説明

紫外線照射処理方法および紫外線照射処理装置

【課題】エキシマランプの放電容器が不意に破損しないように、エキシマランプの点灯の可否を判断する方法を提供する。
【解決手段】放電容器10内に形成された密閉空間に放電ガスが封入されると共に、当該密閉空間10を挟んで一対の電極17,18が前記放電容器10の外表面に形成され、前記放電容器10の内面に前記密閉空間内に発生した紫外線を光出射方向に向けて反射する紫外線反射膜が形成されたエキシマランプ1において、前記放電容器10が被処理体Wから遠ざかる方向に変形することを規制することにより生じる負荷を圧電素子3で電気信号に変換し、該負荷に対応する実測値と前記放電容器に割れが生じる危険性を有する水準の負荷に対応する基準限界値とを対比して、前記エキシマランプ1の点灯の可否を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射処理方法及び紫外線照射処理装置に関する。特に、半導体基板や液晶基板などの製造工程において半導体基板や液晶基板の洗浄等に利用されるエキシマランプを用いた紫外線照射処理方法及び紫外線照射処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の半導体基板や液晶基板などの製造工程においては、半導体基板であるシリコンウェハや液晶基板であるガラス基板の表面に付着した有機化合物等の汚れを除去する方法として、紫外線を用いたドライ洗浄方法が広く利用されている。特に、エキシマランプから放射される真空紫外光を用いたオゾンや活性酸素による洗浄方法においては、より効率良く短時間で洗浄する洗浄装置が種々提案されており、例えば、特許文献1(特開2000−260396号)が知られている。
【0003】
従来の紫外線照射処理装置としては、エキシマランプが被処理体の搬送方向に複数連設され、エキシマ照射面が被処理体に対して一定距離となるように構成されており、被処理体を所定の方向に搬送しながら各々のエキシマランプを点灯駆動させ、各々のエキシマランプから放射されるエキシマ光を被処理体の表面に照射することによって、被処理体の表面をドライ洗浄するものが知られている。
【0004】
また、従来のエキシマランプは、例えば特許文献2(特許第3580233号公報)に示すように、紫外線を透過するシリカガラスよりなる放電容器を備え、この放電容器の内部に形成された密閉空間に放電ガスが封入されていると共に、一対の電極が密閉空間を挟んで放電容器の内側と外側にそれぞれ設けられ、放電容器の密閉空間に曝される表面には紫外線反射膜が形成されているものが知られている。このエキシマランプにおいては、放電容器の一部に、紫外線反射膜が形成されていないことにより、密閉空間内で発生した紫外線を出射する光出射部が形成されている。
【0005】
このような構成のエキシマランプによれば、光出射部と反対方向へ向かう紫外線が紫外線反射膜によって光出射部に向かう方向へ反射されるので、密閉空間内で発生した紫外線を有効に利用することができ、しかも、光出射部以外の領域を構成するシリカガラスへの紫外線歪みによるダメージを小さく抑制することができるので放電容器にクラックが生じることを防止することができる、とされている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−260396号公報
【特許文献2】特許第3580233号公報
【特許文献3】特許第2836058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記のエキシマランプを所定の定格電力で点灯駆動させたところ、被処理体から遠ざかる方向への放電容器の反りが発生し、点灯時間が長くなるにつれて次第に放電容器の反りによる変形が大きくなることが判明した。例えば、全長1600mm、長辺45mm、短辺15mm、肉厚2.5mmで内面に紫外線反射膜を有するエキシマランプに600Wの電力を投入した場合には、図9に示すように、点灯開始から1000時間、3000時間が経過した放電容器は、点灯初期と比較して紙面の上方側に向けてそれぞれ2mm、6mm変形することが確認された。
また、放電容器の変形は、点灯時における放電容器の温度にも影響を受けて変化し、点灯時の放電容器の温度が低い方が大きくなることが判明した。例えば、点灯時の放電容器の温度が150℃、600℃となるようにそれぞれのエキシマランプを1000時間点灯させると、放電容器の変形はそれぞれ4mm、1mmであることが確認された。
【0008】
このように、点灯時間の経過とともに放電容器に反りによる変形が生じる原因は、定かではないが以下のように考えられる。
図9に示すエキシマランプにおいては、密閉空間で発生した紫外線が紙面の下方に位置する光出射部に照射されることにより、光出射部を構成するシリカガラスは、紫外線誘起歪みが発生することによって収縮が生じる。一方、放電容器の密閉空間に曝される内面には紫外線反射膜が形成されていることから、紙面の上方に位置する紫外線反射膜によって覆われているシリカガラスは、紫外線が照射されることがないので紫外線誘起歪みが発生することはなく収縮が生じない。そのため、内面に紫外線反射膜が形成された放電容器は、放電容器の管軸方向において、上方に位置する紫外線反射膜に覆われたシリカガラスの全長と下方に位置する光出射部を構成するシリカガラスの全長とが互いに相違することになる。これに起因して放電容器に応力が生じることによって、放電容器が被処理体から遠ざかる方向に凸となるように反ることで変形するものと考えられる。
【0009】
