説明

積層板及びその製造方法

【課題】重量の増加を抑制しつつストラップ等の取付部品を取り付けることのできる積層板及びその製造方法を得る。
【解決手段】積層板10は、2枚の熱可塑性樹脂製の板部16,17の間に熱可塑性樹脂発泡成形体15が介在しているとともに、前記2枚の板部16,17の端部16a,17b同士が溶着されおり、前記2枚の熱可塑性樹脂製の板部16,17のうちの一方の板部16と、前記熱可塑性樹脂発泡成形体15との間に、金属板21が前記熱可塑性樹脂発泡成形体15の外面の一部を覆うように介在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層板として、熱可塑性樹脂製の表壁と裏壁とを周囲壁で繋いで形成した車両用内装パネルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1では、表壁と裏壁との間に熱可塑性樹脂製の発泡体を挿入して車両用内装パネルの強度を高めている。
【特許文献1】特開2006−334801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来の技術にあっては、熱可塑性樹脂製の発泡体を車両用内装パネルの内部に挿入しているため、車両用内装パネルの外面に、当該車両用内装パネルを車体に支持するためのクリップやストラップ等の取付部材をネジ止めにより取り付けようとしても、ネジが熱可塑性樹脂製の発泡体から抜けてしまい、うまく取り付けることができない。
【0005】
また、熱可塑性樹脂製の発泡体の替わりに金属製の架橋部材を車両用内装パネルの内部に挿入すると、取付部材を取り付けることはできるが、車両用内装パネルの重量が増加してしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、重量の増加を抑制しつつストラップ等の取付部品を取り付けることのできる積層板及びその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、2枚の熱可塑性樹脂製の板部の間に熱可塑性樹脂発泡成形体が介在しているとともに、前記2枚の板部の端部同士が溶着されている積層板であって、
前記2枚の熱可塑性樹脂製の板部のうちの一方の板部と、前記熱可塑性樹脂発泡成形体との間に、金属板が前記熱可塑性樹脂発泡成形体の外面の一部を覆うように介在していることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の積層板において、前記2枚の板部の間に補強部材を介在させたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の積層板において、前記補強部材として、金属製の異形押出し成形品、合成樹脂製の異形押出し成形品若しくはプレス成形品のうちの少なくとも1つが用いられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の積層板において、前記2枚の板部は、厚さがそれぞれ異なっていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の積層板において、前記2枚の板部は、ポリプロピレン樹脂に充填材とガラス長繊維の少なくとも一方を配合した素材で形成されており、2枚の板部は、前記充填材の種類、充填材の配合分量、ガラス長繊維の長さ、ガラス長繊維の配合分量のうちの少なくとも1つが異なっていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の積層板において、前記板部の外面に、被覆材で覆われた被覆部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、予め所定の厚さに均一に成形してある2枚の熱可塑性樹脂板を加熱軟化させる第1の工程と、加熱軟化させた前記2枚の熱可塑性樹脂板のうちの一方を、キャビティーを有する上下に配置した一対の金型のうちの下方の金型に配置させる第2の工程と、前記下方の金型に配置させた一方の熱可塑性樹脂板の所定の位置に熱可塑性樹脂発泡成形体を配置させる第3の工程と、加熱軟化させた他方の熱可塑性樹脂板を、所定の位置に配置した前記熱可塑性樹脂発泡成形体および前記金属板の上面に配置