説明

経路計算装置

【課題】 必ず駐車場を通過し、コスト的に最適な駐車場を通過する経路を計算することができる経路計算装置を提供すること。
【解決手段】 Pノードの付加された道路データネットワークデータを用いて、自動車等の車両で出発地から目的地付近の駐車場まで移動して駐車場で車両を駐車し、その車両以外の手段(例えば、徒歩等)で駐車場から目的地へ移動する複数の候補経路を計算し、その総コストが最小となる候補経路を最適経路とする経路計算処理を実行する際、この経路計算処理による候補経路の計算過程において、Pノードの通過有無に関する計算ルールを適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路計算装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カーナビゲーション装置の一機能として経路案内機能がある。この経路案内機能の多くは、目的地付近の車両が通行可能な道路までの経路を案内するものであり、車両の駐車スペースまで案内するものではない。そのため、ユーザは、目的地付近に到達した後、自ら駐車スペースを探す必要があった。
【0003】
これに対し、目的地付近の駐車場を画面に表示し、その中から希望の駐車場をユーザに選択させることで、その選択した駐車場を目的地として案内する機能を備えたカーナビゲーション装置がある。この機能を用いることにより、ユーザが自ら駐車スペースを探す必要はなくなるが、この場合、ユーザは、本来の目的地まで経路を考えつつ駐車場を選択しなければならないため、その操作が煩わしい問題があった。
【0004】
この問題を解消するものとして、例えば、特許文献1に開示されている経路探索装置が挙げられる。この経路探索装置では、駅近傍の駐車場位置をノードとし、駐車場位置を示すノードから駅の位置を示すノードまでのリンクを設け、また、このリンクのリンクコスト(リンク旅行時間)を距離に基づいて決定する。そして、現在地から目的地に至る可能なリンク列のうち、そのリンクコストが最も小さいリンク列を選択する公知のダイクストラ法を用いて経路探索を行う。
【特許文献1】特開2001−106076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の経路探索装置において、目的地を駅とした場合、その目的地近傍の駐車場位置と目的地の位置を結ぶリンクのコストを考慮して目的地までの経路を探索することができるが、この経路探索装置では、単に、リンクの距離に基づくリンクコストが最も小さいリンク列を最適な経路として選択するため、駐車場を通過する最適な経路を局所的にしか求められない。
【0006】
すなわち、上述のダイクストラ法では、同一ノードに複数の候補経路が到達した場合、そのノードまでのリンクコストが高い方の候補経路をその時点で削除する。しかしながら、例えば、その削除した候補経路がそのノードに到達するまでに駐車場を通過した経路であり、他の全ての候補経路が目的地に到達するまで駐車場を通過しない経路であった場合、駐車場を通過する経路を探索することができなくなる。
【0007】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたもので、必ず駐車場を通過し、コスト的に最適な駐車場を通過する経路を計算することができる経路計算装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の経路計算装置は、
周辺の道路と接続関係にある駐車場位置のノードである駐車場ノードと、駐車場ノードと周辺の道路とを接続する駐車場用リンクと、を含む道路ネットワークデータを記憶する道路ネットワークデータ記憶手段と、
道路ネットワークデータのリンクに付与されるコストを用いて、車両で出発地から駐車場まで移動し、車両以外の手段で駐車場から目的地へ移動する候補経路の総コストを計算し、その総コストが最小となる候補経路を最適経路とする経路計算処理を実行する処理手段と、を備える経路計算装置であって、
処理手段は、経路計算処理による候補経路の計算過程において、予め設定された駐車場ノードの通過有無に関する計算ルールを適用する計算ルール適用処理を実行することを特徴とする。
【0009】
このように、本発明の経路計算装置では、道路ネットワークデータのリンクに付与されるコストを用いて最適経路を計算する過程において、駐車場ノードの通過有無に関する計算ルールを適用する。これにより、駐車場の通過有無を考慮した最適経路を計算することができるようになるため、必ず駐車場を通過し、コスト的に最適な駐車場を通過する経路の計算が可能となる。
【0010】
請求項2に記載の経路計算装置によれば、処理手段は、
経路計算処理として、出発地と接続関係にあるノードを出発地から目的地に向かって順次辿り、目的地へ到達するまでに通過したリンクのコストを加算することで候補経路の総コストを計算するものであって、
計算ルール適用処理は、計算ルールとして、
出発地と接続関係にあるノードを順次辿る際に、駐車場ノードを通過した場合、駐車場ノードから目的地までのリンクに付与されるコストを車両以外の手段で移動した場合のコストに変更する第1の計算ルールと、
目的地へ到達した候補経路が駐車場ノードを通過していない場合、その候補経路を最適経路の候補から除外する第2の計算ルールと、
出発地と接続関係にあるノードを順次辿る際に、同一のノードに複数の候補経路が到達し、さらに、その複数の候補経路の中に、同一のノードに到達した時点で駐車場ノードを通過した候補経路と、駐車場ノードを通過していない候補経路とが含まれる場合、複数の候補経路のうち、同一のノードに到達した時点での総コストが最小である駐車場ノードを通過した候補経路と、駐車場ノードを通過していない候補経路とを、同一のノードから目的地に向かって順次辿る候補経路とする第3の計算ルールと、が設定されていることを特徴とする。
【0011】
上述した、第1の計算ルールにより、例えば、駐車場から目的地まで徒歩で移動する際のコストに変更することができる。また、第2の計算ルールにより、駐車場を通過しない候補経路を最適経路の候補から除外することができる。さらに、第3の計算ルールによって、同一のノードに到達した時点では候補経路から除外してよいか否か判断できない候補経路を除外せずに残しておくことができる。
【0012】
図3は、同一ノードに候補ルートA、及び候補ルートBの2つの候補ルートが到達した時点で、上記第3の計算ルールを適用して判断した判断パターンの例を示すものである。なお、同図では、同一ノードに到達した時点での総コストが候補ルートBに比べ候補ルートAが小さい場合を示している。
【0013】
