説明

絶縁体組成物、有機半導体装置、電子デバイスおよび電子機器

【課題】吸湿性の高い絶縁部を容易に形成することができる絶縁体組成物、信頼性の高い有機半導体装置、電子デバイスおよび電子機器を提供すること。
【解決手段】絶縁体組成物は、有機半導体装置が備える絶縁部の形成に用いられるものであり、置換基に有機基を有し、特定の構造を有するポリシルセスキオキサン誘導体を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁体組成物、有機半導体装置、電子デバイスおよび電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体的な電気伝導を示す有機材料(有機半導体材料)を使用した薄膜トランジスタの開発が進められている。
この薄膜トランジスタは、薄型軽量化に適すること、可撓性を有すること、材料コストが安価であること等の長所を有しており、フレキシブルディスプレイ等のスイッチング素子として期待されている。
このような薄膜トランジスタにおいて、ゲート絶縁層の材料として無機材料を用いたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところが、無機材料を用いてゲート絶縁層を構成した場合、無機材料が吸湿性有するため、ゲート絶縁層が有機半導体層への水分の浸入をある程度阻止して、薄膜トランジスタの特性が経時的に低化することを抑制することができる。
しかしながら、ゲート絶縁層の形成に気相成膜法を用いるため、ゲート絶縁層の形成に手間と時間とを要するという問題や、ゲート絶縁層の形成時に有機半導体層に変質・劣化を生じさせてしまうおそれがある。
【0004】
【特許文献1】特開2004−103719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、吸湿性の高い絶縁部を容易に形成することができる絶縁体組成物、信頼性の高い有機半導体装置、電子デバイスおよび電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の絶縁体組成物は、有機半導体装置が備える絶縁部の形成に用いられ、置換基に有機基を有するポリシルセスキオキサン誘導体を含有することを特徴とする。
これにより、吸湿性の高い絶縁部を容易に形成することができる。
本発明の絶縁体組成物では、前記ポリシルセスキオキサン誘導体は、下記式(1)〜(3)で表される化合物のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【化1】

【化2】

【化3】

(式(1)〜(3)中、各Rは、それぞれ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、または、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されたアリール基のいずれかを示す。また、式(1)中、nは、1〜3の整数を示す。)
これにより、吸湿性の高い絶縁部を容易に形成することができる。
【0007】
本発明の絶縁体組成物では、前記アルキル基は、炭素数が1〜10の直鎖状あるいは分枝状、または、炭素数が4〜6の環状のものであることが好ましい。
これにより、有機材料(特に、有機ポリマー)との親和性(相溶性)が高いものとなる。
本発明の絶縁体組成物では、前記アルコキシ基は、炭素数が1〜10の直鎖状あるいは分枝状のものであることが好ましい。
これにより、有機材料(特に、有機ポリマー)との親和性(相溶性)が高いものとなる。
【0008】
本発明の絶縁体組成物では、前記アリール基は、フェニル基であることが好ましい。
これにより、有機材料(特に、有機ポリマー)との親和性(相溶性)が高いものとなる。
本発明の絶縁体組成物では、前記ハロゲン原子は、フッ素原子であることが好ましい。
これにより、有機材料(特に、有機ポリマー)との親和性(相溶性)が高いものとなる。
【0009】
本発明の絶縁体組成物では、重合性化合物を含有することが好ましい。
これにより、光照射や加熱により、絶縁体組成物を硬化して、絶縁部を形成することができる。また、得られる絶縁部の機械的強度をより向上させることができる。
本発明の絶縁体組成物では、前記重合性化合物は、アクリル酸系化合物、エポキシ系化合物、およびオキセタン系化合物のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
これらのものは、特に反応性が高いことから好ましい。
【0010】
本発明の絶縁体組成物では、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
これにより、乾燥(脱溶媒)により、絶縁体組成物を固化(硬化)して、絶縁部を形成することができる。また、得られる絶縁部の機械的強度をより向上させることができる。
本発明の絶縁体組成物では、前記ポリシルセスキオキサン誘導体の含有量は、0.1〜50重量%であることが好ましい。
これにより、形成された絶縁部の機械的強度を確実に維持しつつ、ポリシルセスキオキサン誘導体を添加する効果、すなわち、高い吸湿性が得られる。
【0011】
本発明の有機半導体装置は、本発明の絶縁体組成物を用いて形成された絶縁部を備えることを特徴とする。
これにより、絶縁部において水分が吸収され、有機半導体の水分による変質・劣化を防止することができる。その結果、信頼性の高い有機半導体装置が得られる。
本発明の有機半導体装置は、有機薄膜トランジスタを備え、
前記絶縁部は、前記有機薄膜トランジスタが備える絶縁層のうちの少なくとも1つであることが好ましい。
これにより、トランジスタ特性に優れ、その特性が経時的に劣化し難い有機薄膜トランジスタが得られる。
本発明の有機半導体装置では、前記絶縁層は、ゲート絶縁層であることが好ましい。
これにより、トランジスタ特性の向上を図ることができる。
