説明

積層セラミック電子部品およびその製造方法

【課題】内部電極を側面に露出させた状態の未焼成のグリーンチップを形成した後、グリーンチップの側面に露出した内部電極を覆うように未焼成のセラミック材料を付与することにより、サイドギャップ領域となるセラミック側面層を形成すると、セラミック側面層とグリーンチップに由来する積層部との接着力が十分ではなく、経時後に、セラミック側面層が積層部から剥離するおそれがある。
【解決手段】積層部12となるグリーンチップとセラミック側面層13,14との界面30,31と、未焼成の部品本体2の外表面との交線32が、面取り部19の曲面形成範囲内に位置するように研磨する。これにより、未焼成のセラミック材料が、界面30,31を埋めるように伸ばされ、言わば「パテ」のような役割を果たし、積層部12となるグリーンチップとセラミック側面層13,14との間の接着力が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層セラミック電子部品およびその製造方法に関するもので、特に、部品本体において内部電極に関連して設けられるサイドギャップ領域を、未焼成のセラミック材料を積層工程の後に付与することによって形成した、積層セラミック電子部品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ、デジタルオーディオ機器等の小型携帯電子機器の市場が拡大している。これらの携帯電子機器では、小型化が進んでいる一方で、高性能化も同時に進んでいる。これらの携帯電子機器には多数の積層セラミック電子部品が搭載されているが、積層セラミック電子部品についても高性能化が要求されており、たとえば、積層セラミックコンデンサにおいては大容量化が要求されている。これを受けて、積層セラミックコンデンサでは、セラミック層の薄層化が進められており、これによりセラミック層の積層枚数も増加する傾向にある。
【0003】
通常、積層セラミック電子部品を製造する際には、焼成後にセラミック層となるセラミックグリーンシート上に内部電極パターンを印刷し、内部電極パターンを所定方向にずらすようにセラミックグリーンシートを積層してマザーブロックを積層し、マザーブロックを所定寸法にカットしてグリーンチップを切り出すことが行なわれる。
【0004】
この製造方法では、積層ずれやカットずれの影響によりグリーンチップ側面に内部電極パターンが露出しないように、グリーンチップ側面と内部電極パターンの側辺との間のサイドギャップ領域のマージンを確保する必要がある。しかし、積層セラミック電子部品の小型化を進めた場合、内部電極の面積に対してサイドギャップ領域の面積の占める割合が大きくなり、その分だけ積層セラミックコンデンサの容量が低下せざるを得なかった。
【0005】
これを受けて、特許文献1では、内部電極の両側端縁が積層体側面に露出した積層体を用意し、この積層体側面にセラミックグリーンシートを貼り付けることによりサイドギャップ領域を形成するため、積層コンデンサの小型化および大容量化を実現することができると記載されている。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の技術では、サイドギャップ領域を構成するセラミックグリーンシートとグリーンチップとの接着力が十分ではなく、経時後に、サイドギャップ領域がセラミック素体から剥離するおそれがある。
【0007】
なお、同様の問題は、積層セラミックコンデンサに限らず、積層セラミックコンデンサ以外の積層セラミック電子部品においても、遭遇し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−349669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明の目的は、上述したような問題を解決し得る、積層セラミック電子部品およびその製造方法を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、まず、積層セラミック電子部品の製造方法に向けられる。
【0011】
この発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、互いに対向する1対の主面と、互いに対向する1対の側面と、互いに対向する1対の端面とを有し、側面と端面との間の稜線に沿って丸みを帯びた面取り部が形成され、主面方向に延びかつ主面に直交する方向に積層された複数のセラミック層と、セラミック層間の界面に沿って形成されかつ1対の端面のいずれかに露出する露出端を持つが、側面には露出しない複数対の内部電極とを有する、部品本体を作製する工程と、内部電極の各露出端に電気的に接続されるように、部品本体の少なくとも1対の端面上に外部電極を形成する工程とを備える。
【0012】
上述した部品本体を作製する工程は、部品本体の側面の内側に位置しかつ側面に平行な面である平行側面を有するものであり、未焼成の複数のセラミック層と未焼成の複数対の内部電極とをもって構成された積層構造を有し、かつ平行側面に内部電極を露出させた状態にある、グリーンチップを準備する工程と、上記平行側面に露出した未焼成の内部電極を被覆するように、グリーンチップの平行側面上に未焼成のセラミック材料を付与することによって、部品本体の側面を与えるべきセラミック側面層をグリーンチップの平行側面上に形成する工程と、セラミック側面層が形成されたグリーンチップを研磨し、それによって、面取り部を形成した未焼成の部品本体を得る、研磨工程と、未焼成の部品本体を焼成する工程とを含む。
【0013】
そして、この発明では、前述した技術的課題を解決するため、上記研磨工程において、グリーンチップとセラミック側面層との界面と、未焼成の部品本体の外表面との交線が、面取り部の曲面形成範囲内に位置するようにされることを特徴としている。
【0014】
この発明に係る製造方法において、上記グリーンチップを準備するため、セラミックグリーンシート上に、帯状の内部電極パターンを複数列形成する工程と、帯状の内部電極パターンが延びる長手方向に対して直交する幅方向に沿って、セラミックグリーンシートを所定間隔ずらしながら積層することによって、マザーブロックを作製する工程と、長手方向の仮想切断線および幅方向の仮想切断線に沿って、マザーブロックを切断する工程とを実施するようにすれば、グリーンチップを能率的に得ることができる。
