説明

積層体、プリント配線板およびそれらの製造方法

本発明は、高密度回路の形成が可能で、デスミヤなどのプロセス耐性を持ち、優れた接着性、および高温高湿環境下での接着信頼性にすぐれた積層体およびプリント配線板を提供する。すなわち、本発明は、熱可塑性ポリイミド層および金属層かちなる積層体、もしくは、非熱可塑性ポリイミドフィルム層、その片面または両面に形成された熱可塑性ポリイミド層および金属層からなる積層体、ならびにプリント配線板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、電気・電子機器などに広く使用される、平滑な平面を有する高分子フィルム上に銅の金属層を形成した積層体、およびそれを用いてなるプリント配線板の製造法に関する。とくに、回路基板製造に最適な金属層/ポリイミドフィルム層からなる2層構造の積層体、金属層/ポリイミドフィルム層/金属層、金属層/ポリイミドフィルム層/銅箔層、または金属層/ポリイミドフィルム層/接着層からなる3層構造の積層体に関する。さらに詳しくは、ビアホール形成工程およびデスミヤ工程など、通常のプリント配線板の製造プロセスが適用可能であり、接着性および環境安定性に優れ、高密度フレキシブルプリント配線板、フレキシブルプリント配線板を積層した多層フレキシブルプリント配線板、フレキシブルプリント配線板と硬質プリント配線板を積層したリジッド・フレックス配線板、ビルドアップ配線板、TAB(Tape Automated Bonding)用テープ、プリント配線板上に直接半導体素子を実装したCOF(Chip On Film)基板、およびMCM(Multi Chip Module)基板などに使用することのできるプリント配線板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
表面に回路を形成したプリント配線板が、電子部品や半導体素子などを実装するために広く用いられている。近年の電子機器の小型化および高機能化の要求に伴い、その様なプリント配線板には、回路の高密度化や薄型化が強く望まれている。とくにライン/スペースの間隔が25μm/25μm以下であるような微細回路形成方法の確立は、プリント配線板分野の重要な課題である。
通常、プリント配線板においては、基板となる高分子フィルムと回路との間の接着は、アンカー効果と呼ばれる表面の凹凸によって達成されている。そのため、一般にフィルム表面を粗化する工程が設けられ、通常、その表面には、Rz値換算で3〜5μm程度の凹凸がつけられる。この様な基板表面の凹凸は、形成される回路のライン/スペースの値が30μm/30μm以上である場合には問題とならないが、30μm/30μm以下、とくに25μm/25μm以下の線幅の回路形成には重大な問題となる。その理由は、この様な高密度の細線である回路線が、前記基板表面の凹凸の影響をうけることにある。したがって、ライン/スペースの値が25μm/25μm以下の回路の形成には、表面平滑性の高い高分子基板への回路形成技術が必要となる。その平面性は、Rz値換算で2μm以下、さらに望ましくは1μm以下である。当然この場合には、接着力として前記アンカー効果は期待できなくなるため、別の接着方法の開発が必要となる。
一方、回路基板には、より高密度の微細配線が求められると同時に、高温高湿などのより厳しい環境下での安定性が求められるようになってきている。とくに、高分子フィルムと回路配線との接着性についても、高温・高湿の環境に耐えることが要求されている。
さらに、両面プリント配線板や多層プリント配線板には、層間の回路を導通させるビアホールの形成が不可欠である。そのため、前記プリント配線板は、通常、レーザーによるビアホール形成工程、デスミヤ工程、触媒付与工程、および無電解メッキ銅を施す工程などを経て、回路形成がおこなわれる。ここで、デスミヤ工程としては過マンガン酸塩、また無電解メッキとしてはホルムアルデヒドまたはEDTAなどの環境負荷の大きい薬液を用いる方法が広く行なわれているが、近年の環境意識の高まりにより、これら薬液を用いないプロセスが必要とされている。
これらを実現するプロセスとして、スパッタリングなどの物理的蒸着法を用いるプリント配線板の製造方法が検討されている。この技術において、回路上にポリイミド樹脂からなる絶縁層およびヴィアを形成した後、全面にスパッタリングを行ない、ポリイミド樹脂からなる絶縁層とヴィアを導電化する方法が開示されている。しかし、用いられるポリイミド樹脂は非熱可塑性ポリイミドであり、充分な接着性が期待できない(特開平5−251626号公報)。
さらに、回路形成は、エッチング、いわゆるサブトラクティブ法により行なわれる場合(特開2000−198907号公報)や、レジスト膜を形成する工程、無電解メッキ膜が露出している部分への電解銅メッキ工程、レジスト被膜の除去工程、および余分な無電解銅メッキ皮膜のエッチング工程からなるいわゆるセミアディティブ法により製造される場合がある。したがって、配線回路と高分子フィルム間の接着性は、これらのプロセスに耐えるものである必要があることは言うまでもない。
ポリイミドフィルムと回路配線との接着性改善については、これまでも種々の検討が試みられている。たとえば、ポリイミドフィルムにチタン系の有機化合物を添加することにより、接着性を改善する技術(特許第1,948,445号公報(米国特許第4,742,099号明細書))、あるいは、Sn、Cu、Zn、Fe、Co、MnまたはPdからなる金属塩によってコートされ、表面接着力の改善されたポリイミドなどが開示されている(特開平6−73209号公報(米国特許第5,227,224号明細書))。また、ポリアミド酸固化フィルムに耐熱性表面処理剤を塗布した後イミド化したポリイミドフィルムをメタライズする方法が開示されている(米国特許第5,130,192号明細書)。さらに、ポリイミドフィルムの表面にチタン元素を存在させる手法が開示されている(特開平11−71474号公報)。また、本発明者らによって、熱可塑性ポリイミド表面に乾式メッキ法により導体層を形成し、それを加圧および熱処理して融着せしめてポリイミドと接着層との密着強度を強化する手法が開示されている(特開2002−113812号公報)。
また、金属箔の接着性向上の取り組みとしては、金属箔と熱可塑性ポリイミドを接着させる方法が開示されている(特開平8−230103号公報)。
これらのポリイミドフィルム表面に、蒸着などの物理的方法で形成した金属層は、通常のポリイミドフィルム表面に形成した金属層に比較して、優れた接着強度を有している。しかしながら、これらの発明の方法で作製されたポリイミドフィルム/金属間の接着は、レーザーによるビアホール形成工程とデスミヤ工程とによって剥離してしまう場合がある。
また、ポリイミドフィルムを親水化処理した後、無電解メッキ処理する方法が開示されている(特開平5−90737号公報)。さらに、親水化したポリイミドフィルムに無電解メッキを施した後、不活性雰囲気下で熱処理を施す技術が開示されている(特開平8−31881号公報)。しかしながら、これらの方法は、非熱可塑性ポリイミド樹脂の処理を前提としており、前記と同様にデスミヤ工程に対する耐性は低い。
【発明の開示】
本発明は、前記問題点を改善するために成されたもので、その目的とするところは、(1)表面平滑性に優れたポリイミドフィルム上に、強固に接着された微細な回路配線を形成すること、(2)レーザーによるビアホール形成工程およびデスミヤ工程から最終的な回路形成に至るプリント配線板の製造プロセスに耐える接着性を実現すること、(3)常態および高温・高湿下での接着安定性に優れたプリント配線板を提供することにある。
また、さらに、本発明の別の目的は、(4)環境に配慮し、環境負荷の大きい湿式の無電解メッキを用いないことにある。
本発明者らは、前記した問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、これらの条件を満足する、金属層/ポリイミドフィルム層からなる2層構造の積層体、金属層/ポリイミドフィルム層/金属層、金属層/ポリイミドフィルム層/銅箔層、または金属層/ポリイミドフィルム層/接着層からなる3層構造の積層体を開発し、本発明に至った。
また、イオンガン処理、プラズマ処理、コロナ処理、カップリング剤処理、過マンガン酸塩処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、研磨剤を高速投射する表面処理、火炎処理および親水化処理から選択される1種以上の処理を組み合わせた表面処理が、金属層の密着力の向上に効果があることを見出した。
さらにまた、熱可塑性ポリイミド層上に金属元素を堆積させて金属層を形成する際、熱可塑性ポリイミド樹脂を加熱するという極めて簡便な方法が有効であることを見出した。
すなわち、本発明は、熱可塑性ポリイミド層および熱可塑性ポリイミド層表面の金属層からなる積層体に関する。
前記熱可塑性ポリイミド層が、プラズマ処理、コロナ処理、カップリング剤処理、過マンガン酸塩処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、研磨剤を高速投射する表面処理、火炎処理および親水化処理から選択される1種以上の処理を組み合わせて表面処理されたものであることが好ましい。
前記熱可塑性ポリイミド層が、イオンガン処理により表面処理されたものであることが好ましい。
前記イオンガン処理が、アルゴンイオンによる処理であることが好ましい。
前記金属層が、熱可塑性ポリイミド層を加熱しながら金属元素を堆積させて形成させたものであることが好ましい。
熱可塑性ポリイミド層の加熱温度が100℃以上であることが好ましい。
前記金属層が無電解メッキ層であることが好ましい。
前記金属層が、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法および化学蒸着法から選択される1種以上の方法により形成されたものであることが好ましい。
前記金属層が第1金属層および第2金属層からなることが好ましい。
前記第1金属層が、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、モリブデン、タングステン、亜鉛、スズ、インジウム、金、またはそれらの合金からなることが好ましい。
前記第2金属層が、銅またはその合金からなることが好ましい。
本発明は、少なくとも片方の面に熱可塑性ポリイミド層を有する非熱可塑性ポリイミド層、および前記熱可塑性ポリイミド層表面の少なくとも片方の面に形成された金属層からなる積層体に関する。
本発明は、片方の面に熱可塑性ポリイミド層および前記熱可塑性ポリイミド層表面に形成された金属層を有し、他方の面に接着層を有する積層体に関する。
本発明は、片方の面に熱可塑性ポリイミド層および前記熱可塑性ポリイミド層表面に形成された金属層を有し、他方の面に銅箔を有する積層体に関する。
前記熱可塑性ポリイミド層が、プラズマ処理、コロナ処理、カップリング剤処理、過マンガン酸塩処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、研磨剤を高速投射する表面処理、火炎処理および親水化処理から選択される1種以上の処理を組み合わせて表面処理されたものであることが好ましい。
前記熱可塑性ポリイミド層が、イオンガン処理により表面処理されたものであることが好ましい。
前記イオンガン処理が、アルゴンイオンによる処理であることが好ましい。
前記金属層が、熱可塑性ポリイミド層を加熱しながら金属元素を堆積させて形成させたものであることが好ましい。
熱可塑性ポリイミド層の加熱温度が100℃以上であることが好ましい。
また、本発明は、ポリイミドフィルムおよび金属層からなる積層体であって、前記ポリイミドフィルムが非熱可塑性ポリイミド層および非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも片方の面に形成された熱可塑性ポリイミド層からなる少なくとも2層構造であり、かつ前記金属層が熱可塑性ポリイミド層表面のニッケル、コバルト、クロム、チタン、モリブデン、タングステン、亜鉛、スズ、インジウム、金、またはそれらの合金からなる第1金属層、および第1金属層上の銅またはその合金からなる第2金属層からなる積層体に関する。
前記熱可塑性ポリイミド層が、下記一般式(1)

(式中、Aは下記式群(2)から選択される4価の有機基であり、同一であっても異なっていてもよく、Xは下記式群(3)から選択される2価の有機基であり、同一であっても異なっていてもよい。Bは下記式群(2)にあげられたもの以外の4価の有機基であり、同一であっても異なっていてもよく、Yは下記式群(3)にあげられたもの以外の2価の有機基であり、同一であっても異なっていてもよい。m:nは100:0〜50:50である。)
群(2)

群(3)


で表されるポリアミド酸を脱水閉環して得られる熱可塑性ポリイミドからなることが好ましい。
前記熱可塑性ポリイミド層の厚さが0.01μm以上10μm以下であり、非熱可塑性ポリイミド層より薄いことが好ましい。
本発明は、プラズマ処理、コロナ処理、カップリング剤処理、過マンガン酸塩処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、研磨剤を高速投射する表面処理、火炎処理、および親水化処理から選択される1種以上の処理を組み合わせて表面処理された熱可塑性ポリイミドフィルムに関する。
また、本発明は、非熱可塑性ポリイミドフィルムの片方の面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を形成する工程、該非熱可塑性ポリイミドフィルムの他方の面に接着層を形成する工程、該接着層と回路形成された配線板の回路面とを対向させて加熱および/または加圧を伴った方法で積層する工程、および積層後の熱可塑性ポリイミド層表面に物理的蒸着法によりパネルメッキする工程を含むプリント配線板の製造方法に関する。
さらに、本発明は、非熱可塑性ポリイミドフィルムの片方の面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を形成する工程、該非熱可塑性ポリイミドフィルムの他方の面を、接着シートを介して、回路形成された配線板に加熱および/または加圧を伴った方法で積層する工程、および積層後の熱可塑性ポリイミド層表面に物理的蒸着法によりパネルメッキする工程を含むプリント配線板の製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
図1は、本願発明の構成例を示す図である。
図2は、本願発明の構成例を示す図である。
図3は、本願発明の構成例を示す図である。
図4は、本願発明の構成例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の積層体は、熱可塑性ポリイミド層および金属層、もしくは、非熱可塑性ポリイミドフィルム層、その片面または両面に形成された熱可塑性ポリイミド層および金属層からなる。
本発明で使用される熱可塑性ポリイミドについてのべる。熱可塑性ポリイミドとしては下記一般式(1)

(式中、Aは下記式群(2)から選択される4価の有機基であり、同一であっても異なっていてもよく、Xは下記式群(3)から選択される2価の有機基であり、同一であっても異なっていてもよい。Bは下記式群(2)にあげられたもの以外の4価の有機基であり、同一であっても異なっていてもよく、Yは下記式群(3)にあげられたもの以外の2価の有機基であり、同一であっても異なっていてもよい。)で表されるポリアミド酸を、脱水閉環して得られる熱可塑性ポリイミドが好ましい。
群(2)


群(3)