本発明の電子デバイスは、本発明の有機半導体装置を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子デバイスが得られる。
本発明の電子機器は、本発明の電子デバイスを備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の絶縁体組成物、有機半導体装置、電子デバイスおよび電子機器について、好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の有機半導体装置とは、その一部に有機半導体層を有する装置のことを言い、例えば、基板上に、複数の有機薄膜トランジスタが形成されてなるアクティブマトリクス装置や、複数の有機EL素子が区画形成されてなる有機EL表示装置等が挙げられる。
【0013】
以下では、本発明の有機半導体装置をアクティブマトリクス装置に適用した場合を一例に説明する。
図1は、本発明の有機半導体装置を適用したアクティブマトリクス装置の構成を示すブロック図、図2は、図1に示すアクティブマトリクス装置が備える有機薄膜トランジスタの構成を示す図(縦断面図および平面図)である。なお、以下の説明では、図2中上側を「上」、下側を「下」として説明する。
【0014】
図1に示すアクティブマトリクス装置300は、基板500と、いずれも基板500上に設けられ、互いに直交する複数のデータ線301と、複数の走査線302と、これらのデータ線301と走査線302との各交点付近に設けられた有機薄膜トランジスタ1(以下、「薄膜トランジスタ1」と言う。)および後述する画素電極(個別電極)303とを有している。
そして、薄膜トランジスタ1が有するゲート電極50は走査線302に、ソース電極20aはデータ線301に、ドレイン電極20bは画素電極303に、それぞれ接続されている。
【0015】
図2に示すように、本実施形態の薄膜トランジスタ1は、トップゲート型の薄膜トランジスタであり、基板500上に設けられたバッファ層60と、バッファ層60上に、互いに分離して設けられたソース電極20aおよびドレイン電極20bと、ソース電極20aおよびドレイン電極20bに接触して設けられた有機半導体層30と、有機半導体層30とゲート電極50との間に位置するゲート絶縁層40と、これらの各層を覆うように設けられた保護層70とを有している。
【0016】
以下、各部の構成について、順次説明する。
基板500は、薄膜トランジスタ1(アクティブマトリクス装置300)を構成する各層(各部)を支持するものである。
基板500には、例えば、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリイミド(PI)等で構成されるプラスチック基板(樹脂基板)、石英基板、シリコン基板、金属基板、ガリウム砒素基板等を用いることができる。
薄膜トランジスタ1に可撓性を付与する場合には、基板500には、プラスチック基板、あるいは、薄い(比較的膜厚の小さい)金属基板が選択される。
【0017】
基板500上には、バッファ層60が設けられている。
このバッファ層60は、後述する有機半導体層30に水分が浸入するのを防止する機能や、基板500がガラス材料等で構成される場合、基板500から有機半導体層30にイオン等が拡散するのを防止する機能を有する。
このようなバッファ層60、後述するゲート絶縁層40および保護層70が、それぞれ、本発明の絶縁体組成物を用いて形成されている。なお、この絶縁体組成物については、後に詳述する。
【0018】
バッファ層60の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、10〜700nm程度であるのがより好ましい。
バッファ層60上には、所定の間隔離間して、ソース電極20aおよびドレイン電極20bが設けられている。
ソース電極20aおよびドレイン電極20bの構成材料としては、例えば、Au、Ag、Cu、Pt、Ni、Cr、Ti、Ta、Alまたはこれらを含む合金のような金属材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
これらの中でも、ソース電極20aおよびドレイン電極20bの構成材料としては、それぞれ、Au、Ag、Cu、Ptまたはこれらを含む合金を主とするものが好ましい。これらのものは、比較的仕事関数が大きいため、後述するように、有機半導体層30がp型である場合には、ソース電極20aをこれらの材料で構成することにより、有機半導体層30への正孔(キャリア)の注入効率を向上させることができる。
なお、ソース電極20aおよびドレイン電極20bの平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、10〜2000nm程度であるのが好ましく、50〜1000nm程度であるのがより好ましい。
【0020】
ソース電極20aとドレイン電極20bとの距離、すなわち、図2に示すチャネル長Lは、2〜30μm程度であるのが好ましく、2〜20μm程度であるのがより好ましい。このような範囲にチャネル長Lの値を設定することにより、薄膜トランジスタ1の特性の向上(特に、ON電流値の上昇)を図ることができる。
また、ソース電極20aおよびドレイン電極20bの長さ、すなわち、図2に示すチャネル幅Wは、0.1〜5mm程度であるのが好ましく、0.3〜3mm程度であるのがより好ましい。このような範囲にチャネル幅Wの値を設定することにより、寄生容量を低減させることができ、薄膜トランジスタ1の特性の劣化を防止することができる。また、薄膜トランジスタ1の大型化を防止することもできる。
【0021】
ソース電極20aおよびドレイン電極20bに接触するように、有機半導体層30が設けられている。
本実施形態では、この有機半導体層30は、主としてp型の有機半導体材料で構成されている。p型の有機半導体材料には、ポリマー有機半導体材料(高分子系有機半導体材料)、低分子系有機半導体材料のいずれも使用可能である。
