膜形成装置、電子装置の製造方法及び電気光学装置の製造方法
【課題】ノズルの吐出不良を迅速に検出し、不良品の削減を図り、また、材料の吐出状態を常に安定させることができる材料の配置方法、膜形成装置、電気光学装置及びその製造方法、電子装置、並びに電子機器を提供する。
【解決手段】真空チャンバ(処理室)11内の圧力を低圧制御する圧力制御系12と、基体(部材)14上に材料を配置する少なくとも1つのノズル15と、基体14を保持する基体ステージ13とを備えてなり、ノズル15又は基体ステージ13の位置を相対的に移動させる駆動系(移動手段)17と、基体14上に配置された前記材料を検査する検出系(検査手段)19とを備える。
【解決手段】真空チャンバ(処理室)11内の圧力を低圧制御する圧力制御系12と、基体(部材)14上に材料を配置する少なくとも1つのノズル15と、基体14を保持する基体ステージ13とを備えてなり、ノズル15又は基体ステージ13の位置を相対的に移動させる駆動系(移動手段)17と、基体14上に配置された前記材料を検査する検出系(検査手段)19とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成装置、電子装置、電気光学装置並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイや表示光源などとして用いられる電気光学装置や、さらに、半導体装置などの電子装置の開発が日々加速している。この電気光学装置や電子装置の製造過程においては、特に、基体上の所定位置に材料を配置する成膜技術や配線技術は欠かせない技術であり、精度や品質、又は製造コストなどの各種製造条件を満たすための技術が望まれている。
【0003】
材料の配置技術としては、マスク蒸着法、材料吐出法(インクジェット法)、又は印刷法などが挙げられるが、近年では、基体上に形成される膜に特定の機能を持たせるために、基体上に配置する材料の多様化が進む傾向にあり、更に材料の選択自由度が高い材料の配置技術の開発が進められている。
【0004】
例えば、特許文献1の明細書には、材料の配置方法、膜形成装置、電気光学装置及びその製造方法、電子装置、並びに電子機器が記載されている。特に、該明細書の材料の配置方法は、ノズルから供給される材料を基体上の所定の位置に配置する方法であって、前記基体が配置される処理室内を前記ノズル内よりも低い圧力に制御し、該圧力制御された処理室内で前記ノズルから前記基体に向けて前記材料を放出することを特徴としている。
【0005】
上記の材料の配置方法によれば、基体が配置される処理室内をノズル内よりも低い圧力に制御し、その圧力制御された処理室内でノズルから基体に向けて材料を放出するので、圧力差を利用して、処理室内に供給された材料の移動を促し、基体上に材料を配置することが可能となる。
【0006】
また、処理室内の圧力を真空圧に低下させることにより、大気圧中では固体の材料を、処理室内で液体あるいは気体の状態にすることが可能となり、これにより材料の移動を容易にできる。したがって、材料の選択自由度が高く、例えば、溶解性の低い材料を、溶剤に溶解させることなく基板上に配置することが可能となる。
【0007】
【特許文献1】特公表2003−826359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術の材料の配置方法においては、ノズルが偶発的、もしくは該ノズル内で材料の焦げ付きや結晶化などによって、材料の吐出が不可能となる場合があり、この場合、迅速にノズルの交換、もしくはクリーニングなどの作業により、生産工程を正常に復帰させる必要がある。その際に、発生した不良基板は、従来、全て廃棄されるか、もしくは、多面取りの基板であれば、部分的に破棄されることになる。
【0009】
さらに、近年では、生産の効率化のために、基板の大型化が進んでおり、例えば、形状が730mm×920mmの基板や、一辺が1mを超える基板からの複数枚取りが主流になりつつあることを考慮すると、前記基板における製品基板形状の1枚目の領域で材料の不吐出などの異常が発生した場合、多くの不良品が生じる可能性がある。即ち、欠陥を有する電気光学装置、もしくは電子装置の製造による歩留まりの低下により、上述の材料の配置方法によるコストメリットを充分に生かすことができないという問題があった。
【0010】
また、上記のように、ノズルが材料の不吐出を起さないまでも、材料の吐出をある時間休止させた後に再び吐出を開始した場合、吐出開始の直後においては、吐出される材料の量が不安定となるという問題があった。例えば、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと表記する。)素子の製造において発光層を形成させた場合、不均一な発光層が形成され、発光ムラが生じる可能性があり、さらに、薄膜トランジスタの製造において各種配線を形成させた場合、所望の高精細な幅を有する配線を形成することができず、断線が生じる可能性があった。
【0011】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、ノズルの吐出不良を迅速に検出し、不良品の削減を図り、また、材料の吐出状態を常に安定させることができる膜形成装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の膜形成装置は、処理室と、前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージとを備え、前記ノズルと前記基体との相対的な位置を調整するための位置調整手段と、前記基体上に配置された前記材料を検査する検査手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の膜形成装置は、処理室と、前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージとを備え、前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を調整するための位置調整手段と、を含み、前記処理室内は撮像素子を備えていることを備えることを特徴とする。
上記の膜形成装置において、前記撮像素子が行う光学測定に際に用いる光源をさらに備えていることが好ましい。
上記の膜形成装置において、前記撮像素子の位置または姿勢は調整可能となっていることが好ましい。
【0014】
本発明の第3の膜形成装置は、処理室と、前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージとを備え、前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を調整するための位置調整手段と、前記少なくとも1つのノズルからの前記材料の吐出の異常を検出するための検出手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の第4の膜形成装置は、処理室と、前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージとを備え、前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を調整するための位置調整手段と、前記少なくとも1つのノズルからの吐出された前記材料の光学測定を行う光学的手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の第5の膜形成装置は、処理室と、前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージと、前記材料の前記基体上における配置位置を検出する検出手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
上記の膜形成装置において、さらに前記配置位置と前記材料を配置させるべき目標位置との位置ズレが生じた場合に、前記少なくとも一つのノズルの位置補正を行う位置補正手段をさらに備えることが好ましい。
上記の膜形成装置において、前記少なくとも一つのノズルに動作不良が生じた場合、前記少なくとも一つのノズルの代用として使用する予備ノズルを更に備えるようにしてもよい。
上記の膜形成装置において、前記基体の温度を調整する温度調整手段を更に備えるようにしてもよい。
上記の膜形成装置において、前記処理室内の圧力を1.33322×10-1Pa以下に設定することが可能となっていることが好ましい。
【0018】
本発明の電子装置は、上記の膜形成装置を用いて導電材料または半導体材料を前記基体上に配置することにより製造されたことを特徴とする。
本発明の電気光学装置は、上記の膜形成装置を用いて光学材料を前記基体上に配置することにより製造されたことを特徴とする。
【0019】
本発明の電子機器は、上記の電気光学装置を表示手段として備えることを特徴とする。
【0020】
上記の膜形成装置によれば、材料を吐出するノズルと、処理室内の圧力を制御する圧力制御系とを備えているので、後述する本発明の材料の配置方法を実施できる。つまり、この膜形成装置では、基体が配置される処理室内を高真空雰囲気とするように圧力に制御し、その圧力制御された処理室内でノズルから基体に向けて、材料を吐出することにより、圧力差を利用して、処理室内に供給された材料の移動を促し、基体上に材料を配置して、基体上に材料膜を形成することができる。また、処理室内の圧力を真空圧に低下させることにより、大気圧中では固体の材料を、処理室内で液体あるいは気体の状態にすることが可能となり、これにより材料の移動を容易にできる。そのため、この膜形成装置では、材料の選択自由度が高く、高分子材料や低分子材料など、基体上に様々な材料の配置が可能になる。
【0021】
さらに、溶剤の使用を避けるかあるいは溶剤の使用量を減らすことによって、材料膜の劣化など、溶剤の残留による不都合を回避することができる。また、この膜形成装置では、処理室内の圧力制御により、ノズルから材料を分子状に放出することが可能となり、これにより、より純度の高い材料膜を形成したり、材料膜の膜厚を高精度に制御したりできるようになる。さらに、材料を分子状に放出することによって、複数の材料を同時放出して混合させることが容易となり、この場合、特定の機能を持たせた機能膜を基体上に形成することが可能となる。
【0022】
さらに、吐出された材料を検査することにより、迅速に異常を検出することが可能となり、不良品の削減を図り、また、材料の吐出状態を常に安定させることができる。即ち、基体上のパターニング領域に材料を配置する前に、ノズルの吐出不良等の異常を検査することにより、不良品を多数製造することが防止され、製品の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0023】
なお、上記ノズルは、少なくとも1つ備える構成としているが、複数のノズルを備えたヘッドを備える構成としても、本膜形成装置と同様の作用・効果が奏される。
【0024】
また、上記の膜形成装置において、ノズルに吐出不良が生じた場合、その代用として使用する予備ノズルを更に備えていれば、ノズルの吐出不良が発生する都度、ノズルを交換する必要がなく、工程時間を短縮することが可能となる。
【0025】
また、上記の膜形成装置において、検査手段により得られた材料の吐出結果を利用すれば、不良品の削減を図り、また、材料の吐出状態を常に安定させることができる。
【0026】
また、上記の膜形成装置において、材料が配置された配置位置と、その材料が配置されるべき目標位置との間に位置ズレが生じた場合に、ノズルの位置補正を行えば、材料の配置工程における工程時間を増加させることなく位置補正を行うことができ、従って、安定した材料の配置を行うことが可能となる。
【0027】
上記の電子装置、又は電気光学装置は、上述のような優れた性能を有する膜形成装置を用いて製造されているので、高寿命、高品質、あるいは高機能等、優れた性能を有するものである。
【0028】
本発明の材料の配置方法は、基体上に材料を配置する材料の配置方法であって、高真空度に調整された真空雰囲気中に設置された前記基体の所定領域に向けて、少なくとも1つのノズルから材料を吐出する吐出ステップと、前記吐出ステップの開始前に、前記真空雰囲気中で前記ノズルの吐出不良を検出する検出ステップと、を備えることを特徴としている。
【0029】
上記の方法によれば、高真空度に調整された真空雰囲気中に設置された基体の所定領域に向けて、少なくとも1つのノズルから材料を吐出することにより、ノズル内と基体が設置されている雰囲気の圧力差を利用して材料の移動を促し、基体上に材料を配置することが可能となる。また、基体を設置する場所を真空雰囲気中とすることにより、大気圧中では固体の材料を、基体への配置時には液体あるいは気体の状態にすることが可能となり、これにより材料の移動を容易にできる。そのため、この材料の配置方法では、材料の選択自由度が高く、例えば、溶解性の低い材料を、溶剤に溶解させることなく基板上に配置することが可能となる。
【0030】
また、高分子材料や低分子材料など、基体上に様々な材料の配置が可能になる上に、溶剤の使用を避けるか、あるいは溶剤の使用量を減らすことによって、材料の劣化など、溶剤の残留による不都合を回避することができる。また、真空雰囲気の圧力制御により、ノズルから材料を分子状に放出することが可能となり、これにより、より純度の高い材料膜を形成したり、材料膜の膜厚を高精度に制御したりできるようになる。さらに、材料を分子状に放出することによって、複数の材料を同時放出して混合させることが容易となり、この場合、特定の機能を持たせた機能膜を基体上に形成することが可能となる。
【0031】
さらに、この材料の配置方法では、吐出ステップの開始前に、真空雰囲気中でノズルの吐出不良を検出するので、ノズルの吐出不良を迅速に検出することが可能となり、不良品の削減を図り、また、材料の吐出状態を常に安定させることができる。即ち、基体上のパターニング領域に材料を配置する前に、ノズルの吐出不良の検出を行うことにより、不良品を多数製造することが防止され、製品の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0032】
また、上記の材料の配置方法では、前記真空雰囲気を10-3torr(1.33322×10-1Pa)以下の真空度とすることが好ましく、さらには、10-5torr(1.33322×10-3Pa)とするのがより好ましい。
【0033】
真空雰囲気を10-3torr以下にすれば、大気中ではノズルから吐出しにくい材料であっても、ノズルから容易に吐出することが可能となり、10-5torr以下にすれば、さらに多くの種類の材料を吐出可能とすることができるとともに、吐出する材料を気化させて吐出しやすくすることが可能となる。
【0034】
また、上記の材料の配置方法では、前記検出ステップは、前記所定領域以外の予備吐出領域に前記材料の吐出を行い、該吐出の結果に基づいて、前記ノズルの吐出不良を検出する動作を含むことを特徴としており、さらには、前記所定領域に予備部材を設置し、該予備部材に備えた予備吐出領域に前記材料の吐出を行い、該吐出の結果に基づいて、前記ノズルの吐出不良を検出する動作を含んでも良い。
【0035】
この方法によれば、予備吐出領域に材料の吐出を行って、その吐出の結果に基づいてノズルの吐出不良を検出するので、基体の所定領域に配置される材料の吐出状況を事前に確実に再現することができ、より正確に吐出不良を検出することが可能となる。
【0036】
また、上記の材料の配置方法では、前記ノズルの吐出不良の検出は、前記予備吐出領域に吐出された前記材料の光の反射率を検出するか、もしくは、光の透過率を検出するなど分光学的手段により行うことができる。
【0037】
このようにすれば、予備吐出領域に吐出された材料の配置形状に影響されることがなく、また、検出時間を問題とすることなく、正確にノズルの吐出不良を検出することが可能となる。
【0038】
さらに、上記の材料の配置方法では、前記検出ステップは、前記吐出ステップにおける前記材料の変更時に行うことが好ましい。
【0039】
このようにすれば、材料の変更に起因するノズルの吐出不良も、所定領域への材料の吐出前に、事前に検出することが可能となる。
【0040】
また、本発明の材料の配置方法は、基体上に材料を配置する材料の配置方法であって、高真空度に調整された真空雰囲気中に設置された前記基体の所定領域に向けて、少なくとも1つのノズルから材料を吐出する吐出ステップと、前記吐出ステップの開始前に、前記所定領域以外の前記基体上の領域に向けて、前記ノズルから前記材料を予備吐出する予備吐出ステップと、を備えることを特徴としている。
【0041】
上記の方法によれば、高真空度に調整された真空雰囲気中に設置された基体の所定領域に向けて、少なくとも1つのノズルから材料を吐出することにより、ノズル内と基体が設置されている雰囲気の圧力差を利用して材料の移動を促し、基体上に材料を配置することが可能となる。また、基体を設置する場所を真空雰囲気中とすることにより、大気圧中では固体の材料を、基体への配置時には液体あるいは気体の状態にすることが可能となり、これにより材料の移動を容易にできる。そのため、この材料の配置方法では、材料の選択自由度が高く、例えば、溶解性の低い材料を、溶剤に溶解させることなく基板上に配置することが可能となる。
【0042】
また、高分子材料や低分子材料など、基体上に様々な材料の配置が可能になる上に、溶剤の使用を避けるか、あるいは溶剤の使用量を減らすことによって、材料の劣化など、溶剤の残留による不都合を回避することができる。また、真空雰囲気の圧力制御により、ノズルから材料を分子状に放出することが可能となり、これにより、より純度の高い材料膜を形成したり、材料膜の膜厚を高精度に制御したりできるようになる。さらに、材料を分子状に放出することによって、複数の材料を同時放出して混合させることが容易となり、この場合、特定の機能を持たせた機能膜を基体上に形成することが可能となる。
【0043】
さらに、この材料の配置方法では、吐出ステップの開始前に、所定領域以外の基体上の領域に向けて、ノズルから材料を予備吐出するので、常に、所定領域への材料の吐出量を安定させることができる。即ち、例えば、材料を連続して吐出している状態では、各ノズルからの材料吐出量が安定しているものの、一旦材料の吐出を休止させる等の動作に起因して、ノズル内で材料の固着等等の影響で吐出を再開させたときの材料の吐出量が安定しない場合があるが、予備吐出により、このようなことが発生しない。
【0044】
また、上記の材料の配置方法では、前記真空雰囲気を10-3torr(1.33322×10-1Pa)以下の真空度とすることが好ましく、さらには、10-5torr(1.33322×10-3Pa)とするのがより好ましい。
【0045】
真空雰囲気を10-3torr以下にすれば、大気中ではノズルから吐出しにくい材料であっても、ノズルから容易に吐出することが可能となり、10-5torr以下にすれば、さらに多くの種類の材料を吐出可能とすることができるとともに、吐出する材料を気化させて吐出しやすくすることが可能となる。
【0046】
また、上記の材料の配置方法では、前記予備吐出ステップは、前記吐出ステップに連続する前工程で前記ノズルの予備吐出を行うことが好ましい。
【0047】
このようにすれば、予備吐出後に、すぐに本吐出に移ることができるので、予備吐出後のノズルの吐出安定性を高度に維持したまま材料の配置が可能となる。
【0048】
また、上記の材料の配置方法では、前記予備吐出ステップは、前記吐出ステップにおける前記材料の変更時に行うことを特徴としている。
【0049】
このようにすれば、材料の変更に起因する材料の吐出量の不安定性を、材料の吐出前に、事前に解消させることが可能となる。
【0050】
さらに、上記の材料の配置方法では、前記予備吐出ステップの直後に、予備吐出で配置された前記材料の配置位置と、予備吐出で前記材料を配置させる目標位置とを検出し、前記配置位置と前記目標位置とに位置ズレが生じた場合に、前記ノズルの位置補正を行う位置補正ステップを更に備えることを特徴としている。
【0051】
上記の方法によれば、予備吐出ステップの直後に、予備吐出で配置された材料の配置位置と、予備吐出で材料を配置させる目標位置とを検出して、配置位置と目標位置とに位置ズレが生じた場合に、ノズルの位置補正を行うので、位置ズレが生じても、材料の配置工程における工程時間を増加させることなく位置補正を行うことができ、従って、安定した材料の配置を行うことが可能となる。
【0052】
本発明の電子装置の製造方法では、上記の材料の配置方法を用いて、電子装置を構成する要素の少なくとも一部を形成することを特徴としている。
【0053】
この電子装置の製造方法では、上述した材料の配置方法を用いることから、材料の選択自由度が高く、構造の最適化を図りやすい。しかも溶剤の残留による不都合がなく、電子装置の高寿命化が図られる。また、より純度の高い材料膜や特定の機能膜を形成することにより、高品質あるいは高機能のトランジスタやメモリ素子を製造することができる。さらに、材料の吐出が安定化されることにより、低コストの電子装置を製造することが可能となる。
【0054】
また、上記の電子装置の製造方法では、材料としてトランジスタまたはメモリ素子を構成する導電層、半導体層、絶縁層のうちの少なくとも一つの形成材料を配置し、導電層、半導体層、または絶縁層を形成することを特徴としている。
【0055】
この製造方法によれば、導電層、半導体層、絶縁層の形成材料を高い自由度で選択することができ、また溶媒を使用しないでこれら導電層、半導体層、あるいは絶縁層を形成するので、得られる素子の寿命向上化を図ることが可能となる。
【0056】
また、上記の電子装置の製造方法では、前記基体上に予め配線間を隔てるパターンを形成しておき、該パターン内に前記形成材料を配置して、導電層を形成することを特徴としている。
【0057】
この製造方法によれば、形成材料を吐出した際、その着弾位置に少々バラツキがあっても、パターン内に着弾すれば所望の位置に導電層を形成することができ、従って、導電層等からなる配線をそれぞれ所望位置に形成することにより、回路の特性を高めることが可能となる。
【0058】
本発明の電気光学装置の製造方法では、上記の材料の配置方法を用いて、電気光学装置を構成する要素の少なくとも一部を形成することを特徴としている。
【0059】
この電気光学装置の製造方法では、上述した材料の配置方法を用いることから、材料の選択自由度が高く、構造の最適化を図りやすい。しかも溶剤の残留による不都合がなく、電気光学装置の高寿命化が図られる。また、より純度の高い材料膜や特定の機能膜を形成することにより、高品質あるいは高機能の電気光学素子を製造することができる。さらに、材料の吐出が安定化されることにより、低コストの電気光学装置を製造することが可能となる。
【0060】
また、上記の電気光学装置の製造方法では、材料として有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する電子輸送層、正孔輸送層、発光層、電極のうちの少なくとも一つの形成材料を配置し、電子輸送層、正孔輸送層、発光層または電極を形成することを特徴としている。
【0061】
この製造方法によれば、電子輸送層、正孔輸送層、発光層あるいは電極の形成材料を高い自由度で選択することができ、また溶媒を使用しないでこれら電子輸送層、正孔輸送層、発光層あるいは電極を形成するので、得られる素子の寿命向上化を図ることが可能となる。
【0062】
また、上記の電気光学装置の製造方法では、前記基体上に予め画素間を隔てる隔壁を形成しておき、該隔壁内に前記形成材料を配置して電子輸送層、正孔輸送層、または発光層を形成することを特徴としている。
【0063】
この製造方法によれば、形成材料を吐出した際、その着弾位置に少々バラツキがあっても、隔壁内に着弾すれば所望の位置に発光層等を形成することができ、従って、発光層等からなる画素をそれぞれ所望位置に形成することにより、表示品質を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下、本発明の実施形態による材料の配置方法、膜形成装置、電気光学装置及びその製造方法、電子装置、並びに電子機器について詳細に説明する。
【0065】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態である膜形成装置の一例を模式的に示した斜視図である。
【0066】
膜形成装置は、ディスプレイや表示光源などとして用いられるEL素子、液晶表示素子、撮像素子(CCD)、電子放出素子、電気泳動素子などを備えた電気光学装置や、半導体素子、磁気ヘッド、カラーフィルタ、タッチパネル等の電子装置の製造過程に用いられ、これらの装置を構成する要素の一部を形成するために、基体上に材料を配置してその材料膜を形成するものである。
【0067】
膜形成装置10は、処理室である真空チャンバ11と、該真空チャンバ11内を所定の真空圧に制御する圧力制御系12と、真空チャンバ11内に設けられる基体ステージ13と、該基体ステージ13にセットされる基体14と、該基体14に材料を吐出するノズル15と、該ノズル15に材料を供給する材料供給系16と、基体14とノズル15とを相対的に位置決めする駆動系17と、ノズル15からの材料の不吐出を検出するためのセンサを組み込んだテレビカメラ18と、該テレビカメラ18から取り込んだデータを処理し、材料の不吐出を検査する画像処理装置(不図示)を有する検出系19と、これらの機構を統括的に制御する主制御系20とから構成されている。
【0068】
基体14としては、ガラス基板、シリコン基板、石英基板、セラミックス基板、金属基板、プラスチック基板、プラスチックフィルム基板等、電気光学装置や電子装置に用いられる公知の様々な基体が適用される。また、基体14上に配置される材料としては、光学材料や、回路形成材料など電気光学装置や電子装置に用いられる様々な材料が適用される。特に、本発明の膜形成装置は、後述するように、材料の選択自由度が高く、高分子材料や低分子材料など、広範囲の様々な材料が適用可能である。
【0069】
図2(a)、(b)は、膜形成用の材料として、有機EL素子を構成する発光層形成材料を基体14上に配置した様子を示している。
【0070】
図2(a)において、基体14上には、画素部102、データ側駆動回路103、走査側駆動回路104、不吐出検出パターン領域(予備吐出領域)60がそれぞれ設けられており、画素部102において、発光層形成材料が基体14上にストライプ状に配置され、これにより発光層(EL層)が基体14上にストライプ状の配列で形成されている。
【0071】
また、図2(b)では、画素部102において、発光層形成材料が基体14上にマトリクス状に配置され、これにより発光層105が基体14上にマトリクス状の配列で形成されている。EL素子では、カラー表示を行う場合、例えば、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の各色に対応する発光層が所定の配列で基体14上に形成される。図1に示した膜形成装置10は、例えば、こうした発光層を基体14上に形成するために、所定の材料を基体14上に配置するものである。なお、図2において、駆動回路103、104は基体14上に搭載されているが、外部(外付ICチップ上など)に搭載してもよい。有機EL素子の詳しい構成例については、本発明の電気光学装置の一例として、後述する。
【0072】
図3は、膜形成装置10を用いて基体14上に材料を配置する、本発明の材料の配置方法の一例を概念的に示す図である。本例の膜形成装置10では、基体14が配置される真空チャンバ11内を、圧力制御系12を介して、ノズル15内よりも低い圧力(真空圧)に制御し、圧力制御された真空チャンバ11内でノズル15から基体14に向けて材料を放出する。
【0073】
図4は、圧力制御系12の構成例を模式的に示している。圧力制御系12は、例えば、真空チャンバ11内を排気して、該真空チャンバ11内の圧力を低下させる真空装置30と、真空チャンバ11に連設された排気用の配管31と、真空チャンバ11内の真空圧を計測する圧力計32と、該圧力計32の計測結果に基づいて、真空装置30を制御する制御機器33等を備えて構成される。真空装置30としては、例えば、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、イオンポンプ、サブリメーションポンプ等の高真空ポンプ、あるいはロータリーポンプやドライポンプ等の低真空ポンプ、及び高真空ポンプと低真空ポンプとを組み合わせたもの等が適用される。また、真空チャンバ11は、気密に構成されるとともに、設定される真空圧に耐えうるように耐圧構造に設計される。
