説明

積層ポリエステルフィルム及びその製造方法

【課題】優れた耐加水分解性を有し、フィルム表面へのメタル化や印刷特性に優れ、耐加水分解剤の揮発による臭気の問題も生じない積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】耐加水分解剤を含有しポリエステルから成るベース層Bと、耐加水分解剤を含有しない少なくとも1つの外層Aとから成る積層ポリエステルフィルムであって、ベース層Bに含有される耐加水分解剤が、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル、エポキシ化脂肪酸グリセリンエステル又はそれらの混合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層ポリエステルフィルムに関し、詳しくは、2層以上から成り、少なくとも1種の耐加水分解剤を含有し、耐加水分解剤の含有量が少なく、好ましくは厚さが0.4〜500μmである耐加水分解性に優れた積層ポリエステルフィルムに関する。本発明は、更に、当該積層ポリエステルフィルムの製造方法およびその使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
0.4〜500μmの厚さを有するポリエステルフィルムは公知である。この種のポリエステルフィルムは、一般に耐加水分解性が低いという欠点を有する。特に、ポリエステルのガラス転移温度を超える状況下において、加水分解を被りやすい。加水分解は湿気などの水分によって生じ、ポリエステルの固有粘度IVや標準粘度SVの低下を引起す。特に、フィルムコンデンサー、ケーブルの鎧装、リボンケーブル、エンジン保護フィルム等の高熱に曝されるフィルムや、窓ガラス用フィルム、屋外で使用するフィルム等の長期間使用するフィルムにおいては、上記耐加水分解性が使用限界の要因となる。
【0003】
上記の加水分解は、脂肪族ポリエステルだけでなく、PBTやPETのような芳香族ポリエステルにおいても著しい。PETでは加水分解が顕著に起りやすいような状況で使用する場合、より耐加水分解性が良好なPENや、ポリエーテルイミド、ポリイミド等の他のポリマーが使用される。しかしながら、これらの耐加水分解性が良好なポリマーは、PETと比較して高価であるという問題がある。
【0004】
ポリエステルフィルムの耐加水分解性を向上されるために、耐加水分解剤を添加することが知られている。例えば、カルボジイミドを含有する耐加水分解性が向上したポリエステル原料および当該原料を使用して製造される繊維およびフィルムが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、このような耐加水分解剤を含有するフィルムは、製造工程や使用において、イソシアナートや他の副生物および分解物によるガスが発生し、このガスが粘膜を刺激したり、健康被害をもたらす。射出成型品よりも、シートやフィルムのような大きな表面積を有する成型品の方が、上記の問題が特に生じやすい。
【0005】
また、エポキシ基を有する耐加水分解剤も知られている(例えば、特許文献4〜5参照)上記の耐加水分解剤は、エピクロルヒドリンによるオキシラン環形成に基づく作用をするが、特に末端エポキシ基により、低分子有毒化合物が熱により排出される傾向がある。そのため、カルボジイミドを耐加水分解剤として使用する場合と同様の問題が生じる。また、上記の耐加水分解剤のポリマーマトリックス中への分散が不十分である場合は、反応時間を長くすることになり、二軸延伸ポリエステルフィルムの場合にはヘーズが悪化する。
【0006】
さらに、カルボジイミドと他の化合物による公知の耐加水分解剤(例えば、特許文献4参照)を使用した場合、ポリマーの粘度が上昇し、押出工程において、押出の不安定性や制御困難な問題が生じる。
【0007】
また、工業用油、野菜抽出エステル、ポリウレタン、ポリエステル及び耐加水分解剤としてエポキシ化脂肪酸アルキルエステル及びエポキシ化脂肪酸グリセリンエステルの混合物から成り、第3成分として30重量%未満のカルボジイミドを含有する混合物も知られている(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、ポリエステルフィルムへのこれらの耐加水分解剤の添加については知られていない。これらの耐加水分解剤を特にフィルムの外層(単層の場合はフィルムそれ自身)に配合すると、フィルム表面へのメタル化や印刷特性が悪化し、耐加水分解剤の揮発による臭気の問題が生じる。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5885709号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0838500号明細書
【特許文献3】スイス特許出願公開第621135号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開第0292251号明細書
【特許文献5】米国特許第3657119号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第10349168号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、上記の従来技術における欠点を克服した耐加水分解性に優れたポリエステルフィルムを提供することにある。
