説明

立体像撮影装置および電子機器

【課題】小型であって、望遠端や広角端でも自然な立体感がある画像を撮影できる立体像撮影装置を提供する。
【解決手段】第1レンズから被写体までの想定距離をDs(>1250)mm、35mmフィルム上での視差をkmm、第1〜第4レンズ群の焦点距離をfmmとしたとき、立体像撮影範囲2500mmでの基線長L1と、立体像撮影範囲を1500mmの基線長L2が、L1=k×(Lmax1×Lmin1)/(Lmax1−Lmin1)/f、L2=k×(Lmax2×Lmin2)/(Lmax2−Lmin2)/f、Lmax1:Ds+1250、Lmin1:Ds−1250、Lmax2:Ds+750、Lmin2:Ds−750、k:1.2mm、f:105mmで表され、左目用の第1レンズの光軸中心OLと右目用の第1レンズの光軸中心ORとの距離で表される基線長LLRは、L1<LLR<L2の条件を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、立体像撮影装置およびその立体像撮影装置を備えた電子機器に関し、特に、電子機器である携帯型情報端末および携帯電話に内蔵される小型の立体像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、スマートフォンやPDA(Personal Digital Assistant:パーソナル・デジタル・アシスタント)に代表される携帯型の電子機器等が普及し、それらの多くに小型カメラが搭載されている。このようなカメラは、小型のCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor:コンプリメンタリ・メタル・オキサイド・セミコンダクタ)の撮像センサを用いることにより小型化を実現している。さらに、カメラの高解像度化、高性能化、多機能化が求められている。
【0003】
また、近年、3次元(3D)ディスプレイが普及してきており、ユーザーの立体視への興味が高まっている。例えば、小型カメラを備えた電子機器で自分が撮影した写真(静止画)や動画等をディスプレイに立体表示することが可能であり、自分の撮影した好みの静止画や動画等をディスプレイ上に立体表示させたいという要望が強まっている。
【0004】
これらの観点から、例えば、電子機器に搭載されているような高画素やズーム機能のみを備えたカメラでは、ユーザーの期待に応えることができず、立体像をも撮影可能にするカメラへの期待が高まっている。
【0005】
従来の立体像を撮影できるカメラとして、特許文献1(特開2009−47894号公報)に記載されたカメラがある。このカメラは、複数の視差像を合成することで立体像を得ることができる構成であり、複数の視差像を得るためには、各々の光取込部の間隔(基線長)を確保する必要がある。
【0006】
上記従来のカメラでは、正しく立体感を得るための左右の光取込部の光軸中心間の距離(基線長)は、撮影距離の1/40程度が適切であるとされている。このようなカメラの構成の場合、机上の小物など撮影距離60cm程度のマクロ撮影においては基線長15mmとなり、通常の35mmカメラやコンパクトデジタルカメラを横に2台並べる方法や、従来の光学系を2個並べる方法でも実現は困難となる。このカメラの構成では、いわゆる屈曲光学系を用いることで薄型デジタル立体カメラを実現する構成において、2個のレンズブロックを互いに対物レンズ側(撮影窓側)を近付けるように配置したことで、基線長の最小値を小さくすることができ、マクロ撮影の場合において短い撮影距離に応じた短い基線長で立体撮影が可能となる。
【0007】
上記従来の特許文献1に示されている様なカメラの構成では、被写体までの距離が近い時(マクロ撮影時)には、立体感のある画像を撮影することができるが、撮影頻度が高い被写体までの距離が2m程度の撮影には基線長が短く、視差による像ずれが小さいため、立体感のある像を撮影するのが困難である。また、被写体の距離によって基線長が変化するカメラの構成では、光学系を駆動させる機構部品が多数必要なため、装置が大型化するだけでなく、組立時の部品が多いため、高度な組立精度を要求され、コスト面で不利である。特に、携帯電話やデジタルスチルカメラに応用する場合には、低コストの立体像撮影装置であることが望ましく、駆動部品は必要最小限であることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−47894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明の課題は、小型であって、望遠端や広角端でも自然な立体感がある画像を撮影できる立体像撮影装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明の立体像撮影装置は、
立体像を生成するための複数の視差画像が得られるように、被写体からの光を夫々取り込む複数の光取込部と、
焦点距離を変化させるズーム機能を有し、上記複数の光取込部により夫々取り込まれた上記被写体からの光を複数のレンズを介して結像させる結像部と
を備え、
上記複数の光取込部から上記被写体までの想定距離をDs[mm]とし、35mmフィルム上での視差をk[mm]とし、上記焦点距離をf[mm]として、立体像撮影範囲を2500[mm]とするときの基線長L1と、立体像撮影範囲を1500[mm]とするときの基線長L2は、
L1 = k×(Lmax1×Lmin1)/(Lmax1−Lmin1)/f
L2 = k×(Lmax2×Lmin2)/(Lmax2−Lmin2)/f
Lmax1 : Ds+1250[mm]
Lmin1 : Ds−1250[mm]
Lmax2 : Ds+750[mm]
Lmin2 : Ds−750[mm]
k : 1.2[mm]
f : 105[mm]
(ただし、Ds>1250)
で表され、
上記複数の光取込部のうちの少なくとも2つの光取込部において、望遠撮像時の上記2つの光取込部の光軸中心間の距離で表される基線長LLR[mm]は、
L1 < LLR <L2 ……… (式1)
の条件を満足することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、上記(式1)の条件を満足するように、光取込部を適切に配置することで、望遠端撮影時の左右像の視野による像ずれが生じて、画面全域で立体感のある画像を撮影することができる。したがって、小型であって、望遠端や広角端でも自然な立体感がある画像を撮影できる立体像撮影装置を実現できる。
【0012】
また、一実施形態の立体像撮影装置では、
上記複数の光取込部により夫々取り込まれた上記被写体からの光を合成する光路合成部と、
上記複数の光取込部により夫々取り込まれた上記被写体からの光が異なる像面に結像するように、上記結像部を透過した光を分離する光路分離部と
上記光路合成部は、少なくとも1つの光路変換面を有する光路変換素子を有すると共に、
上記光路分離部は、少なくとも1つの光路変換面を有する光路変換素子を有し、
上記光路合成部の上記光路変換素子の入射面から最初の光路変換面までの光路長をlとし、その最初の光路変換面から上記光路変換素子の出射面までの光路長をlとするとき、
≦l ……… (式2)
の条件を満足する。
【0013】
上記実施形態によれば、複数の光取込部より取り込んだ光線を光路合成部によって合成し、結像部を介して集光させて、撮像素子の直前で再び光路を光路分離部により分割し、別々の撮像素子上に結像させることで、被写体を複数の異なった角度から撮影することが可能となり、立体像を得ることができる。そして、光路変換素子が上記(式2)の条件を満たすことで、光取込部の光軸方向の厚みを薄くでき、コンパクトな撮影装置とすることができると共に、光取込部や結像部などの光学部材の様々な配置が可能となり(光路変換素子内部で複数回反射させる系など)、結像光学系を構成する光学部材の配置の自由度が上がる。
【0014】
また、一実施形態の立体像撮影装置では、
上記光路合成部の上記光路変換素子および上記光路分離部の上記光路変換素子は、偏光変換素子である。
【0015】
上記実施形態によれば、複数の光取込部により夫々取り込まれた被写体からの光の合成と分離を簡単な構成で行うことができる。
【0016】
また、一実施形態の立体像撮影装置では、
上記光路合成部の上記光路変換素子に入射する光線の有効径をDoとし、上記光路変換素子から出射する光線の有効径をDiとするとき、
Do≧Di ……… (式3)
の条件を満たす。
【0017】
上記実施形態によれば、上記(式3)の条件を満たして、光路変換素子に入射する光線の光束径を小さくすることで、立体像撮影装置が厚み方向に大きくなるのを抑制できると共に、第1レンズ群をコンパクトな光学系にすることができる。
【0018】
また、一実施形態の立体像撮影装置では、
上記光路合成部の上記光路変換素子における入射面から最初の光路変換面までの光路長をlとし、上記光路合成部の上記光路変換素子における上記最初の光路変換面から出射面までの光路長をlとし、上記光路分離部の上記光路変換素子における入射面から出射面までの光学全長をLP2とし、上記光取込部から像面までの全光路長をLallとするとき、
(l+l+LP2)/Lall > 0.4 ……… (式4)
の条件を満たす。
【0019】
