説明

移動体装置、露光装置、デバイス製造方法、及び移動体の位置情報計測方法

【課題】レーザ干渉計システムの計測精度を向上させる。
【解決手段】基板ステージ装置には、基板Pが載置された微動ステージ21の位置情報を計測するためのX干渉計60Xから照射されるレーザビームL1、L2の光路の上方にエアガイド装置70が設けられている。エアガイド装置70は、X干渉計60Xから照射されるレーザビームL1,L2の上方に沿って配置されたガイド部材71の下面に気体を噴出し、その気体は、コアンダ効果によりガイド部材71の下面に付着した状態で、高速でレーザビームに平行に流れる。そして、高速で流れる気体に光路近傍の気体がベルヌーイ効果により引き寄せられることにより、その光路近傍の空気ゆらぎが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体装置、露光装置、デバイス製造方法、及び移動体の位置情報計測方法に係り、更に詳しくは、所定平面に平行な少なくとも一軸方向に移動可能な移動体を含む移動体装置、該移動体装置を含む露光装置、該露光装置を用いたデバイス製造方法、及び所定平面に平行な少なくとも一軸方向に移動可能な移動体の位置情報計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子、半導体素子(集積回路等)等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、マスク又はレチクル(以下、「マスク」と総称する)と、ガラスプレート又はウエハ(以下、「基板」と総称する)とを所定の走査方向(スキャン方向)に沿って同期移動させつつ、マスクに形成されたパターンをエネルギビームを用いて基板上に転写するステップ・アンド・スキャン方式の露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている。
【0003】
この種の露光装置は、基板を保持し、その基板をスキャン方向に案内する基板ステージを備えている。そして、基板ステージの位置情報は、レーザ干渉計を含む干渉計システムにより、基板ステージに設けられた反射面を用いて求められる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、近年、露光装置の露光対象である基板は、より大型化される傾向にあり、これに伴いレーザ干渉計から照射される測長ビーム、及びその反射面からの反射ビームの光路長が長くなっている。そして、測長ビーム、及び反射ビームは、光路長が長くなると、そのビーム(レーザ光)を伝播させるための媒質(例えば、空気)の屈曲率変動(空気ゆらぎなどと称される)の影響をより受け易くなり、干渉計システムの計測精度が低下するおそれがある。このため、従来、レーザ光の光路に対して、例えば上方から空気を吹き付けることにより、空気ゆらぎの発生を抑制するなどの対策が講じられていた。
【0005】
しかし、レーザ光の光路に大量の空気を吹き付けると、パーティクル(塵)が基板ステージ上の基板に付着することを避けるために、その大量の空気をフィルタなどを用いて濾過するなど、大掛かりな設備が必要であった。また、このような空調設備は、その設置スペースの確保が難しく、しかもコスト高になり、さらに振動や騒音が発生して露光装置の性能に悪影響を及ぼすおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,729,331号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の事情の下でなされたもので、第1の観点からすると、所定平面に平行な少なくとも一軸方向に移動可能な移動体と;前記移動体に設けられた反射面に前記一軸方向に平行な光路に沿って測長ビームを照射し、前記測長ビームの前記反射面からの反射ビームを受光して、前記移動体の前記一軸方向に関する位置情報を計測する位置計測系と;前記光路の近傍に前記光路に沿って配置され、前記光路近傍の気体をその表面に沿って案内するガイド部材と;を備える移動体装置である。
【0008】
これによれば、移動体の一軸方向に関する位置情報が、位置計測系により計測される。そして、移動体に照射される測長ビーム(及びその反射ビーム)の光路近傍の気体が、ガイド部材により、その光路に沿って案内される。従って、その案内される気体の流れにより、上記光路上の気体のゆらぎが抑制され、移動体の位置情報を高精度で計測できる。
【0009】
本発明は、第2の観点からすると、エネルギビームにより物体を露光する露光装置であって、前記物体が前記移動体上に載置される本発明の移動体装置と;前記物体にエネルギビームを照射して前記物体上にパターンを生成するパターン生成装置と;を備える露光装置である。
【0010】
これによれば、本発明の移動体装置を用いて物体の位置制御を行うので、その物体上に高精度でパターンを生成できる。
【0011】
本発明は、第3の観点からすると、本発明の露光装置を用いて前記物体を露光することと;前記露光された前記物体を現像することと;を含むデバイス製造方法である。
【0012】
本発明は、第3の観点からすると、移動体を所定平面に平行な少なくとも一軸方向に移動させる工程と:前記移動体に設けられた反射面に前記一軸方向に平行な光路に沿って測長ビームを照射し、前記測長ビームの前記反射面からの反射ビームを受光して、前記移動体の前記一軸方向に関する位置情報を計測する工程と:前記光路の近傍に前記光路に沿って配置され、前記光路近傍の気体をその表面に沿って案内する工程と;を含む移動体の位置情報計測方法である。
【0013】
これによれば、移動体の一軸方向に関する位置情報が、計測する工程により計測される。そして、案内する工程により、移動体に照射される測長ビーム(及びその反射ビーム)の光路近傍の気体が、その光路に沿って案内される。従って、その案内される気体の流れにより、上記光路上の気体のゆらぎが抑制され、移動体の位置情報を高精度で計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係る液晶露光装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】図1の液晶露光装置が有するエアガイド装置の拡大図である。