【0010】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、耐加水分解剤を含有するベース層と、耐加水分解剤を含有しない少なくとも1つの外層とから成る積層ポリエステルフィルムにおいて、耐加水分解剤として、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル、エポキシ化脂肪酸グリセリンエステル又はそれらの混合物を使用することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明の第1の要旨は、耐加水分解剤を含有しポリエステルから成るベース層Bと、耐加水分解剤を含有しない少なくとも1つの外層Aとから成る積層ポリエステルフィルムであって、ベース層Bに含有される耐加水分解剤が、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル、エポキシ化脂肪酸グリセリンエステル又はそれらの混合物であることを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
【0012】
本発明の第2の要旨は、耐加水分解剤を含有する積層ポリエステルフィルムであって、耐加水分解剤が、少なくとも1種のエポキシ化脂肪酸アルキルエステルと少なくとも1種のエポキシ化脂肪酸グリセリンエステルの混合物であり、積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステル中に、耐加水分解剤が液体担持物として添加されることを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
【0013】
本発明の第3の要旨は、共押出法により積層シートを形成する工程と、得られた積層シートを二軸延伸して積層フィルムを得る工程と、得られた積層フィルムを熱固定する工程とから成る上記第1又は2の要旨に記載の積層ポリエステルフィルムの製造方法に存する。
【0014】
本発明の第4の要旨は、上記第1又は2の要旨に記載の積層ポリエステルフィルムから成るフィルムコンデンサーに存する。
【0015】
本発明の第5の要旨は、上記第1又は2の要旨に記載の積層ポリエステルフィルムから成るリボンケーブルに存する。
【0016】
本発明の第6の要旨は、上記第1又は2の要旨に記載の積層ポリエステルフィルムから成る太陽電池に存する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、優れた耐加水分解性を有するだけでなく、フィルム表面へのメタル化や印刷特性に優れ、耐加水分解剤の揮発による臭気の問題も生じないという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のポリエステルフィルムは、ベース層Bと少なくとも1層の外層から成る。外層は耐加水分解剤を含有しない。
【0019】
ベース層Bはポリエステルを主成分として成る。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ビベンゼン変性ポリエチレンテレフタレート(PETBB)、ビベンゼン変性ポリブチレンテレフタレート(PBTBB)、ビベンゼン変性ポリエチレンナフタレート(PENBB)、これらのポリエステルを主成分とする共重合体およびこれら2種以上の混合物が挙げられ、中でも、PET、PBT、PEN、PTT、これらのポリエステルを主成分とする共重合体およびこれら2種以上の混合物が好ましい。
【0020】
ポリエステルとしては、上述のように共重合ポリエステルであってもよく、また、ホモポリエステル及び/又は共重合ポリエステルの混合物であってもよい。共重合ポリエステルの共重合成分としては、ジメチルテレフタレート(DMT)、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、1,4−ブタンジオール、テレフタル酸(TA)、ベンゼンジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸(NDA)、イソフタル酸単位(IPA)、trans−及び/又はcis−1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(c−CHDM、t−CHDM、c/t−CHDM)等が挙げられ、更に、他のジカルボン酸単位(ジカルボン酸エステル単位)、ジオール単位などを使用してもよい。これらの共重合成分は2種以上組合せて使用してもよい。
【0021】
ポリエステルのジカルボン酸成分は、90重量%以上、好ましくは95重量%以上のテレフタル酸(TA)から成ることが好ましく、ポリエステルのジオール成分は、90重量%以上、好ましくは93重量%以上のエチレングリコール(EG)から成ることが好ましい。また、ポリエステルの全量を基準として0.5〜2重量%のジエチレングリコールを含有させることが好ましい。なお、上記の含有量には、耐加水分解剤を考慮しない。
【0022】
本発明では、さらに、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、PHBとポリヒドロキシバレレートとの共重合体(PHV)、ポリヒドロキシブチレート−バレレート(PHBV)、ポリε−カプロラクトン(PCL)、SP 3/6、4/6(1,3−プロパンジオール/アジペート又は1,4−プロパンジオール/アジペート)、ポリカプロラクトン、アジピン酸から形成されるポリエステル、脂肪族カルボン酸から形成されるポリエステル等の脂肪族ポリエステルも使用できる。
【0023】
本発明のポリエステルフィルムは、表面形状、光学的特性の観点から、無機および/または有機粒子を含有することが好ましい。無機および/または有機粒子としては、炭酸カルシウム、アパタイト、二酸化ケイ素(シリカ)、二酸化チタン、アルミナ、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子、ゼオライト、アルミニウムシリケート等の他のシリケート粒子などが例示される。これらの粒子の配合量は、フィルムの重量を基準として、通常0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜0.6重量%である。