上記実施形態によれば、上記(式4)の条件を満たすことで、光路合成部の光路変換素子および光路分離部の光路変換素子の配置レイアウトの自由度を高めることができ、コンパクトな光学系を実現できる。また、特に、光路分離部の光路変換素子における入射面から出射面までの光学全長LP2を長くすることで、最終レンズから像面までの距離を大きく取ることができるようになり、像面において、周辺光量比が均一な画像を得ることができる。
【0020】
また、一実施形態の立体像撮影装置では、
上記複数の光取込部および上記結像部は、物体側から像面側に向かって順に、像面からの距離が固定された負の屈折力を有する第1レンズ群と、変倍時に移動する正の屈折力を有する第2レンズ群と、変倍時および合焦時に移動する負の屈折力を有する第3レンズ群と、像面からの距離が固定された正の屈折力を有する第4レンズ群で構成され、
上記複数の光取込部は、上記第1レンズ群の最も物体側のレンズであり、負の屈折力を有する。
【0021】
上記実施形態によれば、広角端と中間焦点距離および望遠端において良好な光学特性(球面収差、非点収差および歪曲収差などの特性)を得ることができると共に、望遠端でも明るさの劣化を最小限に抑えることができる。さらに、第1レンズ群の最も物体側のレンズである複数の光取込部が負の屈折力を有することによって、光路合成部に入射する光線の有効径を小さくし、光路合成部の光路変換素子が厚み方向(光取込部の光軸方向)に大きくなるのを抑制している。
【0022】
また、一実施形態の立体像撮影装置では、
上記光路合成部は、上記第1レンズ群内に配置され、少なくとも1つの光路変換面を有する光路変換素子を有すると共に、
上記光路合成部の上記光路変換素子における入射面から出射面までの光学全長をLP1とし、上記第1レンズ群の焦点距離をf1とするとき、
−0.8 < f1/LP1 < −0.1 ……… (式5)
の条件を満足する。
【0023】
上記実施形態によれば、上記(式5)の条件を満たす様にすることで、厚み方向への大きさを小さくできるため、立体像撮影装置の配置レイアウトの自由度を高めながら、厚み方向(光取込部の光軸方向)に対して、最小な光学系を実現できる。
【0024】
また、一実施形態の立体像撮影装置では、
上記光路合成部の上記光路変換素子における入射面から出射面までの光学全長をLP1とし、上記光路分離部の上記光路変換素子における入射面から出射面までの光学全長をLP2とするとき、
0.1 < LP2/LP1 < 0.3 ……… (式6)
の条件を満足する。
【0025】
上記実施形態によれば、上記(式6)の条件を満足することで、立体像撮影装置の占有体積を最小にすることができ、装置の小型化に貢献できると共に、第4レンズ群と撮像素子との距離を離すことができる。
【0026】
また、この発明の電子機器では、
上記のいずれか1つの立体像撮影装置を備えたことを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、上記立体像撮影装置を携帯電話等の小型の電子機器に搭載することで、撮像した静止画や動画に対して、立体像を撮影する立体画像撮影装置として応用することが可能となり、高機能かつ付加価値の高い小型の電子機器を提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上より明らかなように、この発明の立体像撮影装置によれば、小型であって、望遠端や広角端でも自然な立体感がある画像を撮影できる立体像撮影装置を提供することができる。
【0029】
さらに、この発明の電子機器によれば、小型であって、望遠端や広角端でも自然な立体感がある画像を撮影できる電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1はこの発明の第1実施形態の立体像撮影装置の一例としてのズームレンズの構成を示す広角端における断面図である。
【図2】図2は上記ズームレンズの構成を示す中間焦点距離における断面図である。
【図3】図3は上記ズームレンズの構成を示す望遠端における断面図である。
【図4】図4は上記ズームレンズの広角端位置から望遠端位置までの各レンズ群の移動範囲を示す模式図である。
【図5】図5は上記ズームレンズの他の実施例を示す断面図である。
【図6】図6は上記ズームレンズの広角端の収差図である。
【図7】図7は上記ズームレンズの中間焦点距離の収差図である。
【図8】図8は上記ズームレンズの望遠端の収差図である。
【図9】図9は広角端における基線と有効像エリアの関係を示す図である。
【図10】図10は被写体までの距離と有効像エリアの関係を示す図である。
【図11】図11は立体像撮影が可能な被写体範囲と基線長との関係を示す図である。
【図12】図12は立体像撮影範囲と基線長との関係を示す図である。
【図13】図13はこの発明の第2実施形態の偏光合成式の立体像撮影装置の概略模式図である。
【図14】図14は上記偏光合成式の立体像撮影装置の一例としてのズームレンズの構成図である。
【図15】図15は上記ズームレンズの斜視図である。
【図16】図16は上記ズームレンズの光取込部を詳細に説明するための図である。
【図17】図17は上記ズームレンズの光取込部を詳細に説明するための図である。
【図18】図18は上記ズームレンズの光路分離部を詳細に説明するための図である。
【図19】図19は上記ズームレンズの光路分離部を詳細に説明するための図である。
【図20】図20は上記偏光合成式の立体像撮影装置の画像処理装置の構造を説明するブロック図である。
【図21】図21はこの発明の第3実施形態の立体像撮影装置を用いた電子機器の一例としての携帯電話の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、この発明の立体像撮影装置および電子機器を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0032】
〔第1実施形態〕
この発明の第1実施形態の立体像撮影装置に関して、図1〜図3を参照して説明する。立体像を撮影するためには、図1〜図3に示される光取込部である第1レンズL1は2つ必要となるが、この第1実施形態の説明では、その片側の構成として説明する。複数の光取込部より被写体像を取り込む際には、光路変換素子が必要となるが、ここでは簡易的に、第1レンズL1が1つのズームレンズのみについて説明する。
【0033】
図1はこの発明の第1実施形態の立体像撮影装置の一例としてのズームレンズの構成を示す広角端における断面図を示し、図2は上記ズームレンズの構成を示す中間焦点距離における断面図を示し、図3は上記ズームレンズの構成を示す望遠端における断面図である。また、図1〜図3において、左側が物体側であり、右側が像面側である(被写体の方向は下側)。
【0034】
また、この第1実施形態の立体像撮影装置(ズームレンズ)の屈折力配分および広角端から望遠端へのズーミング時における各レンズの移動の様子を図4に表している。この第1実施形態において、ズーミング時に光軸方向に沿って移動するのは、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3である。
【0035】
図1〜図3および図4に示されるように、この第1実施形態の立体像撮影装置は、像面からの距離が固定された負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、変倍時に光軸方向に沿って移動する正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、変倍時や合焦時に光軸方向に沿って移動する負の屈折力を有する第3レンズ群G3と、像面IMGからの距離が固定された正の屈折力を有する第4レンズ群G4から構成されている。上記第1レンズ群と第2レンズ群と第3レンズ群と第4レンズ群を物体側から像面IMG側に向かって順に配置している。また、第1レンズ群G1内に光路合成部の光路変換素子P1を配置し、第4レンズ群G4の像面側に光路分離部の光路変換素子P2を配置している。
【0036】
図1〜図3において、第1レンズ群G1において、物体側から順に、物体側に凸面を備えた負のメニスカスレンズ形状の第1レンズL1と、第1レンズL1を介して入射した光線の光路を略90度X方向に折り曲げる光路変換素子P1と、物体側と像面IMG側に対して共に凹面を備えた第2レンズL2と、物体側が凸面でかつ像面IMG側が略平面の第3レンズL3を配置している。この第1レンズ群G1は負の屈折力を有している。
【0037】
また、第2レンズ群G2は、物体側から像面IMG側に向かって順に、絞りSTOと、物体側および像面IMG側に凸面を備えた第4レンズL4と、物体側に凸面を備えたメニスカスレンズ形状の第5レンズL5と物体側に凸面を備えたメニスカスレンズ形状の第6レンズL6との貼り合わせからなる接合レンズL56を配置している。この第2レンズ群G2は正の屈折力を有している。
【0038】
更に、第3レンズ群G3は、物体側に凸面を備えた負のメニスカスレンズ形状の第7レンズL7の1枚だけで構成されている。この第3レンズ群G3は負の屈折力を有している。
【0039】
