説明

磁気抵抗効果素子及び磁気ランダムアクセスメモリ

【課題】誤書き込みを低減し、かつ熱安定性を向上させる。
【解決手段】磁気抵抗効果素子は、磁化の向きが固定された磁化固定層11と、磁化の向きが変化する磁化自由層13と、磁化固定層11及び磁化自由層13間に設けられた非磁性層12とを具備する磁気抵抗効果素子10であって、磁化自由層13は、第1の方向に延在する延在部10aと、この延在部10aの側面の端部以外から第1の方向に対して垂直な第2の方向に突出する突出部10b,10cとを有し、磁化自由層13の平面形状は、180度回転対称性を有し、かつ鏡映対称性を有しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果素子及び磁気ランダムアクセスメモリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々のタイプの固体磁気メモリが提案されている。近年では、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magneto Resistive)効果を示す磁気抵抗素子を用いた磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM:Magnetic Random Access Memory)が提案されており、特に、トンネル磁気抵抗(TMR:Tunneling Magneto Resistive)効果を示す強磁性トンネル接合を用いた磁気ランダムアクセスメモリに注目が集まっている。
【0003】
強磁性トンネル接合のMTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子は、主に、第1の強磁性層/絶縁層/第2の強磁性層の3層膜で構成されている。そして、読み出し時に、絶縁層をトンネルして電流が流れる。この場合、接合抵抗値は、第1及び第2の強磁性層の磁化の相対角の余弦に応じて比例して変化する。従って、接合抵抗値は、第1及び第2の強磁性層の磁化が平行のときに極小値、反平行のときに極大値をとる。これを、上述するTMR効果と呼ぶ。このTMR効果による抵抗値の変化は、室温において70%を超える場合もある。
【0004】
強磁性トンネル接合をメモリセルとして含む磁気メモリ素子においては、少なくとも1つの強磁性層を基準層とみなして、その磁化方向を固定し、他の強磁性層を記憶層とする。このセルにおいて、基準層と記憶層の磁化の配置が平行又は反平行に対し2進情報の“0”,“1”を対応づけることで情報が記憶される。記録情報の書き込みは、このセルに対し別に設けた書き込み配線に電流を流して発生する磁場により記憶層の磁化を反転させる。また、読み出しは、強磁性トンネル接合に電流を流し、TMR効果による抵抗変化を検出することで行われる。このようなメモリセルを多数配置することで磁気メモリが構成される。実際の構成については、任意のセルを選択できるように、例えばDRAM同様に各セルに対しスイッチングトランジスタを配置し、周辺回路を組み込んで構成される。また、ワード線とビット線が交差する位置にダイオードと合わせて強磁性トンネル接合を組み込む方式も提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0005】
強磁性トンネル接合のMTJ素子をメモリセルとして用いる磁気ランダムアクセスメモリを動作させるには、非選択セルへの誤書き込みをなくすことが必要不可欠である。
【0006】
図31は、一般的な磁気ランダムアクセスメモリの概略図を示す。図31に示すように、磁気ランダムアクセスメモリでは、選択メモリセルに対して、容易軸方向の磁場Hxと困難軸方向の磁場Hyとによる合成磁場を印加し、MTJ素子の記録層に情報を書き込む。このとき、非選択のメモリセルには、全く磁場が印加されないか、単一方向のみに磁場が印加される。ここで、単一方向にのみ磁場が印加されたメモリセルを、半選択メモリセルと呼ぶ。
【0007】
図32は、記録層磁化の反転特性を表すアステロイド曲線を示す。ここで、実線は一斉回転モデルを用いた理論値、破線は形状Aを仮定した計算値を示す。
【0008】
一斉回転モデルにおける磁化反転特性は、アステロイド曲線で表される。このアステロイド曲線において、容易軸方向及び困難軸方向に磁場を印加した場合の磁化反転に必要な磁場Hswは、容易軸方向のみに磁場を加えた場合の反転磁場Hcよりも小さくなる。このとき、選択メモリセルに情報を書き込むために必要な単一方向の磁場Hxは磁場Hcよりも小さく設定できるので、理想的には半選択メモリセルへの誤書き込みは起こらない。しかしながら、現実のメモリセルには反転磁場のばらつきが存在するため、HswをHcよりも十分に小さくしなければ、半選択メモリセルへの誤書き込みが起こる可能性がある。
【0009】
一方、磁気ランダムアクセスメモリは不揮発メモリとして動作するため、安定に記録情報を保持できなければならない。情報を安定に長時間記録するための目安として熱揺らぎ定数といわれるパラメータが存在し、この熱揺らぎ定数は記録層の体積とHswに比例することが一般的に言われている。従って、誤書込みを低減するためにHswを低減すると、その分熱安定性も同様に低減し、情報を長期間保持することができなくなってしまう。従って、Hswを低減しながらHswに対してHcを十分大きく保ち、熱安定性が高く長期間情報を保持することができる強磁性トンネル接合素子を考えることが高集積化磁気メモリの実用化において重要な課題となる。
【特許文献1】米国特許第5,640,343号明細書
【特許文献2】米国特許第5,650,958号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、誤書き込みを低減し、かつ熱安定性を向上させることが可能な磁気抵抗効果素子及び磁気ランダムアクセスメモリを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するために以下に示す手段を用いている。
【0012】
本発明の第1の視点による磁気抵抗効果素子は、磁化の向きが固定された磁化固定層と、磁化の向きが変化する磁化自由層と、前記磁化固定層及び前記磁化自由層間に設けられた非磁性層とを具備する磁気抵抗効果素子であって、前記磁化自由層は、第1の方向に延在する延在部と、前記延在部の側面の端部以外から前記第1の方向に対して垂直な第2の方向に突出する突出部とを有し、前記磁化自由層の平面形状は、180度回転対称性を有し、かつ鏡映対称性を有しない。
【0013】
本発明の第2の視点による磁気ランダムアクセスメモリは、前記第1の視点による前記磁気抵抗効果素子を記録素子として具備する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、誤書き込みを低減し、かつ熱安定性を向上させることが可能な磁気抵抗効果素子及び磁気ランダムアクセスメモリを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の一実施形態について、[1]では、磁気抵抗効果素子の一例であるMTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子について説明し、[2]では、このMTJ素子を記録素子として備えた磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM:Magnetic Random Access Memory)について説明する。尚、この説明に際し、図面を参照し、全図にわたり共通する部分には共通する参照符号を付す。
【0016】
[1]MTJ素子
まず、本発明の一実施形態に係るMTJ素子について説明する。ここでは、[1−1]平面形状、[1−2]製造方法、[1−3]トンネル接合構造、[1−4]断面形状、[1−5]層間交換結合構造、[1−6]材料について説明する。
【0017】
[1−1]平面形状
ここでは、MTJ素子の平面形状に関する実施例1乃至実施例9について説明する。
【0018】
(実施例1)
図1(a)及び(b)は、本発明の実施例1に係るMTJ素子の形状Sの平面図及び断面図を示す。以下に、実施例1のMTJ素子の形状Sについて説明する。
【0019】
