説明

窒化アルミニウムを被覆した耐蝕性部材およびその製造方法

【課題】 窒化アルミニウム(AlN)被覆膜(層)を耐熱性部材の表面に被覆した際に、反り変形のない寸法精度に優れた耐蝕性部材を提供する。
【解決手段】 被覆膜の結晶粒のAlN中に酸素を0.1質量%以上20質量%以下含有させて、被覆膜の熱膨張率を基材+に合わせるよう調整することを特徴とする。被覆膜の相対密度が50以上98%未満であることが好ましい。被覆膜が、化学気相成長法によって成膜され、その後、酸素雰囲気中で700℃以上1150℃以下の温度で加熱されること、あるいは、大気中で暴露させて水和物を形成させた後に不活性雰囲気中で900℃以上1300℃以下の温度で加熱処理されること、が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱用基板や半導体デバイスの製造工程に好適に使用される静電チャック、ウエハを加熱するセラミックスヒーター、半導体製造装置内で使用される円板、シャワープレート及びリング形状の部材等(以下、単に“部材”と称することがある)の耐腐蝕性をより向上させることに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程において、CVDによりシリコンウエハ上に酸化膜や配線のメタル膜等を形成するCVD装置のウエハ以外に付着した膜成分を除去するための定期的なセルフクリーニングのためや、エッチング装置の熱エッチングやプラズマエッチングにより形成した膜を除去するために、腐蝕性の高いNF、CF、ClF等のフッ素系ガスが用いられている。
これら高腐蝕性ガス中の厳しい条件下で使用する、ウエハを載置するサセプタやクランプリング、フォーカスリング等の半導体装置の構成部材は、従来、シリコン(Si)や石英ガラス、炭化珪素等が用途に応じて選択適用されてきた。
【0003】
しかし、従来用いられているこれらの材料においても種々の問題があった。例えば、石英ガラスは反応性の高いフッ素系ガスの存在下ではフッ化珪素等反応生成化合物の蒸気圧が高く気体となって揮散するため、腐蝕が連続的に進行し部材の消失が生じてしまう。
また、炭化珪素は基本的には石英ガラスよりも耐蝕性が優れているが、半導体製造装置用として使用する炭化珪素は、主にシリコン含浸炭化珪素であるため、シリコン部がフッ素系ガスとの反応により消失することにより、構造組織が緻密化された基材より炭化珪素が離脱し易く、パーティクルの原因となる。
【0004】
さらに、窒化アルミニウム焼結体がセラミックスの基材の場合、微量の焼結助剤が用いられていたり、製法特有の粒界を有している。そのため、長時間フッ素系ガスにさらされると、助剤部分や粒界部分付近が選択的にエッチングされ、上記石英や炭化珪素ほどではないが、徐々に劣化してくることが知られている。この様な部材においても、長時間の使用においてパーティクルの原因となっている。
また、窒化アルミニウム焼結体表面を酸化することで、表面の耐久性を向上させることも検討されているが、やはり粒界等での選択的エッチングが問題となっていた。
【0005】
一方、上記石英ガラスや炭化珪素に比し、アルミニウム(金属)、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム等のアルミニウム系材料は、フッ素系ガスと反応して生成されるフッ化アルミニウム(AlF)の蒸気圧が著しく低いことからその使用が試みられている。
例えば、0.01重量%以上の炭素を含有する窒化アルミニウム焼結体からなる耐熱性基材に厚さ10μm以上の結晶質窒化アルミニウムからなる被覆膜を設けたものが提案されている(特許文献1)。さらには、製造方法を主目的とするものではあるが、蒸着された窒化アルミニウム層を有する窒化アルミニウム焼結体も提案されている(特許文献2)。
【0006】
しかし、これら窒化アルミニウム焼結体等のセラミックスの基材の熱膨張率と被覆膜としての窒化アルミニウム層の熱膨張率とには差がある為に、被覆膜を熱CVD法で成膜する場合には、成膜後の冷却過程でこの熱膨張率差により基材の反りの発生や、基材と被覆膜に熱応力が残留してしまい、反りによる寸法精度の悪化や、基材または被覆膜にクラックが発生し、酷い場合は被覆膜が剥がれてしまうことがある。
基材または被覆膜にクラックが発生した場合は、その部分が腐蝕されやすくなって、パーティクルが発生してしまうという問題も起こる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−163428号公報
【特許文献2】特開平2−59474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、窒化アルミニウム(AlN)被覆膜(以下、被覆層の語を用いることもある)を耐熱性部材の表面に被覆した際に、反り変形のない寸法精度に優れた耐蝕性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の耐食性部材は、化学気相成長法によって成膜された窒化アルミニウムを主成分とした被覆膜に全体あるいは一部を覆われた耐食性部材において、前記被覆膜の中に0.1質量%以上20質量%以下の酸素を含有させたことを特徴とする。