させる第4の工程と、上下に配置した前記一対の金型を型締めすることで前記一対の金型間に配置した前記2枚の熱可塑性樹脂板と前記2枚の熱可塑性樹脂板の間に配置した前記熱可塑性樹脂発泡成形体とを溶着し、かつ前記2枚の熱可塑性樹脂板の周縁部同士を溶着しながら当該溶着した周縁部の外周を切り離し、熱可塑性樹脂発泡成形体入り積層部材を形成する第5の工程と、前記熱可塑性樹脂発泡成形体入り積層部材の内部に圧縮空気を注入し、型締めした前記一対の金型の細部に至るまで前記熱可塑性樹脂発泡成形体入り積層部材を賦形させて熱可塑性樹脂発泡成形体入り中空積層板とする第6の工程と、前記熱可塑性樹脂発泡成形体入り中空積層板を金型から取り出す第7の工程と、を有する積層板の製造方法であって、前記第3の工程では、前記熱可塑性樹脂発泡成形体の上面と下面のうち少なくとも一方の面の一部を覆うように金属板を配置させていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の積層板の製造方法において、前記第2の工程では、前記一方の熱可塑性樹脂板を前記下方の金型に真空吸引させながら当該下方の金型の内面形状に真空賦形させており、前記第5の工程では、前記下方の金型を真空吸引させながら型締めしており、前記第6の工程では、前記下方の金型内を真空吸引しながら、前記熱可塑性樹脂発泡成形体入り積層部材の内部に圧縮空気を注入していることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項7または請求項8に記載の積層板の製造方法において、前記第5の工程では、前記他方の熱可塑性樹脂板を前記上方の金型に真空吸引させながら当該上方の金型の内面形状に真空賦形させており、前記第6の工程では、前記上方の金型内を真空吸引しながら、前記熱可塑性樹脂発泡成形体入り積層部材の内部に圧縮空気を注入していることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項7〜9のうちいずれか1項に記載の積層板の製造方法において、前記第3の工程では、前記一方の熱可塑性樹脂板の所定の位置に前記熱可塑性樹脂発泡成形体とともに補強部材を配置させることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項7〜10のうちいずれか1項に記載の積層板の製造方法において、前記第2の工程では、前記下方の金型と前記一方の熱可塑性樹脂板との間に一方側被覆素材を介在させていることを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項7〜11のうちいずれか1項に記載の積層板の製造方法において、前記第5の工程では、加熱軟化させた他方の熱可塑性樹脂板を、所定の位置に配置した、前記熱可塑性樹脂発泡成形体および前記金属板の上面に配置した後、前記加熱軟化させた他方の熱可塑性樹脂板の上面に他方側被覆素材を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、2枚の熱可塑性樹脂製の板部のうちの一方の板部と、熱可塑性樹脂発泡成形体との間に、金属板を熱可塑性樹脂発泡成形体の外面の一部を覆うように介在させることで、重量の増加を抑制しつつ取付部品を取り付けることのできる積層板を得ることができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、2枚の板部の間に補強部材を介在させることで、中空積層板の剛性をより一層高めることができる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、強度の高い補強部材を用いることができ、積層板の強度をより一層高めることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、2枚の板部の厚さをそれぞれ異ならせることで、当該2枚の板部の強度を必要に応じて変更できる。例えば表面側の強度は必要であるが、裏面側にはそれほど強度を要求されない場合に、裏面側に使用する板部を薄くでき、軽量化することができる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、2枚の板部の素材であるポリプロピレン樹脂に充填材とガラス長繊維の少なくとも一方を配合することにより、耐熱性や耐衝撃性を高めることができる。