説明

経路探索装置

【課題】より復帰しやすい復帰経路を提示する。
【解決手段】目的地までの最適経路から現在位置が逸脱した場合に、該現在位置から該目的地に至る経路を探索する経路探索装置は、現在位置が最適経路を逸脱したかどうかを判断し、逸脱したと判断されたならば、現在位置から最適経路に復帰する地点までの距離が少なくとも所定以上確保されるように、最適経路までの復帰経路を探索する。該探索された復帰経路を、安全復帰経路として提示する。少なくとも所定値以上の距離が確保されるような復帰経路が提案されるので、距離および時間の観点から余裕を持って該復帰経路に進入することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載されるナビゲーション装置等において、目的地までの最適経路を逸脱した場合に、該最適経路に復帰する経路を探索するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるナビゲーション装置等においては、地図データに基づき、現在地から目的地まで経路について最適な経路(推奨経路とも呼ばれる)を探索し、ユーザに該最適経路を提示することが行われている。ここで、最適経路は、たとえば走行時間および走行距離等のパラメータに基づいて算出されるコストに基づいて決定される。また、何らかの要因により最適経路を逸脱した場合には、最適経路に復帰するための経路すなわち復帰経路を探索してユーザに提示する手法が提案されている。
【0003】
下記の特許文献1では、復帰経路探索において、最もコストの低い経路を復帰経路として設定している。探索された復帰経路を用いて目的地に至る経路のコストと、最初に探索された最適経路のコストとの比較に基づいて、該復帰経路の質の良否を判定し、良好と判定されたならば該復帰経路を提示し、良好でないと判定されたならば、現在位置から目的地までの最適経路の探索を改めて行う。また、特許文献1では、逸脱回数が所定値を超えたならば、現在位置から目的地までの最適経路の探索を改めて行っている。
【0004】
下記の特許文献2には、現在位置が推奨経路に沿って移動した位置でないと判定された場合には、現在位置から目的地までの最小コストの経路を新たに推奨経路として探索し、現在位置が推奨経路に沿って移動した位置であると判定された場合には、現在位置から推奨経路に復帰する経路を探索する手法が開示されている。
【0005】
下記の特許文献3には、復帰経路探索において、探索回数が所定回数を超えた場合、および復帰経路の距離の相対的な割合が所定値を超えた場合、現在位置から目的地までの経路を再度探索する手法が開示されている。該所定値は、ユーザが設定可能である。
【特許文献1】特開平8−201091号公報
【特許文献2】特開平11−304520号公報
【特許文献3】特開2003−35547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、車載通信機器および道路交通情報を提供するサービスの普及により、現在位置から目的地までの経路について、従来よりもさらに最適な経路を探索することが可能となってきている。たとえば、渋滞や工事等のリアルタイムな交通情報を活用することにより、より低コストの経路を提案することができる。また、ユーザの嗜好等を反映した経路を提案することができるようにもなってきている。
【0007】
しかしながら、このようにして提案された最適経路を、何らかの理由で逸脱することがある。最適経路は、最も低いコストとなるよう、様々な情報に基づいて判断された経路であるから、逸脱した場合、最初に提案された最適経路に復帰する方が、現在位置から目的地までの最適経路を探索しなおすよりも総合的なコストが低くなる場合が多い。
【0008】
従来、上記の文献に示すように、最適経路に復帰するための経路として、コストがより低い経路を提案していた。また、復帰経路を選択するか、現在位置から目的地までの経路を新たに探索しなおすかの判断基準は、主にコストであった。
【0009】
前述したように、最適経路に復帰する方がコストの観点から有利である場合が多いものの、復帰は、困難な運転を運転者に要求することがありうる。たとえば、Uターンによって復帰しようとすると、車両をUターンさせる場所が必要となるうえ、運転者の運転技術によっては、Uターン自体が困難となりうる。また、距離および時間に余裕をもてないような復帰経路が提示されることもありうる。たとえば、復帰経路として提示された経路が、直前の交差点を右折または左折する経路として提示される場合がある。交差点で右折または左折するには、車線変更を行ったり、また、周囲に対してより注意を払って運転する必要があるが、交差点までの距離が短いと、運転者は、このような余裕を十分持つことができないおそれがある。