【0022】
ポリマー有機半導体材料としては、例えば、ポリ(3−アルキルチオフェン)、(ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)(PTV)、ポリ(パラ−フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(PFO)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ビス−N,N’−(4−メトキシフェニル)−ビス−N,N’−フェニル−1,4−フェニレンジアミン)(PFMO)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ベンゾチアジアゾール)(BT)、フルオレン−トリアリルアミン共重合体、トリアリルアミン系ポリマー、フルオレン−ビチオフェン共重合体(F8T2)等が挙げられる。
【0023】
低分子系有機半導体としては、例えば、C60、あるいは、金属フタロシアニンあるいはそれらの置換誘導体、あるいは、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン等のアセン分子材料、あるいは、α−オリゴチオフェン類、具体的にはクォーターチオフェン(4T)、セキシチオフェン(6T)、オクチチオフェン(8T)、ジヘキシルクォーターチオフェン(DH4T)、ジヘキシルセキシチオフェン(DH6T)等が挙げられる。
【0024】
この有機半導体層30の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜1000nm程度であるのが好ましく、1〜500nm程度であるのがより好ましく、1〜100nm程度であるのがさらに好ましい。
有機半導体層30、ソース電極20aおよびドレイン電極20bを覆うように、ゲート絶縁層(絶縁層)40が設けられている。
このゲート絶縁層40は、ソース電極20aおよびドレイン電極20bに対して、後述するゲート電極50を絶縁するものである。
【0025】
ゲート絶縁層40の平均厚さは、特に限定されないが、10〜5000nm程度であるのが好ましく、100〜2000nm程度であるのがより好ましい。ゲート絶縁層40の厚さを前記範囲とすることにより、ソース電極20aおよびドレイン電極20bとゲート電極50とを確実に絶縁しつつ、薄膜トランジスタ1の動作電圧を低くすることができる。
なお、ゲート絶縁層40は、単層構成のものに限定されず、複数層の積層構成のものであってもよい。
【0026】
ゲート絶縁層40上の所定の位置、すなわち、ソース電極20aとドレイン電極20bとの間の領域に対応する位置には、有機半導体層30に電界をかけるゲート電極50が設けられている。
このゲート電極50の構成材料としては、公知の電極材料であれば、種類は特に限定されるものではない。具体的には、Cr、Al、Ta、Mo、Nb、Cu、Ag、Au、Pd、In、Ni、Nd、Coまたはこれらを含む合金のような金属材料、およびそれらの酸化物等を用いることができる。
また、ゲート電極50は、導電性有機材料で構成することもできる。
ゲート電極50の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜2000nm程度であるのが好ましく、1〜1000nm程度であるのがより好ましい。
【0027】
また、以上のような各層を覆うようにして、保護層70が設けられている。
この保護層70は、有機半導体層30に水分が浸入するのを防止する機能や、ゲート電極50に異物が接触して、隣接する薄膜トランジスタ1同士がショートするのを防止する機能を有する。
保護膜70の平均厚さは、特に限定されないが、0.01〜10μm程度であるのが好ましく、0.1〜5μm程度であるのがより好ましい。
【0028】
このような薄膜トランジスタ1では、ソース電極20aおよびドレイン電極20bの間に電圧を印加した状態で、ゲート電極50にゲート電圧を印加すると、有機半導体層30のゲート絶縁層40との界面付近にチャネルが形成され、チャネル領域をキャリア(正孔)が移動することで、ソース電極20aおよびドレイン電極20bの間に電流が流れる。
すなわち、ゲート電極50に電圧が印加されていないOFF状態では、ソース電極20aおよびドレイン電極20bとの間に電圧を印加しても、有機半導体層30中にほとんどキャリアが存在しないため、微少な電流しか流れない。
【0029】
一方、ゲート電極50に電圧が印加されているON状態では、有機半導体層30のゲート絶縁層40に面した部分に電荷が誘起され、チャネル(キャリアの流路)が形成される。この状態でソース電極20aおよびドレイン電極20bの間に電圧を印加すると、チャネル領域を通って電流が流れる。
なお、薄膜トランジスタ1は、トップゲート型に限定されず、ボトムゲート型であってもよい。
前述したゲート絶縁層40、バッファ層60および保護層70のような絶縁層(絶縁部)が、本発明の絶縁体組成物を用いて形成されている。
【0030】
以下、本発明の絶縁体組成物について説明する。
本発明の絶縁体組成物は、置換基に有機基を有するポリシルセスキオキサン(以下、「PSQ」と略す。)誘導体を含有することを特徴とする。
PSQは、骨格部分にSiO3/2結合を有するポリシロキサンの総称であり、一般的には3官能のケイ素化合物を加水分解・縮合させることによって得られる。
【0031】
本発明で用いるPSQは、例えば、Hybrid Plastics,Inc.から購入することができる他、Houben−Wyle, Methods of Organic Chemistry, Georg Thieme Verlag, Stuttgart、Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc.、Organic Reactions, John Wiley & Sons Inc.、Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press、新実験化学講座,丸善等に記載されている一般的な有機化学的手法を適宜組み合わせることにより容易に製造できる。
