説明

窒化物半導体素子及びその製造方法

【課題】ノーマリーオフ特性を具現すると共にゲートリーク電流を抑制する窒化物半導体素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】第1の窒化物層31とその材料より広いエネルギバンドギャップを有する材料を含む第2の窒化物層33とが異種接合され、接合界面寄りに2次元電子ガス(2DEG)チャネルが形成された窒化物半導体層30と、その上にオミック接触されたソース電極50と、これから離間して窒化物半導体30層上にオミック接触されたドレイン電極60と、ソース電極50とドレイン電極60との間の窒化物半導体層30上に、これらから離間して形成されたP型窒化物層40と、この上に形成されたN型窒化物層140と、ソース側の側壁が、P型窒化物層40及びN型窒化物層140のソース側の側壁と整列するようにN型窒化物層140上に接触させたゲート電極70とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体素子及びその製造方法に関し、特に、P/N型窒化物層のゲート電極が設けられた窒化物半導体素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリーンエネルギ政策などに伴って、電力消費の節減への関心が増加している。このため、電力変換効率の上昇は必須な要素である。電力変換において、パワースイッチング素子の効率が全体電力変換の効率を左右する。
【0003】
現在、通常利用される電力素子は、シリコンを用いるパワーMOSFETやIGBTが大部分であるが、シリコンの材料的な限界によって素子の効率増加に限界がある。これを解決するために、窒化ガリウム(Gallium Nitride:GaN)のような窒化物半導体を用いるトランジスタを製作し、変換効率を高めようとする試みが進められている。
【0004】
しかし、GaNを用いるHEMT構造のトランジスタは、ゲート電圧が0V(normal状態)の場合、ドレインとソースとの間の抵抗が低く、電流が流れるような「オン」状態になり、電流及びパワーの消耗が発生する。このようなノーマリーオン(normally−ON)構造では、ノーマリーオン状態をオフ状態にするためには、ゲートに陰の電圧(例えば、−5V程度)を加えなければならないという短所がある。
【0005】
これを解決するために、AlGaN/GaN HEMT構造上にP型GaNを用いるゲート電極構造を採用し、ノーマリーオフ(normally−OFF)構造を作る技術が開発されている。例えば、特許文献1では、AlGaN/GaN構造上にp−GaNまたはp−AlGaNゲートを適用してインヘンスドモード(Enhanced mode)及びホールインジェクション(hole injection)による高電流素子を具現することが示されている。また、特許文献2では、AlGaN/AlN/GaN構造上にp−GaNゲートを適用し、インヘンスドモードGaN HEMTを具現することが示されている。すなわち、これらの特許文献1及び2は、ゲート電極にP型GaNまたはP型AlGaNを形成し、ゲート下端の2DEGを空乏(depletion)させてノーマリーオフを具現したGaN HFETである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−038175号公報
【特許文献2】特開2011−119304号公報
【特許文献3】米国特許第7728356号明細書
【特許文献4】米国特許第7816707号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のP型GaNを用いるゲート電極構造では、ゲート端のP型GaNと2DEGチャネル領域からなるPN接合の低いビルトイン(built−in)電圧のため、ターンオン動作時、ゲート端のリーク電流が大きくなるか、またはゲート電圧の掃引範囲(gate voltage sweep range)がビルトイン電圧より小さく制限されるという短所がある。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みて成されたものであって、P/N型の窒化物半導体をゲート電極として用いて、ノーマリーオフ特性を具現すると共にゲートリーク電流を抑制することができる、窒化物半導体素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するために、本発明の第1の実施形態によれば、第1の窒化物層と該第1の窒化物層の材料より広いエネルギバンドギャップを有する材料を含む第2の窒化物層とが異種接合され、接合界面寄りに2次元電子ガス(2DEG)チャネルが形成された窒化物半導体層と、この窒化物半導体層上にオミック接触するソース電極と、このソース電極から離間して窒化物半導体層上にオミック接触するドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の窒化物半導体層上にソース電極及びドレイン電極の各々から離間して形成されたP型窒化物層と、このP型窒化物層上に形成されたN型窒化物層と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で該ソース電極近くに形成され、ソース側の側壁が、P型及びN型窒化物層のソース側の側壁と整列するようにN型窒化物層上に接触するゲート電極と、を含む窒化物半導体素子が提供される。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、前記ゲート電極は、N型窒化物層上にオミック接触される。一実施形態によれば、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極は、同一金属材料からなる。