【図3】第2の実施形態に係る液晶露光装置が有するエアガイド装置の拡大図である。
【図4】第3の実施形態に係る液晶露光装置が有するエアガイド装置の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態について、図1及び図2に基づいて説明する。
【0016】
図1には、第1の実施形態に係る液晶露光装置10の概略構成が示されている。液晶露光装置10は、例えば液晶表示装置の表示パネルなどに用いられる矩形(角型)のガラス基板P(以下、単に基板Pと称する)を露光対象物とするステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。
【0017】
液晶露光装置10は、照明系IOP、マスクMを保持するマスクステージMST、投影光学系PL、上記マスクステージMST及び投影光学系PLなどが搭載されたボディ30、基板Pを保持する基板ステージ装置PST、及びこれらの制御系等を含んでいる。以下においては、露光時にマスクMと基板Pとが投影光学系PLに対してそれぞれ相対走査される方向をX軸方向とし、水平面内でこれに直交する方向をY軸方向、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0018】
照明系IOPは、例えば米国特許第5,729,331号明細書などに開示される照明系と同様に構成されている。すなわち、照明系IOPは、図示しない光源(例えば、水銀ランプ)から射出された光を、それぞれ図示しない反射鏡、ダイクロイックミラー、シャッター、波長選択フィルタ、各種レンズなどを介して、露光用照明光(照明光)ILとしてマスクMに照射する。照明光ILとしては、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)などの光(あるいは、上記i線、g線、h線の合成光)が用いられる。また、照明光ILの波長は、波長選択フィルタにより、例えば要求される解像度に応じて適宜切り替えることが可能になっている。
【0019】
マスクステージMSTには、回路パターンなどがそのパターン面(図1における下面)に形成されたマスクMが、例えば真空吸着(あるいは静電吸着)により固定されている。マスクステージMSTは、後述するボディ30の一部である鏡筒定盤31の上面に固定されたマスクステージガイド35上に、例えばエアベアリング36を介して非接触状態(浮上した状態)で搭載されている。マスクステージMSTは、例えばリニアモータを含むマスクステージ駆動系(図示省略)により、マスクステージガイド35上で、走査方向(X軸方向)に所定のストロークで駆動されるとともに、Y軸方向、及びθz方向にそれぞれ適宜微少駆動される。マスクステージMSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、マスクステージMSTが有する不図示の反射面に測長ビームを照射するレーザ干渉計を含むマスク干渉計システム37により計測される。
【0020】
投影光学系PLは、マスクステージMSTの図1における下方において、鏡筒定盤31に固定されている。投影光学系PLは、例えば米国特許第5,729,331号明細書に開示された投影光学系と同様に構成されている。すなわち、投影光学系PLは、レンズモジュールなどを含む光学系(鏡筒)を複数有し、その複数の光学系は、Y軸方向に沿って、いわゆる千鳥状に配列されている(マルチレンズ投影光学系とも称される)。複数の光学系それぞれとしては、例えば両側テレセントリックな等倍系で正立正像を形成するものが用いられている。前述の照明系IOPは、複数の光学系に対応した複数の照明光ILをそれぞれマスクMに照射するように構成されている。このため、マスクM上には、千鳥状に配置された複数の照明光ILの照明領域が形成されるとともに、投影光学系PLの下方に配置された基板P上には、複数の光学系それぞれに対応して、千鳥状に配置された複数の照明光ILの照射領域が形成される。液晶露光装置10では、基板P上に形成される複数の照射領域が合成されることにより、千鳥状に配置された複数の光学系から成る投影光学系PLが、Y軸方向を長手方向とする単一の長方形状(帯状)のイメージフィールドを持つ投影光学系と同等に機能する。
【0021】
このため、照明系IOPからの照明光ILによってマスクM上の照明領域が照明されると、マスクMを通過した照明光ILにより、投影光学系PLを介してその照明領域内のマスクMの回路パターンの投影像(部分正立像)が、投影光学系PLの像面側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布された基板P上の照明領域に共役な照明光ILの照射領域(露光領域)に形成される。そして、マスクステージMSTと基板ステージ装置PSTとの同期駆動によって、照明領域(照明光IL)に対してマスクMを走査方向(X軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域(照明光IL)に対して基板Pを走査方向(X軸方向)に相対移動させることで、基板P上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にマスクMのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系IOP及び投影光学系PLによって基板P上にマスクMのパターンが生成され、照明光ILによる基板P上の感応層(レジスト層)の露光によって基板P上にそのパターンが形成される。
【0022】
ボディBDは、基板ステージ架台32と、鏡筒定盤31とを有している。鏡筒定盤31は、XY平面に平行な平板状の部材から成り、前述したように投影光学系PLを支持している。基板ステージ架台32は、Y軸方向に延びる部材から成り、X軸方向に所定間隔で、例えば2つ設けられている。なお、2つの基板ステージ架台32のうち、−X側の基板ステージ架台32は、後述する干渉計ベース33を取り付けるためにY軸方向の中央部分が−X側に張り出している。2つの基板ステージ架台32それぞれは、Y軸方向の両端部が床面11上に設置された複数の防振装置34に下方から支持されており、床面11に対して振動的に分離されている。2つの基板ステージ架台32の+Y側の端部上、及び−Y側の端部上には、それぞれサイドコラム(図示省略)が搭載され、鏡筒定盤31は、そのサイドコラムによりY軸方向の両端部が下方から支持されている。これにより、ボディ30、及びボディ30に支持された投影光学系PLなどが、床面11に対して振動的に分離される。