【0074】
また、圧力制御系13においては、真空装置30の作動時の振動が真空チャンバ11内に伝播しないよう、防振機構あるいは除振機構を設けておくのが好ましい。さらに、基体14を搬入・搬出する際に、真空チャンバ11内の真空度が低下しないように、真空チャンバ11に隣接して予備チャンバ34を設けるのが好ましい。この場合、予備チャンバ34は、例えば、真空チャンバ11内の真空度と同じ真空度に内部圧力を低下させるための真空装置35、及び基体14の搬入・搬出用の開口を開閉する開閉機構36,37等を有して構成される。なお、基体14を搬送する搬送機構は、予備チャンバ34内に設けてもよいし、外部に設けてもよい。
【0075】
真空チャンバ11内に基体14を搬入する際には、まず、予備チャンバ34内に基体14を一旦配置し、予備チャンバ34内の圧力を真空チャンバ11内と同程度の圧力に制御した後、予備チャンバ34と真空チャンバ11との間の開閉機構36を開いて真空チャンバ11への基体14の搬入を行う。逆に、真空チャンバ11から基体14を搬出する際には、予備チャンバ34内の圧力を真空チャンバ11内と同程度の圧力に制御した後、開閉機構36を開いて基体14を予備チャンバ34内に搬入し、開閉機構36を閉じた後に、予備チャンバ34内から基体14を外部に搬出する。これにより、真空チャンバ11の真空度を安定して維持することができる。
【0076】
図3に示すように、上記の圧力制御系12により、真空チャンバ11内をノズル15内よりも低い圧力に制御し、圧力制御された真空チャンバ11内でノズル15から基体14に向けて材料を放出する。したがって、ノズル15内と真空チャンバ11との圧力差により、ノズル15から放出される材料の移動が促され、ノズル15から放出された材料が基体14上に安定して配置される。また、真空チャンバ11内の圧力を真空圧に低下させることにより、大気圧中では固体あるいは液体の材料を、真空チャンバ11内で液体あるいは気体の状態にすることが可能となり、これにより材料の移動が容易になる。即ち、本実施形態では、室温及び大気圧中では基体14に移動しにくい材料に対して、真空圧中でその材料の状態(好ましくは相)を変化させることにより、その移動を容易にできる。したがって、様々な材料を基体14上に配置することが可能となる。
【0077】
例えば、真空チャンバ11内を高真空度に制御することにより、ノズル15から供給される材料を気化させて放出することが可能となる。その結果、溶解性の低い材料を、溶剤に溶解させることなく基体14上に配置することが可能となる。つまり、ノズル15から供給される材料が固体や高粘度の液体であっても、真空チャンバ11内の圧力を大きく低下させ、その材料を蒸発あるいは昇華させることにより、その材料を、気相あるいは蒸気相としてノズル15から基体14に移動させることが可能となる。
【0078】
真空チャンバ11内の圧力は、蒸気圧等の使用する材料の特性に応じて適宜設定するのが好ましく、圧力制御系12を介して、例えば、10-3torr(1.33322×10-1Pa)以下の高真空度、あるいは10-5torr(1.33322×10-3Pa)以下の高真空度に制御する。真空チャンバ11内を、10-3torr以下の高真空度に制御することにより、大気圧中ではノズル15から放出しにくい材料であっても、ノズル15から容易に放出できるようになり、さらに、真空チャンバ11内を10-5torr以下の高真空度に制御することにより、より広範囲の様々な材料をノズル15から放出することが可能となる。また、真空チャンバ11内を上述した高真空度に制御することにより、ノズル15から放出される材料の昇華あるいは蒸発を容易にできる。
【0079】
図5は、材料供給系16の構成例を示す概念図である。図5(a)の例では、材料供給系16は、材料を液体の状態でノズル15に供給するように構成されている。即ち、材料供給系16は、液体材料を収容するタンクを含む材料供給源40、ノズル15、材料供給源40からノズル15に材料を輸送するポンプ等の輸送手段41、及びノズル15からの材料の放出のタイミングを制御する放出機構42等を有する。なお、毛管現象や重力、あるいは圧力差を利用することにより、上記輸送手段41を省略してもよい。
【0080】
また、室温及び大気圧中で固体の材料を使用する場合、図5(b)に示すように、ヒータ等の加熱手段43によって材料を加熱して溶融させることにより、その材料を液体の状態でノズル15に供給することが可能となる。この場合、加熱手段43は、例えば、材料が収容されるタンクの他に、輸送経路上の配管や、ノズル15にも設置するのが好ましい。
【0081】
ノズル15は、真空チャンバ11内に少なくとも1つ設けられるが、本実施形態では複数からなり、各々が材料供給源40に接続されている。図6は、複数のノズル15と材料供給源40との接続例を模式的に示しており、図6(a)は、複数のノズル15が同一の材料供給源40に接続された例、図6(b)は、複数のノズル15がそれぞれ異なる材料供給源40a,40b,40cに接続された例を示している。複数のノズル15が同一の材料供給源40に接続され、その複数のノズル15から同一の材料を基体14に向けて放出することにより、一度に材料を配置できる領域を拡大したり、時間あたりの材料の供給量を増やしたりしてスループットの低減化が図られる。また、複数のノズル15が異なる材料供給源40a,40b,40cに接続され、その複数のノズル15からそれぞれ異なる材料を基体14に向けて放出することにより、異なる複数の材料からなる膜を基体14上に形成することができる。例えば、図2を用いて説明したEL素子の発光層を基体上に形成する場合、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の各色に対応する発光層形成材料をそれぞれ異なるノズルから放出することにより、各色に対応する発光層を所定の配列パターンで基体上に形成することが可能となる。
【0082】
また、本実施形態では、複数のノズル15が同一の物体にまとめて設けられている。図7(a)〜(d)は、上記複数のノズル15が設けられる物体としての放出ヘッド45の構成例を模式的に示している。図7(a)では、放出ヘッド45は、一の材料供給源40に接続されており、材料供給源40から供給された材料は、放出ヘッド45内で分岐して各ノズル15に送られるように構成されている。
【0083】
また、図7(b)では、放出ヘッド45は、一の材料供給源40に接続されており、材料供給源40から供給された材料は、放出ヘッド45に入る前に分岐され、放出ヘッド45内では分岐されることなくそのまま各ノズル15に送られるように構成されている。この場合、ノズル内での分岐によるエネルギー損失の不均一をなくし、材料の供給状態をより均一にできる。
【0084】
また、図7(c)では、放出ヘッド45は、異なる複数の材料供給源40a,40b,40cに接続されており、各材料供給源40a,40b,40cから供給された材料は、放出ヘッド45に設けられた複数のノズルのうち、予め対応付けられた所定のノズルに送られるように構成されている。
【0085】
また、図7(d)では、放出ヘッドが複数(45a,45b,45c)からなり、それぞれが異なる材料供給源40a,40b,40cに個別に接続されている。こうした放出ヘッド45の構成やその材料の供給経路は、使用する材料に応じて適宜定められる。なお、放出ヘッドに設けられた複数のノズル15は、放出機構42(図5参照)によって材料放出のタイミングを個々に制御される。
【0086】
放出機構42としては、例えば、シャッターの開閉により機械的に材料放出のタイミングを制御するメカニカルシャッター方式を採用することができる。図8は、放出機構42の構成例を示しており、本実施形態の放出機構42は、ノズル15内の液状の材料を加熱することにより、その材料を気化(蒸発)させてノズル15から放出させる。
【0087】
図8において、放出機構42は、ノズル15内の材料を加熱する加熱手段46を有し、その加熱のタイミングを制御することにより、材料放出のタイミングを制御するように構成されている。材料放出用の加熱手段46としては、例えば、電気ヒータを用いたもの(図8(a),(b))や、YAGレーザ等のレーザを用いたもの(図8(c))、又は高周波加熱装置を用いたもの(図8(d))等が挙げられる。なお、加熱手段46としてはこれに限らず、公知の様々な加熱手段を適用可能である。また、ノズル15から材料を気化させて放出する場合、加熱手段46は、ノズル15内の材料のうち、基体14に面する表面付近を加熱するように設けるのが好ましい。これにより、材料の表面から効果的に材料を気化させることができる。
【0088】
本実施形態では、基体14が配置される真空チャンバ11(図3参照)内の圧力がノズル15内よりも低い圧力(真空圧)に制御されることから、ノズル15から放出される材料を加熱することで、その材料を真空チャンバ11内で容易に気化(蒸発)させることができる。特に、真空チャンバ11内が高真空度に制御されている場合、材料の沸点が大きく下がり、比較的少ない熱量で材料が容易に気化(蒸発)する。気化した材料は、ノズル15から気体あるいは蒸気の状態で放出され、基体14に向かって移動し、基体14に達した後、例えば、基体14との熱交換によって冷却され、液化あるいは固化して基体14上に固定される。そして、所定量の材料が基体14上に配置されることにより、基体14上に材料膜が形成される。
【0089】
高真空度に制御された真空チャンバ11内で、ノズル15から材料を気化させて放出する場合、その材料を分子状(分子線状)あるいは原子状(原子線状)に放出することが可能となる。そして、分子状あるいは原子状に放出された材料を基体14に配置することにより、より純度の高い材料膜を基体14上に形成したり、材料膜の膜厚を高精度に制御したりできるようになる。つまり、真空チャンバ11内が高真空度に制御されていることから、ノズル15から供給される材料に不純物が混入しにくく、また、材料を分子状あるいは原子状に放出して基体14上に配置することにより、分子あるいは原子レベルでの膜厚制御が可能となる。特に、複数のノズル15から材料を同時放出して複数の材料を混合させることが容易となり、この場合、特定の機能を持たせた機能膜を基体14上に形成しやすくなる。
【0090】
検出系19では、ノズル15の吐出不良の検出は、不吐出検出パターン領域60に吐出された材料の光の反射率を検出するか、もしくは、光の透過率を検出するなど分光学的手段により行うことができる。これによれば、不吐出検出パターン領域60に吐出された材料の配置形状に影響されることがなく、また、検出時間を問題とすることなく、正確にノズルの吐出不良を検出することができる。
【0091】
図9は、膜形成装置10の主制御系20を示す概念図である。主制御系20は、各種制御部を内蔵した本体となる制御コントローラ50と、該制御コントローラ50の入出力手段であるティーチングペンダント51とから構成されている。ティーチングペンダント51は、不図示であるが、材料配置の進行状況及びノズルの異常の有無等の情報を表示する表示部と、膜形成装置10の動作等を指示する操作部とからなる。
【0092】
制御コントローラ50は、ティーチングペンダント51とのデータの受け渡しを行うインターフェイス52と、膜形成装置10の制御を行うCPU53と、該CPU53を動作させるための制御プログラムを記憶するROM54と、異常情報等を記憶するRAM55と、圧力制御系12に接続され、真空チャンバ11内の圧力を制御する圧力制御部56と、材料供給系16に接続され、材料の吐出を制御する吐出制御部57と、駆動系17に接続され、基体ステージ13の動作を制御するステージ制御部58と、検出系19に備えられた画像処理装置に接続される検出部59とから構成されている。
【0093】
図10は、材料の配置時(パターニング時)における基体14と放出ヘッド45(ノズル15)との相対移動の様子の一例を示す図である。また、図10において、XYZ直交座標系が用いられ、XYZ直交座標系は、基体14が搭載される基体ステージ13に対して平行となるようにX軸及びY軸が設定され、Z軸が基体ステージ13に対して直交する方向に設定されている。
【0094】
図10において、本実施形態の駆動系17は、不図示のベース上に配置され、二次元平面内(図10中のXY平面内)で駆動自在に配置される基体ステージ13を有する。基体ステージ13は、例えば、リニアモータ等からなる駆動装置、及び基体ステージ13上の基体14を加熱・冷却するための温調装置等を有しており、主制御系20の指令のもとで、基体14を所定の温度に調節するとともに、基体14の所定位置への位置決めや移動を行う。即ち、膜形成装置10では、材料の配置時(パターニング時)において、ノズル15から材料を放出しながら、基体14と放出ヘッド45(ノズル15)とを相対移動させることにより、基体14上に所定の配列で材料膜を形成する。また、基体14を所定の温度に調節することにより、基体14上に配置される材料の堆積や固化を促進させる。なお、基体14と放出ヘッド45(ノズル15)との間隔(Z方向の距離)は、不図示のZ駆動装置を介して調整される。なお、駆動系17において、放出ヘッド45あるいは基体14のXY平面に対する傾きを調整する手段や、XY平面内での回転角を調整する手段を備えてもよい。
【0095】
また、本例では、基体ステージ13を介して基体14を移動させることにより、パターニング時における基体14と放出ヘッド45(ノズル15)との相対移動を行うが、本発明はこれに限定されず、放出ヘッド45を移動させて上記相対移動を行ってもよく、あるいは基体14と放出ヘッド45との双方を移動させて上記相対移動を行ってもよい。基体14と放出ヘッド45との双方を移動させる場合、一方(例えば放出ヘッド45)の移動により上記走査移動を行い、他方(例えば基体14)の移動により上記シフト移動を行ってもよい。また、ある箇所に対して一度の走査移動で材料膜の形成を完成させるのではなく、同じ箇所に対して、複数回繰り返し走査移動を繰り返して、材料膜を完成させてもよい。これにより、例えば、基体上で材料を成長(気相成長)させながら材料膜を形成することが可能となる。この場合、材料の膜成長に応じて走査移動を繰り返すことにより、スループットの低下を抑制できる。
【0096】
次に、本実施形態の膜形成装置による膜形成工程を、図11に示すフローチャートに従って説明する。
【0097】
まず、膜形成装置10の基体ステージ13上に基体14をセットし、位置決めを行う(ステップS1)。位置決めを行った後、基体14上に設けられた予備吐出領域60が放出ヘッド45の直下に移動された際(ステップS2)、例えば、図12に示すような描画を行う。描画パターンをテレビカメラ18と検出系19によって認識し(ステップS3)、異常がない場合、基体ステージ13は、基体14上のパターニング領域70を放出ヘッド45の直下に移動し(ステップS4)、材料の配置を実行する。なお、単一の基体から複数枚の製品基板を採取する場合、例えば、単一基体上に2カ所のパターニング領域を有する場合は、基体ステージ13は、上記の材料の配置が終了した後、基体上の第2の不吐出検出パターン領域(不図示)が放出ヘッド45の直下に位置するように移動される(ステップS5)。そして、同一の動作を再度繰り返し、第2のパターニング領域(不図示)に対して材料の配置を行う。
【0098】
一方、ステップS3で不吐出等の異常が発見された場合、直ちにパターニング領域70への材料の配置を停止し、放出ヘッド45の回復手段による回復動作の実行(ステップS6)、もしくは、放出ヘッド45の交換等(ステップS7)を行う。
【0099】
以上説明したように、本例の膜形成装置及び材料の配置方法では、材料の選択自由度が高く、高分子材料や低分子材料など、基体上に様々な材料の配置が可能になる。そのため、溶剤の使用を避けるかあるいは溶剤の使用量を減らすことによって、材料膜の劣化など、溶剤の残留による不都合を回避することができる。また、ノズルから材料を分子状あるいは原子状に放出することが可能となり、これにより、より純度の高い材料膜を形成したり、材料膜の膜厚を高精度に制御したりでき、さらに、複数の材料を同時放出して混合させることで、特定の機能を持たせた機能膜を基体上に良好に形成することが可能である。
【0100】
さらに、ノズルの吐出不良を迅速に検出し、不良品の削減を図り、また、材料の吐出状態を常に安定させることができる。即ち、基体上のパターニング領域に材料を配置する前に、ノズルの吐出不良の検出を行うことにより、不良品を多数製造することが防止され、製品の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0101】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0102】
第1の実施形態では、基体14のパターニング領域70への材料の配置を行う直前に、基体14上に不吐出検出パターンを放出ヘッド45(ノズル15)から吐出させるようにしたが、本実施形態では、パターニング領域70に材料の配置を行う前に、基体14上に放出ヘッド45の吐出状態を安定化させるための予備吐出を行うことを特徴としている。
【0103】
図12は、基体14上への予備吐出のパターンを示した図である。図12に示すように、基体14上のパターニング領域202に材料を吐出する直前において、パターニング領域202の脇に設けられた、基体14上の予備吐出領域204,206に予備吐出を行う。予備吐出のための材料の吐出パターンとしては、図12(a)に示すように、パターニング領域202の配列(ライン)パターンと同一ピッチで吐出を行ってもよいし、図12(b)に示すように、ある範囲をべた塗りするように吐出してもよい。さらには、図12(a)、(b)に示すような予備吐出パターン以外に、例えば、後に液晶表示装置等を構成するために、基体であるガラス基板に対向基板を貼りあわせるときの位置決め用のアライメントマークを予備吐出により形成するようにしても良い。
【0104】
なお、予備吐出領域の形状は、図12(a)、(b)に示した形状に限定されるものではなく、例えば、図13(a)、(b)に示すように、予備吐出領域204,206をパターニング領域202の両側に形成しても良いし、図14(a)、(b)に示すように、パターニング領域を取り囲むように予備吐出領域を形成するようにしても良い。
【0105】
上記のように、通常、材料を連続して吐出している状態では、各ノズルからの材料吐出量が安定しているものの、一旦材料の吐出を休止させると、ノズル内で材料が乾燥すること等の影響で吐出を再開させたときの材料の吐出量が安定しないが、本実施形態によれば、パターニング領域には、常に安定した材料の吐出を行うことが可能となる。さらには、予備吐出領域がパターニング領域に近接しているので、予備吐出後に、すぐに本吐出に移ることができ、予備吐出後のノズルの吐出安定性を高度に維持したまま材料の配置が可能となる。
【0106】
なお、上記の実施形態では、予備吐出領域を基体14上に設けた一例を示したが、本発明は、これに限らず、基体外の部分に予備吐出用の受け(部材)を用意し、該受け上に予備吐出を行っても、同様の効果を奏する。
【0107】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0108】
本実施形態では、実際に使用するパターニング領域の外側から材料の配置を開始することにより、パターニング領域に均一な材料吐出量による膜を形成することを特徴としている。
【0109】
通常、放出ヘッド45(ノズル15)は、連続的、あるいは繰り返しパターンで材料を吐出し続けている間は安定して材料を吐出させることが出来るが、最初に吐出し始める場合や、次のラインに移して材料の配置を行う場合、材料の吐出当初の材料量は不安定となる。
【0110】
例えば、図15(a)に示すように、最初の材料吐出量が所望の量に対して少なかったり、図15(b)に示すように、最初の材料吐出量が所望の量に対して大きくなったり、図15(c)に示すように、材料の着弾点と材料の濃度の中心がずれる場合がある。これらの現象は、材料を吐出させないで放出ヘッド45又は基体14を移動させる場合、ノズル15の近傍で、例えば、材料が蒸発するために材料の濃度が変化したり、材料の粘性が変化したりするために起こる現象である。
【0111】
なお、本実施形態における予備吐出のパターンについては、図15に示すように、パターニング領域202と同様のパターンを延長させてもよいし、全く別な形状でも良い。また、図16に示すように、吐出が不安定な材料の種類のみ長い距離の予備吐出をさせても良い。あるいは、図17に示すように、基体14の端部に予備吐出領域210を設けて、該予備吐出領域210で吐出が安定するまで材料を吐出させた後、材料の配置を開始しても良い。また、図18に示すように、走査方向を配列パターンに対して垂直あるいは角度をつけても、走査開始方向に予備吐出領域を設ければ良いことになる。
【0112】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0113】
図19は、本実施形態の膜形成装置の概略を示す斜視図である。膜形成装置300は、基体14を図中X及びY方向に移動させるステージ等からなる移動機構301と、基体14をθ方向に回転自在である回転ステージ302と、基体14を保持し固定する固定台303と、材料を吐出するノズルを有する放出ヘッド304と、配置された材料のパターンを読み取るセンサ305と、該センサ305の撮像範囲を照射する光源306と、基体14に予め設けられたアライメントマーク310を読み取るアライメント用センサ307,308とから構成されている。
【0114】
図20は、膜形成装置300のブロック図である。膜形成装置300の制御系は、全体の制御を行うホストコンピュータ311と、ステージ301の制御部312と、材料の吐出を行う放出ヘッド304の制御部313と、センサ305によって読み取られた映像データから、放出ヘッド304からの吐出の有無の検知や材料の配置位置やパターニング領域の位置の計測等を行う画像処理部314と、放出ヘッド304の姿勢、位置を制御する姿勢調整制御部315とからなる。
【0115】
図21は、図19で説明した放出ヘッド304、センサ305、光源306の配置を詳細に説明した図である。放出ヘッド304は、θ方向調整機構325、Z方向調整機構326、Y方向調整機構327によって姿勢を調整できるようになっており、Z方向調整機構326によって、放出ヘッド304と基体14との間隔を、所定の距離に設定することができる。また、θ方向調整機構325は、放出ヘッド304を、基体14に対して所定の角度に設定することができる。姿勢調整機構325,326,327は、例えば、直動ステージと回転ステージ等の移動機構を組み合わせてY,Z,θ軸を構成する。また、各軸の移動機構は、手動で動かすように構成してもよいし、モータ等の駆動源を取り付けて動かすようにしても良い。放出ヘッド304は、複数の材料吐出口(ノズル)を持ち、図中Y方向に並んでいる。
【0116】
また、CCDラインセンサ等の撮像素子319には、光源306によって照射された、基体14上の2点ABを結ぶ直線上の像が、レンズ322を介して結像される。撮像素子319は、θ方向調整機構320、Z方向調整機構321によって姿勢を調整できるようになっている。基体14と、放出ヘッド304と、撮像素子319との相対位置関係は、図19における移動機構301及び302によって、図中X、Y、θ方向に移動することができる。
【0117】
次に、本実施形態による膜形成装置の動作について説明する。
【0118】
図22は、膜形成装置300の動作を記述したフローチャートである。まず、始めに、膜形成装置300に材料の配置対象である基体14が、図19の固定台303上に供給される(ステップS11)。供給された基体14は、静電吸着等の吸着手段により固定される(ステップS12)。次に、基体14上に形成されているアライメントマーク310を、センサ307,308で読み取る(ステップS13)。読み取ったアライメントマークから、基体14の位置を算出し、図18の移動機構301、302を用いて、基体14のアライメントを行う(ステップS14)。基体14のアライメントが終了すると、予備吐出が行われる(ステップS15)。予備吐出は、材料の配置対象である基体14の余白(予備吐出領域)に行われる。この予備吐出は、パターニング領域に材料を配置する前に行うことで、常に吐出の状態を安定させる効果があり、もし、不吐出が発生したり、材料の配置位置がずれたりしても、未然に検知することが可能であり、不良品の発生を抑えることができる。
【0119】
次に、材料が配置された、予備吐出パターンとパターニング領域に形成された配列パターンとを、センサ305で読み込む(ステップS16)。読み取られた予備吐出パターンから、不吐出のチェックを行う(ステップS17)。具体的には、材料の吐出に使用するノズルからの材料が、ドットとして基体14上に着弾し、存在するか否かを読み取った画像データを処理することで実現される。もし、使用するノズルに不吐出が検出された場合は、本来使用するノズル以外のノズルのなかに、代わりに使用可能なノズルが存在するか調べる(ステップS18)。使用可能なノズルが存在しない場合は、放出ヘッド304を新しいものに交換する(ステップS28)。S18にて、使用可能なノズルが存在する場合は、使用するノズルの変更を行い(ステップS19)、新たに変更されたノズル位置が、今まで使用していたノズルの位置にくる様に、ヘッドの位置を調整機構によって移動させる(ステップS20)。
【0120】
S17にて不吐出がなかった場合は、読み取られた画像データより、予備吐出パターンのドットの位置、及び配列パターンの位置を算出する(ステップS21,S22)。次に、ドットの位置と配列パターンの位置のズレ量を算出する(ステップS23)。ここで、S23にて算出されたズレ量が、許容範囲を超えてパターニング領域の材料配置に支障をきたすようなズレ量であれば、ステップS25にてズレ量の補正を行う(ステップS24)。S24において、S23にて算出されたズレ量が、許容範囲内におさまっていれば補正を行わなくて良い。この時点で、パターニング領域への材料配置が可能な状態となったので、材料の配置を実施し(ステップS26)、基体14上に膜を形成する。膜の形成が終了すると、基体14の排出が行われ、膜形成の1サイクルが終了する(ステップS27)。
【0121】
このように、本実施形態によれば、基体のパターニング領域外に予備吐出を行うことにより、材料の吐出の安定性を向上させることができるとともに、放出ヘッドと配列パターンとのズレを補正することができる。
【0122】
なお、本発明はその主旨を逸脱しない範囲で、上記の実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0123】
例えば、ノズルからの吐出を確認するためのパターンは、吐出の有無を確認できれば限られることはない。その場合、パターンによってはエリアセンサカメラの方が適しているのであれば、エリアセンサカメラを用いるのが望ましい。また、予備吐出領域は、基体上の一領域、もしくは、基体外の専用エリアであっても、不良品の発生を最小限に抑制するという効果は同様に得られる。
【0124】
また、上記実施形態では、放出ヘッド及びラインセンサカメラを固定してXYθステージ側を移動させるように説明したが、ステージ側を固定して、放出ヘッド及びラインセンサカメラ側を移動させるようにしてよい。さらに、上記の実施形態では、放出ヘッドの不吐出等の異常の検出をテレビカメラと画像処理装置を用いて行ったが、本発明は、これに限定されず、レーザ光を材料が通過するときの干渉縞の検出等によって行ってもよい。また、配置されたヘッド異常検出パターンの光の反射率、又は透過率を検出することによって行ってもよい。
【0125】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の電気光学装置を、有機EL素子を用いたアクティブマトリクス型の表示装置に適用した実施形態について説明する。
【0126】