【0010】
したがって、より安全に最適経路に復帰することができるように、距離および時間の観点から運転者に余裕を持たせた状態で進入することができるような復帰経路を提示することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の一つの側面によると、目的地までの最適経路から現在位置が逸脱した場合に、該現在位置から該目的地に至る経路を探索する経路探索装置は、現在位置が最適経路を逸脱したかどうかを判断する判断手段と、逸脱したと判断されたならば、現在位置から最適経路に復帰する地点までの距離が少なくとも所定以上確保されるように、最適経路までの復帰経路を探索する探索手段と、該探索された復帰経路を、安全復帰経路として提示する提示手段と、を備える。
【0012】
この発明によれば、少なくとも所定値以上の距離が確保されるような復帰経路が提示されるので、経路誘導を受けるユーザは、距離および時間の観点から余裕を持って該復帰経路に進入することができる。他方、元の最適経路は、様々な情報を考慮した結果最適なものとして決定されるのが通常であるから、復帰によって、最適経路の利益を享受し続けることができる。このように、この発明によれば、元の最適経路の利益を維持しつつ、より高い安全性で該最適経路に復帰することができる。
【0013】
本発明のその他の特徴及び利点については、以下の詳細な説明から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1は、この発明の一実施形態に従う、たとえば車両に搭載される車両用のナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、現在位置検出部11、地図情報記憶部12、処理部13、入力装置14、表示装置15、およびスピーカ16を備える。
【0016】
現在位置検出部11は、たとえば人工衛星を利用して車両の位置を測定するためのGPS信号や、たとえば適宜の基地局を利用してGPS信号の誤差を補正して測位精度を向上させるためのD(differential)GPS信号等の測位信号を受信する測位信号受信部21と、水平面内での車両の向きや鉛直方向に対する傾斜角度(たとえば、車両の前後方向軸の鉛直方向に対する傾斜角度や車両重心の上下方向軸周りの回転角であるヨー角等)および傾斜角度の変化量(たとえば、ヨーレート等)を検出するジャイロセンサ22と、車両の速度(車速)を検出する車速センサ23を備える。現在位置検出部11は、受信した測位信号によって、あるいは、車速やヨーレート等の検出信号に基づく自律航法の算出処理によって、車両の現在位置を算出する。こうして検出された車両の現在位置は、処理部13に渡される。
【0017】
地図情報記憶部12は、任意の記憶装置(記憶媒体、ハードディスクドライブ等)に実現されることができ、地図情報を記憶する。地図情報は、表示装置15の表示画面上に地図画像を描画するのに必要なデータを含む。たとえば、地図情報は、地形図のデータと、各種の施設、街区、および湖沼等に対応したポリゴンデータと、各ポリゴンに対応づけられた施設名および地名等の文字データと、各種の記号のデータを備えている。さらに、地図情報は、道路の接続状態に関する情報を示す道路データを含む。道路データは、たとえばノード(交差点等の節目となる座標点)および各ノード間を結ぶ線であるリンク(走行路の最小単位)と、各リンクの距離とを備えている。また、この実施例では、道路データには、各道路について、該道路の属性を示す属性情報が含まれている。属性情報には、任意のものを含めることができ、たとえば、道路の種別(国道、県道、有料道路等の区別)、道路の形状、道路の勾配、道路の曲率、道路の幅員、レーンの数、規制(幅、高さ、レーン数等)に関する情報、停止線および信号に関する情報(停止線および信号の数等)などが含まれる。
【0018】
