説明

耐熱性ポリシロキサン系組成物

【課題】特に耐熱性が高く、成型性に優れるポリシロキサン系組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】少なくとも以下のA成分を1つ以上含みかつB成分を1つ以上含む流動性液体または固体のポリシロキサン系組成物であって、
SiO3/2 [A]
SiO2/2 [B]
(ここでR、R、Rは炭化水素基または芳香族環を含む炭化水素基でありそれぞれ異なっていても良いし同一でも良い)
該ポリシロキサン系組成物は、加熱により、成型、塗布または前記A、B以外の固形成分を混合するなどの作業が可能な粘度まで粘性が調整でき、その後高温で熱処理することにより硬化物を得ること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電機・電子部品の封止、接着、成型体に用いられる材料に関するものであって、特に耐熱性が高く、成型性に優れるポリシロキサン系組成物またはポリシロキサン系組成物溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高機能、高性能化に伴い、半導体部品の発熱量は増加している。特に、電力・電源に用いられるパワー半導体は、広い周波数範囲において高電圧・大電流化が求められ、それに伴い発熱量も増大している。このような半導体は、チップ全体を封止材にて覆ってあるので、その封止材に求められる耐熱温度も高くなってきている。
【0003】
半導体部品の発熱量の増加に伴い、従来封止材として使用されていたエポキシ樹脂では、耐熱性が不充分になってきている。ポリイミド樹脂は、これら耐熱性を満足するものもあるが、特開平8−41200号公報、特開平10−270611号公報には、硬化の際に250〜400℃の加熱が必要であり、この硬化加熱により半導体部品がダメージを受け性能が劣化してしまう。一方、シリコーン樹脂も封止材として広く使用されている。しかしながら、特開平8−208840号公報によると、シリコーン樹脂の硬化方法として、ビニル基やアリル基等のアルケニル基とSiH基の関与するヒドロシリル化反応、又は、シリコーンに結合したエポキシ樹脂等の反応性有機官能基の重合があるが、いずれもこれら架橋基の熱安定性が低いため、この方法は硬化物に高い耐熱性を要する用途に向かない。
【特許文献1】特開平8−41200号公報
【特許文献2】特開平10−270611号公報
【特許文献3】特開平8−208840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に耐熱性が高く、成型性に優れるポリシロキサン系組成物またはポリシロキサン系組成物溶液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記問題の改善のため鋭意検討した結果、下記組成物がその課題を解決することを見出した。即ち本発明のポリシロキサン系組成物は 少なくとも以下のA成分を1つ以上含みかつB成分を1つ以上含む流動性液体または固体のポリシロキサン系組成物であって、
SiO3/2 [A]
SiO2/2 [B]
(ここでR、R、Rは炭化水素基または芳香族環を含む炭化水素基でありそれぞれ異なっていても良いし同一でも良い)
該ポリシロキサン系組成物は、加熱により、成型、塗布または前記A、B以外の固形成分を混合するなどの作業が可能な粘度まで粘性が調整でき、その後高温で熱処理することにより硬化物を得ることを特徴とする。
【0006】
成型、塗布または前記A、B以外の固形成分を混合するなどの作業ために行う加熱温度が、20〜230℃であることを特徴とする。加熱温度が230℃を超えると硬化反応が促進され、良好な作業性を確保できる粘性が得られず、高粘度になる傾向がある。
【0007】
さらに、最終熱処理温度が230〜400℃で硬化物を得る事を特徴とする。最終熱処理温度が230℃未満では、硬化物が得られるまでの時間が長くなる、あるいは、十分な耐熱性を示すものが得られない。また、最終熱処理温度が400℃を超えると、硬化物が熱分解を起こす、あるいは電子部品などの周辺部材の耐熱性がないため該部材にダメージを与えてしまうことになる。
【0008】