図23は、本例のアクティブマトリクス型有機EL表示装置の回路の一例を示し、図24は、本例の表示装置における画素部の平面構造の一例を示している。本例の表示装置100は、その構成要素の一部が前述した、いずれかの膜形成装置を用いて形成されていることを特徴としている。
【0127】
表示装置100は、図24に示すように、基体としての基板上に、複数の走査線131と、これら走査線131に対して交差する方向に延びる複数の信号線132と、これら信号線132に並列に延びる複数の共通給電線133とがそれぞれ配線され、走査線131及び信号線132の交点毎に、画素(画素領域素)102が設けられている。
【0128】
信号線132に対しては、例えば、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、アナログスイッチを備えるデータ側駆動回路103が設けられている。一方、走査線131に対しては、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路104が設けられている。また、画素領域102の各々には、走査線131を介して走査信号がゲート電極に供給される第1の薄膜トランジスタ142と、この第1の薄膜トランジスタ142を介して信号線132から供給される画像信号を保持する保持容量capと、保持容量capによって保持された画像信号がゲート電極に供給される第2の薄膜トランジスタ143と、この第2の薄膜トランジスタ143を介して共通給電線133に電気的に接続したときに共通給電線133から駆動電流が流れ込む画素電極141(陽極)と、この画素電極141と対向電極154(陰極)との間に挟み込まれる発光部140と、が設けられている。
【0129】
また、図24に示すように、各画素102の平面構造は、平面形状が長方形の画素電極141の四辺が、信号線132、共通給電線133、走査線131及び図示しない他の画素電極用の走査線によって囲まれた配置となっている。画素領域102の平面形状は、図に示す矩形の他に、円形、長円形など任意の形状が適用される。
【0130】
このような構成のもとに、走査線131が駆動されて第1の薄膜トランジスタ142がオンとなると、そのときの信号線132の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて、第2の薄膜トランジスタ143の導通状態が決まる。そして、第2の薄膜トランジスタ143のチャネルを介して共通給電線133から画素電極141に電流が流れ、さらに発光部140を通じて対向電極154に電流が流れることにより、発光部140は、これを流れる電流量に応じて発光するようになる。
【0131】
図25(a)、(b)は、画素部102(有機EL素子)の断面構造を模式的に示しており、(a)は、いわゆるトップエミッション型、(b)は、いわゆるバックエミッション型を示している。図25(a)において、トップエミッション型のEL素子では、薄膜トランジスタ143が設けられている基板121とは反対側から発光層286(EL層、発光部140)の発光光を取り出す構成である。そのため、基板121としては、透明でも不透明でもよい。不透明な基板としては、例えば、アルミナ等のセラミック、ステンレス等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0132】
図25(b)において、バックエミッション型のEL素子では、薄膜トランジスタ143が設けられている基板121側から発光層286の発光光を取り出す構成である。そのため、基板121としては、透明あるいは半透明なものが用いられる。透明あるいは反透明な基板としては、例えば、ガラス基板、石英基板、樹脂基板(プラスチック基板、プラスチックフィルム基板)等が挙げられ、特に安価なソーダガラス基板が好適に用いられる。なお、ソーダガラス基板を用いる場合、これにシリカコートを施すことにより、酸アルカリに弱いソーダガラスが保護されるとともに、基板の平坦性の向上が図られる。また、基板に色フィルター膜や発光性物質を含む色変換膜、あるいは誘電体反射膜を配置して、発光色を制御するようにしてもよい。
【0133】
また、図25(b)において、符号281は、発光層286(EL層)の形成時に、隣接する発光層同士の混じりを防ぐ隔壁を有するバンク層である。ここでは、バンク層は頂辺の長さが底辺の長さより小であるテーパー構造を有しているが、逆に頂辺の長さが底辺の長さと同等あるいは大となるような構造であってもよい。バックエミッション型のEL素子では、薄膜トランジスタ143が設けられている基板121側から発光層286の発光光を取り出す構成であるため、光を効率よく取り出すことを目的として、発光層286の真下に薄膜トランジスタ143を配置するのを避け、薄膜トランジスタ143を例えば前記バンク層281の下に配置するのが好ましい。
【0134】
図26は、トップエミッション型の画素部102(有機EL素子)の断面構造を拡大して示している。
【0135】
図26において、有機EL素子は、基板121と、インジウム錫酸化物(ITO)等の透明電極材料からなる陽極280(画素電極)と、陽極280から正孔を輸送可能な正孔輸送層285と、電気光学物質の1つである有機EL物質を含む発光層286(有機EL層)と、発光層286の上面に設けられている電子輸送層287と、電子輸送層287の上面に設けられている陰極290(対向電極)と、基板121上に形成され、画素電極280にデータ信号を書き込むか否かを制御する通電制御部としての薄膜トランジスタ142、143とを有している。陰極290は、素子全面を覆うように形成されており、画素電極280と対になって発光層286に電子を注入する役割を果たす。この陰極290は、単層構造でもよく複層構造でもよい。また、陰極290の形成材料としては、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、金(Au)、銀(Ag)、カルシウム(Ca)の他に、フッ化リチウム等が挙げられる。これらの材料は単独で使用してもよく、合金として使用してもよい。
【0136】
薄膜トランジスタ142、143は、本例では、双方ともnチャネル型に形成されている。なお、薄膜トランジスタ142、143は、双方ともnチャネル型TFTに限らず、双方またはどちらか一方にpチャネル型の薄膜トランジスタを用いてもよい。
【0137】
薄膜トランジスタ142、143は、例えば、SiO2を主体とする下地保護膜201を介して基板121の表面に設けられており、下地保護膜201の上層に形成されたシリコン等からなる半導体膜204、205と、半導体膜204、205を覆うように、下地保護膜201の上層に設けられたゲート絶縁膜220と、ゲート絶縁膜220の上面のうち半導体膜204、205に対向する部分に設けられたゲート電極229、230と、ゲート電極229、230を覆うようにゲート絶縁膜220の上層に設けられた第1層間絶縁膜250と、ゲート絶縁膜220及び第1層間絶縁膜250にわたって開孔するコンタクトホールを介して半導体膜204、205と接続するソース電極262、263と、ゲート電極229、230を挟んでソース電極262、263と対向する位置に設けられ、ゲート絶縁膜220及び第1層間絶縁膜250にわたって開孔するコンタクトホールを介して半導体膜204、205と接続するドレイン電極265、266と、ソース電極262、263及びドレイン電極265、266を覆うように第1層間絶縁膜250の上層に設けられた第2層間絶縁膜270とを備えている。
【0138】
また、第2層間絶縁膜270の上面に画素電極280が配置され、画素電極280とドレイン電極266とは、第2層間絶縁膜270に設けられたコンタクトホールを介して接続されている。また、第2層間絶縁膜270の表面のうち有機EL素子が設けられている以外の部分と陰極290との間には、合成樹脂などからなる第3絶縁層(バンク層)281が設けられている。
【0139】
なお、第1層間絶縁膜250と第2層間絶縁膜270の材質が互いに異なる場合、図に示すように、第1層間絶縁膜250に設けられたコンタクトホールと第2層間絶縁膜270に設けられたコンタクトホール275とは、重ならないように形成されるのが好ましい。
【0140】
また、半導体膜204、205のうち、ゲート絶縁膜220を挟んでゲート電極229、230と重なる領域がチャネル領域246、247とされている。また、半導体膜204、205のうち、チャネル領域246、247のソース側にはソース領域233、236が設けられている一方、チャネル領域246、247のドレイン側にはドレイン領域234、235が設けられている。このうち、ソース領域233、236が、ゲート絶縁膜220と第1層間絶縁膜250とにわたって開孔するコンタクトホールを介して、ソース電極262、263に接続されている。一方、ドレイン領域234、235が、ゲート絶縁膜220と第1層間絶縁膜250とにわたって開孔するコンタクトホールを介して、ソース電極262、263と同一層からなるドレイン電極265、266に接続されている。画素電極280は、ドレイン電極266を介して、半導体膜205のドレイン領域235に電気的に接続されている。
【0141】
本例の有機EL素子は、正孔輸送層285、発光層286、及び電子輸送層287が、前述した膜形成装置を用いて形成される。そのため、これらの層を形成する材料の選択自由度が高い。また、これらの層を形成する際に、溶剤の使用を避けるかあるいは溶剤の使用量を減らすことが可能であり、この場合、層の劣化など、溶剤の残留による不都合が回避される。なお、正孔輸送層285、発光層286、及び電子輸送層287に限らず、他の膜を前述した膜形成装置を用いて形成してもよい。
【0142】
次に、本発明の電気光学装置の製造方法を、上述した有機EL素子を備える表示装置を製造するプロセスに適用した実施例について図27〜図30を参照して説明する。なお、本例では、前述した薄膜トランジスタ142、143を含む有機EL素子と同時に、N型及びP型の駆動回路用の薄膜トランジスタとを同時に製造するプロセスについて説明する。
【0143】
まず、図27(a)に示すように、基板121に対し、必要に応じてTEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約200〜500nmのシリコン酸化膜からなる下地保護膜201を形成する。なお、下地保護膜として、シリコン酸化膜の他に、シリコン窒化膜やシリコン酸化窒化膜を設けてもよい。こうした絶縁膜を設けることにより、放熱性を高めることが可能となる。
【0144】
次に、基板121の温度を約350℃に設定して、下地保護膜の表面に、ICVD法、プラズマCVD法などを用いて厚さ約30〜70nmのアモルファスシリコン膜からなる半導体膜200を形成する。半導体膜200としては、アモルファスシリコン膜に限定されず、微結晶半導体膜などのアモルファス構造を含む半導体膜であればよい。また、アモルファスシリコンゲルマニウム膜などの非晶質構造を含む化合物半導体膜でもよい。
【0145】
続いて、この半導体膜200に対してレーザアニール法や、急速加熱法(ランプアニール法や熱アニール法など)などの結晶化工程を行い、半導体膜200をポリシリコン膜に結晶化する。レーザアニール法では、例えばエキシマレーザでビームの長寸が400mmのラインビームを用い、その出力強度は例えば200mJ/cm2とする。なお、YAGレーザの第2高調波或いは第3高調波を用いてもよい。ラインビームについては、その短寸方向におけるレーザ強度のピーク値の90%に相当する部分が領域毎に重なるようにラインビームを走査するのがよい。
【0146】
次に、図27(b)に示すように、フォトリソグラフィ法等を用いたパターニングにより、半導体膜(ポリシリコン膜)200の不要な部分を除去して、薄膜トランジスタの各形成領域に対応して、島状の半導体膜202、203、204、205を形成する。
【0147】
続いて、TEOSや酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約60〜150nmのシリコン酸化膜または窒化膜(シリコン酸化窒化膜など)からなるゲート絶縁膜220を、半導体膜200を覆うように形成する。ゲート絶縁膜220は単層構造でも積層構造でもよい。なお、プラズマCVD法に限らず、熱酸化法などの他の方法を用いてもよい。また、熱酸化法を利用してゲート絶縁膜220を形成する際には、半導体膜200の結晶化も行い、これらの半導体膜をポリシリコン膜とすることができる。
【0148】
次に、図27(c)に示すように、ゲート絶縁膜220の全表面に、ドープドシリコン、シリサイド膜や、アルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属を含むゲート電極形成用導電膜221を形成する。この導電膜221の厚さは例えば200nm程度である。
【0149】
続いて、ゲート電極形成用導電膜221の表面にパターニング用マスク222を形成し、この状態でパターニングを行って、図27(d)に示すように、P型の駆動回路用トランジスタを形成する側にゲート電極223を形成する。このとき、N型の画素電極用トランジスタ及びN型の駆動回路用トランジスタの側では、ゲート電極形成用導電膜221がパターニング用マスク222で覆われているので、ゲート電極形成用導電膜221はパターニングされることはない。また、ゲート電極は単層の導電膜で形成してもよく、積層構造としてもよい。
【0150】
次に、図27(e)に示すように、P型の駆動回路用トランジスタのゲート電極223と、N型の画素電極用トランジスタが形成される領域とN型の駆動回路用トランジスタが形成される領域とに残したゲート電極形成用導電膜221をマスクとして、p型不純物元素(本例ではボロン)をイオン注入する。ドーズ量は、例えば約1×1015cm-2である。その結果、不純物濃度が例えば1×1020cm-3の高濃度のソース・ドレイン領域224、225がゲート電極223に対して自己整合的に形成される。ここで、ゲート電極223で覆われ、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域226となる。
【0151】
次に、図28(a)に示すように、P型の駆動回路用トランジスタの側を完全に覆い、かつ、N型の画素電極用TFT10およびN型の駆動回路用トランジスタの側のゲート電極形成領域を覆うレジストマスク等からなるパターニング用マスク227を形成する。
【0152】
次に、図28(b)に示すように、パターニング用マスク227を使用してゲート電極形成用導電膜221をパターニングし、N型の画素電極用トランジスタおよびN型の駆動回路用トランジスタのゲート電極228、229、230を形成する。
【0153】
続いて、パターニング用マスク227を残したまま、n型不純物元素(本例ではリン)をイオン注入する。ドーズ量は、例えば1×1015cm-2である。その結果、パターニング用マスク227に対して自己整合的的に不純物が導入され、半導体膜203、204、205中に高濃度ソース・ドレイン領域231、232、233、234、235、236が形成される。ここで、半導体膜203、204、205のうち、高濃度のリンが導入されない領域は、ゲート電極228、229、230で覆われていた領域よりも広い。すなわち、半導体膜203、204、205のうち、ゲート電極228、229、230と対向する領域の両側には高濃度ソース・ドレイン領域231、232、233、234、235、236との間に高濃度のリンが導入されない領域(後述する低濃度ソース・ドレイン領域)が形成される。
【0154】
次に、パターニング用マスク227を除去し、この状態でn型不純物元素(本例ではリン)をイオン注入する。ドーズ量は、例えば1×1013cm-2である。その結果、図28(c)に示すように、半導体膜203、204、205にはゲート電極228、229、230に対して自己整合的に低濃度の不純物が導入され、低濃度ソース・ドレイン領域237、238、239、240、241、242が形成される。なお、ゲート電極228、229、230と重なる領域には不純物が導入されず、チャネル領域245、246、247が形成される。
【0155】
次に、図28(d)に示すように、ゲート電極228、229、230の表面側に第1層間絶縁膜250を形成し、フォトリソグラフィ法等によってパターニングして所定のソース電極位置、ドレイン電極位置にコンタクトホールを形成する。第1層間絶縁膜250としては、例えば、シリコン酸化窒化膜やシリコン酸化膜等のシリコンを含む絶縁膜を用いるとよい。また、単層でもよく積層膜でもよい。さらに、水素を含む雰囲気中で、熱処理を行い半導体膜の不対結合手を水素終端(水素化)する。なお、プラズマにより励起された水素を用いて水素化を行ってもよい。
【0156】
続いて、この上からアルミニウム膜、クロム膜やタンタル膜などの金属膜を用いてソース電極、ドレイン電極となる導電膜251を形成する。導電膜251の厚さは例えば200nm〜300nm程度である。導電膜は単層でもよく積層膜でもよい。
【0157】
続いて、ソース電極、ドレイン電極の位置にパターニング用マスク252を形成するとともに、パターニングを行って、図28(e)に示すソース電極260、261、262、263、及びドレイン電極264、265、266を同時に形成する。
【0158】
次に、図29(a)に示すように、窒化珪素等からなる第2層間絶縁膜270を形成する。この第2層間絶縁膜270の厚さは、例えば1〜2μm程度である。第2層間絶縁膜270の形成材料としては、シリコン酸化膜や有機樹脂、シリカエアロゲルなどの光を透過可能な材料が用いられる。有機樹脂としてはアクリル、ポリイミド、ポリアミド、BCB(ベンゾシクロブテン)等を用いることができる。
【0159】
次に、図29(b)に示すように、第2層間絶縁膜270をエッチング除去してドレイン電極266に達するコンタクトホール275を形成する。
【0160】
次に、図29(c)に示すように、コンタクトホール275内にも埋め込まれるように、例えばITOやフッ素をドープしてなるSnO2、さらにZnOやポリアニリン等の透明電極材料からなる膜を形成し、ソース・ドレイン領域235、236に電気的に接続する画素電極280を形成する。なお、この画素電極280がEL素子の陽極となる。
【0161】
次に、図30(a)に示すように、画素電極280を挟むように、第3絶縁層(バンク層)281を形成する。具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などのレジストを溶媒に融かしたものを、スピンコート、ディップコート等により塗布して絶縁層を形成し、絶縁層をフォトリソグラフィ技術等により同時にエッチングする。第3絶縁層281としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などの合成樹脂が用いられる。なお、信号線、共通給電線、走査線等の配線を含むバンク層を形成してもよい。
【0162】
続いて、画素電極280を覆うように正孔輸送層285を形成する。
【0163】
本例では、前述した膜形成装置を用いて正孔輸送層285を形成する。すなわち、真空圧に制御された真空チャンバ内に基板121を配置し、ノズル14から基板121に向けて正孔輸送層285の形成材料を放出する。この際、ノズル14から正孔輸送層285の形成材料を気化させて放出してもよい。気化した材料は、基板121上に達した後、熱交換によって冷却され、液化あるいは固化して固定される。そして、所定量の材料が基板121上に配置されることにより、基体11上に正孔輸送層285が形成される。
【0164】
また、材料が基板121上にて液状となった場合には、その流動性によって水平方向に広がろうとするものの、第3絶縁層(バンク層)の隔壁によって、その広がりが防止される。なお、処理条件や材料の特性等により、材料の流動による不都合が生じない場合には、第3絶縁層の高さを低くしたり、隔壁を用いない構造としてもよい。また、ノズル15から材料を基板121上に放出した後、基板121を真空チャンバ内から一旦取り出し、必要に応じて加熱あるいは光照射等の処理を行って材料を固化あるいは硬化させてもよい。
【0165】
正孔輸送層285の形成材料としては、特に限定されることなく公知のものが使用可能であり、例えばピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等が挙げられる。具体的には、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示されるが、トリフェニルジアミン誘導体が好ましく、中でも4,4'−ビス(N(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルが好適とされる。
【0166】
また、正孔輸送層に代えて正孔注入層を形成するようにしてもよく、さらに正孔注入層と正孔輸送層を両方形成するようにしてもよい。その場合、正孔注入層の形成材料としては、例えば銅フタロシアニン(CuPc)や、ポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム等が挙げられるが、特に銅フタロシアニン(CuPc)を用いるのが好ましい。正孔注入層と正孔輸送層を両方形成する場合には、例えば、正孔輸送層の形成に先立って正孔注入層を画素電極側に形成し、その上に正孔輸送層を形成するのが好ましい。このように正孔注入層を正孔輸送層とともに形成することにより、駆動電圧の上昇を制御することができるとともに、駆動寿命(半減期)を長くすることができる。
【0167】
次に、図30(b)に示すように、正孔輸送層285上に発光層286を形成する。
【0168】
本例では、先の正孔輸送層(及び/又は正孔注入層)と同様に、前述した膜形成装置を用いてこの発光層286を形成する。即ち、真空圧に制御された真空チャンバ内に基板121を配置し、ノズル15から基板121に向けて発光層286の形成材料を放出する。
【0169】
発光層286の形成材料としては、特に限定されることなく、低分子の有機発光色素や高分子発光体、すなわち各種の蛍光物質や燐光物質からなる発光物質が使用可能である。発光物質となる共役系高分子の中ではアリーレンビニレン構造を含むものが特に好ましい。低分子蛍光体では、例えばナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、ポリメチン系、キサテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキノリンおよびその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン誘導体等、または特開昭57−51781号公報、同59−194393号公報等に記載されている公知のものが使用可能である。
【0170】
次に、図30(c)に示すように、発光層286上に電子輸送層287を形成する。
【0171】
本例では、先の正孔輸送層285、発光層286の場合と同様に、前述した膜形成装置を用いてこの電子輸送層287を形成する。すなわち、真空圧に制御された真空チャンバ内に基板121を配置し、ノズル15から基板121に向けて電子輸送層287の形成材料を放出する。
【0172】
電子輸送層287の形成材料としては、特に限定されることなく、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンおよびその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンおよびその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体等が例示される。具体的には、先の正孔輸送層の形成材料と同様に、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示され、特に2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウムが好適とされる。
【0173】
なお、正孔輸送層285の形成材料や電子輸送層287の形成材料を、発光層286の形成材料に混合し、発光層形成材料として使用してもよい。その場合、正孔輸送層形成材料や電子輸送層形成材料の使用量については、使用する化合物の種類等によっても異なるものの、十分な成膜性と発光特性を阻害しない量範囲でそれらを考慮して適宜決定される。通常は、発光層形成材料に対して1〜40重量%とされ、さらに好ましくは2〜30重量%とされる。
【0174】
また、上述した正孔輸送層285、発光層286、及び電子輸送層287の各膜厚については、予めノズル14からの各形成材料の放出量を適宜に設定しておくことにより、好ましい厚さ(例えば65nm)に形成する。また、圧力差を利用してノズル15からの材料の移動を促したり、あるいはノズル15から材料を気化させて放出したりすることにより、これらの形成材料を溶剤に溶解させることなく、あるいは溶剤の使用量を減らして基板上に配置することが可能となる。そのため、材料の劣化など、溶剤の残留による不都合が回避される。
【0175】
次に、図30(d)に示すように、基板121の表面全体に、あるいはストライプ状に陰極としての対向電極290を形成する。対向電極290は、Al、Mg、Li、Caなどの単体材料やMg:Ag(10:1合金)の合金材料からなる1層で形成してもよく、2層あるいは3層からなる金属(合金を含む)層として形成してもよい。具体的には、Li2O(0.5nm程度)/AlやLiF(0.5nm程度)/Al、MgF2/Alといった積層膜が挙げられる。
【0176】
以上のプロセスにより、有機EL素子、及びN型及びP型の駆動回路用の薄膜トランジスタが完成する。
【0177】
なお、上述した例では、正孔輸送層285、発光層286、及び電子輸送層287を前述した膜形成装置を用いて形成しているが、他の層についても、同様に、膜形成装置を用いて形成してもよい。例えば、画素電極280(陽極)や対向電極290(陰極)を、前述の膜形成装置を用いて形成してもよい。即ち、インジウム錫酸化物(ITO)や酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの透明電極(陽極)や、Al/Ca等の積層構造などによる陰極についても、膜形成装置10を用いて形成することができる。
【0178】
さらに、特に図27及び図28に示したトランジスタの形成過程において、前述した膜形成装置を用いて任意の層を形成してもよい。特に、気化させた材料を放出して層を形成することにより、膜厚を高精度に制御できる。そのため、高精度なトランジスタを形成することが可能となる。さらに、前述した膜形成装置を用いることにより、所望の位置に材料を配置できることから、マスクの使用をなくしたり、少なくしたりすることができる。
【0179】
図31は、有機EL素子の他の形態例を示している。
【0180】
図31に示す有機EL素子は、上述した例と異なり、ガスや金属イオンの侵入を遮断する封止層(第1封止層295、第2封止層296、及び第3封止層297のうちの少なくとも1つ)を有する。
【0181】
第1封止層295は、第1層間絶縁膜250と第2層間絶縁膜270との間で、ソース電極262、263及びドレイン電極265、266を覆うように形成され、膜厚は例えば50〜500nmである。第1封止層295を構成する材料としては、例えばセラミックや窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素などの材料が用いられる。第1封止層295は、薄膜トランジスタ142、143に対して、水分や発光層286(EL層)等からのアルカリ金属(ナトリウム)の侵入を防ぐ。
【0182】
また、第1封止層295を構成する材料として、上記アルカリ金属の封止効果に加え、放熱効果を持つ材料を用いてもよい。こうした材料としては、例えば、B(ホウ素)、C(炭素)、N(窒素)のうちの少なくとも一つの元素と、Al(アルミニウム)、Si(珪素)、P(リン)のうちの少なくとも一つの元素とを含む絶縁膜が挙げられる。例えば、アルミニウムの窒化物、珪素の炭化物、珪素の窒化物、ホウ素の窒化物、ホウ素のリン化物等を用いることができる。さらに、Si、Al、N、O、Mを含む絶縁膜(ただし、Mは希土類元素の少なくとも一種、好ましくはCe(セリウム),Yb(イッテルビウム),Sm(サマリウム),Er(エルビウム),Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリニウム)、Dy(ジスプロシウム)、Nd(ネオジウム)のうちの少なくとも一つの元素)を用いることもできる。また、ダイヤモンド薄膜又はアモルファスカーボン膜(ダイヤモンドライクカーボン等)を含む炭素膜を用いることもできる。これらは熱伝導率が高く、放熱効果が高い。
