説明

絶対圧力センサ

【課題】絶対圧力センサの全体厚みを小さくし得る絶対圧力センサを提供する。
【解決手段】絶対圧力センサ1は、ダイアフラム11の周縁に複数のピエゾ抵抗12・12子を形成し、該ピエゾ抵抗12・12の形成面とは反対側の面にキャビティ13を形成したセンサ基板10に、キャビティ13を閉じるようにキャップ基板20を接合してなる。キャビティ13の厚みT2は、キャップ基板20の厚みT3以上となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアフラム型の絶対圧力センサに関するものであり、特に、絶対圧力センサの全体厚みの薄型化及び長期品質安定性に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力センサは、気体や液体の圧力を、ダイアフラムを介して感圧素子にて計測し、電気信号に変換して出力する機器である。原理的には、ダイアフラムの表面に半導体ひずみゲージを形成し、外部からの力(圧力)によってダイアフラムが変形して発生するピエゾ抵抗効果による電気抵抗の変化を電気信号に変換している。
【0003】
上記圧力センサは、外部からの力(圧力)としてどのような圧力を使用するかによって、絶対真空を基準にして表した圧力を測定する絶対圧力センサと、大気圧等のある任意の比較する圧力(基準圧)に対して表した圧力を測定する差圧(相対圧)圧力センサとの2種類に大別される。
【0004】
上記の絶対圧力センサに関する従来技術として、例えば、特許文献1に開示された半導体圧力センサが知られている。特許文献1において従来技術として開示された半導体圧力センサ100は、図8(a)に示すように、ダイアフラム101の周縁に位置させて複数の圧力感応抵抗素子102・102を形成し、該圧力感応抵抗素子102・102の形成面とは反対側面にキャビティ103Aを形成した半導体基板110Aに、キャビティ103Aを真空にして閉じるようにベース基板120を接合してなっており、キャビティ103Aは側面壁が垂直となっている。
【0005】
しかしながら、この側面壁が垂直となったキャビティ103Aでは、半導体圧力センサ100全体を小型化しようとする場合、ダイアフラムサイズを維持しつつチップサイズを小さくすると、半導体基板110Aとベース基板120との接合面積が減少し、基板接合強度が弱くなってしまう。特に、半導体基板110Aとベース基板120との接合によりキャビティ103A内が真空状態で密閉される絶対圧センサの場合は、キャビティ103Aの真空封止が不安定になり好ましくない。一方、半導体基板110Aとベース基板120の接合面積を十分に確保してチップサイズを小さくすると、ダイアフラムサイズが小さくなり、感度が落ちてしまうという課題がある。
【0006】
そこで、この課題を解決するために、特許文献1では、図8(b)に示すように、キャビティ103Bは、ベース基板120側から半導体基板110Bに向かって拡大する断面逆テーパ形状に形成され、ベース基板120との接合面における開口幅が隣り合う圧力感応抵抗素子102・102の素子間隔よりも小さく設定したものに改良されている。
【0007】
これにより、ダイアフラムサイズを小さくすることなく半導体基板110Bとベース基板120との接合面積を確保でき、センサ感度を維持しつつ小型化に有利な半導体圧力センサ100を得ることができるものとなっている。
【0008】
また、他の従来技術としては、例えば、特許文献2に開示されたものが知られている。特許文献2に開示された圧力センサ200は、図9(a)(b)に示すように、半導体基板210の内部における中央域αには、半導体基板表面201と略平行して広がるキャビティとしての第一空隙部211が設けられている。上記第一空隙部211の上側には、薄板化されたダイアフラム部212及び感圧素子213・213が備えられている。上記感圧素子213は、半導体基板表面201の外縁域βに設けられたバンプ220・220と電気的に接続されている。そして、この特許文献2に開示された圧力センサ200には、半導体基板210の内部において外縁域βの少なくとも一部に、半導体基板表面201に対して閉じた第二空隙部214…がさらに配されている。
【0009】