前記被覆膜の中に0.5質量%以上15質量%以下の酸素を含有させたこと、前記窒化アルミニウムを主成分とした被覆膜の相対密度が50以上98%未満となるように調整したこと、前記被覆膜は、化学気相成長法によって成膜された後に酸素雰囲気中で700℃以上1150℃以下の温度で加熱されて形成されたものであること、あるいは、前記被覆膜は大気中で暴露させて水和物を形成させた後に不活性雰囲気中で加熱処理して形成されたものであること、が、それぞれ好ましい。
さらに、前記耐熱性部材の材質が、熱分解窒化硼素、窒化硼素と窒化アルミニウムの混合焼結体、熱分解窒化硼素コートグラファイト、窒化アルミニウム、希土類酸化物、酸化アルミニウム、酸化珪素、ジルコニア、サイアロン、グラファイト、シリコン、高融点金属のいずれかを主成分とするものであることが好ましい。
【0010】
本発明の耐食性部材の製造方法は、化学気相成長法によって、耐熱性基材の表面に相対密度が50以上98%未満となるように調整した窒化アルミニウムを主成分とした被膜を形成した後、酸素ガスを含む雰囲気下で700℃以上1150℃以下の温度で加熱処理したことで前記被膜中に0.1質量%以上20質量%以下の酸素を含有させることを特徴とする。
また、大気中で前記被膜表面を水分に暴露させて水和物を形成させた後に不活性雰囲気中で900℃以上1300℃以下の温度で加熱処理したことで、前記被膜中に0.1質量%以上20質量%以下の酸素を含有させることも好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐熱性材料からなる基材とAlN結晶粒中に酸素を含有させて酸化アルミニウム及び/または酸窒化アルミニウムからなる被覆膜とを備えた部材とすることにより、被覆膜の熱膨張率を基材に合わせることが可能になり、寸法精度を維持し、熱応力による基材の反りやクラックの発生を抑制できる。さらには、この部材を加熱冷却して使用する際に伴う繰り返し熱応力による被覆膜(層)の劣化も防ぐことができる有利性が付与される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明について、実施例・比較例をも示しながら、詳細に説明する。
耐熱性部材の全体あるいは一部を覆うように窒化アルミニウム被覆膜を形成して、高腐蝕性ガス、特にはフッ素系ガス、の存在下での、厳しい条件下で使用する、部材の耐腐蝕性をより向上させることを課題として鋭意検討し、被覆膜中に酸素を含有させることによって、部材と被覆膜との熱膨張差を減少させることが出来る、このことによって、被覆膜の亀裂や剥離を回避することが出来る、との新知見を得て、本発明を得た。
【0013】
具体的には、耐熱性部材の全体あるいは一部を覆うように形成する窒化アルミニウム(AlN)被覆膜を化学気相成長法によって形成するに際して、被覆膜中の酸素含有量を0.1質量%以上20質量%以下となるようにすることにより、被覆膜の熱膨張率を基材に合わせることが可能になり、寸法精度を維持し、熱応力による基材の反りやクラックの発生を抑制でき、膜厚を十分厚くしても割れることが無く、熱のかかるプロセスにおいても割れによるパーティクルの発生を抑えることができることを知見したものである。
【0014】
本発明は、上記課題を達成するためになされたもので、窒化アルミニウム被覆膜の結晶粒のAlN中に酸素を0.1質量%以上20質量%以下含有させることで、被覆膜の熱膨張率を基材に合わせるように調整する。
酸素含有量が0.1質量%未満では、被覆膜の熱膨張率はほとんど変化しないが、母材が同じ熱膨張率を有している際には反りは発生しない。好ましくは0.5質量%以上である。しかしながら、フッ素系ガスに対する耐蝕性に劣るという問題が生じてくる。また、酸素含有量が20質量%を越えると、膜が脆くなりクラックが発生し易くなる。好ましくは15質量%以下である。
【0015】
耐熱性部材の全体あるいは一部を覆うように、化学気相成長法によって相対密度が50%以上98%未満となるように調整した窒化アルミニウムからなる被覆膜を備えることにより、膜中に均等に分散して酸素を含有させることができる。
相対密度が50%未満では、構造材として脆くなってしまうので好ましくない。98%以上であると、均質に酸素を含有させることが難しくなり、表面側に偏ってしまい、膜割れや膜剥がれが発生してしまう。好ましくは60%以上95%以下である。この範囲内であれば膜厚を十分厚くしても割れることが無く、熱のかかるプロセスにおいても割れによるパーティクルの発生を抑えることができる。
相対密度は反応条件、特に反応温度を変えることにより制御することができる。
なお、ここで相対密度とは、窒化アルミニウムの理論密度に対する化学気相成長法等によって形成した被覆膜のかさ密度を言い、マイクロメーターと電子天秤によって測定される膜厚および重量から容易に算出される。
【0016】
前記被覆膜は、化学気相成長法によって成膜された後に、酸素雰囲気中で700℃以上1150℃以下で加熱されて形成したものであることができる。化学気相成長法で被覆することにより、高純度な窒化アルミニウム被覆層が得られ、その後の工程で酸素雰囲気中で加熱されることにより、高純度な酸化アルミニウム及び/または酸窒化アルミニウムが得られる。