【0183】
第2封止層296は、第2層間絶縁膜270と画素電極280との間に形成され、膜厚は例えば50〜500nmである。第2封止層301を構成する材料としては、例えばセラミックや窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素などの材料が用いられる。第2封止層296は、水分や、薄膜トランジスタ142、143に対して、水分や発光層286(EL層)等からのアルカリ金属(ナトリウム)の侵入を防ぐ。第2封止層296を構成する材料として、上述した第1封止層に用いられる材料を用いることができる。また、上記アルカリ金属の封止効果に加え、放熱効果を持たせてもよい。
【0184】
第3封止層297は、陰極290を覆うように形成され、膜厚は例えば50〜500nmである。第3封止層297を構成する材料としては、例えばセラミックや窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素などの材料が用いられる。第3封止層297は、外部からの水分の侵入を防ぐ。また、第3封止層297を構成する材料として、上述した第1封止層に用いられる材料を用いることができる。また、上記アルカリ金属の封止効果に加え、放熱効果を持たせてもよい。また、図31の有機EL素子は、トップエミッション型であり、第3封止層297は、良好に光を透過させる材質及び厚みで形成されるのが好ましい。
【0185】
また、こうした封止層に代えてあるいは加えて、光の取り出し効率を向上させるための低屈折率層を形成してもよい。低屈折率層は、基板より光の透過屈折率が低い層であり、例えばシリカエアロゲルによって構成される。シリカエアロゲルとは、シリコンアルコキシドのゾルゲル反応により形成される湿潤ゲルを超臨界乾燥することによって得られる均一な超微細構造を持った光透過性の多孔質体である。シリカエアロゲルは体積の90%以上を空隙が占め、残りが樹枝状に凝集した数十nmの微細なSiO2粒子で構成された材料であり、粒子径が光の波長よりも小さいため、光透過性を有し、その屈折率は1.2以下である。また、空隙率を変化させることによって屈折率を調整できる。ここで、基板の材料であるガラスの屈折率は1.54、石英の屈折率は1.45である。また、低屈折率層として、多孔性を有するSiO2膜やポリマー等の他の材料を用いてもよい。さらに、低屈折率層を構成する材料に、乾燥剤あるいは化学吸着剤を分散させてもよい。これにより、低屈折率層に封止効果を付与することができる。
【0186】
図32は、有機EL素子の他の形態例を示している。
【0187】
上述した各例では、スイッチング用の薄膜トランジスタ142は、いわゆるシングルゲート構造として示しているが、本発明はこれに限定されない。即ち、図32に示すように、不図示のゲート線によって2つのゲート電極310、311が電気的に接続されたダブルゲート構造としてもよく、あるいはトリプルゲート構造など、いわゆるマルチゲート構造(直列に接続された2つ以上のチャネル領域を有する半導体膜を含む構造)としてもよい。マルチゲート構造はオフ電流値を低減する上で有利であり、画面の大型化にも有利である。
【0188】
図33(a)及び(b)は、有機EL表示装置の回路の他の例を示している。
【0189】
図33(a)及び(b)に示す回路は、電流を制御することにより、EL素子の通電制御を行う、いわゆる電流プログラム方式の回路である。なお、図32(a)はいわゆるカレントミラー回路を採用している。こうした回路を採用することにより、EL素子の導通状態を一定に保ち、EL層を安定して発光させることができる。また、大画面の表示装置を構成する上でも有利である。
【0190】
発光層の形成材料として高分子発光材料を用いる場合には、側鎖に発光基を有する高分子を用いることができるが、好ましくは共役系構造を主鎖に含むもので、特に、ポリチオフェン、ポリ−p−フェニレン、ポリアリーレンビニレン、ポリフルオレンおよびその誘導体が好ましい。中でもポリアリーレンビニレンおよびその誘導体が好ましい。ポリアリーレンビニレンおよびその誘導体としては、下記化学式(1)で示される繰り返し単位を全繰り返し単位の50モル%以上含む重合体であることが好ましい。繰り返し単位の構造にもよるが、化学式(1)で示される繰り返し単位が全繰り返し単位の70%以上であることがさらに好ましい。
【0191】
−Ar−CR=CR'− ... (1)
〔ここで、Arは、アリーレン基または複素環化合物基、R、R'はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜20の有機基、ペルフルオロアルキル基、シアノ基からなる群から選ばれた基を示す。〕
該高分子発光材料は、化学式(1)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位として、芳香族化合物基またはその誘導体、複素環化合物基またはその誘導体、およびそれらを組み合わせて得られる基などを含んでいてもよい。また、化学式(1)で示される繰り返し単位や他の繰り返し単位が、例えば、エーテル基、エステル基、アミド基、イミド基などを有する非共役の単位で連結されていてもよいし、繰り返し単位にそれらの非共役部分が含まれていてもよい。
【0192】
ポリアリーレンビニレン類としては、例えば、式(2)に示したような、PV(ポリ(パラ−フェニレンビニレン))、MO−PPV(ポリ(2,5−ジメトキシ−1,4−フェニレンビニレン))、CN−PPV(ポリ(2,5−ビスヘキシルオキシ−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)))、MEH−PPV(ポリ[2−メトキシ−5−(2'−エチルヘキシルオキシ)]−パラ−フェニレンビニレン)等のPPV誘導体などが挙げられる。
【0193】
【化1】
上記に示した材料以外に、例えば、ポリ(パラフェニレン)、ポリアルキルフルオレン等が挙げられるが、化学式(3)に示すようなポリアルキルフルオレン(具体的には化学式(4)に示すようなポリアルキルフルオレン系共重合体)が特に好ましい。
【0194】
【化2】
【0195】
【化3】
なお、前記高分子発光材料は、ランダム、ブロックまたはグラフト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えばブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。発光の量子収率の高い高分子発光材料を得る観点からは完全なランダム共重合体よりブロック性を帯びたランダム共重合体やブロックまたはグラフト共重合体が好ましい。また、ここで形成する有機EL素子は、薄膜からの発光を利用することから、高分子発光材料は固体状態で良好な発光量子収率を有するものが用いられる。
【0196】
上記の材料のうち、発光層を形成する際の温度において液状の材料、あるいは所望の溶媒に対して良好な溶解性を示す材料を、インクジェット法などの液体材料を用いた発光層の形成に用いることができる。該溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレンなどが好適に用いられる。高分子発光材料の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に0.1wt%以上溶解させることができる。
【0197】
また、前記高分子発光材料としては、分子量がポリスチレン換算で103〜107であることが好ましい場合があるが、分子量103以下のオリゴマーも使用することができる。
【0198】
所望の高分子発光材料に応じた合成法を採用することにより、当該所望の高分子発光材料を得ることができる。例えば、アリーレン基にアルデヒド基が2つ結合したジアルデヒド化合物と、アリーレン基にハロゲン化メチル基が2つ結合した化合物とトリフェニルホスフィンとから得られるジホスホニウム塩からのWittig反応が例示される。また、他の合成法としては、アリーレン基にハロゲン化メチル基が2つ結合した化合物からの脱ハロゲン化水素法が例示される。さらに、アリーレン基にハロゲン化メチル基が2つ結合した化合物のスルホニウム塩をアルカリで重合して得られる中間体から熱処理により該高分子発光材料を得るスルホニウム塩分解法が例示される。
【0199】
さらに具体的に、前記高分子発光材料の1つの例であるアリーレンビニレン系共重合体の合成法を説明する。例えば、Wittig反応により高分子発光材料を得る場合には、例えば、まず、ビス(ハロゲン化メチル)化合物、より具体的には、例えば2,5−ジオクチルオキシ−p−キシリレンジブロミドをN,N−ジメチルホルムアミド溶媒中、トリフェニルホスフィンと反応させてホスホニウム塩を合成し、これとジアルデヒド化合物、より具体的には、例えば、テレフタルアルデヒドとを、例えばエチルアルコール中、リチウムエトキシドを縮合させるWittig反応により、フェニレンビニレン基と2,5−ジオクチルオキシ−p−フェニレンビニレン基を含む高分子発光材料が得られる。このとき、共重合体を得るために2種類以上のジホスホニウム塩および/または2種類以上のジアルデヒド化合物を反応させてもよい。
【0200】
【化4】
これらの高分子発光材料を発光層の形成材料として用いる場合、その純度が発光特性に影響を与えるため、合成後、例えば、再沈精製、クロマトグラフなどによる分別等の精製処理をすることが望ましい。
【0201】
高分子材料の溶解性の低い材料の場合など、例えば、対応する前駆体が塗布した後、化学式(5)に示すように加熱硬化されることによって発光層を得ることができるものがある。例えば、ポリフェニレン−ビニレンが発光層を構成する高分子発光材料である場合、対応する前駆体のスルホニウム塩を発光層となる部位に配置した後、加熱処理することによりスルホニウム基が脱離し、発光層として機能するポリフェニレン−ビニレンを得ることができる。
【0202】
発光層を形成し得る低分子材料としては、可視域の発光を示す物質ならば、基本的に使用可能である。中でも芳香族系の置換基を有する材料が好適である。例えば、アルミキノリノール錯体(Alq3)やジスチリルビフェニル、さらに化学式(6)に示すBeBq2やZn(OXZ)2等の、従来から一般的に用いられているものに加え、ピラゾリンダイマー、キノリジンカルボン酸、ベンゾピリリウムパークロレート、ベンゾピラノキノリジン、ルブレン、フェナントロリンユウロピウム錯体等が挙げられる。
【0203】
上記に代表される高分子材料及び低分子材料から、青色、緑色、及び赤色の発光を示す材料を適宜選択し、所定の位置に配置すればカラー表示が可能であ。所定の位置に配置する際は、マスク蒸着法、印刷法、あるいはインクジェット法などが使用することができる。
【0204】
【化5】
発光層を、媒質として機能するゲストにホストを分散させた、いわゆるホスト/ゲスト型発光層とすることもできる。
【0205】
ホスト/ゲスト型発光層において、当該発光層の発光色を決定するのは、基本的にはゲスト材料であるので、所望の発光色に応じてゲスト材料を選択することができる。一般には、効率良く蛍光を発する材料が用いられる。ホスト材料は、基本的には、ゲスト材料の発光に関与する励起状態の準位より高いエネルギー準位を有する材料がホスト材料として好適である。キャリアの移動度が高い材料であることも要求される場合があるが、その場合は、上述の高分子発光体の中から選択することもできる。
【0206】
青色発光を示すゲスト材料としては、例えば、コロネン類、ジスチリルビフェニル類などが挙げられ、緑色発光を示すゲスト材料としては、例えば、キナクリドン類、ルブレン類、などが挙げられ、赤色発光を示すゲスト材料としては、蛍光色素としては、赤色発光を示すゲスト材料としては、例えば、ローダミン類が挙げられる。
【0207】
ホスト材料は、ゲスト材料に応じて適宜選択することができる。数例を挙げれば、ホスト材料及びゲスト材料を、それぞれ、Zn(OXZ)2及びコロネンとした発光層を形成することにより青色発光を示す発光層が得られる。
【0208】
ゲスト材料としては燐光材料も使用することができる。例えば、化学式(7)に示すIr(ppy)3、Pt(thpy)2、PtOEPなどが好適に用いられる。
【0209】
【化6】
なお、前記の化学式(7)に示した燐光物質をゲスト材料とした場合、ホスト材料としては、例えば、化学式(8)に示すCBP、DCTA、TCPB、あるいはAlq3などが好適に用いられる。
【0210】
なお、ホスト/ゲスト型発光層は、共蒸着法、あるいはホスト材料とゲスト材料あるいはそれらの前駆体を液状化したものを塗布する方法などにより形成される。
【0211】
【化7】
また、上述した例では、発光層の下層として正孔輸送層を形成し、上層として電子輸送層を形成したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば正孔輸送層と電子輸送層とのうちの一方のみを形成するようにしてもよく、また、正孔輸送層に代えて正孔注入層を形成するようにしてもよく、さらに発光層のみを単独で形成するようにしてもよい。
【0212】
さらに、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層に加えて、ホールブロッキング層を例えば発光層の対向電極側に形成して、発光層の長寿命化を図ってもよい。このようなホールブロッキング層の形成材料としては、例えば化学式(9)に示すBCPや化学式(10)で示すBAlqが用いられるが、長寿命化の点ではBAlqの方が好ましい。
【0213】
【化8】
【0214】
【化9】
さて、本発明の電気光学装置は、上述した有機EL表示装置に限定されるものではなく、他の電気光学装置にも適用可能である。電気光学装置としては、例えば、液晶表示装置などの各種の表示装置が挙げられる。
【0215】
また、本発明の膜形成装置及び材料の配置方法は、電気光学装置の製造過程に用いるものに限らず、半導体素子やカラーフィルタなどの電子装置の製造過程にも用いることができる。例えば、電子装置としては、トランジスタなどの半導体素子、特に半導体層が有機材料で形成されている有機トランジスタや、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)やMRAM(Magnetic Random Access Memory)などのメモリ素子等の製造にも好適に用いることができる。さらに、このような材料から得られるカラーフィルタとしては、所望の色を透過するものや、所望の色の光を発するものなどがある。こうしたカラーフィルタなどの電子装置においても、本発明の膜形成装置を用いて製造することにより、材料の選択自由度が高くなり、構造の最適化が図られる。そのため、高寿命化、高品質化、あるいは高機能化などを図りやすい。
【0216】
〔第6の実施形態〕
図34〜39は、本発明の電子機器の実施形態を示している。
【0217】
本例の電子機器は、上述した有機EL表示装置等の本発明の電気光学装置を表示手段として備えている。
【0218】
図34は、テレビ画像やコンピュータ送られる文字や画像を表示する表示装置の一例を示している。図34において、符号1000は本発明の電気光学装置を用いた表示装置本体を示している。なお、表示装置本体1000は、上述した有機EL表示装置を用いることにより、大画面にも対応できる。
【0219】
また、図35は、車載用のナビゲーション装置の一例を示している。図35において、符号1010はナビゲーション装置本体を示し、符号1011は本発明の電気光学装置を用いた表示部(表示手段)を示している。
【0220】
また、図36は、携帯型の画像記録装置(ビデオカメラ)の一例を示している。図36において、符号1020は記録装置本体を示し、符号1021は本発明の電気光学装置を用いた表示部を示している。
【0221】
また、図37は、携帯電話の一例を示している。図37において、符号1030は携帯電話本体を示し、符号1031は本発明の電気光学装置を用いた表示部(表示手段)を示している。
【0222】
また、図38は、ワープロ、パソコンなどの情報処理装置の一例を示している。図38において、符号1040は情報処理装置を示し、符号1041は情報処理装置本体、符号1042はキーボードなどの入力部、符号1043は本発明の電気光学装置を用いた表示部を示している。
【0223】
また、図39は、腕時計型電子機器の一例を示している。図39において、符号1050は時計本体を示し、符号1051は本発明の電気光学装置を用いた表示部を示している。
【0224】
図34〜図39に示す電子機器は、本発明の電気光学装置を表示手段として備えているので、耐久性及び品質の優れた表示を実現することができる。
【0225】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0226】
本発明の材料の配置方法及び膜形成装置によれば、材料の選択自由度が高く、高分子材料や低分子材料など、基体上に様々な材料の配置が可能になるとともに、溶剤の残留による不具合を低減させることができる。また、処理室内の圧力制御により、ノズルから材料を分子状に放出することも可能となり、これにより、より純度の高い材料膜や、高精度に膜厚制御された材料膜、あるいは特定の機能を持たせた機能膜を形成することが可能となる。さらに、ノズルの吐出不良を迅速に検出するので、不良品の削減を図ることができ、また、予備吐出を行うことにより、材料の吐出状態を常に安定させることができる。即ち、基体上のパターニング領域に材料を配置する前に、ノズルの吐出不良の検出を行うことにより、不良品を多数製造することが防止され、製品の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0227】
本発明の電気光学装置及びその製造方法によれば、高寿命化、高品質化、及び高機能化が図られた電気光学装置を提供することができる。さらに、装置の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0228】
本発明の電子装置によれば、高寿命化、高品質化、及び高機能化を図ることができる。さらに、装置の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0229】
本発明の電子機器によれば、表示手段の高寿命化、高品質化、及び高機能化を図ることができる。さらに、構成装置の歩留まりが向上することに起因して、低コスト化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0230】
【図1】本発明の第1の実施形態による膜形成装置の一例を模式的に示す図である。
【図2】有機EL素子を構成する発光層形成材料を基体上に配置した様子を示す図である。
【図3】本発明の材料の配置方法の一例を概念的に示す図である。
【図4】圧力制御系の構成例を模式的に示す図である。
【図5】材料供給系の構成例を模式的に示す図である。
【図6】複数のノズルと材料供給源との接続例を模式的に示す図である。
【図7】複数のノズルが設けられた放出ヘッドの構成例を模式的に示す図である。
【図8】放出機構の構成例を示す図である。
【図9】主制御系の構成例を模式的に示す図である。
【図10】材料の配置時における基体と放出ヘッド(ノズル)との相対移動の様子の一例を示す図である。
【図11】本発明の第1の実施形態による膜形成装置による膜形成工程を示すフローチャートである。
【図12】予備吐出のパターンの一例を示す図である。
【図13】予備吐出のパターンの一例を示す図である。
【図14】予備吐出のパターンの一例を示す図である。
【図15】材料の吐出初期における、吐出状態が不安定となる様子を示す図である。
【図16】材料の吐出初期における、吐出状態のバラつきにより予備吐出領域の長さを変更した様子を示す図である。
【図17】予備吐出のパターンの一例を示す図である。
【図18】予備吐出のパターンの一例を示す図である。
【図19】本発明の第4の実施形態による膜形成装置の一例を模式的に示す図である。
【図20】本発明の第4の実施形態による膜形成装置のブロック図である。
【図21】図19で説明した放出ヘッド、センサ、光源の配置を詳細に説明した図である。
【図22】本発明の第4の実施形態による膜形成装置の動作を記述したフローチャートである。
【図23】本発明の第5の実施形態によるアクティブマトリクス型有機EL表示装置の回路の一例を示す図である。
【図24】図23で説明した表示装置における画素部の平面構造の一例を示す平面図である。
【図25】画素部(有機EL素子)の断面構造を模式的に示しており、(a)はトップエミッション型、(b)はバックエミッション型を示している。
【図26】トップエミッション型の画素部(有機EL素子)の断面構造を拡大して示す図である。
【図27】本発明の電気光学装置の製造方法を有機EL素子を備える表示装置を製造するプロセスに適用した実施例を説明するための図である。
【図28】本発明の電気光学装置の製造方法を有機EL素子を備える表示装置を製造するプロセスに適用した実施例を説明するための図である。
【図29】本発明の電気光学装置の製造方法を有機EL素子を備える表示装置を製造するプロセスに適用した実施例を説明するための図である。
【図30】本発明の電気光学装置の製造方法を有機EL素子を備える表示装置を製造するプロセスに適用した実施例を説明するための図である。
【図31】有機EL素子の他の形態例を示す図である。
【図32】有機EL素子の他の形態例を示す図である。
【図33】有機EL表示装置の回路の他の例を示す図である。
【図34】本発明の第6の実施形態である電子機器の実施例を示す図である。
【図35】本発明の第6の実施形態である電子機器の他の実施例を示す図である。
【図36】本発明の第6の実施形態である電子機器の他の実施例を示す図である。
【図37】本発明の第6の実施形態である電子機器の他の実施例を示す図である。
【図38】本発明の第6の実施形態である電子機器の他の実施例を示す図である。
【図39】本発明の第6の実施形態である電子機器の他の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0231】
10,300…膜形成装置、11…真空チャンバ(処理室)、12…圧力制御系、13…基体ステージ(ステージ)、14…基体、15…ノズル、17…駆動系(移動手段)、18…テレビカメラ、19…検出系(検出手段)、40…材料供給源、100…有機EL表示装置、102…画素、285…正孔輸送層、286…発光層、287…電子輸送層、290…陰極、301…移動機構(移動手段)、305…センサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜形成装置、電子装置、電気光学装置並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイや表示光源などとして用いられる電気光学装置や、さらに、半導体装置などの電子装置の開発が日々加速している。この電気光学装置や電子装置の製造過程においては、特に、基体上の所定位置に材料を配置する成膜技術や配線技術は欠かせない技術であり、精度や品質、又は製造コストなどの各種製造条件を満たすための技術が望まれている。
【0003】
材料の配置技術としては、マスク蒸着法、材料吐出法(インクジェット法)、又は印刷法などが挙げられるが、近年では、基体上に形成される膜に特定の機能を持たせるために、基体上に配置する材料の多様化が進む傾向にあり、更に材料の選択自由度が高い材料の配置技術の開発が進められている。
【0004】
例えば、特許文献1の明細書には、材料の配置方法、膜形成装置、電気光学装置及びその製造方法、電子装置、並びに電子機器が記載されている。特に、該明細書の材料の配置方法は、ノズルから供給される材料を基体上の所定の位置に配置する方法であって、前記基体が配置される処理室内を前記ノズル内よりも低い圧力に制御し、該圧力制御された処理室内で前記ノズルから前記基体に向けて前記材料を放出することを特徴としている。
【0005】
上記の材料の配置方法によれば、基体が配置される処理室内をノズル内よりも低い圧力に制御し、その圧力制御された処理室内でノズルから基体に向けて材料を放出するので、圧力差を利用して、処理室内に供給された材料の移動を促し、基体上に材料を配置することが可能となる。
【0006】
また、処理室内の圧力を真空圧に低下させることにより、大気圧中では固体の材料を、処理室内で液体あるいは気体の状態にすることが可能となり、これにより材料の移動を容易にできる。したがって、材料の選択自由度が高く、例えば、溶解性の低い材料を、溶剤に溶解させることなく基板上に配置することが可能となる。
【0007】
【特許文献1】特公表2003−826359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術の材料の配置方法においては、ノズルが偶発的、もしくは該ノズル内で材料の焦げ付きや結晶化などによって、材料の吐出が不可能となる場合があり、この場合、迅速にノズルの交換、もしくはクリーニングなどの作業により、生産工程を正常に復帰させる必要がある。その際に、発生した不良基板は、従来、全て廃棄されるか、もしくは、多面取りの基板であれば、部分的に破棄されることになる。
【0009】
さらに、近年では、生産の効率化のために、基板の大型化が進んでおり、例えば、形状が730mm×920mmの基板や、一辺が1mを超える基板からの複数枚取りが主流になりつつあることを考慮すると、前記基板における製品基板形状の1枚目の領域で材料の不吐出などの異常が発生した場合、多くの不良品が生じる可能性がある。即ち、欠陥を有する電気光学装置、もしくは電子装置の製造による歩留まりの低下により、上述の材料の配置方法によるコストメリットを充分に生かすことができないという問題があった。
【0010】
また、上記のように、ノズルが材料の不吐出を起さないまでも、材料の吐出をある時間休止させた後に再び吐出を開始した場合、吐出開始の直後においては、吐出される材料の量が不安定となるという問題があった。例えば、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと表記する。)素子の製造において発光層を形成させた場合、不均一な発光層が形成され、発光ムラが生じる可能性があり、さらに、薄膜トランジスタの製造において各種配線を形成させた場合、所望の高精細な幅を有する配線を形成することができず、断線が生じる可能性があった。
【0011】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、ノズルの吐出不良を迅速に検出し、不良品の削減を図り、また、材料の吐出状態を常に安定させることができる膜形成装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の膜形成装置は、処理室と、前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージとを備え、前記ノズルと前記基体との相対的な位置を調整するための位置調整手段と、前記基体上に配置された前記材料を検査する検査手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の膜形成装置は、処理室と、前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージとを備え、前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を調整するための位置調整手段と、を含み、前記処理室内は撮像素子を備えていることを備えることを特徴とする。
上記の膜形成装置において、前記撮像素子が行う光学測定に際に用いる光源をさらに備えていることが好ましい。
上記の膜形成装置において、前記撮像素子の位置または姿勢は調整可能となっていることが好ましい。
【0014】
