説明

自動車用ブレーキシステム

本発明は、車輪ブレーキ回路(I、II)を接続可能なマスタシリンダ(3)、作動力を伝達するプッシュロッド(10)によってブレーキペダル(9)に連結される第1のピストン(11)、マスタシリンダ(3)を作動させる第2のピストン(12)、第1のピストン(11)により作動可能であるとともに第2のピストン(12)との動力伝達接続をとるよう移動し得る第3のピストン(13)を備え、操作者に快適なペダル感覚を与えるペダル行程シミュレータを形成する少なくとも1個の弾性要素(27、28)を伴い、油圧が印加され得る第2のピストン(12)と第3のピストン(13)との間の空間部(21)であって、印加される場合に空間部(21)の加圧により第2及び第3のピストン(12、13)に逆方向の負荷がかかる、空間部(21)を伴い、第3のピストン(13)により範囲を定められるとともに閉止弁(50)によって閉鎖可能であり、必要に応じて第3のピストン(13)の作動方向への移動を阻止する油圧室(17)を伴い、空間部(21)を充填するための高圧に加圧された圧力流体を内部に保持する圧力供給装置(33)を伴い、大気圧下にあるとともに空間部(21)から排出される圧力流体を取り込む第1の圧力流体供給タンク(42)を伴い、圧力供給装置(33)及び第1の圧力流体供給タンク(42)に油圧接続されることにより空間部(21)に導入される圧力を制御し、作動力伝達手段(52、35)を介して作動力により駆動可能な圧力制御弁(34)を伴い、及び空間部(21)内の圧力の電気制御用手段(39、40、34)を伴う、ブレーキシステムに関する。
圧力制御弁が、ペダル踏力応答制御のためのみならず空間部に導入される圧力の電気制御のためにも用いられるよう、本発明は、空間部(21)に導入される圧力の電気制御用手段が圧力制御弁(34)を備えることを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
車輪ブレーキ回路が接続されるマスタシリンダ、
作動力を伝達するプッシュロッドによってブレーキペダルに連結される第1のピストン、
マスタシリンダを作動させる第2のピストン、
第1のピストンにより作動可能であるとともに第2のピストンと動力伝達接続をとるよう移動し得る第3のピストン、
を備え、
快適なペダル感覚を操作者に与えるペダル行程シミュレータを形成する少なくとも1個の弾性要素を伴い、
油圧が印加され得る第2のピストンと第3のピストンとの間の空間部であって、印加される場合、空間部の加圧により第2及び第3のピストンに逆方向の負荷がかかる、空間部を伴い、
第3のピストンにより範囲を定められるとともに閉止弁によって閉鎖可能であり、必要に応じて第3のピストンの作動方向の移動を阻止する油圧室を伴い、
空間部を充填するための高圧に加圧された圧力流体を内部に保持する圧力供給装置を伴い、
大気圧下にあるとともに空間部から流出する圧力流体を取り込む第1の圧力流体供給タンクを伴い、
圧力供給装置及び第1の圧力流体供給タンクに油圧接続されることにより空間部に導入される圧力を制御し、作動力伝達手段を介して作動力により駆動可能な圧力制御弁を伴い、及び
空間部に導入される圧力の電気制御用手段を伴う、
自動車用ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車技術においてブレーキバイワイヤシステムの使用は増加し続けている。これらのブレーキシステムにおけるブレーキは、一方で、操作者の側では一切行動することなく電子信号の命令に基づき「外部的に」作動され得る。これらの電子信号は、例えば横滑り防止装置ESP又は衝突防止装置ACCから出力され得る。他方で、操作者によりブレーキペダルの踏み込みによって要求される制動効果が、例えば電気的車両駆動体を切り換えて発電機として動作させると達成される場合には、ブレーキシステムの作動は完全に、又は部分的に省略され得る。双方の場合において、ブレーキの作動条件は、操作者により指示されるブレーキペダルの踏み込みには従わない。これにより従来のブレーキシステムにおいてはブレーキペダルに反動効果が生じる。ブレーキペダル行程のブレーキペダル踏力に対する従属性を意味するブレーキペダル特性が、上述される反動により妨害される。ブレーキペダル上のこの反動効果は運転者にとって予期しない不快なものであるため、危険な交通状況において運転者が、自身にとって予見不可能なブレーキペダルの反動に苛立ち、ひいてはブレーキペダルをその状況下で適切な程度まで踏み込まない可能性がある。
【0003】