ここで、m:nは100:0〜50:50、好ましくは100:6〜70:30、より好ましくは100:0〜90:10である。
本発明で使用される熱可塑性ポリイミドを得るためには、前記式群(2)にあげた酸二無水物残基を与える酸二無水物とともに、一般式(1)中Bで表される4価の有機基を有するその他の酸二無水物成分を用いることが可能であり、そのような酸二無水物としては、たとえば、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、またはp−フェニレンジフタル酸無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物があげられる。
また、これらの熱可塑性ポリイミドを得るために、前記群(3)にあげたジアミン残基を与えるジアミンとともに、一般式(1)中Yで表される2価の有機基を有するその他のジアミン成分を用いることが可能であり、そのようなジアミンとしては、たとえば、1,2−ジアミノベンゼン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルN−フェニルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシドおよびそれらの類似物があげられる。
本発明で使用される熱可塑性ポリイミドを得るための前記酸二無水物とジアミンとの組み合わせとしては、式群(2)にあげた酸二無水物残基を与える酸二無水物から選ばれた少なくとも一種の酸二無水物と、式群(3)にあげたジアミン残基を与えるジアミンから選ばれた少なくとも一種のジアミンの組み合わせが好ましい。なかでも、酸二無水物として2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸無水物、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、または4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)、ジアミンとして1,3−ジアミノベンゼン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、およびビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンは、工業的に入手可能であり、また、得られる熱可塑性ポリイミドの吸水率が低くなる、誘電率が小さい、および誘電正接が小さいなどの優れた特性を有し、さらに、本発明の効果である接着強度を上げる効果を発現するため、とくに好ましい。
より好ましい組み合わせとしては、たとえば、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)と2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとの組み合わせ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびエチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)と2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとの組み合わせ、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとの組み合わせ、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)と1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンとの組み合わせなどがあげられる。
本発明で使用される熱可塑性ポリイミドは、前記一般式(1)で表されるポリアミド酸をイミド化して得られる。前記イミド化には、熱キュア法およびケミカルキュア法のいずれかを用いる。熱キュア法は、脱水閉環剤などを作用させずに、加熱のみによりイミド化反応を進行させる方法である。また、ケミカルキュア法は、ポリアミド酸有機溶媒溶液に、無水酢酸などの酸無水物に代表される化学的転化剤(脱水剤)と、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジンなどの第三級アミン類などに代表される触媒とを作用させる方法である。無論、ケミカルキュア法に熱キュア法を併用してもよく、イミド化の反応条件は、ポリアミド酸の種類、フィルムの厚さ、熱キュア法および/またはケミカルキュア法の選択などにより変動し得る。
イミド化をケミカルキュア法により行なう場合、ポリアミド酸組成物に添加する化学的転化剤としては、たとえば脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、N,N’−ジアルキルカルボジイミド、低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸無水物、アリールホスホン酸ジハロゲン化物、チオニルハロゲン化物またはそれら2種以上の混合物があげられる。なかでも、無水酢醒、無水プロピオン酸、無水ラク酸などの脂肪族無水物またはそれらの2種以上の混合物が好ましい。これらの化学的転化剤は、ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸部位のモル数に対して1〜10倍量、好ましくは1〜7倍量、より好ましくは1〜5倍量を添加する。また、イミド化を効果的に行なうためには、化学的転化剤と触媒とを同時に用いることが好ましい。触媒としては、脂肪族第三級アミン、芳香族第三級アミン、または複素環式第三級アミンなどが用いられる。なかでも、複素環式第三級アミンがとくに好ましい。具体的には、キノリン、イソキノリン、β−ピコリン、またはピリジンなどである。これらの触媒は、化学的転化剤のモル数に対して1/20〜10倍量、好ましくは1/15〜5倍量、より好ましくは1/10〜2倍量のモル数が添加される。前記化学的転化剤および触媒は、量が少ないとイミド化が効果的に進行しない傾向にあり、逆に多すぎるとイミド化が早くなり取り扱いが困難となる傾向にある。
なお、本発明で使用される熱可塑性ポリイミドには、公知の方法により無機あるいは有機物のフィラー、有機リン化合物などの可塑剤、および酸化防止剤が添加されていてもよく、エポキシ樹脂、シアナート樹脂およびフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が混合されていてもよい。
本発明で使用される非熱可塑性ポリイミドフィルムは、公知の方法で製造することができる。即ち、ポリアミド酸を支持体に流延または塗布し、化学的にあるいは熱的にイミド化することで得られる。フィルムの靭性、破断強度、および生産性の観点から、化学的にイミド化することが好ましい。
本発明で使用される非熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸は、基本的には、公知のあらゆるポリアミド酸を適用することができる。ポリアミド酸は、通常、芳香族酸二無水物の少なくとも1種とジアミンの少なくとも1種とを実質的に等モル量有機溶媒中に溶解させて得られたポリアミド酸有機溶媒溶液を、制御された温度条件下で、前記酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで攪拌することによって製造される。また、ポリイミドは、熱可塑性ポリイミドと同様に、ポリアミド酸をイミド化して得られる。
本発明で使用される非熱可塑性ポリイミドの合成に適当な酸無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)、p−フェニレンジフタル酸無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物またはそれらの類似物があげられる。
なかでも、ピロメリット酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、またはp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)が好ましく、これらを単独または任意の割合で混合した混合物が用いられる。
本発明で使用される非熱可塑性ポリイミドの合成に適当なジアミンとしては、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルN−フェニルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシドまたはそれらの類似物などがあげられる。
なかでも、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、p−フェニレンジアミン、またはこれらの混合物がとくに好ましい。
好ましい酸二無水物とジアミン類の組み合わせとしては、ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとの組み合わせ、ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよびp−フェニレンジアミンとの組み合わせ、ピロメリット酸二無水物およびp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよびp−フェニレンジアミンとの組み合わせ、p−フェニレンジアミンと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物との組み合わせ、ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよびp−フェニレンジアミンとの組み合わせである。これらのモノマーを組み合わせて合成した非熱可塑性ポリイミドは、適度な弾性率、寸法安定性および低吸水率などの優れた特性を発現し、本発明の各種積層体に用いるのに好適である。
前記ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、アミド系溶媒、すなわち、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、またはN−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルホルムアミドがとくに好ましく用いられる。
熱可塑性ポリイミド層を非熱可塑性ポリイミドフィルムの表面に形成する方法は、代表的には、非熱可塑性ポリイミドフィルムの片面または両面に熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸、たとえば一般式(1)で示したようなポリアミド酸を流延または塗布した後、該ポリアミド酸を熱的方法または化学的方法でイミド化および乾燥して、ポリイミドフィルムを得る方法である。また、熱可塑性ポリイミドが溶媒可溶性である場合には、その溶液を非熱可塑性ポリイミド上に塗布後、乾燥することによっても得ることができる。あるいは、熱可塑性ポリイミドのシートを製造し、非熱可塑性ポリイミドフィルムに熱融着させる方法も適用できる。
前記種々の方法で得られるポリイミドフィルムは、公知の方法により、無機あるいは有機物のフィラー、有機リン化合物などの可塑剤、および酸化防止剤が添加されていてもよい。
非熱可塑性ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層を併用する場合の熱可塑性ポリイミド層の厚さは10μm以下0.01μm以上が好ましく、5μm以下0.1μm以上がより好ましい。熱可塑性ポリイミド層は、薄過ぎると本発明の効果である接着性の発現効果が弱くなる傾向にある。一方、厚すぎると回路基板の耐熱性や熱膨脹特性などの物性が、熱可塑性ポリイミドの物性によって支配されることになる。したがって、回路基板として優れた特性を持つ非熱可塑性ポリイミドフィルムの物性を生かすためには、熱可塑性ポリイミド層の厚さは、非熱可塑性ポリイミドフィルムより薄いことが好ましい。より好ましくは、熱可塑性ポリイミド層の厚さは、非熱可塑性ポリイミド層の1/2以下であり、さらに好ましくは1/5以下である。
前記熱可塑性ポリイミド層表面の10点平均粗さ(以下、Rzと言う)は、2μm以下、さらには1μm以下であることが好ましい。表面が平滑であることは、ライン/スペースが25μm/25μm以下の高密度回路を形成するのに好適であり、エッチング工程において樹脂表面の凹凸にエッチング残りが生じない点からも好適である。Rzは、JIS B0601などの表面形状に関する規格に規定されており、その測定には、JIS B0651の触針式表面粗さ計、またはB0652の光波干渉式表面粗さ計を用いることができる。本発明では、光波干渉式表面粗さ計(ZYGO社製NewView5030システム)を用いて、前記熱可塑性ポリイミド層表面の10点平均粗さを測定した。
一方、前記非熱可塑性ポリイミドフィルムの厚みは、2μm以上125μm以下が好ましく、5μm以上75μm以下がより好ましい。この範囲より薄いと、積層体の剛性が不足したり、フィルムの取り扱いが困難となる傾向にあり、非可塑性ポリイミド層の利点を生かしにくい。一方、フィルムが厚すぎると、プリント配線板を製造する際に、インピーダンス制御の点から絶縁層厚みが厚くなると回路幅を広くする必要があるため、プリント配線板の小型化、高密度化の要請に逆行するものである。
本発明にかかわる金属層は、銅、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、モリブデン、タングステン、亜鉛、スズ、インジウム、金またはこれらの合金が、熱可塑性ポリイミドとの接着性を上げる観点で、好ましく使用される。とくに、ニッケル、クロムまたはそれらの合金は、その効果が高く、また工業的に入手可能な点で好ましい。
金属層の形成方法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法およびEB蒸着法などの物理的蒸着法、ならびに、無電解メッキおよび化学蒸着法などの化学的手法があげられる。物理的蒸着法のなかでは、設備の簡便さ、生産性、および得られる導体層とフィルムとの接着性などを総合的に判断すると、スパッタリングが好ましい。なお、金属層の厚みは、5nm以上500nm以下が好ましい。
なお、前記スパッタリング法を用いると、精度良く均一な金属薄膜が製造できる。しかしながら、一般的にスパッタリング法によって形成された銅あるいは銅合金の薄膜は、表面平面性にすぐれた非熱可塑性ポリイミドフィルム上では強固な接着を実現することはできない。我々の検討でも、Rz値が3μm以下の表面性の非熱可塑性ポリイミドフィルム上では、2N/cm以上の強度の接着性は実現できなかった。しかしながら、本発明の熱可塑性ポリイミド層を有した積層体を用いると、接着性において大きな改善が見られ、5N/cmの接着性が実現できる。
スパッタリングを用いる場合は、公知の方法を適用できる。すなわち、DCマグネトロンスパッタ、RFスパッタ、またはそれらの方法に種々改善を加えた方法を、それぞれの要求に応じて適宜適用することができる。ニッケルまたは銅などの導体を効率よくスパッタするためには、DCマグネトロンスパッタが好ましい。また、薄膜中のスパッタガスの混入を防ぐなどの目的で高真空中でスパッタする場合には、RFスパッタが適している。
DCマグネトロンスパッタについて、まず、ポリイミドフィルムを基板として真空チャンバー内にセットし、真空引きをする。通常、回転ポンプによる粗引きと拡散ポンプまたはクライオポンプとを組み合わせて、6×10−Pa以下まで真空引きする。ついで、スパッタガスを導入し、チャンバー内を0.1〜10Pa、好ましくは0.1〜1Paの圧力とする。そして、金属ターゲットにDC電圧を印可して、プラズマ放電を起こさせる。この際、ターゲット上に磁場を形成し、生成したプラズマを磁場内に閉じこめることにより、プラズマ粒子のターゲットへのスパッタ効率を高める。ポリイミドフィルムにプラズマおよびスパッタの影響を与えないようにしながら、プラズマが生成した状態で、数分間から数時間保持し、金属ターゲットの表面酸化層を除去する(プレスパッタという)。プレスパッタの終了後、シャッターを開けるなどしてポリイミドフィルムにスパッタを行なう。スパッタ時の放電パワーは、好ましくは100〜1000Wの範囲である。また、スパッタするサンプルの形状に応じて、バッチ方式のスパッタまたはロールスパッタが適用される。導入スパッタガスは、通常アルゴンなどの不活性ガスを用いるが、少量の酸素を含んだ混合ガスまたはその他のガスを用いることもできる。
また、無電解メッキの方法としては、公知の技術を適用できる。様々な無電解メッキ処理薬液が市販されており、それぞれの処理工程は、各無電解メッキ薬液メーカーが推奨条件を開示している。しかしながら、各無電解メッキ薬液は、個々の適用樹脂に応じて、経験的に薬液濃度、処理温度および処理時間などを適正化して用いるのが一般的である。本発明の熱可塑性ポリイミド樹脂への無電解メッキ処理工程の条件の一例を、表1に示す。

