説明

耐熱性高分子フィルムおよびその製造方法

【課題】良好な絶縁性を持ち、比誘電率と誘電正接が低く、かつその温度依存性が小さい耐熱性高分子フィルムを提供する。
【解決手段】主鎖にイミド結合を有する高分子90.0〜99.99質量部、カーボンナノチューブ0.01〜10.0質量部からなり、線膨張係数が−5ppm/℃〜+20ppm/℃の範囲であり、体積抵抗率が1×1010Ωcm以上であることを特徴とする耐熱性高分子フィルムであり、好ましくは主鎖にイミド結合を有する高分子がポリイミドベンゾオキサゾールであり、カーボンナノチューブが金属と複合されたカーボンナノチューブである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性高分子フィルム、およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、誘電特性の温度依存性が小さい耐熱性高分子フィルムおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気電子機器用、半導体装置用材料に求められている特性のなかで、電気特性と耐熱性は、最も重要な特性である。特に、近年、回路の微細化と信号の高速化に伴い、誘電率の低い絶縁材料が要求されている。この2つの特性を両立させるための材料として、耐熱性高分子を用いた絶縁材が、期待されている。例えば、従来から用いられている二酸化シリコン等の無機の絶縁材は、高耐熱性を示すが、誘電率が高く、要求特性が高度化している現在では、前述の特性について、両立が困難になりつつあり、ポリイミド樹脂に代表される耐熱性高分子は、電気特性と耐熱性に優れ、2つの特性の両立が可能であり、実際にプリント回路基板や半導体装置のパッシベーション膜などに用いられている。
【0003】
しかしながら、近年の半導体装置の高機能化、高性能化にともない、電気特性、耐熱性について著しい向上が必要とされているため、更に高性能な高分子材料が、必要とされるようになっている。特に、誘電特性に関しては、比誘電率や誘電正接の値そのものが小さいことはもちろんのこと、さらに温度に変化が小さいことが求められてきている。これに対して、これまでには、例えば、ポリイミド等の耐熱性高分子材料に微細な空隙を多数形成させて実効的な比誘電率を下げる試みがなされている。残念ながらこのような試みの多くは、高分子材料の機械的な特性を損ない、また微細空隙に進入する水分などの極性不純物の影響により期待とは裏腹に誘電特性を低下せしめてしまう場合すらある。特に空隙を利用して低誘電率化を計った場合には、空隙内に進入した水分など極性物質が高周波域にて共鳴を生じ、また共鳴状態が温度により変化することにより誘電特性の温度依存性、周波依存性が悪化することがあった。
【0004】
かかる問題を解決するため、あらかじめ微細な空隙を有する物質を配合することにより誘電特性を改善する試みがなされている。しかしながら、水系プロセスにより得られる所謂中空の高分子粒子の多くは耐熱性に劣るため、かかる用途には不適である。シリカバルーンなどの無機の中空粒子はそのサイズが比較的大きいために近年の回路微細化に対応する程度の微細な空隙としても散ることはできない。
特殊な例として特許文献1にはナノオーダーの自由体積を有するフィラーをポリイミドなどの耐熱性高分子に配合することにより誘電特性を改善する旨の提案がある
【特許文献1】特開2001−98160号公報
【0005】
しかしながら、かかる提案において自由体積を有するフィラーとして用いられるフラーレンやカーボンナノチューブは、それ自体が導電体であるため、自由体積による比誘電率の低下と同時に導体成分が加わることによる誘電分散が同時に生じ、誘電正接はかえって大きくなるという弊害があるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、良好な絶縁性と、低い非誘電率と誘電正接、ならびにその温度依存性が小さく、耐熱性にも優れた耐熱性高分子フィルム、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、主鎖にイミド結合を有する高分子90.0〜99.99質量部、カーボンナノチューブ0.01〜10.0質量部からなり、線膨張係数が−5ppm/℃〜+20ppm/℃の範囲であり、体積抵抗率が1×1010Ωcm以上であることを特徴とする耐熱性高分子フィルムである。好ましい態様は、主鎖にイミド結合を有する高分子がベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン類と芳香族テトラカルボン酸二無水物類から得られるポリイミドベンゾオキサゾールである。また、カーボンナノチューブは、金属と複合されたカーボンナノチューブである。カーボンナノチューブがチューブ内部に金属を内包するものであることを特徴とする耐熱性高分子フィルム
