説明

突き上げピンの位置補正方法

【課題】ダイシングレーンあるいはダイと、突き上げ痕の位置関係を画像処理によって認識することにより、突き上げピンの中心とダイの中心とのずれ量を算出して、突き上げピンを位置補正するようにした突き上げピンの位置補正方法を提供する。
【解決手段】ダイシングレーン44およびダイ部品Pの少なくとも一方と、突き上げピン45による突き上げによって粘着シート43に形成された突き上げ痕48とを撮像装置25により撮像して画像処理し、ダイシングレーンおよびダイの少なくとも一方と、突き上げ痕の位置関係を画像処理によって認識することにより、突き上げピンの中心とダイ部品の中心とのずれ量を算出し、該ずれ量に基づいてダイ部品に対する突き出しピンの突き上げ位置を補正するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキスパンド台上のダイシングされたダイ部品を突き上げる突き上げピンの位置補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エキスパンド台上のダイシングされたダイ部品を吸着ノズルによって吸着し、ダイ部品を回路基板に実装する電子部品実装装置においては、ウエハの下からダイ部品を突き上げる突き上げピンを備えている。この場合、突き上げピンの中心とダイ部品の中心がずれると、吸着ノズルによってダイ部品を安定的に吸着できないことになる。
【0003】
従来、特許文献1に記載されているように、チップ(ダイ部品)を突き上げ針(突き上げピン)によって突き上げた際に形成される針穴(突き上げ痕)を認識して、パターンマッチングにより突き上げ痕の画像の中心から、ダイ部品の中心位置を求めることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−283006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のものにおいては、針穴のパターン画像が、パターンマッチングするための痕跡画像として予め登録されており、カメラで取得した取得画像を、パターンマッチングすることによって、痕跡画像の中心からチップの中心位置を求め、求めたチップの中心位置がピックアップ位置の中心と一致するようにウエハテーブルを位置補正し、この位置を次動作の基準位置とするようになっている。
【0006】
このため、特許文献1に記載のものにおいては、痕跡画像の登録や、パターンマッチング等によって、ウエハ位置を補正するための制御が複雑となる問題があった。
【0007】
本発明は、ダイシングレーンあるいはダイ部品と、突き上げ痕の位置関係を画像処理によって認識することにより、突き上げピンの中心とダイ部品の中心とのずれ量を算出して、突き上げピンを位置補正するようにした突き上げピンの位置補正方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、ウエハに形成されたダイシングレーンによって互いに隔てられ粘着シート上に貼着された複数のダイ部品を突き上げピンにより突き上げ、突き上げによって粘着シートより剥離されたダイ部品を吸着ノズルにより吸着して回路基板上に実装する電子部品実装装置における突き上げピンの位置補正方法にして、前記ダイシングレーンおよび前記ダイ部品の少なくとも一方と、前記突き上げピンによる突き上げによって前記粘着シートに形成された突き上げ痕とを撮像装置により撮像して画像処理し、前記ダイシングレーンおよび前記ダイ部品の少なくとも一方と、前記突き上げ痕の位置関係を画像処理によって認識することにより、前記突き上げピンの中心と前記ダイ部品の中心とのずれ量を算出し、該ずれ量に基づいて前記ダイ部品に対する前記突き出しピンの突き上げ位置を補正するようにしたことである。
【0009】
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1において、前記ダイ部品を前記吸着ノズルによって吸着した後に、前記ダイシングレーンと前記突き上げ痕との位置関係を画像処理によって認識することにより、前記突き上げピンの中心と前記ダイ部品の中心とのずれ量を算出するようにしたことである。
【0010】
請求項3に係る発明の特徴は、請求項1において、前記ダイ部品を前記吸着ノズルによって吸着する前に、前記ダイ部品の位置と前記ダイシングレーンとの位置関係を画像処理によって認識しておき、前記ダイ部品を前記吸着ノズルによって吸着した後に、前記ダイシングレーンと前記突き上げ痕との位置関係を画像処理によって認識することにより、前記突き上げピンの中心と前記ダイ部品の中心とのずれ量を算出するようにしたことである。