処理部13は、中央処理装置(CPU)およびメモリを備えるコンピュータである電子制御装置(ECU)に実現されることができる。入力装置14は、乗員によってデータを入力することができる装置であり、入力装置14を介して入力されたデータは処理部13に渡される。処理部13によって処理された結果のデータは、乗員が閲覧することができるように表示装置15上に表示される。また、スピーカ16は、処理部13からの指示に従って音声を出力する。この実施例では、表示装置15の表示画面がタッチパネルを構成しており、入力装置14は、該タッチパネルによって実現されている。しかしながら、このような形態に限定されるものではなく、タッチパネルに加え、またはタッチパネルに代えて、他の入力装置を設けてもよい。
【0019】
また、装置10は、リアルタイムな交通情報を所定のサーバから取得する通信機能を有する通信部(図示せず)を備えることができる。交通情報として、たとえば渋滞、工事、交通規制に関する情報を取得することができる。
【0020】
処理部13は、経路探索部31、経路誘導部32、逸脱判断部33、および復帰経路探索部34を備える。
【0021】
経路探索部31は、現在位置検出部11によって検出された車両の現在位置を受け取ると共に、入力装置14を介してユーザにより入力された目的地を受け取る。経路探索部31は、地図情報記憶部12に記憶された地図情報を用いて、該現在位置から目的地までの最適経路を、任意の適切な手法で探索する。一実施例では、所定のパラメータに基づいた重み付けを行うことにより、コストを経路毎に算出する。たとえば、現在位置から目的地までの経路がいくつか探索される。各経路について、該経路を構成するリンクのそれぞれについて、該リンクの距離に、道路の種別に応じた係数および道路の幅員に応じた係数を乗算することにより各リンクのコストを算出する。各リンクのコストを、すべてのリンクについて加算することにより、該経路のコストを算出することができる。コストが低い経路ほど、より最適な経路と判断される。したがって、道路の種別に応じた係数および道路の幅員に応じた係数は、より最適な走行が可能と判断されるほど(たとえば、より走りやすいと判断されるほど)、その値が低くなるよう予め決められる。
【0022】
上の例では、距離に対する重み付けを行うパラメータとして、道路の種別および道路の幅員というパラメータを用いているが、他の任意のパラメータを用いることができる。たとえば、道路に関する他の任意の属性(勾配、曲率、信号の数)等を用いることができる。また、リアルタイム通信によって得られる交通情報を用いてもよい。たとえば、該交通情報に応じて、渋滞の有無に応じた係数、工事の有無に応じた係数、車線規制の有無に応じた係数の値を決定し、これらの係数の値によって重み付けを行い、コストを算出するようにしてもよい。
【0023】
経路誘導部32は、こうして探索された最適経路を、車両の現在位置に応じて表示装置15上の表示画面上に順次表示する。たとえば、車両の現在位置と共に最適経路を強調表示して運転を誘導したり、スピーカ16を介して音声を出力することによって経路誘導を行うことができる。運転者は、画面上の最適経路を視認しながら、および(または)音声による経路誘導に従いながら、該最適経路に沿った運転を行うことができる。
【0024】
逸脱判断部33は、現在位置検出部11によって検出された車両の現在位置を、最適経路に対して比較し、車両が該最適経路から逸脱しているかどうかを判断する。逸脱していれば、逸脱していることを乗員に知らせるため、たとえば表示装置15上に警告メッセージを表示したり、スピーカ16を介して音声による報知を行うようにしてもよい。
【0025】
逸脱しているとの判断に応じて、復帰経路探索部34は、車両を現在位置から最適経路に復帰させるための経路である復帰経路の探索を行う。
【0026】
本願発明では、より安全な、すなわち運転者にとってより復帰しやすい復帰経路を探索することを目的とする。具体的にいえば、運転者が、距離および時間の観点から余裕を持って進入することができるような復帰経路を探索する。このような復帰経路を提示することにより、運転者は、車両の進行方向の変更や車線変更を慌てて行うことなく、余裕を持って最適経路に復帰することができる。
【0027】
ここで、このような復帰経路の探索の手法について、図2を参照して説明する。経路101は、車両が開始位置Psに存在しているときに目的地Peが入力されたことに応じて、経路探索部31によって最初に探索された開始位置Psから目的地Peまでの最適経路を示す。ここで、最適経路101上の地点P1において、車両が最適経路101から逸脱して経路201を走行しており、車両の現在位置が位置V1であるとする。
【0028】
