説明

自動車用樹脂外装品の製造方法

【課題】繊維強化樹脂を材料として用いる場合において、所望の方向への寸法安定性が高い自動車用樹脂外装品を複雑な工程を経ることなく製造する方法を提供する。
【解決手段】成形型30は、ラゲージガーニッシュの外形に対応するキャビティ本体部41と、キャビティ本体部41の長手方向の長さよりも短い幅でキャビティ本体部41の長手方向と直交する方向に延びるキャビティ溝部42と、キャビティ溝部42を介してキャビティ本体部41に連通するゲート43とを有し、第1の成形型31と第2の成形型36とに分割可能に構成される。キャビティ溝部42がキャビティ本体部41よりも下側に位置するように成形型30を配置した後に、溶融した繊維強化樹脂をゲート43からキャビティ溝部42に流入させる。繊維強化樹脂は、重量平均繊維長が0.1〜100mmの繊維を25〜50重量%含有し、30〜80℃における最大線膨張係数が5×10−5以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用樹脂外装品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用の外装部品においては、軽量化による燃費向上などを目的として、金属製の部品に代わり樹脂成形品の利用が急速に進められている。この種の樹脂成形品においては、所定の機械的強度が要求されるため、例えば特許文献1に示すように、強化繊維を含む樹脂が材料として用いられている。
【0003】
具体的に、特許文献1に記載の自動車用の長繊維強化樹脂外装成形体は、成形体中に重量平均繊維長が1.5〜10mmの強化繊維が30〜90重量%含まれている。そして、この強化繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維及び合成繊維などが例示されている。
【0004】
更に、特許文献1に記載の外装成形体は、成形時の金型キャビティに断面積100mm以下の狭流路が形成される場合、その流路長を150mm以下としている。これは、このような狭流路が150mmよりも長いと、強化繊維がその流路方向に配向しやすくなるために、成形体の線膨張係数がこの流路方向へは小さく、流路と直交する方向へは大きくなるといった態様で線膨張係数が方向によって異なることとなることから、このような線膨張係数の異方性を低減させるためである。以上の構成により、特許文献1の外装成形体では、線膨張係数の異方性を低減させてその寸法安定性を図るようにしている。
【特許文献1】特開2006−82275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1の長繊維強化樹脂外装成形体を図9に示すラゲージガーニッシュ201に適用した場合を検討する。この図9に示すように、ラゲージガーニッシュ201は、ナンバープレート204等を保持するためのものであり、横長の板状に形成されて車両200のバンパー202の上方で且つ左右のリアコンビネーションランプ203に挟まれた位置に配設される。そして、この車両200において、後方側の外観を向上させるためには、ラゲージガーニッシュ201の周端部とこれらリアコンビネーションランプ203及びバンパー202との隙間が小さくなることが好ましく、ラゲージガーニッシュ201については、その寸法精度が高く要求される。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の樹脂外装成形体をラゲージガーニッシュ201に適用した場合、線膨張係数の異方性は低減されているものの、ラゲージガーニッシュ201において樹脂が実際に収縮する長さの絶対量としてはその長手方向である横方向に大きくなる。つまり、このラゲージガーニッシュ201においては、横方向の寸法精度が他の方向に比して低くなる虞があり、両側のリアコンビネーションランプ203との隙間を小さくすることが困難となるため、車両200後方の外観品質が低下する虞がある。
【0007】
なお、SMC(sheet molding compound)や、アウターとインナーによる2ピース構造を採用するなどして、その寸法精度を高くすることも可能であるが、このような方法では、加工工程が複雑となるためにコストが高くなるといった問題や製品の重量が増加するといった問題が生じる。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、繊維強化樹脂を材料として用いる場合において、所望の方向への寸法安定性が高い自動車用樹脂外装品を複雑な工程を経ることなく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、溶融した繊維強化樹脂を分割可能な成形型に射出して成形される自動車用樹脂外装品の製造方法であって、前記繊維強化樹脂は、重量平均繊維長が0.1〜100mmの繊維を25〜50重量%含有し、30〜80℃における最大線膨張係数が5×10−5以下であり、前記成形型は、前記自動車用樹脂外装品の外形に対応するキャビティ本体部と、該キャビティ本体部における所定方向の長さよりも短い幅で前記所定方向と直交する方向に延びる溝状のキャビティ溝部と、該キャビティ溝部を介して前記キャビティ本体部に連通するゲートとを有し、前記キャビティ溝部が前記キャビティ本体部よりも下側に位置するように前記成形型を配置した後に、溶融した前記繊維強化樹脂を前記ゲートから前記キャビティ溝部に流入させることを要旨とする。
【0010】
上記の構成によれば、溶融した前記繊維強化樹脂を射出して前記ゲートからキャビティ溝部に流入させると、まずキャビティ溝部に沿って前記繊維強化樹脂が充填される。そして、このキャビティ溝部が繊維強化樹脂で満たされると、この樹脂がキャビティ溝部から溢れてキャビティ本体部へと流れ出る。ここで、上記の構成では、キャビティ溝部がキャビティ本体部の所定方向と直交する方向に延びるため、繊維強化樹脂はキャビティ溝部から溢れでる際にこのキャビティ溝部と直交する方向へと流れ出す。すなわち、繊維強化樹脂は、キャビティ本体部を前記所定方向に流れて該キャビティ本体部に充填される。したがって、繊維強化樹脂に含まれる繊維がキャビティ本体部において前記所定方向に配向されることとなるため、このようにして製造された自動車用樹脂外装品は、前記所定方向における線膨張係数をその他の方向に比して小さくすることができ、この所定方向における寸法安定性を高くすることができる。また、上記の構成では、繊維強化樹脂の射出成形という簡素な方法で自動車用樹脂外装品を製造することができる。
【0011】
更に、上記の構成では、重量平均繊維長が0.1〜100mmの繊維を25〜50重量%含有する繊維強化樹脂を用いている。そして、射出成形の際に、材料として用いる繊維強化樹脂のペレットなどが溶融して材料中の繊維が切断されると、製造される外装品の成形体中においては、繊維の重量平均繊維長が0.5〜2.0mmとなる。なお、材料として用いる繊維強化樹脂は、重量平均繊維長1〜50mmのものを用いることがより好ましく、3〜30mmのものを用いることが更に好ましい。ここで、自動車用樹脂外装品の成形体中における繊維の含有量が25%未満の場合、又は繊維の重量平均繊維長が0.5mm未満の場合、曲げ弾性率・曲げ強度をはじめとした機械的強度や上述した寸法安定性が低下し、繊維の含有量が50%を超える場合、又は重量平均繊維長が2.0mmを超える場合は、その自動車用樹脂外装品の成形性が低下する。また、上記の構成では、繊維強化樹脂の30〜80℃における最大線膨張係数が5×10−5以下であるため、寸法安定性が適度に高く保たれる。なお、線膨張係数の単位は「1/K」である。したがって、上記の構成によれば、前記所定方向における寸法安定性が特に高く、且つ機械的強度及び成形性に優れた自動車用樹脂外装品を製造することができる。なお、重量平均繊維長とは、例えば長さL1mmの繊維w1gと、長さL2mmの繊維w2gと、長さL3mmの繊維がw3gとからなる繊維である場合、(L1×w1+L2×w2+L3×w3)/(w1+w2+w3)で表される。
