説明

結合手段、その製造方法および材料接合

金属、とりわけAl、Mg、CuもしくはTiまたはそれらを1つ以上含む合金より作られる結合手段58が本明細書内に開示される。結合手段58は、ナノ粒子、とりわけCNTによって強化された前記金属の複合材料より作られ、強化された金属は、前記ナノ粒子によって少なくとも部分的に分離された金属結晶を含む微細構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、金属、とりわけAl、Mg、Cu、Tiまたはそれらを1つ以上含む合金のような軽金属より作られる結合手段に関する。本願発明はまた、その製造方法および結合手段を用いる材料結合にも関する。
【背景技術】
【0002】
ねじ、ボルト、丁番(またはヒンジ)またはリベットのような結合手段に関する継続的な技術的要求がある。多くの用途では、理想的な結合手段は、少ない重量と、高いビッカース硬さおよび高い引張強度のような高い強度と、高い温度安定性と、高い耐食性とを有するであろう。
【0003】
不幸にも、目下のところ、上記の好都合な特徴のすべてを備える既知の結合手段はなく、代わりに、従来の結合手段は、いつもこの点において、何らかの妥協をしているようであろう。例えば、ある場合には、アルミニウムベース合金(アルミニウム基合金)が、それらの少ない重量に起因して、結合手段を製造するために用いられている。不幸にも、多数の高強度アルミニウム合金は、低い耐食性を有し、しばしば陽極酸化ができない。また、多数の高強度アルミニウム合金は、しばしば、比較的小さな温度域でのみ維持できる所望の機械的特性を得るように、熱処理が必要である。高温での使用の後の機械的特性の低下は不可逆的であるため、このことは極めて重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような高強度アルミニウム合金の低減した温度安定性は、これらの合金がしばしば冷間加工(working)または冷間機械加工(machining)によってのみ加工できることもまた示唆している。不幸にも、冷間加工において、熱処理により低減する必要がある、金属マトリックス内部の応力(または張力、tension)が高まる。さらに、熱処理の過程で、高精度品の大きさの安定性(または不変性、consistency)が保証できない。一方で、ねじのような結合手段の機械加工による製造は非常に高コストであるだけでなく、しばしば、せん断力に対して低減した強度をもたらす、好ましくない応力の幾何学的な分布(geometrical tension distributions)をも引き起こす。
【0005】
従って、最高強度アルミニウム合金のほとんどは結合手段に適さず、製造が高コストであり、さらに、腐食に対して保護される必要がある。
【0006】
一方で、欧州規格EN573−3/4に従うAl1xxx系、Al3xxx系およびAl5xxx系のような固溶強化に基づく多くの耐食性Al合金が知られており、通常、陽極酸化もできる。しかしながら、これらの合金の機械的強度は、かなり低く、かつ加工硬化によって狭い範囲で増加できるのみである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の目的は、軽量、耐食性があり、高い機械的強度、とりわけ高いビッカース硬さおよび高い引張強度を有する結合手段を提供することである。
【0008】
本願発明の目的は、また、かなり廉価で、大量生産に適した前記結合手段を製造する方法をも提供することである。
【0009】
上述の目的を満たすよう、金属、とりわけAl、Mg、Cu、Tiまたはそれらを1つ以上含む合金のような軽金属により作製される結合手段が提供され、該結合手段が、ナノ粒子、とりわけCNTによって強化された前記金属の複合材料により作製され、強化された金属が、ナノ粒子によって少なくとも部分的に分離される金属結晶を含む微細構造を有する。ここで、複合材料は、1nmから100nmの範囲のサイズ、好ましくは、10nmから100nmの範囲のサイズ、または100nmより大きくかつ200nm以下の範囲のサイズを有する金属結晶を好適に含む。
【0010】
以下において、簡単にするために、前記ナノ粒子として、特別な言及がCNTに対してなされるであろう。しかしながら、高いアスペクト比を有する他の種類のナノ粒子、とりわけ炭化物、窒化物およびケイ化物のような無機ナノ粒子を用いる場合、同様の効果もまた得ることができると考えられる。従って、CNTについて本明細書で為された、適用可能な全ての開示のいずれもが、また、更なる記載なしに、高いアスペクト比を有する他の種類のナノ粒子に対する言及でもあると考えられる。
【0011】
結合手段を構成する材料の構造は、金属結晶の微細構造がナノ粒子(CNT)によって安定化することに、新しくかつ驚くべき効果を有する。とりわけ、小さな(好ましくはナノスケールの)金属結晶の粒界に沿ってCNTが位置することに起因して、転位の動きを抑制でき、また金属内部の転位がCNTによって安定化できることが観察されている。この安定化は、ナノスケールの結晶の極めて高い、体積に対する表面の比のために非常に効果的である。また、固溶強化によって強化された合金が金属成分として用いられる場合、混合した、結晶または固溶体の相は、CNTとの係合(または噛み合わせ、engagement)または組み合わせ(または結合、interlock)によって安定化され得る。従って、均一に、および好ましくは等方的に、分散したCNTと組み合う小さい金属結晶のために、生じることが観察されるこの新しい効果は、本明細書では、「ナノ安定化(nano-stabilization)」または、「ナノ固定化(nano-fixation)」と称される。ナノ安定化の更なる様態は、CNTが金属結晶の粒成長を抑制することである。
【0012】
ナノ安定化は、当然、ミクロスケール(または、むしろナノスケール)の効果である一方で、中間物として複合材料を製造し、これまでにないマクロスケールの機械的特性を有する、それより成る完成した結合手段を更に製造することができる。第1に、複合材料は、純金属成分の機械的強度よりも遥かに高い機械的強度を有するであろう。更なる驚くべき技術的な効果は、複合材料およびそれより作製される結合手段の向上した高温安定性である。例えば、CNTによるナノ結晶のナノ安定化(nano-stabilization)に起因して、転位密度およびそれに関連して増加した硬度は、いくつかの金属相の融点に近い温度で維持できることが発見されている。いくつかの金属相の融点に近い温度での熱間加工法または熱間押出し法によって、複合材料の機械的強度および硬度を維持しながら、結合手段を製造できることをこのことは意味している。例えば、金属がアルミニウムまたはアルミニウム合金である場合、熱間加工は、それを製造する方法としては一般的でないと当業者は認識するであろう。なぜなら、通常、アルミニウムの機械的特性を大幅に損なうであろうからである。しかしながら、上述のナノ安定化に起因して、増加したヤング率および硬度は、熱間加工下でさえ、維持されるであろう。同じように、軽金属が通常、高温安定性の欠如に起因して用いることができない、エンジンまたはタービンのような高温での用途に対して、原材料としてのナノ安定化した複合材料により形成された完成した結合手段が用いられ得る。
【0013】
本願発明のいくつかの実施形態では、ナノ粒子はCNTによって互いに部分的に分離されるだけでなく、いくつかのCNTも、また、結晶中に含まれるか、または埋め込まれる(または組み込まれる、embedded)。これは、結晶から「髪の毛(hair)」のように突き出たCNTとして考えることができる。これらの埋め込まれたCNTは、粒成長および内部緩和を防ぐ、すなわち、複合材料を圧縮する際に圧力および/または熱の形態でエネルギーが与えられる場合に転位密度の減少を防ぐ点において重要な役割を果たし、かつ圧縮(compact)した材料の熱安定性を保証すると考えられている。以下に記載する種類のメカニカルアロイング法を用いて、埋め込まれたCNTを有する、100nm以下のサイズの結晶を作製できる。いくらかの例では、CNTの直径によって、100nmと200nmの間の範囲のサイズの結晶にCNTを埋め込むことがより容易であろう。とりわけ、埋め込まれたCNTのための付加的な安定化効果により、ナノ安定化は、また、100nmと200nmとの間のサイズの結晶にとっても非常に効果的であることが見出されている。
【0014】
結合手段の金属成分としてのアルミニウムに関して、本願発明は、Al合金が目下のところ直面している多数の問題を回避できる。欧州規格EN573−3/4に従う、亜鉛を添加されたAl7xxxまたはLiを添加されたAl8xxxのような高強度アルミニウム合金が知られているがしかし、不幸にも、これらの合金は、陽極酸化によってコーティングするのが難しいことが証明されている。また、異なるAl合金が組み合わされる場合、用いられる合金の異なる電気化学的電位に起因して、接触領域で腐食が起こる場合がある。一方で、Al1xxx系、Al3xxx系およびAl5xxx系のような固溶強化に基づくAl合金は陽極酸化によってコーティングできるがしかし、比較的低い機械的特性および低い温度安定性を有し、冷間加工によってかなり限られた程度、硬化できるのみである
【0015】
