説明

自動分析装置及びその水平出し方法

【課題】 簡単に反応槽の水平出しを行うことができる自動分析装置及びその水平出し方法を提供する。
【解決手段】 被検試料を反応容器4に分注するサンプル分注プローブ16と、第1及び第2の試薬を反応容器4に分注する第1及び第2試薬分注プローブ14,15と、被検試料及び試薬の混合液を測定温度に保持する熱媒体81を収容する反応槽82と、各分注プローブに対応して反応槽82に設けられた水平出し部82aa,82ab,82acと、各分注プローブの熱媒体81との接触時にその液面を検出する液面検出器18a,18b,18cとを備え、各水平出し部の上方から前記液面の検出位置まで下移動した各分注プローブの距離を求め、求めた各距離及び各水平出し部の位置の情報に基づいて、反応槽82の水平出しを行うための高さ調整量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検試料の成分を分析する自動分析装置及びその水平出し方法に係り、特に、ヒトの血清や尿などの体液中に含まれる成分を分析する自動分析装置及びその水平出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置としては、被検体から採取された被検試料と試薬とを反応容器に分注して混合した混合液の反応によって生ずる色調の変化を、光の透過量を測定することにより、被検試料中の様々な成分の濃度や活性を測定する装置が知られている。
【0003】
この自動分析装置では、被検試料毎に分析条件の設定により測定可能になった多数の項目の中から検査に応じて選択された測定項目の測定が行われる。そして、被検試料及び測定項目に該当する試薬はサンプル及び試薬分注プローブを使用して反応槽に複数配置された反応容器に分注され、反応容器に分注された被検試料及び試薬は撹拌子を使用して混合され、混合された混合液は測定温度に設定された後に測定され、更に被検試料及び試薬に接触したサンプル及び試薬分注プローブ、混合液に接触した反応容器及び撹拌子は洗浄された後に繰り返して測定に使用される。
【0004】
ところで、自動分析装置の反応槽は測定温度に設定された液体の熱媒体を収容し、熱媒体に浸漬して配置される反応容器を介して混合液を測定温度に保持する。また、その熱媒体の液面を検出する液面センサを有し、この液面センサを用いて熱媒体を反応容器内の混合液よりも高い所定の液位に保つことにより、混合液全体を測定温度に保持することを可能としている。従って、反応槽全体に亘って配置され移動する反応容器の内の一部が反応槽の傾斜により熱媒体よりも低い液位になることのないように、据付時に設置場所の床面に合わせて反応槽の水平出しが行われる。
【0005】
このため、自動分析装置はフレーム底部の四隅に高さ調整機構を備えており、その高さ調整機構を用いて反応槽の水平出しが行われる。また、複数個の反応槽を有する場合、設置場所の平面度がある程度悪くても、個々の反応槽毎独立に水平出しを行うことが可能な高さ調整機構を設けた自動分析装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平3−285170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の水平出しでは、水準器などの傾きを計測する計測器を反応槽と同じ傾きを示す面に配置して装置の前後及び左右方向における反応槽の傾きを計測し、水準器を見ながら複数の高さ調整機構を操作して水平出しを行う必要があるため、水平出し毎に計測器を必要とし、水平出しの作業に時間と手間が掛かる問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、簡単に反応槽の水平出しを行うことが可能な自動分析装置及びその水平出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に係る本発明の自動分析装置は、被検試料及び試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、前記反応容器が配置され、その反応容器を介して前記混合液を測定温度に保持する液体を収容する反応槽と、前記被検試料及び試薬を前記反応容器に分注する少なくとも2つの分注プローブと、前記反応槽の予め定められた少なくとも3点の互いに離間した位置の上方から前記分注プローブを下移動する分注プローブ移動手段と、前記分注プローブ移動手段により下移動した前記分注プローブの前記液体との接触時に、その液体の液面を検出する液面検出手段と、前記液面検出手段により検出される前記液面の検出位置まで下移動した前記分注プローブの移動距離を求め、この求めた移動距離の情報に基づいて、前記反応槽の水平出しを行うための高さ調整量を算出する算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項5に係る本発明の自動分析装置の水平出し方法は、被検試料及び試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置の水平出し方法において、前記反応容器が配置され、その反応容器を介して前記混合液を測定温度に保持する液体を反応槽に収容し、前記反応槽の予め定められた少なくとも3点の互いに離間した位置の上方から前記被検試料及び試薬を前記反応容器に分注する分注プローブを分注プローブ移動手段により下移動し、前記分注プローブ移動手段により下移動した前記分注プローブの前記液体との接触時に、その液体の液面を液面検出手段により検出し、前記液面検出手段により検出される前記液面の検出位置まで下移動した前記分注プローブの移動距離を求め、この求めた移動距離及び前記予め定められた位置の情報に基づいて、前記反応槽の水平出しを行うための高さ調整量を算出手段により算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、反応槽の上方の予め定められた少なくとも3つの位置から液体の液面を検出する検出位置まで分注プローブを下移動させて、その移動した距離を求めることにより、反応槽の水平出しを行うための高さ調整機構の調整量を算出することができる。