本発明のポリシロキサン系組成物は、少なくともA成分を1つ以上含みかつB成分を1つ以上含む組成物とすることで、室温では流動性を示す液体または固体状態である。該ポリシロキサン系組成物を20〜230℃の範囲で加熱することにより、成型、塗布または前記A、B以外の固形成分を混合するなどの作業に最適な粘度に調整できる。該ポリシロキサン系組成物が流動性液体または固体のいずれの場合においても、粘度調整用加熱により成型、塗布または前記A、B以外の固形成分を混合するなどの作業が可能な粘性まで粘度が低下する。
【0009】
その後、さらに230〜400℃の高温にて熱処理をすることで、硬化物を得る。得られた硬化物は、再び粘度調整用加熱温度まで加熱しても形状は変化せず、高耐熱性を示すことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のポリシロキサン系組成物溶液は、前記ポリシロキサン系組成物と、沸点が100〜300℃である芳香族化合物、多価アルコール系化合物、多価アルコールエーテル酢酸エステル系化合物および多価アルコールエーテル系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つの有機溶媒とが含有されてなることを特徴とする。該ポリシロキサン系組成物は、ポリシロキサン系組成物溶液に対し、0.1〜90質量%となるように含有されることを特徴とする。
【0011】
該ポリシロキサン系組成物溶液は、25℃における粘度が10〜100,000mPa・sとなることを特徴とし、本粘度範囲となることで室温付近にて良好なポッティング性を有する。さらに、該ポリシロキサン系組成物溶液はキャスティングまたはコーティングなどの方法により、フィルムまたはシート成型が可能となる。
【0012】
また、該ポリシロキサン系組成物溶液をポッティング、キャスティングまたはコーティングなど膜状にした後、粘度調整温度に加熱することで含有している該有機溶媒が一部または全部除去されかつ該ポリシロキサン系組成物の粘度が50〜100,000mPa・sとなり、レベリングや精細な成型形状の調整が可能となる。その後、さらに230〜400℃の高温にて熱処理をすることで、前記有機溶媒がすべて除去された硬化物を得る。得られた硬化物は、前記有機溶媒を含まないポリシロキサン系組成物の場合と同様に、再び粘度調整用加熱温度まで加熱しても形状は変化せず、高耐熱性を示すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリシロキサン系組成物は、高耐熱性が求められる封止材、接着剤、レンズ材料などの成型体において耐久性能が向上する。従って、半導体素子や電子部品の信頼性を高め、その結果、更なる耐久性の向上が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、出発原料であるケイ素に結合した加水分解性基を有するオルガノシラン化合物を加水分解・重縮合することで得られる。
【0015】
加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基、クロロ基、ブロモ基などのハロゲン基、アミノ基、アジド基、アセトアミド基、イミダゾール基、シラザンなどのSi−N結合、アルキルスルホネート基、パーフルオルアルキルスルホネート基などのSi−O−S結合、あるいはニトリル基などが挙げられる。
【0016】
A成分またはB成分のR、R、Rは炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜5の炭化水素基でNおよび/またはO等のヘテロ原子を含んでも構わない。または芳香族を含む炭化水素基であり、好ましくは炭素数6〜30、さらに好ましくは炭素数6〜15の芳香族を含む炭化水素基でNおよび/またはO等のヘテロ原子を含んでも構わない。
【0017】
A、B成分以外に、ケイ素に結合した加水分解性基を有するシラン化合物およびそれを加水分解・重縮合したシロキサンオリゴマーも含んでも良い。
【0018】
加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基、クロロ基、ブロモ基などのハロゲン基、アミノ基、アジド基、アセトアミド基、イミダゾール基、シラザンなどのSi−N結合、アルキルスルホネート基、パーフルオルアルキルスルホネート基などのSi−O−S結合、あるいはニトリル基などが挙げられる。
【0019】