また、本発明は、主鎖にイミド結合を有する高分子の前駆体であるポリアミド酸溶液にカーボンナノチューブを分散させ、該ポリアミド酸溶液を製膜した後、イミド化閉環処理することを特徴とする前記の耐熱性高分子フィルムを製造する方法である。好ましい態様は、ジアミン類、芳香族テトラカルボン酸二無水物類、およびカーボンナノチューブを溶媒に分散させた後にポリアミド酸を重合する工程を含むことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の耐熱性高分子フィルムを製造する方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、良好な絶縁性と、低い非誘電率と誘電正接、ならびにその温度依存性が小さく、耐熱性にも優れた耐熱性高分子フィルム、およびその製造方法を得ることができる。したがって、本発明の耐熱性高分子フィルムは独立したフィルムとして、FPC、COF、TAB等のテープ基材のプリント回路基板材料、およびカバーレイフィルムとして利用することができる。また、フィルムと導体層を積層することにより多層基板材料として利用することもできる。また、半導体基板、回路基板等にコーティングされたフィルム状形態として絶縁層、パッシベーション層保護層等として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のポリイミドフィルムを詳細に説明する。
本発明の耐熱性高分子フィルムはカーボンナノチューブを含有する。カーボンナノチューブは導電フィラーとしてではなく、また自由体積を有する成分としてでもなく、本発明においては剛直な構造を有し、高分子成分の配向秩序状態を制御するための一種の方向性を持つ核剤的な作用を持つ。
【0010】
本発明において使用するカーボンナノチューブの生成法としては、例えば化学気相成長法を用いてるが、その他の生成法としてレーザー蒸発法、アーク放電法があり、いずれの方法でも構わない。
【0011】
本発明で使用されるカーボンナノチューブとは、単層もしくは多層に積層したグラファイト状炭素からなる長手方向長さが1〜10μm程度であり、密度が400kg/m3以下であり、比表面積が1.5×1052/kg以上の円筒状物質であり、その両端または一方の端がグラファイト状炭素によって塞がれているもの、塞がれていないものが用いられるが、特に塞がれているものが好ましく用いられる。
【0012】
そして、カーボンナノチューブは、炭素のみからなるもの、もしくは構造の一部を他の元素で置換したもの、または化学的に修飾したもののいずれであっても好ましく用いられる。
さらに本発明のカーボンナノチューブは金属との複合材であることが好ましく、なお好ましくはチューブ内に金属成分、特に好ましくは鉄、銅、ニッケル、コバルト、クロム、アルミニウム、チタニウム、金、銀、白金、ロジウム、を内包するものが好ましい。
【0013】
本発明に用いられる耐熱性高分子は主鎖にイミド結合を有する高分子である。かかる高分子としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリイミドベンゾオキサゾールである。
本発明において、主鎖にイミド結合を有する高分子を構成するジアミンおよびテトラカルボン酸において、以下に述べるものが使用され得るが、特にベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類が好適なジアミンである。
本発明で特に好適に用いられるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、具体的には以下のものが挙げられる。
【0014】
【化1】