また、必要により充填材やガラス長繊維の種類、配合分量を変えることで2枚の板部をより薄くすることができるようになり、積層板の軽量化を図ることができる。さらに、ポリプロピレン樹脂に充填材とガラス長繊維の少なくとも一方を配合することにより、積層板の成形時に起きるポリプロピレン樹脂の収縮を小さくすることができるようになり、積層板の歪みなどの変形を抑制することができる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、板部の外面には当該外面を被覆する被覆部が形成されているため、積層板の意匠性を向上させることができる。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、熱可塑性樹脂発泡成形体の上面と下面のうち少なくとも一方の面の一部を覆うように金属板を配置させて積層板を成形することで、当該積層板の金属板が配置されている部位の外面に取付部材を取り付けることができるようになる。
【0026】
また、金属板を積層板の外面の一部のみに配置することで、積層板の重量増加を極力抑制しつつ積層板の所望部位の剛性を高めることができる。
【0027】
また、2枚の熱可塑性樹脂板を予め所定の厚さに均一に成形しているため、積層板の部位による基材の肉厚の差が生じ難く成形後の歪みの発生を抑制することができる。さらに、2枚の熱可塑性樹脂板の間に熱可塑性樹脂発泡成形体を介在させることにより、2枚の熱可塑性樹脂板を熱可塑性樹脂発泡成形体によって支持させることができ、積層板の剛性を高めることができる。
【0028】
請求項8に記載の発明によれば、一方の熱可塑性樹脂板を下方の金型に真空吸引させながら当該下方の金型の内面形状に真空賦形させ、さらに、圧縮空気を注入することにより積層板を成形しているため、金型内面の形状をより正確に賦形させた積層板を成形できる。
【0029】
請求項9に記載の発明によれば、他方の熱可塑性樹脂板を上方の金型に真空吸引させながら当該上方の金型の内面形状に真空賦形させ、さらに、圧縮空気を注入することにより積層板を成形しているため、金型内面の形状をより正確に賦形させた積層板を成形できる。
【0030】
請求項10に記載の発明によれば、熱可塑性樹脂発泡成形体とともに補強部材を前記2枚の熱可塑性樹脂板の間に介在させることで、積層板の剛性をより一層高めることができる。
【0031】
請求項11に記載の発明によれば、下方の金型と一方の熱可塑性樹脂板との間に一方側被覆素材を介在させることで、積層板の一方の外面が被覆され、積層板の意匠性を向上させることができる。
【0032】
請求項12に記載の発明によれば、他方の熱可塑性樹脂板の上面に他方側被覆素材を配置したことにより、積層板の他方の外面が被覆され、積層板の意匠性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。ここでは、積層板として車両用のフロアボードを例示する。
【0034】
図1は、本実施形態にかかるフロアボードを示す側面図、図2は、フロアボードを裏面から見た斜視図、図3は、フロアボードの断面図、図4は、熱可塑性樹脂発泡成形体入り積層部材の積層状態を模式的に示す分解斜視図、図5は、一対の金型を型締めして表裏面側シート素材をブロー成形している状態を示す断面図である。
【0035】
本実施形態にかかる車両用のフロアボード(積層板)10は、前側ボード11と後側ボード12とを備えており、前側ボード11と後側ボード12とがインテグラルヒンジ13を介して一体に連設されている。
【0036】
このフロアボード10は、自動車1のラゲッジルーム2の床部を形成するフロアパネル3に配されている。そして、このフロアボード10は、車幅方向に延設されたインテグラルヒンジ13の回動軸を中心に後側ボード12を上方へ回動させることで、フロアパネル3の下側の荷室4内の荷物の出し入れを行うことができるようになっている。また、本実施形態では、後側ボード12の後端部の裏面には、ストラップ9が取り付けられており、このストラップ9をリアシート5の後部に設けられたフック8に係止させ、上方へ回動させた後側ボード12が下方に回動してしまわないようにすることで、両手で荷物の出し入れを行うことができるようになっている。なお、ラゲッジルーム2は、ラゲッジルーム2の前壁としてのリアシート5、後壁としてのバックドア6および上壁としてのルーフパネル7によって仕切られている。