また、第4レンズ群G4は、物体側に凹面および像面IMG側に凸面を備えたメニスカスレンズ形状の第8レンズL8の1枚だけで構成されている。この第4レンズ群G4は正の屈折力を有している。第4レンズ群G4の像面側には、光路を略90度折り曲げたり分離したりすることを目的として配置された光路変換素子P2が配置されている。
【0040】
第1レンズ群G1に配置された光路合成部の光路変換素子P1は、光路変換面P1aを有しているが、光路変換面P1aは、例えば、アルミニウムなどの金属などを蒸着し、金属反射面として用いられる(光路分離部の光路変換素子P2も同様)。しかしながら、光路変換面P1aに到達する光線が、全反射条件を満たす時、上記の様な金属反射面は設けなくても良い。
【0041】
また、図1〜図3において、光路変換素子P2の後部に図示されている平面ガラスである第9レンズL9は、像面IMGを保護するカバーガラスである。
【0042】
上記第1レンズ群G1から入射した被写体の光線は、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、第4レンズ群G4を介して、像面IMGに結像する。
【0043】
図4は、広角端および望遠端における第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の移動の様子を示している。図4において、光路変換素子P1に入射する光の光軸に沿った方向をY方向とし、光路変換素子P1により折り曲げられた後の光の光軸に沿った方向をX方向とする。広角端から望遠端への変倍時に第2レンズ群G2および第3レンズ群G3は、光軸に沿って単調に移動し、第1レンズ群G1および第4レンズ群G4は、像面IMGに対して固定されている。
【0044】
図4に示されるように、上記立体像撮影装置(ズームレンズ)は、望遠端へのズーミング時に、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3が固定群である第1レンズ群G1と近接することで、ズームレンズを高倍へ変倍することを可能にしている。また、ズーミング時に第2レンズ群G2と第3レンズ群G3は、共に像面IMG方向に単調に移動するが、第3レンズ群G3は、第2レンズ群G2の移動量よりも第1レンズ群G1の方向への移動量を多くすることで、第2レンズ群G2の移動による像面IMGの変動を補正している。また、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3の移動領域はその一部を重なり合わせることで、光路合成部の光路変換素子がX方向に大きくなるのを抑制している。
【0045】
次に、ズームレンズにおいて最も特徴的な部分である第1レンズ群G1内に配置された光路変換素子P1について詳細に説明する。
【0046】
図1〜図3に示されるように、第1レンズ群G1において、光路変換素子P1よりも物体側に負の屈折力を有するメニスカスレンズ形状の第1レンズL1を配置している。ズームレンズの厚みを制約するのは、光路変換素子P1のY方向の厚みであるため、光路変換素子P1より物体側へ負の屈折力を有するメニスカスレンズ形状の第1レンズL1を配置することで、光路変換素子P1へ入射する光線の有効径を小さくし、光路変換素子P1がY軸方向へ大きくなるのを抑制している。
【0047】
この第1実施形態では、光路変換素子P1の入射面3から光路変換素子P1の光路変換面P1aまでの距離l(mm)に対して、光路変換素子P1の光路変換面P1aから光路変換素子P1の出射面4までの距離l(mm)が大きくなっている。一般的に、例えば、プリズムのような光路変換素子を例に挙げると、l(mm)とl(mm)は等しくなるように配置されているが、このズームレンズでは、光路変換素子P1より物体側に配置されたメニスカスレンズ形状の第1レンズL1と、光路変換素子P1の像面側に配置された2枚の第2,第3レンズL2,L3を最適な形状にすることで、第1レンズ群G1が略アフォーカル(afocal)な光学系となっており、
(mm) ≦ l(mm) ……… (式2)
となる。
【0048】
この第1実施形態では、l=7(mm)であるのに対し、l=12(mm)となっている。光路変換素子P1の入射面3から光路変換素子P1の光路変換面P1aまでの距離l(mm)を、光路変換面P1aから光路変換素子P1の出射面4までの光路長lより長くすることで、例えば、もう1つ光路変換素子(光路変換面)を配置することができるようになり、ズームレンズのレイアウトの幅を広げることができる。
【0049】
また、図1において、光路変換素子P1の光学全長LP1(mm)、第1レンズ群G1の焦点距離f1(mm)に関して、f1/LP1は、
−0.8 < f1/LP1 < −0.1 ……… (式5)
の条件を満たしているのが望ましい。更には、f1/L0=−0.46となることが望ましい。
【0050】
上記第1実施形態では、光路変換素子P1の光学全長LP1(mm)と第1レンズ群G1の焦点距離f1(mm)は、それぞれ、19.0(mm)、−8.72(mm)であり、f1/LP1=−0.46となっており、上記(式5)の条件を満たしている。この(式5)において、光路変換素子P1の光学全長LP1を固定したまま第1レンズ群G1の焦点距離f1を小さくする(f1/LP1を−0.8に近づける)ことで、第1レンズ群G1の屈折力が強まり、第1レンズ群G1に入射する光線の有効径を小さくすることができるため、光路変換素子P1がズームレンズの厚み方向に大きくなるのを抑制することができる。これにより、立体像撮影装置の配置レイアウトの自由度を高めながら、厚み方向(第1レンズL1の光軸方向)に対して、最小な光学系を実現できる。
【0051】
また、f1/LP1≧−0.1となると、第1レンズ群G1の屈折力が弱まり、光路変換素子P1の入射面3へ入射する光線を十分に小さく絞ることができなくなってしまうため、f1/LP1は(式5)の範囲内に設定するのが望ましい。
【0052】
また、図1において、第1レンズ群G1に配置された光路変換素子P1の光学全長LP1(mm)と第4レンズ群G4に配置された光路変換素子P2の光学全長LP2(mm)において
0.1 < LP2/LP1 < 0.3 ……… (式6)
となっているのが望ましい。更には、LP2/LP1=0.22であるのが望ましい。図1において、LP1=19.0(mm)、LP2=4.25(mm)となっており、LP2/LP1=0.22となっている。
【0053】
このように、LP2/LP1=0.22とすることで、第4レンズ群G4と撮像素子の距離を離すことができるため、撮像素子上で周辺光量比が均一な被写体像を得ることができ、組立時に高精度なアライメントを必要としないため、組立性に優れた結像光学系を提供することができる。
【0054】
また、LP2/LP1が上記(式6)の条件を満たす範囲内に設定することで、第4レンズ群G4から像面IMGまでを略アフォーカルな光学系とすることができ、像の中心に対して周辺の光線の光量の低下を抑制することができるため、光量が均一な画像を得ることができる。
【0055】
例えば、LP2/LP1≦0.1となると、ズームレンズの光学特性に対する光路変換素子P1の光学全長LP1の影響が大きくなるため、組立時に光路変換素子P1を精度良くアライメントする必要があり、量産性に優れたズームレンズとすることができない。
【0056】
図5は、第1レンズ群G1内に光路変換面を2つ含む立体像撮影装置(ズームレンズ)の広角端でのレンズ配置を示している。図5では、2つの光路変換面P1a,P1bを有する光路変換素子P1が第1レンズ群G1内の第1レンズL1の像面側に配置されている。光路変換素子P1の入射面より入射した光線は、入射面から最初の光路変換面である第1の光路変換面P1aでY方向へ反射され、第2の光路変換面P1bでX方向へ反射され、光路変換素子P1の出射面から出射する。
【0057】
この様な構成とすることで、立体像撮影装置のX方向の長さを小さくすることができ、例えば携帯電話などの小型電子機器の内部において、立体像撮影装置が占有する体積を効率的に小さくすることができる。
【0058】
このように、第1レンズ群G1の光路変換素子P1において、光路変換素子P1の入射面から光路変換素子P1の光路変換面P1aまでの光路長l(mm)と、光路変換素子P1の光路変換面P1aから光路変換素子P1の出射面4までの光路長l(mm)において、l(mm)≦l(mm)となるように光路変換面P1aを配置することで、光線の反射方向を様々に変換することが可能となり、立体像撮影装置のレイアウトの幅を広げることができるし、幅方向・長さ方向に効率的に小さくすることができる。
【0059】
図5で説明した立体像撮影装置は、光路変換素子P1に光路変換面を2面有しているが、実施形態はこの限りではなく、第1レンズL1の各パラメータおよび第2,3レンズL2,L3の各パラメータを適切に設定することで、光路変換面を2つ以上有する光路変換素子として用いることもできる。
【0060】
次に、この第1実施形態の立体像撮影装置(ズームレンズ)における各レンズおよびレンズ群の役割について詳細に説明する。
【0061】
図1〜図3に示される立体像撮影装置の第1レンズ群G1は、3枚のレンズ(L1,L2,L3)から成り、第1レンズ群G1内に1つの光路変換素子P1が配置されているが、第1レンズ群G1と光路変換素子P1とを像面IMGに対して、常に固定とすることで、第1レンズL1と光路変換素子P1との機械的なクリアランスを別途設ける必要がなく、光路変換素子P1と第1レンズL1を可能な限り接近させることができ、ズームレンズを厚み方向に小さくすることができる。
