窒化物発光素子
【課題】素子寿命を改善できる窒化物発光素子を提供する。
【解決手段】III族窒化物半導体領域13−1は、活性層15−1上に設けられ、また第1領域13a−1及び第2領域13b−1を含む。第2領域13b−1は第1領域13a−1に沿って延在する。第1領域13a−1はリッジ部を含み、リッジ部はp型導電性を有する。第1領域13a−1の厚さT13a−1は第2領域13b−1の厚さT13b−1より大きい。III族窒化物半導体領域13−1は、p型ドーパント及び水素を含む。電極17−1は、第1領域13a−1のリッジ部の上面13c−1に接触JC1−1を成す。活性層15−1はIII族窒化物半導体からなる。金属層19−1は、水素化物を形成可能な材料からなり、また第2領域13b−1上に設けられる。多孔質陽極酸化アルミナ層21−1は、金属層19−1上に設けられる。
【解決手段】III族窒化物半導体領域13−1は、活性層15−1上に設けられ、また第1領域13a−1及び第2領域13b−1を含む。第2領域13b−1は第1領域13a−1に沿って延在する。第1領域13a−1はリッジ部を含み、リッジ部はp型導電性を有する。第1領域13a−1の厚さT13a−1は第2領域13b−1の厚さT13b−1より大きい。III族窒化物半導体領域13−1は、p型ドーパント及び水素を含む。電極17−1は、第1領域13a−1のリッジ部の上面13c−1に接触JC1−1を成す。活性層15−1はIII族窒化物半導体からなる。金属層19−1は、水素化物を形成可能な材料からなり、また第2領域13b−1上に設けられる。多孔質陽極酸化アルミナ層21−1は、金属層19−1上に設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電極の製造方法が記載されている。この方法では、Mgを含むp型AlXInYGa1−X−YN半導体層上に、電極として水素貯蔵金属を堆積する。また、特許文献2及び3並びに非特許文献1には、窒化ガリウム系半導体におけるMgドーパントと水素との関係について記載されている。さらに、特許文献4には、陽極酸化アルミナ膜について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−340511号公報
【特許文献2】特開平05−183189号公報
【特許文献3】特開平08−115880号公報
【特許文献4】特開2005−220436号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Shuji Nakamura et al. “Hole Compensation Mechanism of P-Type GaN film,” Jpn. Appl. Phys. Vol. 31 (1992) pp1258-1266, Part 1, No.5A, May 1992
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2及び3並びに非特許文献1に記載されているように、窒化ガリウム系半導体におけるp型活性化にはMgドーパントと水素とが密接に関係している。これらの文献には、Mgドーパントでのp型活性化のためのいくつかの手法が記載されている。
【0006】
現在、製品化されているMgドープ窒化物半導体発光素子では必然的に、窒化物半導体内に水素が残留している。この水素は、Mg−H結合を含む複合体の形態だけでなく、半導体結晶内に存在する格子欠陥にトラップされた原子状及び分子状の水素の形態としても窒化物半導体内に含まれる。また、水素を含む雰囲気では、外部から水素が発光素子の内部に侵入してくる可能性もあり、このような水素は、レーザ発振により高温になっている発光素子表面と反応することもあり得る。
【0007】
上記のように、水素は窒化物半導体素子が形成された後に半導体層内部に様々な状態で残留するため窒化物半導体素子の信頼性に係る課題に影響を及ぼしてくる。
【0008】
本発明は、上記の事情を鑑みて為されたものであり、素子寿命が短くなる一因である水素の移動を素子構造の改良によって制御した窒化物発光素子に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る窒化物発光素子は、(a)III族窒化物半導体からなる活性層と、(b)少なくとも前記活性層の2つの表面側に少なくとも1層以上の極性の異なるIII族窒化物半導体層と最も外側に有る2つのIII族窒化物半導体表面に各極性を呈する金属電極が構成されており、(c)少なくとも一方の側のIII族窒化物半導体はリッジ部を含む第1領域と該第1領域に沿って延在する第2領域とを有しており、前記活性層上に設けられたIII族窒化物半導体領域の上に設けられると共に、水素及びp型ドーパントを含み、(d)前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上に設けられ、水素化物を形成可能な材料からなる金属層と、(e)前記金属層に接合を成し、前記電極と前記金属層との間に設けられた誘電体層とを備える。前記電極は前記リッジ部の少なくとも上面に接触を成す。
本発明に係る窒化物発光素子は、(a)III族窒化物半導体からなる活性層と、(b)p型導電性のリッジ部を含む第1領域と該第1領域に沿って延在する第2領域とを有しており、水素及びp型ドーパントを含むIII族窒化物半導体領域と、(c)前記III族窒化物半導体領域の前記第1領域もしくは前記第1領域と前記第2領域の上に設けられる電極と、(d)前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上に設けられ、水素化物を形成可能な材料からなる金属層と、(e)前記金属層に接合を成し、前記電極と前記金属層との間に設けられた誘電体層とを備える。前記III族窒化物半導体領域は、前記活性層上に設けられる。前記電極は、前記リッジ部の少なくとも上面に接触を成す。
【0010】
この窒化物発光素子によれば、上記の如く金属層が第2領域上に設けられるが、この金属層は水素化物を形成可能な材料からなる。III族窒化物半導体領域は水素を含んでおり、移動する水素は金属層に到達すると吸蔵される。金属層が、第1領域のリッジ部と異なる第2領域上に設けられるので、移動する水素は、第1領域のリッジ部と電極との界面から離れた金属層に吸蔵される。さらに、電極が第1領域のリッジ部の上面に接触を成すと共にリッジがp型導電性を有するので、電極からの電流経路が提供される。また、電極の材料は、金属層の材料と独立して決定される。
【0011】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記金属層は、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上面に接触を成しており、前記遊離水素を有効に捕捉するため前記金属層と前記第2領域との接触面積は前記リッジ部の前記上面と前記電極との接触面積より大きいことが好ましい。
【0012】
また、この窒化物発光素子によれば、前記電極と前記半導体層との接触面積に限定されることなく、前記金属層と前記第2領域との接触面積をリッジ部の上面と電極との接触面積より大きいことが好ましい。
【0013】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記金属層は、前記第2領域のp型半導体領域に接触を成すことができる。この窒化物発光素子によれば、金属層は、p型半導体領域内のp型ドーパントと水素とが結合した複合物が、後工程、あるいは、素子として長期使用された場合での熱履歴によって分解した場合でも半導体層との界面を介して遊離する水素を捕獲できる。
【0014】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記III族窒化物半導体領域にはMgがドープされていることができる。この窒化物発光素子によれば、金属層は、p型半導体領域内のMg−H結合から水素が遊離した場合、それら水素を捕獲できる。
【0015】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記金属層は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pd及びこれらの少なくとも2種の元素からなる合金を含むことができる。この窒化物発光素子によれば、例示的に列挙された上記元素を含む金属及び合金が、水素吸蔵層のための金属層のために使用可能である。
【0016】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記誘電体層は前記電極と前記金属層との間に設けられ、前記誘電体層は、シリコン酸化膜、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、酸化ハフニウム、タンタル酸化物、強誘電体、及びポリイミド系有機物の少なくともいずれかを含むことが好適である。
【0017】
この窒化物発光素子によれば、誘電体層が電極と金属層との間に設けられるので、金属層内の水素が誘電体層を通して電極に到達しない。
【0018】
本発明に係る窒化物発光素子は、III族窒化物からなる支持基体と、前記支持基体の主面上に設けられたIII族窒化物半導体層とを更に備えることができる。前記III族窒化物半導体層はn型導電性を有し、前記活性層は前記III族窒化物半導体層と前記III族窒化物半導体領域との間に設けられる。また、本発明に係る窒化物発光素子では、前記支持基体の前記主面は前記III族窒化物のc軸に対して63度以上80度以下の範囲の角度で傾斜していることができる。
【0019】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記金属層は前記リッジ部の側面および、あるいは前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上面に接触を成し、前記誘電体層は前記金属層の上面を覆うと共に前記金属層と前記電極との電気的な絶縁状態が確保されるように前記リッジ部の側面に接触を成すことが好ましい。この窒化物発光素子によれば、前記金属層が前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上面に接触を成すとともに金属層側面がリッジ部の側面に接触を成すので、リッジ部の上面と電極との接触界面に到達する水素量を低減できる。
【0020】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記金属層は前記リッジ部の側面から離間しており、前記誘電体層は前記金属層の全面を覆うと共に前記リッジ部の側面に接触を成すことが好ましい。この窒化物発光素子によれば、半導体膜中の水素は、リッジ部の側面から離間した金属層に吸蔵される。このため、この金属層に向けて低くなる水素の濃度勾配が半導体膜中に形成される。
【0021】
本発明は、窒化物発光素子を作製する方法に係る。この方法は、(a)リッジ部を含む第1領域と該第1領域に沿って延在する第2領域とを有するIII族窒化物半導体領域と、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上に順に設けられた金属層及び誘電体層と、活性層とを含む基板生産物を作製する工程と、(b)前記III族窒化物半導体領域の前記第1領域の前記リッジ部の上面及び前記誘電体層の上に電極を形成する工程とを備える。前記電極は前記リッジ部の上面に接触を成し、前記III族窒化物半導体領域は前記活性層の上に形成されており、前記金属層は水素化物を形成可能な材料からなり、前記III族窒化物半導体領域は水素及びp型ドーパントを含む。
【0022】
この作製方法によれば、電極が第1領域のリッジ部の上面に接触を成すように形成されると共に、金属層が第2領域上に形成される。この金属層は水素化物を形成可能な材料からなる。III族窒化物半導体領域は水素を含有しているが、金属層に到達した水素は金属層に吸蔵、あるいは、界面近傍に捕捉停留させられる。金属層が、第1領域のリッジ部と異なる第2領域上に形成されるので、移動する水素は、第1領域のリッジ部と電極との界面から離間した金属層に格納されることになるか、あるいは、界面近傍に捕捉停留する。さらに、電極が第1領域のリッジ部の上面に接触を成すと共にリッジがp型導電性を有するので、電極からの電流経路が提供される。なお、電極の材料は金属層の材料と独立して決定される。
【0023】
本発明に係る作製方法では、基板生産物を作製する前記工程は、前記活性層の上方に、p型クラッド層のための第1III族窒化物半導体膜及びp型コンタクト層のための第2III族窒化物半導体膜を成長して、エピタキシャル基板を形成する工程と、前記エピタキシャル基板の主面の上に、リフトオフ法のためのマスクを形成する工程と、前記マスクを用いて前記第1及び第2III族窒化物半導体膜をエッチングして、前記III族窒化物半導体領域にリッジを形成する工程と、前記マスクを用いて前記III族窒化物半導体領域の上に順に前記金属層及び前記誘電体層を成長する工程と、リフトオフ法により前記マスクを除去して、前記基板生産物を形成する工程とを含むことができる。前記第1III族窒化物半導体膜及び前記第2III族窒化物半導体膜の各々はp型ドーパントを含み、前記III族窒化物半導体領域は、前記p型クラッド層及び前記p型コンタクト層を含み、前記金属層は前記p型クラッド層の上面に接触を成す。
【0024】
この作製方法によれば、リフトオフ及びエッチングのためのマスクを用いてリッジ部の位置を規定すると共に、このマスクを用いて、金属層及び誘電体層のための膜の堆積を行う。この堆積の後に、マスクを除去することによって、リッジ部に対して金属層及び誘電体層が自己整合的に作製される。
【0025】
本発明に係る作製方法では、前記金属層は前記リッジ部の側面に接触を成し、前記誘電体層は前記金属層の上面を覆うと共に前記リッジ部の側面に接触を成す。なお、前記誘電体層によって前記金属層と前記電極層とが電気的に絶縁性を確保される。
【0026】
本発明に係る作製方法では、前記金属層は、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上面に接触を成しており、前記基板生産物における前記第2領域と前記金属層との接触面積は前記基板生産物における前記リッジ部の前記上面と前記電極との接触面積より大きいことが好ましい。この作製方法によれば、電極と半導体層との接触面積に限定されることなく、金属層と第2領域との接触面積をリッジ部の上面と電極との接触面積の総和より大きくできる。
【0027】
本発明に係る作製方法では、前記III族窒化物半導体領域にはMgがドープされていることができる。この製造方法によれば、金属層は、p型半導体領域内のMg−H結合から遊離する水素を捕獲できる。
【0028】
本発明に係る作製方法では、前記金属層は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pd及びこれらの少なくとも2種の元素からなる合金を含むことができる。この作製方法によれば、例示的に列挙された上記元素を含む金属及び合金が金属層のために使用可能である。
【0029】
本発明に係る作製方法では、前記基板生産物は、III族窒化物からなる基板と、前記基板の主面上に成長されたIII族窒化物半導体層とを含み、前記活性層は、前記III族窒化物半導体層上に成長され、前記III族窒化物半導体層はn型導電性を有し、前記活性層は前記III族窒化物半導体層と前記III族窒化物半導体領域との間に設けられることができる。また、本発明に係る作製方法では、前記基板の前記主面は前記III族窒化物のc軸に対して63度以上80度以下の範囲の角度で傾斜していることが好ましい。
【0030】
本発明に係る作製方法では、前記誘電体層は前記電極と前記金属層との間に設けられ、前記誘電体層及び前記金属層は前記リッジ部に対して自己整合的に堆積されることができる。前記誘電体層は、シリコン酸化膜、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、酸化ハフニウム、タンタル酸化物、強誘電体及びポリイミド系有機物の少なくともいずれかを含む。この製造方法によれば、誘電体層が電極と金属層との間に設けられるので、金属層内の水素が誘電体層を通して電極に到達することはない。
【0031】
本発明に係る窒化物発光素子は、(a)III族窒化物半導体からなる活性層と、(b)少なくとも前記活性層の2つの主要なる表面側に各々少なくとも1層以上の極性の異なるIII族窒化物半導体層と最も外側に有る2つのIII族窒化物半導体表面に各極性を呈する金属電極が構成されており、(c)少なくとも一方の側のIII族窒化物半導体はリッジ部を含む第1領域と該第1領域に沿って延在する第2領域とを有しており、前記活性層上に設けられたIII族窒化物半導体領域と、(c)前記III族窒化物半導体領域の前記第1領域の前記リッジ部の上面に接触を成す電極と、(d)前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域上に設けられ水素化物を形成可能な材料からなる金属層と、(e)前記金属層上に設けられた多孔質陽極酸化アルミナ層とを備える。なお、前記III族窒化物半導体領域は水素及びp型ドーパントを含み、前記リッジ部はp型導電性を有する。
【0032】
この窒化物発光素子によれば、上記の如く金属層が第2領域上に設けられるが、この金属層は水素化物を形成可能な材料からなっているため、前記III族窒化物半導体の水素と相互作用を発現する。ところで、水素を含んでいる前記III族窒化物半導体領域ではその領域内を自由に移動できない水素(例えば、既に自由エネルギー的にも安定な水素化物となっている)とその領域内を自由に移動することが出来る原子状水素(すなわち、遊離水素)、半導体内に存在する結晶格子欠陥(例えば、転位など)にトラップ(捕捉)されている水素が存存する。これら水素は曝露されている環境(例えば、素子形成〜実装プロセス、使用環境、LD発振による温度上昇など)によって前記トラップされている水素のトラップサイトからの解放で、あるいは、さらに高温での熱履歴(例えば、実装時に数100℃以上に加熱されるなど)で前記水素化物の分解で遊離水素を発生することもある。これら遊離水素は前記III族窒化物半導体と前記金属層との界面を通して前記金属層でまず、吸収されるが、本発明ではさらに多孔質陽極酸化アルミナ層が前記金属層上に設けられているので、水素は、前記金属層内の水素量に関連した格子歪に起因する内圧に応じて原子状あるいは分子状水素として前記金属層から多孔質陽極酸化アルミナ層に移動する。ところで、前記金属層は、第1領域のリッジ部と異なる第2領域上に設けられているので、移動する水素は、第1領域のリッジ部領域と電極近傍から離れた前記金属層に捕捉、あるいは、界面近傍で捕捉停留させられる。一方、電極が第1領域のリッジ部の上面に接触して形成され、リッジがp型導電性を有することで、電極からリッジ部領域でのスムーズな電流経路が提供される。なお、電極の材料は、前記金属層の材料と独立して決定される。
【0033】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記金属層は、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上面に接触を成しており、前記遊離水素を有効に捕捉するため前記金属層と前記第2領域との接触面積は前記リッジ部の前記上面と前記電極との接触面積より大きいことが好ましい。
【0034】
また、この窒化物発光素子によれば、前記電極と前記半導体層との接触面積に限定されることなく、前記金属層と前記第2領域との接触面積をリッジ部の上面と電極との接触面積より大きいことが好ましい。
【0035】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記金属層は、前記第2領域のp型半導体領域に接触を成すことができる。この窒化物発光素子によれば、金属層は、p型半導体領域内のp型ドーパントと水素とが結合した複合物が後工程、あるいは、素子として長期使用された場合での熱履歴によって分解した場合でも半導体層との界面を介して遊離する水素を捕獲できる。
【0036】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記III族窒化物半導体領域にはMgがドープされていることができる。この窒化物発光素子によれば、金属層は、p型半導体領域内のMg−H結合から水素が遊離した場合、それら水素を捕獲できる。
【0037】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記金属層は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pdの金属及びこれらの金属の少なくとも2種以上の元素からなる合金を含むことができる。この窒化物発光素子によれば、例示的に列挙された上記元素を含む金属及び合金が、水素吸蔵層のための金属層のために使用可能である。
【0038】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記金属層は前記リッジ部の側面に接触を成し、更に、前記多孔質陽極酸化アルミナ層は前記金属層の上面を覆うと共に前記リッジ部の側面に接触を成すことができる。この窒化物発光素子によれば、前記多孔質陽極酸化アルミナ層が前記金属層の上面を覆うので、前記金属層からの水素の移動が効果的に可能となる。また、前記多孔質陽極酸化アルミナ層が前記リッジ部の側面に接触を成すので、前記金属層を保護でき、また前記金属層を電極から分離できる。
【0039】
本発明に係る窒化物発光素子は、III族窒化物からなる支持基体と、前記支持基体の主面上に設けられたIII族窒化物半導体層とを更に備えることができる。前記III族窒化物半導体層はn型導電性を有し、前記活性層は前記III族窒化物半導体層と前記III族窒化物半導体領域との間に設けられる。また、本発明に係る窒化物発光素子では、前記支持基体の前記主面は前記III族窒化物のc軸に対して63度以上80度以下の範囲の角度で傾斜していることができる。
【0040】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記多孔質陽極酸化アルミナ層は非貫通タイプであることが好ましい。この窒化物発光素子によれば、非貫通タイプは、容易に作製可能であり、金属層との接合界面部はアルミナバリヤー層を挟むことになるがこのアルミナバリヤー層は高々数nmから数十nm厚であるために原子状水素は金属層から透過することができるため主たる水素移動の障壁とはならない、また水素の吸収する金属層からの水素を回収可能な多数のナノホールを有し、ナノホールの総表面積が大きいため、前記内圧開放にともなう水素の移動には有効となる。
【0041】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記多孔質陽極酸化アルミナ層は貫通タイプであることが好ましい。この窒化物発光素子によれば、貫通タイプは、水素の吸収する前記金属層からの水素を前記多孔質陽極酸化アルミナ層内のナノホールを介して前記金属層及び前記多孔質陽極酸化アルミナ層の外に排出でき、優れた排出能を有する。また、素子によって発生される熱の放散能も高い。なお、本発明に係る窒化物発光素子では、前記多孔質陽極酸化アルミナ層が非貫通タイプおよび貫通タイプのいずれでも良い。但し、素子寿命の長期化に対する有効性は前者よりも後者の方が相乗効果の観点からより好ましい。すなわち、前記多孔質陽極酸化アルミナ層の内、非貫通、貫通のいずれのタイプでも金属層における水素捕捉反応で発生する反応熱を多孔質に基づく冷却能によりヒートシンクとして作用し、素子温度上昇を緩和することが出来る。さらに、貫通タイプの多孔質陽極酸化アルミナ層の場合、金属層と多孔質陽極酸化アルミナ層の界面を通して、金属層上面の水素移動による内圧を開放する作用で水素の多孔質陽極酸化アルミナ層への移動を可能とする。この様にして非貫通および貫通タイプの多孔質陽極酸化アルミナ層は金属層と連携して前記窒化物半導体領域における遊離水素を除去することで、素子寿命の長期化を促進することが出来る。