これにより、反応槽の水平出しを簡単に短時間で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明による自動分析装置の実施例を、図1乃至図13を参照して説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示したブロック図である。この自動分析装置100は、標準試料や被検試料の測定を行う分析部19と、分析部19の測定動作などの制御を行う分析制御部30と、分析部19から出力された標準試料や被検試料の標準データや被検データを処理して検量線の作成や分析データの生成を行うデータ処理部40と、データ処理部40からの検量線や分析データを出力する出力部50と、分析条件、各種コマンド信号などを入力する操作部60と、上述したこれらのユニットを統括して制御するシステム制御部70とを備えている。
【0013】
分析部19は、項目毎の標準試料、被検体から採取された被検試料などのサンプルを取り扱うサンプル部20と、サンプルと化学反応させるための試薬を取り扱う試薬部21と、サンプル及び試薬の混合液を測定するための反応部22と、混合液を測定温度に設定するための液体である熱媒体81を収容する恒温部23とを備えている。
【0014】
分析制御部30は、分析部19のサンプル部20、試薬部21、及び反応部22の各ユニットを夫々駆動する機構を備えた機構部31と、この機構部31及び恒温部23の各ユニットを夫々駆動する機構を制御する制御部32とを備えている。そして、分析部19及び機構部31を制御してサンプルの測定動作や恒温部23の水平出し動作を行わせる。
【0015】
データ処理部40は、分析部19から出力された標準データや被検データから検量線を作成したり分析データの生成などを行う演算部41と、演算部41で作成された検量線や生成された分析データなどを保存する記憶部42とを備えている。
【0016】
演算部41は、分析部19から出力された各項目の標準データから各項目の検量線を作成して出力部50に出力すると共に記憶部42に保存する。また、分析部19から出力された各項目の被検データに対して、その被検データの項目に対応した検量線を記憶部42から読み出した後、この検量線を用いて分析データを算出して出力部50に出力すると共に記憶部42に保存する。
【0017】
記憶部42は、ハードディスクなどを備え、演算部41から出力された検量線や分析データなどを被検試料毎に保存する。
【0018】
出力部50は、データ処理部40から出力された検量線や分析データなどを印刷出力する印刷部51及び表示出力する表示部52を備えている。そして、印刷部51は、プリンタなどを備え、データ処理部40から出力された検量線や分析データなどを予め設定されたフォーマットに基づいて、プリンタ用紙に印刷出力する。また、表示部52は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、データ処理部40から出力された検量線や分析データなどの表示や、システム制御部60からの指示により分析条件を設定するための画面などの表示を行う。
【0019】
操作部60は、キーボード、マウス、ボタン、タッチキーパネルなどの入力デバイスを備え、分析条件の設定、被検体の被検体IDや被検体名などの被検体情報の入力、被検体の被検試料毎の測定項目の選択、各項目の検量線作成操作、被検試料測定操作、水平出し操作などの様々な操作を行う。
【0020】
システム制御部70は、図示しないCPUと記憶回路を備え、操作部60から供給される操作者のコマンド信号、分析条件、被検体情報、被検試料毎の測定項目などの情報を記憶した後、これらの情報に基づいて、分析部19を構成する各ユニットを一定サイクルの所定のシーケンスで測定動作させる制御、検量線の作成、分析データの生成と出力に関する制御、水平出しに関する制御などシステム全体の制御を行う。
【0021】
次に、図2乃至図5を参照して、分析部19及び分析制御部30の構成の詳細を説明する。図2は、分析部19のサンプル部20、試薬部21、及び反応部22の構成を説明するための斜視図である。
【0022】
サンプル部20は、標準試料や被検試料などのサンプルを納める試料容器17と、試料容器17を回動可能に保持するディスクサンプラ6と、サンプルを分注するために試料容器17からサンプルを吸引して反応部22に吐出するサンプル分注プローブ16と、このサンプル分注プローブ16をディスクサンプラ6と反応部22の間の回動、及びディスクサンプラ6と反応部22における上下移動を可能に保持するサンプル分注アーム10とを備えている。
【0023】
また、サンプル部20は、回動後に下移動したサンプル分注プローブ16の先端部が試料容器17内の詳細を図3にて後述するサンプルや恒温部23の熱媒体81と接触した時に、その接触したサンプルや熱媒体81の液面を検出する液面検出器18aを備えている。そして、液面検出器18aで検出されたサンプルや熱媒体81の液面検出信号は、分析制御部30に出力される。
【0024】
試薬部21は、サンプルに対して選択的に反応する複数の第1試薬、第1試薬と対の複数の第2試薬を納める試薬ボトル7a,7bと、試薬ボトル7a,7bを夫々収納する試薬ラック1a,1bと、第1試薬の試薬ボトル7aを収納した試薬ラック1aを回動可能に保持する試薬庫2と、第2試薬の試薬ボトル7bを収納した試薬ラック1bを回動可能に保持する試薬庫3とを備えている。
【0025】
また、試薬部21は、試薬を分注するために試薬庫2,3の試薬ボトル7a,7bから第1及び第2試薬を吸引して、反応部22に吐出する第1及び第2試薬分注プローブ14,15と、この第1及び第2試薬分注プローブ14,15を試薬庫2,3と反応部22の間で回動、及び試薬庫2,3と反応部22で上下移動を可能に保持する第1及び第2試薬分注アーム8,9とを備えている。