【0024】
本発明のポリエステルフィルムは、上記粒子の他に、難燃剤、フリーラジカル捕捉剤、ポリエーテルイミド等の他のポリマー等を1種または2種以上組合せて添加することが出来る。
【0025】
本発明のポリエステルフィルムは、耐加水分解剤を含有する。耐加水分解剤の含有量は、ポリエステルフィルムの重量を基準として、通常0.1〜20.0重量%、好ましくは1.0〜6.0重量%。特に好ましくは1.5〜4.5重量%である。
【0026】
エポキシ化脂肪酸アルキルエステル及び/又はエポキシ化脂肪酸グリセリンエステルは耐加水分解剤として好適である。グリセリンエステルの混合物(脂肪酸グリセリド)は、純粋なグリセリンエステル又はCHОR−CHОR−CHОRで示されるグリセリンエステルの混合物であり、耐加水分解剤として好適である。ここで、式中、R〜Rは、カルボニル基、メチレン基(−CH−)を有するブロック(1)、エポキシ基(−CHОCH−)を有するブロック(2)、CHCH基を有するブロック(3)及びRを有する下記式[1]で示さる基であることが好ましい。R〜Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
【化1】

【0028】
[1]式中、RはCHまたはHであり、mは0〜40、好ましくは7〜20、更に好ましくは10〜16であり、nは1〜10、好ましくは1〜4、更に好ましくは2〜3であり、pは0〜4、好ましくは0である。好ましくは、ブロック(1)がm≧2のメチレン基であり、特に好ましくはカルボニル基の後のブロック(1)がm=7のメチレン基であり、1つ以上のブロック(2)又は(3)が続き、再度ブロック(1)が続く基である。なお、R〜R中の(1)〜(3)の各ブロックに存在する基の総数をブロックの指標とする。
【0029】
2種以上のエポキシ化脂肪酸グリセリンエステルの混合物を耐加水分解剤として使用する場合、m=0のR、R及びRの合計量は、エポキシ化脂肪酸グリセリンエステルの混合物の重量を基準として、通常30重量%未満、好ましくは20重量%未満、さらに好ましくは10重量%未満である。
【0030】
、R及びRの1つ以上が、H(エステル化されていない)、不飽和脂肪酸とのエステル基(二重結合を有し、完全にエポキシ化されていない)又は−(PO)−O−(CH−N(CH)の3基であってもよい。しかしながら、このような化合物はあまり好ましくないので、エポキシ化脂肪酸グリセリンエステルの混合物の重量を基準として、通常20重量%未満、好ましくは5重量%未満とする。
【0031】
エポキシ化脂肪酸グリセリンエステル又はその混合物は、天然有機物(生体有機物)から得られるエポキシ化油が好ましく、グリセリンエステルに加えてプロテイン等の他の基質が、エポキシ化脂肪酸グリセリンエステルの重量を基準として、通常10重量%未満、好ましくは2重量%未満含有されていてもよい。
【0032】
DIN EN ISO 3682に準じて測定した耐加水分解剤の酸価は、通常10mg(KOH/g)未満、好ましくは2mg(KOH/g)未満である。
【0033】
耐加水分解剤中の210℃未満の沸点を有する成分の含有量は、耐加水分解剤の重量を基準として、通常5重量%未満、好ましくは1重量%未満である。
【0034】
DIN 53018に準じて測定した、25℃における耐加水分解剤の粘度は、通常300mPa・sより大きく、好ましくは500mPa・sより大きく、更に好ましくは700mPa・sより大きい。これにより、耐加水分解効果が優れる。
【0035】
耐加水分解剤中のエポキシ基に由来する酸素の含有量は、通常0.5重量%以上、好ましくは1.5重量%、より好ましくは2.0重量%である。
【0036】
エポキシ化脂肪酸グリセリンエステルとしては、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化菜種油、エポキシ化ひまわり油、エポキシ化魚油などが挙げられ、これらは2種以上組合せて使用してもよい。これらのエポキシ化油の組合せの組成物に関する各エポキシ化油の種類やその配合量について、「Rompp Chemie Lexikon」(Rompp’s Chemical Encyclopedia、10th edition、Georg Thieme Verlag、Stuttgart)に記載されている。
【0037】
エポキシ化脂肪酸アルキルエステルは、飽和、不飽和またはポリ不飽和(不飽和基が多数存在)脂肪酸アルキルエステルであり、エポキシ基に由来する酸素の含有量が好ましくは1.5〜15重量%(エポキシ化エステルを基準)である。アルキル基としては、炭素数1〜20の直鎖または分岐アルキル基が好ましい。脂肪酸としては、上記のグリセリンエステルで説明したR〜Rが好ましく使用できる。
【0038】
本発明の耐加水分解剤(エポキシ化脂肪酸アルキルエステル、エポキシ化脂肪酸グリセリンエステル又はそれらの混合物)は、別々に使用することが好ましく、例えば、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル、複数のエポキシ化脂肪酸アルキルエステルの混合物、エポキシ化脂肪酸グリセリンエステル、又は複数のエポキシ化脂肪酸グリセリンエステルの混合物として使用することが好ましい。もちろん、エポキシ化脂肪酸アルキルエステルとエポキシ化脂肪酸グリセリンエステルを組合せて使用することも出来る。何れの場合においても、後述する液体担持物としての形態で、上記の耐加水分解剤を使用することが好ましい。特に、エポキシ化脂肪酸グリセリンエステルとして、天然(生体)有機物から得られるエポキシ化油を使用することが好ましい。本発明の耐加水分解剤は公知であり、市販品を使用することが出来る(例えば、実施例で使用した耐加水分解剤を参照)。
