説明

経路探索システム、経路探索サーバおよび経路案内方法

【課題】推奨する経路を探索する際に、複数の代替経路を探索し、代替経路上の道路交通に関するイベントを抽出し、周辺の道路の道路交通情報を報知する。
【解決手段】道路交通情報データベース36に蓄積された道路交通情報を経路探索用ネットワークデータベース35に蓄積されたネットワークデータに反映させて最適経路を探索するとともに、経路探索手段39は、経路探索用ネットワークデータベース35に蓄積されたネットワークデータに基づいて少なくとも1つの出発地から目的地に至る代替経路を探索し、イベント抽出手段372は、代替経路における道路交通に関するイベントを抽出し、抽出したイベントおよびイベント発生箇所を含む関連道路交通情報を関連道路交通情報記憶手段373に記憶し、関連道路交通情報記憶手段373に記憶した関連道路交通情報を最適経路とともに表示手段25に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の出発地から目的地までの経路を探索して案内する経路探索システム、経路探索サーバおよび端末装置ならびに経路案内方法に関するものであり、特に、
通行止め(工事、事故、天候)や渋滞など、道路交通情報を反映して最適経路を探索し、得られた最適経路を案内する場合に、複数の代替経路上における道路交通に関するイベントを抽出し、イベントの存在する地点、イベントに関する道路交通情報を表示するようにした経路探索システム、経路探索サーバおよび経路案内方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地図データ、道路データを用いて、所望の出発地から目的地までの経路を探索して利用者を案内するナビゲーション装置、ナビゲーションシステムが知られている。このようなナビゲーション装置、ナビゲーションシステムとしては、自動車に搭載して運転者に経路を案内するカーナビゲーション装置、携帯電話をナビゲーション端末として利用して経路探索サーバに経路探索要求を送り、その結果を受信して経路案内を受ける通信型のナビゲーションシステムなどが実用化されている。
【0003】
特に、通信型のナビゲーションシステムは、携帯電話などの携帯端末をナビゲーション端末として利用したシステムであって、歩行者用のナビゲーションシステムとしても用いられるものである。歩行者用のナビゲーションシステムとしては、交通機関を含めた経路案内機能を付加することが好ましく、徒歩経路の探索と案内に加えて、経路探索サーバに交通機関の路線や運行時刻データを蓄積し、所望の出発駅から所望の目的駅までの経路(乗車候補列車)を、徒歩経路の探索と案内に加えて案内する機能を有するナビゲーションシステムも存在する。また、徒歩経路の経路探索を伴わずに情報配信サーバから交通機関の路線や時刻表、乗車可能な列車などの情報の配信を受けて表示する交通案内システムも存在する。
【0004】
一般的なナビゲーション装置、通信型のナビゲーションシステムに使用される経路探索装置、経路探索方法は、例えば、下記の特許文献1(特開2001−165681号公報)に開示されている。このナビゲーションシステムは、携帯ナビゲーション端末から出発地と目的地の情報を情報配信サーバに送り、情報配信サーバで道路網や交通網のデータから探索条件に合致した経路を探索して案内するように構成されている。探索条件としては、出発地から目的地までの移動手段、例えば、徒歩、自動車、鉄道と徒歩の併用などがあり、これを探索条件の1つとして経路探索する。
【0005】
情報配信サーバは、地図データの道路(経路)をその結節点、屈曲点の位置をノードとし、各ノードを結ぶ経路をリンクとし、全てのリンクのコスト情報(距離や所要時間)をデータベースとして備えている。そして、情報配信サーバは、データベースを参照して、出発地のノードから目的地のノードに至るリンクを順次探索し、リンクのコスト情報が最小となるノード、リンクをたどって案内経路とすることによって最短の経路を携帯ナビゲーション端末に案内することができる。このような経路探索の手法としてはラベル確定法あるいはダイクストラ法と言われる手法が用いられる。上記特許文献1には、このダイクストラ法を用いた経路探索方法も開示されている。
【0006】
リンクデータにはリンク長などのコストデータの他に該当する道路に関する種々の付帯情報が属性情報として付加されている。属性情報には、国道や高速道路などの道路種別や道路の幅員や傾斜などの道路構造などを示す情報の他、工事中、事故や災害による通行止め、一方通行など道路の現況に関する情報がある。また、表示の際の表示色の情報や、道路交通情報に基づく渋滞度などの情報もある。経路探索にあたっては属性情報も考慮される。例えば、通行止めのリンクに対してはリンクコストを無限大に調整することで案内経路として探索されないようにする。渋滞度の高いリンクについてはリンクコストを一定の係数を積算して通常よりも大きく調整することで渋滞のないリンクとの差が生ずるようにして最適経路として探索される確率を低くする。
【0007】
このようなナビゲーションシステムにおいて経路探索条件としては少なくとも出発地と目的地を設定する。また、途中に立ち寄りたい経由地がある場合には、その地点を経由地として設定し、出発地から経由地を経由して目的地に至る最適経路や複数の候補経路を探索する。これらの地点を設定するためには、通常は、経路探索条件入力画面を表示し、地点の名称や住所(所在場所)、電話番号を入力する方法、表示画面に地図を表示して地図上の所望地点をカーソル選択して設定する方法などが採られる。
【0008】
経路探索して得た出発地から目的地までの経路のうち、経路の累計コスト(距離または時間)が最小となる経路が最適な案内経路として決定され、案内経路データが作成される。案内経路データには、最適経路のデータの他に地図データ、ガイダンスデータが含まれ、案内経路データは必要に応じて案内データ記憶手段から読み出され表示手段に表示される。一般的には、ナビゲーション装置が有するGPS受信機を用いて測位したナビゲーション装置の現在位置を含む一定の縮尺、一定の範囲の地図に、案内経路と、ナビゲーション装置の現在位置を示すマークを重ね合わせ、該現在位置マークが表示画面の中心になるように表示する。
【0009】
GPS受信機を用いて測位した位置情報には誤差が含まれるため、現在位置が案内経路からずれている場合には現在位置を案内経路上に補正するルートマッチング処理や地図上の最も近い道路上に補正するマップマッチング処理が行われる。また、案内経路データに交差点などのガイダンスポイントが設定され、そのガイダンスポイントにおけるガイダンスとして音声ガイド(例えば、「この先、300m交差点です。左折して下さい」などの音声メッセージ)のデータが付加されている場合は、スピーカを介して音声メッセージを再生出力して利用者をガイドする。
【0010】
ところで、いくつかの経路を比較して利用者が経路を選択しやすくするビゲーションシステムが種々提案されている。例えば、下記の特許文献2(特開2006−184126号公報)には、経路探索において得られた経路の特徴量を算出し探索経路間の比較を行う経路特徴量比較部と特徴量グラフ作成部を備え、ユーザが経路選択する際に前記特徴量のグラフを提示するようにした経路案内装置が開示されている。このような構成によれば、利用者は提示された複数の経路について、特徴(案内経路の平均カーブ曲率、急カーブ数、右左折割合や直進路割合など)を理解した上で経路案内を受ける案内経路を選択することができるようになる。
