説明

自動搬送システムおよび自動搬送システムにおける搬送車の待機位置設定方法

【課題】搬送車の待機位置の最適化を図ることによりキャリアを効率的に搬送することが可能な自動搬送システムおよび待機位置の設定方法を提供する。
【解決手段】断続的に供給される搬送指令に基づいて所定の経路網を自動的に移動して経路網に沿って設置された複数の処理装置間において搬送物を搬送する少なくとも1台の搬送車と、搬送車制御手段と、複数の停止位置、複数の移動位置、処理装置の各々の搬送物の単位時間あたりの処理数とが記録された記録手段と、搬送車が搬送指令を受ける前の待機状態にあるときの待機位置設定手段とを含み、待機位置設定手段は、記録手段に記録された停止位置、移載位置および処理能力情報に基づいて、停止位置のうちの何れかを待機位置としたときの当該停止位置と移載位置の各々との間の搬送車の搬送指令に基づく単位時間あたりの総移動距離を停止位置毎に算出し、そのうち最小値に対応する停止位置を待機位置として設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物の受け渡しを自動で行う自動搬送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生産システム、すなわち工場や倉庫において無人化が進展しつつある。これは人件費の高騰などの他、消費者ニーズの多様化に合わせるために工場では多品種少量生産の対応が要求されているためである。この結果、生産システムでは物の流れが複雑化し、運用方式、レイアウト、設備が頻繁に変更される。また、倉庫における在庫量を低減するために自動倉庫と生産ラインを搬送システムで結びJust in timeの機能を実現している。今後さらに生産ラインや倉庫間の物流は複雑化するものと考えられる。このような状況から搬送システムは無人の自動搬送システムへと移行しつつある。
【0003】
かかる自動搬送システムは、例えば半導体製造工場において採用されおり、キャリアとなるウエハが搬送経路上を走行する搬送車によって自動搬送され、各製造装置間でウエハの受け渡しが無人で行われている。図1は、半導体製造ラインにおける各製造装置のレイアウトの一例を示したものである。一般的に装置のレイアウト方式としては、プロセスステップに従って装置を並べて配置するフローショップ型と、同種処理が可能な装置をグループ化して配置するジョブショップ型が知られているが、半導体製造ラインにおいては、多品種の半導体装置の製造に対応できる汎用性と各処理装置の稼働率を確保する観点からジョブショップ型が採用される場合が多い。図1に示すレイアウトにおいてもジョブショップ型のレイアウト方式が採用されており、同種の処理装置がグループ化して配置され装置群1を構成している。各装置群1の端部には、ウエハを一次保管しておくためのストッカ2が設けられる。各装置群の間に形成された領域4と、この領域4を囲む装置群1およびストッカ2からなるブロックをイントラベイと称する。ストッカ2は、図1に示すように、図中の上段部分に並置された装置群と図中下段部分に並置された装置群の間の領域5に集結するように配置される。この中央部分の領域5と、領域5を囲むストッカ2からなるブロックをインターベイと称する。各イントラベイ内には搬送車3が少なくとも1台配備される。搬送車3は、搬送装置統合システムからの搬送指令に基づいて、イントラベイ内を走行し、装置群1を構成する各製造装置とストッカ2との間でキャリアであるウエハの受け渡しを行う。かかる搬送車によるイントラベイ内におけるキャリアの搬送をベイ内搬送と称する。さらに、搬送車3は、インターベイ内にも配備され、ストッカ間でウエハの受け渡しを行う。すなわち、インターベイ内においてストッカ間でウエハの受け渡しを行うことにより、イントラベイ間でのウエハ搬送が可能となる。このインターベイ内におけるキャリアの搬送をベイ間搬送と称する。
【0004】
特許文献1には、フローショップ方式のレイアウトを採用する搬送システムに関して、搬送車のキャリアの搬送方向に対して上流に待機させることが記載されている。
【特許文献1】特開2005−197434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の如き自動搬送システムが適用された製造ラインにおいて、各製造装置のレイアウトや搬送車の台数などの工程計画と、搬送や加工のスケジューリングが互いに密接に関連し、システムの効率的な運用を図るためにはこれらの同時最適化が要求される。更に、搬送車が搬送指令を受ける前の待機位置を最適化することにより搬送時間の短縮化を図ることがシステムの効率的運用を図る上で不可欠となる。しかしながら、従来の自動搬送システムにおいては、搬送時間の短縮を図るという観点で搬送車の待機位置が定められていなかった。例えば、イントラベイの端部に配置された製造装置の単位時間当たりのウエハ搬送量が最も多いにもかかわらず、搬送車の待機位置が当該製造装置の遠端部に定められていると、搬送車の移動距離が長くなり、効率的な搬送作業を行うことができない。すなわち、搬送車の待機位置が最適化されていないとトータルの搬送時間が長くなり、システムの効率的運用の妨げとなる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、搬送車の待機位置の最適化を図ることによりキャリアを効率的に搬送することが可能な自動搬送システムおよび、自動搬送システムにおける搬送車の待機位置の設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自動搬送システムは、断続的に供給される搬送指令に基づいて所定の経路網を自動的に移動して前記経路網に沿って設置された複数の処理装置間において搬送物を搬送する少なくとも1台の搬送車と、前記搬送車に対して前記搬送指令を与える制御手段と、前記経路網において前記搬送車が停止し得る複数の停止位置と、前記停止位置のうち前記処理装置の各々に対応する複数の移動位置と、前記処理装置の各々の前記搬送物の単位時間あたりの処理数を示す処理能力情報とが記録された記録手段と、前記搬送車が前記搬送指令を受ける前の待機状態にあるときの前記搬送車の待機位置を前記停止位置のいずれかから選択して設定する待機位置設定手段と、を含み、前記待機位置設定手段は、前記記録手段に記録された停止位置、移載位置および処理能力情報に基づいて、前記停止位置のうちのいずれかを前記待機位置としたときの当該停止位置と前記移載位置の各々との間の前記搬送車の前記搬送指令に基づく単位時間あたりの総移動距離を前記停止位置毎に算出し、そのうち最小値に対応する停止位置を前記待機位置として設定することを特徴としている。