A成分とB成分の比、A/B(モル比)は、a)RかつRかつRが芳香族を含む炭化水素基の場合、9より大きいことが好ましい。また、b)Rは芳香族を含まない炭化水素基でRかつRが芳香族を含む炭化水素基の場合、1.5より大きいことが好ましい。また、c)Rは芳香族を含む炭化水素基でRかつ/もしくはRが芳香族を含まない炭化水素基の場合は、0.43〜9であることが好ましい。c)の場合、9を超えると硬化体にクラックが入りやすく、0.43未満では十分な機械的強度を有する硬化体が得られない。c)の場合、より好ましくは、0.67〜4である。
【0020】
該ポリシロキサン系組成物の重量平均分子量(以下、Mwと表記する)は1,000〜40,000が好ましい。Mwが1,000未満では、縮合水の発生量が多く、泡が発生し易く成型性が悪い、もしくは、硬化体の機械的強度が低くなる。また、Mwが40,000より大きいと、加熱時に成型可能な粘度に調整できない。
【0021】
また、加熱により調整可能な粘度範囲は50〜100,000mPa・sが好ましい。50mPa・s未満となるようなポリシロキサン系組成物は縮合水の発生量が多く泡が発生し易く成型性が悪いか、もしくは硬化体の機械的強度が低くなる。100,000mPa・s以上では粘度が高すぎて成型性に劣る。
【0022】
粘度調整用の加熱温度は、20〜230℃が好ましい。加熱温度が230℃を超えると硬化反応が促進され、良好な作業性を確保できる粘性が得られず、高粘度になる傾向がある。
【0023】
最終熱処理温度は230〜400℃が好ましい。230℃未満では、硬化物が得られるまでの時間が長くなる、あるいは、十分な耐熱性を示すものが得られない。また、最終熱処理温度が400℃を超えると、硬化物が熱分解を起こす、あるいは電子部品などの周辺部材の耐熱性がないため該部材にダメージを与えてしまう場合がある。より好ましくは230〜350℃、特に好ましくは230〜300℃である。
【0024】
また、ポリシロキサン系組成物の硬化過程にはシラノール縮合触媒を用いることもできる。シラノール縮合触媒は、錫、チタン、アルミニウムの有機配位子を有する金属錯体から選ばれる少なくとも一つの物質であることが好ましい。シラノール縮合触媒の例としては、ジブチルスズジアセテート、ビス(アセトキシジブチルスズ)オキサイド、ビス(ラウロキシジブチルスズ)オキサイド、ジブチルスズビスアセチルアセトナート、ジブチルスズビスマレイン酸モノブチルエステル、ジオクチルビスマレイン酸モノブチルエステル、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、チタンテトラ(アセチルアセトナート)、ジオクタノキシチタンジオクタネート、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムアセチルアセトナートなどが挙げられる。
【0025】
また、前記シラノール縮合触媒の中でも、毒性の低いチタン、アルミニウムの有機配位子を有する金属錯体が好ましく、特にアルミニウムアセチルアセトナートが好ましい。
【0026】
また、前記A、B以外の固形成分としては、金属、金属酸化物、金属ハロゲン化物、錯体等の金属化合物、色素、顔料、セラミックスなどが挙げられる。
【0027】
例えば、紫外線、可視光、赤外線を遮断する遮光性部材中に分散される微粒子材料を前記A、B以外の固形成分として用いることができ、紫外線遮断微粒子として酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどが、可視光遮断微粒子としてカーボン、遷移金属複合酸化物などが、赤外線遮断微粒子としてインジウム錫酸化物(ITO)、錫アンチモン酸化物(ATO)、タングステン酸化物、窒化チタン(TiN)、導電性酸化亜鉛、無水アンチモン酸亜鉛、六ホウ化化合物などが挙げられる。六ホウ化化合物としては六ホウ化ランタン(LaB6)、六ホウ化セリウム(CeB6)、六ホウ化プラセオジム(PrB6)、六ホウ化ネオジム(NdB6)、六ホウ化ガドリニウム(GdB6)あるいはこれらの混合物がある。
【0028】
また、導電性部材中に分散される導電性の微粒子を前記A、B以外の固形成分として用いることができ、該微粒子として、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、インジウムチタン酸化物(ITiO)、インジウムジルコニウム酸化物、錫アンチモン酸化物(ATO)、フッ素錫酸化物(FTO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)等の酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛を主成分とする微粒子が挙げられる。
