説明

発芽ハトムギ発酵処理物

【課題】発芽ハトムギの発酵処理物を提供すること。
【解決手段】本発明は、1〜200mm発芽させたハトムギを発酵することより得られ、上記発酵が、乳酸菌、納豆菌、糸状菌、および放線菌からなる群より選択される少なくとも1種の微生物を用いて行われる、発芽ハトムギ発酵処理物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発芽ハトムギ発酵処理物に関する。
【背景技術】
【0002】
ハトムギ(学名:Coix lacryma-jobi Linne var. ma-yuen (Roman) Stapf.)は、古くから食用として利用され、例えば、殻付きのまま焙煎して茶として飲用する、種皮(殻、内皮)を取り去って、米と混ぜて炊飯するなどにより用いられている。種皮を取り去ったハトムギは、特に漢方の分野においてヨクイニンという名前で知られている。ハトムギは、利尿作用、排膿作用、消炎作用、鎮痛作用、滋養強壮効果、ウィルス性疣贅予防効果、美容効果を有することが知られている。
【0003】
ハトムギの利用について、これまでに種々の報告がなされている。例えば、ハトムギを澱分分解酵素で処理した鳩麦エキスを有効成分とする皮膚改善用品(特許文献1)、ハトムギに麹を作用させたはとむぎ醤油(特許文献2)、ハトムギ入り納豆(特許文献3)、またはハトムギ酒(特許文献4)、ハトムギの種皮を除いた種子を用いた抗アレルギー剤、ケミカルメディエーター遊離抑制剤及びこれを含有する抗アレルギー性化粧料,医薬品並びに食品(特許文献5)などが報告されている。さらに皮膚外用剤として、ハトムギ(ヨクイニン)を用いた皮膚外用剤(特許文献6または特許文献7)、ヨクイニン抽出物を混合するチロシナーゼ生成抑制剤及びこれを含有する皮膚外用剤(特許文献8)、ハトムギ抽出物を用いた皮膚外用剤(特許文献9)、水または水性有機溶媒で抽出したハトムギ抽出物を用いた皮膚外用剤(特許文献10)なども報告されている。
【0004】
それ以外にも、例えば、「乳酸発酵飲食物及びその製法」(特許文献11)、「はとむぎ醤油」(特許文献12)、「ハト麦納豆の製法」(特許文献13)、「ハトムギ入り納豆の製造法」(特許文献14および特許文献15)、「ヨクイニンを主剤とするイボとり外用剤の製造方法」(特許文献16)、「油性製剤およびその製造方法」(特許文献17)、「味噌、しょうゆ等調味料の製造方法」(特許文献18)、「抗酸化組成物及びその製造方法」(特許文献19)、「細胞賦活剤及びこれを配合した皮膚外用剤」(特許文献20)、「ハトムギ紅麹とその製造法及びα型乾燥ハトムギ紅麹とそれらを用いた食品」(特許文献21)、「ハトムギ酒の製造法」(特許文献22)、ほ乳動物の胸腺を主成分とし、ハトムギエキスを加える「鎮痛用医薬組成物」(特許文献23)、ハトムギの乾燥原料を細切断し、30%エタノール液で抽出した抽出物を用いる「抗核抗体減少用医薬組成物及びリウマチ因子減少用医薬組成物」(特許文献24)、精白ハトムギ粉末に酢酸およびプロテアーゼ処理した処理物を用いる「生理活性ペプチド組成物の製造法」(特許文献25)などが報告されている。
【0005】
さらに、例えば、特許文献26には、ハトムギを1〜2cm程度のモヤシとし、その根を粉砕してエタノールで抽出し、さらに濃縮することによって得られたハトムギモヤシエキスを用いた養毛剤及び毛髪用化粧料が開示されている。そして特許文献27には、ハトムギの殻、薄皮及び渋皮から選ばれる少なくとも一種を発酵処理又は酵素処理して得られる発酵処理物または酵素処理物を有効成分とする腫瘍の治療剤が開示されている。
【0006】
しかし、これら以外にもハトムギの有効性についての検討が望まれている。
【特許文献1】特開平7−274914号公報
【特許文献2】特開昭57−48947号公報
【特許文献3】特開昭58−8826号公報
【特許文献4】特開昭59−51785号公報
【特許文献5】特開平10−120583号公報
【特許文献6】特開2000−119155号公報
【特許文献7】特開2000−319157号公報
【特許文献8】特開2000−256131号公報
【特許文献9】特開2000−327552号公報
【特許文献10】特開2000−44481号公報
【特許文献11】特開昭52−92662号公報
【特許文献12】特開昭55−96074号公報
【特許文献13】特開昭55−54868号公報
【特許文献14】特開昭58−8826号公報
【特許文献15】特開昭58−31905号公報
【特許文献16】特開平5−221870号公報
【特許文献17】特開平6−9421号公報
【特許文献18】特開平7−236447号公報
【特許文献19】特開平8−103245号公報
【特許文献20】特開平9−77634号公報
【特許文献21】特開平10−84944号公報
【特許文献22】特許第2631660号公報
【特許文献23】特許第2958198号公報
【特許文献24】特許第2978432号公報
【特許文献25】特許第3108059号公報
【特許文献26】特開平8−208446号公報
【特許文献27】特許第3590042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ハトムギが有する生理活性を効果的に利用できる発芽ハトムギ発酵処理物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ハトムギが有する生理活性について鋭意検討した結果、1〜200mm発芽させたハトムギまたはその酵素処理物を発酵することによって得られる発芽ハトムギ発酵処理物が、従来のハトムギ抽出物(ハトムギエキス)、発芽ハトムギ抽出物(発芽ハトムギエキス)、またはハトムギ発酵物に比べて優れた生理活性を奏することを見出して本発明を完成するに至った。この発芽ハトムギ発酵処理物は、特に、紫外光吸収抑制効果、活性酸素消去作用、抗変異原活性、ラジカル除去作用、チロシナーゼ活性阻害効果、メラニン産生抑制効果、コラゲナーゼ活性阻害効果、エラスターゼ活性阻害効果、ヒアルロニダーゼ活性阻害効果、ヒスタミン遊離抑制効果、及びプロスタグランジンE産生抑制効果に優れている。さらに、安全性および生産性に優れ、日常的に摂取可能であり、かつ安価であるため有用である。
【0009】
本発明の発芽ハトムギ発酵処理物は、1〜200mm発芽させたハトムギを発酵することより得られ、該発酵が、乳酸菌、納豆菌、糸状菌、および放線菌からなる群より選択される少なくとも1種の微生物を用いて行われる。
【0010】
ある実施態様においては、上記ハトムギは、発酵前に酵素処理されている。
【0011】
ある実施態様においては、上記酵素は、糖質分解酵素である。
【0012】
ある実施態様においては、上記糖質分解酵素は、α―アミラーゼ、β―アミラーゼ、マルトトリオヒドロラーゼ、プルラナーゼ、アミログルコシダーゼ、α―グルコシダーゼ、β―グルコシダーゼ、イソアミラーゼ、グルコアミラーゼ、インベルターゼ、ペクチナーゼ、セルラーゼ、およびヘミセルラーゼからなる群より選択される少なくとも1種の酵素である。
【0013】
本発明の組成物は、上記発芽ハトムギ発酵処理物を含有する。
【0014】
ある実施態様においては、上記組成物は、化粧料、食品、医薬品、または医薬部外品である。
【0015】
本発明の発芽ハトムギ発酵処理物の製造方法は、1〜200mm発芽させたハトムギを発酵する工程を包含する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の発芽ハトムギ発酵処理物は、ポリフェノール含量が高く、そして紫外光吸収抑制効果、ジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル除去作用、活性酸素消去作用(スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)様活性)、抗変異原活性、チロシナーゼ活性阻害効果、メラニン産生抑制効果、コラゲナーゼ活性阻害効果、エラスターゼ活性阻害効果、ヒアルロニダーゼ活性阻害効果、ヒスタミン遊離抑制効果、およびプロスタグランジンE産生抑制効果を有する。これらの効果は、経口投与および経皮投与のいずれの場合も得ることができ、ハトムギ(すなわち発芽も発酵処理もしていないハトムギ)の抽出物(ハトムギエキス)、発芽ハトムギ(すなわち発酵処理していないハトムギ)の抽出物(発芽ハトムギエキス)、またはハトムギの発酵物(すなわち発酵していないハトムギの発酵物)に比べていずれも優れている。本発明の発芽ハトムギ発酵処理物は、化粧料、食品、医薬品、または医薬部外品などとして広く利用される。特にウィルス性疣贅、ウィルス性腫瘍などを予防或いは縮小するための機能性食品、医薬品などとして、あるいは、美白作用を増強し、かつ皮膚状態を改善する皮膚改善化粧料、皮膚改善食品、皮膚改善医薬品などとして好適に利用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の発芽ハトムギ発酵処理物は、1〜200mm発芽させたハトムギ(以下、単に発芽ハトムギという場合がある)を発酵することによって、あるいは上記発芽ハトムギを予め酵素処理した後で発酵することによって得られる。本明細書において、発芽ハトムギ発酵処理物とは、発芽ハトムギを発酵させて得られる発芽ハトムギ発酵物、該発酵物の上清(発芽ハトムギ発酵物上清)および該発酵物の溶媒処理物を包含する。以下、まず、発芽ハトムギ、酵素処理工程、および発酵工程を説明した上で、本発明の発芽ハトムギ発酵処理物について説明する。
【0018】
(発芽ハトムギ)
本発明に用いる発芽ハトムギは、ハトムギ種子を1〜200mm発芽させたものである。芽の部分が200mmを超えた発芽ハトムギを用いる場合、ハトムギの種子部に含まれる栄養分が少ないため、微生物による発酵が十分に行えない場合がある。その結果、優れた生理活性を有する発芽ハトムギ発酵処理物が得られない場合がある。発芽方法は、当業者が通常用いる方法を用いればよく特に制限されない。
【0019】