【0015】
上記好ましい実施態様において、帯状の内部電極パターンは、長手方向に沿って直線状に延びる1対の側辺を有し、長手方向の仮想切断線は、帯状の内部電極パターンを幅方向において2等分するように位置するようにされてもよい。
【0016】
この場合、帯状の内部電極パターンは、内部電極パターンが形成されない穴あき部を有し、穴あき部は、帯状の内部電極パターンの幅方向中央において、長手方向に沿って所定のピッチで分布しており、長手方向の仮想切断線は、穴あき部を幅方向において2等分するように位置していると、内部電極の形状に関して、側面間を結ぶ幅方向で見て、その引出し部の露出端の幅を他の部分に比べて狭くすることができる。
【0017】
前述した好ましい実施態様において、帯状の内部電極パターンは、その隣接するもの同士が互いに噛み合うように、長手方向に沿ってジグザグ状に延びる1対の側辺を有し、隣接する帯状の内部電極パターンの間には、長手方向に沿ってジグザグ状に延びるギャップ領域が形成され、長手方向の仮想切断線は、ギャップ領域を幅方向において2等分するように位置するようにされてもよい。
【0018】
この発明は、また、上述した製造方法によって有利に製造することができる積層セラミック電子部品の構造にも向けられる。
【0019】
この発明に係る積層セラミック電子部品は、互いに対向する1対の主面と、互いに対向する1対の側面と、互いに対向する1対の端面とを有し、側面と端面との間の稜線に沿って丸みを帯びた面取り部が形成され、主面方向に延びかつ主面に直交する方向に積層された複数のセラミック層と、セラミック層間の界面に沿って形成されかつ1対の端面のいずれかに露出する露出端を持つが、側面には露出しない複数対の内部電極とを有する、部品本体と、内部電極の各露出端に電気的に接続されるように、部品本体の少なくとも1対の端面上に形成された、外部電極とを備える。
【0020】
内部電極は、側面に対して平行な1対の側辺を有するとともに、セラミック層を介して別の内部電極と対向する、対向部と、対向部から端面に引き出され、その端部に露出端を形成する、引出し部とを有する。側面間を結ぶ幅方向で見て、引出し部の露出端の幅は、対向部の幅より狭く形成される。
【0021】
そして、対向部の側辺から部品本体の側面までのギャップ寸法をWg、面取り部の曲面の曲率半径をRd、対向部の側辺から露出端までの距離をD、としたとき、Wg<Rd、かつ、Rd<Wg+Dを満足することを特徴としている。
【0022】
この発明に係る積層セラミック電子部品において、15μm≦Wg、かつ55μm≦Rdを満足することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
この発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法によれば、グリーンチップとセラミック側面層との界面と、未焼成の部品本体の外表面との交線が、面取り部の曲面形成範囲内に位置するように研磨されるので、グリーンチップおよび/またはセラミック側面層を構成する未焼成のセラミック材料が、グリーンチップとセラミック側面層との界面を埋めるように伸ばされる。そのため、この未焼成のセラミック材料が言わば「パテ」のような役割を果たし、グリーンチップとセラミック側面層との間の接着力が高められ、グリーンチップとセラミック側面層との間での剥離(ギャップ剥がれ)が抑制される。
【0024】
この発明に係る積層セラミック電子部品によれば、Wg<Rd、かつ、Rd<Wg+Dを満足する、すなわち、引出し部の露出端が面取り部の曲面形成範囲にかかることがない。面取り部では、その上に形成される外部電極の下地層の厚みが薄くなりやすいため、この部分に引出し部が露出すると耐湿性が低下しやすいが、この発明によれば耐湿性低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の第1の実施形態による積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサ1の外観を示す斜視図である。
【図2】図1の線A−Aに沿う断面図である。
【図3】図1に示した積層セラミックコンデンサ1に備える部品本体2の内部構造を示す平面図である。
【図4】図3の部分Bの拡大図である。
【図5】図1に示した積層セラミックコンデンサ1に備える部品本体2の端面図である。
【図6】図1に示した積層セラミックコンデンサ1を製造するために用意されるもので、内部電極パターン42を形成したセラミックグリーンシート41を示す平面図である。
【図7】図6に示したセラミックグリーンシート41が積層された状態を拡大して示す平面図である。
【図8】図6および図7に示したセラミックグリーンシート41を積層してなるマザーブロック48を切断して得られたグリーンチップ49の外観を示す斜視図である。
【図9】図8に示したグリーンチップ49にセラミック側面層13および14を形成した状態を示す斜視図である。
【図10】この発明の第2の実施形態による積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサに備える部品本体2の内部構造を示す、図3に対応する平面図である。
【図11】図10に示した積層セラミックコンデンサを製造するために用意されるもので、内部電極パターン62を形成したセラミックグリーンシート61を示す、図6に対応する平面図である。
【図12】図11に示したセラミックグリーンシート61が積層された状態を拡大して示す、図7に対応する平面図である。
【図13】この発明の第3の実施形態による積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサに備える部品本体2の内部構造を示す、図3に対応する平面図である。
【図14】この発明の第4の実施形態による積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサに備える部品本体2の内部構造を示す、図3に対応する平面図である。
【図15】図14に示した積層セラミックコンデンサを製造するために用意されるもので、内部電極パターン72を形成したセラミックグリーンシート71を示す、図6に対応する平面図である。