【0008】
また、本発明の自動搬送システムは、断続的に供給される搬送指令に基づいて所定の経路網を自動的に移動して前記経路網に沿って設置された複数の処理装置間において搬送物を搬送する少なくとも1台の搬送車と、前記搬送車に対して前記搬送指令を与える制御手段と、前記経路網において前記搬送車が停止し得る複数の停止位置と、前記停止位置のうち前記処理装置の各々に対応する複数の移載位置と、前記処理装置の各々の前記搬送物の単位時間あたりの処理数を示す処理能力情報と、前記搬送車の前記停止位置間毎の移動速度を示す移動速度情報と、が記録された記録手段と、前記搬送車が前記搬送指令を受ける前の待機状態にあるときの前記搬送車の待機位置を前記停止位置のいずれかから選択して設定する待機位置設定手段と、を含み、前記待機位置設定手段は、前記記録手段に記録された停止位置、移載位置、処理能力情報および移動速度情報に基づいて、前記停止位置のうちのいずれかを前記待機位置としたときの当該停止位置と前記移載位置の各々との間の前記搬送車の前記搬送指令に基づく単位時間あたりの総移動時間を前記停止位置毎に算出し、その算出結果に基づいて前記待機位置を設定することを特徴としている。
【0009】
また、本発明の自動搬送システムにおける搬送車の待機位置設定方法は、断続的に供給される搬送指令に基づいて所定の経路網を自動的に移動して前記経路網に沿って設置された複数の処理装置間において搬送物を搬送する少なくとも1台の搬送車と、前記搬送車に対して前記搬送指令を与える制御手段と、を含む自動搬送システムにおいて、前記搬送車が前記搬送指令を受ける前の待機状態にあるときの前記搬送車の待機位置を設定する待機位置設定方法であって、入力手段が前記経路網において前記搬送車が停止し得る複数の停止位置、前記停止位置のうち前記処理装置の各々に対応する複数の移載位置および前記処理装置の各々の前記搬送物の単位時間あたりの処理数を示す処理能力情報の入力を受け付け、これを記録手段に記録するステップと、待機位置設定手段が、前記記録手段に記録された停止位置、移載位置および処理能力情報に基づいて、前記停止位置のうちのいずれかを前記待機位置としたときの当該停止位置と前記移載位置の各々との間の前記搬送車の前記搬送指令に基づく単位時間あたりの総移動距離を前記停止位置毎に算出し、そのうち最小値に対応する停止位置を前記待機位置として設定するステップと、を含むことを特徴としている。
【0010】
また、本発明の自動搬送システムにおける搬送車の待機位置の設定方法は、断続的に供給される搬送指令に基づいて所定の経路網を自動的移動して前記経路網に沿って設置された複数の処理装置間において搬送物を搬送する少なくとも1台の搬送車と、前記搬送車に対して前記搬送指令を与える制御手段と、を含む自動搬送システムにおいて、前記搬送車が前記搬送指令を受ける前の待機状態にあるときの前記搬送車の待機位置を設定する待機位置設定方法であって、入力手段が前記経路網において前記搬送車が停止し得る複数の停止位置、前記停止位置のうち前記処理装置の各々に対応する複数の移載位置、前記処理装置の各々の前記搬送物の単位時間あたりの処理数を示す処理能力情報および前記搬送車の前記停止位置間毎の移動速度を示す移動速度情報の入力を受け付け、これを記録手段に記録するステップと、待機位置設定手段が、前記記録手段に記録された停止位置、移載位置、処理能力情報および移動速度情報に基づいて、前記停止位置のうちのいずれかを前記待機位置としたときの当該停止位置と前記移載位置の各々との間の前記搬送車の前記搬送指令に基づく単位時間あたりの総移動時間を前記停止位置毎に算出し、その算出結果に基づいて前記待機位置を設定するステップと、を含むことを特徴としている。
【0011】
また本発明の半導体装置の製造ラインは、上記本発明の自動搬送システムを適用した半導体装置の製造ラインであって、複数の半導体製造装置および前記半導体製造装置の処理対象を含むウエハを一次保管しておくためのストッカとからなる装置群と、前記装置群の設置方向に沿って伸長する前記搬送車の移動領域と、からなる複数のベイエリアを有し、前記搬送車は、前記ベイエリア毎に少なくとも1台配備され、前記搬送指令に基づいて前記半導体製造装置と前記ストッカとの間で前記ウエハを搬送し、前記停止位置は、前記搬送車の移動領域上に設けられていることを特徴としている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施例)
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ説明する。尚、以下に示す図において、実質的に同一又は等価な構成要素、部分には同一の参照符を付している。図2に本発明の自動搬送システム100の制御構成を示す。以下においては、本発明の自動搬送システム100を半導体装置の製造ラインに適用した場合を例に説明する。
【0013】
搬送車3は、キャリアとなるウエハが収容されたウエハケースの搬送を実際に行う例えば無軌道式の無人搬送車である。搬送車3には、複数のキャリアを積載可能な荷台と、製造装置1やストッカ2との間でキャリアの受け渡しを行うためのアーム部を備えている。
【0014】
ストッカ2は、製造装置1による処理を待つキャリアと、製造装置1で処理が完了したキャリアとを一次保管する保管庫である。ストッカ2は、ストッカ内のキャリアの搬送作業を行うスタッカクレーン、キャリアを収容しておくための収容棚、搬送車3との間でイントラベイ内でのキャリアの受け渡しを行うための入庫ポートおよび出庫ポート、搬送車3との間でインターベイ内でのキャリアの受け渡しを行うための搬入ポートおよび搬出ポートを備えている。
【0015】