【0032】
PSQ誘導体は、Si−O構造を有することに起因して極めて吸湿性が高く、かつ、置換基に有機基を有することから有機材料(有機ポリマー)との親和性が高い。
このため、PSQ誘導体を含有する絶縁体組成物を用いて、前述したゲート絶縁層40、バッファ層60および保護層70の少なくとも1つを形成することにより、各層が高い吸湿性を有することとなる。そして、これらの層が水分を吸収することにより、有機半導体層30に水分が浸入するのを未然に防ぐことができ、有機半導体層30が経時的に変質・劣化するのを防止することができる。その結果、薄膜トランジスタ1の特性が経時的に劣化するのを防止することができる。
【0033】
また、PSQ誘導体は、有機材料(特に、有機ポリマー)との親和性が高いため、本発明の絶縁体組成物を用いてゲート絶縁層40を形成すると、ゲート絶縁層40と有機半導体層30との高い密着性を得ることができる。その結果、薄膜トランジスタ1の特性の向上を図ることができる。換言すれば、本発明の絶縁体組成物は、薄膜トランジスタ1が備える絶縁層の中でも、特に、ゲート絶縁層40を形成する材料として好適である。
【0034】
また、PSQ誘導体は、有機ポリマーとの親和性が高いことから、本発明の絶縁体組成物を、有機溶剤を含有する液状材料として用いることにより、前記各層を液相プロセスにより形成することができる。これにより、各層の製造時間およびコストの削減、ひいては、薄膜トランジスタ(有機半導体装置)1の製造時間およびコストの削減を図ることができる。また、有機溶剤の種類を選択することにより、ゲート絶縁層40の形成に際して、有機半導体層30に変質・劣化が生じるのを防止しつつ、これを形成することができる。
このPSQ誘導体の好ましい例は、下記式(1)〜(3)で表される化合物である。
【0035】
【化4】

【0036】
【化5】

【0037】
【化6】

【0038】
(式(1)〜(3)中、各Rは、それぞれ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、または、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されたアリール基のいずれかを示す。また、式(1)中、nは、1〜3の整数を示す。)
アルキル基としては、炭素数が1〜15のものが好ましく、炭素数が1〜10の直鎖状あるいは分枝状、または、炭素数が4〜6の環状のものがより好ましい。
アルコキシ基としては、炭素数が1〜15のものが好ましく、炭素数が1〜10の直鎖状あるいは分枝状のものがより好ましい。
【0039】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基、ターフェニル基のような環状構造を1〜3個有するものが好ましく、フェニル基がより好ましい。
また、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のいずれであってもよいが、フッ素原子が好ましい。
【0040】
このようなRの具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2−メチルプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、および、下記に示される置換フェニル基が挙げられる。
【0041】
【化7】

【0042】
Rとして、これらの置換基を有する式(1)〜(3)で表される化合物は、有機材料(特に、有機ポリマー)との親和性(相溶性)が高いものとなる。
なお、PSQ誘導体としては、前記式(1)〜(3)で表される化合物のうちの少なくとも1種であればよいが、特に、式(2)、および式(3)で表される化合物を主成分とするものが好ましい。式(2)、および式(3)で表される化合物は、吸湿性に特に優れるものである。
【0043】
このようなPSQ誘導体の含有量(絶縁体組成物の全重量を基準とするPSQ誘導体の割合)は、0.1〜50重量%程度であるのが好ましく、1〜50重量%程度であるのがより好ましく、10〜50重量%程度であるのがさらに好ましい。これにより、形成された絶縁層(絶縁部)の機械的強度を確実に維持しつつ、PSQ誘導体を添加する効果、すなわち、高い吸湿性が得られる。
【0044】
また、本発明の絶縁体組成物に添加される他の成分としては、例えば、有機溶剤、重合性化合物、熱可塑性樹脂、無機充填剤、カップリング剤、アミン化合物、重合開始剤、重合促進剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
例えば、本発明の絶縁体組成物は、PSQ誘導体を有機溶剤に溶解して調製することができる。
この場合、乾燥(脱溶媒)により、絶縁体組成物を固化して、絶縁層(絶縁部)を形成することができる。
【0045】
また、本発明の絶縁体組成物は、PSQ誘導体および重合性化合物を、有機溶剤に溶解して調製することができる。
この場合、乾燥(脱溶媒)の後、光照射や加熱により、絶縁体組成物を硬化して、絶縁層(絶縁部)を形成することができる。
また、得られる絶縁層(絶縁部)の機械的強度をより向上させることができる。
【0046】
重合性化合物としては、例えば、アクリル酸系化合物、エポキシ系化合物、オキセタン系化合物、スチレン系化合物、ポリイミド前駆体、ポリウレタン前駆体等が挙げられるが、アクリル酸系化合物、エポキシ系化合物、およびオキセタン系化合物のうちの少なくとも1種が好ましい。これらのものは、特に反応性が高いことから好ましい。