上記のように放電容器が反ることによって変形すると、光出射面と被処理体との間の距離が不均一になることに伴って、被処理体の表面における照度分布が不均一になって、被処理体の表面において処理ムラが生じるという不具合がある。さらに、シリカガラスへの紫外線誘起歪みの蓄積量が多くなると、シリカガラスに亀裂が生じることになり、この発生した亀裂に放電容器の応力が集中することによって放電容器が破損するという問題が生じる。
【0010】
従来の紫外線照射処理装置では、例えば特許文献3(特許第2836058号公報)に示されるように、エキシマランプの点灯時において、エキシマランプから放射される紫外線の強度を測定すると共に測定した紫外線の強度と予め設定した基準強度とを対比して、測定した強度が予め設定した基準強度を下回る場合には、エキシマランプの寿命が末期状態であると判断してエキシマランプに対する給電を停止する手段を備えるものが知られている。
【0011】
ところが、このような紫外線照射処理装置によれば、エキシマランプを点灯させない限りはエキシマランプの寿命が末期状態にあるか否かの判断をすることができないため、エキシマランプを点灯させて被処理体に対して紫外線を照射している最中に不意に放電容器が破損する虞があり、飛散した破片によって被処理体が傷つけられるという問題があった。
【0012】
また、エキシマランプから放射される紫外線の強度と放電容器に蓄積された紫外線誘起歪みとは一定の相関関係を有しないので、測定した紫外線の強度に基いて紫外線誘起歪みを定量化することは実用上は困難であった。従って、従来の紫外線照射処理装置を使用するにあたっては、エキシマランプの点灯時に放電容器が破損することを嫌って、新品のエキシマランプへの交換を必要以上に短時間で行っており極めて不経済であった。
【0013】
以上から、本発明は、放電容器の密閉空間に曝される内面に紫外線反射膜が形成されたエキシマランプを用いて被処理体の表面処理を行う紫外線照射処理方法並びに当該エキシマランプを備える紫外線照射処理装置において、放電容器が点灯時間の経過とともに被処理体から遠ざかる方向へ変形しないようにすることを目的とする。また、本発明は、放電容器の密閉空間に曝される内面に紫外線反射膜が形成されたエキシマランプを用いて被処理体の表面処理を行う紫外線照射処理方法並びに当該エキシマランプを備える紫外線照射処理装置において、エキシマランプを点灯させる前にエキシマランプの点灯の可否を判断することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の紫外線照射処理方法は、上記した課題を以下のような手段によって解決する。
放電容器内に形成された密閉空間に放電ガスが封入されると共に、当該密閉空間を挟んで一対の電極が前記放電容器の外表面に形成され、前記放電容器の内面に前記密閉空間内に発生した紫外線を光出射方向に向けて反射する紫外線反射膜が形成されたエキシマランプを用いて、前記放電容器が被処理体から遠ざかる方向に変形することを規制された状態で被処理体に対して紫外線を照射することにより被処理体の表面処理を行う紫外線照射処理方法であって、以下のステップを備えることを特徴とする。
<第1のステップ>
前記放電容器に生じる負荷に対応する実測値を求める。
<第2のステップ>
前記実測値と前記放電容器に割れが生じる危険性を有する水準の負荷に対応する基準限界値とを対比して、前記エキシマランプの点灯の可否を判断する。
【0015】
本発明の紫外線照射処理装置は、上記した課題を以下のような手段によって解決する。
放電容器内に形成された密閉空間に放電ガスが封入されると共に、当該密閉空間を挟んで一対の電極が前記放電容器の外表面に形成され、前記放電容器の内面に前記密閉空間内に発生した紫外線を光出射方向に向けて反射する紫外線反射膜が形成されたエキシマランプを備えてなり、当該エキシマランプから放射される紫外線を被処理体に照射する紫外線照射処理装置であって、前記放電容器が前記被処理体から遠ざかる方向へ変形することを規制する規制手段を備えていることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の紫外線照射処理装置は、前記放電容器が変形しようとすることにより前記規制手段を介して伝えられる負荷を電気信号に変換する変換素子と、前記変換素子から送信される実測値が入力される制御手段と、前記放電容器に割れが生じる危険性を有する水準にある負荷に対応する基準限界値が入力された記憶手段とを備え、前記制御手段は、前記実測値と前記記憶手段から読み出した基準限界値とを対比して前記エキシマランプの点灯の可否を判断することを特徴とすることを特徴とする。
【0017】
さらに、前記制御手段は、警告手段に接続されており、前記実測値が前記基準限界値を超えたときに警告を発するように制御することを特徴とする。
【0018】
さらに、前記制御手段は、前記実測値が前記基準限界値を超えたときに前記エキシマランプへの給電を停止するように制御することを特徴とする。
【0019】
さらにまた、前記記憶手段には、前記基準限界値を下回る水準の基準中間値が入力されており、前記制御手段は、警告手段に接続されており、前記実測値と前記記憶手段から読み出した基準中間値とを対比して、前記実測値が前記基準中間値を超えたときに警告を発するように制御することを特徴とする。
【0020】