搬送装置統合システム10は、搬送ルートの決定、搬送車3およびストッカ2の制御、搬送車3とストッカ2の稼動管理および搬送作業の実行時間の管理を行う。搬送車3およびストッカ2は、搬送装置統合システム10から断続的に供給される搬送指令に基づいて搬送作業を行う。かかる搬送統合システム10による搬送制御によって効率的なキャリア搬送が実現される。本発明の自動搬送システム100は、この搬送装置統合システム10以下の部分を指す。搬送装置統合システム10はホストシステム20に接続され、工場全体のシステムに組み込まれる。搬送装置統合システム10による搬送ルートの決定は、ホストシステムから指示される包括的な搬送要求に対して、搬送ルートマップ等の搬送システムの構成情報や搬送作業の実行情況等に基づいて搬送ルートを決定する機能である。搬送装置統合システム10による搬送車3およびストッカ2の制御は、決定した搬送ルートに基づいて、搬送元および搬送先の情報を含む搬送指示を搬送車3およびストッカ2に供給し、搬送車3およびストッカ2に搬送作業を実行させる機能である。搬送装置統合システム10による稼動管理は、搬送車3およびストッカ2の稼動状況を監視する機能である。搬送装置統合システム10による搬送作業の実行時間管理は、ホストシステム20が要求する時間内に作業が完了するように実行順序を決定する機能と実際に作業時間内に完了したかを監視する機能である。
【0016】
製造装置1は、例えばウエハ洗浄装置、酸化炉、イオン注入装置、CVD装置、スパッタ装置、エッチング装置等である。製造装置1は、ホストシステム20に直結され、ホストシステム20より供給される着工指示に基づいて稼動する。製造装置1は、ホストシステム20に処理結果の実績報告を行う。
【0017】
ホストシステム20は、生産計画に沿った進捗管理を行うスケジューリングと次ロットの処理が可能になった製造装置にどのロットを割り当てるかの処理を行う機能を有し、包括的な搬送要求を搬送装置統合システム10に対して与える。製造装置1は処理完了ロットの排出要求と次処理ロットの供給要求をホストシステム20に対して行い、実質的な搬送作業のトリガを与える。
【0018】
各製造装置およびストッカは、図1に示す如きレイアウトで配置され、イントラベイおよびインターベイが構成されている。図3に本実施例に係るイントラベイの構成図を示す。イントラベイ内には、製造装置群1を構成する例えば6台の製造装置1A〜1Fが設けられている。これらの製造装置は、キャリアの搬送経路となる領域4を取り囲むように配置される。また、イントラベイの端部には、2台のストッカ2Aおよび2Bが領域4を挟んで対向するように配置されている。これらの製造装置およびストッカに対して単位時間当たりに搬送されるロット数すなわち各装置の処理能力は各装置毎に異なっている。本実施例においては、製造装置1Aは単位時間当たり4ロット、製造装置1Bは単位時間当たり6ロット、製造装置1Cは単位時間当たり14ロット、製造装置1Dは単位時間当たり6ロット、製造装置1Eは単位時間当たり8ロットであり、製造装置1Fは単位時間当たり12ロット、ストッカ2Aは単位時間当たり16ロット、ストッカ2Bは単位時間当たり34ロットの搬送量(処理能力)となっている。これらの各装置の処理能力は、搬送装置統合システムが備えるメモリに登録されている。また、イントラベイ内には搬送車3が2台配備されている。これらの搬送車3は、搬送装置統合システム10より供給されるFROM-TO搬送指令に基づいて各ストッカから各製造装置へ又は各製造装置から各ストッカへウエハの移載を行う。
【0019】
図3に示すように、搬送車3の搬送経路となる領域4には、例えば、縦方向および横方向において均等間隔に配置された30ポイントからなる搬送車3の停止位置が定められている。イントラベイ内の各装置は、この停止位置の配列方向に沿って配置される。搬送車3は、この停止位置において停止および方向変換できるようになっており、図中上下左右方向において隣接する停止位置間を結ぶ線上を走行できるようになっており、停止位置の各々によって搬送車3の移動経路網が構成されている。この停止位置にはそれぞれ1から30の識別番号が割り付けられており、各停止位置の位置情報が識別番号と対応付けられて搬送装置統合システム10に備えられたメモリに登録されている。これら30ポイントの停止位置のうち製造装置1A〜1Fおよびストッカ2A、2Bの直近に位置するものを移載位置と称する。すなわち、搬送車3は移載位置において各製造装置A〜F又はストッカ2A、2Bとの間でウエハの受け渡しを行う。図3に示す本実施例のイントラベイの構成においては、停止位置1、3、7、15、19、24、28および30の8箇所が移載位置となる。かかる移載位置の位置情報は、停止位置の識別番号と対応付けられて搬送装置統合システム10に備えられたメモリに登録されている。
【0020】
搬送車3は、上記したように、搬送装置統合システム10から供給される搬送元と搬送先の情報を含むFROM-TO搬送指令に基づいてキャリアの搬送を行うが、本実施例においてはその搬送パターンは、次の24通りである。すなわち、ストッカ2Aから製造装置1A又は1B又は1C又は1D又は1E又は1Fに向かう経路と、ストッカ2Bから製造装置1A又は1B又は1C又は1D又は1E又は1Fに向かう経路と、製造装置1A又は1B又は1C又は1D又は1E又は1Fからストッカ2Aに向かう経路と、製造装置1A又は1B又は1C又は1D又は1E又は1Fからストッカ2Bに向かう経路である。例えば、ストッカ2Aから製造装置1Cにウエハを搬送すべき搬送指令が搬送装置統合システム10より発せられると、これを受信したストッカ2Aは対象ロットを収容棚から出庫ポートに移動させ、ウエハの引渡し準備を行う。一方、搬送車3は、上記搬送指令を受信すると、所定の待機位置から移載位置である停止位置1へ移動し、ストッカ2Aの出庫ポートからウエハを受け取った後、移載位置である停止位置19に移動して製造装置1Cにウエハを供給する。
【0021】
本発明の自動搬送システム100においては、搬送装置統合システム10から搬送指令が発せられる前の待機状態にあるときは、搬送車3を以下に示す方法により定められる特定の停止位置に待機させることにより、搬送車3は、次の搬送指令に係る搬送元の製造装置又はストッカにより早く到着することが可能となり、搬送時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0022】
以下に、搬送車3の待機位置の設定方法について説明する。搬送経路上の特定の停止位置N(本実施例の場合Nは1〜30の自然数)が搬送車3の待機位置であるものと仮定する。このとき、搬送車3は搬送指令に基づいて停止位置Nから特定の製造装置又はストッカまでの距離aを単位時間当たりk回移動することとなる。ここでkは、当該製造装置又はストッカの単位時間あたりの搬送ロット数である。従って、搬送車3が停止位置Nと搬送指令に係る特定の製造装置又はストッカとの間を移動する単位時間あたりの移動距離lは、
l=a×k・・・(1)
と表すことができる。このようにして求められる搬送車の特定の装置との間の移動距離lを各製造装置毎およびストッカ毎に算出し、その総和を求めることにより、停止位置Nを待機位置とした場合の搬送車3の単位時間当たりの総移動距離LNを求めることができる。