上記発芽ハトムギは、粉砕または破砕してから用いることが好ましい。粉砕方法または破砕方法は、特に制限されず、例えば、発芽ハトムギの乾燥物をブレンダー、カッターミル、ボールミルなどを用いて粉砕または破砕してもよいし、発芽ハトムギを乾燥せずに湿状態のまま、または緩衝液などに浸漬させた後、ホモジナイザーなどを用いて粉砕または破砕してもよい。
【0020】
(酵素処理工程)
上記発芽ハトムギは、発酵する前に予め酵素処理しておくことが好ましい。酵素処理することによって、発芽ハトムギ中に含まれる成分を低分子化し、発酵を容易とすること、あるいは含有される有効成分(活性成分)を発芽ハトムギ中から溶出させることができる。酵素処理は、発芽ハトムギと酵素とを接触させればよく、例えば、発芽ハトムギ粉砕物を含む緩衝液中に酵素を添加することにより行われる。
【0021】
酵素処理に用いられる酵素としては、糖質分解酵素、リグニンペルオキシダーゼ、リグニンペルオキシダーゼ、マンガンペルオキシダーゼ、ラッカーゼなどが挙げられる。好ましくは糖質分解酵素である。これらの酵素は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。酵素の添加量は、酵素の種類、精製度などにより異なるが、発芽ハトムギ10000質量部に対して、1〜100質量部程度である。通常、目安として発芽ハトムギを含む懸濁液中に0.01〜1質量%程度となるように添加すればよい。
【0022】
上記糖質分解酵素としては、例えば、α―アミラーゼ、β―アミラーゼ、インベルターゼ、マルトトリオヒドロラーゼ、プルラナーゼ、アミログルコシダーゼ、α―グルコシダーゼ、β―グルコシダーゼ、イソアミラーゼ、グルコアミラーゼ、ペクチナーゼ、セルラーゼ、およびヘミセルラーゼが挙げられる。
【0023】
酵素処理の条件は、処理する発芽ハトムギの形状、酵素の種類、酵素濃度などに応じて適宜設定すればよい。通常、35〜90℃、好ましくは40〜70℃にて、1〜96時間、好ましくは3〜72時間程度行われる。pHは、当業者が通常用いるpH調整剤を用いて、使用する酵素の最適pH付近に設定する。
【0024】
(発酵工程)
次いで、上記発芽ハトムギまたはその酵素処理物を発酵する。発酵は、発酵の種類に応じて、乳酸菌、納豆菌、糸状菌、および放線菌からなる群より選択される少なくとも一種の微生物を用いて行われる。これらの微生物の中でも、乳酸菌が特に好ましい。微生物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記微生物は、発酵を効率的に行う観点から、微生物を対数増殖期となるまで種培養しておくこと(種培養液)が好ましい。
【0025】
乳酸菌としては、例えば、ラクトバチラス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、テトラゲノコッカス(Tetragenococcus)属、エノコッカス(Oenococcus)属、およびワイセラ(Weissella)属が挙げられる。具体的には、ラクトバチラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチラス・アミロボラス(L. amylovorus)、ラクトバチラス・アニマリス(L. animalis)、ラクトバチラス・ブレビス(L. brevis)、ラクトバチラス・ブレビス・サブスピーシス・グラベセンシス(L. brevis subsp. gravesensis)、ラクトバチラス・ブフネリ(L. buchneri)、ラクトバチラス・ブルガリクス(L. bulgaricus)、ラクトバチラス・カゼイ(L. casei)、ラクトバチラス・カゼイ・サブスピーシス・カゼイ(L. casei subsp. casei)、ラクトバチラス・カゼイ・サブスピーシス・プランタラム(L. casei subsp. plantarum)、ラクトバチラス・カゼイ・サブスピーシス・トレランス(L. casei subsp. tolerans)、ラクトバチラス・セロビオサス(L. cellobiosus)、ラクトバチラス・カーバタス(L. curvatus)、ラクトバチラス・デルブルッキ(L. delbrueckii)、ラクトバチラス・デルブルッキ・サブスピーシス・ブルガリクス(L. delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバチラス・デルブルッキ・サブスピーシス・デルブルッキ(L. delbrueckii subsp. delbrueckii)、ラクトバチラス・デルブルッキ・サブスピーシス・ラクティス(L. delbruecki subsp. lactis)、ラクトバチラス・ディバージェンス(L. divergens)、ラクトバチラス・ファーメンタム(L. Fermentum)、ラクトバチラス・フルクトサス(L. fructosus)、ラクトバチラス・ガセリ(L. gasseri)、ラクトバチラス・ヒルガルディ(L. hilgardii)、ラクトバチラス・ケフィール(L. kefir)、ラクトバチラス・ライヒマニイ(L. leicnmannii)、ラクトバチラス・パラカゼイ(L. paracasei)、ラクトバチラス・パラカゼイ・サブスピーシス・パラカゼイ(L. paracasei subsp. paracasei)、ラクトバチラス・ペントーサス(L. pentosus)、ラクトバチラス・プランタラム(L. plantarum)、ラクトバチラス・ロイテリ(L. reuteri)、ラクトバチラス・ラムノーザス(L. rhamnosus)、ラクトバチラス・サケイ(L. sakei)、ラクトバチラス・サケイ・サブスピーシス・サケイ(L. sakei subsp. sakei)、ラクトバチラス・サンフランシスコ(L. sanfrancisco)、ラクトバチラス・バチノステルクス(L. vaccinostrcus)、ラクトバチラス・スピーシス(Lactobacillus sp.)、ラクトコッカス・ガルビエ(Lactococcus garvieae)、ラクトコッカス・ラクティス(L. lactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシス・ホードニエ(L. lactis subsp. hordniae)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシス・ラクティス(L. lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・プランタラム(L. plantarum)、ラクトコッカス・ラフィノラクティス(L. raffinolactis)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(P. acidilactici)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、ストレプトコッカス・クレモリス(S. cremoris)、ストレプトコッカス・フェーカリス(S. faecalis)、ストレプトコッカス・ラクティス(S. lactis)、ストレプトコッカス・ピオジェネス(S. pyogenes)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(S. thermophilus)、テトラゲノコッカス・ハロフィラス(Tetragenococcus halophilus)、テトラゲノコッカス・ミュリアティクス(T. muriaticus)、エンテロコッカス・カセリフラブス(Enterococcus casseliflavus)、エンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)、ロイコノストック・シトリウム(Leuconostoc citreum)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、ロイコノストック・メセンテロイデス・サブスピーシス・メセンテロイデス(L. mesenteroides subsp. mesenteroides)、ロイコノストック・メセンテロイデス・サブスピーシス・デキストラニキュム(L. mesenteroides subsp. dextrani)、エニコッカス・エニ(Oenococcus oeni)、ワイセラ・ビリデセンス(Weissella vilidescens)などである。
【0026】
納豆菌としては、バチラス(Bacillus)属が挙げられる。具体的には、バチラス・ズブチリス・バリエーション・ナットウ(Bacillus subtilis var. natto)などである。
【0027】