【0023】
基板ステージ装置PSTは、基板ステージ架台32上に固定された定盤12と、X粗動ステージ23Xと、X粗動ステージ23X上に搭載され、X粗動ステージ23Xと共にXY二次元ステージ装置を構成するY粗動ステージ23Yと、Y粗動ステージ23Yの+Z側(上方)に配置された微動ステージ21と、定盤12上で微動ステージ21を下方から支持する重量キャンセル装置40と、微動ステージ21の位置情報を計測するステージ位置計測系とを備えている。
【0024】
定盤12は、例えば石材により形成された平面視で(+Z側から見て)矩形の板状部材から成り、その上面は、平面度が非常に高く仕上げられている。定盤12は、2つの基板ステージ架台32上に架け渡された状態で搭載されている。
【0025】
X粗動ステージ23Xは、平面視矩形の外形形状を有する枠形の部材から成り、その中央部にY軸方向を長手方向とする長孔状の開口部が形成されている。X粗動ステージ23Xは、Y軸方向に関して定盤12よりも長く形成されている。そして、X粗動ステージ23Xは、+Y側の端部、及び−Y側の端部が、それぞれ定盤12の+Y側、および−Y側に配置された一対のベースフレーム(図示省略)により下方から支持されている。不図示の一対のベースフレームは、2つの基板ステージ架台32、および定盤12それぞれに振動的に分離された状態(直接振動が伝達しない状態)で床面11上に固定されている。従って、X粗動ステージ23Xは、ボディ30および定盤12に対して振動的に分離されている。また、不図示の一対のベースフレームは、それぞれX粗動ステージ23XをX軸方向に直進案内するためのXリニアガイド部材、及びX粗動ステージ23Xを駆動するためのXリニアモータを構成するX固定子(例えば磁石ユニット)などを有している。
【0026】
これに対し、X粗動ステージ23Xは、それぞれ不図示ではあるが、上記Xリニアガイド部材にスライド可能に係合するスライダ、及びX固定子と共にXリニアモータを構成するX可動子(例えばコイルユニット)を有している。X粗動ステージ23Xは、Xリニアモータを含むX粗動ステージ駆動系により、不図示の一対のベースフレーム上でX軸方向に所定ストロークで直進駆動される。また、X粗動ステージ23Xの上面には、複数のYリニアガイド部材28がX軸方向に所定間隔で固定されている。また、不図示ではあるが、X粗動ステージ23Xの上面には、Y粗動ステージ23Yを駆動するためのYリニアモータを構成するY固定子(例えば磁石ユニット)が固定されている。
【0027】
Y粗動ステージ23Yは、X粗動ステージ23XよりもY軸方向の寸法が短い平面視で矩形の外形形状を有する枠形の部材から成り、その中央部に開口部が形成されている。Y粗動ステージ23Yの下面には、上述したYリニアガイド部材28にスライド可能に係合する複数のスライド部材29が固定されている。また、不図示ではあるが、Y粗動ステージ23Yの下面には、上述したY固定子と共にYリニアモータを構成するY可動子(例えば、コイルユニット)が固定されている。Y粗動ステージ23Yは、Yリニアモータを含むY粗動ステージ駆動系により、X粗動ステージ23X上でY軸方向に所定ストロークで駆動される。X粗動ステージ23X、及びY粗動ステージ23Yそれぞれの位置情報は、例えば不図示のリニアエンコーダシステムにより計測される。また、X粗動ステージ23XとY粗動ステージ23Yと間には、一対のケーブルキャリア装置26を介してケーブルが架設されている。なお、X粗動ステージ23X,Y粗動ステージ23YをそれぞれX軸方向、Y軸方向に駆動する駆動方式は、例えば送りねじによる駆動方式、あるいはベルト駆動方式などの他の方式であっても良い。また、X粗動ステージ23X、及びY粗動ステージ23Yそれぞれの位置情報は、例えば光干渉計システムなどの他の計測方法により求めても良い。
【0028】
微動ステージ21は、平面視ほぼ正方形の高さの低い直方体状の部材から成り、その上面に基板ホルダ27を介して基板Pを保持する。基板ホルダ27は、例えば図示しない真空吸着装置(又は静電吸着装置)を有しており、その上面に基板Pを吸着保持する。微動ステージ21の−Xの側面には、ミラーベース24Xを介してX軸に直交する反射面を有するX移動鏡(バーミラー)22Xが固定されている。また、不図示ではあるが、微動ステージ21の−Y側の側面には、ミラーベースを介してY軸に直交する反射面を有するY移動鏡(バーミラー)が固定されている。なお、ミラーベース24X上には、X移動鏡22Xの他に、例えば環境計測用の装置などが搭載されている。
【0029】
微動ステージ21は、Y粗動ステージ23Yに固定されたX固定子(例えば、コイルユニット)と、微動ステージ21に固定されたX可動子(例えば、磁石ユニット)とを含むローレンツ電磁力駆動方式のXボイスコイルモータ18Xにより、Y粗動ステージ23Y上でX軸方向に微少ストロークで駆動される。Xボイスコイルモータ18Xは、不図示ではあるが、Y軸方向に所定間隔で複数設けられている。また、不図示であるが、微動ステージ21は、Y粗動ステージ23Yに固定されたY固定子と、微動ステージ21に固定されたY可動子とを含むローレンツ電磁力駆動方式のYボイスコイルモータにより、Y粗動ステージ23Y上でY軸方向に微少ストロークで駆動される。Yボイスコイルモータは、X軸方向に所定間隔で複数設けられている。
【0030】
また、微動ステージ21は、Y粗動ステージ23Yに固定されたZ固定子と、微動ステージ21に固定されたZ可動子とを含むローレンツ電磁力駆動方式のZボイスコイルモータ18Zにより、Y粗動ステージ23Y上でZ軸方向に微少ストロークで駆動される。Zボイスコイルモータ18Zは、例えば微動ステージ21の四隅部に対応する位置に配置されている。以上の構成により、微動ステージ21は、投影光学系PL(図1参照)に対し、Y粗動ステージ23YとともにXY2軸方向に長ストロークで移動(粗動)可能、且つ6自由度方向(X軸、Y軸、Z軸、θx、θy、θzの各方向)に微少ストロークで移動(微動)可能となっている。また、微動ステージ21は、その下面側に後述するレベリング装置50と称される装置を有している