本発明で使用される熱可塑性ポリイミド樹脂は、無電解銅メッキと良好に密着しうる。メッキ厚みは、その積層体の用途によって適宜選択しうるが、一般的には0.1〜10μm程度の範囲が好ましい。メッキ厚みがこれより薄いと、メッキが表面に均一に析出しない傾向にある。また、厚すぎると、メッキ処理に時間がかかりすぎるばかりでなく細線回路の形成に不利となる傾向にある。とくに、0.2〜1μmの厚みとすることは、メッキ信頼性および細線回路形成性にとって好適である。なお、前記表1の条件では、メッキ厚みは0.3μmとなる。また、無電解ニッケルまたはコバルトをメッキすると、熱可塑性ポリイミド樹脂層への銅などの拡散を防ぐという効果がある。
また、非熱可塑性ポリイミドフィルム上の接着層と回路形成した内層配線板の回路面とを対向させ積層した後、上述した物理的蒸着法によりパネルメッキを行なうプリント配線板の製造方法において、物理的蒸着法はドライプロセスであるため、従来の湿式の無電解メッキ法において問題とされる環境汚染の問題の懸念もない。また、この物理的蒸着法によるパネルメッキ層は、少なくとも最表面層が導電性を有していることが必要である。これは、プリント配線板を製造する際の電解メッキ工程において、該パネルメッキ層が給電層となるからである。また、電解メッキ工程において、プリント配線板のワークサイズ全領域に渡って、必要な部分に均一な厚みにメッキ層が形成されることが必要である。そのためには、給電層の電気抵抗が低いことが求められ、したがって、適切な厚みのパネルメッキ層を形成する必要がある。この製造方法において、電解メッキの給電層としての金属層の厚みは、25nm以上3000nm以下、さらには50nm以上1500nm以下が好ましい。250nmより厚みが薄いと電気抵抗が大きくなり、その後の電解メッキを行なう際に形成される電解メッキ膜厚みが面内でばらつく原因となり、一方、3000nmより厚いと物理的蒸着法によるパネルメッキにより金属層を形成する際の生産性が低化する。
さらに金属層の密着性を向上させるために、金属層を2層構造とすることが好ましい。すなわち、金属層を、熱可塑性ポリイミド層上に形成された第1金属層と、第1金属層上に形成された第2金属層とする。
第1金属層の金属種は、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、モリブデン、タングステン、亜鉛、スズ、インジウム、金またはこれらの合金が好ましい。なかでも、ニッケル、クロム、金またはチタンが、より熱可塑性ポリイミドとの接着性を上げる点で、好ましい。さらには、ニッケルまたはニッケルとクロムとの合金が、その効果が高い点および工業的に入手可能な点で、さらに好ましい。
第2金属層の金属種は、銅またはその合金からなることが好ましい。銅またはその合金は、第1の金属層に用いている金属種に比べて電気抵抗が低い。そのため、金属層が単一である場合と比べ、金属層全体の厚みを薄くすることが可能となり、金属層を形成する際の生産性が高く、工業的に有利である。また、銅またはその合金を第2金属層として用いると、その後の電解銅メッキとの密着性が高くなり、好ましい。
前記第1金属層と熱可塑性ポリイミド層とを設けることにより、10N/cm以上の強固な接着性を実現できる。とくに、プレッシャークッカーテスト後にも5N/cm以上の優れた接着強度を有しているばかりでなく、デスミヤおよび化学メッキなどのプロセスにも充分耐えられる。
第1金属層の厚みは1nm以上50nm以下が好ましく、3nm以上20nm以下がより好ましい。これよりも薄いと、接着性を向上する効果が不充分である場合がある。一方、これより厚いと、金属層を形成する際の生産性が低下する傾向にある。第2金属層の厚みは、好ましくは10nm以上1000nm以下、さらには20nm以上500nm以下、とくには30nm以上300nm以下である。なお、上述した非熱可塑性ポリイミドフィルム上の接着層と回路形成した内層配線板の回路面とを対向させ積層した後、物理的蒸着法によりパネルメッキを行なう場合の第2金属層の厚みは、50nm以上2500nm以下が好ましく、100nm以上1000nm以下がより好ましい。厚みが薄いと、電気抵抗を低くする目的を充分に発揮できない傾向にある。一方、厚みが厚いと、金属層を形成する際の生産性が低下する傾向にある。
これら金属層の厚みの合計は、▲1▼経済性、▲2▼セミアディティブ工法により回路形成する場合の給電層除去のためのエッチング性、▲3▼スルーホールを有するプリント配線板をサブトラクティブ工法で30μm以下の幅の回路形成する場合のエッチング性、および▲4▼プリント配線板製造における電解メッキの際のパネル全領域に均一なメッキ層厚みを得るために必要な厚みの観点より、総合的に判断されるべきである。即ち、▲1▼〜▲3▼の観点からはできるだけ薄いことが要求され、一方▲4▼からは厚いことが要求される。したがって、所望する回路の幅およびパネル全領域の大きさなどから適宜選択されるべきである。好ましくは、1000nm以下、さらには500nm以下、とくには300nm以下である。1000nmより厚いと、前記エッチング性が悪くなり、高密度回路パターンを形成することが難しくなる傾向にある。
ここで、図1は、非熱可塑性ポリイミドフィルム4の片面に熱可塑性ポリイミド層3を有し、その表面に第1金属層2および第2金属層1が形成された本発明の積層体を示している。また、図2は、非熱可塑性ポリイミドフィルム4の両面に熱可塑性ポリイミド層3を有し、それぞれの表面に第1金属層2および第2金属層1が形成された本発明の積層体を示している。
前記金属層とポリイミドフィルムとの密着性をさらに向上させる方法として、熱可塑性ポリイミド層を加熱しながら、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、EB蒸着法および化学蒸着法から選ばれる1種以上の方法により金属層を形成する方法がある。加熱は、赤外線ランプヒーター、熱媒や電熱線を用いた加熱ロール、および電磁波を用いた誘導加熱などによりおこなわれる。なかでも、赤外線ランプヒーターまたは熱媒や電熱線を用いた加熱ロールが、その構造が簡単であり、小型で真空槽内にも比較的容易に取り付けることができる点で、好ましい。加熱する温度は、100℃以上、さらには100℃〜300℃が好ましい。これ以下の温度では、加熱の効果が小さく、また高すぎると熱可塑性ポリイミド樹脂の劣化、変形または分解などを引き起こすことがあり好ましくない。なかでも、熱可塑性ポリイミド樹脂のガラス転移温度以上に加熱することが、熱可塑性ポリイミド樹脂の分子運動が活発となり、堆積する金属元素との密着力が向上するため、より好ましい。
また、前記金属層とポリイミドフィルムとの密着性をさらに向上させる別の方法として、イオンボンバード処理などの公知の物理的表面処理や、プライマー処理などの化学的表面処理を施すことがあげられるが、なかでも、イオンガン処理、プラズマ処理、コロナ処理、カップリング剤処理、過マンガン酸塩処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、研磨剤を高速投射する表面処理、火炎処理、および親水化処理から選択される1種以上の処理を組み合わせて熱可塑性ポリイミド層の表面を処理する方法が好ましい。
前記イオンガン処理において、イオンガンは、プラズマ放電チャンバー内に導入したガスをイオン化し、2枚のグリッド、すなわち正に帯電したビームをフォーカシングするスクリーングリッド、および負に印加されイオンビームを引き出すアクセラレーターグリッドにより、イオンビームを基板に照射する。具体的なイオンガン装置としては、イオンテック社製フィラメントカソードイオン源(モデル名:3−1500−100FC)とイオン源電源(MPS3000)を使用できる。前記ガスとしては、アルゴンガスが好ましい。前記ガスとしてアルゴンを用いた場合、その運転条件は、イオン化に必要な放電電圧は30〜60V好ましくは35〜40V、チャンバー内の圧力は1×10−3〜1×10−1Pa、好ましくは2×10−2〜6×10−2Pa、ビーム電圧200〜1000V、好ましくは300〜600V、加速電圧200〜1000V、好ましくは300〜600Vである。
前記プラズマ処理において、プラズマ処理装置は、適当な組成のガスが導入され、所定のガス圧力に保持される。そして放電を開始すると、装置内にプラズマが発生するように構成されている。このとき、グロー放電が得られるよう、ガス組成およびガス圧力を適宜選択する。ここで、プラズマ処理を行なう雰囲気のガス圧力は、とくに限定されないが、10000〜1000000Paの範囲の圧力下で行なうことが好ましい。10000Pa未満では真空装置などが必要となるし、1000000Paをこえると放電がしにくくなるためである。とくには、大気圧下で行なうことによりプラズマ処理の作業性および生産性が良くなるので好ましい。また、プラズマ処理のガス組成はとくに限定されないが、10000〜1000000Pa中での放電もグロー放電するよう、希ガス元素の単独ガスまたは混合ガス雰囲気下で行なうのが好ましい。好ましいガス組成はAr/He/Nの組み合わせである。なお、装置内の空気を前記希ガス元素で置換した状態がとくに好ましいが、グロー放電を阻害しない程度の空気が混入していても構わない。処理密度はかかる処理により、樹脂表面を化学修飾して親水性官能基(水酸基、カルボン酸基、またはカルボニル基など)を導入することができる範囲であり、10〜100000[W・分/m]好ましくは100〜10000[W・分/m]である。この範囲の密度で処理すると、樹脂を劣化することなく表面の親水性が向上される。
前記コロナ処理について、コロナ電極は、コロナ処理をすべき長さ、換言すれば、ほぼ熱可塑性ポリイミド樹脂フィルムの幅に成型されており、熱可塑性ポリイミド樹脂フィルムは高度に絶縁されたロールと線条のコロナ電極の間をロールに沿って走行する。そして、前記コロナ電極に高エネルギーを作用させてコロナ放電を起こすことにより、熱可塑性ポリイミド樹脂フィルムにコロナ放電処理を施すことができる。このときのコロナ放電処理の電力密度は、10〜100000[W・分/m]、さらには、100〜10000[W・分/m]が好ましく、樹脂の種類や厚さなどにより、経験的に適宜設定される。また、電極の材質はとくに制限されず、経験的に適宜選択、設定される。コロナ放電処理を行なう際、フィルムの熱膨張により生じる皺を防ぐため、フィルムの幅方向に伸びを付与した後、コロナ放電処理を1回または複数回にわたって施してもよい。また、コロナ放電処理に引き続いて、フィルムに帯電した静電気の極性と逆極性のイオンを有するイオン化ガスを前記フィルムに吹き付けて、静電気を除電するようにしてもよい。
前記カップリング剤処理について、カップリング剤溶液を付着させる方法として、たとえば、樹脂表面にカップリング剤溶液を塗布する、樹脂表面をカップリング剤溶液でラビングする、樹脂表面にカップリング剤溶液を吹き付ける、または、樹脂をカップリング剤溶液に浸漬させるなどの方法をあげることができる。また、本発明で使用されるカップリング剤としては、たとえば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、またはジルコニウム系のカップリング剤があげられる。これらカップリング剤は、単独で用いても、また数種を混合して用いても良く、経験的に設定することができる。なかでも、シラン系のカップリング剤を用いることが好ましく、とくには、アミノシラン系のカップリング剤が好ましい。これらは、分子中に熱可塑性ポリイミド樹脂の表面成分と結合性を持つ反応性基(メトキシ基、エトキシ基など)と金属層成分と結合性を持つ反応性基(アクリル基、アミノ基、エポキシ基など)とを合わせもっており、フィルムと金属層の結合を仲介(カップリング)し、両者間の親和性を高めることができる。かかるカップリング剤を具体的に列挙すると、シラン系カップリング剤においては、アクリルシラン系では、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどをあげることができる。また、アミノシラン系では、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(フェニルメチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N,N−トリメチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N,N−トリブチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β (アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ω(アミノヘキシル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、およびN{N’−β(アミノエチル)}−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。エポキシシラン系では、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、およびγ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどをあげることができる。また、チタネート系カップリング剤においては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、ジクミフェニルオキシアセテートチタネート、およびジイソステアロイルエチレンチタネートなどをあげることができる。その他、アルミニウム系カップリング剤においては、アルキルアセトアセテート−アルミニウム−ジイソプロピレートを、ジルコニウム系カップリング剤においては、ジルコニウムトリブトキシステアレートをあげることができる。なお、前記カップリング剤は溶媒に溶解させて溶液として用いるが、前記溶媒としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、またはこれらの混合溶媒であるソルミックスなどのアルコール系溶媒、アセトン、MEK、2−ペンタノン、または3−ペンタノンなどのケトン系溶媒、およびトルエンまたはキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。これらは単独で用いても、数種を混合させて用いてもよく、また水と混合して用いてもよい。とくにはメタノールが好ましく用いられる。また、カップリング剤溶液の濃度は、0.005〜30重量%であることが好ましく、さらには0.01〜5重量%であることが好ましい。カップリング剤の濃度が高過ぎると、熱可塑性ポリイミド樹脂表面にむらが観られ外観上好ましくなくなる傾向にあり、逆にカップリング剤の濃度が低過ぎると、充分な効果が発現されなくなる傾向にある。このようにしてカップリング剤溶液を樹脂表面に均一に付着させることにより、樹脂の表面成分とカップリング剤とが反応し、樹脂表面にカップリング剤の皮膜が形成され、樹脂の表面性状を均一化させることができるのである。塗布方式としては、ロールを用いるロールコータ方式、またはドクタナイフを用いるスプレッダ方式をはじめ、マイヤーバーコーティング、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ブラッシコータ方式、エアブレート方式、スプレーコータ方式、カーテンコータ方式、または浸漬コータ方式など、その他種々の方式をあげることができ、いかなる塗布方式により塗布してもよい。ついで、前記処理工程によりカップリング剤溶液が塗布されて表面性状が均一化された熱可塑性ポリイミド樹脂は、乾燥炉に導かれ、樹脂表面に付着した溶液を乾燥させる工程が行なわれる。乾燥条件としてはとくに制限はなく、経験的に適宜設定して行なわれる。
前記過マンガン酸塩処理において、過マンガン酸塩としては、過マンガン酸ナトリウムまたは過マンガン酸カリウムを用いることが好ましい。その濃度は、0.1モル/L以上とすることが望ましい。これは濃度が0.1モル/Lよりも低いと、熱処理を施した基板表面に対する活性化能力が低くなり処理時間が徒に長くなるほか、表面処理が均一に行なわれなくなる傾向にある。また、濃度の上限にはとくに限定はなく、飽和濃度になるまで可能であるが、熱可塑性ポリイミド樹脂に対する表面活性化の効果の点から、アルカリ性側で使用することが好ましい。
前記紫外線照射処理について、紫外線照射による表面処理には、改質と洗浄の2種の効果がある。本発明のように対象が有機物の場合、紫外線照射により、酸素リッチな極性を有する官能基が生成する。表面処理には、低圧水銀ランプ、またはエキシマランプなどが適しているが、低圧水銀ランプが、経済性、放射紫外線の特異性、およびランプ管壁が低温であることなどの点で好ましい。低圧水銀ランプは、その共鳴線の波長が185nmおよび254nmである。波長185nmの紫外線は、空気中の酸素分子を分解してオゾンを生成し、このオゾンが、波長254nmの紫外線を吸収して分解されて励起酸素原子となり、被処理面を活性化する。また、紫外線は、有機物表面の分子を乖離して軽い水素原子を容易に引き抜くと同時に、生成した励起酸素原子の存在により親水性基を生成することとなる。低圧水銀ランプとしては、出力25〜400W程度のものが市販されており、適用可能である。処理条件としては、1〜30mW/cmの照度で10秒〜10分の照射が好ましく、処理の強度や安定性の点から、照度10〜20mW/cm、照射時間1〜5分がより好ましい。
前記電子線照射処理について、有機物分子に電子が衝突すると、イオン化または励起が起こり、樹脂中にラジカルが発生する。そして、このラジカルが反応を開始し、架橋が起こる。一方、ラジカル同士による成長鎖の失活などによる成長の停止や活性点の移動も起こる。この様に、電子線照射処理によりラジカル濃度が高くなるため、瞬間的に重合が完結され、架橋密度が高く、耐薬品性および耐環境性などの点で優れたものが得られる。電子線照射装置は、高真空中において、タングステンフィラメントからなる陰極を加熱して熱電子を発生させる。その陰極フィラメント部に負の高電圧を印加することにより、電子が反発し、高速に加速される。そして、その電子は、アース電位にある薄い金属箔を通して、大気中あるいは不活性ガス中に放出される。この放出された電子が、被処理物に照射される。電子の加速電圧は、100〜500kVの範囲が好ましく、処理の安定性や強度の点から、150〜250kVの範囲がより好ましい。電子流は、10〜500mAの範囲が好ましい。線量は10〜1000kGyの範囲が好ましく、処理の安定性や樹脂に対する有害なダメージの軽減という点から、100〜500kGyがより好ましい。
前記研磨剤を高速投射する表面処理について、けい砂またはその他の砂を、圧縮空気または遠心力により樹脂表面に吹き付けて処理するサンドブラスト処理を例にあげて説明する。サンドブラスト処理は、樹脂表面に凹凸を形成することにより、フィルムと接着剤との接触面積を増加させると同時に、樹脂表面のWBLや汚染層を除去することにより、接着性を向上させる方法であるとされている。サンドブラスト処理装置は、研削材を吹き付けるサンドブラスト吹き出しノズルと、ノズルからの吹き出し量(ブラスト量)を調整する調整弁と、研削材を貯留するホッパーと、圧縮空気を送り出すエアチャンバーとを備えている。また、サンドブラスト吹き出しノズルは、可変し、熱可塑性ポリイミド樹脂との角度および間隔(ブラスト角度およびブラスト距離)を調整できるようになっている。そして、ブラスト量、ブラスト角度、およびブラスト距離を最適な条件に設定して、サンドブラスト処理を行なうことができるように構成されている。なお、吹き出しノズルの配置により、樹脂の片面だけでなく、両面を処理することもできる。また、このように研削材を圧縮空気により樹脂表面に吹き付けるのではなく、高速回転する羽根車により樹脂表面に叩きつけるようにしてもよい。かかるサンドブラスト処理における処理条件は、処理後に研削材および被研削物が熱可塑性ポリイミド樹脂表面に残らず、また、熱可塑性ポリイミド樹脂の強度が低下しないような条件にする必要があるが、かかる処理条件は経験的に適宜設定することができる。具体的には、研削材としては、けい砂、またはその他の研削材が用いられるが、粒径が0.05〜10mm、さらには0.1〜1mmのけい砂を用いることが好ましい。また、ブラスト距離は100〜300mmとするのが好ましく、ブラスト角度は45〜90度、さらには45〜60度とするのが好ましい。また、ブラスト量は1〜10kg/分とすることが好ましい。これはサンドブラスト処理により、熱可塑性ポリイミド樹脂表面に前記研削材や被研削物が残らないようにし、さらに研削深さを制御するためである。なお、研削深さは0.01〜0.1μmにとどめることが好ましく、それにより樹脂の強度が低下しないようにすることができる。なお、研削材としては、熱可塑性ポリイミド樹脂より硬度の高い砥粒を用いればよく、研削材を高速投射する表面処理としては、上述したサンドブラスト処理の他にも、ショットブラスト、ショットピーニング、または液体ホーニングなどの方法を用いることも可能である。ショットブラストまたはショットピーニングは、研削材として砂の代わりに球状の硬粒(ショット)を用いる方法であり、ブラスト角度、ブラスト距離、ブラスト量の他、硬粒の硬度、および粒度などを適正化して行なえばよい。また、液体ホーニングは、これらの研削材を液体とともに高速で噴射する方法であり、前記研削材が鋼粒の場合には、これらを防錆剤を加えた水に混合したものが用いられる。これらの方法によっても、サンドブラスト処理と同様の効果が得られる。
前記火炎処理において、処理装置は、熱可塑性ポリイミド樹脂の表面に炎を吹き付ける火炎処理ノズルと、前記樹脂を冷却するための冷却ロールとを備え、樹脂への熱の影響を少なくして火炎処理を行なえるように構成されている。火炎処理条件についてはとくに制限はなく、樹脂が劣化することのないような条件を選択すればよい。かかる条件は経験上適宜選択可能であるが、1000〜2000℃の炎を使用し、母材への熱の影響を少なくするために冷却ロールに巻き付けて処理することが好ましい。冷却ロール温度は10〜100℃が好ましく、さらには20〜50℃が好ましい。火炎ノズルから吹き出される火炎長さは5〜100mmにすることが好ましく、さらには10〜50mmとなるようにすることが好ましい。また、フィルムと火炎処理ノズルの距離は、フィルムが火炎先端から火炎長さの1/2までの位置、とくには1/3の位置で処理できるようにすることが好ましい。
前記親水化処理について、親水化処理には、抱水ヒドラジンを1〜15mol/し、アルカリ金属水酸化物を0.5〜5mol/Lの割合で含有する10〜50℃の水溶液を用いる。使用し得るアルカリ金属は、ナトリウム、カリウム、およびリチウムなどである。抱水ヒドラジンとアルカリ金属水酸化物との水溶液を使用するのは、抱水ヒドラジンによるイミド結合の切断、および、アルカリ金属水酸化物による加水分解により、熱可塑性ポリイミド樹脂表面を親水性にし、無電解メッキのための触媒核の吸着を容易にするためである。抱水ヒドラジンの濃度が1mol/Lより小さい場合、イミド結合の切断が充分に行なわれない傾向にある。また、抱水ヒドラジン濃度が15mol/Lより大きい場合では、無電解メッキ層とポリイミド樹脂フィルムとの密着強度が低下する傾向にある。したがって、抱水ヒドラジンの濃度は1〜15mol/Lが良い。また、アルカリ金属水酸化物の場合、アルカリ金属水酸化物濃度が0.5mol/Lより小さい場合は、加水分解が不充分となる傾向にあり、5mol/Lより大きい場合では、密着強度が低下する傾向にある。したがって、アルカリ金属水酸化物濃度は0.5〜5mol/Lが良い。親水化のために必要とされる処理時間は条件などにより変わり、一概に特定できないが、通常は30秒〜5分程度である。
通常、これらの処理の後、フィルムを大気などに触れさせると、改質した表面が失活して処理効果が大幅に減少することがある。そのため、これらの処理を真空中で行ない、そのまま真空中で連続してスパッタすることが好ましい。
本発明の積層体は、図3に示すように、非熱可塑性ポリイミドフィルム4表面に銅箔層5を有していてもよい。前記銅箔層5は、湿式メッキ法で形成されていてもよく、凹凸の形成された銅箔を直接接着して形成されていてもよく、または、適当な接着剤を介して銅箔を張り合わせて成形されていてもよい。接着剤を介してポリイミドフィルム4と銅箔を積層する方法は、熱ラミネートまたは熱プレスなど、公知の方法が使用できる。
また、本発明の積層体は、図4に示すように、非熱可塑性ポリイミドフィルム4表面に接着層6を有していてもよい。前記接着層は、通常の接着性樹脂により形成されており、適当な樹脂流れ性を有し、強固な接着性を実現できる樹脂であれば公知の技術を適用することができる。この接着層に用いられる樹脂としては、大別して、熱可塑性樹脂を用いた熱融着性の接着剤、および熱硬化樹脂の硬化反応を利用した硬化型接着剤の二種類に分けることができる。このように、非熱可塑性ポリイミドフィルム4の一方の面に熱可塑性ポリイミド層3を形成し、もう一方の面に前記熱可塑性ポリイミド樹脂と同じまたは異なる種類の接着性を有する樹脂層を形成することにより、内層基板との積層に好適な接着剤層を有する構成となるため、ビルドアップ多層プリント配線板の製造に好適に用いられる。なお、接着層は、非熱可塑性ポリイミドフィルム上に形成される必要はなく、熱可塑性ポリイミド層の金属層を有していない面上に形成してもよい。
前記熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、フッ素樹脂、ポリアリレート樹脂、および液晶ポリマー樹脂などがあげられる。これらの1種または2種以上を組み合わせて本発明の積層体の接着層として用いることができる。なかでも優れた耐熱性および電気信頼性などの観点より、熱可塑性ポリイミド樹脂を用いることが好ましい。
ポリイミド樹脂の酸二無水物成分としては、公知の1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。とくに優れた熱融着性を発現させるためには、酸二無水物成分として、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,2−エチレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、または4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)を用いるのが好ましい。
また、ジアミン成分としては、公知の1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、またはビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホンなどをそれぞれ単独または任意の割合で混合して用いることが好ましい。
前記熱硬化型樹脂としては、ビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、フェノール樹脂、シアナート樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、トリアジン樹脂、ヒドロシリル硬化樹脂、アリル硬化樹脂、および不飽和ポリエステル樹脂などをあげることができ、これらを単独、または適宜組み合わせて用いることができる。また、前記熱硬化性樹脂以外に、高分子鎖の側鎖または末端に、エポキシ基、アリル基、ビニル基、アルコキシシリル基、ヒドロシリル基、または水酸基などの反応性基を有する側鎖反応性基型熱硬化性高分子を熱硬化成分として使用することも可能である。加熱接着時の接着剤の流れ性を制御する目的で、前記熱可塑性樹脂に前記熱硬化性樹脂を混合することも可能である。このとき、熱可塑性樹脂100重量部に対して、熱硬化性樹脂を1〜10000重量部、好ましくは5〜2000重量部加えるのが望ましい。熱硬化性樹脂が多すぎると接着層が脆くなるおそれがあり、逆に少なすぎると接着剤の流れ性が低下したり、接着性が低下するおそれがある。
また、接着性、加工性、耐熱性、柔軟性、寸法安定性、低誘電特性および価格などの観点から、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂系、シアナートエステル樹脂系またはこれらをブレンドしたものも好ましく使用できる。