糸状菌としては、例えば、アクレモニウム(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、セリポリオプシス(Ceriporiopsis)属、ケトミウム(Chaetomium)属、コプリナス(Coprinus)属、ジオトリチューム(Geotrichum)属、ヒュミコラ(Humicola)属、モナスカス(Monuscus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属、ファネロケート(Phanerochaete)属、リゾムコール(Rhizomucor)属、リゾプス(Rhizopus)属、トラメテス(Trametes)属、およびトリコデルマ(Trichoderma)属が挙げられる。具体的には、アクレモニウム・セルロリチカス(Acremonium cellulolyticus)、アスペルギルス・アクレタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・オーレウス(Aspergillus aureus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フォーチダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・フミンガタス(Aspergillus fumingatus)、アスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)、アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オクラセウス(Aspergillus ochraceus)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・フェニシス(Aspergillus phoenicis)、アスペルギルス・プルベルレンタス(Aspergillus pulverulentus)、 アスペルギルス・レペンス(Aspergillus repens)、アスペルギルス・サジェ(Aspergillus sajae)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usamii)、セリポリオプシス・サブファーミスポラ(Ceriporiopsis subvermispora)、セリポリオプシス・ハースタス(Ceriporiopsis hirsutus)、ケトミウム・エラチカム(Chaetomium erraticum)、ケトミウム・グラシエ(Chaetomium gracile)、コプリナス・シネレウス(Coprinus cinereus)、ジオトリカム・キャンディダム(Geotrichum candidum)、フミコラ・グリセア(Humicola grisea)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、モナスカス・アンカ(Monascus anka)、モナスカス・パーパレウス(Monascus purpureus)、ムコール・ジャバニカス(Mucor javanicus)、ムコール・ミエハイ(Mucor miehei)、ペニシリウム・アマガサキンス(Penicillium amagasakiense)、ペニシリウム・キャメンベルティ(Penicillium camembertii)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、ペニシリウム・シトリナム(Penicillium citrinum)、ペニシリウム・デカンベンス(Penicillium decumbens)、ペニシリウム・リラシナム(Penicillium lilacinum)、ペニシリウム・マルチカラー(Penicillium multicolor)、ペニシリウム・パーパロゲナム(Penicillium purpurogenum)、ペニシリウム・ロケフォルティ(Penicillum roquefortii)、ファネロケート・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、ファネロケート・ソルディダ(Phanerochaete sordida)、リゾムコール・ミエハイ(Rhizomucor miehei)、リゾプス・デルマ(Rhizopus delemar)、リゾプス・ジャポニカス(Rhizopus japonicus)、リゾプス・ミエハイ(Rhizopus miehei)、リゾプス・ニベアス(Rhizopus niveus)、リゾプス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、トラメテス・キュベンシス(Trametes cubensis)、トラメテス・ギボサ(Trametes gibbosa)、トラメテス・クサノアナ(Trametes kusanoana)、トラメテス・オリエンタリス(Trametes orientalis)、トラメテス・バシカラ(Trametes versicolor)、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・インソレンス(Trichoderma insolens)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・リグロナム(Trichoderma lignorum)、トリコデルマ・ロンギブランキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・レーゼイ(Trichoderma reesei)、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)などである。
【0028】
放線菌としては、例えば、アクチノプラネス(Actinoplanes)属、アミコラトプシス(Amycolatopsis)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、ストレプトバーチシリウム(Streptoverticillium)属、およびサーモモノスポラ(Thermomonospora)属が挙げられる。具体的には、アクチノプラネス・ミソリーンシス(Actinoplanes missouriensis)、アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)、サーモモノスポラ・ビリディス(Thermomonospora viridis)、ストレプトマイセエス・グリセオファスカス(Streptomyces griseofuscus)、ストレプトマイセス・マリナス(Streptomyces murinus)、ストレプトマイセス・フェオクロモゲナス(Streptomyces phaeochromogenes)、ストレプトマイセス・ルビジノサス(Streptomyces rubiginosus)、ストレプトマイセス・アルブラス(Streptomyces albulus)、ストレプトマイセス・グリセオファスカス(Streptomyces griseofuscus)、ストレプトマイセス・マリナス(Streptomyces murinus)、ストレプトマイセス・フェオクロモゲナス(Streptomyces phaeochromogenes)、ストレプトファーティシリウム・モバレンス(Streptoverticillium mobaraense)、サーモモノスポラ・ビリディス(Thermomonospora viridis)などである。
【0029】
上記発酵は、発芽ハトムギまたはその酵素処理物と、微生物とを接触させることにより行われる。接触方法については特に制限されない。例えば、発芽ハトムギ粉砕物または破砕物を含む懸濁液中に、微生物の種培養液を添加する。
【0030】
発酵条件についても特に制限されず、発酵温度および発酵時間は、添加する種菌の量、微生物の種類に応じて適宜設定される。
【0031】
発酵は、微生物に応じて微好気性条件下または好気性条件下で行われ、必要に応じて攪拌速度および培養液のpHを制御しながら行われる。pHの制御は、pH調整剤を適宜添加するなどの当業者が通常用いる方法が採用される。例えば、微生物として乳酸菌(特にラクトバチルス・アシドフィラス)を用いる場合、微好気性条件下、10Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いて培養液のpHを5〜7に制御しながら発酵することが好ましい。
【0032】
発酵の停止は、例えば、高温で短時間処理するなどの手段により行われる。また、エタノールを加えてもよい。エタノールの量は特に制限されないが、通常、発酵処理物の0.5〜2.5倍量程度の量が用いられる。発酵物の溶媒処理物を得ることを目的とする場合はこの方法が好ましい。このようにして発芽ハトムギ発酵処理物が得られる。
【0033】
本発明の発芽ハトムギ発酵処理物としては、上述のように、発芽ハトムギ発酵物、発芽ハトムギ発酵物の上清、発芽ハトムギ発酵物の溶媒処理物などが挙げられる。この発芽ハトムギ発酵処理物は、化粧料、食品、医薬品、医薬部外品などとして利用される。
【0034】
上記発芽ハトムギ発酵物は、上記発酵により得られる固形物および発酵液を含む。この発酵物は、例えば、食品などに用いられる。
【0035】
上記発芽ハトムギ発酵物上清は、上記発芽ハトムギ発酵物から固形物を除去することによって得られる。この上清は、例えば、液状製品(例えば、化粧料など)に用いる場合、含有される固形物による外観の問題などを解消できる点で特に有効である。固形物を除去する方法は特に制限されず、濾過、遠心分離などの当業者が通常用いる方法が採用される。これらの上清は、さらに吸着剤、活性炭などにより脱色または脱臭して用いてもよい。
【0036】
上記発芽ハトムギ発酵物の溶媒処理物は、発酵物中に含有される高分子成分を、溶媒を加えて析出または沈殿させ、除去することによって得られる。溶媒は、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノールなどが用いられる。食品に用いる場合、安全性の観点から、エタノールを用いることが特に好ましい。溶媒処理は、上記発芽ハトムギ発酵物に上記溶媒を加えて保持することによって行われる。処理温度および時間は、当業者が通常設定する範囲で行えばよく、特に制限されない。エタノールは、上述のように、発酵を停止するためにも用いられ得るため、発酵の停止の際に発酵物に直接加えて発酵の停止と溶媒処理とを同時に行ってもよい。析出物および沈殿物の除去は、例えば上述の固形物を除去する方法を用いて行われる。この溶媒処理物も上記と同様に脱色または脱臭して用いることができる。
【0037】
本発明の発芽ハトムギ発酵処理物は、さらに必要に応じて乾燥して粉末化してもよい。乾燥方法は、特に制限されないが、上記発酵処理物中の活性成分が分解することを防止する観点から低温で行うことが好ましい。例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥などが好適に用いられる。
【0038】