【0023】
次に、このようにして求められる搬送車3の総移動距離LNを停止位置1〜30を待機位置とした場合のそれぞれについて算出する。そして、各停止位置毎に算出された総移動距離L1〜L30のうち最も値が小さくなる停止位置がラインの重心点となるので、かかる停止位置を搬送車3の待機位置として設定する。すなわち、本発明の自動搬送システムにおいては、イントラベイ内を走行する搬送車3の待機位置から搬送元の装置までの単位時間当たりの総移動距離が最小となるように待機位置を設定することによりトータルの搬送時間の短縮が達成されるのである。
【0024】
以下において、上記した方法を用いて図3に示す構成を有するイントラベイ内に配備された搬送車3の待機位置を実際に求める。尚、互いに隣接する停止位置間の距離を1とする。まず、停止位置1を待機位置とした場合の搬送車3の単位時間当たりの総移動距離Lを求める。
停止位置1とストッカ2Aとの間の単位時間当たりの移動距離lは、a=0、k=16であるので式(1)よりl=0である。
停止位置1とストッカ2Bとの間の単位時間当たりの移動距離lは、a=2、k=34であるので式(1)よりl=68である。
停止位置1と製造装置1Aとの間の単位時間当たりの移動距離lは、a=2、k=4であるので式(1)よりl=8である。
停止位置1と製造装置1Bとの間の単位時間当たりの移動距離lは、a=6、k=6であるので式(1)よりl=36である。
停止位置1と製造装置1Cとの間の単位時間当たりの移動距離lは、a=6、k=14であるので式(1)よりl=84である。
停止位置1と製造装置1Dとの間の単位時間当たりの移動距離lは、a=6、k=9であるので式(1)よりl=54である。
停止位置1と製造装置1Eとの間の単位時間当たりの移動距離lは、a=9、k=8であるので式(1)よりl=72である。
停止位置1と製造装置1Fとの間の単位時間当たりの移動距離lは、a=11、k=12であるので式(1)よりl=132である。
【0025】
そして、停止位置1を待機位置とした場合の搬送車3の単位時間あたりの総移動距離L1は、上記各製造装置およびストッカ毎に求めた移動距離lの総和によって求められ、これを計算するとL1=454となる。同様にして、停止位置2を待機位置とした場合について搬送車3の単位時間あたりの総移動距離L2を求めると、L2=394となる。以下、同様の方法で求められる各停止位置毎の搬送車3の単位時間あたりの総移動距離L1〜L30の算出結果を図4に示す。そして、この算出されたL1〜L30のうち最も値が小さい2つを抽出し、これらに対応する停止位置の各々をイントラベイに配備された2台の搬送車の待機位置としてそれぞれ割り当てる。図4においては、L1〜L30を値の小さい順に順位付けした場合の順位が示されている。本実施例においては、停止位置3を待機位置とした場合に搬送車3の単位時間当たりの総移動距離が最も短くなるので停止位置3を一方の搬送車の待機位置として割り当てる。次いで停止位置6を待機位置とした場合に搬送車3の単位時間当たりの総移動距離が短くなるので、停止位置6を他方の搬送車の待機位置として割り当てる。尚、待機位置は、総移動距離が最小となる停止位置に限らず、例えば総移動距離が2番目若しくは3番目に小さいものに対応する停止位置を待機位置に設定することとしてもよい。
【0026】
上記した本実施例に係る搬送車3の待機位置の設定は、搬送装置統合システム10が図5に示すフローチャートによって示されるプログラムを実行することにより実現される。以下、搬送装置統合システム10による搬送車3の待機位置の設定動作について図5のフローチャートを参照しつつ説明する。尚、搬送装置統合システム10が搬送車3の待機位置の設定処理を行うためには、搬送経路上の各停止位置および移載位置の位置情報と、各製造装置およびストッカの単位時間当たりの搬送ロット数(処理能力情報)が事前に搬送装置統合システム10に登録されていることが前提となる。これらの各情報は、例えば搬送装置統合システム10に付随する端末装置のキーボード等の入力手段により入力され、搬送装置統合システム10に備えるメモリに記録される。まず、搬送装置統合システム10は、停止位置の識別番号Nに1をセットする(ステップS1)。これにより、停止位置1が選択される(ステップS2)。次に、搬送装置統合システム10は、停止位置1から各移載位置までの各距離aを登録された停止位置および移載位置の位置情報に基づいて算出する(ステップS3)。次に、搬送装置統合システム10は、算出した各距離aと対応する装置の単位時間あたりの処理数kとを乗算して停止位置1と各移載位置との間の単位時間当たりの移動距離lを各移載位置毎に求め、それぞれの値を合算して、停止位置1を待機位置とした場合の搬送車3の単位時間当たりの総移動距離L1を求め、これを自身に備えるメモリに格納する(ステップS4)。続いて、搬送装置統合システム10は、Nの値に1を加算し(ステップS4)、その結果得られた値が30よりも大であるか否かを判定する(ステップS5)。すなわち、本ステップにおいては、搬送経路に設けられた30ポイントの停止位置の全てについて算出処理が完了したか否かが判定される。そして、搬送装置統合システム10は、ステップS5においてN>30と判定されるまでステップS2〜S5の処理を繰り返し実行し、停止位置2〜30を待機位置とした場合についても同様に搬送車3の単位時間当たりの総移動距離L2〜L30を算出し、これらをメモリに格納する。搬送装置統合システム10は、全ての停止位置について総移動距離L1〜L30の算出が完了すると、ステップS6に進み、メモリに格納されたL1〜L30の値を読み出して、値の最も小さい2つを抽出し、これに対応する停止位置を搬送車の待機位置として設定する(ステップS6)。搬送装置統合システム10は、搬送車3による搬送作業が完了すると、上記ステップを経て設定した待機位置で待機すべき待機指令をイントラベイ内に配備された2台の搬送車3にそれぞれ送信する。
【0027】