本発明のプリント配線板は、以下のようにして製造される。
金属層/ポリイミドフィルム積層体を使用した配線板の製造方法について、第一のプリント配線板の製造方法では、金属層表面に無電解メッキ銅を施す。この無電解メッキは、パラジュウム触媒を用いる化学メッキ、あるいはパラジウムまたはカーボンなどを用いるダイレクトプレーティングにより行なうことができる。なお、この無電解メッキの工程は、プロセス耐性を付与するためおよび/またはピンホール欠陥部を覆うために行なうものであるが、場合によっては省いても構わない。さらに、無電解メッキ銅上にレジスト膜を形成し、露光およびエッチングにより、回路の形成を予定する部分のレジスト被膜を取り除く。次に、無電解メッキ膜または本発明にかかる金属層が露出する部分を給電電極として使用して、電解銅によるパターンメッキ法により回路を形成する。ついで、レジスト部分を取り除き、不要部分の無電解メッキ層および物理的方法で形成された金属層をエッチングにより取り除いて回路を形成する。この方法はセミアディティブ法と呼ばれる方法である。
第二のプリント配線板の製造方法は以下のようなものである。まず第一の製造方法と同様に、金属層の表面に無電解メッキ銅層を形成する。第一の製造方法と同様に無電解メッキ工程は省くことも可能である。次に電解メッキ銅を施し、電解銅メッキ層表面にレジスト膜を形成する。その後、露光工程および現像により、回路の形成しない部分のレジスト膜を除去し、次にエッチングにより不要な金属層を取り除き回路を形成する。この方法はサブトラクティブ法と呼ばれる方法である。
金属層/ポリイミドフィルム/金属層積層体を使用した配線板の製造方法について、第一のプリント配線板の製造方法では、まず、積層体を貫通するビアホールを形成する。その後、金属層の表面およびビアホール内部にできたポリイミド分解物および熱による炭化物を主成分とするスミヤを除去するデスミヤ工程を実施する。次に、少なくともビアホール内部に無電解メッキ銅を施す。前述のように、この無電解メッキは、パラジュウム触媒を用いる化学メッキ、またはパラジウムまたはカーボンなどを用いるダイレクトプレーティングにより行なうことができる。さらに、レジスト膜を形成したのち、露光および現像により、回路の形成を予定する部分のレジスト被膜を取り除く。次に無電解メッキ層または本発明に係る金属層が露出する部分を給電電極として使用して、電解銅によるパターンメッキを行ない、回路を形成する。ついで、レジスト部分を取り除き、不要部分の無電解メッキ層および本発明に係る金属層、または本発明に係る金属層をエッチングにより取り除いて回路を形成する。この回路形成法は、セミアディティブ法と呼ばれる方法である。
第二のプリント配線板の製造方法においては、まず、積層体を貫通するビアホールを形成する。次に、第一の製造方法と同様にデスミヤ工程を経て、少なくともビアホール内部に無電解メッキ銅層を形成する。次に、電解メッキ銅によりパネルメッキを施して、両面の金属層をビアホールによって電気的に接続する。次に、電解銅メッキ層表面にレジスト膜を形成したのち、露光および現像により回路の形成しない部分のレジスト被膜を取り除く。次に、エッチングにより不要な金属層を取り除き回路を形成する。
金属層/ポリイミドフィルム層/銅箔層積層体を使用したプリント配線板の製造法について、第一のプリント配線板の製造方法では、まず、物理的方法で形成された金属層とポリイミドフィルムフィルム層とを貫通して金属銅箔に至る/または貫通するビアホールを形成する。その後、金属層の表面およびビアホール内部をデスミヤする。次に、少なくともビアホール内部に無電解メッキ銅を施す。次に、無電解メッキ銅上および/または本発明に係る金属層にレジスト膜を形成したのち、露光および現像により回路の形成を予定する部分のレジスト被膜を取り除く。次に、無電解メッキ膜および/または本発明に係る金属層が露出する部分を給電電極として使用して、電解銅によるパターンメッキを行ない、回路を形成する。ついでレジスト部分を取り除いたのち、不要部分の無電解メッキ層および本発明に係る金属層、または本発明にかかる金属層をエッチングにより取り除いて、回路を形成する。銅箔層についても、サブトラクティブ法などの公知の方法で回路を形成する。
第二のプリント配線板の製造方法においては、まず、物理的方法で形成された金属層とポリイミドフィルム層を貫通して金属銅箔に至る/または貫通するビアホールを形成する。次に、前記と同様にデスミヤした後、少なくともビアホール内部に無電解メッキ銅層を形成する。次に、無電解メッキ銅層および/または本発明に係る金属層に電解メッキ銅を施して、両面がビアホールによって電気的に接続された積層体を作製する。次に、電解銅メッキ層表面にレジスト膜を形成したのち、露光および現像により、回路の形成を予定しない部分のレジスト被膜を取り除く。次にエッチングにより不要な金属層を取り除き、回路を形成する。銅箔層についても、サブトラクティブ法などの公知の方法で回路を形成する。
金属層/ポリイミドフィルム層/接着層からなる積層体を使用した配線板の製造方法について、第一のプリント配線板の製造方法では、まず、前記積層体の接着層と回路形成した配線板の回路面とを対向させ、加熱および/または加圧を伴った方法により積層する。次に、金属層とポリイミドフィルム層とを貫通して配線板回路に至るビアホールを形成する。その後、金属層の表面およびビアホール内部にできたポリイミド融着物、分解物、および熱による炭化物などを主成分とするスミヤを除去する工程を実施する。その後、少なくともビアホール内部に無電解メッキ銅を施す。次に、レジスト膜を形成したのち、露光および現像により、回路の形成を予定する部分のレジスト被膜を取り除く。次に、無電解メッキ膜および/または本発明にかかる金属層が露出する部分を給電電極として使用して、電解銅によるパターンメッキを行ない、回路を形成する。ついで、レジスト部分を取り除いたのち、不要部分の無電解メッキ層および本発明に係る金属層、または本発明に係る金属層をエッチングにより取り除いて、回路を形成する。
第二のプリント配線板の製造方法においては、まず、前記積層体の接着層と回路形成した配線板の回路面とを対向させ、加熱および/または加圧を伴った方法で積層する。ついで、金属層とポリイミドフィルム層を貫通して配線板回路にいたるビアホールを形成する。次に、前記と同様にデスミャしたのち、少なくともビアホール内部に無電解メッキ銅を施す。次に無電解メッキ銅上およびまたは本発明に係る金属層上に電解パネルメッキ銅を施す。次に、電解銅メッキ層表面にレジスト膜を形成したのち、露光および現像により、回路の形成を予定しない部分のレジスト被膜を取り除く。次に、エッチングにより不要な金属層を取り除き、回路を形成する。
また、前記の方法において、金属層/ポリイミドフィルム層/接着層からなる積層体の接着層と回路形成した配線板の回路面を対向させて積層する代わりに、前記積層体を接着シートを介して回路形成した配線板の回路面を積層してもよい。
また、本発明の積層体を用いて、両面に金属層を形成したプリント配線板、あるいは積層体をさらに多層化した多層プリント配線板を製造することも本発明の範疇である。
熱可塑性ポリイミド層の表面を加熱処理またはイオンガン処理して両面プリント配線板を製造する場合には、非熱可塑性ポリイミドフィルムの両面に熱可塑性ポリイミド層を設け、それぞれの表面をイオンガン処理した後、または加熱しながら、両面にたとえばスパッタリングによって金属層を形成した積層体を用いることが好ましい。また、多層プリント配線板を製造する方法において、非熱可塑性ポリイミドフィルムの両面に熱可塑性ポリイミド層を設け、それぞれの表面をイオンガン処理した後、または加熱しながら、たとえばスパッタリングによって金属層を形成した積層体を用いることが好ましい。この積層体を用いて両面プリント配線板を製造し、層間に配した接着剤のシートを介して多層化する。あるいは、非熱可塑性ポリイミドフィルムの片面に熱可塑性ポリイミド層/金属層を形成し、金属層を形成していない面に接着剤層を設けた(金属層/熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミドフィルム/接着剤層)積層体を製造し、回路層を積み重ねていく、いわゆるビルドアップ工法が適用できる。
また、プラズマ処理、コロナ処理、カップリング剤処理、過マンガン酸塩処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、研磨剤を高速投射する表面処理、火炎処理および親水化処理から選択される1種以上の処理を組み合わせて表面処理された熱可塑性ポリイミド樹脂フィルムを用いるプリント配線板は、以下のように製造される。
第一のプリント配線板の製造方法では、まず熱可塑性ポリイミド樹脂表面に無電解メッキ銅などの方法で金属層を形成する。さらに、無電解メッキ銅上にレジスト膜を形成したのち、露光およびエッチングにより、回路の形成を予定する部分のレジスト被膜を取り除く。次に、無電解メッキ膜または本発明にかかる金属層が露出する部分を給電電極として使用して、電解銅によるパターンメッキ法により回路を形成する。ついで、レジスト部分を取り除き、不要部分の無電解メッキで形成された金属層をエッチングにより取り除いて回路を形成し、プリント配線板を製造する。この方法は、セミアディティブ法と呼ばれる方法である。無電解メッキを行なう前に、必要に応じてスルーホールを開孔し、硫酸、クロム酸、過マンガン酸塩またはプラズマなどの方法でデスミヤ処理を行なった後、樹脂表面および孔壁を無電解メッキ処理することで、フィルムの表と裏を導通することも可能である。
第二のプリント配線板の製造方法においては、まず前記と同様に、必要に応じて適宜スルーホールの開孔およびデスミヤ処理を行なった熱可塑性ポリイミド樹脂表面に、無電解メッキにより金属層を形成する。次に、電解メッキを施して、金属層を通常5μm以上の厚みとした後、電解メッキ層表面にレジスト膜を形成し、露光工程および現像により回路の形成しない部分のレジスト膜を除去する。次に、エッチングにより不要な金属層を取り除いて回路を形成し、プリント配線板を製造する。この方法は、サブトラクティブ法と言われている。
第三のプリント配線板の製造方法においては、まず、必要に応じて適宜スルーホールの開孔およびデスミヤ処理を行なった熱可塑性ポリイミド樹脂表面に、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法または化学蒸着法のいずれかの方法により金属層を形成する。その後、前記セミアディティブ法あるいはサブトラクティブ法を用いて回路を形成し、プリント配線板を製造する。
第四のプリント配線板の製造方法においては、まず、すでに内層回路が形成された内層基板に少なくとも基板の外層側が熱可塑性ポリイミド樹脂となる様に積層体を積層する。必要に応じて適宜ビアホール、スルーホールの開孔およびデスミヤ処理を行なったあと、熱可塑性ポリイミド樹脂表面に、無電解メッキ法あるいはスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法または化学蒸着法のいずれかの方法により金属層を形成する。その後、前記セミアディティブ法あるいはサブトラクティブ法を用いて回路を形成し、多層プリント配線板を製造する。
両面プリント配線板および多層プリント配線板において、層間を接続するために、スルーホールやヴィアホールの形成、ホールクリーニングのためのデスミヤ処理、および層間接続のための無電解メッキ処理が必須となるが、本発明の積層体を用いることによって、これらプリント配線板は、デスミヤ液および無電解銅メッキ液(通常強アルカリ性)に対する耐性を充分に有している。また、イオンガン処理または加熱処理を組み合わせることによって、プレッシャークッカーテストを行なうと密着力が大幅に低下するという問題を解決した、良好な両面あるいは多層プリント配線板を製造することができる。
また、接着層を有する積層体と回路を形成した配線板を積層した後に、金属層を形成して製造されるプリント配線板の製造方法について、第一のプリント配線板の製造方法では、まず積層体の接着層と回路形成した配線板の回路面とを対向させて、加熱および/または加圧を伴った方法で積層する。次に、積層体を貫通して配線板回路に至るビアホールを形成する。その後、金属層の表面およびビアホール内部にできたポリイミド融着物、分解物および熱による炭化物などを主成分とするスミヤを除去する工程を実施する。次に、熱可塑性ポリイミド層表面に物理的蒸着法により導体層を形成し、パネルメッキを行なう。このとき、ビアホール内部にもパネルメッキを行なうことができる。次に、レジスト膜を形成したのち、露光および現像により、回路の形成を予定する部分のレジスト被膜を取り除く。次に、物理的蒸着法による導体層が露出する部分を給電電極として使用して、電解銅によるパターンメッキを行ない、回路を形成する。ついで、レジスト部分を取り除き、不要部分の物理的蒸着法による導体層をエッチングにより取り除いて回路を形成する。
この製造方法では、物理的蒸着法によりパネルメッキを行なうことを特徴としている。通常、物理的蒸着法は、真空中で行なわれるドライプロセスである。また、プラズマ処理によるドライデスミヤなども真空中で実施されるため、後に続く物理的蒸着とともに同一チャンバー内で実施することが可能となり、とくに好ましい。また、大気圧下で実施する大気圧プラズマも好ましい。これら真空プラズマおよび大気圧プラズマは、何れもデスミヤ処理として実施される。これらを過マンガン酸系デスミヤ処理と比較した場合、物理的蒸着法により形成した導体層と熱可塑性ポリイミド層との密着強度は、過マンガン酸系デスミヤ処理の方が低くなる傾向がある。したがって、真空プラズマおよび大気圧プラズマが好ましく実施される。また、これらデスミヤ処理は、レーザーによる穴開けにより生じたスミヤを除去するために実施されるものであり、したがってレーザー条件の適正化および性能向上などにより、スミヤが無いまたは少ない場合、デスミヤ工程を省くことも可能である。
第二のプリント配線板の製造方法は、まず、積層体の接着層と回路形成した配線板の回路面を対向させ、加熱および/または加圧を伴った方法で積層する。積層体を貫通して配線板回路に至るビアホールを形成する。次に、前記と同様にデスミヤしたのち、物理的蒸着法によるパネルメッキを行なう。次に、物理的蒸着法によるパネルメッキ層上に、電解メッキによるパネルメッキを施す。ついで、電解メッキ層表面にレジスト膜を形成したのち、露光および現像により、回路の形成を予定しない部分のレジスト被膜を取り除く。さらに、エッチングにより不要な金属層を取り除いて、回路を形成する。
また、前記のようにこの製造方法は、従来一般に用いられていた湿式の無電解メッキにかわり、物理的蒸着法によりパネルメッキを行なうことを特徴としている。そのため、湿式メッキで問題となる環境汚染の問題がないなどの特徴を有している。
本発明のプリント配線板の製造方法において、所望するプリント配線板の仕様などに応じて、工法およびプロセス条件を適宜選択することが可能であり、またその他の公知の技術を組み合わせることも可能である。
すなわち、ビアホール形成は、公知の炭酸ガスレーザー、UV−YAGレーザーやエキシマレーザー、パンチング、およびドリリングなどを用いた穴開け法によって行なうことが可能である。小さなビアホールを形成する場合、レーザーを用いた穴開け法が好ましく使用される。ここで、最も大きな問題になるのが、ビアホールのデスミヤ工程である。通常、このデスミヤ工程において、過マンガン酸塩を用いたアルカリ性を示すデスミヤ処理が行なわれる。この時、充分なデスミヤ効果を得るために処理条件を強くすると、本来耐アルカリ性に弱いポリイミド樹脂を過度に損傷する。このため、とくに蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングなどの方法で形成した薄い金属導体層に、致命的な影響を与え、そして、過マンガン酸塩のデスミヤ液の強い酸化力の影響で、導体層にクラックおよびピンホールが発生したり、剥がれたりするという問題が発生するのである。
しかしながら、本発明の積層体のように熱可塑性ポリイミド層上に金属層を形成した場合には、通常の過マンガン酸塩によるデスミヤを実施しても金属層のクラック、ピンホール、および剥がれが生じない。これは、熱可塑性ポリイミド層が、非熱可塑性ポリイミドよりも耐アルカリ薬品性に優れるためエッチングされにくいこと、および非熱可塑性ポリイミド層よりも柔らかいため金属粒子が熱可塑性ポリイミド層に食い込みやすくなり、金属粒子と熱可塑性ポリイミド層との強固な密着性を実現しているからであろう。すなわち、本発明の製造方法のデスミヤ工程においては、過マンガン酸塩または有機アルカリ溶液などを用いたウェットプロセス、およびプラズマを利用したドライプロセスなどが適用可能である。したがって、本発明の積層体を使用することによって、高密度および低誘電率の要求に対応したプリント配線板に穿設されたビアホールのデスミヤ処理を確実に行なうことができ、後のプリント配線板の製造工程において、パターン剥がれなどの不具合が発生することのないプリント配線板を製造することが可能となるのである。さらに、本発明における金属層は、デスミヤ工程に続いて行われる触媒付与工程、活性化工程および化学メッキ工程を含む無電解メッキプロセスに対して強い耐久性を有しており、表面に無電解メッキ銅膜を形成してもその接着力が低下することはない。
また、無電解メッキを行なう場合、少なくともビアホール内に施すことが必要であるが、本発明にかかる金属層および銅箔層表面に無電解メッキ銅を形成するか否かは、所望するプリント配線板の仕様などに応じて、適宜工法を選択することにより決定される。また、無電解メッキの種類としては、パラジウムなどの貴金属の触媒作用を利用した化学メッキ、および、パラジウム、カーボン、有機マンガン導電皮膜または導電性高分子を用いたダイレクトプレーティングなどが適用可能である。また、レジストは、液状レジストまたはドライフィルムレジストなどが適用可能であり、とくに取扱い性に優れたドライフィルムレジストが好ましい。また、セミアディティブ法で回路形成する場合、給電層除去のために行なわれるエッチングにおいて、硫酸/過酸化水素、過硫酸アンモニウム/硫酸系エッチャント、または本発明の各種積層体の金属層に用いられる元素、即ちニッケル、クロム、金、およびチタンなどを選択的にエッチングできるエッチャントの使用も可能である。
以上、本発明の積層体を用いることにより、デスミヤ工程および必要に応じて無電解メッキ工程などの製造工程が適用でき、ライン/スペースが20μm/20μm以下であるような高密度回路形成が可能で、優れた接着性と高温・高湿などの厳しい環境における高い接着信頼性とを持つプリント配線板を得ることができる。
【実施例】
以下に実施例をあげて、本発明の効果を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正および改変を行ない得る。なお、実施例中の種々のポリイミドフィルムの作製、金属層の作製、測定および評価は、以下の方法で行なった。
態様1
(非熱可塑性ポリイミドフィルムの作製法−A)
ピロメリット酸二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル/p−フェニレンジアミンをモル比で4/3/1の割合で合成したポリアミド酸の17重量%のN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFという)溶液90gに、無水酢酸17gとイソキノリン2gとからなる転化剤を混合した。攪拌および遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に厚さ700μmで流延塗布した。攪拌から脱泡までは、0℃に冷却しながら行なった。このアルミ箔とポリアミド酸溶液との積層体を110℃で4分間加熱し、自己支持性を有するゲルフィルムを得た。このゲルフィルムの残揮発分含量は、30重量%であり、イミド化率は90%であった。このゲルフィルムをアルミ箔から剥がし、フレームに固定した。このゲルフィルムを300℃、400℃、および500℃で各1分間加熱して、厚さ25μmのポリイミドフィルムを製造した。
(非熱可塑性ポリイミドフィルムの作製法−B)
ピロメリット酸二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをモル比で1/1の割合で合成する以外は、作製法−Aと同様の方法でポリイミドフィルムを作製した。
(非熱可塑性ポリイミドフィルムの作製法−C)
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)/p−フェニレンジアミン/4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをモル比で4/5/7/2の割合で合成したポリアミド酸の17重量%のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)溶液を用い、これに転化剤を混合しないで、アルミ箔上に厚さ700μmで流延塗布した。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を110℃で10分間加熱し、自己支持性を有するゲルフィルムを得た。このゲルフィルムの残揮発分含量は30重量%であり、イミド化率は50%であった。このゲルフィルムを用い、作成法−Aと同様の方法でポリイミドフィルムを作製した。
(熱可塑性ポリイミド前駆体の作製法−X)
1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン(以下、DA3EGと言う)と、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、BAPPという)とをモル比3:7でDMFに溶解し、撹拌しながら3,3’,4,4’−エチレングリコールジベンゾエートテトラカルボン酸二無水物(以下TMEGと言う)および3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(以下、BTDAという)をモル比5:1で加え、約1時間攪拌し、固形分濃度が20重量%ポリアミド酸溶液を得た。
(熱可塑性ポリイミド前駆体の作製法−Y)
BAPPをDMFに均一に溶解し、撹拌しながら3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とエチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)をモル比4:1でかつ酸二無水物とジアミンが等モルになるように添加し、約1時間撹拌して、固形分濃度20重量%のポリアミド酸のDMF溶液を得た。
(積層ポリイミドフィルムの製造)
前記製造法−A、BおよびCで作製した非熱可塑性ポリイミドフィルムをコアフィルムとして用い、その両面あるいは片面に、製造法−XおよびYで作製した熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸のDMF溶液を、グラビヤコーターを用いて塗布した。
塗布後、120℃4分で溶媒乾燥し、最終加熱温度390℃で加熱をしてイミド化を行ない、非熱可塑性ポリイミドフィルムと熱可塑性ポリイミド層からなる積層ポリイミドフィルムを作製した。また、塗布量を変えて、熱可塑性ポリイミド層の厚さの異なるフィルムを得た。表中、これらのフィルムを、たとえば非熱可塑ポリイミドフィルムがA法で作成したものであり、両面がX法で作成した熱可塑性ポリイミド層である場合には、X/A/X、片面が熱可塑ポリイミド層で他の面が銅箔である場合にはX/A/Cuと記載してある。
(スパッタリング法による金属層の形成)
ポリイミドフィルムへの金属層の形成は、(株)昭和真空製スパッタリング装置NSP−6を用い、下記の方法で行なった。高分子フィルムを冶具にセットして真空チャンバーを閉じる。基板(高分子フィルム)を自公転させながらランプヒーターで加熱し、6×10−4Pa以下まで真空引きする。その後、アルゴンガスを導入し、0.35PaにしてDCスパッタリングによりニッケル、ついで銅をスパッタリングする。DCパワーはどちらも200Wとした。製膜速度は、ニッケルが7nm/分、銅が11nm/分であり、成膜時間を調整して成膜厚みを制御した。
(接着層の合成)
窒素雰囲気下で、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFという)に1当量のビス{4−(3−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン(以下、BAPS−Mという)を溶解した。溶液を冷却しつつ撹拌し、1当量の4、4’−(4、4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)(以下、BPADAという)を溶解および重合して、固形分濃度30重量%のポリアミド酸重合体溶液を得た。このポリアミド酸溶液を200℃で180分、665Paの減圧下で加熱し、固形の熱可塑性ポリイミド樹脂を得た。前記で得たポリイミド樹脂とノボラック型のエポキシ樹脂(エピコート1032H60:油化シェル社製)、および4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(以下、4,4’−DDSという)を重量比が70/30/9になるように混合し、ジオキソランに固形分濃度が20重量%になるように溶解して、接着剤溶液を得た。得られた接着剤溶液を前記の金属層形成後の積層体のポリイミドフィルム面に、乾燥後の厚みが12.5μmになるように塗布し、170℃で2分間乾燥して接着層を形成し、積層体を得た。
(積層工程)
銅箔12μmのガラスエポキシ銅張積層板から内層回路板を作製した。前記積層体を真空プレスにより、温度200℃、熱板圧力3MPa、プレス時間2時間、および真空条件1KPaの条件で、内層回路板に積層、硬化した。
(接着強度の測定)
IPC−TM−650−method.2.4.9に従い、パターン幅3mm、剥離角度90度、剥離速度50mm/分で測定した。
(プレッシャークッカー試験)
121℃、100%RH、96時間の条件下で試験を行なった。
(耐デスミヤ性の評価)
UVレーザーを用いて、両面に金属層を有する積層体の場合は貫通孔を、また片面が銅箔である場合は金属層およびポリイミドフィルム層を貫通して銅箔面に至る非貫通孔を形成した。次に、孔を穿設したサンプルを、過マンガン酸カリウム50g/Lおよび水酸化ナトリウム40g/Lのデスミヤ溶液に70℃、10分間浸漬した。水洗した後、孔周辺のスミヤ、あるいは非貫通孔の場合には孔底銅箔表面のスミヤが除かれているかどうかを顕微鏡観察したところ、スミヤはいずれの場合にも完全に除かれていた。そこで、金属層、ポリイミドフィルム層および孔壁面が何らかの損傷を受けていないかどうかを、とくに金属層のはがれや浮きがないかどうかを中心に観察した。孔は100個形成されており、100個いずれにも損傷がまったくない場合を◎、わずかでも何らかの損傷が1〜3個の範囲で観察された場合を○、はっきりした損傷が10個以内である場合を△、10個以上である場合を×と評価した。
(熱膨張係数の測定)
熱可塑性ポリイミド/非熱可塑性ポリイミド積層体の熱膨張係数は、セイコーインスツルメント社製TMA120Cを用い、昇温速度20℃/分、窒素流量50ml/分、サンプル形状3mm幅10mm長さ、荷重3gにて室温から300℃まで2回測定し、2回目の100〜200℃の平均線膨張係数をその積層体の熱膨張係数とした。
【実施例1〜6】
作製法−A、BまたはCで製造した厚み25μmの非熱可塑性ポリイミドフィルムの片面に、作製法−XまたはYで製造したポリアミド酸溶液を塗布する方法により、ポリイミドフィルムの作成を行なった。熱可塑性ポリイミド層の厚さは3μmとした。
ついで、熱可塑性ポリイミド層の上に1分間ニッケルをスパッタし、厚み6nmのニッケル膜を形成した。連続して9分間銅をスパッタして、厚み100nmの銅膜を形成し、金属層/ポリイミドフィルム層積層体を得た。得られたスパッタ膜上に、電解メッキ法により厚さ18μmの銅層を形成した。この積層体の常温での接着強度、プレッシャークッカー試験後の接着強度、およびデスミヤ耐性を測定した。その結果を表2に示す。