【0012】
請求項2に記載の発明は、溶融した繊維強化樹脂を分割可能な成形型に射出して成形される自動車用樹脂外装品の製造方法であって、前記繊維強化樹脂は、重量平均繊維長が0.1〜100mmの繊維を25〜50重量%含有し、30〜80℃における最大線膨張係数が5×10−5以下であり、前記成形型は、前記自動車用樹脂外装品の外形に対応するキャビティと、該キャビティの所定方向に延びるように該キャビティに対して突出するガイド部と、前記キャビティに連通するゲートとを備え、前記成形型をセットした後に、溶融した前記繊維強化樹脂を前記ゲートから前記キャビティに流入させることを要旨とする。
【0013】
上記の構成によれば、溶融した前記繊維強化樹脂を射出して、前記ゲートからキャビティに流入させると、成形型がキャビティに対して突出するガイド部を有することから、前記繊維強化樹脂は、このガイド部に沿った方向へと流れる。すなわち、繊維強化樹脂は、キャビティを前記所定方向に流れて該キャビティに充填される。したがって、繊維強化樹脂に含まれる繊維がキャビティにおいて前記所定方向に配向されることとなるため、このようにして製造された自動車用樹脂外装品は、前記所定方向における線膨張係数をその他の方向に比して小さくすることができ、この所定方向における寸法安定性を高くすることができる。また、上記の構成では、繊維強化樹脂の射出成形という簡素な方法で自動車用樹脂外装品を製造することができる。
【0014】
更に、上記の構成では、重量平均繊維長が0.1〜100mmの繊維を25〜50重量%含有するとともに、30〜80℃における最大線膨張係数が5×10−5以下である繊維強化樹脂を用いているため、上記請求項1に記載の発明と同様にして、前記所定方向における寸法安定性が特に高く、且つ機械的強度及び成形性に優れた自動車用樹脂外装品を製造することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、溶融した繊維強化樹脂を分割可能な成形型に射出して成形される自動車用樹脂外装品の製造方法であって、前記繊維強化樹脂は、重量平均繊維長が0.1〜100mmの繊維を25〜50重量%含有し、30〜80℃における最大線膨張係数が5×10−5以下であり、前記成形型は、前記自動車用樹脂外装品の外形に対応するキャビティと、該キャビティの所定方向と直交する方向に互いに離間して配列された複数のゲートとを備え、前記成形型をセットした後に、溶融した前記繊維強化樹脂を前記複数のゲートから共に前記キャビティに流入させることを要旨とする。
【0016】
上記の構成によれば、溶融した前記繊維強化樹脂を前記複数のゲートから共にキャビティに流入させると、キャビティにおいて、繊維強化樹脂は、ゲートからの供給方向に沿って放射状に広がるように流れる。そして、この複数のゲートがキャビティの所定方向と直交する方向に互いに離間して配列されているため、複数のゲートからキャビティに流入した繊維強化樹脂は、この所定方向と直交する方向において互いに衝突し、その後前記所定方向に流れて該キャビティに充填される。したがって、繊維強化樹脂に含まれる繊維がキャビティにおいて前記所定方向に配向されることとなるため、このようにして製造された自動車用樹脂外装品は、前記所定方向における線膨張係数をその他の方向に比して小さくすることができ、この所定方向における寸法安定性を高くすることができる。また、上記の構成では、上記の構成では、繊維強化樹脂の射出成形という簡素な方法で自動車用樹脂外装品を製造することができる。
【0017】
更に、上記の構成では、重量平均繊維長が0.1〜100mmの繊維を25〜50重量%含有するとともに、30〜80℃における最大線膨張係数が5×10−5以下である繊維強化樹脂を用いているため、上記請求項1に記載の発明と同様にして、前記所定方向における寸法安定性が特に高く、且つ機械的強度及び成形性に優れた自動車用樹脂外装品を製造することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記所定方向は、前記キャビティ本体あるいは前記キャビティの長手方向であることを要旨とする。
上記の構成によれば、前記自動車用樹脂外装品の長手方向における線膨張係数を他の方向よりも小さくすることができる。したがって、樹脂が実際に収縮する長さの絶対量が大きくなり易い長手方向を含めて、自動車用樹脂外装品の収縮する長さの最大値を小さくすることができる。
【0019】
具体的に、請求項1〜4の何れかに記載の発明では、請求項5に記載の発明によるように、前記繊維強化樹脂は、ガラス繊維を含むといった態様を採用することができる。
また、請求項1〜5の何れかに記載の発明において、請求項6に記載の発明によるように、前記繊維強化樹脂の樹脂は、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂との混合物であるといった態様を採用することができる。
【0020】
更に、請求項6に記載の発明において、請求項7に記載の発明によるように、前記繊維強化樹脂において、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂との重量比率は、90:10〜50:50であるといった態様を採用することができる。
【0021】
この場合、前記繊維強化樹脂において、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂との重量比率が、90:10〜60:40であることがより好ましく、80:20〜60:40であることが更に好ましい。つまり、ポリカーボネート樹脂が過剰になり、ポリカーボネート樹脂の重量比率が上記の比率よりも多くなると、流動性が低下して成形加工性が低下する。また、ポリカーボネート樹脂の重量比率が上記の比率よりも極少量となると、耐熱性が低下するとともにポリカーボネート特有の強度を発揮させることができない。したがって、このポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂との重量比率は、90:10〜50:50であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の自動車用樹脂外装品の製造方法によれば、繊維強化樹脂に含まれる繊維がキャビティ本体あるいはキャビティにおいて所定方向に配向されるため、このようにして製造された自動車用樹脂外装品は、前記所定方向における線膨張係数をその他の方向に比して小さくすることができ、この所定方向における寸法安定性を高くすることができる。また、上記の構成では、繊維強化樹脂の射出成形という簡素な方法で自動車用樹脂外装品を製造することができる。すなわち、繊維強化樹脂を材料として用いる場合において、所望の方向への寸法安定性が高い自動車用樹脂外装品を複雑な工程を経ることなく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明の自動車用樹脂外装品の製造方法を車両後方に取り付けられるラゲージガーニッシュの製造方法に適用した第1の実施形態を、図1〜図3を参照して説明する。