本発明の発芽ハトムギ発酵処理物は、含有される活性成分をさらに精製してもよい。活性成分としては、コニフェリルアルコール、フェルラ酸、シリンジ酸などが挙げられる。精製は、例えば、発酵物の上清を、ヘキサン、酢酸エチル、およびn−ブタノールにより液−液分配を行い、ブタノール分画部をアンバーライト(登録商標)XAD−7に吸着させて水とメタノールとの混合溶媒で溶出し、そしてさらに酢酸エチル−ヘキサン系溶媒を用いたシリカゲルクロマトグラフィーにより分離することにより行われる。このような精製は、例えば、医薬品として用いる場合に特に有効である。
【0039】
本発明の発芽ハトムギ発酵処理物は、従来のハトムギエキス、ハトムギの発酵処理物、あるいは発芽ハトムギエキスに比べて、ポリフェノール含量が高く、紫外線吸収抑制効果、活性酸素消去作用、ラジカル除去作用、抗変異原活性、チロシナーゼ活性阻害効果、メラニン産生抑制効果、コラゲナーゼ活性阻害効果、エラスターゼ活性阻害効果、ヒアルロニダーゼ活性阻害効果、ヒスタミン遊離阻害効果、およびプロスタグランジンE産生抑制効果に優れている。
【0040】
上記紫外線吸収抑制効果は、太陽光線中の紫外線UV−A(320−400nmの波長)および紫外線UV−B(280−320nmの波長)のいずれに対しても有効である。紫外線UV−Aは、皮膚内部まで到達して、DNAを損傷させる、あるいはフリーラジカルを生成させ、皺、シミ、たるみなどの光老化と呼ばれる慢性的な障害を引き起こす。紫外線UV−Bは、表皮中で吸収、散乱され、発赤、頭痛など、皮膚に炎症を起こす、あるいは慢性的に浴び続けると、皮膚ガンの原因ともなり得る。
【0041】
上記活性酸素消去作用は、腫瘍、動脈硬化などの生体の老化、あるいはシワ、シミ、皮膚炎症、脱毛などの皮膚の老化を防止する。活性酸素は、生体細胞内のエネルギー代謝過程で生じ、食細胞の殺菌機構にとって必須であり、ウィルスや癌細胞の除去に重要な働きを果たしている。しかし、過剰に産生されると、生体内の膜や組織を構成する生体内分子を攻撃することによって、上記生体の老化、あるいは皮膚の老化を引き起こす。
【0042】
上記ラジカル除去作用は、前記活性酸素の一種である酸素分子の一電子還元で生じるスーパーオキシドアニオン(・O)、ヒドロキシラジカル(・OH)を消去することを指す。活性酸素の出発物質ともなっているスーパーオキサイドは、細胞内に含まれるスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)の触媒作用により消去される。しかし、SODは老化と共に減少し、特に細胞内で減少すると、スーパーオキサイドの濃度が高くなり、活性酸素の無毒化酵素であるカタラーゼ等の活性が低下する。その結果、コラーゲン等の生体組織を分解、変性又は架橋する、あるいは油脂類を酸化して細胞に障害を与える過酸化脂質を生成することによって、皮膚のしわを形成したり、皮膚の弾力性低下等の老化、炎症、肌の色素沈着を引き起こす。
【0043】
上記抗変異原性は、発がんのイニシエーションに関与する変異原の活性を抑制し、発がんのリスクを低減化させる。変異原とは、紫外線、スーパーオキシドラジカルに加えて、飲料水中のトリハロメタン、ディーゼル車の排ガス中の粒子、タバコの煙中のニトロソアミン、ベンゾピレンなどの、細胞の遺伝物質DNAに作用して損傷を与え、突然変異を引き起こす作用を有するものを指す。
【0044】
上記チロシナーゼ活性阻害効果は、チロシンおよびL−DOPAの酸化に関与するチロシナーゼを阻害するため、美容上重要視されている。チロシンは、酸化によりL−DOPAとなり、さらにL−DOPAが酸化されると、ドーパキノンを経て、メラニンへと変換される。このメラニンがシミなどの原因となる。
【0045】
上記コラゲナーゼ活性阻害効果またはエラスターゼ活性阻害効果は、美容上最重要視されている。コラーゲンは、ヒトの体内の25〜30%を占める弾力性のある三重螺旋構造を持つ繊維状のタンパク質であって皮膚の主成分である。また、エラスチンは、皮膚などの伸展性に富んだ組織に見られる構造タンパク質の1つである。コラゲナーゼおよびエラスターゼは、これらのコラーゲンおよびエラスチンそれぞれを特異的に分解させるプロテアーゼの1つである。したがって、上記効果は、滑らかな肌を保つ役割であるコラーゲンまたはエラスチンが分解されることによる皮膚のしわを形成、皮膚の弾力性低下などの老化を抑制し得る。
【0046】
上記ヒアルロニダーゼ活性阻害効果は、炎症、抗アレルギー症などの皮膚疾病の治療もしくは予防、または皮膚老化の抑制に有用である。ヒアルロン酸は、ヒトの皮膚、筋肉、血管、脳など後半に分布するグリコサミノグリカンの1つであり、皮膚の保湿に関与する。ヒアルロニダーゼはこのヒアルロン酸を減少させ、皮膚のはりを失わせる原因となる。さらに、ヒアルロン酸の分解により炎症やアレルギーを引き起こすことが知られている。
【0047】
上記ヒスタミン遊離阻害効果は、アレルギーの予防または治療方法の1つとして有用である。肥満細胞は、脱顆粒する際にヒスタミンやロイコトリエン等の化学物質を遊離し、その結果、花粉症、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などの即時型アレルギーが誘起される。したがって、上記効果によりヒスタミンの遊離が抑制され、即時型アレルギーが抑制される。
【0048】
上記プロスタグランジンE産生抑制効果は、疼痛および炎症ならびに他の炎症が関係する疾患、例えば関節炎の治療または緩和、ならびに疼痛、炎症性疾患等から選択される疾患または医学的症状の治療または予防に有用である。プロスタグランジン類は、疼痛、発熱および、炎症に関係するメディエーターである。特にプロスタグランジンE(PGE)は、炎症状態において検出される主たるエイコサノイドである。PGEを産生するCOX(サイクロオキシゲナーゼ)2が炎症反応に関与していることが知られている。本発明の発芽ハトムギ発酵処理物は、COX2を選択的に阻害することによって、PGEの産生を抑制すると考えられる。
【0049】
本発明の発芽ハトムギ発酵処理物は、さらに、ウィルス性炎症(ウィルス性疣贅)、ウィルス性腫瘍の治療もしくは予防効果を発揮する。ウィルス性疣贅は、ヒト乳頭腫(パピローマ)ウィルスの感染によって引き起こされ、その中でも、尋常性疣贅がありふれた疣贅である。また、子宮頸管において、ヒト乳頭腫ウイルスが感染すると、炎症を経て子宮頸ガンが発症しやすく、特にヒト乳頭腫ウィルスの感染により子宮頸ガンが発生すると考えられている。
【0050】
本発明の発芽ハトムギ発酵処理物含有組成物は、上記発芽ハトムギ発酵処理物を含有し、必要に応じて、その他の成分を含有し得る。この組成物は、化粧料、食品、医薬品、医薬部外品などに広く適用し得る。
【0051】
本発明の組成物中の発芽ハトムギ発酵処理物の含有量は特に制限されない。発芽ハトムギ発酵処理物が有する生理活性(紫外線吸収抑制効果、活性酸素消去作用、ラジカル除去作用、抗変異原活性、チロシナーゼ活性阻害効果、メラニン産生抑制効果、コラゲナーゼ活性阻害効果、エラスターゼ活性阻害効果、ヒアルロニダーゼ活性阻害効果、ヒスタミン遊離阻害効果、およびプロスタグランジンE産生抑制効果)を効果的に得る観点から、化粧品などの経皮投与および食品などの経口投与いずれの場合も、好ましくは固形分換算で0.001質量%以上、より好ましくは0.01〜20質量%含有される。
【0052】
本発明の組成物に含有され得るその他の成分は、組成物の用途および剤形に応じて適宜用いられる。その他の成分の含有量は任意である。その他の成分としては、例えば、当業者が通常化粧料に用いる成分(油性成分、界面活性剤、増粘剤、防腐・殺菌剤、粉体成分、色素、香料など)、通常食品に用いる成分(食品添加物など)、または通常医薬品もしくは医薬部外品に用いる成分(賦形剤、基材、乳化剤、安定化剤、溶解助剤、矯味剤、保存剤、芳香剤、着色剤、コーティング剤など)などが挙げられる。さらに剤形の観点から、例えば、錠剤または顆粒剤などに成形する場合は、賦形剤(無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乳糖、コーンスターチ、結晶セルロースなど)、結合剤(アラビアガム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、無水ケイ酸など)、崩壊剤(コーンスターチ、カルボキシメチルセルロースカルシウム等など)などが適宜用いられる。
【0053】
上記その他の成分の中でも、油性成分としては、オリーブ油、ホホバ油、ヒマシ油、大豆油、米油、米胚芽油、ヤシ油、パーム油、カカオ油、アボガド油、マカデミアナッツ油、スクワラン、ミンク油、タートル油、ミツロウ、カルナウバロウ、ライスワックス、ラノリン、流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、cis−11−エイコセン酸、ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、2−エチルヘキシルグリセライド、高級脂肪酸オクチルドデシル(ステアリン酸オクチルドデシルなど)などが挙げられる。
【0054】
上記界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪酸アミン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、α−スルホン化脂肪酸アルキルエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、第四級アンモニウム塩、第一級〜第三級脂肪酸アミン塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N−ジアルキルモルフォルニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド塩、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニオベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−アルキレンアンモニオカルボキシベタイン、N−アシルアミドプロピル−N′,N′−ジメチル−N′−β−ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタインなどが挙げられる。
