説明

自動車用シール材の型成形部および同成形方法

【課題】 外観上または機能上の観点から、型成形部の所定部分にシボを正確に形成した自動車用シール材の型成形部、およびその成形方法を提供する。
【解決手段】 外表面の一方側に細かな凹凸であるシボ11を有し、他方側にシボ11と同一または類似の副シボ12を有するものであって、シボ11は、金型30のキャビティ面31aの一方側に形成したシボ模様32によって形成され、副シボ12は、キャビティ31内における成形材料の流動性を均一にすべく、キャビティ面31aの他方側に形成された副シボ模様33によって形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型のキャビティ面に形成したシボ模様によって、外表面に正確にシボを形成した自動車用シール材の型成形部、およびその成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1および図2を参照して説明する。自動車のウエザーストリップやグラスランなどのシール材において、押出成形部20の端部を金型40に挿入して端末成形を行ったり、複数の押出成形部20の端部を金型40に挿入して、これら押出成形部20を接続する金型成形において、型成形部10の外観表面に、押出成形部20の細かな凹凸状の外観表面と一体感を持たせるために、金型40のキャビティ面41aに、細かな凹凸状のシボ模様42を形成している。
【0003】
このシボ模様42は、キャビティ面41aのうち、型成形部10の外観表面を形成する部分のみに形成されており、型成形部10の内表面を形成する部分は通常の平滑面とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたキャビティ面41aのうち、型成形部10の外観表面を形成する部分のみにシボ模様42を形成した金型40のキャビティ41に成形材料を射出圧入すると、シボ模様42を形成している部分と平滑面である部分とにおける流動抵抗の違いに起因して、当該キャビティ41において成形材料の流動性に差異が生じる。
【0005】
そのため、シボ模様42の転写性が阻害され、型成形部10の外観表面にシボが正確に形成されず、その結果、当該外観表面の光沢が型成形部10の範囲で不均一となる。または、型成形部10に接続する押出成形部20のそれと不均一となり、外観上好ましくないといった問題が発生する。
【0006】
また、グラスランの場合においては、ドアガラス4に摺接する部分であるリップ部の外表面に、当該ドアガラス4との摺動性を高めるために塗装を施しているが、この塗装を施す代わりにシボを形成することが考えられる。その場合も、2本の押出成形部20を接続する型成形部10のリップ部の外表面にも、シボを正確に形成する必要がある。
【0007】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、外観上または機能上の観点から、型成形部の所定部分にシボを正確に形成した自動車用シール材の型成形部、およびその成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
図1および図3乃至図5を参照して説明する。請求項1に記載の自動車用シール部材の型成形部10は、外表面の一方側に細かな凹凸であるシボ11を有し、それに対向する他方側に前記シボ11と同一または類似の副シボ12を有するものであって、前記シボ11は、金型30のキャビティ面31aの一方側に形成したシボ模様32によって形成され、前記副シボ12は、キャビティ31内における成形材料の流動性を均一にすべく、前記キャビティ面31aの他方側に形成された副シボ模様33によって形成されたものであることを特徴とするものである。
【0009】
なお、シボ11と副シボ12とは、形状が同一のものに限定されず、請求項4に記載の成形方法において、同程度の流動抵抗を成形材料に与えることのできる副シボ模様33によって形成されたものをも含み、必ずしも形状が同一もしくは類似である必要はない。
【0010】
なお、シボの形状とはシボ処理面に対して垂直に見た即ち平面の模様のパターン並びにシボ処理面に対して面直に見た、即ち断面方向の模様のパターンや深さを含めたものをいう。
【0011】
請求項2に記載の自動車用シール材の型成形部10は、請求項1に記載の発明において、シール材が、断面略U字状の取付基部2aと装飾リップ2bと中空シール部2cを有するウエザーストリップ2であって、型成形部10に形成されるシボ11は、前記取付基部2aおよび装飾リップ2bの外観表面に、押出成形部20の外観表面と一体感を持たせるために形成されたものであることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の自動車用シール材の型成形部10は、請求項1に記載の発明において、シール材が、断面U字状の組付部3aとドアガラス4に弾接するリップ部3bを有するグラスラン3であって、型成形部10に形成されるシボ11は、前記リップ部3bの外表面に、前記ドアガラス4との摺動性を高めるために形成されたものであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載の自動車用シール材の型成形部の成形方法は、自動車用シール材の型成形部10を、その表面の一部に細かな凹凸であるシボ11を形成するために、キャビティ面31aの一部にシボ模様32を形成した金型を使用して成形する成形方法において、前記型成形部10を、前記キャビティ面31aの前記シボ模様32に対向する部分に、キャビティ31内における成形材料の流動性を均一にすべく、前記シボ模様32と同一または類似の副シボ模様33を形成した金型30によって成形してなることを特徴とするものである。