【0026】
更に、試薬部21は、回動後に下移動した第1及び第2試薬分注プローブ14,15の先端部が試薬ボトル7a,7b内の第1及び第2試薬や恒温部23の熱媒体81と接触した時に、その接触した第1及び第2試薬や熱媒体81の液面を検出する液面検出器18b,18cを備えている。そして、この液面検出器18b,18cで検出された第1及び第2試薬や熱媒体81の液面検出信号は、分析制御部30に出力される。
【0027】
反応部22は、サンプル部20のディスクサンプラ6から反応部22に回動したサンプル分注プローブ16により吐出されたサンプル、試薬部21の試薬庫2,3から反応部22に回動した第1及び第2試薬プローブ14,15により吐出された第1及び第2試薬を納める反応容器4と、円周上に配置された複数の反応容器4を回転可能に保持する反応ディスク5と、反応容器4内のサンプルと第1試薬又はサンプルと第1及び第2試薬の混合液、洗浄液などを撹拌する撹拌子を上下移動可能に保持する撹拌ユニット11とを備えている。
【0028】
また、反応部22は、撹拌後の標準試料や被検試料を含む混合液の入った反応容器4に光を照射して測定を行う測光ユニット13と、反応容器4の測定を終えた混合液の吸引及び洗浄・乾燥を行う洗浄ノズルや乾燥ノズルを有した上下移動可能な洗浄ユニット12とを備えている。
【0029】
測光ユニット13は、回転移動する反応容器4に光を照射して、標準試料や被検試料を含む混合液を透過した光を吸光度に変換した標準データや被検データを生成してデータ処理部40に出力する。
【0030】
図3は、分析部19の恒温部23における構成の詳細を示した図である。この恒温部23は、反応部22の反応容器4に熱を伝達する熱媒体81と、この熱媒体81を収容する反応槽82と、この反応槽82を支持する支持台91と、支持台91を支持する4つの支柱91a,91b,91c,91dと、熱媒体81を測定温度に設定する恒温ユニット83と、反応槽82内の熱媒体81の液面を検出する液面センサ89と、熱媒体81を反応槽82内に供給する供給ポンプ90とを備えている。
【0031】
熱媒体81は、比熱が大きい水などの液体が使用され、恒温ユニット83からの熱を反応容器4を介して混合液に伝達する。
【0032】
反応槽82は、円形をなし、反応部22の反応ディスク5の下方に離間して平行に配置されると共に、周縁部に回転移動する反応容器4に合わせて上側が開口した環状の流路82aを形成している。その流路82a内に熱媒体81を収容し、その熱媒体82に反応容器4が浸漬して配置される。また、反応槽82には、流路82aの外周部に熱媒体81の液面を検出するための流路82aに連通して突出する3つの水平出し部82aa,82ab,82acが互いに離間して配置されている。なお、この配置についての詳細は、図4の説明において詳述する。
【0033】
そして、各水平出し部82aa,82ab,82acの上方まで回動した夫々サンプル分注プローブ16、第1試薬分注プローブ14、及び第2試薬分注プローブ15を熱媒体81の液面を検出する検出位置まで下移動させ、下移動した距離Dを求めて反応槽82の水平面に対する傾きが算出されるようになっている。なお、図3においては、恒温部23の全体構成の説明のために、水平出し部82aa,82ab,82acを一箇所に集約して図示している。
【0034】
支持台91は、反応槽82の下側で、反応ディスク5に平行に配置されており、自動分析装置100の各ユニットを支持するためのフレーム101に、4つの支柱91a,91b,91c,91dを介して固定されている。そして、支持台91は、その上に配置される反応槽82や、サンプル部20のサンプル分注アーム10、及び試薬部21の第1及び第2試薬分注アーム8,9などを支持している。
【0035】
支持台91の水平出しを行うことにより反応槽82は水平になり、反応槽82内に配置されたすべての反応容器4の底面から熱媒体81と接触する液面までの高さが同じになる。これにより、反応容器4内の混合液は、反応槽82のすべての位置で均等に熱媒体81からの熱を受け取ることができる。
【0036】
恒温ユニット83は、熱媒体81を冷却する冷却器84と、冷却器84からの熱媒体81を加熱する加熱器85と、冷却器84、加熱器85、及び反応槽82内の熱媒体81を循環させるための循環ポンプ86とを備え、反応容器4内の混合液を例えば37℃の測定温度に設定し保持する。
【0037】
冷却器84は、熱媒体81を冷却する冷却フィンと、この冷却フィンを冷却するファンとを備え、制御部32の制御により、熱媒体81が測定温度よりも高いときにファンを回して強制的に冷却する。
【0038】
加熱器85は、循環ポンプ86から送り込まれた熱媒体81を加熱するヒータ87と、熱媒体81の温度を検出する温度センサ88とを備え、温度センサ88は加熱器85内の検出された温度を温度検出信号として制御部32に出力し、温度センサ88からの温度検出信号に基づく制御部32の制御により、熱媒体81が測定温度よりも低いときにヒータ87で加熱する。
【0039】
循環ポンプ86は、反応槽82から熱媒体81を吸引すると共に、吸引した熱媒体81を冷却器84、加熱器85、及び反応槽82等に送り込む。反応槽82内においては流路82a内の熱媒体81を反応容器4の回転方向と逆方向に流す。
【0040】
反応槽82における熱媒体81の液面を検出する液面センサ89は、その液面検出信号を分析制御部30の制御部32に出力する。液面センサ89からの液面検出信号を受信した制御部32では、水平出しされた反応槽82における熱媒体81の液面が、反応容器4内の混合液よりも高いが予め設定した正常の高さよりも低い時に、供給ポンプ90を動作させる。
【0041】
供給ポンプ90は、液面センサ89からの液面検出信号に基づく制御部32の制御により、反応槽82内の熱媒体81の液面が正常の高さよりも低い時に、正常の高さになるまで熱媒体81を反応槽82内に供給する。