【0055】
上記増粘剤としては、アルギン酸、寒天、カラギーナン、ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、トラガントガム、グアーガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、(メタ)アクリル酸の共重合体、ヒアルロン酸およびその誘導体、ポリグルタミン酸およびその誘導体などが挙げられる。
【0056】
上記防腐・殺菌剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、フェノキシエタノール、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、サリチル酸、エタノール、ウンデシレン酸、フェノール類、1,2−ペンタンジオール、各種精油類、樹皮乾留物、プロポリスエキス、メチルイソチアゾリノンなどが挙げられる。
【0057】
上記粉体成分としては、セリサイト、酸化チタン、タルク、カオリン、ベントナイト、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、無水ケイ酸、雲母、ポリエチレンパウダー、シルクパウダー、セルロース系パウダーなどが挙げられる。
【0058】
本発明の組成物は、目的に応じて、種々の形態に調製することができる。例えば、化粧料して利用する場合は、液剤(化粧水、乳液、リキッドファンデーションなど)、エアゾール剤などとすることができる。食品として利用する場合は、固形食品、半流動食品(クリーム状、ジャム状など)、ゲル状食品、飲料、錠剤、顆粒剤などとすることができる。そして医薬品または医薬部外品として利用する場合は、錠剤、液剤(ローション)、注射剤、軟膏、クリーム、エアゾール剤、座剤などとすることができる。医薬品とする場合は、上記形態に応じて、経口剤、外用剤、注射剤、吸入剤、点鼻剤、点眼剤などとして用いられる。
【0059】
本発明の組成物の投与量は、組成物の目的に応じて適宜設定される。経口投与する場合、発芽ハトムギ発酵処理物の1日あたりの投与量が0.2〜0.3gとなるように投与することが好ましい。
【実施例】
【0060】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが,本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例において「部」および「%」は質量基準である。
【0061】
(実施例1:発芽ハトムギ発酵処理物の調製)
岡山県産ハトムギ種子を十分水洗した後、25℃、相対湿度45%の環境下で5日間発芽させた。芽の長さは4〜8mm(平均6mm)であった。この発芽ハトムギを水洗した後、減圧下、40℃にて乾燥し、ボールミルを用いて粉砕した。この粉砕物1kgに蒸留水6Lを加えて50℃にて5時間撹拌した後、121℃にて15分間滅菌し、室温まで冷却して発芽ハトムギ含有液を得た。
【0062】
これとは別に、ラクトバチラス・アシドフィラスJCM1229を、GYP培地(グルコース1g、酵母エキス1g、ペプトン0.5g、酢酸ナトリウム0.5g、無機塩類0.01g、および水100g)中で37℃にて18時間静置培養し、対数増殖期のラクトバチラス・アシドフィラスJCM1229の種培養液を得た。なお、培養液中の菌数は、660nmにおける濁度をもとに決定した。
【0063】
上記発芽ハトムギ含有液に上記種培養液を菌数が2×10CFU量となるように添加し、10Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いて培地pHを6.0に保ちながら、37℃にて8日間撹拌培養を行った。培養終了後、培養液に95%エタノールを6kg添加し、4℃で12時間放置して高分子成分を析出、沈降させた。その後、10,000×gの条件下、4℃にて20分間遠心分離を行い、上清を得た。上清をさらにスプレードライして発芽ハトムギ発酵物のエタノール処理粉末(淡黄色粉末)12.5gを得た。
【0064】
(実施例2〜8:発芽ハトムギ発酵処理物の調製)
ラクトバチラス・アシドフィラスJCM1229の代わりに、表1に記載の乳酸菌を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、発芽ハトムギ発酵物のエタノール処理粉末(淡黄色粉末)を得た。これらの粉末の収量を表1にまとめて示す。
【0065】
(実施例9〜16:発芽ハトムギ発酵処理物の調製)
実施例1〜8で得られた各発芽ハトムギ含有液に、さらにアミラーゼAD「アマノ」1(α−アミラーゼ、天野エンザイム株式会社)を10g添加し、60℃にて3時間作用させた。その後、121℃にて15分間滅菌して発芽ハトムギ酵素処理液を得た。それぞれ発芽ハトムギ酵素処理液1〜8とする。
【0066】
発芽ハトムギ含有液の代わりに、上記発芽ハトムギ酵素処理液1〜8をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして、発芽ハトムギ発酵物のエタノール処理粉末(淡黄色粉末)を得た。これらの粉末の収量を表1にまとめて示す。
【0067】
(実施例17:発芽ハトムギ発酵処理物の調製)
アスペルギルス・ニゲルJCM5546を、ポテトデキストロース培地10mL中で30℃にて18時間培養し、アスペルギルス・ニゲルJCM5546の種培養液を得た。
【0068】
これとは別に、ラクトバチラス・ペントーサスJCM8333を、GYP培地中で37℃にて18時間静置培養し、ラクトバチラス・ペントーサスJCM8333の種培養液を得た。
【0069】
実施例1で用いた発芽ハトムギ含有液に、上記アスペルギルス・ニゲルJCM5546の種培養液を全量加え、25℃にて7日間好気培養を行った。121℃、15分間滅菌を行って、冷却した後、さらに上記ラクトバチラス・ペントーサスJCM8333の種培養液を菌数が2×10CFU量となるように添加し、35℃にて7日間撹拌培養を行った。培養終了後、培養液に95%エタノールを6kg添加し、4℃で12時間放置して高分子成分を析出、沈降させた。その後、10,000×gの条件下、4℃にて20分間遠心分離を行い、上清を得た。上清をさらにスプレードライして発芽ハトムギ発酵物のエタノール処理粉末(淡黄色粉末)14.1gを得た。
【0070】
(実施例18:発芽ハトムギ発酵処理物の調製)
アスペルギルス・オリゼJCM2230を、ポテトデキストロース培地10mL中で30℃にて18時間培養し、アスペルギルス・オリゼJCM2230の種培養液を得た。
【0071】
実施例1で用いた発芽ハトムギ含有液に、上記アスペルギルス・オリゼJCM2230の種培養液を全量加え、25℃にて7日間好気培養を行った。121℃、15分間滅菌を行って、冷却した後、実施例1で用いたラクトバチラス・アシドフィラスJCM1229の種培養液を菌数が2×10CFU量となるように添加し、35℃にて7日間撹拌培養を行った。培養終了後、培養液に95%エタノールを6kg添加し、4℃で12時間放置して高分子成分を析出、沈降させた。その後、10,000×gの条件下、4℃にて20分間遠心分離を行い、上清を得た。上清をさらにスプレードライして発芽ハトムギ発酵物のエタノール処理粉末(淡黄色粉末)13.4gを得た。
【0072】
(比較例1:ハトムギエキスの調製)
岡山県産ハトムギ種子を十分水洗した後、減圧下、40℃にて乾燥し、ボールミルを用いて粉砕した。この粉砕物100gに、蒸留水600mLを加えて80℃にて5時間加熱混合した。その後、10,000×gの条件下、4℃にて20分間遠心分離を行い、上清を得た。上清をさらに凍結乾燥してハトムギエキス(淡黄色粉末)0.9gを得た。
【0073】
(比較例2:ハトムギ発酵処理物の調製)
岡山県産ハトムギ種子を十分水洗した後、減圧下、40℃にて乾燥し、ボールミルを用いて粉砕した。この粉砕物100gに、蒸留水600mLを加えて121℃にて15分間滅菌した。アミラーゼAD「アマノ」1(α−アミラーゼ、天野エンザイム株式会社)を100mg添加し、60℃にて3時間作用させた。その後、121℃にて15分間滅菌してハトムギ酵素処理液を得た。
【0074】
発芽ハトムギ含有液の代わりに、上記ハトムギ酵素処理液を用いたこと以外は、実施例1と同様に操作して、ハトムギ発酵物のエタノール処理粉末(淡黄色粉末)1.3gを得た。
【0075】
(比較例3:発芽ハトムギエキスの調製)
岡山県産ハトムギ種子を十分水洗した後、25℃、相対湿度45%の環境下で5日間発芽させた。芽の長さは4〜8mm(平均6mm)であった。この発芽ハトムギを水洗した後、減圧下、40℃にて乾燥し、ボールミルを用いて粉砕した。この粉砕物100gに蒸留水600mLを加えて80℃にて5時間加熱混合した。さらに、95%エタノールを600mL添加し、4℃で12時間放置した。その後、10,000×gの条件下、4℃にて20分間遠心分離を行い、上清を得た。上清をさらに凍結乾燥して発芽ハトムギエキスのエタノール処理粉末(淡黄色粉末)1.0gを得た。
【0076】
【表1】

【0077】
(発芽ハトムギ発酵処理物の評価)
実施例1〜18の発芽ハトムギ発酵処理物(発芽ハトムギ発酵物のエタノール処理粉末または発芽ハトムギ発酵液粉末)、比較例1の生ハトムギエキス、比較例2の生ハトムギ発酵処理物(発芽ハトムギ発酵物のエタノール処理粉末)、および比較例3の発芽ハトムギエキスをそれぞれ試料として用いて、以下の(1)〜(12)の評価を行った。結果を表2にまとめて示す。
【0078】
(1)紫外光吸収抑制効果
各試料を蒸留水に1.0mg/mLの濃度で溶解させた。各試料溶液について紫外可視分光光度計を用いて200〜800nmの間でスキャニングを行った。実施例1の発芽ハトムギ発酵処理物のスペクトルを図1に示す。
【0079】
(2)ポリフェノール含量