アクリル酸系化合物としては、例えば、ビスフェノールA型(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型(メタ)アクリレート、フェノール・ノボラック型(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型(メタ)アクリレート、トリスフェノールメタン型(メタ)アクリレート、ビスフェノールS型(メタ)アクリレート、ビスフェノール型(メタ)アクリレートのような芳香族(メタ)アクリレート化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレートのような脂肪族(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0047】
エポキシ系化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキサイド、ビスフェノールF型エポキサイド、フェノール・ノボラック型エポキサイド、クレゾールノボラック型エポキサイド、トリスフェノールメタン型エポキサイド、ビスフェノールS型エポキサイド、ビスフェノール型エポキサイドのような芳香族エポキサイド化合物、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテルのようなグリシジルエーテル化合物、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、ビス(2,3−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(2,3−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ジシクロペンタジエンオキサイド、ビニルシクロヘキセンオキサイド、下記に示すような脂環族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0048】
【化8】

【0049】
(これらの式において、mは1以上の整数であり、n、p、qおよびrはそれぞれ独立して0以上の整数である。)
オキセタン系化合物としては、下記に示すようなオキセタン化合物等が挙げられる。
【0050】
【化9】

【0051】
また、この場合、重合開始剤(特に、光重合開始剤)を添加するのが好ましい。
この重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル、チオキサントン、カンファーキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ケタール類、ジベンゾイル類、オニウム塩、およびこれらの核置換体等が挙げられ、これらの化合物から少なくとも1つを選択して用いることができる。
【0052】
重合開始剤の好ましい例としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、α,α−ジメトキシ−α−モルホリノ−メチルチオフェニルアセトフェノン、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、および2,4−ジエチルキサントンとp−ジメチルアミノ安息香酸メチルとの混合物等が挙げられる。
【0053】
また、本発明の絶縁体組成物は、PSQ誘導体および熱可塑性樹脂を、有機溶剤に溶解して調製することができる。
この場合、乾燥(脱溶媒)により、絶縁体組成物を固化(硬化)して、絶縁層(絶縁部)を形成することができる。
また、得られる絶縁層(絶縁部)の機械的強度をより向上させることができる。
【0054】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体のようなポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系のような各種熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
また、使用可能な溶剤としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア水溶液、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
【0056】
<電子デバイス>
次に、本発明の電子デバイスとして、前述したようなアクティブマトリクス装置が組み込まれた電気泳動表示装置を一例に説明する。
図3は、電気泳動表示装置の実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図3中上側を「上」、下側を「下」として説明する。
図3に示す電気泳動表示装置200は、前述したアクティブマトリクス装置300と、このアクティブマトリクス装置300上に設けられた電気泳動表示部400とで構成されている。
【0057】
この電気泳動表示部400は、透明電極(共通電極)403を備える透明基板404と、バインダ材405により透明電極403に固定されたマイクロカプセル402とで構成されている。
そして、マイクロカプセル402が画素電極303に接触するようにして、アクティブマトリクス装置300と電気泳動表示部400とが接合されている。
各カプセル402内には、それぞれ、特性の異なる複数種の電気泳動粒子、本実施形態では、電荷および色(色相)の異なる2種の電気泳動粒子421、422を含む電気泳動分散液420が封入されている。
【0058】
このような電気泳動表示装置200では、1本あるいは複数本の走査線302に選択信号(選択電圧)を供給すると、この選択信号(選択電圧)が供給された走査線302に接続されている薄膜トランジスタ1がONとなる。
これにより、かかる薄膜トランジスタ1に接続されているデータ線301と画素電極303とは、実質的に導通する。このとき、データ線301に所望のデータ(電圧)を供給した状態であれば、このデータ(電圧)は画素電極303に供給される。