これと対照的に、結合手段の複合材料の金属成分として、純アルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられる場合、ナノ安定化効果に起因して、今日適用できる最高強度のアルミニウム合金に匹敵する、またはそれを上回る強度および硬度を有するアルミニウムベースの複合材料が提供でき、それは、また、ナノ安定化に起因して増加した高温強度も有し、かつ陽極酸化が可能である。高強度アルミニウム合金が、本願発明の複合材料の金属として用いられる場合、複合材料の強度はより更に上昇し得る。また、複合材料中のCNTの割合を適切に調節することによって、機械的特性は、所望の値に調節できる。それゆえ、同じ金属成分を有するが、異なるCNT濃度を有し、従って異なる機械的特性を有する材料が製造可能であり、それらは同じ電気化学的電位を有し、従って互いに結合される場合に腐食されにくいであろう。このことは、異なる機械的特性が要求される場合に異なる合金が用いられる必要があり、従って、異なる合金を接触させる場合に腐食がいつも問題となる従来技術と異なる。
【0016】
本願発明は、また、第1の部品と、第2の部品と、第1の部品と第2の部品とを結合する結合手段とを含む材料結合であって、前記第1および第2の部品の少なくとも1つが、金属または金属合金を含む。多くの状況では、結合手段は、それによって結合される第1および第2の部品と比較して、異なる機械的特性、とりわけ優れた機械的特性を有することが必要であろう。従来から、このことは、例えば結合される2つの部品の異なる熱膨張係数等を補うように、結合手段が第1および/または第2の部品の金属または金属合金と異なる、所望の機械的特性を有する金属または金属合金により作製される可能性があることを示唆している。しかしながら、第1の部品と第2の部品との間の化学電位と、結合手段の化学電位とが、概して異なるので、結合手段は、部品に対してガルバニック要素(galvanic element)として働き、従って電解質の存在下で接触腐食を生ずるであろう。
【0017】
対照的に、本願発明の結合手段の機械的特性は、ナノ粒子の含有量によって調節できるため、多くの場合、結合手段によって結合される部品と同じ金属成分を結合手段に用いることができ、さらに、異なる機械的特性を適切に得ることができる。このようにして、一方の第1および/または第2の部品と、他方の結合手段との間の接触腐食は確実に回避できる。
【0018】
実際には、第1および/または第2の部品と、結合手段との金属成分が同一である必要はないがしかし、実用的には、それぞれの化学電位は互いに50mVより小さい違いであり、好ましくは、25mVより小さい違いであることがしばしば十分であろう。
【0019】
要するに、本願発明の結合手段では、ナノ粒子の含有量は、用いられる金属の含有量よりもむしろ、所望の機械的特性を調整するために制御できるので、この付加的な自由度は、電気化学的な見地より結合される部品と互換性があり、さらに、ナノ粒子の含有量に起因して、結合される部品の機械的特性と大幅に異なる、所望の機械的特性を提供する結合手段を用いる材料結合を提供するように好都合的に用いられ得る。
【0020】
実際に、引張強度および硬さは、複合材料のCNT含有量によって、広範囲でおおよそ比例的に変えられることが見出されている。アルミニウムのような軽金属について、ビッカース硬さは、CNTの含有量とともに、おおよそ線形的に増加することが見出されている。約10.0重量%よりも多いCNT含有量において、複合材料は極めて硬く、かつ脆くなる。従って、所望の機械的特性に応じて、0.5重量%から10.0重量%までのCNT含有量が好ましいであろう。ナノ安定化の上述の利点、とりわけ高温安定性を有するとともに極めて高い強度の複合材料を作製できることから、とりわけ、2.0%から9.0%の範囲のCNT含有量が極めて有益である。
【0021】
上述したように、本願発明の1つの様態によれば、第1および第2の部品を結合する結合手段の機械的特性は、異なる金属成分を用いる必要なしに、しかし代わりにナノ粒子の含有量を変えることによってとりわけ適応できる。金属または金属合金と、ナノ粒子とを含む複合材料により作製できる第1および第2の部品であって、異なるナノ粒子含有量に起因して機械的特性が異なる第1および第2の部品自体にもまた、当然、同じ原理が適用できる。好ましい実施形態では、第1および第2の部品のナノ粒子の数値は、重量で(または重量値、numerical value by weight)、少なくとも10%異なり、好ましくは、前記数値よりも高く、少なくとも20%異なる。従って、ナノ粒子の重量パーセントが第1の部品で5%、第2の部品で4%である場合に、重量パーセントの数値は、前記数値よりも高く、20%異なるであろう。
【0022】
更に、一体部品の異なる領域間で、ナノ粒子の濃度が異なる、ナノ粒子によって強化された金属または金属合金の複合材料により作製された一体部品を提供することによって、1つの工程でさえこの概念が推奨される。例えば、その部品が板である場合、ナノ粒子の含有量は、板の第1の端部および第2の端部の間で、長さ方向または幅方向に沿って、単調に増加でき、このことは、板が、第1の端部に近い領域と比較して、第2の端部に近い領域では、増加した引張強度またはビッカース硬さを有することを意味するであろう。
【0023】
結合手段に関連して本明細書内で示された、同じ材料、同じ機械的特性および同じ製造方法は、更なる記載なしに、一体部品に対して同じように適用することに留意されたい。とりわけ、以下に記載されるであろう同じ種類の複合粉末材料、および同じ種類のその圧縮方法は、簡潔さのために明確な記載は除かれているが、一体部品に対して同じように適用できる。
【0024】
複合金属/CNT材料自体は、例えば米国特許公開公報第2007/0134496号、日本国特許公開公報第2007/154 246号、国際公開公報第2006/123 859号、国際公開公報第2008/052 642号、国際公開公報第2009/010
297号および日本国特許公開公報第2009/030 090号により示されている。それらの詳細な議論は、優先権主張出願PCT/EP2009/006 737号でなされ、同出願は参照により本明細書に組み入れられる。
【0025】
また、優先権主張出願PCT/EP2009/006 737号では、CNTの作製に関する従来技術の概要が示され、同出願は参照により同様に本明細書に組み入れられる。
【0026】
CNT強化金属ベースの結合手段が製造される場合、従来技術で生じる問題があり、それはCNTを取り扱う時に起りうる暴露(exposure)に関する。(例えば、Baron P. A. (2003) “Evaluation of Aerosol Release During the Handling of Unrefined SingleWalled Carbon Nanotube Material”、 NIOSH DART−02−191 Rev. 1.1 April 2003; Maynard A. D. et al. (2004)”Exposure To Carbon Nanotube Material: Aerosol Release During the Handling Of Unrefined Singlewalled Carbon Nanotube Material” 、Journal of Toxicology and Environmental Health、 Part A、 67:87−107; Han、 J. H. et al. (2008) `Monitoring Multiwalled Carbon Nanotube Expoture in Carbon Nanotube Research Facility‘、 Inhalation Toxicology、 20:8、 741−749を参照されたい。)
【0027】
好ましい実施形態によれば、簡単な取り扱いを保証するように、十分に大きい平均サイズを有する、交絡した(または絡まった、tangle)CNT凝集体の粉末の形態であるCNTを提供することによって、粉塵化(dustiness)の低い可能性に起因して、この問題を最小限にすることができる。ここで、好ましくは、CNT凝集体の少なくとも95%が100μmよりも大きいサイズの粒子を有する。好ましくは、CNT凝集体の平均直径は、0.05mmと5.0mmとの間、好ましくは0.1mmと2mmとの間、最も好ましくは0.2mmと1mmとの間である。
【0028】
従って、金属粉末とともに処理されるナノ粒子は、最小化された暴露の可能性のために容易に取り扱うことができる。凝集体が100μmよりも大きいために、ナノ粒子は、標準的なフィルターにより容易に捕集(filter)でき、欧州特許第15051号の要点であった呼吸性粉塵化(respirable dustiness)の低下が期待できる。更に、この大きいサイズの凝集体を含んで成る粉末は、CNT原材料の容易な取り扱いを可能にする注入性(pourability)と流動性(flowability)とを有する。
【0029】
ミリメートルスケールにおいて高度に交絡した凝集体の形態でCNTを提供しながら、ナノスケールにおいて均一にCNTを分散させることは困難かもしれないと、一見すると考えられるかもしれないが、金属およびCNT粒子の、繰り返しの、変形、破壊および溶接(welding)のプロセスであるメカニカルアロイングを用いて、複合材料全体に亘り、均一に、かつ等方的な、分散が実際に可能であることが本願発明者らによって確かめられている。実際に、好ましい実施形態を参照して以下に示すよう、大きいCNT凝集体の交絡構造および大きいCNT凝集体の使用は、高い運動エネルギーでのメカニカルアロイングにおいてCNTの統合性(または全体性、integrity)を維持するのに更に役立つ。
【0030】
更に、CNTの直径に対する長さの比(アスペクト比ともいう)は、好ましくは3よりも大きく、より好ましくは10よりも大きく、最も好ましくは30よりも大きい。また、CNTの高いアスペクト比は、金属結晶のナノ安定化を支援する。