【0039】
エポキシ化脂肪酸アルキルエステルの好ましい例としては、不飽和脂肪酸または複数の不飽和脂肪酸の混合物の熱安定性2−エチルヘキシルエステルであり、エポキシ基に由来する酸素の含有量は、好ましくは1.5〜15重量%、更に好ましくは4〜8重量%(エポキシ化脂肪酸アルキルエステルを基準)である。上記不飽和脂肪酸としては、エポキシ化菜種油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、エポキシ化魚油などが挙げられ、これらは2種以上組合せて使用してもよい。
【0040】
本発明のポリエステルフィルムには、フリーラジカル捕捉剤としての機能を有する安定剤を添加することが好ましい。フリーラジカル捕捉剤のフリーラジカルの第2反応により、押出中の活性オキシラン基の失活を防ぐことが出来、好ましい。本発明のポリエステルフィルムは、上記のフリーラジカル捕捉剤または熱安定剤などの安定剤を、ポリエステルフィルムの重量を基準として、通常50〜15000ppm、好ましくは100〜5000ppm、より好ましくは300〜1000ppm含有させることが好ましい。
【0041】
上記の安定剤としては、ヒンダードフェノール類、2級芳香族アミン等の立体障害性を有する第1の安定剤と、チオエーテル類、亜燐酸塩類(ホスファイト)、ホスホナイト(ホスホニウム塩)、ジブチルチオカルバミン酸亜鉛などの第2の安定剤とが例示される。第1の安定剤と第2の安定剤とを組合せて使用することによりそれらの相乗効果が得られるため好ましい。中でもフェノール系安定剤が好ましい。
【0042】
フェノール系安定剤としては、ヒンダードフェノール、チオビスフェノール、アルキリデンビスフェノール、アルキルフェノール、ヒドロキシベンジル化合物、アクリルアミノフェノール、ヒドロキシフェニルプロピオネート等が例示される。詳細は、「Kunststoffadditive」(プラスチック添加剤、第2版、Gachter Muller著、Carl Hanser−Verlag社)および「Plastics Additives Handbook」(第5版、Dr. Hans Zweifel著、Carl Hanser−Verlag社)に記載されている。
【0043】
具体的な市販品としては、Ciba Specialties社(Basle、スイス)のCAS番号6683−19−8、36443−68−2、35074−77−2、65140−91−2、23128−74−7、41484−35−9、2082−79−3及び「Irganox(登録商標)1010、1222、1330、1425」、「Irgaphos(登録商標)168」等が例示される。これらは2種以上組合せて使用してもよい。
【0044】
上記の安定剤は、ポリエステル製造工程前に、耐加水分解剤に添加するのではなく、ポリエステルに添加することが好ましい。
【0045】
耐加水分解剤は、マスターバッチ法により添加することが出来る。押出機内でポリエステルを溶融し、耐加水分解剤を押出機内に供給する。これらの混合物をペレット化ダイを介して押出し、冷却し、ペレット化する。マスターバッチ中の耐加水分解剤の含有量は、通常2〜40重量%である。マスターバッチ法による耐加水分解剤の添加はあまり有利な方法とは言えない。なぜならば、マスターバッチを調製する際に、ポリエステルと共に耐加水分解剤を押出しており、フィルムの製造において再度押出しを行うからである。これにより、耐加水分解剤の効力が減少する可能性がある。したがって、溶融シートを押出す工程において、直接押出機に耐加水分解剤を供給することが好ましい。
【0046】
耐加水分解剤は、前述の「液体担持物(dry liquid)」として使用することが好ましい。ここで、「液体担持物」とは、50重量%以上、好ましくは75重量%以上、特に好ましくは95重量%以上の耐加水分解剤を担体(キャリアー粒子)等に吸収、担持させた担持物を言い、液状である耐加水分解剤をドライな状態で使用できる。キャリアー粒子としては、とりわけ珪酸塩(シリケート)類が好ましく、例えば、Sipernat 22LS(Degussa社製)やHi−Sil ABS(PPG Industries社製)等の合成シリカ、珪藻土珪酸塩類、カルシウムシリケート、ゼオライト、リン酸アルミニウム、ポリマーモレキュラーシーブズ、カーボンモレキュラーシーブズ等が挙げられる。上記のキャリアー粒子の平均粒径(メジアン粒径)d50は、通常300μm未満、好ましくは150μm未満特に好ましくは50μm未満である。DIN 53601に準じて測定した吸油量(DBP、キャリアー粒子の重量を基準)は、通常20g/100gを超え、好ましくは100g/100gを超え、更に好ましくは200g/100gを超える。上記の担体(キャリアー粒子)は、撹拌混合機(スターラー)等の手段を使用して耐加水分解剤と混合し、耐加水分解剤を担持させる。なお、担体としては、フィルムの原料であって、耐加水分解剤を担持できるものであればどのようなものでも使用できる、例えば、原料ポリマーの粉砕物は比較的表面積が大きいため、担体として利用することが出来る。
【0047】