【図16】図15に示したセラミックグリーンシート71が積層された状態を示す、図7に対応する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、この発明を実施するための形態を説明するにあたり、積層セラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを例示する。
【0027】
図1ないし図9は、この発明の第1の実施形態を説明するためのものである。
【0028】
まず、図1ないし図5に示すように、積層セラミックコンデンサ1は、部品本体2を備えている。部品本体2は、互いに対向する1対の主面3および4と、互いに対向する1対の側面5および6と、互いに対向する1対の端面7および8とを有する、ほぼ直方体状をなしている。
【0029】
部品本体2は、図2および図5に示すように、主面3および4の方向に延びかつ主面3および4に直交する方向に積層された複数のセラミック層9と、セラミック層9間の界面に沿って形成された複数対の第1および第2の内部電極10および11とをもって構成された積層構造を有する積層部12を有する。また、部品本体2は、図5に示すように、前述した1対の側面5および6をそれぞれ与えるように積層部12の各側面上に配置される1対のセラミック側面層13および14を有している。セラミック側面層13および14は、好ましくは、互いに同じ厚みとされる。
【0030】
内部電極10および11の形状の詳細については後述するが、第1の内部電極10は、第1の端面7に露出する露出端15を持ち、第2の内部電極11は、第2の端面8に露出する露出端16を持っている。しかし、前述したセラミック側面層13および14がサイドギャップ領域を構成するため、内部電極10および11は、部品本体2の側面5および6には露出しない。
【0031】
積層セラミックコンデンサ1は、さらに、内部電極10および11の各々の露出端15および16にそれぞれ電気的に接続されるように、部品本体2の少なくとも1対の端面7および8上にそれぞれ形成された、外部電極17および18を備えている。
【0032】
部品本体2には、図3および図4に示すように、側面5および6の各々と端面7および8の各々との間の稜線に沿って丸みを帯びた面取り部19が形成され、また、図1および図5に示すように、主面3および4の各々と側面5および6の各々との間の稜線に沿って丸みを帯びた面取り部20が形成され、さらに、図2に示すように、主面3および4の各々と端面7および8の各々との間の稜線に沿って丸みを帯びた面取り部21が形成されている。
【0033】
図3によく示されているように、第1の内部電極10は、側面5および6に対して平行な1対の側辺22および23を有するとともに、セラミック層9を介して第2の内部電極11と対向する、対向部24と、対向部24から第1の端面7に引き出され、その端部に前述の露出端15を形成する、引出し部25とを有している。図5には、第1の端面7に露出する第1の内部電極10の露出端15が図示されている。
【0034】
第1の内部電極10の平面形状に関して、側面5および6間を結ぶ幅方向で見て、引出し部25の露出端15の幅は、対向部24の幅より狭くされている。特に、この実施形態では、引出し部25は、端面7に向かって次第に狭くなる幅方向寸法を有している。
【0035】
図3において破線で示した第2の内部電極11についても、同様に、側面5および6に対して平行な1対の側辺26および27を有するとともに、セラミック層9を介して第1の内部電極10と対向する、対向部28と、対向部28から第2の端面8に引き出され、その端部に前述の露出端16を形成する、引出し部29とを有している。第2の内部電極11は、上述した第1の内部電極10と対称の平面形状を有している。
【0036】
上述したように、第1の内部電極10の対向部24と第2の内部電極11の対向部28とがセラミック層9を介して互いに対向していることによって、これら対向部24および28間に電気的特性が発現する。すなわち、この積層セラミックコンデンサ1の場合には、静電容量が形成される。
【0037】
第1の内部電極10の対向部24は、側辺22および23を結ぶ方向で見て、実質的に平坦である。すなわち、対向部24は、側辺22および23の近傍で薄くなったり、積層方向に湾曲したりすることはない。第2の内部電極11の対向部28についても同様である。
【0038】
第1および第2の内部電極10および11の各々の引出し部25および29は、それぞれ、端面7および8に引き出される。このとき、図4に示すように、対向部24の側辺22から部品本体2の側面5までのギャップ寸法をWgとし、面取り部19の曲面の曲率半径をRdとし、対向部24の側辺22から露出端15の端部までの距離をDとしたとき、Rd<Wg+Dを満足するようにされる。すなわち、露出端15および16が前述した面取り部19の曲面形成範囲にかからないようにされる。面取り部19では、その上に形成される外部電極17の下地層の厚みが薄くなり、この部分に引出し部25が露出すると、耐湿性が低下するおそれがあるためである。
【0039】
内部電極10および11のための導電材料としては、たとえば、Ni、Cu、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Auなどを用いることができる。
【0040】
内部電極10および11の各厚みは、0.3〜2.0μmであることが好ましい。なお、引出し部25および29の各厚みは、対向部24および28の各厚みに比べて厚くされてもよい。これにより、引出し部25および29に関連して生じやすい積層部12の段差を減少させることができる。
【0041】
セラミック層9ならびにセラミック側面層13および14を構成するセラミック材料としては、たとえば、BaTiO、CaTiO、SrTiO、CaZrOなどを主成分とする誘電体セラミックを用いることができる。誘電体セラミックには、必要に応じて、Mn化合物、Mg化合物、Si化合物、Co化合物、Ni化合物、希土類元素化合物などの副成分が添加される。
【0042】