【0011】
請求項4に係る発明の特徴は、請求項1において、前記ダイ部品を前記吸着ノズルによって吸着する前に、前記ダイ部品の位置を画像処理によって認識しておき、前記ダイ部品を前記吸着ノズルによって吸着した後に、前記ダイ部品の中心に前記撮像装置を位置決めし、その位置で前記突き上げ痕を前記画像処理によって認識することにより、前記突き上げピンの中心と前記ダイ部品の中心とのずれ量を算出するようにしたことである。
【0012】
請求項5に係る発明の特徴は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記ずれ量を統計処理し、該統計処理されたずれ量に基づいて、前記突き出しピンの突き上げ位置を補正するようにしたことである。
【0013】
請求項6に係る発明の特徴は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、画像処理を、ずれ量の算出を開始した当初は、前記ダイ部品を吸着する毎に実行し、ずれ量が安定した後は、画像処理する間隔を広げるようにしたことである。
【発明の効果】
【0014】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、ダイシングレーンおよびダイ部品の少なくとも一方と、突き上げピンによる突き上げによって粘着シートに形成された突き上げ痕とを撮像装置により撮像して画像処理し、ダイシングレーンおよびダイ部品の少なくとも一方と、突き上げ痕の位置関係を画像処理によって認識することにより、突き上げピンの中心とダイ部品の中心とのずれ量を算出し、ずれ量に基づいてダイ部品に対する突き出しピンの突き上げ位置を補正するようにした。
【0015】
これにより、ダイシングレーンおよびダイ部品の少なくとも一方と、突き上げ痕の位置関係を画像処理するだけで、突き上げピンによってダイ部品の中心位置を突き上げることができるようになり、ダイ部品の突き上げ位置の不良によるダイ部品の吸着ミス等の発生を低減することができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、ダイ部品を吸着ノズルによって吸着した後に、ダイシングレーンと突き上げ痕との位置関係を画像処理によって認識することにより、突き上げピンの中心とダイ部品の中心とのずれ量を算出するようにしたので、ダイ部品を吸着ノズルによって吸着した後のダイシングレーンと突き上げ痕とを認識するだけの簡単な方法によって、突き上げピンの中心とダイ部品の中心とのずれ量を算出することができ、突き出しピンの突き上げ位置の補正を簡単にして高能率に実施することができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、ダイ部品を吸着ノズルによって吸着する前に、ダイ部品の位置とダイシングレーンとの位置関係を画像処理によって認識しておき、ダイ部品を吸着ノズルによって吸着した後に、ダイシングレーンと突き上げ痕との位置関係を画像処理によって認識することにより、突き上げピンの中心とダイ部品の中心とのずれ量を算出するようにしたので、ダイシングレーンの中心に対してダイ部品の中心位置がずれていても、突き上げピンの中心とダイ部品の中心とのずれ量を正確に算出することができる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、ダイ部品を吸着ノズルによって吸着する前に、ダイ部品の位置を画像処理によって認識しておき、ダイ部品を吸着ノズルによって吸着した後に、ダイ部品の中心に撮像装置を位置決めし、その位置で突き上げ痕を画像処理によって認識することにより、突き上げピンの中心とダイ部品の中心とのずれ量を算出するようにしたので、ダイシングレーンの中心に対してダイ部品の中心位置がずれていても、ダイ部品の中心に撮像装置を位置決めするだけの簡単な操作で、突き上げピンの中心とダイ部品の中心とのずれ量を正確に算出することができる。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、ずれ量を統計処理し、統計処理されたずれ量に基づいて、突き出しピンの突き上げ位置を補正するようにしたので、1回当たりの突き出しピンの突き上げ位置の補正量を小さくすることができ、仮に算出された突き上げピンの中心とダイ部品の中心とのずれ量が異常に大きな値であっても、それに左右されることなく、突き出しピンの位置補正を安定的に行うことができる。