この結果から、本発明の積層体は、すぐれた接着性と耐デスミヤプロセス性を実現できることがわかった。
【実施例7〜14】
作製法−Cで製造した厚み25μmの非熱可塑性ポリイミドフィルムの両面に作製法−Yで製造したポリアミド酸溶液を塗布する方法で、厚さの異なる熱可塑性ポリイミド層を形成した試料を作成した。このフィルムに、1分間ニッケルをスパッタして、厚み6nmのニッケル膜を形成した。連続して9分間銅をスパッタして、厚み100nmの銅膜を形成し、金属層/ポリイミドフィルム層積層体を得た。得られたスパッタ膜を給電層として用いて、電解メッキ法により厚さ18μmの銅層を形成した。得られた積層体の常温での接着強度、プレッシャークッカー試験後の接着強度、デスミヤ耐性、および熱膨張率を測定した。その結果を表3に示す。なお、熱膨張率は、非熱可塑性フィルムAの熱膨張率が今回の実験では12ppm/℃であったので、熱可塑性層を形成した後の熱膨張係数値が、20ppm/℃以下の場合を◎、25ppm/℃以下の場合を○、30ppm/℃以下の場合を△、30ppm/℃以上の場合を×と評価した。

この結果から、熱可塑性ポリイミド層の厚さは、10μm以下0.01μm以上が好ましく、5μm以下0.1μm以上がより好ましいことがわかる。
【実施例15〜22】
作製法−Cで製造した厚み7.5μm、12.5μm、25μmおよび50μmの非熱可塑性ポリイミドフィルムの両面に作製法−Yで製造したポリアミド酸溶液を塗布する方法で、1μm、5μmおよび10μmの厚さの熱可塑性ポリイミド層を形成した。
このフィルムに1分間ニッケルをスパッタして、厚み6nmのニッケル膜を形成した。連続して9分間銅をスパッタして、厚み100nmの銅膜を形成し、金属/ポリイミドフィルム層積層体を得た。得られたスパッタ膜を給電層として用いて、電解メッキ法により厚さ5μmの銅層を形成した。この積層体の常温での接着強度、プレッシャークッカー試験後の接着強度、デスミヤ耐性、および熱膨張係数を測定した。その結果を表4に示す。なお、熱膨張率は、非熱可塑性フィルムAの熱膨張率が今回の実験では12ppm/℃であったので、熱可塑性層を形成した後のポリイミドフィルムの熱膨張係数が20ppm/℃以下の場合を◎、25ppm/℃以下の場合を○、30ppm/℃以下の場合を△、30ppm/℃以上の場合を×と評価した。