【0042】
本発明は、窒化物発光素子を作製する方法に係る。この方法は、(a)リッジ部を含む第1領域と該第1領域に沿って延在する第2領域とを有するIII族窒化物半導体領域と、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域上に順に設けられた金属層及びアルミニウム層とを含む基板生産物を作製する工程と、(b)前記アルミニウム層を陽極酸化法により処理して、前記金属層上に多孔質陽極酸化アルミナ層を形成する工程と、(c)前記III族窒化物半導体領域の前記第1領域の前記リッジ部の上面に接触を成す電極を形成する工程とを備える。前記基板生産物において、前記III族窒化物半導体領域は活性層上に形成されており、前記金属層は水素化物を形成可能な材料からなり、前記III族窒化物半導体領域は水素及びp型ドーパントを含む。
【0043】
この作製方法によれば、第1領域のリッジ部の上面に接触を成す電極を形成可能である一方で、基板生産物において、III族窒化物半導体領域の第2領域上に順に設けられた金属層及びアルミニウム層を陽極酸化法により処理して、金属層上に多孔質陽極酸化アルミナ層を形成できる。これ故に、金属層が、第1領域のリッジ部と異なる第2領域上に設けられる。この金属層は水素化物を形成可能な材料からなる。III族窒化物半導体領域は水素を含んでおり、移動する水素は金属層に捕捉される。多孔質陽極酸化アルミナ層が金属層上に設けられているので、水素は、金属層内の水素量に応じて金属層から多孔質陽極酸化アルミナ層に移動可能である。金属層が、第1領域のリッジ部と異なる第2領域上に設けられるので、移動する水素は、第1領域のリッジ部と電極との界面から離れた金属層に捕捉される。さらに、電極が第1領域のリッジ部の上面に接触を成すと共にリッジがp型導電性を有するので、電極からの電流経路が提供される。電極の材料は、金属層の材料と独立して決定される。
【0044】
本発明に係る作製方法では、基板生産物を作製する前記工程は、前記活性層上に、p型クラッド層のための第1III族窒化物半導体膜及びp型コンタクト層のための第2III族窒化物半導体膜を成長して、エピタキシャル基板を形成する工程と、前記エピタキシャル基板の主面上に、リフトオフ法のためのマスクを形成する工程と、前記マスクを用いて前記第1及び第2III族窒化物半導体膜をエッチングして、前記III族窒化物半導体領域を形成する工程と、前記マスクを用いて前記III族窒化物半導体領域上に順に前記金属層及び前記アルミニウム層を成長する工程と、リフトオフ法により前記マスクを除去して、前記基板生産物を形成する工程とを含むことができる。前記第1III族窒化物半導体膜及び前記第2III族窒化物半導体膜の各々はp型ドーパントを含み、前記III族窒化物半導体領域は、前記p型クラッド層及び前記p型コンタクト層を含み、前記金属層は前記p型クラッド層の上面に接触を成すことができる。
【0045】
この作製方法によれば、リフトオフ及びエッチングのためのマスクを用いてリッジ部の位置を規定すると共に、このマスクを用いて、金属層及びアルミニウム層のための膜の堆積を行う。この堆積の後に、マスクを除去して、さらにアルミニウム層から多孔質陽極酸化アルミナ層を形成する。これ故に、リッジ部に対して金属層及び多孔質陽極酸化アルミナ層が自己整合的に作製される。
【0046】
本発明に係る作製方法では、前記金属層は前記リッジ部の側面に接触を成し、前記多孔質陽極酸化アルミナ層は前記金属層の上面を覆うと共に前記リッジ部の側面に接触を成す。
【0047】
本発明に係る作製方法では、前記金属層は、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上面に接触を成しており、前記基板生産物における前記第2領域と前記金属層との接触面積は前記基板生産物における前記リッジ部の前記上面と前記電極との接触面積より大きいことが好ましい。この作製方法によれば、電極と半導体層との接触面積に限定されることなく、金属層と第2領域との接触面積をリッジ部の上面と電極との接触面積の総和より大きくできる。
【0048】
本発明に係る作製方法では、前記III族窒化物半導体領域にはMgがドープされていることができる。この製造方法によれば、金属層は、p型半導体領域内のMg−H結合から遊離する水素を捕捉できる。
【0049】
本発明に係る作製方法では、前記金属層は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pdの金属及びこれらの金属の少なくとも2種以上の元素からなる合金を含むことができる。この作製方法によれば、例示的に列挙された上記元素を含む金属及び合金が金属層のために使用可能である。
【0050】
本発明に係る作製方法では、前記基板生産物は、III族窒化物からなる基板と、前記基板の主面上に成長されたIII族窒化物半導体層とを含み、前記活性層は、前記III族窒化物半導体層上に成長され、前記III族窒化物半導体層はn型導電性を有し、前記活性層は前記III族窒化物半導体層と前記III族窒化物半導体領域との間に設けることができる。また、本発明に係る作製方法では、前記基板の前記主面は前記III族窒化物のc軸に対して63度以上80度以下の範囲の角度で傾斜していることが好ましい。
【0051】
本発明に係る窒化物発光素子は、(a)III族窒化物半導体層を含む活性層と、(b)リッジ部を含む第1領域と該第1領域に沿って延在する第2領域とを有しており、前記活性層上に設けられたIII族窒化物半導体領域と、(c)前記III族窒化物半導体領域の前記第1領域の前記リッジ部の上面に接触を成す電極と、(d)前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域上に設けられた電流ガイド領域とを備える。前記III族窒化物半導体領域はp型ドーパントを含み、前記リッジ部はp型導電性を有し、前記電流ガイド領域は、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域上に設けられた水素吸蔵層と、前記水素吸蔵層上に設けられた多孔質陽極酸化アルミナ層とを含む。
【0052】
この窒化物発光素子によれば、電極が第1領域のリッジ部の上面に接触を成すと共に、金属層が第2領域上に設けられる。この金属層は水素化物を形成可能な材料からなる。III族窒化物半導体領域は水素を含んでおり、移動する水素は金属層に捕捉される。多孔質陽極酸化アルミナ層が金属層上に設けられているので、反応熱、素子動作熱の冷却効果とともに、貫通タイプの多孔質陽極酸化アルミア層の場合では、水素の移動可能な経路が与えられる。このため、水素は、金属層内の水素量に応じて金属層から多孔質陽極酸化アルミナ層に移動可能である。金属層が、第1領域のリッジ部と異なる第2領域上に設けられるので、半導体中を移動する水素は、第1領域のリッジ部と電極との界面から離れた金属層に捕捉される。さらに、電極が第1領域のリッジ部の上面に接触を成すと共にリッジがp型導電性を有するので、電極からの電流経路が提供される。なお、電極の材料は、金属層の材料と独立して決定される。
【0053】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記電極は前記電流ガイド領域上に設けられることができる。当該発光素子は、前記電極及び前記電流ガイド領域上に設けられたパッド電極を更に備えることができる。また、本発明に係る窒化物発光素子では、パッド電極は、前記多孔質陽極酸化アルミナ層上に設けることができる。さらに、本発明に係る窒化物発光素子では、前記電流ガイド領域は多孔質陽極酸化アルミナ層上に設けられた誘電体層を更に備えることができる。また、パッド電極は、前記誘電体層上に設けることができる。
【発明の効果】
【0054】
以上説明したように、本発明によれば、素子寿命の短縮を改善できる窒化物発光素子が提供される。また、本発明によれば、水素の移動による素子寿命の短縮を改善できる窒化物発光素子を作製する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本実施の形態に係る窒化物発光素子の構造を概略的に示す図面である。
【図2】図2は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を示す図面である。
【図3】図3は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を示す図面である。
【図4】図4は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【図5】図5は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【図6】図6は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【図7】図7は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【図8】図8は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【図9】図9は、本実施の形態に係る窒化物発光素子の構造を概略的に示す図面である。
【図10】図10は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を示す図面である。
【図11】図11は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を示す図面である。
【図12】図12は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【図13】図13は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【図14】図14は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【図15】図15は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【図16】図16は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、窒化物発光素子、及び窒化物発光素子を作製する方法に係る本発明の実施形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付す。
【0057】
(第1の実施形態)図1は、本実施の形態に係る窒化物発光素子の構造を概略的に示す図面である。窒化物発光素子の構造は例えば半導体レーザに好適な構造を有するが、本実施の形態は半導体レーザに限定されるものではない。図1の(a)部に示されるように、窒化物発光素子11は、III族窒化物半導体領域13と、活性層15と、電極17と、金属層19と、誘電体層21とを備える。図1の(b)部に示されるように、金属層19及び誘電体層21は、絶縁層を含む電流ガイド領域23に含まれる。III族窒化物半導体領域13は、活性層15上方に設けられ、また第1領域13a及び第2領域13bを含む。第2領域13bは第1領域13aに沿って延在する。第1領域13aはリッジ部を含み、リッジ部はp型導電性を有する。第1領域13aの厚さT13aは第2領域13bの厚さT13bより大きい。III族窒化物半導体領域13は、意図的に添加されたp型ドーパントを含み、また成膜原料中に含まれ意図的に添加されるものではない水素を含む。電極17は、III族窒化物半導体領域13の第1領域13aのリッジ部の上面13cに接触JC1を成す。活性層15はIII族窒化物半導体からなる。金属層19はIII族窒化物半導体領域13の第2領域13b上に設けられる。金属層19は、水素化物を形成可能な材料からなるので、水素吸蔵層として働く。また、誘電体層21は、金属層19上に設けられる。電流ガイド領域23は第2領域13b上に位置し、またリッジ構造の第1領域13aに電流をガイドする。
【0058】
この窒化物発光素子11によれば、電極17が第1領域13aのリッジ部の上面13cに接触を成すと共に、金属層19が第2領域13b上に設けられる。この金属層19は水素化物を形成可能な材料からなる。III族窒化物半導体領域13は水素を含んでおり、環境条件に応じて移動して金属層19に到達した水素は、金属層19に吸蔵される。誘電体層21が金属層19上に設けられているので、水素は、金属層19内の水素量に応じて金属層19から誘電体層21に実質的に移動できない。金属層19が、第1領域13aのリッジ部と異なる第2領域13b上に設けられるので、半導体中を移動する水素は、第1領域13aのリッジ部と電極17との界面から隔置された金属層19に格納される。さらに、電極17が第1領域13aのリッジ部の上面13cに接触を成すと共にリッジ部がp型導電性を有するので、電極17からの電流経路が提供される。電極17の材料は、金属層19の材料と独立して決定される。
【0059】
本実施例では、電極17は、リッジ構造上面13cに接触(オーミック接触)JC1を成すだけでなく、電流ガイド領域23の主面23aに接合JC2を成す。電極17上には、パッド電極18が設けられている。図1の(a)部を参照すると、パッド電極18は誘電体層21の上面に接合を成している。
【0060】
窒化物発光素子11は、III族窒化物半導体領域25を備える。III族窒化物半導体領域25は、意図的に添加されたn型ドーパントを含む部分を有し、n型導電性を有する。
【0061】
窒化物発光素子11は支持基体27を備える。支持基体27は、例えばIII族窒化物からなることができる。このIII族窒化物としては、GaN,AlGaN,InGaN,InAlGaNといった窒化ガリウム系半導体やAlNを用いることができ、またInXAlYGa1−X−YN(0≦X≦1、0≦Y≦1)を用いることができる。さらに、支持基体27は、例えばInAlGaN系,サファイア系,SiC等からなることができる。
【0062】
III族窒化物半導体領域25は支持基体27の主面27a上に設けられる。III族窒化物半導体領域25は例えばn型クラッド層を含み、n型クラッド層は例えばn型III族窒化物半導体、好ましくはn型AlGaN,n型InAlGaNといったn型窒化ガリウム系半導体等からなることができる。また、支持基体27の裏面27b上には電極43が設けられる。電極43が例えばカソードであるとき、電極17が例えばアノードである。
【0063】
III族窒化物半導体領域25上には、発光層29が設けられる。発光層29は活性層15を含む。発光層29は、必要な場合には、活性層15とIII族窒化物半導体領域25との間にIII族窒化物半導体、好ましくは窒化ガリウム系半導体からなる一又は複数の半導体層を含むことができ、該半導体層は例えば光ガイド層31として働く。また、発光層29は、必要な場合には、活性層15とIII族窒化物半導体領域13との間にIII族窒化物半導体、好ましくは窒化ガリウム系半導体からなる一又は複数の半導体層を含むことができ、該半導体層は例えば電子ブロック層(例えばAlGaN等)33や光ガイド層(例えばGaN、InGaN、InAlGaN等)35として働く。活性層15は少なくとも1層以上の井戸層15aを含むことができ、井戸層15aはインジウムを含むIII族窒化物半導体、例えばInGaN等からなることができる。また、活性層15は障壁層15bを含むことができ、障壁層15bは窒化ガリウム系半導体、例えばGaN,InGaN等からなることができ、その井戸層と障壁層とでSQW、MQW構造をとることが出来る。障壁層15bのバンドギャップは井戸層15aのバンドギャップより大きく、MQWの場合では井戸層15a及び障壁層15bは交互の配列されている。III族窒化物半導体領域25、発光層29(活性層15)及びIII族窒化物半導体領域13は、支持基体27の主面27aの法線方向に順に配列されている。
【0064】
窒化物発光素子11では、支持基体27の主面27aは、極性面、半極性面及び無極性面のいずれにも適用可能である。また、窒化物発光素子11の一実施例では、支持基体27の主面27aは該主面27aのIII族窒化物のc軸に対して63度以上80度以下の範囲の角度で傾斜していることができる。この窒化物発光素子によれば、半極性及び無極性であるため、ピエゾ効果による発光効率低下を抑制することが出来、特に、青紫波長以上での素子特性向上を求める上では有効である。
【0065】
III族窒化物半導体領域13はp型半導体からなっており、例えばp型クラッド層(例えばAlGaN,InAlGaN等)37を含むことができ、またp型コンタクト層(例えばGaN,AlGaN,InAlGaN等)39を含むことができる。III族窒化物半導体領域13にはMgがドープされていることができる。金属層19は、p型半導体領域内のMg−H結合から遊離する水素を捕獲できる。
【0066】
金属層19は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pd及びこれらの少なくとも2種の元素からなる合金を含むことができる。これら例示的に列挙された上記元素を含む金属及び合金が金属層19のために使用可能である。例えば、金属層19の厚さの下限は、例えば金属層19を構成する元素の原子半径の10倍程度と見積もられ、この厚さによって成膜の組織が安定する。下地が十分に平坦であるとき、例えば金属層19がパラジウム(原子半径:0.14nm)を用いると、この金属層19の厚さの下限は1nm程度となる。様々な見積もりから、金属層19の厚さは10オングストローム(1.0nm)以上であることができる。
【0067】
金属層19は、第2領域13bのp型半導体領域に接触を成す。p型半導体領域内のp型ドーパントと水素とが結合した複合物から遊離する水素は金属層に捕捉される。金属層19は、p型半導体領域表面に接触を成す。このp型半導体領域表面の表面粗さRaは3nm以上であることが好ましく、接触表面積を大きく確保できるため遊離水素の除去効率を上げることができる。また、p型半導体領域表面の表面粗さRaは20nm以下であることが好ましく、リッジ形成のドライエッチングの際に表面粗さを調整して、半導体層と金属層との密着性を確保できる。また、金属層19の厚さの下限は、p型半導体領域表面の表面粗さRaより大きく、この粗さの値に加えて1nm以上あることができる。
【0068】
金属層19は、III族窒化物半導体領域13の第2領域13bの上面13dに接触を成しており、金属層19と第2領域13bとの接触面積は第1領域(リッジ部)13aの上面13cと電極17との接触面積より大きいことが好ましい。この窒化物発光素子11によれば、電極17と半導体面13cとの接触面積に限定されることなく、金属層19と第2領域13bとの接触面積をリッジ部上面13cと電極17との接触面積より大きくできる。この接触面積は、例えば走査型電子顕微鏡等を用いて寸法を測定することにより特定される。
【0069】
金属層19は第1領域13aのリッジ部側面に接触を成し、誘電体層21は金属層19の上面19aを覆うと共に第1領域13aのリッジ部側面に接触を成すことができる。誘電体層21が金属層19の上面19aを覆うので、金属層19から効率的に水素が移動でき、移動した水素の吸蔵が効果的に可能になる。また、誘電体層21がリッジ部側面に接触を成すので、金属層19を保護でき、また電極17から金属層19を電気的に分離できる。例えば、誘電体層21の厚さは1.0nm以上であることができ、誘電体層21の厚さは誘電体層の上面がリッジを有する前記III族窒化物半導体層のリッジ上面と面一が望ましいが、少なくとも前記金属層19と電極とが絶縁される厚さであることができる。
【0070】
III族窒化物半導体領域13の第2領域13bの上面13dに接触を成すように水素吸蔵層を形成するプロセスを行った後に室温と高温(室温より高い温度)との間の温度履歴があるとき、半導体中に様々な形態でトラップされていた水素が遊離する可能性がある。このとき、水素吸蔵層は、到来する水素をその飽和レベルまで取り込み、水素吸蔵層に体積膨張が生じるが、水素吸蔵層内に水素の濃度勾配があると、水素は濃度勾配が層内で無くなるように内部拡散するため金属層全体で体積膨張を吸収するため素子が破壊することは無い。III族窒化物半導体領域13および水素吸蔵層の温度が低下すると、III族窒化物半導体領域13ではその温度に応じて遊離水素量自体が減少するため素子機能は維持される。したがって、第2領域13bの上面13dに接触を成す水素吸蔵層は、以下の説明に示されるように長期信頼性に係る水素の振る舞いを抑制することに有効であるが、半導体発光素子11の作製工程において移動する水素にも有効である。
【0071】
誘電体層21は電極17と金属層19との間に設けられ、誘電体層21は、シリコン酸化膜(例えばSiO2)、シリコン窒化物(例えばSi3N4)、シリコン酸窒化物(例えばSiON)、酸化ハフニウム(例えばHfO2)、タンタル酸化物(例えばTa2O5)、強誘電体(PZT、BST)、ポリイミド系有機物、及びフッソ化合物の少なくともいずれかを含むことが好適である。この窒化物発光素子11によれば、誘電体層21が電極17と金属層19との間に設けられるので、金属層19内の水素が誘電体層21を通して電極に到達しない。例えばSiO2といった誘電体層21に外部電圧が印加されるとき、10ボルト以上の絶縁耐圧を越えるためには、少なくとも50nm程度(絶縁破壊強度を2×106V/cmと仮定)である。
【0072】
強誘電体のPZTは、例えばPb(Zr、Ti)O3として表され、強誘電体のBSTはBa0.8Sr0.2TiO3として表される。
【0073】
図1の(b)部に示されるように、電流ガイド領域23は、誘電体層21を含むことができる。誘電体層21の水素の拡散係数は、金属層19内の水素の拡散係数より極端に小さい。また、誘電体層21は、金属層19より大きな抵抗率を有し、より好ましくは絶縁性を有する。金属層19及び誘電体層21の合計厚みがリッジ部の高さに合うように、金属層19及び誘電体層21の少なくともいずれか一方の厚さを調整することができる。必要な場合には、電流ガイド領域23に、別の誘電体層を追加することができる。例えばこの誘電体層の材料を選択して、該誘電体層と電極17との密着性を誘電体層21と電極17との密着性よりも良好なものとすることができる。
【0074】
電流ガイド領域23の厚さをリッジ部の高さに合わせるためには、金属層19の厚さはリッジ部の高さより小さく、また誘電体層21の厚さはリッジ部の高さより小さい。
【0075】
金属層19は、以下のような水素に対して効果を有する。(1)半導体発光素子11の製造のための工程が完了した時点で、半導体発光素子11内のp型半導体領域に残留している原子状又は分子状の遊離水素。なお、製造工程において水素を含有する雰囲気下で半導体発光素子11のp型半導体領域が暴露している場合では、p型半導体領域表面における水素は、熱力学的には暴露表面を通して溶解する水素量が暴露雰囲気の水素分圧の平方根に比例するジーベルトの法則(Sievert‘s law)に従って進入する。(2)半導体発光素子11が市場に流通した後に長期に使用されて、その動作に伴って半導体発光素子11内のトラップサイトにトラップされている原子状又は分子状の水素。この水素は、使用温度では解離しないMg−H複合体の水素ではなく、例えば、安定な水素複合体を形成しない不純物元素や転位などの結晶格子欠陥によりトラップされている。(3)半導体発光素子11が市場に流通した後に使用される環境により、素子外部から素子内に侵入してくる原子状水素。この水素は、熱力学的には高温雰囲気で暴露表面を通して溶解する水素量が暴露雰囲気の水素分圧の平方根に比例するジーベルトの法則(Sievert’s law)に従う。
【0076】
半導体発光素子11内に残留する水素は、素子の信頼性に係る事項に関連している。原子状水素は、半導体中を容易に拡散して移動できるので、電極内や電極界面での劣化の他に、素子を構成する半導体層界面のトラップサイトに捕獲されて、原子状水素が集積されて分子状水素を形成となりうる。この分子状水素は界面欠陥を形成して、素子の性能劣化を引き起こすと共に、性能劣化を進行させる。
【0077】