【0029】
また、防汚・抗菌性部材中に分散された抗菌性の微粒子を前記A、B以外の固形成分として用いることができ、該微粒子として、酸化チタン(TiO2)、酸化マンガン(MnO2)、白金微粒子等が挙げられる。
【0030】
その他、溶融シリカ、ヒュームドシリカ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸、含水珪酸カルシウム、含水珪酸アルミニウム、ガラスビーズ、石英粉末、雲母、タルク、マイカ、クレー、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、チタン酸カリウム、珪藻土、ガラス繊維、フッ素化ダイヤモンド、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、金属酸化物などの無機充填剤を前記A、B以外の固形成分として用いることができる。
【0031】
また、前記無機充填材は単独または2種以上を併用することができる。また、公知の表面処理剤で処理されたものやコロイド状の溶液でも良い。
【0032】
本発明のポリシロキサン系組成物溶液に用いる有機溶媒は、芳香族化合物、多価アルコール系化合物、多価アルコールエーテル酢酸エステル系化合物および多価アルコールエーテル系化合物であり、沸点が100〜300℃であることが好ましい。沸点が100℃未満の有機溶媒の場合、加熱時に溶媒が沸騰しやすく、溶媒の蒸発速度が速いことから、表面で泡が破れてレベリングする前に粘度が増大するため、泡や対流跡が残り易く、成型性が悪い。また沸点が300℃より高い有機溶媒の場合、加熱・揮発による溶媒の除去が困難となる。より好ましくは沸点が110〜260℃が好ましく、特に沸点が110〜220℃が好ましい。
【0033】
前記有機溶媒の例としては、芳香族化合物の場合、トルエン、キシレン(オルト、メタ、パラ体)、多価アルコール系化合物の場合、エチレングリコール、1,3―オクチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2―ブタンジオール、1,3―ブタンジオール、1,4―ブタンジオール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,5―ペンタンジオールなどが挙げられ、多価アルコールエーテル酢酸エステル化合物の場合、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、グリセリン1,3―ジアセタート、グリセリントリアセタート、グリセリンモノアセタート、ジエチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタートなどが挙げられ、多価アルコールエーテル化合物の場合、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメトキシメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0034】
また、前記有機溶媒は、単独のものであっても、複数の混合溶媒であっても良い。
【0035】
また、前記有機溶媒の中でも、水酸基を持たない芳香族化合物、多価アルコールエーテル酢酸エステル系化合物および多価アルコールエーテル系化合物が好ましい。水酸基を持つ前記有機溶媒は前記ポリシロキサン系組成物のシラノール基と水素結合し、粘度が高くなるため作業性が悪くなる、もしくは重縮合反応を阻害し、硬化時間が長くなる。
【0036】
また、前記ポリシロキサン系組成物は透明でも良いし、不透明でも良い。さらに最終熱処理後に得られる硬化体が透明でも良いし、不透明でも良い。
【0037】
本発明のポリシロキサン系組成物は、レンズ、光学部品およびその他の成型体の材料、封止材、接着剤、シート、フィルムなどの材料として用いることができる。
【0038】
本発明のポリシロキサン系組成物またはポリシロキサン系組成物溶液は、前記固形成分を含有するまたは含有しない、透明なまたは不透明なレンズ、光学部品およびその他の成型体の材料として用いることができる。
【0039】