図1(a)及び(b)に示すように、MTJ素子10は、少なくとも、磁化の方向が固定された磁化固定層(以下、固定層と称す)11と、印加磁場により磁化の方向が反転する磁化自由層(以下、記録層と称す)13と、固定層11及び記録層13に挟まれた非磁性層(例えばトンネルバリア層)12とを有する。さらに、固定層11の下には、固定層11の磁化を固定するための反強磁性層14が設けられている。
【0020】
このMTJ素子10は、X方向に延在する延在部10aと、この延在部10aの両側面の例えば中央付近からY方向(X方向に対して垂直な方向)にそれぞれ突出する突出部10b,10cとで構成されており、いわゆる十字形状となっている。換言すると、MTJ素子10の平面形状において、中央部付近におけるY方向の幅W’が端部におけるY方向の幅Wよりも広くなっている。尚、ここでは、延在部10aの延在方向であるX方向は、MTJ素子10の磁化容易軸方向であり、突出部10b,10cの突出方向であるY方向は、MTJ素子10の磁化困難軸方向である。
【0021】
延在部10aは、曲線状の第1乃至第4の端部e1,e2,e3,e4を有している。第1及び第3の端部e1,e3は第1の対角線D1上に位置し、第2及び第4の端部e2,e4は第2の対角線D2上に位置する。そして、第1及び第3の端部e1,e3は、第2及び第4の端部e2,e4より欠けている。換言すると、第1及び第3の端部e1,e3の曲率半径は、第2及び第4の端部e2,e4の曲率半径より大きい。尚、第1及び第3の端部e1,e3の曲率半径はほぼ同じであり、第2及び第4の端部e2,e4の曲率半径はほぼ同じである。
【0022】
延在部10aの磁化容易軸方向における端部の両側面f1,f2は、磁化困難軸方向とほぼ平行な方向に延在し、曲線状の第1乃至第4の端部e1,e2,e3,e4につながっている。
【0023】
尚、ここでは、突出部10b,10cは、延在部10aの両側面の中央領域から突出しているが、延在部10aの両側面の端部以外から突出していればよい。
【0024】
図2は、本発明の実施例1に係るMTJ素子の形状Sの180度回転対称性及び鏡映対称性を説明するための図を示す。尚、図2のMTJ素子内に印された丸印は、MTJ素子の180度回転対称性及び鏡映対称性を説明するために便宜的に印したものである。
【0025】
図2に示すように、MTJ素子10の形状Sは、180度回転対称性を有し、かつ、鏡映対称性を有しない膜面内形状を有する。
【0026】
「180度回転対称性」とは、MTJ素子10の平面形状を180度回転させた場合の形状Saと基準形状Sとの対称性をいう。180度回転対称性は2回回転対称性ともいう。180度回転形状Saは基準形状Sと同じであるため、MTJ素子10の形状Sは180度回転対称性を有している。
【0027】
「鏡映対称性」とは、磁化困難軸方向の鏡映面Pを基準とした鏡映形状Sbと基準形状Sとの対称性をいう。鏡映形状Sbは基準形状Sと異なるため、MTJ素子10の形状Sは鏡映対称性を有していない。
【0028】
次に、MTJ素子10の平面形状が、180度回転対称性を有し、かつ、鏡映対称性を有しないことが望ましい理由について、以下に述べる。
【0029】
図3は、本発明の実施例1に係るMTJ素子の形状S,X,Cの180度回転対称性及び鏡映対称性を説明するための図を示す。尚、図3のMTJ素子内に印された丸印は、MTJ素子の180度回転対称性及び鏡映対称性を説明するために便宜的に印したものである。まず、以下の説明で用いる形状S,X,Cについて説明する。
【0030】
図3に示すように、形状S,X,Cにおいて、全てのMTJ素子10はいわゆる十字形状になっているが、MTJ素子10における延在部10aの端部の形状がそれぞれ異なる。
【0031】
形状Sは、本発明の実施例1に係るMTJ素子10の形状である。この形状Sは、上述するように、180度回転対称性を有し、かつ鏡映対称性を有しない。
【0032】
形状Xは、延在部10aが長方形である。この形状Xの場合、180度回転形状Xaは基準形状Xと同じであり、鏡映形状Xbは基準形状Xと同じある。従って、形状Xは、180度回転対称性を有し、かつ鏡映対称性を有する。
【0033】
形状Cは、延在部10aが台形である。この形状Cの場合、180度回転形状Caは基準形状Cと異なり、鏡映形状Cbは基準形状Cと同じある。従って、形状Cは、180度回転対称性を有さず、かつ鏡映対称性を有する。
【0034】
次に、形状S,X,CのMTJ素子10によるアステロイド特性の違いについて説明する。
【0035】
図4は、本発明の実施例1に係る形状S,X,CのMTJ素子のアステロイド特性の比較図を示す。ここで、図4における各実験値は、100ビット程度の素子を測定して平均化したものである。
【0036】
図4に示すように、形状Sは、形状X,Cと比較して、容易軸方向の反転磁場Hcが書き込み点における反転磁場Hswに対して十分大きく、書き込みマージンが大きいことが分かる。従って、形状Sは、半選択セルの誤書き込みを抑制する効果が高いと言える。形状Sで良好なアステロイド特性が得られた原因は、上述するように形状S,X,Cの端部形状が異なった対称性を有することから、それぞれ異なる残留磁区状態が安定化しているためと考察される。
【0037】
尚、磁場Hswは、原点から45度傾いた直線とアステロイド曲線とが交わる点における磁化反転に必要な書き込み磁場(容易軸及び困難軸方向における合成磁場)であり、磁場Hcは、磁化反転に必要な書き込み磁場(容易軸方向のみの磁場)である。
【0038】
次に、記録層13がいわゆる十字形状の場合、容易軸方向の反転磁場Hcが大きくなる条件について考える。この考察では、上述した形状Xを用いる。
【0039】
図5は、本発明の実施例1に係る形状Xが取り得る残留磁区状態と容易軸方向に磁場を印加した際の磁区状態を示す。ここで、図5の実線矢印は、膜面内の磁化の向きを模式的に表している。
【0040】
図5に示すように、形状Xは、180度回転対称性及び鏡映対称性を有するために、S型磁区及びC型磁区の2つの残留磁区状態を取り得る。
【0041】
まず、S型残留磁区の場合は、容易軸方向に磁場を印加すると、中央部分に突き出した突出部10b,10cがあるために生じる困難軸方向への磁気異方性と、端部における磁化が同じ方向を向いているために生じる静磁エネルギーとの関係から、系全体のエネルギーを下げるために素子中央部における磁化は端部磁区に対して逆方向を向く(図5中実線)。それに伴い、図5中の点線で示すような2つのC型磁区が生じる。一般に、C型磁区はエネルギー的に安定であるため、容易軸の反転磁場はC型磁区ができない場合に比べて格段に大きな値をとる。
【0042】
一方、C型残留磁区の場合は、突き出した突出部10a,10bによる困難軸方向への異方性は付与されるが、両端部の磁化の向きが異なっている。このため、S型残留磁区の場合と異なり、図5中の点線で示すような1つのC型磁区しか現れず、磁場HcはS型残留磁区状態に比べて小さくなる。
【0043】
以上から、記録層13がいわゆる十字形状で磁場Hcを十分大きくする条件は、S型の残留磁区状態をとることであると結論される。
【0044】
次に、S型残留磁区状態のみが安定化される条件を考える。
【0045】
一般に強磁性体の残留磁区状態は、磁気モーメント間に働く交換磁気相互作用と、面内形状端部に生ずる磁極がもつ静磁エネルギーにより決定される系全体のエネルギーを最小にするようにして決定される。S型磁区とC型磁区のどちらが安定化するかは膜面内形状の対称性と関係している。
【0046】
図6(a)及び(b)は、本発明の実施例1に係る形状Sにおいて、S型残留磁区状態とC型残留磁区状態を仮定した場合の模式図を示す。
【0047】
図6(b)に示すように、C型残留磁区状態を仮定すると、図中点線で示した領域で大きな磁極が現れ、静磁エネルギーが上昇する。一方、図6(a)に示すように、S型残留磁区状態では、磁区と形状の対称性が同一であるために、点線で示した領域ではほぼ磁極が生じず、静磁エネルギーは上昇しない。従って、形状Sでは、S型残留磁区のみを安定にもつと考えられる。
【0048】
尚、図3の形状CではC型残留磁区が安定化され、図3の形状XではS型残留磁区とC型残留磁区の両方の残留磁区が安定に存在するため、これら形状X及びCではS型残留磁区状態のみをもつ条件を満たさない。
【0049】