上記のような水素を捕獲するためには、半導体層に接触を成す金属層19は有用である。また、半導体領域13と金属層19との接合は、電極17と半導体面13cとの接触のように電気的特性を満たすように規定されるものと異なり、この接触に比べて広く、半導体からの水素の移動に好適である。また、金属層19がリッジ部と異なる半導体層に接触を成すので、電極と半導体領域との接合と異なる領域で水素を吸蔵できる。
【0078】
半導体発光素子11の長期間にわたる使用又は連続動作を行うとき、種々の理由により、半導体発光素子11内に遊離水素が発生する。上記の説明から理解されるように、半導体に直接に接触を成す金属層19は、半導体発光素子11の半導体内を移動する水素量を減少させることができる。
【0079】
図2及び図3は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を示す図面である。
【0080】
工程S101では、図4の(a)部に示されるように、成長炉10aを用いてエピタキシャル基板Eを作製する。成長炉10aでは、例えば有機金属気相成長法でIII族窒化物半導体の成膜が行われる。この成膜では、III族窒化物半導体に有機金属気相成長の原料に起因する水素が取り込まれる。工程S102では、基板51を準備する。この基板51は例えばIII族窒化物からなる主面51aを有することができる。工程S103では、有機金属原料及びn型ドーパントガスを成長炉10aに供給しながら、n導電性のIII族窒化物半導体領域53を基板51の主面51a上に成長する。III族窒化物半導体領域53は、一又は複数のIII族窒化物半導体層を含み、例えばn型クラッド層を含むことができる。n型ドーパントは例えばシリコンを含むことができる。
【0081】
引き続く工程では、n型III族窒化物半導体領域53上に発光層55を成長する。発光層55の作製では、工程S104では、有機金属原料を成長炉10aに供給しながらn側の光ガイド層を第1導電型III族窒化物半導体領域53上に成長する。工程S105では、有機金属原料を成長炉10aに供給しながら、この光ガイド層上に活性層を成長する。活性層の成長では、工程S106において有機金属原料を成長炉10aに供給しながら障壁層を成長すると共に、工程S107において有機金属原料を成長炉10aに供給しながら井戸層を成長する。なお、MQWの場合では必要に応じて、障壁層及び井戸層の成長を繰り返す。工程S108及びS109において、有機金属原料を成長炉10aに供給しながら電子ブロック層及びp側の光ガイド層を成長する。
【0082】
工程S110では、有機金属原料及びp型ドーパントガスを成長炉10aに供給しながらIII族窒化物半導体領域57を発光層55の主面上に成長する。III族窒化物半導体領域57は水素及びp型ドーパントを含む。p型のIII族窒化物半導体領域57の成膜では、工程S111において、発光層55の主面上にp型クラッド層のための第1III族窒化物半導体膜を成長すると共に、工程112において、この第1III族窒化物半導体膜上にp型コンタクト層のための第2III族窒化物半導体膜を成長して、エピタキシャル基板Eを形成する。p型ドーパントは例えばマグネシウムを含むことができるが、この場合、これらのp型半導体領域にはMg−H結合を有する複合体が含まれる。
【0083】
エピタキシャル基板Eを成長炉10aから取り出した後に、工程S113では、基板生産物を作製する。このために、工程S114では、リッジ形成のためのマスクをエピタキシャル基板Eの主面上に形成する。このマスクの形成のために、まず、図4の(b)部に示されるように、エピタキシャル基板Eの主面上に、第1の金属マスク膜59、第2の金属マスク膜61及び絶縁膜63を順に成長した後に、リッジ構造の幅及び向きを規定するレジストマスクM1を絶縁膜63上に形成する。第1の金属マスク膜59は例えばMo,Tiであり、第2の金属マスク膜61は例えばAlであり、絶縁膜63は例えばシリコン酸化物である。次いで、図5の(a)部に示されるように、レジストマスクM1を用いて第1の金属マスク膜59、第2の金属マスク膜61及び絶縁膜63を順にエッチングして、マスクM2を形成する。マスクM2は、第1の金属マスク層59a、第2の金属マスク層61a及び絶縁層63aを含み、これらの層59a,61a,63aはエピタキシャル基板Eの主面上に順に配列される。マスクM2を形成した後に、レジストマスクM1を除去することができる。
【0084】
工程S115では、図5の(b)部に示されるように、マスクM2を用いてp型III族窒化物半導体領域57を処理装置10bでドライエッチングして、エッチングされたIII族窒化物半導体領域65を形成する。III族窒化物半導体領域65は、第1領域65a及び第2領域65bを含む。第2領域65bは、軸Axの方向に延在する第1領域65aに沿って設けられる。第1領域65aはリッジ部を含み、リッジ部はp型導電性を有する。第1領域65aの厚さは第2領域65bの厚さより大きい。III族窒化物半導体領域65は、意図的に添加されたp型ドーパントを含み、また有機金属原料、あるいは、製造工程に起因した水素を含む。基板51の主面51aの延在方向に、第1領域65a及び第2領域65bが交互に配列されており、この配列は軸Axの方向と交差する方向に成る。一素子分の素子幅では、リッジ構造を含む単一の第1領域65aが第2領域65bの間に設けられる。リッジ部上面65c上には、マスクM2が残されている。
【0085】
工程S115では、必要な場合、図6の(a)部に示されるように、処理装置10cにおいて第1の金属マスク層59aを第2の金属マスク層61a及び絶縁層63aに対して選択的にエッチングして、第1の金属マスク層59bを形成する。このエッチングは、例えばRIEを用いた等方性エッチングにより可能である。第1の金属マスク層59b、第2の金属マスク層61a及び絶縁層63aからなるマスクを引き続き、マスクM2として参照する。
【0086】
引き続き、工程S116では、図6の(b)部に示されるように、マスクM2を用いて処理装置10dで水素吸蔵層67を成長する。水素吸蔵層67は、マスクM2上に成長された第1部分67aと、III族窒化物半導体領域65の第2領域65b上に成長された第2部分67bとを含む。マスクM2の高さにより、第1部分67aは第2部分67bから分離されている。水素吸蔵層67は、水素化物を形成可能な金属層を含むことができる。水素吸蔵層67は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pd及びこれらの少なくとも2種の元素からなる合金を含むことができる。これら例示的に列挙された上記元素を含む金属及び合金が水素吸蔵層67のために使用可能である。
【0087】
工程S117では、図7の(a)部に示されるように、マスクM2を用いて処理装置10eで誘電体層69を成長する。誘電体層69は、マスクM2上に成長された第1部分69aと、III族窒化物半導体領域65の第2領域65b上に成長された第2部分69bとを含む。マスクM2の厚さにより、第1部分69aは第2部分69bから分離されている。例えば、誘電体層69の厚さは1.0nm以上であることができ、誘電体層69の厚さは誘電体層の上面がリッジを有する前記III族窒化物半導体層のリッジ上面と面一が望ましいが、少なくとも前記金属層19と電極とが絶縁される厚さであることができる。誘電体層69は、例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、酸化ハフニウム、タンタル酸化物、強誘電体等であることができる。これらの成膜は例えば真空蒸着法、スパッタ蒸着法、プラズマPVD、CVD、等、殆ど現在、汎用となっている方法を適用することができる。
【0088】
水素吸蔵層67及び誘電体層69の総厚は、リッジ部の高さに合わすように決定されることが好ましい。また、必要な場合には、誘電体層69を成長した後に、誘電体層69上に別の誘電体層を更に成長することができる。この形態では、水素吸蔵層67、誘電体層69及び別の誘電体層の総厚は、リッジ部の高さに合わすように決定されることが好ましい。
【0089】
これらの工程S116及びS117の後に、図7の(b)部に示されるように、工程S118においてリフトオフ法によりマスクM2を処理装置10fで除去して、基板生産物SP1を作製する。これによりマスクM2上に順に設けられた水素吸蔵層67の部分67a及び誘電体層69の部分69aは消失する。基板生産物SP1は、III族窒化物半導体領域65の第2領域65b上に順に設けられた水素吸蔵層67の部分67b(引き続く説明では「水素吸蔵層67b」として参照する)及び誘電体層69の部分69b(引き続く説明では「誘電体層69b」として参照する)を含む。
【0090】
この作製方法によれば、リフトオフ及びエッチングのためのマスクM2を用いてリッジ部の位置を規定すると共に、このマスクM2を用いて、水素吸蔵層67bのための膜及び誘電体層69bのための膜の堆積を行う。この堆積の後に、マスクM2を除去して、誘電体層を形成する。これ故に、リッジ部に対して水素吸蔵層67b及び誘電体層が自己整合的に作製される。水素吸蔵層67b及び誘電体層は電流ガイド領域を構成する。
【0091】
リフトオフ法による作成では、誘電体層69は、既に説明したように、シリコン酸化膜、シリコン窒化物、及びシリコン酸窒化物といったシリコン系無機化合物、酸化ハフニウム及びタンタル酸化物といった金属酸化物、並びに強誘電体の少なくともいずれかを含むことが好適である。また、誘電体層69としてポリイミド系有機物を用いることができる。このときは、例えばスパッタ蒸着法を用いることができる。
【0092】
工程S119では、図8の(a)部に示されるように、III族窒化物半導体領域65の第1領域65aのリッジ部の上面65cに接合C1を成すアノード電極71を形成する。アノード電極71としては、Au,Ni,Pd、In,Pt,Al,Sn等の単一金属、あるいはこれらの合金を用いることができる。また、図8の(b)部に示されるように、電極71及び電流ガイド領域上に設けられたパッド電極73及び、基板51の裏面51bにカソード電極を形成できる。この作製方法によれば、誘電体層69が電極71、73と金属層67との間に設けられるので、誘電体層69を作製した後には、製造工程中において金属層67内の水素が誘電体層69を通して電極に到達しない。
【0093】
この作製方法によれば、第1領域65aのリッジ部上面65cに接触を成す電極71を形成可能である一方で、基板生産物において、III族窒化物半導体領域65の第2領域65b上に設けられた絶縁性の誘電体層69bを利用して、水素吸蔵層67b上に電流ガイド領域を形成できる。水素吸蔵層67bは水素化物を形成可能な材料からなる。III族窒化物半導体領域65は水素を含んでおり、水素吸蔵層67bが、第1領域65aのリッジ部と異なる第2領域65bに接合C2を成す。これ故に、移動する水素は水素吸蔵層67bに吸蔵される。誘電体層69bが水素吸蔵層67bに接合C3を成すように設けられている。水素吸蔵層67bが、第1領域65aのリッジ部と異なる第2領域65b上に設けられるので、移動する水素は、リッジ部上面65cと電極73との接合(界面)C1から離間した水素吸蔵層67bに引き付けられて格納される。さらに、電極71がリッジ部上面65cに接触を成すと共にリッジがp型導電性を有するので、電極71からの電流経路が提供される。電極71の材料は水素吸蔵層67bの材料と独立して決定される。また、第2領域65aと水素吸蔵層67bとの接触面積の総和はリッジ部上面65cと電極71との接触面積の総和より大きい。
【0094】
以上説明したように、絶縁性の誘電体層下に水素吸蔵金属を設けることにより、長期CW発振においてp型クラッド層内に生成されるMg−H複合物から遊離した水素、及び下部半導体層からの水素拡散に由来する原子状水素を誘電体層下の水素吸蔵金属が吸収する。さらに、水素吸蔵金属において水素吸蔵により起こる水素吸蔵金属内部の濃度分布形成が起因となって、原子状水素がさらに水素吸蔵金属内を移動する。p型コンタクト層への水素原子流入がさらに長期間にわたって抑制可能となり、また、マグネシウムと水素との再結合確率を低減でき、安定なp型オーミック接触を維持できる。その結果、素子寿命が延びる。
【0095】
(第2の実施形態)図9は、本実施の形態に係る窒化物発光素子の構造を概略的に示す図面である。窒化物発光素子の構造は例えば半導体レーザに好適な構造を有するが、本実施の形態は半導体レーザに限定されるものではない。図9の(a)部に示されるように、窒化物発光素子11−1は、III族窒化物半導体領域13−1と、活性層15−1と、電極17−1と、金属層19−1と、多孔質陽極酸化アルミナ層21−1とを備える。図9の(b)部及び(c)部に示されるように、金属層19−1及び多孔質陽極酸化アルミナ層21−1は、絶縁層を含む電流ガイド領域23−1に含まれる。III族窒化物半導体領域13−1は、活性層15−1上に設けられ、また第1領域13a−1及び第2領域13b−1を含む。第2領域13b−1は第1領域13a−1に沿って延在する。第1領域13a−1はリッジ部を含み、リッジ部はp型導電性を有する。第1領域13a−1の厚さT13a−1は第2領域13b−1の厚さT13b−1より大きい。III族窒化物半導体領域13−1は、意図的に添加されたp型ドーパントを含み、また成膜原料中、もしくは製造プロセス中に含まれ意図的に添加されるものではない水素を含む。電極17−1は、III族窒化物半導体領域13−1の第1領域13a−1のリッジ部の上面13c−1に接触JC1−1を成す。活性層15−1はIII族窒化物半導体からなる。金属層19−1は、水素化物を形成可能な材料からなるので、水素を捕捉できる層として働く。また、金属層19−1はIII族窒化物半導体領域13−1の第2領域13b−1上に設けられる。多孔質陽極酸化アルミナ層21−1は、金属層19−1上に設けられる。電流ガイド領域23−1は第2領域13b−1上に位置し、またリッジ構造の第1領域13a−1に電流をガイドする。
【0096】
この窒化物発光素子11−1によれば、電極17−1が第1領域13a−1のリッジ部の上面13c−1に接触を成すと共に、金属層19−1が第2領域13b−1上に設けられる。この金属層19−1は水素化物を形成可能な材料からなる。III族窒化物半導体領域13−1は水素を含んでおり、環境条件に応じて移動して金属層19−1に到達した水素は、金属層19−1に捕捉される。多孔質陽極酸化アルミナ層21−1が金属層19−1上に設けられているので、水素は、金属層19−1内の水素量に応じて金属層19−1から多孔質陽極酸化アルミナ層21−1に移動可能である。金属層19−1が、第1領域13a−1のリッジ部と異なる第2領域13b−1上に設けられるので、半導体中を移動する水素は、第1領域13a−1のリッジ部と電極17−1との界面から離れた金属層19−1に捕捉される。さらに、電極17−1が第1領域13a−1のリッジ部の上面13c−1に接触を成すと共にリッジ部がp型導電性を有するので、電極17−1からの電流経路が提供される。電極17−1の材料は、金属層の材料と独立して決定される。
【0097】
本実施例では、電極17−1は、リッジ構造上面13c−1に接触(オーミック接触)JC1−1を成すだけでなく、電流ガイド領域23−1の主面23a−1に接合JC2−1を成す。電極17−1上には、パッド電極18−1が設けられている。図9の(b)部を参照すると、電極17−1は多孔質陽極酸化アルミナ層21−1の上面に接合を成している。
【0098】
窒化物発光素子11−1は、III族窒化物半導体領域25−1を備える。III族窒化物半導体領域25−1は、意図的に添加されたn型ドーパントを含む部分を有し、n型導電性を有する。
【0099】
窒化物発光素子11−1は支持基体27−1を備える。支持基体27−1は、例えばIII族窒化物からなることができる。このIII族窒化物としては、GaN,AlGaN,InGaN,InAlGaNといった窒化ガリウム系半導体やAlNを用いることができ、またInXAlYGa1−X−YN(0≦X≦1、0≦Y≦1)を用いることができる。さらに支持基体27−1は、例えばInAlGaN系、サファイア系、SiC等からなることができる。
【0100】
III族窒化物半導体領域25−1は支持基体27−1の主面27a−1上に設けられる。III族窒化物半導体領域25−1は例えばn型クラッド層を含み、n型クラッド層は例えばn型III族窒化物半導体、好ましくはn型AlGaN,n型InAlGaNといったn型窒化ガリウム系半導体等からなることができる。また、支持基体27−1の裏面27b−1上には電極43−1が設けられる。電極43−1が例えばカソードであるとき、電極17−1が例えばアノードである。
【0101】
III族窒化物半導体領域25−1上には、発光層29−1が設けられる。発光層29−1は活性層15−1を含む。発光層29−1は、必要な場合には、活性層15−1とIII族窒化物半導体領域25−1とに間にIII族窒化物半導体、好ましくは窒化ガリウム系半導体からなる一又は複数の半導体層を含むことができ、該半導体層は例えば光ガイド層31−1として働く。また、発光層29−1は、必要な場合には、活性層15−1とIII族窒化物半導体領域13−1とに間にIII族窒化物半導体、好ましくは窒化ガリウム系半導体からなる一又は複数の半導体層を含むことができ、該半導体層は例えば電子ブロック層33−1(例えばAlGaN等)や光ガイド層35(例えばGaN,InGaN,InAlGaN等)として働く。活性層15−1は少なくとも1層以上の井戸層15a−1を含むことができ、井戸層15a−1はインジウムを含むIII族窒化物半導体、例えばInGaN等からなることができる。また、活性層15−1は障壁層15b−1を含むことができ、障壁層15b−1は窒化ガリウム系半導体、例えばGaN,InGaN等からなることができ、その井戸層と障壁層とでSQWあるいはMQW構造をとることが出来る。障壁層15b−1のバンドギャップは井戸層15a−1のバンドギャップより大きく、MQWの場合では井戸層15a−1及び障壁層15b−1は交互に配列されている。III族窒化物半導体領域25−1、発光層29−1(活性層15−1)及びIII族窒化物半導体領域13−1は、支持基体27−1の主面27a−1の法線方向に順に配列されている。
【0102】
窒化物発光素子11−1では、支持基体27−1の主面27a−1は、極性面、半極性面及び無極性面のいずれにも適用可能である。また、窒化物発光素子11−1の一実施例では、支持基体27−1の主面27a−1は該主面27aのIII族窒化物のc軸に対して63度以上80度以下の範囲の角度で傾斜していることができる。この窒化物発光素子によれば、半極性及び無極性であるため、ピエゾ効果による発光効率低下を抑制することが出来、特に、青紫波長以上での素子特性向上を求める上では有効である。
【0103】
III族窒化物半導体領域13−1はp型半導体からなっており、例えばp型クラッド層37−1(例えばAlGaN,InAlGaN等)を含むことができ、またp型コンタクト層39−1(例えばGaN,AlGaN,InAlGaN等)を含むことができる。III族窒化物半導体領域13−1にはMgがドープされていることができる。金属層19−1は、p型半導体領域内のMg−H結合から遊離する水素を捕獲できる。
【0104】
金属層19−1は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pdの金属及びこれらの金属の少なくとも2種以上の元素からなる合金を含むことができる。これら例示的に列挙された上記元素を含む金属及び合金が金属層19−1のために使用可能である。例えば、金属層19−1の厚さは10オングストローム以上であることができる。
【0105】
金属層19−1は、第2領域13b−1のp型半導体領域に接触を成す。p型半導体領域内のp型ドーパントと水素とが結合した複合物から遊離する水素は金属層に捕捉される。
【0106】
金属層19−1は、III族窒化物半導体領域13−1の第2領域13b−1の上面13d−1に接触を成しており、金属層19−1と第2領域13b−1との接触面積は第1領域(リッジ部)13a−1の上面13c−1と電極17−1との接触面積より大きいことが好ましい。この窒化物発光素子11−1によれば、電極17−1と半導体面13c−1との接触面積に限定されることなく、金属層19−1と第2領域13b−1との接触面積をリッジ部上面13c−1と電極17−1との接触面積より大きくできる。この接触面積は、例えば走査型電子顕微鏡等を用いて寸法を測定することにより特定される。
【0107】
金属層19−1は第1領域13a−1のリッジ部側面に接触を成し、多孔質陽極酸化アルミナ層21−1は金属層19−1の上面19a−1を覆うと共に第1領域13a−1のリッジ部側面に接触を成すことができる。多孔質陽極酸化アルミナ層21−1が金属層19−1の上面19a−1を覆うので、金属層19−1から効率的に水素が移動でき、移動した水素の吸蔵が効果的に可能になる。また、多孔質陽極酸化アルミナ層21−1がリッジ部側面に接触を成すので、金属層19−1を保護でき、また電極17−1から金属層19を電気的に分離できる。例えば、多孔質陽極酸化アルミナ層21−1の厚さは10nm以上であることができる。
【0108】
III族窒化物半導体領域13−1の第2領域13b−1の上面13d−1に接触を成すように水素吸蔵層を形成するプロセスを行った後に室温と高温(室温より高い温度)との間の温度履歴があるとき、半導体中に様々な形態でトラップされていた水素が遊離する。このとき、水素吸蔵層は、到来する水素をその飽和レベルまで取り込み、水素吸蔵層に体積膨張が生じる。III族窒化物半導体領域13−1及び水素吸蔵層の温度が低下すると、水素吸蔵層は、その温度に応じた溶解度レベルまで水素を排出する。この排出される水素は、内圧を呈するため、多孔質陽極酸化アルミナ層21−1の多孔質層との界面を介して層内に取り込まれる。したがって、第2領域13b−1の上面13d−1に接触を成す水素吸蔵層は、以下の説明に示されるように長期信頼性に係る水素の振る舞いを抑制することに有効であるが、半導体発光素子11−1の作製工程において移動する水素にも有効である。
【0109】
多孔質陽極酸化アルミナ層21−1は容易に作製可能である点からは非貫通タイプ構造が望ましい基本構造である。この構造は水素の吸収する金属層19−1と接する側は数nmから数十nm厚のバリアー層を介して多数のナノホールで構成されているがこのバリアー層自体は水素透過可能であり、かつ、ナノホールの表面積の総和が大きいため前記金属層19−1からの水素を十分回収可能となる。
【0110】
或いは、多孔質陽極酸化アルミナ層21−1は貫通タイプ構造を含むことがさらに、好ましい。この貫通タイプは、上記のバリアー層を除去してあるため水素の吸収する金属層19−1からの水素を多孔質陽極酸化アルミナ層21−1内のナノホールを介して金属層19−1及び多孔質陽極酸化アルミナ層21−1の外に排出でき、優れた排出能を有する。さらに、素子によって発生される熱の放散能も高くできる。
【0111】
図9の(c)部に示されるように、電流ガイド領域23−1は、多孔質陽極酸化アルミナ層21−1の上面に設けられた誘電体層41−1を含むことができる。誘電体層41−1は陽極酸化アルミナと異なる材料からなり、例えばシリコン酸化物、シリコン窒化物、Ti,Ta,Zrなどの金属酸化物、窒化物、酸窒化物、又は、フッ化物等からなる。金属層19−1及び多孔質陽極酸化アルミナ層21−1の合計厚みがリッジ部の高さより小さいとき、電流ガイド領域23−1に誘電体層41−1を追加して、電流ガイド領域23−1の厚さをリッジ部の高さに合わせることができる。また、誘電体層41−1の材料を選択して、多孔質陽極酸化アルミナ層21−1と電極17−1との密着性よりも誘電体層41−1と電極17−1との密着性を良好なものとすることができる。
【0112】
電流ガイド領域23−1の厚さをリッジ部の高さに合わせるためには、金属層19−1の厚さはリッジ部の高さより小さく、また多孔質陽極酸化アルミナ層21−1の厚さはリッジ部の高さより小さい。
【0113】
金属層19−1は、以下のような水素に対して効果を有する。
(1)半導体発光素子11−1の製造のための工程が完了した時点で、半導体発光素子11−1内のp型半導体領域に残留している原子状又は分子状の遊離水素。