【0011】
また、下記の特許文献3(特開2006−215189号公報)には、道路交通情報に基づく渋滞状況を加味した最適経路と、通常の経路探索用のネットワークデータ(ノード、リンク、リンクコストなどのデータ)を用いて探索した比較経路とを探索し、両方の経路を表示し、その相違点を表示するようにしたナビゲーション装置が開示されている。このように構成すれば、案内経路よりも有利な経路があっても渋滞による影響である場合には利用者がその原因を理解することができる。
【0012】
更に、下記の特許文献4(特開2003−214877号公報)には、出発地から目的地までの複数の候補経路を探索し、各候補経路の予測所要時間、目的地への到達予想時刻、予測渋滞区間を出力する経路交通情報サービスの発明が開示されている。この経路交通情報サービスのシステムは、車両現在位置と目的地入力から経路探索し、経路探索終了後、画面表示は経路決定画面表示に遷移して、複数の候補経路及び各候補経路上の所定の時刻(サービス側であらかじめ定めた時刻)における予測通過地点及び出発地からの距離,経路上の予測渋滞を表示するように構成されたものである。
【0013】
また、下記の特許文献5(特開平5−67295号公報)には、路上に設置されたビーコンより受信される道路情報をナビゲーション装置等の画面に表示させるようにした道路情報選別表示方法の発明が開示されている。この道路情報選別表示方法の発明は、ビーコンから道路情報を受信して目的地までの車両の走行する経路に関する道路情報のみを選択して画面に表示させるように構成されたものであり、現在位置から目的地までの直線の近傍にある道路における渋滞などの道路情報を表示するように構成されている。
【0014】
【特許文献1】特開2001−165681号公報
【特許文献2】特開2006−184126号公報
【特許文献3】特開2006−215189号公報
【特許文献4】特開2003−214877号公報
【特許文献5】特開平5−67295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、表示画面に地図画像と地図画像上に案内経路を重ね合わせて表示して利用者に対して経路案内を実行している時に、利用者が経験的に、案内された経路の他にも通常よく利用する経路や、より有利な経路が存在していることを知っている場合がある。一般に、経路探索において出発地から目的地までの2地点間を結ぶ最適経路は、経路の累計リンクコスト(所要時間または距離)が最小となる経路が選択される。
【0016】
リンクコストを増加させる要因は、道路が渋滞している場合の他に、事故や工事中で通行の流れが悪い場合や天候による通行規制が実施されている場合など、種々の要因がある。最適経路が案内された時に、その経路が、利用者が経験的、直感的に思い浮かべる他の経路と異なる場合、何故通常よく利用する経路やより有利な経路が探索されなかったのか、いぶかしく思ったり、経路探索の結果に疑問を持ったりすることがある。通行止めなどのイベントのある経路は比較経路や候補経路として探索されることがなく、通常通行できると認識している経路が何故案内されないかが理解できず、その経路に入り込んでしまい、時間をロスしたり、精神的なストレスを受けたりする。
【0017】
上記特許文献2に開示された発明は、経路探索において得られた経路の特徴量を算出し探索経路間の比較を行う経路特徴量比較部と特徴量グラフ作成部を備え、ユーザが経路選択する際に前記特徴量のグラフを提示するようにしたものであり、利用者は提示された複数の経路について、特徴(案内経路の平均カーブ曲率、急カーブ数、右左折割合や直進路割合など)を判断して所望の経路を選択することはできるが、上記のような疑念を解消するためには適切でない。
【0018】
また、上記特許文献3に開示された発明は、渋滞状況を加味した最適経路と、通常の経路探索用のネットワークデータ(ノード、リンク、リンクコストなどのデータ)を用いて探索した比較経路とを探索し、両方の経路を表示し、その相違点を表示するものであり、利用者が経験的、直感的に思い浮かべる他の経路が比較経路として探索されなければ、上記の疑念を解消することができないという問題点がある。
【0019】
更に、上記特許文献4に開示された発明は、出発地から目的地までの複数の候補経路を探索し、各候補経路の予測所要時間、目的地への到達予想時刻、予測渋滞区間を表示するものであるから、利用者には各候補経路に渋滞が予測される区間があるか否かを知ることはできるが、その他の要因を知ることはできないし、利用者が経験的、直感的に思い浮かべる他の経路が候補経路に入っていなければ、上記の疑念を解消することができないという問題点がある。すなわち、最適経路として探索されなかった他の経路が、普段は通過できるのに今だけ何らかの事象(事故や天候による通行止めや通行規制など)で探索されなかったという場合には、それらの経路が複数の候補経路に入ってこないために抽出される交通情報が有効ではないという問題点がある。
【0020】
また、上記特許文献5に開示された発明は、ビーコンより受信される道路情報を用いて、現在位置から目的地までの直線の近傍にある道路における渋滞などの道路情報を表示するように構成されているものであるが、ビーコンを用いるものであるから、実際に案内された経路を走行しなければ周辺の道路の状況を知ることができないという問題点があり、また、出発地から目的地までの周辺道路の状況の全貌を知ることができないという問題点がある。利用者は経路探索結果として案内された経路がどんな道路事情によって探索されたか、どのような経路を回避したかを把握することはできない。このため、案内された経路を信頼しない利用者が案内経路に従わず、経験などに従って走行して、渋滞や交通規制のある経路に入ってしまうことも起こり得る。
【0021】
本願の発明者は、上記の問題点を解消すべく種々検討を重ねた結果、通行規制(工事、事故、天候などによる通行止め)や渋滞など、道路交通情報を反映した最適経路を案内(地図、経路表示)する場合に、標準コスト探索で複数の代替経路を探索しそれらの代替経路上における道路交通に関するイベントを抽出し、イベントの存在する地点、イベントに関する道路交通情報を表示するようになせば、上記の問題点を解消し得ることに想到して本発明を完成するに至ったものである。
【0022】
すなわち、本発明は上記の問題点を解消することを課題とし、最適経路以外の周辺の代替経路を探索し、それらの経路における道路交通に関するイベントを抽出し、該イベントに関する道路交通情報を表示するようにした経路探索システム、経路探索サーバおよび経路案内方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記課題を解決するために、本願の請求項1にかかる発明は、
地図データを蓄積した地図データベースと、道路交通情報を蓄積した道路交通情報データベースと、経路探索用ネットワークデータベースと、経路探索条件に従って経路を検索する経路探索手段と、を備え、出発地と目的地とを含む経路探索条件に基づいて、出発地から目的地までの最適経路を探索する経路探索システムにおいて、