以下において、イントラベイ内に配備される搬送車の待機位置を上記の如く設定することによってもたらされる搬送時間の短縮効果について例えば、搬送車の待機位置を搬送作業終了後の各装置直近の移載位置とした場合と比較することにより定量的に検証する。かかる比較例の場合、搬送車3の総移動距離の期待値Eは、以下ようにして求めることができる。すなわち、図3に示すレイアウトによれば移載位置は、停止位置1、3、7、15、19、24、25、30であり、搬送車3はこれらのうちのいずれかで待機することとなる。これらの移載位置を待機位置とした場合の搬送車3の単位時間当たりの総移動距離L、L3、L7、L15、L19、L24、L25、L30を上記したものと同様の手順で求める(これらの算出結果は図4に示してある)。次に、各移載位置が待機位置となる確率SNを求める。この確率SNは、当該移載位置に対応する製造装置又はストッカの単位時間あたりの搬送ロット数をk、イントラベイ内の各製造装置およびストッカの単位時間あたりの搬送ロット数の総和をjとすると、
SN=k/j・・・(2)
と表すことができる。
【0028】
式(2)より、停止位置1が待機位置となる確率S1は16/100である。停止位置3が待機位置となる確率S3は34/100である。停止位置7が待機位置となる確率S7は4/100である。停止位置15が待機位置となる確率S15は6/100である。停止位置19が待機位置となる確率S19は14/100である。停止位置24が待機位置となる確率S24は8/100である。停止位置25が待機位置となる確率S25は6/100である。停止位置30が待機位置となる確率S30は12/100である。そして、比較例において、搬送車3の単位時間当たりの総移動距離の期待値Eは、
E=(L1×S1)+ (L3×S3) + (L7×S7) + (L15×S15) + (L19×S19) + (L24×S24) + (L25×S25) + (L30×S30)・・・(3)
と表すことができ、これを計算すると期待値E=458.96となる。
【0029】
一方、本実施例に係る方法によって設定された停止位置3に待機している搬送車の単位時間当たりの総移動距離は378であるので、上記比較例と比較して17.6%の搬送時間の短縮が達成される。また、本発明に係る手法により選定された停止位置6に待機している搬送車の単位時間当たりの総移動距離は382であるので、上記比較例と比較して16.8%の搬送時間の短縮が達成される。
【0030】
上記イントラベイ内に配備された搬送車の待機位置の設定方法は、インターベイ内の搬送車にも適用することが可能である。図6に本実施例に係るインターベイの構成図を示す。インターベイ内には、キャリアの搬送経路となる領域5を取り囲むように例えば5台のストッカ2C〜2Gが設けられている。これらのストッカに対して単位時間あたり搬送されるロット数すなわち各ストッカの単位時間当たりの処理量は、ストッカ毎に異なっている。本実施例においては、ストッカ2Cは単位時間当たり8ロット、ストッカ2Dは単位時間当たり10ロット、ストッカ2Eは単位時間当たり12ロット、ストッカ2Fは単位時間当たり6ロット、ストッカ2Gは単位時間当たり14ロットの搬送量となっている。これらの各ストッカの処理能力は、搬送装置統合システム10が備えるメモリに登録されている。また、インターベイ内には搬送車3が3台配備されている。
【0031】
搬送車3の走行経路となる領域5には、その周方向に沿って互いに等間隔に配置された22ポイントからなる搬送車3の停止位置が定められている。搬送車3は互いに隣接する停止位置間を結ぶ線上を図中矢印方向にのみ走行でき、各停止位置において停止できるようになっている。つまり、インターベイ内の搬送車3の搬送経路は一方通行単線となっている。停止位置にはそれぞれ1から22の識別番号が割り付けられており、各停止位置の位置情報が識別番号と対応付けられて搬送装置統合システム10に登録されている。これら22箇所の停止位置のうち、ストッカ2C〜2Gの直近に位置するものを移載位置と称する。すなわち、搬送車3は移載位置において各ストッカとの間でウエハの受け渡しを行う。図6に示す本実施例のインターベイの構成においては、停止位置1、7、10、14、17の5箇所が移載位置となる。
【0032】
搬送車3は、搬送装置統合システム10から供給される搬送元と搬送先の情報を含むFROM-TO搬送指令に基づいてキャリアの搬送を行うが、インターベイ内においてはその搬送パターンは、次の20通りである。すなわち、ストッカ2Cからストッカ2D又は2E又は2F又は2Gに向かう経路と、ストッカ2Dからストッカ2C又は2E又は2F又は2Gに向かう経路と、ストッカ2Eからストッカ2C又は2D又は2F又は2Gに向かう経路と、ストッカ2Fからストッカ2C又は2D又は2E又は2Gに向かう経路と、ストッカ2Gからストッカ2C又は2D又は2E又は2Fに向かう経路である。例えば、ストッカ2Cからストッカ2Gにウエハを搬送すべき搬送指令が搬送装置統合システム10より発せられると、これを受信したストッカ2Cは対象ロットを収容棚から搬出ポートに移動させ、ウエハの引渡し準備を行う。搬送車3は、上記搬送指令を受信すると、待機位置から移載位置1へ移動し、ストッカ2Cの搬出ポートからウエハを受け取り、移載位置14に移動してストッカ2Gの搬入ポートにウエハを供給する。
【0033】
本発明の自動搬送システム100においては、インターベイ内に配備される搬送車3の待機位置は、上記インターベイの場合と同様の方法により設定される。これにより搬送車3は、次の搬送指令に係る搬送元のストッカにより早く到着することが可能となり、搬送時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0034】
以下に、インターベイ内の搬送車3の待機位置の設定方法について説明する。まず、搬送経路上の特定の停止位置N(本実施例の場合Nは1〜22の自然数)が搬送車3の待機位置であるものと仮定する。このとき、搬送車3は搬送指令に基づいて停止位置Nから特定のストッカまでの距離aを単位時間当たりk回移動することとなる。ここでkは、当該ストッカの単位時間あたりの搬送ロット数である。従って、搬送車3が停止位置Nと搬送指令に係る特定のストッカとの間を移動する単位時間あたりの移動距離lは、
l=a×k・・・(4)
と表すことができる。このようにして求められる搬送車の特定のストッカとの間の移動距離lを各ストッカ毎に算出し、その総和を求めることにより停止位置Nを待機位置とした場合の搬送車3の単位時間当たりの総移動距離LNを求めることができる。
【0035】
次に、このようにして求められる搬送車3の総移動距離LNを停止位置1〜22を待機位置とした場合のそれぞれについて算出する。そして、各停止位置毎に算出された総移動距離L1〜L22のうち最も値が小さくなる停止位置がラインの重心点となるので、かかる停止位置を搬送車3の待機位置として設定する。すなわち、本発明に係る自動搬送システムにおいては、インターベイ内を走行する搬送車3の単位時間当たりの総移動距離が最小となるように搬送車の待機位置を設定することにより搬送時間の短縮が達成されるのである。