半導体製造装置用の部材、たとえばシャワープレートやリングのようなセラミックス焼結体では、金属不純物が飛散し金属汚染源となる、クラックが発生しやすい、等の不都合が発生しやすいが、高純度の被覆膜で覆った本発明品ではクラックが発生せずに、耐蝕性良好で長寿命であり、金属汚染も防止できる。
700℃未満では酸素をほとんど取り込まず、成膜後の変形を維持したままである。好ましくは750℃以上である。
1150℃を超えると酸素含有量が多くなり、膜が脆くなり、クラックが発生し易くなる。好ましくは1100℃以下である。
【0017】
前記被覆膜は、また、大気に暴露させて水和物を形成させた後に、不活性雰囲気中で900℃以上1300℃以下の温度で加熱処理することによって、被膜中に酸素を取り込むことができる。一度大気中で暴露させることにより、大気中の水分を取り込んで吸着する。その後、900℃以上1300℃以下の高温で加熱処理することで、AlN結晶粒中の表面に酸化膜が形成されて基材の熱膨張率が変わってくると考えられる。
好ましくは、恒温恒湿槽中で気温30℃、湿度50%以上の雰囲気に1日以上放置させることが好ましい。
【0018】
母材となる耐熱性部材の材質は、熱分解窒化硼素、窒化硼素と窒化アルミニウムの混合焼結体、熱分解窒化硼素コートグラファイト、窒化アルミニウム、希土類酸化物、酸化アルミニウム、酸化珪素、ジルコニア、サイアロン、グラファイト、シリコン、高融点金属のいずれかを主成分とするものであることができる。これらとすることで、半導体成膜装置内での800℃程度の高温成膜プロセスにも十分に対応できる。
【0019】
前記被覆膜は、アルミニウムの有機金属化合物あるいは塩化アルミニウムとアンモニアを原料とした化学気相成長法によって成膜され、その際の反応温度は800℃〜1200℃の間とすることにより、結晶性の優れた高純度の被覆膜が得られる。化学気相成長法によることによって、金属不純物が50ppm以下と非常に少ないものとすることができるので、高純度を要求される半導体製造装置の部材、ヒーター、静電チャック等に好都合である。
焼結体の表面を単純に酸化処理した場合は、焼結体中の金属不純物(焼結助剤やCa、Na、重金属等)が酸化される箇所にも存在するので、金属汚染が懸念される。
【0020】
前記被覆成膜の厚さは、1μm以上500μm以下とすることで、使用条件により十分に耐蝕性を発揮できる。
1μm未満では、部分的に欠陥があった場合に、下地の母材が腐蝕されパーティクルが発生してしまう危険性がある。より好ましくは10μm以上である。また、500μmを超えると、膜の内部応力により母材との境界部分から分離してしまう危険性があり、また、製造するに膨大な時間がかかる為にコスト的に見合わない。より好ましくは300μm以下である。
【実施例】
【0021】
以下に、実施例および比較例によって本発明をより詳細に示すが、本発明は、これらに限定されるものではない。
[第1実施例群及び第1比較例群]
長さ50mm、幅15mm、厚さ0.5mmの窒化アルミニウム焼結体基材の表面全体に熱CVD法により被覆層を設けた。
被覆膜を成膜するに際し、原料としてのアルミニウムの有機金属化合物としてトリメチルアルミニウムを用い、バブラー法にて供給し、バブリング用のガスはArガスを用いた。なお、バブリング用ガスとしてN、H、He等を用いても、同様の結果が得られることが確認されている。
トリメチルアルミニウムは、25℃一定になるように恒温槽に入れ、バブリング用のAr流量を2L/minとし、シリンダ内の圧力をゲージ圧で10kPaとなるように制御した。その際のトリメチルアルミニウムの供給量は、0.3mol/hrであった。
一方、アンモニアは直接液体を加熱気化させて供給量1.7mol/hrとなるようにMFC(マスフローコントローラー)で調整して供給した。
【0022】
反応炉内を真空状態となるように真空ポンプでガスを排気しながら、圧力は絶対圧で50Pa程度の減圧下に保ち、厚さ50μm、相対密度80%の被覆層を形成させた。
被覆層を形成した基材を、酸素気流中で、650℃から1200℃まで条件を種々変更して加熱処理を行った。比較例として加熱処理を行わない基材も準備して、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
各条件で作製された被覆基材の反りと酸素量を調べた。反り量はレーザー変位計で測定し、被覆側が凹はマイナス、凸はプラスで表記した。
膜中の酸素量は、GDMS(グロー放電質量分析)でAlNに対する比として定量分析を行った。
Fプラズマ耐蝕性の評価はプラズマエッチング処理装置(SUMCO RIE−10NR)内に基材を配置し、CFガスと酸素を50sccmずつ流しながら、圧力10Paとし、プラズマを発生させ、RFパワーを500Wに調整して10時間連続のエッチング試験を行った。消耗量が焼結体窒化アルミニウムよりも多い場合は不適、それよりも少ない場合は良好と判断した。
【0023】
【表1】