独国特許出願公開第10321721A1号明細書は、以上に記載される種類のブレーキシステムを開示している。当該公開明細書に開示されるブレーキシステムは、とりわけ、いわゆる回生制動動作が実施されるハイブリッド駆動を伴う車両において採用され得る。圧力制御弁は、当該空間部に導入される圧力を制御するために使用されるもので、従来技術のブレーキシステムにおいては、作用の観点から第1のピストンと圧力制御弁の弁部材との間に間置される機械的動力伝達手段によって駆動される。アナログ制御可能なノーマルクローズ(NC)二方/二位置方向制御弁として構成される電磁的に駆動可能なバルブ装置が空間部に導入される圧力の電気制御用手段として提供される。従来技術のブレーキシステムにおいては、「ブレーキバイワイヤ」動作モードにおいて圧力制御弁が上述されるとおり区画室の閉鎖により無効化されるため「バイワイヤ」によるブレーキ圧は電磁的に駆動可能なバルブ装置によってのみ導入され得るが、この場合、必要な圧力流体容積流量を制御するための圧力制御弁の潜在能力が使用されないという事実が不利と考えられる。さらには、従来技術のブレーキシステムにおいては、その動作中に圧力流体が圧力供給装置から車輪ブレーキ回路に流れるという事実が不利と考えられる。車輪ブレーキ回路内の圧力流体には気泡の混入可能性に関して相当に高度な要件が設けられるため、絶対気密の油圧アキュムレータのみが当該技術分野において周知のブレーキシステムにおける使用に適する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の観点から、本発明の目的は、以上に言及される種類のブレーキシステムを提供することであり、ここで圧力制御弁は、ペダル踏力応答制御のためのみならず、空間部に導入される圧力の電気制御のためにも用いられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従えば、本目的は、空間部に導入される圧力の電気制御用手段が圧力制御弁を備えることにより達成される。好ましくは、圧力制御弁はペダル操作可能及び油圧作動可能であるように設計され得る。
【0006】
本発明の有利な改良例において、圧力供給装置、圧力制御弁及び空間部が第1のブレーキブースタ圧力流体回路に配設され、この場合圧力流体はブレーキシステムの動作中、第1のブレーキブースタ圧力流体回路と車輪ブレーキ回路との間で交換されない。これらの提供により、第1のブレーキブースタ圧力流体回路内で発生する可能性のある気泡が車輪ブレーキ回路に混入するリスクが排除されるため、本発明のブレーキシステムの動作の信頼性は大幅に向上する。
【0007】
本発明の目的の別の実施形態において、作動力伝達手段は油圧動力伝達手段として構成される。
【0008】
油圧動力伝達手段は好ましくは第2の制動力ブースタ圧力流体回路に配設され、この場合圧力流体はブレーキシステムの動作中、第2のブレーキブースタ圧力流体回路と第1のブレーキブースタ圧力流体回路と車輪ブレーキ回路との間で交換されない。従って、圧力供給モジュールにおいて、当該技術分野において周知のブレーキシステム、例えば弾性ダイヤフラムがガス容積を油圧容積から分離し、及び車両の耐用期間中は低量のガスがダイヤフラムを通じて拡散するとともに圧力流体中に溶解することを許容し得るガス蓄圧器と比較して低費用の油圧アキュムレータを用いることが可能となる。気泡が油圧系に問題を引き起こすのは常に、気泡の圧縮によって油圧発生シリンダが作動方向におけるその最大移動行程を利用するとともに、結果的に、スレーブシリンダのさらなる油圧加圧がそれ以上不可能となるときである。第1のブレーキブースタ圧力流体回路内に発生シリンダは提供されない。空間部で利用するための圧力流体は油圧アキュムレータ又はポンプにより送出され、その結果任意の大きさの気泡を圧縮するうえで十分な圧力流体容積が利用可能となる。結果的に、ブレーキシステムの機能が第1のブレーキブースタ圧力流体回路において気泡により妨害されず、及び本システムは、高感度の油圧回路を気泡から保護するため特別な方策を必要とするシステムと比べ気泡に対し低感度であるため、動作に対する信頼性がより高い。
【0009】
本発明の目的の別の有利な改良例において、第2のブレーキブースタ圧力流体回路は、上述の区画室に接続される第1の接続ライン、圧力制御弁を作動させる働きをする油圧装置、第2の接続ライン、並びに大気圧下にあるとともに第2の接続ラインが接続され得る第2の圧力流体供給タンクから構成される。このブレーキブースタ圧力流体回路により、第1のピストンによって及ぼされる作動力を圧力制御弁に伝達する油圧動力伝達手段が利用可能となり、この場合圧力制御弁のこの油圧作動により圧力制御弁を第3のピストンの外側に位置決めできる点で特に有利である。この状況は、取り付け空間及びシールの節減になるとともに従来技術のブレーキシステムにおいて圧力供給装置により供給される高圧を第3のピストンに伝えるために要求される技術的複雑性を回避する。
【0010】