【0024】
図1に示すように、ラゲージガーニッシュ10は、横長の板状に形成されており、図示しない車両の後方に取り付けられてナンバープレートなどを保持するものである。このラゲージガーニッシュ10には、上側半分の左右両側の部位に湾曲して切り欠かれた形状の切り欠き部11,12が形成され、車両の後方に取り付けられた状態では、この切り欠き部11,12に対応した部位に図示しないリアコンビネーションランプが配置される。また、ラゲージガーニッシュ10の下端における左右両側は、車両のバンパーに沿うように湾曲した形状に形成されている。
【0025】
このラゲージガーニッシュ10は、以下に詳述するように、溶融した繊維強化樹脂を射出成形することにより製造される。
材料として用いる繊維強化樹脂は、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂とが90:10〜50:50の比で混合される樹脂材料と、重量平均繊維長が0.1〜100mmのガラス繊維とを含有し、この繊維強化樹脂中にこのガラス繊維は25〜50重量%含まれている。また、この繊維強化樹脂は、30〜80℃における最大線膨張係数が5×10−5以下である。
【0026】
以下に、本実施形態の繊維強化樹脂の材料としてペレットを製造する方法を説明する。
具体的に、本実施形態では、ガラス繊維として、繊維径17μmのガラス繊維ロービングを用いる。また、ポリカーボネート樹脂として、粘度平均分子量(Mv)が17,800のものを用い、スチレン系樹脂として、重量平均粒径が1,000nmのゴムを20%含有するとともに、マトリックスを構成するモノマー成分の共重合比が、スチレンとアクリロニトリルとの重量比において82:18のものを用いる。なお、粘度平均分子量(Mv)とは、ウデローベ型粘度計を用いて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これにより極限粘度〔η〕をもとめて次式により算出した。
【0027】
〔η〕=1.23×10−5Mv0.83…(式)
そして、クロスヘッドダイに上記ガラス繊維ロービングを通して引きながら、押出機から上記ポリカーボネート樹脂70重量部と上記スチレン系樹脂30重量部との混合物を溶融状態(280℃)でクロスヘッドダイに供給してガラス繊維に含浸させ、その後、賦形ダイを通してストランドとして引き取る。そして、このストランドを冷却させた後に裁断して、ガラス繊維含量32%、長さ11mmのペレットとし、このペレットを後述する射出成形の材料として用いる。
【0028】
なお、繊維強化樹脂としての材料に含まれる繊維及び樹脂は特に限定されず、例えば、以下に例示する材料を適宜選択して用いるようにしてもよい。
具体的には、材料として用いるガラス繊維は、例えばE−ガラス、S−ガラス、C−ガラス、AR−ガラス、T−ガラス及びR−ガラス等の市販品を用いることができ、その形態としては、ガラス繊維ロービングやロービングをカッティングしたチョップドストランドタイプのものを用いることができる。そして、ガラス繊維は、その繊維径が3〜40μmであることが好ましい。3μm未満では、ガラス含有量が多い場合に相対的にガラス繊維数が増すために樹脂の含浸が困難となり、40μmを超えると、ラゲージガーニッシュ10の成形品の表面外観が悪化する虞があるためである。なお、最適なガラス繊維径は、9〜20μmである。
【0029】
また、ガラス繊維の重量平均繊維長は、ペレットの長さにもよるが、用いるペレットの長さ以下であり、重量平均繊維長が0.1〜100mmのものを用いるようにする。なお、この重量平均繊維長は、1.0〜50mmのものがより好ましく、3〜30mmのものが更に好ましい。このような重量平均繊維長のガラス繊維を用いることにより、後述する射出成形でラゲージガーニッシュを製造すると、成形品に含まれるガラス繊維の重量平均繊維長を0.5〜2.0mmとすることができる。なお、このように繊維の含有量を25〜50重量%に設定し、重量平均繊維長を上記のように設定したのは、以下の理由による。すなわち、成形体において、ガラス繊維の含有量が25重量%未満、又は重量平均繊維長が0.5mm未満の場合、曲げ弾性率や曲げ強度をはじめとした寸法安定性が低下し、ガラス繊維の含有量が50重量%より多い、又は重量平均繊維長を2.0mmより長い場合、成形性が低下するためである。
【0030】
また、ガラス繊維には、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤を含む表面処理剤で表面処理されていてもよい。
また、繊維強化樹脂における樹脂材料は、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂であり、上述した樹脂材料に限定されないが、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂との重量比率は90:10〜50:50に設定される。なお、このような重量比率に設定するのは、ポリカーボネート樹脂が過剰となって上記の重量比率よりも多くなると、流動性が低下して成形加工性が低下する一方、ポリカーボネート樹脂の重量比率が上記の比率よりも極少量となると、耐熱性が低下するとともにポリカーボネート特有の強度を発揮できない虞があるためである。また、以上の観点から、このポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂との重量比率は、90:10〜60:40であることがより好ましく、80:20〜60:40であることが更に好ましい。
【0031】
具体的に、ポリカーボネート樹脂としては、ポリカーボネート樹脂のほかに、ポリエステルカーボネート系樹脂も用いることができる。また、ポリカーボネート系樹脂は、通常ジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン法)、ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとの反応(エステル交換法)により得られる。このジヒドロキシ化合物は、脂環族化合物などであってもよいが、好ましくはビスフェノール化合物である。そして、好ましいポリカーボネート系樹脂は、芳香族ポリカーボネートであり、特にビスフェノール型芳香族ポリカーボネート(ビスフェノールA型芳香族ポリカーボネート)が好ましい。
【0032】
また、ポリカーボネート樹脂は、粘度平均分子量が13,000〜20,000のもの、より好ましくは14,000〜19,000のもの、更に好ましくは15,000〜18,000のものを用いることが好ましい。
【0033】
スチレン系樹脂としては、少なくとも芳香族ビニル系単量体(又はスチレン系単量体)を重合成分とする樹脂(又は重合体)が挙げられる。また、スチレン系樹脂は、芳香族ビニル系単量体と共重合可能な単量体(共重合性単量体)との共重合体であってもよく、この共重合性単量体(ビニル系単量体)には、上述したアクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体などが例示される。更に、スチレン系樹脂は、樹脂組成物に耐衝撃性などの優れた特性を付与するという観点から、上述したようにゴム成分を含む樹脂(ゴム含有スチレン系樹脂)であってもよい。