これにより、画素電極303と透明電極403との間に電界が生じ、この電界の方向、強さ、電気泳動粒子421、422の特性等に応じて、電気泳動粒子421、422は、いずれかの電極に向かって電気泳動する。
【0059】
一方、この状態から、走査線302への選択信号(選択電圧)の供給を停止すると、薄膜トランジスタ1はOFFとなり、かかる薄膜トランジスタ1に接続されているデータ線301と画素電極303とは非導通状態となる。
したがって、走査線302への選択信号の供給および停止、あるいは、データ線301へのデータの供給および停止を適宜組み合わせて行うことにより、電気泳動表示装置200の表示面側(透明基板404側)に、所望の画像(情報)を表示させることができる。
特に、本実施形態の電気泳動表示装置200では、電気泳動粒子421、422の色を異ならせていることにより、多階調の画像を表示することが可能となっている。
【0060】
また、本実施形態の電気泳動表示装置200は、アクティブマトリクス装置300を有することにより、特定の走査線302に接続された薄膜トランジスタ1を選択的にON/OFFすることができるので、クロストークの問題が生じにくく、また、回路動作の高速化が可能であることから、高い品質の画像(情報)を得ることができる。
また、本実施形態の電気泳動表示装置200は、低い駆動電圧で作動するため、省電力化が可能である。
なお、前述したような薄膜トランジスタ1を備えるアクティブマトリクス装置が組み込まれた表示装置は、このような電気泳動表示装置200への適用に限定されるものではなく、例えば、液晶表示装置等に適用することもできる。
【0061】
<電子機器>
このような電気泳動表示装置200は、各種電子機器に組み込むことができる。以下、電気泳動表示装置200を備える本発明の電子機器について説明する。
<<電子ペーパー>>
まず、本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態について説明する。
図4は、本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
この図に示す電子ペーパー600は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成される本体601と、表示ユニット602とを備えている。
このような電子ペーパー600では、表示ユニット602が、前述したような電気泳動表示装置200で構成されている。
【0062】
<<ディスプレイ>>
次に、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態について説明する。
図5は、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。
この図に示すディスプレイ800は、本体部801と、この本体部801に対して着脱自在に設けられた電子ペーパー600とを備えている。なお、この電子ペーパー600は、前述したような構成、すなわち、図4に示す構成と同様のものである。
【0063】
本体部801は、その側部(図中、右側)に電子ペーパー600を挿入可能な挿入口805が形成され、また、内部に二組の搬送ローラ対802a、802bが設けられている。電子ペーパー600を、挿入口805を介して本体部801内に挿入すると、電子ペーパー600は、搬送ローラ対802a、802bにより挟持された状態で本体部801に設置される。
【0064】
また、本体部801の表示面側(下図(b)中、紙面手前側)には、矩形状の孔部803が形成され、この孔部803には、透明ガラス板804が嵌め込まれている。これにより、本体部801の外部から、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を視認することができる。すなわち、このディスプレイ800では、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を、透明ガラス板804において視認させることで表示面を構成している。
また、電子ペーパー600の挿入方向先端部(図中、左側)には、端子部806が設けられており、本体部801の内部には、電子ペーパー600を本体部801に設置した状態で端子部806が接続されるソケット807が設けられている。このソケット807には、コントローラー808と操作部809とが電気的に接続されている。
このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600は、本体部801に着脱自在に設置されており、本体部801から取り外した状態で携帯して使用することもできる。
また、このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600が、前述したような電気泳動表示装置200で構成されている。
【0065】
なお、本発明の電子機器は、以上のようなものへの適用に限定されず、例えば、テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、電子新聞、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等を挙げることができ、これらの各種電子機器の表示部に、電気泳動表示装置200を適用することが可能である。
【0066】
以上、本発明の絶縁体組成物、有機半導体装置、電子デバイスおよび電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
前記実施形態では、有機半導体装置をアクティブマトリクス装置に適用した場合を代表に説明したが、本発明の有機半導体装置は、有機EL表示装置に適用することもできる。この場合、本発明の絶縁体組成物を用いて、例えば、各画素(有機EL素子)を区画するバンクや、保護膜等を形成することができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明の具体的実施例について説明する。