担体に担持された耐加水分解剤(液体担持物)および残余のそれと一緒に供給されるフリーの耐加水分解剤は、フィルム製造工程における押出機に直接供給されることが好ましい。担体に担持された耐加水分解剤を使用した場合、担体を使用しないフリーの耐加水分解剤と違って、単軸押出機の供給口に直接添加するだけで優れた耐加水分解性を達成できる。なお、担体に担持された耐加水分解剤は、マスターバッチ法によって添加してもよい。すなわち、担体に担持された耐加水分解剤は、押出機、好ましくは複数軸の押出機に供給され、ポリマーに導入される。フィルム製造工程において、このマスターバッチポリマーは、このまま再度押出されるか、或いは他のポリマーと混合されて再度押出される。
【0048】
しかしながら、上記のマスターバッチ法による耐加水分解剤の添加はあまり有利な方法とは言えない。なぜならば、マスターバッチを調製する最初の押出工程において、耐加水分解剤の効力が消費されるため(反応により消費)、フィルム中に存在しても効力が無い可能性がある。液体担持物として耐加水分解剤をフィルムに添加する場合は、耐加水分解剤の添加重量に対し、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上の担体(キャリアー粒子)を一緒に添加することが好ましい。
【0049】
本発明の積層フィルムは、通常の積層フィルムを製造する方法で製造でき、耐加水分解剤を含有しない少なくとも1層の外層を有する少なくとも2層から成る積層フィルムであることが好ましく、特に好ましくは3層から成る積層フィルムである。特に、すべての外層が耐加水分解剤を含有しない積層フィルムであることが好ましい。
【0050】
本発明の積層フィルムを構成する耐加水分解剤を含有しない外層の厚さは、出来る限り薄いことが好ましく、通常5μm未満、好ましくは1μm未満、理想的には0.6μm未満である。しかしながら、外層の厚さは0.1μm以上であることが好ましい。
【0051】
耐加水分解剤を含有しない層のポリマー及び耐加水分解剤を除く添加剤は、耐加水分解剤を含有する層のそれらと同じであることが好ましい。
【0052】
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、末端カルボキシ基量が少ないことが好ましい。この種のポリエステルに関しては、欧州特許出願公開第0738749号明細書に記載されている。ポリエステルの末端カルボキシ基量は、通常25mmolH+/kg未満、好ましくは15mmolH+/kg未満である。上記のポリエステルの末端カルボキシ基量を達成するには、通常ポリエステルの固相重合を行う。固相重合前のポリエステルのiv(トリクロロエタン/フェノール混合溶媒における固有粘度、米国特許第3432591号明細書参照)は、通常0.52〜0.58である。固相重合は、通常、次の様な各工程から成る。先ず、ポリエステルを結晶化(通常150〜170℃、0.01〜2時間)し、乾燥(通常160℃、1mbar未満で1〜5時間)する。次いで、通常210〜230℃、1mbar未満で5〜20時間実質的な固相重合を行う。最後に、乾燥窒素下で1〜4時間、得られたポリマーを冷却する。得られるポリエステルのivは、通常0.61〜0.72となる。ただし、ivが高すぎると、欧州特許出願公開第0738749号明細書にも記載されている様に、押出機内の温度を高くし、剪断力を強くする必要があり、それにより、溶融体が加水分解を受けやすくなるという問題がある。そこで、本発明において、耐加水分解剤を含有する層のポリエステルのivは0.61〜0.72であることが好ましい。更に、耐加水分解剤を含有する層のポリエステルのivと、耐加水分解剤を含有しない層のポリエステルのivとの差が0.1以下であることが好ましく、0.03以下であることが更に好ましい。
【0053】
次に、本発明のポリエステルフィルムの製造方法を説明する。本発明のポリエステルフィルムの製造方法は、共押出法により積層シートを形成する工程と、得られた積層シートを二軸延伸して積層フィルムを得る工程と、得られた積層フィルムを熱固定する工程とから成る。すなわち、各層に対応する溶融体をフラットフィルムダイを介して押出す工程と、1つ以上のロール(冷却ロール)を使用して押出された溶融体を引取り、冷却固化して非晶シートを得る工程と、非晶シートを再加熱して二軸延伸し、二軸延伸フィルムを得る工程と、二軸延伸フィルムを熱固定する工程とから成る。
【0054】
押出工程における温度は、295℃を超えないことが好ましい。押出ダイ、特に押出ダイリップとその付近の温度が290℃以下、更に285℃以下、特に275℃以下とすることが好ましい。
【0055】
耐加水分解剤を含有しない薄い外層用の溶融体を押し出す押出機の温度は、耐加水分解剤を含有する層の溶融体を押し出す押出機の温度よりも少なくとも1℃、好ましくは3〜7℃高くすることが好ましい。
【0056】
次いで、得られたシートを二軸延伸する。通常、二軸延伸は連続的に行われる。このため、初めに長手方向(長手方向)に延伸し、次いで横方向に延伸するのが好ましい。これにより、分子鎖が配向する。通常、長手方向の延伸は、延伸比に対応する異なる回転速度を有する2つのロールを使用して行われ、横手方向の延伸はテンターフレームを使用して行われる。
【0057】
延伸温度および延伸比は、所望とするポリエステルフィルムの物性によって決定され、広い範囲で選択できる。一般的に、延伸温度は、ポリマーのガラス転移温度をTgとした場合、Tg+10〜Tg+60℃で行う。長手方向の延伸比は、通常2〜6倍、好ましくは3〜4.5倍で、横方向の延伸比は、通常2〜5、好ましくは3〜4.5である。再度長手方向または横方向に延伸してもよく、その場合の延伸比は、通常1.1〜5倍である。
【0058】
最初の長手方向の延伸において同時に横方向の延伸を行う2軸延伸法(同時二軸延伸)で延伸を行ってもよい。この場合、延伸比は長手方向および横方向とも3.0を超える。
【0059】