図3に示すパターン1は、候補ルートA、B共に同一ノードに到達した時点で駐車場ノード(Pノード)を通過していないパターンを示し、また、パターン4は、候補ルートA、B共に同一ノードに到達した時点で駐車場ノード(Pノード)を通過したパターンを示している。このように、同一のノードに到達した時点で、そのノードに到達した全ての候補ルートがPノードを通過した候補ルートである、或いは、Pノードを通過していない候補ルートである場合には、その同一ノードに到達した時点での総コストの高低に従って判断すればよい。
【0014】
これに対し、パターン2は、候補ルートAが同一ノードに到達した時点でPノードを通過し、候補ルートBが同一ノードに到達した時点でPノードを通過していないパターンを示し、また、パターン3は、その逆(候補ルートBが同一ノードに到達した時点でPノードを通過し、候補ルートAが同一ノードに到達した時点でPノードを通過していない)のパターンを示している。
【0015】
パターン2において、候補ルートAは、車両以外の手段で上記同一のノードから目的地まで移動するものである。一方、候補ルートBは、車両で上記同一のノードから目的地に向かって移動するものである。この候補ルートBは、同一のノードの到達時点では、目的地に到達するまでにPノードを通過する可能性が残されており、また、目的地に到達するまでにPノードを通過した場合、目的地に到達するまでの総コストが候補ルートAに比べて小さくなる可能性もある。従って、パターン2においては、同一のノードに到達した時点では、候補ルートA、B共に候補経路から除外してよいか否か判断できない。
【0016】
また、パターン3は、図4に示す場合である。すなわち、候補ルートAは、車両で上記同一のノード(図4ではノードc)から目的地に向かって移動するものであり、このノードcの到達時点では、目的地に到達するまでにPノードを通過しない可能性があり、また、仮にPノードを通過した場合であっても、その駐車場が目的地から遠方にある場合、目的地に到達するまでの総コストが候補ルートBに比べて大きくなる可能性もある。従って、パターン3においてもパターン2と同様に、同一のノードに到達した時点では、候補ルートA、B共に候補経路から除外してよいか否か判断できない。
【0017】
このように、第3の計算ルールを適用して、同一のノードに到達した時点では候補経路から除外してよいか否か判断できない候補経路を除外せずに残しておくことで、駐車場を通過する経路の最適性を高めることができる。
【0018】
また、従来では、経路の最適性を高めるために、駐車場の数に伴って経路計算回数を多くする必要があったが、この第3の計算ルールを適用することで、同一のノードに到達した時点で候補経路から除外してよいと判断できる経路を削除することができるため、従来に比べ経路計算回数が少なく済む。
【0019】
請求項3に記載の経路計算装置によれば、道路ネットワークデータ記憶手段は、
歩行者専用道路を構成する歩行者専用リンクと、
歩行者専用リンクの始点・終点のノードである歩行者専用道路入口・出口ノードと、
公共交通機関を利用して移動する公共交通機関リンクと、
公共交通機関リンクの始点・終点のノードである公共交通機関乗り場・降り場ノードと、を含む道路ネットワークデータを記憶し、
処理手段の計算ルール適用処理は、計算ルールとして、出発地と接続関係にあるノードを順次辿る際、駐車場ノードを通過していない候補経路について、歩行者専用リンク、及び公共交通機関乗り場ノードを通過しないようにする第4の計算ルールが設定されていることを特徴とする。
【0020】
この第4の計算ルールを適用することにより、車両が歩行者専用道路を通過するような最適経路や駐車場を通過せずに公共交通機関を利用するような最適経路を計算しないようにすることができる。
【0021】
請求項4に記載の経路計算装置によれば、道路ネットワークデータ記憶手段は、
タクシー乗り場のノードであるタクシー乗り場ノードと、
タクシー乗り場の周辺の道路上に位置するタクシー乗り場の入口のノードであるタクシー乗り場入口ノードと、
タクシー乗り場の周辺の道路上に位置するタクシー乗り場からの出口のノードであるタクシー乗り場出口ノードと、
歩行者がタクシー乗り場入口ノードからタクシー乗り場ノードに進入可能である徒歩進入用リンクと、
タクシーがタクシー乗り場ノードからタクシー乗り場出口ノードに退出可能であるタクシー退出用リンクと、を含む道路ネットワークデータを記憶し、
処理手段の計算ルール適用処理は、計算ルールとして、出発地と接続関係にあるノードを順次辿る際、駐車場ノードを通過していない候補経路について、タクシー乗り場ノードを通過しないようにする第5の計算ルールが設定されていることを特徴とする。
【0022】
この第5の計算ルールを適用することにより、駐車場を通過せずにタクシーを利用するような最適経路を計算しないようにすることができる。
【0023】
請求項5に記載の経路計算装置によれば、処理手段の計算ルール適用処理は、計算ルールとして、出発地と接続関係にあるノードを順次辿る際、駐車場ノードを通過した後に公共交通機関乗り場ノード、又は/及びタクシー乗り場ノードを通過した場合、公共交通機関乗り場ノード、又は/及びタクシー乗り場ノードから目的地までのリンクに付与されるコストを公共交通機関、又は/及びタクシーで移動した場合のコストに変更する第6の計算ルールが設定されていることを特徴とする。
【0024】
この第6の計算ルールを適用することにより、移動する際の手段に応じたコストを用いて最適経路を計算することができる。
【0025】
請求項6に記載の経路計算装置は、利用すべき駐車場を指定する利用駐車場指定手段を備え、処理手段の計算ルール適用処理は、計算ルールとして、出発地と接続関係にあるノードを順次辿る際、利用駐車場指定手段の指定した駐車場以外の駐車場位置のノードである駐車場ノードを通過する候補経路を最適経路の候補から除外する第7の計算ルールが設定されていることを特徴とする。
【0026】
この第7の計算ルールを適用することにより、指定した駐車場を通過する最適経路を計算することができる。
【0027】
請求項7に記載の経路計算装置は、処理手段による経路計算処理を実行する前に、駐車場の利用に関してユーザに報知する報知手段と、
駐車場の利用に関して入力する入力手段と、を備え、
処理手段は、経路計算処理を実行する際、報知手段から報知した後に入力手段から駐車場を利用する旨の入力があった場合、駐車場を含む最適経路を計算することを特徴とする。
【0028】
例えば、ユーザの設定した目的地が個人宅であったり、或いは、地図上にポイントを置いた任意の地点であったりする場合、目的地が駐車場を備えているかどうか判断することができない(個人宅すべてに対して、来客用駐車スペースの有無のデータを整備しない限り。)。
【0029】
