説明

自動車の冷却風導風構造

【課題】 車体前部のエンジンルームの前方に配設されたグリル部材の空気取入口から取り入れられた冷却風を、グリル部材の後方に設けられたガイド部材を介して、フードの内部に設けられた導風部の入口に導くものにおいて、フードの高さを低く抑えることができる自動車の冷却風導風構造を提供する。
【解決手段】 グリル部材13を前記フード2の前端部下方で該フード2に取り付けると共に、前記ガイド部材20を、前記グリル部材13の空気取入口13a,13aと前記導風部30の入口30a,30aとを連続的に接続するように前記フード2側に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部の空気取入口から取り入れられた冷却風をエンジンルーム内の冷却対象に導風するための構造に関し、自動車の車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンルーム内に配設されたインタークーラ等の冷却対象に、グリル部材に形成された空気取入口から取り込まれた冷却風をボンネットフード(以下、単にフードという)の前部下方に設けたダクト等を介して導く構造が知られているが、このような構造の場合、ダクトの高さ(厚み)の分、フード前部の高さが高くなるという問題があり、この問題に対処するものとして、例えば、特許文献1には、フード前部の内部空間をダクト代わりの導風部として用いることによりフード前部の高さを抑制すると共に、この導風部のフード前部下面(例えばフードのインナパネル)に下向きに設けられた入口までは後方上方に向けて延びるガイド部材により冷却風を導風するように構成したものが開示されている。
しかし、前記特許文献1に記載の構成の場合、グリル部材及びガイド部材が車体側に設けられ、ダクトがフード側に設けられているので、ガイド部材の後端部とダクトとの接続部には、振動や寸法誤差対策として上下方向の隙間を十分に設けなければならず、その結果、この隙間の分はボンネットを低くすることができない。また、冷却風漏れを防止するために可撓性を有する例えば蛇腹状のシール部材を設けなければならず、導風時の流体抵抗が増加するという問題がある。
これらの問題に対処するものとして、例えば、特許文献2には、前記ガイド部材の後部上端を前記フードの下面に設けられた導風部入口に下方から挿入することにより、前記上下方向の隙間が生じない構造とし、また、これによりシール部材を不要としたものが開示されている。
【0003】
【特許文献1】実開平2−109722号公報
【特許文献2】特開平10−67340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献2に記載のものにおいては、前記ガイド部材の後端部上端が、前記フードの下面に設けられた導風部入口に下方から挿入され、フード下面から上面側に突出することとなるので、ガイド部材の後部上端とフードの上面(例えばフードのアウタパネル)との間隔が狭くなる。したがって、一定量の風量を得ようとすると、結果的には、フード上面を高くしなければならない。
【0005】
そこで、本発明は、車体前部のエンジンルームの前方に配設されたグリル部材の空気取入口から取り入れられた冷却風を、グリル部材の後方に設けられたガイド部材を介して、フードの内部に設けられた導風部の入口に導くものにおいて、フードの高さを低く抑えることができる自動車の冷却風導風構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0007】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、車体前部のエンジンルームの前方に配設されたグリル部材の空気取入口から取り入れられた冷却風を、前記グリル部材の後方に設けられたガイド部材を介して、前記エンジンルームを開閉するフードの内部に設けられた導風部の前記フードの前端部に下向きに設けられた入口に導くように構成された自動車の冷却風導風構造であって、前記グリル部材が前記フードの前端部下方で該フードに取り付けられていると共に、前記ガイド部材が、前記グリル部材の空気取入口と前記導風部入口とを連続的に接続するように前記フード側に取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記グリル部材の下縁部には、後方上方に向けて延びる導風面が設けられており、前記ガイド部材の前端部は、前記グリル部材の導風面の後端部に接触した状態で上下に重ね合わされていることを特徴とする。
【0009】
そして、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の発明において、前記導風面は後方上方に向けて延びていることを特徴とする。
【0010】