【0015】
【化2】

【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

【0019】
【化6】

【0020】
【化7】

【0021】
【化8】

【0022】
【化9】

【0023】
【化10】

【0024】
【化11】

【0025】
【化12】

【0026】
【化13】

【0027】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを70モル%以上使用することが好ましい。
【0028】
本発明は、前記事項に限定されず下記の芳香族ジアミンを使用してもよいが、好ましくは全芳香族ジアミンの30モル%未満であれば下記に例示されるベンゾオキサゾール構造を有しないジアミン類を一種又は二種以上、併用してのポリイミドフィルムである。
そのようなジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0029】
3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
【0030】
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0031】
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
【0032】
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
【0033】
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0034】
本発明で用いられるテトラカルボン酸無水物は、好ましくは芳香族テトラカルボン酸無水物類である。芳香族テトラカルボン酸無水物類としては、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0035】
【化14】

【0036】
【化15】

【0037】
【化16】

【0038】
【化17】

【0039】
【化18】

【0040】
【化19】

【0041】
これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明においては、全テトラカルボン酸二無水物の30モル%未満であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種又は二種以上、併用しても構わない。そのようなテトラカルボン酸無水物としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、
【0043】
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0044】
芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重合してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの質量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるような量が挙げられる。
【0045】
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌および/又は混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。
【0046】
重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の質量%は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは20〜20000Pa・sであり、より好ましくは200〜1000Pa・sである。
本発明におけるポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが2.0dl/g以上が好ましく、3.0dl/g以上がさらに好ましく、なおさらに5.0dl/g以上が好ましい。
【0047】
本発明の耐熱性高分子フィルムは、例えば次の方法によって製造できる。
まずカーボンナノチューブ含有ポリアミド酸溶液を調製する。すなわち、予めカーボンナノチューブを添加し分散させたポリアミド酸溶液を得る。カーボンナノチューブを添加し分散させたポリアミド酸溶液の粘度は、回転粘度計で測定した25℃における粘度が20〜20000Pa・s程度のポリアミド酸溶液である。
カーボンナノチューブの含有量は、主鎖にイミド結合を有する高分子90.0〜99.99質量部に対して、カーボンナノチューブ0.01〜10.0質量部である。好ましくは、主鎖にイミド結合を有する高分子96.0〜99.99質量部に対して、カーボンナノチューブ0.01〜4質量%、更に好ましくは主鎖にイミド結合を有する高分子98.8〜99.99質量部に対して、カーボンナノチューブ0.01〜1.2質量%の含有量で分散させる。
【0048】
なお、ここで使用するポリアミド酸溶液は、予め重合したポリアミド酸溶液であってもよいが、ポリアミド酸の重合前にジアミン類、芳香族テトラカルボン酸二無水物類、およびカーボンナノチューブを溶媒に分散させた後にポリアミド酸を重合する方法がカーボンナノチューブの分散性が優れるので好ましい。また、重合途中においてカーボンナノチューブないし溶媒に分散させたカーボンナノチューブを加える方法でも分散性が優れたポリアミド酸溶液が得られる。
【0049】
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の有機溶媒溶液を製造するのに有効である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
重合反応により得られるポリアミド酸溶液から、ポリイミドフィルムを形成するためには、ポリアミド酸溶液を支持体上に塗布して乾燥するなどによりグリーンフィルムを得て、次いで、グリーンフィルムを熱処理に供することでイミド化反応させる方法が挙げられる。
支持体上で乾燥し、自己支持性となったフィルムは支持体より剥離され、150〜500℃の温度にて最終乾燥、および熱処理によるアミド酸の脱水閉環がなされポリイミドフィルムとなる。
【0050】
上記のポリイミドフィルムには、滑剤をポリイミド中に添加含有せしめるなどしてフィルム表面に微細な凹凸を付与しフィルムの滑り性を改善することもできる。
滑剤としては、無機や有機の0.03μm〜3μm程度の平均粒子径を有する微粒子が使用でき、具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などが挙げられる。
本発明の耐熱性高分子フィルムには、その他の加工性改善などを目的として20質量%を越えない範囲で無機質または有機質の添加物を含有することも可能である。
【0051】
これらのポリイミドフィルムは、通常は無延伸フィルムであるが、1軸又は2軸に延伸しても構わない。ここで、無延伸フィルムとは、テンター延伸、ロール延伸、インフレーション延伸などによってフィルムの面拡張方向に機械的な外力を意図的に加えずに得られるフィルムをいう。
