型と同じである。複数の発光ダイオード120は、シード体112およびベース基板502を介して、電気的に並列に接続される。
【0075】
図14は、他の実施形態にかかる発光デバイス600の断面を示す。発光デバイス600は、ベース基板102、阻害体106、シード体112、発光ダイオード120、電極132、ウェル領域603、抵抗素子642、ドレイン652、ゲート絶縁層654、ゲート電極656、およびソース658を備える。ベース基板102、阻害体106、シード体112、発光ダイオード120、および電極132については、図1において既に説明したので、説明を省略する。
【0076】
ウェル領域603、ドレイン652、ゲート絶縁層654、ゲート電極656およびソース658は、ベース基板102のシリコン部に形成されたFET(電界効果トランジスタ)を構成する。当該FETのドレイン652は、抵抗素子642、ウェル領域404、およびシード体112を介して発光ダイオード120と電気的に接続される。当該FETが、発光ダイオード120を駆動する駆動回路に含まれる。
【0077】
抵抗素子642は、ベース基板102のシリコン部に形成される。抵抗素子642は、発光ダイオード120を駆動する駆動回路に含まれる。抵抗素子642の抵抗値は、組成、ドーピング濃度、断面積、長さ等によって調整できる。
【0078】
図15から図21は、発光デバイス600の製造過程の断面図を示す。以下、図面を用いて発光デバイス600の製造方法を説明する。発光デバイス600の製造方法は、シリコン素子を形成する段階、阻害体106を形成する段階、シード体112を形成する段階、および発光ダイオード120を形成する段階を備える。
【0079】
シリコン素子を形成する段階において、図15に示すように、高抵抗Siベース基板102の上に、マスクパターン672を形成して、イオン注入により、ウェル領域603を形成する。マスクパターン672は、例えばフォトレジストマスクである。マスクパターン672は、酸化シリコン、窒化シリコン、またはこれらの積層体からなるマスクであってよい。
【0080】
例えば、CVDによって、ベース基板102の表面に酸化シリコン膜を形成した後、エッチング等のフォトリソグラフィ法により、ウェル領域603が形成されるべき部位に、酸化シリコン膜の開口674を形成することでマスクパターン672を形成することができる。N型ウェルを形成する場合には、リン(P)等の5族元素イオンを注入する。P型ウェルを形成する場合には、ボロン(B)等の3族元素イオンを注入する。イオン注入後に、注入したイオンを拡散させるべくベース基板102を加熱する拡散加熱を施してもよい。
【0081】
図16に示すように、マスクパターン672を除去して、ゲート絶縁層を構成する酸化シリコン膜675およびゲート電極を構成するポリシリコン膜676を順に堆積する。酸化シリコン膜675およびポリシリコン膜676は、CVD法により成膜することができる。酸化シリコン膜675およびポリシリコン膜676におけるドレイン652およびソース658が形成されるべき部位に、エッチング等のフォトリソグラフィ法により、開口677を形成して、イオン注入する。ドレイン652およびソース658の伝導型は、ウェル領域603の伝導型と逆である。イオン注入後に、拡散加熱を施してもよい。
【0082】
図17に示すように、ゲート絶縁層654およびゲート電極656が形成されるべき部位以外の酸化シリコン膜675およびポリシリコン膜676をエッチング等のフォトリソグラフィ法により除去する。続いて、抵抗素子を形成するために用いるマスクパターン678を形成する。マスクパターン678は、例えばフォトレジストマスクである。マスクパターン678は、酸化シリコン、窒化シリコン、またはこれらの積層体からなるマスクであってもよい。
【0083】
次に、抵抗素子を形成すべき位置に対応するマスクパターン678の一部の領域に、開口682を形成する。マスクパターン678は、マスクパターン672と同様の方法によって形成されてよい。そして、開口682を介してベース基板102にイオン注入することによって、抵抗素子642を形成する。抵抗素子642の伝導型は、ドレイン652およびソース658の伝導型と同じである。開口682の形状およびイオン注入量によって、抵抗素子642の抵抗値を調整することができる。
【0084】
阻害体106を形成する工程において、図18に示すように、ベース基板102のシリコン部に形成されるFETおよび抵抗素子642を覆う阻害体106を形成して、阻害体106に、ベース基板102に達する開口108を形成する。例えば、CVD法によって、ベース基板102の全面に、阻害体106となる酸化シリコン膜を形成して、エッチング等フォトリソグラフィ法により、シード体112が形成されるべき部位に、ベース基板102に達する開口108を形成する。続いて、図18に示すように、イオン注入を行うことによって、図19に示すように、ウェル領域404を形成する。ウェル領域404の伝導型は、ドレイン652およびソース658の伝導型と同じである。
【0085】
シード体112を形成する段階において、図20に示すように、開口108の内部に、選択エピタキシャル成長法により、組成がCx1Siy1Gez1Sn1−x1−y1−z1(0≦x1<1、0≦y1≦1、0≦z1≦1、かつ0<x1+y1+z1≦1)であるシード体112を形成する。エピタキシャル成長法は、例えば、CVD法、MOCVD法、MBE法、ALD法を含む。例えば、シード体112として、CVD法によりSiGe結晶を形成してよい。阻害体106の表面では、シード体112のエピタキシャル成長が阻害されるので、開口108の内部においてシード体112が選択的にエピタキシャル成長する。シード体112は、加熱されてよい。