復帰経路は、車両の現在位置V1から最適経路101までの距離が、少なくとも所定値TH以上である、という条件に従って探索される。ここで、所定値は、たとえば5km(キロメートル)である。復帰経路を探索するため、車両の現在位置V1を中心に、該所定値THの半径を持つ円301を描くと、該円301の弧と最適経路101の交点X1が得られる。交点X1は、車両からの距離が所定値THの位置に存在する。この交点位置X1に交差点が存在すれば、そこを復帰ポイントとする。交点位置X1に交差点が存在しなければ、交点位置X1よりも最適経路101に沿って目的地Pe側に進行し、該交点位置X1に最も近い交差点を探索し、そこを復帰ポイントとする。図には、こうして探索された復帰ポイントが、R1として示されている。復帰経路探索部34は、車両の現在位置V1から復帰ポイントR1に至る経路を、地図情報記憶部12に記憶された地図情報を用いて探索し、該経路を復帰経路401とする。
【0029】
代替的に、交点X1から、目的位置Peに向かって所定距離D内にある交差点を探索し、これらの交差点のそれぞれを復帰ポイントとし、車両の現在位置V1から各復帰ポイントに至る経路を探索してもよい。
【0030】
復帰ポイントが1つの場合であっても、また複数の場合であっても、複数の復帰経路が探索されうるが、その場合には、所定の条件に従って該探索された復帰経路のうちの1つを選択する。該所定の条件は任意に設定されることができる。たとえば、経路探索部31による最適経路の探索と同様に、各復帰経路についてコストを計算し、最も低いコストの復帰経路を選択することができる。または、より単純に、距離の最も短い復帰経路を選択するようにしてもよい。
【0031】
このように、車両の現在位置V1と復帰ポイントR1との間には、少なくとも所定値THの距離が確保されているので、車両は、時間的および距離的な余裕をもって復帰経路401に進入し、復帰ポイントR1において最適経路101に復帰することができる。
【0032】
従来は、前述したように、コストの観点から選択された復帰経路が運転者に提示されていた。このようなコストに基づく選択を一律に行うと、車両は、復帰経路へと進行するために、たとえば数百メートル先の交差点を急に曲がることを要求されたり、また、急に車線変更する必要が生じうる。このような運転は、距離および時間の観点から十分な余裕を持つ運転とはいえず、運転者が周辺環境に注意をくばる上での障害ともなりうる。
【0033】
本願発明によれば、少なくとも所定距離が確保されるように復帰経路が選択されるので、復帰経路への進入を余裕をもって行うことができ、よって、より安全性の高い走行を運転者に促すことができる。また、最初に探索された最適経路は、様々な情報やニーズに基づいて最適と判定された経路であるから、復帰によって最適経路のこのような利益の享受を維持することができる。このように、本願発明によれば、最適経路から逸脱したとしても、より高い安全性で最適経路に復帰して、効率的に目的地へと到達することができる。
【0034】
図1に戻り、復帰経路探索部34は、上記のように探索された復帰経路401と、復帰ポイントR1から目的地Peまでの最適経路101の部分とをつなぎ合わせて、新たな最適経路とする。経路誘導部32は、該新たな最適経路を、車両の現在位置に応じて表示装置15上に順次表示する。経路誘導部32は、スピーカ16を介して音声によって復帰経路401への誘導および復帰ポイントにおける最適経路101への誘導を促してもよい。こうして、上記の現在位置から最適経路に復帰する地点までの距離が少なくとも所定値TH以上確保するという条件(以下、「第1の条件」と呼ぶ)を満たした復帰経路が、安全復帰経路として運転者に提示される。
【0035】
代替の実施形態では、さらなる他の情報に基づいて、上記第1の条件を満たした復帰経路を安全復帰経路として提示するかどうかを判定してもよい。すなわち、第1の条件を満たした復帰経路は、現在位置から所定値TH以上の距離が確保されている経路であるので、復帰しやすい経路といえる。しかしながら、他の情報を用いて、復帰しやすい経路かどうかの判定レベルを上げることにより、より復帰しやすい、すなわちより安全な復帰経路を運転者に提示することができる。以下、該他の情報として、2つの実施例を説明する。
【0036】