(2)半導体発光素子11−1が市場に流通した後に長期に使用されて、その動作に伴って半導体発光素子11−1内のトラップサイトにトラップされている原子状又は分子状の水素。この水素は、使用温度では解離しないMg−H複合体の水素ではなく、例えば、安定な水素複合体を形成しない不純物元素や転位などの結晶格子欠陥によりトラップされている。
(3)半導体発光素子11−1が市場に流通した後に使用される環境により、素子外部から素子内に侵入してくる原子状水素。この水素は、熱力学的には高温雰囲気で暴露表面を通して溶解する水素量が暴露雰囲気の水素分圧の平方根に比例するジーベルトの法則(Sievert’s law)に従う。
【0114】
半導体発光素子11−1内に残留する水素は、素子の信頼性に係る事項に関連している。原子状水素は、半導体中を容易に拡散して移動できるので、電極内や電極界面での劣化の他に、素子を構成する半導体層界面のトラップサイトに捕獲されて、原子状水素が集積されて分子状水素を形成となりうる。この分子状水素は界面欠陥を形成して、界面の脆化、原子の整合性低下を引き起こすため素子の性能劣化を引き起こすと共に、性能劣化を進行させる。
【0115】
上記のような水素を捕獲するためには、半導体層に接触を成す金属層19−1は有用である。また、半導体領域13−1と金属層19−1との接合は、電極17−1と半導体面13c−1との接触のように電気的特性を満たすように規定されるものと異なり、この接触に比べて広く、半導体からの水素の移動に好適である。また、金属層19−1がリッジ部と異なる半導体層に接触を成すので、電極と半導体領域との接合と異なる領域に水素を吸蔵できる。
【0116】
半導体発光素子11−1の長期間にわたる使用又は連続動作を行うとき、種々の理由により、半導体発光素子11−1内に遊離水素が発生する。上記の説明から理解されるように、半導体に直接に接触を成す金属層19−1は、半導体発光素子11−1の半導体内を移動する水素量を減少させることができる。
【0117】
図10及び図11は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を示す図面である。
【0118】
工程S101−1では、図12の(a)部に示されるように、成長炉10a−1を用いてエピタキシャル基板Eを作製する。成長炉10a−1では、例えば有機金属気相成長法でIII族窒化物半導体の成膜が行われる。この成膜では、III族窒化物半導体に有機金属気相成長の原料に起因する水素が取り込まれる。工程S102−1では、基板51−1を準備する。この基板51−1は例えばIII族窒化物からなる主面51a−1を有することができる。工程S103−1では、有機金属原料及びn型ドーパントガスを成長炉10a−1に供給しながら、n導電性のIII族窒化物半導体領域53−1を基板51−1の主面51a−1上に成長する。III族窒化物半導体領域53−1は、一又は複数のIII族窒化物半導体層を含み、例えばn型クラッド層を含むことができる。n型ドーパントは例えばシリコンを含むことができる。
【0119】
引き続く工程では、n型III族窒化物半導体領域53−1上に発光層55−1を成長する。発光層55−1の作製では、工程S104−1では、有機金属原料を成長炉10a−1に供給しながらn側の光ガイド層を第1導電型III族窒化物半導体領域53−1上に成長する。工程S105−1では、有機金属原料を成長炉10a−1に供給しながら、この光ガイド層上に活性層を成長する。活性層の成長では、工程S106−1において有機金属原料を成長炉10a−1に供給しながら障壁層を成長すると共に、工程S107−1において有機金属原料を成長炉10a−1に供給しながら井戸層を成長する。必要に応じて、障壁層及び井戸層の成長を繰り返す。工程S108−1及びS109−1において、有機金属原料を成長炉10a−1に供給しながら電子ブロック層及びp側の光ガイド層を成長する。
【0120】
工程S110−1では、有機金属原料及びp型ドーパントガスを成長炉10a−1に供給しながらIII族窒化物半導体領域57−1を発光層55−1の主面上に成長する。III族窒化物半導体領域57−1は水素及びp型ドーパントを含む。p型のIII族窒化物半導体領域57−1の成膜では、工程S111−1において、発光層55−1の主面上にp型クラッド層のための第1III族窒化物半導体膜を成長すると共に、工程112−1において、この第1III族窒化物半導体膜上にp型コンタクト層のための第2III族窒化物半導体膜を成長して、エピタキシャル基板Eを形成する。p型ドーパントは例えばマグネシウムを含むことができ、この場合、p型半導体領域にはMg−H結合を有する複合体が含まれる。
【0121】
エピタキシャル基板Eを成長炉10a−1から取り出した後に、工程S113−1では、基板生産物を作製する。このために、工程S114−1では、リッジ形成のためのマスクをエピタキシャル基板E−1の主面上に形成する。このマスクの形成のために、まず、図12の(b)部に示されるように、エピタキシャル基板E−1の主面上に、第1の金属マスク膜59−1、第2の金属マスク膜61−1及び絶縁膜63−1を順に成長した後に、リッジ構造の幅及び向きを規定するレジストマスクM1−1を絶縁膜63−1上に形成する。第1の金属マスク膜59−1は例えばMo,Tiであり、第2の金属マスク膜61−1は例えばAlであり、絶縁膜63−1は例えばシリコン酸化物である。次いで、図13の(a)部に示されるように、レジストマスクM1−1を用いて第1の金属マスク膜59−1、第2の金属マスク膜61−1及び絶縁膜63−1を順にエッチングして、マスクM2−1を形成する。マスクM2−1は、第1の金属マスク層59a−1、第2の金属マスク層61a−1及び絶縁層63a−1を含み、これらの層59a−1,61a−1,63a−1はエピタキシャル基板E−1の主面上に順に配列される。マスクM2−1を形成した後に、レジストマスクM1−1を除去することができる。
【0122】
工程S115−1では、図13の(b)部に示されるように、マスクM2−1を用いてp型III族窒化物半導体領域57−1を処理装置10b−1でエッチングして、エッチングされたIII族窒化物半導体領域65−1を形成する。III族窒化物半導体領域65−1は、第1領域65a−1及び第2領域65b−1を含む。第2領域65b−1は、軸Ax−1の方向に延在する第1領域65a−1に沿って設けられる。第1領域65a−1はリッジ部を含み、リッジ部はp型導電性を有する。第1領域65a−1の厚さは第2領域65b−1の厚さより大きい。III族窒化物半導体領域65−1は、意図的に添加されたp型ドーパントを含み、また有機金属原料、あるいは、製造工程に起因した水素を含む。基板51−1の主面51a−1の延在方向に、第1領域65a−1及び第2領域65b−1が交互に配列されており、この配列は軸Ax−1の方向と交差する方向に成る。一素子分の素子幅では、リッジ構造の第1領域65a−1が第2領域65b−1の間に設けられる。リッジ部上面65c−1上には、マスクM2−1が残されている。
【0123】
工程S115−1では、必要な場合、図14の(a)部に示されるように、処理装置10c−1において第1の金属マスク層59a−1を第2の金属マスク層61a−1及び絶縁層63a−1に対して選択的にエッチングして、第1の金属マスク層59b−1を形成する。このエッチングは、例えばRIEを用いた等方性エッチングにより可能である。第1の金属マスク層59b−1、第2の金属マスク層61a−1及び絶縁層63a−1からなるマスクを引き続き、マスクM2−1として参照する。
【0124】
引き続き、工程S116−1では、図14の(b)部に示されるように、マスクM2−1を用いて処理装置10d−1で水素吸蔵層67−1を成長する。水素吸蔵層67−1は、マスクM2−1上に成長された第1部分67a−1と、III族窒化物半導体領域65−1の第2領域65b−1上に成長された第2部分67b−1とを含む。マスクM2−1の高さにより、第1部分67a−1は第2部分67b−1から分離されている。水素吸蔵層67−1は、水素化物を形成可能な金属層を含むことができる。水素吸蔵層67−1は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pdの金属及びこれらの金属の少なくとも2種以上の元素からなる合金を含むことができる。これら例示的に列挙された上記元素を含む金属及び合金が水素吸蔵層67−1のために使用可能である。
【0125】
工程S117−1では、図15の(a)部に示されるように、マスクM2−1を用いて処理装置10e−1でアルミニウム層69−1を成長する。アルミニウム層69−1は、マスクM2−1上に成長された第1部分69a−1と、III族窒化物半導体領域65−1の第2領域65b−1上に成長された第2部分69b−1とを含む。マスクM2−1の厚さにより、第1部分69a−1は第2部分69b−1から分離されている。例えば、アルミニウム層69−1の厚さは10nm以上であることができ、アルミニウム層69の厚さは、リッジ高さ、及び、p電極密着強度、を考慮したものであることができる。
【0126】
水素吸蔵層67−1及びアルミニウム層69−1の総厚は、リッジ部の高さに合わすように決定されることが好ましい。また、必要な場合には、アルミニウム層69−1を成長した後に、アルミニウム層69−1上に誘電体層を更に成長することができる。この形態では、水素吸蔵層67−1、アルミニウム層69−1及び誘電体層の総厚は、リッジ部の高さに合わすように決定されることが好ましい。
【0127】
これらの工程S116−1及びS117−1の後に、図15の(b)部に示されるように、工程S118−1においてリフトオフ法によりマスクM2−1を処理装置10f−1で除去して、基板生産物SP1−1を作製する。これによりマスクM2−1上に順に設けられた水素吸蔵層67−1の部分67a−1及びアルミニウム層69−1の部分69a−1は消失する。基板生産物SP1−1は、III族窒化物半導体領域65−1の第2領域65b−1上に順に設けられた水素吸蔵層67−1の部分67b−1(引き続く説明では「水素吸蔵層67b−1」として参照する)及びアルミニウム層69−1の部分69b−1(引き続く説明では「アルミニウム層69b−1」として参照する)を含む。
【0128】
工程S119−1では、図16の(a)部に示されるように、アルミニウム層69−1を処理装置10g−1で陽極酸化法により処理して、水素吸蔵層67b−1上に多孔質陽極酸化アルミナ層71−1を形成する。陽極酸化は、例えば電解処理槽内の溶液(例えば希硫酸)において、アルミニウム層69b−1を正極とし、また基板生産物SP1−1に電極(例えばPt電極)を負極として対向させる。摂氏10度以下の温度で数十ボルトの電圧を印加することにより、アルミニウム層を陽極酸化することができる。
【0129】
これらの工程により、水素吸蔵層67b−1に多孔質陽極酸化アルミナ層71−1を含む基板生産物が形成される。
【0130】
陽極酸化法の適用においては、非貫通タイプの陽極酸化アルミナが形成される。この陽極酸化アルミナは、多数の非貫通ナノホールを含む。非貫通ナノホールはバリアー底部を有している。陽極酸化アルミナの外表の総面積に比べて、ナノホールの表面積は非常に大きな値である。この陽極酸化アルミナに貫通処理を施して、貫通タイプの陽極酸化アルミナに変更することができる。なお、陽極酸化アルミナ層の貫通化処理としては、例えば、陽極酸化処理直後に電解処理液中で無電流負荷状態で処理中温度〜常温にて適当な時間で継続浸漬する方法等が適用できる。
【0131】
この作製方法によれば、リフトオフ及びエッチングのためのマスクM2−1を用いてリッジ部の位置を規定すると共に、このマスクM2−1を用いて、水素吸蔵層67b−1及びアルミニウム層69−1の堆積を行う。この堆積の後に、マスクM2−1を除去して、さらにアルミニウム層68b−1から多孔質陽極酸化アルミナ層71−1を形成する。これ故に、リッジ部に対して水素吸蔵層67b−1及び多孔質陽極酸化アルミナ層71−1が自己整合的に作製される。水素吸蔵層67b−1及び多孔質陽極酸化アルミナ層71−1は電流ガイド領域を構成する。
【0132】
工程S120−1では、図16の(a)部に示されるように、III族窒化物半導体領域65−1の第1領域65a−1のリッジ部の上面65c−1に接合C1−1を成すアノード電極73−1を形成する。アノード電極73−1としては、Au,Ni,Pd、In,Pt,Al,Sn等の単一金属、あるいはこれらの合金を用いることができる。また、電極73−1及び電流ガイド領域上に設けられアノード電極73−1を覆うパッド電極及び、基板51−1の裏面51b−1にカソード電極を形成できる。
【0133】
この作製方法によれば、第1領域65a−1のリッジ部上面65c−1に接触を成す電極73−1を形成可能である一方で、基板生産物において、III族窒化物半導体領域65−1の第2領域65b−1上に順に設けられたアルミニウム層69b−1を陽極酸化法により処理して、水素吸蔵層67b−1上に多孔質陽極酸化アルミナ層71−1を形成できる。水素吸蔵層67b−1は水素化物を形成可能な材料からなる。III族窒化物半導体領域65−1は水素を含んでおり、水素吸蔵層67b−1が、第1領域65a−1のリッジ部と異なる第2領域65b−1に接合C2−1を成す。これ故に、移動する水素は水素吸蔵層67b−1に吸蔵される。多孔質陽極酸化アルミナ層71−1が水素吸蔵層67b−1に接合C3−1を成すように設けられているので、水素は、水素吸蔵層67b−1内の水素量に応じて水素吸蔵層67b−1から多孔質陽極酸化アルミナ層71−1に移動可能である。水素吸蔵層67b−1が、第1領域65a−1のリッジ部と異なる第2領域65b−1上に設けられるので、移動する水素は、リッジ部上面65c−1と電極73−1との接合C1−1(界面)から離れた水素吸蔵層67b−1に捕捉される。さらに、電極73−1がリッジ部上面65c−1に接触を成すと共にリッジがp型導電性を有するので、電極73−1からの電流経路が提供される。電極73−1の材料は水素吸蔵層67b−1の材料と独立して決定される。また、第2領域65a−1と水素吸蔵層67b−1との接触面積の総和はリッジ部上面65c−1と電極73−1との接触面積の総和より大きい。
【0134】
以上説明したように、陽極酸化アルミナ下に水素吸蔵金属を設けることにより、長期CW発振においてp型クラッド層内に生成されるMg−H複合体から脱離した水素、及び下部半導体層からの水素拡散に由来する原子状水素を陽極酸化アルミナ下の水素吸蔵金属が吸引する。さらに、水素吸蔵金属において水素吸蔵により起こる水素吸蔵金属内部の内圧が起因となって、原子状水素がさらに陽極酸化アルミナの多孔質層へ移動する。p型コンタクト層への水素原子流入がさらに長期間にわたって抑制可能となり、また、マグネシウムと水素との再結合確率を低減でき、安定なp型オーミック接触を維持できる。その結果、素子寿命が延びる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本実施の形態によれば、水素の移動による素子寿命の短縮を改善できる窒化物発光素子が提供される。また、本実施の形態によれば、水素の移動による素子寿命の短縮を改善できる窒化物発光素子を作製する方法が提供される。
【符号の説明】
【0136】
11…窒化物発光素子、13…III族窒化物半導体領域、15…活性層、17…電極、18…パッド電極、19…金属層、21…誘電体層、23…電流ガイド領域、JC1…接触(オーミック接触)、25…III族窒化物半導体領域、27…支持基体、29…発光層、31、35…光ガイド層、33…電子ブロック層、43…電極、E…エピタキシャル基板、51…基板、53…III族窒化物半導体領域、55…発光層、57…III族窒化物半導体領域、59…第1の金属マスク膜、61…第2の金属マスク膜、63…絶縁膜、59a…第1の金属マスク層、61a…第2の金属マスク層、63a…絶縁層、65…エッチングされたIII族窒化物半導体領域、67…水素吸蔵層、69…誘電体層、71…アノード電極、M1…レジストマスク、M2…マスク、SP1…基板生産物、10a…成長炉、10b〜10g…処理装置、11−1…窒化物発光素子、13−1…III族窒化物半導体領域、15−1…活性層、17−1…電極、18−1…パッド電極、19−1…金属層、21−1…多孔質陽極酸化アルミナ層、23−1…電流ガイド領域、JC1−1…接触(オーミック接触)、25−1…III族窒化物半導体領域、27−1…支持基体、29−1…発光層、31−1、35−1…光ガイド層、33−1…電子ブロック層、43−1…電極、E−1…エピタキシャル基板、51−1…基板、53−1…III族窒化物半導体領域、55−1…発光層、57−1…III族窒化物半導体領域、59−1…第1の金属マスク膜、61−1…第2の金属マスク膜、63−1…絶縁膜、59a−1…第1の金属マスク層、61a−1…第2の金属マスク層、63a−1…絶縁層、65−1…エッチングされたIII族窒化物半導体領域、67−1…水素吸蔵層、69−1…アルミニウム層、71−1…多孔質陽極酸化アルミナ層、73−1…アノード電極、M1−1…レジストマスク、M2−1…マスク、SP1−1…基板生産物、10a−1…成長炉、10b−1〜10g−1…処理装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電極の製造方法が記載されている。この方法では、Mgを含むp型AlXInYGa1−X−YN半導体層上に、電極として水素貯蔵金属を堆積する。また、特許文献2及び3並びに非特許文献1には、窒化ガリウム系半導体におけるMgドーパントと水素との関係について記載されている。さらに、特許文献4には、陽極酸化アルミナ膜について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−340511号公報
【特許文献2】特開平05−183189号公報
【特許文献3】特開平08−115880号公報
【特許文献4】特開2005−220436号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Shuji Nakamura et al. “Hole Compensation Mechanism of P-Type GaN film,” Jpn. Appl. Phys. Vol. 31 (1992) pp1258-1266, Part 1, No.5A, May 1992
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2及び3並びに非特許文献1に記載されているように、窒化ガリウム系半導体におけるp型活性化にはMgドーパントと水素とが密接に関係している。これらの文献には、Mgドーパントでのp型活性化のためのいくつかの手法が記載されている。
【0006】
現在、製品化されているMgドープ窒化物半導体発光素子では必然的に、窒化物半導体内に水素が残留している。この水素は、Mg−H結合を含む複合体の形態だけでなく、半導体結晶内に存在する格子欠陥にトラップされた原子状及び分子状の水素の形態としても窒化物半導体内に含まれる。また、水素を含む雰囲気では、外部から水素が発光素子の内部に侵入してくる可能性もあり、このような水素は、レーザ発振により高温になっている発光素子表面と反応することもあり得る。
【0007】
上記のように、水素は窒化物半導体素子が形成された後に半導体層内部に様々な状態で残留するため窒化物半導体素子の信頼性に係る課題に影響を及ぼしてくる。
【0008】
本発明は、上記の事情を鑑みて為されたものであり、素子寿命が短くなる一因である水素の移動を素子構造の改良によって制御した窒化物発光素子に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る窒化物発光素子は、(a)III族窒化物半導体からなる活性層と、(b)少なくとも前記活性層の2つの表面側に少なくとも1層以上の極性の異なるIII族窒化物半導体層と最も外側に有る2つのIII族窒化物半導体表面に各極性を呈する金属電極が構成されており、(c)少なくとも一方の側のIII族窒化物半導体はリッジ部を含む第1領域と該第1領域に沿って延在する第2領域とを有しており、前記活性層上に設けられたIII族窒化物半導体領域の上に設けられると共に、水素及びp型ドーパントを含み、(d)前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上に設けられ、水素化物を形成可能な材料からなる金属層と、(e)前記金属層に接合を成し、前記電極と前記金属層との間に設けられた誘電体層とを備える。前記電極は前記リッジ部の少なくとも上面に接触を成す。
本発明に係る窒化物発光素子は、(a)III族窒化物半導体からなる活性層と、(b)p型導電性のリッジ部を含む第1領域と該第1領域に沿って延在する第2領域とを有しており、水素及びp型ドーパントを含むIII族窒化物半導体領域と、(c)前記III族窒化物半導体領域の前記第1領域もしくは前記第1領域と前記第2領域の上に設けられる電極と、(d)前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上に設けられ、水素化物を形成可能な材料からなる金属層と、(e)前記金属層に接合を成し、前記電極と前記金属層との間に設けられた誘電体層とを備える。前記III族窒化物半導体領域は、前記活性層上に設けられる。前記電極は、前記リッジ部の少なくとも上面に接触を成す。
【0010】
この窒化物発光素子によれば、上記の如く金属層が第2領域上に設けられるが、この金属層は水素化物を形成可能な材料からなる。III族窒化物半導体領域は水素を含んでおり、移動する水素は金属層に到達すると吸蔵される。金属層が、第1領域のリッジ部と異なる第2領域上に設けられるので、移動する水素は、第1領域のリッジ部と電極との界面から離れた金属層に吸蔵される。さらに、電極が第1領域のリッジ部の上面に接触を成すと共にリッジがp型導電性を有するので、電極からの電流経路が提供される。また、電極の材料は、金属層の材料と独立して決定される。
【0011】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記金属層は、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上面に接触を成しており、前記遊離水素を有効に捕捉するため前記金属層と前記第2領域との接触面積は前記リッジ部の前記上面と前記電極との接触面積より大きいことが好ましい。
【0012】
また、この窒化物発光素子によれば、前記電極と前記半導体層との接触面積に限定されることなく、前記金属層と前記第2領域との接触面積をリッジ部の上面と電極との接触面積より大きいことが好ましい。
【0013】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記金属層は、前記第2領域のp型半導体領域に接触を成すことができる。この窒化物発光素子によれば、金属層は、p型半導体領域内のp型ドーパントと水素とが結合した複合物が、後工程、あるいは、素子として長期使用された場合での熱履歴によって分解した場合でも半導体層との界面を介して遊離する水素を捕獲できる。
【0014】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記III族窒化物半導体領域にはMgがドープされていることができる。この窒化物発光素子によれば、金属層は、p型半導体領域内のMg−H結合から水素が遊離した場合、それら水素を捕獲できる。
【0015】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記金属層は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pd及びこれらの少なくとも2種の元素からなる合金を含むことができる。この窒化物発光素子によれば、例示的に列挙された上記元素を含む金属及び合金が、水素吸蔵層のための金属層のために使用可能である。