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、画像処理を、ずれ量の算出を開始した当初は、ダイ部品を吸着する毎に実行し、ずれ量が安定した後は、画像処理する間隔を広げるようにしたので、ずれ量が安定した後は、画像処理をダイ部品を吸着する毎に実行する必要がなく、突き出しピンの位置補正処理を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明方法を実施するに好適な電子部品実装装置を示す斜視図である。
【図2】ダイ部品を突き上げる突き上げピンを示す図である。
【図3】電子部品実装装置を制御する制御装置を示す図である。
【図4】本発明方法の第1の実施の形態を示す突き上げピンの中心とダイ部品の中心とのずれ量を求めるための説明図である。
【図5】第1の実施の形態に係る突き上げピンの位置補正方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る突き上げピンの位置補正方法を示すフローチャートである。
【図7】突き上げピンの中心とダイ部品の中心とのずれ量を求めるための別の方法を示す説明図である。
【図8】突き上げピンの中心とダイ部品の中心とのずれ量を求めるためのさらに別の方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明方法を実施するに好適な電子部品実装装置10の概要を示すもので、当該電子部品実装装置10は、基板搬送装置12、部品移載装置26および部品供給装置40を備えている。
【0023】
基板搬送装置12は、回路基板SをX軸方向に搬送するもので、基台11上に一対のガイドレール13、14が互いに平行に対向されて水平に並設され、図略のコンベアベルトにより回路基板Sをガイドレール13、14に沿って搬送し、所定位置に位置決め保持するようになっている。
【0024】
部品移載装置26はXYロボットからなり、基板搬送装置12の上方に配設され、固定レール20に沿ってX軸方向と直交するY軸方向に移動可能なY軸移動台21を備えている。Y軸移動台21のY軸方向移動は、ボールねじを介してサーボモータ22により制御される。Y軸移動台21にはX軸移動台24がX軸方向に移動可能に案内支持され、X軸移動台24のX軸方向移動は、ボールねじを介してサーボモータ31により制御される。X軸移動台24には、部品実装ヘッド28をZ軸方向(上下方向)に昇降可能に案内支持した実装ヘッド本体27が取付けられ、部品実装ヘッド28のZ軸方向移動は、ボールねじを介してサーボモータ32により制御される。また、X軸移動台24には、回路基板Sを上面より撮像する撮像装置としての基板カメラ25が取付けられている。
【0025】
部品実装ヘッド28には、吸着ノズル29が下方より突出するように設けられ、吸着ノズル29の先端(下端)によって電子部品(以下、ダイ部品という)Pが吸着されるようになっている。吸着ノズル29は部品実装ヘッド28に対しZ軸と平行な軸線回りに回転可能に支持され、図略のサーボモータにより回転角度が制御されるようになっている。
【0026】
なお、形状や大きさの異なる各種のダイ部品Pを吸着できるように、部品実装ヘッド28に複数の吸着ノズル29をインデックス可能に設けるか、あるいは部品実装ヘッド28をX軸移動台24に着脱可能に設けることにより、ダイ部品Pの変更に伴って、それに対応する吸着ノズルに容易に変更可能となる。
【0027】
部品供給装置40は、基板搬送装置12の側方に配設され、Y軸方向に移動可能なテーブル41を有している。テーブル41には、ダイシングされたウエハ上にエッジングあるいは印刷等によってパターン形成されたダイ部品(半導体チップ)Pを導入するエキスパンド台42が設置されている。ダイ部品Pは、図2に示すように、粘着シート43に粘着されてエキスパンド台42上に保持されているとともに、ウエハに形成されたダイシングレーン44によってXY平面内で互いに隔てられて配列されている。エキスパンド台42の下方には、粘着シート43に粘着されたダイ部品Pを突き上げる突き上げピン45が上向きに配設されている。突き上げピン45は、X軸、Y軸、Z軸方向に移動可能な保持部材47に保持されており、保持部材47は、X軸駆動部61、Y軸駆動部62、Z軸駆動部63(図3参照)により、X軸、Y軸、Z軸方向に移動されるようになっている。突き上げピン45の上部は円錐形状をなし、突き上げピン45をZ軸方向に上昇させてダイ部品Pを突き上げることにより、ダイ部品Pは粘着シート43より剥離され、吸着ノズル29によって吸着可能となる。この際、突き上げピン45によるダイ部品Pの突き上げによって、粘着シート43に突き上げ痕48(図4参照)が形成される。