【0011】
また、一実施形態によれば、P型窒化物層は、ゲート電極のドレイン側の側壁の範囲を超えてドレイン側に延在する。
【0012】
また、本発明の一実施形態によれば、ゲート電極のソース側の側壁は、P型及びN型窒化物層のソース側の側壁と一致するように整列されるか、またはP型及びN型窒化物層のソース側の側壁にまで至らないように整列される。
【0013】
また、一実施形態によれば、P型窒化物層は、第1の窒化物層の材料がP型でドープされた材料から成り、N型窒化物層は、第1の窒化物層の材料がN型でドープされた材料からなる。
【0014】
また、一実施形態によれば、第1の窒化物層の材料はGaNで、第2の窒化物層の材料は、AlGaNである。一実施形態によれば、P型窒化物層は、p−GaNから成り、N型窒化物層は、n−GaNからなる。
【0015】
また、本発明の一実施形態によれば、窒化物半導体層は、基板上に形成されたバッファ層上に形成される。
【0016】
また、上記目的を解決するために、本発明の第2の実施形態によれば、第1の窒化物層と該第1の窒化物層の材料より広いエネルギバンドギャップを有する材料を含む第2の窒化物層とを異種接合させ、接合界面寄りに2次元電子ガス(2DEG)チャネルが形成される異種接合窒化物半導体層を形成するステップと、窒化物半導体層上の一部領域にP型窒化物層を形成するステップと、該P型窒化物層上にN型窒化物層を形成するステップと、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を形成し、該ソース電極及びドレイン電極は、窒化物半導体層上でP型及びN型窒化物層を介して対向するようにオミック接触させて形成し、前記ゲート電極は、前記ソース電極近くに配設され、ソース側の側壁が、P型及びN型窒化物層のソース側の側壁と整列するようにN型窒化物層上に接触させるステップと、を含む窒化物半導体素子の製造方法が提供される。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、前記ゲート電極は、N型窒化物層上にオミック接触する。一実施形態によれば、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極は、同一金属材料からなる。
【0018】
一実施形態によれば、前記ゲート電極のドレイン側の側壁は、P型窒化物層のドレイン側の側壁にまで至らないようにゲート電極が形成される。
【0019】
また、本発明の一実施形態によれば、前記ゲート電極のソース側の側壁は、P型及びN型窒化物層のソース側の側壁と一致して整列するように、またはP型及びN型窒化物層のソース側の側壁にまで至らないで整列するようにゲート電極が形成される。
【0020】
また一実施形態によれば、第1の窒化物層の材料がP型でドープされた材料を窒化物半導体層上に成長させてP型窒化物層を形成し、第1の窒化物層の材料がN型でドープされた材料をP型窒化物層に成長させてN型窒化物層を形成する。
【0021】
また、一実施形態によれば、第1の窒化物層の材料はGaNであり、第2の窒化物層の材料はAlGaNである。一実施形態によれば、窒化物半導体層上にp−GaNを成長させてP型窒化物層を形成し、該P型窒化物層上にn−GaNを成長させてN型窒化物層を形成する。
【0022】
また、本発明の一実施形態によれば、前記窒化物半導体層を形成するステップにおいて、基板上に形成されたバッファ層上に、第1及び第2の窒化物層をエピタキシャル成長させて窒化物半導体層を形成する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、P/N型の窒化物半導体をゲート電極として用いて、ノーマリーオフ特性を具現すると共に、ゲートリーク電流を抑制することができるという効果が奏される。また、本発明によれば、P型/N型窒化物層のゲート電極が設けられたノーマリーオフ型FETは、従来方式に比べてゲートリーク電流が少なく、かつ、ゲート掃引電圧が高く、ターンオン電流を増加させるという効果が奏される。
【0024】
また、本発明によれば、ソース/ドレイン/ゲート端に同じ金属材料で電極を形成することができ、製造工程を簡素化できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態による窒化物半導体素子の概略的な断面図である。
【図2a】図1の窒化物半導体素子の製造方法を概略的に示す断面図である。
【図2b】図1の窒化物半導体素子の製造方法を概略的に示す断面図である。