このように、半導体基板210の内部の外縁域βに第二空隙部214…を配することによって、バンプ220・220を介して伝わる被測定圧力以外の圧力変動をもたらす応力を該第二空隙部214…にて緩和することができるので、特性変動の小さい圧力センサを提供するものとなっている。
【0010】
尚、被測定圧力以外の圧力変動として、例えば、(1)実装直後の残留応力によって圧力センサに生じる特性変動、(2)温度変化によって実装基板との間に生じる熱応力の影響によって圧力センサに生じる特性変動、(3)基板の変形・振動等の機械的な外部要因によって圧力センサに生じる特性変動を例示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−276155号公報(2009年11月26日公開)
【特許文献2】特開2009−264905号公報(2009年11月12日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の絶対圧力センサでは、以下の問題点を有している。
【0013】
すなわち、上記特許文献1及び特許文献2のいずれにおいても、図10に示すように、絶対圧力センサの基本構成として、キャビティの上側にダイアフラム及びピエゾ抵抗を有するセンサ基板とベース基板であるキャップ基板とを接合したものからなっている。そして、この構成においては、全体厚みT、ダイアフラム厚みT1、絶対圧力センサ長さD、及びキャビティ長さD1は、搭載装置のサイズ、感度、及びセンサ基板とキャップ基板との接着強度によって制約される。この制約下において、絶対圧力センサのチップサイズを小型にする場合には、ピエゾ抵抗へ外部応力が加わらないように、キャビティの下側に位置するキャップ基板の厚みT3をなるべく厚くしていた。
【0014】
しかしながら、絶対圧力センサでは、ウエハプロセスにて製造することが主流であり、その際、センサ基板側はパターンニング等を行っているので、ウエハの反り及び凹凸が多い。したがって、グラインダー等を用いてウエハを薄型化する際、テープ貼り付けの平坦性が必要であり、かつ荷重に制限があるといった課題がある。この結果、絶対圧力センサの全体厚みを小さくすることができないという問題点を有している。
【0015】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、絶対圧力センサの全体厚みを小さくし得る絶対圧力センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の絶対圧力センサは、上記課題を解決するために、ダイアフラムの周縁に複数の圧力感応抵抗素子を形成し、該圧力感応抵抗素子の形成面とは反対側の面にキャビティを形成したセンサ基板に、該キャビティを閉じるようにキャップ基板を接合してなる絶対圧力センサにおいて、上記キャビティの厚みは、キャップ基板の厚み以上となっていることを特徴としている。
【0017】
すなわち、従来では、絶対圧力センサのチップサイズを小型にする場合、圧力感応抵抗素子へ外部応力が加わらないように、キャビティの下側に位置するキャップ基板の厚みをなるべく厚くしていた。この結果、従来では、キャビティの厚みは、キャップ基板の厚みよりも薄くなっていた。しかし、絶対圧力センサが搭載される装置においては、絶対圧力センサの全体厚みに制限が加えられることが多く、その制限に対応して感度を維持するためには、ダイアフラムを薄くする必要がある。しかし、ダイアフラムを薄くするにも限界があり、一定以上に薄くすることができないという問題があった。
【0018】
具体的には、キャビティの厚みを薄くするときには、キャップ基板にテープを貼り付けて補強した上で、センサ基板におけるキャビティの上側を薄くすることになるが、そのときのテープを貼り付け均一性を高めることが困難であり、また、ダイアフラム厚みのバラつきも考慮する必要がある。
【0019】
そこで、本発明では、キャビティの厚みは、キャップ基板の厚み以上となっているという構成を採用している。
【0020】
これにより、配線パターン及び圧力感応抵抗素子のないキャップ基板を研削すればよいので、テープを貼り付け均一性及びダイアフラム厚みのバラつきを考慮することなく、容易に研削することができる。そして、結果的に、従来よりも絶対圧力センサの全体厚みを小さくすることができる。
【0021】
したがって、絶対圧力センサの全体厚みを小さくし得る絶対圧力センサを提供することができる。
【0022】