さらには、油圧装置が、第1の圧力流体ラインによって区画室に接続される第1の圧力チャンバ、第2の圧力流体ラインによって第2の圧力流体供給タンクに接続され得る第2の圧力チャンバ、及び圧力チャンバを互いに分離するとともに動力が圧力制御弁の弁部材に向け伝達され得る段付きピストンから構成されるとき、特に有利である。第1の圧力流体ラインによって伝達される圧力が段付きピストンに作動方向と逆方向の負荷をかける一方、第2の圧力流体ライン内の圧力は段付きピストンに作動方向の負荷をかける。
【0011】
好ましい実施形態において、第2の圧力チャンバは、より大きい断面の段付きピストンの表面により範囲を定められる一方、第1の圧力チャンバは、段付きピストンの環状表面により範囲を定められる環状チャンバとして構成される。従って、第1及び第2の圧力流体ライン内を同等の圧力が支配する場合、結果として生じる段付きピストンの負荷の作動方向における増大が達成される。
【0012】
ノーマルオープン電磁弁の目的は、その電源停止状態において双方の圧力流体ライン内の圧力が等しいことにある。バルブの閉鎖により第3のピストン及び段付きピストンの双方が適正位置に固定される。
【0013】
本発明のブレーキシステムのさらに有利な実施形態が従属請求項9〜34に示される。
【0014】
主題の本発明は、添付の概略図を参照しながら3つの実施形態に基づき以下に詳細に説明されるであろうとともに、同様の構成部品には同様の参照符号が割り当てられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図面に示されるとおりの本発明のブレーキシステムは本質的に、作動装置1、油圧制御ユニット2を備え、前記作動装置及び制御ユニットがブレーキブースタを形成し、及びブレーキブースタの下流で車輪ブレーキ回路I、IIが接続される圧力チャンバ(図示せず)に接続されるマスタブレーキシリンダ又はタンデムマスタシリンダ3を備え、車輪ブレーキ回路が従来技術のABS/ESP油圧式集合体又は制御可能車輪ブレーキ圧調整モジュール4を介して自動車の車輪ブレーキ5〜8に油圧流体を供給する。電子制御調節ユニット54が車輪ブレーキ圧調整モジュール4と連繋される。タンデムマスタシリンダ3が接続されるハウジング30内に収容される作動装置1は、作動装置1の第1のピストン11に対する作用の観点から作動ロッド10により接続されるブレーキペダル9によって駆動可能である。行程センサ19は、ブレーキペダル9の作動行程及び第1のピストン11の行程を感知するために使用される。しかしながら、ブレーキペダル9の回転角を感知する回転角センサもまた同じ目的で使用され得る。第1のピストン11は第3のピストン13内に配置され、ブレーキペダル9が踏み込まれないとき第1のピストン11を第3のピストン13に当接するまで移動させる圧縮ばね15を収容する圧力チャンバ14の範囲を定める。代替的又は追加的に、ペダルリセットばねがプッシュロッド10又はブレーキペダル9の領域内に提供され得る。その機能が以下に説明されるであろう圧力チャンバ14は、作動装置1の非作動条件下では第2の圧力流体供給タンク18に接続される。第3のピストン13は、タンデムマスタシリンダ3の主ピストンをなす第2のピストン12と協働する。図示される例において、圧力伝達ピストン16が第2のピストン12と第3のピストン13との間に配置される。第3のピストン13と圧力伝達ピストン16との間に空間部21の範囲が定められ、油圧によるその加圧によって第3のピストン13がハウジング20内に提供される制止部22に保持される一方、圧力伝達ピストン16及びひいてはタンデムマスタシリンダの主ピストン12はタンデムマスタシリンダ3内の圧力上昇という意味において作用を受ける。この負荷の結果として生じる伝達ピストン16の移動は第2の行程センサ23を使用して感知される。また、第3のピストン13はハウジング20内に油圧チャンバ17の範囲を定めるが、その機能は同様に以下の本文中で説明される。
【0016】
加えて、閉鎖可能な接続ライン24が上述の圧力チャンバ14を、シミュレータピストン26により範囲が定められるシミュレータチャンバ25に接続することが図1に確認され得る。この配置において、シミュレータピストン26は、シミュレータばね27及びシミュレータばね27と平行に接続される弾性ばね28と協働する。シミュレータチャンバ25、シミュレータピストン26、シミュレータばね27及び弾性ばね28は、ブレーキシステムの作動時に操作者に対し普通のペダル感覚を与えるペダル行程シミュレータを形成し、通常のブレーキペダル特性との対応をとる。これは、短いブレーキペダル行程では抵抗が徐々に増加する一方、ブレーキペダル行程が長くなる場合には抵抗が過剰な割合で増加することを意味する。シミュレータピストン26は、その移動を減衰するため、流れの方向に応答する絞り効果を有するとともに好ましくはピストン29内に配置されるダクト31、32を備える空圧式減衰装置30のピストン29と接続されている。シミュレータチャンバ25と圧力チャンバ14又は第1の圧力流体供給タンク18との間の油圧接続ライン24は、マスタブレーキシリンダ3の作動方向への第3のピストン13の移動により遮断される。