【図2c】図1の窒化物半導体素子の製造方法を概略的に示す断面図である。
【図2d】図1の窒化物半導体素子の製造方法を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態による窒化物半導体素子の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施の形態を、図面を参考にして詳細に説明する。次に示される各実施の形態は、当業者にとって本発明の思想が十分に伝達されることができるようにするために例として挙げられるものである。従って、本発明は以下示している各実施の形態に限定されることなく、他の形態で具体化することができる。そして、図面において、装置の大きさ及び厚さなどは便宜上誇張して表現されることがある。明細書全体に渡って同一の参照符号は同一の構成要素を示している。
【0027】
本明細書で使用された用語は、実施形態を説明するためのものであって、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数形は特別に言及しない限り複数形も含む。明細書で使用される「含む」とは、言及された構成要素、ステップ、動作及び/又は素子は、一つ以上の他の構成要素、ステップ、動作及び/又は素子の存在または追加を排除しないことに理解されたい。
【0028】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による窒化物半導体素子及び製造方法について詳記する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態による窒化物半導体素子の概略的な断面図で、図2a―図2dは、各々、図1の窒化物半導体素子の製造方法を概略的に示す断面図で、図3は本発明の他の実施形態による窒化物半導体素子の概略的な断面図である。
【0030】
まず、図1及び図3を参照して、本発明の第1の実施形態による窒化物半導体素子について詳記する。
【0031】
図1及び図3に示すように、一実施形態による窒化物半導体素子は、窒化物半導体層30、ソース電極50、ドレイン電極60、P型窒化物層40、N型窒化物層140及びゲート電極70を含む。一実施形態によれば、窒化物半導体素子は、パワートランジスタ素子から成る。
【0032】
図1及び図3に示すように、窒化物半導体層30は、第1の窒化物層31と、該第1の窒化物層の材料より広いエネルギバンドギャップを有する材料を含む第2の窒化物層33とが異種接合されて成る。窒化物半導体層30の接合界面寄りには、2次元電子ガス(2DEG)チャネルが形成される。窒化物半導体層30は、異種接合された窒化ガリウム系列の半導体層であり、該異種接合された界面でエネルギバンドギャップの差によって2次元電子ガスチャネル35が形成される。異種接合される窒化ガリウム系列の半導体層30において異種接合間の格子定数の差が小さいほど、バンドギャップ及び極性の差が減るようになる。そのため、2DEGチャネル35の形成が抑止される。異種接合時、エネルギバンドギャップの不連続性によって、広いバンドギャップを有する材料から小さなバンドギャップを有する材料へと自由電子が移動するようになる。このような電子は、異種接合界面に蓄積されて2DEGチャネル35を形成し、ドレイン電極60とソース電極50との間で電流が流れるようにする。
【0033】
一実施形態によれば、窒化物半導体層30を成す窒化物には、窒化ガリウム(GaN)、アルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)、インジウム窒化ガリウム(InGaN)、インジウムアルミニウム窒化ガリウム(InAlGaN)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。第2の窒化物層33は、第1の窒化物層31上に異種接合され、第1の窒化物層31より広いエネルギバンドギャップを有する異種の窒化ガリウム系列材料を含む。第2の窒化物層33は、第1の窒化物膚31内に形成される2DEGチャネル35へ電子を供給する。一実施形態によれば、電子を供給する第2の窒化物層33は、第1の窒化物層31より薄い厚さに形成される。
【0034】
一実施形態によれば、第1の窒化物層31は窒化ガリウム(GaN)を含み、第2の窒化物層33はアルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)、インジウム窒化ガリウム(InGaN)、インジウムアルミニウム窒化ガリウム(InAlGaN)のうちのいずれか一つを含む。例えば、第1の窒化物層31の材料は、窒化ガリウム(GaN)を含み、第2の窒化物層33の材料は、アルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)を含む。
【0035】