【0062】
また、この第1実施形態の立体像撮影装置において、第1レンズ群G1に配置された第2レンズL2と第3レンズL3は、光路変換素子P1の内部を透過する光線が略アフォーカルとするために、光路変換素子P1の像面側に配置されている。
【0063】
図1〜図3において、第2,第3レンズL2,L3のレンズパラメータを適切に設定することによって、光路変換素子P1に入射する光線の光束径Diと光路変換素子P1から出射する光線の光束径Dоには、
Di≦Dо ……… (式3)
が成り立っている。上記(式3)が成立することで、入射光束径の拡大によって、光路変換素子P1がY方向に大きくなるのを最小限に留めている。これにより、第1レンズ群G1と光路変換素子P1とをコンパクトな光学系にすることができる。
【0064】
また、第2レンズ群G2は、物体側から順に、絞りSTOと、物体側と像面側の両方に凸面を備えた第4レンズL4と、物体側に凸面を備えたメニスカスレンズ形状の第5レンズL5と物体側に凸面を備えたメニスカスレンズ形状の第6レンズ6との貼り合わせからなる接合レンズL56とから構成されている。
【0065】
開口絞りである絞りSTOを第2レンズ群G2の物体側に配置し、ズーミングの際に第2レンズ群G2と共に絞りSTOを移動させることで、第1レンズ群G1が負の屈折力を有することによる明るさFnoの低下を抑えている。また、絞りSTOの像面側に正の屈折力を有する第4レンズL4を配置することで、収差を抑えながら第2レンズ群G2の屈折力を大きくし、ズーミング時の第2レンズ群G2の移動量を小さくしている。また、第4レンズL4の像面側に、アッベ数(逆分散率)の異なる2枚のレンズL5,L6を貼り合わせた接合レンズL56を配置することで、色収差および球面収差を補正している。
【0066】
また、第3レンズ群G3は、物体側に凸面を備えた負のメニスカスレンズ形状のレンズL7の1枚のみで構成されているが、第3レンズ群G3は、ズーミング時に移動し、第2レンズ群G2の移動に伴う像面IMGでのフォーカスのズレを補正する。第3レンズ群G3の第7レンズL7は、ポリカーボネートなどのプラスチック材料で形成されている。
【0067】
また、第4レンズ群G4は、物体側に凹面を備えたメニスカスレンズ形状の第8レンズL8の1枚のみで構成される。この第4レンズ群G4は、像面IMGに対して常に固定されているため、第8レンズL8と光路変換素子P2との機械的なクリアランスを別途設ける必要がなく、第8レンズL8と光路変換素子P2を可能な限り接近させることができ、立体像撮影装置の小型化に貢献できる。また、第8レンズL8は、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3のズーミング時に発生した、コマ収差や非点収差を補正している。また、第4レンズ群G4の像面側に、屈折力を持たない光路変換素子P2を配置することで、バックフォーカスを長くとり、各画角における結像光の像面IMGへの入射角度の差を小さくしている。その結果、像面IMGにおいて、中心に対する周辺部の光量の低下を抑制することができ、均一な画像を得ることができる。また、図1〜図3では記さないが、第4レンズ群G4の像面側に配置された光路変換素子P2で、光路をY方向に略90度折り曲げることによって、立体像撮影装置をX方向に対しても小さくすることもできる。
【0068】
次に、上記第1実施形態における数値例について説明する。
【0069】
表1,表2,表3は、この第1実施形態の立体像撮影装置の構成に対する具体的な数値データを示したものであり、表1に面データを、表2に表1の面データのうち、非球面レンズの形状に関するデータを、表3に、各ズームポジションにおける焦点距離f、Fナンバー、移動群の面間隔2w等を示している。数値例において、上記で説明した様な、光路変換面による反射は考慮せず、例えば、D3は光路変換素子P1の入射面3から光路変換素子P1の出射面4までの距離を表しているものとする。表1および表2に示したレンズデータにおける面番号Siの欄には、最も物体側の構成要素の面を1番目として、像面側に向かうに従って順次増加するように番号を付したi番目(i=1〜23)の面の番号を示している。曲率半径Riの欄には、物体側からi番目(i=1〜23)の面の曲率半径の値を示している。面間隔Diの欄には、物体側からi番目の面Siとi+1番目の面Si+1との光軸上の間隔を示している。尚、面間隔Riおよび曲率半径Diの値の単位はmm(ミリメートル)である。屈折率およびアッベ数の欄には、レンズ要素のd線(587.6nm)に対する屈折率およびアッベ数の値を示している。
【0070】
また、非球面形状に関しては、光軸方向にZ軸、光軸と直交する方向にY軸をとるとき、次の非球面式(式7)を用いて表される。

【0071】
ただし、Kは円錐定数、Rは曲率半径、A、B、CおよびDはそれぞれ第4次、第6次、第8次および第10次の非球面係数、Zは光軸から高さYの位置にある非球面上の点から、非球面の頂点の接平面(光軸に垂直な平面)に下ろした垂線の長さを示す。また、本明細書における各非球面データの数値は、10のべき乗数を「E」を用いて表すものとする。すなわち、例えば、2.5×10−02は、2.5E−02と表すものとする。
【0072】
表1において、第1レンズL1はS1からS2、光路変換素子P1はS3からS4、第2レンズL2はS5からS6、第3レンズL3はS7からS8、絞りSTOがS9、第4レンズL4はS10からS11、第5レンズL5はS12からS13、第6レンズL6はS13からS14(貼り合せ)、第7レンズL7はS15からS16、第8レンズL8がS17からS18、光路変換素子P2がS19からS20に対応している。また、撮像素子のL9がS21からS22に対応しており、S23は像面に対応している。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
図6〜図8は、上記第1実施形態に示すズームレンズの収差図であり、図6は広角端の収差図、図7は中間焦点位置の収差図、図8は望遠端の収差図を示している。図6〜図8に示す球面収差図において、実線はe線(波長546.1nm)、一点鎖線はC線(波長656.3nm)、点線はg線(波長435.8nm)を示している。また、図6〜図8に示す非点収差図においては、実線がサジタル像面S、点線がタンジェンシャル像面Tを示している。また、図6〜図8において、球面収差図および非点収差図の横軸は結像位置[mm]を示し、歪曲収差図の横軸は、歪曲[%]を示すと共に、球面収差図,非点収差図および歪曲収差図の縦軸は、最大像高に対する割合を示している。
【0077】
図6〜図8に示すように、球面収差、非点収差および歪曲収差の各特性について、広角端、中間焦点位置および望遠端で各収差は良好に補正されている。
【0078】
上記立体像撮影装置の構成によれば、2つの光取込部である第1レンズL1,L1より取り込んだ光線を、光路変換素子P1を含む光路合成部によって合成し、共通の第2,第3レンズL2,L3と第2〜第4レンズ群G2〜G4を介して集光させ、撮像素子の直前で再び光路を、光路変換素子P2を含む光路分離部により分割し、別々の撮像素子上に結像させることで、被写体を複数の異なった角度から撮影することが可能となり、立体像を得ることができる。
【0079】
この構成において、光路変換素子が上記(式2)の条件を満たす様にすることで、コンパクトな立体像撮影装置を実現することができる。また上記(式2)の条件を満たすことで、結像光学系を構成する光学部材の様々な配置が可能となり(光路変換素子内部で複数回反射させる系など)、結像光学系を構成する光学部材の配置の自由度が上がる。
【0080】
また、複数の独立した光学系を用いて、共通の被写体を撮像するのと比較すると、結像部である第1〜第4レンズ群G1〜G4の一部を共通の光学系として利用することで、部品点数を削減することができ、コストを削減することができる。また、光取込部である第1レンズL1,L1毎に独立の調整機構を必要としないため、機構的にコンパクトになる。また、共通な部品点数が多いため、組立性を向上させることができる。
【0081】
また、光取込部および結像部を負正負正の第1〜第4レンズ群G1〜G4からなる4群構成とすることで、広角端と中間焦点距離および望遠端において良好な光学特性(球面収差、非点収差および歪曲収差などの特性)を得ることができる。また、望遠端でも明るさの劣化を最小限に抑えることができる。さらに、第1レンズ群G1の最も物体側のレンズである複数の第1レンズL1,L1が負の屈折力を有することによって、光路合成部の光路変換素子P1に入射する光線の有効径を小さくし、光路変換素子P1が厚み方向(第1レンズL1,L1の光軸方向)に大きくなるのを抑制している。
【0082】
また、第1レンズ群G1を略アフォーカルな光学系とすることで、第1レンズ群G1の内部に配置された光路変換素子P1が厚み方向に大きくなるのを抑制しながら、光路変換素子P1の光学全長を長くすることが可能となる。この様な構成とすることで、第1レンズ群G1の配置レイアウトの自由度が高まり、小型な立体像撮影装置とすることができる。
【0083】