【0042】
次に、分析制御部30の構成を詳細に説明する。分析制御部30の機構部31は、分析部19のディスクサンプラ6や試薬庫2,3の各回動、反応ディスク5の回転、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、及び第2試薬分注アーム9の各回動及び上下移動、撹拌ユニット11及び洗浄ユニット12の各上下移動を行う機構を備えている。
【0043】
また、機構部31は、サンプル分注プローブ16を介してサンプルの吸引及び吐出を行うサンプル分注ポンプ、第1及び第2試薬分注プローブ14,15を介して第1及び第2試薬の吸引及び吐出を行う第1及び第2試薬ポンプ、洗浄ユニット12の複数の洗浄ノズルを介して反応容器4内の混合液の吸引、反応容器4内に対して反応容器洗浄液や純水の吐出及び吸引を行う洗浄ポンプ、乾燥ノズルを介して洗浄後の残存液の吸引を行う乾燥ポンプなどの機構を備えている。更に、機構部31は、撹拌ユニット11の撹拌子を駆動する機構を備えている。
【0044】
制御部32は、機構部31のディスクサンプラ6、試薬庫2、試薬庫3、反応ディスク5、サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、第2試薬分注アーム9、撹拌ユニット11、洗浄ユニット12、サンプル分注ポンプ、第1試薬ポンプ、第2試薬ポンプ、洗浄ポンプ、乾燥ポンプなどの各機構を制御する制御回路を備えている。また、分析部19の反応部23における温度センサ88や液面センサ89から出力された温度検出信号や位置検出信号に基づいて恒温部23のヒータ87、冷却器84のファンや供給ポンプ90を制御する制御回路を備えている。
【0045】
サンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、及び第2試薬分注アーム9の各制御回路は、サンプル部20及び試薬部21の液面検出器18a,18b,18cから出力された恒温部23の反応槽82における水平出し部82aa,82ab,82acの熱媒体81の液面を検出した液面検出信号に基づいて、各水平出し部82aa,82ab,82acの上方における各分注アームの上停止点から検出位置までに各分注アームを下移動駆動する例えばパルスモータに供給したパルス数の情報をシステム制御部70に出力する。
【0046】
図4は、自動分析装置100のフレーム101に固定された分析部19の構成の一部を上から見た図である。恒温部23の支持台91は、四角形をなし、自動分析装置100のフレーム101の一部である図5に示した長方形の底板101aの上方に互いに各辺が平行になるように配置される。支持台91の上側に配置される反応槽82は、底板101aの四隅に配置された自動分析装置100の高さを調整するための4つのアジャスタ102a,102b,102c,102dにより水平出しが行われるようになっている。なお、各支柱91a,91b,91c,91dに夫々高さを調整するための機構を設け、その高さ調整機構を用いてフレーム101に対する各支柱91a,91b,91c,91dの高さを調整して反応槽82の水平出しを行うようにしてもよい。
【0047】
支持台91の上側に配置されたサンプル分注アーム10、第1試薬分注アーム8、及び第2試薬分注アーム9の各分注アームは、夫々回動軸を軸として、サンプル分注プローブ16、第1試薬分注プローブ14、及び第2試薬分注プローブ15の各分注プローブを破線で示した移動軌跡に沿って回動する。各分注プローブの移動軌跡下に、反応槽82の予め定められた位置に各水平出し部82aa,82ab,82acが配置されている。
【0048】
各分注プローブは、各分注アームの上死点における高さで支持台91に対して平行に回動し、垂直に上下移動する。そして、回動する際の各分注プローブの先端と支持台91の間の距離はすべて同じになっている。
【0049】
各水平出し部82aa,82ab,82acは、水平出し部82aaと水平出し部82abを結ぶ直線、及び水平出し部82aaと水平出し部82acを結ぶ直線が底板101aの夫々長辺及び短辺に平行になるように配置される。
【0050】
即ち、円形の反応槽82の中心点Cを通る直線が、環状の流路82aと交わる点における流路82aの外方に水平出し部82ab及び82acを設け、前記中心点Cから前記直線に対して直角に描いた直線が環状の流路82aと交わる点における流路82aの外方に水平出し部82aaを設けてある。
【0051】
また、水平出し部82abは水平出し部82aaから左方に距離rの間隔をあけて配置され、水平出し部82acは水平出し部82aaから後方に距離rの間隔をあけて配置される。そして、各分注プローブが各水平出し部82aa,82ab,82acの上方に回動した後に、各水平出し部の熱媒体81の液面の検出位置まで下移動可能なようになっている。
【0052】
なお、水平出し部は3つに限定されるものではなく、各分注プローブの移動軌跡下であれば4つ以上設けるようにしてもよい。また、水平出し部は、上記実施例の配置に限定されるものではなく、各水平出し部を直線で結ぶことにより面を形成する配置であればよい。また、1つの分注プローブの移動軌跡下に複数の水平出し部を配置するようにしてもよい。
【0053】
次に、図6及び図7を参照して、反応槽82の水平出し動作の概略を説明する。図6及び図7は、反応槽82及び各分注プローブを前方から見た図であり、サンプル分注プローブ16、第1試薬分注プローブ14、及び第2試薬分注プローブ15の各分注プローブがホームポジションから各水平出し部82aa,82ab,82acの上方まで回動した後に、反応槽82の熱媒体81の液面81aを検出する検出位置d1,d2,d3まで下移動した時の下移動の距離D1,D2,D3を示している。
【0054】