【0016】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記誘電体層は前記電極と前記金属層との間に設けられ、前記誘電体層は、シリコン酸化膜、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、酸化ハフニウム、タンタル酸化物、強誘電体、及びポリイミド系有機物の少なくともいずれかを含むことが好適である。
【0017】
この窒化物発光素子によれば、誘電体層が電極と金属層との間に設けられるので、金属層内の水素が誘電体層を通して電極に到達しない。
【0018】
本発明に係る窒化物発光素子は、III族窒化物からなる支持基体と、前記支持基体の主面上に設けられたIII族窒化物半導体層とを更に備えることができる。前記III族窒化物半導体層はn型導電性を有し、前記活性層は前記III族窒化物半導体層と前記III族窒化物半導体領域との間に設けられる。また、本発明に係る窒化物発光素子では、前記支持基体の前記主面は前記III族窒化物のc軸に対して63度以上80度以下の範囲の角度で傾斜していることができる。
【0019】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記金属層は前記リッジ部の側面および、あるいは前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上面に接触を成し、前記誘電体層は前記金属層の上面を覆うと共に前記金属層と前記電極との電気的な絶縁状態が確保されるように前記リッジ部の側面に接触を成すことが好ましい。この窒化物発光素子によれば、前記金属層が前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上面に接触を成すとともに金属層側面がリッジ部の側面に接触を成すので、リッジ部の上面と電極との接触界面に到達する水素量を低減できる。
【0020】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記金属層は前記リッジ部の側面から離間しており、前記誘電体層は前記金属層の全面を覆うと共に前記リッジ部の側面に接触を成すことが好ましい。この窒化物発光素子によれば、半導体膜中の水素は、リッジ部の側面から離間した金属層に吸蔵される。このため、この金属層に向けて低くなる水素の濃度勾配が半導体膜中に形成される。
【0021】
本発明は、窒化物発光素子を作製する方法に係る。この方法は、(a)リッジ部を含む第1領域と該第1領域に沿って延在する第2領域とを有するIII族窒化物半導体領域と、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上に順に設けられた金属層及び誘電体層と、活性層とを含む基板生産物を作製する工程と、(b)前記III族窒化物半導体領域の前記第1領域の前記リッジ部の上面及び前記誘電体層の上に電極を形成する工程とを備える。前記電極は前記リッジ部の上面に接触を成し、前記III族窒化物半導体領域は前記活性層の上に形成されており、前記金属層は水素化物を形成可能な材料からなり、前記III族窒化物半導体領域は水素及びp型ドーパントを含む。
【0022】
この作製方法によれば、電極が第1領域のリッジ部の上面に接触を成すように形成されると共に、金属層が第2領域上に形成される。この金属層は水素化物を形成可能な材料からなる。III族窒化物半導体領域は水素を含有しているが、金属層に到達した水素は金属層に吸蔵、あるいは、界面近傍に捕捉停留させられる。金属層が、第1領域のリッジ部と異なる第2領域上に形成されるので、移動する水素は、第1領域のリッジ部と電極との界面から離間した金属層に格納されることになるか、あるいは、界面近傍に捕捉停留する。さらに、電極が第1領域のリッジ部の上面に接触を成すと共にリッジがp型導電性を有するので、電極からの電流経路が提供される。なお、電極の材料は金属層の材料と独立して決定される。
【0023】
本発明に係る作製方法では、基板生産物を作製する前記工程は、前記活性層の上方に、p型クラッド層のための第1III族窒化物半導体膜及びp型コンタクト層のための第2III族窒化物半導体膜を成長して、エピタキシャル基板を形成する工程と、前記エピタキシャル基板の主面の上に、リフトオフ法のためのマスクを形成する工程と、前記マスクを用いて前記第1及び第2III族窒化物半導体膜をエッチングして、前記III族窒化物半導体領域にリッジを形成する工程と、前記マスクを用いて前記III族窒化物半導体領域の上に順に前記金属層及び前記誘電体層を成長する工程と、リフトオフ法により前記マスクを除去して、前記基板生産物を形成する工程とを含むことができる。前記第1III族窒化物半導体膜及び前記第2III族窒化物半導体膜の各々はp型ドーパントを含み、前記III族窒化物半導体領域は、前記p型クラッド層及び前記p型コンタクト層を含み、前記金属層は前記p型クラッド層の上面に接触を成す。
【0024】
この作製方法によれば、リフトオフ及びエッチングのためのマスクを用いてリッジ部の位置を規定すると共に、このマスクを用いて、金属層及び誘電体層のための膜の堆積を行う。この堆積の後に、マスクを除去することによって、リッジ部に対して金属層及び誘電体層が自己整合的に作製される。
【0025】
本発明に係る作製方法では、前記金属層は前記リッジ部の側面に接触を成し、前記誘電体層は前記金属層の上面を覆うと共に前記リッジ部の側面に接触を成す。なお、前記誘電体層によって前記金属層と前記電極層とが電気的に絶縁性を確保される。
【0026】
本発明に係る作製方法では、前記金属層は、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上面に接触を成しており、前記基板生産物における前記第2領域と前記金属層との接触面積は前記基板生産物における前記リッジ部の前記上面と前記電極との接触面積より大きいことが好ましい。この作製方法によれば、電極と半導体層との接触面積に限定されることなく、金属層と第2領域との接触面積をリッジ部の上面と電極との接触面積の総和より大きくできる。
【0027】
本発明に係る作製方法では、前記III族窒化物半導体領域にはMgがドープされていることができる。この製造方法によれば、金属層は、p型半導体領域内のMg−H結合から遊離する水素を捕獲できる。
【0028】
本発明に係る作製方法では、前記金属層は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pd及びこれらの少なくとも2種の元素からなる合金を含むことができる。この作製方法によれば、例示的に列挙された上記元素を含む金属及び合金が金属層のために使用可能である。
【0029】
本発明に係る作製方法では、前記基板生産物は、III族窒化物からなる基板と、前記基板の主面上に成長されたIII族窒化物半導体層とを含み、前記活性層は、前記III族窒化物半導体層上に成長され、前記III族窒化物半導体層はn型導電性を有し、前記活性層は前記III族窒化物半導体層と前記III族窒化物半導体領域との間に設けられることができる。また、本発明に係る作製方法では、前記基板の前記主面は前記III族窒化物のc軸に対して63度以上80度以下の範囲の角度で傾斜していることが好ましい。
【0030】
本発明に係る作製方法では、前記誘電体層は前記電極と前記金属層との間に設けられ、前記誘電体層及び前記金属層は前記リッジ部に対して自己整合的に堆積されることができる。前記誘電体層は、シリコン酸化膜、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、酸化ハフニウム、タンタル酸化物、強誘電体及びポリイミド系有機物の少なくともいずれかを含む。この製造方法によれば、誘電体層が電極と金属層との間に設けられるので、金属層内の水素が誘電体層を通して電極に到達することはない。
【0031】
本発明に係る窒化物発光素子は、(a)III族窒化物半導体からなる活性層と、(b)少なくとも前記活性層の2つの主要なる表面側に各々少なくとも1層以上の極性の異なるIII族窒化物半導体層と最も外側に有る2つのIII族窒化物半導体表面に各極性を呈する金属電極が構成されており、(c)少なくとも一方の側のIII族窒化物半導体はリッジ部を含む第1領域と該第1領域に沿って延在する第2領域とを有しており、前記活性層上に設けられたIII族窒化物半導体領域と、(c)前記III族窒化物半導体領域の前記第1領域の前記リッジ部の上面に接触を成す電極と、(d)前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域上に設けられ水素化物を形成可能な材料からなる金属層と、(e)前記金属層上に設けられた多孔質陽極酸化アルミナ層とを備える。なお、前記III族窒化物半導体領域は水素及びp型ドーパントを含み、前記リッジ部はp型導電性を有する。
【0032】
この窒化物発光素子によれば、上記の如く金属層が第2領域上に設けられるが、この金属層は水素化物を形成可能な材料からなっているため、前記III族窒化物半導体の水素と相互作用を発現する。ところで、水素を含んでいる前記III族窒化物半導体領域ではその領域内を自由に移動できない水素(例えば、既に自由エネルギー的にも安定な水素化物となっている)とその領域内を自由に移動することが出来る原子状水素(すなわち、遊離水素)、半導体内に存在する結晶格子欠陥(例えば、転位など)にトラップ(捕捉)されている水素が存存する。これら水素は曝露されている環境(例えば、素子形成〜実装プロセス、使用環境、LD発振による温度上昇など)によって前記トラップされている水素のトラップサイトからの解放で、あるいは、さらに高温での熱履歴(例えば、実装時に数100℃以上に加熱されるなど)で前記水素化物の分解で遊離水素を発生することもある。これら遊離水素は前記III族窒化物半導体と前記金属層との界面を通して前記金属層でまず、吸収されるが、本発明ではさらに多孔質陽極酸化アルミナ層が前記金属層上に設けられているので、水素は、前記金属層内の水素量に関連した格子歪に起因する内圧に応じて原子状あるいは分子状水素として前記金属層から多孔質陽極酸化アルミナ層に移動する。ところで、前記金属層は、第1領域のリッジ部と異なる第2領域上に設けられているので、移動する水素は、第1領域のリッジ部領域と電極近傍から離れた前記金属層に捕捉、あるいは、界面近傍で捕捉停留させられる。一方、電極が第1領域のリッジ部の上面に接触して形成され、リッジがp型導電性を有することで、電極からリッジ部領域でのスムーズな電流経路が提供される。なお、電極の材料は、前記金属層の材料と独立して決定される。
【0033】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記金属層は、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上面に接触を成しており、前記遊離水素を有効に捕捉するため前記金属層と前記第2領域との接触面積は前記リッジ部の前記上面と前記電極との接触面積より大きいことが好ましい。
【0034】
また、この窒化物発光素子によれば、前記電極と前記半導体層との接触面積に限定されることなく、前記金属層と前記第2領域との接触面積をリッジ部の上面と電極との接触面積より大きいことが好ましい。
【0035】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記金属層は、前記第2領域のp型半導体領域に接触を成すことができる。この窒化物発光素子によれば、金属層は、p型半導体領域内のp型ドーパントと水素とが結合した複合物が後工程、あるいは、素子として長期使用された場合での熱履歴によって分解した場合でも半導体層との界面を介して遊離する水素を捕獲できる。
【0036】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記III族窒化物半導体領域にはMgがドープされていることができる。この窒化物発光素子によれば、金属層は、p型半導体領域内のMg−H結合から水素が遊離した場合、それら水素を捕獲できる。
【0037】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記金属層は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pdの金属及びこれらの金属の少なくとも2種以上の元素からなる合金を含むことができる。この窒化物発光素子によれば、例示的に列挙された上記元素を含む金属及び合金が、水素吸蔵層のための金属層のために使用可能である。
【0038】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記金属層は前記リッジ部の側面に接触を成し、更に、前記多孔質陽極酸化アルミナ層は前記金属層の上面を覆うと共に前記リッジ部の側面に接触を成すことができる。この窒化物発光素子によれば、前記多孔質陽極酸化アルミナ層が前記金属層の上面を覆うので、前記金属層からの水素の移動が効果的に可能となる。また、前記多孔質陽極酸化アルミナ層が前記リッジ部の側面に接触を成すので、前記金属層を保護でき、また前記金属層を電極から分離できる。
【0039】
本発明に係る窒化物発光素子は、III族窒化物からなる支持基体と、前記支持基体の主面上に設けられたIII族窒化物半導体層とを更に備えることができる。前記III族窒化物半導体層はn型導電性を有し、前記活性層は前記III族窒化物半導体層と前記III族窒化物半導体領域との間に設けられる。また、本発明に係る窒化物発光素子では、前記支持基体の前記主面は前記III族窒化物のc軸に対して63度以上80度以下の範囲の角度で傾斜していることができる。
【0040】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記多孔質陽極酸化アルミナ層は非貫通タイプであることが好ましい。この窒化物発光素子によれば、非貫通タイプは、容易に作製可能であり、金属層との接合界面部はアルミナバリヤー層を挟むことになるがこのアルミナバリヤー層は高々数nmから数十nm厚であるために原子状水素は金属層から透過することができるため主たる水素移動の障壁とはならない、また水素の吸収する金属層からの水素を回収可能な多数のナノホールを有し、ナノホールの総表面積が大きいため、前記内圧開放にともなう水素の移動には有効となる。
【0041】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記多孔質陽極酸化アルミナ層は貫通タイプであることが好ましい。この窒化物発光素子によれば、貫通タイプは、水素の吸収する前記金属層からの水素を前記多孔質陽極酸化アルミナ層内のナノホールを介して前記金属層及び前記多孔質陽極酸化アルミナ層の外に排出でき、優れた排出能を有する。また、素子によって発生される熱の放散能も高い。なお、本発明に係る窒化物発光素子では、前記多孔質陽極酸化アルミナ層が非貫通タイプおよび貫通タイプのいずれでも良い。但し、素子寿命の長期化に対する有効性は前者よりも後者の方が相乗効果の観点からより好ましい。すなわち、前記多孔質陽極酸化アルミナ層の内、非貫通、貫通のいずれのタイプでも金属層における水素捕捉反応で発生する反応熱を多孔質に基づく冷却能によりヒートシンクとして作用し、素子温度上昇を緩和することが出来る。さらに、貫通タイプの多孔質陽極酸化アルミナ層の場合、金属層と多孔質陽極酸化アルミナ層の界面を通して、金属層上面の水素移動による内圧を開放する作用で水素の多孔質陽極酸化アルミナ層への移動を可能とする。この様にして非貫通および貫通タイプの多孔質陽極酸化アルミナ層は金属層と連携して前記窒化物半導体領域における遊離水素を除去することで、素子寿命の長期化を促進することが出来る。
【0042】
本発明は、窒化物発光素子を作製する方法に係る。この方法は、(a)リッジ部を含む第1領域と該第1領域に沿って延在する第2領域とを有するIII族窒化物半導体領域と、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域上に順に設けられた金属層及びアルミニウム層とを含む基板生産物を作製する工程と、(b)前記アルミニウム層を陽極酸化法により処理して、前記金属層上に多孔質陽極酸化アルミナ層を形成する工程と、(c)前記III族窒化物半導体領域の前記第1領域の前記リッジ部の上面に接触を成す電極を形成する工程とを備える。前記基板生産物において、前記III族窒化物半導体領域は活性層上に形成されており、前記金属層は水素化物を形成可能な材料からなり、前記III族窒化物半導体領域は水素及びp型ドーパントを含む。
【0043】
この作製方法によれば、第1領域のリッジ部の上面に接触を成す電極を形成可能である一方で、基板生産物において、III族窒化物半導体領域の第2領域上に順に設けられた金属層及びアルミニウム層を陽極酸化法により処理して、金属層上に多孔質陽極酸化アルミナ層を形成できる。これ故に、金属層が、第1領域のリッジ部と異なる第2領域上に設けられる。この金属層は水素化物を形成可能な材料からなる。III族窒化物半導体領域は水素を含んでおり、移動する水素は金属層に捕捉される。多孔質陽極酸化アルミナ層が金属層上に設けられているので、水素は、金属層内の水素量に応じて金属層から多孔質陽極酸化アルミナ層に移動可能である。金属層が、第1領域のリッジ部と異なる第2領域上に設けられるので、移動する水素は、第1領域のリッジ部と電極との界面から離れた金属層に捕捉される。さらに、電極が第1領域のリッジ部の上面に接触を成すと共にリッジがp型導電性を有するので、電極からの電流経路が提供される。電極の材料は、金属層の材料と独立して決定される。
【0044】
本発明に係る作製方法では、基板生産物を作製する前記工程は、前記活性層上に、p型クラッド層のための第1III族窒化物半導体膜及びp型コンタクト層のための第2III族窒化物半導体膜を成長して、エピタキシャル基板を形成する工程と、前記エピタキシャル基板の主面上に、リフトオフ法のためのマスクを形成する工程と、前記マスクを用いて前記第1及び第2III族窒化物半導体膜をエッチングして、前記III族窒化物半導体領域を形成する工程と、前記マスクを用いて前記III族窒化物半導体領域上に順に前記金属層及び前記アルミニウム層を成長する工程と、リフトオフ法により前記マスクを除去して、前記基板生産物を形成する工程とを含むことができる。前記第1III族窒化物半導体膜及び前記第2III族窒化物半導体膜の各々はp型ドーパントを含み、前記III族窒化物半導体領域は、前記p型クラッド層及び前記p型コンタクト層を含み、前記金属層は前記p型クラッド層の上面に接触を成すことができる。
【0045】
この作製方法によれば、リフトオフ及びエッチングのためのマスクを用いてリッジ部の位置を規定すると共に、このマスクを用いて、金属層及びアルミニウム層のための膜の堆積を行う。この堆積の後に、マスクを除去して、さらにアルミニウム層から多孔質陽極酸化アルミナ層を形成する。これ故に、リッジ部に対して金属層及び多孔質陽極酸化アルミナ層が自己整合的に作製される。
【0046】
本発明に係る作製方法では、前記金属層は前記リッジ部の側面に接触を成し、前記多孔質陽極酸化アルミナ層は前記金属層の上面を覆うと共に前記リッジ部の側面に接触を成す。
【0047】
本発明に係る作製方法では、前記金属層は、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上面に接触を成しており、前記基板生産物における前記第2領域と前記金属層との接触面積は前記基板生産物における前記リッジ部の前記上面と前記電極との接触面積より大きいことが好ましい。この作製方法によれば、電極と半導体層との接触面積に限定されることなく、金属層と第2領域との接触面積をリッジ部の上面と電極との接触面積の総和より大きくできる。
【0048】
本発明に係る作製方法では、前記III族窒化物半導体領域にはMgがドープされていることができる。この製造方法によれば、金属層は、p型半導体領域内のMg−H結合から遊離する水素を捕捉できる。
【0049】
本発明に係る作製方法では、前記金属層は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pdの金属及びこれらの金属の少なくとも2種以上の元素からなる合金を含むことができる。この作製方法によれば、例示的に列挙された上記元素を含む金属及び合金が金属層のために使用可能である。
【0050】
本発明に係る作製方法では、前記基板生産物は、III族窒化物からなる基板と、前記基板の主面上に成長されたIII族窒化物半導体層とを含み、前記活性層は、前記III族窒化物半導体層上に成長され、前記III族窒化物半導体層はn型導電性を有し、前記活性層は前記III族窒化物半導体層と前記III族窒化物半導体領域との間に設けることができる。また、本発明に係る作製方法では、前記基板の前記主面は前記III族窒化物のc軸に対して63度以上80度以下の範囲の角度で傾斜していることが好ましい。
【0051】
本発明に係る窒化物発光素子は、(a)III族窒化物半導体層を含む活性層と、(b)リッジ部を含む第1領域と該第1領域に沿って延在する第2領域とを有しており、前記活性層上に設けられたIII族窒化物半導体領域と、(c)前記III族窒化物半導体領域の前記第1領域の前記リッジ部の上面に接触を成す電極と、(d)前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域上に設けられた電流ガイド領域とを備える。前記III族窒化物半導体領域はp型ドーパントを含み、前記リッジ部はp型導電性を有し、前記電流ガイド領域は、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域上に設けられた水素吸蔵層と、前記水素吸蔵層上に設けられた多孔質陽極酸化アルミナ層とを含む。
【0052】
この窒化物発光素子によれば、電極が第1領域のリッジ部の上面に接触を成すと共に、金属層が第2領域上に設けられる。この金属層は水素化物を形成可能な材料からなる。III族窒化物半導体領域は水素を含んでおり、移動する水素は金属層に捕捉される。多孔質陽極酸化アルミナ層が金属層上に設けられているので、反応熱、素子動作熱の冷却効果とともに、貫通タイプの多孔質陽極酸化アルミア層の場合では、水素の移動可能な経路が与えられる。このため、水素は、金属層内の水素量に応じて金属層から多孔質陽極酸化アルミナ層に移動可能である。金属層が、第1領域のリッジ部と異なる第2領域上に設けられるので、半導体中を移動する水素は、第1領域のリッジ部と電極との界面から離れた金属層に捕捉される。さらに、電極が第1領域のリッジ部の上面に接触を成すと共にリッジがp型導電性を有するので、電極からの電流経路が提供される。なお、電極の材料は、金属層の材料と独立して決定される。
【0053】
本発明に係る窒化物発光素子では、前記電極は前記電流ガイド領域上に設けられることができる。当該発光素子は、前記電極及び前記電流ガイド領域上に設けられたパッド電極を更に備えることができる。また、本発明に係る窒化物発光素子では、パッド電極は、前記多孔質陽極酸化アルミナ層上に設けることができる。さらに、本発明に係る窒化物発光素子では、前記電流ガイド領域は多孔質陽極酸化アルミナ層上に設けられた誘電体層を更に備えることができる。また、パッド電極は、前記誘電体層上に設けることができる。
【発明の効果】
【0054】
以上説明したように、本発明によれば、素子寿命の短縮を改善できる窒化物発光素子が提供される。また、本発明によれば、水素の移動による素子寿命の短縮を改善できる窒化物発光素子を作製する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本実施の形態に係る窒化物発光素子の構造を概略的に示す図面である。
【図2】図2は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を示す図面である。
【図3】図3は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を示す図面である。