また、上記光路合成部の光路変換素子P1および光路分離部の光路変換素子P2に偏光変換素子を用いることで、2つの第1レンズL1,L1により夫々取り込まれた被写体からの光の合成と分離を簡単な構成で行うことができる。
【0084】
また、上記光路合成部の光路変換素子P1における入射面から最初の光路変換面までの光路長をlとし、光路変換素子P1における最初の光路変換面から出射面までの光路長をlとし、光路分離部の光路変換素子P2における入射面から出射面までの光学全長をLP2とし、光取込部である第1レンズL1,L1から像面までの全光路長をLallとするとき、
(l+l+LP2)/Lall > 0.4 ……… (式4)
の条件を満たすことで、光路合成部の光路変換素子P1および光路分離部の光路変換素子P2の配置レイアウトの自由度を高めることができ、コンパクトな光学系を実現することができる。また、特に、光路分離部の光路変換素子P2における入射面から出射面までの光学全長LP2を長くすることで、最終の第8レンズL8から像面までの距離を大きく取ることができるようになり、像面において、周辺光量比が均一な画像を得ることができるようになる。従って、撮像素子の配置誤差の感度を緩めることができ、組立性に優れた立体像撮影装置とすることができる。
【0085】
以下、本発明の第1実施形態の立体像撮影装置の基線長に関して説明する。
【0086】
上記構成の立体像撮影装置において、被写体までの想定距離をDs[mm]とし、35mmフィルム上での視差をk[mm]とし、第1〜第4レンズ群G1〜G4の焦点距離をf[mm]として、立体像撮影範囲を2500[mm]とするときの基線長L1と、立体像撮影範囲を1500[mm]とするときの基線長L2は、
L1 = k×(Lmax1×Lmin1)/(Lmax1−Lmin1)/f
L2 = k×(Lmax2×Lmin2)/(Lmax2−Lmin2)/f
Lmax1 : Ds+1250[mm]
Lmin1 : Ds−1250[mm]
Lmax2 : Ds+750[mm]
Lmin2 : Ds−750[mm]
k : 1.2[mm]
f : 105[mm]
(ただし、Ds>1250)
で表される。この立体像撮影装置では、左目用の光取込部(L1)の光軸中心Oと右目用の光取込部(L1)の光軸中心Oとの距離である基線長LLR[mm]が、
L1 < LLR <L2 ……… (式1)
の条件を満足するように、2つの光取込部(第1レンズL1,L1)を配置している。上記(式1)を満たすように、光取込部を適切に配置することで、望遠端撮影時の左右像の視野による像ずれを生じ、画面全域で立体感のある画像を撮影することができる。
【0087】
一般的に、携帯電話やスマートホンなどの小型電子機器に本発明の立体像撮影装置を搭載する場合、電子機器のサイズが制約となり、基線長LLRは、あまり大きく設定することができない。また、DSC(デジタルスチルカメラ)やタブレット端末を考えると、最適な基線長を決定することは容易でない。
【0088】
図9,図10,図11,図12に、基線長と有効像エリア、基線長(左右の光取込部の間の距離)と被写体距離の関係を定量的に評価した結果を示す。立体像を撮影するためには、左右の光取込部を離して配置すれば、視野が異なるため、像ずれを生じ、それらの画像を合成することで、立体感を有する像を得ることができる。
【0089】
基線長を上記(式1)で示される範囲以上に長くすると、立体感が強調されるが、本発明の撮影装置は、小型電子機器に搭載することを目的としているため、装置の小型化が困難であるし、望遠端では、有効像エリア(左右の光取込部から取り込んだ像の共通部分)が小さくなるため、立体視可能な画像領域が狭くなってしまい、立体画像の質の低下を招く。つまり、人間の目には画面全域で立体感のある画像として認識することができない。また、基線長が上記(式1)で示される範囲以下に短くなるようにすると、有効像エリアを拡大することはできるため、画像全域を立体視することができるが、視差が小さく立体感を強調することができない。
【0090】
人間が感じる自然な立体感を検討するため、以下の式を用いて基線長を求めた。図9,図10は、望遠端における基線長と有効像エリアとの関係を示している。図9,図10から、明らかなように、基線長を大きくすると、有効像エリアが小さくなっていき、画面全域において立体感のある像を得ることができない。この場合、人間の目には、画面中心部は、立体感のある像として認識されるが、画面周辺部(有効像エリア外)では、立体像として認識されない。
【0091】
図11,図12は、立体像撮影が可能な被写体範囲と基線長との関係を示している。以下に、一般的な、被写体範囲と基線長の関係を求める関係式を示す。
Sb = k×(Lmax×Lmin)/(Lmax−Lmin)/f
Sb : ステレオベース[mm]
Lmin : 最も近い被写体までの距離[mm]
Lmax : 最も遠い被写体までの距離[mm]
f : 撮影レンズの焦点距離[mm]
k : 35mmフィルム上での視差[mm]
【0092】
被写体までの想定距離をDsとすると、各々のパラメータは、以下の幾何学的計算によって求めることができる。すなわち、ステレオベースSb(基線長)と被写体までの想定距離Dsとの関係は、
Sb:Ds = Lmin:(Lmax−Lmin)
で表され、ステレオベースSbは、
Sb = Ds×Lmin/(Lmax−Lmin)
となる。さらに、被写体までの想定距離Dsと視差kとの関係は、
Ds:k = Lmax:f
で表され、被写体までの想定距離Dsは、
Ds = k×Lmax/f
となる。したがって、ステレオベースSbは、
Sb = k×Lmin×Lmax/(Lmax−Lmin)/f
で表すことができる。また、背景が遠景の場合は、Lmaxが無限大となるため、以下のように簡略化できる。
Sb = k×Lmin/f
【0093】
以上の結果から、本発明の立体像撮影装置においては、k=1.2(mm)、fは35mm換算の3倍相当として、望遠端の焦点距離を105(mm)とし、ユーザーの使用頻度が高い撮影距離すなわち被写体までの想定距離Dsは、2m程度である。ここで、被写体までの想定距離Dsを2mとしたとき、その前後±0.75mを立体像撮影範囲(図12の横軸における1.5m)とすると、基線長L2は、
L2 = k×(Lmax2×Lmin2)/(Lmax2−Lmin2)/f
= 1.2×(2750×1250)/(2750−1250)/105
≒ 26
となる。また、被写体までの想定距離Dsを2mとしたときの前後±1.25mを立体像撮影範囲(図12の横軸における2.5m)とすると、基線長L1は、
L1 = k×(Lmax1×Lmin1)/(Lmax1−Lmin1)/f
= 1.2×(3250×750)/(3250−750)/105
≒ 11
となる。このように、被写体までの想定距離Dsを最適な2mとしたとき、左目用の光取込部(L1)の光軸中心Oと右目用の光取込部(L1)の光軸中心Oとの距離である基線長LLR[mm]の範囲は、
11 < LLR < 26
となる。本発明の立体像撮影装置を距離計測に用いる場合、その精度を向上させるためには、基線長は式の範囲内でなるべく大きく設定した方が良いと考えられる。
同様にして、被写体までの想定距離Dsを3mとしたとき、左目用の光取込部(L1)の光軸中心Oと右目用の光取込部(L1)の光軸中心Oとの距離である基線長LLR[mm]の範囲は、
34 < LLR < 64
となる。なお、被写体までの想定距離Dsは、2m〜3mが望ましい。
【0094】
また、この第1実施形態では、偏光方式を用いた立体画像撮影装置に最適な基線長について示したが、上記の考え方は、単眼のカメラモジュールを2つ用いて画像を合成することにより立体画像を得る方式にも応用できる。
【0095】
上記構成の立体像撮影装置によれば、上記(式1)の条件を満足するように、左目用と右目用の2つの光取込部(第1レンズL1,L1)を適切に配置することで、望遠端撮影時の左右像の視野による像ずれが生じて、画面全域で立体感のある画像を撮影することができる。したがって、小型であって、望遠端や広角端でも自然な立体感がある画像を撮影できる立体像撮影装置を実現できる。
【0096】
〔第2実施形態〕
この発明の第2実施形態として、偏光合成方式を用いた立体像撮影装置に関して、図13〜図20を用いて説明する。この第2実施形態に係る偏光合成式の立体像撮影装置は、左右から見た被写体を偏光の違いを利用して合成し、1つのカメラ光学系で結像し、再び偏光の違いにより2つの像に分離し、それぞれに対応した撮像素子に結像させ、両眼(左右2枚)の画像を形成するものである。異なった方向から光線を取り込むために、2つの光取込部101,102が配置されている。また、撮像素子において、2つの分離した像として取り込むために、2つの撮像素子106,107が配置されている。以下、その構成について具体的に説明する。
【0097】