【0037】
また、フロアボード10は、本体部14を備えており、本実施形態では、この本体部14は、3層構造をしている。
【0038】
具体的には、本体部14は、裏面側板部(一方の板部)16と、表面側板部(他方の板部)17と、これら裏面側板部16および表面側板部17との間に介在して、当該裏面側板部16および表面側板部17を支持する熱可塑性樹脂発泡成形体である発泡樹脂15と、を備えている。
【0039】
本実施形態では、表面側板部17および裏面側板部16として、ポリプロピレンにフィラー(充填材とガラス長繊維の少なくとも一方)を配合したフィラー強化ポリプロピレンがそれぞれ用いられており、それぞれの板厚が同一になっている。また、本実施形態では、表面側板部17および裏面側板部16として、フィラーの配合比率が同一のものを用いている。なお、フィラーとしては、シリカ、炭酸カルシウム、木質粉体、炭素繊維、ガラス長繊維等種々のものを用いることができる。
【0040】
さらに、本実施形態では、裏面側板部16および表面側板部17との間に、フロアボード10の剛性を高める補強部材としての略角筒状のリインフォース(金属製の異形押出し成形品)20を介在させている。
【0041】
このリインフォース20は、前側ボード11および後側ボード12の車両前後方向中央部にそれぞれ車幅方向に沿って配置されており、発泡樹脂15がリインフォース20を挟むようにそれぞれ配置されている。すなわち、図4に示すように、発泡樹脂15とリインフォース20とが、車両前後方向に交互に配置されている。
【0042】
さらに、金属板21を、発泡樹脂15の外面の一部を覆うように発泡樹脂15の下面と裏面側板部16の内面との間に介在させている。
【0043】
本実施形態では、金属板21を、後側ボード12の後端部の発泡樹脂15の下面と裏面側板部16の内面との間に配置させている。
【0044】
この金属板21には、ボルト29を層通させる層通孔21aが4箇所設けられており、金属板21の発泡樹脂15側(図4の上側)の面には、各層通孔21aに対応させたナット22が溶接されている。
【0045】
そして、本実施形態では、この金属板21が配置される部位の発泡樹脂15aは、他の部位の発泡樹脂15と比べて若干薄厚に形成されているとともに、ナット22を収容する空間部が形成されており、金属板21と発泡樹脂15aとを重ねた状態で他の発泡樹脂15とほぼ同一の厚さとなるようにしている。
【0046】
そして、後側ボード12の金属板21が配置された部位に、ストラップ9が取り付けられている。
【0047】
具体的には、ストラップ9は、リアシート5のフック8に係止させる紐部9aと、後側ボード12に取り付ける基体部27と、基体部27に設けられ、紐部9aを連結させる連結部28とを備えており、ボルト29を基体部27から挿入してナット22に締め付けることで後側ボード12に取り付けられている。
【0048】
また、フロアボード10には、表面側板部17の表面(外面)17aに不織布(被覆材)18を貼り合わせることで、本体部14の表面14a側を被覆した被覆部19が形成されている。なお、被覆部は、裏面側板部16の裏面(外面)側に設けてもよいし、表裏面側板部17,16それぞれに設けてもよい。また、被覆部を設けなくてもよい。そして、被覆材として織布、オレフィン系樹脂フィルム、ポリオレフィンフォーム、プラスチック製段ボール、ハードボードなど様々なものを用いることができる。
【0049】
そして、表面側板部17の端部17bおよび不織布18の端部18aを、裏面側板部16側に折り曲げるとともに、裏面側板部16の端部16aを表面側板部17側に折り曲げ、端部17bと端部16aとを溶着することで、嵩上げ架橋材入り中空成形体を形成している。
【0050】
次に、フロアボード10の成形方法について説明する。
【0051】
(第1の工程)
まず、予め所定の厚さに均一に成形してある熱可塑性樹脂製の表面側シート素材(他方の熱可塑性樹脂板)25と裏面側シート素材(一方の熱可塑性樹脂板)24とを加熱軟化させる。
【0052】
(第2の工程)
