説明

盗難防止装置

【課題】電話機から車載電話機に電話をかけることで盗難防止装置の故障診断を実行できる盗難防止装置を提供する。
【解決手段】公共電話局2と通信可能な車載電話機11と、盗難防止装置10の故障診断を実行する故障診断手段14と、車載電話機11への入力信号に基づいて故障診断手段14を駆動する通信制御部12とを具備する。電話機3から公共電話局2を介して車載電話機11に電話をかけ、電話機3に所定の操作を加えることで盗難防止装置10の故障診断が実行される。故障診断の結果は、盗難防止装置10に設けられた表示手段13や、電話機3に設けられたディスプレイに表示される。盗難防止装置10は、盗難状態が検知されると、制御装置としてのEFI21を停止して車両を走行不能とすることができる。盗難防止装置10に電話をかけ、EFI21や各種センサそのものの故障診断も可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盗難防止装置に係り、特に、外部からの操作によって自己の故障診断を実行することができる盗難防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種センサ等によって検知される車両の状態を、遠隔地において把握できるようにした通信システムが知られている。
【0003】
特許文献1には、遠隔操作される無人の作業用車両に車載電話機を取り付けることで、この作業用車両に取り付けられたセンサ信号等に基づく車両情報を、車載電話機から公共電話局を介して、所定の携帯電話機に送信するようにした車両モニタリング装置が開示されている。このモニタリング装置によれば、携帯電話機を用いることで、遠隔地から車両の各種状態を知ることが可能となる。
【特許文献1】特開2006−48104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、停車中に車体に加えられた振動等を検知して、警報を発したりエンジンを始動不能としたりする盗難防止装置は、万一の盗難発生時に正常に機能するか否かを定期的に点検しておくことが好ましい。通常、盗難防止装置の故障診断は、車両の販売店等に設置される専用機器と接続することで実行されるが、このような専用機器が高価なこともあり、販売店等の負担が大きくなるという課題があった。
【0005】
一方、上記したような専用機器を不要とするために、盗難防止装置に自己診断機能を与えると、通常の盗難検知状態から故障診断状態に切り換えるための何らかの入力手段が必要となる。この場合、入力手段の操作方法等が第三者に知られると、盗難防止装置の盗難防止効果が低下する可能性があった。
【0006】
前記特許文献1に記載された技術では、携帯電話機を用いて車両の各種状態を認識することを可能とするものであり、携帯電話機等を用いて盗難防止装置を操作し、その故障診断を行うことに関しては検討されていなかった。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、電話機から車載電話機に電話をかけることで盗難防止装置の故障診断を実行できる盗難防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、複数のセンサ等の出力信号に基づいて車両の盗難状態を検知する盗難防止装置において、公共電話局と通信可能な車載電話機と、前記盗難防止装置の故障診断を実行する故障診断手段と、外部の電話機から前記公共電話局を介して前記車載電話機へ入力される所定の故障診断指示信号に基づいて、前記故障診断手段を駆動する通信制御部とを具備する点に第1の特徴がある。
【0009】
また、前記故障診断の結果を前記車両に設けられた表示手段に表示する点に第2の特徴がある。
【0010】
また、前記故障診断の結果を、前記外部の電話機に表示することを指示する手段を具備する点に第3の特徴がある。
【0011】
また、前記盗難防止装置は、前記電話機から前記公共電話局を介して前記車載電話機に電話がかけられると、受信完了の確認表示を行い、次に、前記電話機によって故障診断項目番号が入力されると、前記故障診断項目番号の確認表示を行うと共に、前記故障診断項目番号に対応する故障診断を開始し、さらに、前記故障診断を開始すると共に、前記故障診断が実行中であることの確認表示を行う点に第4の特徴がある。
【0012】