図13は、上記第2実施形態に係る偏光合成式の立体像撮影装置100を示す概念図である。この偏光合成式の立体像撮影装置100は、図13に示すように、概略的には被写体Aの像を取り込む2か所の光取込部101(L1),102(L1)と、光取込部101から入射した入射光と、光取込部102から入射した偏光成分の異なる(p偏光成分とs偏光成分)入射光を合成して、カメラ光学系104に導く光路合成部の一例としての偏光合成部103と、被写体Aの像を所望の倍率で撮像素子106,107上に結像する結像部の一例としてのカメラ光学系104(L2〜L8)と、カメラ光学系104を出射した結像光を偏光成分の違いにより、2つの撮像素子106,107方向に分離する光路分離部の一例としての偏光分離部105と、撮像素子106,107で得られた被写体像を撮像(光電変換)した後に、A/D変換して得たデジタル画像データから画像を形成する画像処理装置108とを備えている。撮像素子106,107には、偏光成分の異なる光が入射し、撮像イメージIMG1とIMG2は一定量ずれた映像(視差画像)となる。このずれ量は、光取込部101,102の配置によって決まる数値である。図13では、光取込部101と光取込部102の中心間隔は、20[mm]離れている。
【0098】
光取込部101,102から取り込まれた被写体Aの像が、撮像素子106,107上に結像される過程を図14〜図20を用いて説明する。
【0099】
図14は、上記第2実施形態の偏光合成式の立体像撮影装置100を被写体側から見た図であり、図15は立体像撮影装置100の斜視図である。図14において偏光合成部103は、光の入射側から見て、光取込部101(L1),102(L1)と、その裏面に夫々配置されたプリズムなどの光路変換素子109L,109Rと、光路変換素子P101と偏光補正シート(λ/4位相差シート)111と、反射ミラー112で構成されている。光取込部101,102から入射した光線は、光路変換素子109L,109Rによって、光路を90度折り曲げられ、光路変換素子P101に到達する。図14には、左側の光取込部101から取り込んだ光が撮像素子107に到達する経路をLLとして実線で示し、右側の光取込部102から取り込んだ光が撮像素子106に到達する経路をLRとして点線で示してある。
【0100】
光路変換素子P101は、s偏光成分を反射し、p偏光成分を透過する偏光膜P101aを有し、この偏光膜P101aにおいてs偏光成分を反射するのが光路変換面である。光路変換素子P101は、光取込部101から取り込んだ光LLの中で、s偏光成分は図14の−Y方向に反射し、光取込部102から取り込んだ光LRの中で、s偏光成分は図14の+Y方向に反射する。一方、光取込部101および102から取り込んだ光LL,LRの中で、p偏光成分の大部分は偏光膜P101aを透過し、光軸方向であるY軸の方向に反射されない。また、光取込部102から取り込んだ光LRのs偏光成分は、+Y方向に反射された後、λ/4シート111を透過することで、例えば右回り円偏光に変換され、さらに反射ミラー112で反射することで左回り円偏光になり、再びλ/4シート111を透過することでp偏光成分になる。反射ミラー112は、アルミニウムなどの金属を表面に蒸着し、反射面として用いられる。反射ミラー112によって反射された光LRは、円偏光の成分を有しているが、再びλ/4位相差シート111を通過し、直線偏光であるp偏光成分に変換され、偏光膜P101aを透過する。
【0101】
偏光膜P101aには、例えば、偏光ビームスプリッタ(PBS)が用いられるが、その特性としては、可視光波長帯域(400(nm)〜700(nm))、膜面への入射角45±10(度)の範囲でp偏光成分の透過率が90(%)以上で、s偏光成分の反射率が90(%)以上であることが望ましく、理想的には、膜面への入射角45±20(度)の範囲で、p偏光成分の透過率が100(%)で、s偏光成分の反射率が100(%)であるのが望ましい。
【0102】
次に、この第2実施形態における数値例について、図14,図15および表4〜表6を用いて詳細に説明する。
【0103】
表4は面データを示し、表5は、表4の面データのうち非球面レンズの形状に関するデータを示し、表6は、各ズームポジションにおける焦点距離f、Fナンバー、移動群の面間隔2w等を示している。面間隔Riおよび曲率半径Diの値の単位はmm(ミリメートル)である。屈折率およびアッベ数の欄には、レンズ要素のd線(587.6nm)に対する屈折率およびアッベ数の値を示している。
【0104】
また、非球面形状に関して、光軸方向にZ軸、光軸と直交する方向にY軸をとるとき、非球面式である上記(式7)を用いて表される。
【0105】
表4において、第1レンズL1はS1からS2、光路変換素子P101はS3からS4、第2レンズL2はS5からS6、第3レンズL3はS7からS8、絞りSTOがS9、第4レンズL4はS10からS11、第5レンズL5はS12からS13、第6レンズL6はS13からS14(貼り合せ)、第7レンズL7はS15からS16、第8レンズL8がS17からS18、光路変換素子P102がS19からS20に対応している。また、撮像素子のL9がS21からS22に対応しており、S23は像面に対応している。
【0106】
【表4】

【0107】
【表5】

【0108】
【表6】

【0109】
次に、偏光合成部103の詳細を図16,図17に示す。図16,図17において、2つの光取込部101,102の間隔を長く保ちながら、偏光合成部103の厚み方向の大きさをできるだけ小さくするように光取込部101,102を配置している。
【0110】
図16では、光路変換素子P101は、s偏光成分を反射する偏光膜P101aを有するが、光取込部101から取り込んだ光LL(実線)の中で、s偏光成分は図16の−Y方向に反射し、光取込部102から取り込んだ光LR(点線)の中で、s偏光成分は図16の+Y方向に反射する。一方、光取込部101および102から取り込んだ光LL,LRの中で、p偏光成分の大部分は光路変換素子P101を透過し、光軸方向であるY軸の方向に反射されない。また、光取込部102から取り込んだ光LRのs偏光成分は、偏光膜P101aによって+Y方向に反射された後、λ/4シート111を透過することで、例えば右回り円偏光に変換され、さらに反射ミラー112で反射することで左回り円偏光になり、再びλ/4シート111を透過することでp偏光成分になり、偏光膜P101aを透過する。反射ミラー112は、アルミニウムなどの金属を表面に蒸着し、反射面として用いられる。偏光膜P101aには、例えば、偏光ビームスプリッタが用いられるが、その特性としては、可視光波長帯域(400(nm)〜700(nm))、膜面への入射角45±10(度)の範囲で、p偏光成分の透過率が90(%)以上で、s偏光成分の反射率が90(%)以上であることが望ましく、理想的には、膜面への入射角45±20(度)の範囲で、p偏光成分の透過率が100(%)で、s偏光成分の反射率が100(%)であるのが望ましい。
【0111】
図17では、光路変換素子P101としてクロスプリズムを配置している。図17で、Z方向から光取込部101,102に入射した光は、その下部に配置された光路変換素子109L,109Rで光路変換素子P101の方向に夫々反射する。図17に示した光路変換素子P101は、s偏光成分を反射し、p偏光成分を透過する偏光膜P101bと、s偏光成分を透過し、p偏光成分を反射する偏光膜P101cとを有する。これら2つの偏光膜P101b,P101cによって、光取込部101,102から入射する光線のうち、s偏光成分は偏光膜P101bで反射され、図17の−Y方向のカメラ光学系104の方向に向かい、p偏光成分は偏光膜P101cで反射され、図17の−Y方向のカメラ光学系104の方向に向かう。光学特性上、光取込部101,102からカメラ光学系104に出射する光の光路長を同一にすることが望ましく、図17において、光取込部101から取り込んだ光が偏光合成部103から出射されるまでの光路長と光取込部102から取り込んだ光が偏光合成部103から出射されるまでの光路長を揃えている。
【0112】
図16,図17に用いた偏光膜P101a,P101b,P101cは、屈折率の異なる2つの材料を交互に積層させた誘電体多層膜(例えば、TiOとSiOの2つ材料からなる多層膜)などで形成されている。
【0113】
次に、この第2実施形態において、カメラ光学系104は、図14に示した様に、複数のレンズ群から構成されており、これらのレンズ群が駆動することにより焦点距離を変更できるズームレンズとなっている。上記説明の通り、光取込部101,102には2つの同一のレンズL1を配置しているが、偏光合成部103を通して、光線が一つに合成されるため、カメラ光学系104は共有化することができる。このため、光取込部101,102から取り込まれた2種類の偏光像は、この1組のカメラ光学系104で同時にズーミング、フォーカシングが行われると共に、光学系のもつ収差の影響は2つの像に対して同じように働くため、2つの像間の画像の違いが発生しないし、撮像系として最もコストがかかり、サイズアップの影響があるカメラ光学系104部分に対して、コストダウンを図ることができるだけでなく、偏光合成式の立体像撮影装置の小型化にも大きく貢献できる。
【0114】
次に、カメラ光学系104よりも像面側に配置された偏光分離部105に関して図18,図19を用いて説明する。
【0115】