次に、裏面側シート素材(一方の熱可塑性樹脂板)24を、上下に配置された一対の金型30のうちの下方の金型である下型32の上方に配置させる。この下型32には、裏面側シート素材(一方の熱可塑性樹脂板)24を真空賦形するための真空吸引孔30aが多数形成されている。そして、裏面側シート素材24を、下型32に真空吸引させながら下型32の内面32aの形状に真空賦形させる。なお、下型32と裏面側シート素材(一方の熱可塑性樹脂板)24との間に不織布等の一方側被覆素材を介在させるようにしてもよい。
【0053】
(第3の工程)
次に、下型32の内面32aの形状に真空賦形させた裏面側シート素材24の上方の所定位置に、発泡樹脂(熱可塑性樹脂発泡成形体)15およびリインフォース(補強部材)20を配置する。
【0054】
さらに、発泡樹脂15の下面(上面と下面のうち少なくとも一方の面)の一部を覆うように金属板21を配置する。
【0055】
なお、発泡樹脂を、その輪郭形状がフロアボード10の輪郭形状に沿うように形成したものを、熱可塑性樹脂発泡成形体として用いてもよい。そして、かかる発泡樹脂を用いる際に、フロアボード10をリインフォース20で補強する必要がある場合には、発泡樹脂のリインフォース20が配置される部位を切り欠いたり、当該部位に溝部や貫通孔を設けたりするのが好適である。
【0056】
また、発泡樹脂として様々な形状のものを採用することができる。例えば、フロアボード10の一部分(例えば後側ボード12)のみに発泡樹脂を配置させて、その他(例えば前側ボード11)には中空部が設けられるようにしてもよい。
【0057】
また、金属板21は、発泡樹脂15の上面に配置させてもよいし、上面と下面の両方に配置させてもよい。
【0058】
(第4の工程)
次に、裏面側シート素材24の上方に配置した発泡樹脂15およびリインフォース20の上方(発泡樹脂15およびリインフォース20の上面)に表面側シート素材(他方の熱可塑性樹脂板)25を配置する。すなわち、裏面側シート素材24と表面側シート素材25との間に、発泡樹脂15およびリインフォース20を介在させている。このとき、表面側シート素材25の上方には、上型(他方の金型)31が配置されることとなる。この上型31にも、表面側シート素材(他方の熱可塑性樹脂素材)25を真空賦形するための真空吸引孔30aが多数形成されている。なお、裏面側シート素材24と表面側シート素材25との間に、発泡樹脂15を介在させた後に、表面側シート素材25の上方に上型31を配置するようにしてもよい。
【0059】
そして、不織布素材(他方側被覆素材)26を、表面側シート素材25と上型31との間に介在するように配置する。
【0060】
(第5の工程)
次に、上型31および下型32をそれぞれ真空吸引させながら型締めすることで、発泡樹脂15およびリインフォース20の上方に配置した不織布素材26および表面側シート素材25を上型31に真空吸引させながら上型31の内面31aの形状に真空賦形させる。同時に、上型31と下型32との間に配置した表面側シート素材25および裏面側シート素材24と、これら表面側シート素材25と裏面側シート素材24との間に介在するように配置した発泡樹脂15、リインフォース20および金属板21と、を溶着固定し、かつ表面側シート素材25および裏面側シート素材24の周縁部同士を溶着しながら、上型31に設けられた切断刃31bによって当該溶着した周縁部の外周を切り離し、熱可塑性樹脂発泡成形体入り積層部材34を形成する。さらに、本実施形態では、裏面側シート素材24および表面側シート素材25の溶着部に不織布素材26の周縁部も溶着させると同時に上型31に設けられた切断刃31bによって不織布素材26の周縁部外周も切り離される。
【0061】
なお、このとき、上下に配置された一対の金型30のうち下型(下方の金型)32に形成された押圧部材32bによって裏面側シート素材24を上方に押圧して表面側シート素材25側に溶着させている。また、不織布素材26は、いわゆるアンカー効果により表面側シート素材25の表面に貼り合わされる。
【0062】
(第6の工程)