また、本発明のポリシロキサン系組成物またはポリシロキサン系組成物溶液は、前記固形成分を含有するまたは含有しない、透明なまたは不透明な封止材として用いることができる。
【0040】
また、本発明のポリシロキサン系組成物またはポリシロキサン系組成物溶液は、前記固形成分を含有するまたは含有しない、透明なまたは不透明な接着剤として用いることができる。
【0041】
また、本発明のポリシロキサン系組成物またはポリシロキサン系組成物溶液は、前記固形成分を含有するまたは含有しない、透明なまたは不透明なシート材料として用いることができる。
【0042】
また、本発明のポリシロキサン系組成物またはポリシロキサン系組成物溶液は、前記固形成分を含有するまたは含有しない、透明なまたは不透明なフィルム材料として用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、本実施例および比較例で得られたポリシロキサン系組成物およびその硬化体は、以下に示す方法により品質評価を行った。
【0044】
(Mwの測定)
ゲル浸透クロマトグラフィー「HLC−8020」(東ソー株式会社製)を用いて、溶出溶媒をTHFとし、ポリスチレン換算の重量平均分子量を測定した。
【0045】
〔ポリシロキサン系組成物の評価方法〕
(粘度測定)
室温で粘性液体状のポリシロキサン系組成物、または、ポリシロキサン系組成物溶液、または、室温で固体状のポリシロキサン系組成物の、粘度調整用の加熱温度における粘度を測定する場合、回転粘度計「DV−II+Pro」と温度制御ユニット「THERMOSEL」(いずれもBROOKFIELD社製)を用いて測定した。
【0046】
〔ポリシロキサン系組成物またはポリシロキサン系組成物溶液を硬化して得られる硬化体の評価方法〕
(5%重量減少温度測定)
本発明のポリシロキサン系組成物の耐熱性評価として、熱重量・示差熱分析「TG8120」(株式会社リガク製)を用いて、空気70ml/分の気流下で硬化体10mgを昇温速度5℃/分で30℃から600℃まで昇温し、測定前の重量を基準(100%)として総重量の5%が減少した時点の温度を求めた。なお、5%重量減少温度が300℃以上のものを合格とした。
【0047】
実施例1
室温でフェニルトリメトキシシラン50g、ジメチルジメトキシシラン30gを120gのイソプロピルアルコールに溶解させた後、水180g、氷酢酸30mgを加えて混合した。混合溶液を100℃で4時間加熱攪拌し粘性液体を得た。これをジイソプロピルエーテルに溶解し、純水で酢酸を抽出した。ジイソプロピルエーテルを留去し、大気圧下150℃で9時間加熱し、ポリシロキサン系組成物を得た。このポリシロキサン系組成物は、Mwが10,000であり、室温で固体であった。
【0048】
このポリシロキサン系組成物の150℃における粘度は1,500mPa・sであった。このポリシロキサン系組成物をあらかじめ配線基板が設置された型に封止し、大気圧下140℃で10時間、150℃で5時間、大気圧下170℃で5時間、大気圧下200℃で2時間、大気圧下250℃で3時間加熱することで、硬化体を得た。この硬化体の5%重量減少温度は398℃であった。上記方法で得られたポリシロキサン系組成物、及びその硬化体の諸物性を表1に示す。
【0049】
【表1】



【0050】
実施例2
室温でフェニルトリメトキシシラン50g、ジメチルジメトキシシラン30gを120gのイソプロピルアルコールに溶解させた後、水180g、氷酢酸30mgを加えて混合した。混合溶液を100℃で4時間加熱攪拌し無色透明な粘性液体を得た。これをジイソプロピルエーテルに溶解し、純水で酢酸を抽出した。ジイソプロピルエーテルを留去し、大気圧下150℃で12時間加熱し、ポリシロキサン組成物を得た。このポリシロキサン組成物はMwが18,000であった。このポリシロキサン組成物をジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタートに溶解し、該ポリシロキサンの含有量が60質量%である溶液を得た。
【0051】
この溶液の25℃の粘度は200mPa・sであった。この溶液をあらかじめ配線基板が設置された型に注入し、大気圧下150℃で3時間、大気圧下170℃で5時間、大気圧下200℃で2時間、大気圧下250℃で3時間加熱することで、厚さ5mmで泡のない硬化体を得た。この硬化体の5%重量減少温度は397℃であった。上記方法で得られたポリシロキサン系組成物、ポリシロキサン系組成物溶液、及びその硬化体の諸物性を表1に示す。