以上をまとめると、本発明の実施例1に係るMTJ素子10は、いわゆる十字形状で、180度回転対称性を有し、かつ鏡映対称性を有しない形状にすることが望ましいと言える。これにより、容易軸方向の反転磁場Hcが書き込み点における反転磁場Hswに対して十分大きく、書き込みマージンが大きい素子を歩留まり良く得ることが可能である。
【0050】
(実施例2)
図7は、本発明の実施例2に係るMTJ素子の形状S1の平面図を示す。以下に、実施例2のMTJ素子の形状S1について説明する。
【0051】
図7に示すように、実施例2のMTJ素子10の形状S1は、上記実施例1と同様に、いわゆる十字形状であって、180度回転対称性を有し、かつ、鏡映対称性を有しない。
【0052】
延在部10aは、曲線状の第1乃至第4の端部e1,e2,e3,e4を有している。第1及び第3の端部e1,e3は第1の対角線D1上に位置し、第2及び第4の端部e2,e4は第2の対角線D2上に位置する。そして、第1及び第3の端部e1,e3は、第2及び第4の端部e2,e4より欠けている。換言すると、第1及び第3の端部e1,e3の曲率半径は、第2及び第4の端部e2,e4の曲率半径より大きい。尚、第1及び第3の端部e1,e3の曲率半径はほぼ同じであり、第2及び第4の端部e2,e4の曲率半径はほぼ同じである。
【0053】
ここで、実施例2において、上記実施例1と異なる点は、延在部10aの磁化容易軸方向における端部の両側面f1,f2が磁化困難軸方向に対して同一方向に同じ角度で傾いたほぼ直線で形成されている点である。従って、実施例2の延在部10aは、平行四辺形に近い形状になっている。
【0054】
図8は、本発明の実施例1及び2に係る形状S,S1のMTJ素子のアステロイド特性の実験結果の比較図を示す。
【0055】
図8に示すように、実施例2の形状S1についても、上記対称性に対する条件が満たされているため、残留状態がS磁区状態で安定化し、磁場Hswに比較して磁場Hcが十分に大きいアステロイド特性が得られ、書き込みマージンが大きいことが分かる。
【0056】
(実施例3)
図9は、本発明の実施例3に係るMTJ素子の形状S2の平面図を示す。以下に、実施例3のMTJ素子の形状S2について説明する。
【0057】
図9に示すように、実施例3のMTJ素子10の形状S2は、上記実施例1と同様に、いわゆる十字形状であって、180度回転対称性を有し、かつ、鏡映対称性を有しない。
【0058】
延在部10aは、第1乃至第4の端部e1,e2,e3,e4を有している。第1及び第3の端部e1,e3は第1の対角線D1上に位置し、第2及び第4の端部e2,e4は第2の対角線D2上に位置する。
【0059】
ここで、実施例3において、実施例1と異なる点は、第1及び第3の端部e1,e3は、第2及び第4の端部e2,e4より大きく欠けている点である。つまり、実施例1における形状Sでは第1及び第3の端部e1,e3が曲線状に欠けているのに対し、実施例3における形状S2では第1及び第3の端部e1,e3が直線状に欠けている。この第1及び第3の端部e1,e3の直線は、磁化容易軸方向及び磁化困難軸方向に対して同じ角度だけ傾いている。
【0060】
図10は、本発明の実施例1及び3に係る形状S,S2のMTJ素子のアステロイド特性の実験結果の比較図を示す。
【0061】
図10に示すように、形状S,S2は異なるものの、両者のアステロイド特性に大きな変化は見られず、延在部10aの端部を上述する対称性の定義に従い非対称に欠けさせれば、磁場Hswに比較して磁場Hcが十分に大きいアステロイド特性が得られ、書き込みマージンが大きいことが分かる。
【0062】
(実施例4)
図11は、本発明の実施例4に係るMTJ素子の平面図を示す。以下に、実施例4のMTJ素子について説明する。
【0063】
図11に示すように、実施例4では、延在部10aの磁化容易軸方向の最大幅をL、延在部10aの磁化困難軸方向の最大幅をWとし、L/Wを規定する。本実施例において、幅Lは、最大幅Wの中点を通る直線で規定される。尚、ここでは、形状S1のMTJ素子10を用いている。
【0064】
図12は、本発明の実施例4に係るMTJ素子における磁場HcのL/W依存性の測定結果を示す。ここでは、L/W=2,3,3.5の場合の形状を参考のため示している。また、Hcは、L/Wが3の形状がもつ容易軸反転磁場Hc0で規格化してある。以下に、磁場HcのL/W依存性について説明する。
【0065】
図12に示すように、L/Wが3.3より大きくなると急激にHcが減少しており、逆にL/Wが3.3より小さい範囲ではHcは殆ど変化しない。従って、L/Wを3.3より小さい形状にすることで、形状作成時にL/Wが多少変化しても磁場Hcの特性変化が小さく、安定して書き込みマージンが大きい素子を得られることが分かる。
【0066】
以上より、L/Wは、以下の式(1)の関係を満たすことが望ましい。尚、形状異方性を利用して磁化容易軸方向を規定することを考慮すると、延在部10aが正方形とならないようにL/Wは1より大きいことが望ましい。
【0067】
L/W<3.3…(1)
ここで、磁化容易軸方向の製造ばらつきの抑制を考慮した場合、例えば、式(2)、(3)のように規定することも可能である。
【0068】
2<L/W<3.3…(2)
2<L/W<3…(3)
尚、ここでは、前記形状S1を基準とした場合に得られたL/W依存性の実験例を示したが、形状S及び形状S2を基準とした形状についても同様にL/Wが3.3より小さい形状では、Hcの変化が小さく安定した特性が得られる。
【0069】
(実施例5)
図13は、本発明の実施例5に係るMTJ素子の平面図を示す。以下に、実施例5のMTJ素子について説明する。
【0070】
図13に示すように、実施例5では、延在部10aの磁化困難軸方向の最大幅をW、突出部10b,10cの磁化困難軸方向の最大幅をAとし、A/Wを規定する。尚、ここでは、形状S1のMTJ素子10を用いている。
【0071】
図14は、本発明の実施例5に係るMTJ素子における磁場HcのA/W依存性の測定結果を示す。ここでは、L/W=0,1/7,1/2の場合の形状を参考のため示している。また、Hcは、A/Wが1/7の形状がもつ容易軸反転磁場Hc0で規格化してある。以下に、磁場HcのA/W依存性について説明する。
【0072】
図14に示すように、A/Wが1/8の近傍でHcが急激に減少しており、A/Wが1/8より大きい範囲ではHcは殆ど変化しない。従って、A/Wが1/8よりも大きい形状であれば、Hcの特性変化が小さく、安定して書き込みマージンが大きい素子が得られることが分かる。
【0073】
以上より、A/Wは、以下の式(4)の関係を満たすことが望ましい。
【0074】
1/8<A/W…(4)
ここで、製造ばらつきの低減を考慮した場合、例えば、式(5)、(6)のように規定することも可能である。また、A/Wの上限値は、[A+(W/2)]<L/2を基準として求めることも可能である。
【0075】
1/7<A/W…(5)
1/4<A/W<1/3…(6)
尚、ここでは、前記形状S1を基準とした場合に得られたA/W依存性の実験例を示したが、形状S及び形状S2を基準とした形状についても同様にA/Wが1/8より大きい形状では、Hcの変化が小さく安定した特性が得られる。
【0076】
(実施例6)
図15は、本発明の実施例6に係るMTJ素子の平面図を示す。以下に、実施例6のMTJ素子について説明する。
【0077】
図15に示すように、実施例6では、上記形状S1のように延在部10aの磁化容易軸方向の端部の側面f1,f2が直線L2で形成される場合において、磁化容易軸方向の線L1と側面f1,f2(直線L2)とがなす角度φを規定する。
【0078】
図16(a)は、本発明の実施例6に係るMTJ素子におけるアステロイド特性の測定結果を示し、図16(b)は、本発明の実施例6に係るMTJ素子における磁場Hcのφ依存性の測定結果を示し、図16(c)は、本発明の実施例6に係るMTJ素子における第1及び第2象限のφ依存性を示す。また、Hcについては、φが75°の形状で得られるHcで規格化してある。以下に、アステロイド特性及びHcのφ依存性について説明する。
【0079】