さらにまた、前記放電容器を構成するシリカガラスは、シリカガラス中のNa濃度が0.2ppm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の紫外線照射処理方法によれば、放電容器が被処理体から遠ざかる方向に変形することを規制することによって生じる負荷に対応する実測値と、前記放電容器に割れが生じる危険性を有する水準の負荷に対応する基準限界値とを対比して、エキシマランプの点灯の可否を判断することができる。従って、エキシマランプの点灯を開始する前段階において、エキシマランプが点灯することができる状態にあるのか否かを判断することができる。そのため、エキシマランプが破損する危険性を有すると判断した場合には、エキシマランプを新品のものと交換することによって、被処理体に対して紫外線を照射している最中に不意に放電容器が破損するという事態を未然に防止することができ、しかも、必要以上に短期間でエキシマランプを交換しなくても良く、エキシマランプを寿命末期まで使用することができるので経済的である。
【0022】
本発明の紫外線照射処理装置によれば、放電容器が被処理体から遠ざかる方向へ変形することを規制する規制手段を備えているので、放電容器と被処理体との間隔を一定にすることができるため、被処理体の表面における照度分布にバラツキを生じることがなく、被処理体の表面に処理ムラが生じることを確実に防止することができる。
【0023】
さらに、本発明の紫外線照射処理装置によれば、前記規制手段を介して伝えられる負荷を電気信号に変換する変換素子と、前記放電容器に割れが生じる危険性を有する水準にある負荷に対応する基準限界値が入力された記憶手段と、前記変換素子から送信される実測値と前記記憶手段から読み出した基準限界値とを対比する制御手段とを備えて構成されているので、前記実測値を手掛かりとしてエキシマランプを点灯しなくてもエキシマランプの点灯の可否を判断することができる。
【0024】
さらに、本発明の紫外線照射処理装置によれば、前記制御手段により前記実測値が前記基準限界値を超えたときに警告を発するように制御されるので、警告を受けた作業者が紫外線照射処理装置を停止することにより、被処理体に対して紫外線を照射して被処理体の表面処理を行っている最中に不意に放電容器が破損して放電容器の破片が被処理体に向けて飛散することを確実に防止することができる。
【0025】
さらに、本発明の紫外線照射処理装置によれば、前記制御手段により前記実測値が前記基準限界値を超えたときに前記エキシマランプへの給電を停止するように制御されるので、被処理体に対して紫外線を照射して被処理体の表面処理を行っている最中に不意に放電容器が破損して放電容器の破片が被処理体に向けて飛散することを確実に防止することができる。
【0026】
さらにまた、本発明の紫外線照射処理装置によれば、前記記憶手段に前記基準限界値を下回る水準の基準中間値が入力されており、前記制御手段により前記実測値が基準中間値を超えたときに警告を発するように制御されるので、放電容器が破損する危険性を有する状態に近付きつつあることを作業者が認識することができる。従って、放電容器が破損する危険性を有する状態になる前に予め新品のエキシマランプを用意しておくことが可能になるので、エキシマランプを速やかに交換することができ、ラインのダウンタイムをなくし、稼働率を高く維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明の紫外線照射処理装置の構成の概略を示す断面図である。図2は、図1に示す紫外線照射処理装置が備えるエキシマランプの構成の概略並びにエキシマランプと規制体との配置を示す断面図である。図3は、本発明の紫外線照射処理装置に係るブロック図を示す。
紫外線照射処理装置は、下方が開口した筐体2内に配置されたエキシマランプ1から放射される紫外線を、複数のローラー20によって筐体2の下方を水平方向に搬送される被処理体Wに対して照射して、被処理体の表面の洗浄などの処理を行うものである。被処理体Wは、シリコンウェハ基板、液晶ディスプレイ製造用、プラズマディスプレイ製造用などのフラットパネルディスプレイ製造用のガラス基板等である。筐体2は、筐体2の下方を被処理体Wが通過したときにその内部が不活性ガスによって置換された状態になる。規制手段3は、エキシマランプ1が紙面の上方側すなわち被処理体Wから遠ざかる方向に反ることを規制するためのもので、その下端がエキシマランプ1の背面に当接した状態で配置されている。4は規制手段3からの負荷信号を電気信号に変換する圧電素子、5は筐体2の内部でエキシマランプ1を支持する支持体、6はエキシマランプ1に対して電力を供給するための給電装置、7はエキシマランプを安全に点灯させるためのインターロックである。
【0028】
エキシマランプ1は、図2に示すように、誘電体材料であるシリカガラスより構成された、四隅に丸みを有する扁平な角筒形状の放電容器10を有している。放電容器10の内部に形成された密閉空間Sには、例えばキセノンガスなどの希ガスや、希ガスに塩素ガスなどのハロゲンガスを混合したものが放電ガスとして充填されている。放電ガスの種類によって異なる波長のエキシマ光が発生する。放電ガスは、通常は、10〜100KPa程度の圧力で充填されている。
【0029】
放電容器10は、図2に示すように、紙面の上方側に位置する平坦壁11と紙面の下方側に位置する平坦壁12とが互いに離間して平行に伸びていると共に、紙面の左方に位置する平坦壁13と紙面の右方に位置する平坦壁14とが互いに離間して平行に伸びており、これら平坦壁11ないし14の各々の端部が湾曲部15によって連結されている。このような放電容器10は、紙面の上下に位置する平坦壁11、12の何れかが被処理体に向けて紫外線を出射するための光出射面を形成し、例えば放電容器10の下方に被処理体Wを配置する場合には平坦壁12が光出射面となる。
【0030】