この結果から、プリント配線板として優れた特性を持つ非熱可塑性ポリイミドフィルムの物性(たとえば熱膨張係数など)を生かすためには、熱可塑性ポリイミド層の厚さは、非熱可塑性ポリイミド層より薄いことが必要であり、好ましくは、熱可塑性ポリイミド層の各面の厚さは、非熱可塑性ポリイミド層の1/2以下であり、より好ましくは1/5以下であることがわかった。
比較例1
作製法−Aで作製した非熱可塑ポリイミドフィルム(すなわち、熱可塑性ポリイミド層のないフィルム)の表面に、実施例1と同様の方法で金属膜を作成し、同様の方法で接着性および耐デスミヤ性を測定した。その結果、接着強度は7N/cmであったが、プレッシャークッカー後の接着強度は2N/cmに低下した。また、耐デスミヤ性は×であった。この結果と表2との比較を行なうことにより、熱可塑性ポリイミド層がない場合には所定の特性が得られないことがわかり、熱可塑性ポリイミド層の効果が確認できた。
【実施例23〜32】
実施例1と同じ方法で、種々の厚さのニッケル下地層(第1金属層)および銅層よりなる金属層(第2金属層)を形成し、その接着強度を測定した。その結果を表5に示す。

この結果から下地ニッケル層は2nm以上の厚さであることが好ましく、銅層は10nm以上の厚さであることが好ましいことがわかった。
【実施例33】
Y/B/Y(Yは1μm、Bは25μm)の構成を有するポリイミドフィルムの両面に、スパッタリング法で5nmの厚さのニッケル下地層(第1金属層)、および100nmの厚さの銅金属層(第2金属層)を形成した積層体を作製した。この積層体を用いて以下の方法で回路を形成した。
まず、UV−YAGレーザーを用いて内径30μmの積層体を貫通するビアホールを形成した後、過マンガン酸カリウム50g/Lおよび水酸化ナトリウム40g/Lのデスミヤ溶液に70℃、10分間浸漬し、デスミヤ処理を行なった。次に、無電解メッキ法で金属層表面およびビアホール内部に銅メッキ層を形成した。無電解メッキ層の形成方法は次の通りである。まず、アルカリクリーナー液で積層体を洗浄し、次に酸での短時間プレディップを行なった。さらに、アルカリ溶液中でパラジウム付加とアルカリによる還元とを行なった。その後、アルカリ中での無電解銅メッキを行なった。メッキ温度は室温、メッキ時間は10分間であり、この方法で300nmの厚さの無電解銅メッキ層を形成した。
次に、液状感光性メッキレジスト(日本合成ゴム(株)製、THB320P)をコーティングしたのち、高圧水銀灯を用いてマスク露光を行ない、ライン/スペースが10μm/10μmのレジストパターンを形成した。続いて、電解銅メッキを行なって、無電解銅メッキ皮膜が露出する部分の表面に、銅回路を形成した。電解銅メッキは、10%硫酸中で30秒間予備洗浄し、次に室温中で40分間メッキすることにより行なった。電流密度は2A/dmである。電解銅膜の厚さは10μmとした。次にアルカリ型の剥離液を用いてメッキレジストを剥離し、スパッタニッケル層をニッケルの選択的エッチング液(メック(株)製エッチング液、NH−1862)で除去して、プリント配線板を得た。
得られたプリント配線板は、設計値通りのライン/スペースを有しており、また、アンダーカットはなかった。さらに、給電層剥離部分のオージエ分析、およびEPMAによる残留金属の有無の測定を行なったが、残存金属の存在は認められなかった。また、回路パターンは11N/cmの強さで強固に接着していた。
【実施例34】
まず、X/A/Cu(Xは1μm、Aは25μm、銅箔は15μm)の構成の積層体を準備し、X層表面にスパッタリング法で5nmの厚さのニッケル下地層(第1金属層)、および100nmの厚さの銅金属層(第2金属層)を形成した積層体を作製した。この積層体を用いて以下の方法で回路を形成した。
まず、スパッタリング法で形成した金属層表面に、保護膜となる高分子フィルムを貼り付けた。次に銅箔上にドライフィルムレジスト(旭化成ドライレジストAQ)を貼り付け、露光および現像を行ない、通常のサブトラクティブ法でライン/スペース=30μm/30μmの回路を形成した。用いたエッチング液は塩化第二鉄水溶液である。次に保護フィルムを取り除き、実施例33と同様の方法で、スパッタリング金属層面にライン/スペース=10μm/10μmの微細回路を形成した。実施例33ではビアホールが貫通穴であったのに対して、本実施例ではスパッタリング金属層およびポリイミドフィルム層を貫通し銅箔を用いて形成された回路裏面に至る穴とする点が相違している。
得られたプリント配線板は、設計値通りのライン/スペースを有しており、また、アンダーカットはなかった。さらに、給電層剥離部分のオージエ分析およびEPMAによる残留金属の有無の測定を行なったが、残存金属の存在は認められなかった。また、回路パターンは11N/cmの強度で強固に接着していた。
【実施例35】
X/A/X(Xは1μm、Aは25μm)の構成のポリイミドフィルムの両面に、スパッタリング法で5nmの厚さのニッケル下地層(第1金属層)、および100nmの厚さの銅金属層(第2金属層)を形成した。この積層体を用いて以下の方法で回路を形成した。
まず、UV−YAGレーザーを用いて、内径30μmの積層体を貫通するビアホールを形成した。次に、デスミヤ処理を行なったのち、無電解メッキ法で金属層表面およびビアホール内部に銅メッキ層を形成した。無電解メッキ層の形成方法は次の通りである。まず、アルカリクリーナー液で積層体を洗浄し、次に、酸での短時間プレディップを行なった。さらに、アルカリ溶液中でパラジウム付加とアルカリによる還元とを行なった。次にアルカリ中での化学銅メッキを行なった。メッキ温度は室温、メッキ時間は10分間であり、この方法で300nmの厚さの無電解銅メッキ層を形成した。続いて、電解銅メッキを行なって、10μmの厚さの銅メッキ層を形成した。電解銅メッキは、10%硫酸中で30秒間予備洗浄し、次に室温中で40分間メッキすることにより行なわれた。電流密度は2A/dmである。電解銅膜の厚さは10μmとした。
次に、液状感光性メッキレジスト(日本合成ゴム(株)製、THB320P)をコーティングしたのち、高圧水銀灯を用いてマスク露光を行ない、ライン/スペースが10μm/10μmのレジストパターンを形成した。こうして作製したパターンをもちいて、通常のサブトラクティブ法(薬品名:塩化第二鉄)により回路を形成した。次に、スパッタニッケル層をニッケルの選択的エッチング液(メック(株)製エッチング液、NH−1862)で除去し、さらにアルカリ型の剥離液を用いてメッキレジストを剥離して、プリント配線板を作製した。
得られたプリント配線板は、設計値通りのライン/スペースを有していた。また、給電層剥離部分のオージェ分析およびEPMAによる残留金属の有無の測定を行なったが、残存金属の存在は認められなかった。回路パターンは11N/cmの強度で強固に接着していた。
【実施例36】
作製法−Aで製造した厚み25μmの非熱可塑性ポリイミドフィルムの片面に作製法−Xで製造したポリアミド酸溶液を塗布する方法で、ポリイミドフィルムの作製を行なった。熱可塑性ポリイミドフィルムの厚さは3μmである。このフィルムに1分間ニッケルをスパッタし、厚み6nmのニッケル膜を形成した。連続して9分間銅をスパッタして厚み100nmの銅膜を形成し、金属層/ポリイミドフィルム層積層体を得た。
次に接着層を塗布して、金属層/ポリイミドフィルム層/接着層よりなる積層体を得た。さらに、この積層体を前記ガラスエポキシ銅張積層板から作製した内層回路板上に積層および硬化させ、ビルドアップ基板を得た。接着層の厚さ形成法および積層法はすでに述べた通りである。
次に、UV−YAGレーザーを用いて、内径30μmの内層回路に至るビアホールを形成したのち、過マンガン酸カリウム50g/Lおよび水酸化ナトリウム40g/Lのデスミヤ溶液に70℃、10分間浸漬し、デスミヤ処理を行なった。次に、無電解メッキ法で金属層表面およびビアホール内部に銅メッキ層を形成した。無電解メッキ層の形成方法は次の通りである。まずアルカリクリーナー液で積層体を洗浄し、次に酸での短時間プレディップを行なった。さらに、アルカリ溶液中でパラジウム付加とアルカリによる還元とを行なった。次にアルカリ中での無電解銅メッキを行なった。メッキ温度は室温、メッキ時間は10分間であり、この方法で300nmの厚さの無電解銅メッキ層を形成した。
次に、液状感光性メッキレジスト(日本合成ゴム(株)製、THB320P)をコーティングしたのち、高圧水銀灯を用いてマスク露光を行ない、ライン/スペースが10μm/10μmのレジストパターンを形成した。続いて、電解銅メッキを行なって、無電解銅メッキ皮膜が露出する部分の表面に、銅回路を形成した。電解銅メッキは、10%硫酸中で30秒間予備洗浄し、次に室温中で40分間メッキすることにより行なった。電流密度は2A/dmである。電解銅膜の厚さは10μmとした。次にアルカリ型の剥離液を用いてメッキレジストを剥離し、スパッタニッケル層をニッケルの選択的エッチング液(メック(株)製エッチング液、NH−1862)で除去して、プリント配線板を得た。
得られたプリント配線板は、設計値通りのライン/スペースを有しており、また、アンダーカットはなかった。さらに、給電層剥離部分のオージエ分析およびEPMAによる残留金属の有無の測定を行なったが、残存金属の存在は認められなかった。また、回路パターンは13N/cmの強さで強固に接着していた。耐デスミヤプロセス性も良好であった。
【実施例37】
実施例36と同じ方法で、スパッタ金属層/Y/C/接着層よりなる積層体を形成し、この積層体を前記ガラスエポキシ銅張積層板から作製した内層回路板上に積層および硬化させ、ビルドアップ基板を得た。
次に、UV−YAGレーザーを用いて内径30μmの内層回路に至るビアホールを形成したのち、過マンガン酸カリウム50g/Lおよび水酸化ナトリウム40g/Lのデスミヤ溶液に70℃、10分間浸漬し、デスミヤ処理を行なった。次に、無電解メッキ法で金属層表面およびビアホール内部に銅メッキ層を形成した。無電解メッキ層の形成方法は次の通りである。まずアルカリクリーナー液で積層体を洗浄し、次に酸での短時間プレディップを行なった。さらに、アルカリ溶液中でパラジウム付加とアルカリによる還元とを行なった。次にアルカリ中での無電解銅メッキを行なった。メッキ温度は室温、メッキ時間は10分間であり、この方法で300nmの厚さの無電解銅メッキ層を形成した。
次に、液状感光性メッキレジスト(日本合成ゴム(株)製、THB320P)をコーティングしたのち、高圧水銀灯を用いてマスク露光を行ない、ライン/スペースが10μm/10μmのレジストパターンを形成した。続いて、電解銅メッキを行なって、無電解銅メッキ皮膜が露出する部分の表面に、銅回路を形成した。電解銅メッキは、10%硫酸中で30秒間予備洗浄し、次に室温中で40分間メッキすることにより行なった。電流密度は2A/dmである。電解銅膜の厚さは10μmとした。次にアルカリ型の剥離液を用いてメッキレジストを剥離し、スパッタニッケル層をニッケルの選択的エッチング液(メック(株)製エッチング液、NH−1862)で除去して、プリント配線板を得た。
得られたプリント配線板は設計値通りのライン/スペースを有しており、また、アンダーカットはなかった。さらに、給電層剥離部分のオージェ分析およびEPMAによる残留金属の有無の測定を行なったが、残存金属の存在は認められなかった。また、回路パターンは13N/cmの強さで強固に接着していた。耐デスミヤプロセス性も良好であった。
態様2(表面処理)
【実施例38】
(非熱可塑性ポリイミドフィルムの作製)
ピロメリット酸二無水物/p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)/p−フェニレンジアミン/4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをモル比で1/1/1/1の割合で合成したポリアミド酸の17重量%のN,N−ジメチルアセトアミド溶液90gに、無水酢酸17gとイソキノリン2gとからなる転化剤を混合した。ついで、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に厚さ300μmで流延塗布した。攪拌から脱泡までは0℃に冷却しながら行なった。このアルミ箔とポリアミド酸溶液との積層体を110℃4分間加熱し、自己支持性を有するゲルフィルムを得た。このゲルフィルムの残揮発分含量は30重量%であり、イミド化率は90%であった。このゲルフィルムをアルミ箔から剥がし、フレームに固定した。このゲルフィルムを300℃、400℃および500℃で各1分間加熱して、厚さ25μmの非熱可塑性ポリイミドフィルムを製造した。
(熱可塑性ポリイミド前駆体の作製法)
ジアミン成分として2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンをN,N−ジメチルフォルムアミドに均一に溶解した。
撹拌しながら、酸二無水物成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とエチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)のモル比4:1でかつ酸二無水物成分とジアミン成分が等モルになるように添加した。約1時間撹拌し、固形分濃度20重量%の熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸のN,N−ジメチルホルムアミド溶液を得た。
(積層ポリイミドフィルムの製造)
前記非熱可塑性ポリイミドフィルムをコアフィルムとして用い、両面に熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸のN,N−ジメチルフォルムアミド溶液を、グラビヤコーターを用いて塗布した。塗布後、加熱処理により、溶媒乾燥およびポリアミド酸のイミド化を行ない、最終加熱温度390℃で、非熱可塑性ポリイミド層フィルムと熱可塑性ポリイミドとからなる積層ポリイミドフィルムを製造した。光波干渉式表面粗さ計ZYGO社製NewView5030システムを用いて、得られた積層ポリイミドフィルムの、熱可塑性ポリイミド層の表面の10点平均粗さを測定したところ0.1μmであった。
(金属層の形成)
前記積層ポリイミドフィルムの片方の面に、(株)昭和真空製スパッタリング装置NSP−6において、まずイオンテック社製フィラメントカソードイオン源(モデル名:3−1500−100FC)とイオン源電源(MPS3000)により、アルゴンガス、ビーム電圧400V、加速電圧500Vおよびビーム電流20mAの条件で、20分間イオンガン処理した。その後連続して、ニッケル6nm(スパッタ圧0.2Pa、DC出力200W、スパッタ時間1分間)、銅200nm(スパッタ圧0.2Pa、DC出力200W、スパッタ時間18分間)をスパッタリングして、積層体を製造した。ここで、前記スパッタリング装置NSP−6は、前記イオンガン処理装置を真空チャンバー内に有しており、イオンガン処理とスパッタリング処理を連続して行なうことができる構造となっている。また、本装置は、チャンバー内で基板11枚が自公転しながらイオンガン処理やスパッタリング処理される。すなわち、各基板がイオンガン処理やスパッタリング処理される時間は、全体の処理時間の5〜7%となる。ついで、金属層上に耐熱性と再剥離性とを持つ保護フィルム(東洋インキ製造(株)製:リオエルムLE952−T1)をラミネートした。
(接着層の合成)
態様1同様にして得られた接着剤溶液を、前記積層体の金属層を形成していない面に、乾燥後の厚みが12.5μmになるように塗布したのち、170℃で2分間乾燥して接着層を形成し、耐熱性保護フィルム/金属層/熱可塑性ポリイミド樹脂層/非熱可塑性ポリイミドフィルム/接着剤層からなる積層体を得た。
(積層工程)
態様1同様にして内層回路板に積層および硬化し、耐熱性保護フィルム/金属層/ポリイミドフィルム層/接着剤層/ガラスエポキシ銅張積層板からなる積層体を得た。
(穴開け・デスミヤ・化学銅メッキ工程)
積層体表面の耐熱性保護フィルムを剥離した後、積層体の耐デスミヤ液桂および耐無電解銅メッキ液性を評価するために積層体を表6の条件の各工程を通した。