図16(a)及び図16(b)から、φが90°より小さくなるとHcが急激に大きくなることが分かる。また、図16(a)から、φが小さくなるにつれて系統的に第1象限と第2象限のアステロイド特性が非対称性になる。そこで、図16(c)から、第1象限と第2象限のHsw/Hcの比が十分小さい領域を見積もると、φが75°以上で90°より小さい範囲であることが分かる。
【0080】
以上の結果から、形状S1においては、式(7)に示すように、磁化容易軸と側面f1,f2がなす角度φを75°以上で90°より小さい形状とすることで、Hsw/Hcの比が十分小さい特性が安定して得られることが分かる。
【0081】
75°≦φ<90°…(7)
(実施例7)
上記実施例6(図15)では、延在部10aの磁化容易軸方向の端部の側面f1,f2が直線の場合における角度φを規定したが、実施例7では、延在部10aの磁化容易軸方向の端部の側面f1,f2が曲線の場合における角度φを規定する。
【0082】
図17は、本発明の実施例7に係るMTJ素子の平面図を示す。以下に、実施例7のMTJ素子について説明する。
【0083】
図17に示すように、延在部10aの磁化容易軸方向の端部の側面f1,f2が曲線で形成される場合、次のように角度φを規定するとよい。
【0084】
まず、MTJ素子10の十字形状の中央部付近における磁化困難軸方向の最大幅W’を2等分する位置に、磁化容易軸とほぼ平行な線L1を引く。この線Lが十字形状と交差する点をBとし、この点Bにおける曲線の接線L2を引く。そして、線L1と接線L2とのなす角をφと定義する。
【0085】
尚、このように角度φを規定した場合も、上記式(7)の関係を満たすことで、Hsw/Hcの比が十分小さい特性が安定して得られる。
【0086】
(実施例8)
上記第4及び第5の実施例(図11及び図13)等において幅Wを規定するが、実施例8では、突出部10b,10cの根元部分のコーナーが丸まっている場合の幅Wの規定方法について説明する。
【0087】
図18は、本発明の実施例8に係るMTJ素子の平面図を示す。以下に、実施例8のMTJ素子について説明する。
【0088】
図18に示すように、突出部10b,10cの根元部分のコーナーが丸まっている場合、幅Wは次のように規定するとよい。
【0089】
まず、突出部10b,10cの根元部分において、曲線上の点で微分係数の絶対値が極小となる点をA,A’とする。延在部10aの磁化容易軸方向における両端部上に点B,B’をとり、磁化容易軸に平行な線L1(線分BB’)を引く。さらに、点A,A’を通り、線L1に平行な線L3,L4を引く。そして、この2つの線L3,L4の間隔を幅Wと規定する。
【0090】
また、突出部10b,10cの幅Aは、上述する線L3,L4と突出部10b,10cの頂点との幅で規定するとよい。
【0091】
尚、このように幅W,Aを規定した場合も、上記式(1)乃至(6)の関係を満たすことで、Hcの特性変化が小さく、安定して書き込みマージンが大きい素子が得られる。
【0092】
(実施例9)
実施例9は、MTJ素子10の形状が180度回転対称性及び鏡映対称性を有しないものであるが、S型磁区が安定する形状とすることで、上記各実施例と同様の効果を得るものである。
【0093】
図19(a)及び(b)は、本発明の実施例9に係るMTJ素子の平面図を示す。以下に、実施例9のMTJ素子について説明する。
【0094】
図19(a)及び(b)に示すように、実施例9のMTJ素子10は、延在部10aの磁化容易軸方向における両側面f1,f2の形状が異なる。従って、同一の対角線上に位置する第2及び第4の端部e2,e4の角張り方(曲率半径)が異なり、第4の端部e4が第2の端部e2よりとがっている。
【0095】
尚、実際にMTJ素子10を形成した場合、図20に示す程度に端部e1,e2,e3,e4が曲がったり、突出部10b,10cの対称性が崩れたりしても、S型磁区を安定化することは可能である。
【0096】
その他、上記各実施例では、MTJ素子10の形状、角度φ、幅などを規定しているが、MTJ素子10の少なくとも記録層13が上記各実施例のようになっていればよい。すなわち、固定層11及び非磁性層12は、上記各実施例と異なっていてもよい。
【0097】
また、上記各実施例を用いて、種々の実施例を組み合わせることも可能である。
【0098】
また、MTJ素子10の平面形状は、X方向に延在する延在部10aと、この延在部10aの一方の側面の例えば中央付近からY方向に突出する突出部10bとで構成された、いわゆる凸型形状であってもよい。但し、この場合も、MTJ素子10の形状は、180度回転対称性を有し、かつ鏡映対称性を有しないことが望ましい。
【0099】
また、MTJ素子10はできるだけ十字形状に近づくように、突出部10b,10cは延在部10aの中央付近の側面から突出していることが望ましいが、突出部10b,10cが延在部10aに対して非対称な位置に設けられていてもよい。但し、この場合も、MTJ素子10の形状は、180度回転対称性を有し、かつ鏡映対称性を有しないことが望ましい。
【0100】
また、MTJ素子10の突出部10b,10cは、延在部10aの両側面にそれぞれ1つずつ設けることに限定されず、また、延在部10aの両側面に同じ数だけ必ずしも設ける必要はなく、延在部10aの一つの側面に複数の突出部が設けられていてもよい。但し、この場合は、MTJ素子10の延在部10aの形状は、180度回転対称性を有し、かつ鏡映対称性を有しないことが望ましい。
【0101】
また、MTJ素子10の平面形状は、180度回転対称性を有し、かつ鏡映対称性を有しないのであれば、延在部10aの端部e1,e2,e3,e4、突出部10b,10cの端部、さらに突出部10b,10cの根元部分は、角張っていても、丸まっていてもよい。
【0102】
また、磁化容易軸方向は、例えば、延在部10aの中央の磁化方向に基づいて規定されている。
【0103】
[1−2]製造方法
ここでは、上述する形状を有するMTJ素子の製造方法に関する実施例1乃至実施例3について説明する。
【0104】
一般に、MTJ素子の形成は、次のように行われる。まず、スパッタ法で素子膜の形成後にレジストを塗布する。光、電子ビーム、X線のいずれかを用いてパターンを形成し、現像してレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクとして、素子膜に対してイオンミリング又はエッチングを行い、所望パターンのMTJ素子を形成する。その後、レジストを剥離する。このような形成方法では、MTJ素子の膜面内形状を形成する工程は1回のみである。
【0105】
これに対し、以下に説明する各実施例では、MTJ素子の膜面内形状を形成する工程は、少なくとも2回である。つまり、延在部10aと突出部10b,10cとからなる十字形状を形成する工程と、180度回転対称性を持ち、同時に鏡映対称でない形状を形成する工程とを有する。以下に、具体的な実施例を説明する。
【0106】
(実施例1)
実施例1は、例えば上記形状S1(図7)のMTJ素子の作成方法である。
【0107】
図21(a)乃至(c)は、本発明の実施例1に係るMTJ素子の製造工程の平面図を示す。以下に、実施例1に係るMTJ素子の製造方法について説明する。
【0108】
まず、図21(a)に示すように、素子膜100及びマスク層200が順に堆積された後、磁化容易軸方向に延在する延在部10aとこの延在部10aの側面から磁化困難軸方向に突出する突出部10b,10cとからなる十字形状のマスク層200が形成され、このマスク層200を用いて素子膜100が前記十字形状にパターニングされる。(工程1)。その後、マスク層200が剥離される。
【0109】
次に、図21(b)に示すように、延在部10aの磁化容易軸方向における側面に対して傾いた直線をもつレジストパターン300が作成され、このレジストパターン300をマスクとして延在部10aの端部形状が加工される(工程2)。その後、レジストパターン300が剥離される。
【0110】
このようにして、図21(c)に示すように、180度回転対称性を有し、かつ鏡映対称性を有しない形状S1のMTJ素子10が完成する。
【0111】
上記実施例1によれば、MTJ素子10の形状加工に2回の工程を用いることで、磁場Hswに対して磁場Hcが十分に大きな素子を、歩留まり良く安定して作成することが可能になる。
【0112】
(実施例2)