【0031】
本願発明の好都合な実施形態では、CNTの少なくとも一部は、1以上の巻き取られた(またはロールアップ、rolled up)グラファイト層から成るスクロール(または巻き、scrolled)構造を有し、それぞれのグラファイト層が、2以上の重なり合ったグラフェン(graphene)層より成る。この種類のナノチューブは、本出願の優先日の後に公開されたドイツ特許公報第10 2007 044 031号に、最初に記載されている。この新種のCNT構造は、単一の巻き取られた(またはロールアップした)グラフェン層から成る「単一スクロール(single-scroll)」構造と区別するために「多重スクロール(multi-scroll)」構造と呼ばれる。従って、多重スクロールCNTと単一スクロールCNTとの関係は、単層円筒状(single-wall cylindrical)CNTと多層円筒状(multi-wall cylindrical)CNTとの関係と類似している。多重スクロールCNTは、らせん形状の断面を有し、通常、6から12のグラフェン層をそれぞれ有する2または3のグラファイト層を含む。
【0032】
多重スクロール型CNTは、上述のナノ安定化に極めて適していることが見出されている。その理由の1つは、多重スクロールCNTが、直線に沿って拡がらず、曲がったまたは縮れた、多重曲げ形状を有する傾向を有することであり、それは、また、高度に交絡したCNTの大きい凝集体を形成しやすい理由でもある。曲がった、折れたおよび交絡した構造を形成するこの傾向は、結晶と組み合わせて結晶を安定化させる3次元ネットワークの形成を容易にしている。
【0033】
多重スクロール構造がナノ安定化に非常に適している更なる理由は、チューブが開いた本のページのように曲がる場合に、それぞれの層が扇状に広がる傾向を有することであると考えられており、従って結晶と組み合わせるために、凹凸のある(または粗面、rough)構造を形成し、また、それは欠陥の安定化のメカニズムの1つであると考えられている。
【0034】
更に、多重スクロールCNTのそれぞれの、グラフェン層およびグラファイト層は、CNTの中央から外縁まで如何なる段差(またはずれ、gap)なく、連続した形状(または形態、topology)のようである。このことは、また、更なる(または他の、further)材料の、チューブ骨格へのより優れた、かつより早いインターカレーション(または挿入、intercalation)を可能にできる。なぜなら、Carbon34、1996、1301−03に示される単一スクロールCNT、またはScience263、1994、1744−47に示されるオニオン型構造を有するCNTと比較して、より多くの開いた端部(またはエッジ、edge)が、インターカレートのための入口を形成するのに利用可能であるからである。
【0035】
好ましい実施形態では、ナノ粒子の少なくとも一部は、メカニカルアロイングの前に機能化、とりわけ凹凸化(または粗面化、roughen)される。特定の実施形態を参照して以下に説明されるように、ナノ粒子が多層CNTまたは、多重スクロールCNTにより形成される場合、CNTに5.0MPa以上、好ましくは7.8MPa以上のような高圧を付与し、少なくともいくらかのCNTの、少なくとも最外層を破壊させることにより凹凸化が実施されてよい。ナノ粒子の凹凸化に起因して、金属結晶との組み合わせ効果、従ってナノ安定化は更に向上する。
【0036】
好ましい実施形態では、複合材料の平均ビッカース硬さを十分に増加させ、元の(または原料の、original)金属のビッカース硬さよりも40%以上、好ましくは80%以上、高くするよう、ナノ粒子によって、結晶の転位密度を増加させ、かつ安定化させることを目的として、金属粒子およびナノ粒子の処理が実施される。
【0037】
また、その処理は、転位を安定化させるように、すなわち、転位の移動を抑制し、かつ粒成長を十分に抑制するように実施され、その結果、複合粉末を圧縮することによって形成される結合手段のビッカース硬さが、元の金属のビッカース硬さよりも高く、好ましくは、複合粉末のビッカース硬さの80%よりも高くなる。
【0038】
高転位密度は、好ましくは、ボールミルのボールによる多数の高い運動エネルギーの衝突をもたらすことによって生じる。好ましくは、ボールミル内では、ボールは、少なくとも速度8.0m/秒、好適には少なくとも速度11.0m/秒まで加速される。ボールは、せん断力、摩擦および衝突力により、処理した材料と相互作用するがしかし、塑性変形により材料に移される、全機械的エネルギーに対する衝突の相対的な寄与は、ボールの運動エネルギーの増加とともに増加する。従って、高速のボールは、高確率の運動エネルギーの衝突をもたらし、それは、また、結晶内部に高転位密度を生じさせるのに好ましい。
【0039】
好ましくは、ボールミルのミルチャンバー(milling chamber)が固定され、かつボールが回転要素の回転動作によって加速される。この構成は、十分な回転数で回転要素を駆動させることによって、ボールを上述の速度である8.0m/秒、11.0m/秒またはそれ以上まで容易に、かつ効率的に、加速させ、その結果、回転要素の先端が上述の速度で動く。このことは、例えば、ボールの最大速度が通常たったの5m/秒である、回転ドラムまたは遊泳ボールミルを有する、通常のボールミルとは異なる。また、固定されたミルチャンバーと、駆動する回転要素とを備える設計は、容易に拡大縮小でき、それは、研究室タイプのミルから、産業スケールで高い処理能力のメカニカルアロイング用ミルまで、大きく異なるサイズのボールミルに同じ設計を用いることができることを意味している。
【0040】
好ましくは、回転要素の軸は水平に設置され、その結果、ボールおよび処理した材料の両方への重力の影響は、最小限に低減される。
【0041】
好ましい実施形態では、ボールは3.0mmから8.0mmの小さい直径、好ましくは、4.0から6.0mmの小さい直径を有する。この小さいボール直径では、ボール間の接触領域は、ほぼ点形状であり、従って非常に高い変形圧力をもたらし、そして、金属の高転位密度の形成を容易にする。
【0042】
ボールの好ましい材料は、鋼、ZiOまたはイットリア安定化ZiOである。
【0043】

【0044】
高い運動エネルギーのミル粉砕は、金属結晶の転位密度を増加させることに関して好都合であるがしかし、高い運動エネルギーは、実際には2つの深刻な問題を生ずる。第1の問題は、多くの金属が、それらの延性のためにボール、チャンバーの壁または回転要素に付着しやすく、従ってそれ以上処理されにくいことであろう。このことは、アルミニウムのような軽金属にとって特に当てはまる。その結果として、完全に処理されない材料の部分は、ナノ安定化したCNT金属複合材料の所望の性質を有さない場合があり、それにより形成される製品の品質は、局所的に不完全である場合があり、完成した物品の破壊または破損をもたらすであろう。従って、全ての材料が完全に、かつ均一に処理されることは、非常に重要である。
【0045】
第2の問題は、金属結晶との組み合わせ効果、すなわちナノ安定化が、もはや生じない程度にまで、CNTが摩滅する(または擦り切れる、wear out)、または破壊されるであろう高い運動エネルギーで処理する場合に直面した。
【0046】
これらの問題を克服するために、本願発明の好ましい実施形態では、金属およびCNTの処理は、第1および第2の段階を含み、第1の処理段階では、金属のほとんどまたは全てが処理され、第2の段階では、CNTが加えられ、金属およびCNTが同時に処理される。従って、第1の段階では、本ミル粉砕段階において、CNTを摩滅しないように、CNTが加えられる前に、金属が高い運動エネルギーで100nm以下の結晶サイズに粉砕される。従って、第1の段階は、1nmから100nmの範囲の平均サイズを有する金属結晶を生成するのに適した時間(1つの実施形態では、20分から60分であると見出された)実施される。それから、第2の段階は、結晶のナノ構造の安定化をもたらすのに十分な時間(通常、5分から30分を要するのみでよい)実施される。第2の段階のこの短い時間は、CNTおよび金属のメカニカルアロイングを実施し、それによって、CNTを過度に破壊しない間に、CNTを金属マトリックス全体に亘って均一に分散させるのに十分である。
【0047】
第1の段階の際に、金属の付着を防ぐよう、金属成分の付着を防ぐミル粉砕剤(milling agent)として働き得るいくらかのCNTを、第1の段階の際に、すでに加えることが非常に効果的であることが証明されている。CNTのこの部分は、完全に粉砕され、如何なる顕著なナノ安定化効果も有さないであろうから、犠牲となるであろう。従って、第1の段階で加えられる、CNTのその部分は、金属成分の付着を防ぐ限り、できる限り少なく、維持されるであろう。
【0048】
更なる好ましい実施形態では、処理の際に、回転要素の回転速度は、周期的に、上昇かつ降下する。この方法は、例えば、ドイツ特許公報第196 35 500号に開示され、「周期運転(または循環運転、cycle operation)」と呼ばれる。回転要素の、高回転速度および低回転速度による交互の周期で処理を実施することによって、処理の際に、材料の付着を非常に効果的に防止できることが見出されている。例えば、上述の、参照した特許によってそれ自体が知られている循環運転は、金属およびCNTのメカニカルアロイングの特定の利用に非常に有益であることが証明されている。
【0049】