一実施形態によれば、図1及び図3に示すように、窒化物半導体層30の第1の窒化物層31は、基板10の上部に配設される。基板10は、一般に絶縁基板を使って、実質的に絶縁性を有する高抵抗性の基板を使ってもよい。例えば、基板10は、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、サファイヤ(Al)のうちの少なくともいずれか一つを用いて製造されてもよく、公知の他の基板材料を用いて製造されてもよい。一実施形態によれば、窒化物半導体層30は、基板10の上部に単結晶薄膜をエピタキシャル成長させて形成する。
【0036】
また、一実施形態によれば、図示されていないが、基板10と窒化物半導体層30との間にバッファ層を設け、窒化物半導体層30を該バッファ層上に形成してもよい。窒化物半導体層30は、バッファ層(図示せず)の上部に単結晶薄膜をエピタキシャル成長させて形成する。このバッファ層は、基板10と窒化物半導体層30との格子不一致(lattice mismatch)による問題点を解決するために設けられる。このバッファ層は、単一層であってもよく、窒化ガリウム(GaN)、アルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)、窒化アルミニウム(AlN)、インジウム窒化ガリウム(InGaN)、インジウムアルミニウム窒化ガリウム(InAlGaN)などを含む複数層で形成されてもよい。また、このバッファ層は、窒化ガリウム以外の他の3−5族化合物半導体で形成されてもよい。例えば、基板10がサファイヤ基板の場合、窒化ガリウムを含む窒化物半導体層30との格子定数及び熱膨張係数の差によってミスマッチ(mismatch)されることを抑止するためには、バッファ層(図示せず)の成長が重要になる。
【0037】
図1及び図3に示すように、ソース電極50は、窒化物半導体層30上にオミック接触されている。また、ドレイン電極60は、ソース電極50から離間して窒化物半導体層30上にオミック接触されている。
【0038】
ソース電極50及びドレイン電極60は、金属、金属シリサイド、またはこれらの合金を用いて形成される。例えば、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、金(Au)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、チタニウム(Ti)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)のうちの少なくともいずれか一つの金属、金属シリサイド及びこれらの合金を用いて形成される。
【0039】
続いて、図1及び図3に示すように、P型窒化物層40は、ソース電極50とドレイン電極60との間の窒化物半導体層30上にソース電極50及びドレイン電極60の各々から離間して形成される。
【0040】
また、図1及び図3に示すように、N型窒化物層140は、P型蜜化物層40上に形成される。N型窒化物層140は、nでドープされて、ゲート電極70の形成時に接触抵抗を低減することができる。
【0041】
本実施形態によれば、P型窒化物層40、例えばp−GaNが形成された個所には、2DEGが空乏してノーマリーオフ特性を現わすことができる。また、2DEG領域とP型/N型窒化物層ゲート、例えばp−GaN/n−GaNゲートとは、NPN接合をなし、ターンオン時、ゲートリーク電流を抑制することができる。また、2DEG領域とP型/N型窒化物層ゲート構造とは、ゲート掃引電圧を増加させ、ターンオン電流を向上させることができる。
【0042】
図3に示すように、一実施形態によれば、P型窒化物層40は、ゲート電極70のドレイン側の側壁の範囲を超えてドレイン側に延在する。P型窒化物層40上に形成されたN型窒化物層140は、P型窒化物層40と同様に、ゲート電極70のドレイン側の側壁の範囲を超えてドレイン側に延在する。
【0043】
また、一実施形態によれば、P型窒化物層40の材料には、窒化ガリウム(GaN)、アルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)、インジウム窒化ガリウム(InGaN)、インジウムアルミニウム窒化ガリウム(InAlGaN)などがP型でドープされた材料が挙げられるが、これに限定されるのではない。また、N型窒化物層140の材料には、窒化ガリウム(GaN)、アルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)、インジウム窒化ガリウム(InGaN)、インジウムアルミニウム窒化ガリウム(InAlGaN)などがN型でドープされた材料が挙げられるが、これに限定されるのではない。
【0044】
一実施形態によれば、P型窒化物層40は、第1の窒化物層31の材料がP型でドープされたP型半導体材料からなる。また、N型窒化物層140は、第1の窒化物層31の材料がN型でドープされたP型半導体材料からなる。例えば、第1の窒化物層31の材料は窒化ガリウム(GaN)を含み、P型窒化物層40はp−GaNからなり、N型窒化物層140は、n−GaNからなる。
【0045】
また、図1及び図3に示すように、ゲート電極70は、ソース電極50とドレイン電極60との間でソース電極50近くに形成される。ゲート電極70は、ソース側の側壁が、P型及びN型窒化物層40、140のソース側の側壁と整列するように、N型窒化物層140上に接触している。すなわち、ゲート電極70は、ソース側の側壁を、P型及びN型窒化物層40、140のソース側の側壁と面一に整列させるようにしている。