そして、型締めした上下型(一対の金型)30内を真空吸引しながら、すなわち、裏面側シート素材24および表面側シート素材25を下型32および上型31にそれぞれ真空吸引させながら、上型31および下型32の型締めにより溶着させた熱可塑性樹脂発泡成形体入り積層部材34の内部にエアブローピン33を挿入して、当該熱可塑性樹脂発泡成形体入り積層部材34の内部に圧縮空気を注入してブロー成形することで熱可塑性樹脂発泡成形体入り中空成形体(熱可塑性樹脂発泡成形体入り中空積層板)35が形成される。
【0063】
(第7の工程)
最後に、形成された熱可塑性樹脂発泡成形体入り中空成形体35を上型31と下型32との間で予備冷却して上下型31,32から取り出す。さらに、取り出された熱可塑性樹脂発泡成形体入り中空成形体35を矯正治具等で固定した状態で強制冷却すれば、熱収縮を停止させて歪みが発生してしまうのを抑制することが可能である。
【0064】
こうして、取り出したフロアボード10に、ストラップ9を取り付けることで、本実施形態にかかるフロアボード10が形成される。
【0065】
なお、裏面側シート素材24を上型31に真空吸引させるとともに、表面側シート素材25を下型32に真空吸引させるようにしてもよい。また、裏面側シート素材24および表面側シート素材25の一方若しくは両方とも真空吸引させずにブロー成形することも可能である。
【0066】
以上の本実施形態によれば、発泡樹脂(熱可塑性樹脂発泡成形体)15の下面の一部を覆うように金属板21を配置させてフロアボード(積層板)10を成形することで、当該フロアボード(積層板)10の金属板21が配置されている部位の外面にストラップ9を取り付けることができるようになる。
【0067】
また、金属板21をフロアボード(積層板)10の外面の一部のみに配置することで、フロアボード(積層板)10の重量増加を極力抑制しつつフロアボード(積層板)10のストラップ9の取り付け位置(所望部位)の剛性を高めることができる。
【0068】
また、裏面側シート素材24および表面側シート素材25を予め所定の厚さに均一に成形しているため、フロアボード(積層板)10の部位による基材の肉厚の差が生じ難く成形後の歪みの発生を抑制することができる。さらに、裏面側シート素材24と表面側シート素材25との間に発泡樹脂(熱可塑性樹脂発泡成形体)15を介在させることにより、裏面側シート素材24および表面側シート素材25を発泡樹脂(熱可塑性樹脂発泡成形体)15によって支持させることができ、フロアボード(積層板)10の剛性を高めることができる。
【0069】
また、裏面側シート素材24および表面側シート素材25を水平方向に配置した状態で下型32および上型31にそれぞれ真空吸引させながら、裏面側シート素材24の周縁部と表面側シート素材25の周縁部とを溶着して形成した熱可塑性樹脂発泡成形体入り積層部材34の内部に圧縮空気を注入してブロー成形することで、フロアボード10の形状をより正確に下型32および上型31の内面32a,31aの形状に合わせることができる。
【0070】
また、裏面側シート素材24および表面側シート素材25を予め均一の厚さに成形し、それらを水平方向に配置した状態でフロアボード10を成形しているため、フロアボード10の表裏面の部位によってシートの厚さが偏ってしまうのを抑制することができ、シートの厚さが偏ることに起因した歪みが生じてしまったり、フロアボード10の表面や裏面が局部的に凹んだりしてしまうのを抑制することができる。
【0071】
このように、金型内面の形状をより良好に再現できるようになると、フロアボード10の表裏面をともにフラット状に成形することも可能となり、リバーシブル仕様のフロアボード10を得ることが可能になる。
【0072】
さらに、本実施形態によれば、発泡樹脂(熱可塑性樹脂発泡成形体)15とともにリインフォース(補強部材)20を裏面側シート素材24と表面側シート素材25との間に介在させているため、フロアボード10の剛性をより一層高めることができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、上型31と表面側シート素材25との間に不織布素材26を介在させることで、フロアボード10の表面を不織布素材26で覆うことができ、フロアボード10の意匠性を向上させることができる。
【0074】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0075】