実施例2は、工程1において形成される延在部10aの磁化容易軸方向の幅Lが短く、工程2で用いるレジストパターン300の延在部10aに対する角度が実施例1とは異なる。この実施例2は、例えば上記形状S2(図9)のMTJ素子の作成方法である。
【0113】
図22(a)乃至(c)は、本発明の実施例2に係るMTJ素子の製造工程の平面図を示す。以下に、実施例2に係るMTJ素子の製造方法について説明する。
【0114】
まず、図22(a)に示すように、素子膜100及びマスク層200が順に堆積された後、磁化容易軸方向に延在する延在部10aとこの延在部10aの側面から磁化困難軸方向に突出する突出部10b,10cとからなる十字形状のマスク層200が形成され、このマスク層200を用いて素子膜100が前記十字形状にパターニングされる。(工程1)。その後、マスク層200が剥離される。
【0115】
次に、図22(b)に示すように、延在部10aの磁化容易軸方向における側面に対して傾いた直線をもつレジストパターン300が作成される。この際、素子膜100の磁化容易軸方向の端部の一部のみが除去されるように、レジストパターン300が配置される。そして、このレジストパターン300をマスクとして、延在部10aの端部形状が加工される(工程2)。その後、レジストパターン300が剥離される。
【0116】
このようにして、図22(c)に示すように、180度回転対称性を有し、かつ鏡映対称性を有しない形状S2のMTJ素子10が完成する。
【0117】
上記実施例2によれば、MTJ素子10の形状加工に2回の工程を用いることで、磁場Hswに対して磁場Hcが十分に大きな素子を、歩留まり良く安定して作成することが可能になる。さらに、磁化容易軸方向に延在する延在部10aの一方の対角線上に位置する端部e1,e3の角が、もう一方の対角線上の端部e2,e4の角に比べて大きく欠けている膜面内形状を安定して作成することが可能になる。
【0118】
尚、上記実施例1及び実施例2において、延在部10aに対して傾いた曲線をもつレジストパターン300を作成すれば、延在部10aの磁化容易軸方向の側面が丸まった形状にすることも可能である。
【0119】
また、上記実施例1及び実施例2では、十字形状のマスク層200を形成する→素子膜100を十字形状にする→延在部10aの端部を切るためのレジストパターン300を形成する→素子膜100の端部を切るという順番で形成したが、素子膜100の形状加工の工程を1回にすることも可能である。例えば、マスク層200を十字形状に作成した後、さらに、このマスク層200の磁化容易軸方向の端部をパターニングし、このマスク層200を用いて素子膜100を加工することで、工程1及び工程2を1回にまとめることも可能である。
【0120】
(実施例3)
実施例3では、突出部10bの困難軸方向の幅A1と突出部10cの困難軸方向の幅A2とを等しくすることが可能なMTJ素子の作成方法である。
【0121】
図23(a)乃至(e)は、本発明の実施例3に係るMTJ素子の製造工程の平面図を示す。以下に、実施例3に係るMTJ素子の製造方法について説明する。
【0122】
まず、図23(a)に示すように、素子膜100及びマスク層200が順に堆積される。次に、リソグラフィ及びRIE(Reactive Ion Etching)法を用いて、マスク層200が例えば平行四辺形に加工される。
【0123】
次に、図23(b)に示すように、例えばSiN膜からなる側壁層201が堆積される。その後、例えばRIE法を用いて、側壁層201がエッチングされる。これにより、マスク層200の側面の周囲に側壁層201が残る。
【0124】
次に、図23(c)に示すように、リソグラフィを用いて、例えば長方形のフォトレジスト202が形成される。
【0125】
次に、図23(d)に示すように、フォトレジスト202をマスクとして、このフォトレジスト202から露出した部分の側壁層201が除去される。これにより、マスク層200の側面の一部に、一対の側壁層201b,201cが形成される。その後、フォトレジスト202が剥離される。
【0126】
次に、図23(e)に示すように、側壁層201b,201c及びマスク層200を用いて、素子膜100が例えばRIEでエッチングされる。これにより、延在部10aと突出部10b,10cとを有する十字形状のMTJ素子10が自己整合的に形成される。
【0127】
上記実施例3によれば、MTJ素子10上にマスク層200を形成し、このマスク層200の側面に一対の側壁層201b,201cを形成した後、マスク層200及び側壁層201b,201cを用いて素子膜100の加工を行うことで、いわゆる十字形状のMTJ素子10を形成している。このため、突出部10b,10cは、側壁層201b,201cによって、延在部10aに対して自己整合的に形成することができる。従って、短軸方向(困難軸方向)に突出する突出部10b,10cの合わせずれが抑制でき、突出部10b,10cの幅A1,A2を等しくできる。これにより、アステロイド特性の向上を図ることができる。
【0128】
(実施例4)
実施例4は、上記実施例3の2ステップ・プロセスを応用した3ステップ・プロセスである。
【0129】
図25(a)乃至(f)は、本発明の実施例4に係るMTJ素子の製造工程の平面図を示す。以下に、実施例4に係るMTJ素子の製造方法について説明する。
【0130】
まず、図25(a)に示すように、1回目の光リソグラフィ及びエッチングステップを行い、複数個の記憶セルにまたがる長い直線部がハードマスク(例えば、SiO)301で形成される。このハードマスク301は、後にMTJ素子10の延在部10aを形成する(第1ステップ)。
【0131】
次に、図25(b)に示すように、ハードマスク301の側壁(サイドウォール)に絶縁層(例えば、SiN)302が形成される。
【0132】
次に、図25(c)及び(d)に示すように、2回目の光リソグラフィ及びエッチングステップを行い、フォトレジスト303のパターンをハードマスク301と絶縁層302に転写する。これにより、MTJ素子10の延在部10aの形状が決定される(第2ステップ)。
【0133】
次に、図25(e)及び(f)に示すように、3回目の光リソグラフィ及びエッチングステップを行い、フォトレジスト304のパターンをハードマスクとしての絶縁層302に転写する。この絶縁層302は、MTJ素子10の突出部10b,10cの形状を決定する(第3ステップ)。
【0134】
その後、ハードマスク301,302を用いてMTJ素子10のパターニングを行うと、MTJ素子10は、延在部10aの形状と突出部10b,10cの形状の両方が望ましい形に精度良く制御されたS十字形となる。
【0135】
上記実施例4によれば、MTJ素子10の延在部10aの形状と突出部10b,10cの形状の両方を精度良く作れるため、アストロイド曲線の特性が良く、かつそのばらつきが小さいMTJ素子10のアレイを得ることができる。
【0136】
尚、MTJ素子10の製造方法において、上記実施例1乃至実施例4を種々組み合わせることも可能である。
【0137】
[1−3]トンネル接合構造
上述したMTJ素子10は、図1(b)に示すように、トンネル接合層として機能する非磁性層12を1層有する1重トンネル接合構造でもよいが、これに限定されず、2重トンネル接合構造であってもよい。
【0138】
図25は、本発明の一実施形態に係る2重トンネル接合構造のMTJ素子の断面図を示す。以下に、2重トンネル接合構造のMTJ素子について説明する。
【0139】
図25に示すように、2重トンネル接合構造のMTJ素子10は、トンネル接合層として機能する非磁性層12−1,12−2を2層有する。従って、記録層13の一端には、第1の非磁性層12−1を介して第1の固定層11−1が設けられ、記録層13の他端には、第2の非磁性層12−2を介して第2の固定層11−2が設けられている。
【0140】
このような2重トンネル接合構造の場合、1重トンネル接合構造と比べて、1つのトンネル接合あたりのバイアス電圧が印加電圧の1/2になるので、バイアス電圧の増大に伴うMR(Magneto Resistive)比の減少を抑制できるという効果が得られる。
【0141】
[1−4]断面形状
上述したMTJ素子10は、図1(b)に示すように、固定層11、非磁性層12及び記録層13の全ての側面が連続的に一致する断面形状でもよいが、これに限定されず、これらの側面が非連続な断面形状であってもよい。
【0142】