【図4】図4は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【図5】図5は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【図6】図6は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【図7】図7は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【図8】図8は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【図9】図9は、本実施の形態に係る窒化物発光素子の構造を概略的に示す図面である。
【図10】図10は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を示す図面である。
【図11】図11は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を示す図面である。
【図12】図12は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【図13】図13は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【図14】図14は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【図15】図15は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【図16】図16は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を概略的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、窒化物発光素子、及び窒化物発光素子を作製する方法に係る本発明の実施形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付す。
【0057】
(第1の実施形態)図1は、本実施の形態に係る窒化物発光素子の構造を概略的に示す図面である。窒化物発光素子の構造は例えば半導体レーザに好適な構造を有するが、本実施の形態は半導体レーザに限定されるものではない。図1の(a)部に示されるように、窒化物発光素子11は、III族窒化物半導体領域13と、活性層15と、電極17と、金属層19と、誘電体層21とを備える。図1の(b)部に示されるように、金属層19及び誘電体層21は、絶縁層を含む電流ガイド領域23に含まれる。III族窒化物半導体領域13は、活性層15上方に設けられ、また第1領域13a及び第2領域13bを含む。第2領域13bは第1領域13aに沿って延在する。第1領域13aはリッジ部を含み、リッジ部はp型導電性を有する。第1領域13aの厚さT13aは第2領域13bの厚さT13bより大きい。III族窒化物半導体領域13は、意図的に添加されたp型ドーパントを含み、また成膜原料中に含まれ意図的に添加されるものではない水素を含む。電極17は、III族窒化物半導体領域13の第1領域13aのリッジ部の上面13cに接触JC1を成す。活性層15はIII族窒化物半導体からなる。金属層19はIII族窒化物半導体領域13の第2領域13b上に設けられる。金属層19は、水素化物を形成可能な材料からなるので、水素吸蔵層として働く。また、誘電体層21は、金属層19上に設けられる。電流ガイド領域23は第2領域13b上に位置し、またリッジ構造の第1領域13aに電流をガイドする。
【0058】
この窒化物発光素子11によれば、電極17が第1領域13aのリッジ部の上面13cに接触を成すと共に、金属層19が第2領域13b上に設けられる。この金属層19は水素化物を形成可能な材料からなる。III族窒化物半導体領域13は水素を含んでおり、環境条件に応じて移動して金属層19に到達した水素は、金属層19に吸蔵される。誘電体層21が金属層19上に設けられているので、水素は、金属層19内の水素量に応じて金属層19から誘電体層21に実質的に移動できない。金属層19が、第1領域13aのリッジ部と異なる第2領域13b上に設けられるので、半導体中を移動する水素は、第1領域13aのリッジ部と電極17との界面から隔置された金属層19に格納される。さらに、電極17が第1領域13aのリッジ部の上面13cに接触を成すと共にリッジ部がp型導電性を有するので、電極17からの電流経路が提供される。電極17の材料は、金属層19の材料と独立して決定される。
【0059】
本実施例では、電極17は、リッジ構造上面13cに接触(オーミック接触)JC1を成すだけでなく、電流ガイド領域23の主面23aに接合JC2を成す。電極17上には、パッド電極18が設けられている。図1の(a)部を参照すると、パッド電極18は誘電体層21の上面に接合を成している。
【0060】
窒化物発光素子11は、III族窒化物半導体領域25を備える。III族窒化物半導体領域25は、意図的に添加されたn型ドーパントを含む部分を有し、n型導電性を有する。
【0061】
窒化物発光素子11は支持基体27を備える。支持基体27は、例えばIII族窒化物からなることができる。このIII族窒化物としては、GaN,AlGaN,InGaN,InAlGaNといった窒化ガリウム系半導体やAlNを用いることができ、またInXAlYGa1−X−YN(0≦X≦1、0≦Y≦1)を用いることができる。さらに、支持基体27は、例えばInAlGaN系,サファイア系,SiC等からなることができる。
【0062】
III族窒化物半導体領域25は支持基体27の主面27a上に設けられる。III族窒化物半導体領域25は例えばn型クラッド層を含み、n型クラッド層は例えばn型III族窒化物半導体、好ましくはn型AlGaN,n型InAlGaNといったn型窒化ガリウム系半導体等からなることができる。また、支持基体27の裏面27b上には電極43が設けられる。電極43が例えばカソードであるとき、電極17が例えばアノードである。
【0063】
III族窒化物半導体領域25上には、発光層29が設けられる。発光層29は活性層15を含む。発光層29は、必要な場合には、活性層15とIII族窒化物半導体領域25との間にIII族窒化物半導体、好ましくは窒化ガリウム系半導体からなる一又は複数の半導体層を含むことができ、該半導体層は例えば光ガイド層31として働く。また、発光層29は、必要な場合には、活性層15とIII族窒化物半導体領域13との間にIII族窒化物半導体、好ましくは窒化ガリウム系半導体からなる一又は複数の半導体層を含むことができ、該半導体層は例えば電子ブロック層(例えばAlGaN等)33や光ガイド層(例えばGaN、InGaN、InAlGaN等)35として働く。活性層15は少なくとも1層以上の井戸層15aを含むことができ、井戸層15aはインジウムを含むIII族窒化物半導体、例えばInGaN等からなることができる。また、活性層15は障壁層15bを含むことができ、障壁層15bは窒化ガリウム系半導体、例えばGaN,InGaN等からなることができ、その井戸層と障壁層とでSQW、MQW構造をとることが出来る。障壁層15bのバンドギャップは井戸層15aのバンドギャップより大きく、MQWの場合では井戸層15a及び障壁層15bは交互の配列されている。III族窒化物半導体領域25、発光層29(活性層15)及びIII族窒化物半導体領域13は、支持基体27の主面27aの法線方向に順に配列されている。
【0064】
窒化物発光素子11では、支持基体27の主面27aは、極性面、半極性面及び無極性面のいずれにも適用可能である。また、窒化物発光素子11の一実施例では、支持基体27の主面27aは該主面27aのIII族窒化物のc軸に対して63度以上80度以下の範囲の角度で傾斜していることができる。この窒化物発光素子によれば、半極性及び無極性であるため、ピエゾ効果による発光効率低下を抑制することが出来、特に、青紫波長以上での素子特性向上を求める上では有効である。
【0065】
III族窒化物半導体領域13はp型半導体からなっており、例えばp型クラッド層(例えばAlGaN,InAlGaN等)37を含むことができ、またp型コンタクト層(例えばGaN,AlGaN,InAlGaN等)39を含むことができる。III族窒化物半導体領域13にはMgがドープされていることができる。金属層19は、p型半導体領域内のMg−H結合から遊離する水素を捕獲できる。
【0066】
金属層19は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pd及びこれらの少なくとも2種の元素からなる合金を含むことができる。これら例示的に列挙された上記元素を含む金属及び合金が金属層19のために使用可能である。例えば、金属層19の厚さの下限は、例えば金属層19を構成する元素の原子半径の10倍程度と見積もられ、この厚さによって成膜の組織が安定する。下地が十分に平坦であるとき、例えば金属層19がパラジウム(原子半径:0.14nm)を用いると、この金属層19の厚さの下限は1nm程度となる。様々な見積もりから、金属層19の厚さは10オングストローム(1.0nm)以上であることができる。
【0067】
金属層19は、第2領域13bのp型半導体領域に接触を成す。p型半導体領域内のp型ドーパントと水素とが結合した複合物から遊離する水素は金属層に捕捉される。金属層19は、p型半導体領域表面に接触を成す。このp型半導体領域表面の表面粗さRaは3nm以上であることが好ましく、接触表面積を大きく確保できるため遊離水素の除去効率を上げることができる。また、p型半導体領域表面の表面粗さRaは20nm以下であることが好ましく、リッジ形成のドライエッチングの際に表面粗さを調整して、半導体層と金属層との密着性を確保できる。また、金属層19の厚さの下限は、p型半導体領域表面の表面粗さRaより大きく、この粗さの値に加えて1nm以上あることができる。
【0068】
金属層19は、III族窒化物半導体領域13の第2領域13bの上面13dに接触を成しており、金属層19と第2領域13bとの接触面積は第1領域(リッジ部)13aの上面13cと電極17との接触面積より大きいことが好ましい。この窒化物発光素子11によれば、電極17と半導体面13cとの接触面積に限定されることなく、金属層19と第2領域13bとの接触面積をリッジ部上面13cと電極17との接触面積より大きくできる。この接触面積は、例えば走査型電子顕微鏡等を用いて寸法を測定することにより特定される。
【0069】
金属層19は第1領域13aのリッジ部側面に接触を成し、誘電体層21は金属層19の上面19aを覆うと共に第1領域13aのリッジ部側面に接触を成すことができる。誘電体層21が金属層19の上面19aを覆うので、金属層19から効率的に水素が移動でき、移動した水素の吸蔵が効果的に可能になる。また、誘電体層21がリッジ部側面に接触を成すので、金属層19を保護でき、また電極17から金属層19を電気的に分離できる。例えば、誘電体層21の厚さは1.0nm以上であることができ、誘電体層21の厚さは誘電体層の上面がリッジを有する前記III族窒化物半導体層のリッジ上面と面一が望ましいが、少なくとも前記金属層19と電極とが絶縁される厚さであることができる。
【0070】
III族窒化物半導体領域13の第2領域13bの上面13dに接触を成すように水素吸蔵層を形成するプロセスを行った後に室温と高温(室温より高い温度)との間の温度履歴があるとき、半導体中に様々な形態でトラップされていた水素が遊離する可能性がある。このとき、水素吸蔵層は、到来する水素をその飽和レベルまで取り込み、水素吸蔵層に体積膨張が生じるが、水素吸蔵層内に水素の濃度勾配があると、水素は濃度勾配が層内で無くなるように内部拡散するため金属層全体で体積膨張を吸収するため素子が破壊することは無い。III族窒化物半導体領域13および水素吸蔵層の温度が低下すると、III族窒化物半導体領域13ではその温度に応じて遊離水素量自体が減少するため素子機能は維持される。したがって、第2領域13bの上面13dに接触を成す水素吸蔵層は、以下の説明に示されるように長期信頼性に係る水素の振る舞いを抑制することに有効であるが、半導体発光素子11の作製工程において移動する水素にも有効である。
【0071】
誘電体層21は電極17と金属層19との間に設けられ、誘電体層21は、シリコン酸化膜(例えばSiO2)、シリコン窒化物(例えばSi3N4)、シリコン酸窒化物(例えばSiON)、酸化ハフニウム(例えばHfO2)、タンタル酸化物(例えばTa2O5)、強誘電体(PZT、BST)、ポリイミド系有機物、及びフッソ化合物の少なくともいずれかを含むことが好適である。この窒化物発光素子11によれば、誘電体層21が電極17と金属層19との間に設けられるので、金属層19内の水素が誘電体層21を通して電極に到達しない。例えばSiO2といった誘電体層21に外部電圧が印加されるとき、10ボルト以上の絶縁耐圧を越えるためには、少なくとも50nm程度(絶縁破壊強度を2×106V/cmと仮定)である。
【0072】
強誘電体のPZTは、例えばPb(Zr、Ti)O3として表され、強誘電体のBSTはBa0.8Sr0.2TiO3として表される。
【0073】
図1の(b)部に示されるように、電流ガイド領域23は、誘電体層21を含むことができる。誘電体層21の水素の拡散係数は、金属層19内の水素の拡散係数より極端に小さい。また、誘電体層21は、金属層19より大きな抵抗率を有し、より好ましくは絶縁性を有する。金属層19及び誘電体層21の合計厚みがリッジ部の高さに合うように、金属層19及び誘電体層21の少なくともいずれか一方の厚さを調整することができる。必要な場合には、電流ガイド領域23に、別の誘電体層を追加することができる。例えばこの誘電体層の材料を選択して、該誘電体層と電極17との密着性を誘電体層21と電極17との密着性よりも良好なものとすることができる。
【0074】
電流ガイド領域23の厚さをリッジ部の高さに合わせるためには、金属層19の厚さはリッジ部の高さより小さく、また誘電体層21の厚さはリッジ部の高さより小さい。
【0075】
金属層19は、以下のような水素に対して効果を有する。(1)半導体発光素子11の製造のための工程が完了した時点で、半導体発光素子11内のp型半導体領域に残留している原子状又は分子状の遊離水素。なお、製造工程において水素を含有する雰囲気下で半導体発光素子11のp型半導体領域が暴露している場合では、p型半導体領域表面における水素は、熱力学的には暴露表面を通して溶解する水素量が暴露雰囲気の水素分圧の平方根に比例するジーベルトの法則(Sievert‘s law)に従って進入する。(2)半導体発光素子11が市場に流通した後に長期に使用されて、その動作に伴って半導体発光素子11内のトラップサイトにトラップされている原子状又は分子状の水素。この水素は、使用温度では解離しないMg−H複合体の水素ではなく、例えば、安定な水素複合体を形成しない不純物元素や転位などの結晶格子欠陥によりトラップされている。(3)半導体発光素子11が市場に流通した後に使用される環境により、素子外部から素子内に侵入してくる原子状水素。この水素は、熱力学的には高温雰囲気で暴露表面を通して溶解する水素量が暴露雰囲気の水素分圧の平方根に比例するジーベルトの法則(Sievert’s law)に従う。
【0076】
半導体発光素子11内に残留する水素は、素子の信頼性に係る事項に関連している。原子状水素は、半導体中を容易に拡散して移動できるので、電極内や電極界面での劣化の他に、素子を構成する半導体層界面のトラップサイトに捕獲されて、原子状水素が集積されて分子状水素を形成となりうる。この分子状水素は界面欠陥を形成して、素子の性能劣化を引き起こすと共に、性能劣化を進行させる。
【0077】
上記のような水素を捕獲するためには、半導体層に接触を成す金属層19は有用である。また、半導体領域13と金属層19との接合は、電極17と半導体面13cとの接触のように電気的特性を満たすように規定されるものと異なり、この接触に比べて広く、半導体からの水素の移動に好適である。また、金属層19がリッジ部と異なる半導体層に接触を成すので、電極と半導体領域との接合と異なる領域で水素を吸蔵できる。
【0078】
半導体発光素子11の長期間にわたる使用又は連続動作を行うとき、種々の理由により、半導体発光素子11内に遊離水素が発生する。上記の説明から理解されるように、半導体に直接に接触を成す金属層19は、半導体発光素子11の半導体内を移動する水素量を減少させることができる。
【0079】
図2及び図3は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を示す図面である。
【0080】
工程S101では、図4の(a)部に示されるように、成長炉10aを用いてエピタキシャル基板Eを作製する。成長炉10aでは、例えば有機金属気相成長法でIII族窒化物半導体の成膜が行われる。この成膜では、III族窒化物半導体に有機金属気相成長の原料に起因する水素が取り込まれる。工程S102では、基板51を準備する。この基板51は例えばIII族窒化物からなる主面51aを有することができる。工程S103では、有機金属原料及びn型ドーパントガスを成長炉10aに供給しながら、n導電性のIII族窒化物半導体領域53を基板51の主面51a上に成長する。III族窒化物半導体領域53は、一又は複数のIII族窒化物半導体層を含み、例えばn型クラッド層を含むことができる。n型ドーパントは例えばシリコンを含むことができる。
【0081】
引き続く工程では、n型III族窒化物半導体領域53上に発光層55を成長する。発光層55の作製では、工程S104では、有機金属原料を成長炉10aに供給しながらn側の光ガイド層を第1導電型III族窒化物半導体領域53上に成長する。工程S105では、有機金属原料を成長炉10aに供給しながら、この光ガイド層上に活性層を成長する。活性層の成長では、工程S106において有機金属原料を成長炉10aに供給しながら障壁層を成長すると共に、工程S107において有機金属原料を成長炉10aに供給しながら井戸層を成長する。なお、MQWの場合では必要に応じて、障壁層及び井戸層の成長を繰り返す。工程S108及びS109において、有機金属原料を成長炉10aに供給しながら電子ブロック層及びp側の光ガイド層を成長する。
【0082】
工程S110では、有機金属原料及びp型ドーパントガスを成長炉10aに供給しながらIII族窒化物半導体領域57を発光層55の主面上に成長する。III族窒化物半導体領域57は水素及びp型ドーパントを含む。p型のIII族窒化物半導体領域57の成膜では、工程S111において、発光層55の主面上にp型クラッド層のための第1III族窒化物半導体膜を成長すると共に、工程112において、この第1III族窒化物半導体膜上にp型コンタクト層のための第2III族窒化物半導体膜を成長して、エピタキシャル基板Eを形成する。p型ドーパントは例えばマグネシウムを含むことができるが、この場合、これらのp型半導体領域にはMg−H結合を有する複合体が含まれる。
【0083】
エピタキシャル基板Eを成長炉10aから取り出した後に、工程S113では、基板生産物を作製する。このために、工程S114では、リッジ形成のためのマスクをエピタキシャル基板Eの主面上に形成する。このマスクの形成のために、まず、図4の(b)部に示されるように、エピタキシャル基板Eの主面上に、第1の金属マスク膜59、第2の金属マスク膜61及び絶縁膜63を順に成長した後に、リッジ構造の幅及び向きを規定するレジストマスクM1を絶縁膜63上に形成する。第1の金属マスク膜59は例えばMo,Tiであり、第2の金属マスク膜61は例えばAlであり、絶縁膜63は例えばシリコン酸化物である。次いで、図5の(a)部に示されるように、レジストマスクM1を用いて第1の金属マスク膜59、第2の金属マスク膜61及び絶縁膜63を順にエッチングして、マスクM2を形成する。マスクM2は、第1の金属マスク層59a、第2の金属マスク層61a及び絶縁層63aを含み、これらの層59a,61a,63aはエピタキシャル基板Eの主面上に順に配列される。マスクM2を形成した後に、レジストマスクM1を除去することができる。
【0084】
工程S115では、図5の(b)部に示されるように、マスクM2を用いてp型III族窒化物半導体領域57を処理装置10bでドライエッチングして、エッチングされたIII族窒化物半導体領域65を形成する。III族窒化物半導体領域65は、第1領域65a及び第2領域65bを含む。第2領域65bは、軸Axの方向に延在する第1領域65aに沿って設けられる。第1領域65aはリッジ部を含み、リッジ部はp型導電性を有する。第1領域65aの厚さは第2領域65bの厚さより大きい。III族窒化物半導体領域65は、意図的に添加されたp型ドーパントを含み、また有機金属原料、あるいは、製造工程に起因した水素を含む。基板51の主面51aの延在方向に、第1領域65a及び第2領域65bが交互に配列されており、この配列は軸Axの方向と交差する方向に成る。一素子分の素子幅では、リッジ構造を含む単一の第1領域65aが第2領域65bの間に設けられる。リッジ部上面65c上には、マスクM2が残されている。
【0085】
工程S115では、必要な場合、図6の(a)部に示されるように、処理装置10cにおいて第1の金属マスク層59aを第2の金属マスク層61a及び絶縁層63aに対して選択的にエッチングして、第1の金属マスク層59bを形成する。このエッチングは、例えばRIEを用いた等方性エッチングにより可能である。第1の金属マスク層59b、第2の金属マスク層61a及び絶縁層63aからなるマスクを引き続き、マスクM2として参照する。
【0086】
引き続き、工程S116では、図6の(b)部に示されるように、マスクM2を用いて処理装置10dで水素吸蔵層67を成長する。水素吸蔵層67は、マスクM2上に成長された第1部分67aと、III族窒化物半導体領域65の第2領域65b上に成長された第2部分67bとを含む。マスクM2の高さにより、第1部分67aは第2部分67bから分離されている。水素吸蔵層67は、水素化物を形成可能な金属層を含むことができる。水素吸蔵層67は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pd及びこれらの少なくとも2種の元素からなる合金を含むことができる。これら例示的に列挙された上記元素を含む金属及び合金が水素吸蔵層67のために使用可能である。
【0087】
工程S117では、図7の(a)部に示されるように、マスクM2を用いて処理装置10eで誘電体層69を成長する。誘電体層69は、マスクM2上に成長された第1部分69aと、III族窒化物半導体領域65の第2領域65b上に成長された第2部分69bとを含む。マスクM2の厚さにより、第1部分69aは第2部分69bから分離されている。例えば、誘電体層69の厚さは1.0nm以上であることができ、誘電体層69の厚さは誘電体層の上面がリッジを有する前記III族窒化物半導体層のリッジ上面と面一が望ましいが、少なくとも前記金属層19と電極とが絶縁される厚さであることができる。誘電体層69は、例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、酸化ハフニウム、タンタル酸化物、強誘電体等であることができる。これらの成膜は例えば真空蒸着法、スパッタ蒸着法、プラズマPVD、CVD、等、殆ど現在、汎用となっている方法を適用することができる。
【0088】
水素吸蔵層67及び誘電体層69の総厚は、リッジ部の高さに合わすように決定されることが好ましい。また、必要な場合には、誘電体層69を成長した後に、誘電体層69上に別の誘電体層を更に成長することができる。この形態では、水素吸蔵層67、誘電体層69及び別の誘電体層の総厚は、リッジ部の高さに合わすように決定されることが好ましい。
【0089】
これらの工程S116及びS117の後に、図7の(b)部に示されるように、工程S118においてリフトオフ法によりマスクM2を処理装置10fで除去して、基板生産物SP1を作製する。これによりマスクM2上に順に設けられた水素吸蔵層67の部分67a及び誘電体層69の部分69aは消失する。基板生産物SP1は、III族窒化物半導体領域65の第2領域65b上に順に設けられた水素吸蔵層67の部分67b(引き続く説明では「水素吸蔵層67b」として参照する)及び誘電体層69の部分69b(引き続く説明では「誘電体層69b」として参照する)を含む。
