説明

真直度測定装置、方法、及び塗布方法

【課題】バー塗布装置等に使用される円柱状部材の真直度を精度よく測定するのに好適な真直度測定装置、方法、及び該真直度測定装置で測定した円柱状部材を使用した塗布方法を提供する。
【解決手段】バーBの上端部を把持しながら糸状部材14により吊り下げ、バーの上端部近傍をバーの外径と略等しい内径の支持孔を備える第1の支持部材24により支持するとともに、バーの下端部近傍をバーの外径と略等しい内径の支持孔を備える第2の支持部材26により支持し、バーを回転駆動させるとともに、変位センサ20をバーに沿って移動させながらバーの振れを非接触で検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真直度測定装置、方法、及び塗布方法に係り、特に、バー塗布装置等に使用される円柱状部材の真直度を精度よく測定するのに好適な真直度測定装置、方法、及び該真直度測定装置で測定した円柱状部材を使用した塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、円柱状部材の真直度の測定は、Vブロック等を使用し、円柱状部材を水平に支持して行う方法が一般的であった。ところが、撓みを生じやすい円柱状部材の場合、自重による撓みによる誤差で正確な真直度が得られないという問題があった。
【0003】
このような真直度の測定精度を向上させる試みとして、従来より各種の提案がなされている(たとえば、特許文献1〜5参照)。
【0004】
このうち特許文献1は、3台の測定器を使用した真直度測定方法に関する提案である。特許文献2は、画像信号を利用した真直度測定装置に関する提案である。特許文献3は、真直度を所定以下に規定した円柱状部材を使用した塗布装置に関する提案である。特許文献4は、直動測定による真直度測定方法に関する提案である。特許文献5は、真直度の誤差校正方法に関する提案である。
【特許文献1】特開平6−186028号公報
【特許文献2】特開平7−27545号公報
【特許文献3】特開2001−87697号公報
【特許文献4】特開平5−187868号公報
【特許文献5】特開2002−98523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来の各提案によっても精度のよい真直度測定は非常に困難であった。特に、バー塗布装置等に使用される円柱状部材(塗布バー)は、撓みを生じやすいものが多く、一方、塗布バーの撓みにより塗布性能が大きく影響を受けることも指摘されている。したがって、バー塗布装置等に使用される塗布バーのように、撓みを生じやすいものの高精度の真直度測定技術が強く求められていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、バー塗布装置等に使用される円柱状部材の真直度を精度よく測定するのに好適な真直度測定装置、方法、及び該真直度測定装置で測定した円柱状部材を使用した塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、円柱状部材の上端部を把持しながら糸状部材により吊り下げ、前記円柱状部材の上端部近傍を該円柱状部材の外径と略等しい内径の支持孔を備える第1の支持部材により支持するとともに、前記円柱状部材の下端部近傍を該円柱状部材の外径と略等しい内径の支持孔を備える第2の支持部材により支持し、前記円柱状部材を該円柱状部材の軸芯を中心として回転駆動させるとともに、変位センサを該円柱状部材に沿って移動させながら該円柱状部材の振れを非接触で検出することにより該円柱状部材の真直度を得ることを特徴とする真直度測定方法を提供する。
【0008】
このために、本発明は、円柱状部材の上端部を把持する把持部材と、装置本体の上部より前記把持部材を吊り下げる糸状部材と、装置本体に支持され、前記円柱状部材の外径と略等しい内径の支持孔により前記円柱状部材の上端部近傍を支持する第1の支持部材と、装置本体に支持され、前記円柱状部材の外径と略等しい内径の支持孔により前記円柱状部材の下端部近傍を支持する第2の支持部材と、前記円柱状部材を着脱可能となっており、前記円柱状部材の軸芯を中心に回転駆動させる回転駆動手段と、前記円柱状部材を回転駆動させながら前記円柱状部材の振れを前記軸芯の方向の複数箇所において非接触で検出する変位センサと、を備えることを特徴とする真直度測定装置を提供する。