そこで、経路計算処理を実行する前に、例えば、「設定した目的地に駐車しますか?」、或いは、「最適な駐車場を自動で探索しますか?」といった駐車場の利用に関するメッセージをユーザに報知し、ユーザから「はい」または「いいえ」の駐車場の利用に関する入力を得る。そして、入力手段から駐車場を利用する旨の入力があった場合には、目的地ノードを駐車場ノードとして設定して最適経路を計算したり、目的地付近の駐車場を通過する最適経路を計算したりする。
【0030】
これにより、ユーザは目的地に駐車場があるのに利用できなかったり、また、ユーザに対して目的地に駐車場がないのに目的地まで車両で進入する経路を案内することでストレスを感じさせたりすることがなくなる。
【0031】
請求項8に記載の経路計算装置によれば、処理手段は、経路計算処理を実行する際、目的地が駐車場を備える場合に目的地のノードを駐車場ノードとして設定する目的地ノード設定手段を備えることを特徴とする。これにより、駐車場を備える目的地に向かう最適経路を計算することができる。
【0032】
請求項9に記載の経路計算装置は、利用不可とすべき駐車場を指定する利用不可駐車場指定手段を備え、処理手段の計算ルール適用処理は、計算ルールとして、利用不可駐車場指定手段の指定した駐車場位置のノードである駐車場ノードに付与されるコストを他の駐車場ノードに付与されるコストに比べて高いコストに変更する第8の計算ルールが設定されていることを特徴とする。
【0033】
この第8の計算ルールを適用することにより、利用不可として指定した駐車場を通過する最適経路が計算され難くなる。なお、この第8の計算ルールを適用する場合、目的地付近にユーザによって指定されていない駐車場が存在しない場合は、止むを得ず指定した駐車場を通過する経路が計算される場合もある。これは、例えば、目的地と反対方向に数十キロメートル離れた駐車場に車両を駐車して、そこから徒歩で目的地に向かうといった極端な最適経路が生成されることを避けるためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の経路計算装置に関して、図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、本発明の経路計算装置の機能をナビゲーション装置の基本的な機能として常時装備・運用を可能とした例について説明するものである。
【0035】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係わるナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、本実施形態のナビゲーション装置100は、位置検出器1、地図データ入力器6、操作スイッチ群7、外部メモリ9、表示装置10、音声入出力装置11、VICS受信機12、通信装置13、リモコンセンサ14、及びこれらと接続する制御回路8によって構成される。
【0036】
制御回路8は、マイクロコンピュータとして構成されるもので、内部には周知のCPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインが備えられている。ROMには、ナビゲーション装置100が実行するためのプログラムが書き込まれており、このプログラムに従ってCPU等が所定の演算処理を実行する。
【0037】
位置検出器1は、何れも周知の地磁気センサ2、ジャイロセンサ3、距離センサ4、及び衛星からの電波に基づいて車両の現在地を検出するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機5を有している。これらは、各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、各センサの精度によっては位置検出器1を上述した内の一部で構成してもよく、更に、図示しないステアリングの回転センサ、各転動輪の車速センサ等を用いてもよい。
【0038】
地図データ入力器6は、道路ネットワークデータ、索引データ、描画データ等によって構成される地図データを入力するための装置であり、制御回路8からの要請により各種データを送信する。これら各種データを記憶する記憶媒体としては、そのデータ量からCD−ROMまたはDVD−ROMが一般的であるが、メモリカード、ハードディスク等の書き込み可能な記憶媒体を採用してもよい。ここで、道路ネットワークデータを構成するリンクデータとノードデータ、索引データ、及び描画データについて説明する。
【0039】
先ず、リンクとは、地図上の各道路を交差・分岐・合流する点等の複数のノードにて分割し、それぞれのノード間をリンクとして規定されるものであり、リンクを接続することにより道路を構成する。リンクデータは、リンクを特定する固有番号(リンクID)、リンクの長さを示すリンク長、リンクの始端及び終端ノード座標(緯度・経度)、道路名称、道路種別(高速道路、有料道路、国道、都道府県道等)、道路幅員、リンク旅行時間(徒歩や自動車で移動した場合の移動時間)等の各データから構成される。
【0040】
一方、ノードデータは、地図上の各道路が交差・分岐・合流するノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標(緯度・経度)、ノードに接続する全てのリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、分岐地点、合流地点、及び交差点の何れの地点に該当するかを示す地点属性、信号機の有無等の各データから構成される。
【0041】
なお、本実施形態の道路ネットワークデータには、図2に示すように、日本全国の駐車場位置をノード化した駐車場ノード(Pノード)がノードデータとして付加されている。また、ノードデータとして、駐車場の入口と接続関係にある既存の道路ネットワークデータに設けた駐車場入口用ノード(P入口ノード)が付加され、リンクデータとして、P入口ノードとPノードとを接続する自動車進入用リンクも付加される。
【0042】
さらに、リンクデータとして、駐車場から徒歩で退出するための徒歩退出用リンクも付加される。なお、この徒歩退出用リンクは、駐車場へ出入りする道路の構成によっては、P入口ノードに接続される場合もあれば、図6に示すように、P入口ノードの道路と異なる道路上に設けられる駐車場出口用ノード(P出口ノード)に接続される場合もある。
【0043】
索引データは、施設等の検索に用いられるデータであり、施設、道路、道路の分岐・合流・交差する地点等の名称、施設種別、住所、電話番号、位置(緯度・経度)等の情報で構成されている。描画データは、地図表示に用いられるデータであり、海(湖、池等も含む)や山等の地形、施設、道路、道路の分岐地点、道路の合流地点、道路の交差点等の表示文字、表示位置(緯度・経度)、ポリゴン、目印(ランドマーク等)の情報で構成されている。
【0044】