【0046】
ゲート電極70は、金属、金属シリサイドまたはこれらの合金を用いて形成される。例えば、ゲート電極70は、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、金(Au)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、チタニウム(Ti)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)のうちの少なくともいずれか一つの金属、金属シリサイド及びこれらの合金を用いて形成する。
【0047】
一実施形態によれば、ゲート電極70は、N型窒化物層140上にオミック接触される。第2の窒化物層33、P型窒化物層40及びN型窒化物層140がNPN構造を成しているので、ゲート電極70は、ソース電極50及びドレイン電極60と同様にオミック接触される。
【0048】
一実施形態によれば、オミック接触の場合、ゲート電極70は、ソース電極50及びドレイン電極60と同一金属材料からなる。
【0049】
また、一実施形態によれば、ゲート電極70のソース側の側壁は、図1及び図3に示すように、P型及びN型窒化物層40、140のソース側の側壁と一致するように、すなわち、これらは面一となるように整列される。または図示されていないが、ゲート電極70のソース側の側壁は、P型及びN型窒化物層40、140のソース側の側壁にまで至らないように、手前に位置して整列される。
【0050】
本発明の実施形態によれば、P型/N型窒化物層ゲートを用いて高耐圧/高電流型ノーマリーオフ素子を具現することができる。例えば、高電力素子を具現することができる。
【0051】
本発明の実施形態によれば、P/N型の窒化物半導体をゲート電極として用いて、ノーマリーオフ特性を具現すると共に、ゲートリーク電流を抑制することができる。
【0052】
本発明の実施形態によるP型/N型窒化物層構造のゲート電極を形成すると、NPN構造が形成され、ゲートリーク電流は逆方向駆動されるNPダイオードによって制限されるため、ゲート掃引電圧を大きく維持することができる。これによって、ターンオン電流を増加させることができる。
【0053】
また、本発明の実施形態によれば、ソース電極50及びドレイン電極60と同じ金属材料をゲート電極70に使うことができ、すべての電極を一回の工程で設けることができる。それによって、製造工程が簡素化されることができる。
【0054】
次に、図2a−図2dを参照して、本発明の第2の実施形態による窒化物半導体素子の製造方法について詳記する。前述の窒化物半導体素子の実施形態と重複する説明は、省略することにする。
【0055】
図2a−図2dに示すように、本発明による窒化物半導体素子の製造方法は、異種接合窒化物半導体層形成ステップと、P型窒化物層形成ステップと、N型窒化物層形成ステップ及び電極形成ステップを含む。一実施形態によれば、窒化物半導体素子は、パワートランジスタ素子から成る。
【0056】
図2aに示すように、異種接合窒化物半導体層形成ステップでは、第1の窒化物層31と該第1の窒化物層の材料より広いエネルギバンドギャップを有する材料を含む第2の窒化物層33とが異種接合されて窒化物半導体層30が形成される。この窒化物半導体層30の異種接合界面寄りには、2次元電子ガス(2DEG)チャネルが形成される。第2の窒化物層33は、第1の窒化物層31内に形成される2DEGチャネル35へ電子を供給する。一実施形態によれば、電子を供給する第2の窒化物層33は第1の窒化物層31より薄い厚さで形成される。
【0057】
一実施形態によれば、窒化物半導体層30に用いられる窒化物には、窒化ガリウム(GaN)、アルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)、インジウム窒化ガリウム(InGaN)、インジウムアルミニウム窒化ガリウム(InAlGaN)などが挙げられるが、これに限定されるのではない。第2の窒化物層33は、第1の窒化物層31上に異種接合され、第1の窒化物層31より広いエネルギバンドギャップを有する異種の窒化ガリウム系列材料を含む。
【0058】
また、一実施形態によれば、第1の窒化物層31は、窒化ガリウム(GaN)を含み、第2の窒化物層33は、アルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)、インジウム窒化ガリウム(InGaN)、インジウムアルミニウム窒化ガリウム(InAlGaN)のうちのいずれか一つを含む。例えば、第1の窒化物層31の材料は、窒化ガリウム(GaN)を含み、第2の窒化物層33の材料は、アルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)を含む。
【0059】