図26(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る凸型の断面形状を有するMTJ素子の断面図を示す。以下に、MTJ素子の凸型の断面形状について説明する。
【0143】
図26(a)に示すように、1重トンネル接合構造のMTJ素子10の場合、記録層13の平面形状が固定層11及び非磁性層12の平面形状よりも小さくなっており、凸型の断面形状となっている。
【0144】
同様に、図26(b)に示すように、2重トンネル接合構造のMTJ素子10の場合、記録層13、第2の非磁性層12−2及び第2の固定層11−2の平面形状が第1の固定層11−1及び第1の非磁性層12−1の平面形状よりも小さくなっており、凸型の断面形状となっている。
【0145】
このような凸型の断面形状の場合、図1(b)の断面形状に比べて、固定層11と記録層13又は第1の固定層11−1と記録層13がショートすることを抑制できる。
【0146】
[1−5]層間交換結合構造
図27(a)乃至(h)は、本発明の一実施形態に係るMTJ素子の層間交換結合構造の断面図を示す。本発明の一実施形態に係るMTJ素子の構造は、以下のような層間交換結合構造であってもよい。
【0147】
図27(a)乃至(h)に示すように、MTJ素子10は、固定層11及び記録層13のうち少なくとも一方が、反強磁性結合構造又は強磁性結合構造となっていてもよい。ここで、反強磁性結合構造は、非磁性金属層を挟む2枚の強磁性層の磁化方向が反平行となるように層間交換結合した構造であり、強磁性結合構造は、非磁性金属層を挟む2枚の強磁性層の磁化方向が平行となるように層間交換結合した構造である。
【0148】
図27(a)に示すMTJ素子10は、記録層13が反強磁性結合構造となっている。すなわち、記録層13は、強磁性層13−f1/非磁性層13−n/強磁性層13−f2の3層からなり、強磁性層13−f1,13−f2の磁化方向が反平行状態となるように磁気結合している。
【0149】
図27(b)に示すMTJ素子10は、固定層11が反強磁性結合構造となっている。すなわち、固定層11は、強磁性層11−f1/非磁性層11−n/強磁性層11−f2の3層からなり、強磁性層11−f1,11−f2の磁化方向が反平行状態となるように磁気結合している。
【0150】
図27(c)に示すMTJ素子10は、記録層13が強磁性結合構造となっている。すなわち、記録層13は、強磁性層13−f1/非磁性層13−n/強磁性層13−f2の3層からなり、強磁性層13−f1,13−f2の磁化方向が平行状態となるように磁気結合している。
【0151】
図27(d)に示すMTJ素子10は、固定層11が強磁性結合構造となっている。すなわち、固定層11は、強磁性層11−f1/非磁性層11−n/強磁性層11−f2の3層からなり、強磁性層11−f1,11−f2の磁化方向が平行状態となるように磁気結合している。
【0152】
図27(e)に示すMTJ素子10は、記録層13及び固定層11の両方が反強磁性結合構造となっている。すなわち、記録層13は、強磁性層13−f1/非磁性層13−n/強磁性層13−f2の3層からなり、強磁性層13−f1,13−f2の磁化方向が反平行状態となるように磁気結合している。また、固定層11は、強磁性層11−f1/非磁性層11−n/強磁性層11−f2の3層からなり、強磁性層11−f1,11−f2の磁化方向が反平行状態となるように磁気結合している。
【0153】
図27(f)に示すMTJ素子10は、記録層13及び固定層11の両方が強磁性結合構造となっている。すなわち、記録層13は、強磁性層13−f1/非磁性層13−n/強磁性層13−f2の3層からなり、強磁性層13−f1,13−f2の磁化方向が平行状態となるように磁気結合している。また、固定層11は、強磁性層11−f1/非磁性層11−n/強磁性層11−f2の3層からなり、強磁性層11−f1,11−f2の磁化方向が平行状態となるように磁気結合している。
【0154】
図27(g)に示すMTJ素子10は、記録層13が反強磁性結合構造となっており、固定層11が強磁性結合構造となっている。すなわち、記録層13は、強磁性層13−f1/非磁性層13−n/強磁性層13−f2の3層からなり、強磁性層13−f1,13−f2の磁化方向が反平行状態となるように磁気結合している。また、固定層11は、強磁性層11−f1/非磁性層11−n/強磁性層11−f2の3層からなり、強磁性層11−f1,11−f2の磁化方向が平行状態となるように磁気結合している。
【0155】
図27(h)に示すMTJ素子10は、記録層13が強磁性結合構造となっており、固定層11が反強磁性結合構造となっている。すなわち、記録層13は、強磁性層13−f1/非磁性層13−n/強磁性層13−f2の3層からなり、強磁性層13−f1,13−f2の磁化方向が平行状態となるように磁気結合している。また、固定層11は、強磁性層11−f1/非磁性層11−n/強磁性層11−f2の3層からなり、強磁性層11−f1,11−f2の磁化方向が反平行状態となるように磁気結合している。
【0156】
上記のように、固定層11及び記録層13の少なくとも一方が層間交換結合したMTJ素子10によれば、固定層11及び記録層13が単層の場合に比べて、漏れ磁場を低減することができる。
【0157】
尚、図27(a)乃至(h)では、1重トンネル接合構造のMTJ素子10を例にあげて説明したが、2重トンネル接合構造のMTJ素子10にも勿論適用できる。また、固定層11及び記録層13は、強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層からなることに限定されず、さらに層数を増やすことも可能である。また、固定層11及び記録層13は、複数の強磁性体からなる積層で形成されてもよい。
【0158】
[1−6]材料
固定層11及び記録層13の材料には、次のような強磁性材料が用いられる。例えば、Fe,Co,Ni、それらの積層膜、又はそれらの合金、スピン分極率の大きいマグネタイト、CrO,RXMnO−Y(R;希土類、X;Ca,Ba,Sr)などの酸化物の他、NiMnSb,PtMnSbなどのホイスラー合金などを用いることが好ましい。また、これら磁性体には、強磁性を失わないかぎり、Ag,Cu,Au,Al,Mg,Si,Bi,Ta,B,C,O,N,Pd,Pt,Zr,Ir,W,Mo,Nbなどの非磁性元素が多少含まれていてもよい。
【0159】
反強磁性層14の材料には、例えば、Fe−Mn,Pt−Mn,Pt−Cr−Mn,Ni−Mn,Ir−Mn,NiO,Feなどを用いることが好ましい。
【0160】
非磁性層12の材料には、例えば、Al,SiO,MgO,AlN,Bi,MgF,CaF,SrTiO,AlLaOなどの様々な誘電体を使用することができる。これらの誘電体には、酸素、窒素、フッ素欠損が存在していてもかまわない。
【0161】
上述する層間交換結合構造の場合、2枚の強磁性層で挟む非磁性金属層の材料としては、例えば、Cu,Au,Ru,Al等の通常用いられる非磁性金属材料が望ましい。
【0162】
[2]磁気ランダムアクセスメモリ
次に、本発明の一実施形態に係る磁気ランダムアクセスメモリについて説明する。
【0163】
上述した種々のMTJ素子10は、磁気ランダムアクセスメモリにおけるメモリセルの記憶素子として用いるのに好適である。一般に、磁性体を記録層として用いる磁気ランダムアクセスメモリでは、隣接セルへの誤書き込みがなく、メモリセルを微細化した場合においても、記録情報を長期間保持するために熱的に安定な記録層をもつことが必要になる。そこで、上述したMTJ素子10を用いることにより、スイッチング磁場を低減でき、かつ熱揺らぎ定数が十分大きなメモリセルを提供できるため、記憶ビットの書き込みの際に必要な書き込み電流が小さくできる。
【0164】
尚、ここでは、磁気ランダムアクセスメモリのメモリセル構造の一例である、[2−1]選択トランジスタ型、[2−2]選択ダイオード型、[2−3]クロスポイント型のセルについて説明する。
【0165】
[2−1]選択トランジスタ型
図28(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る磁気ランダムアクセスメモリの選択トランジスタ型のメモリセルを示す。以下に、選択トランジスタ型におけるセル構造について説明する。