【0034】
そして、このスチレン系樹脂(ゴム含有スチレン系樹脂では、ゴムを除くマトリックス樹脂としてのスチレン系樹脂)の重量平均分子量は、10,000〜1,000,000が好ましく、30,000〜500,000がより好ましく、50,000〜500,000が更に好ましい。
【0035】
なお、繊維強化樹脂の樹脂には、例えば、ポリエステル系樹脂などのポリカーボネート樹脂及びスチレン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含むようにしてもよいし、ポリカーボネート樹脂及びスチレン系樹脂の混合物の樹脂特性を低下させない程度に相溶化剤や可塑剤などの周知の添加剤が含まれるようにしてもよい。
【0036】
そして、これらの材料を用いてペレットを成形する際に、ガラス繊維の長さができるだけ長い繊維長で維持されるようにすることで、後述する射出成形により製造されるラゲージガーニッシュ10に含まれるガラス繊維の重量平均繊維長が0.5〜2.0mmとなるようにする。
【0037】
また、この繊維強化樹脂の線膨張係数の最大値は、5×10−5以下、好ましくは4×10−5以下、より好ましくは3.5×10−5以下に設定される。
次に、この材料を用いてラゲージガーニッシュ10を射出成形する方法を図2及び図3に基づいて説明する。図2(a)は、前記ラゲージガーニッシュ10を形成するための成形型30を分解した状態における斜視図であり、図2(b)は、この成形型30を合体させたときの上面図である。また、図3は、図2(b)のA−A線における断面を示している。この成形型30は、図2(a)に示すように、第1の成形型31と第2の成形型36との2つに分割可能に構成されている。なお、この図2(a)では、各成形型31,36の全体の形状を扁平な直方体状として示しているが、この成形型31,36全体の形状及び大きさは特に限定されない。
【0038】
上記成形型30において、第1の成形型31の下面32には、ラゲージガーニッシュ10の外形に対応する形状で、深さがラゲージガーニッシュ10の板厚よりも少し短い長さの第1の凹部33が形成されている。また、第2の成形型36の上面37には、ラゲージガーニッシュ10の外形に対応する形状で深さが非常に浅い第2の凹部35が形成されている。さらに、この第2の凹部35には、該凹部35の所定方向である長手方向の長さよりも短い幅で、同凹部35の長手方向と直交する方向に延びるキャビティ溝部42と、第2の凹部35の壁面を貫通するとともに、この溝部42から連続して第2の成形型36の側面(図2(a)の前面)38まで延びるゲート43が形成されている。つまり、このゲート43は、第2の成形型36の上面37及び側面38において開口している。これにより、第1の成形型31の下面32と第2の成形型36の上面37とを対面させるように成形型30をセットすると、図2(b)及び図3に示すように、第1の成形型31の第1の凹部33と第2の成形型36の第2の凹部35とにより形成されるキャビティ本体部41と、キャビティ本体部41の下側のキャビティ溝部42とが形成される。また、第2の成形型36において、前記ゲート43の上側の開口が、第1の成形型31の下面32により閉塞されて、側面38のみにおいて開口するゲート43となる。なお、第2の成形型36にも第2の凹部35が形成されているために、ゲート43の上部は前記キャビティ本体部41にも連通していることになるが、この第2の凹部35は浅く形成されているために、実質的には前記ゲート43はキャビティ溝部42を介してキャビティ本体部41に連通している。
【0039】
そして、図示しない射出成形機のノズルから溶融した繊維強化樹脂が射出され、この繊維強化樹脂が図示しないスプール及びランナーを流れ、図2(b)の矢印に示すように、ゲート43を介して前記キャビティ溝部42及びキャビティ本体部41に流入する。ここで、本実施形態では、キャビティ溝部42がキャビティ本体部41よりも下側に位置している。したがって、溶融した繊維強化樹脂は、ゲート43から先ずキャビティ溝部42に流入し、このキャビティ溝部42が延びる方向に沿って流れてキャビティ溝部42に充填される。そして、このキャビティ溝部42が繊維強化樹脂で満たされると、この繊維強化樹脂がキャビティ溝部42からキャビティ本体部41へと溢れ出る。ここで、このキャビティ溝部42がキャビティ本体部41の長手方向と直交する方向に延びるため、繊維強化樹脂はキャビティ溝部42からキャビティ本体部41に溢れ出る際に、このキャビティ溝部42と直交する方向、すなわち、キャビティ本体部41の長手方向に沿って左右両側に広がるように流れ、該キャビティ本体部41に充填される。したがって、繊維強化樹脂に含まれるガラス繊維がキャビティ本体部41において長手方向に配向されることとなる。そして、材料として用いるペレットの長さが11mmであることからガラス繊維の重量平均繊維長は0.1〜11mmとなっており、射出成形の際に、このペレットが溶融してガラス繊維が切断されると、キャビティ本体部41に配列されるガラス繊維の重量平均繊維長は0.5〜2.0mmとなる。なお、射出成形の条件などを適宜設定することにより、キャビティ本体部41に配列されるガラス繊維の重量平均繊維長を0.7〜2.0mmとすることがより好ましく、1.0〜1.5mmとすることがさらに好ましい。また、本実施形態では、繊維強化樹脂をキャビティ本体部41の長手方向に沿って流すために、その流動長が長くなることから、成形型30の温度は高いほど好ましい。そして、冷却・取出し工程にこの影響が大きくなる場合は、成形型30に加熱冷却金型を用いることが好ましい。
【0040】
また、この際の射出条件を適宜設定することにより、成形後のラゲージガーニッシュ10の塗装、めっき及び蒸着を施す面において、その中心線平均粗さ(Ra)を0.8μm以下とすることができる。これにより、この面の塗装性などを向上させるようにすることができる。なお、この中心線平均粗さ(Ra)は、塗装などの観点から、0.5μm以下とすることがより好ましく、0.3μm以下とすることが更に好ましくい。
【0041】
そして、この溶融した繊維強化樹脂が冷却されて固化したのち、成形型30が取り外されて、前記ゲート43に対応した部分及びキャビティ溝部42に対応した部分の樹脂が適宜切断または切削されて図1に示すラゲージガーニッシュ10が形成される。なお、ラゲージガーニッシュ10において、このキャビティ溝部42に対応した部分が背面(車両の内側)となるように配置するなどして、この部分の切削工程を省略するようにしてもよい。このようにして製造されたラゲージガーニッシュ10は、ガラス繊維がその長手方向に配列されてなるため、その長手方向における線膨張係数をその他の方向に比して小さくすることができ、長手方向における寸法安定性を高くすることができる。