本発明の絶対圧力センサでは、前記センサ基板及びキャップ基板は、いずれもシリコン(Si)からなっており、かつ上記センサ基板とキャップ基板とは、無酸化膜状態でのシリコン(Si)−シリコン(Si)接合にて接合されていることが好ましい。
【0023】
すなわち、キャビティは初期には真空になっているものの、センサ基板とキャップ基板との接合界面ではヘリウム(He)又は水素(H)等の低分子量の気体に対しては完全密閉することはできない。このため、低分子量の気体が経時的にキャビティ内へリークしたときには、絶対圧としての基準値が変動する。この結果、絶対圧力センサの測定精度が低下することになる。
【0024】
そこで、本発明では、センサ基板とキャップ基板とを無酸化膜状態でのシリコン(Si)−シリコン(Si)接合とすることにより、センサ基板とキャップ基板との接合を無酸化膜状態としている。このため、センサ基板とキャップ基板との接合界面からヘリウム(He)又は水素(H)等の低分子量の気体が侵入することがない。
【0025】
したがって、絶対圧としての基準値が変動するがないので、絶対圧力センサの測定精度が低下することがない。この結果、長期間の品質安定性を有する絶対圧力センサを提供することができる。
【0026】
本発明の絶対圧力センサでは、前記キャビティは、平面形状が円形であることが好ましい。
【0027】
これにより、ウエハにて絶対圧力センサを複数個並べて製造する場合において個片化するときに、個片化し易くすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の絶対圧力センサは、以上のように、キャビティの厚みは、キャップ基板の厚み以上となっているものである。
【0029】
それゆえ、絶対圧力センサの全体厚みを小さくし得る絶対圧力センサを提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明における絶対圧力センサの実施の一形態を示すものであって、絶対圧力センサの構成を示す断面図である。
【図2】上記絶対圧力センサにおける製造方法を示すものであって、ピエゾ抵抗作成工程を示す断面図である。
【図3】上記絶対圧力センサにおける製造方法を示すものであって、第2シリコン基板の研削工程を示す断面図である。
【図4】上記絶対圧力センサにおける製造方法を示すものであって、キャビティ形成工程を示す断面図である。
【図5】上記絶対圧力センサにおける製造方法を示すものであって、キャップ基板接合工程を示す断面図である。
【図6】上記絶対圧力センサにおける製造方法を示すものであって、キャップ基板研削工程を示す断面図である。
【図7】上記絶対圧力センサにおけるヘリウム(He)雰囲気下でのキャビティ内真空度変動の経時変化を示すグラフである。
【図8】(a)は従来の特許文献1に記載された従来技術の絶対圧力センサの構成を示す断面図であり、(b)は従来の特許文献1に記載された絶対圧力センサの構成を示す断面図である。
【図9】(a)は従来の他の絶対圧力センサの構成を示す断面図であり、(b)はその平面図である。
【図10】従来の絶対圧力センサの基本構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の一実施形態について図1〜図7に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0032】
本実施の形態の絶対圧力センサ1は、図1に示すように、ダイアフラム11の周縁に複数の圧力感応抵抗素子としてのピエゾ抵抗12・12とを形成し、該ピエゾ抵抗12・12の形成面とは反対側の面にキャビティ13を形成したセンサ基板10と、該キャビティ13を閉じるキャップ基板20とを接合してなっている。
【0033】
詳細には、上記センサ基板10は、シリコン酸化膜(SiO)14を介して第1シリコン基板10aと第2シリコン基板10bとを貼り合わせてなるSOI(シリコン・オン・インシュレータ)基板からなっている。すなわち、第1シリコン基板10aと第2シリコン基板10bは、いずれもシリコン(Si)からなっている。
【0034】
第1シリコン基板10aは、複数の圧力感応抵抗素子であるピエゾ抵抗12・12を形成した回路形成面を有している。この回路形成面は、複数のピエゾ抵抗12・12の上方位置を除いて図示しないシリコン酸化膜にて覆われている。