ポリフェノール含量は、Folin−Denis法(分析実務者が書いた 五訂日本食品標準成分表分析マニュアルの解説、254頁、2001年、中央法規出版(株))により没食子酸等量として求めた。すなわち、各試料を蒸留水15mg/mLの濃度で溶解し、試料溶液を調製した。この試料溶液1mLと、フォーリン試薬(タングステン酸ナトリウム25g、リンモリブデン酸5g、リン酸12.5mLに蒸留水180mLを加えて2時間煮沸還流後、蒸留水で1Lとしたもの)1mLとを混合して5分間放置した。さらに、10%炭酸ナトリウム水溶液を1mL添加し、1時間放置後、700nmにおける吸光度を測定した。また、試料溶液の代わりに蒸留水のみを用いたこと以外は上記と同様にして測定した吸光度をコントロールとした。各種濃度の没食子酸水溶液を調製して上記と同様に測定して検量線を作成し、各試料に含まれるポリフェノール含量を没食子酸等量として測定した。
【0080】
(3)ジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル除去作用
DPPH(1,1−Diphenyl−2−picrylhydrazyl)を利用して以下の方法にてラジカル捕捉活性を測定した。すなわち、試料を蒸留水に種々の濃度で溶解し、試料溶液を調製した。試料溶液250μLに、0.5mMのDPPHメタノール溶液を250μL加えて撹拌し、暗所にて1時間反応させた。得られた反応液について517nmにおける吸光度を測定した。この吸光度をAとする。他方、DPPHを用いないこと以外は上記と同様にして吸光度を測定した。この吸光度をBとする。得られた吸光度AおよびBの値を用いてラジカル捕捉活性(%)を以下の式から算出した。
ラジカル捕捉活性(%)={1−(A/B)}×100
【0081】
さらにラジカル捕捉活性が50%となる試料濃度を求めた。結果を表2に示す。なお、試料溶液の代わりに蒸留水のみを用いたこと以外は上記と同様にして吸光度を測定し、コントロールとして設けた。
【0082】
(4)スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)様活性(活性酸素消去作用)
試料を蒸留水に15mg/mLの濃度で溶解し、試料溶液を調製した。試験管に、上記試料溶液、0.3mMのキサンチン水溶液、0.1MのNaCO緩衝液(pH8.5)、0.75mMのニトロブルーテトラゾリウム水溶液、0.6mMのEDTA水溶液、および1g/Lのウシ血清アルブミン溶液をそれぞれ0.1mL加え、25℃にて10分間静置した。次いで、キサンチンオキシダーゼ溶液を加えて素早く攪拌し、25℃にて20分間静置して反応させた。その後、10mM塩化カルシウム溶液0.5mLを加えて反応を停止させて、波長560nmにおける吸光度を測定した。得られた吸光度をAとする。なお、吸光度Aのブランクとしてキサンチンオキシダーゼ溶液の代わりに蒸留水を用いて吸光度を測定した。この吸光度をBとする。
【0083】
他方、試料溶液の代わりに蒸留水を用いたこと以外は上記と同様にして吸光度を測定した。得られた吸光度をCとする。なお、吸光度Cのブランクとしてキサンチンオキシダーゼ溶液の代わりに蒸留水を用いて吸光度を測定した。この吸光度をDとする。
【0084】
得られた吸光度A〜Dの値を用いてスーパーオキサイド消去率(%)を以下の式から算出した。
スーパーオキサイド消去率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
【0085】
さらに試料濃度を減少させた試料溶液を用いたこと以外は上記と同様にしてスーパーオキサイド消去率を測定し、スーパーオキサイドを50%消去する試料濃度(mg/mL)を内挿法により求めた。
【0086】
(5)抗変異原活性
100mMリン酸緩衝液(pH6.8)に、試料を10mg/mLとなるように溶解した。この試料溶液0.1mLに変異原としてTrp−P−2(0.1mL)を添加し、さらにサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)TA98の培養液0.1mL、ヒスチジン−ビオチン溶液0.1mL、S9Mix(0.5mL)を添加した。添加後、37℃にて30分間保持し、0.6%NaClを含む0.7%軟寒天溶液と共に最少培地に注ぎ、プレート上に均一に広げて固化させた。その後、37℃にて2日間培養し、最小培地プレート上に生じたコロニー数(復帰変異コロニー数)を計測した。得られたコロニー数をAとする。
【0087】
他方、試料を加えないこと以外は上記と同様にして得られたコロニー数をB、そして自然復帰したサルモネラ・チフィムリウムTA98のコロニー数をCとして、抗変異原性(%)を以下の式から算出した。
抗変異原性(%)=〔(B−A)/(B−C)〕×100
【0088】
(6)チロシナーゼ活性阻害効果
試料を蒸留水に15mg/mLの濃度で溶解した試料溶液;0.05Mリン酸ナトリウム緩衝溶液(pH7.0)に、マッシュルームから分離および精製したチロシナーゼ(シグマ(Sigma)社)を200U/mLの濃度で溶解したチロシナーゼ溶液;および上記リン酸ナトリウム緩衝溶液(pH7.0)に、チロシンを0.03質量%となるように溶解したチロシン溶液をそれぞれ調製した。
【0089】
試験管に、上記試料溶液0.5mLとチロシン溶液0.5mLとを加え、25℃にて10分間静置した。さらに、チロシナーゼ溶液0.5mLを加えて25℃にて5分間静置して反応させた。反応液について475nmにおける吸光度を測定した。得られた吸光度をAとする。なお、吸光度Aのブランクとしてチロシナーゼ溶液の代わりに蒸留水を用いて吸光度を測定した。この吸光度をBとする。
【0090】
他方、試料溶液の代わりに蒸留水を用いたこと以外は上記と同様にして吸光度を測定した。得られた吸光度をCとする。なお、吸光度Cのブランクとしてチロシナーゼ溶液の代わりに蒸留水を用いて吸光度を測定した。この吸光度をDとする。
【0091】
得られた吸光度A〜Dの値を用いてチロシナーゼ阻害率(%)を以下の式から算出した。
チロシナーゼ阻害率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
【0092】
さらに試料濃度を減少させた試料溶液を用いたこと以外は上記と同様にしてチロシナーゼ阻害率を測定し、チロシナーゼ活性を50%阻害する試料濃度IC50(mg/mL)を内挿法により求めた。
【0093】
(7)メラニン産生抑制効果
B16マウスメラノーマF0ストレイン(B16F0)細胞を35mmディッシュに1ディッシュあたり2000個播種して、5%二酸化炭素存在下、37℃にて24時間培養した。培養後、試料を蒸留水に5mg/mLの濃度で溶解した試料溶液0.1mLを添加した5質量%ウシ胎児血清(FCS)添加ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に交換した。交換後さらに7日間培養した。0.25%トリプシンを用いて細胞をはがし、1.5mLマイクロチューブに移して遠心分離して細胞沈殿物を得た。この細胞沈殿物について以下の基準で目視判定を行い、スコア化(5段階スコア:1白−5黒)した。なお、スコア化において、試料溶液を添加していない、5質量%ウシ胎児血清(FCS)添加ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いたこと以外は上記と同様にして得られた細胞沈殿物の色(基準1)、およびさらに10mMのβ−アルブチン水溶液を加えた5質量%ウシ胎児血清(FCS)添加ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を用いたこと以外は上記と同様にして得られた細胞沈殿物の色(基準2)を基準に用いた。
【0094】
(評価基準)
5: 著しく黒化する(基準1と同等の色である)
4: 黒化が強い
3: 黒化している
2: やや黒化している
1: 全く黒化しない(基準2と同等の色である)
【0095】
(8)コラゲナーゼ活性阻害効果
試料を0.2Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に15mg/mLの濃度で溶解した試料溶液;コラゲナーゼ水溶液(2U/mL);および20mmol/Lの塩化カルシウムを含有する0.2Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に、Pz−ペプチド(BACHEM Fenichemikalien AG社)が0.5mol/Lとなるように溶解した基質溶液をそれぞれ調製した。
【0096】
上記試料溶液50μL、コラゲナーゼ水溶液50μL、および基質溶液400μLを混合して37℃にて30分間インキュベートした。次いで、25mMクエン酸溶液1mLを加え反応を停止し、酢酸エチル5mLで抽出した。得られた抽出液について、波長320nmにおける吸光度を測定した。得られた吸光度をAとする。なお、吸光度Aのブランクとしてコラゲナーゼ水溶液の代わりに0.2Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を用いて吸光度を測定した。この吸光度をBとする。
【0097】
他方、試料溶液の代わりに0.2Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を用いたこと以外は上記と同様にして吸光度を測定した。得られた吸光度をCとする。なお、吸光度Cのブランクとしてコラゲナーゼ水溶液の代わりに0.2Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を用いて吸光度を測定した。この吸光度をDとする。
【0098】
得られた吸光度A〜Dの値を用いてコラゲナーゼ阻害率(%)を以下の式から算出した。
コラゲナーゼ阻害率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
【0099】
さらに試料濃度を減少させた試料溶液を用いたこと以外は上記と同様にしてコラゲナーゼ阻害率を測定し、コラゲナーゼ活性を50%阻害する試料濃度IC50(mg/mL)を内挿法により求めた。