延伸後、通常150〜260℃、好ましくは200〜245℃で、通常0.1〜10秒間熱固定が行われる。フィルムの収縮率を低減するために、熱固定工程の後または熱固定工程中に、通常0〜15%、好ましくは1.5〜8%の弛緩率で、横方向および必要に応じて長手方向に弛緩処理を行ってもよい。上記処理後、公知の方法でフィルムを冷却し、巻取る。特に低収縮率のフィルムを得る場合には、最高温度230〜240℃で5%の弛緩率で熱固定を行うことが好ましい。
【0060】
上記の製造方法により製造されたポリエステルフィルムは、耐加水分解剤を含有しないポリエステルフィルムと比較して、室温〜210℃の間で実質的に加水分解を受けない。ポリエステルフィルムの安定性は、主としてフィルムの厚さと、温度(25〜210℃)によって決定される。例えば、厚さ0.7μmのPETから成る2つの外層(末端カルボキシ基量:11mmolH+/kg)と、耐加水分解剤としてエポキシ基酸素含有量が8重量%のエポキシ化大豆油(Hi−Sil ABSに吸収されている、PPG Indstries社製)を2.5重量%含有するPETから成るベース層とから成る厚さ50μmの3層積層PETフィルム(DEG含有量=1重量%、初期SV=750)に対し、オートクレーブ中110℃の飽和水蒸気で96時間処理した場合、SV値は600を超え、機械的特性も維持できるが、通常の耐加水分解剤を含有しない3層積層PETフィルムで同様の処理をした場合、SV値は400未満となり、耐折り曲げ破壊性が失われる。また、厚さ0.7μmのPETから成る1つの外層(末端カルボキシ基量:11mmolH+/kg)と、耐加水分解剤としてエポキシ基酸素含有量が8重量%のエポキシ化大豆油(Hi−Sil ABSに吸収されている、PPG Indstries社製)を2.5重量%含有するPETから成るベース層とから成る厚さ50μmの2層積層PETフィルム(DEG含有量=1重量%、初期SV=750)に対し、オートクレーブ中110℃の飽和水蒸気で96時間処理した場合、SV値は600を超え、機械的特性も維持できる。したがって、このような条件下で機械的強度の限界点であるSV=400以上を保持できる時間は、本発明のフィルムの方が200%以上長い。同じようなことが80℃及び170℃の処理条件でも確認される。
【0061】
本発明のポリエステルフィルムは、耐加水分解性が極めて優れているにもかかわらず、製造工程において、耐加水分解剤の含有による粘度上昇、ゲルの形成、斑点やしみなどの外観不良の発生問題が生じない。更に、担体(キャリアー物質)を使用して耐加水分解性を付与しているため(液体担持物を形成して使用しているため)、耐加水分解性が極めて向上している。
【0062】
本発明の2層積層フィルムは、同じ厚さを有し同じ耐加水分解剤を含有する単層フィルムと比較して、フィルム製造工程で生じる耐加水分解剤に由来する料理用油臭が低減するという利点を有する。この料理用油臭は、3層積層フィルムの場合、ほとんど完全に消失させることが出来る。
【0063】
本発明の積層フィルムが2層から成る場合、耐加水分解剤を含有しない外層表面は良好なメタル化特性および印刷特性を有する。耐加水分解剤を含有するベース層側表面は、メタル層や印刷層が形成されても、乾いたティッシュペーパー等で簡単に拭き取ることが出来る。本発明の積層フィルムが3層から成る場合、外層表面は良好なメタル化特性および印刷特性を有する。
【0064】
本発明のフィルムは、上述の様に、究めて過酷な条件(80℃を超える高温下で、高湿度雰囲気)においても、加水分解を受けにくく耐久性に優れる(1年を超える寿命を有する)。そのため、このような条件下で使用するフィルム、特に、高湿度下で使用するフィルムやアウトドア用のフィルムとして好適に使用できる。
【0065】
本発明のフィルムは上述のような特性を有するため、例えば、コンデンサー用フィルム(好ましくは0.4〜12μmのフィルム厚)として好適に使用できる。本発明のフィルムから成るコンデンサーは公知の方法(メタル化、コンデンサー幅にフィルムを切断、巻取り、メタリコン処理(フィルム端部にリード線等を接続し、金属被膜と導通させるために、金属微細粒子をスプレーする処理(Schoop process))、導通処理および容器への封入など)で製造することが出来る。本発明のフィルムから成るコンデンサーは、通常のポリエステルから成るコンデンサーと比較して耐久性に優れ、寿命が長い。また、カルボジイミドを耐加水分解剤として含有するポリエステルから成るコンデンサーと比較すると、高温化でもイソシアネート等の有害ガスの発生がない。本発明のフィルムをコンデンサー用フィルムとして使用する場合、200℃における長手方向の収縮率が4%未満、横方向の収縮率が1%未満であることが好ましい。特にSMD(面実装)コンデンサーを製造する場合に、上記範囲とすることが好ましい。従って、本発明のフィルムは、上記の低い収縮率を有することが好ましい。
【0066】
さらに、本発明のポリエステルフィルムは、自動車などに使用されるリボンケーブル用のフィルムとしても好適に使用できる。本発明のポリエステルフィルムから成るリボンケーブルは、銅の上にヒートシール性接着剤を使用し、本発明のポリエステルフィルムを積層する。この用途におけるポリエステルフィルムの厚さは、好ましくは12〜200μmである。ヒートシール性接着剤としては、例えばEKP 230 hot−sealable adhesive(EKP Verpackungslacke GmbH社製(ドイツ))が挙げられる。本発明のポリエステルフィルムは、上記の様なリボンケーブルに使用した場合、自動車で使用した場合の機械的負荷(振動も含む)に対しても優れた性質を示す。しかしながら、ポリエステル系接着剤を使用した場合は、接着剤自身の耐加水分解性も要求されるため、接着剤中に本発明で使用する耐加水分解材を含有させることが好ましい。