そして、請求項4に記載の発明は、前記請求項2または請求項3に記載の発明において、前記ガイド部材の後部の上端縁は、前記導風部の入口の後方周辺部に沿った形状とされていることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項5に記載の発明は、前記請求項2から請求項4に記載の発明において、前記ガイド部材の後部の上端縁には、前記導風部の入口の後方周辺部に向き合うように延びるフランジ部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本願の請求項6に記載の発明は、前記請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明において、前記導風部は、前記フードのインナパネルと、前端部から後方上方に向けて緩やかに高くなる曲面を有するパネル部材とで形成されていることを特徴とする。
【0013】
さらに、請求項7に記載の発明は、前記請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明において、前記フードのインナパネルの前縁部には、前記グリル部材を取り付けるための下方へ折れ曲がるフランジ部が設けられていると共に、該フランジ部は、前記グリル部材の上縁部によって外面側から覆われていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に記載の発明は、前記請求項1から請求項7のいずれかに記載の発明において、冷却対象は、エンジン上方に配設されたインタークーラであることを特徴とする。
【0015】
そして、請求項9に記載の発明は、前記請求項1から請求項7のいずれかに記載の発明において、冷却対象は、前記エンジンルームの後壁を形成するダッシュパネルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
次に、本発明の効果について説明する。
【0017】
まず、請求項1に記載の発明によれば、前記グリル部材が前記フードの前端部下方で該フードに取り付けられていると共に、前記ガイド部材が、前記グリル部材の空気取入口と前記導風部入口とを連続的に接続するように前記フード側に取り付けられているから、これらが実質的に一体となる。したがって、ガイド部材と前記導風部入口との間に振動や寸法誤差対策としての十分な広さの隙間を設ける必要がなくなり、その結果、隙間を設ける場合よりも、フードの高さを低く抑えることができる。また、隙間を塞ぐためのシール部材が不要となるので、導風時の流体抵抗が低減される。したがって、シール部材が必要な場合よりも、導風部の断面積を小さくすることができ、これによってもフード高さを低く抑えることができるようになる。
【0018】
ところで、例えば、前記グリル部材とガイド部材とを一体とできれば、これらをフードに一度で取り付けることができるが、この場合、形状が複雑となるため、樹脂等により型を用いて製造するのは実質的に困難である。したがって、別部材とすることとなるが、この場合、これらの間のシール性と組付け性とを容易に満足可能な構造が望まれる。
【0019】
その場合に、請求項2に記載の発明によれば、前記グリル部材の下縁部には、後方に向けて延びる導風面が設けられており、前記ガイド部材の前端部は、前記グリル部材の導風面の後端部に接触した状態で上下に重ね合わされているから、フードにグリル部材及びガイド部材を取り付けるだけで、容易に良好なシール性が確保される。したがって、組付け性も改善されると共に、グリル部材とガイド部材との間にシール部材等を設ける必要もなくなる。
【0020】
そして、請求項3に記載の発明によれば、前記導風面は後方上方に向けて延びているから、グリル部材とガイド部材とで冷却風のガイドを分担し、スムーズに導風できる。
【0021】
そして、請求項4に記載の発明によれば、前記ガイド部材の後部の上端縁は、前記導風部の入口の後方周辺部に沿った形状とされているから、ガイド部材によって導かれた冷却風が、スムーズにフード内部の導風部に流入することとなる。したがって、流体抵抗が少なくなり、導風部入口の開口面積を小さくすることができ、また、その結果、フードの剛性を向上させることができる。
【0022】
さらに、請求項5に記載の発明によれば、前記ガイド部材の後部の上端縁には、前記導風部の入口の後方周辺部に向き合うように延びるフランジ部が設けられているから、ガイド部材が補強され、その剛性が向上する。また、フードの導風部入口の後方周辺部とガイド部材のフランジ部とが面的に対向することとなり、導風部入口とガイド部材とのシール性が向上することとなる。
【0023】
また、請求項6に記載の発明によれば、前記導風部は、前記フードのインナパネルと、前端部から後方上方に向けて緩やかに高くなる曲面を有するパネル部材とで形成されているから、フードを通常構成するインナパネルやアウタパネル等のパネル部材を用いて導風部を構成することができると共に、導風部内に導かれた冷却風が後方に滑らかに流れることとなる。
【0024】
さらに、請求項7に記載の発明によれば、前記フードのインナパネルの前縁部には、前記グリル部材を取り付けるための下方へ折れ曲がるフランジ部が設けられていると共に、該フランジ部は、前記グリル部材の上縁部によって外面側から覆われているから、見栄えを損なうことなく、フード前部の剛性を向上させることができる。
【0025】