【0035】
このセンサ基板10には、第2シリコン基板10bとシリコン酸化膜(SiO)14の一部とを第2シリコン基板10b側から除去することによってキャビティ13が形成され、このキャビティ13の上面を構成する第1シリコン基板10aによってダイアフラム11が形成されている。
【0036】
上記ダイアフラム11は、平面形状が例えば円形に形成されており、このダイアフラム11の円形輪郭の各辺にかかるようにして複数のピエゾ抵抗12・12が配置されている。ただし、ダイアフラム11の平面形状は、圧力を受けて歪む形状であれば、矩形等の他の形状でもよい。
【0037】
上記キャビティ13は、上述したように、第2シリコン基板10bと第1シリコン基板10aの一部を第2シリコン基板10b側からドライエッチング法により除去して形成されている。このキャビティ13は、例えば、円筒形状の空間部として形成されている。
【0038】
一方、キャップ基板20は、シリコン基板からなり、センサ基板10を支持し、キャビティ13を覆う基板として機能している。このキャップ基板20は、センサ基板10のキャビティ13を有する側の面、すなわち、第2シリコン基板10bに接合されている。
【0039】
ここで、本実施の形態では、センサ基板10の第2シリコン基板10bとキャップ基板20との接合は、無酸化膜状態でのシリコン(Si)−シリコン(Si)接合にて接合されている。すなわち、シリコンウエハはシリコン(Si)からなっているが、通常、大気中に放置しておくことにより、その表面が酸化されシリコン酸化膜(SiO)が形成される。しかし、シリコン酸化膜(SiO)が形成された状態で、キャップ基板20とセンサ基板10の第2シリコン基板10bとを接合した場合には、経時変化を経ることによって、キャップ基板20とセンサ基板10の第2シリコン基板10bとの接合界面から、ヘリウム(He)又は水素(H)等の低分子量の気体が真空状態としたキャビティ13に侵入し、キャビティ13内の真空状態が破られる。その結果、真の絶対圧力が測定できないことになる。そこで、本実施の形態では、これを防止するため、センサ基板10の第2シリコン基板10bとキャップ基板20とを接合する前に、例えば、第2シリコン基板10bの表面及びキャップ基板20の表面をそれぞれプラズマ処理することにより、該キャップ基板20の表面及び第2シリコン基板10bの表面に形成されたシリコン酸化膜(SiO)を除去した後、キャップ基板20と第2シリコン基板10bとを接合している。これにより、キャップ基板20と第2シリコン基板10bとは、無酸化膜状態でのシリコン(Si)−シリコン(Si)接合にてなっており、接合後にキャップ基板20と第2シリコン基板10bとの接合界面からヘリウム(He)又は水素(H)等の低分子量の気体がキャビティ13に侵入することを防止することができる。尚、キャップ基板20と第2シリコン基板10bとは、無酸化膜状態でのシリコン(Si)−シリコン(Si)接合にて、充分な接合強度が得られるものとなっている。
【0040】
上記の接合により、キャビティ13内は長期間安定して真空状態となっている。その結果、上記構成の絶対圧力センサ1は、ダイアフラム11が外面に付加される圧力に応じて歪むと、その歪み度合いに応じて複数のピエゾ抵抗12・12の抵抗値が変化し、この複数のピエゾ抵抗12・12にて構成されたブリッジ回路の中点電位がセンサ出力として公知の測定装置に出力される。測定装置は、図示しない各パッドを介して絶対圧力センサ1に接続され、この絶対圧力センサ1の出力(中点電位変化)に基づいて圧力が測定できるようになっている。
【0041】
ところで、本実施の形態では、キャビティ13の厚みT2を、キャップ基板20の厚みT3以上としている。すなわち、
キャビティ13の厚みT2≧キャップ基板20の厚みT3
としている。その理由について、図1に基づいて詳述する。尚、以下の解析では、キャビティ13が円形であるとしている。
【0042】
すなわち、図1に示すように、ダイアフラム11は圧力変化により撓む必要がある。一方、キャップ基板20は、絶対圧力センサ1を支持するものであるので、撓みが少ない方がよい。ここで、絶対圧力センサ1について、ダイアフラム11を梁と考えて、この梁であるダイアフラム11に等分布荷重pが作用して撓むことを考えると、ダイアフラム11の中心にかかる応力σは、
σ=±3pa/4(T1)