1つめの実施例では、他の情報として、「走りやすさマップ」を利用することができる。このマップは、各道路に対し、走りやすさについての評価がなされており、該評価に従ってランクが予め付与されている。走りやすさマップとして、既知のものを用いてもよい。たとえば、国土交通省から「走りやすさマップ」が提供されており、各道路に対し、S,A,B,C,D等のランク付けがなされている。DからSに向かうほど、走りやすさについての評価が高いことを示す。この評価は、道路の幅員、カーブの大きさおよび多さ、道路の勾配、歩道と車道の分離状況などの所定の条件に従ってなされている。このマップに関する情報を、予め記憶装置に記憶しておいたり、たとえば通信によって所定のサーバから取得することができる。
【0037】
たとえば、復帰経路探索部34は、上記の第1の条件に従って探索された復帰経路について、該復帰経路を構成する道路のそれぞれについて、走りやすさマップに基づいて該道路のランク付けを調べる。前述したコスト算出手法と同様に、各道路の距離に、ランクに応じた係数の重み付けを行い(距離×ランクに応じた係数)、これを、復帰経路を構成するすべての道路について総和した値すなわちコストを算出する。重み付けは、ランクが低いほど高い値のコストが算出されるように行われる。こうして、コストが所定値より低ければ、提示すべき安全復帰経路と判定し、コストが所定値以上ならば、提示すべき安全復帰経路ではないと判定することができる。
【0038】
また、前述したように、上記の第1の条件に従って探索された復帰経路が複数ある場合には、所定の条件に従って1つの復帰経路を選択するが、該所定の条件に、該走りやすさマップを用いてもよい。たとえば、該探索された複数の復帰経路のうち、上で述べたように走りやすさマップに基づいて算出されたコストの最も低い復帰経路を選択し、これを、安全復帰経路と判定するようにしてもよい。
【0039】
2つめの実施例では、上記他の情報として、道路の属性情報を利用することができる。前述したように、地図情報記憶部12に記憶される地図情報には、各道路について、道路の種別、道路の幅員、道路のレーン数、信号、停止線等の道路の属性に関する情報が含まれている。たとえば、このような属性情報として、(財)日本デジタル道路地図協会が提供するデジタル道路地図の情報を用いてもよい。これらの属性のうちの所定のものを用い、復帰経路のコストを算出する。コストの算出手法は、経路探索部31による経路探索を参照して述べたのと同様であり、たとえば、属性として道路の種別および道路の幅員を用いる場合には、各道路(リンクでもよい)について、「道路の距離×種別に応じた係数×幅員に応じた係数」が算出され、これが、復帰経路を構成する道路のすべてについて加算されて、コストが算出される。コストは、走りやすいほど低くなるよう算出される。したがって、道路の種別に応じた係数および幅員に応じた係数は、走りやすいと判断されるほど、値が低くなるよう予め設定される。こうして算出されたコストが所定値より低ければ、提示すべき安全復帰経路と判定し、該コストが所定値以上ならば、提示すべき安全復帰経路ではないと判定することができる。
【0040】
また、前述したように、上記の第1の条件に従って探索された復帰経路が複数ある場合には、所定の条件に従って1つの復帰経路を選択するが、該所定の条件に、該道路の属性情報を用いてもよい。たとえば、該探索された複数の復帰経路のうち、上で述べたように道路の属性に基づいて算出されたコストの最も低い復帰経路を選択し、これを、安全復帰経路と判定するようにしてもよい。
【0041】
当然ながら、走りやすさマップと道路属性の両方に基づいて、提示すべき安全復帰経路かどうかを判定するようにしてもよい。たとえば、第1の条件に従って探索された復帰経路について、走りやすさマップのランクに応じたコストと、道路属性に応じたコストとを算出し、両方のコストを加算して総合コストを算出し、該総合コストが所定値より低ければ、提示すべき安全復帰経路と判定し、該総合コストが所定値以上ならば、提示すべき安全復帰経路ではないと判定することができる。また、第1の条件に従って探索された復帰経路が複数ある場合には、総合コストの最も低い復帰経路を選択して、安全復帰経路とすることができる。
【0042】
こうして、第1の条件に従って探索された復帰経路のうち、安全復帰経路と判定された復帰経路があれば、復帰経路探索部34は、前述したように、復帰経路と、復帰ポイントから目的地までの最適経路の部分とをつなぎ合わせて、新たな最適経路とする。経路誘導部32は、該新たな最適経路を表示装置15上に表示する。他方、第1の条件に従って探索された復帰経路のうち、安全復帰経路と判定された復帰経路がなければ、経路誘導部32による安全復帰経路の提示は行われない。
【0043】