本発明の第3の膜形成装置は、処理室と、前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージとを備え、前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を調整するための位置調整手段と、前記少なくとも1つのノズルからの前記材料の吐出の異常を検出するための検出手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の第4の膜形成装置は、処理室と、前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージとを備え、前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を調整するための位置調整手段と、前記少なくとも1つのノズルからの吐出された前記材料の光学測定を行う光学的手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の第5の膜形成装置は、処理室と、前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージと、前記材料の前記基体上における配置位置を検出する検出手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
上記の膜形成装置において、さらに前記配置位置と前記材料を配置させるべき目標位置との位置ズレが生じた場合に、前記少なくとも一つのノズルの位置補正を行う位置補正手段をさらに備えることが好ましい。
上記の膜形成装置において、前記少なくとも一つのノズルに動作不良が生じた場合、前記少なくとも一つのノズルの代用として使用する予備ノズルを更に備えるようにしてもよい。
上記の膜形成装置において、前記基体の温度を調整する温度調整手段を更に備えるようにしてもよい。
上記の膜形成装置において、前記処理室内の圧力を1.33322×10-1Pa以下に設定することが可能となっていることが好ましい。
【0018】
本発明の電子装置は、上記の膜形成装置を用いて導電材料または半導体材料を前記基体上に配置することにより製造されたことを特徴とする。
本発明の電気光学装置は、上記の膜形成装置を用いて光学材料を前記基体上に配置することにより製造されたことを特徴とする。
【0019】
本発明の電子機器は、上記の電気光学装置を表示手段として備えることを特徴とする。
【0020】
上記の膜形成装置によれば、材料を吐出するノズルと、処理室内の圧力を制御する圧力制御系とを備えているので、後述する本発明の材料の配置方法を実施できる。つまり、この膜形成装置では、基体が配置される処理室内を高真空雰囲気とするように圧力に制御し、その圧力制御された処理室内でノズルから基体に向けて、材料を吐出することにより、圧力差を利用して、処理室内に供給された材料の移動を促し、基体上に材料を配置して、基体上に材料膜を形成することができる。また、処理室内の圧力を真空圧に低下させることにより、大気圧中では固体の材料を、処理室内で液体あるいは気体の状態にすることが可能となり、これにより材料の移動を容易にできる。そのため、この膜形成装置では、材料の選択自由度が高く、高分子材料や低分子材料など、基体上に様々な材料の配置が可能になる。
【0021】
さらに、溶剤の使用を避けるかあるいは溶剤の使用量を減らすことによって、材料膜の劣化など、溶剤の残留による不都合を回避することができる。また、この膜形成装置では、処理室内の圧力制御により、ノズルから材料を分子状に放出することが可能となり、これにより、より純度の高い材料膜を形成したり、材料膜の膜厚を高精度に制御したりできるようになる。さらに、材料を分子状に放出することによって、複数の材料を同時放出して混合させることが容易となり、この場合、特定の機能を持たせた機能膜を基体上に形成することが可能となる。
【0022】
さらに、吐出された材料を検査することにより、迅速に異常を検出することが可能となり、不良品の削減を図り、また、材料の吐出状態を常に安定させることができる。即ち、基体上のパターニング領域に材料を配置する前に、ノズルの吐出不良等の異常を検査することにより、不良品を多数製造することが防止され、製品の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0023】
なお、上記ノズルは、少なくとも1つ備える構成としているが、複数のノズルを備えたヘッドを備える構成としても、本膜形成装置と同様の作用・効果が奏される。
【0024】
また、上記の膜形成装置において、ノズルに吐出不良が生じた場合、その代用として使用する予備ノズルを更に備えていれば、ノズルの吐出不良が発生する都度、ノズルを交換する必要がなく、工程時間を短縮することが可能となる。
【0025】
また、上記の膜形成装置において、検査手段により得られた材料の吐出結果を利用すれば、不良品の削減を図り、また、材料の吐出状態を常に安定させることができる。
【0026】
また、上記の膜形成装置において、材料が配置された配置位置と、その材料が配置されるべき目標位置との間に位置ズレが生じた場合に、ノズルの位置補正を行えば、材料の配置工程における工程時間を増加させることなく位置補正を行うことができ、従って、安定した材料の配置を行うことが可能となる。
【0027】
上記の電子装置、又は電気光学装置は、上述のような優れた性能を有する膜形成装置を用いて製造されているので、高寿命、高品質、あるいは高機能等、優れた性能を有するものである。
【0028】
本発明の材料の配置方法は、基体上に材料を配置する材料の配置方法であって、高真空度に調整された真空雰囲気中に設置された前記基体の所定領域に向けて、少なくとも1つのノズルから材料を吐出する吐出ステップと、前記吐出ステップの開始前に、前記真空雰囲気中で前記ノズルの吐出不良を検出する検出ステップと、を備えることを特徴としている。
【0029】
上記の方法によれば、高真空度に調整された真空雰囲気中に設置された基体の所定領域に向けて、少なくとも1つのノズルから材料を吐出することにより、ノズル内と基体が設置されている雰囲気の圧力差を利用して材料の移動を促し、基体上に材料を配置することが可能となる。また、基体を設置する場所を真空雰囲気中とすることにより、大気圧中では固体の材料を、基体への配置時には液体あるいは気体の状態にすることが可能となり、これにより材料の移動を容易にできる。そのため、この材料の配置方法では、材料の選択自由度が高く、例えば、溶解性の低い材料を、溶剤に溶解させることなく基板上に配置することが可能となる。
【0030】
また、高分子材料や低分子材料など、基体上に様々な材料の配置が可能になる上に、溶剤の使用を避けるか、あるいは溶剤の使用量を減らすことによって、材料の劣化など、溶剤の残留による不都合を回避することができる。また、真空雰囲気の圧力制御により、ノズルから材料を分子状に放出することが可能となり、これにより、より純度の高い材料膜を形成したり、材料膜の膜厚を高精度に制御したりできるようになる。さらに、材料を分子状に放出することによって、複数の材料を同時放出して混合させることが容易となり、この場合、特定の機能を持たせた機能膜を基体上に形成することが可能となる。
【0031】
さらに、この材料の配置方法では、吐出ステップの開始前に、真空雰囲気中でノズルの吐出不良を検出するので、ノズルの吐出不良を迅速に検出することが可能となり、不良品の削減を図り、また、材料の吐出状態を常に安定させることができる。即ち、基体上のパターニング領域に材料を配置する前に、ノズルの吐出不良の検出を行うことにより、不良品を多数製造することが防止され、製品の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0032】
また、上記の材料の配置方法では、前記真空雰囲気を10-3torr(1.33322×10-1Pa)以下の真空度とすることが好ましく、さらには、10-5torr(1.33322×10-3Pa)とするのがより好ましい。
【0033】
真空雰囲気を10-3torr以下にすれば、大気中ではノズルから吐出しにくい材料であっても、ノズルから容易に吐出することが可能となり、10-5torr以下にすれば、さらに多くの種類の材料を吐出可能とすることができるとともに、吐出する材料を気化させて吐出しやすくすることが可能となる。
【0034】
また、上記の材料の配置方法では、前記検出ステップは、前記所定領域以外の予備吐出領域に前記材料の吐出を行い、該吐出の結果に基づいて、前記ノズルの吐出不良を検出する動作を含むことを特徴としており、さらには、前記所定領域に予備部材を設置し、該予備部材に備えた予備吐出領域に前記材料の吐出を行い、該吐出の結果に基づいて、前記ノズルの吐出不良を検出する動作を含んでも良い。
【0035】
この方法によれば、予備吐出領域に材料の吐出を行って、その吐出の結果に基づいてノズルの吐出不良を検出するので、基体の所定領域に配置される材料の吐出状況を事前に確実に再現することができ、より正確に吐出不良を検出することが可能となる。
【0036】
また、上記の材料の配置方法では、前記ノズルの吐出不良の検出は、前記予備吐出領域に吐出された前記材料の光の反射率を検出するか、もしくは、光の透過率を検出するなど分光学的手段により行うことができる。
【0037】
このようにすれば、予備吐出領域に吐出された材料の配置形状に影響されることがなく、また、検出時間を問題とすることなく、正確にノズルの吐出不良を検出することが可能となる。
【0038】
さらに、上記の材料の配置方法では、前記検出ステップは、前記吐出ステップにおける前記材料の変更時に行うことが好ましい。
【0039】
このようにすれば、材料の変更に起因するノズルの吐出不良も、所定領域への材料の吐出前に、事前に検出することが可能となる。
【0040】
また、本発明の材料の配置方法は、基体上に材料を配置する材料の配置方法であって、高真空度に調整された真空雰囲気中に設置された前記基体の所定領域に向けて、少なくとも1つのノズルから材料を吐出する吐出ステップと、前記吐出ステップの開始前に、前記所定領域以外の前記基体上の領域に向けて、前記ノズルから前記材料を予備吐出する予備吐出ステップと、を備えることを特徴としている。
【0041】
上記の方法によれば、高真空度に調整された真空雰囲気中に設置された基体の所定領域に向けて、少なくとも1つのノズルから材料を吐出することにより、ノズル内と基体が設置されている雰囲気の圧力差を利用して材料の移動を促し、基体上に材料を配置することが可能となる。また、基体を設置する場所を真空雰囲気中とすることにより、大気圧中では固体の材料を、基体への配置時には液体あるいは気体の状態にすることが可能となり、これにより材料の移動を容易にできる。そのため、この材料の配置方法では、材料の選択自由度が高く、例えば、溶解性の低い材料を、溶剤に溶解させることなく基板上に配置することが可能となる。
【0042】
また、高分子材料や低分子材料など、基体上に様々な材料の配置が可能になる上に、溶剤の使用を避けるか、あるいは溶剤の使用量を減らすことによって、材料の劣化など、溶剤の残留による不都合を回避することができる。また、真空雰囲気の圧力制御により、ノズルから材料を分子状に放出することが可能となり、これにより、より純度の高い材料膜を形成したり、材料膜の膜厚を高精度に制御したりできるようになる。さらに、材料を分子状に放出することによって、複数の材料を同時放出して混合させることが容易となり、この場合、特定の機能を持たせた機能膜を基体上に形成することが可能となる。
【0043】
さらに、この材料の配置方法では、吐出ステップの開始前に、所定領域以外の基体上の領域に向けて、ノズルから材料を予備吐出するので、常に、所定領域への材料の吐出量を安定させることができる。即ち、例えば、材料を連続して吐出している状態では、各ノズルからの材料吐出量が安定しているものの、一旦材料の吐出を休止させる等の動作に起因して、ノズル内で材料の固着等等の影響で吐出を再開させたときの材料の吐出量が安定しない場合があるが、予備吐出により、このようなことが発生しない。
【0044】
また、上記の材料の配置方法では、前記真空雰囲気を10-3torr(1.33322×10-1Pa)以下の真空度とすることが好ましく、さらには、10-5torr(1.33322×10-3Pa)とするのがより好ましい。
【0045】
真空雰囲気を10-3torr以下にすれば、大気中ではノズルから吐出しにくい材料であっても、ノズルから容易に吐出することが可能となり、10-5torr以下にすれば、さらに多くの種類の材料を吐出可能とすることができるとともに、吐出する材料を気化させて吐出しやすくすることが可能となる。
【0046】
また、上記の材料の配置方法では、前記予備吐出ステップは、前記吐出ステップに連続する前工程で前記ノズルの予備吐出を行うことが好ましい。
【0047】
このようにすれば、予備吐出後に、すぐに本吐出に移ることができるので、予備吐出後のノズルの吐出安定性を高度に維持したまま材料の配置が可能となる。
【0048】
また、上記の材料の配置方法では、前記予備吐出ステップは、前記吐出ステップにおける前記材料の変更時に行うことを特徴としている。
【0049】
このようにすれば、材料の変更に起因する材料の吐出量の不安定性を、材料の吐出前に、事前に解消させることが可能となる。
【0050】
さらに、上記の材料の配置方法では、前記予備吐出ステップの直後に、予備吐出で配置された前記材料の配置位置と、予備吐出で前記材料を配置させる目標位置とを検出し、前記配置位置と前記目標位置とに位置ズレが生じた場合に、前記ノズルの位置補正を行う位置補正ステップを更に備えることを特徴としている。
【0051】
上記の方法によれば、予備吐出ステップの直後に、予備吐出で配置された材料の配置位置と、予備吐出で材料を配置させる目標位置とを検出して、配置位置と目標位置とに位置ズレが生じた場合に、ノズルの位置補正を行うので、位置ズレが生じても、材料の配置工程における工程時間を増加させることなく位置補正を行うことができ、従って、安定した材料の配置を行うことが可能となる。
【0052】
本発明の電子装置の製造方法では、上記の材料の配置方法を用いて、電子装置を構成する要素の少なくとも一部を形成することを特徴としている。
【0053】
この電子装置の製造方法では、上述した材料の配置方法を用いることから、材料の選択自由度が高く、構造の最適化を図りやすい。しかも溶剤の残留による不都合がなく、電子装置の高寿命化が図られる。また、より純度の高い材料膜や特定の機能膜を形成することにより、高品質あるいは高機能のトランジスタやメモリ素子を製造することができる。さらに、材料の吐出が安定化されることにより、低コストの電子装置を製造することが可能となる。
【0054】
また、上記の電子装置の製造方法では、材料としてトランジスタまたはメモリ素子を構成する導電層、半導体層、絶縁層のうちの少なくとも一つの形成材料を配置し、導電層、半導体層、または絶縁層を形成することを特徴としている。
【0055】
この製造方法によれば、導電層、半導体層、絶縁層の形成材料を高い自由度で選択することができ、また溶媒を使用しないでこれら導電層、半導体層、あるいは絶縁層を形成するので、得られる素子の寿命向上化を図ることが可能となる。
【0056】
また、上記の電子装置の製造方法では、前記基体上に予め配線間を隔てるパターンを形成しておき、該パターン内に前記形成材料を配置して、導電層を形成することを特徴としている。
【0057】
この製造方法によれば、形成材料を吐出した際、その着弾位置に少々バラツキがあっても、パターン内に着弾すれば所望の位置に導電層を形成することができ、従って、導電層等からなる配線をそれぞれ所望位置に形成することにより、回路の特性を高めることが可能となる。
【0058】
本発明の電気光学装置の製造方法では、上記の材料の配置方法を用いて、電気光学装置を構成する要素の少なくとも一部を形成することを特徴としている。
【0059】
この電気光学装置の製造方法では、上述した材料の配置方法を用いることから、材料の選択自由度が高く、構造の最適化を図りやすい。しかも溶剤の残留による不都合がなく、電気光学装置の高寿命化が図られる。また、より純度の高い材料膜や特定の機能膜を形成することにより、高品質あるいは高機能の電気光学素子を製造することができる。さらに、材料の吐出が安定化されることにより、低コストの電気光学装置を製造することが可能となる。
【0060】
また、上記の電気光学装置の製造方法では、材料として有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する電子輸送層、正孔輸送層、発光層、電極のうちの少なくとも一つの形成材料を配置し、電子輸送層、正孔輸送層、発光層または電極を形成することを特徴としている。
【0061】
この製造方法によれば、電子輸送層、正孔輸送層、発光層あるいは電極の形成材料を高い自由度で選択することができ、また溶媒を使用しないでこれら電子輸送層、正孔輸送層、発光層あるいは電極を形成するので、得られる素子の寿命向上化を図ることが可能となる。
【0062】
また、上記の電気光学装置の製造方法では、前記基体上に予め画素間を隔てる隔壁を形成しておき、該隔壁内に前記形成材料を配置して電子輸送層、正孔輸送層、または発光層を形成することを特徴としている。
【0063】
この製造方法によれば、形成材料を吐出した際、その着弾位置に少々バラツキがあっても、隔壁内に着弾すれば所望の位置に発光層等を形成することができ、従って、発光層等からなる画素をそれぞれ所望位置に形成することにより、表示品質を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下、本発明の実施形態による材料の配置方法、膜形成装置、電気光学装置及びその製造方法、電子装置、並びに電子機器について詳細に説明する。
【0065】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態である膜形成装置の一例を模式的に示した斜視図である。
【0066】
膜形成装置は、ディスプレイや表示光源などとして用いられるEL素子、液晶表示素子、撮像素子(CCD)、電子放出素子、電気泳動素子などを備えた電気光学装置や、半導体素子、磁気ヘッド、カラーフィルタ、タッチパネル等の電子装置の製造過程に用いられ、これらの装置を構成する要素の一部を形成するために、基体上に材料を配置してその材料膜を形成するものである。
【0067】
膜形成装置10は、処理室である真空チャンバ11と、該真空チャンバ11内を所定の真空圧に制御する圧力制御系12と、真空チャンバ11内に設けられる基体ステージ13と、該基体ステージ13にセットされる基体14と、該基体14に材料を吐出するノズル15と、該ノズル15に材料を供給する材料供給系16と、基体14とノズル15とを相対的に位置決めする駆動系17と、ノズル15からの材料の不吐出を検出するためのセンサを組み込んだテレビカメラ18と、該テレビカメラ18から取り込んだデータを処理し、材料の不吐出を検査する画像処理装置(不図示)を有する検出系19と、これらの機構を統括的に制御する主制御系20とから構成されている。
【0068】
基体14としては、ガラス基板、シリコン基板、石英基板、セラミックス基板、金属基板、プラスチック基板、プラスチックフィルム基板等、電気光学装置や電子装置に用いられる公知の様々な基体が適用される。また、基体14上に配置される材料としては、光学材料や、回路形成材料など電気光学装置や電子装置に用いられる様々な材料が適用される。特に、本発明の膜形成装置は、後述するように、材料の選択自由度が高く、高分子材料や低分子材料など、広範囲の様々な材料が適用可能である。
【0069】
図2(a)、(b)は、膜形成用の材料として、有機EL素子を構成する発光層形成材料を基体14上に配置した様子を示している。
【0070】
図2(a)において、基体14上には、画素部102、データ側駆動回路103、走査側駆動回路104、不吐出検出パターン領域(予備吐出領域)60がそれぞれ設けられており、画素部102において、発光層形成材料が基体14上にストライプ状に配置され、これにより発光層(EL層)が基体14上にストライプ状の配列で形成されている。
【0071】
また、図2(b)では、画素部102において、発光層形成材料が基体14上にマトリクス状に配置され、これにより発光層105が基体14上にマトリクス状の配列で形成されている。EL素子では、カラー表示を行う場合、例えば、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の各色に対応する発光層が所定の配列で基体14上に形成される。図1に示した膜形成装置10は、例えば、こうした発光層を基体14上に形成するために、所定の材料を基体14上に配置するものである。なお、図2において、駆動回路103、104は基体14上に搭載されているが、外部(外付ICチップ上など)に搭載してもよい。有機EL素子の詳しい構成例については、本発明の電気光学装置の一例として、後述する。
【0072】
図3は、膜形成装置10を用いて基体14上に材料を配置する、本発明の材料の配置方法の一例を概念的に示す図である。本例の膜形成装置10では、基体14が配置される真空チャンバ11内を、圧力制御系12を介して、ノズル15内よりも低い圧力(真空圧)に制御し、圧力制御された真空チャンバ11内でノズル15から基体14に向けて材料を放出する。
【0073】
図4は、圧力制御系12の構成例を模式的に示している。圧力制御系12は、例えば、真空チャンバ11内を排気して、該真空チャンバ11内の圧力を低下させる真空装置30と、真空チャンバ11に連設された排気用の配管31と、真空チャンバ11内の真空圧を計測する圧力計32と、該圧力計32の計測結果に基づいて、真空装置30を制御する制御機器33等を備えて構成される。真空装置30としては、例えば、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、イオンポンプ、サブリメーションポンプ等の高真空ポンプ、あるいはロータリーポンプやドライポンプ等の低真空ポンプ、及び高真空ポンプと低真空ポンプとを組み合わせたもの等が適用される。また、真空チャンバ11は、気密に構成されるとともに、設定される真空圧に耐えうるように耐圧構造に設計される。
【0074】
また、圧力制御系13においては、真空装置30の作動時の振動が真空チャンバ11内に伝播しないよう、防振機構あるいは除振機構を設けておくのが好ましい。さらに、基体14を搬入・搬出する際に、真空チャンバ11内の真空度が低下しないように、真空チャンバ11に隣接して予備チャンバ34を設けるのが好ましい。この場合、予備チャンバ34は、例えば、真空チャンバ11内の真空度と同じ真空度に内部圧力を低下させるための真空装置35、及び基体14の搬入・搬出用の開口を開閉する開閉機構36,37等を有して構成される。なお、基体14を搬送する搬送機構は、予備チャンバ34内に設けてもよいし、外部に設けてもよい。
【0075】
真空チャンバ11内に基体14を搬入する際には、まず、予備チャンバ34内に基体14を一旦配置し、予備チャンバ34内の圧力を真空チャンバ11内と同程度の圧力に制御した後、予備チャンバ34と真空チャンバ11との間の開閉機構36を開いて真空チャンバ11への基体14の搬入を行う。逆に、真空チャンバ11から基体14を搬出する際には、予備チャンバ34内の圧力を真空チャンバ11内と同程度の圧力に制御した後、開閉機構36を開いて基体14を予備チャンバ34内に搬入し、開閉機構36を閉じた後に、予備チャンバ34内から基体14を外部に搬出する。これにより、真空チャンバ11の真空度を安定して維持することができる。
【0076】
図3に示すように、上記の圧力制御系12により、真空チャンバ11内をノズル15内よりも低い圧力に制御し、圧力制御された真空チャンバ11内でノズル15から基体14に向けて材料を放出する。したがって、ノズル15内と真空チャンバ11との圧力差により、ノズル15から放出される材料の移動が促され、ノズル15から放出された材料が基体14上に安定して配置される。また、真空チャンバ11内の圧力を真空圧に低下させることにより、大気圧中では固体あるいは液体の材料を、真空チャンバ11内で液体あるいは気体の状態にすることが可能となり、これにより材料の移動が容易になる。即ち、本実施形態では、室温及び大気圧中では基体14に移動しにくい材料に対して、真空圧中でその材料の状態(好ましくは相)を変化させることにより、その移動を容易にできる。したがって、様々な材料を基体14上に配置することが可能となる。
【0077】
例えば、真空チャンバ11内を高真空度に制御することにより、ノズル15から供給される材料を気化させて放出することが可能となる。その結果、溶解性の低い材料を、溶剤に溶解させることなく基体14上に配置することが可能となる。つまり、ノズル15から供給される材料が固体や高粘度の液体であっても、真空チャンバ11内の圧力を大きく低下させ、その材料を蒸発あるいは昇華させることにより、その材料を、気相あるいは蒸気相としてノズル15から基体14に移動させることが可能となる。
【0078】
真空チャンバ11内の圧力は、蒸気圧等の使用する材料の特性に応じて適宜設定するのが好ましく、圧力制御系12を介して、例えば、10-3torr(1.33322×10-1Pa)以下の高真空度、あるいは10-5torr(1.33322×10-3Pa)以下の高真空度に制御する。真空チャンバ11内を、10-3torr以下の高真空度に制御することにより、大気圧中ではノズル15から放出しにくい材料であっても、ノズル15から容易に放出できるようになり、さらに、真空チャンバ11内を10-5torr以下の高真空度に制御することにより、より広範囲の様々な材料をノズル15から放出することが可能となる。また、真空チャンバ11内を上述した高真空度に制御することにより、ノズル15から放出される材料の昇華あるいは蒸発を容易にできる。
【0079】
図5は、材料供給系16の構成例を示す概念図である。図5(a)の例では、材料供給系16は、材料を液体の状態でノズル15に供給するように構成されている。即ち、材料供給系16は、液体材料を収容するタンクを含む材料供給源40、ノズル15、材料供給源40からノズル15に材料を輸送するポンプ等の輸送手段41、及びノズル15からの材料の放出のタイミングを制御する放出機構42等を有する。なお、毛管現象や重力、あるいは圧力差を利用することにより、上記輸送手段41を省略してもよい。
【0080】
また、室温及び大気圧中で固体の材料を使用する場合、図5(b)に示すように、ヒータ等の加熱手段43によって材料を加熱して溶融させることにより、その材料を液体の状態でノズル15に供給することが可能となる。この場合、加熱手段43は、例えば、材料が収容されるタンクの他に、輸送経路上の配管や、ノズル15にも設置するのが好ましい。
【0081】
ノズル15は、真空チャンバ11内に少なくとも1つ設けられるが、本実施形態では複数からなり、各々が材料供給源40に接続されている。図6は、複数のノズル15と材料供給源40との接続例を模式的に示しており、図6(a)は、複数のノズル15が同一の材料供給源40に接続された例、図6(b)は、複数のノズル15がそれぞれ異なる材料供給源40a,40b,40cに接続された例を示している。複数のノズル15が同一の材料供給源40に接続され、その複数のノズル15から同一の材料を基体14に向けて放出することにより、一度に材料を配置できる領域を拡大したり、時間あたりの材料の供給量を増やしたりしてスループットの低減化が図られる。また、複数のノズル15が異なる材料供給源40a,40b,40cに接続され、その複数のノズル15からそれぞれ異なる材料を基体14に向けて放出することにより、異なる複数の材料からなる膜を基体14上に形成することができる。例えば、図2を用いて説明したEL素子の発光層を基体上に形成する場合、赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の各色に対応する発光層形成材料をそれぞれ異なるノズルから放出することにより、各色に対応する発光層を所定の配列パターンで基体上に形成することが可能となる。
【0082】
また、本実施形態では、複数のノズル15が同一の物体にまとめて設けられている。図7(a)〜(d)は、上記複数のノズル15が設けられる物体としての放出ヘッド45の構成例を模式的に示している。図7(a)では、放出ヘッド45は、一の材料供給源40に接続されており、材料供給源40から供給された材料は、放出ヘッド45内で分岐して各ノズル15に送られるように構成されている。
【0083】