前記経路探索システムは、代替経路記憶手段と、前記道路交通情報を参照して代替経路における道路交通に関するイベントを抽出するイベント抽出手段と、関連道路交通情報記憶手段と、表示手段と、を備え、前記道路交通情報データベースに蓄積された道路交通情報を前記経路探索用ネットワークデータベースに蓄積されたネットワークデータに反映させて探索する最適経路を表示する際、他の代替経路における道路交通情報を表示する関連道路交通情報表示モードを有し、該関連道路交通情報表示モードが設定された場合、
前記経路探索手段は、前記経路探索用ネットワークデータベースに蓄積されたネットワークデータに基づいて出発地から目的地に至る少なくとも1つの代替経路を探索し、前記イベント抽出手段は、前記代替経路における道路交通に関するイベントを抽出し、抽出したイベントおよびイベント発生箇所を含む関連道路交通情報を前記関連道路交通情報記憶手段に記憶し、前記関連道路交通情報記憶手段に記憶した関連道路交通情報を前記最適経路とともに前記表示手段に表示することを特徴とする経路探索システム。
【0024】
また、本願の請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる経路探索システムにおいて、前記道路交通に関するイベントは、渋滞状況と、交通規制と、通行不能箇所の何れか1つまたは複数のイベントであることを特徴とする。
【0025】
また、本願の請求項3にかかる発明は、請求項1にかかる経路探索システムにおいて、前記経路探索手段は、前記代替経路を探索する際、経路探索条件に基づいて複数の代替経路を探索することを特徴とする。
【0026】
また、本願の請求項4にかかる発明は、請求項3にかかる経路探索システムにおいて、前記経路探索手段は、前記代替経路を探索する際、異なる経路探索条件に基づいて少なくとも1つあるいは複数の代替経路を探索することを特徴とする。
【0027】
また、本願の請求項5にかかる発明は、
表示手段を備えた端末装置にネットワークを介して接続される経路探索サーバであって、地図データを蓄積した地図データベースと、道路交通情報を蓄積した道路交通情報データベースと、経路探索用ネットワークデータベースと、経路探索条件に従って経路を検索する経路探索手段と、を備え、出発地と目的地とを含む経路探索条件に基づいて、出発地から目的地までの最適経路を探索する経路探索サーバにおいて、
前記経路探索サーバは、代替経路記憶手段と、前記道路交通情報を参照して代替経路における道路交通に関するイベントを抽出するイベント抽出手段と、関連道路交通情報記憶手段と、を備え、前記道路交通情報データベースに蓄積された道路交通情報を前記経路探索用ネットワークデータベースに蓄積されたネットワークデータに反映させて探索する最適経路を表示する際、他の代替経路における道路交通情報を前記端末装置に表示する関連道路交通情報表示モードを有し、該関連道路交通情報表示モードが設定された場合、
前記経路探索手段は、前記経路探索用ネットワークデータベースに蓄積されたネットワークデータに基づいて出発地から目的地に至る少なくとも1つの代替経路を探索し、前記イベント抽出手段は、前記代替経路における道路交通に関するイベントを抽出し、抽出したイベントおよびイベント発生箇所を含む関連道路交通情報を前記関連道路交通情報記憶手段に記憶し、前記関連道路交通情報記憶手段に記憶した関連道路交通情報を前記最適経路とともに前記端末装置に送信することを特徴とする。
【0028】
また、本願の請求項6にかかる発明は、請求項5にかかる経路探索サーバにおいて、前記道路交通に関するイベントは、渋滞状況と、交通規制と、通行不能箇所の何れか1つまたは複数のイベントであることを特徴とする。
【0029】
また、本願の請求項7にかかる発明は、請求項5にかかる経路探索サーバにおいて、前記経路探索手段は、前記代替経路を探索する際、経路探索条件に基づいて複数の代替経路を探索することを特徴とする。
【0030】
また、本願の請求項8にかかる発明は、請求項7にかかる経路探索サーバにおいて、前記経路探索手段は、前記代替経路を探索する際、異なる経路探索条件に基づいて少なくとも1つあるいは複数の代替経路を探索することを特徴とする。
【0031】
また、本願の請求項9にかかる発明は、
地図データを蓄積した地図データベースと、道路交通情報を蓄積した道路交通情報データベースと、経路探索用ネットワークデータベースと、経路探索条件に従って経路を検索する経路探索手段と、を備え、出発地と目的地とを含む経路探索条件に基づいて、出発地から目的地までの最適経路を探索する経路探索システムにおける経路案内方法において、
前記経路探索システムは、代替経路記憶手段と、前記道路交通情報を参照して代替経路における道路交通に関するイベントを抽出するイベント抽出手段と、関連道路交通情報記憶手段と、表示手段と、を備え、前記道路交通情報データベースに蓄積された道路交通情報を前記経路探索用ネットワークデータベースに蓄積されたネットワークデータに反映させて探索する最適経路を表示する際、他の代替経路における道路交通情報を表示する関連道路交通情報表示モードを有し、該関連道路交通情報表示モードが設定された場合、
前記経路探索手段が、前記経路探索用ネットワークデータベースに蓄積されたネットワークデータに基づいて出発地から目的地に至る少なくとも1つの代替経路を探索するステップと、前記イベント抽出手段が、前記代替経路における道路交通に関するイベントを抽出するステップと、抽出したイベントおよびイベント発生箇所を含む関連道路交通情報を前記関連道路交通情報記憶手段に記憶するステップと、前記関連道路交通情報記憶手段に記憶した関連道路交通情報を前記最適経路とともに前記表示手段に表示するステップとを有することを特徴とする。
【0032】
また、本願の請求項10にかかる発明は、請求項9にかかる経路案内方法において、前記道路交通に関するイベントは、渋滞状況と、交通規制と、通行不能箇所の何れか1つまたは複数のイベントであることを特徴とする。
【0033】
また、本願の請求項11にかかる発明は、請求項9にかかる経路案内方法において、前記経路探索手段が前記代替経路を探索するステップは、経路探索条件に基づいて複数の代替経路を探索する処理を含むことを特徴とする。
【0034】
また、本願の請求項12にかかる発明は、請求項11にかかる経路案内方法において、前記経路探索手段が前記代替経路を探索するステップは、異なる経路探索条件に基づいて少なくとも1つあるいは複数の代替経路を探索する処理を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
請求項1にかかる発明においては、経路探索システムは、経路探索手段と、代替経路記憶手段と、道路交通情報を参照して代替経路における道路交通に関するイベントを抽出するイベント抽出手段と、関連道路交通情報記憶手段と、表示手段と、を備え、道路交通情報データベースに蓄積された道路交通情報を経路探索用ネットワークデータベースに蓄積されたネットワークデータに反映させて探索する最適経路を表示する際、他の代替経路における道路交通情報を表示する関連道路交通情報表示モードを有し、該関連道路交通情報表示モードが設定された場合、経路探索手段は、経路探索用ネットワークデータベースに蓄積されたネットワークデータに基づいて出発地から目的地に至る少なくとも1つの代替経路を探索し、イベント抽出手段は、代替経路における道路交通に関するイベントを抽出し、抽出したイベントおよびイベント発生箇所を含む関連道路交通情報を関連道路交通情報記憶手段に記憶し、関連道路交通情報記憶手段に記憶した関連道路交通情報を最適経路とともに表示手段に表示する。
【0036】