結合手段を製造する方法は、また、原材料として、CNT粉末の形態におけるCNTの製造も含んでよい。当該方法は、アセチレン、メタン、エタン、エチレン、ブタン、ブテン、ブタジエンおよびベンゼンから成るグループの1つ以上を炭素供与体(または炭素ドナー、carbon donor)として用いる触媒炭素蒸着(または触媒炭素気相成長、catalytic carbon vapor deposition)によってCNTの粉末を作製する工程を含んでよい。好ましくは、該触媒は、Fe、Co、Mn、MoおよびNiから成るグループの2元素以上を含む。これらの触媒を用いて、CNTは、産業スケールでの製造を可能にする、高収率で形成できることが見出されている。好ましくは、CNT粉末を製造する工程は、500℃から1000℃で、2:3から3:2の範囲のモル比のMnとCoを含む触媒を用いた、C−C−炭化水素の触媒による分解の工程を含む。触媒、温度および炭素供与体のこの選択により、CNTが高収率で生産され、とりわけ、大きな凝集体の形状で、および、好適なマルチスクロールの形態を有して、生産される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、高品質のCNTの製造装置(または配置、setup)を示す概略図である。
【図2】図2は、凝集した一次触媒粒子からのCNT凝集体の生成を概略的に示す図である。
【図3】図3は、CNT凝集体のSEM写真である。
【図4】図4は、高度に交絡したCNTを示す、図3のCNT凝集体の拡大図である。
【図5】図5は、図1に示される製造装置により得られたCNT凝集体のサイズ分布を示すグラフである。
【図6a】図6aは、機能化前のCNT凝集体のSEM像である。
【図6b】図6bは、機能化後の同じCNT凝集体のSEM像である。
【図6c】図6cは、機能化後の単一のCNTを示すTEM像である。
【図7】図7は、液体合金の不活性雰囲気中での噴霧化のための装置を示す概略図である。
【図8a】図8aおよび図8bは、高エネルギーミル粉砕のために設計されたボールミルの側断面図および端断面図をそれぞれ示す。
【図8b】図8aおよび図8bは、高エネルギーミル粉砕のために設計されたボールミルの側断面図および端断面図をそれぞれ示す。
【図9】図9は、高エネルギーミル粉砕によるメカニカルアロイングのメカニズムを示す概念図である。
【図10】図10は、周期運転モード(mode)において、時間対HEMローターの回転数を示すグラフである。
【図11a】図11aは、複合粒子を通る断面の本願発明の複合材料のナノ構造を示す。
【図11b】図11bは、図11aと比較して、国際公開公報第2008/052642号および国際公開公報第2009/010296号から知られる複合材料の同様の断面図を示す。
【図12】図12は、CNTが金属結晶中に埋め込まれる、本願発明の実施形態に係る複合材料のSEM像を示す。
【図13】図13は、本願発明の実施形態に係る結合手段を用いた材料結合の概略図を示す。
【図14】図14は、本願発明の実施形態に係る結合手段によって結合される、ナノ粒子の異なる濃度によって強化された金属の複合材料により形成される4つの部品間の材料結合の概略図を示す。
【図15】図15は、ナノ粒子の濃度が一体部品の異なる領域の間で異なる、ナノ粒子によって強化された金属により作製される一体部品の概略図を示す。
【0051】
本願発明の原理を理解することを促進する目的で、添付図面に示された好ましい実施形態に対して、以後言及がなされ、特殊な用語が、それを示すために用いられるであろう。それにもかかわらず、発明の技術的範囲の制限は、それによって、意図されるものではなく、示された結合手段のこのような変形例と更なる改良、方法および使用ならびにここに示される本願発明の原理のこのような更なる適用は、本願発明が係る当業者に対して、通常、現在または将来に起こるであろうと理解されるであろう。
【0052】
以下において、本願発明の実施形態に係る結合手段を製造するための処理戦略(processing strategy)が要約されている。これに関して、構成材料を製造する方法および構成材料から複合材料を製造する方法が説明されるであろう。また、結合手段またはそのための空間(またはブランク、blank)を形成するように、複合材料を圧縮する別の方法も示されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0053】
好ましい実施形態では、処理戦略は以下の工程を含む。
1.)高品質のCNTの製造
2.)CNTの機能化
3.)不活性雰囲気中への液体金属または液体合金の噴霧
4.)金属粉末の高エネルギーミル粉砕
5.)メカニカルアロイングによる金属中でのCNTの機械的分散
6.)結合手段またはその空間を形成するための金属CNTの複合粉末の圧縮
7.)圧縮した結合手段または空間の更なる処理
【0054】
上述の工程の好ましい実施形態は以下に詳細に記載される。従って、結合手段を用いる材料結合もまた、以下に示されるであろう。
【0055】
1.高品質のCNTの製造
図1に、流動床反応器(または流動層反応器、fluidized bed reactor)12において、触媒化学蒸着(または触媒化学気相成長、catalytic CVD)によって高品質のCNTを作製するための装置(setup)10が示されている。反応器12は、加熱手段14により加熱される。反応器12は、不活性ガスおよび反応ガスを導入するための下部入口16と、窒素、不活性ガスおよび反応器12からの副産物を排出するための上部排出開口18と、触媒を導入するための触媒入口20と、反応器12で形成されるCNTを排出するためのCNT排出開口22とを有する。
【0056】
好ましい実施形態では、多重スクロール型CNTは、ドイツ特許公開公報第10 2007 044 031号により知られる方法によって作製される。同出願は、本出願の優先日の後に公開されており、その全体の内容は、本明細書によって、参照により本出願に組み込まれる。
【0057】
まず、反応器12が加熱手段14によって温度650℃まで加熱される間に、不活性ガスとしての窒素が、下部入口16内に導入される。
【0058】
次に、触媒が、触媒入口20を通して導入される。ここで、触媒は、好ましくは、CoおよびMnのモル比が互いに2:3と3:2との間である、CoおよびMnベースの遷移金属の触媒である。
【0059】
次に、炭素供与体(carbon donor)および不活性ガスとしての炭化水素ガスを含む、反応ガスが、下部入口16に導入される。ここで、炭化水素ガスは、好ましくは、C−C−炭化水素を含む。反応ガスと不活性ガスとの比は、約9:1であってよい。
【0060】
CNTの形態で蒸着した炭素は、CNT排出開口22にて排出される。
【0061】
触媒材料は、通常、30μmから100μmのサイズにまで粉砕される。図2に概略的に示されるように、多数の一次(または初期、primary)触媒粒子は、凝集してもよく、CVDによって、炭素が触媒粒子の表面上に堆積し、その結果、CNTが成長する。本願発明の好ましい製造方法によれば、図2の右半分に概略的に示されるように、CNTは、成長して、長く、交絡した繊維の凝集体を形成する。触媒の少なくとも一部は、CNT凝集体内に留まる(または残存する、remain)であろう。しかしながら、CNTの、非常に速く、かつ効率的な成長に起因して、凝集体の触媒の含有量は、無視できるようになるであろう。なぜなら、凝集体の炭素の含有量は、最終的には、95%よりも高い場合があり、いくらかの例では99%よりも高くさえある場合があるからである。
【0062】
図3に、その結果形成されたCNT凝集体のSEM像が示されている。該凝集体は、1mmよりも大きい直径を有しており、「ナノ標準(またはナノ基準、nano-standards)」によれば非常に大きい。図4では、直径に対する大きな長さの比を有する、多数の、高度に交絡したCNTを見ることができる、CNT凝集体の拡大像が示される。図4から判るように、該CNTは、個々のCNTが、多数の、その間の(inbetween)屈曲および曲がりとともに、比較的短い直線部分のみを有するため、「巻いている(またはカールした、curly)」または「縮れた(kinky)」形状を有する。この巻きやすさ(または巻く傾向、curliness)または縮れやすさ(または縮れる傾向、kinkiness)は、本明細書内で、「多重スクロール構造(multi-scroll structure)」と呼ばれるCNTの特有の構造に関係すると考えられている。多重スクロール構造は、それぞれのグラファイト層が、2以上の重なり合ったグラフェン層から成る、1以上の巻き取られたグラファイト層から成る構造である。この構造は、本出願の優先日の後に公開されたドイツ特許公開公報第10 2007 044 031号で最初に報告されている。
【0063】
以下の表1に、図1の装置で製造された高純度の多重スクロールCNTの特徴的な特性が要約されている。
【表1】

【0064】
CNTは、95重量%よりも大きい、非常に高い炭素の純度を有することに留意されたい。また、平均の外径は、長さが1μmから10μmにおいて、13nmのみである、すなわち、CNTは非常に高いアスペクト比を有する。更なる優れた特性は、130kg/mから150kg/mの範囲である高い嵩密度である。この高い嵩密度は、CNT凝集体の粉末の取り扱いを大幅に容易にし、容易な注入(pouring)およびその効率的な貯蔵(storing)を可能にする。このことは、産業スケールで結合手段を製造するための複合材料に適用される場合、非常に重要である。
【0065】
表1の特性を有するCNT凝集体は、大量処理して、急速に、かつ効率的に、製造できる。今日でさえ、本出願人は、すでに、この種のCNT凝集体を年60トン製造する能力を有している。
【0066】
表2に、より低い生産能力ではあるが、本出願人が、また、製造できる非常に高い純度のCNT凝集体に関する上記と同じ特性が、要約されている。