【0009】
本発明によれば、円柱状部材の上端部を把持しながら糸状部材により吊り下げるので、円柱状部材が自重により撓むという不具合を解消できる。また、円柱状部材の上端部近傍及び下端部近傍をこの円柱状部材の外径と略等しい内径の支持孔を備える第1及び第2の支持部材によりそれぞれ支持するので、支持方法により円柱状部材が撓むという不具合をも解消できる。
【0010】
更に、変位センサを円柱状部材に沿って移動させながら円柱状部材の振れを非接触で検出するので、接触により円柱状部材が撓むという不具合をも解消できる。また、円柱状部材を回転駆動させる構成において、回転駆動手段が着脱可能となっているので、測定時に回転駆動手段との結合を断つことができ、回転駆動手段により円柱状部材が撓むという不具合をも解消できる。
【0011】
以上の各点より、本発明によれば、円柱状部材の真直度を精度よく測定できる。
【0012】
なお、上端部近傍及び下端部近傍とは、円柱状部材の測定部位の外側(端部側)の意味であり、円柱状部材の長さによっても異なるが、たとえば、円柱状部材の長さが1mの場合、端部より100mm程度までの位置を指す。
【0013】
また、糸状部材とは、各種の裁縫用糸(繊維)のみならず、ワイヤや紐等の可撓性部材をも意味し、更に一部の帯状部材をも含む。要は、これを使用して吊り下げた際に、円柱状部材を撓ませる不具合を解消できる部材であればよい。
【0014】
本発明において、円柱状部材の振れを軸芯方向の複数箇所で測定するには、変位センサを円柱状部材の軸芯方向に沿って移動させるセンサ駆動手段を設けることが好ましい。別の態様としては、変位センサを円柱状部材の軸芯方向に複数設け、該複数の変位センサ同士の間隔は300mm以内とすることが好ましい。この2つの態様のうちでは、変位センサーを複数設けると、使用する変位センサーの数が多くなり経済的でないので、センサ駆動手段を設ける態様がより好ましい。
【0015】
ここで、「変位センサを円柱状部材に沿って移動させながら振れを検出する」とは、変位センサを連続的に移動させながら振れを検出する場合のみならず、変位センサを間欠的に移動させながら振れを検出する場合をも含む。
【0016】
本発明において、前記糸状部材の中間部分に軸受部材が設けられており、該軸受部材により前記円柱状部材の回転駆動による前記糸状部材の捩れが解除可能となっていることが好ましい。円柱状部材の回転に伴い、糸状部材が捩れて振れ等を生じ、この振れ等により測定精度が低下する懸念があるが、このように、軸受部材(ベアリング等)により捩れが解除可能となっていれば、測定精度の低下もない。
【0017】
また、本発明において、前記第1の支持部材及び第2の支持部材の支持孔の内径が前記円柱状部材の外径に対し±0.1mmとなっていることが好ましい。このように内径が円柱状部材の外径に対して所定範囲にあれば、支持孔と円柱状部材とのガタにより、測定精度が低下することも避けられる。なお、支持孔の内径が円柱状部材の外径に対しマイナス(−)になっている場合とは、後述するような支持孔の内径部分が樹脂材で形成されている場合等である。
【0018】
また、本発明において、前記第1の支持部材及び第2の支持部材の支持孔の内径部分が樹脂材で形成されていることが好ましい。このように、支持孔の内径部分が樹脂材で形成されていれば、嵌め合いの際に円柱状部材に傷を生じさせることもない。また、第1の支持部材及び第2の支持部材を球面軸受、又は自動調芯ベアリングで形成することも好ましい。
【0019】
本発明は、前記真直度測定装置により真直度を測定した円柱状部材を塗布バーとしてバー塗布装置に組み込み、塗布液を走行する帯状の支持体に塗布することを特徴とする塗布方法を提供する。
【0020】