被処理体Wに対して遠い側の平坦壁11の密閉空間Sに曝される内面11aには、例えばシリカ粒子とアルミナ粒子とよりなる紫外線反射膜が16が形成されている。図2に示す例では、紫外線反射膜16が平坦壁11の両端に連続する湾曲部15の内面にまで伸びている。紫外線反射膜16は、シリカ粒子の含有割合が30〜99質量%であり、アルミナ粒子の含有割合が1〜70質量%であることが好ましい。
【0031】
平坦壁11、12には、それぞれ電極17、18が配置されている。電極17、18は、例えば金、銀、銅、ニッケル、クロムなどの耐食性金属を平坦壁11、12上に印刷又は蒸着することによって、例えば厚みが0.1μm〜数十μmとなるように形成されており、平坦壁11、12の幅方向のほぼ全域を覆っている。例えば、平坦壁12が光出射面となる場合には、下方に位置する電極18は上記の金属を格子状に印刷又は蒸着することにより光透過性を有するように形成される。図3に示すように、電極17はインバータ回路61の高圧側のリード線61aに接続され、電極18はインバータ回路61の接地側のリード線61bに接続される。
【0032】
このようなエキシマランプ1の数値例を示すと、平坦壁11、12の長手方向(図1の紙面の左右方向)の全長が904mm、発光長(平坦壁11、12の長手方向において電極17、18が配設されている領域の全長)が790mm、平坦壁11、12の幅方向(図2の紙面の左右方向)の全長が43mm、平坦壁13、14の幅方向(図2の紙面の上下方向)の全長が15mmである。
【0033】
なお、上記したエキシマランプ1の放電容器10の形状はあくまで一例に過ぎない。放電容器10の形状は、光出射面を除く領域に紫外線反射膜が形成されていれば、上記したものに限られず、例えば円筒状のものであっても良く、また、互いに外径の異なる2つの直管を同軸に配置すると共に各々の直管の端部を気密に封止することによって内部に気密空間が形成された二重円筒管構造のものであっても良い。
【0034】
規制手段3は、被処理体に対して概ね垂直方向へ伸びる直方体状の金属であって、平坦壁11に設けられた電極17の幅と同程度の幅を有する一端部3aが電極17に当接している。一端部3aの表面は、放電容器10の変形を規制するため、平坦壁11に対して平行に伸びる形状とされていることが好ましい。規制手段3の他端部3bは、筐体2の上方に設けられた開口2aに挿入されて圧電素子4の下方側の端面に連結されている。規制手段3は、放電容器10が被処理体Wから遠ざかる方向へ変形することを規制することによって平坦壁11および12が被処理体Wに対して平行になるよう維持するため、平坦壁11の長手方向の中央に当接していることが好ましい。
【0035】
圧電素子4は、例えば、共和電業製小型圧縮型ロードセルLCX−A−1KN−IDによって構成されており、給電装置6に電気的に接続されている。圧電素子4は、放電容器10の被処理体Wから遠ざかる方向への変形が規制手段3に規制されることによって生じる負荷が規制手段3を介して伝えられ、当該負荷を例えば電圧値のような電気信号に変換して給電装置6に送信する。
【0036】
インターロック7は、筐体2に設けられた扉(不図示)を安全に開閉するためのものであり、例えば、給電装置6が作動していてエキシマランプ1に対して高周波高電圧が印加されている最中に筐体2の扉が開放されることを防止するためのものである。すなわち、給電装置6が作動しているときは筐体2の扉がロックされた状態となっており、給電装置6が作動していないときには扉のロックが解除されて、エキシマランプ1の交換等を行うことができる。
【0037】
給電装置6は、図3に示すように、エキシマランプ1のリード線61a、61bを介して一対の電極17、18に電圧を印加するインバータ回路61と、圧電素子4から送信される電気信号を受信してエキシマランプ1の点灯の可否を判断する制御手段62と、エキシマランプ1の点灯の可否を判断するために必要な情報が記憶された記憶手段63とによって構成されている。制御手段62は、インバータ回路61、記憶手段63、圧電素子4、インターロック7及び紫外線照射処理装置のメイン制御部8に対して電気的に接続されている。
【0038】
インバータ回路61は、直流電力を交流電力に変換してエキシマランプ1に対して高周波電圧を印加するものであり周知のものが使用される。記憶手段63は、エキシマランプ1の点灯の可否を判断する情報、すなわち、エキシマランプ1の放電容器10に割れが生じる危険性を有する水準にある負荷に対応する基準限界値を予め設定することができるようになっている。基準限界値は、実際に図1に示す紫外線照射処理装置を用いて放電容器10が変形することを規制体3によって規制された状態でエキシマランプ1を点灯させ、放電容器10が破損したときに圧電素子4から送信された電圧値に基いて決定される。すなわち、基準限界値は、エキシマランプそれぞれにおける放電容器の全長、肉厚、放電ガスの封入量などの種々の条件によって異なるので、使用するエキシマランプの種類毎に予め求めておく必要がある。
【0039】
制御手段62は、圧電素子4から送信される電圧値等の実測値と、記憶手段63から読み出した基準限界値とを対比することにより、エキシマランプ1の点灯の可否を判断する。具体的には、制御手段62は、実測値が基準限界値を下回る場合にはインバータ回路61に対して点灯開始信号を送信し、一方、実測値が基準限界値を上回る場合にはインバータ回路61に対して点灯開始信号を送信することなく紫外線照射処理装置のメイン制御部8にランプ交換信号を送信するようになっている。
【0040】
図4は、本発明の紫外線照射処理方法のフローチャートを示す図であり、以下にこのフローチャートを用いて紫外線照射処理装置における紫外線照射処理手順を説明する。
(ステップ1)