【0017】
上述の油圧制御ユニット2は本質的に、圧力供給装置33、圧力制御弁34、圧力制御弁34のペダル制御作動用油圧装置35並びに圧力制御弁34及び油圧装置35の双方と協働するとともに、ひいては、電磁弁(39、40)に油圧接続されるパイロット制御チャンバ36から構成される。圧力供給装置33は油圧高圧アキュムレータ37及び高圧アキュムレータ37の充電用モータ−ポンプアセンブリ38から構成されるとともに、圧力供給装置33の出力は、一方で圧力制御弁34によって空間部21に、及び他方で、電気的にアナログ制御可能な、好ましくはノーマルクローズ二方/二位置方向制御弁39(増圧弁)によってパイロット制御チャンバ36に接続可能である。モータ−ポンプアセンブリ38は好ましくは、油圧制御ユニットの他の構成部品と分離されるとともに骨伝導を遮断する付属品及び油圧接続が装備される構造ユニットとして設計される。一方で油圧容積取り込み要素41が接続されるパイロット制御チャンバ36は、第2の電気的にアナログ制御可能な、好ましくはノーマルオープン二方/二位置方向制御弁40(減圧バルブ)を介して第1の圧力流体供給タンク42に接続されるとともに、空間部21は圧力制御弁34によってタンク42に接続可能である。この構成において、圧力供給装置33、圧力制御弁34、空間部21及び第1の圧力流体供給タンク42が、車輪ブレーキ回路I、IIから完全に隔離される第1のブレーキブースタ圧力流体回路に配設される。圧力センサ43、44及び45を使用して、圧力供給装置33により供給される圧力、パイロット制御チャンバ36に導入される圧力及び空間部21内を支配する圧力が感知される。
【0018】
加えて図1に見てとれるとおり、油圧装置35は、第1の圧力チャンバ46、第2の圧力チャンバ47及び圧力チャンバ46、47を互いに分離させる段付きピストン48から構成される。第1の圧力チャンバ46は、段付きピストン48の環状表面49により範囲を定められる環状チャンバとして設計される一方、第2の圧力チャンバ47は、より大きい断面の段付きピストン48の表面50により範囲を定められる。第1の圧力チャンバ46は第1の圧力流体ライン51によって上述の区画室17に接続される。第2の圧力チャンバ47は第2の圧力流体ライン52によって圧力チャンバ14に接続されるとともに圧力流体ライン52を介して第2の圧力流体供給タンク18に接続可能である。第1の圧力流体ライン(51)と第2の圧力流体ライン52との間に接続される閉止弁53により第2の圧力流体供給タンク18に対して区画室17及び圧力チャンバ46は遮断可能となり、結果として第3のピストン13の作動方向への移動が阻止される。区画室18、第1の圧力流体ライン51、油圧装置35、閉止弁53、第2の圧力流体ライン52、圧力チャンバ14、接続ライン24、シミュレータチャンバ25並びに第2の圧力流体供給タンク18が第2のブレーキブースタ圧力流体回路を構築し、これは第1のブレーキブースタ圧力流体回路及び2つの車輪ブレーキ回路I、IIから完全に隔離されている。上述の電子制御調節ユニット54と協働するとともに、センサデータを感知し、そのデータを処理し、データを他の制御ユニットと交換し、モータ−ポンプアセンブリ33、圧力制御弁39、40及び車両の停止灯を作動させるために使用される専用の電子制御ユニット55がブレーキブースタに配設される。
【0019】
図2に示されるとおりの本発明のブレーキシステムの第2の実施形態において、図1に関連して記載される圧力チャンバは、第2の実施形態においては参照符号114が割り当てられ、第3のピストン113内で第4のピストン56により範囲を定められる。第4のピストン56は、その内部で第1のピストン111が密閉方式で移動可能に誘導されるもので、第1の圧縮ばね127及び第1の圧縮ばね127と平行に接続される弾性ばね128を収容する。当該ばね127、128は、図1に関連して記載されるペダル行程シミュレータを構成するもので、ここではさらに油圧制御ユニット2内に配置され、この場合圧縮ばね127は第4のピストン56と第1のピストン111との間で圧縮されるとともに2個のピストンの行程差に線形従属する力の成分を伝達する一方、圧縮ばね127と同軸上で半径方向内側に配置される弾性ばね128がブレーキペダル9に作用する作動力の成分を第4のピストン56に伝達し、この成分は行程差に伴い漸進的に増加する。第1のピストン111内に提供されるダクト131、132は、第1のピストン111の移動を空気圧で減衰する働きをし、ダクトは流れの方向に応答する絞り効果を有するとともに第4のピストン56の内部を大気に接続する。図1におけるアナログ制御可能な二方/二位置方向制御弁40の機能は、第2の実施形態においてノーマルクローズ(NC)パイロット弁140及びノーマルオープン(NO)パイロット弁141の並列接続により実現される。他の全ての点において図2に図示されるブレーキシステムの設計は、図1に関連して説明されたブレーキシステムと一致する。