【0067】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、更に、ソーラーモジュール(太陽電池)などの裏面に積層して使用することが出来る。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を、実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。各記載例における評価方法を以下に示す。なお、以下の評価方法において、DINはDeutsches Institut fur Normungを表す。
【0069】
(1)標準粘度SV:
ポリエステルの標準粘度SV(DCA)は、ポリエステルのジクロロ酢酸1重量%溶液を作成し、ウベローデ型粘度系を使用して25℃でDIN 53726に従って測定した。得られた相対粘度ηrelより、SV=(ηrel−1)×1000の式を使用して、標準粘度SV値を算出した。
【0070】
(2)表面粗度:
フィルムの表面粗度RはDIN 4768に準じて測定した。カットオフ値は0.25mmとした。
【0071】
(3)収縮率:
熱収縮率は、10cm四方のフィルムについて測定した。サンプルの辺はそれぞれ長手方向と横方向に平行である。サンプルの長さを長手方向(L0 MD)と横方向(L0 TD)に対して正確に測定した後、循環オーブン内で200℃で15分間加熱した。サンプルを取出し、室温で長手方向(LMD)と横方向(LTD)に対して正確に長さを測った。収縮率は以下の式で算出した。
【0072】
長手方向収縮率(%)=100×(L0 MD−LMD)/(L0 MD
【0073】
横方向収縮率(%)=100×(L0 TD−LTD)/(L0 TD
【0074】
(4)オートクレーブ処理によるSV値の低下測定:
10cm×2cmのフィルム片を作成し、オートクレーブ(Adolf Wolf SANOklav社製ST−MCS−204型)中にワイヤーを使用して吊るした。オートクレーブ内に水を2L入れ、密閉した後、100℃に加熱し、オートクレーブ内の空気を水蒸気で置換し、排出口から放出させた。5分後に密閉し、温度を110℃、内気圧1.5barとして水蒸気雰囲気で加熱を行った。24時間後にオートクレーブは自動的にスイッチが切れるようになっており、この操作を4回繰返し、計96時間、飽和水蒸気雰囲気の加熱処理を行った。処理後、排出口を開いてフィルムを取出し、上記の方法でSV値を測定し、オートクレーブ処理前後で比較した。
【0075】
(5)臭気:
押出ダイから6m離れた場所(長手方向延伸)で、5人のモニターにより臭気を評価した。評価基準は、2:強い臭気、1:感じられる程度の臭気、0:臭気を感じない、の各基準とした。なお、5人のモニターすべてが、単層フィルムの製造工程で感じる耐加水分解剤に由来する臭気について予め経験していた。
【0076】
実施例および比較例で使用した耐加水分解剤および耐加水分解剤を含有するPETは、以下の方法により調製した。
【0077】
(1)耐加水分解剤1(Hystab1):
エポキシ化大豆油(商品名「Merginat ESB」、HOBUM Oleochemical GmbH社製(ドイツ)、エポキシ基に由来する酸素含有量:8重量%)2重量部と「Hi−Sil ABS」(PPG Industries社製(米国))1重量部とを混合して調製した。
【0078】
(2)耐加水分解剤2(Hystab2):
「Polybio Hystab 10」(Schafer Additvsystem GmbH社製、天然(生体)有機物エポキシ化脂肪酸エステル)。
【0079】
(3)ポリマーP1:
PET(「RT49」、Invista Deutschland社製、SV=790)。
【0080】
(4)マスターバッチMB1:
1重量%のSylobloc 44H、0.5重量%のAerosil TT600、98.2重量%のPET(SV=790、DEG含有量:1重量%)及び3000ppmのIrganox 1010(Ciba社製、ポリエステルの重合中にIrganoxの添加を行った)から成るマスターバッチ。
【0081】
(5)ポリマーP2:
PET(末端カルボキシ基量:11mmolH+/kg)を使用。エステル交換反応触媒として酢酸マンガン(Mn濃度:35ppm)、安定剤としてリン酸(P濃度:70ppm)、重縮合触媒として三酸化アンチモン(Sb濃度:100ppm)をそれぞれ使用し、IV=0.58のPETを製造した。得られたポリマーを結晶化し(流動床乾燥機中160℃で10分間)、160℃、0.7mbarで3時間乾燥を行った。その後、222℃、0.31mbarで10時間固相重合を行った。その後、乾燥窒素雰囲気下で2時間冷却し、IV=0.62(SV=810)のポリマーP2を得た。
【0082】
実施例1〜5、比較例1:
フィルムの製造は以下の方法で行った。熱可塑性樹脂チップ(MB1、P1及びP2)を表1及び2に示す割合で混合し、二軸延伸押出機(日本製鋼社製)を使用して280℃で押出した(耐加水分解剤を含有しない外層は285℃で押出し)。耐加水分解剤Hystab1は、振動斜面注入口から直接押出機内に供給し、耐加水分解剤Hystab2は揮発分を除去した後にポンプを使用して溶融体中に供給した。引取ロールを使用して溶融ポリマーをダイから引き出し(温度:274℃)、厚さ533μmのシートを得た。得られたシートを長手方向に116℃で3.4に、次いで横方向にテンターフレームを使用して110℃で3.1倍に二軸延伸した。得られたフィルムを231℃で熱固定し、横方向に200〜180℃の温度で弛緩処理し、厚さ50μmのフィルムを得た。得られたフィルムに対し、上記の各種評価を行った。評価結果を表1及び2に示す。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐加水分解剤を含有しポリエステルから成るベース層Bと、耐加水分解剤を含有しない少なくとも1つの外層Aとから成る積層ポリエステルフィルムであって、ベース層Bに含有される耐加水分解剤が、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル、エポキシ化脂肪酸グリセリンエステル又はそれらの混合物であることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記の耐加水分解剤が、ポリエステルに液体担持物として添加される請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