セラミック側面層13および14を構成するセラミック材料は、セラミック層9を構成するセラミック材料と少なくとも主成分が同じであることが好ましい。この場合、最も好ましくは、同じ組成のセラミック材料が、セラミック層9とセラミック側面層13および14との双方に用いられる。
【0043】
なお、この発明は、積層セラミックコンデンサ以外の積層セラミック電子部品にも適用することができる。積層セラミック電子部品が、たとえば、圧電部品の場合には、PZT系セラミックなどの圧電体セラミック、サーミスタの場合には、スピネル系セラミックなどの半導体セラミックが用いられる。
【0044】
外部電極17および18は、前述したように、部品本体2の少なくとも1対の端面7および8上にそれぞれ形成されるが、この実施形態では、主面3および4ならびに側面5および6の各一部にまで回り込んだ部分を有している。
【0045】
外部電極17および18は、図示しないが、下地層と下地層上に形成されるめっき層とで構成されることが好ましい。下地層のための導電材料としては、たとえば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Auなどを用いることができる。下地層は、導電性ペーストを未焼成の部品本体2上に塗布して部品本体2と同時焼成するコファイア法を適用することによって形成されても、導電性ペーストを焼成後の部品本体2上に塗布して焼き付けるポストファイア法を適用することによって形成されてもよい。あるいは、下地層は、直接めっきにより形成されてもよく、熱硬化性樹脂を含む導電性樹脂を硬化させることにより形成されてもよい。
【0046】
なお、後述する面取り部19の曲面の曲率半径の条件を考慮した場合、導電性ペーストを用いて下地層を形成するという特定の局面において、この発明は顕著な効果を発揮する。
【0047】
下地層の厚みは、最も厚い部分で、10〜150μmであることが好ましい。
【0048】
下地層上に形成されるめっき層を構成する金属としては、たとえば、Cu、Ni、Sn、Pb、Au、Ag、Pd、BiおよびZnからなる群から選ばれる1種の金属または当該金属を含む合金を用いることができる。めっき層は複数層から構成されていてもよい。このようにめっき層が複数層から構成される場合、好ましくは、Niめっきおよびその上のSnめっきの2層構造とされる。また、めっき膜の厚みは、1層あたり、1〜15μmであることが好ましい。
【0049】
下地層とめっき層との間に、応力緩和用の導電性樹脂層が形成されていてもよい。
【0050】
図4によく示されているように、内部電極10の対向部24の側辺22は、積層部12とセラミック側面層13との界面30上に位置している。同様に、内部電極11の対向部28の側辺26についても、積層部12とセラミック側面層13との界面30上に位置している。したがって、内部電極10および11の対向部24および28の各々の側辺22および26から部品本体2の側面5までのギャップ寸法Wgは、セラミック側面層13の厚みに相当する。
【0051】
上述のギャップ寸法Wgは、面取り部19の曲面の曲率半径Rdとの関係で、Wg<Rdを満足するようにされる。すなわち、ギャップ寸法Wgより曲率半径Rdの方が大きく、それゆえ、積層部12とセラミック側面層13との界面30と、部品本体2の外表面との交線32が、面取り部19の曲面形成範囲内に位置するようにされる。
【0052】
同様の状況が、図4では図示しない、部品本体2の図3における右上、左下および右下の各面取り部19においても達成されている。
【0053】
上述のように、Wg<Rdを満足すれば、セラミック側面層13および14が積層部12から剥離するのを十分に防止することができる。
【0054】
特に、ギャップ寸法Wgについては、15μm≦Wgを満足することが好ましい。Wgが15μm以上であれば、ギャップ部分で生じ得る亀裂をより確実に防止することができる。なお、積層セラミックコンデンサの小型化、大容量化に応え得るためには、Wg≦35μmを満足することが好ましい。
【0055】
面取り部19の曲面の曲率半径Rdについては、55μm≦Rdを満足することが好ましい。Rdが55μm以上であれば、部品本体2において割れや欠けが生じることをより確実に防止することができる。また、面取り部19上に形成される外部電極17および18の下地層が局所的に薄くなってしまうことをより確実に防止するためには、Rd≦95μmであることが好ましい。これにより、耐湿性が低下することをより確実に防止することができる。
【0056】
対向部24の側辺22から露出端15の端部までの距離Dについては、90μm≦Dを満足することが好ましい。Dが90μm以上であれば、外部電極17の端部と部品本体2との間から浸入し得る水分が露出端15まで到達しにくくなるため、耐湿性が低下することをより確実に防止することができる。
【0057】
完成品としての積層セラミックコンデンサ1からWg、RdおよびDを測定する際には、部品本体2を高さ寸法の1/2程度で切断して現れた、主面3および4に平行な面において、4つのコーナー部における曲率半径Rdと、2つのギャップ領域についてのギャップ寸法Wgと、内部電極の対向部の側辺から露出端の端部までの距離Dとを測定すればよい。そして、各コーナー部と各ギャップ領域の関係において、Wg<Rdを満足すること、Rd<Wg+Dを満足すること、Rdがいずれも55μm≦Rdを満足すること、および、Wgがいずれも15μm≦Wgを満足することを確認すればよい。
【0058】
次に、図6ないし図9をさらに参照しながら、上述した積層セラミックコンデンサ1の製造方法について説明する。
【0059】
まず、セラミック層9となるべきセラミックグリーンシート、内部電極10および11のための導電性ペースト、セラミック側面層13および14のためのセラミックグリーンシート、ならびに、外部電極17および18のための導電性ペーストがそれぞれ準備される。これらセラミックグリーンシートおよび導電性ペーストには、バインダおよび溶剤が含まれるが、これらバインダおよび溶剤としては、それぞれ、公知の有機バインダおよび有機溶剤を用いることができる。
【0060】
次に、図6に示すように、セラミックグリーンシート41上に、たとえばスクリーン印刷法などにより所定のパターンをもって導電性ペーストが印刷される。これによって、内部電極10および11の各々となるべき内部電極パターン42が形成されたセラミックグリーンシート41が得られる。