操作スイッチ群7は、例えば、表示装置10と一体になったタッチスイッチもしくはメカニカルなスイッチ等が用いられ、表示装置10の画面に表示される地図のスクロール操作や文字入力等の各種入力に使用される。外部メモリ9は、制御回路8の演算結果を一時的に格納する際に用いられる記憶装置である。
【0045】
表示装置10は、例えば液晶ディスプレイによって構成され、表示装置10の画面には位置検出器1から入力された車両の現在位置に対応する自車位置マークと、地図データ入力器6より入力された地図データによって生成される車両周辺の道路地図を表示することができる。
【0046】
音声入出力装置11は、図示しないマイクとスピーカを備えており、マイクの入力した音声信号を制御回路8へ出力する。制御回路8では、この音声信号からユーザの発話内容を認識して、ナビゲーション装置100の各種入力に用いる。また、スピーカは、制御回路8によって生成された合成音声や喚起音を出力する。
【0047】
VICS受信機12は、道路に敷設されたビーコンや各地のFM放送局を介して、VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標)センタから提供される道路交通情報を受信する。
【0048】
このVICS受信機12の受信する道路交通情報としては、例えば、上述したリンク毎の渋滞の渋滞度やリンク毎の旅行時間(所要移動時間)等の渋滞情報、事故や工事による通行止めや高速道路等の出入り口閉鎖等の規制情報である。なお、渋滞度は、複数の評価段階(例えば、渋滞、混雑、空き等)で表されるものである。受信した道路交通情報は、制御回路8で処理され、例えば、渋滞情報や規制情報等は、表示装置10の画面に表示される道路地図に重ねて表示することができる。
【0049】
通信装置13は、例えば、携帯電話等の移動通信を可能とする通信装置であり、外部の情報ネットワークを介してインターネットに接続したり、専用の情報センタに接続したりすることができる。この通信装置13は、上述した道路ネットワークデータに付加されるPノードの駐車場に関する情報を駐車場を管理する情報センタから随時取得する。この駐車場に関する情報としては、例えば、空車/満車、空車の場合の駐車可能な台数、営業時間帯、駐車可能な車両の高さ・幅、駐車料金(例えば、単位時間当たりの料金)等である。
【0050】
ナビゲーション装置100は、操作スイッチ群7やリモートコントローラ(リモコン)15等から目的地を設定すると、現在地(又は、指定した任意の地点)を出発地とする目的地までの最適な経路を自動的に計算して案内経路を形成し表示する、いわゆる経路案内機能を備えている。
【0051】
このような自動的に最適な経路を計算する手法は、例えば、周知のダイクストラ法によるコスト計算、すなわち、出発地と接続関係にあるノードを出発地から目的地に向かって順次辿り、目的地へ到達するまでに通過したリンクのコストを加算して複数の候補経路(候補ルート)の各々の総コストを計算し、その総コストが最小となる候補経路を最適経路とする方法が採用される。リンクのコストとは、例えば、リンクのリンク長、車線数、道路幅員、リンク旅行時間等を考慮してリンク毎に付されるコストである。
【0052】
これらの機能は、主に制御回路8によって各種の演算処理がなされることによって実行される。すなわち、制御回路8は、目的地が設定されると、地図データ入力器6の地図データを用いて経路を計算し、その経路を表示装置10へ表示させるとともに、分岐地点や右左折すべき交差点において地図の拡大や音声案内を行う。
【0053】
このように構成される本実施形態のナビゲーション装置100は、市街地やイベント会場等、目的地近傍に駐車することが困難な状況においても、ユーザがストレスを感じることなく目的地まで案内を行うことができるものである。
【0054】
この目的を達成するために、ナビゲーション装置100では、上述したように、Pノードの付加された道路データネットワークデータを用いて、自動車等の車両で出発地から目的地付近の駐車場まで移動して駐車場で車両を駐車し、その車両以外の手段(例えば、徒歩等)で駐車場から目的地へ移動する複数の候補経路を計算し、その総コストが最小となる候補経路を最適経路とする上記ダイクストラ法に基づく経路計算処理を実行する。
【0055】
なお、本実施形態では、必ず駐車場を通過し、コスト的に最適な駐車場を通過する経路を計算するために、この経路計算処理による候補経路の計算過程において、Pノードの通過有無に関する3つの計算ルールを適用するための計算ルール適用処理を実行することを特徴としている。この3つの計算ルールについて、以下に説明する。
【0056】
(計算ルール1)
出発地と接続関係にあるノードを順次辿る際にPノードを通過した場合、Pノードから目的地までのリンクに付与されるコストを車両以外の手段で移動した場合のコストに変更する(例えば、車両で移動する場合のコストに徒歩係数を乗じる。)。
【0057】
この第1の計算ルールにより、例えば、駐車場から目的地まで徒歩で移動する際のコストに変更することができる。
【0058】
(計算ルール2)
目的地へ到達した候補経路がPノードを通過していない場合、その候補経路を最適経路の候補から除外する。
【0059】
この第2の計算ルールにより、駐車場を通過しない候補経路を最適経路の候補から除外することができる。
【0060】
(計算ルール3)
出発地と接続関係にあるノードを順次辿る際に、同一のノードに複数の候補経路が到達し、さらに、その複数の候補経路の中に、同一のノードに到達した時点でPノードを通過した候補経路と、Pノードを通過していない候補経路とが含まれる場合、複数の候補経路のうち、同一のノードに到達した時点での総コストが最小であるPノードを通過した候補経路と、Pノードを通過していない候補経路とを、同一のノードから目的地に向かって順次辿る候補経路とする。
【0061】
この第3の計算ルールによって、同一のノードに到達した時点では候補経路から除外してよいか否か判断できない候補経路を除外せずに残しておくことができる。この計算ルール3を適用することは、次の理由によるものである。
【0062】
図3は、同一ノードに候補ルートA、及び候補ルートBの2つの候補ルートが到達した時点で、上記第3の計算ルールを適用して判断した判断パターンの例を示すものである。なお、同図では、同一ノードに到達した時点での総コストが候補ルートBに比べ候補ルートAが小さい場合を示している。
【0063】
図3に示すパターン1は、候補ルートA、B共に同一ノードに到達した時点でPノードを通過していないパターンを示し、また、パターン4は、候補ルートA、B共に同一ノードに到達した時点でPノードを通過したパターンを示している。このように、同一のノードに到達した時点で、そのノードに到達した全ての候補ルートがPノードを通過した候補ルートである、或いは、Pノードを通過していない候補ルートである場合には、その同一ノードに到達した時点での総コストの高低に従って判断すればよい。