例えば、上記実施形態では、2枚の板部の厚さが同一のものを用いているが、2枚の板部の厚さをそれぞれ異ならせるようにしてもよい。
【0076】
こうすれば、2枚の板部の強度を必要に応じて変更でき、例えば表面側の強度は必要であるが、裏面側にはそれほど強度を要求されない場合に、裏面側に使用する板部を薄くでき、軽量化することができる。
【0077】
また、上記実施形態では、2枚の板部として、ポリプロピレンに配合される充填材の配合分量が同一のものを用いたが、2枚の板部として、充填材とガラス長繊維の種類または充填材とガラス長繊維の配合分量がそれぞれ異なるものを用いてもよい。
【0078】
こうすれば、耐熱性や耐衝撃性を高めることができる。また、2枚の板部をより薄くすることができるようになり、中空積層板の軽量化を図ることができる。さらに、ポリプロピレン樹脂に充填材とガラス長繊維の少なくとも一方を配合することにより、中空積層板の成形時に起きるポリプロピレン樹脂の収縮を小さくすることができるようになり、中空積層板の歪みなどの変形を抑制することができる。
【0079】
また、補強部材の断面は角筒状に限定されず、真円、楕円、H形状などでも良い。そして、補強部材は、金属製の異形押出し成形品だけでなく、合成樹脂製の異形押出し成形品若しくはプレス成形品を用いることも可能である。
【0080】
また、上記実施形態では、金属板に溶接したナットにボルトを挿入することで部品を金属板に固定する方法を例示したが、金属板の部品固定箇所に穴を開け、リベットまたはタッピングビスを用いて部品を金属板に固定することも可能である。
【0081】
また、金属板を設ける位置は、積層板の取付部品の取り付け位置や補強したい部位等に応じて適宜設定することが可能である。
【0082】
また、上記実施形態では、ヒンジ機構が形成された積層板を例示したが、ヒンジ機構が設けられていない積層板を用いても本発明を実施できる。
【0083】
なお、上記実施形態では、積層板としてフロアボードを例示したが、他の車両用や建築用の内装材や外装材を用いても本発明を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の一実施例にかかるフロアボードを示す側面図。
【図2】本発明の一実施例にかかるフロアボードを裏面から見た斜視図。
【図3】本発明の一実施例にかかるフロアボードの断面図。
【図4】本発明の一実施例にかかる熱可塑性樹脂発泡成形体入り積層部材の積層状態を模式的に示す分解斜視図。
【図5】本発明の一実施例にかかる一対の金型を型締めして表裏面側シート素材をブロー成形している状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0085】
10 フロアボード(積層板)
15 発泡樹脂(熱可塑性樹脂発泡成形体)
16 裏面側板部(一方の板部)
16a 端部
17 表面側板部
17a 表面(板部の外面)
17b 端部
18 不織布(被覆材)
19 被覆部
20 リインフォース(補強部材)
21 金属板
24 裏面側シート素材(一方の熱可塑性樹脂板)
25 表面側シート素材(他方の熱可塑性樹脂板)
26 不織布素材(他方側被覆素材)
31 上型(上方の金型)
31a 内面
32 下型(下方の金型)
32a 内面
34 嵩上げ架橋材入り積層部材
35 熱可塑性樹脂発泡成形体入り中空成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の熱可塑性樹脂製の板部の間に熱可塑性樹脂発泡成形体が介在しているとともに、前記2枚の板部の端部同士が溶着されている積層板であって、
前記2枚の熱可塑性樹脂製の板部のうちの一方の板部と、前記熱可塑性樹脂発泡成形体との間に、金属板が前記熱可塑性樹脂発泡成形体の外面の一部を覆うように介在していることを特徴とする積層板。
【請求項2】
前記2枚の板部の間に補強部材を介在させたことを特徴とする請求項1に記載の積層板。
【請求項3】
前記補強部材として、金属製の異形押出し成形品、合成樹脂製の異形押出し成形品若しくはプレス成形品のうちの少なくとも1つが用いられていることを特徴とする請求項2に記載の積層板。
【請求項4】
前記2枚の板部は、厚さがそれぞれ異なっていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の積層板。