耐加水分解剤を含有する積層ポリエステルフィルムであって、耐加水分解剤が、少なくとも1種のエポキシ化脂肪酸アルキルエステルと少なくとも1種のエポキシ化脂肪酸グリセリンエステルの混合物であり、積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステル中に、耐加水分解剤が液体担持物として添加されることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
耐加水分解剤の含有量が、積層ポリエステルフィルムの重量を基準として0.1〜20重量%である請求項1〜3の何れかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項5】
耐加水分解剤中のエポキシ基に由来する酸素の含有量が0.5重量%以上である請求項1〜4の何れかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項6】
エポキシ化脂肪酸グリセリンエステルが、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化菜種油、エポキシ化ひまわり油、エポキシ化魚油またはこれら2種以上の混合物である請求項1〜5の何れかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項7】
エポキシ化脂肪酸アルキルエステルが、菜種油、亜麻仁油、大豆油または魚油から誘導される飽和または不飽和脂肪酸の2−エチルヘキシルエステルである請求項1〜6の何れかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項8】
エポキシ化脂肪酸アルキルエステル中のエポキシ基の酸素の含有量が1.5〜15重量%である請求項1〜7の何れかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項9】
更に、フリーラジカル補足剤を含有する請求項1〜8の何れかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項10】
更に、積層ポリエステルフィルムの重量に対し、耐加水分解剤を液体担持物として添加するための担体物質を0.1重量%以上含有する請求項1〜9の何れかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項11】
担体物質が珪酸塩である請求項10に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項12】
珪酸塩が剛性シリカである請求項11に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項13】
積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、これら2種以上の混合物またはこれら2種以上の共重合体である請求項1〜12の何れかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項14】
更に、無機または有機粒子を含有する請求項1〜13の何れかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項15】
積層ポリエステルフィルムが3層から構成される請求項1〜14の何れかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項16】
すべての外層が耐加水分解剤を含有しない請求項1〜15の何れかに記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項17】
共押出法により積層シートを形成する工程と、得られた積層シートを二軸延伸して積層フィルムを得る工程と、得られた積層フィルムを熱固定する工程とから成る請求項1〜16の何れかに記載の積層ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項18】
請求項1〜16の何れかに記載の積層ポリエステルフィルムから成るフィルムコンデンサー。
【請求項19】
請求項1〜16の何れかに記載の積層ポリエステルフィルムから成るリボンケーブル。
【請求項20】
請求項1〜16の何れかに記載の積層ポリエステルフィルムから成る太陽電池。

【公開番号】特開2007−276478(P2007−276478A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99485(P2007−99485)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(596099734)ミツビシ ポリエステル フィルム ジーエムビーエイチ (29)
【Fターム(参考)】