【0086】
発光ダイオード120を形成する段階において、図21に示すように、シード体112に接して、シード体112と格子整合または擬格子整合するN型半導体122およびP型半導体124を形成する。その後、図14に示すように、電極132を形成する。電極132の形成方法は、発光デバイス100と同様なので、説明を省略する。
【0087】
以上の説明は、発光デバイス600の製造方法における各プロセスの順序を限定するものではない。例えば、まず、阻害体106を形成する段階、シード体112を形成する段階、および発光ダイオード120を形成する段階を完了してから、シリコン素子を形成してもよい。
【0088】
図22は、他の実施形態である発光デバイス700の断面の一例を示す。発光デバイス700は、ベース基板102、阻害体106、シード体112、発光ダイオード120、および電極132を備える。発光デバイス700は、図1に示す発光デバイス100と同じ構成要素を含むが、発光デバイス100と比べて、多くの発光ダイオード120を含み、次の点において相違する。
【0089】
阻害体106には、複数の開口108が規則的に配列されている。当該複数の開口108のうち一部の開口の各々に、シード体112が形成される。シード体112の上に発光ダイオード120が形成されてよい。当該複数の発光ダイオード120が規則的に配列されてよい。図22は、複数の発光ダイオード120を横一列に配列した例を示す。例えば、このように発光ダイオード120を配列することにより、LEDアレイを構成することができる。当該LEDアレイは、例えばプリンタヘッドに利用される。
【0090】
ここで、「規則的に配列」とは、ある一定の規則に従って配列することをいう。例えば、x軸方向に一定の間隔で一列に配列すること、y軸方向に一定の間隔で一列に配列すること、x軸およびy軸にそれぞれ一定の間隔で格子状に配列すること、または千鳥格子状に配列すること等が含まれる。例えば、複数の開口が規則的に格子状に配列され、複数の開口の一部の開口にセルが設けられてもよい。それらのセルは、規則的に千鳥格子的に、隣接する列ごとに異なる配列で設けられてもよい。それらのセルの少なくとも一部または全部が発光セルとして機能してもよい。開口の配列の規則性と、セルの配列の規則性とは、同じであってもよく、異なってもよい。
【0091】
各発光ダイオード120は、それぞれ当該発光ダイオード120を駆動する回路を有してよい。当該駆動回路は、例えば図8Aに示した抵抗素子320または図8Bに示したサイリスタ220を含む。当該駆動回路は、図14に示したシリコン素子を含んでもよい。例えば、当該駆動回路は、ベース基板102に含まれるシリコンに形成されたトランジスタおよび抵抗素子等を含む。
【0092】
図22において、発光デバイス700が複数の発光ダイオード120を有する例を示したが、発光デバイス700は、複数のサイリスタを有してもよい。また、上記複数の開口108のうち一部の開口の各々に、シード体112が形成され、図8Aに示した抵抗素子320が形成されてもよい。当該複数の抵抗素子320が規則的に配列されてもよい。
【符号の説明】
【0093】
100 発光デバイス、102 ベース基板、106 阻害体、108 開口、112 シード体、120 発光ダイオード、122 N型半導体、124 P型半導体、132 電極、134 電極、200 発光デバイス、220 サイリスタ、222 P型半導体、224 N型半導体、226 P型半導体、228 N型半導体、232 ゲート電極、234 カソード電極、236 アノード電極、300 発光デバイス、320 抵抗素子、332 電極、400 発光デバイス、402 ベース基板、404 ウェル領域、500 発光デバイス、502 ベース基板、600 発光デバイス、603 ウェル領域、642 抵抗素子、652 ドレイン、654 ゲート絶縁層、656 ゲート電極、658 ソース、672 マスクパターン、674 開口、675 酸化シリコン膜、676 ポリシリコン膜、677 開口、678 マスクパターン、682 開口、700 発光デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンを含むベース基板と、
前記ベース基板に接して形成された複数のシード体と、
各々対応するシード体に格子整合または擬格子整合する複数の3−5族化合物半導体と
を備え、
前記複数の3−5族化合物半導体のうちの少なくとも1つには、供給される電流に応じて発光する発光素子が形成されており、
前記複数の3−5族化合物半導体のうち、前記発光素子が形成された3−5族化合物半導体以外の少なくとも1つの3−5族化合物半導体には、前記発光素子に供給される電流を制限する電流制限素子が形成されている発光デバイス。
【請求項2】
前記ベース基板の上方に形成され、前記ベース基板の少なくとも一部の領域を露出する複数の開口を有し、結晶成長を阻害する阻害体をさらに備え、
前記複数のシード体が、前記複数の開口の内部に形成されている請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項3】
前記複数のシード体の組成は、Cx1Siy1Gez1Sn1−x1−y1−z1(0≦x1<1、0≦y1≦1、0≦z1≦1、かつ0<x1+y1+z1≦1)である請求項1または2に記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記ベース基板と前記シード体との界面に接して、前記ベース基板内に、組成がCx2Siy2Gez2Sn1−x2−y2−z2(0≦x2<1、0<y2≦1、0≦z2≦1、かつ0<x2+y2+z2≦1)である界面領域を含み、
