説明

真空装置及びトレイのセット

【課題】装置の外径サイズを一定寸法以下に維持しつつ、生産効率及びコストパフォーマンスの高い真空装置を提供する。
【解決手段】真空排気可能なチャンバ30と、第1及び第2トレイを、チャンバ30の上部の第1及び第2の領域の直下に、交互に移動させるように回転する円盤状の回転機構31とを備え、第1の領域の直下を第1及び第2トレイ11,21のいずれかが仕切ることにより、第1の領域がなす密閉領域を処理室20として定義し、第2の領域の直下を第1及び第2トレイ11,21の他のいずれかが仕切ることにより、第2の領域がなす密閉領域をロードロック室10として定義し、チャンバ30の内部において、第1及び第2トレイ11,21をロードロック室10と処理室20との間を交互に搬送し、回転機構31の載置面で規定される領域のサイズに応じて第1及び第2トレイ11,21のそれぞれが複数の被処理基板101,201を配列する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着、スパッタ、化学気相成長(CVD)等の薄膜形成、またはエッチングなどの薄膜加工に利用される真空装置、及びこの真空装置へ被処理基板を搬入する際に用いるトレイのセットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、絶縁体、金属の薄膜形成や薄膜加工などに用いられる真空装置は、必要な特性に合わせて適正な形態に構成されている。例えば、代表的な形態として、「バッチ型」、「インライン型」、「クラスタ型」の真空装置などがあげられる(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
しかしながら、「バッチ型」の真空装置は、装置への被処理基板の投入を連続的に行えないため、処理時間が長くなる場合がある。また、「インライン型」の真空装置は、各室での処理がそれぞれ終わった後に新たな被処理基板を搬入・搬出させるため、断続的な搬入になる。更に、各室での処理が完了するまでの待ち時間が発生するため、処理時間が長くなり、生産効率が悪くなる場合もある。更に、各室間の搬送を個別に行うための搬送機構も必要となる。また、「クラスタ型」の真空装置は、各室への搬入・搬出を2室以上同時に行うことができない。更に、構成によっては、搬送室の搬送機構を複数設置することで、複数の室への搬入を同時に搬送することも可能であるが、複雑な機構が必要となるため、メンテナンスが困難でコストも高くなる。このように、従来の真空装置では、複数の室への被処理基板の搬送を同時に行えず、簡易な構成で高い生産効率を得ることは困難であった。
【0004】
そこで、本発明者は、簡易な構成で複数の室への搬入を同時に搬送する真空装置として、真空排気可能なチャンバと、第1及び第2トレイを、チャンバの上部の第1及び第2の領域の直下に、交互に移動させるように回転する円盤状の回転機構とを備える真空装置を検討した。
【0005】
この検討によれば、真空装置の第1の領域の直下を第1及び第2トレイのいずれかが仕切ることにより、第1の領域がなす密閉領域が処理室として定義される。また、第2の領域の直下を第1及び第2トレイの他のいずれかが仕切ることにより、第2の領域がなす密閉領域がロードロック室として定義される。そして、チャンバの内部において、第1及び第2トレイをロードロック室と処理室側との間を交互に搬送する。
【0006】
ここで、道路法および車両制限令により、装置製造時の別工場間の運搬や客先への据え付け時の運搬には、幅2.2mの制限がある。このサイズを超えると、特殊なトラックや先導車の使用義務、許認可の手続等が必要となり、手続やコストが大幅に増大し効率が悪くなる。効率よく運搬できる装置サイズを維持すると、第1及び第2トレイに載置可能な被処理基板の枚数が制約され、コストパフォーマンス良く高い生産効率を得ることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−295551号公報
【特許文献2】特開2001−239144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、装置の外径サイズを一定寸法以下に維持しつつ、チャンバ内に載置可能な被処理基板の枚数を最大化することにより、生産効率及びコストパフォーマンスの高い真空装置、及びこの真空装置へ被処理基板を搬入する際に用いるトレイのセットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、(イ)真空排気可能なチャンバと、(ロ)第1及び第2トレイを、チャンバの上部の第1及び第2の領域の直下に、交互に移動させるように回転する円盤状の回転機構とを備