【0042】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、ラゲージガーニッシュ10の成形型30が、ラゲージガーニッシュ10の外形に対応するキャビティ本体部41と、該キャビティ本体部41の長手方向の長さよりも短い幅でこの長手方向と直交する方向に延びるキャビティ溝部42と、キャビティ溝部42を介してキャビティ本体部41に連通するゲート43とを有している。そして、成形型30においてキャビティ溝部42がキャビティ本体部41よりも下側に位置するようにこの成形型30配置した後に、溶融した繊維強化樹脂を前記ゲート43からキャビティ溝部42に流入させるようにしている。
【0043】
これにより、溶融した繊維強化樹脂は、ゲート43を介してキャビティ溝部42に充填された後に、キャビティ溝部42から溢れだしてキャビティ本体部41の長手方向に向って流れるため、繊維強化樹脂に含まれるガラス繊維は、キャビティ本体部41において該キャビティ本体部41の長手方向に配向されることとなる。そのため、このようにして製造されるラゲージガーニッシュ10は、長手方向における線膨張係数をその他の方向に比して小さくすることができるため、長手方向における寸法安定性を特に高くすることができる。これにより、ラゲージガーニッシュ10の長手方向の両側には、リアコンビネーションランプが配設されるが、ラゲージガーニッシュ10は、この長手方向における寸法安定性を向上させることができるため、リアコンビネーションランプとの隙間を小さくすることができ、車両の後方側の外観を向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態では、繊維強化樹脂の射出成形という簡素な方法でラゲージガーニッシュ10を製造することができる。
また、材料として用いる繊維強化樹脂は、重量平均繊維長0.1〜100mmのガラス繊維を25〜50重量%含有し、30〜80℃における最大線膨張係数が5×10−5以下である。そのため、成形されるラゲージガーニッシュ10においては、重量平均繊維長0.5〜2.0mmのガラス繊維が長手方向に配列されることになり、長手方向の寸法安定性が特に高く、且つ機械的強度及び成形性に優れた品質のものを製造することができる。
【0045】
(2)本実施形態のラゲージガーニッシュ10は、(1)に記載したように長手方向における線膨張係数を他の方向よりも小さくするようにしている。したがって、樹脂が実際に収縮する長さの絶対量が大きくなり易い長手方向を含めて、自動車用樹脂外装品の収縮する長さの最大値を小さくすることができる。
【0046】
(3)本実施形態のラゲージガーニッシュ10を形成する繊維強化樹脂の樹脂は、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂との混合物であり、このポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂との重量比率が90:10〜50:50である。そのため、加工性及び耐熱性が適度に保たれるとともに、ポリカーボネート樹脂特有の強度を発揮することができる。
【0047】
(第2の実施形態)
次に、本発明の自動車用樹脂外装品の製造方法をラゲージガーニッシュの製造方法に適用した第2の実施形態について図4に基づいて説明する。この第2の実施形態は、上記第1の実施形態の繊維強化樹脂と同じ材料の樹脂を用いているが、図4に示すように、成形型60の構成が、上記第1の実施形態と異なっている。
【0048】
図4(a)は、本実施形態の成形型60の分解した状態における斜視図であり、図4(b)は、この成形型60を合体させた状態における上面図である。この成形型60は、図4(a)に示すように、第1の成形型61と第2の成形型66との2つに分割可能に構成されている。
【0049】
具体的に、第1の成形型61の下面62には、ラゲージガーニッシュ10の板厚の略半分の深さでラゲージガーニッシュ10の外形に対応する第1の凹部63と、この第1の凹部63の長手方向の中央に位置して第1の凹部63の側壁から第1の成形型61の側面(図4(a)の前面)65まで貫通する第1の溝部64とが形成されている。また、第2の成形型66の上面67には、ラゲージガーニッシュ10の板厚の略半分の深さでラゲージガーニッシュ10の外形に対応する第2の凹部69と、この第2の凹部69の長手方向の中央に位置して第2の凹部69の側壁から第2の成形型66の側面(図4(a)の前面)68まで貫通する第2の溝部70とが形成されている。また、この第2の成形型66には、第2の凹部69の底面71に、この第2の凹部69の所定方向である長手方向に延びるように突出する細長い板状のガイド部72が設けられている。具体的に、ガイド部72は、図4(a)に示すように、左右それぞれに前後2列で配列されて計4個取り付けられており、第2の凹部69において、該第2の凹部69の長手方向の中央を境とした左右の領域を前後3列に区画するように配設されている。また、各ガイド部72は、その上面の高さが第2の成形型の上面67の位置よりも高くならないように設定されている。
【0050】
このような構成により、第1の成形型61の下面62と第2の成形型66の上面67とを対面させる第1の成形型61及び第2の成形型66を重ね合わせると、図4(b)に示すように、第1及び第2の各凹部63,69によってラゲージガーニッシュ10の外形に対応した形状のキャビティ75が形成される。また、この状態において、成形型60には、前記第1の溝部64と第2の溝部70とによってゲート73が形成される。
【0051】
これにより、図示しない射出成形機のノズルから溶融した繊維強化樹脂が射出されると、この繊維強化樹脂が図示しないスプール及びランナーを流れて、図4(b)の矢印に示すように、ゲート73からキャビティ75へ流入する。そして、ガイド部72は、キャビティ75に対して該キャビティ75の長手方向に沿って延びるように突出していることから、繊維強化樹脂はガイド部72に沿った方向へと流れる。すなわち、繊維強化樹脂は、キャビティ75を該キャビティ75の長手方向に沿って流れてキャビティ75に充填される。したがって、繊維強化樹脂に含まれるガラス繊維がキャビティ75において長手方向に配向されることとなる。
【0052】
そして、この溶融した繊維強化樹脂が冷却されて固化したのち、成形型60が取り外されて、ゲート73に対応した部分の樹脂が適宜切断されてラゲージガーニッシュ10が形成される。このようにして製造されたラゲージガーニッシュ10は、ガラス繊維がその長手方向に配列されてなるため、その長手方向における線膨張係数をその他の方向に比して小さくすることができ、長手方向における寸法安定性を高くすることができる。
【0053】
以上詳述した本実施形態によれば、上記第1の実施形態に記載の(1)の効果に準じた以下の(4)の効果、及び上記第1の実施形態に記載の(2),(3)と同等の効果を奏することができる。なお、特に記載しないその他の構成及び作用は、上記第1の実施形態と同じである。
【0054】
(4)本実施形態では、ラゲージガーニッシュ10の製造に用いる成形型60が、ラゲージガーニッシュ10の外形に対応するキャビティ75と、キャビティ75の長手方向に延びるようにキャビティ75に対して突出するガイド部72と、キャビティ75に連通するゲート73とを備えている。
【0055】