【請求項5】
前記2枚の板部は、ポリプロピレン樹脂に充填材とガラス長繊維の少なくとも一方を配合した素材で形成されており、2枚の板部は、前記充填材の種類、充填材の配合分量、ガラス長繊維の長さ、ガラス長繊維の配合分量のうちの少なくとも1つが異なっていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の積層板。
【請求項6】
前記板部の外面に、被覆材で覆われた被覆部が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の積層板。
【請求項7】
予め所定の厚さに均一に成形してある2枚の熱可塑性樹脂板を加熱軟化させる第1の工程と、
加熱軟化させた前記2枚の熱可塑性樹脂板のうちの一方を、キャビティーを有する上下に配置した一対の金型のうちの下方の金型に配置させる第2の工程と、
前記下方の金型に配置させた一方の熱可塑性樹脂板の所定の位置に熱可塑性樹脂発泡成形体を配置させる第3の工程と、
加熱軟化させた他方の熱可塑性樹脂板を、所定の位置に配置した前記熱可塑性樹脂発泡成形体および前記金属板の上面に配置させる第4の工程と、
上下に配置した前記一対の金型を型締めすることで前記一対の金型間に配置した前記2枚の熱可塑性樹脂板と前記2枚の熱可塑性樹脂板の間に配置した前記熱可塑性樹脂発泡成形体とを溶着し、かつ前記2枚の熱可塑性樹脂板の周縁部同士を溶着しながら当該溶着した周縁部の外周を切り離し、熱可塑性樹脂発泡成形体入り積層部材を形成する第5の工程と、
前記熱可塑性樹脂発泡成形体入り積層部材の内部に圧縮空気を注入し、型締めした前記一対の金型の細部に至るまで前記熱可塑性樹脂発泡成形体入り積層部材を賦形させて熱可塑性樹脂発泡成形体入り中空積層板とする第6の工程と、
前記熱可塑性樹脂発泡成形体入り中空積層板を金型から取り出す第7の工程と、
を有する積層板の製造方法であって、
前記第3の工程では、前記熱可塑性樹脂発泡成形体の上面と下面のうち少なくとも一方の面の一部を覆うように金属板を配置させていることを特徴とする積層板の製造方法。
【請求項8】
前記第2の工程では、前記一方の熱可塑性樹脂板を前記下方の金型に真空吸引させながら当該下方の金型の内面形状に真空賦形させており、
前記第5の工程では、前記下方の金型を真空吸引させながら型締めしており、
前記第6の工程では、前記下方の金型内を真空吸引しながら、前記熱可塑性樹脂発泡成形体入り積層部材の内部に圧縮空気を注入していることを特徴とする請求項7に記載の積層板の製造方法。
【請求項9】
前記第5の工程では、前記他方の熱可塑性樹脂板を前記上方の金型に真空吸引させながら当該上方の金型の内面形状に真空賦形させており、
前記第6の工程では、前記上方の金型内を真空吸引しながら、前記熱可塑性樹脂発泡成形体入り積層部材の内部に圧縮空気を注入していることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の積層板の製造方法。
【請求項10】
前記第3の工程では、前記一方の熱可塑性樹脂板の所定の位置に前記熱可塑性樹脂発泡成形体とともに補強部材を配置させることを特徴とする請求項7〜9のうちいずれか1項に記載の積層板の製造方法。
【請求項11】
前記第2の工程では、前記下方の金型と前記一方の熱可塑性樹脂板との間に一方側被覆素材を介在させていることを特徴とする請求項7〜10のうちいずれか1項に記載の積層板の製造方法。
【請求項12】
前記第5の工程では、加熱軟化させた他方の熱可塑性樹脂板を、所定の位置に配置した、前記熱可塑性樹脂発泡成形体および前記金属板の上面に配置した後、前記加熱軟化させた他方の熱可塑性樹脂板の上面に他方側被覆素材を配置したことを特徴とする請求項7〜11のうちいずれか1項に記載の積層板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−52389(P2010−52389A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222231(P2008−222231)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000244280)盟和産業株式会社 (48)
【Fターム(参考)】