【0090】
この作製方法によれば、リフトオフ及びエッチングのためのマスクM2を用いてリッジ部の位置を規定すると共に、このマスクM2を用いて、水素吸蔵層67bのための膜及び誘電体層69bのための膜の堆積を行う。この堆積の後に、マスクM2を除去して、誘電体層を形成する。これ故に、リッジ部に対して水素吸蔵層67b及び誘電体層が自己整合的に作製される。水素吸蔵層67b及び誘電体層は電流ガイド領域を構成する。
【0091】
リフトオフ法による作成では、誘電体層69は、既に説明したように、シリコン酸化膜、シリコン窒化物、及びシリコン酸窒化物といったシリコン系無機化合物、酸化ハフニウム及びタンタル酸化物といった金属酸化物、並びに強誘電体の少なくともいずれかを含むことが好適である。また、誘電体層69としてポリイミド系有機物を用いることができる。このときは、例えばスパッタ蒸着法を用いることができる。
【0092】
工程S119では、図8の(a)部に示されるように、III族窒化物半導体領域65の第1領域65aのリッジ部の上面65cに接合C1を成すアノード電極71を形成する。アノード電極71としては、Au,Ni,Pd、In,Pt,Al,Sn等の単一金属、あるいはこれらの合金を用いることができる。また、図8の(b)部に示されるように、電極71及び電流ガイド領域上に設けられたパッド電極73及び、基板51の裏面51bにカソード電極を形成できる。この作製方法によれば、誘電体層69が電極71、73と金属層67との間に設けられるので、誘電体層69を作製した後には、製造工程中において金属層67内の水素が誘電体層69を通して電極に到達しない。
【0093】
この作製方法によれば、第1領域65aのリッジ部上面65cに接触を成す電極71を形成可能である一方で、基板生産物において、III族窒化物半導体領域65の第2領域65b上に設けられた絶縁性の誘電体層69bを利用して、水素吸蔵層67b上に電流ガイド領域を形成できる。水素吸蔵層67bは水素化物を形成可能な材料からなる。III族窒化物半導体領域65は水素を含んでおり、水素吸蔵層67bが、第1領域65aのリッジ部と異なる第2領域65bに接合C2を成す。これ故に、移動する水素は水素吸蔵層67bに吸蔵される。誘電体層69bが水素吸蔵層67bに接合C3を成すように設けられている。水素吸蔵層67bが、第1領域65aのリッジ部と異なる第2領域65b上に設けられるので、移動する水素は、リッジ部上面65cと電極73との接合(界面)C1から離間した水素吸蔵層67bに引き付けられて格納される。さらに、電極71がリッジ部上面65cに接触を成すと共にリッジがp型導電性を有するので、電極71からの電流経路が提供される。電極71の材料は水素吸蔵層67bの材料と独立して決定される。また、第2領域65aと水素吸蔵層67bとの接触面積の総和はリッジ部上面65cと電極71との接触面積の総和より大きい。
【0094】
以上説明したように、絶縁性の誘電体層下に水素吸蔵金属を設けることにより、長期CW発振においてp型クラッド層内に生成されるMg−H複合物から遊離した水素、及び下部半導体層からの水素拡散に由来する原子状水素を誘電体層下の水素吸蔵金属が吸収する。さらに、水素吸蔵金属において水素吸蔵により起こる水素吸蔵金属内部の濃度分布形成が起因となって、原子状水素がさらに水素吸蔵金属内を移動する。p型コンタクト層への水素原子流入がさらに長期間にわたって抑制可能となり、また、マグネシウムと水素との再結合確率を低減でき、安定なp型オーミック接触を維持できる。その結果、素子寿命が延びる。
【0095】
(第2の実施形態)図9は、本実施の形態に係る窒化物発光素子の構造を概略的に示す図面である。窒化物発光素子の構造は例えば半導体レーザに好適な構造を有するが、本実施の形態は半導体レーザに限定されるものではない。図9の(a)部に示されるように、窒化物発光素子11−1は、III族窒化物半導体領域13−1と、活性層15−1と、電極17−1と、金属層19−1と、多孔質陽極酸化アルミナ層21−1とを備える。図9の(b)部及び(c)部に示されるように、金属層19−1及び多孔質陽極酸化アルミナ層21−1は、絶縁層を含む電流ガイド領域23−1に含まれる。III族窒化物半導体領域13−1は、活性層15−1上に設けられ、また第1領域13a−1及び第2領域13b−1を含む。第2領域13b−1は第1領域13a−1に沿って延在する。第1領域13a−1はリッジ部を含み、リッジ部はp型導電性を有する。第1領域13a−1の厚さT13a−1は第2領域13b−1の厚さT13b−1より大きい。III族窒化物半導体領域13−1は、意図的に添加されたp型ドーパントを含み、また成膜原料中、もしくは製造プロセス中に含まれ意図的に添加されるものではない水素を含む。電極17−1は、III族窒化物半導体領域13−1の第1領域13a−1のリッジ部の上面13c−1に接触JC1−1を成す。活性層15−1はIII族窒化物半導体からなる。金属層19−1は、水素化物を形成可能な材料からなるので、水素を捕捉できる層として働く。また、金属層19−1はIII族窒化物半導体領域13−1の第2領域13b−1上に設けられる。多孔質陽極酸化アルミナ層21−1は、金属層19−1上に設けられる。電流ガイド領域23−1は第2領域13b−1上に位置し、またリッジ構造の第1領域13a−1に電流をガイドする。
【0096】
この窒化物発光素子11−1によれば、電極17−1が第1領域13a−1のリッジ部の上面13c−1に接触を成すと共に、金属層19−1が第2領域13b−1上に設けられる。この金属層19−1は水素化物を形成可能な材料からなる。III族窒化物半導体領域13−1は水素を含んでおり、環境条件に応じて移動して金属層19−1に到達した水素は、金属層19−1に捕捉される。多孔質陽極酸化アルミナ層21−1が金属層19−1上に設けられているので、水素は、金属層19−1内の水素量に応じて金属層19−1から多孔質陽極酸化アルミナ層21−1に移動可能である。金属層19−1が、第1領域13a−1のリッジ部と異なる第2領域13b−1上に設けられるので、半導体中を移動する水素は、第1領域13a−1のリッジ部と電極17−1との界面から離れた金属層19−1に捕捉される。さらに、電極17−1が第1領域13a−1のリッジ部の上面13c−1に接触を成すと共にリッジ部がp型導電性を有するので、電極17−1からの電流経路が提供される。電極17−1の材料は、金属層の材料と独立して決定される。
【0097】
本実施例では、電極17−1は、リッジ構造上面13c−1に接触(オーミック接触)JC1−1を成すだけでなく、電流ガイド領域23−1の主面23a−1に接合JC2−1を成す。電極17−1上には、パッド電極18−1が設けられている。図9の(b)部を参照すると、電極17−1は多孔質陽極酸化アルミナ層21−1の上面に接合を成している。
【0098】
窒化物発光素子11−1は、III族窒化物半導体領域25−1を備える。III族窒化物半導体領域25−1は、意図的に添加されたn型ドーパントを含む部分を有し、n型導電性を有する。
【0099】
窒化物発光素子11−1は支持基体27−1を備える。支持基体27−1は、例えばIII族窒化物からなることができる。このIII族窒化物としては、GaN,AlGaN,InGaN,InAlGaNといった窒化ガリウム系半導体やAlNを用いることができ、またInXAlYGa1−X−YN(0≦X≦1、0≦Y≦1)を用いることができる。さらに支持基体27−1は、例えばInAlGaN系、サファイア系、SiC等からなることができる。
【0100】
III族窒化物半導体領域25−1は支持基体27−1の主面27a−1上に設けられる。III族窒化物半導体領域25−1は例えばn型クラッド層を含み、n型クラッド層は例えばn型III族窒化物半導体、好ましくはn型AlGaN,n型InAlGaNといったn型窒化ガリウム系半導体等からなることができる。また、支持基体27−1の裏面27b−1上には電極43−1が設けられる。電極43−1が例えばカソードであるとき、電極17−1が例えばアノードである。
【0101】
III族窒化物半導体領域25−1上には、発光層29−1が設けられる。発光層29−1は活性層15−1を含む。発光層29−1は、必要な場合には、活性層15−1とIII族窒化物半導体領域25−1とに間にIII族窒化物半導体、好ましくは窒化ガリウム系半導体からなる一又は複数の半導体層を含むことができ、該半導体層は例えば光ガイド層31−1として働く。また、発光層29−1は、必要な場合には、活性層15−1とIII族窒化物半導体領域13−1とに間にIII族窒化物半導体、好ましくは窒化ガリウム系半導体からなる一又は複数の半導体層を含むことができ、該半導体層は例えば電子ブロック層33−1(例えばAlGaN等)や光ガイド層35(例えばGaN,InGaN,InAlGaN等)として働く。活性層15−1は少なくとも1層以上の井戸層15a−1を含むことができ、井戸層15a−1はインジウムを含むIII族窒化物半導体、例えばInGaN等からなることができる。また、活性層15−1は障壁層15b−1を含むことができ、障壁層15b−1は窒化ガリウム系半導体、例えばGaN,InGaN等からなることができ、その井戸層と障壁層とでSQWあるいはMQW構造をとることが出来る。障壁層15b−1のバンドギャップは井戸層15a−1のバンドギャップより大きく、MQWの場合では井戸層15a−1及び障壁層15b−1は交互に配列されている。III族窒化物半導体領域25−1、発光層29−1(活性層15−1)及びIII族窒化物半導体領域13−1は、支持基体27−1の主面27a−1の法線方向に順に配列されている。
【0102】
窒化物発光素子11−1では、支持基体27−1の主面27a−1は、極性面、半極性面及び無極性面のいずれにも適用可能である。また、窒化物発光素子11−1の一実施例では、支持基体27−1の主面27a−1は該主面27aのIII族窒化物のc軸に対して63度以上80度以下の範囲の角度で傾斜していることができる。この窒化物発光素子によれば、半極性及び無極性であるため、ピエゾ効果による発光効率低下を抑制することが出来、特に、青紫波長以上での素子特性向上を求める上では有効である。
【0103】
III族窒化物半導体領域13−1はp型半導体からなっており、例えばp型クラッド層37−1(例えばAlGaN,InAlGaN等)を含むことができ、またp型コンタクト層39−1(例えばGaN,AlGaN,InAlGaN等)を含むことができる。III族窒化物半導体領域13−1にはMgがドープされていることができる。金属層19−1は、p型半導体領域内のMg−H結合から遊離する水素を捕獲できる。
【0104】
金属層19−1は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pdの金属及びこれらの金属の少なくとも2種以上の元素からなる合金を含むことができる。これら例示的に列挙された上記元素を含む金属及び合金が金属層19−1のために使用可能である。例えば、金属層19−1の厚さは10オングストローム以上であることができる。
【0105】
金属層19−1は、第2領域13b−1のp型半導体領域に接触を成す。p型半導体領域内のp型ドーパントと水素とが結合した複合物から遊離する水素は金属層に捕捉される。
【0106】
金属層19−1は、III族窒化物半導体領域13−1の第2領域13b−1の上面13d−1に接触を成しており、金属層19−1と第2領域13b−1との接触面積は第1領域(リッジ部)13a−1の上面13c−1と電極17−1との接触面積より大きいことが好ましい。この窒化物発光素子11−1によれば、電極17−1と半導体面13c−1との接触面積に限定されることなく、金属層19−1と第2領域13b−1との接触面積をリッジ部上面13c−1と電極17−1との接触面積より大きくできる。この接触面積は、例えば走査型電子顕微鏡等を用いて寸法を測定することにより特定される。
【0107】
金属層19−1は第1領域13a−1のリッジ部側面に接触を成し、多孔質陽極酸化アルミナ層21−1は金属層19−1の上面19a−1を覆うと共に第1領域13a−1のリッジ部側面に接触を成すことができる。多孔質陽極酸化アルミナ層21−1が金属層19−1の上面19a−1を覆うので、金属層19−1から効率的に水素が移動でき、移動した水素の吸蔵が効果的に可能になる。また、多孔質陽極酸化アルミナ層21−1がリッジ部側面に接触を成すので、金属層19−1を保護でき、また電極17−1から金属層19を電気的に分離できる。例えば、多孔質陽極酸化アルミナ層21−1の厚さは10nm以上であることができる。
【0108】
III族窒化物半導体領域13−1の第2領域13b−1の上面13d−1に接触を成すように水素吸蔵層を形成するプロセスを行った後に室温と高温(室温より高い温度)との間の温度履歴があるとき、半導体中に様々な形態でトラップされていた水素が遊離する。このとき、水素吸蔵層は、到来する水素をその飽和レベルまで取り込み、水素吸蔵層に体積膨張が生じる。III族窒化物半導体領域13−1及び水素吸蔵層の温度が低下すると、水素吸蔵層は、その温度に応じた溶解度レベルまで水素を排出する。この排出される水素は、内圧を呈するため、多孔質陽極酸化アルミナ層21−1の多孔質層との界面を介して層内に取り込まれる。したがって、第2領域13b−1の上面13d−1に接触を成す水素吸蔵層は、以下の説明に示されるように長期信頼性に係る水素の振る舞いを抑制することに有効であるが、半導体発光素子11−1の作製工程において移動する水素にも有効である。
【0109】
多孔質陽極酸化アルミナ層21−1は容易に作製可能である点からは非貫通タイプ構造が望ましい基本構造である。この構造は水素の吸収する金属層19−1と接する側は数nmから数十nm厚のバリアー層を介して多数のナノホールで構成されているがこのバリアー層自体は水素透過可能であり、かつ、ナノホールの表面積の総和が大きいため前記金属層19−1からの水素を十分回収可能となる。
【0110】
或いは、多孔質陽極酸化アルミナ層21−1は貫通タイプ構造を含むことがさらに、好ましい。この貫通タイプは、上記のバリアー層を除去してあるため水素の吸収する金属層19−1からの水素を多孔質陽極酸化アルミナ層21−1内のナノホールを介して金属層19−1及び多孔質陽極酸化アルミナ層21−1の外に排出でき、優れた排出能を有する。さらに、素子によって発生される熱の放散能も高くできる。
【0111】
図9の(c)部に示されるように、電流ガイド領域23−1は、多孔質陽極酸化アルミナ層21−1の上面に設けられた誘電体層41−1を含むことができる。誘電体層41−1は陽極酸化アルミナと異なる材料からなり、例えばシリコン酸化物、シリコン窒化物、Ti,Ta,Zrなどの金属酸化物、窒化物、酸窒化物、又は、フッ化物等からなる。金属層19−1及び多孔質陽極酸化アルミナ層21−1の合計厚みがリッジ部の高さより小さいとき、電流ガイド領域23−1に誘電体層41−1を追加して、電流ガイド領域23−1の厚さをリッジ部の高さに合わせることができる。また、誘電体層41−1の材料を選択して、多孔質陽極酸化アルミナ層21−1と電極17−1との密着性よりも誘電体層41−1と電極17−1との密着性を良好なものとすることができる。
【0112】
電流ガイド領域23−1の厚さをリッジ部の高さに合わせるためには、金属層19−1の厚さはリッジ部の高さより小さく、また多孔質陽極酸化アルミナ層21−1の厚さはリッジ部の高さより小さい。
【0113】
金属層19−1は、以下のような水素に対して効果を有する。
(1)半導体発光素子11−1の製造のための工程が完了した時点で、半導体発光素子11−1内のp型半導体領域に残留している原子状又は分子状の遊離水素。
(2)半導体発光素子11−1が市場に流通した後に長期に使用されて、その動作に伴って半導体発光素子11−1内のトラップサイトにトラップされている原子状又は分子状の水素。この水素は、使用温度では解離しないMg−H複合体の水素ではなく、例えば、安定な水素複合体を形成しない不純物元素や転位などの結晶格子欠陥によりトラップされている。
(3)半導体発光素子11−1が市場に流通した後に使用される環境により、素子外部から素子内に侵入してくる原子状水素。この水素は、熱力学的には高温雰囲気で暴露表面を通して溶解する水素量が暴露雰囲気の水素分圧の平方根に比例するジーベルトの法則(Sievert’s law)に従う。
【0114】
半導体発光素子11−1内に残留する水素は、素子の信頼性に係る事項に関連している。原子状水素は、半導体中を容易に拡散して移動できるので、電極内や電極界面での劣化の他に、素子を構成する半導体層界面のトラップサイトに捕獲されて、原子状水素が集積されて分子状水素を形成となりうる。この分子状水素は界面欠陥を形成して、界面の脆化、原子の整合性低下を引き起こすため素子の性能劣化を引き起こすと共に、性能劣化を進行させる。
【0115】
上記のような水素を捕獲するためには、半導体層に接触を成す金属層19−1は有用である。また、半導体領域13−1と金属層19−1との接合は、電極17−1と半導体面13c−1との接触のように電気的特性を満たすように規定されるものと異なり、この接触に比べて広く、半導体からの水素の移動に好適である。また、金属層19−1がリッジ部と異なる半導体層に接触を成すので、電極と半導体領域との接合と異なる領域に水素を吸蔵できる。
【0116】
半導体発光素子11−1の長期間にわたる使用又は連続動作を行うとき、種々の理由により、半導体発光素子11−1内に遊離水素が発生する。上記の説明から理解されるように、半導体に直接に接触を成す金属層19−1は、半導体発光素子11−1の半導体内を移動する水素量を減少させることができる。
【0117】
図10及び図11は、本実施の形態に係る半導体発光素子の製造における主要な工程を示す図面である。
【0118】
工程S101−1では、図12の(a)部に示されるように、成長炉10a−1を用いてエピタキシャル基板Eを作製する。成長炉10a−1では、例えば有機金属気相成長法でIII族窒化物半導体の成膜が行われる。この成膜では、III族窒化物半導体に有機金属気相成長の原料に起因する水素が取り込まれる。工程S102−1では、基板51−1を準備する。この基板51−1は例えばIII族窒化物からなる主面51a−1を有することができる。工程S103−1では、有機金属原料及びn型ドーパントガスを成長炉10a−1に供給しながら、n導電性のIII族窒化物半導体領域53−1を基板51−1の主面51a−1上に成長する。III族窒化物半導体領域53−1は、一又は複数のIII族窒化物半導体層を含み、例えばn型クラッド層を含むことができる。n型ドーパントは例えばシリコンを含むことができる。
【0119】
引き続く工程では、n型III族窒化物半導体領域53−1上に発光層55−1を成長する。発光層55−1の作製では、工程S104−1では、有機金属原料を成長炉10a−1に供給しながらn側の光ガイド層を第1導電型III族窒化物半導体領域53−1上に成長する。工程S105−1では、有機金属原料を成長炉10a−1に供給しながら、この光ガイド層上に活性層を成長する。活性層の成長では、工程S106−1において有機金属原料を成長炉10a−1に供給しながら障壁層を成長すると共に、工程S107−1において有機金属原料を成長炉10a−1に供給しながら井戸層を成長する。必要に応じて、障壁層及び井戸層の成長を繰り返す。工程S108−1及びS109−1において、有機金属原料を成長炉10a−1に供給しながら電子ブロック層及びp側の光ガイド層を成長する。
【0120】
工程S110−1では、有機金属原料及びp型ドーパントガスを成長炉10a−1に供給しながらIII族窒化物半導体領域57−1を発光層55−1の主面上に成長する。III族窒化物半導体領域57−1は水素及びp型ドーパントを含む。p型のIII族窒化物半導体領域57−1の成膜では、工程S111−1において、発光層55−1の主面上にp型クラッド層のための第1III族窒化物半導体膜を成長すると共に、工程112−1において、この第1III族窒化物半導体膜上にp型コンタクト層のための第2III族窒化物半導体膜を成長して、エピタキシャル基板Eを形成する。p型ドーパントは例えばマグネシウムを含むことができ、この場合、p型半導体領域にはMg−H結合を有する複合体が含まれる。
【0121】
エピタキシャル基板Eを成長炉10a−1から取り出した後に、工程S113−1では、基板生産物を作製する。このために、工程S114−1では、リッジ形成のためのマスクをエピタキシャル基板E−1の主面上に形成する。このマスクの形成のために、まず、図12の(b)部に示されるように、エピタキシャル基板E−1の主面上に、第1の金属マスク膜59−1、第2の金属マスク膜61−1及び絶縁膜63−1を順に成長した後に、リッジ構造の幅及び向きを規定するレジストマスクM1−1を絶縁膜63−1上に形成する。第1の金属マスク膜59−1は例えばMo,Tiであり、第2の金属マスク膜61−1は例えばAlであり、絶縁膜63−1は例えばシリコン酸化物である。次いで、図13の(a)部に示されるように、レジストマスクM1−1を用いて第1の金属マスク膜59−1、第2の金属マスク膜61−1及び絶縁膜63−1を順にエッチングして、マスクM2−1を形成する。マスクM2−1は、第1の金属マスク層59a−1、第2の金属マスク層61a−1及び絶縁層63a−1を含み、これらの層59a−1,61a−1,63a−1はエピタキシャル基板E−1の主面上に順に配列される。マスクM2−1を形成した後に、レジストマスクM1−1を除去することができる。
【0122】
工程S115−1では、図13の(b)部に示されるように、マスクM2−1を用いてp型III族窒化物半導体領域57−1を処理装置10b−1でエッチングして、エッチングされたIII族窒化物半導体領域65−1を形成する。III族窒化物半導体領域65−1は、第1領域65a−1及び第2領域65b−1を含む。第2領域65b−1は、軸Ax−1の方向に延在する第1領域65a−1に沿って設けられる。第1領域65a−1はリッジ部を含み、リッジ部はp型導電性を有する。第1領域65a−1の厚さは第2領域65b−1の厚さより大きい。III族窒化物半導体領域65−1は、意図的に添加されたp型ドーパントを含み、また有機金属原料、あるいは、製造工程に起因した水素を含む。基板51−1の主面51a−1の延在方向に、第1領域65a−1及び第2領域65b−1が交互に配列されており、この配列は軸Ax−1の方向と交差する方向に成る。一素子分の素子幅では、リッジ構造の第1領域65a−1が第2領域65b−1の間に設けられる。リッジ部上面65c−1上には、マスクM2−1が残されている。
【0123】
工程S115−1では、必要な場合、図14の(a)部に示されるように、処理装置10c−1において第1の金属マスク層59a−1を第2の金属マスク層61a−1及び絶縁層63a−1に対して選択的にエッチングして、第1の金属マスク層59b−1を形成する。このエッチングは、例えばRIEを用いた等方性エッチングにより可能である。第1の金属マスク層59b−1、第2の金属マスク層61a−1及び絶縁層63a−1からなるマスクを引き続き、マスクM2−1として参照する。
【0124】
引き続き、工程S116−1では、図14の(b)部に示されるように、マスクM2−1を用いて処理装置10d−1で水素吸蔵層67−1を成長する。水素吸蔵層67−1は、マスクM2−1上に成長された第1部分67a−1と、III族窒化物半導体領域65−1の第2領域65b−1上に成長された第2部分67b−1とを含む。マスクM2−1の高さにより、第1部分67a−1は第2部分67b−1から分離されている。水素吸蔵層67−1は、水素化物を形成可能な金属層を含むことができる。水素吸蔵層67−1は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pdの金属及びこれらの金属の少なくとも2種以上の元素からなる合金を含むことができる。これら例示的に列挙された上記元素を含む金属及び合金が水素吸蔵層67−1のために使用可能である。
【0125】