また、一実施形態によれば、窒化物半導体層30は、図1及び図3に示すように基板10の上部に形成される。基板10は、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、サファイヤ(Al)のうちの少なくともいずれか一つを用いて製造されてもよく、公知の他の基板材料を用いて製造されてもよい。窒化物半導体層30は、単結品薄膜をエピタキシャル成長させて形成する。すなわち、第1の窒化物層31及び第2の窒化物層33は、エピタキシャル成長工程(Epitaxial Growth Process)によって形成される。例えば、第1の窒化物層31は、基板10の上部に窒化ガリウム系列単結晶薄膜をエピタキシャル成長させて形成する。第2の窒化物層33は第1の窒化物層31上に異種の窒化ガリウム系列単結晶薄膜をエピタキシャル成長させて形成する。
【0060】
また、図示されていないが、窒化物半導体層30は、基板10の上部に形成されたバッファ層上に形成される。基板10の上部にバッファ層をエピタキシャル成長させた後、該バッファ層上に第1の窒化物層31をエピタキシャル成長させてもよい。続いて、第2の窒化物層33は、第1の窒化物膚31をシード層として、第1の窒化物層31より広いエネルギバンドギャップを有する異種の窒化ガリウム系列材料を含む窒化物層をエピタキシャル成長させて形成される。
【0061】
一実施形態によれば、第1の窒化物層31は、窒化ガリウム(GaN)を含む窒化ガリウム系列単結晶をエピタキシャル成長させて形成する。第2の窒化物層33は、アルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)、インジウム窒化ガリウム(InGaN)及びインジウムアルミニウム窒化ガリウム(InAlGaN)のうちのいずれか一つを含む窒化ガリウム系列単結晶をエピタキシャル成長させて形成する。例えば、第2の窒化物層33は、アルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)をエピタキシャル成長させて形成する。
【0062】
第1の窒化物層31及び第2の窒化物層33を形成するためのエピタキシャル成長工程には、液相成長法(LPE:Liquid Phase Epitaxy)、化学気相蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition)、分子ビーム成長法(MBE:Molecular Beam Epitaxy)、有機金属気相蒸着法(M0CVD:Metal Organic CVD)などが挙げられる。エピタキシャル成長時、選択的に成長させて過成長されないように調節する。もし、過成長された場合は、エッチバック(etchback)工程やCMP(Chemical Mechanical Polishing)工程を用いて平坦化する過程をさらに行ってもよい。
【0063】
続いて、図2bに示すように、P型窒化物層形成ステップでは、窒化物半導体層30上の一部領域にP型窒化物層40が形成される。
【0064】
続いて、図2cに示すように、N型窒化物層形成ステップでは、P型窒化物層40上にN型窒化物層140が形成される。このN型窒化物層140は、nでドープされて、ゲート電極70の形成時に接触抵抗を低く抑止することができる。
【0065】
本実施形態によれば、P型窒化物層40、例えばp−GaNが形成された個所では、2DEGが空乏してノーマリーオフ特性を現わすことができる。また、2DEG領域とP型/N型窒化物層ゲート、例えばp−GaN/n−GaNゲートとは、NPN接合をなして、ターンオン時にゲートリーク電流を抑制することができる。また、2DEG領域とP型/N型窒化物層ゲート構造とは、ゲート掃引電圧を増加させて、ターンオン電流を向上させることができる。
【0066】
また、一実施形態によれば、P型窒化物層40の材料には、窒化ガリウム(GaN)、アルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)、インジウム窒化ガリウム(InGaN)、インジウムアルミニウム窒化ガリウム(InAlGaN)などがP型でドープされた材料として挙げられるが、これに限定されるのではない。また、N型窒化物層140の材料には、窒化ガリウム(GaN)、アルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)、インジウム窒化ガリウム(InGaN)、インジウムアルミニウム窒化ガリウム(InAlGaN)などがN型でドープされた材料として挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0067】
一実施形態によれば、P型窒化物層40は、第1の窒化物層31の材料がP型でドープされたP型半導体材料からなる。このP型でドープされたP型半導体材料を窒化物半導体層30、すなわち、第2の窒化物層33上にエピタキシャル成長させてP型窒化物層40を形成する。また、N型窒化物層140は、第1の窒化物層31の材料がN型でドープされたP型半導体材料からなる。このN型でドープされたN型半導体材料をP型窒化物層40上にエピタキシャル成長させてN型窒化物層140を形成する。例えば、第1の窒化物層31の材料は、窒化ガリウム(GaN)を含み、P型窒化物層40は、p−GaNを窒化物半導体層30上に成長させて形成してもよい。N型窒化物層140は、n−GaNをP型窒化物層40上で成長させて形成する。