【0024】
表1から明らかなように、酸素中で加熱処理をしない膜は、基材の反りが大きく、寸法精度の劣るものであった。加熱処理温度が650℃でも、反りが大きく、またFプラズマ耐性も改善は見られなかった。700℃〜1150℃で処理したものは反りが小さくなり、寸法精度に優れていることが確認できる。さらに1200℃で処理を行うと、基材の反りが極端に大きくなり、膜が割れてしまった。
また、本実施例群は、基材に窒化アルミニウム焼結体を用いた例を紹介したが、ほかの部材アルミナにおいても同手法により反りを小さくすることができた(表2)。
【0025】
【表2】

【0026】
表2から明らかなように、酸素中で加熱処理をしない膜は、基材の反りが大きく、寸法精度の劣るものであった。加熱処理温度が650℃でも、反りが大きく、またFプラズマ耐性も改善は見られなかった。700℃〜1150℃で処理したものは反りが小さくなり、寸法精度に優れていることが確認できる。さらに1200℃で処理を行うと、基材の反りが極端に大きくなり、膜が割れてしまった。
【0027】
[第2実施例群及び第2比較例群]
第1実施例群及び第1比較例群と同様に成膜した被覆膜を形成した基材を直接大気に恒温恒湿槽中で気温30℃、湿度60%で10時間暴露させた後に、不活性雰囲気Arガス中で加熱処理を行ったところ、反りが同様に小さくすることができた。結果を表3に示す。
【0028】
【表3】

【0029】
表3から明らかなように、大気に恒温恒湿槽中で気温30℃、湿度60%で10時間暴露させた後に加熱処理をしない膜は、基材の反りが大きく、寸法精度の劣るものであった。加熱処理温度が850℃でも、反りが小さくなったが、Fプラズマ耐性の改善は見られなかった。900℃〜1300℃で処理したものは反りが小さくなり、寸法精度に優れ、耐食性にも優れていることが確認できる。さらに1350℃で処理を行うと、基材の反りが極端に大きくなり、膜が割れてしまった。
また、本実施例群は、基材に窒化アルミニウム焼結体を用いた例を紹介したが、ほかの部材アルミナにおいても同手法により反りを小さくすることができた。結果を表4に示す。
【0030】
【表4】