1.絶縁体組成物の調製
まず、以下に示す各成分を混合して、絶縁体組成物A〜Fを調整した。
<絶縁体組成物A(本発明)>
・PSQ誘導体
式(1)で表される化合物(全Rがプロピル基) :40重量%
・重合性化合物
ビスフェノールA型アクリレート :40重量%
・重合開始剤
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン : 1重量%
・有機溶剤
ジエチレングリコールエチルエーテル :19重量%
【0068】
<絶縁体組成物B(本発明)>
・PSQ誘導体
式(2)で表される化合物(全Rがエトキシ基) :40重量%
・重合性化合物
プロピレングリコールジグリシジルエーテル :40重量%
・重合開始剤
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン : 1重量%
・有機溶剤
ジエチレングリコールエチルエーテル :19重量%
【0069】
<絶縁体組成物C(本発明)>
・PSQ誘導体
式(3)で表される化合物(全Rがフェニル基) :40重量%
・重合性化合物
プロピレングリコールジグリシジルエーテル :40重量%
・重合開始剤
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン : 1重量%
・有機溶剤
ジエチレングリコールエチルエーテル :19重量%
【0070】
<絶縁体組成物D(本発明)>
・PSQ誘導体
式(1)で表される化合物(全Rがフェニル基) :30重量%
式(3)で表される化合物(全Rがエチル基) :10重量%
・重合性化合物
ビスフェノールA型アクリレート :40重量%
・重合開始剤
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン : 1重量%
・有機溶剤
ジエチレングリコールエチルエーテル :19重量%
【0071】
<絶縁体組成物E(本発明)>
・PSQ誘導体
式(3)で表される化合物(全Rが2−フルオロ−フェニル基)
:40重量%
・熱可塑性樹脂
ポリプロピレン :40重量%
・有機溶剤
ジエチレングリコールエチルエーテル :20重量%
【0072】
<絶縁体組成物F(比較例)>
・重合性化合物
ビスフェノールA型アクリレート :80重量%
・重合開始剤
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン : 1重量%
・有機溶剤
ジエチレングリコールエチルエーテル :19重量%
【0073】
2.有機薄膜トランジスタの作製
以下に示すようにして、各実施例において、それぞれ、ガラス基板上に薄膜トランジスタを200個ずつ作製した。
(実施例1)
[1] まず、ガラス基板(NECコーニング社製、「OA10」)を用意し、水を用いて洗浄した後、乾燥した。
【0074】
[2] 次に、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)の5%wt/vol酢酸ブチル溶液を、スピンコート法(2400rpm)により塗布した後、60℃×10分間で乾燥した。
これにより、平均厚さ500nmのバッファ層を形成した。
【0075】
[3] 次に、バッファ層上に、フォトリソグラフィー法により、ソース電極およびドレイン電極の形成領域以外の領域にレジスト層を形成した。
そして、レジスト層から露出するバッファ層上に、蒸着法により金の薄膜を形成した後、レジスト層を剥離した。
これにより、平均厚さ100nmのソース電極およびドレイン電極を形成した。
なお、ソース電極とドレイン電極との距離(チャネル長L)は20μm、チャネル幅Wは1mmであった。
【0076】
[4] 次に、バッファ層上に、フルオレン−ビチオフェン共重合体(F8T2)の1%wt/volトルエン溶液を、スピンコート法(2400rpm)により塗布した後、60℃×10分間で乾燥した。
これにより、平均厚さ50nmの有機半導体層を形成した。
[5] 次に、ソース電極、ドレイン電極および有機半導体層を覆うように、前記絶縁体組成物Aを、スピンコート法(2400rpm)により塗布した。
その後、形成された液状被膜を60℃×10分間で乾燥した後、強度7mW/cmの紫外線を120秒間照射して、絶縁体組成物を硬化させた。
これにより、平均厚さ500nmのゲート絶縁層を形成した。
【0077】
[6] 次に、ゲート絶縁層上の、ソース電極とドレイン電極との間の領域に対応する領域に、Ag微粒子水分散液を、インクジェット法により塗布した後、80℃×10分間で乾燥した。
これにより、平均厚さ100nm、平均幅30μmのゲート電極を形成した。
[7] 次に、ポリビニルフェノール(PVP)の2%wt/volブタノ−ル溶液を、スピンコート法(2400rpm)により塗布した後、60℃×10分間で乾燥した。
これにより、平均厚さ500nmの保護層を形成した。
【0078】
(実施例2)
前記工程[5]において、前記絶縁体組成物Bを用いた以外は、前記実施例1と同様にして、薄膜トランジスタを作製した。
(実施例3)
前記工程[5]において、前記絶縁体組成物Cを用いた以外は、前記実施例1と同様にして、薄膜トランジスタを作製した。
【0079】
(実施例4)
前記工程[5]において、前記絶縁体組成物Dを用いた以外は、前記実施例1と同様にして、薄膜トランジスタを作製した。
(実施例5)
前記工程[5]において、前記絶縁体組成物Eを用い、紫外線の照射を省略した以外は、前記実施例1と同様にして、薄膜トランジスタを作製した。
【0080】
(比較例1)
前記工程[5]において、前記絶縁体組成物Fを用いた以外は、前記実施例1と同様にして、薄膜トランジスタを作製した。
(比較例2)
前記工程[5]において、アルミナを真空蒸着法により被着させ、ゲート絶縁層を形成した以外は、前記実施例1と同様にして、薄膜トランジスタを作製した。
【0081】
3.評価