紫外線照射処理装置のメイン制御部8は、制御手段62に対して、圧電素子4、給電装置6及びインターロック7を動作するよう動作開始信号を送信する。
(ステップ2)
給電装置6の制御手段62は、インターロック7から安全確認信号を受信する。
(ステップ3)
制御手段62は、圧電素子4から送信される実測値と記憶手段63から読み出した基準限界値とを対比し、実測値が基準限界値未満である場合はインバータ回路61に対して点灯開始信号を送信し、実測値が基準限界値を超える場合は紫外線照射処理装置のメイン制御部8に対して動作停止信号を送信する。
(ステップ3´)
動作停止信号を受信したメイン制御部8は、紫外線照射処理装置の動作を停止する。
(ステップ4)
点灯開始信号を受信したインバータ回路61は、給電線61a、61bを介して一対の電極17、18に対して高周波電圧を印加してエキシマランプ1を点灯駆動する。
(ステップ5)
制御手段62は、紫外線照射処理装置のメイン制御部8から点灯停止信号を受信したときに、インバータ回路61に対して点灯停止信号を送信してエキシマランプ1を消灯する。
【0041】
メイン制御部8は、予め紫外線照射処理の回数に関する情報が入力されており、例えば実施した紫外線照射処理の回数が入力された所定の回数に達したときに、制御手段62に対して点灯停止信号を送信する。従って、制御手段62が点灯停止信号を受信するまでの間は、制御手段62がエキシマランプの点灯の可否を判断すると共にインバータ回路61がエキシマランプ1を点灯駆動するというステップ3〜ステップ4の動作を繰り返し行う。
【0042】
このように、放電容器10の密閉空間に曝された内面に紫外線反射膜16が設けられたエキシマランプ1を使用し、放電容器10が被処理体Wから遠ざかる方向に変位することを規制手段3によって規制した状態で、被処理体Wに対して紫外線を照射する本発明の紫外線照射処理方法によれば、以下のような効果を期待することができる。
【0043】
すなわち、エキシマランプ1を点灯駆動するステップ4の前に、ステップ3においてスエキシマランプ1の点灯の可否を判断することができる。そのため、ステップ3においてエキシマランプ1を点灯することが可能であると判断されたときのみにエキシマランプ1を点灯駆動し、その一方で、ステップ3においてエキシマランプ1を点灯することが不可能であると判断されたときには、紫外線照射処理装置の動作を停止してエキシマランプを新品のものと交換することができる。
従って、従来のようにエキシマランプを点灯させなくてもエキシマランプの点灯の可否を判断することができるので、エキシマランプ1を点灯駆動して被処理体Wに対して紫外線を照射して被処理体Wの表面処理を行っている最中に不意にエキシマランプ1の放電容器10が破損することがない。よって、被処理体Wの表面を傷つけることを確実に防止することができ、また、新品のエキシマランプへの交換を必要以上に短時間で行う必要がないので経済的である。
【0044】
しかも、本発明の紫外線照射処理装置においては、エキシマランプ1の放電容器10の、紫外線反射膜16が設けられた領域に対応する外表面に対して規制手段3が当接して設けられているので、放電容器10が被処理体Wから遠ざかる方向に向けて変位することを確実に防止することができる。従って、放電容器10の平坦壁11、12が被処理体Wに対して平行になるようエキシマランプ1を配置することにより、放電容器10の光出射面と被処理体Wとの離間距離が放電容器10の管軸方向において均等になるので、被処理体Wの表面をムラなく処理することができる。
【0045】
ここで、本発明に係る放電容器10を構成するシリカガラスは、紫外線透過率の向上と紫外線誘起歪の緩和という理由により、シリカガラス中のNa(ナトリウム)濃度が0.2ppm以下とされており、シリカガラス中に含有されるNa濃度が低いことから、紫外線により変形し易い状態になっている。そのため、上記のように規制手段3を設けることにより、放電容器10が被処理体Wから遠ざかる方向に向けて変位することを防止することが必要になる。これに関して、以下に詳細に説明する。
【0046】
シリカガラス中に含有されるNaは、紫外線領域において吸収作用をもつので、シリカガラスの紫外線透過率が低下する特性がある。特に真空紫外線とよばれる200nm以下の波長領域においては、Naの含有量に応じて紫外線透過率の低下の割合が大きくなる。例えば厚さが1mmのシリカガラスにおいて、Naの含有量をそれぞれ0.01ppm、0.1ppm、0.2ppm、1ppm、3ppmと変化させると、各シリカガラスにおける真空紫外線の透過率は、それぞれ88%、88%、84%、70%、25%となる。すなわち、真空紫外線を放射するエキシマランプにおいては、シリカガラス中に含有されるNaの濃度が高くなるにつれて真空紫外線の透過率が低下することから、Na濃度が低い(具体的には、0.2ppm以下であって、好ましくは0.01ppm〜0.1ppmの範囲)の合成石英を利用することが多い。放電容器を構成するシリカガラスにおける真空紫外線の透過率は、80%以上であれば実用上の問題が無いと考えられる。
【0047】
ところで、シリカガラスは、以下に説明するように、シリカガラス中に含有されるNa濃度に依存して、紫外線による変形量が変化するものと考えられる。
シリカガラスにおいては、紫外線が照射されることによってSiOのネットワークが分断される(欠陥が生じる)ことにより紫外線誘起歪みが生じるが、この紫外線誘起歪みは、シリカガラス中にNaを含有させることによって補修される。Naにこの作用がある理由は、Naはシリカガラス中の移動度が大きいためで他の不純物にない作用が現れると考えられる。