そして、請求項8に記載の発明によれば、前述のようにフード高を低く抑えながら、インタクーラを効果的に冷却することができる。
【0026】
また、請求項9に記載の発明によれば、前述のようにフード高を低く抑えながら、ダッシュパネルを効果的に冷却することができるようになり、その結果、車室にエンジンや排気系等の熱気が伝達するのが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0028】
図1、図2に示すように、この実施の形態に係る自動車1の前部には、ボンネットフード2(以下、単にフード2という)により開閉されると共に、ダッシュパネル3によって車室4と仕切られたエンジンルーム5が設けられ、エンジン6が配設されている。
【0029】
このエンジン6は、気筒列方向が車幅方向とされた横置きタイプのエンジンであり、車両前方側に吸気管7が接続され、車両後方側に排気管8が接続されている。排気管8には、吸気を圧縮するターボチャージャ9が備えられていると共に、該ターボチャージャ9で圧縮されて温度上昇した吸気を冷却するインタークーラ10がエンジン6の上部に図示しない手段により固定されている。また、エンジン6の前方には、ラジエータ11が、車体を構成する枠状のシュラウドパネル12に固設されていると共に、エンジン6の周囲には、図示しないが、エンジン補機類や変速機が配設されている。なお、エンジン6、吸気管7、排気管8は、図2では本来断面が現れるが、便宜上、仮想線で輪郭のみを示している。
【0030】
前記フード2の前端部下方には、空気取入口13a,13aが形成されたフロントグリル13が取り付けられている。また、このフロントグリル13の下部とフロントバンパ14の上部との間及びフロントバンパ14の下部には、車幅方向に長い空気取入口15,14aがそれぞれ設けられている。
【0031】
ここで、本実施の形態においては、前記空気取入口15,14aから取り入られた冷却風はエンジンルーム5内にそのまま流れ込むように構成される一方、フロントグリル13の空気取入口13a,13aから取り入れられた冷却風は専用の通路により前記インタークーラ10に導かれるように構成されており、以下、この空気取入口13a,13aから取り入れられた冷却風を前記インタクーラ10へ導くための構造について説明する。
【0032】
まず、その概要について説明すると、この冷却風導風構造は、図2、図3に示すように、フロントグリル13の空気取入口13a,13a(図1参照)から取り入れられた冷却風を、該グリル13の後方に設けられたガイド部材20と、フード2の前部に設けられ、該フード2の下面に入口30a,30a及び出口30b,30bを有する導風部30と、該導風部30の後端に接続されたエアダクト40とを介してインタクーラ10へ導くように構成されている。
【0033】
まず、前記導風部30を形成するフード2の構造について説明しておくと、該フード2は、図2に示すように、該フード2の内面を構成するインナパネル51と(図3、図4参照)、該インナパネル51に外側から接合され、フード2の外面を構成するアウタパネル52とを有し、中空体を構成している。アウタパネル52は、前端部から後方上方に向けて緩やかに高くなる曲面を有している。
【0034】
また、図1、図4に示すように、インナパネル51及びアウタパネル52の前部には、前記フロントグリル13が嵌め込まれる凹部51a,52aがそれぞれ設けられている。また、インナパネル51の凹部51aの縁部には、フランジ51bが備えられていると共に、両端部には前記グリル13を固定するための取付部51c,51cが設けられており、このフランジ51b及び取付部51c,51cにファスナを用いて該グリル13が固定される。
【0035】
図3、図4に示すように、インナパネル51の前部上面車幅方向中央には、フード2を車体側に係脱可能にロックするためのロック機構16のストライカ17の取付用補強パネル53が接合されている。また、インナパネル51前部の車幅方向中央には、前記ストライカ17をインナパネル51の下方に突出させるための長孔51dが設けられている。
【0036】
また、インナパネル51には、この長孔51dの左右において、前記導風部30の入口(開口)30a,30aが設けられていると共に、これらの入口30a,30aの後方には導風部30の出口(開口)30b,30bが設けられている。これらの入口30a,30a、及び出口30b,30bは、いずれも車幅方向に長い形状とされている。
【0037】
また、これらの入口30a,30a及び出口30b,30bの上方には、これらの入口30a,30a及び出口30b,30bを囲んで蓋状に覆った状態で中間パネル54が配設され、図5に示すように、その周縁部に設けられたフランジ54aがインナパネル51の上面に固着されている。また、この中間パネル54は、図5に示すように、前端側が急角度で立ち上がり、後側が傾斜が緩くなる曲面に形成されており、アウタパネル52に沿うように延びている。
【0038】