【0064】
これに対し、パターン2は、候補ルートAが同一ノードに到達した時点でPノードを通過し、候補ルートBが同一ノードに到達した時点でPノードを通過していないパターンを示し、また、パターン3は、その逆(候補ルートBが同一ノードに到達した時点でPノードを通過し、候補ルートAが同一ノードに到達した時点でPノードを通過していない)のパターンを示している。
【0065】
パターン2において、候補ルートAは、車両以外の手段で上記同一のノードから目的地まで移動するものである。一方、候補ルートBは、車両で上記同一のノードから目的地に向かって移動するものである。この候補ルートBは、同一のノードの到達時点では、目的地に到達するまでにPノードを通過する可能性が残されており、また、目的地に到達するまでにPノードを通過した場合、目的地に到達するまでの総コストが候補ルートAに比べて小さくなる可能性もある。従って、パターン2においては、同一のノードに到達した時点では、候補ルートA、B共に候補経路から除外してよいか否か判断できない。
【0066】
また、パターン3は、図4に示す場合である。すなわち、候補ルートAは、車両で上記同一のノード(図4ではノードc)から目的地に向かって移動するものであり、このノードcの到達時点では、目的地に到達するまでにPノードを通過しない可能性があり、また、仮にPノードを通過した場合であっても、その駐車場が目的地から遠方にある場合、目的地に到達するまでの総コストが候補ルートBに比べて大きくなる可能性もある。従って、パターン3においてもパターン2と同様に、同一のノードに到達した時点では、候補ルートA、B共に候補経路から除外してよいか否か判断できない。
【0067】
このように、第3の計算ルールを適用して、同一のノードに到達した時点では候補経路から除外してよいか否か判断できない候補経路を除外せずに残しておくことで、駐車場を通過する経路の最適性を高めることができる。
【0068】
また、従来では、経路の最適性を高めるために、駐車場の数に伴って経路計算回数を多くする必要があったが、この第3の計算ルールを適用することで、同一のノードに到達した時点で候補経路から除外してよいと判断できる経路を削除することができるため、従来に比べ経路計算回数が少なく済む。
【0069】
次に、本実施形態のナビゲーション装置100の経路案内機能における、上記計算ルールを適用した経路計算処理について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。先ず、ステップ(以下、Sと記す)10では、目的地の設定を行い、S20では、駐車場の利用に関するメッセージを音声や画面表示によって報知する。
【0070】
例えば、ユーザの設定した目的地が個人宅であったり、或いは、地図上にポイントを置いた任意の地点であったりする場合、目的地が駐車場を備えているかどうか判断することができない(個人宅すべてに対して、来客用駐車スペースの有無のデータを整備しない限り。)。
【0071】
そこで、本実施形態では、経路計算を実行する前に、例えば、「設定した目的地に駐車しますか?」、或いは、「最適な駐車場を自動で探索しますか?」といった駐車場の利用に関するメッセージをユーザに報知する。
【0072】
その後、ユーザは、操作スイッチ群7やリモコン15を用いて、「はい」または「いいえ」の駐車場の利用に関する入力を行う。S30では、ユーザから駐車場を利用する旨の入力があったか否かを判定する。ここで、肯定判定される場合にはS40にて、目的地付近の駐車場を通過する最適経路の計算を行い、否定判定される場合にはS50にて、駐車場を通過しない最適経路の計算を行う。
【0073】
なお、S40では、S20における「設定した目的地に駐車しますか?」という問いかけに対し「はい」の応答があった場合には、目的地ノードをPノードとして扱うために、目的地ノードをPノードとして設定して最適経路を計算する。なお、目的地が駐車場を備える場合にも目的地のノードをPノードとして設定する。これにより、駐車場を備える目的地に向かう最適経路を計算することができる。
【0074】
また、S40では、S20における「最適な駐車場を自動で探索しますか?」という問いかけに対し「はい」の応答があった場合には目的地付近の駐車場を通過する最適経路を計算する。
【0075】
これにより、ユーザは目的地に駐車場があるのに利用できなかったり、また、ユーザに対して目的地に駐車場がないのに目的地まで車両で進入する経路を案内することでストレスを感じさせたりすることがなくなる。
【0076】
このように、本実施形態のナビゲーション装置100は、Pノードの付加された道路データネットワークデータを用いて、自動車等の車両で出発地から目的地付近の駐車場まで移動して駐車場で車両を駐車し、その車両以外の手段(例えば、徒歩等)で駐車場から目的地へ移動する複数の候補経路を計算し、その総コストが最小となる候補経路を最適経路とする経路計算処理を実行するもので、この経路計算処理による候補経路の計算過程において、Pノードの通過有無に関する計算ルールを適用する。
【0077】
これにより、駐車場の通過有無を考慮した最適経路を計算することができるようになるため、必ず駐車場を通過し、コスト的に最適な駐車場を通過する経路の計算が可能となる。
【0078】
(変形例1)
第1の実施形態では、図5に示したS40において、目的地付近の駐車場を通過する最適経路計算するものであるが、ユーザが駐車場施設を指定して、その指定した駐車場を利用する場合が想定される。そのため、本変形例の経路計算処理では、ユーザに利用すべき駐車場を指定させ、その後、出発地から指定された駐車場までの最適経路(R1)を計算し、次に、その駐車場から目的地までの最適経路(R2)を計算する。そして、最適経路(R1)と最適経路(R2)を接続した経路を出発地から目的地へ移動する最終的な最適経路とする。
【0079】
なお、本変形例においては、計算ルールとして、ユーザの指定した駐車場以外のPノードを通過する候補経路を最適経路の候補から除外する計算ルール(第7の計算ルール)を設定し、最適経路(R1)の計算の際にこの計算ルールを適用する。これにより、指定した駐車場を通過する最適経路(R1)を計算することができる。
【0080】
(変形例2)
第1の実施形態では、図5に示したS40において、目的地付近の駐車場を通過する最適経路計算するものであるため、ユーザが利用したくない駐車場を通過する最適経路が計算される場合がある。そのため、本変形例の経路計算処理では、ユーザに利用不可とすべき駐車場を指定させる。この駐車場の指定については、複数指定可能であってもよいし、駐車場の種類(立体/平面駐車場等)が指定可能であってもよい。
【0081】