各実施例および各比較例で作製した薄膜トランジスタに対して、それぞれ、耐湿試験を行った。
この耐湿試験は、120℃、100%RH、0.2MPaの条件下で500時間、放置する前後でのトランジスタ特性の変化を確認することにより行った。
【0082】
なお、トランジスタ特性は、従来から知られている方法により、市販の測定装置を用いて測定した。
その結果、各実施例の薄膜トランジスタでは、いくつかのものに、トランジスタ特性(しきい電圧値やS値)が若干低下するものが認められた程度であった。
また、PSQ誘導体として、式(2)、および式(3)で表される化合物を用いた実施例2、3、4、5の薄膜トランジスタで、トランジスタ特性の低下を認めるものの数が減少する傾向にあり、特に、式(2)、および式(3)で表される化合物を主成分とするPSQ誘導体を用いた実施例2、3、5において、特に顕著であった。
【0083】
これに対して、比較例1の薄膜トランジスタでは、多くのものに、トランジスタ特性の低下を認めた。
また、比較例2の薄膜トランジスタは、比較例1の薄膜トランジスタよりトランジスタ特性の低下が小さかったが、初期のトランジスタ特性が十分なものであるとは言い難いものであった。これは、ゲート絶縁層の形成時に、有機半導体層にダメージが生じることを示唆する結果であると推察される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の有機半導体装置を適用したアクティブマトリクス装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すアクティブマトリクス装置が備える有機薄膜トランジスタの構成を示す図(縦断面図および平面図)である。
【図3】電気泳動表示装置の実施形態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
【図5】本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
1‥‥薄膜トランジスタ 20a‥‥ソース電極 20b‥‥ドレイン電極 30‥‥有機半導体層 40‥‥ゲート絶縁層 50‥‥ゲート電極 60‥‥バッファ層 70‥‥保護層 200‥‥電気泳動表示装置 300‥‥アクティブマトリクス装置 301‥‥データ線 302‥‥走査線 303‥‥画素電極 400‥‥電気泳動表示部 402‥‥マイクロカプセル 420‥‥電気泳動分散液 421、422‥‥電気泳動粒子 403‥‥透明電極 404‥‥透明基板 405‥‥バインダ材 500‥‥基板 600‥‥電子ペーパー 601‥‥本体 602‥‥表示ユニット 800‥‥ディスプレイ 801‥‥本体部 802a、802b‥‥搬送ローラ対 803‥‥孔部 804‥‥透明ガラス板 805‥‥挿入口 806‥‥端子部 807‥‥ソケット 808‥‥コントローラー 809‥‥操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機半導体装置が備える絶縁部の形成に用いられ、置換基に有機基を有するポリシルセスキオキサン誘導体を含有することを特徴とする絶縁体組成物。
【請求項2】
前記ポリシルセスキオキサン誘導体は、下記式(1)〜(3)で表される化合物のうちの少なくとも1種である請求項1に記載の絶縁体組成物。
【化1】

【化2】

【化3】

(式(1)〜(3)中、各Rは、それぞれ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、または、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換されたアリール基のいずれかを示す。また、式(1)中、nは、1〜3の整数を示す。)
【請求項3】
前記アルキル基は、炭素数が1〜10の直鎖状あるいは分枝状、または、炭素数が4〜6の環状のものである請求項2に記載の絶縁体組成物。
【請求項4】
前記アルコキシ基は、炭素数が1〜10の直鎖状あるいは分枝状のものである請求項2または3に記載の絶縁体組成物。
【請求項5】
前記アリール基は、フェニル基である請求項2ないし4のいずれかに記載の絶縁体組成物。
【請求項6】
前記ハロゲン原子は、フッ素原子である請求項2ないし5のいずれかに記載の絶縁体組成物。
【請求項7】
重合性化合物を含有する請求項1ないし6のいずれかに記載の絶縁体組成物。
【請求項8】
前記重合性化合物は、アクリル酸系化合物、エポキシ系化合物、およびオキセタン系化合物のうちの少なくとも1種である請求項7に記載の絶縁体組成物。
【請求項9】
熱可塑性樹脂を含有する請求項1ないし8のいずれかに記載の絶縁体組成物。
【請求項10】
前記ポリシルセスキオキサン誘導体の含有量は、0.1〜50重量%である請求項1ないし9のいずれかに記載の絶縁体組成物。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の絶縁体組成物を用いて形成された絶縁部を備えることを特徴とする有機半導体装置。
【請求項12】
当該有機半導体装置は、有機薄膜トランジスタを備え、
前記絶縁部は、前記有機薄膜トランジスタが備える絶縁層のうちの少なくとも1つである請求項11に記載の有機半導体装置。
【請求項13】
前記絶縁層は、ゲート絶縁層である請求項12に記載の有機半導体装置。
【請求項14】
請求項11ないし13のいずれかに記載の有機半導体装置を備えることを特徴とする電子デバイス。
【請求項15】
請求項14に記載の電子デバイスを備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−253510(P2006−253510A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70074(P2005−70074)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】