【0031】
重量キャンセル装置40は、Z軸方向に延設された柱状の部材から成り、心柱とも称される。重量キャンセル装置40は、X粗動ステージ23Xの開口部内、及びY粗動ステージ23Yの開口部内に挿入されている。重量キャンセル装置40は、レベリング装置50を介して微動ステージ21の中央部を下方から支持している。重量キャンセル装置40は、筐体41、空気ばね42、及びZスライダ43を有している。
【0032】
筐体41は、Z軸方向に開口する有底の筒状部材から成る。筐体41の底面には、気体静圧軸受の一種である複数のエアベアリング44が取り付けられている。重量キャンセル装置40は、複数のエアベアリング44(ベースパッドとも称される)により、定盤12上に非接触(浮上)状態で載置されている。また、筐体41は、板ばね(あるいは、ばね性を有しない薄い鋼板)を含む複数の連結装置45(フレクシャ装置とも称される)によりY粗動ステージ23Yに機械的に接続されている。連結装置45は、筐体41の+X側、−X側,+Y側,及び−Y側それぞれに設けられ、筐体41とY粗動ステージ23Yとを、重量キャンセル装置40のZ軸方向に関する重心付近の高さ位置(重心高さ)で接続している(ただし、筐体41の+Y側及び−Y側の連結装置45は図示省略)。筐体41は、Y粗動ステージ23Yに連結装置45を介して牽引されることにより、Y粗動ステージ23Yと一体的にX軸方向、及び/又はY軸方向に、水平面に平行に定盤上12を移動する。
【0033】
空気ばね42は、筐体41内の最下部に収容されている。空気ばね42の内部は、図示しない気体供給装置(例えば、コンプレッサ)から圧縮気体(例えば、空気)が供給されることにより、外部に比べて圧力の高い陽圧空間となっている。重量キャンセル装置40は、空気ばね42が発生する上向き(+Z方向)の力で、その支持対象物、具体的には、Zスライダ43、微動ステージ21(レベリング装置50を含む)、基板ホルダ27、基板Pなどから成る系の重量(重力加速度による下向き(−Z方向)の力)を打ち消すことにより、上述した複数のZボイスコイルモータ18Zの負荷を低減する。
【0034】
Zスライダ43は、筐体41の内部に収容された筒状の部材から成り、空気バネ42上に載置されている。重量キャンセル装置40は、Zボイスコイルモータ18Zにより駆動される微動ステージ21のZ軸方向に関する位置(Z位置)に応じて、適宜空気バネ42の内圧を変化させることにより、スライド部43を上下動させる。なお、空気ばね42のばね定数が小さい場合には、Zスライダ43の位置変化による発生力の変化も小さいので、空気ばね42の内圧を変化させなくても良い。
【0035】
レベリング装置50は、Zスライダ43の上部に取り付けられた不図示のエアベアリングにより下方から浮上支持されている。レベリング装置50は、例えばボールなどの転動体を含み、これにより微動ステージ21が重量キャンセル装置40にXY平面に対して揺動自在に支持される。
【0036】
微動ステージ21の重量キャンセル装置40に対するZ軸方向、θx、θy方向それぞれの位置情報(Z軸方向の移動量、及び水平面に対するチルト量)は、微動ステージ21の下面に固定された複数のレーザ変位センサ46(Zセンサとも称される)により、重量キャンセル装置40の筐体41にアーム部材を介して固定されたターゲット47を用いて求められる。
【0037】
ここで、ボディ30,基板ステージ装置PSTなどを含み、本実施形態の液晶露光装置10は、不図示のチャンバ内に収容されている。そして、液晶露光装置10は、チャンバ内の温度、湿度、大気圧などを制御する全体空調システムを有している。全体空調システムは、温度、湿度、気圧などが適宜調整され、かつHEPA(High Efficiency Particle Air)フィルタなどを用いて塵が除去された空気をチャンバ内で送風することにより、温度変化に起因する装置の変形を抑制したり、塵の基板Pへの付着を防止したり、干渉計システムの光路上の空気ゆらぎの発生を抑制する。本実施形態の全体空調システムは、基板ステージ装置PSTの近傍において、−X側から+X側に向けて温度などが調整された空気を送風している。なお、本明細書において、空気ゆらぎとは、空気の屈折率変動を意味し、例えば温度、気圧、水蒸気圧、CO濃度などの変化により発生する。
【0038】
次に、微動ステージ21のXY平面内の位置情報を計測するためのステージ位置計測系の構成について説明する。微動ステージ21のXY平面内の位置情報は、X移動鏡22X、及びY移動鏡(図示省略)それぞれに測長ビームを照射し、その反射光を受光するレーザ干渉計を含む基板干渉計システムによって、例えば0.5〜1nm程度の分解能で常時検出されている。レーザ干渉計システムは、X移動鏡22X、及びY移動鏡それぞれに対応したXレーザ干渉計60X、及び不図示のYレーザ干渉計を有している。なお、不図示のYレーザ干渉計は、鏡筒定盤31、あるいはボディ30を構成する不図示のサイドコラムに固定されている。
【0039】
Xレーザ干渉計60Xは、−X側の基板ステージ架台32上に一体的に固定された干渉計ベース33に固定されている。干渉計ベース33は、Y軸方向から見た側面視でL字状の部材から成る。Xレーザ干渉計60Xは、投影光学系PLの一部(例えば筐体)に固定されたX固定鏡61にX軸に平行なレーザビームL1(以下、参照ビームL1と称する)を照射するとともに、X移動鏡22Xに別のX軸に平行なレーザビームL2(以下、測長ビームL2と称する)を照射する。また、Xレーザ干渉計60Xは、参照ビームL1のX固定鏡61からの反射ビーム、及び測長ビームL2のX移動鏡22Xからの反射ビームの干渉に基づいて、X固定鏡61のX軸方向の位置(X位置)を基準とするX移動鏡22Xの反射面上における測長ビームL1の照射点のX位置を求める。Xレーザ干渉計60XからX固定鏡61に照射される参照ビームL1、及びそのX固定鏡61からの反射ビームの光路は、Xレーザ干渉計60XからX移動鏡22Xに照射される測長ビームL2、及びそのX移動鏡22Xからの反射ビームの光路よりも+Z側に設定されている。以下、参照ビームL1及びその反射ビーム、並びに測長ビームL2及びその反射ビームを、適宜まとめて測長用ビームと称して説明する。