【0020】
図3に図示される第3の実施形態の設計は、図2に従うブレーキシステムの設計と大部分一致する。しかしながら、図2に関して記載される閉止チャンバ57が第4のピストン56の内部と連通しているため、「湿式」の、すなわち圧力流体で満たされたペダル行程シミュレータが実現される。
【0021】
本発明のブレーキシステムの機能モードが以下の本文において図1に関連して詳細に説明されることとなる。
【0022】
第1の動作モードは、純粋な電気モード、いわゆる「ブレーキバイワイヤ」動作モードに相当し、ここではブレーキシステムの全ての構成部品が無損であるとともに適正に機能する。このモードにおいて、アナログ制御可能な二方/二位置方向制御弁39、40が切り換えられることにより空間部の油圧が上昇するため、圧力供給装置33により利用可能となる圧力がパイロット制御チャンバ36に伝えられる。パイロット制御チャンバ36に導入される圧力により段付きピストン48は図1に示される初期位置に維持されるとともに圧力制御弁34の弁部材が図面左に向かって移動するため、空間部21には高圧が印加される。圧力の作用によって第3のピストン13が制止部22に維持されるとともに伝達ピストン16が左に移動することにより、マスタブレーキシリンダ3が作動する。アナログ制御可能な二方/二位置方向制御弁39が再び閉鎖されることにより圧力が維持される。
【0023】
減圧については、アナログ制御可能な二方/二位置方向制御弁40が開放される一方、二方/二位置方向制御弁39が閉鎖されたまま保たれる。これが起こると、圧力流体がパイロット制御チャンバ36から第1の圧力流体供給タンク42へと流出する。この動作により圧力制御弁34が減圧位置に切り換えられ、そこでは空間部21もまた第1の圧力流体供給タンク42に接続される。
【0024】
アナログ制御可能な二方/二位置制御弁39、40の作動工程は、空間部21内の圧力が公称圧力値に近似されるような方式で電子制御ユニット55により調整される。この公称圧力値は、一方で感知されたブレーキペダル9の作動成分から、及び他方で外部の作動成分から得られる。ブレーキペダル9の作動成分は、ブレーキペダル9又は第1のピストン11の作動行程からそれぞれ、及び圧力センサ50によって感知されるとともにブレーキペダル9の作動力に比例する圧力チャンバ14内の油圧から決定される。
【0025】
電子機器の機能不良を特徴とするとともに第1のフォールバックモードに相当する第2の動作モードにおいては、パイロット制御チャンバ36内の電子制御された圧力上昇は不可能である。圧力制御弁34は段付きピストン48から圧力制御弁34の弁部材への機械的動力伝達により作動し、この場合高圧アキュムレータ37内を支配する圧力が使用される。その他空間部21内の圧力上昇は第1の動作モードと同様に起こる。
【0026】
油圧供給装置33により生成される圧力の欠如を特徴とする第3の動作モードにおいてブレーキシステムは純粋に機械的に作動され得る。第3のピストン13はブレーキペダルの踏み込みの影響を受けてその制止部22から離れ、機械的接触によって第2のピストン12を移動させる。マスタブレーキシリンダ3の作動には操作者の人力のみが使用される。
【0027】
回生制動動作を表す第4の動作モードにおいては、ブレーキペダル9の踏み込みにもかかわらず空間部21内に導入される圧力をゼロまで低減できることが必要不可欠である。本目的上、閉止弁53は閉鎖されるため、区画室17は環状チャンバ46に接続されるものの、区画室17及び環状チャンバ46の双方が閉鎖される。当該チャンバ17、46の閉鎖により第3のピストン13及び段付きピストン48の作動方向への移動が阻止される。
【0028】
本発明は単純な構造のブレーキシステムを実現し、ここでブレーキペダル特性は、「ブレーキバイワイヤ」動作モード、第1のフォールバック動作モード並びに回生制動動作中の残りのブレーキシステムの作動条件に依存せず、その結果、運転者による制動動作中のペダル感覚は、外部制動動作によっても、又は、アンチロック制御、トラクション制御又は走行安定制御などのブレーキシステムの任意の他の制御動作によっても妨害される可能性がない。
【0029】
本ブレーキシステムの別の利点は、電子安定制御機能(ESP)が従来のブレーキシステムより容易に実現される点に関し、これは特別なESP油圧機器が一切必要ないためである。特別なESP油圧機器は、本発明のブレーキシステムが装備される車両においては不要であり、従来のABSシステムと接続される本発明の外部ブレーキ油圧機器はさらに良好な機能を達成する。従来のESP油圧機器と比較して要求される電磁動作可能なバルブの数が低減する。また、本発明のブレーキシステムは、ブレーキ液のポンプを介した動作を排除することによりESPの動作に必要な動圧を圧力制限弁で生成するため、従来のESP油圧機器と比較してより良好なエネルギー平衡を呈するとともに発生するノイズが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のブレーキシステムの第1の実施形態の設計を示す。