図1に戻り、この実施例では、逸脱判断部33は、図2に示す開始位置Psから目的地Peに到達するまでの間に車両が最適経路101から逸脱した回数をカウントするカウンタを備えている。復帰経路探索部34は、逸脱回数が増えるにつれて、上記復帰経路を探索する第1の条件に用いる所定値THを増加させる。たとえば、逸脱回数が1回のときには、所定値THは5キロメートルであり、逸脱回数が2回のときには、所定値THは7キロメートルに増加される。
【0044】
これは、逸脱回数が多くなるほど、車両の現在位置が、最初の最適経路(図2の101)から離れている可能性が高いからである。仮に、逸脱回数にかかわりなく所定値THを一定のままにすると、逸脱回数が多くなるにつれて最初の最適経路から離れてしまった場合には、より安全な復帰経路を探索することが困難になる可能性が高くなる。したがって、逸脱回数が増えるほど所定値THを増やすことにより、より安全な復帰経路を確実に探索することができるようにする。
【0045】
ここで、図3を参照すると、図2を参照して説明した復帰経路401を車両が走行している間、該復帰経路401の位置P2において、車両が再び逸脱した場合が示されている。車両の現在位置はV2である。逸脱回数は2回目である。図2を参照して説明したのと同様の手法で、車両の現在位置V2から、少なくとも所定値TH以上の距離が確保されるように復帰経路が探索される。逸脱回数が2回目であるので、所定値THは、1回目の逸脱の時に用いた値より増やされ、たとえば7キロメートルである。車両の現在位置V2を中心として、半径がTHの円302を描画し、該円302の弧と最適経路101との交点X2を求める。該交点X2に最も近く、かつ目的地Pe側にある交差点を、復帰ポイントR2とする(前述したように、交点X2から目的地Peに向かって所定距離D内にある交差点を復帰ポイントR2としてもよい)。車両の現在位置V2から復帰ポイントR2に至る経路すなわち復帰経路402が探索され、これが、安全復帰経路と判定される。復帰経路402と、復帰ポイントR2から目的地Peまでの最適経路101の部分がつなぎ合わされ、新たな最適経路となり、これが、経路誘導部32によって提示される。
【0046】
当然ながら、前述したように、「走りやすさマップ」および(または)道路の属性情報を利用して、該探索された復帰経路402が、安全復帰経路として提示すべきものかどうかを判定するようにしてもよい。
【0047】
こうして、逸脱回数が増えるほど、より長い距離が確保されるように復帰経路が探索されるので、逸脱回数が増えることによって最初の最適経路101から車両が離れた場合でも、距離的および時間的な余裕を持って復帰経路に進入することができる。
【0048】
図1に戻り、逸脱判断部33によってカウントされた逸脱回数が所定値(たとえば、3)以上になった場合には、復帰経路探索部34による復帰経路の探索ではなく、経路探索部31による、車両の現在位置から目的地までの最適経路の探索が、再び行われる。
【0049】
ここで図4を参照すると、図3を参照して説明した復帰経路402を車両が走行している間、該復帰経路402の位置P3において、車両が再び逸脱した場合が示されている。車両Vの現在位置はV3である。逸脱回数は3回目である。逸脱回数が、所定値(この例では、3)以上となったので、最適経路101への復帰経路は探索されず、車両の現在位置V3から目的地Peまでの最適経路102の探索が改めて行われる。この探索は、経路探索部31を参照して説明した探索と同様の手法で行われることができる。
【0050】
逸脱回数が所定値以上になると、車両の現在位置は、最適経路から距離的にかなり離れていることが考えられ、復帰すると、目的地Peまで到達するのにかなりの遠回りになるおそれがある。また、逸脱回数が多いということは、運転者に最適経路への復帰の意図が無いとも考えられる。したがって、現在位置から目的地までの最適経路の探索が改めて行われる。
【0051】
なお、逸脱回数が多くなるにつれて、車両が最適経路に近づいている可能性もある。したがって、代替形態として、車両の現在位置と最適経路との間の距離(たとえば、車両の現在位置から最適経路に垂線をおろしたときの該垂線の距離でよい)を調べて、上記の所定値THを増加するかどうかを判断するようにしてもよい。たとえば、逸脱回数が増えるたびに、車両の現在位置と最適経路との間の距離と、前回逸脱したときの車両の位置と最適経路との間の距離とを比較する。前者が後者より小さければ、逸脱回数は増えたが、最適経路に近づいていることを示すので、所定値THを増加することなく維持する。他方、前者が後者以上であれば、逸脱回数の増加と共に最適経路から離れていることを示すので、所定値THを増加する。この代替形態では、車両の現在位置と最適経路との間の距離を用いたが、これに代えて、車両の現在位置と目的地との間の距離(直線距離でよい)を用いてもよい。