図6は、水平になっている反応槽82の一例を示した図である。反応槽82及び支持台91が水平になっていると、各分注プローブの各先端部P1,P2,P3により形成される先端面は、反応槽82内の水平である熱媒体91の液面81aと平行になっているので、距離D1,D2,D3のすべてが同じになる。従って、距離D1,D2,D3の内の最大と最小の距離の差が許容範囲に入ることにより、D1=D2=D3と見なし、反応槽82は水平であることがわかる。
【0055】
図7は、傾いている反応槽82の一例を示した図である。反応槽82及び支持台91が傾いていると、反応槽82及び支持台91と常に平行である各先端部P1,P2,P3の先端面は、水平である熱媒体81の液面81aに対して傾いているので、距離D1,D2,D3の内の少なくともいずれか2つの距離に差が生じ、最大と最小の距離の差が許容範囲から外れる。距離D1と距離D2との差が許容範囲から外れる場合には左方又は右方のいずれかに傾斜し、距離D1と距離D3との差が許容範囲から外れる場合には前方又は後方のいずれかに傾斜していることがわかる。
【0056】
そして、支持台91の前方及び後方が同じ高さで、図7に示すように右下がりに傾斜していていると各距離D1,D2,D3はD2>D1=D3になり、これが左下がりに傾斜しているとD1=D3>D2になる。また、支持台91の左方及び右方が同じ高さで、前下がりに傾斜しているとD3>D1=D2になり、後下がりに傾斜しているとD1=D2>D3になる。
【0057】
また、支持台91が右前下がりに傾斜しているとD2>D3>D1又はD3>D2>D1になり、左前下がりに傾斜しているとD3>D1>D2になる。
【0058】
更に、支持台91が右後下がりに傾斜しているとD2>D1>D3になり、左後下がりに傾斜しているとD1>D2>D3又はD1>D3>D2になる。
【0059】
次に、図1乃至図13を参照して、自動分析装置100の水平出し動作の詳細を説明する。図8は、自動分析装置100の水平出し動作を示したフローチャートである。自動分析装置100の水平出しは、平らな床面を有する設置場所への搬入時に行われる。
【0060】
自動分析装置100を設置場所に移動した後に、自動分析装置100の底板101aの下側の角部近傍に配置された図5に示した4つのアジャスタ102a,102b,102c,102dの各高さ調整用ねじ103a,103b,103c,103dを高さ方向に調整して、アジャスタ102a,102b,102c,102dの各近傍に配置された4つのキャスタ103と床面との隙間がほぼ同じになる高さに設定する。そして、自動分析装置100の電源を投入した後、操作部60から水平出し操作が行われると、水平出しの動作が開始される(ステップS1)。
【0061】
まず、システム制御部70は、分析制御部30の制御部32に分析部19の恒温部23における反応槽82に熱媒体81の供給を指示する。この指示により、制御部32は、恒温部23における液面センサ89からの液面検出信号から反応槽82内の熱媒体81の液面が正常の高さになっているか否かを判定する。そして、熱媒体81の液面が正常の高さになっている場合(ステップS2のはい)、ステップS4に移行する。
【0062】
また、熱媒体81の液面が正常の高さよりも低い場合(ステップS2のいいえ)、制御部32は、恒温部23の供給ポンプ90に液面が正常の高さになるまで反応槽82内に熱媒体81を供給させる(ステップS3)。そして、熱媒体81の液面が正常の高さになった時点で熱媒体81の供給を停止させ、ステップS4へ移行する。
【0063】
次に、システム制御部70は、制御部32に反応槽82の傾きの測定を指示する。この傾き測定の指示により、制御部32は、機構部31を制御して分析部19のサンプル部20及び試薬部21に傾き測定の動作をさせる。サンプル部20のサンプル分注アーム10、及び試薬部21の第1及び第2試薬分注アーム8,9は、サンプル分注プローブ16、及び第1及び第2試薬分注プローブ14,15をホームポジションから移動させて傾き測定動作をする(ステップS4)。
【0064】
そして、サンプル分注プローブ16は、ホームポジションからサンプル分注アーム10の上停止点まで移動した後に、反応槽82の水平出し部82aaの上方まで回動する。回動した後に、サンプル部20の液面検出器18aが水平出し部82aaの熱媒体81の液面81aを検出する検出位置d1まで下移動する。制御部32は、上停止点から検出位置d1までの間にサンプル分注アーム10の上下移動機構を駆動する例えばパルスモータに供給したパルス数をシステム制御部70に出力する。
【0065】
また、第1及び第2試薬分注プローブ14,15は、ホームポジションから第1及び第2試薬分注アーム8,8の上停止点まで移動した後に、反応槽82の水平出し部82ab,82acの上方まで回動する。回動した後に、試薬部21の液面検出器18b,18cが水平出し部82ab,82acの熱媒体81の液面81aを検出する検出位置d2,d3まで下移動する。制御部32は、上停止点から検出位置d2,d3までの間に第1及び第2試薬分注アーム8,9の上下移動機構を駆動するパルスモータに供給したパルス数をシステム制御部70に出力する。
【0066】
システム制御部70では、制御部32から出力されたパルス数に基づいてサンプル分注プローブ16の下移動の距離D1、第1試薬分注プローブ14の下移動の距離D2、及び第2試薬分注プローブ15の下移動の距離D3を求める(ステップS5)。
【0067】
そして、求めた距離D1,D2,D3の内の最大と最小の距離の差が許容範囲内である場合(ステップS6のはい)、距離D1,D2,D3を同じと見なし、反応槽82は水平であると判定し、ステップS7に移行する。
【0068】
また、距離D1,D2,D3の内の最大と最小の距離の差が許容範囲から外れている場合(ステップS6のいいえ)、例えば図9の各距離D1,D2,D3がD2>D1及びD3>D1であるときに、右前下がりに傾いていると判定し、ステップS8に移行する。
【0069】