Na以外にもシリカガラスの紫外線歪みを補修する作用を有する不純物として水分(OH基)が知られている。しかし、OH基は、シリカガラスの吸収端にきわめて近いところ160nm付近に吸収があるため、真空紫外線を利用するランプを構成するシリカガラスに高濃度で含有させることは適切ではない。しかも、水分の移動度はNaよりも小さく石英ガラス中を移動して補修する役割は小さい。また、水素はNaより移動度が高いが、放電空間に容易に放出されやすく、放出された水素は安定な放電を阻害するので好ましくない。
シリカガラス中に含有されるNaが多い場合は、分断されたSiOのネットワークをNaによって補修することができるので、シリカガラスに蓄積される紫外線誘起歪みを低減することができる。その一方で、シリカガラス中に含有されるNaが少ない場合は、不純物によって補修されるSiOのネットワークの分断の割合が少なくなるので、シリカガラスに蓄積される紫外線誘起歪みが多くなる。
【0048】
以上のように、エキシマランプにおいては、真空紫外線の透過率を高くするために、シリカガラスに含有されるNaの濃度を低くすることが必要であるが、その反面、シリカガラス中に含有されるNaの濃度が低くなるにつれて、シリカガラスに蓄積される紫外線誘起歪みが多くなることに伴い、シリカガラスの紫外線による変形が大きくなるものと考えられる。これについては、以下の図5に示す実験データからも明らかである。
【0049】
以下に、シリカガラス中に含有されるNaの濃度とシリカガラスの変形量との関係を調べるために行った実験について説明する。
〔実験の説明〕
任意のNa濃度を有する合成シリカガラスを作製するための手順を以下に説明する。
まず、発光長1600mmのエキシマランプ構成材料(合成シリカガラス)を漬けるための、内寸2000mm×500mm×300mmの樹脂製の水槽を準備する。この水槽に対し、100リットルの純水をいれ、0.05mol/Lの炭酸水素ナトリウム溶液を90リットル、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を19.3リットル入れ、最後に純水を加えて全量が180リットルになるように希釈する。この水槽に満たされた溶液中に合成シリカガラスを沈めておく。
次に100mlのベンゼンに5gのステアリン酸を溶解させた溶液を準備し、先に説明した水槽の表面に滴下する。水面に滴下されたベンゼンは蒸発してステアリン酸が水面にのこる。ステアリン酸は一部にカルボキシル基を有しており、このカルボキシル基は水中のNaと結合してステアリン酸ナトリウムになる。この状態で合成シリカガラスを水面から引き上げると、ステアリン酸ナトリウムがシリカガラスの表面に満遍なく付着する。この合成シリカガラスを熱処理炉に入れ、1000℃で18時間加熱する。この加熱処理によって合成シリカガラス表面の有機成分が燃焼され、表面に残ったNaが合成シリカガラスの内部に拡散する。合成シリカガラスに含有されるNaの濃度は、上記の水槽に滴下する溶液に含有されるステアリン酸の濃度を適宜調整することによって、調整することができる。
本実験においては、上記のようにして、それぞれのNa濃度が0.005ppm〜1ppmの範囲内で互いに異なる10種類の合成シリカガラスによって構成される10種類のエキシマランプを作製した。そして、それぞれのエキシマランプについて、3000時間連続して点灯させた後、合成シリカガラスの変形(反り)量を測定した。また、それぞれのエキシマランプを構成する合成シリカガラスの濃度を、ICP−MASS分析法によって求めた。
【0050】
図5は、エキシマランプを構成する合成シリカガラスのNa濃度と、エキシマランプを構成する合成シリカガラスにおける反り量との関係を示すグラフである。縦軸は、合成シリカガラスの反り量(mm)を示し、横軸は合成シリカガラス中のNa濃度(ppm)を示す。図5に示すように、合成シリカガラスは、合成シリカガラス中に含有されているNa濃度が低くなるにつれて反り量が大きくなることが判明した。
【0051】
以上のように、本発明においては、真空紫外線の取り出し効率を高くするために、Na濃度の低いシリカガラスよりなる放電容器を使用しており、シリカガラス中に含有されるNa濃度が低いことに起因して、放電容器が紫外線の照射を受けることにより変形し易い状態になっている。従って、前述したように、規制手段3が、エキシマランプ1の放電容器10における紫外線反射膜16が設けられた領域に対応する外表面に対して当接して設けられていることが必要となる。
【0052】
図6は、本発明の他の実施形態に係る紫外線照射処理装置のブロック図を示す。図6においては、図3と共通する箇所には図3で使用している符号と同一の符号を付すことにより当該箇所の説明は省略している。
給電装置6は、エキシマランプ1のリード線61a、61bを介して一対の電極17、18に電圧を印加するインバータ回路61と、圧電素子4から送信される電気信号を受信してエキシマランプ1の点灯の可否を判断する制御手段62と、エキシマランプ1の点灯の可否を判断するために必要な情報が記憶された記憶手段63とによって構成されている。さらに、制御手段62には、エキシマランプ1の放電容器10が破損する危険性を有する状態にあることを作業者に知らせるための警告手段9が接続されている。
【0053】
警告手段9は、例えば液晶パネルなどを備える画像表示素子であり、表示画面に蛍光色の注意表示を点灯させるなどして、放電容器10が破損する危険性を有する状態に近付きつつあることを視覚を通じて作業者に通知する。なお、警告手段9として周知の警報器などを用いることもできる。
【0054】