このような構成によれば、経路探索システムの利用者は案内された最適経路(推奨経路)の他に、通常通行できると認識している経路における道路交通情報を知ることができるようになるから、最適経路が案内された事情を認識することができ、案内された経路を無視して、その経路に入り込んでしまい、時間をロスしたり、精神的なストレスを受けたりすることがなくなる。更に、周辺の代替経路上のイベント発生箇所とイベントの情報がわかれるから、案内された最適経路から通常利用する経路への効果的な迂回地点を認識することもできるようになる。
また、イベント抽出手段により抽出される関連道路交通情報は、出発地から目的地までの代替経路上のものであるから、目的地に向かう上で適切な情報になっている。そのため、ユーザが実際に経験に基づいて経路を変更するとしても、この関連道路交通情報に基づいて進路変更の判断が可能であるので、規制や渋滞にぶつかってから大きく迂回するような進路変更を余儀なくされることが無くなる。
【0037】
請求項2にかかる発明においては、請求項1にかかる経路探索システムにおいて、道路交通に関するイベントは、渋滞状況と、交通規制と、通行不能箇所の何れか1つまたは複数のイベントである。
【0038】
このような構成によれば、経路探索システムの利用者は、交通渋滞だけでなく、天候や事故、工事などによる交通規制や通行不能箇所などの道路交通に関するイベントやその発生箇所を知ることができるようになる。
【0039】
請求項3にかかる発明においては、請求項1にかかる経路探索システムにおいて、経路探索手段は、代替経路を探索する際、経路探索条件に基づいて複数の代替経路を探索する。
【0040】
このような構成によれば、経路探索システムの利用者は、推奨経路とされた最適経路に対してその周辺の複数の代替経路に関する道路交通情報を知ることができるようになる。
【0041】
請求項4にかかる発明においては、請求項3にかかる経路探索システムにおいて、経路探索手段は、代替経路を探索する際、異なる経路探索条件に基づいて少なくとも1つあるいは複数の代替経路を探索する。
【0042】
このような構成によれば、経路探索システムの利用者は、高速道路の利用条件を付加するなど、種々の条件に基づいて代替経路を探索し、探索された代替経路上の道路交通情報を知ることができるようになる。
【0043】
また、請求項5ないし請求項8にかかる発明においては、それぞれ請求項1ないし請求項4にかかる経路探索システムを構成する経路探索サーバを提供することができるようになり、請求項9ないし請求項12にかかる発明においては、それぞれ請求項1ないし請求項4にかかる経路探索システムにおける経路案内方法を提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための経路探索システムを例示するものであって、本発明をこの経路探索システムに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態の経路探索システムにも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0045】
本発明の実施例にかかる経路探索システム10は、図1に示すように、携帯電話やPDA、ミュージックプレーヤーなどの携帯型端末を用いた端末装置20と経路探索サーバ30とがインターネットなどのネットワーク12を介して接続される構成になっている。なお、本実施例においては、通信型の経路探索、経路案内サービスを提供する地図表示システム10を具体例として説明するが、本発明はこれに限ることなく、パーソナルコンピュータを端末装置とするナビゲーションシステム、スタンドアロンタイプの経路探索システムになどにも適用可能である。
【0046】
図1に示すように経路探索システム10は、ネットワーク12を介して接続される端末装置20と経路探索サーバ30を備えて構成されている。この経路探索システム10は更に、各種カテゴリに属するPOIの所在地やサービス内容などの詳細情報を提供するPOI情報配信サーバ50、各道路の渋滞度や交通規制、通行不能箇所などの道路交通情報を提供する道路交通情報配信サーバ51などを備えて構成されている。
【0047】
経路探索サーバ30はPOI情報配信サーバ50や道路交通情報配信サーバ51からネットワーク12を経由して必要なデータを取得して自身のデータベースに追加することができる。また、同様にしてPOI情報配信サーバ50に検索要求を送信して所望の検索結果を取得することもできる。
【0048】
道路交通情報配信サーバ51は、各道路の交通規制、通行不能箇所などの道路交通情報を提供する他、各道路に設置された監視端末により一定の時間間隔で道路の交通量を検出し、道路ごとの渋滞度を示す道路交通情報を作成する。従って道路交通情報は一定の時間ごとに更新される。VICS(登録商標)の場合、5分ごとに最新の道路交通情報に更新される。道路交通情報はFM放送を通じて放送される他、経路探索サーバ30からアクセスされ最新データが要求されると、最新の道路交通情報を配信する。
【0049】
図1に示す経路探索サーバ30は、地図データベース34、経路探索用ネットワークデータベース35、道路交通情報データベース36を備え、端末装置20から経路探索要求があると、経路探索用ネットワークデータベース35を参照して経路探索する。そして経路探索の結果により得た案内経路(推奨経路)を端末装置20に送信する一般的なナビゲーション機能を有している。また、端末装置20から所望の地点やPOIを指定して地図データの取得要求があると、地図データベース34を参照して該当する地図データを読み出して端末装置20に配信する。
【0050】
経路探索用ネットワークデータベース35には、道路ネットワークデータが蓄積される。道路ネットワークデータは道路を交差点や結節点をノードとして、各ノードを接続するリンクで表現したものであり、各リンクには標準的な速度で走行した場合の所要時間がリンクのコストとして対応付けられている。従って、この道路ネットワークデータを用いて探索した経路は、標準コストの経路となる。以下、このような通常の経路探索を標準コスト経路探索、探索された経路を標準コスト経路、その経路のコストを標準コストという。
【0051】
また、経路探索サーバ30は道路交通情報が更新されるタイミングになると道路交通情報配信サーバ51にアクセスして最新の道路交通情報を取得し、道路交通情報データベース36のデータを更新する。従って、道路交通情報データベース36には、各道路の交通規制、通行不能箇所などの道路交通情報および道路ごとの最新の渋滞度を示す情報を含む最新の道路交通情報が記憶される
【0052】
交通規制、通行不能箇所、渋滞などの道路交通情報を加味した経路探索を行う場合、経路探索サーバ30は、経路探索用ネットワークデータベース35に蓄積されたネットワークデータを、道路交通情報データベース36に記憶した最新の道路交通情報に基づくリンクコストをネットワークデータ編集手段により編集して経路探索を行う。これにより渋滞など、道路交通状況の影響による所要時間を反映した経路探索を行うことができる。以下、このような経路探索を渋滞考慮経路探索ということとする。
【0053】