これにより、溶融した繊維強化樹脂を射出してゲート73からキャビティ75に流入させると、繊維強化樹脂は、ガイド部72に沿った方向、すなわち、キャビティ75の長手方向に流れてキャビティ75内に充填される。したがって、繊維強化樹脂に含まれるガラス繊維がキャビティ75において長手方向に配向されることとなる。そのため、このようにして製造されるラゲージガーニッシュ10は、長手方向における線膨張係数をその他の方向に比して小さくすることができるため、長手方向における寸法安定性を特に高くすることができる。これにより、ラゲージガーニッシュ10の長手方向の両側には、リアコンビネーションランプが配設されるが、ラゲージガーニッシュ10の長手方向における寸法安定性を向上させることができるため、リアコンビネーションランプとの隙間を小さくすることができ、車両の後方側の外観を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態では、繊維強化樹脂の射出成形という簡素な方法でラゲージガーニッシュ10を製造することができる。
また、材料として用いる繊維強化樹脂は、重量平均繊維長0.1〜100mmのガラス繊維を25〜50重量%含有し、30〜80℃における最大線膨張係数が5×10−5以下である。そのため、成形されるラゲージガーニッシュ10においては、重量平均繊維長0.5〜2.0mmのガラス繊維が長手方向に配列されることになり、長手方向の寸法安定性が特に高く、且つ機械的強度及び成形性に優れた品質のものを製造することができる。
【0057】
(第3の実施形態)
次に、本発明の自動車用樹脂外装品の製造方法をラゲージガーニッシュの製造方法に適用した第3の実施形態について図5に基づいて説明する。この第3の実施形態は、上記第1及び第2の各実施形態の繊維強化樹脂と同じ材料の樹脂を用いているが、図5に示すように、成形型80の構成が、上記第1及び第2の各実施形態と異なっている。
【0058】
図5(a)は、本実施形態の成形型80を分解した状態における斜視図であり、図5(b)は、この成形型80を合体させた状態における上面図である。この成形型80は、図5(a)に示すように、第1の成形型81と第2の成形型91との2つに分割可能に構成されている。
【0059】
具体的に、第1の成形型81の下面82には、ラゲージガーニッシュ10の外形に対応する形状でラゲージガーニッシュ10の板厚の略半分の深さの第1の凹部83が形成されている。更に、第1の成形型81には、第1の凹部83の長手方向の中央の位置に、互いに対向して配列されて、この第1の凹部83の側壁から第1の成形型81の側面(図5(a)の前面及び後面)85,86まで貫通する第1の溝部84及び第2の溝部87が形成されている。また、第2の成形型91は、この図5(a)において、上記第1の成形型と上下対称とに形成されている。つまり、第2の成形型91の上面92には、ラゲージガーニッシュ10の外形に対応する形状でラゲージガーニッシュ10の板厚の略半分の深さの第2の凹部93が形成されている。また、第2の成形型91には、この第2の凹部93の長手方向の中央の位置において、第2の凹部93の側壁から第2の成形型91の側面(図5(a)の前面及び後面)95,96までそれぞれ貫通する第3の溝部94と第4の溝部97とが形成されている。
【0060】
このような構成により、第1の成形型81の下面82が第2の成形型91の上面92と対面するように上記第1の成形型81及び第2の成形型91が重ね合わされて成形型80がセットされると、図5(b)に示すように、第1の凹部83及び第2の凹部93とによってキャビティ100が構成される。また、成形型80がセットされた状態において、この第1の溝部84及び第3の溝部94によって第1のゲート101を、第2の溝部87及び第4の溝部97によって第2のゲート102をそれぞれ構成する。そして、この各ゲート101,102は、キャビティ100の所定方向である長手方向と直交する方向に互いに離間して配列している。
【0061】
そして、図示しない射出成形機のノズルから溶融した繊維強化樹脂が射出され、この繊維強化樹脂は、図示しないスプール及びランナーを流れ、図5(b)の矢印に示すように、各ゲート101,102から共にキャビティ100へ流入する。各ゲート101,102からキャビティ100に流入した繊維強化樹脂は、キャビティ100において各ゲート101,102からの供給方向に沿って放射状に広がるように流れた後、キャビティ100の長手方向と直交する方向において互いに衝突し、この衝突によりその後はキャビティ100の長手方向に沿って流れてキャビティ100に充填される。したがって、繊維強化樹脂に含まれるガラス繊維がキャビティ100において長手方向に配向されることとなる。
【0062】
そして、この溶融した繊維強化樹脂が冷却されて固化したのち、成形型80が取り外されて、各ゲート101,102に対応した部分の樹脂が適宜切断されてラゲージガーニッシュ10が形成される。このようにして製造されたラゲージガーニッシュ10は、ガラス繊維がその長手方向に配列されてなるため、その長手方向における線膨張係数をその他の方向に比して小さくすることができ、長手方向における寸法安定性を高くすることができる。
【0063】
以上詳述した本実施形態によれば、上記第1及び第2の実施形態に記載の(1),(4)の効果に準じた以下の(5)の効果、及び上記第1の実施形態に記載の(2),(3)と同等の効果を奏することができる。なお、特に記載しないその他の構成及び作用は上記第1の実施形態と同じである。
【0064】
(5)本実施形態では、ラゲージガーニッシュ10の製造に用いる成形型80が、ラゲージガーニッシュ10の外形に対応するキャビティ100と、キャビティ100の長手方向と直交する方向に互いに離間して配列された2つのゲート101,102とを備えている。そして、この成形型80がセットされた後に、溶融した繊維強化樹脂が2つの各ゲート101,102から共にキャビティ100に流入させようにしている。
【0065】
これにより、第1及び第2の各ゲート101,102からキャビティ100に流入した繊維強化樹脂は、このキャビティ100の長手方向と直交する方向において互いに衝突して長手方向に流れてキャビティ100内に充填される。したがって、繊維強化樹脂に含まれるガラス繊維がキャビティ75において長手方向に配向されることとなる。そのため、このようにして製造されるラゲージガーニッシュ10は、長手方向における線膨張係数をその他の方向に比して小さくすることができるため、長手方向における寸法安定性を特に高くすることができる。これにより、ラゲージガーニッシュ10の長手方向の両側には、リアコンビネーションランプが配設されるが、ラゲージガーニッシュ10の長手方向における寸法安定性を向上させることができるため、リアコンビネーションランプとの隙間を小さくすることができ、車両の後方側の外観を向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態では、繊維強化樹脂の射出成形という簡素な方法でラゲージガーニッシュ10を製造することができる。
また、材料として用いる繊維強化樹脂は、重量平均繊維長0.1〜100mmのガラス繊維を25〜50重量%含有し、30〜80℃における最大線膨張係数が5×10−5以下である。そのため、成形されるラゲージガーニッシュ10においては、重量平均繊維長0.5〜2.0mmのガラス繊維が長手方向に配列されることになり、長手方向の寸法安定性が特に高く、且つ機械的強度及び成形性に優れた品質のものを製造することができる。