なお、使用形態として支持体上にコーティングされたフィルム状にて使用される場合には、支持体上でそのままイミド化処理を行えばよい。
【0052】
得られたポリアミド酸をイミド化閉環環化させて芳香族ポリイミドフィルムにする際には、脱水剤と触媒を用いて脱水する化学閉環法、熱的に脱水する熱閉環法、あるいはその両者を併用した閉環法のいずれで行ってもよい。
化学閉環法で使用する脱水剤としては、無水酢酸などの脂肪族酸無水物、フタル酸無水物などの酸無水物などが挙げられ、これらを単独あるいは混合して使用するのが好ましい。
また触媒としては、ピリジン、ピコリン、キノリンなどの複素環式第3級アミン類、トリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、N,N−ジメチルアニリンなどの第3級アミン類などが挙げられ、これらを単独あるいは混合して使用するのが好ましい。
【0053】
本発明の耐熱性高分子フィルムの厚みは0.05〜200μmであることが好ましい。このうち、独立したフィルムとして用いられる場合には2.5〜200μm、さらに2.5〜50μmの範囲が好ましい。また基板上に塗布された状態で用いられる場合には0.05μm〜15μm、特にシリコンウエハ等の半導体に塗布して用いられる用途では0.05〜3μm、さらには0.05〜1.2μmの範囲が好ましい。
【0054】
本発明の耐熱性高分子フィルムは、線膨張係数が−5ppm/℃〜+20ppm/℃の範囲であり、体積抵抗率が1×1010Ωcm以上である。線膨張係数が−5ppm/℃〜+20ppm/℃の範囲から外れるとカーボンナノチューブとの線膨張係数との乖離が大ききなるため、主鎖にイミド結合を有する高分子とカーボンナノチューブの界面が変化することによる電気物性の変化が生じるので好ましくない。また、体積抵抗率が1×1010Ωcm未満では、本願発明の誘電率の低く、かつ絶縁性の高い材料が得られない。
本発明の耐熱性高分子フィルムは、機械的特性、電気特性、耐熱性を損なうことなく、体積抵抗率が1.0×1010Ωcm以上と十分な絶縁性を保持し、かつ、低中周波数領域からGHz帯に至る広い範囲で低く安定した比誘電率と誘電正接を持ち、さらには温度に対する比誘電率と誘電正接の変化が極めて小さいという誘電体として優れた特性を有するものとなり、FPC、COF、TAB等のテープ基材のプリント回路基板材料、およびカバーレイフィルムとして利用することができる。また、フィルムと導体層を積層することにより多層基板材料として利用することもできる。また、半導体基板、回路基板等にコーティングされたフィルム状形態として絶縁層、パッシベーション層保護層等として利用することができる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の各種特性値は、下記の方法により測定した値である。
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
2.ポリイミドフィルムの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン(R)1245D)を用いて測定した。
【0056】
3.フィルムの引張弾性率
測定対象のフィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(R)機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度を測定した。引張弾性率は、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)の平均値を計算した。
【0057】
4.フィルムの線膨張係数(CTE)
測定対象のフィルムについて、下記条件にてMD方向およびTD方向の伸縮率を測定し、30℃〜45℃、45℃〜60℃、…と15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。MD方向、TD方向の意味は上記「3.」の測定と同様である。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0058】
5.体積抵抗率
JIS C2318準拠の方法にて、体積抵抗率を測定した。
6.比誘電率、誘電正接
(試験片の作製)
耐熱性高分子フィルムを、必要厚みになる枚数重ね、250℃のホットプレスにて300kgf/cm2の荷重を加えて圧着して1.6mm厚、100mm×100mmの板状試験片を作製した。
(試験片の測定)
上記試料について、Qメータ法にて1MHzの比誘電率、誘電正接を測定した。さらに、アジレントテクノロジ社製、N5250Aミリ波PNAシリーズ・ネットワーク・アナライザを用い、空洞共振摂動法により1GHz〜30GHzの範囲での比誘電率、誘電正接を測定した。
【0059】
(実施例1)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスター(R)KE−P30(日本触媒株式会社製)を0.81質量部、カーボンナノチューブ、タイプAとしてシンセン・ナノテクサポート社製カーボンナノチューブMWCNT−1(商標名)4.1質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を、容器に入れホモジナイザー(R)T−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器を窒素置換した後、223質量部の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールを入れた。次いで、4000質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて48時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液(a)が得られた。この還元粘度(ηsp/C)は5.0dl/gであった。
【0060】
得られたポリアミド酸溶液(a)を送液し、ポリエチレンテレフタレート製フィルムの支持体上にコーティングし(スキージ/ベルト間のギャップは、680μm)、90℃にて60分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して、厚さ40μmのポリアミド酸フィルム(グリーンフィルム)を得た。
得られたグリーンフィルムを、連続式の熱処理炉に通し、第1段が200℃で3分、昇温速度4℃/秒で昇温して第2段として480℃で5分の条件で2段階の加熱を施して、イミド化反応を進行させた。その後、5分間で室温にまで冷却することで、褐色を呈する、幅60cmポリイミドフィルム(I)を得て、両端部(耳部)をそれぞれ5cmずつスリットし、中央部のみの幅50cmのフィルムを製品とした。
得られたポリイミドフィルムの特性を表1に示す。なお表1に示す機械特性値はフィルムのMD方向:製膜の進行方向について測定した。
【0061】
(実施例2〜4)