更に、経路探索サーバ30は、所望の日時を指定して渋滞状況を加味した探索(渋滞考慮経路探索)を行うため、道路交通情報データベース36には、過去の道路交通情報を統計的に処理し、月日、曜日、祝祭日、時間帯、天候など種別ごとに、各道路リンクの渋滞度、渋滞所要時間などが蓄積された統計的道路交通データが蓄積されている。所望の経路探索日時が指定されると、経路探索サーバ30は、この統計的道路交通データから、経路探索条件として指定された日時条件に該当する日時の統計的道路交通データを取得して経路探索用ネットワークデータベース35の道路ネットワークデータを編集して経路探索を行う。以下の説明においては、統計的道路交通データを予測渋滞データということとする。
【0054】
端末装置20は、通常の経路探索要求(経路探索用ネットワークデータベース35に蓄積された標準のリンクコストを用いた標準コスト経路探索)を行うこともでき、また、交通渋滞による影響を懸念する場合には、前述のような最新の道路交通情報や予測渋滞データに基づく渋滞などを加味した経路探索要求を行うこともできる。
【0055】
経路探索サーバ30において探索された経路のデータや地図データは端末装置20に送信され、端末装置20は表示手段に地図画像を表示するとともに、経路探索サーバ30から受信した経路の画像や、端末装置20の現在位置を前記地図画像に重ね合わせて表示する。
【0056】
本発明の経路探索システム10においては、渋滞考慮経路探索、すなわち、道路交通情報を用いて経路探索する際に、探索された最適経路だけでなく、少なくとも1つあるいは複数の周辺の代替経路を探索し、代替経路における道路交通に関するイベントを抽出して、関連道路情報として表示する関連道路交通情報表示モードを有している。代替経路は標準コスト経路探索によって複数探索される。このため、代替経路は、渋滞の有無や交通規制の有無、通行不能箇所の有無によらず設定した経路探索条件に従って複数探索される。
【0057】
探索した代替経路に対応する道路交通情報データベース36を参照して各代替経路において発生している道路交通に関するイベントおよびイベント発生場所やイベント発生区間を抽出する。抽出した代替経路におけるイベント等の道路交通情報は、関連道路交通情報として一時記憶し、地図画像上に探索された最適経路とともに関連道路交通情報として表示する。
【0058】
以下、具体例に基づいて本発明の実施例にかかる経路探索システム10を説明するが、その前に本発明にかかる経路探索システム10の詳細な構成を説明する。図2は、図1に示した経路探索システム10の詳細な構成を示すブロック図である。
【0059】
端末装置20は、ナビゲーションサービスを受けることができる端末であり、制御手段201、通信手段21、GPS受信手段22、処理要求手段23、配信データ記憶手段24、表示手段25、操作入力手段26、表示制御手段27などを備えて構成されている。操作入力手段26には、渋滞などの道路交通状況を考慮した経路探索において、関連道路交通情報表示モードを指定するための表示モード設定手段261が含まれる。表示モード設定手段261は、具体的には文字入力キー、表示画面に表示されたメニュー画面の設定項目などを選択するカーソルキーなどで構成される。
【0060】
経路探索サーバ30は、図1において述べたように、地図データを蓄積した地図データベース34、経路探索用の道路ネットワークデータを蓄積した経路探索用ネットワークデータベース35、渋滞情報を含む道路交通情報を蓄積する道路交通情報データベース36を備えている。経路探索サーバ30が徒歩や公共交通機関を利用した経路を探索して端末装置20に案内する機能を有する場合、経路探索用ネットワークデータベース35には更に、徒歩専用のネットワークデータ、交通機関の運行時刻表データに基づく交通ネットワークデータを蓄積しておく。
【0061】
また、経路探索サーバ30は、制御手段301、通信手段31、配信データ編集手段32、地図描画データ作成手段33、地図データベース34、経路探索用ネットワークデータベース35、道路交通情報データベース36、ネットワークデータ編集手段37、代替経路記憶手段371、イベント抽出手段372、関連道路交通情報記憶手段373、処理要求記憶手段38、経路探索手段39などを備えて構成されている。
【0062】
経路探索サーバ30は、端末装置20から経路探索やPOI検索あるいは地図配信の要求があると、処理要求記憶手段38にその要求を一次記憶する。要求が経路探索要求である場合、経路探索手段39は経路探索用ネットワークデータベース35を参照して最適経路あるいは推奨経路(案内経路)を探索する。探索された案内経路のデータは配信データ編集手段32により端末装置20に対する配信データに編集され、端末装置20に配信される。また、地図データベース34から案内経路を含む地図データが読み出され、端末装置20に配信される。
【0063】
道路交通情報データベース36には、先に述べたように道路の渋滞状況を加味した経路探索を行うため、最新の道路交通情報のデータ、および、過去の道路交通情報を統計的に処理して作成した予測渋滞データが蓄積されている。渋滞を加味した渋滞考慮経路探索においては、ネットワークデータ編集手段37は最新の道路交通データまたは予測渋滞データを用いて、経路探索用ネットワークデータベース35のネットワークデータを編集する。
【0064】
端末装置20の利用者が渋滞などの道路交通状況を考慮した経路探索において、最適経路とともに周辺の代替経路における関連道路交通情報を表示させたい場合、表示モード設定手段261を用いて関連道路交通情報表示モードを設定し、出発地や目的地などの経路探索条件を設定して経路探索サーバ30に経路探索を要求する。
【0065】
図3は、渋滞考慮経路探索が指定された場合に端末装置20の表示手段25に表示されるメニュー画面の一例を示している。図3に示すメニュー画面310には、出発地入力欄302、目的地入力欄303、時刻条件入力欄304、関連道路交通情報表示モードの設定欄305(設定あり)、306(設定なし)と、探索開始ボタン308が表示される。時刻条件入力欄304には、出発地の出発時刻または目的地への到着時刻などの時刻条件を入力する。時刻条件の設定が必要ない場合には設定を省略することができる。
【0066】
出発地と目的地の設定は、出発地入力欄302、目的地入力欄303に住所や電話番号あるいは駅名称、ビル名称などの地点名称、緯度・経度などを入力して設定する。すなわち、この入力欄は、原則としてフリーワード入力が可能であるが、住所、電話番号、POI(Point of Interest)の名称などで設定することできる。
【0067】
また、プルダウンボタンを操作して、これまでに端末装置20に登録した経路探索履歴や登録地点を呼び出して設定することもできる。必要な条件設定を終え、探索開始ボタン308を操作すると、経路探索要求が端末装置20から経路探索サーバ30に送信される。
【0068】
経路探索サーバ30は、端末装置20から経路探索要求があると、これを処理要求記憶手段38に一時記憶する。そして経路探索手段39は、処理要求記憶手段38に記憶した経路探索要求に従って経路探索用ネットワークデータベース35を参照して出発地から目的地までの複数の候補経路を探索する。経路探索要求が通常の経路探索の要求である場合、経路探索の結果得られた案内経路のデータを地図データベース34から読み出した地図データとともに端末装置20に送信する。この経路探索の方法は通常のナビゲーションシステムにおける経路探索サーバと同様の方法である。
【0069】