【0068】
続いて、図2(d)に示すように、電極形成ステップでは、ソース電極50、ドレイン電極60及びゲート電極70が形成される。ソース電極50及びドレイン電極60は、窒化物半導体層30上で、P型窒化物層40及びN型窒化物層140を介して対向するようにして、各々窒化物半導体層30上にオミック接触して形成される。また、ゲート電極70は、ソース電極50に近く配設され、ソース側の側壁がP型窒化物層40及びN型窒化物層140のソース側の側壁と整列されるように、N型窒化物層140上に接触して形成される。
【0069】
ソース電極50、ドレイン電極60及びゲート電極70は、金属、金属シリサイドまたはこれらの合金を用いて形成される。例えば、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、金(Au)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、チタニウム(Ti)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)のうちの少なくともいずれか一つの金属、金属シリサイド及びこれらの合金を用いて形成される。
【0070】
一実施形態によれば、ゲート電極70は、N型窒化物層140上にオミック接触される。第2の窒化物層33、P型窒化物層40及びN型窒化物層140がNPN構造を成しているので、ゲート電極70は、ソース電極50及びドレイン電極60と同様にオミック接触される。
【0071】
一実施形態によれば、ソース電極50、ドレイン電極60及びゲート電極70は、同一金属材料に形成される。
【0072】
また、一実施形態によれば、図3に示すように、ゲート電極70のドレイン側の側壁は、P型窒化物層40のドレイン側の側壁にまで至らないように、ゲート電極70が短く形成される。すなわち、P型窒化物層40のドレイン側の側壁が、ゲート電極70のドレイン側の側壁を超えるように、窒化物半導体層30上に配設されている。また、N型窒化物層140のドレイン側の側壁は、P型窒化物層40のドレイン側の側壁と一致するように(面一となるように)形成される。このように、ゲート電極70のドレイン側の側壁は手前に位置し、N型窒化物側のドレイン側の側壁にまで至らなくなる。
【0073】
一実施形態によれば、図1、図2d及び図3に示すように、ゲート電極70のソース側の側壁は、P型窒化物層40及びN型窒化物層140のソース側の側壁と一致して(面一で)整列するように、ゲート電極70が形成される。または図示されていないが、ゲート電極70のソース側の側壁は、P型窒化物層40及びN型窒化物層140のソース側の側壁まで至らないように整列させて、ゲート電極70が形成される。
【0074】
本発明の実施形態によるP型/N型窒化物層構造のゲート電極を形成すると、NPN構造が設けられ、ゲートリーク電流は、逆方向駆動されるNPダイオードによって制限されることになる。そのため、ゲート掃引電圧を大きく維持することができる。これによって、ターンオン電流を増加させることができる。
【0075】
また、本発明の実施形態によれば、ソース電極50及びドレイン電極60と同じ金属材料をゲート電極70に使用でき、すべての電極を一回の工程で形成することができる。それによって、製造工程を簡素化できる。
【0076】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
10 基板
30 窒化物半導体層
31 第1の窒化物層
33 第2の窒化物層
35a 空乏領域
35 2DEGチャネル
40 P型窒化物層
50 ソース電極
60 ドレイン電極
70 ゲート電極
140 N型窒化物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の窒化物層と該第1の窒化物層の材料より広いエネルギバンドギャップを有する材料を含む第2の窒化物層とが異種接合され、接合界面寄りに2次元電子ガス(2DEG)チャネルが形成された窒化物半導体層と、
この窒化物半導体層上にオミック接触されるソース電極と、
このソース電極から離間して前記窒化物半導体層上にオミック接触されるドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の前記窒化物半導体層上に、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の各々から離間して形成されたP型窒化物層と、
このP型窒化物層上に形成されたN型窒化物層と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で前記ソース電極に近く形成され、ソース側の側壁が、前記P型窒化物層及び前記N型窒化物層のソース側の側壁と整列すれるように前記N型窒化物層上に接触されるゲート電極と
を含む窒化物半導体素子。
【請求項2】
前記ゲート電極は、前記N型窒化物層上にオミック接触される請求項1に記載の窒化物半導体素子。
【請求項3】