本発明によれば、円柱状部材の真直度を高精度で測定でき、測定した円柱状部材のうち、真直度の良好なものを選別してバー塗布装置に組み込んで使用できるので、良好な塗布膜を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の真直度測定方法及び装置によれば、円柱状部材の真直度を精度よく測定できる。したがって、本発明の真直度測定装置で測定した円柱状部材をバー塗布装置の塗工用バーとして使用すれば、良好な塗布膜を得る塗布方法を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施態様について説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る真直度測定装置の構成を示す図である。このうち、(A)は、正面図であり、(B)は、側面図である。なお、本実施の形態では、円柱状部材の軸芯方向の複数箇所の振れを測定するために、変位センサーを移動させるセンサ駆動手段を設けた例で説明する。
【0024】
真直度測定装置10は、躯体である装置本体12に各種の部材が取り付けられて構成されてなる。この装置本体12は、底板12Aと、背面壁12Bと、天板12Cよりなる。
【0025】
天板12Cより糸状部材14によりチャック(把持部材)16が吊り下げられている。このチャック16は、被測定物であるバー(円柱状部材)Bの上端部を把持する把持部材である。
【0026】
糸状部材14は、上部14Aと下部14Bとに分割されており、中間に軸受部材18が設けられている。この軸受部材18は、支持腕18Aを介して背面壁12Bに支持されている。軸受部材18としては、各種ベアリング(玉軸受、ころ軸受等)が使用できる。
【0027】
糸状部材14の中間部分に軸受部材18が設けられることにより、後述するバー(円柱状部材)Bの回転駆動による糸状部材14の捩れが解除可能となっている。すなわち、軸受部材18が設けられない構成であれば、バーBの回転に伴い、糸状部材14が捩れて振れ等を生じ、この振れ等により測定精度が低下する懸念があるが、このように、軸受部材18の回転により捩れが解除可能となっていれば、糸状部材14の上部14A及び下部14Bのいづれにも捩れが生じず、測定精度の低下もない。
【0028】
捩れを解除するための構成としては、糸状部材14の上部14Aの下端を軸受部材18の外輪に固定し、糸状部材14の下部14Bの上端を軸受部材18の内輪に固定する、又は、この逆の構成が採用できる。
【0029】
糸状部材14としては、各種の裁縫用糸(繊維)のみならず、ワイヤや紐等の可撓性部材をも採用できる。更に、糸状部材14として、一部の帯状部材をも採用できる。要は、これを使用して吊り下げた際に、バーBを撓ませる不具合を解消できる部材であれば、糸状部材14として採用できる。
【0030】
背面壁12Bの上下方向の中央部分には、後述する変位センサ20をバーBに沿って移動させるセンサ駆動手段22が設けられている。このセンサ駆動手段22としては、1軸案内手段が採用できる。すなわち、このセンサ駆動手段22の固定子が背面壁12Bに取り付けられ、移動子がセンサ支持腕21を介して変位センサ20を支持する構成である。
【0031】
変位センサ20は、センサ駆動手段22によりバーBに沿って移動され、バーBの振れを非接触で検出するセンサ手段である。このような変位センサ20としては、各種の非接触式センサ手段が採用できるが、たとえば、キーエンス社製のデジタル寸法測定器(型番:LS−7000シリーズ)を採用できる。また、センサ駆動手段22としては、たとえば、変位センサ20を、スライドガイド(ミスミ製ミニチュアスライドガイドSSELBWML16)に沿った形で移動させる方法を好適に使用できる。また、変位センサ20を間欠移動させる場合には、バーBの軸芯方向に300mmのピッチ間隔でタップ穴をたてて位置決めすることが好ましい。
【0032】
この変位センサ20は、バーBの左側に配される投光部20Aと、バーBの右側に配される受光部20Bと、図示しないアンプ等よりなり、バーBの振れを非接触で検出できるように構成されている。
【0033】