また、前記車両は、全地球測位システム(GPS)を備えており、前記盗難防止装置は、前記全地球測位システム(GPS)で導出された前記車両の位置を、前記電話機に送信できるように構成されている点に第5の特徴がある。
【0013】
また、前記盗難防止装置は、所定のエンジン制御装置を制御できるように構成されている点に第6の特徴がある。
【0014】
また、前記盗難防止装置は、前記所定のエンジン制御装置の故障診断も実行するように構成されている点に第7の特徴がある。
【0015】
また、前記車載電話機の通信規格は、携帯電話の規格であるGSMである点に第8の特徴がある。
【0016】
また、前記車両に設けられた表示手段は、盗難防止装置に取り付けられた発光ダイオードである点に第9の特徴がある。
【0017】
さらに、前記車両は、自動二輪車である点に第10の特徴がある。
【発明の効果】
【0018】
第1の特徴によれば、公共電話局と通信可能な車載電話機と、盗難防止装置の故障診断を実行する故障診断手段と、車載電話機への入力信号に基づいて故障診断手段を駆動する通信制御部とを具備し、電話機から公共電話局を介して車載電話機に電話をかけ、電話機に所定の操作を加えることで、故障診断が実行されるように構成されているので、電話機を操作することで車両の盗難防止装置の故障診断を実行することができる。これにより、故障診断を行うために盗難防止装置と直接接続する専用機器が不要となり、盗難防止装置の普及を広めることができる。また、故障診断を実行させるための入力手段を盗難防止装置に設ける必要がないので、盗難防止装置の盗難防止効果を高めることが可能となる。
【0019】
第2の特徴によれば、故障診断の結果は、車両に設けられた表示手段に表示されるので、車両の整備者等が、盗難防止装置の故障の有無を簡単に認識することが可能となる。
【0020】
第3の特徴によれば、故障診断の結果は、電話機に設けられた表示手段にも表示されるので、車両と離れた場所においても、盗難防止装置の故障の有無を簡単に認識することが可能となる。
【0021】
第4の特徴によれば、盗難防止装置は、電話機から公共電話局を介して車載電話機に電話がかけられると、受信完了の確認表示を行い、次に、電話機によって故障診断項目番号が入力されると、故障診断項目番号の確認表示を行うと共に、故障診断項目番号に対応する故障診断を開始し、さらに、故障診断を開始すると共に故障診断が実行中であることの確認表示を行うので、電話機による操作状態や故障診断の進行状況等を目視で確認することが可能となる。これにより、故障診断の作業を確実に進行することができる。
【0022】
第5の特徴によれば、車両は、全地球測位システム(GPS)を備えており、盗難防止装置は、全地球測位システム(GPS)で導出された車両の位置を、電話機に送信できるように構成されているので、盗難発生時等に車両の位置を検知して送信する、すなわち、盗難車両を追跡する機能が付加された盗難防止装置においても、電話機を用いてその故障診断を実行することができる。
【0023】
第6の特徴によれば、盗難防止装置は、所定のエンジン制御装置を制御できるように構成されているので、例えば、盗難状態が検知された時に、燃料噴射装置等のエンジン制御装置を停止させて、車両を走行不能にすることができる。また、携帯電話からの操作によっても、エンジン制御装置の停止等を実行することができる。
【0024】
第7の特徴によれば、盗難防止装置は、所定のエンジン制御装置の故障診断も実行するように構成されているので、車載電話機に電話をかけることでエンジン制御装置の故障診断を実行することができる。これにより、盗難状態を検知するとエンジン制御装置を停止するように構成されている場合、万一の盗難発生時にエンジン制御装置の停止制御が正常に実行されるか否かを点検することが可能となる。
【0025】
第8の特徴によれば、車載電話機の通信規格は、携帯電話の規格であるGSMであるので、GSM(Global System for Mobile Communications)を運用する多くの国で使用可能な盗難防止装置が得られる。
【0026】
第9の特徴によれば、車両に設けられた表示手段は盗難防止装置に取り付けられた発光ダイオードであるので、表示手段の構成が簡単になり、盗難防止装置の軽量化および小型化を図ることができる。また、診断結果を発光ダイオードの点灯時間や点滅回数等で表示する場合は、表示パターンの設定を知らない第三者に表示内容の意味を解読しにくくすることができる。
【0027】