【0166】
図28(a)及び(b)に示すように、選択トランジスタ型の1セルMCは、1つのMTJ素子10と、このMTJ素子10につながるトランジスタ(例えばMOSトランジスタ)Trと、ビット線(BL)28と、書き込みワード線(WWL)26とを含んで構成されている。そして、このメモリセルMCをアレイ状に複数個配置することで、メモリセルアレイMCAを構成する。
【0167】
具体的には、MTJ素子10の一端は、ベース金属層27、コンタクト24a,24b,24c及び配線25a,25bを介して、トランジスタTrの電流経路の一端(ドレイン拡散層23a)に接続されている。一方、MTJ素子10の他端は、ビット線28に接続されている。MTJ素子10の下方には、MTJ素子10と電気的に分離された書き込みワード線26が設けられている。トランジスタTrの電流経路の他端(ソース拡散層23b)は、コンタクト24d及び配線25cを介して、例えばグランドに接続されている。トランジスタTrのゲート電極22は、読み出しワード線(RWL)として機能する。
【0168】
尚、ベース金属層27側のMTJ素子10の一端は、例えば固定層11であり、ビット線28側のMTJ素子10の他端は、例えば記録層13であるが、その逆の配置でも勿論よい。また、MTJ素子10とビット線28との間に、例えばハードマスクが介在してもよい。また、MTJ素子10は、磁化容易軸方向を書き込み配線の延在方向に対して種々の向きに配置することが可能であり、例えば、ビット線28の延在方向に磁化容易軸方向を向けて配置することも可能であるし、ワード線26の延在方向に磁化容易軸方向を向けて配置することも可能であるし、さらに、ビット線28及びワード線26の延在方向に対して磁化容易軸方向を例えば45度傾けて配置することも可能である。
【0169】
上記のような選択トランジスタ型のメモリセルにおいて、データの書き込み/読み出しは、以下のように行われる。
【0170】
まず、書き込み動作は、次のように行われる。複数のMTJ素子10のうち選択されたMTJ素子10に対応するビット線28及び書き込みワード線26が選択される。この選択されたビット線28及び書き込みワード線26に書き込み電流Iw1,Iw2をそれぞれ流すと、これら書き込み電流Iw1,Iw2による合成磁界HがMTJ素子10に印加される。これにより、MTJ素子10の記録層13の磁化を反転させ、固定層11及び記録層13の磁化方向が平行となる状態又は反平行となる状態をつくる。ここで、例えば、平行状態を“1”状態、反平行状態を“0”状態と規定することで、2値のデータの書き込みが実現する。
【0171】
次に、読み出し動作は、読み出し用スイッチング素子として機能するトランジスタTrを利用して、次のように行われる。選択されたMTJ素子10に対応するビット線28及び読み出しワード線(RWL)を選択し、MTJ素子10の非磁性層12をトンネルする読み出し電流Irを流す。ここで、接合抵抗値は固定層11及び記録層13の磁化の相対角の余弦に比例して変化し、MTJ素子10の磁化が平行状態(例えば“1”状態)の場合は低抵抗となり、反平行状態(例えば“0”状態)の場合は高抵抗となる、トンネル磁気抵抗(TMR)効果が得られる。このため、この抵抗値の違いを読み取ることで、MTJ素子10の“1”、“0”状態を判別する。
【0172】
[2−2]選択ダイオード型
図29(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る磁気ランダムアクセスメモリの選択ダイオード型のメモリセルを示す。以下に、選択ダイオード型におけるセル構造について説明する。
【0173】
図29(a)及び(b)に示すように、選択ダイオード型の1セルMCは、1つのMTJ素子10と、このMTJ素子10につながるダイオードDと、ビット線(BL)28と、ワード線(WL)26とを含んで構成されている。そして、このメモリセルMCをアレイ状に複数個配置することで、メモリセルアレイMCAを構成する。
【0174】
ここで、ダイオードDは、例えばPN接合ダイオードであり、P型半導体層とN型半導体層とで構成されている。このダイオードDの一端(例えばP型半導体層)は、MTJ素子10に接続されている。一方、ダイオードDの他端(例えばN型半導体層)は、ワード線26に接続されている。そして、図示する構造では、ビット線28からワード線26へ電流が流れるようになっている。
【0175】
尚、ダイオードDの配置箇所や向きは、種々に変更することが可能である。例えば、ダイオードDは、ワード線26からビット線28へ電流が流れる向きに配置してもよい。また、ダイオードDは、半導体基板21内に形成することも可能である。また、ダイオードDは、MTJ素子10と同じ形状(例えばいわゆる十字型)にすることも可能である。
【0176】
上記のような選択ダイオード型のメモリセルにおいて、データの書き込み動作は、上記選択トランジスタ型と同様で、ビット線28及びワード線26に書き込み電流Iw1,Iw2を流して、MTJ素子10の磁化を平行又は反平行状態にする。
【0177】
一方、データの読み出し動作も、上記選択トランジスタ型とほぼ同じであるが、選択ダイオード型の場合、ダイオードDを読み出し用スイッチング素子として利用する。すなわち、ダイオードDの整流性を利用し、非選択のMTJ素子は逆バイアスとなるようにビット線28及びワード線26のバイアスを制御し、選択したMTJ素子10にのみ読み出し電流Irが流れるようにする。
【0178】
[2−3]クロスポイント型
図30(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る磁気ランダムアクセスメモリのクロスポイント型のメモリセルを示す。以下に、クロスポイント型におけるセル構造について説明する。
【0179】
図30(a)及び(b)に示すように、クロスポイント型の1セルMCは、1つのMTJ素子10と、ビット線28と、ワード線26とを含んで構成されている。そして、このメモリセルMCをアレイ状に複数個配置することで、メモリセルアレイMCAを構成する。
【0180】
具体的には、MTJ素子10は、ビット線28及びワード線26の交点付近に配置され、MTJ素子10の一端はワード線26に接続され、MTJ素子10の他端はビット線28に接続されている。
【0181】
上記のようなクロスポイント型のメモリセルにおいて、データの書き込み動作は、上記選択トランジスタ型と同様で、ビット線28及びワード線26に書き込み電流Iw1,Iw2を流して、MTJ素子10の磁化を平行又は反平行状態にする。一方、データの読み出し動作は、選択されたMTJ素子10に接続するビット線28及びワード線26に読み出し電流Irを流すことで、MTJ素子10のデータを読み出す。
【0182】
以上、上記本発明の一実施形態によるMTJ素子10及びこのMTJ素子10を備えた磁気ランダムアクセスメモリによれば、次のような効果を得ることができる。
【0183】
MTJ素子10の少なくとも記録層13をいわゆる十字形状とし、延在部10aの端部形状を変化させることで、180度回転対称性を有し、かつ鏡映対称性を有しない平面形状としている。このため、S磁区状態を残留磁区状態として安定化し、良好な反転特性を歩留まりよく作成することができ、容易軸反転磁場Hcに比べてスイッチング磁場Hswを十分小さくできる。従って、隣接するメモリセルへの誤書込みを低減することができ、かつ熱安定性を向上することができる。
【0184】
その他、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で、種々に変形することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】図1(a)及び(b)は、本発明の実施例1に係るMTJ素子の形状Sを示す平面図及び断面図。
【図2】本発明の実施例1に係るMTJ素子の形状Sの180度回転対称性及び鏡映対称性を説明するための図。
【図3】本発明の実施例1に係るMTJ素子の形状S,X,Cの180度回転対称性及び鏡映対称性を説明するための図。
【図4】本発明の実施例1に係る形状S,X,CのMTJ素子のアステロイド特性を示す比較図。
【図5】本発明の実施例1に係る状Xが取り得る残留磁区状態と容易軸方向に磁場を印加した際の磁区状態を示す図。