背面壁12Bのセンサ駆動手段22の上方には第1の支持部材24が、センサ駆動手段22の下方には第2の支持部材26が、それぞれ設けられている。この第1の支持部材24及び第2の支持部材26は、同一形状のものである。この第1の支持部材24及び第2の支持部材26は、いずれも支持腕25、27を介して背面壁12Bに着脱可能に支持されている。
【0034】
この第1の支持部材24は、バーBの上端部近傍を支持する部材であり、第2の支持部材26は、バーBの下端部近傍を支持する部材である。なお、既述したように、上端部近傍及び下端部近傍とは、バーBの測定部位の外側(端部側)の意味であり、バーBの長さによっても異なるが、たとえば、バーBの長さが1mの場合、端部より100mm程度までの位置を指す。
【0035】
図2は、第1の支持部材24(第2の支持部材26)の詳細図であり、(A)は、平面図であり、(B)は、断面図である。この第1の支持部材24(第2の支持部材26)は、外側の支持リング24A(26A)と、内側の樹脂リング24B(26B)とよりなる。支持リング24A(26A)は金属製のリングであり、樹脂リング24B(26B)は、樹脂製のリングである。
【0036】
この樹脂リング24B(26B)の内径(支持孔)は、バーBの外径と略等しく形成されている。この内径(支持孔)がバーBの外径に対し±0.1mmとなっていることが好ましい。このように内径がバーBの外径に対して所定範囲にあれば、支持孔とバーBとのガタにより、測定精度が低下することも避けられる。この内径(支持孔)がバーBの外径に対し±0.05mmとなっていることがより好ましく、バーBの外径に対し±0.01mmとなっていることが更に好ましい。
【0037】
なお、樹脂リング24B(26B)であれば、支持孔の内径がバーBの外径に対しマイナス(−)になっている場合であっても、不具合とはなりにくい。
【0038】
図2(B)に示されるように、樹脂リング24B(26B)の断面は、外径部分より内径部分に向って厚さが直線状に減少するテーパ状に形成されている。このように樹脂リング24B(26B)の断面がテーパ状に形成されていれば、バーBと内径(支持孔)との接触が線状となり、バーBと第1の支持部材24(第2の支持部材26)との直角度が多少損なわれてセットされていても、第1の支持部材24(第2の支持部材26)がバーBを変形させる力を生じにくい。
【0039】
なお、これに対し、樹脂リング24B(26B)の内径(支持孔)部分に所定以上の厚さがある場合、バーBと内径(支持孔)との接触が面状となり、バーBと第1の支持部材24(第2の支持部材26)との直角度が損なわれてセットされていると、第1の支持部材24(第2の支持部材26)がバーBを変形させる力を生じ易い。
【0040】
樹脂リング24B(26B)の材質としては、たとえば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、MS樹脂、AS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、熱可塑性エラストマー、又はこれらの共重合体、シクロオレフィンポリマー等が挙げられる。
【0041】
これらのうち、特にポリアミド樹脂(たとえば、登録商標:ナイロン)、ポリアセタール樹脂(たとえば、登録商標:デルリン、ジュラコン等)が好ましく使用できる。
【0042】
なお、上記第1の支持部材24(第2の支持部材26)の構成は1例であり、本発明はこの例に限定されるものではない。たとえば、外側の支持リング24A(26A)を樹脂製としてもよく、内側の樹脂リング24B(26B)を樹脂以外の材質で形成してもよい。また、樹脂リング24B(26B)の断面を他の形状としてもよい。
【0043】
要は、第1の支持部材24及び第2の支持部材26によりバーBを回転支持した際に、バーBと内径との間でガタを生じずに、バーBと支持部材との同心状態を良好に維持できる構成であればよい。
【0044】