また、図7(b)では、放出ヘッド45は、一の材料供給源40に接続されており、材料供給源40から供給された材料は、放出ヘッド45に入る前に分岐され、放出ヘッド45内では分岐されることなくそのまま各ノズル15に送られるように構成されている。この場合、ノズル内での分岐によるエネルギー損失の不均一をなくし、材料の供給状態をより均一にできる。
【0084】
また、図7(c)では、放出ヘッド45は、異なる複数の材料供給源40a,40b,40cに接続されており、各材料供給源40a,40b,40cから供給された材料は、放出ヘッド45に設けられた複数のノズルのうち、予め対応付けられた所定のノズルに送られるように構成されている。
【0085】
また、図7(d)では、放出ヘッドが複数(45a,45b,45c)からなり、それぞれが異なる材料供給源40a,40b,40cに個別に接続されている。こうした放出ヘッド45の構成やその材料の供給経路は、使用する材料に応じて適宜定められる。なお、放出ヘッドに設けられた複数のノズル15は、放出機構42(図5参照)によって材料放出のタイミングを個々に制御される。
【0086】
放出機構42としては、例えば、シャッターの開閉により機械的に材料放出のタイミングを制御するメカニカルシャッター方式を採用することができる。図8は、放出機構42の構成例を示しており、本実施形態の放出機構42は、ノズル15内の液状の材料を加熱することにより、その材料を気化(蒸発)させてノズル15から放出させる。
【0087】
図8において、放出機構42は、ノズル15内の材料を加熱する加熱手段46を有し、その加熱のタイミングを制御することにより、材料放出のタイミングを制御するように構成されている。材料放出用の加熱手段46としては、例えば、電気ヒータを用いたもの(図8(a),(b))や、YAGレーザ等のレーザを用いたもの(図8(c))、又は高周波加熱装置を用いたもの(図8(d))等が挙げられる。なお、加熱手段46としてはこれに限らず、公知の様々な加熱手段を適用可能である。また、ノズル15から材料を気化させて放出する場合、加熱手段46は、ノズル15内の材料のうち、基体14に面する表面付近を加熱するように設けるのが好ましい。これにより、材料の表面から効果的に材料を気化させることができる。
【0088】
本実施形態では、基体14が配置される真空チャンバ11(図3参照)内の圧力がノズル15内よりも低い圧力(真空圧)に制御されることから、ノズル15から放出される材料を加熱することで、その材料を真空チャンバ11内で容易に気化(蒸発)させることができる。特に、真空チャンバ11内が高真空度に制御されている場合、材料の沸点が大きく下がり、比較的少ない熱量で材料が容易に気化(蒸発)する。気化した材料は、ノズル15から気体あるいは蒸気の状態で放出され、基体14に向かって移動し、基体14に達した後、例えば、基体14との熱交換によって冷却され、液化あるいは固化して基体14上に固定される。そして、所定量の材料が基体14上に配置されることにより、基体14上に材料膜が形成される。
【0089】
高真空度に制御された真空チャンバ11内で、ノズル15から材料を気化させて放出する場合、その材料を分子状(分子線状)あるいは原子状(原子線状)に放出することが可能となる。そして、分子状あるいは原子状に放出された材料を基体14に配置することにより、より純度の高い材料膜を基体14上に形成したり、材料膜の膜厚を高精度に制御したりできるようになる。つまり、真空チャンバ11内が高真空度に制御されていることから、ノズル15から供給される材料に不純物が混入しにくく、また、材料を分子状あるいは原子状に放出して基体14上に配置することにより、分子あるいは原子レベルでの膜厚制御が可能となる。特に、複数のノズル15から材料を同時放出して複数の材料を混合させることが容易となり、この場合、特定の機能を持たせた機能膜を基体14上に形成しやすくなる。
【0090】
検出系19では、ノズル15の吐出不良の検出は、不吐出検出パターン領域60に吐出された材料の光の反射率を検出するか、もしくは、光の透過率を検出するなど分光学的手段により行うことができる。これによれば、不吐出検出パターン領域60に吐出された材料の配置形状に影響されることがなく、また、検出時間を問題とすることなく、正確にノズルの吐出不良を検出することができる。
【0091】
図9は、膜形成装置10の主制御系20を示す概念図である。主制御系20は、各種制御部を内蔵した本体となる制御コントローラ50と、該制御コントローラ50の入出力手段であるティーチングペンダント51とから構成されている。ティーチングペンダント51は、不図示であるが、材料配置の進行状況及びノズルの異常の有無等の情報を表示する表示部と、膜形成装置10の動作等を指示する操作部とからなる。
【0092】
制御コントローラ50は、ティーチングペンダント51とのデータの受け渡しを行うインターフェイス52と、膜形成装置10の制御を行うCPU53と、該CPU53を動作させるための制御プログラムを記憶するROM54と、異常情報等を記憶するRAM55と、圧力制御系12に接続され、真空チャンバ11内の圧力を制御する圧力制御部56と、材料供給系16に接続され、材料の吐出を制御する吐出制御部57と、駆動系17に接続され、基体ステージ13の動作を制御するステージ制御部58と、検出系19に備えられた画像処理装置に接続される検出部59とから構成されている。
【0093】
図10は、材料の配置時(パターニング時)における基体14と放出ヘッド45(ノズル15)との相対移動の様子の一例を示す図である。また、図10において、XYZ直交座標系が用いられ、XYZ直交座標系は、基体14が搭載される基体ステージ13に対して平行となるようにX軸及びY軸が設定され、Z軸が基体ステージ13に対して直交する方向に設定されている。
【0094】
図10において、本実施形態の駆動系17は、不図示のベース上に配置され、二次元平面内(図10中のXY平面内)で駆動自在に配置される基体ステージ13を有する。基体ステージ13は、例えば、リニアモータ等からなる駆動装置、及び基体ステージ13上の基体14を加熱・冷却するための温調装置等を有しており、主制御系20の指令のもとで、基体14を所定の温度に調節するとともに、基体14の所定位置への位置決めや移動を行う。即ち、膜形成装置10では、材料の配置時(パターニング時)において、ノズル15から材料を放出しながら、基体14と放出ヘッド45(ノズル15)とを相対移動させることにより、基体14上に所定の配列で材料膜を形成する。また、基体14を所定の温度に調節することにより、基体14上に配置される材料の堆積や固化を促進させる。なお、基体14と放出ヘッド45(ノズル15)との間隔(Z方向の距離)は、不図示のZ駆動装置を介して調整される。なお、駆動系17において、放出ヘッド45あるいは基体14のXY平面に対する傾きを調整する手段や、XY平面内での回転角を調整する手段を備えてもよい。
【0095】
また、本例では、基体ステージ13を介して基体14を移動させることにより、パターニング時における基体14と放出ヘッド45(ノズル15)との相対移動を行うが、本発明はこれに限定されず、放出ヘッド45を移動させて上記相対移動を行ってもよく、あるいは基体14と放出ヘッド45との双方を移動させて上記相対移動を行ってもよい。基体14と放出ヘッド45との双方を移動させる場合、一方(例えば放出ヘッド45)の移動により上記走査移動を行い、他方(例えば基体14)の移動により上記シフト移動を行ってもよい。また、ある箇所に対して一度の走査移動で材料膜の形成を完成させるのではなく、同じ箇所に対して、複数回繰り返し走査移動を繰り返して、材料膜を完成させてもよい。これにより、例えば、基体上で材料を成長(気相成長)させながら材料膜を形成することが可能となる。この場合、材料の膜成長に応じて走査移動を繰り返すことにより、スループットの低下を抑制できる。
【0096】
次に、本実施形態の膜形成装置による膜形成工程を、図11に示すフローチャートに従って説明する。
【0097】
まず、膜形成装置10の基体ステージ13上に基体14をセットし、位置決めを行う(ステップS1)。位置決めを行った後、基体14上に設けられた予備吐出領域60が放出ヘッド45の直下に移動された際(ステップS2)、例えば、図12に示すような描画を行う。描画パターンをテレビカメラ18と検出系19によって認識し(ステップS3)、異常がない場合、基体ステージ13は、基体14上のパターニング領域70を放出ヘッド45の直下に移動し(ステップS4)、材料の配置を実行する。なお、単一の基体から複数枚の製品基板を採取する場合、例えば、単一基体上に2カ所のパターニング領域を有する場合は、基体ステージ13は、上記の材料の配置が終了した後、基体上の第2の不吐出検出パターン領域(不図示)が放出ヘッド45の直下に位置するように移動される(ステップS5)。そして、同一の動作を再度繰り返し、第2のパターニング領域(不図示)に対して材料の配置を行う。
【0098】
一方、ステップS3で不吐出等の異常が発見された場合、直ちにパターニング領域70への材料の配置を停止し、放出ヘッド45の回復手段による回復動作の実行(ステップS6)、もしくは、放出ヘッド45の交換等(ステップS7)を行う。
【0099】
以上説明したように、本例の膜形成装置及び材料の配置方法では、材料の選択自由度が高く、高分子材料や低分子材料など、基体上に様々な材料の配置が可能になる。そのため、溶剤の使用を避けるかあるいは溶剤の使用量を減らすことによって、材料膜の劣化など、溶剤の残留による不都合を回避することができる。また、ノズルから材料を分子状あるいは原子状に放出することが可能となり、これにより、より純度の高い材料膜を形成したり、材料膜の膜厚を高精度に制御したりでき、さらに、複数の材料を同時放出して混合させることで、特定の機能を持たせた機能膜を基体上に良好に形成することが可能である。
【0100】
さらに、ノズルの吐出不良を迅速に検出し、不良品の削減を図り、また、材料の吐出状態を常に安定させることができる。即ち、基体上のパターニング領域に材料を配置する前に、ノズルの吐出不良の検出を行うことにより、不良品を多数製造することが防止され、製品の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0101】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0102】
第1の実施形態では、基体14のパターニング領域70への材料の配置を行う直前に、基体14上に不吐出検出パターンを放出ヘッド45(ノズル15)から吐出させるようにしたが、本実施形態では、パターニング領域70に材料の配置を行う前に、基体14上に放出ヘッド45の吐出状態を安定化させるための予備吐出を行うことを特徴としている。
【0103】
図12は、基体14上への予備吐出のパターンを示した図である。図12に示すように、基体14上のパターニング領域202に材料を吐出する直前において、パターニング領域202の脇に設けられた、基体14上の予備吐出領域204,206に予備吐出を行う。予備吐出のための材料の吐出パターンとしては、図12(a)に示すように、パターニング領域202の配列(ライン)パターンと同一ピッチで吐出を行ってもよいし、図12(b)に示すように、ある範囲をべた塗りするように吐出してもよい。さらには、図12(a)、(b)に示すような予備吐出パターン以外に、例えば、後に液晶表示装置等を構成するために、基体であるガラス基板に対向基板を貼りあわせるときの位置決め用のアライメントマークを予備吐出により形成するようにしても良い。
【0104】
なお、予備吐出領域の形状は、図12(a)、(b)に示した形状に限定されるものではなく、例えば、図13(a)、(b)に示すように、予備吐出領域204,206をパターニング領域202の両側に形成しても良いし、図14(a)、(b)に示すように、パターニング領域を取り囲むように予備吐出領域を形成するようにしても良い。
【0105】
上記のように、通常、材料を連続して吐出している状態では、各ノズルからの材料吐出量が安定しているものの、一旦材料の吐出を休止させると、ノズル内で材料が乾燥すること等の影響で吐出を再開させたときの材料の吐出量が安定しないが、本実施形態によれば、パターニング領域には、常に安定した材料の吐出を行うことが可能となる。さらには、予備吐出領域がパターニング領域に近接しているので、予備吐出後に、すぐに本吐出に移ることができ、予備吐出後のノズルの吐出安定性を高度に維持したまま材料の配置が可能となる。
【0106】
なお、上記の実施形態では、予備吐出領域を基体14上に設けた一例を示したが、本発明は、これに限らず、基体外の部分に予備吐出用の受け(部材)を用意し、該受け上に予備吐出を行っても、同様の効果を奏する。
【0107】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0108】
本実施形態では、実際に使用するパターニング領域の外側から材料の配置を開始することにより、パターニング領域に均一な材料吐出量による膜を形成することを特徴としている。
【0109】
通常、放出ヘッド45(ノズル15)は、連続的、あるいは繰り返しパターンで材料を吐出し続けている間は安定して材料を吐出させることが出来るが、最初に吐出し始める場合や、次のラインに移して材料の配置を行う場合、材料の吐出当初の材料量は不安定となる。
【0110】
例えば、図15(a)に示すように、最初の材料吐出量が所望の量に対して少なかったり、図15(b)に示すように、最初の材料吐出量が所望の量に対して大きくなったり、図15(c)に示すように、材料の着弾点と材料の濃度の中心がずれる場合がある。これらの現象は、材料を吐出させないで放出ヘッド45又は基体14を移動させる場合、ノズル15の近傍で、例えば、材料が蒸発するために材料の濃度が変化したり、材料の粘性が変化したりするために起こる現象である。
【0111】
なお、本実施形態における予備吐出のパターンについては、図15に示すように、パターニング領域202と同様のパターンを延長させてもよいし、全く別な形状でも良い。また、図16に示すように、吐出が不安定な材料の種類のみ長い距離の予備吐出をさせても良い。あるいは、図17に示すように、基体14の端部に予備吐出領域210を設けて、該予備吐出領域210で吐出が安定するまで材料を吐出させた後、材料の配置を開始しても良い。また、図18に示すように、走査方向を配列パターンに対して垂直あるいは角度をつけても、走査開始方向に予備吐出領域を設ければ良いことになる。
【0112】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0113】
図19は、本実施形態の膜形成装置の概略を示す斜視図である。膜形成装置300は、基体14を図中X及びY方向に移動させるステージ等からなる移動機構301と、基体14をθ方向に回転自在である回転ステージ302と、基体14を保持し固定する固定台303と、材料を吐出するノズルを有する放出ヘッド304と、配置された材料のパターンを読み取るセンサ305と、該センサ305の撮像範囲を照射する光源306と、基体14に予め設けられたアライメントマーク310を読み取るアライメント用センサ307,308とから構成されている。
【0114】
図20は、膜形成装置300のブロック図である。膜形成装置300の制御系は、全体の制御を行うホストコンピュータ311と、ステージ301の制御部312と、材料の吐出を行う放出ヘッド304の制御部313と、センサ305によって読み取られた映像データから、放出ヘッド304からの吐出の有無の検知や材料の配置位置やパターニング領域の位置の計測等を行う画像処理部314と、放出ヘッド304の姿勢、位置を制御する姿勢調整制御部315とからなる。
【0115】
図21は、図19で説明した放出ヘッド304、センサ305、光源306の配置を詳細に説明した図である。放出ヘッド304は、θ方向調整機構325、Z方向調整機構326、Y方向調整機構327によって姿勢を調整できるようになっており、Z方向調整機構326によって、放出ヘッド304と基体14との間隔を、所定の距離に設定することができる。また、θ方向調整機構325は、放出ヘッド304を、基体14に対して所定の角度に設定することができる。姿勢調整機構325,326,327は、例えば、直動ステージと回転ステージ等の移動機構を組み合わせてY,Z,θ軸を構成する。また、各軸の移動機構は、手動で動かすように構成してもよいし、モータ等の駆動源を取り付けて動かすようにしても良い。放出ヘッド304は、複数の材料吐出口(ノズル)を持ち、図中Y方向に並んでいる。
【0116】
また、CCDラインセンサ等の撮像素子319には、光源306によって照射された、基体14上の2点ABを結ぶ直線上の像が、レンズ322を介して結像される。撮像素子319は、θ方向調整機構320、Z方向調整機構321によって姿勢を調整できるようになっている。基体14と、放出ヘッド304と、撮像素子319との相対位置関係は、図19における移動機構301及び302によって、図中X、Y、θ方向に移動することができる。
【0117】
次に、本実施形態による膜形成装置の動作について説明する。
【0118】
図22は、膜形成装置300の動作を記述したフローチャートである。まず、始めに、膜形成装置300に材料の配置対象である基体14が、図19の固定台303上に供給される(ステップS11)。供給された基体14は、静電吸着等の吸着手段により固定される(ステップS12)。次に、基体14上に形成されているアライメントマーク310を、センサ307,308で読み取る(ステップS13)。読み取ったアライメントマークから、基体14の位置を算出し、図18の移動機構301、302を用いて、基体14のアライメントを行う(ステップS14)。基体14のアライメントが終了すると、予備吐出が行われる(ステップS15)。予備吐出は、材料の配置対象である基体14の余白(予備吐出領域)に行われる。この予備吐出は、パターニング領域に材料を配置する前に行うことで、常に吐出の状態を安定させる効果があり、もし、不吐出が発生したり、材料の配置位置がずれたりしても、未然に検知することが可能であり、不良品の発生を抑えることができる。
【0119】
次に、材料が配置された、予備吐出パターンとパターニング領域に形成された配列パターンとを、センサ305で読み込む(ステップS16)。読み取られた予備吐出パターンから、不吐出のチェックを行う(ステップS17)。具体的には、材料の吐出に使用するノズルからの材料が、ドットとして基体14上に着弾し、存在するか否かを読み取った画像データを処理することで実現される。もし、使用するノズルに不吐出が検出された場合は、本来使用するノズル以外のノズルのなかに、代わりに使用可能なノズルが存在するか調べる(ステップS18)。使用可能なノズルが存在しない場合は、放出ヘッド304を新しいものに交換する(ステップS28)。S18にて、使用可能なノズルが存在する場合は、使用するノズルの変更を行い(ステップS19)、新たに変更されたノズル位置が、今まで使用していたノズルの位置にくる様に、ヘッドの位置を調整機構によって移動させる(ステップS20)。
【0120】
S17にて不吐出がなかった場合は、読み取られた画像データより、予備吐出パターンのドットの位置、及び配列パターンの位置を算出する(ステップS21,S22)。次に、ドットの位置と配列パターンの位置のズレ量を算出する(ステップS23)。ここで、S23にて算出されたズレ量が、許容範囲を超えてパターニング領域の材料配置に支障をきたすようなズレ量であれば、ステップS25にてズレ量の補正を行う(ステップS24)。S24において、S23にて算出されたズレ量が、許容範囲内におさまっていれば補正を行わなくて良い。この時点で、パターニング領域への材料配置が可能な状態となったので、材料の配置を実施し(ステップS26)、基体14上に膜を形成する。膜の形成が終了すると、基体14の排出が行われ、膜形成の1サイクルが終了する(ステップS27)。
【0121】
このように、本実施形態によれば、基体のパターニング領域外に予備吐出を行うことにより、材料の吐出の安定性を向上させることができるとともに、放出ヘッドと配列パターンとのズレを補正することができる。
【0122】
なお、本発明はその主旨を逸脱しない範囲で、上記の実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0123】
例えば、ノズルからの吐出を確認するためのパターンは、吐出の有無を確認できれば限られることはない。その場合、パターンによってはエリアセンサカメラの方が適しているのであれば、エリアセンサカメラを用いるのが望ましい。また、予備吐出領域は、基体上の一領域、もしくは、基体外の専用エリアであっても、不良品の発生を最小限に抑制するという効果は同様に得られる。
【0124】
また、上記実施形態では、放出ヘッド及びラインセンサカメラを固定してXYθステージ側を移動させるように説明したが、ステージ側を固定して、放出ヘッド及びラインセンサカメラ側を移動させるようにしてよい。さらに、上記の実施形態では、放出ヘッドの不吐出等の異常の検出をテレビカメラと画像処理装置を用いて行ったが、本発明は、これに限定されず、レーザ光を材料が通過するときの干渉縞の検出等によって行ってもよい。また、配置されたヘッド異常検出パターンの光の反射率、又は透過率を検出することによって行ってもよい。
【0125】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の電気光学装置を、有機EL素子を用いたアクティブマトリクス型の表示装置に適用した実施形態について説明する。
【0126】
図23は、本例のアクティブマトリクス型有機EL表示装置の回路の一例を示し、図24は、本例の表示装置における画素部の平面構造の一例を示している。本例の表示装置100は、その構成要素の一部が前述した、いずれかの膜形成装置を用いて形成されていることを特徴としている。
【0127】
表示装置100は、図24に示すように、基体としての基板上に、複数の走査線131と、これら走査線131に対して交差する方向に延びる複数の信号線132と、これら信号線132に並列に延びる複数の共通給電線133とがそれぞれ配線され、走査線131及び信号線132の交点毎に、画素(画素領域素)102が設けられている。
【0128】
信号線132に対しては、例えば、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、アナログスイッチを備えるデータ側駆動回路103が設けられている。一方、走査線131に対しては、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路104が設けられている。また、画素領域102の各々には、走査線131を介して走査信号がゲート電極に供給される第1の薄膜トランジスタ142と、この第1の薄膜トランジスタ142を介して信号線132から供給される画像信号を保持する保持容量capと、保持容量capによって保持された画像信号がゲート電極に供給される第2の薄膜トランジスタ143と、この第2の薄膜トランジスタ143を介して共通給電線133に電気的に接続したときに共通給電線133から駆動電流が流れ込む画素電極141(陽極)と、この画素電極141と対向電極154(陰極)との間に挟み込まれる発光部140と、が設けられている。
【0129】
また、図24に示すように、各画素102の平面構造は、平面形状が長方形の画素電極141の四辺が、信号線132、共通給電線133、走査線131及び図示しない他の画素電極用の走査線によって囲まれた配置となっている。画素領域102の平面形状は、図に示す矩形の他に、円形、長円形など任意の形状が適用される。
【0130】
このような構成のもとに、走査線131が駆動されて第1の薄膜トランジスタ142がオンとなると、そのときの信号線132の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて、第2の薄膜トランジスタ143の導通状態が決まる。そして、第2の薄膜トランジスタ143のチャネルを介して共通給電線133から画素電極141に電流が流れ、さらに発光部140を通じて対向電極154に電流が流れることにより、発光部140は、これを流れる電流量に応じて発光するようになる。
【0131】
図25(a)、(b)は、画素部102(有機EL素子)の断面構造を模式的に示しており、(a)は、いわゆるトップエミッション型、(b)は、いわゆるバックエミッション型を示している。図25(a)において、トップエミッション型のEL素子では、薄膜トランジスタ143が設けられている基板121とは反対側から発光層286(EL層、発光部140)の発光光を取り出す構成である。そのため、基板121としては、透明でも不透明でもよい。不透明な基板としては、例えば、アルミナ等のセラミック、ステンレス等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0132】
図25(b)において、バックエミッション型のEL素子では、薄膜トランジスタ143が設けられている基板121側から発光層286の発光光を取り出す構成である。そのため、基板121としては、透明あるいは半透明なものが用いられる。透明あるいは反透明な基板としては、例えば、ガラス基板、石英基板、樹脂基板(プラスチック基板、プラスチックフィルム基板)等が挙げられ、特に安価なソーダガラス基板が好適に用いられる。なお、ソーダガラス基板を用いる場合、これにシリカコートを施すことにより、酸アルカリに弱いソーダガラスが保護されるとともに、基板の平坦性の向上が図られる。また、基板に色フィルター膜や発光性物質を含む色変換膜、あるいは誘電体反射膜を配置して、発光色を制御するようにしてもよい。
【0133】
また、図25(b)において、符号281は、発光層286(EL層)の形成時に、隣接する発光層同士の混じりを防ぐ隔壁を有するバンク層である。ここでは、バンク層は頂辺の長さが底辺の長さより小であるテーパー構造を有しているが、逆に頂辺の長さが底辺の長さと同等あるいは大となるような構造であってもよい。バックエミッション型のEL素子では、薄膜トランジスタ143が設けられている基板121側から発光層286の発光光を取り出す構成であるため、光を効率よく取り出すことを目的として、発光層286の真下に薄膜トランジスタ143を配置するのを避け、薄膜トランジスタ143を例えば前記バンク層281の下に配置するのが好ましい。
【0134】
図26は、トップエミッション型の画素部102(有機EL素子)の断面構造を拡大して示している。
【0135】
図26において、有機EL素子は、基板121と、インジウム錫酸化物(ITO)等の透明電極材料からなる陽極280(画素電極)と、陽極280から正孔を輸送可能な正孔輸送層285と、電気光学物質の1つである有機EL物質を含む発光層286(有機EL層)と、発光層286の上面に設けられている電子輸送層287と、電子輸送層287の上面に設けられている陰極290(対向電極)と、基板121上に形成され、画素電極280にデータ信号を書き込むか否かを制御する通電制御部としての薄膜トランジスタ142、143とを有している。陰極290は、素子全面を覆うように形成されており、画素電極280と対になって発光層286に電子を注入する役割を果たす。この陰極290は、単層構造でもよく複層構造でもよい。また、陰極290の形成材料としては、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、金(Au)、銀(Ag)、カルシウム(Ca)の他に、フッ化リチウム等が挙げられる。これらの材料は単独で使用してもよく、合金として使用してもよい。
【0136】
薄膜トランジスタ142、143は、本例では、双方ともnチャネル型に形成されている。なお、薄膜トランジスタ142、143は、双方ともnチャネル型TFTに限らず、双方またはどちらか一方にpチャネル型の薄膜トランジスタを用いてもよい。
【0137】