第10の特徴によれば、車両は自動二輪車であるので、各種操作部が外部と遮断された車内に存在する四輪車とは異なり、多くの部品が外部に露出する自動二輪車において、盗難防止装置の盗難防止効果を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る盗難防止装置の通信システムを示す概念図である。自動二輪車1には、車両の盗難状態を検知して警告を発する盗難防止装置10が取り付けられている。盗難防止装置10は、車両の停車中に、車体に取り付けられた加速度センサ等から所定値を超える信号が出力されると、第三者による盗難作業が行われていると判定して、車両のホーンや灯火器等を作動させて警告するように構成されている。
【0029】
盗難防止装置10は、公共電話局2と通信可能な車載電話機(図2参照)を備えている。これにより、電話機3から公共電話局2を介して、盗難防止装置10に電話をかけることが可能である。電話機3は、公共電話局2にアクセスできるものであれば、携帯電話でも固定電話でもよい。本実施形態では、盗難防止装置10の車載電話機の通信規格に、携帯電話の規格であるGSM(Global System for Mobile Communications)を適用しており、電話機3から盗難防止装置10へ電話をかけることは、GSMを運用する多くの国において可能である。
【0030】
図2は、本実施形態に係る盗難防止装置10およびその周辺機器の構成を示すブロック図である。盗難防止装置10は、例えば、20×20×10mm程の樹脂ケース等で覆われ、スイッチ等の操作手段を持たない制御装置であり、例えば、自動二輪車のシートの下部や燃料タンクの下部等、第三者が容易にアクセスしにくい位置に配置されている。盗難防止装置10は、公共電話局2と通信するための送受信アンテナ16を備えた車載電話機11と、車載電話機11による送受信信号の解析等を行う通信制御部12と、盗難防止装置10の故障の有無等を診断する故障診断手段14と、故障診断手段14による診断結果等を表示する表示手段13と、各種センサ等の出力信号に基づいて車両の盗難状態を判定する盗難状態判定手段15とを含む。なお、車載電話機11は、盗難防止装置10の外部に設けられてもよい。また、通信制御部12は、予め登録された所定の電話機以外からのアクセスを拒否するように設定することもできる。
【0031】
盗難状態判定手段15には、車体に加えられた振動等を検知する加速度センサ30、車体の前後左右の傾斜角を検知する傾斜センサ31、電源回路へのアクセス等を監視するためにバッテリ電圧の変化を検出する電圧センサ32からの出力信号が入力されている。盗難状態判定手段15は、各種センサの少なくとも1つの出力信号が所定値を超えると、車両が盗難状態にあると判定する。盗難防止装置10は、盗難状態が検知されたことを、車載電話機11を介してユーザ等の電話機3に送信できるように構成されている。このとき、電話機3の表示手段としてのディスプレイに、盗難状態が検知された時刻や作動したセンサの種類等を表示することができる。
【0032】
また、盗難状態判定手段15には、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)20が接続されている。GPS20は、車両の通常走行時には、車載ナビゲーションシステムの運用に使用されているが、本実施形態に係る盗難防止装置10では、万一の盗難発生時に、車両の現在位置や盗難発生時からの移動履歴等を、車載電話機11を介して電話機3等に伝える車両追跡機能に利用されるように構成されている。
【0033】
また、盗難状態判定手段15に接続されるエンジン制御装置としてのEFI(電子制御燃料噴射装置)EFI21は、盗難状態判定手段15からの指令によってその駆動を停止できるように構成されている。これにより、万一の盗難発生時には、EFI21を自動的に停止させて車両を走行不能にすることが可能である。また、EFI21の停止は、電話機3の操作によって任意に実行することもできる。なお、盗難状態判定手段15からの指令で制御されるエンジン制御装置は、点火プラグの点火装置や、各種アクチュエータ等とすることもできる。
【0034】