【0040】
また、ステージ位置計測系は、上述した参照ビームL1、及び測長ビームL2の光路近傍の空気をその光路とほぼ平行な方向(すなわちX軸方向)に案内するエアガイド装置70を有している。エアガイド装置70は、図2に示されるように、ガイド部材71、ノズルユニット72、及びノズルユニット72に加圧気体(例えば空気)を供給する不図示の加圧気体供給装置(例えばコンプレッサ)を含む。
【0041】
ガイド部材71は、X軸方向に延びる矩形(帯状)の板状部材から成り、参照ビームL2(及びその反射ビーム)の光路の上方で鏡筒定盤31の下面に固定部材73を介して吊り下げ固定されている。ガイド部材71の下面は、XY平面にほぼ平行とされ、そのガイド部材71の下面に沿って流れる空気の流れを乱さない程度に滑らかに(空気を乱さないような表面荒さで)仕上げられている。ガイド部材71は、例えばステンレス鋼により形成されている。ガイド部材71は、+X側の端部がX固定鏡61の上方に位置し、−X側の端部がXレーザ干渉計60Xの上方に位置している。すなわち、ガイド部材71は、参照ビームL1の光路のほぼ全域をカバーしている。なお、ガイド部材71は、参照ビームL1及び測長ビームL2の光路をカバーできれば良いので、その幅方向の寸法(Y軸方向の寸法)は、数cm程度に設定されている。
【0042】
ノズルユニット72は、Xレーザ干渉計60Xの上方に配置され、ガイド部材71の−X側の端部に接続されている。なお、図1及び図2では、ガイド部材71とノズルユニット72とが一体の部材として図示されているが、ガイド部材71とノズルユニット72とは一体の部材でも別部材でも良い。ノズルユニット72は、Y軸方向を長手方向とする長方形(矩形)断面のノズル孔を有している。ノズル孔のアスペクト比(高さとノズル孔の幅との比率)は、例えば1:5〜200程度に設定されている。ノズルユニット72は、不図示の加圧気体供給装置から供給される加圧気体(例えば、HEPAフィルタなどを介して塵が除去された圧縮エア)をノズル孔からガイド部材71の下方に噴出する。
【0043】
ここで、ノズルユニット72は、加圧気体を水平面に対して斜め下方、具体的には、X軸に対して、例えば30°程度の角度を成す方向に噴出するように設けられている。不図示の加圧気体供給装置から供給される加圧気体の速度は、特に限定されないが、上述した全体空調システムが流す気体の速度よりも高速であることが好ましく、本実施形態では、例えば1〜10m/s程度に設定されている。
【0044】
ここで、ガイド部材71は、−X側の端部近傍(すなわち、ノズルユニット72との接続部近傍)に、その下面が下方(−Z方向)にXZ断面の輪郭が円弧状となるように張り出して(ガイド部材71の下面が−Z側に張り出した円筒面となるように)形成された張り出し部74を有している。そして、ノズルユニット72のノズル孔を規定する壁面のうち、+Z側の壁面は、張り出し部74の下面と連続面を形成している。
【0045】
次に、エアガイド装置70の動作について説明する。エアガイド装置70では、ノズルユニット72から加圧気体が噴出されると、Xレーザ干渉計60から照射されるレーザビーム(参照ビームL1、及び測長ビームL2、並びにそれらの反射ビーム)の光路とガイド部材71の下面(張り出し部74の下面を含む)との間であって、ノズルユニット72の吐出口の近傍に低圧渦Sが発生する。そして、ノズルユニット72から噴出された加圧気体(噴流)は、ガイド部材71の下面近傍における低圧渦Sの発生に伴う効果(コアンダ効果)により、ガイド部材71の下面に付着し、そのガイド部材71の下面に沿って+Z方向に案内される(図2の矢印F1参照)。
【0046】
そして、ガイド部材71の下面に沿ってノズルユニット72から噴出された気体(噴流)が高速で流れると、ベルヌーイ効果によりXレーザ干渉計60から照射されるレーザビーム(参照ビームL1、及び測長ビームL2、並びにそれらの反射ビーム)の光路を含む空間の気体(ほぼ大気圧)が、高速で流れる噴流(比較的低圧)側に引き寄せられ(図2の矢印F2参照)、その噴流と共に+X方向に流れる。これにより、Xレーザ干渉計60から照射されるレーザ光の光路を含む空間の気体が常時入れ替わり、空気ゆらぎの発生が抑制される。なお、ガイド部材71の下面に案内された気体は、例えばX固定鏡61の近傍でダクトなどを用いて回収しても良いし、全体空調システムにより生成される気流と共に、その気流の下流側(+X方向)に流しても良い。
【0047】
上述のようにして構成された液晶露光装置10(図1参照)では、不図示の主制御装置の管理の下、不図示のマスクローダによって、マスクステージMST上へのマスクMのロード、及び不図示の基板ローダによって、基板ステージ装置PST上への基板Pのロードが行なわれる。その後、主制御装置により、不図示のアライメント検出系を用いてアライメント計測が実行され、アライメント計測の終了後、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行なわれる。なお、この露光動作は従来から行われているステップ・アンド・スキャン方式と同様であるので、その詳細な説明は省略するものとする。そして、上記基板Pのロード、アライメント計測、露光動作などが行わせる際、基板Pを保持する微動ステージ21は、Xレーザ干渉計60Xを含む干渉計システムの出力に基づいて位置制御がされる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の液晶露光装置10が有するステージ位置計測系のレーザ干渉計システムでは、エアガイド装置70が測長用レーザビームの光路の上方に生成する高速の気体の流れにより、そのレーザ光の光路を含む雰囲気の空気ゆらぎの発生が抑制される。従って、レーザ干渉計システムの位置情報計測精度の低下を抑制でき、基板Pの位置を高精度で制御すること、すなわち、マスクパターンを高精度で基板P上に転写することができる。
【0049】