(電気銅メッキ工程)
硫酸銅メッキ浴(ハイスロー浴)を用い、電流密度2A/dmで40分間電気メッキし、銅厚みを18μmとした。なお、メッキ浴の添加剤として奥野製薬社製トップルチナメークアップ(10ml/l)およびトップルチナ81−HL(2.5ml/l)を用いた。
また、常態での接着強度の測定、およびプレッシャークッカー試験は、態様1同様に行なった。
(微細回路の形成)
金属層/熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミドフィルム/接着剤層/ガラスエポキシ銅張積層板からなる積層体を用い、セミアディティブ法により、ライン/スペース=15μm/15μmの回路を形成した。金属層/熱可塑性ポリイミド層界面が平滑であり(Rz=0.1μm)、エッチング残りが発生せずに良好な回路を形成できた。
比較例2
非熱可塑性ポリイミドフィルムに熱可塑性ポリイミド層を形成しないこと以外は、実施例38と同様の方法で積層体を製造したところ、デスミヤ工程で金属層にクラックが入って剥がれてしまい、積層体が製造できなかった。
比較例3
Rz=3μmに粗面化したエポキシ樹脂基板に、表6の処理4〜8を行なって基板表面に金属層を形成した。これを用いてセミアディティブ法でライン/スペース=15μm/15μmの回路を形成したが、樹脂表面にエッチング残りがあり、良好な回路を形成できなかった。
【実施例39】
(熱可塑性ポリイミドフィルムの作製)
実施例38で得られた熱可塑性ポリイミド前駆体を、コンマコーターを用いて厚み125μmのPETフィルムに塗布し、120℃で4分加熱・乾燥して自己支持性をもつ半硬化フィルムを得た。この熱可塑性ポリイミド前駆体フィルムをPETフィルムから剥離し、端部を固定して最終加熱温度390℃で加熱、イミド化して厚み25μmの単層の熱可塑性ポリイミドフィルムを得た。
(スパッタリングによる金属層の積層)
得られた熱可塑性ポリイミドフィルムの片面に実施例38と同様にニッケルついで銅をスパッタし、金属/熱可塑性ポリイミド積層体を得た。
(積層工程)
銅箔12μmのBTレジン基板から内層回路を作製した。前記積層体の金属層を形成した面と反対の面を内層回路に対向させ、真空プレスにより温度260℃、熱板圧力3MPa、プレス時間10分間、真空条件1KPaの条件で内層回路に積層した。
実施例1と同様の方法で、常態およびプレッシャークッカー試験後の接着強度を評価した。
実施例38、39および比較例2の接着強度の測定結果を表7に示す。

態様3(加熱処理)
【実施例40】
態様2と同様の作製法により得られた非熱可塑性ポリイミドフィルムおよび熱可塑性ポリイミド前駆体を用いて、態様2同様にして積層ポリイミドフィルムを製造した。
(金属層の形成)
前記積層ポリイミドフィルムの片方の面に、(株)昭和真空製スパッタリング装置NSP−6を用い、赤外線ランプヒーターで270℃に加熱しながら、ニッケル6nm(スパッタ圧0.2Pa、DC出力200W、スパッタ時間1分間)、銅200nm(スパッタ圧0.2Pa、DC出力200W、スパッタ時間18分間)をスパッタリングして、積層体を製造した。
ここで前記スパッタリング装置NSP−6は、赤外線ランプヒーター装置を真空チャンバー内に有しており、加熱とスパッタリング処理を同時並行して行なうことができる構造となっている。すなわち、本装置は、チャンバー内で基板11枚が自公転しながらランプヒーター上で加熱され、スパッタリング処理される。各基板がスパッタリング処理される時間は、全体の処理時間の5〜7%となる。ランプヒーターの温度は、ランプヒーターと基板の中間に熱電対を設置して測定および制御した。さらに、金属層上に耐熱性と再剥離性を持つ保護フィルム(東洋インキ製造(株)製:リオエルムLE952−T1)をラミネートした。
(接着層の合成)
態様1同様にして得られた接着剤溶液を、前記積層体の金属層を形成していない面に、乾燥後の厚みが12.5μmになるように塗布したのち、170℃で2分間乾燥して接着層を形成して、耐熱性保護フィルム/金属層/熱可塑性ポリイミド樹脂層/非熱可塑性ポリイミドフィルム/接着剤層からなる積層体を得た。
(積層工程)
態様1同様の条件で内層回路板に積層したのち、硬化して、耐熱性保護フィルム/金属層/ポリイミドフィルム層/接着剤層/ガラスエポキシ銅張積層板からなる積層体を得た。
(穴開け・デスミヤ・化学銅メッキ工程)
積層体表面の耐熱性保護フィルムを剥離した後、積層体の耐デスミヤ液性および耐無電解銅メッキ液性を評価するために、積層体を前記表6の条件の各工程を通した。
(電気銅メッキ工程)
態様2同様に電気銅メッキを行なった。
また、常態での接着強度の測定、およびプレッシャークッカー試験は、態様1同様に行なった。
(微細回路の形成)
金属層/熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミドフィルム/接着剤層/ガラスエポキシ銅張積層板からなる積層体を用い、セミアディティブ法により、ライン/スペース=15μm/15μmの回路を形成した。金属層/熱可塑性ポリイミド層界面が平滑であり(Rz=0.1μm)、エッチング残りが発生しない良好な回路を形成できた。
【実施例41】
ランプヒーターの加熱温度を150℃とする以外は実施例40と同様の方法で積層体を製造し、常態およびプレッシャークッカー後の接着強度を測定した。得られた金属層/熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミドフィルム/接着剤層/ガラスエポキシ銅張積層板からなる積層体を用い、セミアディティブ法により、ライン/スペース=15/15μmの回路を形成した。金属層/熱可塑性ポリイミド層界面が平滑であり(Rz=0.1μm)、エッチング残りが発生しない良好な回路を形成できた。
比較例4
非熱可塑性ポリイミドフィルムに熱可塑性ポリイミド層を形成しないこと以外は、実施例40と同様の方法で積層体を製造したところ、デスミヤ工程で金属層にクラックが入って剥がれてしまい、積層体が製造できなかった。
比較例5
Rz=3μmに粗面化したエポキシ樹脂基板に表6の処理4〜8を行ない、基板表面に金属層を形成し、これを用いてセミアディティブ法でライン/スペース=15μm/15μmの回路を形成したが、樹脂表面にエッチング残りがあり、良好な回路を形成できなかった。
実施例40、41および比較例4の結果を表8に示す。

態様4(表面処理)
【実施例42】
態様2と同様の作製法により得られた非熱可塑性ポリイミドフィルムおよび熱可塑性ポリイミド前駆体を用いて、態様2同様にして積層ポリイミドフィルムを製造した。
(熱可塑性ポリイミド樹脂層の表面処理)
得られた積層ポリイミドフィルムの片方の面に、ガス組成をアルゴン/ヘリウム/窒素、分圧比が8/2/0.2として、圧力13300Pa、処理密度1000[W・分/m]にてプラズマ処理を行なった。
(金属層の形成)
前記表面処理した熱可塑性ポリイミド樹脂の片方の面に、前記表6に示す方法でデスミヤおよび無電解銅メッキをして、熱可塑性ポリイミド樹脂表面に無電解銅メッキ被膜(厚み0.3μm)を形成した。引き続いて、硫酸銅メッキ浴(ハイスロー浴)を用い、電流密度2A/dmで40分間電気メッキし、銅厚みを18μmとした。なお、メッキ浴の添加剤として奥野製薬社製トップルチナメークアップ(10ml/l)およびトップルチナ81−HL(2.5ml/l)を用いた。
また、常態での接着強度の測定、およびプレッシャークッカー試験は、態様1同様に行なった。
(微細回路の形成)
表面処理した熱可塑性ポリイミド樹脂/非熱可塑性ポリイミドフィルム積層体に無電解銅メッキを用い、セミアディティブ法により、ライン/スペース=15μm/15μmの回路を形成した。金属層/熱可塑性ポリイミド層界面が平滑であり(Rz=0.1μm)、エッチング残りが発生しない良好な回路を形成できた。
【実施例43】
プラズマ処理を、処理密度1000[W・分/m]のコロナ処理に代える以外は、実施例42と同様の方法で積層体を製造し、常態およびプレッシャークッカー後の接着強度を測定した。また、得られた熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミドフィルムなる積層体を用い、セミアディティブ法により、ライン/スペース=15μm/15μmの回路を形成した。金属層/熱可塑性ポリイミド層界面が平滑であり(Rz=0.1μm)、エッチング残りが発生しない良好な回路を形成できた。
【実施例44】
プラズマ処理を、カップリング剤溶液としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(シランカップリング剤KBE903;信越化学工業(株)製)の0.1重量%メタノール溶液を用いたカップリング剤処理に代える以外は、実施例42と同様の方法で積層体を製造し、常態およびプレッシャークッカー後の接着強度を測定した。また、得られた熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミドフィルムからなる積層体を用い、セミアディティブ法により、ライン/スペース=15μm/15μmの回路を形成した。金属層/熱可塑性ポリイミド層界面が平滑であり(Rz=0.1μm)、エッチング残りが発生しない良好な回路を形成できた。
【実施例45】
プラズマ処理に代わって、アトテックジャパン製コンセントレートコンパクトCPを550mlと水酸化ナトリウムを40gとを溶解し、体積を水で1リットルに調整した過マンガン酸ナトリウム水溶液に、80℃で5分浸漬する以外は、実施例42と同様の方法で積層体を製造し、常態およびプレッシャークッカー後の接着強度を測定した。また、得られた熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミドフィルムからなる積層体を用い、セミアディティブ法により、ライン/スペース=15μm/15μmの回路を形成した。金属層/熱可塑性ポリイミド層界面が平滑であり(Rz=0.1μm)、エッチング残りが発生しない良好な回路を形成できた。
【実施例46】
プラズマ処理を、照度20mW/cm、照射時間5分間の紫外線照射処理に代える以外は、実施例42と同様の方法で積層体を製造し、常態およびプレッシャークッカー後の接着強度を測定した。また、得られた熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミドフィルムからなる積層体を用い、セミアディティブ法により、ライン/スペース=15μm/15μmの回路を形成した。金属層/熱可塑性ポリイミド層界面が平滑であり(Rz=0.1μm)、エッチング残りが発生しない良好な回路を形成できた。
【実施例47】
プラズマ処理を、照射線量500kGyの電子線照射処理に代える以外は、実施例42と同様の方法で積層体を製造し、常態およびプレッシャークッカー後の接着強度を測定した。また、得られた熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミドフィルムからなる積層体を用い、セミアディティブ法により、ライン/スペース=15μm/15μmの回路を形成した。金属層/熱可塑性ポリイミド層界面が平滑であり(Rz=0.1μm)、エッチング残りが発生しない良好な回路を形成できた。
【実施例48】
プラズマ処理を、粒径0.1〜1mmのけい砂を使用し、吹き出しノズルとポリイミドフィルムとの角度および間隔をそれぞれ45度、100mm、吹き出し量を6kg/分としたサンドブラスト処理に代える以外は、実施例42と同様の方法で積層体を製造し、常態およびプレッシャークッカー後の接着強度を測定した。また、得られた熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミドフィルムなる積層体を用い、セミアディティブ法により、ライン/スペース=15μm/15μmの回路を形成した。金属層/熱可塑性ポリイミド層界面が平滑であり(Rz=0.1μm)、エッチング残りが発生しない良好な回路を形成できた。
【実施例49】
プラズマ処理を、1600℃の炎を用い、冷却ロール温度を50℃、火炎の先端から火炎長さの1/3のところをフィルムが走行するようにした火炎処理に代える以外は、実施例42と同様の方法で積層体を製造し、常態およびプレッシャークッカー後の接着強度を測定した。また、得られた熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミドフィルムからなる積層体を用い、セミアディティブ法により、ライン/スペース=15μm/15μmの回路を形成した。金属層/熱可塑性ポリイミド層界面が平滑であり(Rz=0.1μm)、エッチング残りが発生しない良好な回路を形成できた。
【実施例50】
プラズマ処理を、抱水ヒドラジンを5mol/Lおよび水酸化ナトリウムを1mol/Lの割合で含有する水溶液に30℃で2分間浸漬する親水化処理に代える以外は、実施例42と同様の方法で積層体を製造し、常態およびプレッシャークッカー後の接着強度を測定した。また、得られた熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミドフィルムなる積層体を用い、セミアディティブ法により、ライン/スペース=15μm/15μmの回路を形成した。金属層/熱可塑性ポリイミド層界面が平滑であり(Rz=0.1μm)、エッチング残りが発生しない良好な回路を形成できた。
比較例6
実施例42記載の方法で得られた非熱可塑性ポリイミドフィルムに熱可塑性ポリイミド樹脂層を形成しない以外は、実施例42と同様の方法で積層体を製造し、常態およびプレッシャークッカー後の接着強度を測定した。また、得られた熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミドフィルムからなる積層体を用い、セミアディティブ法により、ライン/スペース=15μ/15μmの回路を形成した。金属層/熱可塑性ポリイミド層界面の密着が弱いためパターンが剥がれ、プリント配線板が製造できなかった。
比較例7
プラズマ処理を、照射線量500kGyの電子線照射処理に代える以外は、比較例6と同様の方法で積層体を製造し、常態およびプレッシャークッカー後の接着強度を測定した。また、得られた熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミドフィルムからなる積層体を用い、セミアディティブ法により、ライン/スペース=15μm/15μmの回路を形成した。金属層/熱可塑性ポリイミド層界面の密着が弱いためパターンが剥がれ、プリント配線板が製造できなかった。
比較例8
プラズマ処理を、アトテックジャパン製コンセントレートコンパクトCPを550mlと水酸化ナトリウムを40gを溶解し、体積を水で1リットルに調整した過マンガン酸ナトリウム水溶液に80℃で5分浸漬する処理に代える以外は、比較例6と同様の方法で積層体を製造し、常態およびプレッシャークッカー後の接着強度を測定した。また、得られた熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミドフィルムからなる積層体を用い、セミアディティブ法により、ライン/スペース=15μm/15μmの回路を形成した。金属層/熱可塑性ポリイミド層界面の密着が弱いためパターンが剥がれ、プリント配線板が製造できなかった。
比較例9
Rz=3μmに粗面化したエポキシ樹脂基板に表6の処理4〜8を行ない、基板表面に金属層を形成した。これを用いてセミアディティブ法でライン/スペース=15μm/15μmの回路を形成したが、樹脂表面にエッチング残りがあり、良好な回路を形成できなかった。
実施例42〜50および比較例6〜8の接着強度の測定結果を表9に示す。