前記ソース電極、前記ドレイン電極及び前記ゲート電極は、同一金属材料から成る請求項2に記載の窒化物半導体素子。
【請求項4】
前記P型窒化物層は、前記ゲート電極のドレイン側の側壁の範囲を超えてドレイン側に延在する請求項1に記載の窒化物半導体素子。
【請求項5】
前記ゲート電極のソース側の側壁は、前記P型窒化物層及び前記N型窒化物層のソース側の側壁と一致するように整列するか、または前記P型窒化物層及び前記N型窒化物層のソース側の側壁にまで至らないように整列する請求項1に記載の窒化物半導体素子。
【請求項6】
前記P型窒化物層は、前記第1の窒化物層の材料がP型でドープされた材料から成り、
前記N型窒化物層は、前記第1の窒化物層の材料がN型でドープされた材料から成る請求項1に記載の窒化物半導体素子。
【請求項7】
前記第1の窒化物層の材料はGaNで、
前記第2の窒化物層の材料はAlGaNである請求項1に記載の窒化物半導体素子。
【請求項8】
前記P型窒化物層は、p−GaNから成り、
前記N型窒化物層は、n−GaNから成る請求項7に記載の窒化物半導体素子。
【請求項9】
前記窒化物半導体層は、基板上に形成されたバッファ層上に形成される請求項1に記載の窒化物半導体素子。
【請求項10】
第1の窒化物層と、該第1の窒化物層の材料より広いエネルギバンドギャップを有する材料を含む第2の窒化物層とを異種接合させ、接合界面寄りに2次元電子ガス(2DEG)チャネルが形成される異種接合窒化物半導体層を形成するステップと、
前記窒化物半導体層上の一部領域にP型窒化物層を形成するステップと、
前記P型窒化物層上にN型窒化物層を形成するステップと、
ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を形成し、前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、前記窒化物半導体層上で前記P型窒化物層及び前記N型窒化物層を介して対向するようにオミック接触させて形成し、前記ゲート電極は、前記ソース電極に近く配設され、ソース側の側壁が前記P型窒化物層及び前記N型窒化物層のソース側の側壁と整列するように前記N型窒化物層上に接触させるステップと
を含む窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項11】
前記ゲート電極は、前記N型窒化物層上にオミック接触される請求項10に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項12】
前記ソース電極、前記ドレイン電極及び前記ゲート電極は、同一金属材料から成る請求項11に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項13】
前記ゲート電極のドレイン側の側壁が前記P型窒化物層のドレイン側の側壁に至らないように、前記ゲート電極を形成する請求項10に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項14】
前記ゲート電極のソース側の側壁が、前記P型窒化物層及び前記N型窒化物層のソース側の側壁と一致して整列するように、または前記P型窒化物層及び前記N型窒化物層のソース側の側壁にまで至らないように整列するように、前記ゲート電極を形成する請求項10に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項15】
前記第1の窒化物層の材料がP型でドープされた材料を前記窒化物半導体層上に成長させて前記P型窒化物層を形成し、
前記第1の窒化物層の材料がN型でドープされた材料を、前記P型窒化物層に成長させて前記N型窒化物層を形成する請求項10に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項16】
前記第1の窒化物層の材料はGaNで、
前記第2の窒化物層の材料はAlGaNである請求項10に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項17】
前記窒化物半導体層上にp−GaNを成長させて前記P型窒化物層を形成し、
前記P型窒化物層上にn−GaNを成長させて前記N型窒化物層を形成する請求項16に記載の窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項18】
前記窒化物半導体層を形成するステップにて、前記基板上に形成された前記バッファ層上に前記第1及び第2の窒化物層をエピタキシャル成長させて前記窒化物半導体層を形成する請求項10に記載の窒化物半導体素子の製造方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−80894(P2013−80894A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−107328(P2012−107328)
【出願日】平成24年5月9日(2012.5.9)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】