また、本実施形態のエアガイド装置70は、測長用レーザビームの光路に沿って配置された板状部材から成るガイド部材71により、ノズルユニット72から噴出された気体を案内する構成(すなわちダクトなどの管路を用いない構成)であるので、微動ステージ21の位置に関わらず(レーザビームの光路長が変化しても)、その光路の全域において容易に空気ゆらぎの発生を抑制できる。
【0050】
また、ガイド部材71は、ノズルユニット72の吐出口の近傍に張り出し部74を有し、その張り出し部74(−Z側に膨らんだ部分)と他の部分(XY平面に平行な部分)との間に段差(窪み)が形成されているので、その段差部分で低圧渦が発生し易くなっている。従って、容易にノズルユニット72から供給される噴流をガイド部材71の下面に付着させることができる。
【0051】
また、エアガイド装置70は、板状部材からなるガイド部材71に沿って高速の噴流を流す簡単な構成であるから、例えば測長用ビームの光路に沿って複数の気体噴出部(あるいは気体吸引部)を設け、その光路上に直接気体を噴出(あるいは吸引)する場合に比べ、設置が容易であり、かつコストもかからない。また、ノズルユニット72から噴出する加圧気体の風量も少量で良いので、風量を節約できて経済的であり、かつ振動、騒音の発生を抑制できる。
【0052】
また、ノズルユニット72は、矩形断面のノズル孔を有しているため、その吐出口の近傍で低圧渦Sが発生し易い。
【0053】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態に係る液晶露光装置について説明する。第2の実施形態の液晶露光装置は、上記第1の実施形態と比べ、エアガイド装置の構成が異なるのみなので、以下、エアガイド装置の構成について、図3を用いて説明する。第2の実施形態に係るエアガイド装置170は、上記第1の実施形態と比べ、Xレーザ干渉計60XからX固定鏡61に照射される参照ビームL1、及びその反射ビームがガイド部材171に形成された管路内を通過する点が異なる。なお、説明の簡略化及び図示の便宜上から、上記第1の実施形態と同様の構成を有するものについては、上記第1の実施形態と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0054】
エアガイド装置170は、ガイド部材171、ノズルユニット172、及びノズルユニット172に加圧気体を供給する不図示の加圧気体供給装置(例えばコンプレッサ)を含む。ガイド部材171は、参照光L1(及びその反射ビーム)を通過させるための貫通孔175が形成されている点、及びノズルユニット172が−X側の端部に内蔵されている点を除き、上記第1の実施形態に係るガイド部材71(図2参照)と同様の部材から成る。
【0055】
貫通孔175は、X軸に平行に形成され、ガイド部材171の+X側、及び−X側の端部それぞれに開口している。貫通孔175の断面形状は、特に限定されない。このように、第2の実施形態に係るエアガイド装置170では、参照ビームL1及びその反射光が基板ステージ装置PST(図1参照)の周辺雰囲気から隔離された専用の管路内を通過する。従って、空気ゆらぎの影響を受けにくい。
【0056】
ノズルユニット172は、ガイド部材171内に一端が設けられ、他端が不図示の気体供給装置に接続された気体供給配管176と、その気体供給配管176から分岐して設けられたノズル177a、177bとを含む。気体供給配管176は、Y軸に平行に配置されている。ノズル177aは、加圧気体を水平面に対して斜め下方、具体的にはX軸に対して、例えば30°程度の角度を成す方向に噴出することにより、ガイド部材171の下面側に加圧気体を供給する。ノズル177aから噴出される加圧気体の作用、及び効果(空気ゆらぎの発生の抑制)については、上記第1の実施形態と同じなので、説明を省略する。なお、ガイド部材171の下面におけるノズル177aの吐出口近傍には、上記第1の実施形態と同様に、低圧渦Sを発生し易くするための張り出し部174が形成されている。
【0057】
また、ノズル177bは、加圧気体を水平面に対して斜め上方、具体的にはX軸に対して、例えば45°程度の角度を成す方向に噴出させることにより、貫通孔175の内部に気体を供給させる。貫通孔175内に噴出された加圧気体は、貫通孔175内を+X方向に進行し、ガイド部材171の+X側の端部に形成される開口部から排出される。このように、本第2の実施形態では、微動ステージ21の位置に関わらず光路長が変化しない参照ビームL1(及びその反射光)が通過する貫通孔内175内に加圧気体を噴出するので、貫通孔175内の空気ゆらぎが抑制される。
【0058】
《第3の実施形態》
次に、本発明の第3の実施形態に係る液晶露光装置について説明する。第3の実施形態の液晶露光装置は、上記第2の実施形態と比べ、エアガイド装置の構成が異なるのみなので、以下、エアガイド装置の構成について、図4を用いて説明する。なお、説明の簡略化及び図示の便宜上から、上記第1及び第2の実施形態と同様の構成を有するものについては、上記第1及び第2の実施形態と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0059】
第3の実施形態に係るエアガイド装置270は、X軸方向に沿って2つのノズルユニット172a、172bを有している。ノズルユニット172a、172bそれぞれの構成は、上記第2の実施形態に係るエアガイド装置170(図3参照)のノズルユニット172の構成と同じである。ノズルユニット172bは、ガイド部材171の長手方向のほぼ中央部に設けられている。
【0060】
また、ガイド部材271の下面におけるノズルユニット172a、172bそれぞれの吐出口近傍には、低圧渦Sを発生し易くするための窪み274a、274bが形成されている。これにより、ノズルユニット172a、172bから噴出された気体は、それぞれガイド部材271の下面に付着した状態で高速で+X方向に流れ、測長ビームL2(及びその反射光)の光路を含む空間の気体がガイド部材271の下面側に引き寄せられる。
【0061】
本第3の実施形態に係るエアガイド装置270では、測長ビームL2(及びその反射ビーム)の光路の途中に加圧気体の吐出口を設けたので、ガイド部材271の下面に沿って流れる気体の速度低下を抑制できる。従って、確実に測長ビームL2(及びその反射ビーム)の光路を含む雰囲気の空気ゆらぎを抑制できる。