実施例1において、カーボンナノチューブ、タイプAに代えて、タイプB:内部に鉄分を内包するカーボンナノチューブを用い、添加量を表1.に示すように適宜代えてポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの特性を表1に示す。
(比較例1)
カーボンナノチューブをタイプAを入れない以外は実施例1と同様に操作してポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの特性を表1に示す。
【0062】
(比較例2)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスター(R)KE−P30(日本触媒株式会社製)を7.6質量部、カーボンナノチューブ、タイプAとしてシンセン・ナノテクサポート社製カーボンナノチューブMWCNT−1(商標名)4.1質量部、N−メチル−2−ピロリドン390質量部を容器に入れホモジナイザー(R)T−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、200質量部のジアミノジフェニルエーテルを入れた。次いで、3800質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を390質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて5時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Eが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.7dl/gであった。
以下実施例と同様に操作し、ポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの特性を表1に示す。
(比較例3)
カーボンナノチューブをタイプB:内部に鉄分を内包するカーボンナノチューブに代えた他は比較例2と同様に操作を行いポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの特性を表1に示す。
【0063】
(比較例4)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスター(R)KE−P30(日本触媒株式会社製)を3.7質量部、カーボンナノチューブ、タイプAとしてシンセン・ナノテクサポート社製カーボンナノチューブMWCNT−1(商標名)4.1質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、108質量部のフェニレンジアミンを入れた。次いで、3600質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と292.5質量部のジフェニルテトラカルボン酸二無水物を加えて、25℃にて12時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Dが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は4.5dl/gであった。
以下、実施例と同様に操作し、ポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの特性を表1に示す。
(比較例5)
カーボンナノチューブをタイプB:内部に鉄分を内包するカーボンナノチューブに代えた他は比較例4と同様に操作を行いポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの特性を表1に示す。
【0064】
(比誘電率、誘電正接の温度特性の評価)
以上、得られた全てのポリイミドフィルムについて、その比誘電率と誘電正接を1MHz、および10GHzについて温度を代えて測定を行った。結果を表2〜5に示す。実施例において得られたフィルムの比誘電率、誘電正接は測定した温度範囲内において大きな変化を示さず、ほぼ安定した値を示した。比較例1においては温度の上昇に伴い比誘電率、誘電正接ともにゆるやかに増加した。比較例2、3については比誘電率、誘電正接ともに温度に伴って値が大きく変化した。比較例4、5については50℃近傍にピークを持つ特異な挙動を示した。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0070】
以上、述べてきたように、本発明の耐熱性高分子フィルムは、温度にたいする通電特性が非常に安定しており、電力装置から高周波域で藻散られるプリント配線板、COF、FPC、モジュール基板、インターポーザ、システムインパッケージ基板、半導体層間絶縁膜など電子情報機器の要素材料として広く用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖にイミド結合を有する高分子90.0〜99.99質量部、カーボンナノチューブ0.01〜10.0質量部からなり、線膨張係数が−5ppm/℃〜+20ppm/℃の範囲であり、体積抵抗率が1×1010Ωcm以上であることを特徴とする耐熱性高分子フィルム。
【請求項2】
主鎖にイミド結合を有する高分子がベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン類と芳香族テトラカルボン酸二無水物類から得られるポリイミドベンゾオキサゾールであることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性高分子フィルム。
【請求項3】
カーボンナノチューブが、金属と複合されたカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1、2いずれかに記載の耐熱性高分子フィルム。
【請求項4】
カーボンナノチューブがチューブ内部に金属を内包するものであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の耐熱性高分子フィルム。
【請求項5】
主鎖にイミド結合を有する高分子の前駆体であるポリアミド酸溶液にカーボンナノチューブを分散させ、該ポリアミド酸溶液を製膜した後、イミド化閉環処理することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の耐熱性高分子フィルムを製造する方法。
【請求項6】
ジアミン類、芳香族テトラカルボン酸二無水物類、およびカーボンナノチューブを溶媒に分散させた後にポリアミド酸を重合する工程を含むことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の耐熱性高分子フィルムを製造する方法。

【公開番号】特開2006−176645(P2006−176645A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371281(P2004−371281)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】