となる。尚、aは、ダイアフラム11の外周から中心までの半径である。
【0043】
すなわち、撓みにより生じる応力は、ダイアフラム11の厚みT1の2乗に反比例することが判る。
【0044】
この結果、例えば、従来の説明図である図10に示すように、
キャップ基板の厚みT3>ダイアフラムの厚みT1
とする際に、
キャップ基板の厚みT3>10×ダイアフラムの厚みT1
とした場合には、キャップ基板及びダイアフラムにかかる応力は、
キャップ基板の厚みT3の応力>100×ダイアフラムの厚みT1の応力
となる。
【0045】
すなわち、キャップ基板の厚みT3>10×ダイアフラムの厚みT1とすれば、応力に対しては、キャップ基板が100倍程度撓み難くなるので、応力による影響を抑制する効果が生じると考えられており、従来では、この考え方に基づいて、
キャップ基板の厚みT3>ダイアフラムの厚みT1
としていた。
【0046】
ところで、絶対圧力センサにおいては、図10に示すように、絶対圧力センサの全体厚みTは、絶対圧力センサが搭載される装置の厚さによって高さ制限を受ける。また、絶対圧力センサ長さDは、絶対圧力センサが搭載される装置の面積によって制限を受け、キャビティ長さD1は、センサ基板とキャップ基板との接着強度の影響による制限を受ける。さらに、ダイアフラムの厚みT1は、感度に影響する。
【0047】
そこで、従来では、絶対圧力センサの全体厚みTに制限が課せられた場合には、キャップ基板の厚みT3を大きくすることができないので、必然的に、ダイアフラムの厚みT1を薄くしていた。
【0048】
しかしながら、ダイアフラムの厚みT1を薄くする場合には、キャップ基板のウエハにおける裏面にテープを貼り付けた後、センサ基板の表面を研削してウエハを薄くする。その場合、ダイアフラムの厚みT1は、ダイアフラム厚みバラツキとテープ貼り付け均一性とウエハ厚みバラツキとを考慮して決定する必要がある。したがって、ダイアフラムの厚みT1を薄くすることについては、限界があった。
【0049】
そこで、本実施の形態では、この問題を解決するために、図1に示すように、キャビティの厚みT2は、キャップ基板の厚みT3以上となっている。この結果、本実施の形態では、キャップ基板20の厚みT3を薄くするので、ダイアフラム11の厚みT1のバラツキを考慮する必要がなくなる。そのため、本実施の形態においては、ダイアフラムの厚みT1は、テープ貼り付け均一性とウエハ厚みバラツキとの2つを考慮して決定すればそれで足りる。また、ダイアフラム11の厚みT1のバラツキを考慮する必要がなくなるので、テープ貼り付け均一性が低くてもよい。
【0050】
すなわち、キャップ基板20の厚みT3を薄くするよりも、テープ貼り付け均一性を上げる方が高める方が難しい。この結果、本実施の形態の絶対圧力センサ1では、従来のものよりも絶対圧力センサ1の全体厚みTを容易に薄くできものとなっている。
【0051】
具体的には、従来品では、センサ基板の厚み(T1+T2)が25μmであり、かつキャップ基板の厚みT3が175μmであり、その結果、絶対圧力センサの全体厚みTが200μmとなっていた。これに対して、本実施の形態の絶対圧力センサ1では、センサ基板10の厚み(T1+T2)が400μmであり、かつキャップ基板20の厚みT3が200μmであり、その結果、絶対圧力センサ1の全体厚みTを600μmとすることができるものとなっている。尚、実用品として、例えば携帯電話に内蔵させるために、センサ基板10の厚み(T1+T2)を300μmとし、かつキャップ基板20の厚みT3を200μmとし、その結果、絶対圧力センサ1の全体厚みTを500μmとすることが可能である。さらに、例えばHDD(Hard disk drive)に内蔵させるために、センサ基板10の厚み(T1+T2)を100μmとし、かつキャップ基板20の厚みT3を100μmとし、その結果、絶対圧力センサ1の全体厚みTを200μmとすることが好ましい。
【0052】
次に、上記構成の絶対圧力センサ1の製造方法について、図2〜図6に基づいて説明する。図2はピエゾ抵抗作成工程を示す断面図であり、図3は第2シリコン基板の研削工程を示す断面図であり、図4はキャビティ形成工程を示す断面図であり、図5はキャップ基板接合工程を示す断面図であり、図6はキャップ基板研削工程を示す断面図である。
【0053】