次に、エアダクト40について説明すると、このエアダクト40は、図6に示すように、扁平な筒状とされていると共に、図3に示すように、前記導風部30の2つの出口30b,30bに対応して入口通路40a,40aを2つ有し、フード2のインナパネル51に複数のボルト61,61及びファスナ62,62を用いて固定されている。また、下面には、インタークーラ10の平面視略方形の冷却風取入口10aに対応する冷却風出口(開口)40bが形成されている。この出口40bの周辺部には、図2にも併せて示すように、前記インタークーラ10のカバー10bとの間をシールする蛇腹状のベロース41が取り付けられている。
【0039】
次に、フロントグリル13について説明すると、このグリル13は、図1に示すように、車幅方向に延びる上縁部71と、該上縁部71の両端から下方に延びる左右の縁部72,73と、該左右の縁部72,73の下端間で車幅方向に延び、後方上方ほど高くなる傾斜面部74a(図5参照)が備えられた下縁部74と、車幅方向中央に配置されたエンブレム75とを有し、正面視、略横長の長方形状とされ、図3に示すように、前記インナパネル51のグリル取付用フランジ51b及び取付部51c,51cにファスナ63,63を用いて固定されている。
【0040】
図5に示すように、上縁部71の略水平な内壁71aには、上方に突出する縦壁71bが立設されていると共に、該縦壁71bには前後貫通孔71hが設けられており、この貫通孔71hにボルト64の頭部が挿通されて該縦壁71bに溶着されている。なお、この貫通孔71hはボルト64の頭部が挿通可能なように上部がボルト64の頭部よりも大径とされている。そして、このボルト64が、前記インナパネル51の前端縁に沿って設けられた下向きのフランジ51b(図4参照)の取付孔51hに挿通されてナット65と螺合されることにより、この縦壁71bとフランジ51bとが締結されている。ここで、フロントグリル13の上縁部71の前壁71cの幅(上下方向の長さ)は、インナパネル51のフランジ51bの幅よりも大きくされて、該フランジ51bが上縁部71の前壁71cにより外面側から覆われて外部から見えないようになっている。
【0041】
次に、ガイド部材20について説明すると、このガイド部材20は、図3、図6に示すように、フロントグリル13とほぼ同じ幅(車幅方向)を有し、該グリル13の後方で、ファスナ66…66を用いてインナパネル51の前部に固定されている。また、図3、図5に示すように、このガイド部材20は、前記フロントグリル13の下縁部74の後端部と前記導風部30の入口30a,30aとを連続的かつ滑らかに接続する傾斜面でなるガイド面部21を有している。
【0042】
また、ガイド部材20には、図3に示すように、車幅方向中間部に前方に凹む前方凹入部22が設けられて、前記導風部30の入口30a,30aの後端、及び前記ガイド面部21における前記前方凹入部22の両側の部分の後端が、ロック機構16の前端よりも後方に位置しており、この前方凹入部22の内側に前記ロック機構16が配置されている。
【0043】
また、ガイド部材20の前縁部には、図5に示すように、段差部23が設けられていると共に、該段差部23には、前記フロントグリル13の下縁部74の後端部が上方から重ねられており、フロントグリル13の下縁部74の傾斜面部74aの上面とガイド部材20のガイド面部21の上面とが、面一に連続している。
【0044】
また、図3、図5に示すように、フロントグリル13の下縁部74の後端部下面及びガイド部材20のガイド面部21の前端部下面にはそれぞれ、リブ24,25で補強されたフランジ26,27が設けられており、両フランジ26,27がボルト67、ナット68により締結されている。なお、この部位で両者を締結するのは、風圧により仕切部が撓むのを防止することを目的としている。
【0045】
また、ガイド面部21の上端縁は、図3、図5に示すように、前記導風部30の入口30a,30aの後方周辺部51e,51e(インナパネル51)に沿った形状とされていると共に、該上端縁には、入口30a,30aの後端縁に沿って延びるフランジ部91,91が設けられている。このフランジ部91,91の上面には、インナパネル51の後方周辺部51e,51eとの間をシールするウレタンシール材92,92が貼り付けられている。なお、フランジ部91,91がインナパネル51の下面に圧接されるように構成すれば、シール性が十分に確保されるので、ウレタンシール材92は必須ではない。
【0046】
次に本実施の形態の作用について説明する。
【0047】
すなわち、前記フロントグリル13の空気取入口13a,13aから冷却風(エンブレムの貫通孔から流入した冷却風を含む)が取り入れられると、この冷却風は、図1、図3に示すように、ガイド部材20、フード2の導風部20、及びダクト40を順次通過してインタークーラ10に導かれ、これにより、該インタークーラ10が冷却されることとなる。
【0048】