このような構成としては、本実施形態以外に、1)図2と略同様の第1の支持部材24(第2の支持部材26)の構成とし、支持孔の内径がバーBの外径に対しマイナス(−)になるようにするとともに、樹脂リング24B(26B)の内径部分より半径方向に沿った切れ込みを複数個、周方向に等間隔で形成する構成、2)樹脂リング24B(26B)の内径部分にクッション性を備える部材を配し、この部材でバーBの外径を均等に押圧する構成、3)樹脂リング24B(26B)の内径部分を耐磨耗性の部材で形成するとともに、この部材とバーBとの嵌め合い公差を所定以下に厳しく設定する構成、等が採用できる。
【0045】
なお、樹脂リング24B(26B)の個数は、本発明のように2個であることが必須であり、1個又は3個以上では、本発明の効果が得られない。すなわち、樹脂リング24B(26B)が1個では、バーBの支持が不十分となり、樹脂リング24B(26B)が3個以上では、バーBに曲げ応力を与えずに支持するのが非常に困難である。
【0046】
なお、本実施の形態では、第1の支持部材24及び第2の支持部材26を樹脂リング24B、26Bで説明したが、球面軸受、又は自動調芯ベアリングを採用することも可能である。
【0047】
次に、バーBを回転駆動させる回転駆動手段30について説明する。この回転駆動手段30は、装置本体12の底板12A上に固定されているモータ30Aと、このモータ30Aの駆動軸に固定されているチャック30Bとより構成されている。このチャック30Bは、バーBを着脱可能となっている。そして、変位センサ20によりバーBの振れを検出いる際には、バーBとチャック30Bとの連結が断たれるように構成されている。
【0048】
このチャック30BのバーBを着脱可能とする構成としては、公知の各種構成が採用できる。たとえば、電磁石を使用し、電流のオンオフによりバーBを着脱可能とする構成や、機械式の3点チャックをモータにより駆動する構成が採用できる。
【0049】
以上述べた真直度測定装置10の各構成以外に、制御用シーケンサ32と、この制御用シーケンサ32に接続された、表示装置兼解析装置としてのパソコン手段34が設けられている。制御用シーケンサ32は、変位センサ20、センサ駆動手段22、及び回転駆動手段30に接続されている。
【0050】
以上の制御用シーケンサ32及びパソコン手段34により、センサ駆動手段22、及び回転駆動手段30の駆動が制御可能となっており、また、変位センサ20からの検出信号を取り込んで真直度の測定及び解析ができるようになっている。
【0051】
次に、以上に述べた真直度測定装置10を使用したバー(円柱状部材)Bの真直度測定方法について説明する。
【0052】
先ず、バーBの上端部にチャック16を取り付け、このチャック16を糸状部材14により装置本体12に吊り下げる(ステップS−1)。
【0053】
次いで、バーBの上端部近傍に第1の支持部材24を、バーBの下端部近傍に第2の支持部材26をそれぞれ嵌着させ、この第1の支持部材24及び第2の支持部材26を装置本体12に取り付ける(ステップS−2)。なお、ステップS−1とステップS−2の順序を逆にすることもできる。
【0054】
次いで、センサ駆動手段22を駆動して、変位センサ20を一端側(上端側又は下端側)に移動させ、また、変位センサ20のキャリブレーションを行う(ステップS−3)。これにより測定準備状態になる。
【0055】
次いで、回転駆動手段30のチャック30BをバーBと連結させるとともに、回転駆動手段30のモータ30Aを駆動して、バーBを回転させる(ステップS−4)。
【0056】
次いで、回転駆動手段30のチャック30BのバーBとの連結を切り、バーBが惰性で回転している状態で変位センサ20によりバー(円柱状部材)Bの振れを非接触で検出する(ステップS−5)。以上の測定を、センサ駆動手段22を駆動して変位センサ20をバーBに沿って移動させながら継続し、測定部位(長さ部分)のバーBの振れを非接触で検出し、この検出結果を総合してバーBの真直度を算出する(ステップS−6)。
【0057】
以上説明した本実施形態によれば、バーBの上端部を把持しながら糸状部材14により吊り下げるので、バーBが自重により撓むという不具合を解消できる。また、バーBの上端部近傍及び下端部近傍をこのバーBの外径と略等しい内径の支持孔を備える第1及び第2の支持部材24、26によりそれぞれ支持するので、支持方法によりバーBが撓むという不具合をも解消できる。