【図6】図6(a)及び(b)は、本発明の実施例1に係る形状Sにおいて、S型残留磁区状態とC型残留磁区状態を仮定した場合の模式図。
【図7】本発明の実施例2に係るMTJ素子の形状S1を示す平面図。
【図8】本発明の実施例1及び2に係る形状S,S1のMTJ素子のアステロイド特性の実験結果を示す比較図。
【図9】本発明の実施例3に係るMTJ素子の形状S2を示す平面図。
【図10】本発明の実施例1及び3に係る形状S,S2のMTJ素子のアステロイド特性の実験結果を示す比較図。
【図11】本発明の実施例4に係るMTJ素子を示す平面図。
【図12】本発明の実施例4に係るMTJ素子における磁場HcのL/W依存性の測定結果を示す図。
【図13】本発明の実施例5に係るMTJ素子を示す平面図。
【図14】本発明の実施例5に係るMTJ素子における磁場HcのA/W依存性の測定結果を示す図。
【図15】本発明の実施例6に係るMTJ素子を示す平面図。
【図16】図16(a)は、本発明の実施例6に係るMTJ素子におけるアステロイド特性の測定結果を示す図、図16(b)は、本発明の実施例6に係るMTJ素子における磁場Hcのφ依存性の測定結果を示す図、図16(c)は、本発明の実施例6に係るMTJ素子における第1及び第2象限のφ依存性を示す図。
【図17】本発明の実施例7に係るMTJ素子を示す平面図。
【図18】本発明の実施例8に係るMTJ素子を示す平面図。
【図19】図19(a)及び(b)は、本発明の実施例9に係るMTJ素子を示す平面図。
【図20】本発明の実施例9に係る他のMTJ素子を示す平面図。
【図21】図21(a)乃至(c)は、本発明の実施例1に係るMTJ素子の製造工程を示す平面図。
【図22】図22(a)乃至(c)は、本発明の実施例2に係るMTJ素子の製造工程を示す平面図。
【図23】図23(a)乃至(e)は、本発明の実施例3に係るMTJ素子の製造工程を示す平面図。
【図24】図24(a)乃至(f)は、本発明の実施例4に係るMTJ素子の製造工程を示す平面図。
【図25】本発明の一実施形態に係る2重トンネル接合構造のMTJ素子を示す断面図。
【図26】図26(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る凸型の断面形状を有するMTJ素子を示す断面図。
【図27】図27(a)乃至(h)は、本発明の一実施形態に係るMTJ素子の層間交換結合構造を示す断面図。
【図28】図28(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る磁気ランダムアクセスメモリの選択トランジスタ型のメモリセルを示す図であり、図28(a)はメモリセルアレイを示す回路図、図28(b)は1セルを示す断面図。
【図29】図29(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る磁気ランダムアクセスメモリの選択ダイオード型のメモリセルを示す図であり、図29(a)はメモリセルアレイを示す回路図、図29(b)は1セルを示す断面図。
【図30】図30(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る磁気ランダムアクセスメモリのクロスポイント型のメモリセルを示す図であり、図30(a)はメモリセルアレイを示す回路図、図30(b)は1セルを示す断面図。
【図31】一般的な磁気ランダムアクセスメモリを示す概略図。
【図32】記録層磁化の反転特性を表すアステロイド曲線を示す図。
【符号の説明】
【0186】
10…MTJ素子、10a…延在部、10b,10c…突出部、11…固定層、12…非磁性層、13…記録層、14…反強磁性層、21…半導体基板、22…ゲート電極、23a…ドレイン拡散層、23b…ソース拡散層、24a,24b,24c,24d…コンタクト、25a,25b,25c…配線、26…ワード線、27…ベース金属層、28…ビット線、100…素子膜、200…マスク層、201,201b,201c…側壁層、202…フォトレジスト、300…レジストパターン、MC…メモリセル、MCA…メモリセルアレイ、Tr…トランジスタ、D…ダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化の向きが固定された磁化固定層と、
磁化の向きが変化する磁化自由層と、
前記磁化固定層及び前記磁化自由層間に設けられた非磁性層と
を具備する磁気抵抗効果素子であって、
前記磁化自由層は、第1の方向に延在する延在部と、前記延在部の側面の端部以外から前記第1の方向に対して垂直な第2の方向に突出する突出部とを有し、
前記磁化自由層の平面形状は、180度回転対称性を有し、かつ鏡映対称性を有しない
ことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
前記延在部の前記第1の方向における両端部は、前記第2の方向に対して同一方向に傾くことを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
前記延在部の前記第1の方向における前記両端部は、直線であることを特徴とする請求項2に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項4】
前記延在部の前記両端部の傾き方向と前記第1の方向とのなす角度がφの場合、75°≦φ<90°であることを特徴とする請求項2又は3の磁気抵抗効果素子。
【請求項5】
前記延在部は、第1の対角線上に位置する第1及び第3の端部と第2の対角線上に位置する第2及び第4の端部を有し、
前記第1及び第3の端部は前記第2及び第4の端部より欠けている
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項6】
前記第1及び第3の端部は、曲線状又は直線状に欠けていることを特徴とする請求項5に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項7】
前記延在部は、第1の対角線上に位置する第1及び第3の端部と第2の対角線上に位置する第2及び第4の端部を有し、
前記第1の端部の曲率半径は、前記第3の端部の曲率半径と等しく、
前記第2の端部の曲率半径は、前記第4の端部の曲率半径と等しく、
前記第1及び第3の曲率半径は、前記第2及び第4の曲率半径と異なる
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項8】
前記延在部の前記第1の方向における最大幅をLとし、前記延在部の前記第2の方向における最大幅をWとした場合、L/Wは3.3より小さいことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項9】
前記突出部の前記第2の方向における最大幅をAとし、前記延在部の前記第2の方向における最大幅をWとした場合、A/Wは1/8より大きいことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項10】
前記第1の方向は磁化容易軸の方向であり、前記第2の方向は磁化困難軸の方向であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項11】
前記延在部の平面形状は、180度回転対称性を有し、かつ鏡映対称性を有しないことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項12】
前記突出部は、前記延在部の前記側面の中央領域から前記第2の方向に突出することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項13】
前記請求項1乃至12のいずれか1項に記載の前記磁気抵抗効果素子を記録素子として具備することを特徴とする磁気ランダムアクセスメモリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2007−27424(P2007−27424A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−207628(P2005−207628)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】