まず、図2に示すように、第1シリコン基板10aと第2シリコン基板10bとを貼り合わせてなるSOI(シリコン・オン・インシュレータ)基板であるセンサ基板10上に、ピエゾ抵抗12・12を作製する。このとき、本実施の形態では、ダイアフラムの厚みT1の厚さとなる第1シリコン基板10aの厚さは約5μmとなっている。また、第1シリコン基板10aと第2シリコン基板10bとの合計厚みは例えば約700μmとなっている。
【0054】
次に、図3に示すように、センサ基板10における第2シリコン基板10bの研削工程を行う。研削工程においては、BSG(バックサイドグラインディング)にて、第2シリコン基板10bの裏面を研削する。この場合、ピエゾ抵抗12・12を形成した面に両面テープを張り、図示しないステージに接着した状態で、センサ基板10におけるピエゾ抵抗12・12の形成面とは反対側の面を研削する。このとき、第1シリコン基板10aと第2シリコン基板10bとの合計厚みが例えば約100μm程度になるまで研削する。その後、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング)工程にて、研削した面を鏡面仕上げする。CMP(ケミカルメカニカルポリッシング)工程では、アルミナの砥粒が混入された研磨液を使って、研削面を磨く。
【0055】
次いで、図4に示すように、センサ基板10における第2シリコン基板10bとシリコン酸化膜(SiO)14とをエッチングし、キャビティ13となる凹部を形成することにより、その上側にダイアフラム11を形成する。具体的には、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)プロセスで使用されるDeep−RIEと称されるドライエッチングにより、第2シリコン基板10bをエッチングする。このように、Deep−RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)と称される手法を利用することによって、第2シリコン基板10bの表面に対して垂直に、第2シリコン基板10bをエッチングすることができる。尚、キャビティ13の形状は、例えば約400μm程度の円柱形としている。したがって、キャビティ13の形状は、水平断面が円形となる。ただし、必ずしもこれに限らず、キャビティ13の水平断面の形状は、正方形又は六角形等の多角形でもよい。
【0056】
次に、図5に示すように、常温接合と称される手法を用いて、センサ基板10とキャップ基板20を接合し、真空のキャビティ13を形成する。常温接合においては、まず、図示しない接合装置内の高真空チャンバ内において、接合装置のピストンにセンサ基板10を設置すると共に、接合装置のステージにキャップ基板20を設置する。そして、互いの接合面が対向した状態で保持する。続いて、センサ基板10とキャップ基板20とを10cm程度離した状態で保持し、空間内にアルゴン(Ar)イオンビームを照射し、センサ基板10及びキャップ基板20の各対向面上の自然酸化膜を除去する。アルゴン(Ar)イオンビームを照射した後、ピストンを降下して接合面を密着させた状態で、2t程度の荷重を加えることにより、センサ基板10とキャップ基板20とを接合する。これにより、センサ基板10とキャップ基板20とは、無酸化膜状態にてシリコン(Si)−シリコン(Si)接合される。
【0057】
次に、図6に示すように、キャップ基板20の裏面の研削を行う。キャップ基板20の裏面の研削工程においては、前記図3に示すセンサ基板10における第2シリコン基板10bの研削工程と同様にして、BSG(バックサイドグラインディング)にて、キャップ基板20の裏面を研削する。このとき、センサ基板10のピエゾ抵抗12・12側の面に両面テープを張り、図示しないステージに接着した状態で、ピエゾ抵抗12・12の形成面とは反対側の面を研削する。ここでは、例えば、キャップ基板20の厚みT3が例えば100μm程度になるまで研削する。
【0058】
以上の工程により、図1に示す絶対圧力センサ1が完成する。
【0059】
このように、本実施の形態の絶対圧力センサ1では、ダイアフラム11の周縁に複数のピエゾ抵抗12・12を形成し、該ピエゾ抵抗12・12の形成面とは反対側の面にキャビティ13を形成したセンサ基板10に、該キャビティ13を閉じるようにキャップ基板20を接合してなっている。そして、キャビティ13の厚みT2は、キャップ基板20の厚みT3以上となっている。