え、第1の領域の直下を第1及び第2トレイのいずれかが仕切ることにより、第1の領域がなす密閉領域を処理室として定義し、第2の領域の直下を第1及び第2トレイの他のいずれかが仕切ることにより、第2の領域がなす密閉領域をロードロック室として定義し、チャンバの内部において、第1及び第2トレイをロードロック室側から処理室側に交互に搬送し、処理室において第1又は第2トレイに搭載された複数の被処理基板を処理し、この処理後、処理室側からロードロック室側に第1及び第2トレイを交互に搬送し、回転機構の第1及び第2トレイを載置する載置面で規定される領域のサイズに応じて第1及び第2トレイのそれぞれが複数の被処理基板を配列する真空装置が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、(イ)真空排気可能なチャンバと、(ロ)第1及び第2トレイを、チャンバの上部の第1及び第2の領域の直下に、交互に移動させるように回転する円盤状の回転機構とを備え、第1の領域の直下を第1及び第2トレイのいずれかが仕切ることにより、第1の領域がなす密閉領域を処理室として定義し、第2の領域の直下を第1及び第2トレイの他のいずれかが仕切ることにより、第2の領域がなす密閉領域をロードロック室として定義し、チャンバの内部において、第1及び第2トレイをロードロック室側から処理室側に交互に搬送し、処理室において第1又は第2トレイに搭載された複数の被処理基板を処理し、この処理後、処理室側からロードロック室側に第1及び第2トレイを交互に搬送する真空装置に用いられる第1及び第2のトレイを含むトレイのセットであって、回転機構の第1及び第2トレイを載置する載置面で規定される領域のサイズに応じて第1及び第2トレイのそれぞれが複数の被処理基板を配列するトレイのセットが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、装置の外径サイズを一定寸法以下に維持しつつ、チャンバ内に載置可能な被処理基板の枚数を最大化することにより、生産効率及びコストパフォーマンスの高い真空装置、及びこの真空装置へ被処理基板を搬入する際に用いるトレイのセットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る真空装置の構成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る真空装置の被処理基板が配置された第1及び第2トレイを上面からみた場合の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る真空装置の動作の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る真空装置の動作の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る真空装置の動作の一例を示す概略図である。
【図6】本発明の実施の形態の変形例に係る真空装置の被処理基板が配置された第1及び第2トレイを上面からみた場合の一例を示す概略図である。
【図7】本発明の実施の形態の変形例に係る真空装置の被処理基板が配置された第1及び第2トレイを上面からみた場合の他の一例を示す概略図である。
【図8】本発明の実施の形態の変形例に係る真空装置の被処理基板が配置された第1及び第2トレイを上面からみた場合の更に他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0014】
また、本発明の実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
(真空装置)
本発明の実施の形態に係る真空装置は、図1に示すように、第1及び第2トレイ11,21をチャンバ30の上部の第1及び第2の領域の直下に、交互に移動させるように回転する円盤状の回転機構31と、この真空装置の各部品の動作を制御する制御装置40とを備える。第1の領域の直下を第1及び第2トレイ11,21のいずれかが仕切ることにより、第1の領域がなす密閉領域(閉じた空間)が処理室20として定義される。また、第2の領域の直下を第1及び第2トレイ11,21の他のいずれかが仕切ることにより、第2の領域がなす密閉領域(閉じた空間)がロードロック室10として定義される。なお、「第1の領域」及び「第2の領域」は単なる定義の問題であって、図1では、便宜上、チャンバ30の上部の右側の領域を「第1の領域」、チャンバ30の上部の左側の領域を「第2の領域」と定義しているが、逆に、図1の左側を「第1の領域」、図1の右側を「第2の領域」と定義しても良く、更には、第1の領域がなす密閉領域がロードロック室7として定義され、第2の領域がなす密閉領域が処理室4として定義されるとしても良い。