一方、経路探索要求が関連道路交通情報表示モードの要求である場合、ネットワークデータ編集手段37は道路交通情報ネットワークデーダベース36に蓄積された最新の道路交通情報データを用いて各道路リンクのコストを経路探索用ネットワークデータベース35のデータに適用して編集し、経路探索手段39は、指定された出発地や目的地を含む経路探索条件に従って渋滞状況を加味した最適経路の探索を行う。
【0070】
最適経路の探索が終了すると、経路探索手段39は、経路探索用ネットワークデータベース35の標準コストのネットワークデータを参照して複数の代替経路を探索する。代替経路は標準コスト経路探索によって得られるものであるから、実際には交通規制がされている道路や通行不能箇所がある道路であっても通常通行可能な道路としても扱われ、そのような箇所を含む経路も代替経路として探索される。探索された各代替経路のデータは代替経路記憶手段371に一時記憶される。
【0071】
代替経路の探索条件は、渋滞状況を加味した最適経路の探索に対して設定した経路探索条件を用いることもできるが、異なる探索条件を設定することもできる。また、複数の経路探索条件を設定することもできる。例えば、有料道路の使用の可否等で条件を変更して経路探索を行っても良いし、最初に探索された代替経路の任意の1箇所を通行止めと仮定して、第2の代替経路を算出するなどして順次、複数の代替経路を探索するようにしてもよい。
【0072】
少なくとも1つあるいは複数の代替経路の探索が終了すると、代替経路記憶手段371に記憶された代替経路のデータに基づいて、イベント抽出手段372は、道路交通情報データベース36に記憶された道路交通情報を参照して、各代替経路上における道路交通に関連するイベント、例えば、交通規制や通行不能箇所、渋滞などのイベントとそのイベントの発生箇所(発生区間を含む)を抽出する。抽出されたイベントおよびそのイベントの発生箇所は、関連道路交通情報として関連道路交通情報記憶手段373に代替経路の情報とともに記憶される。
【0073】
探索された最適経路の案内、周辺の代替経路における関連道路交通情報の表示は、テキストデータにより経路探索サーバ30から端末装置20に送り、端末装置20は経路回答画面として表示手段25に表示する。図4は、最適経路を回答する経路回答画面の一例を示す図である。この経路回答画面には、[経路概要]の欄に探索した最適経路の概要がテキストで表示され、経路案内の開始を選択するボタンと関連道路交通情報を参照するための関連交通情報参照の選択項目が表示される。
【0074】
図4の経路回答画面には、最適経路として「横浜青葉インターで東名高速道路に入り、裾野インター東名高速道路から出て国道246号に入る」旨の経路が案内されている。図4に示す経路回答画面において、関連交通情報参照の選択項目をクリックすると、図5に示す表示画面に遷移し、代替経路における関連道路交通情報が表示される。図5の例では、最適経路の周辺の代替経路について、箱根新道が積雪による通行止めであること、国道1号が三島付近で渋滞中であることなどが表示される。それぞれの道路交通情報の表示項目には、「地図」の選択項目が表示され、この項目をクリックすると付近の地図画像を表示する地図表示画面に遷移する。
【0075】
また、案内開始ボタンをクリックすると、最適経路を含む地図画像が表示手段25の表示画面に表示され、経路案内か開始される。この画面には、図5に示す周辺の代替経路における道路交通に関するイベントとその発生箇所が表示される。図6は、この経路案内の画面の一例を示す。このような画面を表示するため、経路探索サーバ30は以下のようにして地図描画データを作成し、端末装置20に送信する。
【0076】
図6に示す地図表示画面においては、利用者が経路探索条件として設定した所望の出発地をS、目的地をGとして、その間の最適経路が太線で表示されている。さらに、経路周辺には道路交通に関するイベントが吹き出しで表示され、その部分について道路交通情報がテキスト表示されている。利用者は、経験的に知っている選択したい道路(経路)付近について、道路交通情報が表示されるからなぜその道路が最適経路として探索されなかったかの理由が一目で把握できる。このため探索した最適経路について利用者に信頼を与えることが可能になり、また、経路案内に従わずに他の経路に迂回するとしても、予め関連道路交通情報として表示されている渋滞や、交通規制道路に侵入することがなくなる。
【0077】
経路探索サーバ30において、地図描画データ作成手段33は、最適経路の情報および代替経路の情報に基づいて地図データベース34から最適経路や代替経路を含む地図データを取得し、各経路の道路交通情報データを重ね合わせて表示するための地図描画データを作成する。
【0078】
具体的には、ベクトル地図データに各道路リンクの道路交通情報(交通規制箇所や通行不能箇所、渋滞箇所)のデータを加え、表示手段25に描画するためのデータとする。端末装置20はこの地図データを受け取り、表示手段25に地図画像を表示する際に、ベクタ地図データがイメージに変換され地図画像、道路交通情報が描画される。表示制御手段27は、表示手段25に表示する描画データに基づき、VRAMなどの描画メモリに画像を展開処理する制御を行う。関連道路交通情報は図6に示すようにテキストで表示してもよく、あるいは、イベントをわかり易く表現するアイコン図形やイベントごとに異なる表示色で表示してもよい。
【0079】
このようにすれば、利用者は案内された最適経路(推奨経路)の他に、経験的に知っている代替経路や、最適経路の周辺の通常通行できると認識している経路における道路交通情報を知ることができるようになるから、最適経路が案内された事情を認識することができる。また、通常通行できると認識している経路が何故案内されないかを理解できるから案内された経路を無視して、その経路に入り込んでしまい、時間をロスしたり、精神的なストレスを受けたりすることがなくなる。更に、周辺の代替経路上のイベント発生箇所とイベントの情報がわかれるから、案内された最適経路から通常利用する経路への効果的な迂回地点を認識することもできるようになる。
【0080】
また、イベント抽出手段372により抽出される関連道路交通情報は、出発地から目的地までの代替経路上のものであるから、目的地に向かう上で適切な情報になっている。そのため、ユーザが実際に経験に基づいて経路を変更するとしても、この関連道路交通情報に基づいて進路変更の判断が可能であるので、規制や渋滞にぶつかってから大きく迂回するような進路変更を余儀なくされることが無くなる。
【0081】
次に、経路探索用ネットワークデータベース35を用いた経路の概念について説明する。例えば、自動車や徒歩による経路探索に用いられる道路ネットワークデータは、以下のように構成される。道路が図7に示すように道路A、B、Cからなる場合、道路A、B、Cの端点、交差点、屈曲点などをノードとし、各ノード間を結ぶ道路を有向性のリンクで表し、ノードデータ(ノードの緯度・経度)、リンクデータ(リンク番号)と各リンクのリンクコスト(リンクの距離またはリンクを走行するのに必要な所要時間)をデータとしたリンクコストデータとで構成される。
【0082】
すなわち、図7において、Nn(○印)、Nm(◎印)がノードを示し、Nm(◎印)は道路の交差点を示している。各ノード間を結ぶ有向性のリンクを矢印線(実線、点線、2点鎖線)で示している。リンクは、道路の上り、下りそれぞれの方向を向いたリンクが存在するが、図7では図示を簡略化するため矢印の向きのリンクのみを図示している。
【0083】