図18,図19は、カメラ光学系104から出射した2種類の偏光像が偏光分離部105に入射し、光路変換素子の一例としての偏光分離素子P102で各々の方向に分離される様子を示した図である。カメラ光学系104で同一の光学系を介して結像される被写体Aの像であるが、これらの光線は、上記説明の通り、s偏光成分とp偏光成分で構成されているため、偏光分離素子P102に到達した光は、偏光分離素子P102の偏光膜P102aの特性によって、p偏光成分の像とs偏光成分の像に分離され、撮像素子106,107に結像する。この偏光膜P102aにおいてp偏光成分を反射するのが光路変換面である。
【0116】
このとき、偏光膜P102aの特性は可視光波長帯域(400(nm)〜700(nm))において、膜面への入射角45±10(度)の範囲でp偏光成分の透過率90(%)以上、s偏光成分の反射率90(%)以上が望ましく、理想的には、膜面への入射角45±20(度)の範囲で、p偏光成分の透過率が100(%)で、s偏光成分の反射率が100(%)であるのが望ましい。
【0117】
図18において、偏光分離部105は、s偏光成分を反射し、p偏光成分を透過する偏光膜P102aを有する偏光分離素子P102と、カメラ光学系104方向と直交する側にλ/4シート114と反射ミラー115が配置されている。カメラ光学系104方向から入射した光線のうち、p偏光成分は、偏光膜P102aを透過して撮像素子106に向かい、s偏光成分は偏光膜P102aで−X方向へ反射され、λ/4シート114を透過することで、たとえば右回り円偏光に変換され、さらに反射ミラー115で反射することで左回り円偏光になり、再びλ/4シート114を透過することでp偏光成分になる。p偏光成分になった光は偏光膜P102aを透過し、撮像素子107に入射する。また、光学特性上、撮像素子106,107に入射する光の光路長を同一にすることが望ましく、偏光分離素子P102の撮像素子106側のプリズムを長くして光路長を揃えている。
【0118】
図19において、偏光分離部105は、s偏光成分を反射し、p偏光成分を透過する偏光膜P102aを有する偏光分離素子P102と、カメラ光学系104の方向と対向する側にλ/4シート114と反射ミラー115が配置されている。カメラ光学系104方向から入射した光線のうち、s偏光成分は、偏光膜P102aで反射して撮像素子106に向かい、p偏光成分は偏光膜P102aを透過して、λ/4シート114を透過することで、例えば右回り円偏光に変換され、さらに反射ミラー115で反射することで左回り円偏光になり、再びλ/4シート114を透過することでs偏光成分となる。s偏光成分となった光は、偏光膜P102aで反射し、撮像素子107に入射する。また、光学特性上、撮像素子106,107に入射する光の光路長を同一にすることが望ましく、偏光分離素子P102の撮像素子106側のプリズムを長くして光路長を揃えている。
【0119】
また、図18,図19の説明において、偏光膜P102aを用いて説明したが、偏光分離素子P102として、クロスプリズムを用い、p偏光成分およびs偏光成分を直接光路分離することも可能である。
【0120】
なお、偏光分離部の他の実施例として、例えば、撮像素子の各画素に対応した位置に、p偏光成分を透過する偏光板とs偏光成分を透過する偏光板とを交互に配置したものを用いてもよい。このような1つの撮像素子によって、カメラ光学系からのp偏光成分とs偏光成分を分離できるので、組立性が良くなり、コスト削減が可能となると共に、プリズムのような大きな光学素子が不要となり、装置の小型化が可能となると共に、光学性能の改善を図れる。
【0121】
取り込んだ像を撮像するための撮像素子は、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子(センサ)、サンプルホールド回路、A/D変換器等を備えており、上記p偏光成分およびs偏光成分の分離画像に基づく撮像素子の出力に基づいて画像データを生成する。また、一般的にカメラは、自分で撮影した画像に関する情報を記録する内蔵メモリを有し、双方向パラレルインターフェースやSCSIインターフェース等の高速で画像転送可能な汎用インターフェースやUSB(Universal Series Bus)によって画像処理装置のコンピュータに接続される。
【0122】
図20は、一般的なカメラに用いられる画像処理装置108の構造を説明するブロック図である。画像処理装置108は、演算処理を実行し、命令を出力する等の機能を備えたCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)207と、画像処理のための手順をCPU207に実行させるためのプログラム等を格納したROM(Read Only Memory:リード・オンリー・メモリー)208と、CPUの処理動作のために、ROM208から読み出した上記プログラムや、CPUの処理のために必要なデータ等を一時的に格納しておくRAM(Random Access Memory:ランダム・アクセス・メモリー)209からなるコンピュータ210と、データやコマンド等を入力するための入力部211と、CPUの出力を表示するための表示部212と、更に必要に応じて画像データを収納するための記憶手段(図示せず)を備えている。
【0123】
画像は撮像素子で電気信号に変換されて、A/D変換した後、内蔵の画像信号処理回路に入りシェーディング補正やγ補正等の処理を行った後、その内蔵メモリに記録される。画像処理装置108に入力された画像データは、コンピュータ210で画像2枚のステレオ画像に形成される。画像処理装置108のコンピュータ210はこのようにして得られた2つの画像から立体画像を生成し、例えばディスプレイなどの出力手段(図示せず)等に表示することができる。
【0124】
以上、光取込部101および光取込部102からの入射光の夫々が、偏光合成部103、カメラ光学系104、偏光分離部105を通して、撮像素子106,107上にそれぞれp偏光成分およびs偏光成分に分離した画像を結像する手段について詳細に説明した。p偏光成分の画像とs偏光成分の画像は、光取込部101および光取込部102の視差に応じてそれぞれ互いに僅かにずれている。
【0125】
上記偏光合成式の立体像撮影装置は、第1実施形態の偏光合成式立体像撮影装置と同様の効果を有する。
【0126】
〔第3実施形態〕
最後に、この発明の第3実施形態として、この発明のズームレンズを搭載した電子機器の一例としての携帯型情報端末に関して図21を用いて説明する。図21は、この発明の偏光合成式の立体像撮影装置であるズームレンズを搭載した携帯電話300の外観を示す図である。図21(A)は携帯電話300の正面図であり、図21(B)は携帯電話300の背面図であり、図21(C)は携帯電話300の側面図である。図21では、電子機器として携帯電話である例を示しているが、この第3実施形態の電子機器は、これに限定されるものではない。電子機器としては、例えば、PC(特にモバイルPC)、PDA、ゲーム機、テレビ等のリモートコントローラ等が挙げられる。
【0127】
図21(A)〜図21(C)に示されるように、携帯電話300は、モニター側筐体301および操作側筐体302を備えている。モニター側筐体301は、モニター部305およびスピーカー部306を含み、操作側筐体302は、マイク部303、テンキー304を含み、その裏面にこの発明の偏光合成式の立体像撮影装置307が配置されている。例えば、偏光合成式の立体像撮影装置307に第2実施形態の偏光合成式の立体像撮影装置100を用いてもよい。
【0128】
図21(B)では、偏光合成式の立体像撮影装置307の光取込部が横一列になるように配置されているが、この配置だけに限定される訳ではなく、偏光合成式の立体像撮影装置307の光取込部は、携帯電話300の筐体に対して縦方向に配置されても良い。また、この第3実施形態のズームレンズの配置方法およびその向きについては、携帯電話300のモニター側筐体301の裏面に限定されるわけではない。
【0129】
図21(A)において、スピーカー部306は、音声情報を外部に出力するものであり、マイク部303は音声情報を携帯電話300に入力するものである。モニター部305は、映像情報を出力するものであり、例えば、偏光合成式の立体像撮影装置307で撮像した被写体の像をモニター部305に出力させることも可能である。
【0130】
なお、この第3実施形態の携帯電話300は、図21に示されるように、上部の筐体(モニター側筐体301)と下部の筐体(操作側筐体302)とがヒンジを介して接続されている、いわゆる折りたたみ式の携帯電話300を例として挙げている。携帯電話300として、折りたたみ式が主流であるため、本実施形態では折りたたみ式の携帯電話を一例として挙げているのであって偏光合成式の立体像撮影装置307を搭載することができる携帯電話300は、折りたたみ式に限るものではない。近年、折りたたみ式の携帯電話300において、折りたたんだ状態で厚みが10mm以下のものも登場してきている。携帯電話300の携帯性を考慮するならば、その厚みは極めて重要な要素となっている。
【0131】
図21に示す操作側筐体302において、図示されない内部の回路基板等を除いて、その厚みを決定する部品は、マイク部303、テンキー304、偏光合成式の立体像撮影装置307である。この中で、偏光合成式の立体像撮影装置307の厚さが最も厚く、偏光合成式の立体像撮影装置307の薄型化は、携帯電話300の薄型化に直接繋がる。よって、上述のように薄型化可能なこの発明の偏光合成式の立体像撮影装置307は、携帯電話の様な薄型化を必要とする電子機器に対して好適な発明である。