【0016】
そして、チャンバ30の内部において、第1及び第2トレイ11,21をロードロック室10側から処理室20側に交互に搬送し、処理室20において第1又は第2トレイ11,21に搭載された複数の被処理基板101,201を処理し、該処理後、処理室20側からロードロック室10側に第1及び第2トレイ11,21を交互に搬送する。また、回転機構31の第1及び第2トレイ11,21を載置する載置面で規定される領域のサイズに応じて、第1及び第2トレイ11,21のそれぞれが複数の被処理基板101,201を配列する。
【0017】
チャンバ30には、内部を真空排気するための真空ポンプ35が、弁34を介して接続されている。チャンバ30の内部には、処理室20及びロードロック室10に対向する搬送機構36が配置されている。搬送機構36は、回転機構31及び回転軸32を備える。回転機構31は、円盤状の平板であり、ロードロック室10及び処理室20に対向する面を回転面とする。回転軸32は、図2に示すように、回転機構31の中心部に接続されている。回転機構31が回転軸32を軸として180度回転することにより、ロードロック室10の下にある第1トレイ11を処理室20の下に移動させると同時に、処理室20の下にある第2トレイ21をロードロック室10の下に移動させる。即ち、回転機構31を180度回転させることにより、ロードロック室10と処理室20との間で第1及び第2トレイ11,21を同時に交換可能な機構になっている。
【0018】
ロードロック室10は、チャンバ30の上部の第2の領域において、第1及び第2トレイ11,21のいずれかと、第1トレイ11と対向する蓋部12とにより区画定義される。第1及び第2トレイ11,21は、チャンバ30とロードロック室10との間を真空可能に間仕切りする仕切弁として機能する。第1トレイ11及び蓋部12は同一の形状であっても、異なる形状であっても構わない。
【0019】
第1及び第2トレイ11,21、及び蓋部12は、図示を省略したOリングや、ベローズ等を介して、チャンバ30の壁面に密着する。ロードロック室10には、ベントガスや大気を導入するためのベントラインに接続された弁13と真空ポンプ15に接続された弁14が設けられている。弁13の先に接続されたベントラインから、大気ガスやベントガスが供給され、ロードロック室10内を大気雰囲気、或いはベントガス雰囲気にすることができる。または、真空ポンプ15によりロードロック室10内を真空排気し、ロードロック室10の内部を所定の圧力に減圧することができる。被処理基板101,201の出し入れは、チャンバ30の開口部を第1及び第2トレイ11,21のいずれかで閉じ、チャンバ30を大気に開放しないようにした状態で、蓋部12を取り外す(又は蓋部12を上下させる)ことにより行われる。
【0020】
処理室20は、チャンバ30の上方の一部に、チャンバ30の上部の第1の領域と、第1及び第2トレイ11,21のいずれかとにより区画定義される。第1及び第2トレイ11,21は、チャンバ30と処理室20との間を真空可能に間仕切りする仕切弁、或いはシャッタとして機能する。処理室20は、弁24を介して真空ポンプ25が接続されている。例えば、処理室20が化学気相成長(CVD)装置である場合、処理室20の内部には、プラズマ放電のための電極(図示省略)が配置される。処理室20が真空蒸着装置ならば、処理室20の内部には電子ビーム(EB)装置などが配置される。処理室20がスパッタリング装置ならば、処理室20の内部には放電電極が配置される。処理室20が分子線エピタキシャル(MBE)装置ならば、処理室20の内部にはクヌーセンセル等が配置される。
【0021】
第1及び第2トレイ11,21は、処理室20と回転機構31との間を上下して、処理室20と回転機構31との間で被処理基板101,201を搬送するとともに、ロードロック室10と回転機構31との間を上下して、ロードロック室10と回転機構31との間で被処理基板101,201を搬送する。第1トレイ11を上下に動かすために、第1及び第2トレイ11,21には、図示を省略した引張機構が接続されている。引張機構の構造の詳細はここでは特に限定しないが、例えば、エアシリンダ、引張バネ、引張ワイヤ、真空モータ等が利用可能である。第1及び第2トレイ11,21は、効率よく搬入又は搬出を行うためには同一形状を有することが好ましいが、異なる形状であっても良い。
【0022】
制御装置40は、真空装置の各種動作を制御する。例えば、図1に示すように、処理室20において被処理基板201を処理している間に、ロードロック室10に新たな被処理基板101を搬入し、所定の圧力まで真空排気しておく、または、回転機構31上に第1トレイ11を配置しておくこと等も可能である。