本実施形態に係る盗難防止装置10は、故障診断手段14によって、盗難防止装置10が正常に機能しているか否かを診断する、すなわち、盗難防止装置10の自己故障診断(ダイアグノーシス)を実行することが可能である。故障診断手段14は、例えば、盗難状態判定手段15の不具合により、各種センサが所定値を超える信号を出力してもこれを盗難状態と判定できない状態等を検知することができる。さらに、故障診断手段14は、各種センサの出力信号が正常に入力されない状態や、各種センサそのものの故障等も診断可能である。このような故障が検知された場合、故障診断手段14は、故障の種類や対処方法等を表示手段13に表示するように設定されている。
【0035】
上記したような構成により、車両の整備者等は、電話機3から盗難防止装置10に電話をかけることで盗難防止装置10の故障診断を実行すると共に、表示手段13によってその診断結果を知ることができる。なお、表示手段13には、発光ダイオード(LED)や液晶画面等を適用することが可能である。
【0036】
図3は、電話機3を用いて盗難防止装置10の自己故障診断処理を実行する際の流れを示すタイムチャートである。ステップS10において、車両の整備者等が電話機3から盗難防止装置10に電話をかけると、ステップS11では、盗難防止装置10の車載電話機11がこれを受信する。続くステップS12では、表示手段13に受信完了の表示がされる。これにより、整備者等は電話回線が接続されたことを目視で確認することができる。なお、前記ステップS10における電話をかける手順は、車載電話機11に固有の電話番号を、固定電話や携帯電話等からダイヤルすることで実行できる。
【0037】
次に、ステップS20では、電話機3に診断項目の番号(例えば、1〜5)を入力する。この診断項目は、例えば、1.盗難防止装置10の構成回路に短絡がないか、2.各種センサが正常に機能しているか否か等の内容で構成することができる。続くステップS21では、入力された診断項目を車載電話機11で受信し、ステップS22では、表示手段13に入力された診断項目が表示される。そして、ステップS40では、表示手段13に故障診断を実行する旨の表示が行われ、ステップS41において、通信制御部12から故障診断を開始する故障診断指示信号が出力されて、選択された診断項目の故障診断が故障診断手段14により実行される。
【0038】
上記したように、本実施形態に係る盗難防止装置10によれば、電話機3の操作によって盗難防止装置10の故障診断を実行することが可能となる。通常、故障診断を行うための専用機器が不要となるように、盗難防止装置10に自己診断機能を持たせると、通常の盗難検知モード状態から、盗難防止装置の機能が一時停止する故障診断モードに切り換えるスイッチ等の入力手段が必要となるが、本実施形態に係る盗難防止装置10によれば、第三者によって操作される可能性のある入力手段を設ける必要がないので、簡単な方法で盗難防止装置の故障診断を実行できると共に、盗難防止装置の高い盗難防止効果を保つことが可能となる。
【0039】
図4は、本実施形態の変形例に係る盗難防止装置およびその周辺機器の回路図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。この回路図では、特に、盗難防止装置10と警告手段(後述するホーンおよびウインカ)との接続関係を示している。盗難防止装置10の中央演算装置としてのCPU50には、図2に示したような盗難判定手段および故障診断手段等が含まれている。また、本変形例では、表示手段13としてCPU50に接続されるLEDダイオードを適用している。
【0040】
盗難防止装置10には、複数の入出力ポートが設けられており、入力ポート80からは車載バッテリ63の電力が入力されるほか、入力ポート81,82を用いて、車両の主電源を断接するイグニッションスイッチ60およびブレーキ灯43を点灯させるブレーキ灯スイッチ61の操作状態を監視している。
【0041】
自動二輪車1には、ホーンスイッチ62の操作に伴って作動するホーン41と、ウインカスイッチ(不図示)の操作に伴って点滅するウインカ灯42とが設けられている。このホーン41およびウインカ灯42は、通常時は、イグニッションスイッチ60がオン状態でないと各スイッチを操作しても作動しない。しかし、車両の停車中に盗難状態が検知されると、CPU50は、トランジスタ53,54をオンに切り換え、出力ポート83,84を介してリレー70,71,72を駆動することで、ホーン41およびウインカ灯42を警告手段として作動させる。
【0042】
また、CPU50は、車両の盗難状態が検知されると、入出力ポート85に接続されるトランジスタ51を駆動して、EFI21を停止させることができる。さらに、入出力ポート86に接続される車載電話機11を用いて、車両の盗難状態を所定の電話機に送信することが可能である。