薄膜トランジスタ142、143は、例えば、SiO2を主体とする下地保護膜201を介して基板121の表面に設けられており、下地保護膜201の上層に形成されたシリコン等からなる半導体膜204、205と、半導体膜204、205を覆うように、下地保護膜201の上層に設けられたゲート絶縁膜220と、ゲート絶縁膜220の上面のうち半導体膜204、205に対向する部分に設けられたゲート電極229、230と、ゲート電極229、230を覆うようにゲート絶縁膜220の上層に設けられた第1層間絶縁膜250と、ゲート絶縁膜220及び第1層間絶縁膜250にわたって開孔するコンタクトホールを介して半導体膜204、205と接続するソース電極262、263と、ゲート電極229、230を挟んでソース電極262、263と対向する位置に設けられ、ゲート絶縁膜220及び第1層間絶縁膜250にわたって開孔するコンタクトホールを介して半導体膜204、205と接続するドレイン電極265、266と、ソース電極262、263及びドレイン電極265、266を覆うように第1層間絶縁膜250の上層に設けられた第2層間絶縁膜270とを備えている。
【0138】
また、第2層間絶縁膜270の上面に画素電極280が配置され、画素電極280とドレイン電極266とは、第2層間絶縁膜270に設けられたコンタクトホールを介して接続されている。また、第2層間絶縁膜270の表面のうち有機EL素子が設けられている以外の部分と陰極290との間には、合成樹脂などからなる第3絶縁層(バンク層)281が設けられている。
【0139】
なお、第1層間絶縁膜250と第2層間絶縁膜270の材質が互いに異なる場合、図に示すように、第1層間絶縁膜250に設けられたコンタクトホールと第2層間絶縁膜270に設けられたコンタクトホール275とは、重ならないように形成されるのが好ましい。
【0140】
また、半導体膜204、205のうち、ゲート絶縁膜220を挟んでゲート電極229、230と重なる領域がチャネル領域246、247とされている。また、半導体膜204、205のうち、チャネル領域246、247のソース側にはソース領域233、236が設けられている一方、チャネル領域246、247のドレイン側にはドレイン領域234、235が設けられている。このうち、ソース領域233、236が、ゲート絶縁膜220と第1層間絶縁膜250とにわたって開孔するコンタクトホールを介して、ソース電極262、263に接続されている。一方、ドレイン領域234、235が、ゲート絶縁膜220と第1層間絶縁膜250とにわたって開孔するコンタクトホールを介して、ソース電極262、263と同一層からなるドレイン電極265、266に接続されている。画素電極280は、ドレイン電極266を介して、半導体膜205のドレイン領域235に電気的に接続されている。
【0141】
本例の有機EL素子は、正孔輸送層285、発光層286、及び電子輸送層287が、前述した膜形成装置を用いて形成される。そのため、これらの層を形成する材料の選択自由度が高い。また、これらの層を形成する際に、溶剤の使用を避けるかあるいは溶剤の使用量を減らすことが可能であり、この場合、層の劣化など、溶剤の残留による不都合が回避される。なお、正孔輸送層285、発光層286、及び電子輸送層287に限らず、他の膜を前述した膜形成装置を用いて形成してもよい。
【0142】
次に、本発明の電気光学装置の製造方法を、上述した有機EL素子を備える表示装置を製造するプロセスに適用した実施例について図27〜図30を参照して説明する。なお、本例では、前述した薄膜トランジスタ142、143を含む有機EL素子と同時に、N型及びP型の駆動回路用の薄膜トランジスタとを同時に製造するプロセスについて説明する。
【0143】
まず、図27(a)に示すように、基板121に対し、必要に応じてTEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約200〜500nmのシリコン酸化膜からなる下地保護膜201を形成する。なお、下地保護膜として、シリコン酸化膜の他に、シリコン窒化膜やシリコン酸化窒化膜を設けてもよい。こうした絶縁膜を設けることにより、放熱性を高めることが可能となる。
【0144】
次に、基板121の温度を約350℃に設定して、下地保護膜の表面に、ICVD法、プラズマCVD法などを用いて厚さ約30〜70nmのアモルファスシリコン膜からなる半導体膜200を形成する。半導体膜200としては、アモルファスシリコン膜に限定されず、微結晶半導体膜などのアモルファス構造を含む半導体膜であればよい。また、アモルファスシリコンゲルマニウム膜などの非晶質構造を含む化合物半導体膜でもよい。
【0145】
続いて、この半導体膜200に対してレーザアニール法や、急速加熱法(ランプアニール法や熱アニール法など)などの結晶化工程を行い、半導体膜200をポリシリコン膜に結晶化する。レーザアニール法では、例えばエキシマレーザでビームの長寸が400mmのラインビームを用い、その出力強度は例えば200mJ/cm2とする。なお、YAGレーザの第2高調波或いは第3高調波を用いてもよい。ラインビームについては、その短寸方向におけるレーザ強度のピーク値の90%に相当する部分が領域毎に重なるようにラインビームを走査するのがよい。
【0146】
次に、図27(b)に示すように、フォトリソグラフィ法等を用いたパターニングにより、半導体膜(ポリシリコン膜)200の不要な部分を除去して、薄膜トランジスタの各形成領域に対応して、島状の半導体膜202、203、204、205を形成する。
【0147】
続いて、TEOSや酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約60〜150nmのシリコン酸化膜または窒化膜(シリコン酸化窒化膜など)からなるゲート絶縁膜220を、半導体膜200を覆うように形成する。ゲート絶縁膜220は単層構造でも積層構造でもよい。なお、プラズマCVD法に限らず、熱酸化法などの他の方法を用いてもよい。また、熱酸化法を利用してゲート絶縁膜220を形成する際には、半導体膜200の結晶化も行い、これらの半導体膜をポリシリコン膜とすることができる。
【0148】
次に、図27(c)に示すように、ゲート絶縁膜220の全表面に、ドープドシリコン、シリサイド膜や、アルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属を含むゲート電極形成用導電膜221を形成する。この導電膜221の厚さは例えば200nm程度である。
【0149】
続いて、ゲート電極形成用導電膜221の表面にパターニング用マスク222を形成し、この状態でパターニングを行って、図27(d)に示すように、P型の駆動回路用トランジスタを形成する側にゲート電極223を形成する。このとき、N型の画素電極用トランジスタ及びN型の駆動回路用トランジスタの側では、ゲート電極形成用導電膜221がパターニング用マスク222で覆われているので、ゲート電極形成用導電膜221はパターニングされることはない。また、ゲート電極は単層の導電膜で形成してもよく、積層構造としてもよい。
【0150】
次に、図27(e)に示すように、P型の駆動回路用トランジスタのゲート電極223と、N型の画素電極用トランジスタが形成される領域とN型の駆動回路用トランジスタが形成される領域とに残したゲート電極形成用導電膜221をマスクとして、p型不純物元素(本例ではボロン)をイオン注入する。ドーズ量は、例えば約1×1015cm-2である。その結果、不純物濃度が例えば1×1020cm-3の高濃度のソース・ドレイン領域224、225がゲート電極223に対して自己整合的に形成される。ここで、ゲート電極223で覆われ、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域226となる。
【0151】
次に、図28(a)に示すように、P型の駆動回路用トランジスタの側を完全に覆い、かつ、N型の画素電極用TFT10およびN型の駆動回路用トランジスタの側のゲート電極形成領域を覆うレジストマスク等からなるパターニング用マスク227を形成する。
【0152】
次に、図28(b)に示すように、パターニング用マスク227を使用してゲート電極形成用導電膜221をパターニングし、N型の画素電極用トランジスタおよびN型の駆動回路用トランジスタのゲート電極228、229、230を形成する。
【0153】
続いて、パターニング用マスク227を残したまま、n型不純物元素(本例ではリン)をイオン注入する。ドーズ量は、例えば1×1015cm-2である。その結果、パターニング用マスク227に対して自己整合的的に不純物が導入され、半導体膜203、204、205中に高濃度ソース・ドレイン領域231、232、233、234、235、236が形成される。ここで、半導体膜203、204、205のうち、高濃度のリンが導入されない領域は、ゲート電極228、229、230で覆われていた領域よりも広い。すなわち、半導体膜203、204、205のうち、ゲート電極228、229、230と対向する領域の両側には高濃度ソース・ドレイン領域231、232、233、234、235、236との間に高濃度のリンが導入されない領域(後述する低濃度ソース・ドレイン領域)が形成される。
【0154】
次に、パターニング用マスク227を除去し、この状態でn型不純物元素(本例ではリン)をイオン注入する。ドーズ量は、例えば1×1013cm-2である。その結果、図28(c)に示すように、半導体膜203、204、205にはゲート電極228、229、230に対して自己整合的に低濃度の不純物が導入され、低濃度ソース・ドレイン領域237、238、239、240、241、242が形成される。なお、ゲート電極228、229、230と重なる領域には不純物が導入されず、チャネル領域245、246、247が形成される。
【0155】
次に、図28(d)に示すように、ゲート電極228、229、230の表面側に第1層間絶縁膜250を形成し、フォトリソグラフィ法等によってパターニングして所定のソース電極位置、ドレイン電極位置にコンタクトホールを形成する。第1層間絶縁膜250としては、例えば、シリコン酸化窒化膜やシリコン酸化膜等のシリコンを含む絶縁膜を用いるとよい。また、単層でもよく積層膜でもよい。さらに、水素を含む雰囲気中で、熱処理を行い半導体膜の不対結合手を水素終端(水素化)する。なお、プラズマにより励起された水素を用いて水素化を行ってもよい。
【0156】
続いて、この上からアルミニウム膜、クロム膜やタンタル膜などの金属膜を用いてソース電極、ドレイン電極となる導電膜251を形成する。導電膜251の厚さは例えば200nm〜300nm程度である。導電膜は単層でもよく積層膜でもよい。
【0157】
続いて、ソース電極、ドレイン電極の位置にパターニング用マスク252を形成するとともに、パターニングを行って、図28(e)に示すソース電極260、261、262、263、及びドレイン電極264、265、266を同時に形成する。
【0158】
次に、図29(a)に示すように、窒化珪素等からなる第2層間絶縁膜270を形成する。この第2層間絶縁膜270の厚さは、例えば1〜2μm程度である。第2層間絶縁膜270の形成材料としては、シリコン酸化膜や有機樹脂、シリカエアロゲルなどの光を透過可能な材料が用いられる。有機樹脂としてはアクリル、ポリイミド、ポリアミド、BCB(ベンゾシクロブテン)等を用いることができる。
【0159】
次に、図29(b)に示すように、第2層間絶縁膜270をエッチング除去してドレイン電極266に達するコンタクトホール275を形成する。
【0160】
次に、図29(c)に示すように、コンタクトホール275内にも埋め込まれるように、例えばITOやフッ素をドープしてなるSnO2、さらにZnOやポリアニリン等の透明電極材料からなる膜を形成し、ソース・ドレイン領域235、236に電気的に接続する画素電極280を形成する。なお、この画素電極280がEL素子の陽極となる。
【0161】
次に、図30(a)に示すように、画素電極280を挟むように、第3絶縁層(バンク層)281を形成する。具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などのレジストを溶媒に融かしたものを、スピンコート、ディップコート等により塗布して絶縁層を形成し、絶縁層をフォトリソグラフィ技術等により同時にエッチングする。第3絶縁層281としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などの合成樹脂が用いられる。なお、信号線、共通給電線、走査線等の配線を含むバンク層を形成してもよい。
【0162】
続いて、画素電極280を覆うように正孔輸送層285を形成する。
【0163】
本例では、前述した膜形成装置を用いて正孔輸送層285を形成する。すなわち、真空圧に制御された真空チャンバ内に基板121を配置し、ノズル14から基板121に向けて正孔輸送層285の形成材料を放出する。この際、ノズル14から正孔輸送層285の形成材料を気化させて放出してもよい。気化した材料は、基板121上に達した後、熱交換によって冷却され、液化あるいは固化して固定される。そして、所定量の材料が基板121上に配置されることにより、基体11上に正孔輸送層285が形成される。
【0164】
また、材料が基板121上にて液状となった場合には、その流動性によって水平方向に広がろうとするものの、第3絶縁層(バンク層)の隔壁によって、その広がりが防止される。なお、処理条件や材料の特性等により、材料の流動による不都合が生じない場合には、第3絶縁層の高さを低くしたり、隔壁を用いない構造としてもよい。また、ノズル15から材料を基板121上に放出した後、基板121を真空チャンバ内から一旦取り出し、必要に応じて加熱あるいは光照射等の処理を行って材料を固化あるいは硬化させてもよい。
【0165】
正孔輸送層285の形成材料としては、特に限定されることなく公知のものが使用可能であり、例えばピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等が挙げられる。具体的には、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示されるが、トリフェニルジアミン誘導体が好ましく、中でも4,4'−ビス(N(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルが好適とされる。
【0166】
また、正孔輸送層に代えて正孔注入層を形成するようにしてもよく、さらに正孔注入層と正孔輸送層を両方形成するようにしてもよい。その場合、正孔注入層の形成材料としては、例えば銅フタロシアニン(CuPc)や、ポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム等が挙げられるが、特に銅フタロシアニン(CuPc)を用いるのが好ましい。正孔注入層と正孔輸送層を両方形成する場合には、例えば、正孔輸送層の形成に先立って正孔注入層を画素電極側に形成し、その上に正孔輸送層を形成するのが好ましい。このように正孔注入層を正孔輸送層とともに形成することにより、駆動電圧の上昇を制御することができるとともに、駆動寿命(半減期)を長くすることができる。
【0167】
次に、図30(b)に示すように、正孔輸送層285上に発光層286を形成する。
【0168】
本例では、先の正孔輸送層(及び/又は正孔注入層)と同様に、前述した膜形成装置を用いてこの発光層286を形成する。即ち、真空圧に制御された真空チャンバ内に基板121を配置し、ノズル15から基板121に向けて発光層286の形成材料を放出する。
【0169】
発光層286の形成材料としては、特に限定されることなく、低分子の有機発光色素や高分子発光体、すなわち各種の蛍光物質や燐光物質からなる発光物質が使用可能である。発光物質となる共役系高分子の中ではアリーレンビニレン構造を含むものが特に好ましい。低分子蛍光体では、例えばナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、ポリメチン系、キサテン系、クマリン系、シアニン系などの色素類、8−ヒドロキノリンおよびその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン誘導体等、または特開昭57−51781号公報、同59−194393号公報等に記載されている公知のものが使用可能である。
【0170】
次に、図30(c)に示すように、発光層286上に電子輸送層287を形成する。
【0171】
本例では、先の正孔輸送層285、発光層286の場合と同様に、前述した膜形成装置を用いてこの電子輸送層287を形成する。すなわち、真空圧に制御された真空チャンバ内に基板121を配置し、ノズル15から基板121に向けて電子輸送層287の形成材料を放出する。
【0172】
電子輸送層287の形成材料としては、特に限定されることなく、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタンおよびその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンおよびその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体等が例示される。具体的には、先の正孔輸送層の形成材料と同様に、特開昭63−70257号公報、同63−175860号公報、特開平2−135359号公報、同2−135361号公報、同2−209988号公報、同3−37992号公報、同3−152184号公報に記載されているもの等が例示され、特に2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウムが好適とされる。
【0173】
なお、正孔輸送層285の形成材料や電子輸送層287の形成材料を、発光層286の形成材料に混合し、発光層形成材料として使用してもよい。その場合、正孔輸送層形成材料や電子輸送層形成材料の使用量については、使用する化合物の種類等によっても異なるものの、十分な成膜性と発光特性を阻害しない量範囲でそれらを考慮して適宜決定される。通常は、発光層形成材料に対して1〜40重量%とされ、さらに好ましくは2〜30重量%とされる。
【0174】
また、上述した正孔輸送層285、発光層286、及び電子輸送層287の各膜厚については、予めノズル14からの各形成材料の放出量を適宜に設定しておくことにより、好ましい厚さ(例えば65nm)に形成する。また、圧力差を利用してノズル15からの材料の移動を促したり、あるいはノズル15から材料を気化させて放出したりすることにより、これらの形成材料を溶剤に溶解させることなく、あるいは溶剤の使用量を減らして基板上に配置することが可能となる。そのため、材料の劣化など、溶剤の残留による不都合が回避される。
【0175】
次に、図30(d)に示すように、基板121の表面全体に、あるいはストライプ状に陰極としての対向電極290を形成する。対向電極290は、Al、Mg、Li、Caなどの単体材料やMg:Ag(10:1合金)の合金材料からなる1層で形成してもよく、2層あるいは3層からなる金属(合金を含む)層として形成してもよい。具体的には、Li2O(0.5nm程度)/AlやLiF(0.5nm程度)/Al、MgF2/Alといった積層膜が挙げられる。
【0176】
以上のプロセスにより、有機EL素子、及びN型及びP型の駆動回路用の薄膜トランジスタが完成する。
【0177】
なお、上述した例では、正孔輸送層285、発光層286、及び電子輸送層287を前述した膜形成装置を用いて形成しているが、他の層についても、同様に、膜形成装置を用いて形成してもよい。例えば、画素電極280(陽極)や対向電極290(陰極)を、前述の膜形成装置を用いて形成してもよい。即ち、インジウム錫酸化物(ITO)や酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの透明電極(陽極)や、Al/Ca等の積層構造などによる陰極についても、膜形成装置10を用いて形成することができる。
【0178】
さらに、特に図27及び図28に示したトランジスタの形成過程において、前述した膜形成装置を用いて任意の層を形成してもよい。特に、気化させた材料を放出して層を形成することにより、膜厚を高精度に制御できる。そのため、高精度なトランジスタを形成することが可能となる。さらに、前述した膜形成装置を用いることにより、所望の位置に材料を配置できることから、マスクの使用をなくしたり、少なくしたりすることができる。
【0179】
図31は、有機EL素子の他の形態例を示している。
【0180】
図31に示す有機EL素子は、上述した例と異なり、ガスや金属イオンの侵入を遮断する封止層(第1封止層295、第2封止層296、及び第3封止層297のうちの少なくとも1つ)を有する。
【0181】
第1封止層295は、第1層間絶縁膜250と第2層間絶縁膜270との間で、ソース電極262、263及びドレイン電極265、266を覆うように形成され、膜厚は例えば50〜500nmである。第1封止層295を構成する材料としては、例えばセラミックや窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素などの材料が用いられる。第1封止層295は、薄膜トランジスタ142、143に対して、水分や発光層286(EL層)等からのアルカリ金属(ナトリウム)の侵入を防ぐ。
【0182】
また、第1封止層295を構成する材料として、上記アルカリ金属の封止効果に加え、放熱効果を持つ材料を用いてもよい。こうした材料としては、例えば、B(ホウ素)、C(炭素)、N(窒素)のうちの少なくとも一つの元素と、Al(アルミニウム)、Si(珪素)、P(リン)のうちの少なくとも一つの元素とを含む絶縁膜が挙げられる。例えば、アルミニウムの窒化物、珪素の炭化物、珪素の窒化物、ホウ素の窒化物、ホウ素のリン化物等を用いることができる。さらに、Si、Al、N、O、Mを含む絶縁膜(ただし、Mは希土類元素の少なくとも一種、好ましくはCe(セリウム),Yb(イッテルビウム),Sm(サマリウム),Er(エルビウム),Y(イットリウム)、La(ランタン)、Gd(ガドリニウム)、Dy(ジスプロシウム)、Nd(ネオジウム)のうちの少なくとも一つの元素)を用いることもできる。また、ダイヤモンド薄膜又はアモルファスカーボン膜(ダイヤモンドライクカーボン等)を含む炭素膜を用いることもできる。これらは熱伝導率が高く、放熱効果が高い。
【0183】
第2封止層296は、第2層間絶縁膜270と画素電極280との間に形成され、膜厚は例えば50〜500nmである。第2封止層301を構成する材料としては、例えばセラミックや窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素などの材料が用いられる。第2封止層296は、水分や、薄膜トランジスタ142、143に対して、水分や発光層286(EL層)等からのアルカリ金属(ナトリウム)の侵入を防ぐ。第2封止層296を構成する材料として、上述した第1封止層に用いられる材料を用いることができる。また、上記アルカリ金属の封止効果に加え、放熱効果を持たせてもよい。
【0184】
第3封止層297は、陰極290を覆うように形成され、膜厚は例えば50〜500nmである。第3封止層297を構成する材料としては、例えばセラミックや窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化珪素などの材料が用いられる。第3封止層297は、外部からの水分の侵入を防ぐ。また、第3封止層297を構成する材料として、上述した第1封止層に用いられる材料を用いることができる。また、上記アルカリ金属の封止効果に加え、放熱効果を持たせてもよい。また、図31の有機EL素子は、トップエミッション型であり、第3封止層297は、良好に光を透過させる材質及び厚みで形成されるのが好ましい。
【0185】
また、こうした封止層に代えてあるいは加えて、光の取り出し効率を向上させるための低屈折率層を形成してもよい。低屈折率層は、基板より光の透過屈折率が低い層であり、例えばシリカエアロゲルによって構成される。シリカエアロゲルとは、シリコンアルコキシドのゾルゲル反応により形成される湿潤ゲルを超臨界乾燥することによって得られる均一な超微細構造を持った光透過性の多孔質体である。シリカエアロゲルは体積の90%以上を空隙が占め、残りが樹枝状に凝集した数十nmの微細なSiO2粒子で構成された材料であり、粒子径が光の波長よりも小さいため、光透過性を有し、その屈折率は1.2以下である。また、空隙率を変化させることによって屈折率を調整できる。ここで、基板の材料であるガラスの屈折率は1.54、石英の屈折率は1.45である。また、低屈折率層として、多孔性を有するSiO2膜やポリマー等の他の材料を用いてもよい。さらに、低屈折率層を構成する材料に、乾燥剤あるいは化学吸着剤を分散させてもよい。これにより、低屈折率層に封止効果を付与することができる。
【0186】
図32は、有機EL素子の他の形態例を示している。
【0187】
上述した各例では、スイッチング用の薄膜トランジスタ142は、いわゆるシングルゲート構造として示しているが、本発明はこれに限定されない。即ち、図32に示すように、不図示のゲート線によって2つのゲート電極310、311が電気的に接続されたダブルゲート構造としてもよく、あるいはトリプルゲート構造など、いわゆるマルチゲート構造(直列に接続された2つ以上のチャネル領域を有する半導体膜を含む構造)としてもよい。マルチゲート構造はオフ電流値を低減する上で有利であり、画面の大型化にも有利である。
【0188】
図33(a)及び(b)は、有機EL表示装置の回路の他の例を示している。
【0189】
図33(a)及び(b)に示す回路は、電流を制御することにより、EL素子の通電制御を行う、いわゆる電流プログラム方式の回路である。なお、図32(a)はいわゆるカレントミラー回路を採用している。こうした回路を採用することにより、EL素子の導通状態を一定に保ち、EL層を安定して発光させることができる。また、大画面の表示装置を構成する上でも有利である。
【0190】
発光層の形成材料として高分子発光材料を用いる場合には、側鎖に発光基を有する高分子を用いることができるが、好ましくは共役系構造を主鎖に含むもので、特に、ポリチオフェン、ポリ−p−フェニレン、ポリアリーレンビニレン、ポリフルオレンおよびその誘導体が好ましい。中でもポリアリーレンビニレンおよびその誘導体が好ましい。ポリアリーレンビニレンおよびその誘導体としては、下記化学式(1)で示される繰り返し単位を全繰り返し単位の50モル%以上含む重合体であることが好ましい。繰り返し単位の構造にもよるが、化学式(1)で示される繰り返し単位が全繰り返し単位の70%以上であることがさらに好ましい。
【0191】
−Ar−CR=CR'− ... (1)
〔ここで、Arは、アリーレン基または複素環化合物基、R、R'はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜20の有機基、ペルフルオロアルキル基、シアノ基からなる群から選ばれた基を示す。〕
該高分子発光材料は、化学式(1)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位として、芳香族化合物基またはその誘導体、複素環化合物基またはその誘導体、およびそれらを組み合わせて得られる基などを含んでいてもよい。また、化学式(1)で示される繰り返し単位や他の繰り返し単位が、例えば、エーテル基、エステル基、アミド基、イミド基などを有する非共役の単位で連結されていてもよいし、繰り返し単位にそれらの非共役部分が含まれていてもよい。
【0192】
ポリアリーレンビニレン類としては、例えば、式(2)に示したような、PV(ポリ(パラ−フェニレンビニレン))、MO−PPV(ポリ(2,5−ジメトキシ−1,4−フェニレンビニレン))、CN−PPV(ポリ(2,5−ビスヘキシルオキシ−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)))、MEH−PPV(ポリ[2−メトキシ−5−(2'−エチルヘキシルオキシ)]−パラ−フェニレンビニレン)等のPPV誘導体などが挙げられる。
【0193】
【化1】
上記に示した材料以外に、例えば、ポリ(パラフェニレン)、ポリアルキルフルオレン等が挙げられるが、化学式(3)に示すようなポリアルキルフルオレン(具体的には化学式(4)に示すようなポリアルキルフルオレン系共重合体)が特に好ましい。
【0194】
【化2】
【0195】
【化3】