【0023】
被処理基板101,201は、例えば半導体装置の製造では半導体基板(半導体ウエハ)、液晶装置の製造では液晶基板、磁気記録媒体や光記録媒体の製造では樹脂基板、薄膜磁気ヘッドの製造では磁性材料基板、超音波素子の製造方法では圧電材料基板、超伝導素子の製造方法では超伝導材料基板等の製造工程の途中段階における中間生成物を意味する。このため、被処理基板101,201としては、有機系の種々な合成樹脂、半導体、金属、セラミック、ガラス等の種々の無機系材料が、その目的とする製造物(工業製品)の種類に応じて選択可能である。本発明の実施の形態においては、被処理基板101,201として、図2に示すように太陽電池製造等の用途に用いられる156mmクラスの幅W3,W4を有するものを対象とする。
【0024】
冒頭で述べたとおり、装置製造時の別工場間の運搬や客先への据え付け時の運搬には、幅2.2mの制限がある。このサイズを超えると、特殊なトラックや先導車の使用義務、許認可の手続等が必要となり、手続やコストが大幅に増大する。このため、本発明の実施の形態においては、図2に示すように、チャンバ30の外径寸法W1,W2の最大値が2.2m以下のものを対象とする。チャンバ30の内壁と回転機構31の間は、5〜20mm 程度の間隔W5,W6のクリアランスが設けられている。回転機構31の半径は1050〜1075mm程度に規定される。
【0025】
第1及び第2トレイ11,21のそれぞれは、回転機構31の第1及び第2トレイ11,21を載置する載置面で規定される領域のサイズに応じて複数の被処理基板101,201を配列する。図2においては、第1及び第2トレイ11,21のそれぞれの被処理基板載置面は矩形である。第1及び第2トレイ11,21において、第1及び第2トレイ11,21が互いに対向する長辺方向(以下、「行方向」という。)の長さW11及び行方向と直交する方向(以下、「列方向」という。)の長さW12は、回転機構31の円周内に収まるように設計されておいる。図2に示した第1及び第2トレイ11,21の場合、複数の被処理基板101,201を行方向に8行配列し、列方向に3列に配列し、それぞれ24枚ずつ載置されている。
【0026】
(真空装置の動作方法)
次に、実施の形態に係る真空装置の動作方法を図3〜図6の断面図を用いて説明する。以下に示す動作方法は一例であり、他にも種々の動作方法があることは勿論である。
【0027】
まず、図3に示すように、ロードロック室10の蓋部12を動かし、被処理基板101を第1トレイ11の上に搬入する。その後、蓋部12を閉じてロードロック室10を密閉し、弁14を開いて、真空ポンプ15によりロードロック室10内を真空排気する。
【0028】
ロードロック室10内を真空排気している間、処理室20では、第2トレイ21上に保持された被処理基板201に対して所定の処理が施される。処理室20での被処理基板201の処理終了後、図5に示すように、第1トレイ11と第2トレイ21とを上下に移動させ、第1トレイ11および第2トレイ21を回転機構31の回転面上に載置させる。
【0029】
回転機構31が回転軸32を軸として180°回転することにより、図6に示すように、第1トレイ11と第2トレイ21との位置が同時に交換される。その後、第1トレイ11と第2トレイ21は、再び、図示を省略した引張機構によってチャンバ30の上部へ引き上げられる。
【0030】
第2トレイ21上に保持された処理後の被処理基板201は、第2トレイ21によってロードロック室10内へ導入される。第2トレイ21によってチャンバ30とロードロック室10との間が仕切られた後、弁13を開き、ベントガス、或いは大気をロードロック室10の内部に導入することにより、被処理基板201周辺の雰囲気がベントガス雰囲気、或いは大気圧雰囲気に戻される。その後、蓋部12を開けて被処理基板201を取り出し、次の被処理基板を第2トレイ21の上へ載置する。
【0031】
一方、第1トレイ11は、図示を省略した引張機構によってチャンバ30の上部に引き上げられる。これにより、チャンバ30の上部に処理室20が定義される。処理室20では、必要に応じて、真空ポンプ25によって所定の圧力に調整された後に、所定の処理が施される。第1トレイ11と第2トレイ21の上下移動は同時に動かしても良いし、別々に行ってもよい。
【0032】
以上説明したように、実施の形態に係る真空装置によれば、第1及び第2トレイ11,21が、被処理基板101,201を処理室20又はロードロック室10へ搬送するとともに、チャンバ30の内部にロードロック室10及び処理室20を間仕切りする仕切弁としての機能を兼ね備える。このため、従来の装置のように、搬送機構と弁とをそれぞれ別途に設ける必要がなく、装置点数の削減・簡略化が図れる。その結果、ロードロック室10、処理室20は、被処理基板サイズ近くまで小型化でき、真空装置全体の装置の小型化も図れる。同時に、各室内部のデッドスペースが削減されることにより、排気・ベント時間の短縮、ベントガスや動力などのランニングコストの削減も可能である。