【0061】
この実施形態では、セラミックグリーンシート41上に、帯状の内部電極パターン42が複数列形成される。図6において、帯状の内部電極パターン42が延びる長手方向(図6による上下方向)の仮想切断線43およびこれに対して直交する幅方向(図6による左右方向)の仮想切断線44が図示されている。帯状の内部電極パターン42は、2つ分の内部電極10および11が各々の引出し部25および29同士で連結されたものが、長手方向に沿って連なった形状を有している。
【0062】
帯状の内部電極パターン42は、上記長手方向に沿って直線状に延びる1対の側辺45および46を有する。また、各帯状の内部電極パターン42では、その幅方向中央において、内部電極パターンが形成されないひし形状の穴あき部47が、長手方向に沿って所定のピッチで分布している。これは、前述した引出し部25および29の形態に由来するものである。
【0063】
次に、上述のように内部電極パターン42が形成されたセラミックグリーンシート41を所定の順序でかつ所定枚数積層し、その上下に導電性ペーストが印刷されていない外層用セラミックグリーンシートを所定枚数積層することによって、図7にその一部を示したマザーブロック48が作製される。図7において、マザーブロック48は、内部電極パターン42が形成されたセラミックグリーンシート41の上にある外層用セラミックグリーンシートが除去された状態で図示されている。
【0064】
上述の積層工程において、図6(A)と同(B)とに示すように、帯状の内部電極パターン42の幅方向に沿って、セラミックグリーンシート41を所定間隔、すなわち内部電極パターン42の幅方向寸法の半分ずつ、ずらされながら積層される。
【0065】
次に、マザーブロック48は、必要に応じて、静水圧プレスなどの手段により積層方向にプレスされる。
【0066】
次に、マザーブロック48は、図6に示した長手方向の仮想切断線43および幅方向の仮想切断線44に沿って切断され、図8に示すようなグリーンチップ49が得られる。図7において、マザーブロック48におけるグリーンチップ49となるべき箇所が破線で囲まれて示されている。
【0067】
図6および図7からわかるように、長手方向の仮想切断線43は、一方では、帯状の内部電極パターン42を幅方向において2等分するように、すなわち、穴あき部47を幅方向において2等分するように位置しており、他方では、隣接する内部電極パターン42の側辺45および46間を幅方向において2等分するように位置している。
【0068】
図8に示すように、グリーンチップ49は、部品本体2の側面5および6の各々の内側に位置しかつ側面5および6に平行な面である平行側面50および51を有する。これら平行側面50および51は、上述した幅方向の仮想切断線44に沿う切断面によって与えられたものである。グリーンチップ49は、前述した積層部12の未焼成の段階にあるものに相当し、未焼成の複数のセラミック層9と未焼成の複数対の内部電極10および11とをもって構成された積層構造を有している。
【0069】
一般に、上述したグリーンチップ49あるいは積層部12のように、サイドギャップ領域がなく、セラミック層と内部電極との積層構造では、セラミック層同士が密着する箇所が少なくなってしまうため、デラミネーションが生じやすくなる。そして、本件発明者は、なかでも、外層(内部電極が形成されていない上下のセラミック層)付近における内部電極の引出し部のコーナー(カット後にグリーンチップあるいは積層部のコーナー部に露出する部分)において、デラミネーションが生じやすくなることを発見した。これは、マザーブロックを所定の寸法に切断する際に応力が集中しやすく、接着面積の小さいコーナー部がデラミネーション発生の起点となりやすいためであると推測される。
【0070】
よって、この実施形態のように、露出端15および16の幅を対向部24および28の幅より狭くすることにより、内部電極10および11の引出し部25および29のコーナーを内側に退避させ、上記影響を抑えることができるため、デラミネーションを生じにくくすることができる。
【0071】
さらに、引出し部25および29の両脇に生じたマージン領域が積層方向に沿って互いに密着するため、このこともデラミネーション抑制に寄与する。
【0072】
次に、図9に示すように、グリーンチップ49の平行側面50および51上に、部品本体2の側面5および6を与えるべき未焼成のセラミック側面層13および14が形成され、それによって、研磨前の未焼成の部品本体2が得られる。
【0073】
そのため、グリーンチップ49の平行側面50および51上に未焼成のセラミック材料が付与される。この未焼成のセラミック材料の付与には、前述したセラミックグリーンシートが用いられ、このセラミックグリーンシートが、グリーンチップ49の平行側面50および51上に貼り付けられる。この他に、たとえば、スクリーン印刷法等の印刷法、インクジェット法、グラビアコート法等のコート法、噴霧法等によって、グリーンチップ49の平行側面50および51上にセラミックペーストを付与してもよい。これらの付与方法において、セラミックグリーンシートを貼り付ける方法は、別体として独立した物体を接着する分、他の付与方法に比べて接着力が弱くなりやすいため、特に本発明の効果が期待できる。これらセラミック側面層13および14の形成によって、平行側面50および51に露出した未焼成の内部電極10および11が被覆される。
【0074】
次に、未焼成の部品本体2に対して研磨工程が実施される。研磨手段としては、バレル研磨などを用いることができる。この研磨によって、前述した面取り部19〜21が形成される。
【0075】
この研磨工程において、グリーンチップ49と未焼成のセラミック側面層13および14の各々の界面(積層部12とセラミック側面層13および14の各々の界面30および31に相当。図3〜図5参照)と、未焼成の部品本体2の外表面との交線32が、面取り部19の曲面形成範囲内に位置するようにされる。言い換えれば、未焼成のセラミック側面層13および14により形成されたギャップ領域の寸法(前述のギャップ寸法Wgに相当)が、面取り部19の曲面の曲率半径Rdよりも小さくなるようにされる。
【0076】