【0043】
そして、本変形例に係る盗難防止装置10では、電話機3から車載電話機11に電話をかけて故障診断を行う際に、入力ポート87を介して接続されるチェックカプラ90を用いるように構成されている。チェックカプラ90は、例えば、スイッチを有する雄カプラからなる小型の機器であり、この雄カプラを、入力ポート87に連結された雌カプラに接続することで、スイッチの入力信号がCPU50に入力可能となるように構成することができる。ここで、図5を参照して、チェックカプラ90を用いて故障診断を実行する場合の流れを説明する。
【0044】
図5は、前記チェックカプラ90を用いた場合の故障診断の流れを示すタイムチャートである。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。本変形例では、電話機3から入力された暗証コードと、チェックカプラ90から入力された暗証コードとを照合することで、第三者によるアクセスを防ぐ認証処理を実行する点に特徴がある。このタイムチャートでは、前記図3に示したステップ22(診断項目表示)と、ステップS40(診断実行表示)との間で、一連の認証処理を行うように設定されている。
【0045】
ステップS30では、電話機3に暗証コードを入力し、ステップS31では、入力された暗証コードを車載電話機11で受信する。続くステップS32では、チェックカプラ90のオンオフ操作によって暗証コードを入力する。そして、ステップS33では、盗難防止装置10によって暗証コードの認証が行われる。この認証処理は、盗難防止装置10の通信制御部12(図2参照)で実行可能である。
【0046】
そして、ステップS33による認証処理が正常に完了すると、ステップS40において、表示手段13に故障診断を実行する旨の表示が行われると共に、ステップS41において選択された診断項目の故障診断が実行されることとなる。すなわち、本変形例では、電話機3から入力された暗証コードとチェックカプラ90から入力された暗証コードとが相違する場合には、盗難防止装置の故障診断を実行しないことで、第三者によって故障診断が行われることを防止している。なお、暗証コードの種類やチェックカプラの形態等は種々の変形が可能であり、例えば、スイッチ等を持たないチェックカプラの接続状態を切り換える動作によって暗証コードを入力することもできる。
【0047】
図4に戻って、盗難防止装置10に設けられた出力ポート88,89は、各種の車載機器との接続用に設けられている。CPU50に接続されるシリアルライン55およびKライン(K-line)56は、ジャンパセレクト57によって任意に出力ポート89との接続状態を切り換えることができる。シリアルライン55およびKライン56は、各種車載機器の故障診断等に用いられる通信規格であり、出力ポート89に車載機器を接続した後に、電話機3から盗難防止装置10に電話をかけてその故障診断を実行することが可能となる。なお、前記したEFI21も、このKライン56を用いてCPU50と接続し、その故障診断を実行することができる。また、盗難防止装置10に設けられる入出力ポートの種類や個数等は、上記実施形態に限られず種々の変形が可能である。
【0048】
上記したように、本発明に係る盗難防止装置によれば、公共電話局と通信可能な車載電話機と、盗難防止装置の故障診断を実行する故障診断手段と、車載電話機への入力信号に基づいて故障診断手段を駆動する通信制御部とを具備し、電話機から公共電話局を介して車載電話機に電話をかけ、電話機に所定の操作を加えることで故障診断が実行されるように構成されているので、電話機を操作することで車両の盗難防止装置の故障診断を実行することができる。これにより、故障診断を行うために盗難防止装置と直接接続する専用機器が不要となり、盗難防止装置の普及を広めることができる。また、故障診断を実行させるための入力手段を盗難防止装置に設ける必要がないので、盗難防止装置の盗難防止効果を高めることが可能となる。
【0049】
なお、盗難防止装置の構成や配置、盗難状態を検知する各種センサや警告手段の種類、表示手段の構成、通信制御部の機能、盗難防止装置が実行する故障診断の内容、車載電話機の通信規格の種類、GPSの利用方法等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。例えば、盗難状態判定手段は、加速度センサ等の各種センサから所定値を超える信号が出力されていない場合でも、GPSによって検知される現在位置の変化に基づいて、車両が盗難状態であると判定することもできる。本発明に係る盗難防止装置は、自動二輪車に限られず、三輪車や四輪車等に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る盗難防止装置の通信システムを示す概念図である。