また、計算ルールとして、ユーザの指定した利用不可とすべき駐車場のPノードに付与されるコストを他のPノードに付与されるコストに比べて(著しく)高いコストに変更する計算ルール(第8の計算ルール)を設定する。そして、最適経路の計算の際にこの計算ルールを適用する。
【0082】
これにより、利用不可として指定した駐車場を通過する最適経路が計算され難くなる。なお、この計算ルールを適用する場合、目的地付近にユーザによって指定されていない駐車場が存在しない場合は、止むを得ず指定した駐車場を通過する経路が計算される場合もある。これは、例えば、目的地と反対方向に数十キロメートル離れた駐車場に車両を駐車して、そこから徒歩で目的地に向かうといった極端な最適経路が生成されることを避けるためである。
【0083】
(変形例3)
第1の実施形態では、コスト的に最適な駐車場を通過する最適経路を計算するものであるが、通信装置13から取得される駐車場に関する情報を考慮してもよい。すなわち、コスト的に最適な駐車場であっても、営業時間外である場合や満車である場合、その駐車場に駐車することができなくなる。
【0084】
そのため、コスト的に最適な駐車場を通過する最適経路が計算された時点で、その駐車場に関する情報を取得して、駐車可能であるか否かを判定するようにしてもよい(当該駐車場への到着予想時刻を踏まえて判定してもよい。)。そして、駐車可能でないと判断された場合には、その駐車場を利用不可とする駐車場に指定して、他の駐車場を通過する最適経路を計算するようにしてもよい。さらに、本ナビゲーション装置100を搭載する車両の高さと車幅を参照して、その駐車場に駐車可能であるか否かを判断してもよい。
【0085】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、第1の実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分についての詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。第1の実施形態の道路ネットワークデータは、図2に示したように、日本全国の駐車場位置をノード化したPノード、P入口ノード、P出口ノード、自動車進入用リンク、及び徒歩退出用リンクが付加されたものである。
【0086】
これに対し、本実施形態の道路ネットワークデータは、この第1の実施形態の道路ネットワークデータに歩行者専用道路を構成する歩行者専用道路リンクや電車、バス、船舶(フェリー)等の公共交通機関を利用して移動する公共交通機関専用リンクを付加したものである。
【0087】
すなわち、図7に示すように、リンクデータとして、歩行者専用道路リンク、公共交通機関専用リンク、及び公共交通機関ノードと既存の道路とを接続する公共交通機関連結用リンクを付加する。また、ノードデータとして、歩行者専用道路リンクの始点・終点のノードである歩行者専用道路入口・出口ノード、公共交通機関専用リンクの始点・終点のノードである公共交通機関乗り場・降り場ノードを付加する。なお、既存の道路から公共交通機関乗り場・降り場ノードを接続する公共交通機関連結用リンクをリンクデータとして付加してもよい。
【0088】
そして、本実施形態の経路計算処理では、車両で出発地から駐車場まで移動し、車両以外の手段である徒歩や公共交通機関を利用して目的地へ移動する最適経路を計算する。なお、この歩行者専用道路や公共交通機関のリンクやノードを含む道路ネットワークデータを利用して経路計算を行う場合、以下の2つの計算ルールを設定して適用する必要がある。
【0089】
(第4の計算ルール)
出発地と接続関係にあるノードを順次辿る際、Pノードを通過していない候補経路について、歩行者専用道路リンク、及び公共交通機関乗り場ノードを通過しないようにする。
【0090】
この第4の計算ルールを適用することにより、車両が歩行者専用道路を通過するような最適経路や駐車場を通過せずに公共交通機関を利用するような最適経路を計算しないようにすることができる。
【0091】
(第6の計算ルール)
出発地と接続関係にあるノードを順次辿る際、Pノードを通過した後に公共交通機関乗り場ノードを通過した場合、公共交通機関乗り場ノードから目的地までのリンクに付与されるコストを公共交通機関で移動した場合のコストに変更する(例えば、車両で移動する場合のコストに乗じていた徒歩係数を公共交通機関係数に変更する。)。
【0092】
この第6の計算ルールを適用することにより、移動する際の手段に応じたコストを用いて最適経路を計算することができる。なお、公共交通機関専用リンクに付与されるコストについては、公共交通機関の時刻表を通信装置13で取得し、この時刻表から公共交通機関乗り場・降り場ノード間のリンク旅行時間を算出してコストに反映するようにしてもよい。さらに、公共交通機関乗り場ノードの予想到達時刻を算出し、この予想到達時刻と時刻表とから公共交通機関に乗るまでの待ち時間を算出してコストに反映するようにしてもよい。
【0093】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、第1の実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分についての詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。第1の実施形態の道路ネットワークデータは、図2に示したように、日本全国の駐車場位置をノード化したPノード、P入口ノード、P出口ノード、自動車進入用リンク、及び徒歩退出用リンクが付加されたものである。
【0094】
これに対し、本実施形態の道路ネットワークデータは、この第1の実施形態の道路ネットワークデータに日本全国のタクシー乗り場をノード化したタクシー乗り場ノードを付加して、タクシーを利用した最適経路の計算を可能とするものである。
【0095】
すなわち、図8に示すように、ノードデータとして、タクシー乗り場ノード、タクシー乗り場の周辺の道路上に位置するタクシー乗り場の入口のノードであるタクシー乗り場入口ノード、タクシー乗り場の周辺の道路上に位置するタクシー乗り場からの出口のノードであるタクシー乗り場出口ノードを付加する。
【0096】
また、リンクデータとして、歩行者がタクシー乗り場入口ノードからタクシー乗り場ノードに進入可能である徒歩進入用リンク、タクシーがタクシー乗り場ノードからタクシー乗り場出口ノードに退出可能であるタクシー退出用リンクを付加する。
【0097】
なお、Pノードの例と同様に、徒歩進入用リンクとタクシー退出用リンクは、タクシー乗り場へ出入りする道路の構造によっては、図8に示したように、同一のノード間を結ぶリンクとなる場合もあれば、タクシー乗り場入口ノードの道路と異なる道路上に設けられる乗り場出口ノードに接続される場合もある。さらに、タクシー乗り場ノードの周辺の道路から複数の徒歩進入用リンクや複数のタクシー退出用リンクが設けられる場合もある。