【0036】
以下において、上記した方法により図6に示す構成を有するインターベイ内の搬送車3の待機位置を実際に求める。尚、互いに隣接する停止位置間の距離を1とする。まず、停止位置1を待機位置とした場合の搬送車3の単位時間当たりの総移動距離Lを求める。
停止位置1とストッカ2Cとの間の単位時間当たりの移動距離lは、a=0、k=8であるので式(4)よりl=0である。
停止位置1とストッカ2Dとの間の単位時間当たりの移動距離lは、a=6、k=10であるので式(4)よりl=60である。
停止位置1とストッカ2Eとの間の単位時間当たりの移動距離lは、a=9、k=6であるので式(4)よりl=54である。
停止位置1とストッカ2Gとの間の単位時間当たりの移動距離lは、a=13、k=14であるので式(4)よりl=182である。
停止位置1とストッカ2Eとの間の単位時間当たりの移動距離lは、a=16、k=12であるので式(4)よりl=84である。
【0037】
そして、停止位置1を待機位置とした場合の搬送車3の単位時間あたりの総移動距離L1は、ストッカ毎に求めた移動距離lの総和によって求められ、これを計算するとL1=488となる。同様に停止位置2を待機位置とした場合について搬送車2の総移動距離L2を求めると、L2=394となる。以下、同様の方法で求められる各停止位置毎の搬送車の単位時間あたりの総移動距離L1〜L22の算出結果を図7に示す。そして、この算出された総移動距離L1〜L22のうち最も値が小さい3つを抽出し、これらに対応する停止位置の各々を3台の搬送車3の待機位置として割り当てる。図7においては、L1〜L22を値の小さい順に順位付けした場合の順位が示されている。本実施例においては、停止位置7を待機位置とした場合に搬送車3の単位時間当たりの総移動距離が最も短くなるので、停止位置7をいずれかの搬送車の待機位置として割り当てる。次いで停止位置を14および6とした場合に搬送車3の単位時間当たりの総移動距離が短くなるので、停止位置14および6を他の2台の搬送車の待機位置として割り当てる。
【0038】
上記方法によるインターベイ内に配備された搬送車3の待機位置の設定は、搬送装置統合システム10が待機位置を選定するためのプログラムを実行することにより行われる。このプログラムは図5に示すフローチャートと同様の処理に係るものである。搬送装置統合システム10が上記プログラムを実行することによりなされるインターベイ内の搬送車3の待機位置の設定動作については、上記したイントラベイ内におけるものと同様であるのでその説明は省略する。
【0039】
以下において、インターベイ内に配備される搬送車の待機位置を上記の如く設定することによってもたらされる搬送時間の短縮効果について例えば、搬送車の待機位置を搬送作業終了後の各ストッカ直近の移載位置とした場合と比較することにより定量的に検証する。かかる比較例の場合、搬送車3の総移動距離の期待値Eは、以下ようにして求めることができる。すなわち、図6に示すレイアウトによれば移載位置は停止位置1、7、10、14、17であり、搬送車3はこれらのうちのいずれかで待機することとなる。これらの停止位置を待機位置とした場合の搬送車3の単位時間当たりの総移動距離L、L7、L10、L14、L17を上記したものと同様の手順で求める(これらの算出結果は図7に示してある)。次に、各移載位置が待機位置となる確率SNを求める。この確率SNは、当該移載位置に対応するストッカの単位時間あたりの搬送ロット数をk、インターベイ内の各ストッカの単位時間あたりの搬送ロット数の総和をjとすると、
SN=k/j・・・(5)
と表すことができる。式(5)より、停止位置1が待機位置となる確率S1は8/50である。停止位置7が待機位置となる確率S7は10/50である。停止位置10が待機位置となる確率S10は6/50である。停止位置14が待機位置となる確率S14は14/50である。停止位置17が待機位置となる確率S17は12/50である。そして、搬送車3の単位時間当たりの総移動距離の期待値Eは、
E=(L1×S1)+ (L7×S7) + (L10×S10) + (L14×S14) + (L17×S17)・・・(6)
と表すことができ、これを計算すると期待値E=431.20となる。
【0040】
一方、本実施例に係る方法によって選定された停止位置7に待機している搬送車の単位時間当たりの総移動距離は364であるので、上記比較例と比較して15.6%の搬送時間の短縮が達成される。また、本実施例に係る方法により選定された停止位置14に待機している搬送車の単位時間当たりの総移動距離は366であるので、上記比較例と比較して15.1%の搬送時間の短縮が達成される。また、本実施例に係る方法により選定された停止位置6に待機している搬送車の単位時間当たりの総移動距離は414であるので、上記比較例と比較して4%の搬送時間の短縮が達成される。
【0041】
以上の説明から明らかなように、本発明の自動搬送システムによれば、イントラベイおよびインターベイ内に配備される搬送車の待機位置は、待機位置から搬送元の製造装置又はストッカまでの単位時間当たりの総移動距離が最も短くなるように設定されるので、搬送作業に要する時間を短縮することができ、生産効率の向上に寄与することができる。尚、以上の説明においては、半導体装置の生産ラインに本発明の自動搬送システムを適用した場合を例示したが、半導体装置以外の生産ラインや自動倉庫に適用することも可能である。
【0042】
尚、上記各実施例において示した各製造装置やストッカのレイアウトおよび処理能力、搬送車の設置台数、停止位置の数や配列形態等は例示であり、上記したものに限定されず、適宜変更することが可能である。
【0043】
(第2実施例)
以下に本発明の第2実施例を示す。上記第1実施例においては、各停止位置毎に搬送車の単位時間当たりの総移動距離L1〜L30を求め、その値が最小となるものに対応する停止位置を待機位置に設定することとしたが、これは各停止位置間を移動する搬送車の移動速度が一定であることを前提としている。すなわち、各停止位置間を移動する搬送車の移動速度が一定の場合、搬送車の単位時間当たりの総移動距離L1〜L30の大小比較により搬送車のトータルの搬送時間の大小を導出することが可能となる。本実施例は、搬送車の移動速度が各停止位置間毎に別個に設定されている場合における待機位置設定方法を示すものである。尚、本実施例においても図3に示す構成のイントラベイ内搬送を行う場合を例に説明する。