【0033】
また、図1に示すように、チャンバ30内に設けられた搬送機構36として、回転機構31を利用することにより、回転機構31を180°回転させるだけで、次に導入すべき被処理基板101,201を2つの室に同時に対向させることができるので、ロードロック室10から処理室20、処理室20からロードロック室10への搬送を同時に行うことができ、生産効率も高くなる。また、従来の搬送機構に比べて待ち時間も少なくできる。回転機構31を利用することにより、搬送機構を複数個設ける場合よりも簡易な機構となり、メンテナンスも容易になる。
【0034】
更に、図2に示したように、第1及び第2トレイ11,21のそれぞれが、回転機構31の第1及び第2トレイ11,21を載置する載置面で規定される領域のサイズに応じて複数の被処理基板101,201を配列するので、1バッチあたりに設置可能な被処理基板を増量することができる。このため、チャンバ30の側壁の幅を2.2m以下として効率よく運搬可能なサイズを維持しつつ、コストパフォーマンス及び生産効率の高い装置を実現可能となる。
【0035】
本発明の実施の形態の変形例として、図6に示すように、第1及び第2トレイ11x,21xは、複数の被処理基板101,201を行方向に8行配列し、列方向に4列に配列する構造であっても良い。第1及び第2トレイ11x,21xにおいて、列方向の長さW22は図2に示した長さW12と同じとし、行方向の長さW21を図2に示した長さW11よりも拡げ、回転機構31の円周内に収まるように設計されている。図6に示した第1及び第2トレイ11x,21xの場合、複数の被処理基板101,201をそれぞれ32枚ずつ載置可能となる。
【0036】
また、本発明の実施の形態の他の変形例として、図7に示すように、第1及び第2トレイ11y,21yは多角形であり、回転機構31の円周内に収まるように、回転機構31の中心側から円周側に向かうにつれて、列方向の幅W31,W32,W33が狭くなる段差を有する。この結果、隣接する列毎に配列される被処理基板101,201の枚数が同じか少なくなっている。また、第1及び第2トレイ11y,21yは、回転機構31の円周内に収まるように、回転機構31の中心側から円周側に向かうにつれて行方向の幅W34,W35,W36が狭くなる段差を有する。この結果、隣接する行毎に配列される被処理基板101,201の枚数が同じか少なくなっている。図7に示した第1及び第2トレイ11y,21yの場合、複数の被処理基板101,201をそれぞれ36枚ずつ載置可能となる。
【0037】
また、本発明の実施の形態の更に他の変形例として、図8に示すように、第1及び第2トレイ11z,21zは、行方向及び列方向にそれぞれマージンをとり、複数の被処理基板101,201を行方向に5行配列し、列方向に4列に配列する構造であっても良い。図8に示した第1及び第2トレイ11z,21zの場合、複数の被処理基板101,201をそれぞれ20枚ずつ載置可能となる。また、第1及び第2トレイ11z,21zの被処理基板載置面の形状を正方形とし、被処理基板101,201を行方向に4行配列し、列方向に4列に配列する構造であっても良い。
【0038】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。例えば、本発明の実施の形態においては、各真空ポンプ、ベントライン、トレイ等を複数個有する例を示しているが、処理内容等に問題のない場合は一括して共通のものを使用し、部品点数の削減を図るようにしてもよい。
【0039】
また、第1及び第2トレイ11,11x,11y,11z,21,21x,21y,21zの被処理基板101,201が搭載される底面等にそれぞれ加熱機構を設けていても良い。
【0040】
また、ロードロック室10及び処理室20の形状は、使用する第1及び第2トレイ11,11x,11y,11z,21,21x,21y,21zの形状に合わせて適宜設計すれば良い。
【0041】
また、チャンバ30として、側壁の幅W1,W2が2.2m以下のものを対象とし、被処理基板101,201として、156mmクラスのものを対象として説明したが、これに限定されるものではない。チャンバ30の側壁の幅W1,W2に応じて回転機構31のサイズが規定され、回転機構31のサイズに応じて最大限の枚数の複数の被処理基板101,201を処理できるように第1及び第2トレイ11,11x,11y,11z,21,21x,21y,21zの形状及びサイズを設計すれば良い。