工程S117−1では、図15の(a)部に示されるように、マスクM2−1を用いて処理装置10e−1でアルミニウム層69−1を成長する。アルミニウム層69−1は、マスクM2−1上に成長された第1部分69a−1と、III族窒化物半導体領域65−1の第2領域65b−1上に成長された第2部分69b−1とを含む。マスクM2−1の厚さにより、第1部分69a−1は第2部分69b−1から分離されている。例えば、アルミニウム層69−1の厚さは10nm以上であることができ、アルミニウム層69の厚さは、リッジ高さ、及び、p電極密着強度、を考慮したものであることができる。
【0126】
水素吸蔵層67−1及びアルミニウム層69−1の総厚は、リッジ部の高さに合わすように決定されることが好ましい。また、必要な場合には、アルミニウム層69−1を成長した後に、アルミニウム層69−1上に誘電体層を更に成長することができる。この形態では、水素吸蔵層67−1、アルミニウム層69−1及び誘電体層の総厚は、リッジ部の高さに合わすように決定されることが好ましい。
【0127】
これらの工程S116−1及びS117−1の後に、図15の(b)部に示されるように、工程S118−1においてリフトオフ法によりマスクM2−1を処理装置10f−1で除去して、基板生産物SP1−1を作製する。これによりマスクM2−1上に順に設けられた水素吸蔵層67−1の部分67a−1及びアルミニウム層69−1の部分69a−1は消失する。基板生産物SP1−1は、III族窒化物半導体領域65−1の第2領域65b−1上に順に設けられた水素吸蔵層67−1の部分67b−1(引き続く説明では「水素吸蔵層67b−1」として参照する)及びアルミニウム層69−1の部分69b−1(引き続く説明では「アルミニウム層69b−1」として参照する)を含む。
【0128】
工程S119−1では、図16の(a)部に示されるように、アルミニウム層69−1を処理装置10g−1で陽極酸化法により処理して、水素吸蔵層67b−1上に多孔質陽極酸化アルミナ層71−1を形成する。陽極酸化は、例えば電解処理槽内の溶液(例えば希硫酸)において、アルミニウム層69b−1を正極とし、また基板生産物SP1−1に電極(例えばPt電極)を負極として対向させる。摂氏10度以下の温度で数十ボルトの電圧を印加することにより、アルミニウム層を陽極酸化することができる。
【0129】
これらの工程により、水素吸蔵層67b−1に多孔質陽極酸化アルミナ層71−1を含む基板生産物が形成される。
【0130】
陽極酸化法の適用においては、非貫通タイプの陽極酸化アルミナが形成される。この陽極酸化アルミナは、多数の非貫通ナノホールを含む。非貫通ナノホールはバリアー底部を有している。陽極酸化アルミナの外表の総面積に比べて、ナノホールの表面積は非常に大きな値である。この陽極酸化アルミナに貫通処理を施して、貫通タイプの陽極酸化アルミナに変更することができる。なお、陽極酸化アルミナ層の貫通化処理としては、例えば、陽極酸化処理直後に電解処理液中で無電流負荷状態で処理中温度〜常温にて適当な時間で継続浸漬する方法等が適用できる。
【0131】
この作製方法によれば、リフトオフ及びエッチングのためのマスクM2−1を用いてリッジ部の位置を規定すると共に、このマスクM2−1を用いて、水素吸蔵層67b−1及びアルミニウム層69−1の堆積を行う。この堆積の後に、マスクM2−1を除去して、さらにアルミニウム層68b−1から多孔質陽極酸化アルミナ層71−1を形成する。これ故に、リッジ部に対して水素吸蔵層67b−1及び多孔質陽極酸化アルミナ層71−1が自己整合的に作製される。水素吸蔵層67b−1及び多孔質陽極酸化アルミナ層71−1は電流ガイド領域を構成する。
【0132】
工程S120−1では、図16の(a)部に示されるように、III族窒化物半導体領域65−1の第1領域65a−1のリッジ部の上面65c−1に接合C1−1を成すアノード電極73−1を形成する。アノード電極73−1としては、Au,Ni,Pd、In,Pt,Al,Sn等の単一金属、あるいはこれらの合金を用いることができる。また、電極73−1及び電流ガイド領域上に設けられアノード電極73−1を覆うパッド電極及び、基板51−1の裏面51b−1にカソード電極を形成できる。
【0133】
この作製方法によれば、第1領域65a−1のリッジ部上面65c−1に接触を成す電極73−1を形成可能である一方で、基板生産物において、III族窒化物半導体領域65−1の第2領域65b−1上に順に設けられたアルミニウム層69b−1を陽極酸化法により処理して、水素吸蔵層67b−1上に多孔質陽極酸化アルミナ層71−1を形成できる。水素吸蔵層67b−1は水素化物を形成可能な材料からなる。III族窒化物半導体領域65−1は水素を含んでおり、水素吸蔵層67b−1が、第1領域65a−1のリッジ部と異なる第2領域65b−1に接合C2−1を成す。これ故に、移動する水素は水素吸蔵層67b−1に吸蔵される。多孔質陽極酸化アルミナ層71−1が水素吸蔵層67b−1に接合C3−1を成すように設けられているので、水素は、水素吸蔵層67b−1内の水素量に応じて水素吸蔵層67b−1から多孔質陽極酸化アルミナ層71−1に移動可能である。水素吸蔵層67b−1が、第1領域65a−1のリッジ部と異なる第2領域65b−1上に設けられるので、移動する水素は、リッジ部上面65c−1と電極73−1との接合C1−1(界面)から離れた水素吸蔵層67b−1に捕捉される。さらに、電極73−1がリッジ部上面65c−1に接触を成すと共にリッジがp型導電性を有するので、電極73−1からの電流経路が提供される。電極73−1の材料は水素吸蔵層67b−1の材料と独立して決定される。また、第2領域65a−1と水素吸蔵層67b−1との接触面積の総和はリッジ部上面65c−1と電極73−1との接触面積の総和より大きい。
【0134】
以上説明したように、陽極酸化アルミナ下に水素吸蔵金属を設けることにより、長期CW発振においてp型クラッド層内に生成されるMg−H複合体から脱離した水素、及び下部半導体層からの水素拡散に由来する原子状水素を陽極酸化アルミナ下の水素吸蔵金属が吸引する。さらに、水素吸蔵金属において水素吸蔵により起こる水素吸蔵金属内部の内圧が起因となって、原子状水素がさらに陽極酸化アルミナの多孔質層へ移動する。p型コンタクト層への水素原子流入がさらに長期間にわたって抑制可能となり、また、マグネシウムと水素との再結合確率を低減でき、安定なp型オーミック接触を維持できる。その結果、素子寿命が延びる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本実施の形態によれば、水素の移動による素子寿命の短縮を改善できる窒化物発光素子が提供される。また、本実施の形態によれば、水素の移動による素子寿命の短縮を改善できる窒化物発光素子を作製する方法が提供される。
【符号の説明】
【0136】
11…窒化物発光素子、13…III族窒化物半導体領域、15…活性層、17…電極、18…パッド電極、19…金属層、21…誘電体層、23…電流ガイド領域、JC1…接触(オーミック接触)、25…III族窒化物半導体領域、27…支持基体、29…発光層、31、35…光ガイド層、33…電子ブロック層、43…電極、E…エピタキシャル基板、51…基板、53…III族窒化物半導体領域、55…発光層、57…III族窒化物半導体領域、59…第1の金属マスク膜、61…第2の金属マスク膜、63…絶縁膜、59a…第1の金属マスク層、61a…第2の金属マスク層、63a…絶縁層、65…エッチングされたIII族窒化物半導体領域、67…水素吸蔵層、69…誘電体層、71…アノード電極、M1…レジストマスク、M2…マスク、SP1…基板生産物、10a…成長炉、10b〜10g…処理装置、11−1…窒化物発光素子、13−1…III族窒化物半導体領域、15−1…活性層、17−1…電極、18−1…パッド電極、19−1…金属層、21−1…多孔質陽極酸化アルミナ層、23−1…電流ガイド領域、JC1−1…接触(オーミック接触)、25−1…III族窒化物半導体領域、27−1…支持基体、29−1…発光層、31−1、35−1…光ガイド層、33−1…電子ブロック層、43−1…電極、E−1…エピタキシャル基板、51−1…基板、53−1…III族窒化物半導体領域、55−1…発光層、57−1…III族窒化物半導体領域、59−1…第1の金属マスク膜、61−1…第2の金属マスク膜、63−1…絶縁膜、59a−1…第1の金属マスク層、61a−1…第2の金属マスク層、63a−1…絶縁層、65−1…エッチングされたIII族窒化物半導体領域、67−1…水素吸蔵層、69−1…アルミニウム層、71−1…多孔質陽極酸化アルミナ層、73−1…アノード電極、M1−1…レジストマスク、M2−1…マスク、SP1−1…基板生産物、10a−1…成長炉、10b−1〜10g−1…処理装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物発光素子であって、
III族窒化物半導体からなる活性層と、
p型導電性のリッジ部を含む第1領域と該第1領域に沿って延在する第2領域とを有しており、水素及びp型ドーパントを含むIII族窒化物半導体領域と、
前記III族窒化物半導体領域の前記第1領域及び前記第2領域の上に設けられる電極と、
前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上に設けられ、水素化物を形成可能な材料からなる金属層と、
前記金属層に接合を成し、前記電極と前記金属層との間に設けられた誘電体層とを備え、
前記III族窒化物半導体領域は、前記活性層の上に設けられ、
前記電極は、前記リッジ部の上面に接触を成す、窒化物発光素子。
【請求項2】
前記金属層は、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上面に接触を成しており、
前記金属層と前記第2領域との接触面積は前記リッジ部の前記上面と前記電極との接触面積より大きい、請求項1に記載された窒化物発光素子。
【請求項3】
前記金属層は、前記第2領域のp型半導体領域に接触を成す、請求項1又は請求項2に記載された窒化物発光素子。
【請求項4】
前記III族窒化物半導体領域にはMgがドープされている、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項5】
前記金属層は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pdの元素及び該元素の少なくとも2種の元素からなる合金を含む、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項6】
前記誘電体層は前記電極と前記金属層との間に設けられ、
前記誘電体層は、シリコン酸化膜、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、酸化ハフニウム、タンタル酸化物、強誘電体、及びポリイミド系有機物の少なくともいずれかを含む、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項7】
III族窒化物からなる支持基体と、
前記支持基体の主面の上に設けられたIII族窒化物半導体層と、を更に備え、
前記III族窒化物半導体層はn型導電性を有し、
前記活性層は前記III族窒化物半導体層と前記III族窒化物半導体領域との間に設けられる、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項8】
前記支持基体の前記主面は前記III族窒化物のc軸に対して63度以上80度以下の範囲の角度で傾斜している、請求項7に記載された窒化物発光素子。
【請求項9】
前記金属層は前記リッジ部の側面に接触を成し、
前記誘電体層は前記金属層の上面を覆うと共に前記リッジ部の側面に接触を成す、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項10】
前記金属層は前記リッジ部の側面から離間しており、
前記誘電体層は前記金属層の上面を覆うと共に前記リッジ部の側面に接触を成す、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項11】
III族窒化物半導体からなる活性層と、
リッジ部を含む第1領域と該第1領域に沿って延在する第2領域とを有しており、前記活性層の上に設けられたIII族窒化物半導体領域と、
前記III族窒化物半導体領域の前記第1領域の前記リッジ部の上面に接触を成す電極と、
前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上に設けられ水素化物を形成可能な材料からなる金属層と、
前記金属層の上に設けられた多孔質陽極酸化アルミナ層と、
を備え、
前記III族窒化物半導体領域は水素及びp型ドーパントを含み、
前記リッジ部はp型導電性を有する、窒化物発光素子。
【請求項12】
前記金属層は、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上面に接触を成しており、
前記金属層と前記第2領域との接触面積は前記リッジ部の前記上面と前記電極との接触面積より大きい、請求項11に記載された窒化物発光素子。
【請求項13】
前記金属層は、前記第2領域のp型半導体領域に接触を成す、請求項11又は請求項12に記載された窒化物発光素子。
【請求項14】
前記III族窒化物半導体領域にはMgがドープされている、請求項11〜請求項13のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項15】
前記金属層は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pdの金属及び該金属の少なくとも2種以上の元素からなる合金を含む、請求項11〜請求項14のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項16】
前記金属層は前記リッジ部の側面に接触を成し、
前記多孔質陽極酸化アルミナ層は前記金属層の上面を覆うと共に前記リッジ部の側面に接触を成す、請求項11〜請求項15のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項17】
III族窒化物からなる支持基体と、
前記支持基体の主面の上に設けられたIII族窒化物半導体層と、
を更に備え、
前記III族窒化物半導体層はn型導電性を有し、
前記活性層は前記III族窒化物半導体層と前記III族窒化物半導体領域との間に設けられる、請求項11〜請求項16のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項18】
前記支持基体の前記主面は前記III族窒化物のc軸に対して63度以上80度以下の範囲の角度で傾斜している、請求項17に記載された窒化物発光素子。
【請求項19】
前記多孔質陽極酸化アルミナ層は貫通タイプである、請求項11〜請求項18のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項20】
前記多孔質陽極酸化アルミナ層は非貫通タイプである、請求項11〜請求項18のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項21】
III族窒化物半導体層を含む活性層と、
リッジ部を含む第1領域と該第1領域に沿って延在する第2領域とを有しており、前記活性層の上に設けられたIII族窒化物半導体領域と、
前記III族窒化物半導体領域の前記第1領域の前記リッジ部の上面に接触を成す電極と、
前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上に設けられた電流ガイド領域と、
を備え、
前記III族窒化物半導体領域はp型ドーパントを含み、
前記リッジ部はp型導電性を有し、
前記電流ガイド領域は、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上に設けられた水素吸蔵層と、前記水素吸蔵層の上に設けられた多孔質陽極酸化アルミナ層とを含む、窒化物発光素子。
【請求項22】
前記電極は、前記電流ガイド領域の上に設けられ、
当該発光素子は、前記電極及び前記電流ガイド領域の上に設けられたパッド電極を更に備える、請求項21に記載された窒化物発光素子。
【請求項1】
窒化物発光素子であって、
III族窒化物半導体からなる活性層と、
p型導電性のリッジ部を含む第1領域と該第1領域に沿って延在する第2領域とを有しており、水素及びp型ドーパントを含むIII族窒化物半導体領域と、
前記III族窒化物半導体領域の前記第1領域及び前記第2領域の上に設けられる電極と、
前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上に設けられ、水素化物を形成可能な材料からなる金属層と、
前記金属層に接合を成し、前記電極と前記金属層との間に設けられた誘電体層とを備え、
前記III族窒化物半導体領域は、前記活性層の上に設けられ、
前記電極は、前記リッジ部の上面に接触を成す、窒化物発光素子。
【請求項2】
前記金属層は、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上面に接触を成しており、
前記金属層と前記第2領域との接触面積は前記リッジ部の前記上面と前記電極との接触面積より大きい、請求項1に記載された窒化物発光素子。
【請求項3】
前記金属層は、前記第2領域のp型半導体領域に接触を成す、請求項1又は請求項2に記載された窒化物発光素子。
【請求項4】
前記III族窒化物半導体領域にはMgがドープされている、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項5】
前記金属層は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pdの元素及び該元素の少なくとも2種の元素からなる合金を含む、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項6】
前記誘電体層は前記電極と前記金属層との間に設けられ、
前記誘電体層は、シリコン酸化膜、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物、酸化ハフニウム、タンタル酸化物、強誘電体、及びポリイミド系有機物の少なくともいずれかを含む、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項7】
III族窒化物からなる支持基体と、
前記支持基体の主面の上に設けられたIII族窒化物半導体層と、を更に備え、
前記III族窒化物半導体層はn型導電性を有し、
前記活性層は前記III族窒化物半導体層と前記III族窒化物半導体領域との間に設けられる、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項8】
前記支持基体の前記主面は前記III族窒化物のc軸に対して63度以上80度以下の範囲の角度で傾斜している、請求項7に記載された窒化物発光素子。
【請求項9】
前記金属層は前記リッジ部の側面に接触を成し、
前記誘電体層は前記金属層の上面を覆うと共に前記リッジ部の側面に接触を成す、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項10】
前記金属層は前記リッジ部の側面から離間しており、
前記誘電体層は前記金属層の上面を覆うと共に前記リッジ部の側面に接触を成す、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項11】
III族窒化物半導体からなる活性層と、
リッジ部を含む第1領域と該第1領域に沿って延在する第2領域とを有しており、前記活性層の上に設けられたIII族窒化物半導体領域と、
前記III族窒化物半導体領域の前記第1領域の前記リッジ部の上面に接触を成す電極と、
前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上に設けられ水素化物を形成可能な材料からなる金属層と、
前記金属層の上に設けられた多孔質陽極酸化アルミナ層と、
を備え、
前記III族窒化物半導体領域は水素及びp型ドーパントを含み、
前記リッジ部はp型導電性を有する、窒化物発光素子。
【請求項12】
前記金属層は、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上面に接触を成しており、
前記金属層と前記第2領域との接触面積は前記リッジ部の前記上面と前記電極との接触面積より大きい、請求項11に記載された窒化物発光素子。
【請求項13】
前記金属層は、前記第2領域のp型半導体領域に接触を成す、請求項11又は請求項12に記載された窒化物発光素子。
【請求項14】
前記III族窒化物半導体領域にはMgがドープされている、請求項11〜請求項13のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項15】
前記金属層は、Ti,Mg,Mn,Zr,Ni,Ca,Nb,V,Pdの金属及び該金属の少なくとも2種以上の元素からなる合金を含む、請求項11〜請求項14のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項16】
前記金属層は前記リッジ部の側面に接触を成し、
前記多孔質陽極酸化アルミナ層は前記金属層の上面を覆うと共に前記リッジ部の側面に接触を成す、請求項11〜請求項15のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項17】
III族窒化物からなる支持基体と、
前記支持基体の主面の上に設けられたIII族窒化物半導体層と、
を更に備え、
前記III族窒化物半導体層はn型導電性を有し、
前記活性層は前記III族窒化物半導体層と前記III族窒化物半導体領域との間に設けられる、請求項11〜請求項16のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項18】
前記支持基体の前記主面は前記III族窒化物のc軸に対して63度以上80度以下の範囲の角度で傾斜している、請求項17に記載された窒化物発光素子。
【請求項19】
前記多孔質陽極酸化アルミナ層は貫通タイプである、請求項11〜請求項18のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項20】
前記多孔質陽極酸化アルミナ層は非貫通タイプである、請求項11〜請求項18のいずれか一項に記載された窒化物発光素子。
【請求項21】
III族窒化物半導体層を含む活性層と、
リッジ部を含む第1領域と該第1領域に沿って延在する第2領域とを有しており、前記活性層の上に設けられたIII族窒化物半導体領域と、
前記III族窒化物半導体領域の前記第1領域の前記リッジ部の上面に接触を成す電極と、
前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上に設けられた電流ガイド領域と、
を備え、
前記III族窒化物半導体領域はp型ドーパントを含み、
前記リッジ部はp型導電性を有し、
前記電流ガイド領域は、前記III族窒化物半導体領域の前記第2領域の上に設けられた水素吸蔵層と、前記水素吸蔵層の上に設けられた多孔質陽極酸化アルミナ層とを含む、窒化物発光素子。
【請求項22】
前記電極は、前記電流ガイド領域の上に設けられ、
当該発光素子は、前記電極及び前記電流ガイド領域の上に設けられたパッド電極を更に備える、請求項21に記載された窒化物発光素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−119645(P2012−119645A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−753(P2011−753)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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