【0028】
なお、突き上げピン45は、ダイ部品Pの大きさに応じて複数設けられており、小さなダイ部品Pを突き上げる場合には、ダイ部品Pの中心部を突き上げる1点式の突き上げピン45が保持部材47に保持され、大きなダイ部品Pを突き上げる場合には、ダイ部品Pの中心部を3点〜5点で突き上げる突き上げピン45に交換される。
【0029】
基板搬送装置12と電子部品供給装置40との間の基台11上には、図1に示すように、吸着ノズル29によって吸着されたダイ部品Pを下方より撮像する撮像装置としての部品カメラ49が設けられている。吸着ノズル29に吸着されたダイ部品Pを撮像するために、ダイ部品Pを電子部品供給装置40から回路基板Sに搬送する途中で、部品実装ヘッド28を部品カメラ49上で一旦停止させ、その状態で、部品カメラ49によりダイ部品Pを吸着ノズル29の下方より撮像して画像処理することにより、吸着ノズル29に吸着されたダイ部品Pの吸着ノズル29の中心に対する芯ずれおよび中心回りの角度のずれを認識できるようになっている。
【0030】
なお、X軸移動台24に部品実装ヘッド28と一体的に取付けられた基板カメラ25は、突き上げピン45を位置補正するために、ダイシングレーン44あるいはダイ部品Pや、突き上げピン45による突き上げ痕48等を上方より撮像する撮像用としての機能も有している。
【0031】
上記した構成により、エキスパンド台42上にダイシングされたウエハ上に形成されたダイ部品Pが導入されると、突き上げピン45がX軸およびY軸駆動部61、62によりX軸およびY軸方向に移動されて、回路基板Sに実装すべきダイ部品Pの下方に位置決めされる。その状態で、突き上げピン45がZ軸駆動部63によって上昇されることにより、粘着シート43に粘着されたダイ部品Pが突き上げられて粘着シート43より剥離され、吸着ノズル29に吸着される位置まで供給される。突き上げピン45によって突き上げられたダイ部品Pは、吸着ノズル29によって吸着され、その状態で、部品実装ヘッド28がX軸移動台24とともにXY平面内で移動されることにより、回路基板S上に搬送され、回路基板Sの所定位置にダイ部品Pを実装するようになっている。
【0032】
なお、基板カメラ25によって、部品実装時に回路基板S上に設けられた図略の基準マークが撮像され、この基準マークの位置に基づいて、Y軸移動台21およびX軸移動台24をX軸およびY軸方向に位置補正し、回路基板Sの座標位置を補正するようになっている。
【0033】
電子部品実装装置10は、図3に示す制御装置50によって制御されるようになっている。制御装置50は、CPU51,ROM52,RAM53およびそれらを接続するバス54を備え、バス54には入出力インターフェース55が接続されている。入出力インターフェース55には、部品実装ヘッド28をX軸、Y軸およびZ軸方向等に駆動する駆動手段(サーボモータ22、31、32等)を制御する実装ヘッド制御回路56、突き上げピン45を保持する保持部材47をX軸、Y軸およびZ軸に駆動する各駆動部61、62、63を制御する突き上げピン制御回路57、ならびに撮像装置(基板カメラ25および部品カメラ49)によって撮像された画像データを画像処理する画像処理装置58等が接続されている。
【0034】
ROM52には、回路基板Sにダイ部品Pを実装するための基本プログラムを始め、部品実装ヘッド28等のシーケンス動作を制御するプログラムが格納されている。
【0035】
次に、突き上げピン45によるダイ部品Pの突き上げ位置を補正する方法について説明する。エキスパンド台42上にダイシングされたウエハ上に形成されたダイ部品Pが供給されると、突き上げピン45が、X軸およびY軸駆動部61、62によってX軸およびY軸方向に移動され、図4(A)に示すように、回路基板Sに実装すべき最初のダイ部品Pの下方位置に位置決めされる。その状態で、突き上げピン45がZ軸駆動部63によってZ軸方向に上昇されることにより、図2に示すように、粘着シート43に粘着されたダイ部品Pが突き上げられて粘着シート43より剥離され、吸着ノズル29によって吸着される。