なお、前記高分子発光材料は、ランダム、ブロックまたはグラフト共重合体であってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えばブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。発光の量子収率の高い高分子発光材料を得る観点からは完全なランダム共重合体よりブロック性を帯びたランダム共重合体やブロックまたはグラフト共重合体が好ましい。また、ここで形成する有機EL素子は、薄膜からの発光を利用することから、高分子発光材料は固体状態で良好な発光量子収率を有するものが用いられる。
【0196】
上記の材料のうち、発光層を形成する際の温度において液状の材料、あるいは所望の溶媒に対して良好な溶解性を示す材料を、インクジェット法などの液体材料を用いた発光層の形成に用いることができる。該溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレンなどが好適に用いられる。高分子発光材料の構造や分子量にもよるが、通常はこれらの溶媒に0.1wt%以上溶解させることができる。
【0197】
また、前記高分子発光材料としては、分子量がポリスチレン換算で103〜107であることが好ましい場合があるが、分子量103以下のオリゴマーも使用することができる。
【0198】
所望の高分子発光材料に応じた合成法を採用することにより、当該所望の高分子発光材料を得ることができる。例えば、アリーレン基にアルデヒド基が2つ結合したジアルデヒド化合物と、アリーレン基にハロゲン化メチル基が2つ結合した化合物とトリフェニルホスフィンとから得られるジホスホニウム塩からのWittig反応が例示される。また、他の合成法としては、アリーレン基にハロゲン化メチル基が2つ結合した化合物からの脱ハロゲン化水素法が例示される。さらに、アリーレン基にハロゲン化メチル基が2つ結合した化合物のスルホニウム塩をアルカリで重合して得られる中間体から熱処理により該高分子発光材料を得るスルホニウム塩分解法が例示される。
【0199】
さらに具体的に、前記高分子発光材料の1つの例であるアリーレンビニレン系共重合体の合成法を説明する。例えば、Wittig反応により高分子発光材料を得る場合には、例えば、まず、ビス(ハロゲン化メチル)化合物、より具体的には、例えば2,5−ジオクチルオキシ−p−キシリレンジブロミドをN,N−ジメチルホルムアミド溶媒中、トリフェニルホスフィンと反応させてホスホニウム塩を合成し、これとジアルデヒド化合物、より具体的には、例えば、テレフタルアルデヒドとを、例えばエチルアルコール中、リチウムエトキシドを縮合させるWittig反応により、フェニレンビニレン基と2,5−ジオクチルオキシ−p−フェニレンビニレン基を含む高分子発光材料が得られる。このとき、共重合体を得るために2種類以上のジホスホニウム塩および/または2種類以上のジアルデヒド化合物を反応させてもよい。
【0200】
【化4】
これらの高分子発光材料を発光層の形成材料として用いる場合、その純度が発光特性に影響を与えるため、合成後、例えば、再沈精製、クロマトグラフなどによる分別等の精製処理をすることが望ましい。
【0201】
高分子材料の溶解性の低い材料の場合など、例えば、対応する前駆体が塗布した後、化学式(5)に示すように加熱硬化されることによって発光層を得ることができるものがある。例えば、ポリフェニレン−ビニレンが発光層を構成する高分子発光材料である場合、対応する前駆体のスルホニウム塩を発光層となる部位に配置した後、加熱処理することによりスルホニウム基が脱離し、発光層として機能するポリフェニレン−ビニレンを得ることができる。
【0202】
発光層を形成し得る低分子材料としては、可視域の発光を示す物質ならば、基本的に使用可能である。中でも芳香族系の置換基を有する材料が好適である。例えば、アルミキノリノール錯体(Alq3)やジスチリルビフェニル、さらに化学式(6)に示すBeBq2やZn(OXZ)2等の、従来から一般的に用いられているものに加え、ピラゾリンダイマー、キノリジンカルボン酸、ベンゾピリリウムパークロレート、ベンゾピラノキノリジン、ルブレン、フェナントロリンユウロピウム錯体等が挙げられる。
【0203】
上記に代表される高分子材料及び低分子材料から、青色、緑色、及び赤色の発光を示す材料を適宜選択し、所定の位置に配置すればカラー表示が可能であ。所定の位置に配置する際は、マスク蒸着法、印刷法、あるいはインクジェット法などが使用することができる。
【0204】
【化5】
発光層を、媒質として機能するゲストにホストを分散させた、いわゆるホスト/ゲスト型発光層とすることもできる。
【0205】
ホスト/ゲスト型発光層において、当該発光層の発光色を決定するのは、基本的にはゲスト材料であるので、所望の発光色に応じてゲスト材料を選択することができる。一般には、効率良く蛍光を発する材料が用いられる。ホスト材料は、基本的には、ゲスト材料の発光に関与する励起状態の準位より高いエネルギー準位を有する材料がホスト材料として好適である。キャリアの移動度が高い材料であることも要求される場合があるが、その場合は、上述の高分子発光体の中から選択することもできる。
【0206】
青色発光を示すゲスト材料としては、例えば、コロネン類、ジスチリルビフェニル類などが挙げられ、緑色発光を示すゲスト材料としては、例えば、キナクリドン類、ルブレン類、などが挙げられ、赤色発光を示すゲスト材料としては、蛍光色素としては、赤色発光を示すゲスト材料としては、例えば、ローダミン類が挙げられる。
【0207】
ホスト材料は、ゲスト材料に応じて適宜選択することができる。数例を挙げれば、ホスト材料及びゲスト材料を、それぞれ、Zn(OXZ)2及びコロネンとした発光層を形成することにより青色発光を示す発光層が得られる。
【0208】
ゲスト材料としては燐光材料も使用することができる。例えば、化学式(7)に示すIr(ppy)3、Pt(thpy)2、PtOEPなどが好適に用いられる。
【0209】
【化6】
なお、前記の化学式(7)に示した燐光物質をゲスト材料とした場合、ホスト材料としては、例えば、化学式(8)に示すCBP、DCTA、TCPB、あるいはAlq3などが好適に用いられる。
【0210】
なお、ホスト/ゲスト型発光層は、共蒸着法、あるいはホスト材料とゲスト材料あるいはそれらの前駆体を液状化したものを塗布する方法などにより形成される。
【0211】
【化7】
また、上述した例では、発光層の下層として正孔輸送層を形成し、上層として電子輸送層を形成したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば正孔輸送層と電子輸送層とのうちの一方のみを形成するようにしてもよく、また、正孔輸送層に代えて正孔注入層を形成するようにしてもよく、さらに発光層のみを単独で形成するようにしてもよい。
【0212】
さらに、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層に加えて、ホールブロッキング層を例えば発光層の対向電極側に形成して、発光層の長寿命化を図ってもよい。このようなホールブロッキング層の形成材料としては、例えば化学式(9)に示すBCPや化学式(10)で示すBAlqが用いられるが、長寿命化の点ではBAlqの方が好ましい。
【0213】
【化8】
【0214】
【化9】
さて、本発明の電気光学装置は、上述した有機EL表示装置に限定されるものではなく、他の電気光学装置にも適用可能である。電気光学装置としては、例えば、液晶表示装置などの各種の表示装置が挙げられる。
【0215】
また、本発明の膜形成装置及び材料の配置方法は、電気光学装置の製造過程に用いるものに限らず、半導体素子やカラーフィルタなどの電子装置の製造過程にも用いることができる。例えば、電子装置としては、トランジスタなどの半導体素子、特に半導体層が有機材料で形成されている有機トランジスタや、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)やMRAM(Magnetic Random Access Memory)などのメモリ素子等の製造にも好適に用いることができる。さらに、このような材料から得られるカラーフィルタとしては、所望の色を透過するものや、所望の色の光を発するものなどがある。こうしたカラーフィルタなどの電子装置においても、本発明の膜形成装置を用いて製造することにより、材料の選択自由度が高くなり、構造の最適化が図られる。そのため、高寿命化、高品質化、あるいは高機能化などを図りやすい。
【0216】
〔第6の実施形態〕
図34〜39は、本発明の電子機器の実施形態を示している。
【0217】
本例の電子機器は、上述した有機EL表示装置等の本発明の電気光学装置を表示手段として備えている。
【0218】
図34は、テレビ画像やコンピュータ送られる文字や画像を表示する表示装置の一例を示している。図34において、符号1000は本発明の電気光学装置を用いた表示装置本体を示している。なお、表示装置本体1000は、上述した有機EL表示装置を用いることにより、大画面にも対応できる。
【0219】
また、図35は、車載用のナビゲーション装置の一例を示している。図35において、符号1010はナビゲーション装置本体を示し、符号1011は本発明の電気光学装置を用いた表示部(表示手段)を示している。
【0220】
また、図36は、携帯型の画像記録装置(ビデオカメラ)の一例を示している。図36において、符号1020は記録装置本体を示し、符号1021は本発明の電気光学装置を用いた表示部を示している。
【0221】
また、図37は、携帯電話の一例を示している。図37において、符号1030は携帯電話本体を示し、符号1031は本発明の電気光学装置を用いた表示部(表示手段)を示している。
【0222】
また、図38は、ワープロ、パソコンなどの情報処理装置の一例を示している。図38において、符号1040は情報処理装置を示し、符号1041は情報処理装置本体、符号1042はキーボードなどの入力部、符号1043は本発明の電気光学装置を用いた表示部を示している。
【0223】
また、図39は、腕時計型電子機器の一例を示している。図39において、符号1050は時計本体を示し、符号1051は本発明の電気光学装置を用いた表示部を示している。
【0224】
図34〜図39に示す電子機器は、本発明の電気光学装置を表示手段として備えているので、耐久性及び品質の優れた表示を実現することができる。
【0225】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0226】
本発明の材料の配置方法及び膜形成装置によれば、材料の選択自由度が高く、高分子材料や低分子材料など、基体上に様々な材料の配置が可能になるとともに、溶剤の残留による不具合を低減させることができる。また、処理室内の圧力制御により、ノズルから材料を分子状に放出することも可能となり、これにより、より純度の高い材料膜や、高精度に膜厚制御された材料膜、あるいは特定の機能を持たせた機能膜を形成することが可能となる。さらに、ノズルの吐出不良を迅速に検出するので、不良品の削減を図ることができ、また、予備吐出を行うことにより、材料の吐出状態を常に安定させることができる。即ち、基体上のパターニング領域に材料を配置する前に、ノズルの吐出不良の検出を行うことにより、不良品を多数製造することが防止され、製品の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0227】
本発明の電気光学装置及びその製造方法によれば、高寿命化、高品質化、及び高機能化が図られた電気光学装置を提供することができる。さらに、装置の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0228】
本発明の電子装置によれば、高寿命化、高品質化、及び高機能化を図ることができる。さらに、装置の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0229】
本発明の電子機器によれば、表示手段の高寿命化、高品質化、及び高機能化を図ることができる。さらに、構成装置の歩留まりが向上することに起因して、低コスト化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0230】
【図1】本発明の第1の実施形態による膜形成装置の一例を模式的に示す図である。
【図2】有機EL素子を構成する発光層形成材料を基体上に配置した様子を示す図である。
【図3】本発明の材料の配置方法の一例を概念的に示す図である。
【図4】圧力制御系の構成例を模式的に示す図である。
【図5】材料供給系の構成例を模式的に示す図である。
【図6】複数のノズルと材料供給源との接続例を模式的に示す図である。
【図7】複数のノズルが設けられた放出ヘッドの構成例を模式的に示す図である。
【図8】放出機構の構成例を示す図である。
【図9】主制御系の構成例を模式的に示す図である。
【図10】材料の配置時における基体と放出ヘッド(ノズル)との相対移動の様子の一例を示す図である。
【図11】本発明の第1の実施形態による膜形成装置による膜形成工程を示すフローチャートである。
【図12】予備吐出のパターンの一例を示す図である。
【図13】予備吐出のパターンの一例を示す図である。
【図14】予備吐出のパターンの一例を示す図である。
【図15】材料の吐出初期における、吐出状態が不安定となる様子を示す図である。
【図16】材料の吐出初期における、吐出状態のバラつきにより予備吐出領域の長さを変更した様子を示す図である。
【図17】予備吐出のパターンの一例を示す図である。
【図18】予備吐出のパターンの一例を示す図である。
【図19】本発明の第4の実施形態による膜形成装置の一例を模式的に示す図である。
【図20】本発明の第4の実施形態による膜形成装置のブロック図である。
【図21】図19で説明した放出ヘッド、センサ、光源の配置を詳細に説明した図である。
【図22】本発明の第4の実施形態による膜形成装置の動作を記述したフローチャートである。
【図23】本発明の第5の実施形態によるアクティブマトリクス型有機EL表示装置の回路の一例を示す図である。
【図24】図23で説明した表示装置における画素部の平面構造の一例を示す平面図である。
【図25】画素部(有機EL素子)の断面構造を模式的に示しており、(a)はトップエミッション型、(b)はバックエミッション型を示している。
【図26】トップエミッション型の画素部(有機EL素子)の断面構造を拡大して示す図である。
【図27】本発明の電気光学装置の製造方法を有機EL素子を備える表示装置を製造するプロセスに適用した実施例を説明するための図である。
【図28】本発明の電気光学装置の製造方法を有機EL素子を備える表示装置を製造するプロセスに適用した実施例を説明するための図である。
【図29】本発明の電気光学装置の製造方法を有機EL素子を備える表示装置を製造するプロセスに適用した実施例を説明するための図である。
【図30】本発明の電気光学装置の製造方法を有機EL素子を備える表示装置を製造するプロセスに適用した実施例を説明するための図である。
【図31】有機EL素子の他の形態例を示す図である。
【図32】有機EL素子の他の形態例を示す図である。
【図33】有機EL表示装置の回路の他の例を示す図である。
【図34】本発明の第6の実施形態である電子機器の実施例を示す図である。
【図35】本発明の第6の実施形態である電子機器の他の実施例を示す図である。
【図36】本発明の第6の実施形態である電子機器の他の実施例を示す図である。
【図37】本発明の第6の実施形態である電子機器の他の実施例を示す図である。
【図38】本発明の第6の実施形態である電子機器の他の実施例を示す図である。
【図39】本発明の第6の実施形態である電子機器の他の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0231】
10,300…膜形成装置、11…真空チャンバ(処理室)、12…圧力制御系、13…基体ステージ(ステージ)、14…基体、15…ノズル、17…駆動系(移動手段)、18…テレビカメラ、19…検出系(検出手段)、40…材料供給源、100…有機EL表示装置、102…画素、285…正孔輸送層、286…発光層、287…電子輸送層、290…陰極、301…移動機構(移動手段)、305…センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室と、
前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、
前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、
前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージとを備え、
前記ノズルと前記基体との相対的な位置を調整するための位置調整手段と、
前記基体上に配置された前記材料を検査する検査手段と、を備えることを特徴とする膜形成装置。
【請求項2】
処理室と、
前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、
前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、
前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージとを備え、
前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を調整するための位置調整手段と、を含み、
前記処理室内は撮像素子を備えていること、を備えることを特徴とする膜形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の膜形成装置において、
前記撮像素子が行う光学測定に際に用いる光源をさらに備えていること、
を特徴とする膜形成装置。
【請求項4】
請求項3または4に記載の膜形成装置において、
前記撮像素子の位置または姿勢は調整可能となっていること、
を特徴とする膜形成装置。
【請求項5】
処理室と、
前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、
前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、
前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージとを備え、
前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を調整するための位置調整手段と、
前記少なくとも1つのノズルからの前記材料の吐出の異常を検出するための検出手段と、
を備えることを特徴とする膜形成装置。
【請求項6】
処理室と、
前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、
前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、
前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージとを備え、
前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を調整するための位置調整手段と、
前記少なくとも1つのノズルからの吐出された前記材料の光学測定を行う光学的手段と、
を備えることを特徴とする膜形成装置。
【請求項7】
処理室と、
前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、
前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、
前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージと、
前記材料の前記基体上における配置位置を検出する検出手段と、を備えることを特徴とする膜形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載の膜形成装置において、さらに前記配置位置と前記材料を配置させるべき目標位置との位置ズレが生じた場合に、前記少なくとも一つのノズルの位置補正を行う位置補正手段を、さらに備えることを特徴とする膜形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の膜形成装置において、前記少なくとも一つのノズルに動作不良が生じた場合、前記少なくとも一つのノズルの代用として使用する予備ノズルを更に備えること、を特徴とする膜形成装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の膜形成装置において、
前記基体の温度を調整する温度調整手段を更に備えること、
を特徴とする膜形成装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の膜形成装置において、
前記処理室内の圧力を1.33322×10-1Pa以下とすることが可能であること、
を特徴とする膜形成装置。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれかに記載の膜形成装置を用いて導電材料または半導体材料を前記基体上に配置することにより製造されたことを特徴とする電子装置。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれかに記載の膜形成装置を用いて光学材料を前記基体上に配置することにより製造されたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項14】
請求項23記載の電気光学装置を表示手段として備えること、を特徴とする電子機器。
【請求項1】
処理室と、
前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、
前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、
前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージとを備え、
前記ノズルと前記基体との相対的な位置を調整するための位置調整手段と、
前記基体上に配置された前記材料を検査する検査手段と、を備えることを特徴とする膜形成装置。
【請求項2】
処理室と、
前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、
前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、
前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージとを備え、
前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を調整するための位置調整手段と、を含み、
前記処理室内は撮像素子を備えていること、を備えることを特徴とする膜形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の膜形成装置において、
前記撮像素子が行う光学測定に際に用いる光源をさらに備えていること、
を特徴とする膜形成装置。
【請求項4】
請求項3または4に記載の膜形成装置において、
前記撮像素子の位置または姿勢は調整可能となっていること、
を特徴とする膜形成装置。
【請求項5】
処理室と、
前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、
前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、
前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージとを備え、
前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を調整するための位置調整手段と、
前記少なくとも1つのノズルからの前記材料の吐出の異常を検出するための検出手段と、
を備えることを特徴とする膜形成装置。
【請求項6】
処理室と、
前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、
前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、
前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージとを備え、
前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を調整するための位置調整手段と、
前記少なくとも1つのノズルからの吐出された前記材料の光学測定を行う光学的手段と、
を備えることを特徴とする膜形成装置。
【請求項7】
処理室と、
前記処理室内の圧力を制御する圧力制御系と、
前記処理室に取り付けられ、かつ、材料供給源に接続された、前記材料供給源から供給される材料を前記処理室内に吐出する少なくとも1つのノズルと、
前記処理室に取り付けられ、基体を保持するためステージと、
前記材料の前記基体上における配置位置を検出する検出手段と、を備えることを特徴とする膜形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載の膜形成装置において、さらに前記配置位置と前記材料を配置させるべき目標位置との位置ズレが生じた場合に、前記少なくとも一つのノズルの位置補正を行う位置補正手段を、さらに備えることを特徴とする膜形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の膜形成装置において、前記少なくとも一つのノズルに動作不良が生じた場合、前記少なくとも一つのノズルの代用として使用する予備ノズルを更に備えること、を特徴とする膜形成装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の膜形成装置において、
前記基体の温度を調整する温度調整手段を更に備えること、
を特徴とする膜形成装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の膜形成装置において、
前記処理室内の圧力を1.33322×10-1Pa以下とすることが可能であること、
を特徴とする膜形成装置。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれかに記載の膜形成装置を用いて導電材料または半導体材料を前記基体上に配置することにより製造されたことを特徴とする電子装置。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれかに記載の膜形成装置を用いて光学材料を前記基体上に配置することにより製造されたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項14】
請求項23記載の電気光学装置を表示手段として備えること、を特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
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【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【公開番号】特開2008−311231(P2008−311231A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166965(P2008−166965)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【分割の表示】特願2005−110583(P2005−110583)の分割
【原出願日】平成14年8月2日(2002.8.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【分割の表示】特願2005−110583(P2005−110583)の分割
【原出願日】平成14年8月2日(2002.8.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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