【0062】
なお、上記第1〜第3の実施形態に係る干渉計システムの構成は、一例であって、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、上記第1〜第3の実施形態では、微動ステージ21のX軸方向における位置情報を計測するXレーザ干渉計60Xの測長用ビームの光路上にのみエアガイド装置70、170,270が設けられているが、これに代えてあいはこれに加えて、微動ステージ21のY軸方向の位置情報を計測するYレーザ干渉計の測長ビームの光路上に同様の構成のエアガイド装置を設けても良い。また、エアガイド装置は、マスクステージMSTの位置を計測する干渉計システムの測長ビーム、及び参照ビームの光路上に設けられても良い。また、エアガイド装置は、鉛直方向に移動する移動体の位置情報を計測する干渉計システムに適用しても良い。
【0063】
また、上記第1〜第3の実施形態では、エアガイド装置70,170,270を用いて噴流を+X方向、すなわちX干渉計から照射される測長用ビーム、及び参照ビームの進行方向と同じ方向に案内しているが、噴流を案内する方向はこれに限られず、−X方向、あるいは水平面内でX軸に交差する方向(例えばY軸方向)でも良い。
【0064】
また、上記第1〜第3の実施形態に係るエアガイド装置70,170,270は、測長用ビームの光路の上方に設けられたが、これに限らず、エアガイド装置は、測長用ビームの光路の下方に配置されても良いし(エアガイド装置が上下逆さまに配置される)、測長ビーム及び参照ビームの光路の側方に配置されても良い(ガイド部材のガイド面がXY平面に垂直となるように配置される)。
【0065】
また、上記第1〜第3の実施形態では、コアンダ効果を得やすくするために、ガイド部材71(あるいはガイド部材171,172)の下面に張り出し部74、又は窪み174,274a、274bが形成されたが、噴流をガイド部材の下面に付着させることができれば、上記張り出し部74などは形成されていなくても良い。また、張り出し部74は、曲面で形成する必要はなく、角部を有していても良い。また、ノズルユニットの吐出口の近傍に低圧渦が発生しやすくするために、ノズルユニットの吐出口近傍に圧力制御口を設けても良い。また、ノズルユニットからガイド部材の下面側に噴出される噴流の角度は、90°未満であれば特に限定されない。
【0066】
また、上記第1〜第3の実施形態に係るエアガイド装置70,170,270は、参照鏡内蔵型のレーザ干渉計を用いた干渉計システムにも適用できる。
【0067】
また、上記第1〜第3の実施形態に係るエアガイド装置は、XY平面に平行なガイド面を有する平板状の部材から成るガイド部材71(あるいはガイド部材171,172)により噴流を測長ビームの光路に沿って案内したが、ガイド部材の形状はこれに限られず、光路側(上記第1〜第3の実施形態では−Z側)に開口した断面逆U字状でも良い。
【0068】
また、上記第2及び第3の実施形態では、参照ビーム及びその反射ビームを通過させるための貫通孔がガイド部材に形成したが、これに限らずダクト部材などを用いて参照ビーム及びその反射ビームを外気から隔離しても良い。
【0069】
また、上記第3の実施形態に係るエアガイド装置270は、測長ビームの光路に沿って2つのノズルユニットが設けられているが、ノズルユニットの数はこれに限られず、例えば3つ以上でも良い。
【0070】
また、上記第1〜第3の実施形態に係るエアガイド装置70,170,270では、気体供給装置(例えばコンプレッサなど)を用いてガイド部材71(あるいはガイド部材171、271)の下面に沿って高速の噴流を流したが、全体空調システムが流す気流によりガイド部材に沿って低圧の気体の流れを生成できれば、エアガイド装置は、気体供給装置を備えなくても良い。
【0071】
なお、露光装置で使用される照明光は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。また、照明光としては、例えばDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、固体レーザ(波長:355nm、266nm)などを使用しても良い。
【0072】
また、上記第1〜第3の実施形態では、投影光学系PLが、複数本の光学系を備えたマルチレンズ方式の投影光学系である場合について説明したが、投影光学系の本数はこれに限らず、1本以上あれば良い。また、マルチレンズ方式の投影光学系に限らず、オフナー型の大型ミラーを用いた投影光学系などであっても良い。
【0073】
また、上記第1〜第3の実施形態では投影光学系PLとして、投影倍率が等倍系のものを用いる場合について説明したが、これに限らず、投影光学系は拡大系及び縮小系のいずれでも良い。
【0074】
また、本発明に係る移動体装置が有する移動体は、露光装置以外の装置、例えばインクジェット式の機能性液体付与装置を備えた素子製造装置などに設けられたものであっても良い。
【0075】
なお、上記第1〜第3の実施形態では、プレートのステップ・アンド・スキャン動作を伴う走査型露光を行う投影露光装置に適用された場合について説明したが、これに限らず、本発明は、投影光学系を用いない、プロキシミティ方式の露光装置にも適用することができる。また、本発明は、ステップ・アンド・リピート方式の露光装置(いわゆるステッパ)あるいはステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用することができる。
【0076】
また、露光装置の用途としては角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置に限定されることなく、例えば半導体製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるマスク又はレチクルを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。なお、露光対象となる物体はガラスプレートに限られるものでなく、例えばウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。
【0077】