【図2】本発明のブレーキシステムの第2の実施形態の設計を示す。
【図3】第2の実施形態と比較してわずかに修正される本発明のブレーキシステムの第3の実施形態の設計を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪ブレーキ回路(I、II)が接続されるマスタシリンダ(3)、
作動力を伝達するプッシュロッド(10)によってブレーキペダル(9)に連結される第1のピストン(11)、
前記マスタシリンダ(3)を作動させる第2のピストン(12)、
前記第1のピストン(11)により作動可能であるとともに前記第2のピストン(12)と動力伝達接続をとるよう移動し得る第3のピストン(13)、
を備え、
ブレーキバイワイヤ動作モードにおいて快適なペダル感覚を操作者に与えるペダル行程シミュレータを形成する少なくとも1個の弾性要素(27、28)を伴い、
油圧が印加され得る前記第2のピストン(12)と前記第3のピストン(13)との間の空間部(21)であって、印加される場合に前記空間部(21)の加圧により前記第2及び第3のピストン(12、13)に逆方向の負荷がかかる、空間部(21)を伴い、
前記第3のピストン(13)により範囲を定められるとともに閉止弁(59)によって閉鎖可能であり、必要に応じて前記第3のピストン(13)の作動方向への移動を阻止する油圧室(17)を伴い、
前記空間部(21)を充填するための高圧に加圧された圧力流体を内部に保持する圧力供給装置(33)を伴い、
大気圧下にあるとともに前記空間部(21)から流出する圧力流体を取り込む第1の圧力流体供給タンク(42)を伴い、
前記圧力供給装置(33)及び前記第1の圧力流体供給タンク(42)に油圧接続されることにより前記空間部(21)に導入される圧力を制御し、作動力伝達手段(52、35)を介して作動力により駆動可能な圧力制御弁(34)を伴い、及び
前記空間部(21)に導入される圧力の電気制御用手段(39、40、34)を伴う、自動車用ブレーキシステムであって、
前記空間部(21)に導入される圧力の前記電気制御用手段(39、40、34)が前記圧力制御弁(34)を備えることを特徴とする、自動車用ブレーキシステム。
【請求項2】
前記圧力制御弁(34)がペダル操作及び油圧作動の双方が可能であるように設計されることを特徴とする、
請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
前記圧力供給装置(33)、前記圧力制御弁(34)、前記空間部(21)及び前記第1の圧力流体供給タンク(42)が第1のブレーキブースタ圧力流体回路に配設されるとともに、前記ブレーキシステムの動作中に前記第1のブレーキブースタ圧力流体回路と前記車輪ブレーキ回路(I、II)との間で圧力流体が交換されないことを特徴とする、
請求項2に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記作動力伝達手段が油圧動力伝達手段(52、35)として構成されることを特徴とする、
請求項3に記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記油圧動力伝達手段(52、35)が第2の制動力ブースタ圧力流体回路に配設されるとともに、前記ブレーキシステムの動作中に前記第2のブレーキブースタ圧力流体回路と前記第1のブレーキブースタ圧力流体回路と前記車輪ブレーキ回路(I、II)との間で圧力流体が交換されないことを特徴とする、
請求項4に記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記第2のブレーキブースタ圧力流体回路が、前記油圧室(17)に接続される第1の圧力流体ライン(51)、前記圧力制御弁(34)を作動させる働きをする油圧装置(35)、第2の圧力流体ライン(52)、並びに大気圧下にあるとともに前記第2の圧力流体ライン(52)が接続され得る第2の圧力流体供給タンク(18)から構成されることを特徴とする、
請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項7】
前記油圧装置(35)が、前記第1の圧力流体ライン(51)によって前記油圧室(17)に接続される第1の圧力チャンバ(46)、前記第2の圧力流体ライン(52)によって前記第2の圧力流体供給タンク(18)に接続され得る第2の圧力チャンバ(47)、及び前記圧力チャンバ(46、47)を互いに分離させるとともに前記圧力制御弁(34)の弁部材に動力を伝達し得る段付きピストン(48)から構成されることを特徴とする、