【図2】本実施形態に係る盗難防止装置およびその周辺機器の構成を示すブロック図である。
【図3】電話機を用いて盗難防止装置の故障診断を実行する際の流れを示すタイムチャートである。
【図4】本実施形態の変形例に係る盗難防止装置およびその周辺機器の回路図である。
【図5】チェックカプラを用いた場合の故障診断の流れを示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1…自動二輪車(車両)、2…公共電話局、3…電話機、10…盗難防止装置、11…車載電話機、12…通信制御部、13…表示手段、14…故障診断手段、15…盗難状態判定手段、16…送受信アンテナ、20…GPS(全地球測位システム)、21…EFI(電子制御燃料噴射装置)、30…加速度センサ、31…傾斜センサ、32…電圧センサ、40…警告手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサ等の出力信号に基づいて車両の盗難状態を検知する車載の盗難防止装置において、
公共電話局と通信可能な車載電話機と、
前記盗難防止装置の故障診断を実行する故障診断手段と、
外部の電話機から前記公共電話局を介して前記車載電話機へ入力される所定の故障診断指示信号に基づいて、前記故障診断手段を駆動する通信制御部とを具備することを特徴とする盗難防止装置。
【請求項2】
前記故障診断の結果を前記車両に設けられた表示手段に表示することを特徴とする請求項1に記載の盗難防止装置。
【請求項3】
前記故障診断の結果を、前記外部の電話機に表示することを指示する手段を具備することを特徴とする請求項2に記載の盗難防止装置。
【請求項4】
前記盗難防止装置は、前記電話機から前記公共電話局を介して前記車載電話機に電話がかけられると、受信完了の確認表示を行い、
次に、前記電話機によって故障診断項目番号が入力されると、前記故障診断項目番号の確認表示を行うと共に、前記故障診断項目番号に対応する故障診断を開始し、
さらに、前記故障診断を開始すると共に、前記故障診断が実行中であることの確認表示を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の盗難防止装置。
【請求項5】
前記車両は、全地球測位システム(GPS)を備えており、
前記盗難防止装置は、前記全地球測位システム(GPS)で導出された前記車両の位置を、前記電話機に送信できるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の盗難防止装置。
【請求項6】
前記盗難防止装置は、所定のエンジン制御装置を制御できるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の盗難防止装置。
【請求項7】
前記盗難防止装置は、前記所定のエンジン制御装置の故障診断も実行するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の盗難防止装置。
【請求項8】
前記車載電話機の通信規格は、携帯電話の規格であるGSMであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の盗難防止装置。
【請求項9】
前記車両に設けられた表示手段は、盗難防止装置に取り付けられた発光ダイオードであることを特徴とする請求項2ないし8のいずれかに記載の盗難防止装置。
【請求項10】
前記車両は、自動二輪車であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の盗難防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−72750(P2010−72750A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237022(P2008−237022)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】