【0100】
(9)エラスターゼ活性阻害効果
試料を蒸留水に15mg/mLの濃度で溶解した試料溶液;0.2Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)10mLに、エラスターゼTypeIII(シグマ(Sigma)社)5mgを溶解したエラスターゼ溶液;および0.2mMのN-succinyl-ala-ala-ala-p-nitroanilide(シグマ(Sigma)社)水溶液(基質溶液)をそれぞれ調製した。
【0101】
96穴プレートを用意し、1穴に、試料溶液50μLと、エラスターゼ溶液50μLとを混合し、次いで、基質溶液100μLを混合して25℃にて15分間インキュベートして反応させた。得られた反応液について、波長415nmにおける吸光度を測定した。得られた吸光度をAとする。なお、吸光度Aのブランクとしてエラスターゼ溶液の代わりに0.2Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を用いて吸光度を測定した。この吸光度をBとする。
【0102】
他方、試料溶液の代わりに0.2Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を用いたこと以外は上記と同様にして吸光度を測定した。得られた吸光度をCとする。なお、吸光度Cのブランクとしてエラスターゼ溶液の代わりに0.2Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を用いて吸光度を測定した。この吸光度をDとする。
【0103】
得られた吸光度A〜Dの値を用いてエラスターゼ阻害率(%)を以下の式から算出した。
エラスターゼ阻害率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
【0104】
さらに試料濃度を減少させた試料溶液を用いたこと以外は上記と同様にしてエラスターゼ阻害率を測定し、エラスターゼ活性を50%阻害する試料濃度IC50(mg/mL)を内挿法により求めた。
【0105】
(10)ヒアルロニダーゼ活性阻害効果
試料を蒸留水に15mg/mLの濃度で溶解した試料溶液;酢酸緩衝液(pH4.0)に、ヒアルロニダーゼを400U/mLの濃度で含有するヒアルロニダーゼ溶液;2.5mmol/LのCaCl水溶液にCompound48/80を2.0mg溶解させた活性化剤溶液;および0.5mg/mLヒアルロン酸カリウム緩衝液(基質溶液)をそれぞれ調製した。
【0106】
上記試料溶液0.2mLとヒアルロニダーゼ溶液0.1mLとを混合して37℃にて20分間保持した後、さらに活性化剤溶液0.2mLを加えて37℃にて20分間保持して酵素を活性化させた。次いで、基質溶液0.5mLを加えて37℃にて40分間インキュベートして反応させた後、0.5N水酸化ナトリウム水溶液0.2mLを加えると共に、氷冷して反応を停止させた。
【0107】
次いで、1.0mol/Lのホウ酸溶液(pH9.1)0.2mLを加え、沸騰湯浴中で3分間加熱後、直ちに20分間氷冷した。Ehrlich試薬(p−ジメチルアミノベンズアルデヒド10gを10Nの塩酸12.5mLと酢酸87.5mLの混合液に溶解し、酢酸で10倍に希釈したもの)6.0mLを加えて37℃にて20分間インキュベーションした。上記酵素反応で遊離したN−アセチルグルコサミンを発色させて、波長585nmにおける吸光度を測定した。得られた吸光度をAとする。なお、吸光度Aのブランクとしてヒアルロニダーゼ溶液の代わりに酢酸緩衝液(pH4.0)を用いて吸光度を測定した。この吸光度をBとする。
【0108】
他方、試料溶液の代わりに蒸留水を用いたこと以外は上記と同様にして吸光度を測定した。得られた吸光度をCとする。なお、吸光度Cのブランクとしてヒアルロニダーゼ溶液の代わりに酢酸緩衝液(pH4.0)を用いて吸光度を測定した。この吸光度をDとする。
【0109】
得られた吸光度A〜Dの値を用いてヒアルロニダーゼ阻害率(%)を以下の式から算出した。
ヒアルロニダーゼ阻害率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
【0110】
さらに試料濃度を減少させた試料溶液を用いたこと以外は上記と同様にしてヒアルロニダーゼ阻害率を測定し、ヒアルロニダーゼ活性を50%阻害する試料濃度IC50(mg/mL)を内挿法により求めた。
【0111】
(11)ヒスタミン遊離抑制効果
体重250〜300gのWister系雄性ラット5匹を頚動脈切断により放血致死させた後、腹腔内にPBS(NaClを154mM、KClを2.7mM、CaCl2を0.9mM、グルコースを5.6mM、およびHEPESを5mMの割合で含む:pH7.4)10mLを注入し、腹部を2分間おだやかにマッサージした。開腹後、腹水を採取し、腹腔内をPBS10mLでさらに洗浄した。腹水と洗浄液とを合わせ、120×gの条件下、4℃にて10分間遠心分離を行い、細胞ペレットを得た。細胞ペレットについて、PBSで洗浄し、上記と同じ条件で遠心分離する操作を2回繰り返して行った後、PBS0.5mLに再浮遊させた。この細胞浮遊液を、密度勾配遠心分離法により精製し、肥満細胞分画を得た。肥満細胞分画にPBSを加えて6×10-3cells/mLになるように調製して肥満細胞浮遊液(MC液)を得た。
【0112】
MC液1.8mLを37℃にて15分間プレインキュベートした後、試料を蒸留水に10mg/mLの濃度で溶解した試料溶液0.2mLを添加し、15分間さらにインキュベートした。次に、Compound48/80(3μg/mL)を0.2mL添加し、10分間インキュベートしてヒスタミンを遊離させた。遊離したヒスタミン濃度を蛍光法を用いて測定した。得られた値をAとする。他方、試料溶液の代わりに蒸留水を用いたこと以外は上記と同様にして遊離したヒスタミン濃度を測定した。得られた値をBとする。得られたAおよびBの値を用いてヒスタミン遊離抑制率(%)を以下の式から算出した。
ヒスタミン遊離抑制率(%)=(B−A)/B×100
【0113】
さらに試料濃度を減少させた試料溶液を用いたこと以外は上記と同様にしてヒスタミン遊離抑制率を測定し、ヒスタミン遊離抑制率が50%となる試料濃度IC50(mg/mL)を内挿法により求めた。
【0114】
(12)プロスタグランジンE(PGE)産生抑制効果
RAW264.7細胞(大日本製薬株式会社)を1.0×10個/mLの濃度に調製し、48穴プレートに300μLずつ分注し、5%COの条件下、37℃にて10分間培養した。試料を含む10mMNaHCO溶液(pH7.5)に溶解させた試料溶液(10.0mg/mL)0.2mLを添加した後、さらにLPS(大腸菌由来リポポリサッカライド、シグマ(Sigma)社、終濃度100ng/mL)3μLを加え、5%COの条件下、37℃にて16時間培養した。培養液を、10000rpmの条件下、5分間遠心分離して上清を得た。この上清240μLを採取し、プロスタグランジンE(PGE)濃度をProstaglandin E2 Assay(Amersham Pharmacia Biotech社)を用いて定量した。ELISAには上清を10倍希釈して用いた。なお、試料溶液を用いない場合のPGEの濃度について測定したところ、721pg/mLであり、試料溶液およびLPSを用いない場合のPGEの濃度は、14.2pg/mLであった。
【0115】
【表2】

【0116】
表2の結果から明らかなように、実施例1〜18の発芽ハトムギ発酵処理物は、比較例1〜3のハトムギエキス、ハトムギ発酵処理物、または発芽ハトムギエキスに比べて、ポリフェノール含量が高く、抗変異原活性、メラニン産生抑制効果に優れ、かつ低濃度で十分なDPPHラジカル除去作用(抗酸化作用)、SOD様活性、チロシナーゼ活性阻害効果、コラゲナーゼ活性阻害効果、エラスターゼ活性阻害効果、ヒアルロニダーゼ活性阻害効果、肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制効果、およびPGE産生抑制効果が得られた。
【0117】
さらに、実施例1〜18の発芽ハトムギ発酵処理物および比較例1〜3のハトムギエキス、ハトムギ発酵処理物、または発芽ハトムギエキスは、紫外光吸収抑制効果を有していた。これらはいずれも400nmより短波長側で吸収を有しており、250−400nm間においてλmaxは280nmであった(図1参照のこと)。これらのことは、UV−A(波長が320−400nmの紫外光)およびUV−B(波長が280−320nmの紫外光)のいずれをも遮ることができることを示す。特に、実施例1〜18の発芽ハトムギ発酵処理物が、比較例1〜3のハトムギエキス、ハトムギ発酵処理物、または発芽ハトムギエキスに比べて、吸光度が大きく、紫外光吸収抑制効果に優れていた。
【0118】
(実施例19:乳液)
以下の成分を以下の割合で混合して適宜温度をかけて均一に乳化して乳液を得た。
成分 配合比
モノステアリン酸ソルビタン 0.3
モノステアリン酸グリセリン 0.2
セタノール 0.5
スクワラン 3.0
流動パラフィン 4.0
トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 2.0
メチルポリシロキサン 1.0
パラベン 0.1
カルボキシビニルポリマー水溶液(1%) 10.0
グリセリン 5.0
1,3−ブチレングリコール 7.0
エチルアルコール 5.0
実施例1の発芽ハトムギ発酵物のエタノール処理粉末 0.5
L―ヒドロキシプロリン 0.2
セルロース末 3.0
香料 0.01
精製水 残量
【0119】