【0044】
イントラベイ内の領域4には、図3に示すように、縦方向および横方向において均等間隔に配置された30ポイントからなる搬送車3の停止位置が定められている。この停止位置にはそれぞれ1から30の識別番号が割り付けられており、各停止位置の位置情報が識別番号と対応付けられて搬送装置統合システム10に備えられたメモリに登録されている。また、これら30ポイントの停止位置のうち製造装置1A〜1Fおよびストッカ2A、2Bの直近に位置する移載位置の位置情報は、停止位置の識別番号と対応付けられて搬送装置統合システム10に備えられたメモリに登録されている。搬送車3は移載位置において各製造装置A〜F又はストッカ2A、2Bとの間でウエハの受け渡しを行う。更に、各停止位置間毎に搬送車3の移動速度が定められており、これが搬送装置統合システム10に備えるメモリに登録されている。搬送車3が搬送指令に基づいてイントラベイ内を走行する際には、上記定められた各走行速度に従う。
【0045】
以下、本実施例の待機位置の設定方法について詳述する。搬送経路上の特定の停止位置N(本実施例の場合Nは1〜30の自然数)が搬送車3の待機位置であるものと仮定する。搬送車3が待機位置である停止位置Nから特定の製造装置又はストッカまで移動するのに要する時間tを、停止位置間毎に定められた搬送車の走行速度に基づいて算出する。一例として、搬送車3が停止位置14から停止位置17、20を経て停止位置19に向かう場合について考える。搬送装置統合システム10には、停止位置14−17間の搬送車の移動速度としてV1、停止位置17−20間の搬送車の移動速度としてV2、停止位置20−19間の搬送車の移動速度としてV3が登録されているものとし、各停止位置間の距離を1とすると、搬送車3が停止位置14から停止位置19までの移動に要する時間tは、1/V1+1/V2+1/V3と表すことができる。尚、搬送車3が特定の停止位置から特定の製造装置又はストッカとの間を走行する移動経路は、所定のルールに基づいて一義的に決まるものとする。
【0046】
ここでkを製造装置又はストッカの単位時間あたりの搬送ロット数とすると、搬送車3は搬送指令に基づいて停止位置Nと当該製造装置又はストッカまでの間を単位時間当たりk回移動することとなる。従って、搬送車3が停止位置Nと特定の製造装置又はストッカとの間のk回に亘る移動に要する時間Tは
T=k×t・・・(7)
と表すことができる。このようにして求められる搬送車3の移動時間Tを各ストッカ毎に算出し、その総和を求めることにより停止位置Nを待機位置とした場合の搬送車3の単位時間あたりの総移動時間TNを求めることができる。すなわち、総移動時間TNは、搬送指令に基づいて、単位時間あたりに搬送車が待機位置から搬送元の製造装置又はストッカまでの間を移動する移動時間の総和を意味している。
【0047】
このようにして求められる搬送車3の総移動時間TNを停止位置1〜22を待機位置とした場合のそれぞれについて算出する。そして、各停止位置毎に算出された総移動時間T1〜T22のうち最も値が小さくなる停止位置がラインの重心点となるので、かかる停止位置を搬送車3の待機位置として設定する。すなわち、本実施例の場合には、インターベイ内を走行する搬送車3の総移動時間TNが最小となるように搬送車の待機位置を設定することにより搬送時間の短縮が達成されるのである。尚、待機位置は、総移動距時間が最小となる停止位置に限らず、例えば総移動時間が2番目若しくは3番目に小さいものに対応する停止位置を待機位置として設定することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の自動搬送システムが適用された生産ラインのレイアウト図である。
【図2】本発明の自動搬送システムの制御構成を示す図である。
【図3】本発明の自動搬送システムが適用されたイントラベイの構成図である。
【図4】各停止位置毎の搬送車の総移動距離の算出結果を示す図である。
【図5】本発明の自動搬送システムのよる搬送車の待機位置の設定手順を示すフローチャート図である。
【図6】本発明の自動搬送システムが適用されたインターベイの構成図である。
【図7】各停止位置毎の搬送車の総移動距離の算出結果を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 製造装置群
2 ストッカ
3 搬送車
10 搬送装置統合システム
20 ホストシステム
1A〜1F 製造装置群
2A、2B ストッカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断続的に供給される搬送指令に基づいて所定の経路網を自動的に移動して前記経路網に沿って設置された複数の処理装置間において搬送物を搬送する少なくとも1台の搬送車と、
前記搬送車に対して前記搬送指令を与える制御手段と、
前記経路網において前記搬送車が停止し得る複数の停止位置と、前記停止位置のうち前記処理装置の各々に対応する複数の移載位置と、前記処理装置の各々の前記搬送物の単位時間あたりの処理数を示す処理能力情報とが記録された記録手段と、
前記搬送車が前記搬送指令を受ける前の待機状態にあるときの前記搬送車の待機位置を前記停止位置のいずれかから選択して設定する待機位置設定手段と、を含み、
前記待機位置設定手段は、前記記録手段に記録された停止位置、移載位置および処理能力情報に基づいて、前記停止位置のうちのいずれかを前記待機位置としたときの当該停止位置と前記移載位置の各々との間の前記搬送車の前記搬送指令に基づく単位時間あたりの総移動距離を前記停止位置毎に算出し、その算出結果に基づいて前記待機位置を設定することを特徴とする自動搬送システム。
【請求項2】
前記待機位置設定手段は、前記記録手段に記録された停止位置、移載位置および処理能力情報に基づいて、前記停止位置のうちのいずれかを前記待機位置としたときの当該停止位置と前記移載位置の各々との間の前記搬送車の前記搬送指令に基づく単位時間あたりの総移動距離を前記停止位置毎に算出し、そのうち最小値に対応する停止位置を前記待機位置として設定することを特徴とする自動搬送システム。
【請求項3】
前記搬送車は複数台であり、
前記待機位置設定手段は、前記搬送車の台数に応じた数の停止位置を前記搬送車の前記搬送指令に基づく単位時間あたりの総移動距離が小さいものとなるものから順に前記待機位置として設定することを特徴とする請求項2に記載の自動搬送システム。