ステップ6のはいの後に、システム制御部70は、例えば「反応槽は水平に保たれているので高さ調整を行う必要はありません」などの反応槽82が水平であることの情報を出力部40の表示部42に表示出力する(ステップS7)。その後、ステップS11に移行する。
【0070】
このように、反応槽82が水平になっており、水平出しを行う必要がない場合には、その情報を出力部50に出力することができる。
【0071】
ステップS6のいいえの後に、システム制御部70は、距離D1,D2,D3に基づいて反応槽82の傾きを算出する(ステップS8)。
【0072】
図9及び図11を参照して、右前傾斜している反応槽82の傾き及び水平出しのための調整量を算出する例を説明する。図9は、反応槽82の傾きを説明するための図であり、図9(a)は、反応槽82及びサンプル分注プローブ16、第1試薬分注プローブ14、及び第2試薬分注プローブ15の各分注プローブを前方から見た図である。各分注プローブがホームポジションから反応槽82の各水平出し部82aa,82ab,82acの上方まで回動した後に、各水平出し部82aa,82ab,82acの熱媒体81の液面81aを検出する各検出位置d1,d2,d3まで下移動した移動距離を各距離D1,D2,D3とする。
【0073】
回動後のサンプル分注プローブ16及び第1試薬分注プローブ14の先端部P1,P2を通る左右傾き線の水平線に対する傾きを傾斜角θ1とすると、この傾斜角θ1は反応槽82の左方又は右方に対する傾斜を表している。この場合、各距離D1,D2はD2>D1であり、反応槽82は傾斜角θ1で右傾斜している。
【0074】
図9(b)は、反応槽82及び各分注プローブを右方から見た図である。回動後のサンプル分注プローブ16及び第2試薬分注プローブ15の先端部P1,P3を通る前後傾き線の水平線に対する傾きを傾斜角θ2とすると、この傾斜角θ2は反応槽82の前方又は後方に対する傾斜を表している。この場合、各距離D1,D3はD3>D1であり、反応槽82は傾斜角θ2で前傾斜している。
【0075】
図10及び図11は、反応槽82の傾斜角θ1,θ2の算出例を説明するための図である。図10(a)では、図9(a)の先端部P2と先端部P1を結ぶ直線をL1、先端部P2と検出位置d2を結ぶ直線をL2、先端部P1と検出位置d1を結ぶ直線をL3、及び検出位置d2と検出位置d1を結ぶ直線をL4とする。また、検出位置d1を通り直線L1に平行で直線L2と直交する補助線及び交点を、夫々補助線L5及び点Aとする。更に、点Aと検出位置d2を結ぶ直線を直線L11とする。
【0076】
図10(b)では、図9(b)の先端部P1と先端部P3を結ぶ直線をL6、先端部P1と検出位置d1を結ぶ直線をL7、先端部P3と検出位置d3を結ぶ直線をL8、及び検出位置d1と検出位置d3を結ぶ直線をL9とする。また、検出位置d1を通り直線L6に平行で直線L8と直交する補助線及び交点を、夫々補助線L10及び点Bとする。更に、点Bと検出位置d3を結ぶ直線を直線L12とする。
【0077】
図10(a)では、直線L3を前方から見たときの長さD1aは、図11(a)に示した傾斜角θ2で前傾斜した直線L3の長さを距離D1とする余弦関数cosθ2=D1a/D1の関係を利用して、式D1a=D1×cosθ2として表される。直線L2を前方から見たときの長さD2aは、長さD1aの場合と同様にして、式D2a=D2×cosθ2として表される。
【0078】
また、直線L1は水平出し部82aaと水平出し部82abの間の距離rで表され、補助線L5は直線L1と同じ長さの距離rで表されるので、直線L4,L11及び補助線L5によって形成される三角形の傾斜角θ1は、正接関数tanθ1=(D2a−D1a)/rとして表される。この正接関数に、式D2a,D1aを代入することにより、正接関数tanθ1=(D2−D1)×cosθ2/rを求める。
【0079】
図10(b)では、直線L3を右方から見たときの長さD1bは、図11(b)に示した傾斜角θ1で右傾斜した直線L3の長さを距離D1とする余弦関数cosθ1=D1b/D1の関係を利用して、式D1b=D1×cosθ1として表される。直線L8を右方から見たときの長さD3bは、長さD1bの場合と同様にして、式D3b=D3×cosθ1として表される。
【0080】
また、直線L6は水平出し部82aaと水平出し部82acの間の距離rで表され、補助線L10は、直線L6と同じ長さの距離rで表されるので、直線L9,L11及び補助線L10によって形成される三角形の傾斜角θ2は、正接関数tanθ2=(D3b−D1b)/rとして表される。この正接関数に、式D3b,D1bを代入することにより、新たに正接関数tanθ2=(D3−D1)×cosθ1/rが求めることができる。
【0081】
そして、求めた2つの正接関数tanθ1=(D2−D1)×cosθ2/r,tanθ2=(D3−D1)×cosθ1/rから傾斜角θ1,θ2を求める。
【0082】
次に、システム制御部70は、アジャスタ102a,102b,102c,102dによる反応槽82の水平出しのための調整量を算出する(図8のステップS9)。
【0083】
図12及び図13は、反応槽82の右傾斜に対する調整量の算出例を説明するための図である。図12(a)は、設置された自動分析装置100の底板101aの傾きを前方から見た図である。自動分析装置100は、底板101aの下側に配置された4つのアジャスタ102a,102b,102c,102dにより支えられている。
【0084】
反応槽82、支持台91及び底板101aは、傾斜角θ1で右傾斜している。底板101aの左端部が右端部よりも高さh1だけ高いとすると、例えばアジャスタ102b,102dにより底板101aの右端部を高さh1だけ上げることにより、傾斜角θ1を0°近傍の許容角度内に設定することができる。
【0085】
底板101aの長辺を長さWとすると、図12(b)に示した正弦関数sinθ1=h1/Wに、図10で求めた傾斜角θ1を代入することにより、高さh1を算出する。
【0086】