【0098】
そして、本実施形態の経路計算処理では、車両で出発地から駐車場まで移動し、車両以外の手段である徒歩やタクシーを利用して目的地へ移動する最適経路を計算する。なお、この経路計算を行う場合、次の計算ルールを設定して適用する必要がある。
【0099】
(第5の計算ルール)
出発地と接続関係にあるノードを順次辿る際、Pノードを通過していない候補経路について、タクシー乗り場ノードを通過しないようにする。
【0100】
この第5の計算ルールを適用することにより、駐車場を通過せずにタクシーを利用するような最適経路を計算しないようにすることができる。
【0101】
また、上述した第6の計算ルールをタクシー乗り場ノードにも適用できるようにする。
【0102】
(第6の計算ルール)
出発地と接続関係にあるノードを順次辿る際、Pノードを通過した後にタクシー乗り場ノードを通過した場合、タクシー乗り場ノードから目的地までのリンクに付与されるコストをタクシーで移動した場合のコストに変更する(例えば、徒歩係数の乗算を無効にして、車両で移動する場合のコストとする。)。
【0103】
この第6の計算ルールを適用することにより、タクシーで移動している区間の移動コストが徒歩のコストと同一になることを防ぐことができる。そして、移動する際の手段に応じたコストを用いて最適経路を計算することができる。
【0104】
(変形例4)
上述した、第1〜第3の実施形態における経路計算処理では、リンクやノードに付与されるコストを固定値として扱っているが、このコストを可変値としてもよい。例えば、経路計算処理を実行する前に、ユーザに経路計算における優先条件(例えば、「なるべく安く」、「なるべく楽に」等)を選択させる。
【0105】
そして、例えば、「なるべく安く」が選択された場合には、通信装置13によって取得できる駐車場に関する情報に含まれる駐車料金(予めデータベース化しておき、そのデータベースから取得してもよい)、公共交通機関の料金、タクシー運賃に応じて、Pノードのコストや、公共交通機関やタクシーで移動するリンクのコストを高く設定したうえで、経路計算処理を実行する。
【0106】
また、「なるべく楽に」が選択された場合は、徒歩で移動するリンクのコストを高くしたり、公共交通機関の乗り換え回数に応じて公共交通機関乗り場ノードのコストを高く設定したりしたうえで経路計算処理を実施する。これにより、ユーザの優先条件に応じた最適経路を計算することが可能となる。
【0107】
(変形例5)
上記変形例4における優先条件をさらに発展させ、例えば、「○○分以内なら歩いてもよい。それがだめなら△△円以内でタクシーを使いたい」といった詳細な優先条件を設定できるようにしてもよい。
【0108】
この場合、本変形例のナビゲーション装置100は、先ず、Pノード通過後の経路計算を徒歩で移動した場合のコストに変更したうえで(徒歩係数を乗じたうえで)実行する。そして、得られた候補経路が「徒歩○○分以内」という条件に合致しない場合は、Pノード通過後の経路計算をタクシーで移動するものとして実行する。ここで得られた候補経路が「タクシー料金△△円以内」であれば、駐車場からタクシーを利用する候補経路を最適経路とする。
【0109】
これにより、詳細に設定された優先条件を満たす最適経路を計算することができるようになる。なお、「徒歩○○分以内、及びタクシー料金△△円以内」の何れの条件も満たす候補経路が存在しない場合には、「徒歩○○分以内」及び「タクシー料金△△円以内」に合致しない両方の候補経路を画面表示し、ユーザに最終的に選択させるようにしてもよい。
【0110】
なお、タクシーを利用する場合、ユーザ自らが駐車場付近までタクシーを自ら呼ぶようにしてもよいし、経路計算処理の完了後にタクシー会社に対して、到着予想時刻に当該駐車場付近まで配車するように通信装置13を介して自動的に依頼するようにしてもよい。
【0111】
(変形例6)
本変形例では、経路計算処理を実行する前に、ユーザが目的地を離れて帰路に着く時刻をユーザに設定させ、この時刻に基づいて、駐車場から出庫可能か否かを判定する。そして、出庫不可能と判定された場合には、当該駐車場のPノードのコストが著しく高くなるようにコストを変更したうえで、再度、経路計算処理を行って、他の出庫可能な駐車場を利用する経路を計算する。
【0112】
具体的には、先ず、経路計算処理を実行する前に、ユーザが目的地を離れる時刻をユーザに設定させ、その後、目的地付近の駐車場を通過する最適経路を計算する。この最適経路が計算された時点で、目的地から当該駐車場まで移動する帰路を計算する。なお、この帰路の計算においては、帰路における移動手段に応じて、第1や第6の計算ルールを適用する。この帰路の計算結果と、ユーザが設定した目的地を離れる時刻とから、ユーザが駐車場に到着する到着予想時刻が算出される。
【0113】
そして、この到着予想時刻が通信装置13によって取得できる駐車場に関する情報に含まれる営業時間帯(予めデータベース化しておき、そのデータベースから取得してもよい)から外れた時刻である場合には、当該駐車場のPノードのコストを著しく高いコストに変更して再度経路計算を行う。この結果、他の駐車場を利用する最適経路が計算される。これにより、駐車場に駐車したものの、帰路に着く際に、駐車場から出庫不可能となる事態を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】ナビゲーション装置100の全体構成を示すブロック図である。
【図2】道路ネットワークを示した図である。
【図3】同一ノードに候補ルートA、及び候補ルートBの2つの候補ルートが到達した時点で、第3の計算ルールを適用して判断した判断パターンの例を示す図である。
【図4】パターン3を示した図である。
【図5】ナビゲーション装置100の経路案内機能における計算ルールを適用した経路計算処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】徒歩退出用リンクがP入口ノードと異なるP出口ノードに接続する例を示す道路ネットワークの図である。
【図7】道路ネットワークに歩行者専用道路リンクや公共交通機関専用リンクを付加した例を示す図である。
【図8】道路ネットワークにタクシー乗り場をノード化し付加した例を示す図である。
【符号の説明】
【0115】
1 位置検出器
6 地図データ入力器
7 操作スイッチ群
8 制御回路
9 外部メモリ
10 表示装置
11 音声入出力装置
12 VICS受信機
13 通信装置
14 リモコンセンサ
15 リモコン