【0036】
ダイ部品Pが吸着ノズル29によって吸着されると、X軸移動台24がXY平面内で移動され、基板カメラ25がダイ部品Pが突き上げられた上方位置に位置決めされ、基板カメラ25を利用して突き上げピン45により突き上げられた位置(突き上げ痕48)を撮像する。これにより、図4(B)に示すように、突き上げピン45によるダイ部品Pの突き上げによって形成された突き上げ痕48と、突き上げピン45によって突き上げられたダイ部品Pの周囲に形成されているダイシングレーン44が同時に撮像される。基板カメラ25によって撮像された画像は、画像処理装置58によって画像処理され、ダイシングレーン44の中心位置と突き上げ痕48の位置関係が認識される。
【0037】
この場合、吸着ノズル29に吸着される前においては、通常であれば、ダイ部品Pの中心は、ダイシングレーン44の中心位置O1とほぼ同じ位置に位置されているので、画像処理により、ダイシングレーン44の中心位置O1に対して突き上げ痕48の中心位置が一致されていれば、ダイ部品Pは突き上げピン45によって中心位置を突き上げられたものと推定することができる。
【0038】
これに対して、図4(C)に示すように、ダイシングレーン44の中心位置O1と、突き上げ痕48の中心位置O2とがXY方向にΔX、ΔYずれていると、ダイ部品Pは突き上げピン45によって中心位置よりΔX、ΔYだけずれた位置で突き上げられたものと推定することができる。
【0039】
そこで、ダイシングレーン44の中心位置O1と突き上げ痕48の中心位置O2のずれ量ΔX、ΔYを算出し、X軸およびY軸駆動部61、62を制御して突き上げピン45の中心をずれ量ΔX、ΔYだけ位置補正することにより、ウエハ上に形成されたダイシングレーン44と突き上げピン45の位置関係を一定の関係に維持できるようになる。
【0040】
この結果、突き上げピン45を次の隣接するダイ部品Pの下方位置に位置決めする際に、突き上げピン45を隣合うダイシングレーン44間の間隔(設計寸法)だけX軸あるいはY軸方向に移動させれば、突き上げピン45は隣接するダイ部品Pを中心位置で突き上げることが可能となる。すなわち、ダイ部品Pの突き上げによって形成された突き上げ痕48の中心は、ダイシングレーン44の中心位置と一致することになる。
【0041】
このことから、突き上げピン45の位置補正は、ダイ部品Pを吸着ノズル29によって吸着する毎に行う必要は必ずしもないが、ダイ部品Pを吸着ノズル29によって吸着する毎に行うようにすれば、ダイ部品Pを回路基板Sに実装するに先立って、突き上げピン45によってダイ部品Pの中心よりずれた位置で突き上げられたことを確実に認識できるようになる。
【0042】
図5は、突き上げピン45によるダイ部品Pの突き上げ位置を補正する方法を示すフローチャートで、まず、ステップ100において、突き上げピン45によって突き上げられたダイ部品Pが、吸着ノズル29によって吸着される。次いで、ステップ102において、部品実装ヘッド28を取付けたX軸移動台24がXY平面内で移動されて、基板カメラ25が突き上げピン45の上方位置に位置決めされる。そして、基板カメラ25により、突き上げピン45によるダイ部品Pの突き上げによって形成された突き上げ痕48と、ダイ部品Pの周囲に形成されているダイシングレーン44が同時に撮像される。基板カメラ25によって撮像された画像は、ステップ104において画像処理され、ダイシングレーン44の中心位置と突き上げ痕48の中心位置との位置関係が認識される。次いで、ステップ106において、ダイシングレーン44の中心位置と突き上げ痕48の中心位置のずれ量ΔX、ΔYが算出され、続くステップ108で、突き上げピン45の中心位置がずれ量ΔX、ΔYだけ位置補正される。
【0043】
上記した第1の実施の形態によれば、ダイ部品Pを吸着ノズル29によって吸着した後に、ダイシングレーン44と突き上げ痕48との位置関係を画像処理によって認識することにより、突き上げピン45の中心とダイ部品Pの中心とのずれ量を算出するようにしたので、ダイ部品Pを吸着ノズル29によって吸着した後のダイシングレーン44と突き上げ痕48との位置関係を認識するだけの簡単な方法によって、突き上げピン45の中心とダイ部品Pの中心とのずれ量を算出することができ、突き出しピン45の突き上げ位置の補正を簡単な方法で高能率に実施することができる。
【0044】