上記乳液を用いて皮膚の状態の改善効果を以下のようにして評価した。まず無作為に抽出した20歳代〜40歳代の健常な男性30名および女性30名を被験者とし、乳液1mLを30日間右顔に塗布した。他方、実施例1の発芽ハトムギ発酵物のエタノール処理粉末の代わりに、比較例3の発芽ハトムギエキスを用いたこと以外は上記と同様に乳液を製造し、この乳液1mLを30日間左顔に塗布した。塗布開始日から30日経過後、皮膚の状態としてしわに対する改善効果、および肌のはりまたはたるみに対する改善効果について以下の方法でモニターテストを行った。なお、モニターテストにおいて、皮膚に異常が生じた被験者は1名もいなかった。また、1ヶ月にわたって、各皮膚化粧料はその状態に変化が生じることがなく、安定していた。
【0120】
(1)しわに対する改善効果
目じりの状態を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。結果を表3に示す。
【0121】
(評価基準)
A(3点) :非常に改善された
B(2点) :改善された
C(1点) :やや改善された
D(0点) :改善効果がない
E(−1点):悪化した
【0122】
(2)肌のはりまたはたるみに対する改善効果
顔全体の皮膚の状態を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。結果を表3に示す。
【0123】
(評価基準)
A(3点) :非常に改善された
B(2点) :改善された
C(1点) :やや改善された
D(0点) :改善効果がない
E(−1点):悪化した
【0124】
【表3】

【0125】
表3の結果から、発芽ハトムギ発酵処理物(発芽ハトムギ発酵物のエタノール処理粉末)を含有する乳液を塗布することによって、優れた皮膚改善効果が得られることがわかる。
【0126】
(実施例20:化粧水)
以下の成分を以下の割合で均一に混合して化粧水を得た。
成分 配合比
グリセリン 10.0
1,3−ブチレングリコール 6.0
実施例1の発芽ハトムギ発酵物のエタノール処理粉末 1.0
クエン酸 0.1
クエン酸ナトリウム 0.3
ポリオキシエチレン 1.0
エチルアルコール 8.0
パラベン 0.1
香料 0.1
精製水 残量
【0127】
(実施例21:軟膏)
以下の成分を以下の割合で混合して加温溶解後、冷却することにより軟膏を得た。
成分 配合比
ステアリン酸 18.0
セタノール 4.0
パラベン 0.1
トリエタノールアミン 2.0
グリセリン 5.0
実施例1の発芽ハトムギ発酵物のエタノール処理粉末 1.0
グリチルリチン酸ジカリウム 0.5
精製水 残量
【0128】
(実施例22:リキッドファンデーション)
以下の成分を以下の割合で混合して撹拌後、冷却することによりリキッドファンデーションを得た。
成分 配合比
液状ラノリン 2.0
流動パラフィン 5.0
ステアリン酸 2.0
セタノール 1.0
モノステアリン酸グリセリン 1.0
パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル 8.0
パラベン 0.1
グリセリン 5.0
トリエタノールアミン 1.0
カルボキシメチルセルロース 0.2
ベントナイト 0.5
酸化チタン 6.0
微粒子酸化チタン 2.0
微粒子酸化亜鉛 5.0
マイカ 2.0
タルク 4.0
着色顔料 4.0
実施例1の発芽ハトムギ発酵物のエタノール処理粉末 1.0
香料 0.05
精製水 残量
【0129】
(実施例23:錠剤(食品))
実施例1で得られた発芽ハトムギ発酵物のエタノール処理粉末10g、乳糖250g、コーンスターチ45gおよびカルボキシメチルセルロースカルシウム20gを転動造粒機に入れ、予熱混合し、ヒドロキシプロピルセルロース1.7gを溶解した水溶液34gをスプレーして、造粒末を得た。この造粒末にカルボキシメチルセルロースカルシウム100gおよびタルク40gを混合し、打錠機により打錠して錠剤を得た。
【0130】
上記錠剤を用いて皮膚の状態の改善効果を以下のようにして評価した。まず無作為に抽出した20歳代〜40歳代の健常な男性30名および女性30名を被験者とし、1日あたり錠剤3粒の割合で30日間摂取させた。摂取開始日から30日経過後、皮膚の状態としてしわに対する改善効果、および肌のはりまたはたるみに対する改善効果について実施例19と同じ方法でモニターテストを行った。他方、実施例1の発芽ハトムギ発酵物のエタノール処理粉末の代わりに、比較例3の発芽ハトムギエキスを用いたこと以外は上記と同様に錠剤を製造し、上記と同様にモニターテストを行った。なお、モニターテストにおいて、皮膚に異常が生じた被験者は1名もいなかった。結果を表4に示す。
【0131】
【表4】

【0132】
表4の結果から、発芽ハトムギ発酵処理物(発芽ハトムギ発酵物のエタノール処理粉末)を含有する錠剤を摂取することによって、優れた皮膚改善効果が得られることがわかる。
【0133】
(実施例24:顆粒(食品))
実施例23で得られた造粒末を、押出し成型器を用いて顆粒とした。
【0134】
(実施例25:ソフトカプセル)
実施例1で得られた発芽ハトムギ発酵物のエタノール処理粉末10gをナタネ油300gに懸濁させて内容液を調製した。他方、ソフトカプセルの外層である皮膜はゼラチン400gおよびグリセリン100gを、蒸留水200gに60℃にて溶解させ、シート状にした。内容液を内殻のノズルから噴出させ、ロータリーダイを用いて製剤化し、ソフトカプセル400gを得た。
【0135】
(実施例26:ハードカプセル)
実施例1で得られた発芽ハトムギ発酵物のエタノール処理粉末10gとコーンスターチ250gと混合して内容物を調製した。ハードカプセルの外層は、市販の局方4号を用いた。当業者が通常用いる方法により、ハードカプセル50gを得た。
【0136】
(実施例27:活性成分の分離)
実施例1で得られた培養終了後の上清を凍結乾燥し、その30gを水3000mLに再溶解後、ヘキサン、酢酸エチル、およびn−ブタノール各々3000mLを加えて、液―液分配を行った。n−ブタノール分画部を、濃縮後、水に溶解させ、アンバーライトXAD−7を充填したカラムへインジェクションし、水―メタノール系で勾配をかけて分離した。水とメタノールとの容量比が40:60で溶出された画分をさらに酢酸エチルーヘキサン系溶媒を用いてシリカゲルクロマトグラフィーを行う(酢酸エチル:ヘキサン=4:6)ことにより、コニフェリルアルコール、フェルラ酸、およびシリンジ酸を分離した。比較例3で得られた生ハトムギエキスの上清も同様に操作を行ったところ、コニフェリルアルコール、フェルラ酸、およびシリンジ酸が得られた。実施例1〜18で得られた粉末の濃度を各々2.0mg/mLとし、高速液体クロマトグラフィー(カラム:ODS4.6×250mm、溶離液:HO:MeCN=1:1、流速0.5mL/min、および検出器:UV−vis)で分析した結果、上記コニフェリルアルコール、フェルラ酸、およびシリンジ酸各々について、比較例3と比較して1.4−2.0倍の信号強度が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の発芽ハトムギ発酵処理物は、紫外光吸収抑制効果、ジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル除去作用、活性酸素消去作用(スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)様活性)、抗変異原活性、チロシナーゼ活性阻害効果、メラニン産生抑制効果、コラゲナーゼ活性阻害効果、エラスターゼ活性阻害効果、ヒアルロニダーゼ活性阻害効果、ヒスタミン遊離抑制効果、およびプロスタグランジンE産生抑制効果を有する。これらの効果は、ハトムギの抽出物(ハトムギエキス)、発芽ハトムギの抽出物(発芽ハトムギエキス)、またはハトムギの発酵物に比べていずれも優れている。本発明の発芽ハトムギ発酵処理物は、化粧料、食品、医薬品、または医薬部外品などとして広く利用される。特にウィルス性疣贅、ウィルス性腫瘍などの予防或いは縮小する機能性食品、医薬品などとして、あるいは、美白作用を増強し、かつ皮膚状態を改善する皮膚改善化粧料、皮膚改善食品などとして好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】発芽ハトムギ発酵処理物含有溶液の200〜800nmにおける紫外可視吸収スペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1〜200mm発芽させたハトムギを発酵することより得られる発芽ハトムギ発酵処理物であって、
該発酵が、乳酸菌、納豆菌、糸状菌、および放線菌からなる群より選択される少なくとも1種の微生物を用いて行われる、発芽ハトムギ発酵処理物。
【請求項2】
前記ハトムギが、発酵前に酵素処理されている、請求項1に記載の発芽ハトムギ発酵処理物。
【請求項3】
前記酵素が、糖質分解酵素である、請求項2に記載の発芽ハトムギ発酵処理物。
【請求項4】
前記糖質分解酵素が、α―アミラーゼ、β―アミラーゼ、マルトトリオヒドロラーゼ、プルラナーゼ、アミログルコシダーゼ、α―グルコシダーゼ、β―グルコシダーゼ、イソアミラーゼ、グルコアミラーゼ、インベルターゼ、ペクチナーゼ、セルラーゼ、およびヘミセルラーゼからなる群より選択される少なくとも1種の酵素である、請求項3に記載の発芽ハトムギ発酵処理物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの項に記載の発芽ハトムギ発酵処理物を含有する、組成物。
【請求項6】
化粧料、食品、医薬品、または医薬部外品である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
1〜200mm発芽させたハトムギを発酵する工程を包含する、発芽ハトムギ発酵処理物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−290998(P2007−290998A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119589(P2006−119589)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000191755)森下仁丹株式会社 (30)
【Fターム(参考)】