【0031】
表4から明らかなように、大気に恒温恒湿槽中で気温30℃、湿度60%で10時間暴露させた後に加熱処理をしない膜は、基材の反りが大きく、寸法精度の劣るものであった。加熱処理温度が850℃でも、反りが小さくなったが、Fプラズマ耐性の改善は見られなかった。900℃〜1300℃で処理したものは反りが小さくなり、寸法精度に優れ、耐食性にも優れていることが確認できる。さらに1350℃で処理を行うと、基材の反りが極端に大きくなり、膜が割れてしまった。
【0032】
[第3実施例群及び第3比較例群]
長さ50mm、幅15mm、厚さ0.5mmの窒化アルミニウム焼結体基材の表面全体に第1実施例群と同様の方法で、種々反応温度を変更して、密度の異なる相対密度47.5%〜98.0%で厚さ50μmの被覆層を設けた。そして、被覆層を形成した基材を、酸素雰囲気中800℃で加熱処理を行った。結果を表5に示す。
【0033】
【表5】

【0034】
表5に示されるように、相対密度47.5%ではFプラズマ耐性が悪く、98.0%のものは膜剥がれが生じてしまった。50.0%から97.8%のものは反りが抑制され、Fプラズマ耐性もよく、膜割れも生じなかった。
また、本実施例群は、酸化処理温度800℃で実施しているが、700℃から1150℃の温度でも同様な結果である。
【0035】
[第4実施例群及び第4比較例群]
長さ50mm、幅15mm、厚さ0.5mmの窒化アルミニウム焼結体基材の表面全体に第1実施例群と同様の方法で、種々反応温度を変更して、相対密度47.5%〜98%の厚さ50μmの被覆層を設けた。そして、被覆層を形成した基材を直接大気に恒温恒湿槽中で気温30℃、湿度60%で10時間暴露させた後に、不活性雰囲気Arガス中で加熱処理を行った。結果を表6に示す。
【0036】
【表6】

【0037】
表6に示されるように、相対密度47.5%ではFプラズマ耐性が悪く、98.0%のものは膜剥がれが生じてしまった。50.0%から97.8%のものは反りが抑制され、Fプラズマ耐性もよく、膜割れも生じなかった。
また、本実施例群は、酸化処理温度1100℃で実施しているが、900℃から1300℃の温度でも同様な結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学気相成長法によって成膜された窒化アルミニウムを主成分とした被覆膜に全体あるいは一部を覆われた耐食性部材において、
前記被覆膜の中に0.1質量%以上20質量%以下の酸素を含有する
ことを特徴とする、窒化アルミニウム被覆膜により被覆された耐蝕性部材。
【請求項2】
前記被覆膜の中に0.5質量%以上15質量%以下の酸素を含有させた請求項1に記載の耐蝕性部材。
【請求項3】
前記窒化アルミニウムを主成分とした被覆膜の相対密度が50以上98%未満となるように調整した請求項1〜2のいずれかに記載の耐蝕性部材。
【請求項4】
前記被覆膜は、化学気相成長法によって成膜された後に酸素雰囲気中で700℃以上1150℃以下の温度で加熱されて形成されたものである請求項1〜3のいずれかに記載の耐蝕性部材。
【請求項5】
前記被覆膜は、大気中で暴露させて水和物を形成させた後に不活性雰囲気中で加熱処理して形成された請求項1〜3のいずれかに記載の耐蝕性部材。
【請求項6】
前記耐熱性部材の材質が、熱分解窒化硼素、窒化硼素と窒化アルミニウムの混合焼結体、熱分解窒化硼素コートグラファイト、窒化アルミニウム、希土類酸化物、酸化アルミニウム、酸化珪素、ジルコニア、サイアロン、グラファイト、シリコン、高融点金属のいずれかを主成分とするものである請求項1〜5のいずれかに記載の耐蝕性部材。
【請求項7】
化学気相成長法によって、耐熱性基材の表面に相対密度が50以上98%未満となるように調整した窒化アルミニウムを主成分とした被膜を形成した後、
酸素ガスを含む雰囲気下で700℃以上1150℃以下の温度で加熱処理したことで前記被膜中に0.1質量%以上20質量%以下の酸素を含有させることを特徴とする耐蝕性部材の製造方法。
【請求項8】
大気中で前記被膜表面を水分に暴露させて水和物を形成させた後に不活性雰囲気中で900℃以上1300℃以下の温度で加熱処理したことで、前記被膜中に0.1質量%以上20質量%以下の酸素を含させる請求項6、7に記載の耐蝕性部材の製造方法。

【公開番号】特開2012−96931(P2012−96931A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243158(P2010−243158)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】