図6は本発明の第2の実施の形態を示すもので、第1の実施の形態と異なる点は、図5のステップ106で算出されたずれ量を統計処理するようにした点と、画像処理を、ずれ量の算出を開始した当初は、ダイ部品Pを吸着ノズル29によって吸着する毎に実行し、ずれ量が安定した後は、画像処理する間隔を広げるようにして、突き上げピン45の位置補正の効率化を図った点の2点である。
【0045】
図6において、まず、ステップ200において、突き上げピン45によって突き上げられたダイ部品Pが、吸着ノズル29によって吸着される。次いで、ステップ202において、ダイシングレーン44の中心位置と突き上げ痕48の中心位置のずれ量が安定したか否かが判定される。ずれ量が未だ安定せず、ステップ202の判定結果がNOの場合には、ステップ204に移行し、ステップ204において、部品実装ヘッド28を取付けたX軸移動台24がXY平面内で移動されて、基板カメラ25が突き上げピン45の上方位置に位置決めされ、基板カメラ25により突き上げピン45によるダイ部品Pの突き上げによって形成された突き上げ痕48と、ダイ部品Pの周囲に形成されているダイシングレーン44が同時に撮像される。基板カメラ25によって撮像された画像は、ステップ206において画像処理され、ダイシングレーン44の中心位置と突き上げ痕48の中心位置との位置関係が認識される。
【0046】
一方、ステップ202の判定結果がYESの場合(後述するようにずれ量が安定したと判断された場合)には、ステップ208に移行し、ステップ208において、吸着ノズル29によってダイ部品Pを吸着する毎に、図略のカウンタのカウント値Nに1が加算される。次いで、ステップ210において、カウンタのカウント値N、すなわち、吸着ノズル29によってダイ部品Pを吸着した回数が所定の回数(設定値)Aより大きくなったか否かが判定され、カウント値Nが設定値Aより小さい場合(NOの場合)には、プログラムは終了される。
【0047】
これに対して、カウント値Nが設定値Aより大きくなった場合(YESの場合)には、続くステップ212において、上述したと同様にして、X軸移動台24がXY平面内で移動されて、基板カメラ25がダイ部品Pが突き上げられた上方位置に位置決めされ、基板カメラ25により、突き上げ痕48とダイシングレーン44を同時に撮像する。次いで、ステップ214において、カウンタの内容が0にクリアされた後、前記ステップ206に移行して、基板カメラ25によって撮像された画像が画像処理され、ダイシングレーン44の中心位置と突き上げ痕48の中心位置との位置関係が認識される。
【0048】
続いて、ステップ216において、ダイシングレーン44の中心位置と突き上げ痕48の中心位置のずれ量ΔX、ΔYが算出され、算出されたずれ量ΔX、ΔYは、ステップ218において統計処理される。すなわち、ステップ218においては、ステップ216で算出されたM回分のずれ量ΔX、ΔYが累積されてその平均のずれ量が求められ、ステップ220において、平均のずれ量だけ突き上げピン45の中心位置が位置補正される。
【0049】
かかる第2の実施の形態によれば、統計処理されたM回分のずれ量ΔX、ΔYの平均値に基づいて、突き上げピン45の中心位置が位置補正されるので、1回当たりの突き出しピン45の位置補正量を小さくすることができるとともに、算出された突き上げピン45の中心位置と突き上げ痕48の中心位置とのずれ量が異常に大きな値であっても、それに左右されることなく、突き出しピン45の位置補正を安定的に行うことができる。
【0050】
また、画像処理を、ずれ量が安定しない算出開始当初においては、ダイ部品Pを吸着ノズル29によって吸着する毎に実行し、ずれ量が安定した後は、吸着ノズル29によってダイ部品PをA回吸着する毎に行うように画像処理する間隔を広げるようにしたので、ずれ量が安定した後は、ダイ部品Pを吸着する毎に画像処理を実行する必要がなく、突き上げピン45の位置補正処理を効率的に行うことができる。
【0051】
なお、ずれ量が安定したか否かは、ずれ量を算出した回数によって判断することができるが、ずれ量を算出した回数に限らず、実際のずれ量を監視し、ずれ量が予め設定した閾値を複数回連続して下回った場合に、ずれ量が安定したと判定するようにしてもよい。
【0052】
図7は、突き上げピン45を位置補正する別の方法を示すもので、ダイ部品Pがダイシングレーン44の中心位置より元々ずれている場合であっても、突き上げピン45によってダイ部品Pの中心位置を正確に突き上げることができるようにしたものである。
【0053】