【0052】
実施例3
実施例2の溶液に平均粒子径23μmの溶融シリカ「FB−20D」(電気化学工業株式会社製)を混合し、ポリシロキサン組成物とシリカの合計に対して該溶融シリカが76質量%となるように調製した。混合溶液の粘度は25℃において12,000mPa・sであった。混合溶液をあらかじめ配線基板が設置された型に封止し、大気圧下150℃で3時間、大気圧下170℃で5時間、大気圧下200℃で2時間、大気圧下250℃で3時間加熱することで、厚さ7mmで泡のない複合硬化体を得た。この硬化体の5%重量減少温度は532℃であった。上記方法で得られたポリシロキサン系組成物、ポリシロキサン系組成物溶液、及びその複合硬化体の諸物性を表1に示す。
【0053】
実施例4
(固形成分Cの作製)
室温でフェニルトリメトキシシラン12g、ジフェニルジメトキシシラン34gを80gのエチルアルコールに溶解させた後、水180g、氷酢酸1.2gを加えて混合した。混合溶液を60℃で3時間加熱することにより加水分解させた後、大気圧下150℃で5時間、減圧下で245℃1時間加熱し、Mwが1,500であり、室温で固体の固形成分を得た(以下、固体Cと表記)。
【0054】
(ポリシロキサン組成物の作製)
固体Cを、実施例1で得たポリシロキサン組成物に前記A、B以外の固形成分として混合し、ポリシロキサン組成物と該固体Cの合計に対して該固体Cが20質量%となるように調製した。
【0055】
この混合物の150℃における粘度は1,500mPa・sであった。この混合物をあらかじめ配線基板が設置された型に封止し、150℃で10時間、大気圧下200℃で2時間、大気圧下265℃で1時間、大気圧下250℃で5時間加熱することで硬化体を得た。この硬化体の5%重量減少温度は342℃であった。上記方法で得られたポリシロキサン系組成物、及びその硬化体の諸物性を表1に示す。
【0056】
実施例5
室温でフェニルトリメトキシシラン50g、ジメチルジメトキシシラン30gを120gのイソプロピルアルコールに溶解させた後、水180g、氷酢酸30mgを加えて混合した。混合溶液を100℃で4時間加熱攪拌し無色透明な粘性液体を得た。これをジイソプロピルエーテルに溶解し、純水で酢酸を抽出した。ジイソプロピルエーテルを留去し、大気圧下150℃で12時間加熱し、ポリシロキサン組成物を得た。このポリシロキサン組成物はMwが18,000であった。このポリシロキサン組成物をジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタートに溶解し、さらにアセチルアセトンアルミニウムを混合してポリシロキサン組成物溶液を得た。なお、溶液の該ポリシロキサン組成物の含有量は60質量%であり、アセチルアセトンアルミニウムはポリシロキサン組成物に対し、0.025質量%の割合で混合した。
【0057】
この溶液の25℃の粘度は200mPa・sであった。この溶液を、あらかじめ配線基板が設置された型に注入し、大気圧下150℃で3時間、大気圧下170℃で2時間、大気圧下250℃で2時間加熱することで、厚さ5mmで泡のない硬化体を得た。この硬化体の5%重量減少温度は410℃であった。上記方法で得られたポリシロキサン系組成物、ポリシロキサン系組成物溶液、及びその硬化体の諸物性を表1に示す。
【0058】
比較例1
室温でフェニルトリメトキシシラン80g、ジメチルジメトキシシラン13gを120gのイソプロピルアルコールに溶解させた後、水180g、氷酢酸30mgを加えて混合した。混合溶液を60℃で3時間、85℃で30分間加熱攪拌しポリシロキサン系組成物を得た。このポリシロキサン系組成物は、Mwが500であり、室温で液体であった。
【0059】
このポリシロキサン系組成物の粘度は30℃で30mPa・sであった。このポリシロキサン系組成物をあらかじめ配線基板が設置された型に注入し、大気圧下150℃で加熱したところ、激しく発泡し、型からあふれ出た。結果を表1に示す。
【0060】
比較例2
実施例1で得られたポリシロキサン系組成物をあらかじめ配線基板が設置された型に封止し、粘度調整を行わずに250℃に加熱したところ、反応が激しく進行することによる泡が発生して、成型性が悪かった。結果を表1に示す。
【0061】
比較例3