【0058】
更に、変位センサ20をバーBに沿って移動させながらバーBの振れを非接触で検出するので、接触によりバーBが撓むという不具合をも解消できる。また、バーBを回転駆動させる構成において、回転駆動手段30が着脱可能となっているので、測定時に回転駆動手段30との結合を断つことができ、回転駆動手段30によりバーBが撓むという不具合をも解消できる。
【0059】
以上の各点より、本実施形態によれば、バーBの真直度を精度よく測定できる。真直度が精度よく測定されたバーBは、バー塗布装置に好適に使用できる。このようなバーBの外径として特に制限はないが、5〜15mmのものが塗工用バーとして好ましく使用できる。以下、このようなバーB(塗工用バー)を組み込んだバーコータ(バー塗布装置)15の例について説明する。
【0060】
図3に断面図で示されるように、バーコータ(バー塗布装置)15は、上流ガイドローラ117等でガイドされて走行するウェブWに対して、塗工用バー112を備えた塗布ヘッド114で塗布液を塗布する装置である。上流ガイドローラ117等は、ウェブWが塗工用バー112に近接走行するように配置されている。
【0061】
塗布ヘッド114は主として、塗工用バー112、バックアップ部材120、コーターブロック122、124で構成され、塗工用バー112は、バックアップ部材120に回動自在に支持されている。バックアップ部材120と各コーターブロック122、124との間には、マニホールド126、128及びスロット130、132が形成され、各マニホールド126、128に塗布液Fが供給される。
【0062】
各マニホールド126、128に供給された塗布液Fは、狭隘なスロット130、132を介してウェブ幅方向で均一に押し出される。これにより、塗工用バー112に対してウェブWの送り方向の上流側に上流側塗布ビード134が形成され、下流側に下流側塗布ビード136が形成される。これらの塗布ビード134、136を介して、走行するウェブWに塗布液Fが塗布される。
【0063】
マニホールド126、128から過剰に供給された塗布液Fは各コーターブロック122、124とウェブWとの間からオーバーフローし、図示しない側溝を介して回収される。なお、マニホールド126、128への塗布液Fの供給はマニホールド126、128の中央部から行なっても、又は端部から行なってもよい。
【0064】
以上の構成により、所定量に計量された塗布液FがウェブWに塗布され、この塗布の際、バーコータ15の塗工用バー112により、高品質の塗布層が得られる。
【0065】
以上、本発明に係る真直度測定装置、方法、及び塗布方法の実施形態の各例について説明したが、本発明は上記実施形態の例に限定されるものではなく、既述したように各種の態様が採り得る。このような構成であっても、本実施形態と同様に作用し、同様の効果が得られるからである。
【実施例】
【0066】
(試験A)
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。図4は、実施例及び比較例の測定方法を示す概念図である。このうち、(1)〜(3)は比較例であり、(4)は実施例である。各例において、4種類の試料のバー(A〜D)をそれぞれ測定した。バー(A〜D)のうち、A及びBは、外径が6mmのものである。C及びDは、外径が8mmのものである。試料のバー(A〜D)の長さは、全て1600mmである。
【0067】
比較例(1)は、試料のバーを平坦な定盤上に置き、各姿勢(回転位置)における隙間をすきまゲージにより測定し、隙間の最大値を真直度とする方法である。
【0068】
比較例(2)は、試料のバーの両端部近傍を定盤上のVブロックで支持し、各姿勢(回転位置)における振れをダイヤルゲージにより測定し、振れの最大値を真直度とする方法である。測定長さは、1400mmであり、測定位置は、端から200、450、750、1000、及び1200mmの5箇所である。
【0069】