すなわち、ダイシングレーン44の中心位置に対してダイ部品Pの中心位置が元々ずれている場合には、ダイ部品Pを突き上げピン45によってダイシングレーン44の中心位置で持ち上げても、突き上げピン45によってダイ部品Pの中心を持ち上げることができなくなる。
【0054】
そこで、図7に示す例においては、ダイ部品Pを吸着ノズル29によって吸着する前に、ダイ部品Pおよびダイシングレーン44の位置関係(図7(A)参照)を基板カメラ25を利用して撮像し、画像処理することによって、ダイシングレーン44の中心位置O1に対するダイ部品Pの中心位置O2のずれ量ΔX1、ΔY1を予め算出する。
【0055】
次いで、突き上げピン45によりダイ部品Pを突き上げて吸着ノズル29により吸着した後に、再び基板カメラ25を利用して、ダイシングレーン44と突き上げ痕48の位置関係(図7(B)参照)を撮像し、画像処理によって、ダイシングレーン44の中心位置O1に対する突き上げ痕48の中心位置O3のずれ量ΔX2、ΔY2を算出する。
【0056】
そして、ダイ部品Pを吸着ノズル29によって吸着する前のダイシングレーン44に対するダイ部品Pのずれ量ΔX1、ΔY1と、ダイ部品Pを吸着ノズル29によって吸着した後のダイシングレーン44に対する突き上げ痕48のずれ量ΔX2、ΔY2とを演算することにより、突き上げピン45の中心と、これによって突き上げられたダイ部品Pの中心とのずれ量(ΔX、ΔY)を求め、そのずれ量(ΔX、ΔY)だけ突き上げピン45の中心位置を位置補正する。
【0057】
これにより、突き上げピン45を所定量だけXY平面内で移動して、次の隣接するダイ部品Pの下方位置に位置決めした際、上記したと同様に、ダイシングレーン44の中心位置に対してダイ部品Pの中心位置が上記したと同様にずれていても、突き上げピン45によってダイ部品Pの中心を持ち上げることができるようになる。
【0058】
図7に示す突き上げピン45の位置補正方法によれば、ダイシングレーン44の中心に対してダイ部品Pの中心位置がずれていても、突き上げピン45の中心とダイ部品Pの中心とのずれ量を正確に算出することができる。
【0059】
図8は、突き上げピン45を位置補正するさらに別の方法を示すものである。図8においては、ダイ部品Pを吸着ノズル29によって吸着する前に、図8(A)に示すように、まず、ダイ部品Pを基板カメラ25を利用して撮像し、画像処理によって、ダイ部品Pの中心位置O1を認識し、その中心位置O1の座標位置X1、Y1を予め記憶しておく。
【0060】
次いで、突き上げピン45によりダイ部品Pを突き上げて吸着ノズル29により吸着した後に、図8(B)に示すように、基板カメラ25の中心を予め記憶されている座標位置(X1、Y1)に位置決めする。そして、その位置で基板カメラ25によって突き上げ痕48を撮像し、画像処理することにより、図8(C)に示すように、カメラ中心に対する突き上げ痕48の中心位置との位置関係を認識する。これにより、カメラ中心に対する突き上げ痕48の中心位置のずれ量、すなわち、突き上げピン45の中心と、これによって突き上げられたダイ部品Pの中心とのずれ量ΔX、ΔYを求めることができ、そのずれ量ΔX、ΔYだけ突き上げピン45の中心位置を位置補正する。
【0061】
これにより、次の隣接するダイ部品Pを持ち上げる際に、ダイ部品Pの中心を突き上げピン45によって持ち上げることができるようになる。
【0062】
図8に示す突き上げピン45の位置補正方法によれば、ダイシングレーン44の中心に対してダイ部品Pの中心位置がずれていても、ダイ部品Pの中心位置に基板カメラ25を位置決めするだけの簡単な操作で、突き上げピン45の中心とダイ部品Pの中心とのずれ量を正確に算出することができ、また、ダイシングレーン44の中心位置を認識しなくても、突き上げピン45の中心とダイ部品Pの中心とのずれ量を算出することが可能となる。
【0063】
上記したように、本実施の形態によれば、ダイシングレーン44およびダイ部品Pの少なくとも一方と、突き上げピン45による突き上げによって粘着シート43に形成された突き上げ痕48とを撮像装置25により撮像して画像処理し画像処理によって、ダイシングレーン44およびダイ部品Pの少なくとも一方と、突き上げ痕の位置関係を認識することにより、突き上げピン45の中心とダイ部品Pの中心とのずれ量を算出でき、当該ずれ量に基づいてダイ部品Pに対する突き出しピン45の突き上げ位置を補正することにより、突き上げピン45によってダイ部品Pの中心位置を突き上げることが可能となる。
【0064】