上述した条件を満足させるように研磨工程を実施することにより、グリーンチップ49ならびに/またはセラミック側面層13および14を構成する未焼成のセラミック材料が、グリーンチップ49とセラミック側面層13および14の各々との界面を埋めるように伸ばされた結果、この未焼成のセラミック材料が言わば「パテ」のような役割を果たし、グリーンチップ49とセラミック側面層13および14との間の接着力が高められる。
【0077】
この研磨工程において、未焼成の部品本体2の端面7および8に露出した未焼成の内部電極10および11の露出端15および16は、前述したように、面取り部19の曲面形成範囲にかからないようにされる。
【0078】
次に、未焼成の部品本体2が焼成される。焼成温度は、セラミックグリーンシート41ならびにセラミック側面層13および14に含まれるセラミック材料や内部電極10および11に含まれる金属材料にもよるが、たとえば900〜1300℃の範囲に選ばれることが好ましい。
【0079】
次に、焼成後の部品本体2の両端面7および8に導電性ペーストを塗布し、焼き付けることによって、外部電極17および18の下地層が形成される。焼き付け温度は、700〜900℃であることが好ましい。
【0080】
そして、必要に応じて、外部電極17および18の上記下地層表面にめっきが施され、図1に示した積層セラミックコンデンサ1が完成される。
【0081】
上述した第1の実施形態において、穴あき部47の形状を変更することにより、内部電極10および11の引出し部25および29の形状を種々に変更することができる。
【0082】
次に、この発明の範囲またはより好ましい範囲での効果を確認するために実施した実験例について説明する。
【0083】
上述した第1の実施態様に従って、試料となる積層セラミックコンデンサを作製した。ここで、試料となる積層セラミックコンデンサの寸法は、2.00mm×1.25mm×1.25mmであった。なお、幅寸法1.25mmはWgを30μmとしたときの狙い値であり、幅寸法はWgの値を変動させるとその分変動する。また、セラミック層は、その厚みを0.8μmとし、BaTiOを主成分とするセラミックから構成した。内部電極は、その厚みを0.5μmとし、Niを導電成分とし、積層数を900とした。また、還元性雰囲気中、最高温度1200℃で焼成を実施した。外部電極は、Cu焼付け膜の上にNiめっきおよびSnめっきを施したものとした。
【0084】
このような積層セラミックコンデンサにおいて、表1に示すように、内部電極の対向部の側辺から部品本体の側面までのギャップ寸法Wg、面取り部の曲面の曲率半径Rd、および、対向部の側辺から露出端の端部までの距離Dを種々に変更したものを作製した。
【0085】
そして、得られた各試料に係る積層セラミックコンデンサについて、表1に示すように、「ギャップ剥がれ」、「耐湿不良」、「外層剥がれ」、「ギャップ亀裂」および「欠け割れ」を評価した。
【0086】
なお、「ギャップ剥がれ」は、倍率50倍の実体顕微鏡にて試料を観察し、ギャップ部分での剥がれの有無を評価し、試料数300個中で剥がれが生じた試料の比率を求めたものである。実体顕微鏡としては、株式会社ニコン製SMZ645を用いた。その他の評価で用いられる実体顕微鏡についても同じ実体顕微鏡であった。
【0087】
「耐湿不良」は、温度85℃、相対湿度85%の環境下で、4Vの電圧を1000時間、試料に印加した後、絶縁抵抗が0.13MΩ未満となった試料を不良と判定し、試料数100個中での不良数の比率を求めたものである。なお、絶縁抵抗測定には、Agilent社製4349B4チャネルハイレジスタンスメータを用いた。
【0088】
「外層剥がれ」は、倍率50倍の実体顕微鏡にて試料を観察し、外層付近でのセラミック層の剥がれの有無を評価し、試料数300個中で剥がれが生じた試料の比率を求めたものである。
【0089】
「ギャップ亀裂」とは、セラミック側面層13および14を構成するセラミックグリーンシートが破れる欠陥であり、線状のキズのような形で表面に現れる。この「ギャップ亀裂」は、倍率50倍の実体顕微鏡にて試料を観察し、試料数300個について、ギャップ部分での亀裂の有無を評価したものである。
【0090】
「欠け割れ」は、倍率50倍の実体顕微鏡にて試料を観察し、試料の特にコーナー部分での欠けや割れの有無を評価し、試料数300個中で剥がれが生じた試料の比率を求めたものである。
【0091】
【表1】

【0092】
試料3〜5、12〜14、16〜18、20〜22および24〜26では、
Wg<Rd、
Rd<Wg+D、
15μm≦Wg、および
55μm≦Rd
の条件を満足しており、「ギャップ剥がれ」、「耐湿不良」、「外層剥がれ」、「ギャップ亀裂」および「欠け割れ」のいずれについても不良は生じなかった。
【0093】
これらに対して、試料1および2では、Rd≧Wg+Dとなり、「耐湿不良」について不良が生じ、特に試料1では、「外層剥がれ」についても不良が生じた。
【0094】
試料6〜10について見ると、これらは、Rdが55μm未満であった。そのため、「欠け割れ」を完全には防止することができなかった。また、試料6〜10のうち、Wg<Rdである試料6〜8では、「ギャップ剥がれ」および「耐湿不良」についての不良を防止することができたが、Wg≧Rdである試料9および10では、「ギャップ剥がれ」および「耐湿不良」についての不良を完全には防止することができなかった。
【0095】
上述した試料6に加えて、試料11、15、19、23および27では、Wgが15μm未満であるため、「ギャップ亀裂」を完全には防止することができなかった。
【0096】
上述した試料23および27に加えて、試料28および29では、Rd≧Wg+Dであるので、「耐湿不良」を完全には防止することができなかった。
【0097】
次に、図10ないし図12を参照して、この発明の第2の実施形態について説明する。なお、図10は図3に対応し、図11は図6に対応し、図12は図7に対応する。図10ないし図12において、それぞれに対応する図面に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0098】
第2の実施形態では、図10に示すように、内部電極10および11の引出し部25および29は、対向部24および28より狭い幅を有し、かつ一定の幅をもって延びている。また、対向部24および28の、引出し部25および29へと連なる領域では、引出し部25および29の幅と等しくなるように、幅が次第に狭くなっている。