比較例(3)は、図1の真直度測定装置10と類似の構成であるが、糸状部材14を使用せず、回転駆動手段のチャックでバーを把持しながら測定し、振れの最大値を真直度とする方法である。測定長さは、1400mmであり、測定位置は、端(第1の支持部材24)から50、150、250、350、450、550、650、750、850、950、1050、1150、1250、及び1350mmの14箇所である。
【0070】
実施例(4)は、図1の真直度測定装置10を使用した方法である。測定長さは、1400mmであり、測定位置は、端(第1の支持部材24)から50、150、250、350、450、550、650、750、850、950、1050、1150、1250、及び1350mmの14箇所である。
【0071】
以上の測定条件と評価結果を図5の表に纏める。なお、図5の表において、最下行の「塗布結果」とは、試料のバー(A〜D)を図3のバー塗布装置に組み込んで塗布を行った結果を示す。また、各評価結果の項目において、「測定値」とは、同一測定を5回行った際の平均値であり、「再現性」とは、同一測定を5回行った際に平均値の±15%以内に入る(○)か否(×)かの評価である。
【0072】
比較例(1)では、測定値は0.02mm(バーA、B)や0.00mm(バーC、D)であり、再現性は○であったものの、この評価は塗布結果を反映したものとは言い難い。すなわち、塗布結果が○であったバーAも、塗布結果が×であったバーBも同一測定値(0.02mm)であり、塗布結果が○であったバーCも、塗布結果が×であったバーDも同一測定値(0.00mm)である。
【0073】
比較例(2)では、測定値は0.00mm(バーA、B)や、0.06mm、0.07mm(バーC、D)であり、再現性は○であったものの、この評価は塗布結果を反映したものとは言い難い。すなわち、塗布結果が○であったバーAも、塗布結果が×であったバーBも同一測定値(0.00mm)であり、塗布結果が○であったバーCも、塗布結果が×であったバーDもほぼ同一測定値である。
【0074】
比較例(3)では、再現性は×であった。ただし、評価がある程度塗布結果を反映した傾向を示している。
【0075】
実施例(4)では、再現性が○であった。また、この評価は塗布結果を反映したものとなっている。すなわち、塗布結果が○であったバーAは、測定値が0.10mmであり、塗布結果が×であったバーBは、測定値が0.25mmである。また、塗布結果が○であったバーCは、測定値が0.06mmであり、塗布結果が×であったバーDは、測定値が0.21mmである。
【0076】
以上の結果より、本発明の効果が確認できた。
【0077】
(試験B)
図6の表は、バー径(芯金径)が8mmで長さが2000mmのバー(円柱状部材)について、変位センサ20を軸芯方向に複数設け、該複数の変位センサ20同士の間隔(測定ピッチ)を変えた場合の試験である。変位センサ20の配置は、バーの長さの中心位置に先ず配置し、そこを基準位置としてバーの上側と下側に図6の表に示す測定ピッチで変位センサ20を配置した。
【0078】
サンプル1は、測定ピッチを600mmとした場合であり、測定点数(変位センサ20の数と同じ)は4点となる。
【0079】
サンプル2は、測定ピッチを450mmとした場合であり、測定点数は5点となる。
【0080】
サンプル3は、測定ピッチを360mmとした場合であり、測定点数は6点となる。
【0081】
サンプル4は、測定ピッチを330mmとした場合であり、測定点数は6点とサンプル3と同じであるが、測定範囲がサンプル3は1800mmであるのに対してサンプル4は1650mmになる。
【0082】
サンプル5は、測定ピッチを300mmとした場合であり、測定点数は7点となる。
【0083】
サンプル6は、測定ピッチを250mmとした場合であり、測定点数は8点となり、測定範囲は1750mmになる。
【0084】
サンプル7は、測定ピッチを200mmとした場合であり、測定点数は10点となる。
【0085】
図6の表の「振れ回り最大値」の結果から分かるように、測定ピッチが300mm以内の試験5〜7は「振れ回り最大値」が0.25mmであるのに対して、測定ピッチが300mmを超える試験1〜4は「振れ回り最大値」が0.2〜0.23mmであった。このことは、測定ピッチが300mmを超えると、バーの真直度において測定されない部分が生じるため、精度良く真直度が測定されないことが分かる。