上記した実施の形態においては、突き上げピン45を、ダイ部品Pに対してXY平面内で移動して、ダイ部品Pに対する突き上げピン45の突き上げ位置を補正する例について述べたが、ダイ部品Pを支持したテーブル41を、XY平面内で移動できるようにし、テーブル41を突き上げピン45に対して移動させることにより、ダイ部品Pに対する突き上げピン45の突き上げ位置を補正するようにしてもよい。
【0065】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る突き上げピンの位置補正方法は、ダイシングレーンあるいはダイ部品と、突き上げ痕の位置関係を画像処理によって認識することにより、突き上げピンの中心とダイ部品の中心とのずれ量を算出する電子部品実装装置に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0067】
10…電子部品実装装置、12…基板搬送装置、25、49…撮像装置、26…部品移載装置、28…部品実装ヘッド、29…吸着ノズル、40…部品供給装置、43…粘着シート、44…ダイシングレーン、45…突き上げピン、48…突き上げ痕、50…制御装置、58…画像処理装置、S…回路基板、P…ダイ部品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハに形成されたダイシングレーンによって互いに隔てられ粘着シート上に貼着された複数のダイ部品を突き上げピンにより突き上げ、突き上げによって粘着シートより剥離されたダイ部品を吸着ノズルにより吸着して回路基板上に実装する電子部品実装装置における突き上げピンの位置補正方法にして、
前記ダイシングレーンおよび前記ダイ部品の少なくとも一方と、前記突き上げピンによる突き上げによって前記粘着シートに形成された突き上げ痕とを撮像装置により撮像して画像処理し、
前記ダイシングレーンおよび前記ダイ部品の少なくとも一方と、前記突き上げ痕の位置関係を画像処理によって認識することにより、前記突き上げピンの中心と前記ダイ部品の中心とのずれ量を算出し、
該ずれ量に基づいて前記ダイ部品に対する前記突き出しピンの突き上げ位置を補正するようにしたことを特徴とする突き上げピンの位置補正方法。
【請求項2】
請求項1において、前記ダイ部品を前記吸着ノズルによって吸着した後に、前記ダイシングレーンと前記突き上げ痕との位置関係を画像処理によって認識することにより、前記突き上げピンの中心と前記ダイ部品の中心とのずれ量を算出するようにしてなる突き上げピンの位置補正方法。
【請求項3】
請求項1において、前記ダイ部品を前記吸着ノズルによって吸着する前に、前記ダイ部品の位置と前記ダイシングレーンとの位置関係を画像処理によって認識しておき、前記ダイ部品を前記吸着ノズルによって吸着した後に、前記ダイシングレーンと前記突き上げ痕との位置関係を画像処理によって認識することにより、前記突き上げピンの中心と前記ダイ部品の中心とのずれ量を算出するようにしてなる突き上げピンの位置補正方法。
【請求項4】
請求項1において、前記ダイ部品を前記吸着ノズルによって吸着する前に、前記ダイ部品の位置を画像処理によって認識しておき、前記ダイ部品を前記吸着ノズルによって吸着した後に、前記ダイ部品の中心に前記撮像装置を位置決めし、その位置で前記突き上げ痕を画像処理によって認識することにより、前記突き上げピンの中心と前記ダイ部品の中心とのずれ量を算出するようにしてなる突き上げピンの位置補正方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記ずれ量を統計処理し、該統計処理されたずれ量に基づいて、前記突き出しピンの突き上げ位置を補正するようにしてなる突き上げピンの位置補正方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、画像処理を、ずれ量の算出を開始した当初は、前記ダイ部品を吸着する毎に実行し、ずれ量が安定した後は、画像処理する間隔を広げるようにしてなる突き上げピンの位置補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−238727(P2012−238727A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106930(P2011−106930)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】