【表2】

【0067】
図5は、CNT凝集体の粒子サイズの分布のグラフを示す。横軸は、μmで粒子サイズを表し、縦軸は、累積の容量(または累積の容積測定の含有量、cumulative volumetric content)を表す。図5のグラフから判るように、CNT凝集体のほとんど全ては、100μmよりも大きいサイズを有する。このことは、実際には、全てのCNT凝集体が、標準フィルターによって捕集(filter)できることを意味する。これらのCNT凝集体は、欧州特許第15051号によれば、呼吸性粉塵化の程度が低い。従って、本願発明の好ましい実施形態に用いられる極めて大きなCNT凝集体は、研究室から産業スケールに、本製造技術を移転する場合、最も重要でもある、CNTの安全かつ容易な取り扱いを可能にする。また、大きなCNT凝集体のサイズに起因して、CNT粉末は、その取り扱いを大幅に容易にもする、優れた注入性(pourabilty)を有する。従って、CNT凝集体は、ナノスケールの材料の特徴とマクロスケールの取り扱い性とを組み合わせることを可能にする。
【0068】
2.CNTの機能化
好ましい実施形態では、CNTは、メカニカルアロイングを実施する前に機能化される。機能化の目的は、複合材料の金属結晶のナノ安定化が向上できるよう、CNTを処理することである。好ましい実施形態では、この機能化は、CNTの少なくともいくらかの表面を凹凸化することによって実現される。
【0069】
ここで、図6aに示されるCNT凝集体に、100kg/cm(9.8MPa)の高圧が付与される。この圧力を付与する際に、図6bに示すように、その凝集体構造自体は、維持される、すなわち、機能化されたCNTは、呼吸性粉塵化の低下と容易な取り扱いとに関する上述の利点を保持する凝集体の形態で、まだ存在する。また、CNTが同じ内部の構造を維持する一方で、1または複数の最外層が破裂するか、または破壊し、それによって、図6cに示すように、凹凸面を生ずることが見出されている。凹凸面により、CNTと結晶との組み合わせ効果が向上し、そして、ナノ安定化効果を向上させる。
【0070】
3.噴霧による金属粉末の生成
図7に、噴霧により金属粉末を生成するための装置24が示されている。装置24は、複合材料の構成要素として用いられる金属または金属の合金が、その中に溶融している、加熱手段を有する容器(または管、vessel)を含む。矢印32によって示されて、液体金属または液体合金は、チャンバー30内に注がれ、アルゴン噴射(driving)ガスによって、ノズルアセンブリ34を通って不活性ガスを含むチャンバー36に送り込まれる。チャンバー36では、ノズルアセンブリ34から出ていく液体金属の噴霧は、アルゴン急冷ガス38によって急冷され、その結果、金属の液滴が、急速に凝固し、チャンバー36の床に堆積する金属粉末40を形成する。この粉末は、本願発明の実施形態に係る結合手段を製造するために用いられる複合材料の金属成分を形成する。
【0071】
4.金属粉末の高エネルギーミル粉砕および金属中でのCNTの機械的分散
1節(またはセクション1)で示されるように製造され、かつ2節で示されるように機能化されたCNTと、3節で示されるように製造された金属の粉末とから複合材料を形成するように、CNTは、金属内部に分散される必要がある。好ましい実施形態では、このことは、図8aの側断面図および図8bの端断面図に示される、高エネルギーミル42で実施されるメカニカルアロイングによって実現される。高エネルギーミル42は、多数の回転アーム48を有する回転要素46が、回転要素46の回転軸が水平方向に延在するように配置されたミルチャンバー44を含む。図8の概略図では示されないが、回転要素46は、回転数が毎分1500回転以下、もしくはそれ以上にまで駆動するように、駆動手段に接続される。とりわけ、半径方向に、外側に位置するそれぞれのアーム48の先端が、少なくとも8.0m/秒、好ましくは11.0m/秒よりも大きい速度を、それ自体が固定されたままであるミルチャンバー44に対して、得るように、回転要素46が回転速度で駆動することができる。図8に示されないが、多数のボールは、ミル部材として、ミルチャンバー44内に備えられる。より詳細に以下に記載される2つのボール50の拡大図が、図9に示される。本実施例では、ボールは、鋼により作製され、直径5.1mmを有する。別の実施形態では、ボール50は、ZiOまたはイットリア安定化前記ZiOより作製することができる。
【0072】

【0073】
メカニカルアロイングの原理は、図9を参照して説明される。メカニカルアロイングは、粉末粒子52が、粉砕ボール(grinding ball)50の高いエネルギーの衝突により繰り返される、変形、破砕および溶接により処理されるプロセスである。メカニカルアロイングの過程で、CNT凝集体は分解され、金属粉末の粒子は砕け、このプロセスを経て、単一のCNTが、金属マトリックス内部に分散する。ボールの運動エネルギーは、速度に2乗して(または2次的に、quadratically)依存するため、ボールを10m/秒以上の非常に高い速度にまで加速させることが、主要な目的である。本願発明者らは、高速のストロボのシネマトポグラフィー(high speed stroboscopic cinematopography)を用いて、ボールの運動を分析しており、ボールの最大相対速度が回転アーム48の先端の最大速度におおよそ一致することを確認できている。
【0074】
全ての種類のボールミルでは、処理される媒体に、衝突力、せん断力および摩擦力が付与されるがしかし、より高い運動エネルギーでは、衝突により移されるエネルギーの相対量は増加する。本願発明の構成において、処理される媒体に与えられる全ての機械加工からの、衝突の相対的な寄与は、可能な限り高いことが好ましい。この理由のために、図8に示される高エネルギーボールミル42は、到達できるボールの運動エネルギーが、より高いので、通常のドラム型ボールミル(drum-ball mill)、遊星ボールミルまたはアトライター(attritor)よりも好都合である。例えば、遊星ボールミルまたはアトライターにおいて、ボールの最大相対速度は、通常、5m/秒以下である。ボールがミルチャンバーの回転によって動くように設定されるドラム型ボールミルでは、ボールの最大速度は、ミルチャンバーの回転速度およびミルチャンバーのサイズの両方に依存するであろう。低回転速度では、ボールは、摩擦力とせん断力とが支配する、いわゆる「カスケードモード(cascade mode)」で動く。高回転数では、ボールの動きは、自由落下モード(mode)において、重力に起因してボールが加速する、いわゆる「カタラクトモード(cataract mode)」になり、従って、最大速度は、ボールミルの直径に依存するであろう。しかしながら、利用可能な最も大きなドラム型ボールミルでさえ、最大速度は、7m/秒を超えることは困難であろう。従って、図8に示されるような、固定されたミルチャンバー44と、駆動する回転要素46とを有するHEMの構成は好ましい。
【0075】

【0076】
高いエネルギーの衝突に起因する金属の第2の効果は、結晶の転位密度の増加に起因した加工硬化の効果である。転位が堆積して、互いに相互作用し、転位の動きを著しく遅らせるピンニング点または障害物として働く。このことは、また、材料の降伏強度σの増加およびそれに続く延性の減少をもたらす。
【0077】

【0078】
しかしながら、多くの金属、とりわけアルミニウムのような軽金属は、高エネルギーミル粉砕による処理を困難にする、極めて高い延性を有する。その高い延性のために、該金属は、ミルチャンバー44の内壁または回転要素46に付着しやすく、従って完全には粉砕されない場合がある。このような付着は、ステアリン酸等のミル粉砕助剤(aid)を用いることによって防止できる。本願と同じ発明者らによる国際公開公報第2009/010297号では、CNT自体は、金属の粉末の付着を防止するミル粉砕剤(agent)として働くことができることが説明されていた。しかしながら、金属粉末およびCNTが、同時に、十分なエネルギーで、かつ十分な時間、金属の結晶のサイズを100nm以下にまで減少させるよう、粉砕する場合に、CNTは、予想されるナノ安定化が大幅に損なわれる程度にまで損傷される傾向があろう。
【0079】
好ましい実施形態によれば、高エネルギーミル粉砕は、従って、2つの段階で実施される。第1の段階では、金属の粉末と、CNTの粉末のわずかな部分とが処理される。この第1の段階は、200nmより小さい平均サイズ、好ましくは100nmより小さい平均サイズを有する金属結晶を生成するのに適した時間、通常、20分間から60分間、実施される。この第1の段階では、金属の付着を防止することができるであろう最少量のCNTが添加される。このCNTはミル粉砕剤として犠牲になる、つまり、完成した複合材料において、重要なナノ安定化効果を有さないであろう。
【0080】
第2の段階では、残りのCNTが加えられ、CNTおよび金属のメカニカルアロイングが実施される。この段階では、図3および図6bに示されるようなミクロスケールの凝集体が、メカニカルアロイングによって、金属マトリックス中に分散する、単一のCNTに分解される必要がある。実験では、高エネルギーミル粉砕によって、CNT合金を分解することが、実際に、容易に可能であることが確認されており、このことは、他の分散方法では、達成するのが困難であろう。また、第2の段階の間に加えられた、金属マトリックス内部のCNTの統合性が、非常に良く、従ってナノ安定化の効果を可能にすることが観察されている。金属マトリックス中の交絡していないCNTの統合性に関して、大きいサイズの凝集体を用いることは、凝集体の内側のCNTが、外側のCNTによってある程度保護されているため、より好都合であると考えられる。