【請求項4】
断続的に供給される搬送指令に基づいて所定の経路網を自動的に移動して前記経路網に沿って設置された複数の処理装置間において搬送物を搬送する少なくとも1台の搬送車と、
前記搬送車に対して前記搬送指令を与える制御手段と、
前記経路網において前記搬送車が停止し得る複数の停止位置と、前記停止位置のうち前記処理装置の各々に対応する複数の移載位置と、前記処理装置の各々の前記搬送物の単位時間あたりの処理数を示す処理能力情報と、前記搬送車の前記停止位置間毎の移動速度を示す移動速度情報と、が記録された記録手段と、
前記搬送車が前記搬送指令を受ける前の待機状態にあるときの前記搬送車の待機位置を前記停止位置のいずれかから選択して設定する待機位置設定手段と、を含み、
前記待機位置設定手段は、前記記録手段に記録された停止位置、移載位置、処理能力情報および移動速度情報に基づいて、前記停止位置のうちのいずれかを前記待機位置としたときの当該停止位置と前記移載位置の各々との間の前記搬送車の前記搬送指令に基づく単位時間あたりの総移動時間を前記停止位置毎に算出し、その算出結果に基づいて前記待機位置を設定することを特徴とする自動搬送システム。
【請求項5】
断続的に供給される搬送指令に基づいて所定の経路網を自動的移動して前記経路網に沿って設置された複数の処理装置間において搬送物を搬送する少なくとも1台の搬送車と、前記搬送車に対して前記搬送指令を与える制御手段と、を含む自動搬送システムにおいて、前記搬送車が前記搬送指令を受ける前の待機状態にあるときの前記搬送車の待機位置を設定する待機位置設定方法であって、
入力手段が前記経路網において前記搬送車が停止し得る複数の停止位置、前記停止位置のうち前記処理装置の各々に対応する複数の移載位置および前記処理装置の各々の前記搬送物の単位時間あたりの処理数を示す処理能力情報の入力を受け付け、これを記録手段に記録するステップと、
待機位置設定手段が、前記記録手段に記録された停止位置、移載位置および処理能力情報に基づいて、前記停止位置のうちのいずれかを前記待機位置としたときの当該停止位置と前記移載位置の各々との間の前記搬送車の前記搬送指令に基づく単位時間あたりの総移動距離を前記停止位置毎に算出し、その算出結果に基づいて前記待機位置を設定するステップと、を含むことを特徴とする待機位置設定方法。
【請求項6】
前記待機位置設定手段が前記待機位置を設定するステップは、
前記停止位置の1つを選択する第1ステップと、
当該選択された1の停止位置から前記移載位置の各々までの各距離aを求める第2ステップと、
前記距離aの各々と、対応する処理装置の前記搬送物の単位時間当たりの処理数kの各々とを乗算して得た値の各々の総和を算出し、当該選択された1の停止位置を前記待機位置としたときの前記搬送車の単位時間当たりの総移動距離Lを求める第3ステップと、
前記第1から第3ステップの処理を繰り返し実行し、前記停止位置の全てについて前記総移動距離Lを求める第4ステップと、
前記停止位置毎に算出された総移動距離Lが最小となる停止位置を前記待機位置として設定する第5ステップと、を含むことを特徴とする請求項5に記載の待機位置設定方法。
【請求項7】
前記搬送車は複数台であり、
前記待機位置設定手段は、前記搬送車の台数に応じた数の停止位置を前記搬送車の前記搬送指令に基づく単位時間あたりの総移動距離が小さいものとなるものから順に前記待機位置として設定することを特徴とする請求項5又は6に記載の自動搬送システム。
【請求項8】
断続的に供給される搬送指令に基づいて所定の経路網を自動的移動して前記経路網に沿って設置された複数の処理装置間において搬送物を搬送する少なくとも1台の搬送車と、前記搬送車に対して前記搬送指令を与える制御手段と、を含む自動搬送システムにおいて、前記搬送車が前記搬送指令を受ける前の待機状態にあるときの前記搬送車の待機位置を設定する待機位置設定方法であって、
入力手段が前記経路網において前記搬送車が停止し得る複数の停止位置、前記停止位置のうち前記処理装置の各々に対応する複数の移載位置、前記処理装置の各々の前記搬送物の単位時間あたりの処理数を示す処理能力情報および前記搬送車の前記停止位置間毎の移動速度を示す移動速度情報の入力を受け付け、これを記録手段に記録するステップと、
待機位置設定手段が、前記記録手段に記録された停止位置、移載位置、処理能力情報および移動速度情報に基づいて、前記停止位置のうちのいずれかを前記待機位置としたときの当該停止位置と前記移載位置の各々との間の前記搬送車の前記搬送指令に基づく単位時間あたりの総移動時間を前記停止位置毎に算出し、その算出結果に基づいて前記待機位置を設定するステップと、を含むことを特徴とする待機位置設定方法。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の自動搬送システムを適用した半導体装置の製造ラインであって、
複数の半導体製造装置および前記半導体製造装置の処理対象となるウエハを一次保管しておくためのストッカを含む装置群と、前記装置群の設置方向に沿って伸長する前記搬送車の移動領域と、からなる複数のベイエリアを有し、
前記搬送車は、前記ベイエリア毎に少なくとも1台配備され、前記搬送指令に基づいて前記半導体製造装置と前記ストッカとの間で前記ウエハを搬送し、
前記停止位置は、前記搬送車の移動領域上に設けられていることを特徴とする半導体装置の製造ライン。
【請求項10】
前記停止位置の各々は上下方向および左右方向において互いに等間隔で配置されていることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の製造ライン。
【請求項11】
前記停止位置の各々は、前記装置群の設置方向に沿って配列されていることを特徴とする請求項10に記載の半導体装置の製造ライン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−215032(P2009−215032A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62606(P2008−62606)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(308033711)OKIセミコンダクタ株式会社 (898)
【出願人】(591048162)OKIセミコンダクタ宮城株式会社 (130)
【Fターム(参考)】