このような道路ネットワークのデータを経路探索用のデータベースとして経路探索を行う場合、出発地のノードから目的地のノードまで連結されたリンクをたどりそのリンクコストを累積し、累積リンクコストの最少になる経路を探索して案内する。すなわち、図7において出発地をノードAX、目的地をノードCYとして経路探索を行う場合、ノードAXから道路Aを走行して2つ目の交差点で右折して道路Cに入りノードCYにいたるリンクを順次たどりリンクコストを累積する。そして、リンクコストの累積値が最少になる経路を探索して案内する。
【0084】
図7ではノードAXからノードCYに至る他の経路は図示されていないが、実際にはそのような経路が他にも存在するため、ノードAXからノードCYに至ることが可能な複数の経路を同様にして探索し、それらの経路のうちリンクコストが最少になる経路を最適経路として決定するものである。この手法は、例えば、ダイクストラ法と呼ばれる周知の手法によって行われる。
【0085】
徒歩経路を探索する場合の道路ネットワークデータには、歩行者専用の道路や通路(公園内の通路など)のデータが加えられ、自動車専用の道路、例えば、歩行者や自転車の立ち入りが禁止される高速道路のデータが除かれる。また、自動車による経路を探索する場合には、前述の歩行者専用道路等のデータが除かれる。交通機関による経路を含む探索の場合、交通機関の路線のデータが用いられる。交通機関のネットワークにおいては、各駅をノードとし、駅間がリンクで結ばれる。交通機関のネットワークにおけるリンクは電車やバスなどの交通手段ごとに作成され、その運行時刻表によって定められた所要時間が各リンクのリンクコストになる。
【0086】
渋滞考慮経路探索や渋滞予測経路探索を行う場合には、ネットワークデータ編集手段37により経路探索用ネットワークデータベース35に蓄積された道路ネットワークの各リンクコストを、道路交通情報データベース36に蓄積された道路リンクのコストで補正する編集を行った上で、経路探索手段39が出発地から目的地までの経路探索を行うようにされる。
【0087】
図8は、以上説明した本発明の実施例にかかる予測渋滞地図表示の処理手順を示すフローチャートである。図8のフローチャートにおいて、端末装置20においては、利用者が道路交通情報を反映した渋滞考慮経路探索を指定し、関連道路交通情報表示モードを設定し、出発地や目的地など、所望の経路探索条件を設定が完了しているものとする。経路探索サーバ30は端末装置20からステップS101で、関連道路交通情報表示モードの設定情報を受信する。
【0088】
次いで、経路探索サーバ30は、ステップS102において端末装置20から経路探索条件を受信する。経路探索条件を受信すると経路探索手段39は、ステップS103において、ネットワークデータ編集手段37が道路交通情報ネットワークデータベース36に蓄積された道路交通情報を用いて、経路探索用ネットワークデータベース35の標準コストのネットワークデータを編集し、経路探索手段39は、編集されたネットワークデータを用い、渋滞情報や道路交通情報を加味した最適経路探索を行い推奨経路(最適経路)得る。
【0089】
ステップS104では、経路探索手段39は、経路探索用ネットワークデータベース35に蓄積された標準コストのネットワークデータを用いて代替経路を探索する。ここでは、代替経路の探索条件は当初設定された経路探索条件と同一の条件であるものとして説明する。探索された代替経路の情報は、代替経路記憶手段371に記憶される。
【0090】
次いで、ステップS105の処理に進み、イベント抽出手段372は代替経路記憶手段371に記憶した代替経路の情報に基づいて、道路交通情報データベース36に記憶された最新の道路交通情報を参照し、代替経路における道路交通に関するイベントを抽出する。道路交通に関するイベントとは先に説明したように、交通規制、通行不能、渋滞などである。ステップS106では、代替経路におけるイベントの抽出が完了したかを判別する。
【0091】
代替経路の全区間におけるイベントの抽出が完了していなければ、ステップS105の処理に戻りイベントの抽出を継続し、イベントの抽出が完了するとステップS107の処理に進み、抽出したイベントの情報および該イベントの発生箇所、発生区間の情報を関連道路交通情報記憶手段373に代替経路の情報とともに記憶する。複数の代替経路を探索する場合には、ステップS104〜ステップS107の処理を繰り返せばよい。
【0092】
このようにして最適経路の探索、代替経路の探索および代替経路における道路交通に関するイベントの抽出、関連道路交通情報の記憶が完了すると、ステップS108の処理において経路探索サーバ30は、最適経路を推奨経路としてその経路のデータと、関連道路交通情報とを端末装置20に送り、端末装置20は表示手段25に図4〜図6に示すような画面を表示する。
【0093】
なお、本実施例においては、地図描画データ作成手段33を経路探索サーバ30に備える例を示したが、地図描画データ作成手段33を端末装置20に設けてもよい。この場合、経路探索サーバ30は、最適経路のデータを端末装置20に送信する際に、地図データと関連道路交通情報記憶手段373に記憶した関連道路交通情報とを送信すればよい。
【0094】
以上、説明したように、本発明によれば、道路交通情報を考慮した最適経路を探索して推奨経路を案内する際に、道路交通情報を考慮しない場合に経路の候補となりうる代替経路を探索し、それらの代替経路上に存在する道路交通情報(渋滞、通行規制、IC入口閉鎖など)を抽出し関連道路交通情報として表示することにより、推奨経路の信頼性を高めることができる。また、関連交通情報は出発地から目的地間での経路に従って抽出したものであるので、推奨経路とならなかった場合の道路交通情報を無駄なく適切にユーザへ提供することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、通信型の経路探索システムとしても、スタンドアロンタイプの経路探索システムとしても適用可能である。また、パーソナルコンピュータを端末装置とする経路案内システムや地図表示システムにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施例1にかかる地図表示システムの構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の実施例1にかかる地図表示システムの詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】渋滞考慮経路探索において表示されるメニュー画面の一例を示す図である。
【図4】端末装置において最適経路を回答する経路回答画面の一例を示す図である。
【図5】端末装置において関連道路交通情報を表示する表示画面の一例を示す図である。
【図6】端末装置において経路案内時に表示される地図画像と関連道路交通情報の表示する経路案内画面の一例を示す図である。
【図7】道路ネットワークのデータの概念を示す模式図である。
【図8】本発明の実施例にかかる経路探索サーバの処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0097】
10・・・・経路探索システム
12・・・・ネットワーク
20・・・・端末装置
201・・・制御手段
21・・・・通信手段
22・・・・GPS受信手段
23・・・・処理要求手段
24・・・・配信データ記憶手段
25・・・・表示手段
26・・・・操作入力手段