なお、本発明に係る露光装置は、外径が500mm以上の基板が露光対象物である場合に特に有効である。
【0078】
液晶表示素子(あるいは半導体素子)などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたマスク(あるいはレチクル)を製作するステップ、ガラス基板(あるいはウエハ)を製作するステップ、上述した各実施形態の露光装置、及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをガラス基板に転写するリソグラフィステップ、露光されたガラス基板を現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ガラス基板上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上説明したように、本発明の移動体装置は、高精度で移動体の位置を制御するのに適している。また、本発明の露光装置は、物体に高精度でパターンを形成するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法は、マイクロデバイスの生産に適している。また、本発明の移動体の位置情報計測方法は、移動体の位置情報を高精度で計測するのに適している。
【符号の説明】
【0080】
10…液晶露光装置、21…微動ステージ、60X…Xレーザ干渉計、61X…X固定鏡、70…エアガイド装置、71…ガイド部材、72…ノズルユニット、74…張り出し部、P…基板、PST…基板ステージ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定平面に平行な少なくとも一軸方向に移動可能な移動体と;
前記移動体に設けられた反射面に前記一軸方向に平行な光路に沿って測長ビームを照射し、前記測長ビームの前記反射面からの反射ビームを受光して、前記移動体の前記一軸方向に関する位置情報を計測する位置計測系と;
前記光路の近傍に前記光路に沿って配置され、前記光路近傍の気体をその表面に沿って案内するガイド部材と;を備える移動体装置。
【請求項2】
前記ガイド部材の前記表面に沿って高速の気体の流れを生成する気流生成装置をさらに備える請求項1に記載の移動体装置。
【請求項3】
前記気流生成部は、前記ガイド部材側から前記光路に向けて、前記ガイド部材の前記表面に所定角度で前記気体を噴出するノズルを含む請求項2に記載の移動体装置。
【請求項4】
前記ノズルは、前記噴出する前記気体の流れる方向に直交する断面の輪郭が矩形であるノズル孔を有する請求項3に記載の移動体装置。
【請求項5】
前記ノズルは、前記光路に沿って複数設けられる請求項3又は4に記載の移動体装置。
【請求項6】
前記ガイド部材の前記表面には、前記ノズルの噴出口の近傍に窪みが形成される請求項3〜5のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項7】
前記位置計測系は、所定の位置に固定された固定反射面に参照ビームを照射し、前記参照ビームの前記固定反射面からの参照反射ビームを受光して、前記反射ビームと前記参照反射ビームとの干渉に基づいて前記移動体の位置情報を求める干渉計システムを含み、
前記参照ビームの光路は、前記ガイド部材の近傍に前記ガイド部材の前記表面に沿って配置されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項8】
前記位置計測系は、所定の位置に固定された固定反射面に参照ビームを照射し、前記参照ビームの前記固定反射面からの参照反射ビームを受光して、前記反射ビームと前記参照反射ビームとの干渉に基づいて前記移動体の位置情報を求める干渉計システムを含み、
前記参照ビームの光路は、前記測長ビームの前記光路から隔離された管路内に設けられ、
前記気流生成装置は、前記管路内に気体の流れを生成する請求項2に記載の移動体装置。
【請求項9】
前記気流生成装置は、共通の気体供給装置から供給される気体を前記ガイド面側、及び前記管路側に噴出させる分岐ノズルを有する請求項8に記載の移動体装置。
【請求項10】
前記分岐ノズルは、前記測長ビーム及び前記参照ビームの光路に沿って複数設けられる請求項9に記載の移動体装置。
【請求項11】
前記測長ビームの前記光路を含む空間内の雰囲気を調整する全体空調システムをさらに有する請求項1〜10のいずれか一項に記載の移動体装置。
【請求項12】
エネルギビームにより物体を露光する露光装置であって、
前記物体が前記移動体上に載置される請求項1〜11のいずれか一項に記載の移動体装置と;
前記物体にエネルギビームを照射して前記物体上にパターンを生成するパターン生成装置と;を備える露光装置。
【請求項13】
前記物体は、フラットパネルディスプレイ装置に用いられる基板である請求項12に記載の露光装置。
【請求項14】
前記基板は、少なくとも一辺の長さが500mm以上である請求項13に記載の露光装置。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか一項に記載の露光装置を用いて前記物体を露光することと;
前記露光された前記物体を現像することと;を含むデバイス製造方法。
【請求項16】
移動体を所定平面に平行な少なくとも一軸方向に移動させる工程と:
前記移動体に設けられた反射面に前記一軸方向に平行な光路に沿って測長ビームを照射し、前記測長ビームの前記反射面からの反射ビームを受光して、前記移動体の前記一軸方向に関する位置情報を計測する工程と:
前記光路の近傍に前記光路に沿って配置され、前記光路近傍の気体をその表面に沿って案内する工程と;を含む移動体の位置情報計測方法。
【請求項17】
前記案内する工程では、前記ガイド部材の前記表面に沿って高速の気体の流れを生成する請求項16に記載の移動体の位置情報計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−133398(P2011−133398A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294217(P2009−294217)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】