図7は、本発明の他の紫外線照射処理方法のフローチャートを示す図であり、以下にこのフローチャートを用いて図6に示す紫外線照射処理装置における紫外線照射処理手順を説明する。
(ステップ1)
紫外線照射処理装置のメイン制御部8は、制御手段62に対し、圧電素子4、給電装置6及びインターロック7を動作するよう動作開始信号を送信する。
(ステップ2)
給電装置6の制御手段62は、インターロック7から安全確認信号を受信する。
(ステップ3)
制御手段62は、圧電素子4から送信される実測値と記憶手段63から読み出した基準限界値とを対比し、実測値が基準限界値未満である場合はインバータ回路61に対して点灯開始信号を送信し、実測値が基準限界値を超える場合は警告手段9に対して警告発生信号を送信する。
(ステップ3´)
警告発生信号を受信した警告手段9は、表示画面上に注意表示を点灯させる。
(ステップ4)
点灯開始信号を受信したインバータ回路61は、給電線61a、61bを介して一対の電極17、18に対して高周波電圧を印加してエキシマランプ1を点灯駆動する。
(ステップ5)
制御手段62は、紫外線照射処理装置のメイン制御部8から点灯停止信号を受信したときに、インバータ回路61に対して点灯停止信号を送信してエキシマランプ1を消灯する。
【0055】
メイン制御部8は、予め紫外線照射処理の回数に関する情報が入力されるようになっており、例えば実施した紫外線照射処理の回数が入力された所定の回数に達したときに制御手段62に対して点灯停止信号を送信する。制御手段62が点灯停止信号を受信するまでの間は、ステップ3〜ステップ4の動作を繰り返し行う。
【0056】
なお、図6に示す紫外線照射処理装置においては、以下に説明するように、基準限界値を下回る水準の基準中間値と実測値とを対比して、実測値が基準中間値を超えたときに警報を発するように制御することが好ましい。作業者が警報を確認することによりエキシマランプを新品のものに交換する時期が迫っていることを認識できるからである。
【0057】
すなわち、記憶手段63は、エキシマランプ1の点灯の可否を判断するために必要な情報として、エキシマランプ1の放電容器10が破損する危険性を有する水準の負荷に相当する基準限界値と、当該基準限界値を下回る水準の基準中間値とを入力することができるようになっている。基準中間値は、放電容器10の変形が規制手段3によって規制されることによって放電容器10に生じている負荷が、放電容器10が破損する危険性を有する水準にはないものの当該水準に近付きつつあることを示し、例えば基準限界値の80〜95%の範囲内に設定されることが望ましい。
【0058】
図8は、本発明の他の紫外線照射処理方法のフローチャートを示す図であり、以下にこのフローチャートを用いて図6に示す紫外線照射処理装置における紫外線照射処理手順を説明する。
(ステップ1)
紫外線照射処理装置のメイン制御部8は、制御手段62に対し、圧電素子4、給電装置6及びインターロック7を動作するよう動作開始信号を送信する。
(ステップ2)
給電装置6の制御手段62は、インターロック7から安全確認信号を受信する。
(ステップ3)
制御手段62は、圧電素子4から送信される実測値と記憶手段63から読み出した基準中間値とを対比し、実測値が基準中間値未満である場合はインバータ回路61に対して点灯開始信号を送信し、実測値が基準中間値を超える場合は警告手段9に対して警告発生信号を送信する。
(ステップ3´)
警告発生信号を受信した警告手段9は、表示画面上に注意表示を点灯させる。
(ステップ3´´)
制御手段62は、ステップ3で得られた実測値と記憶手段63から読み出した基準限界値とを対比し、実測値が基準限界値未満である場合はインバータ回路61に対して点灯開始信号を送信し、実測値が基準限界値を超える場合は紫外線照射処理装置のメイン制御部8に対して動作停止信号を送信する。
(ステップ3´´´)
動作停止信号を受信したメイン制御部8は、紫外線照射処理装置の動作を停止する。
(ステップ4)
ステップ3またはステップ3´´において点灯開始信号を受信したインバータ回路61は、一対の電極17、18に対して高周波電圧を印加してエキシマランプ1を点灯駆動する。
(ステップ5)
制御手段62は、紫外線照射処理装置のメイン制御部8から点灯停止信号を受信したときに、インバータ回路61に対して点灯停止信号を送信してエキシマランプ1に対する電圧の印加を停止する。
【0059】
メイン制御部8は、予め紫外線照射処理の回数に関する情報が入力されるようになっており、例えば実施した紫外線照射処理の回数が入力された所定の回数に達したときに制御手段62に対して点灯停止信号を送信する。制御手段62が点灯停止信号を受信するまでの間は、ステップ3〜ステップ4の動作を繰り返し行う。
【0060】
このような図6に示す紫外線照射処理装置においては、図8に示すフローチャートに従って紫外線照射処理を行うことにより、図1、3に示す紫外線照射処理装置と同様に、エキシマランプ1を点灯駆動するステップ4の前に、ステップ3においてエキシマランプ1の点灯の可否を判断することができる。従って、従来のようにエキシマランプを点灯させなくてもエキシマランプの点灯の可否を判断することができるので、エキシマランプ1を点灯駆動して被処理体Wに対して紫外線を照射して被処理体Wの表面処理を行っている最中に不意にエキシマランプ1の放電容器10が破損することがない。しかも、新品のエキシマランプへの交換を必要以上に短時間で行う必要がないので経済的である。
【0061】