【0014】
なお、シボ模様32と副シボ模様33とは、形状が同一もしくは似ているものの他に、シボ模様32と同程度の流動抵抗を成形材料に与える形状のものも含む。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の自動車用シール材の型成形部10は、型成形部10の外表面の他方側に、一方側に形成したシボ11と同一または類似の副シボ12を形成したので、キャビティ31内において成形材料が一方から大きな抵抗を受けることなく均一に流動する。従って、シボ11をシボ模様32と同一形状に正確に形成することができる。
【0016】
請求項2に記載の自動車用シール材の型成形部10は、ウエザーストリップ2の取付基部2aおよび装飾リップ2bの外表面に正確にシボ11を形成することができるので、当該型成形部10の外観表面に、細かな凹凸を有する押出成形部20の外観表面と同等の光沢を均一に与えて一体感を現出させることができる。これにより、ウエザーストリップ2全体の外観性を高めることができる。
【0017】
請求項3に記載の自動車用シール材の型成形部10は、グラスラン3のリップ部3bの外表面に正確にシボ11を形成することができるので、ドアガラス4との摺動性を高めることができる。これによって、従来、摺動性を高めるために施していた塗装を省くことができる。なお、シボ11は塗装のように剥がれないので、長期間にわたって優れた摺動性を発揮する。また、この場合も、押出成形部20の外観表面と一体感を現出する。
【0018】
請求項4に記載の自動車用シール材の型成形部の成形方法は、型成形部10を、キャビティ面31aのシボ模様32に対向する部分に、前記シボ模様32と同一または類似の副シボ模様33を形成した金型30によって成形するので、キャビティ31内における成形材料の流動性を均一にすることができる。これにより、型成形部10に、シボ模様32を確実に転写させて正確な形状のシボ11を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る自動車用シール材の型成形部10の第一実施形態を、図1、図3および図4に示す。この型成形部10は、本発明に係る成形方法によって成形したものである。
【0020】
このシール材は、自動車ボディのドア開口縁に沿って取付けられるウエザーストリップ2であり、ボディフランジに組付く断面略U字状の取付基部2a、内装材に当接する装飾リップ2b、およびドアパネルに弾接する中空シール部2cを備えている。
【0021】
この型成形部10の取付基部2aおよび装飾リップ2bの外観表面には、連続してシボ11を形成している。このシボ11は、金型30のキャビティ面31aに形成したシボ模様32によって形成されたものである。また、取付基部2aおよび装飾リップ2bの反対側の表面には副シボ12を形成している。この副シボ12は、キャビティ面31aのシボ模様32と対向する部分に形成した副シボ模様33によって形成されたものである。
【0022】
この型成形部10は、シボ模様32と副シボ模様33を有する金型30によって成形されているので、キャビティ31内に射出圧入された成形材料は、当該キャビティ31内でキャビティ面31aから同程度の摩擦抵抗を受け、全体が均一な速度で流動する。従って、シボ模様32が確実に転写され、取付基部2aおよび装飾リップ2bの外観表面には正確な形状のシボ11が形成される。その結果、当該型成形部10に連続する押出成形部20の外観表面と一体感のある外観表面を形成することができ、外観の見栄えを高めることができる。
【0023】
なお、シボ模様32と副シボ模様33とは、シボ形状が同一もしくは類似であるシボの他に、シボ模様32と同程度の流動抵抗を成形材料に与える形状のものでも良い。シボ模様32と副シボ33の流動抵抗を同程度に与えるにはシボ形状やシボ処理深さが同一のものが好ましいが、図3に示す金型30のように、外観表面側のキャビティ面31aとこれに対向する他方側のキャビティ面31cとの間に、外観表面側のキャビティ面31aの装飾リップ2bを形成する部分31bの長さLbとこれに対向する他方側のキャビティ面31cの製品断面に対応する長さLcとの間にLb>Lcの関係がある場合には、副シボ33のシボ処理深さをシボ模様32のシボ処理深さよりも浅くすることで、装飾リップ2b全体の流動を均一にすることができる。またゲートの位置や数、成形材料の流動特性によって流れ方に変化が生じた場合には、シボ模様32のシボ処理深さよりも副シボ33のシボ処理深さを深くすることも発生する。シボ模様32のシボ処理深さは皮シボで5〜130μm、梨地シボで5〜40μmの範囲で加工される。
【0024】
シボ模様32と同程度の流動抵抗を成形材料に与える手段の他の一例としてショットブラストによる表面処理が挙げられる。ショットブラストは工作物に砥粒を吹き付けて表面を加工する方法の総称である。ショットブラストによる表面処理の調整範囲は、加工装置や加工母材、砥粒の種類によって変わってくる。一例として、株式会社長門メタリコン製作所における実績では表面粗さRa(中心線表面粗さ)=20μm程度の表面処理が可能である。
【0025】
即ちシボ模様32の表面粗さRaが前述した表面の粗さRaと同等であれば、シボ模様32と同程度の流動抵抗を与える目的で副シボ33にショットブラストによる表面処理で代用する場合もある。
【0026】
なお、成形材料の注入口は、ウエザーストリップ2にはY字コーナーやT字コーナーなどの左右略対象部分が多いため、長手方向では中央部分とし、断面方向では図3に示すL,M,Nの3箇所とするのが好ましい。
【0027】