【0081】
更に、第1の段階では、回転要素46の回転速度は、図10のタイミングチャートに示されるように、好ましくは、周期的に上昇および降下する。図10から判るように、回転速度は、交互の周期(すなわち、4分間、毎分1500回転の高速サイクルおよび1分間、毎分800回転の低速サイクル)で制御される。回転速度の当該周期的な変調は、付着を妨げることが見出されている。このような周期運転は、ドイツ特許公報第196 35 500号にすでに開示され、本願発明の構成に、首尾よく適用されている。
【0082】
上述の処理によって、高転位密度と、200nmより小さい平均サイズ、好ましくは100nmより小さい平均サイズとを有する金属結晶が、均一に分布したCNTによって、少なくとも部分的に分離され、かつ、マクロに安定化されている粉末の複合材料を得ることができる。図11aは、本願発明の実施形態に係る複合材料粒子の切断面を示す。図11aでは、金属成分は、アルミニウムであり、CNTは、上述の1節に示される処理によって得られた多重スクロール型である。図11aから判るように、複合材料は、CNTの網目構造に位置する、ナノスケールの金属結晶の等方的な分布により特徴付けられる。これと対照的に、図11bに示される国際公開公報第2008/052642号の複合材料は、不等方的な機械的特性をもたらす不等方的な層構造を有している。
【0083】

【0084】
好ましい実施形態では、複合粉末は、不動態化容器(または不動態化管、passivation vessel)内で(図示せず)不動態化処理が行われる。この不動態化において、完成した複合粉末は、ミルチャンバー42から排出され、さらに、真空中または不活性ガス雰囲気下で、不動態化容器に排出される。不動態化容器内で、複合材料は、ゆっくりと攪拌され、複合粉末をゆっくりと酸化させるよう、酸素が徐々に加えられる。この不動態化がゆっくりと実施されるほど、複合粉末の全酸素取り込み総量は、低下する。
【0085】
粉末の不動態化は、また、産業スケールにおける、製品または半完成品の製造用の原材料としての粉末の取り扱いを容易にする。
【0086】
5.複合金属粉末の圧縮
そして、複合材料の粉末は、粉末冶金法によって、半完成した、または完成した結合手段を形成するための原材料として用いられる。とりわけ、本願発明の粉末材料は冷間等方圧加工(CIP)および熱間等方圧加工(HIP)によって、非常に好都合的に、更に処理できる。また、複合材料は、いくつかの金属相の融点に近い高温における、熱間加工、粉末ミル粉砕または粉末押出しによって更に処理できる。CNTのナノ安定化効果に起因して、複合材料が粉末押出しまたは流動成形(または流れ押出し、flow pressing)によって処理できるほど、複合材料の粘性が高温でさえ増加することが観察されている。また、該粉末は連続した粉末圧延によって直接処理することもできる。
【0087】
圧縮した、完成品または半完成品において、粉末粒子の優れた機械的特性が維持できることは、本願発明の複合材料の優れた利点である。例えば、多重スクロールCNTとAl5xxxとを用いる場合に、上述の4節に示されるようなメカニカルアロイング法を用いることによって、390HVよりも大きいビッカース硬さを有する複合材料が得られた。とりわけ、粉末材料を完成した結合手段に対して圧縮した後でさえ、ビッカース硬さはこの値の80%よりも大きい値に維持される。すなわち、ナノ構造を安定化させることに起因して、それぞれの複合粉末粒子の硬度は、圧縮した物品に大部分引き継ぐ(transfer)ことができる。本願発明以前に、圧縮した物品のこのような硬度は、不可能であった。
【0088】
6.材料結合
図13は、第1の部品54と、第2の部品56と、第1の部品と第2の部品とを結合する結合手段58とを含む材料結合52を概略的に示す。例えば、第1の部品54はシリンダーブロックの部分、第2の部品56はシリンダーヘッドの部分であり、結合手段58によって互いに取り付けられる。このような用途では、理想の結合手段は、高い機械的強度、高い熱安定性および少ない重量を有するであろう。不幸にも、上述のように、従来技術の、高強度アルミニウム合金のような軽金属の合金は、少ない重量と高い機械的強度とを有するがしかし、熱安定性を提供できないであろう。また、このような高強度アルミニウム合金から結合手段を製造することは、上述の理由のために、困難であり、かつ高コストである。加えて、所望の機械的特性を有する、適切な金属の合金が見つけられる場合でさえ、結合手段と、第1および第2の部品のそれぞれとの間の電気化学的電位が異なり、適切な電解質の存在下で接触腐食を引き起こすであろう更なる問題がある。
【0089】
しかしながら、図13の材料結合52では、用いられる金属の部分によってよりもむしろ、ナノ粒子の含有量、とりわけCNTの含有量によって、結合手段58の機械的特性を制御できる、本願発明の実施形態に係る結合手段58が用いられる。従って、材料結合52は、第1および第2の部品54、56のそれぞれと、結合手段58とに同じ金属成分を用いることによって作製でき、結合手段58の所望の機械的特性が、上述のナノ安定化効果に基づき、ナノ粒子の含有量によって提供され、その結果、第1および第2の部品54、56と結合手段58との間のガルバニック電位差(galvanic potential difference)が存在しない。このようにして、接触腐食は、結合手段58の機械的特性を損なわずに、確実に防止できる。
【0090】
実際には、意図された使用の際に、接触腐食を防ぐように、電気化学的電位の差が、十分に低い限り、材料結合52に用いられる全ての金属成分は、同一である必要はない。多くの場合、接触腐食は、化学電位の差が50mVよりも小さい、好ましくは25mVよりも小さい時に回避できる。
【0091】
更に、第1の部品54がエンジンブロックの一部であり、第2の部品56がシリンダーヘッドの一部であろう場合、それらを形成するのに適した軽金属材料は、Al5xxxであろう。この場合、結合手段58、すなわち、結合するねじは、2重量%から6重量%のCNTの一部によるが、同じ金属成分を含む複合材料によって作製することができ、所望の引張強度を提供するであろう。さらに、上述のナノ安定化効果に起因して、結合手段58は、また、十分な熱安定性も有し、その結果、機械的特性は、高温環境下における長期の作動間でさえ、維持されるであろう。実際に、増加した熱安定性は、本願発明に係る結合手段を高温が生ずる、エンジン、タービンまたは他の用途に良く合うようにする。更に、材料結合において、本願発明の結合手段に有益な用途は、長軽量構造物、高性能なスポーツ用品、航空機製造(aviation)、航空宇宙技術および歩行補助道具である。
【0092】
図13を参照して示しているように、本願発明の構成において、結合手段の機械的特性は、用いられる金属成分よりもむしろ、ナノ粒子の含有量、とりわけCNTの含有量によって制御できる。この概念は、結合手段58に適用できるだけでなく、これによって接続される部品54および56にもまた適用できる。これを示すように、それぞれがナノ粒子により強化された金属の複合材料から成る4つの部品60a〜60dを示す図14の参照がなされる。図14に示す実施形態において、部品60a〜60dのそれぞれの金属または金属合金成分は同一であるがしかし、図14のドットの密度の違いにより概略的に示すように、ナノ粒子の濃度、とりわけCNTの濃度は部品間で異なると考えられる。また、隣り合う部品60a〜60dは、ナノ粒子によって強化された金属複合材料により作られる結合手段62により結合される。
【0093】
たとえ、部品60a〜60dのそれぞれと結合手段とに同じ金属成分が用いられても、これらの要素のそれぞれの機械的特性は、ナノ粒子の適切な含有量により制御できる。とりわけ、このことは、それぞれの部品60a〜60dにより形成される結合製品64が、その異なる領域で異なる機械的特性を有し得ることを意味する。例えば、部品60aによって構成される、結合製品64の最も左の部品のビッカース硬さおよび引張強度は、より高いナノ粒子の含有量に起因して、部品60dによって構成される最も右側の端部のビッカース硬さおよび引張強度よりも大きいであろう。このようにして、結合製品は、異なる領域で異なるナノ粒子の含有量を有する、従って異なる機械的特性を有する同じ金属により形成できる。この例示的な用途は、例えば、翼の材料の引張強度が胴体に近い方が翼の先端よりも高い場合、そのことが好ましいであろう、飛行機の翼である。また、同じ金属が、結合製品46およびその結合手段62の異なる領域で用いることができ、さらに、それぞれの部材60a〜60dと62とが、その機能をとりわけ構成できる機械的特性を有することは、実用上、非常に好都合である。同じ金属成分が用いられるために、とりわけ、異なる化学電位を有する金属または合金を組み合わす場合に概して起こり得る接触腐食の問題は、回避できる。
【0094】
部品60a〜60dのそれぞれおよび結合手段62全体に亘って同じ金属成分を用いることは、とりわけ魅力的であるがしかし、本実施形態はこの場合に制限されるものではない。実用的な目的のために、2つの接触する要素60a〜60d、62のそれぞれの電気化学的電位が、少なくとも50mVより小さい違いがあり、好ましくは25mVより小さい違いがあるように、金属成分が選択されるであろうかどうかが重要であろう。
【0095】