【0132】
上記構成によれば、偏光合成式の立体像撮影装置307を携帯電話300に搭載することで、撮像した静止画や動画に対して、立体像を撮影する立体画像撮影装置として応用することが可能となり、高機能かつ付加価値の高い小型の携帯電話300を実現することができる。
【0133】
上記第3実施形態では、偏光合成式の立体像撮影装置を備えた電子機器としての携帯電話について説明したが、電子機器はこれに限らず、他の携帯情報端末などの電子機器にこの発明を適用してもよい。
【0134】
この発明における立体像撮影装置において、第1レンズ群に複数の光取込部と光路合成部の光路変換素子を配置し、第4レンズ群の像面側に光路合成部の光路変換素子を配置することで、同一被写体を異なった角度から撮影することが可能となり、立体像を容易に得ることができるようになる。この構成において、光路変換素子の入射面から最初の光路変換面までの距離を光路変換面から出射面までの距離以下に設定することで、第1レンズ群がアフォーカルな光学系を実現でき、モジュール厚みを最小化できる。また、このような構成とすることで、第1レンズ群の一部と第2レンズ群・第3レンズ群を共有化でき、部品点数を減らすことができ、コスト削減が見込める。
【0135】
また、第4レンズ群の像面側に光路合成部の光路変換素子を配置することによって、最終レンズから像面までを長くすることができ(テレセントリック光学系)、像面において、周辺光量比が均一な被写体像を得ることができるようになる。その結果、組立時に精度の高いアライメントが不要となるため、生産性に優れ、安価な立体像撮影装置を提供することができる。
【0136】
この発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についてもこの発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0137】
100…立体像撮影装置
101,102…光取込部
103…偏光合成部
104…カメラ光学系
105…偏光分離部
106,107…撮像素子
108…画像処理装置
109L,109R…光路変換素子
111…位相差板
112…反射ミラー
114…位相差板
115…反射ミラー
200…撮像素子
201…偏光板
202…偏光板
203…撮像素子の画素
207…CPU
208…ROM
209…RAM
210…コンピュータ
211…入力部
212…表示部
300…携帯電話
301…モニター側筐体
302…操作側筐体
303…マイク部
304…テンキー
305…モニター部
306…スピーカー部
307…偏光合成式の立体像撮影装置
L1…第1レンズ
L2…第2レンズ
L3…第3レンズ
L4…第4レンズ
L5…第5レンズ
L6…第6レンズ
L56…第5レンズ,第6レンズからなる接合レンズ
L7…第7レンズ
L8…第8レンズ
L9…第9レンズ
IMG…像面
STO…絞り
P1,P2…光路変換素子
P1a…光路変換素子P1第1の光路変換面
P1b…光路変換素子P1の第2の光路変換面
P2a…光路変換素子P2の光路変換面
P101…光路変換素子
P101a,P101b,P101c…偏光膜
P102…偏光分離素子
P102a…偏光膜
G1…第1レンズ群
G2…第2レンズ群
G3…第3レンズ群
G4…第4レンズ群
…光路変換素子P1の入射面から光路変換面P1aまでの光路長
…光路変換素子P1の光路変換面P1aから光路変換素子P1の出射面までの光路長
A…被写体
LL…光取込部101から取り込まれた光線
LR…光取込部102から取り込まれた光線
…左目用の光取込部の光軸中心
…右目用の光取込部の光軸中心
LR…基線長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体像を生成するための複数の視差画像が得られるように、被写体からの光を夫々取り込む複数の光取込部と、
焦点距離を変化させるズーム機能を有し、上記複数の光取込部により夫々取り込まれた上記被写体からの光を複数のレンズを介して結像させる結像部と
を備え、
上記複数の光取込部から上記被写体までの想定距離をDs[mm]とし、35mmフィルム上での視差をk[mm]とし、上記焦点距離をf[mm]として、立体像撮影範囲を2500[mm]とするときの基線長L1と、立体像撮影範囲を1500[mm]とするときの基線長L2は、
L1 = k×(Lmax1×Lmin1)/(Lmax1−Lmin1)/f
L2 = k×(Lmax2×Lmin2)/(Lmax2−Lmin2)/f
Lmax1 : Ds+1250[mm]
Lmin1 : Ds−1250[mm]
Lmax2 : Ds+750[mm]
Lmin2 : Ds−750[mm]
k : 1.2[mm]
f : 105[mm]
(ただし、Ds>1250)
で表され、
上記複数の光取込部のうちの少なくとも2つの光取込部において、望遠撮像時の上記2つの光取込部の光軸中心間の距離で表される基線長LLR[mm]は、
L1 < LLR <L2 ……… (式1)
の条件を満足することを特徴とする立体像撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の立体像撮影装置において、
上記複数の光取込部により夫々取り込まれた上記被写体からの光を合成する光路合成部と、
上記複数の光取込部により夫々取り込まれた上記被写体からの光が異なる像面に結像するように、上記結像部を透過した光を分離する光路分離部と
上記光路合成部は、少なくとも1つの光路変換面を有する光路変換素子を有すると共に、
上記光路分離部は、少なくとも1つの光路変換面を有する光路変換素子を有し、
上記光路合成部の上記光路変換素子の入射面から最初の光路変換面までの光路長をlとし、その最初の光路変換面から上記光路変換素子の出射面までの光路長をlとするとき、
≦l ……… (式2)
の条件を満足することを特徴とする立体像撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の立体像撮影装置において、
上記光路合成部の上記光路変換素子および上記光路分離部の上記光路変換素子は、偏光変換素子であることを特徴とする立体像撮影装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の立体像撮影装置において、
上記光路合成部の上記光路変換素子に入射する光線の有効径をDoとし、上記光路変換素子から出射する光線の有効径をDiとするとき、
Do≧Di ……… (式3)
の条件を満たすことを特徴とする立体像撮影装置。
【請求項5】
請求項2から4までのいずれか1つに記載の立体像撮影装置において、
上記光路合成部の上記光路変換素子における入射面から最初の光路変換面までの光路長をlとし、上記光路合成部の上記光路変換素子における上記最初の光路変換面から出射面までの光路長をlとし、上記光路分離部の上記光路変換素子における入射面から出射面までの光学全長をLP2とし、上記光取込部から像面までの全光路長をLallとするとき、
(l+l+LP2)/Lall > 0.4 ……… (式4)
の条件を満たすことを特徴とする立体像撮影装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1つに記載の立体像撮影装置において、
上記複数の光取込部および上記結像部は、物体側から像面側に向かって順に、像面からの距離が固定された負の屈折力を有する第1レンズ群と、変倍時に移動する正の屈折力を有する第2レンズ群と、変倍時および合焦時に移動する負の屈折力を有する第3レンズ群と、像面からの距離が固定された正の屈折力を有する第4レンズ群で構成され、
上記複数の光取込部は、上記第1レンズ群の最も物体側のレンズであり、負の屈折力を有することを特徴とする立体像撮影装置。
【請求項7】
請求項6に記載の立体像撮影装置において、
上記光路合成部は、上記第1レンズ群内に配置され、少なくとも1つの光路変換面を有する光路変換素子を有すると共に、
上記光路合成部の上記光路変換素子における入射面から出射面までの光学全長をLP1とし、上記第1レンズ群の焦点距離をf1とするとき、
−0.8 < f1/LP1 < −0.1 ……… (式5)
の条件を満足することを特徴とする立体像撮影装置。
【請求項8】
請求項2から5までのいずれか1つに記載の立体像撮影装置において、
上記光路合成部の上記光路変換素子における入射面から出射面までの光学全長をLP1とし、上記光路分離部の上記光路変換素子における入射面から出射面までの光学全長をLP2とするとき、
0.1 < LP2/LP1 < 0.3 ……… (式6)
の条件を満足することを特徴とする立体像撮影装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1つに記載の立体像撮影装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2012−198414(P2012−198414A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62913(P2011−62913)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】