【0060】
これにより、配線パターン及びピエゾ抵抗12・12のないキャップ基板20を研削すればよいので、テープを貼り付け均一性及びダイアフラム11の厚みのバラつきを考慮することなく、容易に研削することができる。そして、結果的に、従来よりも絶対圧力センサ1の全体厚みTを小さくすることができる。
【0061】
したがって、絶対圧力センサ1の全体厚みTを小さくし得る絶対圧力センサ1を提供することができる。
【0062】
また、本実施の形態では、キャビティ13の厚みT2がキャップ基板20の厚みT3以上となっていることによって、キャビティ13の厚みT2を従来品のキャビティの厚みT2よりも大きくすることができる。このことは、キャビティ13の容積を従来品のキャビティの容積よりも大きくすることができることを意味する。この結果、この結果、仮に、センサ基板10とキャップ基板20との接合が間に酸化膜を介した場合に、接合界面ではヘリウム(He)又は水素(H)等の低分子量の気体がキャビティ13に侵入することになる。しかし、本実施の形態では、キャビティ13の容積が従来品のキャビティの容積よりも大きい。このため、低分子量の気体がキャビティ13に侵入してもキャビティ13の圧力が大きく変動しないというメリットがある。
【0063】
すなわち、気体の状態方程式である
PV=nRT
の関係から、PとVとは反比例する。尚、Pは圧力、Vは体積、nは気体のモル数、Rはガス定数、Tは温度である。
【0064】
したがって、この気体の状態方程式により、Vが大きければ、低分子量の気体がキャビティ13に侵入してもキャビティ13の圧力Pは大きくは変動しないことが判る。
【0065】
また、本実施の形態の絶対圧力センサ1では、センサ基板10及びキャップ基板20は、いずれもシリコン(Si)からなっており、かつセンサ基板10とキャップ基板20とは、無酸化膜状態でのシリコン(Si)−シリコン(Si)接合にて接合されている。
【0066】
すなわち、キャビティ13は初期には真空になっているものの、センサ基板10とキャップ基板20との接合界面ではヘリウム(He)又は水素(H)等の低分子量の気体に対しては完全密閉することはできない。このため、低分子量の気体が経時的にキャビティ13内へリークしたときには、絶対圧としての基準値が変動する。この結果、絶対圧力センサ1の測定精度が低下することになる。
【0067】
そこで、本実施の形態では、センサ基板10とキャップ基板20とを無酸化膜状態でのシリコン(Si)−シリコン(Si)接合とすることにより、センサ基板10とキャップ基板20との接合を無酸化膜状態としている。このため、センサ基板10とキャップ基板20との接合界面からヘリウム(He)又は水素(H)等の低分子量の気体が侵入することがない。
【0068】
したがって、絶対圧としての基準値が変動するがないので、絶対圧力センサ1の測定精度が低下することがない。この結果、長期間の品質安定性を有する絶対圧力センサ1を提供することができる。
【0069】
また、本実施の形態の絶対圧力センサ1では、キャビティ13は、平面形状が円形となっている。これにより、ウエハにて絶対圧力センサ1を複数個並べて製造する場合において個片化するときに、個片化し易くすることができる。
【0070】
尚、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、本実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0071】
〔実施例1〕
本実施の形態の絶対圧力センサ1について、キャビティ13の厚みT2を、キャップ基板20の厚みT3以上としたことの効果を確認すべく、従来品との比較実験を行った。
【0072】
実験では、2気圧のヘリウム(He)の雰囲気下に絶対圧力センサ1を置き、キャビティ13内の真空度の経時変化を求めた。このときのキャビティ13は、平面形状が円形であり、キャビティ13のサイズを半径0.4mmとした。また、キャビティ13の厚みT2を0.4mmとした。一方、従来品は、キャビティの形状として、動揺に、平面形状円形とし、キャビティサイズを半径0.4mmとした。また、キャビティ13の厚みT2を0.2mmとした。尚、両方とも、センサ基板10とキャップ基板20との接合は、酸化膜を介したシリコン(Si)−酸化膜(SiO)−シリコン(Si)接合とした。