【0042】
このように、この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0043】
10…ロードロック室
11,11x,11y,11z…第1トレイ
21,21x,21y,21z…第2トレイ
12…蓋部
13,14,24,34…弁
15,25,35…真空ポンプ
20…処理室
30…チャンバ
31…回転機構
32…回転軸
36…搬送機構
40…制御装置
101,201…被処理基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空排気可能なチャンバと、
第1及び第2トレイを、前記チャンバの上部の第1及び第2の領域の直下に、交互に移動させるように回転する円盤状の回転機構とを備え、
前記第1の領域の直下を前記第1及び第2トレイのいずれかが仕切ることにより、前記第1の領域がなす密閉領域を処理室として定義し、
前記第2の領域の直下を前記第1及び第2トレイの他のいずれかが仕切ることにより、前記第2の領域がなす密閉領域をロードロック室として定義し、
前記チャンバの内部において、前記第1及び第2トレイを前記ロードロック室側から前記処理室側に交互に搬送し、前記処理室において前記第1又は第2トレイに搭載された複数の被処理基板を処理し、該処理後、前記処理室側から前記ロードロック室側に前記第1及び第2トレイを交互に搬送し、
前記回転機構の前記第1及び第2トレイを載置する載置面で規定される領域のサイズに応じて前記第1及び第2トレイのそれぞれが前記複数の被処理基板を配列することを特徴とする真空装置。
【請求項2】
前記チャンバの外径寸法の最大値が2.2m以下であることを特徴とする請求項1に記載の真空装置。
【請求項3】
前記複数の被処理基板が、156mm角であることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空装置。
【請求項4】
真空排気可能なチャンバと、第1及び第2トレイを、前記チャンバの上部の第1及び第2の領域の直下に、交互に移動させるように回転する円盤状の回転機構とを備え、前記第1の領域の直下を前記第1及び第2トレイのいずれかが仕切ることにより、前記第1の領域がなす密閉領域を処理室として定義し、前記第2の領域の直下を前記第1及び第2トレイの他のいずれかが仕切ることにより、前記第2の領域がなす密閉領域をロードロック室として定義し、前記チャンバの内部において、前記第1及び第2トレイを前記ロードロック室側から前記処理室側に交互に搬送し、前記処理室において前記第1又は第2トレイに搭載された複数の被処理基板を処理し、該処理後、前記処理室側から前記ロードロック室側に前記第1及び第2トレイを交互に搬送する真空装置に用いられる第1及び第2のトレイを含むトレイのセットであって、
前記回転機構の前記第1及び第2トレイを載置する載置面で規定される領域のサイズに応じて前記第1及び第2トレイのそれぞれが前記複数の被処理基板を配列することを特徴とするトレイのセット。
【請求項5】
前記第1及び第2トレイのそれぞれの前記複数の被処理基板を載置する載置面が矩形であることを特徴とする請求項4に記載のトレイのセット。
【請求項6】
前記第1及び第2トレイは、前記複数の被処理基板を前記第1及び第2トレイが対向する方向に8行配列し、前記対向する方向と直交する方向に3列に配列することを特徴とする請求項4又は5に記載のトレイのセット。
【請求項7】
前記第1及び第2トレイは、前記複数の被処理基板を前記第1及び第2トレイが対向する方向に8行配列し、前記対向する方向と直交する方向に4列に配列することを特徴とする請求項4又は5に記載のトレイのセット。
【請求項8】
前記第1及び第2トレイはそれぞれ、前記回転機構の円周内に収まるように、前記回転機構の中心側から円周側に向かうにつれて、前記第1及び第2トレイの互いに対向する長辺に直交する方向の幅が狭くなる段差を有する多角形であることを特徴とする請求項4に記載のトレイのセット。
【請求項9】
前記第1及び第2トレイはそれぞれ、前記回転機構の円周内に収まるように、前記回転機構の中心側から円周側に向かうにつれて前記第1及び第2トレイが互いに対向する長辺方向の幅が狭くなることを特徴とする請求項4又は8に記載のトレイのセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−251503(P2010−251503A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98978(P2009−98978)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】