【0052】
さらに、逸脱回数が所定値(図4の例では、3)以上であっても、車両の現在位置と最適経路(または目的地)との間の距離を調べ、該距離が所定値以下ならば復帰経路を探索し、該距離が所定値より大きければ、現在位置から目的地までの最適経路の探索を行う、というようにしてもよい。こうして、車両の現在位置が、最適経路(または目的地)から離れすぎている場合にのみ、現在位置から目的地までの最適経路の探索を改めて行い、そうでなければ、復帰経路を推奨する。
【0053】
なお、上記復帰経路を探索するための第1の条件で用いた所定値THは、ユーザにより設定可能なようにしてもよい。たとえば、復帰経路探索部34は、入力装置14を介してユーザにより指定された値を受け取り、これを、所定値THとして用いる。さらに、逸脱回数に応じて所定値THを増加する量についても、入力装置14を介してユーザにより設定可能なようにしてもよい。
【0054】
また、たとえばリアルタイムに取得した交通情報に基づいて、所定値THを変更するようにしてもよい。たとえば、最適経路において渋滞や工事等を行っているならば、該渋滞や工事等を回避するように所定値THを増加させ、これにより、該渋滞や工事等をスキップして目的地Peにより近い地点を、復帰ポイントとすることができる。
【0055】
この実施例では、復帰経路探索部34によって、提示すべき安全復帰経路が判定されなかったとき、経路探索部31は、車両の現在位置から目的地までの最適経路を改めて探索する。ここで、「提示すべき安全復帰経路が判定されなかったとき」とは、復帰ポイントに至る復帰経路が存在しないために、提示すべき安全復帰経路を判定できなかった場合だけでなく、復帰経路は探索されたけれども、前述したように走りやすさマップおよび(または)道路の属性情報を用いて該経路を判定した結果、提示すべき安全復帰経路を判定できなかった場合をも含むことができる。このような場合には、距離的および時間的に余裕をもって最適経路に復帰する安全な経路が判定されなかったことを示すので、現在位置から目的地までの最適経路の探索を改めて行う。
【0056】
なお、経路探索部31による最適経路の探索は、入力装置14を介したユーザの指示に応じて任意の時に行うようにしてもよい。ユーザによっては、逸脱した場合、現在位置から目的地までの最適経路を改めて探索したいと欲する場合もありうるからである。
【0057】
図5は、処理部13によって実行されるプロセスのフローチャートである。ステップS11において、入力装置14を介して入力された目的地(目的位置)が設定される。ステップS12において、逸脱回数をカウントするためのカウンタCをゼロに設定する。
【0058】
ステップS13において、経路探索部31を参照して前述したように、車両の現在位置から目的地までの最適経路を探索する。ステップS14において、探索された最適経路を表示装置15の表示画面上に表示することにより、経路誘導を行う。前述したように、スピーカ16を介して経路誘導を行ってもよい。
【0059】
ステップS15において、車両が目的地に到達したかどうかを判断する。到達したならば、この処理を抜ける。到達していなければ、ステップS16に進み、車両が最適経路を逸脱したかどうかを判断する。逸脱していなければ、ステップS14に戻り、経路誘導を続行する。逸脱したならば、ステップS17に進み、逸脱カウンタCを、値1だけインクリメントする。
【0060】
ステップS18において、逸脱カウンタCの値を調べる。カウンタCの値が1であれば、ステップS19に進み、所定値THに、第1の距離(たとえば、5キロメートル)を設定する。カウンタCの値が2であれば、ステップS20に進み、所定値THに、第2の距離(第1の距離より大きく、たとえば、7キロメートル)を設定する。ステップS21において、図2および図3を参照して前述したように、車両の現在位置から所定値TH以上の距離が確保されるように復帰経路を探索する。こうして、逸脱回数が1回のときには、現在位置から最適経路に復帰するのに少なくとも第1の距離が確保される復帰経路が探索され、逸脱回数が2回のときには、現在位置から最適経路に復帰するのに少なくとも第2の距離が確保される復帰経路が探索される。