【0099】
上述した内部電極10および11を得るため、図11に示すような内部電極パターン62が形成されたセラミックグリーンシート61が用意される。図11において、上下方向に延びる仮想切断線63およびこれに対して直交する左右方向に延びる仮想切断線64が図示されている。内部電極パターン62は、網状をなしており、内部電極10の対向部24となるべき部分と内部電極11の対向部28となるべき部分とが上下方向に交互に連結されながら連なった形態を与えている。
【0100】
網状の内部電極パターン62には、内部電極パターンが形成されない上下方向に長手の八角形状の穴あき部65が千鳥状に配置されている。上下方向に隣接する穴あき部65間には、引出し部25および29となるべき部分が位置している。
【0101】
上述したセラミックグリーンシート61を積層するにあたっては、図11(A)と同(B)とに示すように、穴あき部65の左右方向の間隔分ずつ、内部電極パターン62を左右方向にずらすように、セラミックグリーンシート61がずらされながら積層される。
【0102】
上述の積層によって得られたマザーブロック66の一部が図12に拡大されて示されている。マザーブロック66は、図11に示した仮想切断線63および64に沿って切断され、図8に示すようなグリーンチップ49が得られる。図12において、マザーブロック66におけるグリーンチップ49となるべき箇所が破線で囲まれて示されている。
【0103】
図11および図12からわかるように、上下方向の仮想切断線63の各々は、穴あき部65を左右方向において2等分するように位置しており、左右方向の仮想切断線64は、その2本が1つの穴あき部65を横切るように位置している。
【0104】
上述した第2の実施形態において、穴あき部65の形状を変更することにより、内部電極10および11の引出し部25および29ならびにそれらに連なる対向部24および28の端部の形状を種々に変更することができる。たとえば、穴あき部65の形状を長方形に変更すれば、以下の第3の実施形態のような内部電極10および11の形状が得られる。
【0105】
次に、図13を参照して、この発明の第3の実施形態について説明する。なお、図13は図3に対応する。図13において、図3に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0106】
第3の実施形態では、第2の実施形態の場合と同様、内部電極10および11の引出し部25および29は、対向部24および28より狭い幅を有し、かつ一定の幅をもって延びている。しかし、対向部24および28の、引出し部25および29へと連なる領域で幅が次第に狭くなる構成は採用されていない。
【0107】
次に、図14ないし図16を参照して、この発明の第4の実施形態について説明する。なお、図14は図3に対応し、図15は図6に対応し、図16は図7に対応する。図14ないし図16において、それぞれに対応する図面に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0108】
第4の実施形態では、図14に示すように、内部電極10および11の露出端15および16は、対向部24および28より狭い幅を有し、引出し部25および29は、端面7および8に向かって次第に狭くなる幅方向寸法を有している。これらのことは、第1の実施形態の場合と実質的に同様である。
【0109】
第4の実施形態の特徴となるところは、ダミー電極69および70が、それぞれ、端面8および7に露出するように形成されることである。
【0110】
上述した内部電極10および11ならびにダミー電極69および70を得るため、図15に示すような帯状の内部電極パターン72が複数列形成されたセラミックグリーンシート71が用意される。図15において、帯状の内部電極パターン72が延びる長手方向(図15による上下方向)の仮想切断線73およびこれに対して直交する幅方向(図15による左右方向)の仮想切断線74が図示されている。帯状の内部電極パターン72は、内部電極10および11の各々の対向部24および28が交互に長手方向に連結された形状をなしている。
【0111】
帯状の内部電極パターン72は、その隣接するもの同士が互いに噛み合うように、長手方向に沿ってジグザグ状に延びる1対の側辺75および76を有し、隣接する帯状の内部電極パターン72の間には、長手方向に沿ってジグザグ状に延びるギャップ領域77が形成される。
【0112】
上述した長手方向の仮想切断線73は、ギャップ領域77を幅方向において2等分するように位置している。このとき、仮想切断線73の一方側に内部電極10または11の引出し部25または29となるべき部分が与えられる位置の他方側には、ダミー電極69または70となるべき部分が与えられる。
【0113】
上述したセラミックグリーンシート71を積層するにあたっては、図15(A)と同(B)とに示すように、帯状の内部電極パターン72の長手方向に沿って、セラミックグリーンシート71を所定間隔、すなわち内部電極パターン72の側辺75および76のジグザグ状の周期の半分ずつ、ずらされながら積層される。
【0114】
上述の積層によって得られたマザーブロック78の一部が図16に示されている。マザーブロック78は、図15に示した仮想切断線73および74に沿って切断され、図8に示すようなグリーンチップ49が得られる。図15において、マザーブロック78におけるグリーンチップ49となるべき箇所が破線で囲まれて示されている。
【0115】
図15および図16に示した内部電極パターン72を用いた場合、引出し部25および29の各々の反対側にダミー電極69および70が形成されるが、この引出し部25および29の露出端15および16の各幅と、ダミー電極69および70の露出端の各幅とはほぼ同じになる。
【0116】
この実施形態のように、ダミー電極69および70を形成することにより、引出し部25および29に関連して生じやすい積層部12またはグリーンチップ49における段差を減少させることができるとともに、外部電極17および18の部品本体2に対する接合強度を高めることができる。
【符号の説明】
【0117】