しかも、ステップ3においてエキシマランプ1の放電容器10が破損する危険性を有する状態に近付きつつあると判断された場合には、警告手段9に表示される注意表示などにより作業者に対してエキシマランプ1に異常があることを通知することができる。警告手段9から発せられた警告を確認した作業者は、エキシマランプ1を新品のものに交換する時期が迫っていることを認識することができるので、制御手段62において放電容器10が破損する危険性を有する状態にあると判断されて紫外線照射処理装置の動作が停止してしまう前に新品のエキシマランプを速やかに準備することができる。従って、エキシマランプを新品のものに交換する時間を短縮することができるので、被処理体の表面処理におけるスループットを高いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の紫外線照射処理装置の構成の概略を示す断面図である。
【図2】図1に示す紫外線照射処理装置が備えるエキシマランプの構成の概略並びにエキシマランプと規制体との配置を示す断面図である。
【図3】本発明の紫外線照射処理装置に係るブロック図を示す。
【図4】本発明の紫外線照射処理方法のフローチャートを示す図である。
【図5】エキシマランプを構成する合成シリカガラスのNa濃度と、エキシマランプを構成する合成シリカガラスにおける反り量との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の他の実施形態に係る紫外線照射処理装置のブロック図を示す。
【図7】本発明の他の紫外線照射処理方法のフローチャートを示す図である。
【図8】本発明の他の紫外線照射処理方法のフローチャートを示す図である。
【図9】点灯開始から所定時間が経過した後の放電容器の変形を示す概念図である。
【符号の説明】
【0063】
1 エキシマランプ
10 放電容器
11 平坦壁
12 平坦壁
13 平坦壁
14 平坦壁
15 湾曲部
16 紫外線反射膜
17 電極
18 電極
2 筐体
20 ローラー
3 規制手段
4 圧電素子
5 支持体
6 給電装置
61 インバータ回路
61a リード線
61b リード線
62 制御手段
63 記憶手段
7 インターロック
8 メイン制御部
9 警告手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電容器内に形成された密閉空間に放電ガスが封入されると共に、当該密閉空間を挟んで一対の電極が前記放電容器の外表面に形成され、前記放電容器の内面に前記密閉空間内に発生した紫外線を光出射方向に向けて反射する紫外線反射膜が形成されたエキシマランプを用いて、前記放電容器が被処理体から遠ざかる方向に変形することを規制された状態で被処理体に対して紫外線を照射することにより被処理体の表面処理を行う紫外線照射処理方法であって、以下のステップを備えることを特徴とする。
<第1のステップ>
前記放電容器に生じる負荷に対応する実測値を求める。
<第2のステップ>
前記実測値と前記放電容器に割れが生じる危険性を有する水準の負荷に対応する基準限界値とを対比して、前記エキシマランプの点灯の可否を判断する。
【請求項2】
放電容器内に形成された密閉空間に放電ガスが封入されると共に、当該密閉空間を挟んで一対の電極が前記放電容器の外表面に形成され、前記放電容器の内面に前記密閉空間内に発生した紫外線を光出射方向に向けて反射する紫外線反射膜が形成されたエキシマランプを備えてなり、当該エキシマランプから放射される紫外線を被処理体に照射する紫外線照射処理装置であって、
前記放電容器が前記被処理体から遠ざかる方向へ変形することを規制する規制手段を備えていることを特徴とする紫外線照射処理装置。
【請求項3】
前記紫外線照射処理装置は、前記放電容器が変形しようとすることにより前記規制手段を介して伝えられる負荷を電気信号に変換する変換素子と、前記変換素子から送信される実測値が入力される制御手段と、前記放電容器に割れが生じる危険性を有する水準にある負荷に対応する基準限界値が入力された記憶手段とを備え、
前記制御手段は、前記実測値と前記記憶手段から読み出した基準限界値とを対比して前記エキシマランプの点灯の可否を判断することを特徴とする請求項2に記載の紫外線照射処理装置。
【請求項4】
前記制御手段は、警告手段に接続されており、前記実測値が前記基準限界値を超えたときに警告を発するように制御することを特徴とする請求項3に記載の紫外線照射処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記実測値が前記基準限界値を超えたときに前記エキシマランプへの給電を停止するように制御することを特徴とする請求項3に記載の紫外線照射処理装置。
【請求項6】
前記記憶手段には、前記基準限界値を下回る水準の基準中間値が入力されており、
前記制御手段は、警告手段に接続されており、前記実測値と前記記憶手段から読み出した基準中間値とを対比して、前記実測値が前記基準中間値を超えたときに警告を発するように制御することを特徴とする請求項3に記載の紫外線照射処理装置。
【請求項7】
前記放電容器を構成するシリカガラスは、シリカガラス中のNa濃度が0.2ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射処理方法及び請求項2乃至請求項6に記載の紫外線照射処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−238880(P2009−238880A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80714(P2008−80714)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】