本発明に係る自動車用シール部材の型成形部10の第二実施形態を、図1および図5に示す。これも、本発明に係る成形方法によって成形されたものである。このシール材は、断面U字状の組付部3aとドアガラス4に弾接する二つのリップ部3bを有するグラスラン3である。このグラスラン3の型成形部10は、直線状の二つの押出成形部20を連結するもので、そのリップ部3bの外表面にはシボ11を形成し、その反対側の表面には副シボ12を形成している。
【0028】
シボ11は、金型30のキャビティ面31aの一方側に形成したシボ模様32によって形成されたものであり、副シボ12は、キャビティ面31aの他方側に形成された副シボ模様33によって形成されたものである。キャビティ面31aの対向する面にシボ模様32と副シボ模様33を形成したことによって、キャビティ31内に射出圧入された成形材料はその全体が均一に流動する。従って、リップ部3bの外表面にはシボ11が正確に形成される。
【0029】
このシボ11は、ドアガラス4との摩擦抵抗を小さくして摺動性を高めるために形成されたものであり、よって、これまで摺動性を高めるために施していた塗装工程を省略することができ、製造工程の簡素化を図ることができる。また、このシボ11は塗装のように剥がれないので、長期にわたって高い摺動性を維持することができる。
【0030】
なお、本発明において使用される成形材料としては、例えば、TPE(熱可塑性エラストマー)やゴムなどが好ましいが、特に限定されない。TPEを使用した場合、色や艶などの問題が顕著に現れ易いが、本発明によるとそうした問題の発生を効果的に抑えることができ、きわめて有効である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る自動車用シール材の型成形部は、ボディ開口縁に沿って取付けられるウエザーストリップやグラスランへの適用に限定されるものではなく、ドアパネルに取付けられるドアウエザーストリップやルーフに取付けられるルーフウエザーストリップなど、あらゆる種類のシール材への適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】シール材を取付けた自動車を示す側面図である。
【図2】従来例に係る型成形部の成形方法において使用する金型を示す断面図である。
【図3】本発明に係る型成形部の成形方法において使用する金型を示す断面図である。
【図4】本発明に係る型成形部の第一実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明に係る型成形部の第二実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 自動車用シール材
2 ウエザーストリップ
2a 取付基部
2b 装飾リップ
2c 中空シール部
3 グラスラン
3a 組付部
3b リップ部
4 ドアガラス
10 型成形部
11 シボ
12 副シボ
20 押出成形部
30 金型
31 キャビティ
31a キャビティ面(外観表面側の)
31b 外観表面側のキャビティ面中の装飾リップを形成する部分
31c キャビティ面(他方側の)
32 シボ模様
33 副シボ模様
40 金型
41 キャビティ
41a キャビティ面
42 シボ模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面の一方側に細かな凹凸であるシボ(11)を有し,それに対向する他方側に前記シボと同一または類似の副シボ(12)を有する自動車用シール材(1)の型成形部(10)であって、
前記シボは,金型(30)のキャビティ面(31a)の一方側に形成したシボ模様(32)によって形成され、
前記副シボは,キャビティ(31)内における成形材料の流動性を均一にすべく,前記キャビティ面の他方側に形成された副シボ模様(33)によって形成されたものであることを特徴とする自動車用シール材の型成形部。
【請求項2】
シール材(1)が,断面略U字状の取付基部(2a)と装飾リップ(2b)と中空シール部(2c)を有するウエザーストリップ(2)であって、
型成形部(10)に形成されるシボ(11)は,前記取付基部および装飾リップの外観表面に,押出成形部(20)の外観表面と一体感を持たせるために形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の自動車用シール材の型成形部。
【請求項3】
シール材(1)が,断面U字状の組付部(3a)とドアガラス(4)に弾接するリップ部(3b)を有するグラスラン(3)であって、
型成形部(10)に形成されるシボ(11)は,前記リップ部の外表面に,前記ドアガラスとの摺動性を高めるために形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の自動車用シール材の型成形部。
【請求項4】
自動車用シール材(1)の型成形部(10)を,その表面の一部に細かな凹凸であるシボ(11)を形成するために,キャビティ面(31a)の一部にシボ模様(32)を形成した金型を使用して成形する成形方法において、
前記型成形部を,前記キャビティ面の前記シボ模様に対向する部分に,キャビティ(31)内における成形材料の流動性を均一にすべく,前記シボ模様と同一または類似の副シボ模様(33)を形成した金型(30)によって成形してなることを特徴とする自動車用シール材の型成形部の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−203931(P2007−203931A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26546(P2006−26546)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】