1 積層セラミックコンデンサ
2 部品本体
3,4 主面
5,6 側面
7,8 端面
9 セラミック層
10,11 内部電極
12 積層部
13,14 セラミック側面層
15,16 露出端
17,18 外部電極
19〜21 面取り部
22,23,26,27 対向部の側辺
24,28 対向部
25,29 引出し部
30,31 界面
32 交線
41,61,71 セラミックグリーンシート
42,62,72 内部電極パターン
43,44,63,64,73,74 仮想切断線
45,46,75,76 内部電極パターンの側辺
47,65 穴あき部
48,66,78 マザーブロック
49 グリーンチップ
50,51 平行側面
77 ギャップ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する1対の主面と、互いに対向する1対の側面と、互いに対向する1対の端面とを有し、前記側面と前記端面との間の稜線に沿って丸みを帯びた面取り部が形成され、前記主面方向に延びかつ前記主面に直交する方向に積層された複数のセラミック層と、前記セラミック層間の界面に沿って形成されかつ前記1対の端面のいずれかに露出する露出端を持つが、前記側面には露出しない複数対の内部電極とを有する、部品本体を作製する工程と、
前記内部電極の各前記露出端に電気的に接続されるように、前記部品本体の少なくとも前記1対の端面上に外部電極を形成する工程と
を備え、
前記部品本体を作製する工程は、
前記部品本体の前記側面の内側に位置しかつ前記側面に平行な面である平行側面を有し、未焼成の前記複数のセラミック層と未焼成の前記複数対の内部電極とをもって構成された積層構造を有し、かつ前記平行側面に前記内部電極を露出させた状態にある、グリーンチップを準備する工程と、
前記平行側面に露出した未焼成の前記内部電極を被覆するように、前記グリーンチップの前記平行側面上に未焼成のセラミック材料を付与することによって、前記部品本体の前記側面を与えるべきセラミック側面層を前記グリーンチップの前記平行側面上に形成する工程と、
前記セラミック側面層が形成された前記グリーンチップを研磨し、それによって、前記面取り部を形成した未焼成の前記部品本体を得る、研磨工程と、
前記未焼成の部品本体を焼成する工程と
を含み、
前記研磨工程において、前記グリーンチップと前記セラミック側面層との界面と、未焼成の前記部品本体の外表面との交線が、前記面取り部の曲面形成範囲内に位置するようにされる、
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記グリーンチップを準備する工程は、
セラミックグリーンシート上に、帯状の内部電極パターンを複数列形成する工程と、
前記帯状の内部電極パターンが延びる長手方向に対して直交する幅方向に沿って、前記セラミックグリーンシートを所定間隔ずらしながら積層することによって、マザーブロックを作製する工程と、
前記長手方向の仮想切断線および前記幅方向の仮想切断線に沿って、前記マザーブロックを切断する工程と
を含む、請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記帯状の内部電極パターンは、前記長手方向に沿って直線状に延びる1対の側辺を有し、
前記長手方向の仮想切断線は、前記帯状の内部電極パターンを前記幅方向において2等分するように位置する、
請求項2に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記帯状の内部電極パターンは、内部電極パターンが形成されない穴あき部を有し、前記穴あき部は、前記帯状の内部電極パターンの前記幅方向中央において、前記長手方向に沿って所定のピッチで分布しており、
前記長手方向の仮想切断線は、前記穴あき部を前記幅方向において2等分するように位置する、
請求項3に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記帯状の内部電極パターンは、その隣接するもの同士が互いに噛み合うように、前記長手方向に沿ってジグザグ状に延びる1対の側辺を有し、
隣接する前記帯状の内部電極パターンの間には、前記長手方向に沿ってジグザグ状に延びるギャップ領域が形成され、
前記長手方向の仮想切断線は、前記ギャップ領域を前記幅方向において2等分するように位置する、
請求項2に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項6】
互いに対向する1対の主面と、互いに対向する1対の側面と、互いに対向する1対の端面とを有し、前記側面と前記端面との間の稜線に沿って丸みを帯びた面取り部が形成され、前記主面方向に延びかつ前記主面に直交する方向に積層された複数のセラミック層と、
前記セラミック層間の界面に沿って形成されかつ前記1対の端面のいずれかに露出する露出端を持つが、前記側面には露出しない複数対の内部電極とを有する、部品本体と、
前記内部電極の各前記露出端に電気的に接続されるように、前記部品本体の少なくとも前記1対の端面上に形成された、外部電極と
を備え、
前記内部電極は、
前記側面に対して平行な1対の側辺を有するとともに、前記セラミック層を介して別の前記内部電極と対向する、対向部と、
前記対向部から前記端面に引き出され、その端部に前記露出端を形成する、引出し部と
を有し、
前記側面間を結ぶ幅方向で見て、前記引出し部の前記露出端の幅は、前記対向部の幅より狭く形成され、
前記対向部の前記側辺から前記部品本体の前記側面までのギャップ寸法をWg、前記面取り部の曲面の曲率半径をRd、前記対向部の前記側辺から前記露出端までの距離をD、としたとき、
Wg<Rd、かつ、
Rd<Wg+D
を満足する、
積層セラミック電子部品。
【請求項7】
15μm≦Wg、かつ
55μm≦Rd
を満足する、
請求項6に記載の積層セラミック電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−94819(P2012−94819A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174927(P2011−174927)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】