【0067】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・上記第1〜第3の各実施形態では、ラゲージガーニッシュ10に対応するキャビティ本体部41又はキャビティ75,100の側壁において開口するゲート43,73,101,102からキャビティ本体部41又はキャビティ75,100に溶融した繊維強化樹脂を流入させるようにした。しかしながら、以下の(A)〜(C)に示す変形例のように、キャビティ溝部又はキャビティの底面において開口するゲートからキャビティ溝部又はキャビティに溶融した繊維強化樹脂を流入させるようにしてもよい。
【0068】
(A)この変形例では、図6に示す成形型130を用いてラゲージガーニッシュを製造する。この成形型130は、図6に示すように、第1の成形型131と第2の成形型132とに分割可能に構成される。そして、第1の成形型131は、図2に示される第1の実施形態の第1の成形型31と同じ形状であるが、第2の成形型132は、第1の実施形態の第2の成形型36と形状が異なる。具体的に、第2の成形型132には、その上面137に第1の実施形態と同様に第2の凹部134が形成され、この凹部134の長手方向よりも短い幅で、この凹部134の長手方向と直交する方向に延びるキャビティ溝部139が形成されている。また、このキャビティ溝部139の長手方向の中央には、キャビティ溝部139の底面135から第2の成形型132の底面136まで貫通するゲート143が形成されている。
【0069】
このような構成により、成形型130がセットされると、図6(b)に示すように、第1の成形型131の第1の凹部133と第2の成形型132の第2の凹部134とによりキャビティ本体部141が形成され、その下部にキャビティ溝部139が配置される。この状態で、ゲート143からキャビティ溝部139に溶融した繊維強化樹脂が流入されると、この繊維強化樹脂は、まずキャビティ溝部139に充填され、その後、図6(b)の矢印に示すように、キャビティ本体部141を該キャビティ本体部141の長手方向に沿って流れる。したがって、この実施形態においても第1の実施形態と同等の作用効果を奏することができる。
【0070】
なお、この方法で製造されたラゲージガーニッシュは、ゲート跡が残る面を背面としてもよいし、このゲート跡が残る側を前面として、このゲート跡をナンバープレートなどで隠すようにしてもよい。
【0071】
(B)この変形例では、図7に示す成形型150を用いてラゲージガーニッシュを製造する。本実施形態の成形型150の構成は、図4に示される第2の実施形態の成形型60とゲートの構成が異なるが、その他の構成は同じである。具体的に、本実施形態では、第2の実施形態と同様に、第1の成形型151と第2の成形型152とが合体してキャビティ165が形成されるとともに、第2の成形型152の凹部153の底面157にはキャビティ165の長手方向に沿って延びる4つのガイド部154が立設している。しかしながら、第2の実施形態と異なり、第2の成形型152の凹部153の底面157の中央に第2の成形型152の底面まで貫通するゲート160が形成されている。そして、成形型150をセットした状態で、このゲート160からキャビティ165に溶融した繊維強化樹脂が流入されると、この繊維強化樹脂は、このガイド部154に沿って流れる。したがって、この実施形態では、第2の実施形態と同等の作用効果を奏することができる。なお、第1の成形型151の凹部の上面にキャビティ165の長手方向に沿って延びる4つのガイド部を立設させてもよい。また、こうしたガイド部の個数および間隔を適宜変更してもよい。
【0072】
(C)この変形例では、図8に示す成形型170を使用してラゲージガーニッシュを製造する。本実施形態の成形型170の構成は、図5に示される第3の実施形態の成形型80とゲートの構成が異なるが、その他の構成は同じである。具体的に、本実施形態では、第1の成形型171と第2の成形型172とが合体してキャビティ175が形成され、第2の成形型172の凹部173の底面174に第2の成形型172の底面まで貫通する2つのゲート180,181が形成されている。そして、このゲート180,181は、キャビティ175の長手方向と直交する方向に互いに離間して配置されている。このような構成により、溶融した繊維強化樹脂がこれら各ゲート180,181から共にキャビティ175に流入されると、図8の矢印に示すように、繊維強化樹脂は各ゲート180,181からの供給方向に沿って放射状に広がるように流れた後、キャビティ175の長手方向と直交する方向において互いに衝突する。そして、繊維強化樹脂は、この衝突により、その後はキャビティ175の長手方向に沿って流れてキャビティ175に充填される。したがって、この実施形態では、第3の実施形態と同等の作用効果を奏することができる。なお、各ゲート180,181から繊維強化樹脂を同時に流入開始してもよいし、流入開始のタイミングを若干ずらしてもよい。すなわち、各ゲート180,181から共にキャビティ175に繊維強化樹脂を流入させて、流入した繊維強化樹脂がキャビティ175の長手方向と直交する方向において互いに衝突するようにすればよい。
【0073】
・上記各実施形態では、所定方向をキャビティ本体又はキャビティの長手方向としたが、所定方向は長手方向でなく短い方向であってもよい。すなわち、自動車用外装部品によっては、例えば短い方向の寸法精度をより厳密に管理する必要がある部品もあるため、そのような部品を製造する場合には、繊維がキャビティ本体又はキャビティの短い方向に沿って配向するようにしてもよい。
【0074】
・上記各実施形態では、材料に用いる繊維強化樹脂において、繊維としてはガラス繊維を用い、樹脂としてはポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂との混合物を用いるとともに、このポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂との重量比率を90:10〜50:50としたが、材料として用いる繊維の種類、樹脂の種類は特に限定されない。すなわち、繊維強化樹脂は、重量平均繊維長が0.1〜100mmの繊維を25〜50重量%含有し、30〜80℃における最大線膨張係数が5×10−5以下であればよく、例えば、繊維としては、炭素繊維、合成繊維、金属繊維などを用いるようにしてもよいし、材料として使用される樹脂も特に限定されない。
【0075】
・上記各実施形態を適宜組み合わせるようにしてもよい。
具体的には、例えば、図2に示される第1の実施形態と図4に示される第2の実施形態とを組み合わせるようにしてもよい。すなわち、成形型にキャビティ本体の長手方向に直交するキャビティ溝部とキャビティ本体(キャビティ)の長手方向に延びるように該キャビティ本体(キャビティ)に対して突出するガイド部とを備える成形型を用いてラゲージガーニッシュを製造するようにしてもよい。
【0076】
また、図5に示される第3の実施形態と図8に示される変形例(C)とを組み合わせて、成形型のキャビティの長手方向の中央にこの長手方向と直交する方向に配列される4つのゲート(互いに対向する側壁において開口する2つのゲート、及び第2の成形型の底面において開口する2つのゲート)を設けるようにしてもよい。
【0077】
・上記各実施形態は、ゲートをキャビティ本体部又はキャビティの長手方向における中央に配置するようにしたが、ゲートを配置する位置は、キャビティ本体部又はキャビティの長手方向の端部であってもよい。
【0078】