請求項6に記載のブレーキシステム。
【請求項8】
前記第2の圧力チャンバ(47)が、より大きい断面の前記段付きピストン(48)の表面(50)により範囲を定められる一方、前記第1の圧力チャンバ(46)が、前記段付きピストン(48)の環状表面(49)により範囲を定められる環状チャンバとして構成されることを特徴とする、
請求項7に記載のブレーキシステム。
【請求項9】
前記油圧室(17)を閉鎖する前記閉止弁(53)が前記第1の圧力流体ライン(51)と前記第2の圧力流体ライン(52)との間で前記油圧装置(35)と並列に接続されることを特徴とする、
請求項1〜8のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項10】
前記閉止弁(53)が電気的に動作可能な二方/二位置方向制御弁として設計されることを特徴とする、
請求項9に記載のブレーキシステム。
【請求項11】
一方でより小さい断面の前記段付きピストン(48)の表面により、及び他方で前記圧力制御弁(34)の前記弁部材により範囲を定められ、前記圧力供給装置(33)により供給される圧力流体によって作用を受け得るとともに、大気圧下にある前記第1の圧力流体供給タンク(42)に接続可能な油圧パイロット制御チャンバ(36)が提供されることを特徴とする、
請求項7〜10のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項12】
前記パイロット制御チャンバ(36)に導入される圧力の増減に使用される、電気的に動作可能な、好ましくはアナログ制御可能な二方/二位置方向制御弁(39、40)が、前記パイロット制御チャンバ(36)と前記圧力供給装置(33)との間の接続及び前記パイロット制御チャンバ(36)と前記第1の圧力流体供給タンク(42)との間の接続の双方に挿入されることを特徴とする、
請求項11に記載のブレーキシステム。
【請求項13】
ノーマルクローズ(NC)弁(39)が前記パイロット制御チャンバ(36)と前記圧力供給装置(33)との間の接続に挿入される一方、ノーマルオープン(NO)弁(40)又はノーマルオープン(NO)弁(141)とノーマルクローズ(NC)弁(140)との並列接続が場合により前記パイロット制御チャンバ(36)と前記第1の圧力流体供給タンク(42)との間の接続に挿入されることを特徴とする、
請求項12に記載のブレーキシステム。
【請求項14】
油圧容積取り込み要素(41)が前記パイロット制御チャンバ(36)に接続されることを特徴とする、
請求項11〜13のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項15】
油圧チャンバ(14)が、前記ブレーキペダル(9)に対し作用するとともに前記油圧動力伝達手段(14、18、52、35)の一部を形成する作動力を感知するために使用される前記第3のピストン(13)内に設計されることを特徴とする、
請求項1〜14のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項16】
前記第3のピストン(13)内の前記油圧チャンバ(14)が、前記第1のピストン(111)が密閉方式で誘導される第4のピストン(56)により範囲を定められ、この場合前記第3のピストン(113)内の前記第1のピストン(111)が、大気圧下にあるとともに前記第2のブレーキブースタ圧力流体回路に配設される前記第2の圧力流体供給タンク(118)に接続される閉止チャンバ(57)の範囲を定めることを特徴とする、
請求項15に記載のブレーキシステム。
【請求項17】
前記第4のピストン(56)が前記ペダル行程シミュレータを形成する前記要素(127、128)を収容することを特徴とする、
請求項16に記載のブレーキシステム。
【請求項18】
前記閉止チャンバ(57)が前記第4のピストン(56)の内部に接続されることを特徴とする、
請求項16又は17に記載のブレーキシステム。
【請求項19】
前記ペダル行程シミュレータが、前記第1のピストン(111)と前記第4のピストン(56)との間で圧縮される圧縮ばね(127)、及び前記第4のピストン(56)上に支持されるとともに前記圧縮ばね(127)と平行に接続される弾性ばね(128)から構成され、前記弾性ばね(128)を通じて作動力の成分が前記第1のピストン(111)から前記第4のピストン(56)へと伝達され得ることを特徴とする、
請求項17又は18に記載のブレーキシステム。
【請求項20】
第1のピストン(111)が、流れの方向に応答する絞り効果を有するとともに前記第4のピストン(56)の内部を大気へと接続する空気ダクト(131、132)を備えることを特徴とする、