更に、図15に示すように、単一の一体製品(integral product)66の異なる領域でナノ粒子の含有量を局所的に変えることにより異なる機械的特性を実現できることに、同じ概念が1のみの工程で実施できる。一体部品66は、また、ナノ粒子によって強化された金属または金属合金より形成され、一体部品66の異なる領域で、ナノ粒子の濃度が異なる。とりわけ、ドットの密度で概略的に示すように、図15の一体部品66の左側の端部のナノ粒子の濃度は、右側の端部よりも高く、一体要素66の左側の端部でのより高い引張強度およびより高いビッカース硬さをもたらす。
【0096】
結合手段に個別に言及した、上述の、全ての材料、材料の組合せおよび製造方法は、図15の一体要素66を製造することに、同じように適用可能であることに留意されたい。とりわけ、ナノ安定化を与える同じ小さな結晶サイズは、一体要素66の材料に適用されてよく、好ましくは、同じ種類のCNTを用いてよい。また、複合粉末材料を製造すること、およびそれらを完成品の一体部品66に圧縮することに基づく同じ製造方法が適用されてよい。
【0097】
図15の例の個別の参照により、一体部品は、粉末押出しまたは粉末圧延によって非常に効率的に製造することができ、ナノ粒子の複合材料が、圧延または押出の際に変化することに留意されたい。このことは、例えば、異なるナノ粒子の含有量を有する複合粉末材料(場合によっては、ナノ粒子を全く含まない粉末)を2種類以上作ること、および圧延または押出により複合粉末材料を適切に混合することによって実現できる。
【0098】
更に、図15に示す一体部品66は、また、所望のように、異なる部品で、異なるナノ粒子の濃度が存在するように配置されている、粉末材料の、熱間等方圧加工、冷間等方圧加工、粉末押出しまたは焼結によっても製造できる。
【0099】
好ましい例示的な実施形態は、添付図面および本明細書において、詳細に示され、および規定されているがしかし、これらは、純粋に例と見なされるべきであり、本願発明を制限するものとして見なされるべきではない。好ましい例示的な実施形態のみが示され、および規定されていること、ならびに全ての変形例と改良が、添付の請求項の保護の範囲内にあり、現在または将来において、保護されるべきであることに留意されたい。










































【符号の説明】
【0100】
10 触媒化学蒸着装置
12 流動床反応器
14 加熱手段
16 下部入口
18 上部排出開口
20 触媒入口
22 排出開口
24 噴霧による金属粉末の生成装置
26 容器
28 加熱手段
30 チャンバー
32 アルゴン噴射ガス
34 ノズルアセンブリ
36 チャンバー
38 アルゴン急冷ガス
40 金属粉末
42 高エネルギーミル
44 ミルチャンバー
46 回転要素
48 回転要素46のアーム
50 ミル粉砕ボール
52 材料結合
54 第1の部品
56 第2の部品
58 結合手段
60a−60d 複合材料により作られた部品
62 結合手段
64 結合製品
66 一体部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属、とりわけAl、Mg、CuもしくはTiまたはそれらを1つ以上含む合金より作られる結合手段(58)であって、
該結合手段(58)が、ナノ粒子、とりわけCNTによって強化された前記金属の複合材料より作られ、前記強化された金属が、前記ナノ粒子によって少なくとも部分的に分離された金属結晶を含む微細構造を有することを特徴とする結合手段(58)。
【請求項2】
前記結合手段(58)が、ねじ、ブラケット、丁番またはリベットの1つであることを特徴とする請求項1に記載の結合手段(58)。
【請求項3】
複合材料が、1nmから100nmの範囲のサイズ、好ましくは10nmから100nmの範囲のサイズ、または100nmよりも大きくかつ200nm以下の範囲のサイズを有する金属結晶を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の結合手段(58)。
【請求項4】
ナノ粒子が、また、前記結晶の少なくともいくつかにも含まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の結合手段(58)。
【請求項5】
前記複合材料の前記CNT含有量が、0.5重量%から10.0重量%の範囲、好ましくは2.0重量%から9.0重量%の範囲、最も好ましくは3.0重量%から6.0重量%の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の結合手段(58)。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、CNTによって形成され、CNTの少なくとも一部が、1以上の巻き取られたグラファイト層から成るスクロール構造を有し、それぞれのグラファイト層が、2以上の重なり合ったグラフェン層から成ることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の結合手段(58)。
【請求項7】
前記ナノ粒子の少なくとも一部が機能化される、とりわけ、それらの外面が凹凸化されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の結合手段(58)。
【請求項8】
前記複合材料のビッカース硬さが、元の金属のビッカース硬さよりも40%以上高い、好ましくは80%以上高いことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の結合手段(58)。
【請求項9】
前記金属が、Al合金によって形成され、かつ前記複合材料のビッカース硬さが250HVよりも高い、好ましくは300HVよりも高いことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の結合手段(58)。
【請求項10】
第1の部品(54)と、第2の部品(56)と、前記第1および前記第2の部品(54、56)を結合する結合手段(58)とを含む材料結合(52)であって、
前記第1および第2の部品(54、56)の少なくとも1つが、金属または金属合金を含み、
前記結合手段(58)が、ナノ粒子によって強化された金属の複合材料により作られ、
前記第1および前記第2の部品(54、56)の前記少なくとも1つの前記金属または前記金属合金が、前記結合手段(58)の前記金属成分の金属または金属合金と同じである、または、前記結合手段(58)の前記金属成分の金属または金属合金から、50mVよりも小さい違い、好ましくは25mVよりも小さい違いである電気化学的電位を有することを特徴とする材料結合(52)。
【請求項11】
前記結合手段(58)が請求項1〜9のいずれか1項に記載の結合手段(58)であることを特徴とする請求項10に記載の材料結合(52)。
【請求項12】
前記第1の部品(54)、前記第2の部品(56)および前記結合手段(58)から成るグループの少なくとも2つの要素が、ナノ粒子であるが、異なるナノ粒子濃度を有する、ナノ粒子によって強化された金属または金属合金の複合材料により作られることを特徴とする請求項10または11に記載の材料結合(52)。
【請求項13】
前記2つの要素のナノ粒子の重量パーセントの数値が、少なくとも10重量%異なり、好ましくは、前記数値の一方よりも少なくとも20重量%高いことを特徴とする請求項12に記載の材料結合(58)。
【請求項14】
ナノ粒子の前記濃度が前記一体部品の異なる領域間で変わる、ナノ粒子によって強化された金属または金属合金の複合材料により作られることを特徴とする一体部品(66)。
【請求項15】
前記ナノ粒子の濃度が、前記一体部品の少なくとも一方向に沿って変わることを特徴とする請求項12に記載の一体部品(66)
【請求項16】
複合粉末材料を製造する工程であって、前記材料が金属およびナノ粒子、とりわけカーボンナノチューブ(CNT)を含み、
前記複合粉末粒子が、前記ナノ粒子によって少なくとも互いに部分的に分離された金属結晶を含む工程と、
前記複合粉末を完成した結合手段(58)または前記結合手段(58)用の空間に圧縮する工程と、
を含むことを特徴とする結合手段(58)を製造する方法。
【請求項17】
前記複合粉末を圧縮する前記工程が、熱間等方圧加工、冷間等方圧加工、粉末押出し、粉末圧延または焼結を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複合粉末粒子が、1nmから100nmの範囲のサイズ、好ましくは、10nmから100nmの範囲のサイズ、または100nmより大きくかつ200nm以下の範囲のサイズを有する軽金属結晶を含むことを特徴とする請求項16または1720に記載の方法。
【請求項19】