前記シード体におけるx1と前記領域におけるx2とが、x1>x2の関係であり、
前記シード体におけるy1と前記領域におけるy2とが、y1<y2の関係であり、
前記シード体におけるz1と前記領域におけるz2とが、z1>z2の関係であり、
前記シード体における(1−x1−y1−z1)と前記領域における(1−x2−y2−z2)とが、(1−x1−y1−z1)>(1−x2−y2−z2)の関係である請求項3に記載の発光デバイス。
【請求項5】
前記ベース基板が、前記複数のシード体と接するウェル領域を有し、
前記発光素子は、前記複数のシード体および前記ウェル領域を介して前記電流制限素子と電気的に結合される請求項1から4のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項6】
前記電流制限素子が、前記発光素子に供給される電流を制限する抵抗素子である請求項1から5のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項7】
前記抵抗素子が、キャリアをトラップするキャリアトラップを含む請求項6に記載の発光デバイス。
【請求項8】
前記電流制限素子が、前記発光素子に供給される電流をスイッチングするサイリスタである請求項1から5のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項9】
前記サイリスタは、P型半導体、N型半導体、P型半導体、およびN型半導体がこの順に積層された積層体を含む請求項8に記載の発光デバイス。
【請求項10】
前記シリコンは、前記複数のシード体に接する前記複数の3−5族化合物半導体の伝導型と同じ伝導型を有する請求項1から9のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項11】
前記ベース基板の前記シリコンを含む領域に形成されたシリコン素子をさらに備え、
前記シリコン素子が、前記発光素子に電流を供給する請求項1から10のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項12】
前記阻害体に、前記複数の開口が等間隔で配列されている請求項2に記載の発光デバイス。
【請求項13】
表面がシリコンであるベース基板に接して複数のシード体を形成する段階と、
各々対応するシード体に格子整合または擬格子整合する複数の3−5族化合物半導体を結晶成長させる段階と、
前記複数の3−5族化合物半導体のうちの少なくとも1つに、供給される電流に応じて発光する発光素子を形成する段階と、
前記複数の3−5族化合物半導体のうち、前記発光素子が形成された3−5族化合物半導体以外の少なくとも1つの3−5族化合物半導体に、前記発光素子に供給される電流を制御する電流制限素子を形成する段階と
を備える発光デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記複数のシード体を形成する段階と、
前記複数の3−5族化合物半導体を結晶成長させる段階との間に、
前記複数のシード体を加熱する段階をさらに備える請求項13に記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項15】
前記複数のシード体を形成する段階の前に、
前記ベース基板の上方に、前記ベース基板の少なくとも一部の領域を露出する複数の開口を有し、結晶成長を阻害する阻害体を形成する段階をさらに備え、
前記複数のシード体を形成する段階において、前記複数のシード体を、前記複数の開口の内部に形成する請求項13または14に記載の発光デバイスの製造方法。
【請求項16】
シリコンを含むベース基板と、
前記ベース基板に接して形成された複数のシード体と、
各々対応するシード体に格子整合または擬格子整合する複数の3−5族化合物半導体と
を備え、
前記複数の3−5族化合物半導体のうちの少なくとも1つが、供給される電流に応じて光を出力する発光半導体となり得る半導体であり、
前記複数の3−5族化合物半導体のうち、前記発光半導体となり得る半導体以外の少なくとも1つの3−5族化合物半導体が、P型半導体、N型半導体、P型半導体、およびN型半導体がこの順に積層された積層体を含む半導体基板。
【請求項17】
表面がシリコンであるベース基板に接して複数のシード体を形成する段階と、
各々対応するシード体に格子整合または擬格子整合する複数の3−5族化合物半導体を結晶成長させる段階と
を備え、
前記複数の3−5族化合物半導体を結晶成長させる段階が、
前記複数の3−5族化合物半導体のうちの少なくとも1つとして、供給される電流に応じて光を出力する発光半導体となり得る半導体を形成する段階と、
前記複数の3−5族化合物半導体のうち、前記発光半導体となり得る半導体以外の少なくとも1つの3−5族化合物半導体として、P型半導体、N型半導体、P型半導体、およびN型半導体をこの順に積層して形成する段階と
を含む半導体基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−23713(P2011−23713A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138378(P2010−138378)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】