請求項16又は17に記載のブレーキシステム。
【請求項21】
前記第3のピストン(113)内の前記油圧チャンバ(14)が前記第4のピストン(56)により範囲を定められ、この場合前記第3のピストン(113)内の前記第1のピストン(111)が、大気圧下にある前記第2の圧力流体供給タンク(18)に接続可能な閉止チャンバ(57)の範囲を定め、前記圧力チャンバ(14)が前記第2の圧力流体供給タンク(18)と閉鎖可能な接続を有するとともに前記油圧装置(35)の前記第2の圧力チャンバ(47)に接続されることを特徴とする、
請求項15に記載のブレーキシステム。
【請求項22】
前記油圧チャンバ(14)が、前記ペダル行程シミュレータを形成する前記要素(27、28)と動力伝達接続を有する油圧シミュレータピストン(26)により範囲を定められる油圧シミュレータチャンバ(25)と閉鎖可能な接続を有することを特徴とする、
請求項15に記載のブレーキシステム。
【請求項23】
前記油圧チャンバ(14)と前記油圧シミュレータチャンバ(25)との間の接続が前記第3のピストン(13)の移動により閉鎖可能であることを特徴とする、
請求項22に記載のブレーキシステム。
【請求項24】
流れの方向に応答する絞り効果を有する空圧式手段(30、31、32)が提供されることにより前記シミュレータピストン(26)の移動が減衰されることを特徴とする、
請求項18〜20のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項25】
前記油圧室(17)内を支配する圧力を感知するための圧力センサ(58)が提供されることを特徴とする、
請求項1〜24のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項26】
前記空間部(21)内を支配する圧力を感知するための圧力センサ(45)が提供されることを特徴とする、
請求項1〜25のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項27】
前記圧力供給装置(33)により供給される圧力を感知するための圧力センサ(43)が提供されることを特徴とする、
請求項1〜26のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項28】
前記パイロット制御チャンバ(36)内を支配する圧力を感知するための圧力センサ(59)が提供されることを特徴とする、
請求項11〜27のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項29】
前記油圧装置(35)の前記第2の圧力チャンバ(47)内を支配する圧力を感知するための圧力センサ(60)が提供されることを特徴とする、
請求項7〜28のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項30】
前記油圧シミュレータチャンバ内を支配する圧力を感知するための圧力センサが提供されることを特徴とする、
請求項22〜29のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項31】
前記第2のピストン(12)と前記第3のピストン(13)との間に圧力伝達ピストン(16)が提供されることを特徴とする、
請求項1〜30のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項32】
前記第1のピストン()の動く距離を感知するための手段()が提供されることを特徴とする、
請求項1〜31のいずれか一項に記載のブレーキシステム。
【請求項33】
前記圧力伝達ピストン(16)の動く距離を感知するための手段(23)が提供されることを特徴とする、
請求項31に記載のブレーキシステム。
【請求項34】
前記圧力供給装置(33)に配設されるモータ−ポンプアセンブリ(38)が独立したサブアセンブリとして設計されることを特徴とする、
請求項1〜33のいずれか一項に記載のブレーキシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−507714(P2009−507714A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530462(P2008−530462)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065700
【国際公開番号】WO2007/031398
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(399023800)コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト (162)
【Fターム(参考)】