その場合に、本実施の形態においては、前記フロントグリル13が前記フード2の前端部下方で該フード2に取り付けられていると共に、前記ガイド部材20が、前記フロントグリル13の空気取入口13a,13aと前記導風部30の入口30a,30aとを連続的に接続するように前記フード2側に取り付けられているから、これらが実質的に一体となる。したがって、ガイド部材20と前記導風部30の入口30a,30aとの間に振動や寸法誤差対策としての隙間を設ける必要がなくなり、その結果、隙間を設ける場合よりも、フード2の高さを低く抑制することができる。また、隙間を塞ぐためのシール部材が不要となるので、導風時の流体抵抗を低減でき、その結果、導風部の断面積を小さくすることができ、これによってもフード2の高さを低く抑えることができるようになる。
【0049】
また、前記フロントグリル13の下縁部74には、後方上方に向けて延びる傾斜面部74aが設けられており、前記ガイド部材20の前端部は、前記フロントグリル13の傾斜面部74aの後端部に接触した状態で上下に重ね合わされているから、フード2にフロントグリル13及びガイド部材20を取り付けるだけで、容易に良好なシール性が確保される。したがって、組付け性も改善されると共に、フロントグリル13とガイド部材20との間にシール部材等を設ける必要もなくなる。
【0050】
そして、前記ガイド部材20の傾斜面の上端縁は、前記導風部30の入口30a,30aの後方周辺部51e,51eに沿った形状とされているから、ガイド部材20によって導かれた冷却風が、スムーズにフード2内部の導風部30に流入することとなる。したがって、流体抵抗が少なくなり、導風部30の入口開口30a,30aの開口面積を小さくすることができ、また、その結果、フード2の剛性を向上させることができる。
【0051】
さらに、前記ガイド部材20のガイド面部21の上端縁には、前記導風部30の入口30a,30aの後方周辺部51e,51eに向き合うように延びるフランジ部91,91が設けられているから、ガイド部材20が補強され、その剛性が向上する。また、フード2の導風部30の入口30a,30aの後方周辺部51e,51eとガイド部材20のフランジ部91,91とが面的に対向することとなり、導風部30の入口30a,30aとガイド部材20とのシール性が向上することとなる。
【0052】
また、前記導風部30は、前記フード2のインナパネル51と、前端部から後方上方に向けて緩やかに高くなる曲面を有する中間パネル53(アウタパネル)とで形成されているから、導風部30内に導かれた冷却風が後方に滑らかに流れることとなる。なお、本実施の形態においては、中間パネル53を設けたが、インナパネルの形状を工夫することにより、中間パネルを不要とすれば、新たなパネルを追加することなく導風部を構成することができる。
【0053】
さらに、前記フード2のインナパネル51の前縁部には、前記フロントグリル13を取り付けるための下方へ折れ曲がるフランジ部51bが設けられていると共に、該フランジ部51bは、前記フロントグリル13の上縁部71によって外面側から覆われているから、見栄えを損なうことなく、フード2前部の剛性を向上させることができる。
【0054】
ここで、特許請求の範囲に記載の構成要素と実施の形態の構成要素との対応について説明しておく。なお、後掲の符号の説明等により対応が明らかであるものについては適宜省略する。すなわち、特許請求の範囲の請求項1におけるグリル部材はフロントグリル13に対応し、グリル部材の空気取入口は取入口13a,13aに対応し、導風部は導風部30に対応し、導風部の入口は入口開口30a,30aに対応する。また、請求項2及び請求項3におけるグリル部材の下縁部は下縁部74に対応し、下縁部に設けられた後方上方に向けて延びる導風面は傾斜面部74aに対応する。また、請求項4における後方周辺部は後方周辺部51e,51eに対応する。また、請求項5における導風部の入口の後方周辺部に向き合うように延びるフランジ部はフランジ部91,91に対応する。また、請求項6におけるインナパネルはインナパネル51に対応し、パネル部材は中間パネル54に対応する。なお、中間パネルを設けない場合は、アウタパネルがパネル部材に相当する。また、請求項7における下方へ折れ曲がるフランジ部は、インナパネル51のフランジ部51bに対応し、グリル部材の上縁部は、フロントグリル13の上縁部71に対応する。
【0055】
なお、前記実施の形態においては、インタークーラ10を冷却する場合について説明したが、図7に示すように、ダクト40′を後方に延長して、エンジンルーム5の後壁を形成するダッシュパネル3を冷却するようにしてもよく、これによれば、前述のようにフード2の高さを低く抑えながら、ダッシュパネル3を効果的に冷却することができるようになり、その結果、車室4にエンジン6や排気管8,ターボチャージャ9等の熱気が伝達するのが防止される。また、インタークーラ10やダッシュパネル3以外にも、エンジンルーム5内に配設されている前述した機器類等の冷却にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、車体前部のエンジンルームの前方に配設されたグリル部材の空気取入口から取り入れられた冷却風を、前記グリル部材の後方に設けられたガイド部材を介して、前記エンジンルームを開閉するフードの内部に設けられた導風部の前記フードの前端部に下向きに設けられた入口に導くように構成された自動車に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動車の前部の斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】フードの下面図である。