態様5(内層回路板と積層したのちパネルメッキする)
(積層体の製造)
態様1に記載の作製法−A、BおよびCで作製した非熱可塑性ポリイミドフィルム、熱可塑性ポリイミド前駆体の作製法−XおよびYで作製した熱可塑性ポリイミド前駆体、および接着剤溶液を使用した。
前記作製法−A、BおよびCで作製した非熱可塑性ポリイミドフィルムをコアフィルムとして用い、その片面に作製法−XおよびYで作製した熱可塑性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸のDMF溶液を、グラビヤコーターを用いて塗布した。
塗布後、加熱処理により溶媒乾燥およびポリアミド酸のイミド化を行ない、最終加熱温度390℃で非熱可塑性ポリイミド層と熱可塑性ポリイミド層とからなる積層ポリイミドフィルムを作製した。塗布量を変えて、熱可塑性ポリイミド層の厚さの異なるフィルムを得た。
前記非熱可塑性ポリイミドフィルム面に、前記接着剤溶液を乾燥後の厚みが12.5μmになるように塗布した。ついで、170℃で2分間乾燥して接着層を形成し、積層体を得た。表中、得られた積層体を、たとえば非熱可塑ポリイミドフィルムがA法で作成したものであり、その片面にX法で作製した熱可塑ポリイミド層である場合には、X/A/接着層と記載してある。
(積層工程)
銅箔12μmのガラスエポキシ銅張積層板から内層回路板を作製した。ついで、真空プレスにより、温度200℃、熱板圧力3MPa、プレス時間2時間、真空条件1KPaの条件で、前記積層体を内層回路板に積層したのち、硬化した。
(スパッタリング法によるパネルメッキ)
積層後の熱可塑性ポリイミド樹脂層上へのパネルメッキ層の形成は、(株)昭和真空製スパッタリング装置NSP−6を用い、下記の方法で行なった。
内層回路板に積層体を積層した基板を冶具にセットして、真空チャンバーを閉じる。前記基板を自公転させながらランプヒーターで加熱し、6×10−4Pa以下まで真空引きする。その後、アルゴンガスを導入することにより0.35Paにして、DCスパッタリングによりニッケルを、ついで銅をスパッタリングする。DCパワーはどちらも200Wとした。製膜速度は、ニッケルが7nm/分、銅が11nm/分であり、成膜時間を調整して成膜厚みを制御した。
また、常態での接着強度の測定、およびプレッシャークッカー試験は、態様1同様に行なった。なお、測定にあたっては、スパッタリングで形成した銅層上に、電解メッキで18μmの銅層を形成した。
【実施例51〜56】
作製法−A、BまたはCで製造した厚み25μmの非熱可塑性ポリイミドフィルムの片面に、作製法−XまたはYで製造したポリアミド酸溶液を、他面に接着剤溶液を用いて積層体を得た。熱可塑性ポリイミド層の厚さは3μmとした。前記積層体を、回路形成したガラスエポキシ基板に積層した。続いて、UV−YAGレーザーにより、30μm径の内層回路に至るビアホールを形成した。続いて、酸素プラズマによるデスミヤを行なった。次に、熱可塑性ポリイミド層の上に、ニッケルスパッタにより厚み10nmのニッケル膜を形成し、連続して銅スパッタにより厚み250nmの銅膜を形成した。得られたスパッタ膜上に電解メッキ法により厚さ18μmの銅層を形成した。この積層体の常温での接着強度、プレッシャークッカー試験後の接着強度、およびデスミヤ処理の様子を評価した。その結果を表10に示す。

この結果から、本発明の積層体は、すぐれた接着性が実現できることがわかった。また、デスミヤは良好に行なえており、ビア内部に導体層が良好に形成されていた。
比較例10
非熱可塑性ポリイミドフィルムA(すなわち、熱可塑性ポリイミド層のないフィルム)を用い、その表面に熱可塑性ポリイミド層を形成しない以外は、実施例51と同様の方法でサンプルを作製し、同様の方法で接着性およびデスミヤ処理の様子を評価した。その結果、接着強度は7N/cmであったが、プレッシャークッカー後の接着強度は2N/cmに低下した。また、デスミヤは良好に行なえていた。この結果と表10とを比較することにより、熱可塑性ポリイミド層がない場合には所定の特性が得られないことがわかり、熱可塑性ポリイミド層の効果が確認できた。
【実施例57〜71】
種々の厚さのニッケル下地層および銅層を形成した金属層、あるいはニッケルの単層を形成した以外は、実施例51と同様の操作を行ない、同様の方法で接着性およびデスミヤ処理の様子を評価した。その結果を表11に示す。なお、非熱可塑性ポリイミドフィルムとしてはCを、熱可塑性ポリイミドとしてYを用いた。

この結果から、接着性は良好であった。また、デスミヤは良好に行なえており、ビア内部に導体層は良好に形成されていた。
【実施例72】
作製法−Cで製造した厚み25μmの非熱可塑性ポリイミドフィルムの片面に作製法−Yで製造したポリアミド酸溶液、他面に接着剤溶液を用いて積層体を得た。熱可塑性ポリイミド層の厚さは3μmとした。前記積層体を回路形成したガラスエポキシ基板に積層した。続いて、UV−YAGレーザーにより、30μm径の内層回路に至るビアホールを形成した。続いて、酸素プラズマによるデスミヤを行なった。次に、熱可塑性ポリイミド層の上に、ニッケルスパッタにより厚み6nmのニッケル膜を形成し、連続して銅スパッタにより厚み100nmの銅膜を形成した。ついで、液状感光性メッキレジスト(日本合成ゴム(株)製、THB320P)をコーティングしたのち、高圧水銀灯を用いてマスク露光を行ない、ライン/スペースが10μm/10μmのレジストパターンを形成した。続いて、電解銅メッキを行なって、無電解銅メッキ皮膜が露出する部分の表面に、銅回路を形成した。電解銅メッキは、10%硫酸中で30秒間予備洗浄し、次に室温中で40分間メッキすることにより行なった。電流密度は2A/dmである。電解銅膜の厚さは10μmとした。次に、アルカリ型の剥離液を用いてメッキレジストを剥離し、スパッタニッケル層をニッケルの選択的エッチング液(メック(株)製エッチング液、NH−1862)で除去して、プリント配線板を得た。
得られたプリント配線板は、設計値通りのライン/スペースを有しており、また、アンダーカットはなかった。給電層剥離部分のオージェ分析およびEPMAによる残留金属の有無の測定を行なったが、残存金属の存在は認められ無かった。また、回路パターンは13N/cmの強さで強固に接着していた。デスミヤは良好に行なえており、ビア内部に導体層は良好に形成されていた。
【産業上の利用可能性】
熱可塑性ポリイミド層および金属層、もしくは、熱可塑性ポリイミド層、非熱可塑性ポリイミド層および金属層を有している本発明の積層体を用いて作製したプリント配線板は、高密度配線が可能で、接着安定性に優れ、耐プレッシャークッカー試験に対して優れた接着信頼性を持ち、さらには、デスミヤなどのプロセス耐性も有している。
また、本発明の積層体を製造する際に、前記熱可塑性ポリイミド層表面を加熱しながら金属層を形成することで、耐デスミヤ液性および接着強度の耐プレッシャークッカー性を併せ持つ積層体およびプリント配線板を得ることができる。
また、本発明の積層体を製造する際に、前記熱可塑性ポリイミド層表面をイオンガン処理、プラズマ処理、コロナ処理、カップリング剤処理、過マンガン酸塩処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、研磨剤を高速投射する表面処理、火炎処理、親水化処理、から選択される1種または複数の処理を組合わせて表面処理することで、平滑な熱可塑性ポリイミド樹脂表面に強固に密着し、耐環境性に優れた積層体およびプリント配線板を得ることができる。
さらにまた、プリント配線板を製造する際に、従来の湿式の無電解メッキではなく、物理的蒸着法により金属層を形成することにより、環境に対する負荷が小さい。
したがって、本発明のプリント配線板は、高密度で耐環境安定性に優れたフレキシブルプリント配線板、フレキシブルプリント配線板を積層した多層プリント配線板、フレキシブルプリント配線板と硬質プリント配線板を積層したリジッド・フレックス配線板、ビルドアップ配線板、TAB用テープ、プリント配線板上に直接半導体素子を実装したCOF基板、およびMCM基板などの電子機器のプリント配線板として使用できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリイミド層および熱可塑性ポリイミド層表面の金属層からなる積層体。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリイミド層が、プラズマ処理、コロナ処理、カップリング剤処理、過マンガン酸塩処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、研磨剤を高速投射する表面処理、火炎処理および親水化処理から選択される1種以上の処理を組み合わせて表面処理されたものである請求の範囲第1項記載の積層体。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリイミド層が、イオンガン処理により表面処理されたものである請求の範囲第1項記載の積層体。
【請求項4】
前記イオンガン処理が、アルゴンイオンによる処理である請求の範囲第3項記載の積層体。
【請求項5】
前記金属層が、熱可塑性ポリイミド層を加熱しながら金属元素を堆積させて形成させたものである請求の範囲第1項記載の積層体。
【請求項6】
加熱温度が100℃以上である請求の範囲第5項記載の積層体。
【請求項7】
前記金属層が無電解メッキ層である請求の範囲第1項、第2項、第3項または第4項記載の積層体。
【請求項8】
前記金属層が、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法および化学蒸着法から選択される1種以上の方法により形成されたものである請求の範囲第1項、第2項、第3項、第4項、第5項または第6項記載の積層体。
【請求項9】
前記金属層が第1金属層および第2金属層からなる請求の範囲第1項、第2項、第3項、第4項、第5項、第6項、第7項または第8項記載の積層体。
【請求項10】
前記第1金属層が、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、モリブデン、タングステン、亜鉛、スズ、インジウム、金、またはそれらの合金からなる請求の範囲第9項記載の積層体。
【請求項11】
前記第2金属層が、銅またはその合金からなる請求の範囲第9項または第10項記載の積層体。
【請求項12】
少なくとも片方の面に熱可塑性ポリイミド層を有する非熱可塑性ポリイミド層、および前記熱可塑性ポリイミド層表面の少なくとも片方の面に形成された金属層からなる積層体。
【請求項13】
片方の面に熱可塑性ポリイミド層および前記熱可塑性ポリイミド層表面に形成された金属層を有し、他方の面に接着層を有する積層体。
【請求項14】
片方の面に熱可塑性ポリイミド層および前記熱可塑性ポリイミド層表面に形成された金属層を有し、他方の面に銅箔を有する積層体。
【請求項15】
前記熱可塑性ポリイミド層が、プラズマ処理、コロナ処理、カップリング剤処理、過マンガン酸塩処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、研磨剤を高速投射する表面処理、火炎処理および親水化処理から選択される1種以上の処理を組み合わせて表面処理されたものである請求の範囲第12項、第13項または第14項記載の積層体。
【請求項16】
前記熱可塑性ポリイミド層が、イオンガン処理により表面処理されたものである請求の範囲第12項、第13項または第14項記載の積層体。
【請求項17】
前記イオンガン処理が、アルゴンイオンによる処理である請求の範囲第16項記載の積層体。
【請求項18】
前記金属層が、熱可塑性ポリイミド層を加熱しながら金属元素を堆積させて形成させたものである請求の範囲第12項、第13項または第14項記載の積層体。
【請求項19】
加熱温度が100℃以上である請求の範囲第18項記載の積層体。
【請求項20】
ポリイミドフィルムおよび金属層からなる積層体であって、前記ポリイミドフィルムが非熱可塑性ポリイミド層および非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも片方の面に形成された熱可塑性ポリイミド層からなる少なくとも2層構造であり、かつ前記金属層が熱可塑性ポリイミド層表面のニッケル、コバルト、クロム、チタン、モリブデン、タングステン、亜鉛、スズ、インジウム、金、またはそれらの合金からなる第1金属層、および第1金属層上の銅またはその合金からなる第2金属層からなる積層体。
【請求項21】
前記熱可塑性ポリイミド層が、下記一般式(1)

(式中、Aは下記式群(2)から選択される4価の有機基であり、同一であっても異なっていてもよく、Xは下記式群(3)から選択される2価の有機基であり、同一であっても異なっていてもよい。Bは下記式群(2)にあげられたもの以外の4価の有機基であり、同一であっても異なっていてもよく、Yは下記式群(3)にあげられたもの以外の2価の有機基であり、同一であっても異なっていてもよい。m:nは100:0〜50:50である。)
群(2)


群(3)


で表されるポリアミド酸を脱水閉環して得られる熱可塑性ポリイミドからなる請求の範囲第1項、第2項、第3項、第4項、第5項、第6項、第7項、第8項、第9項、第10項、第11項、第12項、第13項、第14項、第15項、第16項、第17項、第18項、第19項または第20項記載の積層体。
【請求項22】
前記熱可塑性ポリイミド層の厚さが0.01μm以上10μm以下であり、非熱可塑性ポリイミド層より薄い請求の範囲第12項、第13項、第14項、第15項、第16項、第17項、第18項、第19項または第20項記載の積層体。
【請求項23】
プラズマ処理、コロナ処理、カップリング剤処理、過マンガン酸塩処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、研磨剤を高速投射する表面処理、火炎処理、および親水化処理から選択される1種以上の処理を組み合わせて表面処理された熱可塑性ポリイミドフィルム。
【請求項24】
非熱可塑性ポリイミドフィルムの片方の面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を形成する工程、該非熱可塑性ポリイミドフィルムの他方の面に接着層を形成する工程、該接着層と回路形成された配線板の回路面とを対向させて加熱および/または加圧を伴った方法で積層する工程、および積層後の熱可塑性ポリイミド層表面に物理的蒸着法によりパネルメッキする工程を含むプリント配線板の製造方法。
【請求項25】
非熱可塑性ポリイミドフィルムの片方の面に熱可塑性ポリイミド樹脂層を形成する工程、該非熱可塑性ポリイミドフィルムの他方の面を、接着シートを介して、回路形成された配線板に加熱および/または加圧を伴った方法で積層する工程、および積層後の熱可塑性ポリイミド層表面に物理的蒸着法によりパネルメッキする工程を含むプリント配線板の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/050352
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【発行日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−570734(P2004−570734)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015577
【国際出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】