261・・・表示モード設定手段
30・・・・経路探索サーバ
301・・・制御手段
31・・・・通信手段
32・・・・配信データ編集手段
33・・・・地図描画データ作成手段
34・・・・地図データベース
35・・・・経路探索用ネットワークデータベース
36・・・・道路交通情報データベース
37・・・・ネットワークデータ編集手段
371・・・代替経路記憶手段
372・・・イベント抽出手段
373・・・関連道路交通情報記憶手段
38・・・・処理要求記憶手段
39・・・・経路探索手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データを蓄積した地図データベースと、道路交通情報を蓄積した道路交通情報データベースと、経路探索用ネットワークデータベースと、経路探索条件に従って経路を検索する経路探索手段と、を備え、出発地と目的地とを含む経路探索条件に基づいて、出発地から目的地までの最適経路を探索する経路探索システムにおいて、
前記経路探索システムは、代替経路記憶手段と、前記道路交通情報を参照して代替経路における道路交通に関するイベントを抽出するイベント抽出手段と、関連道路交通情報記憶手段と、表示手段と、を備え、前記道路交通情報データベースに蓄積された道路交通情報を前記経路探索用ネットワークデータベースに蓄積されたネットワークデータに反映させて探索する最適経路を表示する際、他の代替経路における道路交通情報を表示する関連道路交通情報表示モードを有し、該関連道路交通情報表示モードが設定された場合、
前記経路探索手段は、前記経路探索用ネットワークデータベースに蓄積されたネットワークデータに基づいて出発地から目的地に至る少なくとも1つの代替経路を探索し、前記イベント抽出手段は、前記代替経路における道路交通に関するイベントを抽出し、抽出したイベントおよびイベント発生箇所を含む関連道路交通情報を前記関連道路交通情報記憶手段に記憶し、前記関連道路交通情報記憶手段に記憶した関連道路交通情報を前記最適経路とともに前記表示手段に表示することを特徴とする経路探索システム。
【請求項2】
前記道路交通に関するイベントは、渋滞状況と、交通規制と、通行不能箇所の何れか1つまたは複数のイベントであることを特徴とする請求項1に記載の経路探索システム。
【請求項3】
前記経路探索手段は、前記代替経路を探索する際、経路探索条件に基づいて複数の代替経路を探索することを特徴とする請求項1に記載の経路探索システム。
【請求項4】
前記経路探索手段は、前記代替経路を探索する際、異なる経路探索条件に基づいて少なくとも1つあるいは複数の代替経路を探索することを特徴とする請求項3に記載の経路探索システム。
【請求項5】
表示手段を備えた端末装置にネットワークを介して接続される経路探索サーバであって、地図データを蓄積した地図データベースと、道路交通情報を蓄積した道路交通情報データベースと、経路探索用ネットワークデータベースと、経路探索条件に従って経路を検索する経路探索手段と、を備え、出発地と目的地とを含む経路探索条件に基づいて、出発地から目的地までの最適経路を探索する経路探索サーバにおいて、
前記経路探索サーバは、代替経路記憶手段と、前記道路交通情報を参照して代替経路における道路交通に関するイベントを抽出するイベント抽出手段と、関連道路交通情報記憶手段と、を備え、前記道路交通情報データベースに蓄積された道路交通情報を前記経路探索用ネットワークデータベースに蓄積されたネットワークデータに反映させて探索する最適経路を表示する際、他の代替経路における道路交通情報を前記端末装置に表示する関連道路交通情報表示モードを有し、該関連道路交通情報表示モードが設定された場合、
前記経路探索手段は、前記経路探索用ネットワークデータベースに蓄積されたネットワークデータに基づいて出発地から目的地に至る少なくとも1つの代替経路を探索し、前記イベント抽出手段は、前記代替経路における道路交通に関するイベントを抽出し、抽出したイベントおよびイベント発生箇所を含む関連道路交通情報を前記関連道路交通情報記憶手段に記憶し、前記関連道路交通情報記憶手段に記憶した関連道路交通情報を前記最適経路とともに前記端末装置に送信することを特徴とする経路探索サーバ。
【請求項6】
前記道路交通に関するイベントは、渋滞状況と、交通規制と、通行不能箇所の何れか1つまたは複数のイベントであることを特徴とする請求項5に記載の経路探索サーバ。
【請求項7】
前記経路探索手段は、前記代替経路を探索する際、経路探索条件に基づいて複数の代替経路を探索することを特徴とする請求項5に記載の経路探索サーバ。
【請求項8】
前記経路探索手段は、前記代替経路を探索する際、異なる経路探索条件に基づいて少なくとも1つあるいは複数の代替経路を探索することを特徴とする請求項7に記載の経路探索サーバ。
【請求項9】
地図データを蓄積した地図データベースと、道路交通情報を蓄積した道路交通情報データベースと、経路探索用ネットワークデータベースと、経路探索条件に従って経路を検索する経路探索手段と、を備え、出発地と目的地とを含む経路探索条件に基づいて、出発地から目的地までの最適経路を探索する経路探索システムにおける経路案内方法において、
前記経路探索システムは、代替経路記憶手段と、前記道路交通情報を参照して代替経路における道路交通に関するイベントを抽出するイベント抽出手段と、関連道路交通情報記憶手段と、表示手段と、を備え、前記道路交通情報データベースに蓄積された道路交通情報を前記経路探索用ネットワークデータベースに蓄積されたネットワークデータに反映させて探索する最適経路を表示する際、他の代替経路における道路交通情報を表示する関連道路交通情報表示モードを有し、該関連道路交通情報表示モードが設定された場合、
前記経路探索手段が、前記経路探索用ネットワークデータベースに蓄積されたネットワークデータに基づいて出発地から目的地に至る少なくとも1つの代替経路を探索するステップと、前記イベント抽出手段が、前記代替経路における道路交通に関するイベントを抽出するステップと、抽出したイベントおよびイベント発生箇所を含む関連道路交通情報を前記関連道路交通情報記憶手段に記憶するステップと、前記関連道路交通情報記憶手段に記憶した関連道路交通情報を前記最適経路とともに前記表示手段に表示するステップとを有することを特徴とする経路案内方法。
【請求項10】
前記道路交通に関するイベントは、渋滞状況と、交通規制と、通行不能箇所の何れか1つまたは複数のイベントであることを特徴とする請求項9に記載の経路案内方法。
【請求項11】
前記経路探索手段が前記代替経路を探索するステップは、経路探索条件に基づいて複数の代替経路を探索する処理を含むことを特徴とする請求項9に記載の経路案内方法。
【請求項12】
前記経路探索手段が前記代替経路を探索するステップは、異なる経路探索条件に基づいて少なくとも1つあるいは複数の代替経路を探索する処理を含むことを特徴とする請求項11に記載の経路案内方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−229219(P2009−229219A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74385(P2008−74385)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(500168811)株式会社ナビタイムジャパン (410)
【Fターム(参考)】