図13(a)は、設置された自動分析装置100の底板101aの傾きを右方から見た図である。反応槽82、支持台91及び底板101aは、傾斜角θ2で前傾斜している。底板101aの後端部が前端部よりも高さh2だけ高いとすると、例えばアジャスタ102c,102dを用いて底板101aの前端部を高さh2だけ上げることにより、傾斜角θ2を0°近傍の許容角度内に設定することができる。
【0087】
底板101aの短辺を長さLとすると、図13(b)に示した正弦関数sinθ2=h2/Lに、図10で求めた傾斜角θ2を代入することにより、高さh2を算出する。
【0088】
次に、システム制御部70は、算出した各アジャスタ102a,102b,102c,102dの調整量の情報を出力部50に出力する(図8のステップS10)。
【0089】
このように、操作部50からの簡単な操作だけで反応槽82の水平出しを行うための各アジャスタ102a,102b,102c,102dの調整量を出力部50に出力することができる。
【0090】
そして、ステップS10では出力部50に出力された例えば各アジャスタ102b,102dの各高さ調整用ねじ103b,103dの回転数だけ回して高さh1上げた後、各アジャスタ102c,102dの各高さ調整用ねじ103c,103dの回転数だけ回して高さh2上げる調整量の情報、又はステップS7では水平であることの情報が出力部50に出力された時点で、自動分析装置100は水平出しの動作を終了する(図8のステップS11)。
【0091】
自動分析装置100の据付作業者は、出力部50に水平出しのための調整量が出力された場合、アジャスタ102a,102b,102c,102dの内の出力されたアジャスタの調整量だけ調整する。この作業により反応槽82は水平に保たれるので、サンプル測定時の反応容器4内の混合液は、反応槽82のすべての位置で均等に熱媒体81からの熱を受け取ることができ、測定温度に設定される。
【0092】
このように、出力された各アジャスタ102a,102b,102c,102dの調整量の情報を見ることにより、反応槽82の水平出しを行うための各アジャスタの調整を行うことができる。
【0093】
なお、反応容器4を脱着した状態で搬入された自動分析装置100に対して、反応槽82の水平出しを行うための各分注プローブを下移動させる位置を、反応槽82の各水平出し部82aa,82ab,82ac近傍の流路82a内に設定して、ステップS1乃至S11を実行させて反応槽82の水平出しを行うようにしてもよい。
【0094】
次に、自動分析装置100のフレーム101に固定された分析部の構成の一部である各分注アーム及び各分注プローブの他の実施例を、図14を参照して説明する。以下、前述の実施例と同じ構成には同符号を付けて説明する。
【0095】
図14に示した分析部の構成の一部は、サンプルを収容した図示しない試料容器を保持するディスクサンプラ6aと、試料容器からサンプルを吸引して反応容器4に吐出するサンプル分注プローブ16aと、このサンプル分注プローブ16aを破線で示した移動軌跡上の回動、及びこの移動軌跡下に配置されたディスクサンプラ6a、反応容器4、及び水平出し部82abにおける上下移動を可能に保持するサンプル分注アーム10aと、サンプル分注プローブ16aの先端部が試料容器内のサンプルや熱媒体81と接触した時に、その液面を検出する液面検出器18dとを備えている。なお、サンプル分注アーム10aは、支持台91に支持されている。
【0096】
また、第1試薬及び第2試薬を収納した図示しない試薬ボトルを収納する試薬庫2,3と、第1及び第2の試薬ボトルから第1及び第2試薬を吸引して反応容器4に吐出する試薬分注プローブ14aと、この試薬分注プローブ14aを破線で示した移動軌跡上の回動、及びこの移動軌跡下に配置された試薬庫2,3、反応容器4、及び水平出し部82aa,82acにおける上下移動を可能に保持する試薬分注アーム8aと、試薬分注プローブ14aの先端部が試薬ボトル内の第1及び第2試薬や熱媒体81と接触した時に、その液面を検出する液面検出器18eとを備えている。なお、試薬分注アーム8aは、支持台91に支持されている。
【0097】
次に、反応槽82の水平出し動作の概略を説明する。サンプル分注プローブ16aがホームポジションから水平出し部82abの上方まで回動した後に、液面検出器18dで検出される熱媒体81の液面の検出位置まで下移動した距離を求める。また、試薬分注プローブ14aがホームポジションから水平出し部82aa,acの上方まで回動した後に、液面検出器18eで検出される熱媒体81の液面の検出位置まで下移動した距離を求める。
【0098】
そして、サンプル分注プローブ16a及び試薬分注プローブ14aの下移動により求めた水平出し部82aa,82ab,82acにおける距離、及び水平出し部82aa,82ab,82acの位置の情報に基づいて前述の実施例における場合と同様にして反応槽82の水平出しのための調整量を算出する。
【0099】
以上述べた本発明の実施例によれば、反応槽82の3つの水平出し部82aa,82ab,82acの上方から液面検出器18a,18b,18cにより検出される熱媒体81の検出位置d1,d2,d3までサンプル分注プローブ16、第1試薬分注プローブ14、及び第2試薬分注プローブ15を下移動させて、下移動した各距離D1,D2,D3を求める。そして、各距離D1,D2,D3の内の最大と最小の差の距離が許容範囲内であるときに、反応槽82が水平であることの情報を出力することができる。
【0100】
また、距離D1,D2,D3の内の最大と最小の差の距離が許容範囲から外れたときに、各距離D1,D2,D3及び水平出し部82aa,82ab,82acの位置の情報に基づいて、反応槽82の水平面に対する傾きを算出し、更に反応槽82の傾きから反応槽82の水平出しを行うための各アジャスタ102a,102b,102c,102dの調整量を算出し出力することができる。
【0101】