【0073】
その結果、図7に示すように、両者とも放置日数により略直線的に圧力変動することが判った。具体的には、放置日数10日において、キャビティの厚みT2がキャップ基板の厚みT3よりも小さい従来品の絶対圧力センサでは、圧力変動量が3321(Pa)であったのに対して、キャビティ13の厚みT2をキャップ基板20の厚みT3以上とした本実施の形態の絶対圧力センサ1では、圧力変動量が1660(Pa)であった。したがって、本実施の形態の絶対圧力センサ1では、経時的なキャビティ内真空度の変動量が従来品の1/2以下であることが確認できた。
【0074】
すなわち、本実施の形態では、従来品に対して経時的なキャビティ13内真空度の変動量が小さくなる。したがって、低分子気体の経時的なリークに対し、オフセット変動の影響を受け難くなることが把握できた。
【0075】
〔実施例2〕
次に、センサ基板10とキャップ基板20とを無酸化膜状態でのシリコン(Si)−シリコン(Si)接合としたときのキャビティ13内におけるヘリウム(He)のリークレートを確認した。また、比較として、センサ基板10とキャップ基板20とを酸化膜を介したシリコン(Si)−酸化膜(SiO)−シリコン(Si)接合の絶対圧力センサについても同様にしてヘリウム(He)のリークレートを確認した。
【0076】
その結果を、表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
すなわち、表1に示すように、センサ基板10とキャップ基板20とを酸化膜を介したシリコン(Si)−酸化膜(SiO)−シリコン(Si)接合とすることにより、ヘリウム(He)のリークレートは、6.8×10E−11Pa・m/s以下であった。これに対して、無酸化膜状態でのシリコン(Si)−シリコン(Si)接合では、ヘリウム(He)のリークレートは、1×10E−11Pa・m/s以下である。この結果、無酸化膜状態でのシリコン(Si)−シリコン(Si)接合では、ヘリウム(He)のリークレートが小さいことが判った。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、気圧計、水圧計、高度計等の絶対圧力センサに適用できる。また、本発明の絶対圧力センサを用いた気圧計、水圧計、高度計は、例えばタイヤの空気圧のモニタリング、水中撮影用等の気圧計内蔵のデジタルカメラ、山登りにおいて標高を知る高度計内蔵の歩数計、カーナビゲーション、腕時計等に適用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 絶対圧力センサ
10 センサ基板
10a 第1シリコン基板
10b 第2シリコン基板
11 ダイアフラム
12 ピエゾ抵抗(圧力感応抵抗素子)
13 キャビティ
14 シリコン酸化膜(SiO
20 キャップ基板
T 絶対圧力センサの全体厚み
T1 ダイアフラムの厚み
T2 キャビティの厚み
T3 キャップ基板の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイアフラムの周縁に複数の圧力感応抵抗素子を形成し、該圧力感応抵抗素子の形成面とは反対側の面にキャビティを形成したセンサ基板に、該キャビティを閉じるようにキャップ基板を接合してなる絶対圧力センサにおいて、
上記キャビティの厚みは、キャップ基板の厚み以上となっていることを特徴とする絶対圧力センサ。
【請求項2】
前記センサ基板及びキャップ基板は、いずれもシリコン(Si)からなっており、かつ上記センサ基板とキャップ基板とは、無酸化膜状態でのシリコン(Si)−シリコン(Si)接合にて接合されていることを特徴とする請求項1記載の絶対圧力センサ。
【請求項3】
前記キャビティは、平面形状が円形であることを特徴とする請求項1又は2記載の絶対圧力センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−189460(P2012−189460A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53620(P2011−53620)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】