【0086】
この結果から、複数の変位センサ20を使用する場合には、変位センサ20同士の間隔である測定ピッチは300mm以内にすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係る真直度測定装置の構成を示す図
【図2】第1の支持部材(第2の支持部材)の詳細図
【図3】バー塗布装置の断面図
【図4】実施例及び比較例の測定方法の概念図
【図5】試験Aの実施例及び比較例の評価結果を示す表図
【図6】試験Bの条件と試験結果を示す表図
【符号の説明】
【0088】
10…真直度測定装置、12…装置本体、14…糸状部材、16…チャック、18…軸受部材、20…変位センサ、22…センサ駆動手段、24…第1の支持部材、26…第2の支持部材、30…回転駆動手段、B…バー(円柱状部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状部材の上端部を把持する把持部材と、
装置本体の上部より前記把持部材を吊り下げる糸状部材と、
装置本体に支持され、前記円柱状部材の外径と略等しい内径の支持孔により前記円柱状部材の上端部近傍を支持する第1の支持部材と、
装置本体に支持され、前記円柱状部材の外径と略等しい内径の支持孔により前記円柱状部材の下端部近傍を支持する第2の支持部材と、
前記円柱状部材を着脱可能となっており、前記円柱状部材の軸芯を中心に回転駆動させる回転駆動手段と、
前記円柱状部材を回転駆動させながら前記円柱状部材の振れを前記軸芯の方向の複数箇所において非接触で検出する変位センサと、
を備えることを特徴とする真直度測定装置。
【請求項2】
前記変位センサを前記円柱状部材の軸芯方向に沿って移動させるセンサ駆動手段を設けたことを特徴とする請求項1の真直度測定装置。
【請求項3】
前記変位センサを前記円柱状部材の軸芯方向に複数設けるとともに、該複数の変位センサ同士の間隔は300mm以内であることを特徴とする請求項1の真直度測定装置。
【請求項4】
前記糸状部材の中間部分に軸受部材が設けられており、該軸受部材により前記円柱状部材の回転駆動による前記糸状部材の捩れが解除可能となっている請求項1〜3の何れか1に記載の真直度測定装置。
【請求項5】
前記第1の支持部材及び第2の支持部材の支持孔の内径が前記円柱状部材の外径に対し±0.1mmとなっている請求項1〜4の何れか1に記載の真直度測定装置。
【請求項6】
前記第1の支持部材及び第2の支持部材の支持孔の内径部分が樹脂材で形成されている請求項1〜5の何れか1に記載の真直度測定装置。
【請求項7】
前記第1の支持部材及び第2の支持部材が球面軸受、又は自動調芯ベアリングで形成されている請求項1〜5の何れか1に記載の真直度測定装置。
【請求項8】
円柱状部材の上端部を把持しながら糸状部材により吊り下げ、
前記円柱状部材の上端部近傍を該円柱状部材の外径と略等しい内径の支持孔を備える第1の支持部材により支持するとともに、
前記円柱状部材の下端部近傍を該円柱状部材の外径と略等しい内径の支持孔を備える第2の支持部材により支持し、
前記円柱状部材を該円柱状部材の軸芯を中心として回転駆動させるとともに、変位センサを該円柱状部材に沿って移動させながら該円柱状部材の振れを非接触で検出することにより該円柱状部材の真直度を得ることを特徴とする真直度測定方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の真直度測定装置により真直度を測定した円柱状部材を塗布バーとしてバー塗布装置に組み込み、塗布液を走行する帯状の支持体に塗布することを特徴とする塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−292663(P2007−292663A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122360(P2006−122360)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】