実施例1で得られたポリシロキサン系組成物をあらかじめ配線基板が設置された型に封止し、大気圧下140℃で10時間、150℃で5時間、大気圧下170℃で5時間、大気圧下200℃で2時間、大気圧下450℃で3時間加熱すると、黄色く着色するとともに、クラックが入った。結果を表1に示す。
【0062】
比較例4
実施例1で得られたポリシロキサン系組成物をあらかじめ配線基板が設置された型に封止し、大気圧下140℃で10時間、150℃で5時間、加熱した。この硬化体の5%重量減少温度は293℃であり、耐熱性が低かった。結果を表1に示す。
【0063】
比較例5
室温でフェニルトリメトキシシラン18g、ジフェニルジメトキシシラン15gをエチルアルコール80gに溶解させた後、水180g、氷酢酸1.2gを加えて混合した。混合溶液を60℃で3時間加熱することにより加水分解させた後、大気圧下150℃で5時間加熱、減圧下で245℃1時間加熱し攪拌しポリシロキサン系組成物を得た。このポリシロキサン系組成物は、Mwが1,400であり、室温で固体であった。
【0064】
このポリシロキサン系組成物は軟化温度83℃の熱可塑体であった。このポリシロキサン系組成物をあらかじめ配線基板が設置された型に注入し、大気圧下150℃で5時間、大気圧下300℃で5時間加熱したが、軟化温度83℃の熱可塑体のままであった。結果を表1に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下のA成分を1つ以上含みかつB成分を1つ以上含む流動性液体または固体のポリシロキサン系組成物であって、
SiO3/2 [A]
SiO2/2 [B]
(ここでR、R、Rは炭化水素基または芳香族環を含む炭化水素基でありそれぞれ異なっていても良いし同一でも良い)
該ポリシロキサン系組成物は、加熱により、成型、塗布または前記A、B以外の固形成分を混合するなどの作業が可能な粘度まで粘性が調整でき、その後高温で熱処理することにより硬化物を得ることを特徴とするポリシロキサン系組成物。
【請求項2】
加熱により調整可能な粘度範囲が50〜100,000mPa・sであることを特徴とする請求項1に記載のポリシロキサン系組成物。
【請求項3】
粘度調整用の加熱温度が、20〜230℃であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリシロキサン系組成物。
【請求項4】
硬化物を得るための最終熱処理温度が230〜400℃であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のポリシロキサン系組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のポリシロキサン系組成物と、沸点が100〜300℃である芳香族化合物、多価アルコール系化合物、多価アルコールエーテル酢酸エステル系化合物および多価アルコールエーテル系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つの有機溶媒とが含有されたポリシロキサン系組成物溶液であり、該ポリシロキサン系組成物は、ポリシロキサン系組成物溶液に対し、0.1〜90質量%となるように含有されることを特徴とするポリシロキサン系組成物溶液。
【請求項6】
25℃における粘度が10〜100,000mPa・sとなることを特徴とする請求項5に記載のポリシロキサン系組成物溶液。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の封止材として用いるポリシロキサン系組成物またはポリシロキサン系組成物溶液。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の接着剤として用いるポリシロキサン系組成物またはポリシロキサン系組成物溶液。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれかに記載のレンズ材料として用いるポリシロキサン系組成物またはポリシロキサン系組成物溶液。

【公開番号】特開2011−57957(P2011−57957A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291270(P2009−291270)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】