・上記第2の実施形態及び上記変形例(B)では、第1の成形型を上側に第2の成形型を下側に配置するようにしているが、第1の成形型を下側に第2の成形型を上側に配置するようにしてもよい。
【0079】
・上記各実施形態では、自動車用外装部品としてのラゲージガーニッシュを製造する方法について説明したが、自動車用外装部品は、リアガーニッシュ、ラジエターグリル、バックパネル、サイドパネル、スポイラー、ルーフ、ピラーアウター、フード又はホイールカバーなど、そのほかの部品であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る製造方法で製造されるラゲージガーニッシュの斜視図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る製造方法で用いられる成形型を示し、(a)が成形型を2分割した状態における斜視図、(b)が成形型を合体させた状態における上面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る製造方法で用いられる成形型を示し、図2(b)のA−A線における断面図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る製造方法で用いられる成形型を示し、(a)が成形型を2分割した状態における斜視図、(b)が成形型を合体させた状態における上面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る製造方法で用いられる成形型を示し、(a)が成形型を2分割した状態における斜視図、(b)が成形型を合体させた状態における上面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る製造方法で用いられる成形型を示し、(a)が成形型を2分割した状態における斜視図、(b)が成形型を合体させた状態における上面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る製造方法で用いられる成形型の上面図。
【図8】本発明の他の実施形態に係る製造方法で用いられる成形型の上面図。
【図9】従来技術を説明する図であり、ラゲージガーニッシュが取り付けられた車両の後方部分を示す斜視図。
【符号の説明】
【0081】
10,201…ラゲージガーニッシュ、11,12…切り欠き部、30,60,80,130,150,170…成形型、31,61,81,131,151,171…第1の成形型、32,62,82…第1の成形型の下面、33,63,83,133…第1の凹部、35,69,93,134…第2の凹部、36,66,91,132,152,172…第2の成形型、37,67,92,137…第2の成形型の上面、38,68,95,96…第2の成形型の側面、41,141…キャビティ本体部、42,139…キャビティ溝部、43,73,143,160,180,181…ゲート、64,84…第1の溝部、65,85,86…第1の成形型の側面、70,87…第2の溝部、71…第2の凹部の底面、72,154…ガイド部、75,100,165,175…キャビティ、94…第3の溝部、97…第4の溝部、101…第1のゲート、102…第2のゲート、135…キャビティ溝部の底面、136…第2の成形型の底面、153,173…第2の成形型の凹部、157,174…凹部の底面、200…車両、202…バンパー、203…リアコンビネーションランプ、204…ナンバープレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融した繊維強化樹脂を分割可能な成形型に射出して成形される自動車用樹脂外装品の製造方法であって、
前記繊維強化樹脂は、重量平均繊維長が0.1〜100mmの繊維を25〜50重量%含有し、30〜80℃における最大線膨張係数が5×10−5以下であり、
前記成形型は、前記自動車用樹脂外装品の外形に対応するキャビティ本体部と、該キャビティ本体部における所定方向の長さよりも短い幅で前記所定方向と直交する方向に延びる溝状のキャビティ溝部と、該キャビティ溝部を介して前記キャビティ本体部に連通するゲートとを有し、
前記キャビティ溝部が前記キャビティ本体部よりも下側に位置するように前記成形型を配置した後に、溶融した前記繊維強化樹脂を前記ゲートから前記キャビティ溝部に流入させる
ことを特徴とする自動車用樹脂外装品の製造方法。
【請求項2】
溶融した繊維強化樹脂を分割可能な成形型に射出して成形される自動車用樹脂外装品の製造方法であって、
前記繊維強化樹脂は、重量平均繊維長が0.1〜100mmの繊維を25〜50重量%含有し、30〜80℃における最大線膨張係数が5×10−5以下であり、
前記成形型は、前記自動車用樹脂外装品の外形に対応するキャビティと、該キャビティの所定方向に延びるように該キャビティに対して突出するガイド部と、前記キャビティに連通するゲートとを備え、
前記成形型をセットした後に、溶融した前記繊維強化樹脂を前記ゲートから前記キャビティに流入させる
ことを特徴とする自動車用樹脂外装品の製造方法。
【請求項3】
溶融した繊維強化樹脂を分割可能な成形型に射出して成形される自動車用樹脂外装品の製造方法であって、
前記繊維強化樹脂は、重量平均繊維長が0.1〜100mmの繊維を25〜50重量%含有し、30〜80℃における最大線膨張係数が5×10−5以下であり、
前記成形型は、前記自動車用樹脂外装品の外形に対応するキャビティと、該キャビティの所定方向と直交する方向に互いに離間して配列された複数のゲートとを備え、
前記成形型をセットした後に、溶融した前記繊維強化樹脂を前記複数のゲートから共に前記キャビティに流入させる
ことを特徴とする自動車用樹脂外装品の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項において、
前記所定方向は、前記キャビティ本体あるいは前記キャビティの長手方向である
ことを特徴とする自動車用樹脂外装品の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項において、
前記繊維強化樹脂は、ガラス繊維を含む
ことを特徴とする自動車用樹脂外装品の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項において、
前記繊維強化樹脂の樹脂は、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂との混合物である
ことを特徴とする自動車用樹脂外装品の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記繊維強化樹脂において、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂との重量比率は、90:10〜50:50である
ことを特徴とする自動車用樹脂外装品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−207387(P2008−207387A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44398(P2007−44398)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】