前記複合粉末を形成するように、メカニカルアロイングによって金属粉末および前記ナノ粒子を処理する工程を更に含むことを特徴とする請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記金属粉末と前記ナノ粒子とが処理され、前記ナノ粒子が、少なくともいくつかの前記結晶内にも含まれることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記金属が、軽金属、とりわけAl、Mg、Tiもしくはそれらを1つ以上含む合金、またはCuもしくはCu合金であることを特徴とする請求項16〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ナノ粒子が、粉塵化の低い可能性に起因して、容易な取り扱いを可能にする、十分な長さの平均サイズを有する交絡したCNT凝集体の粉末の形態を備えたカーボンナノチューブ(CNT)により形成されることを特徴とする請求項16〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記CNT凝集体の少なくとも95%が、100μmよりも大きい粒子サイズを有することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記CNT凝集体の平均直径が、0.05mmと5mmとの間、好ましくは0.1mmと2mmとの間、最も好ましくは0.2mmと1mmとの間であることを特徴とする請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記ナノ粒子、とりわけCNTの直径に対する長さの比が、3よりも大きい、好ましくは10よりも大きい、最も好ましくは30よりも大きいことを特徴とする請求項16〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記複合材料の前記CNT含有量が、0.5重量%から10.0重量%の範囲、好ましくは2.0重量%から9.0重量%の範囲、最も好ましくは3.0重量%から6.0重量%の範囲であることを特徴とする請求項16〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ナノ粒子がCNTより形成され、CNTの少なくとも一部が、1以上の巻き取られたグラファイト層から成るスクロール構造を有し、それぞれのグラファイト層が、2以上の重なり合ったグラフェン層より成ることを特徴とする請求項16〜26のいずれか1項の方法。
【請求項28】
前記メカニカルアロイングの前に、前記ナノ粒子の少なくとも一部を機能化、とりわけ凹凸化する工程を含むことを特徴とする請求項16〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記ナノ粒子が、多層CNTまたは多重スクロールCNTにより形成され、凹凸化が、前記CNTに高圧、とりわけ5MPa以上、好ましくは7.8MPa以上の圧力を付与することによって、少なくともいくらかの前記CNTの少なくとも最外層を破壊させることによって実施されることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記元の金属のビッカース硬さよりも40%以上高く、好ましくは80%以上高くする、前記複合材料および/または前記複合材料を圧縮することにより形成された前記結合手段(58)の平均ビッカース硬さを十分に増加させる、前記ナノ粒子によって前記結晶の転位密度を増加させ、かつ安定化させるよう前記処理が、実施されることを特徴とする請求項16〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
転位を安定化させ、かつ粒成長を十分に抑制するよう、前記処理が実施され、前記複合粉末を圧縮することにより形成された前記結合手段(58)のビッカース硬さが、前記元の金属のビッカース硬さよりも高い、好ましくは前記複合粉末のビッカース硬さの80%よりも高いことを特徴とする請求項16〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記メカニカルアロイングが、ミルチャンバー(44)とミル部材としてのボール(50)とを含むボールミル(42)を用いて実施されることを特徴とする請求項19〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記ボール(50)が、少なくとも5m/秒、好ましくは少なくとも8m/秒、最も好ましくは少なくとも11m/秒まで加速されることを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ミルチャンバー(44)が固定され、前記ボール(50)が、回転要素(46)の回転動作によって加速されることを特徴とする請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記回転要素(46)の軸が、水平に設置されることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ボール(50)が、3mm〜8mmの直径、好ましくは3mm〜6mmの直径を有し、および/または鋼、ZiOまたはイットリア安定化ZrOにより作られることを特徴とする請求項32〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】

【請求項38】
不活性ガス、とりわけAr、HeもしくはNまたは真空環境を、前記ミルチャンバー(44)の内部に備えることを特徴とする請求項32〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
ボールに対する(金属+ナノ粒子)の重量比が、1:7と1:13との間であることを特徴とする請求項32〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
金属粉末およびナノ粒子の前記処理が、第1および第2の処理段階を含み、
前記第1の処理段階では、前記金属のほとんどまたは全てが処理され、
前記第2の処理段階では、ナノ粒子、とりわけCNTが加えられ、前記金属および前記ナノ粒子が同時に処理されることを特徴とする請求項16〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記ナノ粒子の一部が、前記金属の付着を防止するように、前記第1の処理段階で既に加えられることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の段階が、200nmよりも小さい平均サイズ、好ましくは100nmよりも小さい平均サイズを有する金属結晶を生成するのに適した時間、とりわけ20分間から60分間、実施されることを特徴とする請求項40および41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記第2の段階が、前記ナノ粒子によって前記結晶の前記微細構造を安定化させるのに十分な時間、とりわけ5分間から30分間、実施されることを特徴とする請求項40〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記第2の段階が、前記第1の段階よりも短いことを特徴とする請求項40〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記処理の間、前記回転要素(46)の回転速度が、周期的に上昇および降下することを特徴とする請求項34〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記ナノ粒子が、CNT粉末の形態で与えられるCNTにより形成され、前記方法が、アセチレン、メタン、エタン、エチレン、ブタン、ブテン、ブタジエンおよびベンゼンから成るグループの1つ以上を炭素供与体として用いた、触媒炭素蒸着によって前記CNT粉末を製造する工程を更に含むことを特徴とする請求項16〜45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記触媒が、Fe、Co、Mn、MoおよびNiから成るグループの2元素以上を含むことを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記CNT粉末を製造する前記工程が、500℃から1000℃で2:3から3:2の範囲のモル比でMnおよびCoを含む触媒を用いた、C−C−炭化水素の触媒による分解の工程を含むことを特徴とする請求項46および47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
液体金属または液体合金の不活性雰囲気中への噴霧によって、前記複合材料の前記金属構成物質である金属粉末を形成する工程を更に含むことを特徴とする請求項16〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
完成した複合材料を不動態化する工程を更に含むことを特徴とする請求項16〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記複合材料が、不動態化チャンバーに入れられ、前記複合材料を酸化するように、酸素を徐々に加えながら、攪拌されることを特徴とする請求項50に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate

【図6c】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8a】
image rotate

【図8b】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11a】
image rotate

【図11b】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公表番号】特表2012−518080(P2012−518080A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549461(P2011−549461)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000521
【国際公開番号】WO2010/091791
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(511199000)バイエル・インターナショナル・ソシエテ・アノニム (4)
【氏名又は名称原語表記】BAYER INTERNATIONAL SA
【Fターム(参考)】