【0061】
他方、ステップS18において逸脱カウンタCの値が3であれば、逸脱回数が所定値(この実施例では、3)に達したので、復帰経路は探索しない。ステップS24において、車両の現在位置から、ステップS11で設定された目的地までの最適経路を探索しなおす。ステップS25において、カウンタCをゼロにリセットする。
【0062】
ステップS27において、逸脱カウンタCの値が1または2の場合、ステップS21で探索された復帰経路と、該復帰経路が最適経路に到達する地点である復帰ポイントから目的地までの最適経路の部分とをつないで、現在位置から目的地までの新たな最適経路とし、他方、逸脱カウンタCの値が3の場合、ステップS24で探索された経路を新たな最適経路とする。こうして新たな最適経路は、ステップS14において表示装置15上に表示され、該新たな最適経路に従った経路誘導が行われる。
【0063】
新たな最適経路を逸脱した場合には、前述したのと同様に、ステップS16によって判断され、逸脱カウンタCがインクリメントされて、ステップS18〜S27の処理が実行される。こうして、目的地に到達するまで、逸脱するたびに、最適経路が改められ、それに沿った経路誘導が行われる。
【0064】
以上のように、この発明の特定の実施形態について説明したが、本願発明は、これら実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明の一実施例に従う、経路探索装置の構成を示すブロック図。
【図2】この発明の一実施例に従う、1回目の逸脱時の復帰経路の探索手法について説明するための図。
【図3】この発明の一実施例に従う、2回目の逸脱時の復帰経路の探索手法について説明するための図。
【図4】この発明の一実施例に従う、3回目の逸脱時の復帰経路の探索手法について説明するための図。
【図5】この発明の一実施例に従う、逸脱回数に応じた復帰経路探索処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0066】
11 現在位置検出部
12 地図情報記憶部
13 処理部
14 入力装置
15 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的地までの最適経路から現在位置が逸脱した場合に、該現在位置から該目的地に至る経路を探索する経路探索装置であって、
前記現在位置が前記最適経路を逸脱したかどうかを判断する判断手段と、
前記逸脱したと判断されたならば、前記現在位置から前記最適経路に復帰する地点までの距離が少なくとも所定値以上確保されるように、該最適経路までの復帰経路を探索する探索手段と、
前記探索された復帰経路を、安全復帰経路として提示する提示手段と、
を備える、経路探索装置。
【請求項2】
前記所定値は、前記逸脱の回数が増えるに従って増加するよう設定される、
請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項3】
さらに、走りやすさに関して各道路に対して予め評価された情報に基づいて、前記探索された復帰経路が、前記安全復帰経路として提示すべきかどうかを判定する手段を備え、
前記安全復帰経路として提示すべきと判定されたならば、前記提示手段は、 前記探索された復帰経路を、該安全復帰経路として提示する、
請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
さらに、各道路の属性情報に基づいて、前記探索された復帰経路が、前記安全復帰経路として提示すべきかどうかを判定する手段を備え、
前記安全復帰経路として提示すべきと判定されたならば、前記提示手段は、前記探索された復帰経路を、該安全復帰経路として提示する、
請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
さらに、
前記探索手段が前記復帰経路を探索できなかった場合に、前記現在位置から前記目的地までの最適経路の探索を行う手段を備える、
請求項1から4のいずれかに記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−127782(P2010−127782A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303173(P2008−303173)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】