【図4】フード前部の一部破断平面図である。
【図5】図2のフード前部部分の拡大図である(なお、車体側のものは省略している)。
【図6】図1の要部拡大一部破断図である。
【図7】他の例に係る図1相当の図である。
【符号の説明】
【0058】
1 自動車
2 フード
3 ダッシュパネル
5 エンジンルーム
10 インタークーラ
13 フロントグリル(グリル部材)
13a,13a 空気取入口
20 ガイド部材
30 導風部
30a,30a 導風部の入口(導風部の前記フードの前端部に下向きに設けられた入口)
51 インナパネル
51b フランジ部(下方へ折れ曲がるフランジ部)
51e 後方周辺部
52 アウタパネル
71 フロントグリルの上縁部(グリル部材の上縁部)
74 フロントグリルの下縁部(グリル部材の下縁部)
74a フロントグリルの傾斜面部(グリル部材の空気取入口の下縁部に設けられた後方に向けて延びる傾斜面)
91 フランジ部(導風部の入口の後方周辺部に向き合うように延びるフランジ部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部のエンジンルームの前方に配設されたグリル部材の空気取入口から取り入れられた冷却風を、前記グリル部材の後方に設けられたガイド部材を介して、前記エンジンルームを開閉するフードの内部に設けられた導風部の前記フードの前端部に下向きに設けられた入口に導くように構成された自動車の冷却風導風構造であって、
前記グリル部材が前記フードの前端部下方で該フードに取り付けられていると共に、
前記ガイド部材が、前記グリル部材の空気取入口と前記導風部入口とを連続的に接続するように前記フード側に取り付けられていることを特徴とする自動車の冷却風導風構造。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車の冷却風導風構造であって、
前記グリル部材の空気取入口の下縁部には、後方に向けて延びる導風面が設けられており、
前記ガイド部材の前端部は、前記グリル部材の導風面の後端部に接触した状態で上下に重ね合わされていることを特徴とする自動車の冷却風導風構造。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車の冷却風導風構造であって、
前記導風面は後方上方に向けて延びていることを特徴とする自動車の冷却風導風構造。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の自動車の冷却風導風構造であって、
前記ガイド部材の後部の上端縁は、前記導風部の入口の後方周辺部に沿った形状とされていることを特徴とする自動車の冷却風導風構造。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載の自動車の冷却風導風構造であって、
前記ガイド部材の後部の上端縁には、前記導風部の入口の後方周辺部に向き合うように延びるフランジ部が設けられていることを特徴とする自動車の冷却風導風構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の自動車の冷却風導風構造であって、
前記導風部は、前記フードのインナパネルと、前端部から後方上方に向けて緩やかに高くなる曲面を有するパネル部材とで形成されていることを特徴とする自動車の冷却風導風構造。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の自動車の冷却風導風構造であって、
前記フードのインナパネルの前縁部には、下方へ折れ曲がるフランジ部が設けられていると共に、
該フランジ部は、前記グリル部材の上縁部によって外面側から覆われていることを特徴とする自動車の冷却風導風構造。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の自動車の冷却風導風構造であって、
フードの導風部は、エンジン上方に配設されたインタークーラに冷却風を導くように設けられていることを特徴とする自動車の冷却風導風構造。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の自動車の冷却風導風構造であって、
フードの導風部は、前記エンジンルームの後壁を形成するダッシュパネルに冷却風を導くように設けられていることを特徴とする自動車の冷却風導風構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−273101(P2006−273101A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94965(P2005−94965)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】