100 ナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺の道路と接続関係にある駐車場位置のノードである駐車場ノードと、前記駐車場ノードと前記周辺の道路とを接続する駐車場用リンクと、を含む道路ネットワークデータを記憶する道路ネットワークデータ記憶手段と、
前記道路ネットワークデータのリンクに付与されるコストを用いて、車両で出発地から駐車場まで移動し、前記車両以外の手段で前記駐車場から目的地へ移動する候補経路の総コストを計算し、その総コストが最小となる候補経路を最適経路とする経路計算処理を実行する処理手段と、を備える経路計算装置であって、
前記処理手段は、前記経路計算処理による候補経路の計算過程において、予め設定された前記駐車場ノードの通過有無に関する計算ルールを適用する計算ルール適用処理を実行することを特徴とする経路計算装置。
【請求項2】
前記処理手段は、
前記経路計算処理として、前記出発地と接続関係にあるノードを前記出発地から前記目的地に向かって順次辿り、前記目的地へ到達するまでに通過したリンクのコストを加算することで前記候補経路の総コストを計算するものであって、
前記計算ルール適用処理は、前記計算ルールとして、
前記出発地と接続関係にあるノードを順次辿る際に、駐車場ノードを通過した場合、前記駐車場ノードから前記目的地までのリンクに付与されるコストを前記車両以外の手段で移動した場合のコストに変更する第1の計算ルールと、
前記目的地へ到達した候補経路が駐車場ノードを通過していない場合、その候補経路を最適経路の候補から除外する第2の計算ルールと、
前記出発地と接続関係にあるノードを順次辿る際に、同一のノードに複数の候補経路が到達し、さらに、その複数の候補経路の中に、前記同一のノードに到達した時点で駐車場ノードを通過した候補経路と、駐車場ノードを通過していない候補経路とが含まれる場合、前記複数の候補経路のうち、前記同一のノードに到達した時点での総コストが最小である前記駐車場ノードを通過した候補経路と、前記駐車場ノードを通過していない候補経路とを、前記同一のノードから前記目的地に向かって順次辿る候補経路とする第3の計算ルールと、が設定されていることを特徴とする請求項1記載の経路計算装置。
【請求項3】
前記道路ネットワークデータ記憶手段は、
歩行者専用道路を構成する歩行者専用リンクと、
前記歩行者専用リンクの始点・終点のノードである歩行者専用道路入口・出口ノードと、
公共交通機関を利用して移動する公共交通機関リンクと、
前記公共交通機関リンクの始点・終点のノードである公共交通機関乗り場・降り場ノードと、を含む道路ネットワークデータを記憶し、
前記処理手段の前記計算ルール適用処理は、前記計算ルールとして、前記出発地と接続関係にあるノードを順次辿る際、駐車場ノードを通過していない候補経路について、前記歩行者専用リンク、及び前記公共交通機関乗り場ノードを通過しないようにする第4の計算ルールが設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の経路計算装置。
【請求項4】
前記道路ネットワークデータ記憶手段は、
タクシー乗り場のノードであるタクシー乗り場ノードと、
前記タクシー乗り場の周辺の道路上に位置する前記タクシー乗り場の入口のノードであるタクシー乗り場入口ノードと、
前記タクシー乗り場の周辺の道路上に位置する前記タクシー乗り場からの出口のノードであるタクシー乗り場出口ノードと、
歩行者が前記タクシー乗り場入口ノードから前記タクシー乗り場ノードに進入可能である徒歩進入用リンクと、
タクシーが前記タクシー乗り場ノードから前記タクシー乗り場出口ノードに退出可能であるタクシー退出用リンクと、を含む道路ネットワークデータを記憶し、
前記処理手段の前記計算ルール適用処理は、前記計算ルールとして、前記出発地と接続関係にあるノードを順次辿る際、駐車場ノードを通過していない候補経路について、前記タクシー乗り場ノードを通過しないようにする第5の計算ルールが設定されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の経路計算装置。
【請求項5】
前記処理手段の前記計算ルール適用処理は、前記計算ルールとして、前記出発地と接続関係にあるノードを順次辿る際、前記駐車場ノードを通過した後に前記公共交通機関乗り場ノード、又は/及び前記タクシー乗り場ノードを通過した場合、前記公共交通機関乗り場ノード、又は/及び前記タクシー乗り場ノードから前記目的地までのリンクに付与されるコストを前記公共交通機関、又は/及び前記タクシーで移動した場合のコストに変更する第6の計算ルールが設定されていることを特徴とする請求項3又は4記載の経路計算装置。
【請求項6】
利用すべき駐車場を指定する利用駐車場指定手段を備え、
前記処理手段の前記計算ルール適用処理は、前記計算ルールとして、前記出発地と接続関係にあるノードを順次辿る際、前記利用駐車場指定手段の指定した駐車場以外の駐車場位置のノードである駐車場ノードを通過する候補経路を最適経路の候補から除外する第7の計算ルールが設定されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の経路計算装置。
【請求項7】
前記処理手段による前記経路計算処理を実行する前に、駐車場の利用に関してユーザに報知する報知手段と、
前記駐車場の利用に関して入力する入力手段と、を備え、
前記処理手段は、前記経路計算処理を実行する際、前記報知手段から報知した後に前記入力手段から前記駐車場を利用する旨の入力があった場合、前記駐車場を含む最適経路を計算することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の経路計算装置。
【請求項8】
前記処理手段は、前記経路計算処理を実行する際、前記目的地が駐車場を備える場合に前記目的地のノードを前記駐車場ノードとして設定する目的地ノード設定手段を備えることを特徴とする請求項6又は7記載の経路計算装置。
【請求項9】
利用不可とすべき駐車場を指定する利用不可駐車場指定手段を備え、
前記処理手段の前記計算ルール適用処理は、前記計算ルールとして、前記利用不可駐車場指定手段の指定した駐車場位置のノードである駐車場ノードに付与されるコストを他の駐車場ノードに付与されるコストに比べて高いコストに変更する第8の計算ルールが設定されていることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の経路計算装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−194638(P2006−194638A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4442(P2005−4442)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】