更に、各分注アーム及び各分注プローブの他の実施例によれば、水平出し部82abの上方から液面検出器18dにより検出される熱媒体81の検出位置までサンプル分注プローブ16aを下移動させて、下移動した距離を求める。また、水平出し部82aa,82acの上方から液面検出器18eにより検出される熱媒体81の検出位置まで試薬分注プローブ14aを下移動させて、夫々下移動した距離を求める。そして、求めた各距離及びび水平出し部82aa,82ab,82acの位置の情報に基づいて、反応槽82の水平出しを行うための各アジャスタ102a,102b,102c,102dの調整量を算出し出力することができる。
【0102】
これにより、反応槽82の水平出しの作業を、簡単に短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の実施例に係る自動分析装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例に係る分析部の構成の詳細を示す図。
【図3】本発明の実施例に係る恒温部の構成の詳細を示す図。
【図4】本発明の実施例に係る分析部の構成の一部を上から見た図。
【図5】本発明の実施例に係るアジャスタを示す図。
【図6】本発明の実施例に係る水平である反応槽の一例を示す図。
【図7】本発明の実施例に係る傾斜している反応槽の一例を示す図。
【図8】本発明の実施例に係る自動分析装置の水平出し動作を示すフローチャート。
【図9】本発明の実施例に係る反応槽の傾きを説明するための図。
【図10】本発明の実施例に係る反応槽の傾斜角の算出例を説明するための図。
【図11】本発明の実施例に係る反応槽の傾斜角の算出例を説明するための図。
【図12】本発明の実施例に係る設置された自動分析装置の底板の傾きを前方から見た図。
【図13】本発明の実施例に係る設置された自動分析装置の底板の傾きを右方から見た図。
【図14】本発明の実施例に係る分析部の構成の一部である各分注アーム及び各分注プローブの他の実施例を説明するための図。
【符号の説明】
【0104】
4 反応容器
8 第1試薬分注アーム
9 第2試薬分注アーム
10 サンプル分注アーム
14 第1試薬分注プローブ
15 第2試薬分注プローブ
16 サンプル分注プローブ
19 分析部
20 サンプル部
21 試薬部
22 反応部
23 恒温部
30 分析制御部
31 機構部
32 制御部
50 出力部
70 システム制御部
81 熱媒体
82 反応槽
82a 流路
82aa,82ab,82ac 水平出し部
91 支持台
91a,91b,91c,91d 支柱
100 自動分析装置
101 フレーム
101a 底板
102a,102b,102c,102d アジャスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料及び試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置において、
前記反応容器が配置され、その反応容器を介して前記混合液を測定温度に保持する液体を収容する反応槽と、
前記被検試料及び試薬を前記反応容器に分注する少なくとも2つの分注プローブと、
前記反応槽の予め定められた少なくとも3点の互いに離間した位置の上方から前記分注プローブを下移動する分注プローブ移動手段と、
前記分注プローブ移動手段により下移動した前記分注プローブの前記液体との接触時に、その液体の液面を検出する液面検出手段と、
前記液面検出手段により検出される前記液面の検出位置まで下移動した前記分注プローブの移動距離を求め、この求めた移動距離の情報に基づいて、前記反応槽の水平出しを行うための高さ調整量を算出する算出手段とを
備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記混合液の測定結果を出力する出力手段を有し、
前記算出手段は、前記移動距離の内の最大と最小の移動距離の差が許容範囲から外れた時に、前記出力手段に前記高さ調整量を出力するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記混合液の測定結果を出力する出力手段を有し、
前記算出手段は、前記移動距離の内の最大と最小の移動距離の差が許容範囲内であるときに、前記出力手段に前記反応槽が水平であることの情報を出力するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記支持体の高さを調整する高さ調整手段を有し、
前記算出手段は、前記高さ調整手段による高さ調整量を算出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項5】
被検試料及び試薬を反応容器に分注してその混合液を測定する自動分析装置の水平出し方法において、
前記反応容器が配置され、その反応容器を介して前記混合液を測定温度に保持する液体を反応槽に収容し、
前記反応槽の予め定められた少なくとも3点の互いに離間した位置の上方から前記被検試料及び試薬を前記反応容器に分注する分注プローブを分注プローブ移動手段により下移動し、
前記分注プローブ移動手段により下移動した前記分注プローブの前記液体との接触時に、その液体の液面を液面検出手段により検出し、
前記液面検出手段により検出される前記液面の検出位置まで下移動した前記分注プローブの移動距離を求め、この求めた移動距離の情報に基づいて、前記反応槽の水平出しを行うための高さ調整量を算出手段により算出することを特徴とする自動分析装置の水平出し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−248413(P2007−248413A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76149(P2006−76149)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】